JP2016126935A - リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用電極、及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
「Li過剰型」のリチウム遷移金属複合酸化物を活物質とする正極を備えたリチウム二次電池において、初期効率が優れ、かつ放電容量維持率の高いリチウム二次電池用正極活物質、その正極活物質を含有するリチウム二次電池用電極、及びその電極を備えたリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】
α−NaFeO2構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属(Me)がCo、Ni及びMnを含み、Liと遷移金属(Me)のモル比(Li/Me)が1<Li/Meであり、Mnと遷移金属(Me)のモル比(Mn/Me)が0.5<Mn/Meである正極活物質に、Ceを含ませることにより、初期効率が優れ、かつ放電容量維持率の高いリチウム二次電池用電極及びリチウム二次電池を提供する。
【選択図】なし
Description
(1)α−NaFeO2構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属(Me)がCo、Ni及びMnを含み、Liと遷移金属(Me)のモル比(Li/Me)が1<Li/Meであり、Mnと遷移金属(Me)のモル比(Mn/Me)が0.5<Mn/Meであり、Ceを含有するリチウム二次電池用正極活物質。
(2)前記リチウム遷移金属複合酸化物は、金属換算したCeの含有比率が0.15〜3.37質量%である前記(1)の正極活物質。
(3)CuKα管球を用いたX線回折パターン解析において、(104)面に帰属される回折ピークの半値幅(FWHM)が0.269≦FWHM≦0.273であることを特徴とする前記(1)又は(2)の正極活物質。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかのリチウム二次電池用正極活物質を含有するリチウム二次電池用電極。
(5)前記(4)のリチウム二次電池用電極を備えたリチウム二次電池。
本発明の正極活物質は、典型的には、Li1+α(CoaNibMnc)1−αO2、但し、α>1、a+b+c=1、a>0、b>0、c>0.5で表わされるものであり、Li、Co、Ni及びMnからなる複合酸化物であるが、初期効率及び高率放電性能が優れたリチウム二次電池を得るために、遷移金属元素Meに対するLiのモル比Li/Meは、1.2より大きく且つ1.6より小さいこと、すなわち、組成式Li1+αMe1−αO2において1.2<(1+α)/(1−α)<1.6とすることが好ましい。なかでも、放電容量が特に大きく、初期効率及び高率放電性能が優れたリチウム二次電池を得ることができるという観点から、前記Li/Meが1.25〜1.5のものを選択することが好ましい。なお、本発明において、モル比Li/Meは、酸処理後のものであり、酸処理前の出発物質ではこれよりもやや高くなる。
また、タップ密度は、高率放電性能が優れたリチウム二次電池を得るために、1.25g/cc以上が好ましく、1.7g/cc以上がより好ましい。
次に、本発明のリチウム二次電池用活物質を製造する方法について説明する。
本発明のリチウム二次電池用活物質は、基本的に、活物質を構成する金属元素(Li,Mn,Co,Ni)を目的とする活物質(酸化物)の組成通りに含有する原料を調製し、これを焼成することによって得ることができる。但し、Li原料の量については、焼成中にLi原料の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
目的とする組成の酸化物を作製するにあたり、Li,Co,Ni,Mnのそれぞれの塩を混合・焼成するいわゆる「固相法」や、あらかじめCo,Ni,Mnを一粒子中に存在させた共沈前駆体を作製しておき、これにLi塩を混合・焼成する「共沈法」が知られている。「固相法」による合成過程では、特にMnはCo,Niに対して均一に固溶しにくいため、各元素が一粒子中に均一に分布した試料を得ることは困難である。これまで文献などにおいては固相法によってNiやCoの一部にMnを固溶(LiNi1−xMnxO2など)しようという試みが多数なされているが、「共沈法」を選択する方が原子レベルで均一相を得ることが容易である。そこで、後述する実施例においては、「共沈法」を採用した。
焼成温度が高すぎると、得られた活物質が酸素放出反応を伴って崩壊すると共に、主相の六方晶に加えて単斜晶のLi[Li1/3Mn2/3]O2型に規定される相が、固溶相としてではなく、分相して観察される傾向がある。このような分相が多く含まれすぎると、活物質の可逆容量の減少を導くので好ましくない。このような材料では、X線回折図上35°付近及び45°付近に不純物ピークが観察される。従って、焼成温度は、活物質の酸素放出反応の影響する温度未満とすることが好ましい。活物質の酸素放出温度は、本発明に係る組成範囲においては、概ね1000℃以上であるが、活物質の組成によって酸素放出温度に若干の差があるので、あらかじめ活物質の酸素放出温度を確認しておくことが好ましい。特に試料に含まれるCo量が多いほど前駆体の酸素放出温度は低温側にシフトすることが確認されているので注意が必要である。活物質の酸素放出温度を確認する方法としては、焼成反応過程をシミュレートするために、共沈前駆体とリチウム化合物を混合したものを熱重量分析(DTA−TG測定)に供してもよいが、この方法では測定機器の試料室に用いている白金が揮発したLi成分により腐食されて機器を痛めるおそれがあるので、あらかじめ500℃程度の焼成温度を採用してある程度結晶化を進行させた組成物を熱重量分析に供するのが良い。
また、発明者らは、本発明活物質の回折ピークの半値幅を詳細に解析することで750℃までの温度で合成した試料においては格子内にひずみが残存しており、それ以上の温度で合成することでほとんどひずみを除去することができることを確認した。また、結晶子のサイズは合成温度が上昇するに比例して大きくなるものであった。よって、本発明活物質の組成においても、系内に格子のひずみがほとんどなく、かつ結晶子サイズが十分成長した粒子を志向することで良好な放電容量を得られるものであった。具体的には、格子定数に及ぼすひずみ量が2%以下、かつ結晶子サイズが50nm以上に成長しているような合成温度(焼成温度)及びLi/Me比組成を採用することが好ましいことがわかった。これらを電極として成型して充放電を行うことで膨張収縮による変化も見られるが、充放電過程においても結晶子サイズは30nm以上を保っていることが得られる効果として好ましい。
本発明において、セリウムを適用する方法については限定されない。後述する実施例においては、以上のようにして作製したセリウムを含まないリチウム遷移金属複合酸化物に、酸処理を行ってCeを添加する方法を採用した。
この酸処理は、例えば、硫酸セリウム等のセリウム化合物の水溶液に硫酸を加えた酸溶液に、リチウム遷移金属複合酸化物を投入して行うことができる。酸としては硫酸又はリン酸が好ましい。酸として塩酸の使用を避けることが好ましく、これにより、酸処理前の結晶構造が崩れる虞を低減することができる。また、酸としてホウ酸を用いてもよいが、ホウ酸などの弱酸の使用を避けることが好ましく、これにより、活物質からのリチウムの脱離量が少なすぎて初期効率を向上させる効果が充分に奏されない虞を低減することができる。
酸処理時間を長くしすぎないこと、また、pHの値を小さくしすぎないことが好ましく、これにより、活物質からのリチウムの脱離量が多くなりすぎて可逆容量が充分とならない虞を低減できる。酸処理の時間を短くしすぎないこと、また、pHの値を大きくしすぎないことが好ましく、これにより、活物質からのリチウムの離脱量が少なすぎて初期効率の効果が充分に奏されない虞を低減することができる。上記の観点から、酸処理時間は、30秒〜10800秒が好ましく、酸溶液のpHは0.5〜3が好ましい。
酸処理後の溶液は、吸引ろ過等により、ろ紙上のCeを含むリチウム遷移金属複合酸化物を回収した後、乾燥、熱処理することによりCeが添加された活物質を得ることができる。
なお、Ceの添加量は、本発明に係る活物質について、ICP分析で求めることができる。また、本発明に係る活物質がCeを含有することについては、CuKα線源を用いたXRDパターンにおいて、CeO2に帰属される最強ピークが2θ=29±1°付近に観測されることにより推定することができる。さらに、本発明に係る活物質を空気中で1000℃で焼成すると、CeO2の結晶性が高まるため、2θ=29±1°付近の回折ピークに加えて、2θ=33±1°付近、47±1°付近及び56±1°付近の回折ピークが顕在化するので、CeO2の存在をより確実に推定できる。
負極材料としては、限定されるものではなく、リチウムイオンを放出あるいは吸蔵することのできる形態のものであればどれを選択してもよい。例えば、Li[Li1/3Ti5/3]O4に代表されるスピネル型結晶構造を有するチタン酸リチウム等のチタン系材料、SiやSb,Sn系などの合金系材料リチウム金属、リチウム合金(リチウム−シリコン、リチウム−アルミニウム,リチウム−鉛,リチウム−スズ,リチウム−アルミニウム−スズ,リチウム−ガリウム,及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)、リチウム複合酸化物(リチウム−チタン)、酸化珪素の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)等が挙げられる。
以上、正極及び負極の主要構成成分である正極活物質及び負極材料について詳述したが、前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
本発明に係るリチウム二次電池に用いる非水電解質は、限定されるものではなく、一般にリチウム電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水電解質に用いる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
本発明のリチウム二次電池の構成については特に限定されるものではなく、正極、負極及びロール状のセパレータを有する円筒型電池、角型電池、扁平型電池等が一例として挙げられる。図1に角型電池の一例を示す。セパレータを挟んで巻回された正極及び負極よりなる電極群2が角型の電池容器3に収納され、正極リード4‘を介して正極端子4が、負極リード5’を介して負極端子5が電池容器外に導出されている。
本発明のリチウム二次電池は、特に電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの自動車用電源として用いる場合に、複数のリチウム二次電池を集合して構成した蓄電装置(バッテリーモジュール)として搭載することができる。
図2に、リチウム二次電池1が集合した蓄電ユニット20をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。
従来の正極活物質も、本発明の活物質も、正極電位が4.5V(vs.Li/Li+)付近に至って充放電が可能である。しかしながら、使用する非水電解質の種類によっては、充電時の正極電位が高すぎると、非水電解質が酸化分解され電池性能の低下を引き起こす虞がある。したがって、使用時において、充電時の正極の最大到達電位が4.3V(vs.Li/Li+)以下となるような充電方法を採用しても、充分な放電容量が得られるリチウム二次電池が求められる場合がある。本発明の活物質を用いると、使用時において、充電時の正極の最大到達電位が4.5V(vs.Li/Li+)より低くなるような、例えば、4.4V(vs.Li/Li+)以下や4.3V(vs.Li/Li+)以下となるような充電方法を採用しても、約200mAh/g以上という従来の正極活物質の容量を超える放電電気量を取り出すことが可能である。
<リチウム遷移金属複合酸化物の合成>
硫酸コバルト7水和物14.08g、硫酸ニッケル6水和物21.00g及び硫酸マンガン5水和物65.27gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mlに溶解させ、Co:Ni:Mnのモル比が12.50:19.94:67.56となる2.0Mの硫酸塩水溶液を作製した。一方、2Lの反応槽に750mlのイオン交換水を注ぎ、CO2ガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中にCO2を溶解させた。反応槽の温度を50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたパドル翼を用いて反応槽内を700rpmの回転速度で攪拌しながら、前記硫酸塩水溶液を3ml/minの速度で滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、2.0Mの炭酸ナトリウム、及び0.4Mのアンモニアを含有する水溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に7.9(±0.05)を保つように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに5h継続した。攪拌の停止後、12h以上静置した。
次に、吸引ろ過装置を用いて、反応槽内に生成した共沈炭酸塩の粒子を分離し、さらにイオン交換水を用いて粒子に付着しているナトリウムイオンを洗浄除去し、電気炉を用いて、空気雰囲気中、常圧下、100℃にて20h乾燥させた。その後、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、共沈炭酸塩前駆体を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体2.278gに、炭酸リチウムをLi:(Co,Ni,Mn)のモル比が1.44となるように加え、瑪瑙製自動乳鉢を用いてよく混合し、混合粉体を調製した。ペレット成型機を用いて、6MPaの圧力で成型し、直径25mmのペレットとした。ペレット成型に供した混合粉体の量は、想定する最終生成物の質量が2gとなるように換算して決定した。前記ペレット1個を全長約100mmのアルミナ製ボートに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、空気雰囲気中、常圧下、常温から900℃の温度まで10時間かけて昇温し、昇温後温度で10h焼成した。前記箱型電気炉の内部寸法は、縦10cm、幅20cm、奥行き30cmであり、幅方向20cm間隔に電熱線が入っている。焼成後、ヒーターのスイッチを切り、アルミナ製ボートを炉内に置いたまま自然放冷した。この結果、炉の温度は5時間後には約200℃程度にまで低下するが、その後の降温速度はやや緩やかである。一昼夜経過後、炉の温度が100℃以下となっていることを確認してから、ペレットを取り出し、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、Naを2100ppm含み、D50が13μmである出発物質のリチウム遷移金属複合酸化物Li1.18Co0.10Ni0.17Mn0.55O2を作製した。
300ml三角フラスコに硫酸セリウム四水和物0.0406gと、イオン交換水を加えて溶解し0.0005Mの硫酸セリウム水溶液を調製した。上記水溶液に、pHが1.6となるまで98wt%の硫酸を加えて混合し、酸溶液を調製した。なお、pH調整のために加える硫酸量は0.3ml以下とごく微量であるから、上記酸溶液中のセリウムイオン濃度は、上記水溶液中のセリウムイオン濃度と有効数字の範囲内で等しい。上記の酸溶液をスターラーを用いて、25℃、400rpmで撹拌しているところに、上記のリチウム遷移金属複合酸化物5.0g投入した。リチウム遷移金属複合酸化物を投入してから、30sec後に吸引ろ過することによって、ろ紙上にリチウム遷移金属複合酸化物を回収した。
このリチウム遷移金属複合酸化物を乾燥機(ヤマト科学社製)を用いて、空気中、常圧、80℃で16から18h乾燥させることによって、硫酸セリウム水溶液処理したリチウム遷移金属複合酸化物を得た。
酸溶液を調製する際に用いる硫酸セリウム水溶液として、0.001M、0.005M、0.01M、及び0.025Mの水溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
酸処理を施さない以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
酸溶液として、水素イオン濃度が0.05Mの硫酸水溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、比較例2に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
硫酸セリウム水溶液に代えて、0.0005M、0.001M、0.005M、0.01M、0.025M及び0.05Mの硫酸スズ水溶液をそれぞれ使用した以外は実施例1と同様にして、比較例3〜8に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
硫酸セリウム水溶液に代えて、0.1Mの硫酸鉄水溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、比較例9に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
硫酸セリウム水溶液に代えて、0.01Mの硫酸ジルコニウム水溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、比較例10に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
全ての実施例および比較例に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、次の条件及び手順に沿ってX線回折測定を行い、半値幅を決定した。X線回折装置(Rigaku社製、型名:MiniFlexII)を用いて粉末X線回折測定を行った。線源はCuKα、加速電圧及び電流はそれぞれ30kV及び15mAとした。サンプリング幅は0.01deg、走査時間は14分(スキャンスピードは5.0)、発散スリット幅は0.625deg、受光スリット幅は開放、散乱スリットは8.0mmとした。得られたX線回折データについて、前記X線回折装置の付属ソフトである「PDXL」を用いて、X線回折図上2θ=44°±1°に存在する回折ピークについて半値幅を決定した。
酸処理後の正極活物質に含まれる金属量をICP発光分光分析により定量した。なお、実施例1〜5に係る正極活物質粉末を水中に分散し、超音波洗浄機を用いて2分間超音波振動を与えた。この分散液を試料として粒度分布測定を行ったところ、析出していると考えられるCeO2の粒径に相当する粒子は観測されなかった。したがって、Ce化合物は正極活物質表面に安定的に担持されていることがわかった。
全ての実施例および比較例に係るリチウム遷移金属複合酸化物をそれぞれリチウム二次電池用正極活物質として用いて、以下の手順でリチウム二次電池を作製した。
(初期効率)
以上の手順にて作製されたリチウム二次電池を、25℃の下、初期充放電工程に供した。充電は、電流0.1CA、電圧4.6Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/5に減衰した時点とした。放電は、電流0.1CA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。この充放電を1サイクル行った。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設けた。この充放電試験における放電容量を充電電気量で割った値(%)を初期充放電効率(表1では、「初期効率」)として記録した。
次に、30サイクルの充放電試験を行った。この充放電試験の条件は、充電は、電流0.2CA、電圧4.45Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/10に減衰した時点とした。放電は、電流0.5CA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。この1サイクル目の放電容量に対する30サイクル目の放電容量の比(%)を放電容量維持率として記録した。
ウム二次電池用正極活物質として用いたリチウム二次電池の試験結果を表1に示す。なお、酸処理に用いた酸溶液中のCe、Sn、Fe又はZnイオン濃度を「金属イオン濃度(M)」として表1に示した。
金属イオン添加の酸処理により、活物質にSn添加(比較例3〜8)、又はFe添加(比較例9)を行った場合も、硫酸処理を施した比較例2の放電容量維持率を上回ることはない。Zr添加を行った比較例10は、硫酸処理を施した比較例2より放電容量維持率は向上しているが、初期効率が低下している。
実施例1〜5では、X線回折データにおける2θ=44°±1°に存在する(104)面に帰属されるピークの半値幅が0.269〜0.273°であり、酸処理により適度な結晶性を有する活物質が得られ、初期効率が向上したことが確認できる。また、Ceを0.15〜3.37質量%含むことにより、初期効率が優れ、かつ放電容量維持率が高い活物質が得られることも確認できた。正極活物質がCeを含むことによって、正極活物質からのMnの溶出が抑制されたものと考えられる。
mgを剥がし取り、35wt%塩酸中に加え、150℃で10分間煮沸することによって正極活物質のみを溶解した。この溶液をろ過することによってABとPVdFを取り除いた。得られたろ液についてICP発光分光分析をおこなった。その結果、モル比Li/Meは、合成後(充放電を行う前)のリチウム遷移金属複合酸化物のモル比Li/Meに対して97%であった。
したがって、原料の仕込み量によって定まるリチウム遷移金属複合酸化物のLi/Meは、活物質として電池電極に用いると、充放電状態によってLi量が変化してしまうが、電池を解体して上記の処理を経て測定されるLi量に、3%分加味することにより、正極活物質の合成後(充放電を行う前)のLi/Me量を推定することができる。
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
Claims (5)
- α−NaFeO2構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質であって、
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属(Me)がCo、Ni及びMnを含み、
Liと遷移金属(Me)のモル比(Li/Me)が1<Li/Meであり、
Mnと遷移金属(Me)のモル比(Mn/Me)が0.5<Mn/Meであり、
Ceを含有することを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。 - 前記リチウム遷移金属複合酸化物は、金属換算したCeの含有比率が0.15〜3.37質量%であることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
- CuKα管球を用いたX線回折パターン解析において、(104)面に帰属される回折ピークの半値幅(FWHM)が0.269≦FWHM≦0.273であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の正極活物質。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質を含有することを特徴とするリチウム二次電池用電極。
- 請求項4に記載のリチウム二次電池用電極を備えたことを特徴とするリチウム二次電池。
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