JP5946011B2 - 非水電解質二次電池用活物質、非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
非特許文献2に記載された活物質は、全遷移金属元素に対するLiのモル比が1.50と大きいものであり、Fの置換量Z=0.10程度で放電容量が極端に低下するという問題がある。また、Fの置換が、活物質の比表面積にどのような影響を与えるかは示されていない。
(ここで、MはCoあるいはNiあるいはMnあるいはVあるいはFeあるいはTiを示し、Xは少なくとも1種以上のハロゲン元素を示す。wは0.2≦w≦2.5、xは0.8≦x≦1.25、yは1≦y≦2、zは0<z<0.25である。)で表される含リチウム金属ハロゲン化酸化物。」の発明が記載されているが、MをCo、Ni及びMnとすること、LiをMに対して過剰にすることは、具体的に示されていない。また、この発明は、正極電位そしてその還元電位を高くすることを課題(段落[0005])として、含リチウム金属ハロゲン化酸化物を正極活物質として使用するものであり、ハロゲン元素を導入することにより、活物質の比表面積がどのように変化するかは示されていない。
(1)リチウム遷移金属複合酸化物を含有する非水電解質二次電池用活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、本質的に、結晶構造が六方晶構造に帰属され、
一般式Li a Co x Ni y Mn z O 2 X b
(但し、XはF、Cl、P及びSからなる群のうち1種又は2種以上、a/(x+y+z)が1.25〜1.40、x/(x+y+z)が0.02〜0.23、z/(x+y+z)が0.63〜0.72、b/aが0.01〜0.1、a+x+y+z=2)で表されることを特徴とする非水電解質二次電池用活物質。
(2)前記(1)の非水電解質二次電池用活物質を含有する非水電解質二次電池用電極。
(3)前記(2)の非水電解質二次電池用電極を備えた非水電解質二次電池。
なお、非水電解質二次電池としては、リチウム二次電池が典型的なものであるから、以下においては、リチウム二次電池について説明する。
後述するデータからわかるように、元素Xの0.025mol%の添加でBET比表面積を約3m2/gまで低減できる。0.1mol%の添加でBET比表面積を約2m2/gまで低減できる。添加量が0.1mol%を超えると、放電容量が低下する場合があることから、添加量は0.1mol%以下が好ましい。X=F,Cl,P,Sである。なかでも、X=Sを選択すれば、わずか0.05mol%を添加するだけでBET比表面積を約1m2/gまで低減でき、0.1mol%を添加すればBET比表面積を約0.2m2/gまで低減できる。しかも、ここまでBET比表面積を低減させた場合でも、放電容量の低下が小さい。
一般式LiaCoxNiyMnzO2Xb(a+x+y+z=2)
但し、a/(x+y+z)が1.25〜1.40、x/(x+y+z)が0.02〜0.23、z/(x+y+z)が0.63〜0.72、b/aが0.01〜0.1
上記のように、本発明においては、リチウム遷移金属複合酸化物は、元素X(F、Cl、P及びSからなる群のうち1種又は2種以上)を含有しないリチウム遷移金属複合酸化物と比較して格子定数に変化がないものであり、元素Xが固溶していないと考えられるから、Oの係数は2のままであり、b/aが0.01〜0.1の元素Xが付加されていると推定される。しかし、本発明においては、Xが一部固溶されている場合を排除するものではない。
本発明の非水電解質二次電池用活物質は、基本的に、活物質を構成する金属元素(Li,Mn,Co,Ni)及び元素Xを、目的とする活物質(リチウム遷移金属複合酸化物)の組成通りに含有するように原料を調整し、最終的にこの原料を焼成すること、によって得ることができる。但し、Li原料の量については、焼成中にLi原料の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
目的とする組成を有するリチウム遷移金属複合酸化物を作製するための方法として、Li,Co,Ni,Mnのそれぞれの塩を混合・焼成するいわゆる「固相法」や、あらかじめCo,Ni,Mnを一粒子中に存在させた共沈前駆体を作製しておき、これにLi塩を混合・焼成する「共沈法」が知られている。「固相法」による合成過程では、特にMnはCo,Niに対して均一に固溶しにくい。このため、各元素が一粒子中に均一に分布した試料を得ることは困難である。本発明に係る非水電解質二次電池用活物質を製造するにあたり、前記「固相法」と前記「共沈法」のいずれを選択するかについては限定されるものではない。しかしながら、「固相法」を選択した場合には、本発明に係る正極活物質を製造することは極めて困難である。「共沈法」を選択する方が原子レベルで均一相を得ることが容易である点で好ましい。
具体的には、元素Xを含むリチウム化合物としてLiF、LiCl、Li2SO4、Li3PO4等を用いることができ、Co、Ni及びMnを含む化合物の共沈前駆体と上記のような元素Xを含むリチウム化合物を混合し、焼成することによって、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物が得られる。
焼成温度が高すぎると、得られた活物質が酸素放出反応を伴って崩壊すると共に、主相の六方晶に加えて単斜晶のLi[Li1/3Mn2/3]O2型に規定される相が、固溶相としてではなく、分相して観察される傾向があり、このような材料は、活物質の可逆容量が大きく減少するので好ましくない。このような材料では、X線回折図上35°付近及び45°付近に不純物ピークが観察される。従って、焼成温度は、活物質の酸素放出反応の影響する温度未満とすることが重要である。活物質の酸素放出温度は、本発明に係る組成範囲においては、概ね1000℃以上であるが、活物質の組成によって酸素放出温度に若干の差があるので、あらかじめ活物質の酸素放出温度を確認しておくことが好ましい。特に試料に含まれるCo量が多いほど前駆体の酸素放出温度は低温側にシフトすることが確認されているので注意が必要である。活物質の酸素放出温度を確認する方法としては、焼成反応過程をシミュレートするために、共沈前駆体とリチウム化合物を混合したものを熱重量分析(DTA−TG測定)に供してもよいが、この方法では測定機器の試料室に用いている白金が揮発したLi成分により腐食されて機器を痛めるおそれがあるので、あらかじめ500℃程度の焼成温度を採用してある程度結晶化を進行させた組成物を熱重量分析に供するのが良い。
また、発明者らは、本発明活物質の回折ピークの半値幅を詳細に解析することで800℃までの温度で合成した試料においては格子内にひずみが残存しており、それ以上の温度で合成することでほとんどひずみを除去することができることを確認した。また、結晶子のサイズは合成温度が上昇するに比例して大きくなるものであった。よって、本発明活物質の組成においても、系内に格子のひずみがほとんどなく、かつ結晶子サイズが十分成長した粒子を志向することで良好な放電容量を得られるものであった。具体的には、格子定数に及ぼすひずみ量が1%以下、かつ結晶子サイズが100nm以上に成長しているような合成温度(焼成温度)を採用することが好ましいことがわかった。これらを電極として成型して充放電をおこなうことで膨張収縮による変化も見られるが、充放電過程においても結晶子サイズは50nm以上を保っていることが得られる効果として好ましい。即ち、焼成温度を上記した活物質の酸素放出温度にできるだけ近付けるように選択することにより、はじめて、可逆容量が顕著に大きい活物質を得ることができる。
本願明細書に記載した合成条件及び合成手順を採用することにより、上記のような高性能の正極活物質を得ることができる。とりわけ、充電上限電位を4.5Vより低く設定した場合、例えば4.4Vや4.3Vといった充電上限電位を設定した場合でも高い放電容量を得ることができる非水電解質二次電池用正極活物質とすることができる。
(活物質の合成)
硫酸コバルト7水和物、硫酸ニッケル6水和物及び硫酸マンガン5水和物をCo、Ni及びMnのモル比が12.5:19.94:67.56となるよう秤量し、イオン交換水に溶解させることで2Mの硫酸塩水溶液を作製した。一方、15Lの反応槽を用意した。この反応槽には、反応槽内部の液面が一定の高さを超えるとその排出口から溶液が排出されるように排出口が設けられている。また、反応槽内には、撹拌羽が備えられていると共に、攪拌時に上下方向の対流を生じさせるための円筒型の対流板が固定されている。前記反応槽に7Lのイオン交換水を入れ、CO2ガスを30minバブリングさせることにより、前記イオン交換水中に前記CO2ガスを十分溶解させた。なお、CO2ガスバブリングは、硫酸塩水溶液を滴下し終わるまで継続した。次に、前記反応槽を50℃に設定し、前記撹拌羽を1000rpmの回転速度で作動させた。前記反応槽中に2Lの硫酸塩水溶液を徐々に滴下した。滴下中、前記攪拌を継続した。また、反応槽中のpHを常時監視し、pHが8.6±0.2の範囲となるように、2Mの炭酸ナトリウム及び0.2Mのアンモニアが溶解している水溶液を加えた。前記硫酸塩水溶液を滴下している間、前記排出口から反応生成物を含む溶液一部が反応槽の外へ排出されるが、2Lの硫酸塩水溶液の全量を滴下し終わるまでの排出溶液は、反応槽内に戻さず、廃棄した。滴下終了後、反応生成物を含む溶液から、吸引ろ過により共沈生成物を濾別し、付着したナトリウムイオンを除去するために、イオン交換水を用いて洗浄した。次に、大気雰囲気中、常圧下、オーブンで100℃にて乾燥させた。乾燥後、粒径を揃えるように、乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、共沈炭酸塩前駆体の粉末を得た。
前記共沈炭酸塩前駆体に、炭酸リチウムの一部をフッ化リチウム(LiF)に変えて加え、Liに対するFのモル比F/Liが0.01〜0.25となるようにした以外は、比較例1と同様にして、実施例1〜5、比較例2〜4のリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体に、炭酸リチウムの一部を塩化リチウム(LiCl)に変えて加え、Liに対するClのモル比Cl/Liが0.025〜0.15となるようにした以外は、比較例1と同様にして、実施例7〜10、比較例5のリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体に、炭酸リチウムの一部をリン酸リチウム(Li3PO4)に変えて加え、Liに対するPのモル比P/Liが0.025〜0.15となるようにした以外は、比較例1と同様にして、実施例11〜14、比較例6のリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体に、炭酸リチウムの一部を硫酸リチウム(Li2SO4)に変えて加え、Liに対するSのモル比S/Liが0.025〜0.15となるようにした以外は、比較例1と同様にして、実施例11〜14、比較例7のリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
焼成温度を800℃、700℃に変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例8、9のリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
実施例1〜18及び比較例1〜9に係るリチウム遷移金属複合酸化物をそれぞれリチウム二次電池用正極活物質として用いて、以下の手順でリチウム二次電池を作製し、電池特性を評価した。
続いて、以下の手順で高温保存試験を行った。充電条件を4.3V(vs.Li/Li+)として電流0.1CAでの定電流定電圧充電を行った。充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。次に、全ての端子から回路を取り外した開回路状態にて、60℃の恒温槽中に2週間保存した。その後、25℃にて、1サイクル半の放電−充電−放電を行った。このときの充放電条件は保存の直前に行った充放電条件と同一であり、充電後及び放電後にそれぞれ30分の休止過程を設けた。このようにして最後に行った放電で得られた放電容量の、前記60℃保存前の「放電容量(mAh/g)」に対する百分率を「容量維持率」として表記した。
ユアサアイオニクス社製比表面積測定装置(商品名:MONOSORB)を用いて、一点法により、活物質に対する窒素吸着量[m2]を求めた。得られた吸着量(m2)を活物質質量(g)で除した値をBET比表面積とした。測定に当たって、液体窒素を用いた冷却によるガス吸着を行った。また、冷却前に120℃15minの予備加熱を行った。また、測定試料の投入量は、0.5g±0.01gとした。
前記高温保存試験の後、再び、電流0.1CA,電圧4.3V (vs. Li/Li+)の定電流定電圧充電を行い、充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。次にアルゴン雰囲気中のグローブボックス中で電池を解体し、正極板を取り出し、電解液を含んだ状態のままアルミニウム集電体ごと3mmφのポンスで打ち抜き、示差走査熱量測定(DSC)装置(Rigaku,DSC8230)専用のAl製のパンにカシメ封口により封入し、測定試料とした。前記示差走査熱量測定装置を用いて、昇温速度5℃/minにて400℃までのDSC測定を行った。得られたDSCカーブのうち、発熱方向に最も大きな熱量を示す発熱カーブの立ち上がり部分の温度を発熱開始温度とした。
また、CuKα管球を用いた粉末エックス線回折測定の結果、いずれのリチウム遷移金属複合酸化物もα−NaFeO2型の六方晶構造が主相として確認された。
硫酸コバルト7水和物4.6873g、硫酸ニッケル6水和物6.5743g及び硫酸マンガン5水和物22.110gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mlに溶解させ、Co;Ni:Mnのモル比が0.1250:0.1875:0.6875となる0.67Mの硫酸塩水溶液を作製した。一方、2dm3の反応槽に750mlのイオン交換水を注ぎ、CO2ガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中にCO2を溶解させた。反応槽の温度を50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたパドル翼を用いて反応槽内を700rpmの回転速度で攪拌しながら、前記硫酸塩水溶液を3ml/minの速度で滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、0.67Mの炭酸ナトリウム及び0.067Mのアンモニアを含有する水溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に8.6(±0.05)を保つように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに1h継続した。攪拌の停止後、12h以上静置した。静置することにより、反応槽内に生成する共沈炭酸塩の粒子を十分に成長させることができる。
次に、吸引ろ過装置を用いて、反応槽内に生成した共沈炭酸塩の粒子を分離し、さらにイオン交換水を用いて粒子に付着しているナトリウムイオンを洗浄除去し、電気炉を用いて、空気雰囲気中、常圧下、100℃にて乾燥させた。その後、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、共沈炭酸塩前駆体を作製した。
また、全てのリチウム遷移金属複合酸化物は、CuKα線源を用いたエックス線回折装置(Rigaku社製、型名:MiniFlex II)を行いてエックス線回折測定を行った結果、表3及び表4に示されるように、(003)面と(104)面の回折ピークの強度比I(003)/I(104)が1.58以上であった。
Claims (3)
- リチウム遷移金属複合酸化物を含有する非水電解質二次電池用活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、本質的に、結晶構造が六方晶構造に帰属され、
一般式Li a Co x Ni y Mn z O 2 X b
(但し、XはF、Cl、P及びSからなる群のうち1種又は2種以上、a/(x+y+z)が1.25〜1.40、x/(x+y+z)が0.02〜0.23、z/(x+y+z)が0.63〜0.72、b/aが0.01〜0.1、a+x+y+z=2)で表されることを特徴とする非水電解質二次電池用活物質。 - 請求項1に記載の非水電解質二次電池用活物質を含有する非水電解質二次電池用電極。
- 請求項2に記載の非水電解質二次電池用電極を備えた非水電解質二次電池。
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