(本開示に至った経緯)
まず、本開示に係る一態様の着眼点について説明する。
図8は、制御端子を備えるスイッチング素子を含むモータ駆動システムの一例を示す図である。モータ駆動システム10は、入力電源E11、DC−DCコンバータ20、DC−ACコンバータ(以下、「インバータ」と称される)30、及びモータ40を備える。
DC−DCコンバータ20は、リアクトルL11、入力用の平滑コンデンサC11、ロー側のスイッチング素子Q11、ハイ側のスイッチング素子Q12、出力用の平滑コンデンサC12、及びゲート駆動装置50を備える。スイッチング素子Q11,Q12は、それぞれゲート駆動装置50により駆動される。
まず、昇圧動作について説明する。ゲート駆動装置50がロー側のスイッチング素子Q11をターンオン及びターンオフすることにより、入力電源E11のエネルギーは、リアクトルL11を介して、平滑コンデンサC12に移動する。平滑コンデンサC12の電圧は、入力電源E11の電圧に対して昇圧されている。この昇圧された電圧は、インバータ30で交流電圧に変換され、その交流電圧でモータ40が駆動される。
次に、降圧動作について説明する。モータ40で発電された交流電力は、インバータ30で直流電力に変換され、直流電力が平滑コンデンサC12に蓄えられる。ゲート駆動装置50がハイ側のスイッチング素子Q12をターンオン及びターンオフすることにより、平滑コンデンサC12に蓄えられたエネルギーが、リアクトルL11を介して入力電源E11に移動する。入力電源E11の電圧は、平滑コンデンサC12の電圧に対して降圧されている。
ゲート駆動装置50は、スイッチング素子Q11,Q12のゲートに駆動信号を供給する。スイッチング素子Q11,Q12は、例えばPWM制御によって、ターンオン及びターンオフされる。
図8に示されるような、スイッチング素子Q11,Q12を駆動するゲート駆動装置50では、スイッチング素子Q11,Q12におけるスイッチング損失を低減することが望まれている。スイッチング素子Q11,Q12としては、例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)又は絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の電圧制御型のスイッチング素子が用いられる。
スイッチング素子Q11,Q12は、制御端子と、第一導通端子と、第二導通端子とを備える。例えば、スイッチング素子Q11,Q12がMOSFETである場合、制御端子はゲートであり、第一導通端子及び第二導通端子の一方はソースであり、他方はドレインである。例えば、スイッチング素子Q11,Q12がIGBTである場合、制御端子はゲートであり、第一導通端子及び第二導通端子の一方はコレクタであり、他方はエミッタである。
また、第一導通端子及び第二導通端子の一方は、制御端子の電圧の基準となる基準端子となる。電圧制御型のスイッチング素子は、制御端子と基準端子との間に等価的に形成される容量を有する。
以下では、スイッチング素子Q11,Q12がMOSFETであり、制御端子はゲートであり、第一導通端子がソースであり、第二導通端子がドレインであり、ソースが基準端子であり、ゲートとソースとの間に容量Cissを有する例について説明する。但し、上述のように、スイッチング素子Q11,Q12としてIGBTを用いることもできる。
図8に示されるように、DC−DCコンバータ20とインバータ30との負側の接続ラインW11及び正側の接続ラインW12には、それぞれ、寄生インダクタンスLp1,Lp2が発生する。また、スイッチング素子Q11,Q12のドレイン−ソース間には、それぞれ、寄生キャパシタンスCp1,Cp2が発生する。
図8に示されるモータ駆動システム10において、一般に、スイッチング素子Q11,Q12のドレイン−ソース間電圧を高速で応答させる(つまり、スイッチング素子Q11,Q12を高速でスイッチングさせる)ことにより、スイッチング損失を低減させることができる。
しかし、スイッチング素子Q11,Q12を高速でスイッチングさせると、以下のような問題が生じることが分かった。例えば、スイッチング素子Q11をターンオンさせる場合を考える。この場合には、スイッチング素子Q11がオンで、スイッチング素子Q12がオフになっている。したがって、スイッチング素子Q11、寄生インダクタンスLp1、インバータ30、寄生インダクタンスLp2、寄生キャパシタンスCp2の共振ループが形成される。
このため、オフになっているスイッチング素子Q12の寄生キャパシタンスCp2の両端にリンギング電圧が発生する。このリンギング電圧が大きくなると、スイッチング素子Q11,Q12の耐圧を増大させる必要が生じる。その結果、スイッチング素子Q11,Q12の大型化及びコスト上昇を招く。そこで、本発明者は、リンギング電圧の発生状況を詳細に検討した。
図9は、図8のゲート駆動装置50に含まれる、比較例のゲート駆動部600を概略的に示す図である。ゲート駆動部600は、電源E61、第1クランプスイッチSW63、第2クランプスイッチSW64、第1クランプダイオードD63、第2クランプダイオードD64、第1抵抗R61、及び第2抵抗R62を含む。
第一基準電位線W61は、電源E61の正極に接続されている。第一基準電位線W61は、第一基準電位Vccを与える。第二基準電位線W62は、電源E61の負極に接続されている。第二基準電位線W62は、第二基準電位Vssを与える。第一基準電位Vccは、第二基準電位Vssよりも高い。電源E61の第二基準電位Vssと、スイッチング素子Q11のソースの電位とは共通する。
第1クランプスイッチSW63と第1抵抗R61との直列回路は、第一基準電位線W61とスイッチング素子Q11のゲートとの間に設けられる。第2クランプスイッチSW64と第2抵抗R62との直列回路は、第二基準電位線W62とスイッチング素子Q11のゲートとの間に設けられる。図9の例では、第1クランプスイッチSW63は、Pチャネル型MOSFETであり、第2クランプスイッチSW64は、Nチャネル型MOSFETである。
第1クランプダイオードD63は、第一基準電位線W61とスイッチング素子Q11のゲートとの間に逆方向に設けられる。すなわち、第1クランプダイオードD63は、第一基準電位Vccとスイッチング素子Q11のゲートとの間に逆バイアス接続される。第2クランプダイオードD64は、スイッチング素子Q11のゲートと第二基準電位線W62との間に逆方向に設けられる。すなわち第2クランプダイオードD64は、スイッチング素子Q11のゲートと第二基準電位Vssとの間に逆バイアス接続される。第1クランプダイオードD63及び第2クランプダイオードD64は、例えば、ショットキーバリアダイオードであってもよい。
図9に示されるゲート駆動部600を用いて、以下に説明されるように、スイッチング損失及びリンギング電圧は、第1抵抗R61及び第2抵抗R2の抵抗値の大きさに依存することが確認された。
図10は、スイッチング素子Q11をターンオンさせる際のゲート駆動部600の実動作波形を示す図である。図10において、電圧Vds11は、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧である。損失Eonは、スイッチング素子Q11に発生するスイッチング損失である。電流Ids11は、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース電流である。電圧Vds12は、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧である。
図10において、セクション(A)〜(D)では、第1抵抗R61の抵抗値が変更されている。すなわち、セクション(A)は、第1抵抗R61の抵抗値が0Ωの場合(つまり第1抵抗R61が省略されている場合)を示す。セクション(B)は、第1抵抗R61の抵抗値が0.3Ωの場合を示す。セクション(C)は、第1抵抗R61の抵抗値が2Ωの場合を示す。セクション(D)は、第1抵抗R61の抵抗値が5.1Ωの場合を示す。このように、セクション(D)からセクション(A)まで、第1抵抗R61の抵抗値は順に低下している。
図10から分かるように、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds11の立下り、及びスイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds12の立上りは、セクション(D)からセクション(A)まで、順に急峻になっている。すなわち、第1抵抗R61の抵抗値が低下するにつれて、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度は高くなっている。
図8を参照して説明されたように、スイッチング素子Q11をターンオンさせる際には、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間にリンギング電圧が発生する。図10では、リンギング電圧Vds(H)は、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds12のピーク値である。
図10に破線の矢印で示されるように、第1抵抗R61の抵抗値が低下するにつれて(つまりスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度が高くなるにつれて)、リンギング電圧Vds(H)は増大している。
また、図10から分かるように、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds12の高周波成分の振幅は、セクション(D)からセクション(A)まで、順に増大している。このため、第1抵抗R61の抵抗値が低下するにつれて(つまりスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度が高くなるにつれて)、スイッチング素子Q12に発生する輻射ノイズも悪化している。
スイッチング素子Q11に発生するスイッチング損失Eonは、Eon=Vds11×Ids11で表される。図10に破線の矢印で示されるように、第1抵抗R61の抵抗値が低下するにつれて(つまりスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度が高くなるにつれて)、スイッチング損失Eonは低下している。
図11は、第1抵抗R61の抵抗値を変化させたときのリンギング電圧Vds(H)及びスイッチング損失Eonの実機検証結果を概略的に示す図である。図11において、横軸は第1抵抗R61の抵抗値を表す。図11において、左の縦軸はリンギング電圧Vds(H)を表し、右の縦軸はスイッチング損失Eonを表す。
図11でも、図10と同様に、第1抵抗R61の抵抗値が低下するにつれて、リンギング電圧Vds(H)は増大する一方、スイッチング損失Eonは低下していることが分かる。このように、リンギング電圧Vds(H)とスイッチング損失Eonとはトレードオフの関係になっており、一方を低下させると、他方が増大してしまう。
以上の考察により、本発明者は、以下の本開示の各態様を想到するに至った。
本開示の第1態様は、制御端子と第一導通端子と第二導通端子とを備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、第一電位を与える第一電位線と、前記第一電位よりも小さい第二電位を与える第二電位線と、第一端子と第二端子とを有し、前記第二端子が前記スイッチング素子の前記制御端子に接続される第一インピーダンス素子と、前記第一電位線と前記第一インピーダンス素子の前記第一端子との間に接続され、前記第一電位線と前記第一インピーダンス素子との間の通電をオンオフする充電用スイッチと、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に前記クランプスイッチと直列に接続され、前記第一インピーダンス素子のインピーダンスより高いインピーダンスを有する第二インピーダンス素子と、前記充電用スイッチをターンオンさせ、前記スイッチング素子の前記第一導通端子と前記第二導通端子とが同電位に到達する前に前記充電用スイッチをターンオフさせる充電制御信号と、前記充電用スイッチがターンオンされた後に前記クランプスイッチをターンオンさせるクランプ制御信号とを出力する制御回路とを備えるものである。
本態様によれば、充電用スイッチがターンオンされると、第一電位線とスイッチング素子の制御端子とが、第一インピーダンス素子を介して接続される。充電用スイッチがターンオンされた後にクランプスイッチがターンオンされると、第一電位線とスイッチング素子の制御端子とが、第二インピーダンス素子を介して接続される。第二インピーダンス素子は、第一インピーダンス素子のインピーダンスより高いインピーダンスを有する。
このため、クランプスイッチがターンオンされた場合でも、充電用スイッチがターンオンされている間は、第一電位線からスイッチング素子の制御端子に、第一インピーダンス素子を介して、第二インピーダンス素子を介する場合に比べて大きい電流が、第一電位により供給される。したがって、スイッチング素子は、比較的高速のスイッチングを開始する。
一方、スイッチング素子の第一導通端子と第二導通端子とが同電位に到達する前に充電用スイッチがターンオフされる。充電用スイッチがターンオフされると、クランプスイッチがターンオンされている場合には、第一電位線とスイッチング素子の制御端子とが、第二インピーダンス素子を介して接続される。
このため、第一電位線からスイッチング素子の制御端子に、第二インピーダンス素子を介して、第一インピーダンス素子を介する場合に比べて小さい電流が、第一電位により供給される。したがって、スイッチング素子の第一導通端子と第二導通端子とが同電位に到達する前、つまりスイッチング素子のスイッチングが終了する前に、スイッチング素子は、比較的低速のスイッチングに移行する。
このように、本態様によれば、スイッチング素子は、比較的高速のスイッチングを開始した後、スイッチング素子のスイッチングが終了する前に、比較的低速のスイッチングに移行する。したがって、比較的高速のスイッチングを開始することにより、スイッチング損失の過度の増大を防止することができる。また、スイッチング素子のスイッチングが終了する前に、比較的低速のスイッチングに移行することにより、スイッチング素子に直列に接続された回路素子の寄生キャパシタンスの両端に発生するリンギング電圧の過度の増大を抑制することができる。
上記第1態様において、例えば、前記第二電位線と前記第一インピーダンス素子の前記第一端子との間に接続された充電用ダイオードをさらに備え、前記充電用ダイオードのアノードは、前記第二電位線に接続され、前記充電用ダイオードのカソードは、前記第一インピーダンス素子の前記第一端子に接続され、前記第一インピーダンス素子は、コイルであり、前記第二インピーダンス素子は、抵抗素子であってもよい。
本態様によれば、充電用スイッチがターンオンされると、第一電位線とスイッチング素子の制御端子とが、コイルを介して接続される。したがって、充電用スイッチがターンオンされている間に、コイルにエネルギーが貯められる。充電用スイッチがターンオフされると、充電用ダイオードからコイルを介してスイッチング素子の制御端子に、コイルに貯められたエネルギーによる電流が供給される。したがって、制御回路が、クランプスイッチをターンオンさせる前に、充電用スイッチをターンオフさせても、スイッチング素子の制御端子への電流供給は、コイルに貯められたエネルギーにより継続する。
上記第1態様において、例えば、前記第一インピーダンス素子は、抵抗素子であり、前記第二インピーダンス素子は、前記第一インピーダンス素子より高い抵抗値を有する抵抗素子であってもよい。
本態様によれば、第一及び第二インピーダンス素子が抵抗素子である。このため、充電用スイッチのターンオフと同時又は充電用スイッチのターンオフまでに、クランプスイッチをターンオンさせることにより、スイッチング素子の制御端子への電流供給を続けることができる。
本開示の第2態様は、制御端子と第一導通端子と第二導通端子とを備え、前記制御端子と前記第一導通端子との間に容量を有するスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、第一電位を与える第一電位線と、前記第一電位よりも小さい第二電位を与える第二電位線と、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に前記クランプスイッチと直列に接続される抵抗素子と、前記第一電位よりも低く前記第二電位よりも高いツェナー電圧を有するツェナーダイオードと、前記ツェナーダイオードに直列に接続され、前記スイッチング素子が有する容量より大きい容量を有するコンデンサとを含み、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続される直列回路と、前記クランプスイッチをターンオンさせるクランプ制御信号を出力する制御回路とを備えるものである。
本態様によれば、クランプスイッチがターンオンされると、スイッチング素子の制御端子に、第一電位を与える第一電位線から、抵抗素子を介して電流が供給される。直列回路は、スイッチング素子の制御端子に接続されているため、直列回路にも、第一電位を与える第一電位線から、抵抗素子を介して電流が供給される。したがって、ツェナーダイオードの逆方向電圧は上昇する。
ツェナーダイオードの逆方向電圧がツェナー電圧を超えると、ツェナーダイオードがターンオンされる。ツェナーダイオードがターンオンされるまでは、スイッチング素子の制御端子の電位は、第一電位を与える第一電位線から、抵抗素子を介して供給される電流により、比較的急峻に上昇する。したがって、スイッチング素子は、比較的高速のスイッチングを開始する。
ツェナー電圧は、第一電位よりも低く第二電位よりも高い。このため、ツェナーダイオードは、スイッチング素子の制御端子が第一電位に到達する前にターンオンされる。ツェナーダイオードがターンオンされると、スイッチング素子の制御端子の電位は、抵抗素子の抵抗値とコンデンサの容量とによって決まる時定数で上昇する。コンデンサは、スイッチング素子が有する容量より大きい容量を有する。このため、スイッチング素子の制御端子の電位は、比較的緩やかに上昇する。したがって、スイッチング素子の制御端子が第一電位に到達する前、つまりスイッチング素子のスイッチングが終了する前に、スイッチング素子は、比較的低速のスイッチングに移行する。
このように、本態様によれば、スイッチング素子は、比較的高速のスイッチングを開始した後、スイッチング素子のスイッチングが終了する前に、比較的低速のスイッチングに移行する。したがって、比較的高速のスイッチングを開始することにより、スイッチング損失の過度の増大を防止することができる。また、スイッチング素子のスイッチングが終了する前に、比較的低速のスイッチングに移行することにより、スイッチング素子に直列に接続された回路素子の寄生キャパシタンスの両端に発生するリンギング電圧の過度の増大を抑制することができる。
上記第2態様において、例えば、前記ツェナーダイオードのカソードは、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続され、前記ツェナーダイオードのアノードは、前記コンデンサの一端に接続され、前記コンデンサの他端は、前記スイッチング素子の前記第一導通端子に接続されてもよい。
上記第2態様において、例えば、前記ツェナーダイオードのアノードは、前記第一電位線に接続され、前記ツェナーダイオードのカソードは、前記コンデンサの一端に接続され、前記コンデンサの他端は、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続されてもよい。
本開示の第3態様は、
制御端子と第一導通端子と第二導通端子とを備え、前記制御端子と前記第一導通端子との間に容量を有するスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、
第一電位を与える第一電位線と、
前記第一電位よりも小さい第二電位を与える第二電位線と、
前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、
前記クランプスイッチと前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続される、第一抵抗素子及びツェナーダイオードを含む直列回路と、
前記直列回路と並列に接続される第二抵抗素子と、
前記クランプスイッチをターンオンさせるクランプ制御信号を出力する制御回路と、
を備え、
前記ツェナーダイオードのカソードは、前記第一抵抗素子に接続され、
前記ツェナーダイオードのアノードは、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続され、
前記ツェナーダイオードは、前記第一電位よりも低く前記第二電位よりも高いツェナー電圧を有し、
前記第二抵抗素子は、前記第一抵抗素子より高い抵抗値を有するものである。
本態様によれば、クランプスイッチがターンオンされると、スイッチング素子の制御端子に、第一電位を与える第一電位線から、第二抵抗素子を通る経路で電流が供給される。クランプスイッチのターンオン直後は、スイッチング素子の制御端子の電位が低いため、ツェナーダイオードの両端電圧は、ツェナー電圧となる。その結果、スイッチング素子の制御端子に、第一電位を与える第一電位線から、第一抵抗素子及びツェナーダイオードを通る経路でも、電流が供給される。したがって、スイッチング素子は、比較的高速のスイッチングを開始する。
ツェナー電圧は、第一電位よりも低く第二電位よりも高い。このため、ツェナーダイオードは、スイッチング素子の制御端子が第一電位に到達する前に、ターンオフされる。ツェナーダイオードがターンオフされると、スイッチング素子の制御端子に、第一電位を与える第一電位線から、第二抵抗素子を通る経路でのみ、電流が供給される。第二抵抗素子は、第一抵抗素子より高い抵抗値を有する。このため、スイッチング素子の制御端子の電位は、ツェナーダイオードのターンオフ後は、ターンオン前に比べて緩やかに上昇する。したがって、スイッチング素子の制御端子が第一電位に到達する前、つまりスイッチング素子のスイッチングが終了する前に、スイッチング素子は、比較的低速のスイッチングに移行する。
このように、本態様によれば、スイッチング素子は、比較的高速のスイッチングを開始した後、スイッチング素子のスイッチングが終了する前に、比較的低速のスイッチングに移行する。したがって、比較的高速のスイッチングを開始することにより、スイッチング損失の過度の増大を防止することができる。また、スイッチング素子のスイッチングが終了する前に、比較的低速のスイッチングに移行することにより、スイッチング素子に直列に接続された回路素子の寄生キャパシタンスの両端に発生するリンギング電圧の過度の増大を抑制することができる。
上記第1態様又は第2態様又は第3態様において、例えば、前記第二電位線は、前記スイッチング素子の前記第一導通端子に接続されてもよい。
上記第1態様又は第2態様又は第3態様において、例えば、前記第二電位線と前記スイッチング素子の前記第一導通端子との間に、前記スイッチング素子の前記第一導通端子の電位を前記第二電位線の電位よりも高くする補助電源をさらに備えてもよい。
本態様によれば、スイッチング素子の制御端子と第二電位線とが通電したときに、スイッチング素子の制御端子と第一導通端子との間に負の電圧を印加することができる。その結果、スイッチング素子の誤点弧を防止することができる。
本開示の第4態様は、入力される電力を変換して出力する電力変換装置であって、前記スイッチング素子と、前記スイッチング素子を駆動する上記各態様のいずれかの駆動装置とを備えるものである。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、同じ構成要素については同じ符号が用いられている。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のゲート駆動装置50を概略的に示す図である。ゲート駆動装置50は、スイッチング素子Q11(図8)を駆動する。
ゲート駆動装置50は、ゲート駆動部60及び制御回路70を備える。ゲート駆動部60は、スイッチング素子Q11をターンオン及びターンオフする。制御回路70は、ゲート駆動部60の動作を制御する。
なお、スイッチング素子Q12(図8)にも、ゲート駆動部60と同様の駆動回路が接続されている。制御回路70は、スイッチング素子Q12に接続された駆動回路の動作も制御してもよい。ゲート駆動部60と制御回路70とは、同一の基板に実装されてもよいし、別々の基板に実装されてもよい。これらの点については、以降の実施形態でも同様である。
ゲート駆動部60は、電源E1、共振回路部61及びクランプ部62を有する。共振回路部61は、コイルL1及び回収部を有する。回収部は、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2、第1回収ダイオードD1、及び第2回収ダイオードD2(充電用ダイオードの一例)を含む。クランプ部62は、第1クランプスイッチSW3、第2クランプスイッチSW4、第1クランプダイオードD3、第2クランプダイオードD4、第1抵抗R1、及び第2抵抗R2を含む。
電源E1の正極には、第一基準電位線W1が接続されている。第一基準電位線W1は、第一基準電位Vccを与える。電源E1の負極には、第二基準電位線W2が接続されている。第二基準電位線W2は、第二基準電位Vssを与える。第一基準電位Vccは、第二基準電位Vssよりも高い。
共振回路部61のコイルL1の入力側端子Lt1(第一端子の一例)は、第1回収スイッチSW1を介して第一基準電位線W1と接続可能に構成されている。共振回路部61のコイルL1の入力側端子Lt1は、第2回収スイッチSW2を介して第二基準電位線W2と接続可能に構成されている。
コイルL1の出力側端子Lt2(第二端子の一例)は、スイッチング素子Q11のゲート(制御端子の一例)に接続されている。スイッチング素子Q11のソースは、第二基準電位線W2により電源E1の負極に接続されている。したがって、第二基準電位Vssと、スイッチング素子Q11のソースの電位とは共通する。このような接続により、コイルL1と、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の容量Cissとは、LC直列共振回路を構成する。
本実施形態において、第一基準電位Vccは第一電位の一例であり、第二基準電位Vssは第二電位の一例である。第一基準電位線W1は第一電位線の一例であり、第二基準電位線W2は第二電位線の一例である。また、本開示において、第一電位線は、第一電位を有する電流経路であればよく、配線でなくてもよい。同様に、第二電位線は、第二電位を有する電流経路であればよく、配線でなくてもよい。例えば、配線でない電流経路は、回路素子の端子同士を接続することによって形成される電流経路であってもよい。
電源E1は、スイッチング素子Q11のゲートに第一基準電位Vccまたは第二基準電位Vssを印加する。例えば、電源E1は、スイッチング素子Q11がオン状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位を第一基準電位Vccと同電位に固定する。また、電源E1は、スイッチング素子Q11がオフ状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位を第二基準電位Vssと同電位に固定する。換言すると、電源E1は、スイッチング素子Q11のスイッチングが完了した後の安定した状態において、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間に、固定電圧を印加する。
図1に示される例では、第二基準電位Vssとスイッチング素子Q11のソースとが同電位である。そのため、スイッチング素子Q11のゲート電位が第一基準電位Vccに固定されるとき、スイッチング素子Q11のソースを基準とするゲートの電圧は、Vcc−Vss、すなわち電源E1の電圧と等しい。スイッチング素子Q11のゲート電位が第二基準電位Vssに固定されるとき、スイッチング素子Q11のソースを基準とするゲートの電圧は、0Vである。
なお、本開示において、「AとBが同じ電位である」、「Aの電位がBの電位に到達する」とは、Aの電位とBの電位との間に、例えば配線抵抗、トランジスタのオン抵抗、及び電気回路素子の寄生抵抗に由来する微小な電位差が生じる場合をも含む。なお、電源E1は、ゲート駆動装置50の外部に配置されてもよい。
第1回収スイッチSW1は、第一基準電位線W1とコイルL1の入力側端子Lt1との間に設けられる。第2回収スイッチSW2は、第二基準電位線W2とコイルL1の入力側端子Lt1との間に設けられる。図1の例では、第1回収スイッチSW1は、Pチャネル型MOSFETであり、第2回収スイッチSW2は、Nチャネル型MOSFETである。Pチャネル型MOSFETには、ドレインからソースに向かう方向を順方向とする寄生ダイオードが形成される。Nチャネル型MOSFETには、ソースからドレインに向かう方向を順方向とする寄生ダイオードが形成される。なお、第1回収スイッチSW1及び第2回収スイッチSW2は、例えば、バイポーラトランジスタ、リレー等の他のスイッチング素子であってもよい。
第1回収ダイオードD1は、第一基準電位線W1とコイルL1の入力側端子Lt1との間に逆方向に設けられる。逆方向とは、第一基準電位Vcc側から第二基準電位Vss側に向かって電流が流れている状態で、電位が高い側にカソードが接続され、電位が低い側にアノードが接続される方向である。すなわち、第1回収ダイオードD1は、第一基準電位VccとコイルL1の入力側端子Lt1との間に逆バイアスで接続される。
第2回収ダイオードD2は、第二基準電位線W2とコイルL1の入力側端子Lt1との間に逆方向に設けられる。すなわち、第2回収ダイオードD2は、第二基準電位VssとコイルL1の入力側端子Lt1との間に逆バイアスで接続される。第1回収ダイオードD1のカソードは、第一基準電位線W1に接続されている。第2回収ダイオードD2のアノードは、第二基準電位線W2に接続されている。第1回収ダイオードD1及び第2回収ダイオードD2は、例えば、ショットキーバリアダイオードであってもよい。
第1クランプスイッチSW3及び第1抵抗R1の直列回路は、第一基準電位線W1とコイルL1の出力側端子Lt2との間に設けられる。第2クランプスイッチSW4及び第2抵抗R2の直列回路は、第二基準電位線W2とコイルL1の出力側端子Lt2との間に設けられる。図1の例では、第1クランプスイッチSW3は、Pチャネル型MOSFETであり、第2クランプスイッチSW4は、Nチャネル型MOSFETである。
第1クランプダイオードD3は、第一基準電位線W1とコイルL1の出力側端子Lt2との間に逆方向に設けられる。すなわち、第1クランプダイオードD3は、第一基準電位VccとコイルL1の出力側端子Lt2との間に逆バイアスで接続される。第2クランプダイオードD4は、第二基準電位線W2とコイルL1の出力側端子Lt2との間に逆方向に設けられる。すなわち、第2クランプダイオードD4は、第二基準電位VssとコイルL1の出力側端子Lt2との間に逆バイアスで接続される。第1クランプダイオードD3及び第2クランプダイオードD4は、例えば、ショットキーバリアダイオードであってもよい。
第1抵抗R1の抵抗値は、コイルL1のインピーダンスより第1抵抗R1のインピーダンスの方が大きくなるように、決められている。言い換えると、コイルL1のインダクタンスは、第1抵抗R1のインピーダンスよりコイルL1のインピーダンスの方が小さくなるように、決められている。ここで、コイルL1のインピーダンスは、容量Cissとの共振周波数fr=1/{2π√(L1×Ciss)}を用いて、2πfr×L1、すなわち√(L1/Ciss)で表される。
ゲート駆動部60は、コイルL1、4つのスイッチSW1〜SW4、及び4つのダイオードD1〜D4を含むブリッジ回路を有する。第1クランプスイッチSW3及び第1クランプダイオードD3は並列接続される。第1クランプスイッチSW3がオン状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位が第一基準電位Vccより高くなると、第1クランプダイオードD3を介してスイッチング素子Q11のゲートから電流が引き抜かれる。スイッチング素子Q11のゲート電位が第一基準電位Vccより低くなると、第1クランプスイッチSW3を介してスイッチング素子Q11のゲートに電流が供給される。このように、第1クランプスイッチSW3がオン状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位は第一基準電位Vccにクランプされる。
第2クランプスイッチSW4及び第2クランプダイオードD4は並列接続される。第2クランプスイッチSW4がオン状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位が第二基準電位Vssより高くなると、第2クランプスイッチSW4を介してスイッチング素子Q11のゲートから電流が引き抜かれる。スイッチング素子Q11のゲート電位が第二基準電位Vssより低くなると、第2クランプダイオードD4を介してスイッチング素子Q11のゲートに電流が供給される。このように、第2クランプスイッチSW4がオン状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位は第二基準電位Vssにクランプされる。
制御回路70は、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2、第1クランプスイッチSW3、及び第2クランプスイッチSW4を制御する。具体的には、制御回路70は、各スイッチSW1〜SW4の制御端子(図1ではゲート)にパルス信号を入力して、各スイッチSW1〜SW4をターンオン及びターンオフする。これにより、ゲート−ソース間電圧Vgs11が上昇し、ゲート電流Ig11が発生してスイッチング素子Q11のゲートに供給される。
スイッチング素子Q11をターンオンする際には、まず、制御回路70は、第1回収スイッチSW1をターンオンする。その結果、第一基準電位Vccを与える第一基準電位線W1から供給される電流により、スイッチング素子Q11のゲート(制御端子)とソース(基準端子)との間の容量Cissが充電され始め、コイルL1にエネルギーが蓄積される。その後、制御回路70は、第1回収スイッチSW1をターンオフする。すると、コイルL1、スイッチング素子Q11の容量Ciss及び第2回収ダイオードD2により閉ループが形成される。そして、コイルL1に蓄積されたエネルギーによって、スイッチング素子Q11の容量Cissがさらに充電される。
一方、スイッチング素子Q11をターンオフする際には、制御回路70は、まず、第2回収スイッチSW2をターンオンする。その結果、スイッチング素子Q11の容量Cissが放電され始め、放電されたエネルギーがコイルL1に蓄積される。その後、制御回路70は、第2回収スイッチSW2をターンオフする。すると、コイルL1とスイッチング素子Q11の容量Cissに残っているエネルギーが、第1回収ダイオードD1を介して電源E1に回生される。
なお、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2、第1クランプスイッチSW3、及び第2クランプスイッチSW4がターンオン又はターンオフされるタイミングは、理論値、又は実験もしくはシミュレーションにより得られた値を用いて、決定されてもよい。それらのタイミングの情報は、制御回路70内に予め記録されていてもよい。あるいは、例えば、ゲート駆動装置50が、ゲート−ソース間電圧Vgs11及びゲート電流Ig11の少なくとも一方を検出する検出部を備え、検出部によって検出された検出値が制御回路70にフィードバックされてもよい。この場合、制御回路70は、検出値を用いて、各スイッチのターンオン及びターンオフのタイミングを決定してもよい。
次に、比較例のゲート駆動部600(図9)と対比しつつ、ゲート駆動部60の動作が説明される。
図12は、比較例のゲート駆動部600のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。図2は、ゲート駆動部60のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。なお、図2では、図1に示される各素子の値として、第1抵抗R1の抵抗値は、12[Ω]とされ、コイルL1のインダクタンスL1は、L1=135[nH]とされ、第2抵抗R2の抵抗値は、1[Ω]とされている。図12では、第1抵抗R61の抵抗値は、5.1[Ω]とされている。
まず、図12において、時刻t61に第1クランプスイッチSW63がターンオンされると、第一基準電位Vccにより、第一基準電位線W61からスイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11が供給される。このゲート電流Ig11により、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11が徐々に増大する。
ゲート−ソース間電圧Vgs11が閾値を超えると、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース電流Ids11が上昇し始め、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds11が低下し始め、かつ、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds12が上昇し始める。リンギング電圧Vds(H)は、上述のように、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds12のピーク値である。
次に、図2において、ゲート駆動装置50の制御回路70は、リンギング電圧Vds(H)が図12の場合とほぼ同じ値になるように、ゲート駆動部60の制御を行った。時刻t1に、制御回路70は、第1回収スイッチSW1をターンオンする。すると、第一基準電位Vccを与える第一基準電位線W1から、スイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11が供給される。このゲート電流Ig11により、スイッチング素子Q11のゲートとソースとの間の容量Cissが充電され始め、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11が徐々に増大する。また、コイルL1にエネルギーが蓄積される。
スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds11が0になる時刻t2より前の時刻t3に、制御回路70は、第1回収スイッチSW1をターンオフする。すると、コイルL1、スイッチング素子Q11の容量Ciss、及び第2回収ダイオードD2により閉ループが形成される。その結果、コイルL1に蓄積されたエネルギーによって、スイッチング素子Q11にゲート電流Ig11が供給され続ける。このゲート電流Ig11により、スイッチング素子Q11のゲートとソースとの間の容量Cissがさらに充電され、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11がさらに増大する。以上の動作によって、スイッチング素子Q11のスイッチングは高速で開始される。
時刻t3より後の時刻t4に、制御回路70は、第1クランプスイッチSW3をターンオンする。上述のように、第1クランプスイッチSW3とスイッチング素子Q11のゲートとの間に接続されている第1抵抗R1の抵抗値は、第1抵抗R1のインピーダンスがコイルL1のインピーダンスより高い値になるように、決められている。このため、図2に示されるように、時刻t4以降のスイッチング素子Q11のゲート電流Ig11の電流値は、時刻t4までのゲート電流Ig11の電流値以下になる。その結果、第1回収スイッチSW1がオン状態のままに比べて、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds11は、緩やかに低下し、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds12は、緩やかに上昇する。これによって、スイッチング素子Q11のスイッチング速度は低くなる。
図2に示されるスイッチング損失Eonは、図12に示されるスイッチング損失Eonに比べて、24%低減している。したがって、ゲート駆動部60によれば、比較例のゲート駆動部600(図9)に比べて、リンギング電圧Vds(H)を増大させることなく、スイッチング損失Eonを低減することが可能になっている。
なお、図2では、制御回路70は、第1回収スイッチSW1をターンオフした後で、第1クランプスイッチSW3をターンオンしているが、第1実施形態は、これに限られない。例えば、制御回路70は、第1回収スイッチSW1をターンオフする前に、第1クランプスイッチSW3をターンオンしてもよい。
上述のように、コイルL1のインダクタンスは、コイルL1のインピーダンスが第1抵抗R1のインピーダンスより低い値になるように、決められている。このため、第1回収スイッチSW1と第1クランプスイッチSW3とが同時にオンになっている間は、第1回収スイッチSW1からコイルL1を通る経路RT1の電流によって、スイッチング素子Q11の動作が決まる。そして、第1回収スイッチSW1がターンオフされた後は、第1クランプスイッチSW3から第1抵抗R1を通る経路RT2の電流によって、スイッチング素子Q11の動作が決まる。その結果、第1回収スイッチSW1をターンオフする前に、第1クランプスイッチSW3をターンオンした場合でも、図2と同様の動作になる。
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態のゲート駆動装置50を概略的に示す図である。ゲート駆動装置50は、ゲート駆動部63及び制御回路70を備える。ゲート駆動部63は、スイッチング素子Q11をターンオン及びターンオフする。制御回路70は、ゲート駆動部63の動作を制御する。
ゲート駆動部63は、電源E1、スタート部64及びクランプ部62を有する。スタート部64は、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2、及び第3抵抗R3を含む。第3抵抗R3の入力側端子Rt31(第一端子の一例)は、第1回収スイッチSW1を介して第一基準電位線W1と接続可能に構成されている。第3抵抗R3の入力側端子Rt31は、第2回収スイッチSW2を介して第二基準電位線W2と接続可能に構成されている。第3抵抗R3の出力側端子Rt32(第二端子の一例)は、スイッチング素子Q11のゲート(制御端子の一例)に接続されている。
第3抵抗R3の抵抗値は、第1抵抗R1の抵抗値より低い値に決められている。言い換えると、第1抵抗R1の抵抗値は、第3抵抗R3の抵抗値より高い値に決められている。
次に、比較例のゲート駆動部600(図9)の動作(図12)と対比しつつ、ゲート駆動部63の動作が説明される。
図4は、ゲート駆動部63のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。なお、図4では、図3に示される各素子の値として、第1抵抗R1の抵抗値は、12[Ω]とされ、第2抵抗R2の抵抗値は、1[Ω]とされ、第3抵抗R3の抵抗値は、1.6[Ω]とされている。
図4において、ゲート駆動装置50の制御回路70は、リンギング電圧Vds(H)が図12の場合とほぼ同じ値になるように、ゲート駆動部63の制御を行った。時刻t11に、制御回路70は、第1回収スイッチSW1をターンオンする。すると、第一基準電位Vccを与える第一基準電位線W1から、第3抵抗R3を介して、スイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11が供給される。このゲート電流Ig11により、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の容量Cissが充電され始め、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11が徐々に増大する。上述のように、第3抵抗R3の抵抗値は、第1抵抗R1の抵抗値より低い値に決められている。このため、スイッチング素子Q11のスイッチングは、高速で開始される。
スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds11が0になる時刻t12より前の時刻t13に、制御回路70は、第1回収スイッチSW1をターンオフし、第1クランプスイッチSW3をターンオンする。
上述のように、第1クランプスイッチSW3とスイッチング素子Q11のゲートとの間に接続されている第1抵抗R1の抵抗値は、第3抵抗R3の抵抗値より高い値になるように、決められている。このため、図4に示されるように、時刻t13以降のスイッチング素子Q11のゲート電流Ig11の電流値は、時刻t13までのゲート電流Ig11の電流値より小さい値になる。その結果、第1回収スイッチSW1がオン状態のままに比べて、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds11は、緩やかに低下し、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds12は、緩やかに上昇する。このため、スイッチング素子Q11のスイッチング速度は低くなる。
図4に示されるスイッチング損失Eonは、図12に示されるスイッチング損失Eonに比べて、40%低減している。したがって、ゲート駆動部63によれば、比較例のゲート駆動部600(図9)に比べて、リンギング電圧Vds(H)を増大させることなく、スイッチング損失Eonを低減することが可能になっている。
なお、図4では、制御回路70は、第1回収スイッチSW1をターンオフするのと同時に、第1クランプスイッチSW3をターンオンしているが、第2実施形態は、これに限られない。例えば、制御回路70は、第1回収スイッチSW1をターンオフする前に、第1クランプスイッチSW3をターンオンしてもよい。
上述のように、第3抵抗R3の抵抗値は、第1抵抗R1の抵抗値より低い値になるように、決められている。このため、第1回収スイッチSW1と第1クランプスイッチSW3とが同時にオンになっている間は、第1回収スイッチSW1から第3抵抗R3を通る経路RT3の電流によって、スイッチング素子Q11の動作が決まる。そして、第1回収スイッチSW1がターンオフされた後は、第1クランプスイッチSW3から第1抵抗R1を通る経路RT4の電流によって、スイッチング素子Q11の動作が決まる。その結果、第1回収スイッチSW1をターンオフする前に、第1クランプスイッチSW3をターンオンした場合でも、図4と同様の動作になる。
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態のゲート駆動装置50を概略的に示す図である。ゲート駆動装置50は、ゲート駆動部65及び制御回路71を備える。ゲート駆動部65は、スイッチング素子Q11をターンオン及びターンオフする。制御回路71は、ゲート駆動部65の動作を制御する。
ゲート駆動部65は、クランプ部62、補助電源E2、ツェナーダイオードD5、及びコンデンサC1を含む。クランプ部62の第1抵抗R1の抵抗値は、比較的低い値に定められている。
補助電源E2は、第二基準電位線W2とスイッチング素子Q11のソースとの間に設けられている。補助電源E2の正極は、スイッチング素子Q11のソースに接続され、負極は、第二基準電位線W2に接続されている。このため、スイッチング素子Q11のソースには、第二基準電位線W2から第二基準電位Vssが供給されず、補助電源E2の電位が供給される。
このゲート駆動部65では、電源E1の第二基準電位Vssは、負電位に設定されている。図5の例において、電源E1の第一基準電位Vccが20V、第二基準電位Vssが−5V、補助電源E2が供給する電圧は5Vであってもよい。この場合、第3実施形態のゲート駆動装置50は、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11を−5Vとすることができる。
このように、第3実施形態のゲート駆動装置50は、スイッチング素子Q11をターンオフした後に、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11を負電圧に固定できる。したがって、第3実施形態のゲート駆動装置50は、例えば、スイッチング素子Q11がノーマリーオン型のパワーデバイス又は閾値の低いパワーデバイスである場合に、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11を負電圧とすることによって、誤点弧を防止することができる。
ツェナーダイオードD5とコンデンサC1との直列回路K1は、スイッチング素子Q11のゲートとソースとの間に接続されている。ツェナーダイオードD5のカソードは、スイッチング素子Q11のゲートに接続されている。ツェナーダイオードD5のアノードは、コンデンサC1を介して、スイッチング素子Q11のソースに接続されている。
ツェナーダイオードD5のツェナー電圧Vzは、第一基準電位Vccより低い値に設定されている。本実施形態では例えば、Vz=Vcc/2に設定されている。すなわち、ツェナーダイオードD5は、スイッチング素子Q11の過電圧保護のために設けられたものではない。
コンデンサC1の容量値は、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の容量Cissの容量値の2倍以上に設定されている。コンデンサC1の容量値が大きくなるほど、スイッチング素子Q11のスイッチング速度を低くする効果が大きくなる。しかし、スイッチング速度が低くなり過ぎると、スイッチング損失が大きくなる。一方、コンデンサC1の容量値がスイッチング素子Q11のゲート−ソース間の容量Cissの容量値と同じ程度であれば、時定数の変化が少な過ぎて、コンデンサC1の効果が発揮されない。
次に、比較例のゲート駆動部600(図9)の動作(図12)と対比しつつ、ゲート駆動部65の動作が説明される。
図6は、ゲート駆動部65のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。図6では、図5に示される各素子の値として、第1抵抗R1の抵抗値は、1.6[Ω]とされ、第2抵抗R2の抵抗値は、1[Ω]とされ、ツェナーダイオードD5のツェナー電圧Vzは、Vz=10[V]とされ、コンデンサC1の容量は、20[nF]とされている。図6では、第一基準電位Vccは、20[V]であり、第二基準電位Vssは、−5[V]であり、補助電源E2の電圧は、5[V]である。本実施形態では、例えば、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の容量Cissは、4[nF]程度である。図6では、リンギング電圧Vds(H)が図12の場合とほぼ同じ値になるように、ツェナー電圧Vz、コンデンサC1の容量の各値が決められている。
時刻t21に、制御回路71は、第1クランプスイッチSW3をターンオンする。すると、第一基準電位線W1の第一基準電位Vccが、第1抵抗R1を介して、スイッチング素子Q11のゲート及び直列回路K1に印加される。
第1抵抗R1の抵抗値が1.6[Ω]と低抵抗であるため、図6に示されるように、直列回路K1に発生する電圧Voと、スイッチング素子Q11のゲート電流Ig11とは、急峻に増大する。このため、スイッチング素子Q11のスイッチングは、高速で開始される。
ツェナーダイオードD5がターンオンされるまでは、第一基準電位線W1とスイッチング素子Q11のソースとの間で、第1抵抗R1及びスイッチング素子Q11のゲート−ソース間容量Cissを通る経路RT5で電流が流れる。
電圧Voが増大して、ツェナーダイオードD5の逆方向電圧がツェナー電圧Vzを超えると、ツェナーダイオードD5がターンオンされて、電圧Voの増大が一旦停止し、コンデンサC1に流れる電流Ic1が急峻に増大する。
ツェナーダイオードD5がターンオンされると、第一基準電位線W1とスイッチング素子Q11のソースとの間で、第1抵抗R1及びスイッチング素子Q11のゲート−ソース間容量Cissを通る経路RT5と、第1抵抗R1及びコンデンサC1を通る経路RT6との、2つの経路が形成される。上述のように、コンデンサC1の容量値は、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間容量Cissの容量値の2倍以上に設定されている。したがって、上記2つの経路のうち、第1抵抗R1及びコンデンサC1を通る経路RT6の方が、インピーダンスが低い。したがって、スイッチング素子Q11のゲートの電位は、第1抵抗R1及びコンデンサC1の時定数で上昇する。
ツェナーダイオードD5のターンオンにより増大が一旦停止した電圧Voは、コンデンサC1の電圧が、第1抵抗R1とコンデンサC1との時定数で増大することにより、緩やかに増大する。また、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11は、電圧Voの増大に伴って、緩やかに増大する。ここで、ゲート−ソース間電圧Vgs11と電圧Voとが一致していない箇所があるが、これは、ゲート駆動部65の出力とスイッチング素子Q11のゲートとの間に、寄生インダクタンス(図示省略)が存在するためである。その結果、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds11は、緩やかに低下し、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds12は、緩やかに上昇する。このため、スイッチング素子Q11のスイッチング速度は低くなる。
図6に示されるスイッチング損失Eonは、図12に示されるスイッチング損失Eonに比べて、24%低減している。したがって、ゲート駆動部65によれば、比較例のゲート駆動部600(図9)に比べて、リンギング電圧Vds(H)を増大させることなく、スイッチング損失Eonを低減することが可能になっている。
図5では、ツェナーダイオードD5とコンデンサC1との直列回路K1は、スイッチング素子Q11のゲートとソースとの間に接続されている。しかし、直列回路K1の接続位置は、図5に示される位置に限られない。
図7は、第3実施形態のゲート駆動装置50の図5と異なる構成例を概略的に示す図である。ゲート駆動装置50は、ゲート駆動部66及び制御回路71を備える。ゲート駆動部66は、スイッチング素子Q11をターンオン及びターンオフする。制御回路71は、ゲート駆動部66の動作を制御する。
ツェナーダイオードD5とコンデンサC1との直列回路K1は、第一基準電位線W1とスイッチング素子Q11のゲートとの間に接続されている。ツェナーダイオードD5のアノードは、第一基準電位線W1に接続されている。ツェナーダイオードD5のカソードは、コンデンサC1を介して、スイッチング素子Q11のゲートに接続されている。
図7において、制御回路71は、第1クランプスイッチSW3をターンオンする。すると、第一基準電位Vccを与える第一基準電位線W1から、第1抵抗R1を通ってスイッチング素子Q11のゲートに至る経路RT7に流れる電流によって、コンデンサC1が充電され、かつ、スイッチング素子Q11にゲート電流Ig11が供給される。第1抵抗R1の抵抗値は、図5の場合と同様に比較的低い値に定められている。このため、スイッチング素子Q11のスイッチングは高速で開始される。
充電されるコンデンサC1の電圧が上昇すると、ツェナーダイオードD5のカソード電位Vzcが上昇する。カソード電位Vzcが(Vcc+Vz)を超えるまでは、第一基準電位線W1から第1抵抗R1を通る経路RT7の電流により、スイッチング素子Q11にゲート電流Ig11が供給される。
カソード電位Vzcが(Vcc+Vz)を超えると、ツェナーダイオードD5がターンオンされる。ツェナーダイオードD5がターンオンされると、第一基準電位線W1から、第1抵抗R1及びコンデンサC1を通る経路RT8に電流が流れる。そして、スイッチング素子Q11のゲートの電位は、第1抵抗R1及びコンデンサC1の時定数で緩やかに上昇する。スイッチング素子Q11のゲートの電位の上昇に伴って、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11も、緩やかに上昇する。このため、スイッチング素子Q11のスイッチング速度が低くなる。
その結果、図7の回路によれば、図5の回路と同様に、リンギング電圧Vds(H)を増大させることなく、スイッチング損失Eonを低減することが可能になっている。
図14は、第3実施形態のゲート駆動装置50の更に別の例を概略的に示す図である。ゲート駆動装置50は、ゲート駆動部67及び制御回路71を備える。ゲート駆動部67は、スイッチング素子Q11をターンオン及びターンオフする。制御回路71は、ゲート駆動部67の動作を制御する。
ゲート駆動部67は、電源E1及びクランプ部68を有する。クランプ部68は、第1クランプスイッチSW3、第2クランプスイッチSW4、第1クランプダイオードD3、第2クランプダイオードD4、第1抵抗R1、第2抵抗R2、抵抗R4、及びツェナーダイオードD5を含む。
ツェナーダイオードD5は、第1抵抗R1と直列に接続されている。すなわち、第1クランプスイッチSW3、第1抵抗R1及びツェナーダイオードD5の直列回路が、第1クランプダイオードD3と並列に接続されている。ツェナーダイオードD5のカソードは、第1抵抗R1に接続され、ツェナーダイオードD5のアノードは、スイッチング素子Q11のゲートに接続されている。抵抗R4は、第1抵抗R1及びツェナーダイオードD5の直列回路と並列に接続されている。
第1抵抗R1の抵抗値は、抵抗R4の抵抗値より低い値に定められている。ツェナー電圧Vzは、第一基準電位Vcc未満、かつ、第二基準電位Vssより大きい値に定められている。
次に、比較例のゲート駆動部600(図9)の動作(図12)と対比しつつ、ゲート駆動部67の動作が説明される。
図15は、ゲート駆動部67のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。図15では、図14に示される各素子の値として、第1抵抗R1の抵抗値は0.5[Ω]とされ、第2抵抗R2の抵抗値は1[Ω]とされ、抵抗R4の抵抗値は7.5[Ω]とされ、ツェナーダイオードD5のツェナー電圧VzはVz=6.2[V]とされている。図15では、リンギング電圧Vds(H)が図12の場合とほぼ同じ値になるように、ツェナー電圧Vzの値が決められている。その他の電圧値等は図5と同様である。
時刻t31に、制御回路71は、第1クランプスイッチSW3をターンオンする。第1クランプスイッチSW3のターンオン直後は、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11が低い。このため、ツェナーダイオードD5の両端電圧は、ツェナー電圧Vzとなり、ツェナーダイオードD5はターンオンされる。したがって、低インピーダンスの第1抵抗R1を通る経路RT9と、高インピーダンスの抵抗R4を通る経路RT10との両方から、スイッチング素子Q11のゲートに電流が供給される。これによって、スイッチング素子Q11のスイッチングは、高速で開始される。
スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11が上昇すると、ツェナーダイオードD5の両端電圧は、ツェナー電圧Vz未満となる。このため、ツェナーダイオードD5は、ターンオフされる。したがって、高インピーダンスの抵抗R4を通る経路RT10のみから、スイッチング素子Q11のゲートに電流が供給される。これによって、スイッチング素子Q11のスイッチングは、低速に移行する。
図15に示されるスイッチング損失Eonは、図12に示されるスイッチング損失Eonに比べて、26%低減している。したがって、図14のゲート駆動部67によれば、比較例のゲート駆動部600(図9)に比べて、リンギング電圧Vds(H)を増大させることなく、スイッチング損失Eonを低減することが可能になっている。
さらに、図5のゲート駆動部65は、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間に、コンデンサC1を備える。このため、コンデンサC1の容量の分だけ、ゲート駆動部65の損失が増大する。これに対して、図14のゲート駆動部67は、コンデンサを備えていない。このため、ゲート駆動部67の損失が増大することはない。
(その他)
(1)上記第1、第2実施形態のゲート駆動装置50は、上記第3実施形態の補助電源E2を備えていない。代替的に、上記第1、第2実施形態のゲート駆動装置50も、上記第3実施形態と同様に、補助電源を備えるようにしてもよい。
(2)上記第1及び第2実施形態のゲート駆動装置50は、それぞれ、上記第3実施形態のツェナーダイオードD5とコンデンサC1との直列回路K1を、さらに備えるようにしてもよい。
上記第1及び第2実施形態では、第1回収スイッチSW1及び第1クランプスイッチSW3のオンオフ制御により、スイッチング素子Q11のゲートへの電流経路が切り替えられる。一方、上記第3実施形態では、電圧上昇によりツェナー電圧Vzを超えると、スイッチング素子Q11のゲートへの電流経路が切り替えられる。このように、上記第1及び第2実施形態と、上記第3実施形態とでは、電流経路切替のトリガが異なる。したがって、両方を備えている場合には、一方の制御がばらついても、確実に、電流経路を切り替えることができる。
(3)上記第1〜第3実施形態のゲート駆動装置50は、図8に示されるモータ駆動システム10のDC−DCコンバータ20に適用されているが、本開示は、これに限られない。代替的に、上記第1〜第3実施形態のゲート駆動装置50を、図8に示されるモータ駆動システム10のインバータ30に適用してもよい。
図13は、ゲート駆動装置50がモータ駆動システム10のインバータ30に適用された例を概略的に示す図である。
図13は、レグが3個並列接続された3相インバータの例を示している。図13に示すインバータ30は、U相のハイ側のスイッチング素子Q13、U相のロー側のスイッチング素子Q14、V相のハイ側のスイッチング素子Q15、V相のロー側のスイッチング素子Q16、W相のハイ側のスイッチング素子Q17、W相のロー側のスイッチング素子Q18、およびゲート駆動装置50を備える。6個のスイッチング素子Q13〜Q18は、3相ブリッジ接続される。ブリッジ接続された6個のスイッチング素子Q13〜Q18は、例えばMOSFET又はIGBTで構成される。スイッチング素子Q13〜Q18は、それぞれ、ゲート駆動装置50により駆動される。ゲート駆動装置50は、例えば、上述の第1実施形態又は第2実施形態又は第3実施形態のゲート駆動装置50が使用される。
3相ブリッジ接続された6個のスイッチング素子Q13〜Q18は、ゲート駆動装置50から供給される駆動信号に応じて、スイッチングされる。これにより、3相ブリッジ接続された6個のスイッチング素子Q13〜Q18は、DC−DCコンバータ20から与えられる直流電力を可変電圧および可変周波数の交流電力に変換して、交流電力をモータ40に供給する。
ゲート駆動装置50は、制御回路70又は制御回路71からのPWM制御信号を受けて、3相ブリッジ接続された6個のスイッチング素子Q13〜Q18のゲートに駆動信号を供給する。6個のスイッチング素子Q13〜Q18は、例えば、PWM制御によってターンオン及びターンオフされる。
(4)図8に示されるモータ駆動システム10と図13に示されるモータ駆動システム10とは、組み合わせて使用されてもよい。すなわち、モータ駆動システム10のうち、DC−DCコンバータ20とインバータ30とのそれぞれが、第1実施形態又は第2実施形態又は第3実施形態のゲート駆動装置50を備えてもよい。
(5)図8及び図13に示されるモータ駆動システム10では、入力電源E11の電圧値とインバータ30の電圧値とが同じである場合には、DC−DCコンバータ20が省略されてもよい。
(6)上記第1〜第3実施形態のゲート駆動装置50は、図8に示されるモータ駆動システム10に適用されているが、本開示は、これに限られない。代替的に、上記第1〜第3実施形態のゲート駆動装置50は、スイッチング素子Q12に代えてダイオードを備えるようなシステムにおいて、スイッチング素子Q11を駆動してもよい。このようなシステムにおいても、スイッチング素子Q11がターンオンされるときに、ダイオードの両端にリンギング電圧が発生する。このため、上記第1〜第3実施形態と同様の効果を得ることができる。