(本開示に至る経緯)
まず、本開示に係る一態様の着眼点について説明する。
DC−DCコンバータのスイッチング素子を制御する駆動装置が知られている。DC−DCコンバータにおいては、スイッチング素子のスイッチング損失を低減することが望まれている。スイッチング素子のスイッチング損失は、ドレイン−ソース間の電圧の応答速度を高速化させることで低減される。
しかしながら、応答速度を高速化させると、DC−DCコンバータ上の寄生インダクタンスと寄生キャパシタンスとからなる共振ループによりリンギングが発生し、スイッチング素子に過大な電圧が印加される虞がある。そのため、スイッチング素子として耐圧の高いスイッチング素子を採用する必要があり、回路の高コスト化を招いてしまう。また、リンギングに伴って過大な輻射ノイズが発生し、他の電気機器に悪影響を及ぼす虞がある。
また、スイッチング素子のゲートに入力される制御信号の電圧レベルは例えば5V程度であるのに対して、DC−DCコンバータが取り扱う電圧レベルは200V〜300Vと非常に高い。このため、制御信号をDC−DCコンバータにうまく伝播させるには、低電圧回路と高電圧回路との基準電位を電気的に絶縁する必要がある。そこで、スイッチング素子のゲートの前段又は駆動装置を構成する各スイッチのゲートの前段には、フォトカプラなどで構成されるアイソレータが設けられるのが一般的である。ここで、アイソレータには同相除去電圧と呼ばれる基準が設けられている。この基準を満たすためには、スイッチング素子の応答速度(つまり電圧変化率)を、同相除去電圧が定める電圧変化率以下にする必要があり、応答速度の高速化には制限がある。
したがって、スイッチング素子のスイッチング損失を一定の値以下にし、スイッチング素子の応答速度をアイソレータが規定する電圧変化率以下にし、且つ、リンギング電圧を一定の値以下にするスイッチング速度のうち最も高いスイッチング速度を設定することでスイッチング素子の駆動を最適化できる。
しかしながら、スイッチング損失、応答速度、及びリンギング電圧は、スイッチング素子に入出力される電流、電圧、スイッチング素子に流れる導通電流、及び、デバイス温度といった、駆動されるスイッチング素子の駆動状態によって変動する。よって、DC−DCコンバータを実際に設計する際には、ワーストの駆動状態を満足させることができるように、スイッチング速度が設定される。そのため、例えば入力電圧又は出力電圧が低い場合など、駆動状態がワーストでない場合には、設定されたスイッチング速度が最適な値でないことがある。この場合、スイッチング素子を効率良く駆動することができない。
これに対して、上記特許文献1では、このような課題について、十分に検討されていない。以上の考察により、本発明者は、以下の本開示の各態様を想到するに至った。
本開示の一態様は、
制御端子、第1導通端子、及び第2導通端子を備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、
前記スイッチング素子の導通電流、印加電圧、温度のうち少なくとも1つを直接的又は間接的に前記スイッチング素子の駆動状態として検出する検出部と、
前記スイッチング素子の前記制御端子に駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動部を制御して、前記検出された駆動状態に応じて前記スイッチング素子のスイッチング速度を変更する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記駆動状態の変動範囲が区分けされた複数の区分と、前記複数の区分の各々において所定の駆動条件を満たす前記スイッチング速度のうちで最も高いスイッチング速度を規定する制御パラメータとが対応付けられた設定情報を予め保持し、前記検出された駆動状態が含まれる前記区分に対応する前記制御パラメータを前記設定情報から抽出し、前記抽出した制御パラメータに基づいて前記駆動部を制御するものである。
本態様によれば、駆動状態に応じて最も高いスイッチング速度でスイッチング素子を駆動することができる。その結果、スイッチング速度が固定されている場合に比べて、スイッチング損失を低減することができる。また、設定情報を用いた簡易な制御構成で、駆動部を制御することができる。
上記態様において、
前記制御部は、前記検出された駆動状態が含まれる前記区分に対応する前記制御パラメータを前記設定情報から抽出する処理を、前記スイッチング素子のオンオフの1サイクル毎に実行してもよい。
本態様によれば、スイッチング素子のオンオフの1サイクル毎に、駆動状態に応じて最も高いスイッチング速度でスイッチング素子を駆動することができる。
上記態様において、
前記制御部は、前記抽出した制御パラメータに平均値が一致するように所定範囲でばらつかせた前記制御パラメータを用いて、前記駆動部を制御してもよい。
本態様によれば、抽出した制御パラメータに平均値が一致するように所定範囲でばらつかせた制御パラメータが用いられるため、スイッチング速度がばらつかされる。したがって、スイッチング素子におけるスイッチング時の電圧変化率が拡散される。このため、スイッチングにおける高周波成分の極小値及び極大値が分散して平均化される。その結果、スイッチング素子のスイッチングにより発生する輻射ノイズを低減することができる。
上記態様において、
前記駆動部は、
第1電位を与える第1電位線と、
前記スイッチング素子の前記第1導通端子に接続され、前記第1電位よりも小さい第2電位を与える第2電位線と、
第1端子と第2端子とを有し、前記第2端子が前記スイッチング素子の前記制御端子に接続されるコイルと、
前記第1電位線と前記コイルの前記第1端子との間に接続され、前記第1電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする充電用スイッチと、
前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、
アノードが前記第2電位線に接続され、カソードが前記コイルの前記第1端子に接続された充電用ダイオードと、
を含み、
前記制御パラメータは、前記充電用スイッチのオン時間である充電時間であり、
前記設定情報では、前記複数の区分と、前記複数の区分の各々において前記駆動条件を満たす前記スイッチング速度のうちで最も高いスイッチング速度を規定する前記充電時間とが対応付けられており、
前記制御部は、前記検出された駆動状態が含まれる前記区分に対応する前記充電時間を前記設定情報から抽出し、前記抽出した充電時間を前記充電用スイッチのオン時間に設定してもよい。
本態様では、充電用スイッチがターンオンされると、コイルを介して第1電位線からスイッチング素子の制御端子に電流が供給され、かつコイルにエネルギーが蓄積される。充電時間の経過後に充電用スイッチがターンオフされると、充電用ダイオード、コイル、スイッチング素子の制御端子、スイッチング素子の第1導通端子、及び第2電位線のループで、コイルに蓄積されたエネルギーによる電流がスイッチング素子の制御端子に供給される。充電時間、つまり充電用スイッチのオン時間が長くなるほど、コイルに蓄積されるエネルギーが増大する。したがって、充電用スイッチのオン時間が長くなるほど、スイッチング素子のスイッチング速度を高くすることができる。その結果、本態様によれば、駆動状態に応じて、スイッチング素子のスイッチング速度を好適に変更することができる。
上記態様において、
前記駆動部は、
第1電位を与える第1電位線と、
前記スイッチング素子の前記第1導通端子に接続され、前記第1電位よりも小さい第2電位を与える第2電位線と、
第1端子と第2端子とを有し、前記第2端子が前記スイッチング素子の前記制御端子に接続されるコイルと、
前記第1電位線と前記コイルの前記第1端子との間に接続され、前記第1電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする充電用スイッチと、
前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、
アノードが前記第2電位線に接続され、カソードが前記コイルの前記第1端子に接続された充電用ダイオードと、
を含み、
前記制御パラメータは、前記充電用スイッチのターンオフから前記クランプスイッチのターンオンまでの時間である放電時間であり、
前記設定情報では、前記複数の区分と、前記複数の区分の各々において前記駆動条件を満たす前記スイッチング速度のうちで最も高いスイッチング速度を規定する前記放電時間とが対応付けられており、
前記制御部は、前記検出された駆動状態が含まれる前記区分に対応する前記放電時間を前記設定情報から抽出し、前記充電用スイッチ及び前記クランプスイッチを前記抽出した放電時間で駆動させてもよい。
本態様では、充電用スイッチのターンオフから放電時間後にクランプスイッチがターンオンされると、第1電位線とスイッチング素子の制御端子との間の通電がオンにされて、スイッチング素子の制御端子が第1電位にクランプされる。
したがって、放電時間が短くなるほど、スイッチング素子の制御端子が第1電位にクランプされるまでの時間が短くなる。このため、放電時間が短くなるほど、スイッチング素子のスイッチング速度を高くすることができる。その結果、本態様によれば、駆動状態に応じて、スイッチング素子のスイッチング速度を好適に変更することができる。
上記態様において、
前記駆動部は、
第1電位を与える第1電位線と、
前記スイッチング素子の前記第1導通端子に接続され、前記第1電位よりも小さい第2電位を与える第2電位線と、
第1端子と第2端子とを有し、前記第2端子が前記スイッチング素子の前記制御端子に接続されるコイルと、
前記第1電位線と前記コイルの前記第1端子との間に接続され、前記第1電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする充電用スイッチと、
前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフする第1クランプスイッチと、
前記第2電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第2電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフする第2クランプスイッチと、
アノードが前記第2電位線に接続され、カソードが前記コイルの前記第1端子に接続された充電用ダイオードと、
を含み、
前記制御パラメータは、前記充電用スイッチ及び前記第2クランプスイッチの両方をオン状態にさせる時間であるプリチャージ時間であり、
前記設定情報では、前記複数の区分と、前記複数の区分の各々において前記駆動条件を満たす前記スイッチング速度のうちで最も高いスイッチング速度を規定する前記プリチャージ時間とが対応付けられており、
前記制御部は、前記検出された駆動状態が含まれる前記区分に対応する前記プリチャージ時間を前記設定情報から抽出し、前記抽出したプリチャージ時間の間、前記充電用スイッチ及び前記第2クランプスイッチの両方をオン状態にさせ、前記抽出したプリチャージ時間が経過すると、前記充電用スイッチ及び前記第2クランプスイッチの両方をターンオフさせてもよい。
本態様において、第2クランプスイッチがターンオンされた状態では、第2電位線とスイッチング素子の制御端子との間の通電がオンにされる。このため、スイッチング素子の制御端子は、第2電位にクランプされる。充電用スイッチがターンオンされた状態では、第1電位線とコイルとの間の通電がオンにされて、コイルにエネルギーが蓄積される。第2クランプスイッチ及び充電用スイッチの両方がオン状態にされている場合には、スイッチング素子の制御端子が第2電位にクランプされているため、充電用スイッチがターンオンされても、コイルを介して、第1電位線からスイッチング素子の制御端子に電流は供給されない。
プリチャージ時間が経過すると、充電用スイッチ及び第2クランプスイッチの両方がターンオフされる。第2クランプスイッチがターンオフされると、第2電位線とスイッチング素子の制御端子との間の通電がオフにされる。このため、スイッチング素子の制御端子は、第2電位にクランプされなくなる。一方、充電用スイッチがターンオフされると、充電用ダイオード、コイル、スイッチング素子の制御端子、スイッチング素子の第1導通端子、及び第2電位線のループで、コイルに蓄積されたエネルギーによる電流がスイッチング素子の制御端子に供給される。
したがって、プリチャージ時間が長くなるほど、コイルに蓄積されるエネルギーが大きくなる。このため、プリチャージ時間が長くなるほど、スイッチング素子のスイッチング速度を高くすることができる。その結果、本態様によれば、駆動状態に応じて、スイッチング素子のスイッチング速度を好適に変更することができる。
上記態様において、
前記駆動部は、
第1電位を与える第1電位線と、
前記スイッチング素子の前記第1導通端子に接続され、前記第1電位よりも小さい第2電位を与える第2電位線と、
第1端子と第2端子とを有し、前記第2端子が前記スイッチング素子の前記制御端子に接続されるコイルと、
前記第1電位線と前記コイルの前記第1端子との間に接続され、前記第1電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする充電用スイッチと、
前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、
アノードが前記第2電位線に接続され、カソードが前記コイルの前記第1端子に接続された充電用ダイオードと、
を含み、
前記制御パラメータは、前記充電用スイッチのオン時間である充電時間と、前記充電用スイッチのターンオフから前記クランプスイッチのターンオンまでの時間である放電時間とを含み、
前記設定情報では、前記複数の区分と、前記複数の区分の各々において前記駆動条件を満たす前記スイッチング速度のうちで最も高いスイッチング速度を規定する前記充電時間及び前記放電時間とが対応付けられており、
前記制御部は、前記検出された駆動状態が含まれる前記区分に対応する前記充電時間及び前記放電時間を前記設定情報から抽出し、前記抽出した充電時間を前記充電用スイッチのオン時間に設定し、かつ、前記充電用スイッチのターンオフから前記抽出した放電時間が経過すると、前記クランプスイッチをターンオンさせてもよい。
本態様では、充電用スイッチがターンオンされると、コイルを介して第1電位線からスイッチング素子の制御端子に電流が供給され、かつコイルにエネルギーが蓄積される。充電時間の経過後に充電用スイッチがターンオフされると、充電用ダイオード、コイル、スイッチング素子の制御端子、スイッチング素子の第1導通端子、及び第2電位線のループで、コイルに蓄積されたエネルギーによる電流がスイッチング素子の制御端子に供給される。充電時間、つまり充電用スイッチのオン時間が長くなるほど、コイルに蓄積されるエネルギーが増大する。したがって、充電用スイッチのオン時間が長くなるほど、スイッチング素子のスイッチング速度を高くすることができる。
また、充電用スイッチのオン時間が経過して充電用スイッチがターンオフされると、充電用スイッチのターンオフから放電時間後にクランプスイッチがターンオンされる。すると、第1電位線とスイッチング素子の制御端子との間の通電がオンにされて、スイッチング素子の制御端子が第1電位にクランプされる。したがって、放電時間が短くなるほど、スイッチング素子の制御端子が第1電位にクランプされるまでの時間が短くなる。このため、放電時間が短くなるほど、スイッチング素子のスイッチング速度を高くすることができる。
その結果、本態様によれば、充電時間及び放電時間を制御することにより、駆動状態に応じて、スイッチング素子のスイッチング速度を更にきめ細かく変更することができる。
上記態様において、
前記駆動部は、
第1電位を与える第1電位線と、
前記スイッチング素子の前記第1導通端子に接続され、前記第1電位よりも小さい第2電位を与える第2電位線と、
第1端子と第2端子とを有し、前記第2端子が前記スイッチング素子の前記制御端子に接続されるコイルと、
前記第1電位線と前記コイルの前記第1端子との間に接続され、前記第1電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする充電用スイッチと、
前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフする第1クランプスイッチと、
前記第2電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第2電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフする第2クランプスイッチと、
アノードが前記第2電位線に接続され、カソードが前記コイルの前記第1端子に接続された充電用ダイオードと、
を含み、
前記制御パラメータは、前記充電用スイッチ及び前記第2クランプスイッチの両方をオン状態にさせる時間であるプリチャージ時間と、前記充電用スイッチのターンオフから前記第1クランプスイッチのターンオンまでの時間である放電時間とを含み、
前記設定情報では、前記複数の区分と、前記複数の区分の各々において前記駆動条件を満たす前記スイッチング速度のうちで最も高いスイッチング速度を規定する前記プリチャージ時間及び前記放電時間とが対応付けられており、
前記制御部は、前記検出された駆動状態が含まれる前記区分に対応する前記プリチャージ時間及び前記放電時間を前記設定情報から抽出し、前記抽出したプリチャージ時間の間、前記充電用スイッチ及び前記第2クランプスイッチの両方をオン状態にさせ、前記抽出したプリチャージ時間が経過すると、前記充電用スイッチ及び前記第2クランプスイッチの両方をターンオフさせ、かつ、前記充電用スイッチのターンオフから前記抽出した放電時間が経過すると、前記第1クランプスイッチをターンオンさせてもよい。
本態様において、第2クランプスイッチがターンオンされた状態では、第2電位線とスイッチング素子の制御端子との間の通電がオンにされる。このため、スイッチング素子の制御端子は、第2電位にクランプされる。充電用スイッチがターンオンされた状態では、第1電位線とコイルとの間の通電がオンにされて、コイルにエネルギーが蓄積される。第2クランプスイッチ及び充電用スイッチの両方がオン状態にされている場合には、スイッチング素子の制御端子が第2電位にクランプされているため、充電用スイッチがターンオンされても、コイルを介して、第1電位線からスイッチング素子の制御端子に電流は供給されない。
プリチャージ時間が経過すると、充電用スイッチ及び第2クランプスイッチの両方がターンオフされる。第2クランプスイッチがターンオフされると、第2電位線とスイッチング素子の制御端子との間の通電がオフにされる。このため、スイッチング素子の制御端子は、第2電位にクランプされなくなる。一方、充電用スイッチがターンオフされると、充電用ダイオード、コイル、スイッチング素子の制御端子、スイッチング素子の第1導通端子、及び第2電位線のループで、コイルに蓄積されたエネルギーによる電流がスイッチング素子の制御端子に供給される。
したがって、プリチャージ時間が長くなるほど、コイルに蓄積されるエネルギーが大きくなる。このため、プリチャージ時間が長くなるほど、スイッチング素子のスイッチング速度を高くすることができる。
また、プリチャージ時間が経過して、充電用スイッチがターンオフされると、充電用スイッチのターンオフから放電時間後にクランプスイッチがターンオンされる。すると、第1電位線とスイッチング素子の制御端子との間の通電がオンにされて、スイッチング素子の制御端子が第1電位にクランプされる。したがって、放電時間が短くなるほど、スイッチング素子の制御端子が第1電位にクランプされるまでの時間が短くなる。このため、放電時間が短くなるほど、スイッチング素子のスイッチング速度を高くすることができる。
その結果、本態様によれば、プリチャージ時間及び放電時間を制御することにより、駆動状態に応じて、スイッチング素子のスイッチング速度を更にきめ細かく変更することができる。
上記態様において、
前記駆動部は、
第1電位を与える第1電位線と、
前記スイッチング素子の前記第1導通端子に接続され、前記第1電位よりも小さい第2電位を与える第2電位線と、
前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、
前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に、前記クランプスイッチと直列に接続された第1抵抗素子と、
第1端子と第2端子とを有し、前記第2端子が前記スイッチング素子の前記制御端子に接続され、前記第1抵抗素子より高い又は低い抵抗値を有する第2抵抗素子と、
前記第1電位線と前記第2抵抗素子の前記第1端子との間に接続され、前記第1電位線と前記第2抵抗素子との間の通電をオンオフする充電用スイッチと、
を含み、
前記制御パラメータは、前記充電用スイッチのオン時間である充電時間であり、
前記設定情報では、前記複数の区分と、前記複数の区分の各々において前記駆動条件を満たす前記スイッチング速度のうちで最も高いスイッチング速度を規定する前記充電時間とが対応付けられており、
前記制御部は、前記検出された駆動状態が含まれる前記区分に対応する前記充電時間を前記設定情報から抽出し、前記充電用スイッチをターンオンさせてから前記抽出した充電時間が経過すると、前記充電用スイッチをターンオフさせ、かつ、前記クランプスイッチをターンオンさせてもよい。
本態様では、充電用スイッチがターンオンされると、第2抵抗素子を介して第1電位線からスイッチング素子の制御端子に電流が供給される。充電用スイッチがターンオンされてから充電時間が経過すると、充電用スイッチがターンオフされ、かつ、クランプスイッチがターンオンされる。クランプスイッチがターンオンされると、第1抵抗素子を介して第1電位線からスイッチング素子の制御端子に電流が供給される。
したがって、第2抵抗素子の抵抗値が第1抵抗素子の抵抗値より低い場合には、充電用スイッチのオン時間が長くなるほど、スイッチング素子のスイッチング速度を高くすることができる。一方、第1抵抗素子の抵抗値が第2抵抗素子の抵抗値より低い場合には、充電用スイッチのオン時間が短くなるほど、低い抵抗値の第1抵抗素子を介する電流供給開始が早くなるため、スイッチング素子のスイッチング速度を高くすることができる。
その結果、本態様によれば、駆動状態に応じて、スイッチング素子のスイッチング速度を好適に変更することができる。
本開示の他の態様は、
制御端子を備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、
前記スイッチング素子の前記制御端子に駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動部を制御して、前記スイッチング素子の駆動状態に応じて前記スイッチング素子のスイッチング速度を変更する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記スイッチング速度を規定する制御パラメータをばらつかせ、前記ばらつかせた制御パラメータを用いて、前記駆動部を制御するものである。
本態様では、スイッチング速度を規定する制御パラメータをばらつかせ、ばらつかせた制御パラメータが用いられるため、スイッチング速度がばらつかされる。したがって、スイッチング素子におけるスイッチング時の電圧変化率が拡散される。このため、スイッチングにおける高周波成分の極小値及び極大値が分散して平均化される。その結果、本態様によれば、スイッチング素子のスイッチングにより発生する輻射ノイズを低減することができる。
本開示のさらに他の態様は、
制御端子、第1導通端子、及び第2導通端子を備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、
前記スイッチング素子の導通電流、印加電圧、温度のうち少なくとも1つを直接的又は間接的に前記スイッチング素子の駆動状態として検出する検出部と、
前記スイッチング素子の前記制御端子に駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動部を制御して、前記検出された駆動状態に応じて前記スイッチング素子のスイッチング速度を変更する制御部と、
を備え、
前記駆動部は、
第1電位を与える第1電位線と、
前記スイッチング素子の前記第1導通端子に接続され、前記第1電位よりも小さい第2電位を与える第2電位線と、
前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に接続され、前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフする第1のクランプスイッチと、
前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に、前記第1のクランプスイッチと直列に接続された第1の抵抗素子と、
前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に前記第1のクランプスイッチと並列に接続され、前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフする第2のクランプスイッチと、
前記第1電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間に、前記第2のクランプスイッチと直列に接続され、前記第1の抵抗素子と異なる抵抗値を有する第2の抵抗素子と、
を含み、
前記制御部は、前記駆動状態の変動範囲が区分けされた第1の区分と前記第1のクランプスイッチとが対応付けられ、かつ、前記駆動状態の変動範囲が区分けされた前記第1の区分と異なる第2の区分と前記第2のクランプスイッチとが対応付けられた設定情報を予め保持し、前記検出された駆動状態が含まれる区分に対応する前記第1のクランプスイッチ又は前記第2のクランプスイッチを前記設定情報から抽出し、前記抽出した前記第1のクランプスイッチ又は前記第2のクランプスイッチを用いるものである。
本態様では、第1のクランプスイッチがターンオンされると、第1の抵抗素子を介して、第1電位線からスイッチング素子の制御端子に電流が供給される。第2のクランプスイッチがターンオンされると、第2の抵抗素子を介して、第1電位線からスイッチング素子の制御端子に電流が供給される。第1の抵抗素子と第2の抵抗素子とは抵抗値が異なるため、第1のクランプスイッチを用いる場合と第2のクランプスイッチを用いる場合とで、スイッチング素子の制御端子に供給される電流値が異なる。したがって、本態様によれば、駆動状態に応じたスイッチング速度で、スイッチング素子を駆動することができる。その結果、スイッチング速度が固定されている場合に比べて、スイッチング損失を低減することができる。また、設定情報を用いた簡易な制御構成で、駆動部を制御することができる。
本開示のさらに他の態様は、入力される電力を変換して出力する電力変換装置であって、前記スイッチング素子と、前記スイッチング素子を駆動する上記各態様のいずれかの駆動装置とを備えるものである。
これらの包括的または具体的な態様は、電力変換装置、モータ駆動システム、車両、蓄電システム、制御回路または制御方法として実現されてもよく、それらの任意の組み合わせで実現されてもよい。
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、同じ構成要素については同じ符号が用いられている。
まず、本開示の実施形態の駆動装置50が適用されたモータ駆動システム10が説明される。
図1は、制御端子を備えるスイッチング素子を含むモータ駆動システム10を概略的に示す図である。モータ駆動システム10は、入力電源E11、DC−DCコンバータ20、インバータ30、及びモータ40を備える。
DC−DCコンバータ20は、リアクトルL11、入力用の平滑コンデンサC11、ロー側のスイッチング素子Q11、ハイ側のスイッチング素子Q12、出力用の平滑コンデンサC12、アイソレータ91,92、及び駆動装置50を備える。
まず、昇圧動作について説明する。駆動装置50がロー側のスイッチング素子Q11をオンオフ制御することにより、入力電源E11のエネルギーは、リアクトルL11を介して、平滑コンデンサC12に移動する。平滑コンデンサC12の電圧は、入力電源E11の電圧に対して昇圧されている。この昇圧された電圧は、インバータ30で交流電圧に変換され、その交流電圧でモータ40が駆動される。
次に、降圧動作について説明する。モータ40で発電された交流電力は、インバータ30で直流電力に変換され、直流電力が平滑コンデンサC12に蓄えられる。駆動装置50がハイ側のスイッチング素子Q12をオンオフ制御することにより、平滑コンデンサC12に蓄えられたエネルギーが、リアクトルL11を介して入力電源E11に移動する。入力電源E11の電圧は、平滑コンデンサC12の電圧に対して降圧されている。
駆動装置50は、駆動部60,60、検出部70、及び制御部80を備える。一方の駆動部60は、アイソレータ91を介して、スイッチング素子Q11のゲートに駆動信号を供給する。他方の駆動部60は、アイソレータ92を介して、スイッチング素子Q12のゲートに駆動信号を供給する。スイッチング素子Q11,Q12は、例えばPWM制御によって、ターンオン及びターンオフされる。アイソレータ91,92は、それぞれ、例えばフォトカプラを含む。アイソレータ91,92は、それぞれ、駆動部60からスイッチング素子Q11,Q12に制御信号を通しつつ、駆動部60とスイッチング素子Q11,Q12との間を電気的に絶縁する。
検出部70は、スイッチング素子Q11,Q12の駆動状態を検出する。検出部70は、電流センサ71、電圧センサ72、電流センサ73、電圧センサ74、電流センサ75、温度センサ76,77を含む。
電流センサ71は、入力電源E11からスイッチング素子Q11,Q12に入力される入力電流Iinを検出する。電流センサ71は、例えば平滑コンデンサC11と入力電源E11の正極及びリアクトルL11を接続する線との接続点K1と、リアクトルL11との間に設けられる。電圧センサ72は、入力電源E11からスイッチング素子Q11,Q12に入力される入力電圧Vinを検出する。電圧センサ72は、例えば平滑コンデンサC11と並列に接続される。
電流センサ73は、スイッチング素子Q11のソースとドレインとの間に流れるドレイン電流Ids(導通電流の一例)を検出する。電流センサ73は、例えば、正側の接続ラインW12と平滑コンデンサC12との接続点K2と、スイッチング素子Q12のドレインとの間に設けられる。なお、電流センサ73は、ドレイン電流Idsの平均値、ピーク値、又は実効値を検出してもよい。あるいは、制御部80は、電流センサ73により検出されたドレイン電流Idsの平均値、ピーク値、又は実効値を算出して、駆動部60の制御に用いてもよい。
電圧センサ74は、DC−DCコンバータ20から出力される出力電圧Voutを検出する。電圧センサ74は、例えば、平滑コンデンサC12と並列に設けられる。電流センサ75は、DC−DCコンバータ20から出力される出力電流Ioutを検出する。電流センサ75は、例えば、接続点K2とインバータ30との間に設けられる。
温度センサ76,77は、それぞれ、スイッチング素子Q11,Q12の接合温度Tjを検出する。温度センサ76,77は、それぞれ、例えばスイッチング素子Q11,Q12に密着して配置される。
制御部80は、検出部70により検出された駆動状態を、検出部70から取得する。制御部80は、取得した駆動状態に応じて駆動部60を制御して、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度を変更する。制御部80による駆動部60の制御は、後に詳述される。
スイッチング素子Q11,Q12としては、例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)又は絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の電圧制御型のスイッチング素子が用いられる。
スイッチング素子Q11,Q12は、制御端子と、第1導通端子と、第2導通端子とを備える。例えば、スイッチング素子Q11,Q12がMOSFETである場合、制御端子はゲートであり、第1導通端子及び第2導通端子の一方はソースであり、他方はドレインである。例えば、スイッチング素子Q11,Q12がIGBTである場合、制御端子はゲートであり、第1導通端子及び第2導通端子の一方はコレクタであり、他方はエミッタである。
また、第1導通端子及び第2導通端子の一方は、制御端子の電圧の基準となる基準端子となる。電圧制御型のスイッチング素子は、制御端子と基準端子との間に等価的に形成される容量を有する。
以下では、スイッチング素子Q11,Q12がMOSFETであり、制御端子がゲートであり、第1導通端子がソースであり、第2導通端子がドレインであり、ソースが基準端子であり、ゲートとソースとの間に容量Cissを有する例について説明する。但し、上述のように、スイッチング素子Q11,Q12としてIGBTを用いることもできる。
図1に示されるスイッチング素子Q11,Q12を駆動する駆動装置50では、スイッチング素子Q11,Q12におけるスイッチング損失を低減することが望まれている。図1に示されるように、DC−DCコンバータ20とインバータ30との負側の接続ラインW11及び正側の接続ラインW12には、それぞれ、寄生インダクタンスLp1,Lp2が発生する。また、スイッチング素子Q11,Q12のドレイン−ソース間には、それぞれ、寄生キャパシタンスCp1,Cp2が発生する。
スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度を高め、スイッチング素子Q11,Q12のドレイン−ソース間の電圧の応答速度を高くする(つまり電圧変化率を大きくする)と、スイッチング損失を低減させることができる。
しかしながら、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度を高くすると、以下のような問題が生じる。例えば、スイッチング素子Q11をターンオンさせる場合を考える。この場合には、スイッチング素子Q11がオンで、スイッチング素子Q12がオフになっている。したがって、スイッチング素子Q11、寄生インダクタンスLp1、インバータ30、寄生インダクタンスLp2、寄生キャパシタンスCp2の共振ループが形成される。
これにより、オフになっているスイッチング素子Q12の寄生キャパシタンスCp2の両端にリンギング電圧Vds(H).max(ドレイン−ソース間電圧Vds(H)のピーク値)が発生する。リンギング電圧Vds(H).maxが大きくなると、スイッチング素子Q11,Q12の耐圧を増大させる必要が生じ、スイッチング素子Q11,Q12の大型化及びコスト上昇を招く。
また、本開示のDC−DCコンバータ20は、アイソレータ91,92を備える。このため、スイッチング素子Q11,Q12のドレイン−ソース間の電圧変化率を、アイソレータ91,92の同相除去電圧が規定する電圧変化率以下にする必要がある。
したがって、リンギング電圧を所定値以下にするという駆動条件、及びドレイン−ソース間の電圧変化率をアイソレータ91,92の同相除去電圧が規定する電圧変化率以下にするという駆動条件を満足するスイッチング速度のうちで、スイッチング損失を最小にするスイッチング速度(つまり最も高いスイッチング速度)を設定することにより、スイッチング損失を低減できる。
しかしながら、リンギング電圧、ドレイン−ソース間の電圧変化率、及びスイッチング損失は、スイッチング素子Q11,Q12に入出力される電流及び電圧等の駆動状態によって変化する。
そこで、本開示の駆動装置50では、駆動状態の変動範囲(つまり最大値から最小値までの範囲)が区分けされた複数の区分の各々において、リンギング電圧の駆動条件、及びスイッチング素子Q11,Q12の電圧変化率の駆動条件を満足するスイッチング速度のうち、スイッチング損失を最小にするスイッチング速度を予め求めておく。所望のスイッチング速度は、駆動部60を制御する制御パラメータを変更することにより得られる。したがって、本開示の駆動装置50では、具体的には、複数の区分の各々において、リンギング電圧の駆動条件、及びスイッチング素子Q11,Q12の電圧変化率の駆動条件を満足する制御パラメータのうち、スイッチング損失を最小にする制御パラメータを予め求めておく。そして、複数の区分と、スイッチング損失を最小にする制御パラメータとが対応付けられたテーブル(後述)が予め作成される。
制御部80は、上記作成されたテーブルを予め保持する。制御部80は、検出部70から取得した駆動状態が含まれる区分に対応する制御パラメータを、保持しているテーブルから抽出する。制御部80は、1パルスごとに、抽出した制御パラメータにしたがって駆動部60を制御する。以下、駆動装置50の実施形態ごとに、制御部80による駆動部60の具体的な制御が説明される。
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態の駆動装置50を概略的に示す図である。図2では、説明を簡単にするために、アイソレータ91,92の図示が省略され、かつ、駆動部60の第2電位線W2がスイッチング素子Q11のソースに接続されている。しかし、実際のDC−DCコンバータ20では、図1に示されるように、駆動装置50の駆動部60とスイッチング素子Q11とは、アイソレータ91を介して接続され、駆動装置50の駆動部60とスイッチング素子Q12とは、アイソレータ92を介して接続されている。
スイッチング素子Q12に駆動信号を供給する駆動部60は、スイッチング素子Q11に駆動信号を供給する駆動部60と同一構成であるので、詳細な図示は省略されている。駆動部60と制御部80とは、同一の基板に実装されてもよいし、別々の基板に実装されてもよい。この点については、以降の実施形態でも同様である。
駆動部60は、電源E1、共振回路部61及びクランプ部62を有する。共振回路部61は、コイルL1及び回収部を有する。回収部は、スイッチSW1(充電用スイッチの一例)、スイッチSW2、ダイオードD1、及びダイオードD2(充電用ダイオードの一例)を含む。クランプ部62は、スイッチSW3(クランプスイッチの一例、第1クランプスイッチの一例)、スイッチSW4(第2クランプスイッチの一例)、ダイオードD3、ダイオードD4、抵抗R1、及び抵抗R2を含む。
電源E1の正極には、第1電位線W1が接続されている。第1電位線W1は、第1電位Vccを与える。電源E1の負極には、第2電位線W2が接続されている。第2電位線W2は、第2電位Vssを与える。第1電位Vccは、第2電位Vssよりも高い。
共振回路部61のコイルL1の入力側端子Lt1(第1端子の一例)は、スイッチSW1を介して第1電位線W1と接続されている。コイルL1の入力側端子Lt1は、スイッチSW2を介して第2電位線W2と接続されている。
コイルL1の出力側端子Lt2(第2端子の一例)は、スイッチング素子Q11のゲートに接続されている。スイッチング素子Q11のソースは、第2電位線W2により電源E1の負極に接続されている。したがって、第2電位Vssと、スイッチング素子Q11のソースの電位とは共通する。
一般に、スイッチング素子Q11のようなMOSFETは、制御端子(ゲート)と基準端子(ソース)との間に等価的に形成される容量を有する。このため、図2のような接続により、コイルL1と、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の容量Cissとは、LC直列共振回路を構成する。
本開示において、第1電位線W1は、第1電位Vccを有する電流経路であればよく、配線でなくてもよい。同様に、第2電位線W2は、第2電位Vssを有する電流経路であればよく、配線でなくてもよい。例えば、配線でない電流経路は、回路素子の端子同士を接続することによって形成される電流経路であってもよい。
電源E1は、スイッチング素子Q11のゲートに第1電位Vccまたは第2電位Vssを印加する。例えば、電源E1は、スイッチング素子Q11がオン状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位を第1電位Vccと同電位に固定する。また、電源E1は、スイッチング素子Q11がオフ状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位を第2電位Vssと同電位に固定する。換言すると、電源E1は、スイッチング素子Q11のスイッチングが完了した後の安定した状態において、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間に、固定電圧を印加する。
図2に示される例では、第2電位Vssとスイッチング素子Q11のソースとが同電位である。そのため、スイッチング素子Q11のゲート電位が第1電位Vccに固定されるとき、スイッチング素子Q11のソースを基準とするゲートの電圧(Vgs11)は、Vcc−Vss、すなわち電源E1の電圧と等しい。スイッチング素子Q11のゲート電位が第2電位Vssに固定されるとき、スイッチング素子Q11のソースを基準とするゲートの電圧(Vgs11)は、0Vである。
なお、本開示において、「AとBが同じ電位である」、「Aの電位がBの電位に到達する」とは、Aの電位とBの電位との間に、例えば配線抵抗、トランジスタのオン抵抗、及び電気回路素子の寄生抵抗に由来する微小な電位差が生じる場合をも含む。なお、電源E1は、駆動装置50の外部に配置されてもよい。
また、本開示において、「AとBとが接続される」とは、AとBとが直接接続される場合だけでなく、AとBとが他の回路素子Cを介して接続される場合をも含む。
スイッチSW1は、第1電位線W1とコイルL1の入力側端子Lt1との間に設けられる。スイッチSW2は、第2電位線W2とコイルL1の入力側端子Lt1との間に設けられる。図2の例では、スイッチSW1は、Pチャネル型MOSFETであり、スイッチSW2は、Nチャネル型MOSFETである。Pチャネル型MOSFETには、ドレインからソースに向かう方向を順方向とする寄生ダイオードが形成される。Nチャネル型MOSFETには、ソースからドレインに向かう方向を順方向とする寄生ダイオードが形成される。なお、スイッチSW1,SW2は、例えば、バイポーラトランジスタ、リレー等の他のスイッチング素子であってもよい。
ダイオードD1は、第1電位線W1とコイルL1の入力側端子Lt1との間に逆方向に設けられる。逆方向とは、第1電位Vcc側から第2電位Vss側に向かって電流が流れている状態で、電位が高い側にカソードが接続され、電位が低い側にアノードが接続される方向である。すなわち、ダイオードD1は、第1電位VccとコイルL1の入力側端子Lt1との間に逆バイアスで接続される。
ダイオードD2は、第2電位線W2とコイルL1の入力側端子Lt1との間に逆方向に設けられる。すなわち、ダイオードD2は、第2電位VssとコイルL1の入力側端子Lt1との間に逆バイアスで接続される。ダイオードD1のカソードは、第1電位線W1に接続されている。ダイオードD2のアノードは、第2電位線W2に接続されている。ダイオードD1及びダイオードD2は、例えば、ショットキーバリアダイオードであってもよい。
スイッチSW3及び抵抗R1の直列回路は、第1電位線W1とコイルL1の出力側端子Lt2との間に設けられる。スイッチSW4及び抵抗R2の直列回路は、第2電位線W2とコイルL1の出力側端子Lt2との間に設けられる。図2の例では、スイッチSW3は、Pチャネル型MOSFETであり、スイッチSW4は、Nチャネル型MOSFETである。
ダイオードD3は、第1電位線W1とコイルL1の出力側端子Lt2との間に逆方向に設けられる。すなわち、ダイオードD3は、第1電位VccとコイルL1の出力側端子Lt2との間に逆バイアスで接続される。ダイオードD4は、第2電位線W2とコイルL1の出力側端子Lt2との間に逆方向に設けられる。すなわち、ダイオードD4は、第2電位VssとコイルL1の出力側端子Lt2との間に逆バイアスで接続される。ダイオードD3及びダイオードD4は、例えば、ショットキーバリアダイオードであってもよい。
駆動部60は、コイルL1、4つのスイッチSW1〜SW4、及び4つのダイオードD1〜D4を含むブリッジ回路を有する。スイッチSW3及びダイオードD3は並列接続される。スイッチSW3がオン状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位が第1電位Vccより高くなると、ダイオードD3を介してスイッチング素子Q11のゲートから電流が引き抜かれる。スイッチング素子Q11のゲート電位が第1電位Vccより低くなると、スイッチSW3を介してスイッチング素子Q11のゲートに電流が供給される。このように、スイッチSW3がオン状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位は第1電位Vccにクランプされる。
スイッチSW4及びダイオードD4は並列接続される。スイッチSW4がオン状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位が第2電位Vssより高くなると、スイッチSW4を介してスイッチング素子Q11のゲートから電流が引き抜かれる。スイッチング素子Q11のゲート電位が第2電位Vssより低くなると、ダイオードD4を介してスイッチング素子Q11のゲートに電流が供給される。このように、スイッチSW4がオン状態のとき、スイッチング素子Q11のゲート電位は第2電位Vssにクランプされる。
制御部80は、スイッチSW1、スイッチSW2、スイッチSW3、及びスイッチSW4を制御する。具体的には、制御部80は、各スイッチSW1〜SW4の制御端子(図2ではゲート)にパルス信号を入力して、各スイッチSW1〜SW4をターンオン及びターンオフする。これにより、ゲート−ソース間電圧Vgs11が上昇し、ゲート電流Ig11が発生してスイッチング素子Q11のゲートに供給される。
スイッチング素子Q11をターンオンする際には、まず、制御部80は、スイッチSW1をターンオンする。その結果、第1電位Vccを与える第1電位線W1から供給される電流により、スイッチング素子Q11のゲート(制御端子)とソース(基準端子)との間の容量Cissが充電され始め、コイルL1にエネルギーが蓄積される。その後、制御部80は、スイッチSW1をターンオフする。すると、コイルL1、スイッチング素子Q11の容量Ciss及びダイオードD2により閉ループが形成される。そして、コイルL1に蓄積されたエネルギーが放電されて、スイッチング素子Q11の容量Cissがさらに充電される。その後、制御部80は、スイッチSW3をターンオンする。これによって、スイッチング素子Q11のゲート電位が第1電位Vccにクランプされる。
一方、スイッチング素子Q11をターンオフする際には、制御部80は、まず、スイッチSW2をターンオンする。その結果、スイッチング素子Q11の容量Cissが放電され始め、放電されたエネルギーがコイルL1に蓄積される。その後、制御部80は、スイッチSW2をターンオフする。すると、コイルL1とスイッチング素子Q11の容量Cissに残っているエネルギーが、ダイオードD1を介して電源E1に回生される。そして、制御部80は、スイッチSW4をターンオンする。これによって、スイッチング素子Q11のゲート電位が第2電位Vssにクランプされる。
次に、検出部70により検出された駆動状態に応じた、制御部80による駆動部60の制御が説明される。
図3は、駆動状態に応じて最適な制御パラメータを求めるために行った実験結果を示すグラフである。図3の例では、駆動状態として、電流センサ71(図1)により検出される入力電流Iin(以下、「電流ID」と称される)が採用されている。
図3では、図1に示されるDC−DCコンバータ20及び図2に示される第1実施形態の駆動装置50を用いた場合の実験結果が示されている。また、図3では、駆動部60を制御する制御パラメータとして、スイッチSW1がターンオンされてからターンオフされるまでのオン時間(以下、「充電時間」と称される)が採用されている。図2の駆動部60では、スイッチSW1の充電時間が長くなるほど、スイッチング素子Q11のスイッチング速度が高くなる。
図3において左列のグラフは、充電時間を65ns,70ns,75ns,80ns,85nsのそれぞれに設定した場合における実験結果を示している。
また、図3において右列のグラフは、充電時間を65nsに設定した場合と、充電時間を最適値に設定した場合との実験結果を示している。なお、図3の右列のグラフでは、各電流IDにおいて、最適値の実験結果が三角形のマークでプロットされ、65nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。ここで、最適値は、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds(H)のピーク値(Vds(H).max:リンギング電圧)を330V以下にすることができる充電時間であって、スイッチング損失Eonを最小にできる充電時間が採用される。
図3において、セクション(a)は、充電時間に応じた、リンギング電圧(Vds(H).max)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸はリンギング電圧を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(b)は、充電時間に応じた、スイッチング損失(Eon)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は損失を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(c)は、充電時間に応じた、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧V(L)の電圧変化率(dV(L)/dt)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(d)は、充電時間に応じた、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧V(H)の電圧変化率(dV(H)/dt)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(a)の左列に示すように、リンギング電圧(Vds(H).max)は、充電時間が増大するにつれて増大していることが分かる。そのため、セクション(a)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧が低い側から順に、65ns,70ns,75ns,80ns,85nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
ここでは、リンギング電圧(Vds(H).max)を330V以下にするという条件が課せられており、全ての電流IDにおいてリンギング電圧を330V以下にできる最大の充電時間は65nsであった。そのため、駆動状態に応じて充電時間を変動させない構成を採用する手法(以下、「比較例の手法」と記述する。)では、充電時間として65nsが設定される。これでは、電流IDに応じて最適な充電時間を設定できない。例えば、電流IDが20Aの場合、充電時間を80nsに設定してもリンギング電圧(Vds(H).max)は330V以下になるにも拘わらず、比較例の手法では充電時間が65nsに設定されるため、最適値が設定されていない。
セクション(b)の左列に示すように、スイッチング損失は、充電時間が減少するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(b)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、スイッチング損失が低い側から順に、85ns,80ns,75ns,70ns,65nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
そこで、本第1実施形態の手法(以下、「提案手法」と記述する。)では、セクション(a)の右列に示すように、各電流IDにおいて、リンギング電圧(Vds(H).max)を330V以下にできる充電時間のうち、スイッチング損失Eonを最小にできる充電時間(つまりセクション(b)から分かるように最大の充電時間)を設定する。
具体的には、電流IDが5[A]のときは充電時間が65nsに設定され、電流IDが10[A]のときは充電時間が70nsに設定され、電流IDが15[A]のときは充電時間が75nsに設定され、電流IDが20[A]のときは充電時間が80nsに設定されている。これにより、充電時間の最適化が図られている。
セクション(b)の右列では、セクション(a)で設定された充電時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対するスイッチング損失が三角形のマークでプロットされている。この場合、全ての電流IDにおいて、提案手法の方が比較例よりもスイッチング損失が低く、電流IDが20Aにおいてはスイッチング損失が18%低減されていた。
セクション(c)の左列に示すように、電圧変化率(dV(L)/dt)は、リンギング電圧(Vds(H).max)と同様、充電時間が増大するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(c)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧変化率(dV(L)/dt)は、低い側から順に、65ns,70ns,75ns,80ns,85nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(c)の右列では、セクション(a)で設定された充電時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対する電圧変化率(dV(L)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、全ての電流IDにおいて、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(L)/dt)が高くなっている。
セクション(d)の左列に示すように、電圧変化率(dV(H)/dt)は、リンギング電圧(Vds(H).max)と同様、充電時間が増大するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(d)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧変化率(dV(H)/dt)は、低い側から順に、65ns,70ns,75ns,80ns,85nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(d)の右列では、セクション(a)で設定された充電時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対する電圧変化率(dV(H)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、全ての電流IDにおいて、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(H)/dt)が高くなっている。
なお、セクション(c)の右列に示される提案手法の充電時間、及びセクション(d)の右列に示される提案手法の充電時間は、いずれも、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件を満足している。
図4は、電流IDが10[A]の場合に充電時間を変えたときの各スイッチング特性を示すグラフである。図4において、セクション(a)はリンギング電圧(Vds(H).max)と充電時間との関係を示したグラフであり、セクション(b)は電圧変化率(dV(L)/dt)と充電時間との関係を示したグラフであり、セクション(c)はスイッチング損失(Eon)と充電時間との関係を示したグラフであり、セクション(d)は電圧変化率(dV(H)/dt)と充電時間との関係を示したグラフである。
セクション(a)、(b)、(d)に示すように、リンギング電圧(Vds(H).max)、電圧変化率(dV(L)/dt)、及び電圧変化率(dV(H)/dt)は充電時間が増大するにつれて増大しているが、セクション(c)に示すようにスイッチング損失(Eon)は充電時間が増大するにつれて減少している。これは、リンギング電圧(Vds(H).max)、電圧変化率(dV(L)/dt)、及び電圧変化率(dV(H)/dt)は、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度が増大するにつれて増大する特性を持つが、スイッチング損失(Eon)は、スイッチング速度が増大するにつれて減少する特性を持つからである。
第1実施形態の駆動装置50では、図3のセクション(a)の三角形のマークで示されるように、各電流IDに対して、リンギング電圧(Vds(H).max)を330V以下にするという条件を満足する充電時間のうち、スイッチング損失Eonが最小になる充電時間(つまり最大の充電時間)を予め求めておき、テーブル(設定情報の一例)が作成される。制御部80は、作成されたテーブルを予め保持する。
図5は、第1実施形態の駆動装置50の制御部80が保持するテーブル81の一例を概略的に示す図である。
図3、図4の実験結果から、第1実施形態のテーブル81(充電テーブルの一例)では、電流IDが0<ID≦5[A]の範囲(区分の一例)では、充電時間TAは65nsに設定され、電流IDが5<ID≦10[A]の範囲(区分の一例)では、充電時間TAは70nsに設定され、電流IDが10<ID≦15[A]の範囲(区分の一例)では、充電時間TAは75nsに設定され、電流IDが15<ID≦20[A]の範囲(区分の一例)では、充電時間TAは80nsに設定されている。
制御部80は、検出部70の電流センサ71(図1)により検出された電流IDを取得する。制御部80は、取得した電流IDに対応する充電時間TAを、保持しているテーブル81から抽出する。制御部80は、スイッチSW1のオン時間が、抽出した充電時間TAに一致するように、駆動部60を制御する。
次に、図6、図7を用いて、電流IDが20[A]の場合において、第1実施形態の提案手法の波形と比較例の手法の波形とが比較される。
図6は、提案手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。図7は、比較例の手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。
図6、図7において、セクション(a)は、DC−DCコンバータ20のタイミングチャートであり、縦軸は電圧、電流、及び電力を示し、横軸は時間を示している。セクション(b)は、駆動装置50のタイミングチャートであり、縦軸は電圧及び電流を示し、横軸は時間を示している。
図3を用いて説明されたように、電流IDが20[A]の場合には、図6の提案手法では、充電時間TAは80[ns]に設定され、図7の比較例の手法では、充電時間TAは65[ns]に設定されている。
図6において、時刻tm1から時刻tm2までの充電時間TAにおいて、スイッチSW1がオンされている。これにより、第1電位線W1からスイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11が供給され、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の電圧Vgs11が徐々に増大し、容量Cissが充電される。また、コイルL1にエネルギーが蓄積される。
時刻tm2に、スイッチSW1がターンオフされると、コイルL1に蓄積されたエネルギーが放電されて、さらに、スイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11が供給され、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の電圧Vgs11が増大し、容量Cissが充電される。これにより、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電流Ids11が上昇し始め、且つ、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が低下し始める。
時刻tm3では、電圧Vgs11が閾値を超えている。これにより、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が、急速に低下し始め、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧Vds(H)が、上昇し始める。
時刻tm4では、電圧Vds(L)は完全に立ち下がり、電圧Vds(H)は完全に立ち上がり、電流Ids11は完全に立ち上がっている。
時刻tm4以降の電圧Vds(H)の波形は本来的には平坦に推移するべきであるが、セクション(a)に示すように、電圧Vds(H)の波形にはうねりが発生している。この波形のうねりがリンギングであり、その大きさを示すリンギング電圧Vds(H).maxは、電圧Vds(H)のピーク値で規定される。
Eon11は、スイッチング素子Q11のスイッチング損失を示し、時刻tm3の少し手前で上昇し始め、時刻tm3でピークに到達し、時刻tm4には立ち下がっている。
時刻tm5では、スイッチSW3がターンオンされている。これにより、スイッチング素子Q11の電圧Vgsが第1電位Vccでクランプされる。
図7のタイミングチャートにおける制御の概要は図6と同じあるが、図7では、充電時間TAが65[ns]と、図6の80[ns]よりも短く設定されている。
このため、図6では、スイッチング速度が図7よりも高くなっている。したがって、図6では、スイッチング損失Eon11の波形の幅が図7よりも狭くなっており、スイッチング損失Eon11が図7よりも減少している。
また、図6では、スイッチング速度の増大に伴い、図7に比べて、リンギング電圧Vds(H).maxが若干高くなっているが、330[V]の上限値は満たされている。
また、図6では、スイッチング速度の増大に伴い、図7に比べて、電圧Vds(H),Vds(L)の電圧変化率が高くなっているが、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件は満たされている。
(第2実施形態)
第2実施形態の駆動装置50の構成は、図2に示される第1実施形態の駆動装置50と同じである。以下、第1実施形態との相違点を中心に、第2実施形態が説明される。
図8を用いて、検出部70により検出された駆動状態に応じた、第2実施形態の制御部80による駆動部60の制御が説明される。
図8は、第2実施形態において、駆動状態に応じて最適な制御パラメータを求めるために行った実験結果を示すグラフである。図8の例では、駆動状態として、第1実施形態と同様に、電流センサ71(図1)により検出される入力電流Iin(以下、「電流ID」と称される)が採用されている。
図8では、図1に示されるDC−DCコンバータ20及び図2に示される駆動装置50を用いた場合の実験結果が示されている。また、図8では、駆動部60を制御する制御パラメータとして、スイッチSW1がターンオフされてからスイッチSW3がターンオンされるまでの時間が採用されている。図2を参照して説明されたように、スイッチSW1がターンオフされてからスイッチSW3がターンオンされるまでの時間に、コイルL1に蓄積されたエネルギーが放電される。そこで、スイッチSW1がターンオフされてからスイッチSW3がターンオンされるまでの時間は、以下、「放電時間」と称される。図2の駆動部60では、放電時間が短くなるほど、スイッチング素子Q11のスイッチング速度が高くなる。
図8において左列のグラフは、放電時間を50ns,55ns,60ns,65ns,70nsのそれぞれに設定した場合における実験結果を示している。
また、図8において右列のグラフは、放電時間を65nsに設定した場合と、放電時間を最適値に設定した場合との実験結果を示している。なお、図8の右列のグラフでは、各電流IDにおいて、最適値の実験結果が三角形のマークでプロットされ、65nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。ここで、最適値は、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds(H)のピーク値(Vds(H).max:リンギング電圧)を346V以下にすることができる放電時間であって、スイッチング損失Eonを最小にできる放電時間が採用される。
図8において、セクション(a)は、放電時間に応じた、リンギング電圧(Vds(H).max)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸はリンギング電圧を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(b)は、放電時間に応じた、スイッチング損失(Eon)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は損失を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(c)は、放電時間に応じた、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧V(L)の電圧変化率(dV(L)/dt)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(d)は、放電時間に応じた、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧V(H)の電圧変化率(dV(H)/dt)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(a)の左列に示すように、リンギング電圧(Vds(H).max)は、放電時間が減少するにつれて増大していることが分かる。そのため、セクション(a)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧が低い側から順に、70ns,65ns,60ns,55ns,50nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
ここでは、リンギング電圧(Vds(H).max)を346V以下にするという条件が課せられており、全ての電流IDにおいてリンギング電圧を346V以下にできる最小の放電時間は65nsであった。そのため、駆動状態に応じて放電時間を変動させない構成を採用する手法(以下、「比較例の手法」と記述する。)では、放電時間として65nsが設定される。これでは、電流IDに応じて最適な放電時間を設定できない。例えば、電流IDが20Aの場合、放電時間を50nsに設定してもリンギング電圧(Vds(H).max)は346V以下になるにも拘わらず、比較例の手法では放電時間が65nsに設定されるため、最適値が設定されていない。
セクション(b)の左列に示すように、スイッチング損失は、放電時間が増大するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(b)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、スイッチング損失が低い側から順に、50ns,55ns,60ns,65ns,70nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
そこで、本第2実施形態の手法(以下、「提案手法」と記述する。)では、セクション(a)の右列に示すように、各電流IDにおいて、リンギング電圧(Vds(H).max)を346V以下にできる放電時間のうち、スイッチング損失Eonを最小にできる放電時間(つまりセクション(b)から分かるように最小の放電時間)を設定する。
具体的には、電流IDが2.5[A]のときは放電時間が60nsに設定され、電流IDが10[A]のときは放電時間が65nsに設定され、電流IDが15[A]のときは放電時間が55nsに設定され、電流IDが20[A]のときは放電時間が50nsに設定されている。これにより、放電時間の最適化が図られている。
セクション(b)の右列では、セクション(a)で設定された放電時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対するスイッチング損失が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが10Aでは提案手法と比較例とでスイッチング損失が同じであり、電流IDが10A以外において、提案手法の方が比較例よりもスイッチング損失が低く、電流IDが20Aにおいてはスイッチング損失が26%低減されていた。
セクション(c)の左列に示すように、電圧変化率(dV(L)/dt)は、リンギング電圧(Vds(H).max)と同様、放電時間が減少するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(c)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧変化率(dV(L)/dt)は、低い側から順に、70ns,65ns,60ns,55ns,50nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(c)の右列では、セクション(a)で設定された放電時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対する電圧変化率(dV(L)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが15A以上では、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(L)/dt)が高くなっており、電流IDが10A以下では、ほぼ同じになっている。
セクション(d)の左列に示すように、電圧変化率(dV(H)/dt)は、リンギング電圧(Vds(H).max)と同様、放電時間が減少するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(d)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧変化率(dV(H)/dt)は、低い側から順に、70ns,65ns,60ns,55ns,50nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(d)の右列では、セクション(a)で設定された放電時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対する電圧変化率(dV(H)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが15A以上では、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(H)/dt)が高くなっており、電流IDが10A以下では、ほぼ同じになっている。
なお、セクション(c)の右列に示される提案手法の放電時間、及びセクション(d)の右列に示される提案手法の放電時間は、いずれも、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件を満足している。
図9は、電流IDが10[A]の場合に放電時間を変えたときの各スイッチング特性を示すグラフである。図9において、セクション(a)はリンギング電圧(Vds(H).max)と放電時間との関係を示したグラフであり、セクション(b)は電圧変化率(dV(L)/dt)と放電時間との関係を示したグラフであり、セクション(c)はスイッチング損失(Eon)と放電時間との関係を示したグラフであり、セクション(d)は電圧変化率(dV(H)/dt)と放電時間との関係を示したグラフである。
セクション(a)、(b)、(d)に示すように、リンギング電圧(Vds(H).max)、電圧変化率(dV(L)/dt)、及び電圧変化率(dV(H)/dt)は放電時間が減少するにつれて増大しているが、セクション(c)に示すようにスイッチング損失(Eon)は放電時間が減少するにつれて減少している。これは、リンギング電圧(Vds(H).max)、電圧変化率(dV(L)/dt)、及び電圧変化率(dV(H)/dt)は、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度が増大するにつれて増大する特性を持つが、スイッチング損失(Eon)は、スイッチング速度が増大するにつれて減少する特性を持つからである。
第2実施形態の駆動装置50では、図8のセクション(a)の三角形のマークで示されるように、各電流IDに対して、リンギング電圧(Vds(H).max)を346V以下にするという条件を満足する放電時間のうち、スイッチング損失Eonが最小になる放電時間(つまり最小の放電時間)を予め求めておき、テーブル(設定情報の一例)が作成される。制御部80は、作成されたテーブルを予め保持する。
図10は、第2実施形態の駆動装置50の制御部80が保持するテーブル82の一例を概略的に示す図である。
図8、図9の実験結果から、第2実施形態のテーブル82(放電テーブルの一例)では、電流IDが0<ID≦2.5[A]の範囲(区分の一例)では、放電時間TBは60nsに設定され、電流IDが2.5<ID≦10[A]の範囲(区分の一例)では、放電時間TBは65nsに設定され、電流IDが10<ID≦15[A]の範囲(区分の一例)では、放電時間TBは55nsに設定され、電流IDが15<ID≦20[A]の範囲(区分の一例)では、放電時間TBは50nsに設定されている。
制御部80は、検出部70の電流センサ71(図1)により検出された電流IDを取得する。制御部80は、取得した電流IDに対応する放電時間TBを、保持しているテーブル82から抽出する。制御部80は、スイッチSW1のターンオフからスイッチSW3のターンオンまでの放電時間が抽出した放電時間TBに一致するように、駆動部60を制御する。
次に、図11、図12を用いて、電流IDが20[A]の場合において、第2実施形態の提案手法の波形と比較例の手法の波形とが比較される。
図11は、第2実施形態の提案手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。図12は、比較例の手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。
図11、図12において、セクション(a)は、DC−DCコンバータ20のタイミングチャートであり、縦軸は電圧、電流、及び電力を示し、横軸は時間を示している。セクション(b)は、駆動装置50のタイミングチャートであり、縦軸は電圧及び電流を示し、横軸は時間を示している。
図8を用いて説明されたように、電流IDが20[A]の場合には、図11の提案手法では、放電時間TBは50[ns]に設定され、図12の比較例の手法では、放電時間TBは65[ns]に設定されている。
図11において、時刻tn1にスイッチSW1がターンオンされると、スイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11が供給され、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の電圧Vgs11が徐々に増大し、容量Cissが充電される。また、コイルL1にエネルギーが蓄積される。時刻tn2にスイッチSW1がターンオフされると、コイルL1に蓄積されたエネルギーが放電されて、さらに、スイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11が供給され、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の電圧Vgs11が増大し、容量Cissが充電される。そして、時刻tn3に、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電流Ids11が上昇し始め、且つ、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が低下し始める。
時刻tn4に、スイッチSW3がターンオンされて、放電時間TBが終了する。これにより、スイッチング素子Q11の電圧Vgsが第1電位Vccでクランプされる。時刻tn4の後の時刻tn5に、電圧Vgs11が閾値を超えている。これにより、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が、急速に低下し始め、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧Vds(H)が、上昇し始める。
時刻tn6では、電圧Vds(L)は完全に立ち下がり、電圧Vds(H)は完全に立ち上がり、電流Ids11は完全に立ち上がっている。
時刻tn6以降の電圧Vds(H)の波形は本来的には平坦に推移するべきであるが、セクション(a)に示すように、電圧Vds(H)の波形にはリンギング(うねり)が発生している。
Eon11は、スイッチング素子Q11のスイッチング損失を示し、時刻tn3の少し手前で上昇し始め、時刻tn5の少し後でピークに到達し、時刻tn6には立ち下がっている。
図12のタイミングチャートにおける制御の概要は図11と同じあるが、図12では、放電時間TBが65[ns]と、図11の50[ns]よりも長く設定されている。
このため、図11では、スイッチング速度が図12よりも高くなっている。したがって、図11では、スイッチング損失Eon11の波形の幅が図12よりも狭くなっており、スイッチング損失Eon11が図12よりも減少している。
また、図11では、スイッチング速度の増大に伴い、図12に比べて、リンギング電圧Vds(H).maxが若干高くなっているが、346[V]の上限値は、満たされている。
また、図11では、スイッチング速度の増大に伴い、図12に比べて、電圧Vds(H),Vds(L)の電圧変化率が高くなっているが、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件は満たされている。
(第3実施形態)
第3実施形態の駆動装置50の構成は、図2に示される第1実施形態の駆動装置50と同じである。以下、第1実施形態との相違点を中心に、第3実施形態が説明される。
図13を用いて、検出部70により検出された駆動状態に応じた、第3実施形態の制御部80による駆動部60の制御が説明される。
図13は、第3実施形態において、駆動状態に応じて最適な制御パラメータを求めるために行った実験結果を示すグラフである。図13の例では、駆動状態として、第1実施形態と同様に、電流センサ71(図1)により検出される入力電流Iin(以下、「電流ID」と称される)が採用されている。
図13では、図1に示されるDC−DCコンバータ20及び図2に示される駆動装置50を用いた場合の実験結果が示されている。また、図13では、駆動部60を制御する制御パラメータとして、スイッチSW1,SW4の両方がオンにされている時間が採用されている。図2を参照して説明されたように、スイッチSW4がオンの間は、スイッチング素子Q11のゲートは、第2電位Vssにクランプされる。このため、スイッチSW1がオンにされても、スイッチング素子Q11のゲートにはゲート電流が供給されない。しかし、スイッチSW1がオンにされると、コイルL1にエネルギーが蓄積される。そこで、スイッチSW1,SW4の両方がオンにされている時間は、以下、「プリチャージ時間」と称される。図2の駆動部60では、プリチャージ時間が長くなるほど、コイルL1に蓄積されるエネルギーが大きくなるため、スイッチング素子Q11のスイッチング速度が高くなる。
図13において左列のグラフは、プリチャージ時間を50ns,60ns,70ns,75ns,80ns,90nsのそれぞれに設定した場合における実験結果を示している。
また、図13において右列のグラフは、プリチャージ時間を60nsに設定した場合と、プリチャージ時間を最適値に設定した場合との実験結果を示している。なお、図13の右列のグラフでは、各電流IDにおいて、最適値の実験結果が三角形のマークでプロットされ、60nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。ここで、最適値は、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds(H)のピーク値(Vds(H).max:リンギング電圧)を333V以下にすることができるプリチャージ時間であって、スイッチング損失Eonを最小にできるプリチャージ時間が採用される。
図13において、セクション(a)は、プリチャージ時間に応じた、リンギング電圧(Vds(H).max)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸はリンギング電圧を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(b)は、プリチャージ時間に応じた、スイッチング損失(Eon)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は損失を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(c)は、プリチャージ時間に応じた、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧V(L)の電圧変化率(dV(L)/dt)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(d)は、プリチャージ時間に応じた、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧V(H)の電圧変化率(dV(H)/dt)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(a)の左列に示すように、リンギング電圧(Vds(H).max)は、プリチャージ時間が増大するにつれて増大していることが分かる。そのため、セクション(a)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧が低い側から順に、50ns,60ns,70ns,75ns,80ns,90nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
ここでは、リンギング電圧(Vds(H).max)を333V以下にするという条件が課せられており、全ての電流IDにおいてリンギング電圧を333V以下にできる最大のプリチャージ時間は60nsであった。そのため、駆動状態に応じてプリチャージ時間を変動させない構成を採用する手法(以下、「比較例の手法」と記述する。)では、プリチャージ時間として60nsが設定される。これでは、電流IDに応じて最適なプリチャージ時間を設定できない。例えば、電流IDが20Aの場合、プリチャージ時間を75nsに設定してもリンギング電圧(Vds(H).max)は333V以下になるにも拘わらず、比較例の手法ではプリチャージ時間が60nsに設定されるため、最適値が設定されていない。
セクション(b)の左列に示すように、スイッチング損失は、プリチャージ時間が減少するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(b)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、スイッチング損失が低い側から順に、90ns,80ns,75ns,70ns,60ns,50nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
そこで、本第3実施形態の手法(以下、「提案手法」と記述する。)では、セクション(a)の右列に示すように、各電流IDにおいて、リンギング電圧(Vds(H).max)を333V以下にできるプリチャージ時間のうち、スイッチング損失Eonを最小にできるプリチャージ時間(つまりセクション(b)から分かるように最大のプリチャージ時間)を設定する。
具体的には、電流IDが2.5[A]のときはプリチャージ時間が60nsに設定され、電流IDが10[A]のときはプリチャージ時間が70nsに設定され、電流IDが15,20[A]のときはプリチャージ時間が75nsに設定されている。これにより、プリチャージ時間の最適化が図られている。
セクション(b)の右列では、セクション(a)で設定されたプリチャージ時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対するスイッチング損失が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが2.5Aでは、提案手法と比較例とはスイッチング損失が同じであり、他の電流IDにおいて、提案手法の方が比較例よりもスイッチング損失が低く、電流IDが20Aにおいてはスイッチング損失が23%低減されていた。
セクション(c)の左列に示すように、電圧変化率(dV(L)/dt)は、リンギング電圧(Vds(H).max)と同様、プリチャージ時間が増大するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(c)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧変化率(dV(L)/dt)は、低い側から順に、50ns,60ns,70ns,75ns,80ns,90nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(c)の右列では、セクション(a)で設定されたプリチャージ時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対する電圧変化率(dV(L)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが10A以上では、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(L)/dt)が高くなっており、電流IDが2.5Aでは、同じになっている。
セクション(d)の左列に示すように、電圧変化率(dV(H)/dt)は、リンギング電圧(Vds(H).max)と同様、プリチャージ時間が増大するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(d)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧変化率(dV(H)/dt)は、低い側から順に、50ns,60ns,70ns,75ns,80ns,90nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(d)の右列では、セクション(a)で設定されたプリチャージ時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対する電圧変化率(dV(H)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが10A以上では、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(H)/dt)が高くなっており、電流IDが2.5Aでは、同じになっている。
なお、セクション(c)の右列に示される提案手法のプリチャージ時間、及びセクション(d)の右列に示される提案手法のプリチャージ時間は、いずれも、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件を満足している。
図14は、電流IDが10[A]の場合にプリチャージ時間を変えたときの各スイッチング特性を示すグラフである。図14において、セクション(a)はリンギング電圧(Vds(H).max)とプリチャージ時間との関係を示したグラフであり、セクション(b)は電圧変化率(dV(L)/dt)とプリチャージ時間との関係を示したグラフであり、セクション(c)はスイッチング損失(Eon)とプリチャージ時間との関係を示したグラフであり、セクション(d)は電圧変化率(dV(H)/dt)とプリチャージ時間との関係を示したグラフである。
セクション(a)、(b)、(d)に示すように、リンギング電圧(Vds(H).max)、電圧変化率(dV(L)/dt)、及び電圧変化率(dV(H)/dt)はプリチャージ時間が増大するにつれて増大しているが、セクション(c)に示すようにスイッチング損失(Eon)はプリチャージ時間が増大するにつれて減少している。これは、リンギング電圧(Vds(H).max)、電圧変化率(dV(L)/dt)、及び電圧変化率(dV(H)/dt)は、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度が増大するにつれて増大する特性を持つが、スイッチング損失(Eon)は、スイッチング速度が増大するにつれて減少する特性を持つからである。
第3実施形態の駆動装置50では、図13のセクション(a)の三角形のマークで示されるように、各電流IDに対して、リンギング電圧(Vds(H).max)を333V以下にするという条件を満足するプリチャージ時間のうち、スイッチング損失Eonが最小になるプリチャージ時間(つまり最大のプリチャージ時間)を予め求めておき、テーブル(設定情報の一例)が作成される。制御部80は、作成されたテーブルを予め保持する。
図15は、第3実施形態の駆動装置50の制御部80が保持するテーブル83の一例を概略的に示す図である。
図13、図14の実験結果から、第3実施形態のテーブル83(プリチャージテーブルの一例)では、電流IDが0<ID≦2.5[A]の範囲(区分の一例)では、プリチャージ時間TCは60nsに設定され、電流IDが2.5<ID≦10[A]の範囲(区分の一例)では、プリチャージ時間TCは70nsに設定され、電流IDが10<ID≦20[A]の範囲(区分の一例)では、プリチャージ時間TCは75nsに設定されている。
制御部80は、検出部70の電流センサ71(図1)により検出された電流IDを取得する。制御部80は、取得した電流IDに対応するプリチャージ時間TCを、保持しているテーブル83から抽出する。制御部80は、スイッチSW1,SW4の両方がオンにされるプリチャージ時間が、抽出したプリチャージ時間TCに一致するように、駆動部60を制御する。
次に、図16、図17を用いて、電流IDが20[A]の場合において、第3実施形態の提案手法の波形と比較例の手法の波形とが比較される。
図16は、第3実施形態の提案手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。図17は、比較例の手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。
図16、図17において、セクション(a)は、DC−DCコンバータ20のタイミングチャートであり、縦軸は電圧、電流、及び電力を示し、横軸は時間を示している。セクション(b)は、駆動装置50のタイミングチャートであり、縦軸は電圧及び電流を示し、横軸は時間を示している。
図13を用いて説明されたように、電流IDが20[A]の場合には、図16の提案手法では、プリチャージ時間TCは75[ns]に設定され、図17の比較例の手法では、プリチャージ時間TCは60[ns]に設定されている。
図16において、時刻tp1にスイッチSW1がターンオンされる。なお、時刻tp1の以前から、スイッチSW4はオンにされており、スイッチング素子Q11のゲートは第2電位Vssにクランプされている。このため、スイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11は供給されず、コイルL1にエネルギーが蓄積される。
時刻tp2に、スイッチSW1,SW4がターンオフされる。すると、コイルL1に蓄積されたエネルギーが放電されて、スイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11が供給され、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の電圧Vgs11が徐々に増大し、容量Cissが充電される。
そして、時刻tp3に、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電流Ids11が上昇し始め、且つ、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が低下し始める。
時刻tp4に、電圧Vgs11が閾値を超えている。これにより、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が、急速に低下し始め、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧Vds(H)が、上昇し始める。
時刻tp5では、電圧Vds(L)は完全に立ち下がり、電圧Vds(H)は完全に立ち上がり、電流Ids11は完全に立ち上がっている。
時刻tp5以降の電圧Vds(H)の波形は本来的には平坦に推移するべきであるが、セクション(a)に示すように、電圧Vds(H)の波形にはリンギング(うねり)が発生している。
Eon11は、スイッチング素子Q11のスイッチング損失を示し、ほぼ時刻tp3で上昇し始め、ほぼ時刻tp4でピークに到達し、時刻tp5には立ち下がっている。
図17のタイミングチャートにおける制御の概要は図16と同じあるが、図17では、プリチャージ時間TCが60[ns]と、図16の75[ns]よりも短く設定されている。
このため、図16では、スイッチング速度が図17よりも高くなっている。したがって、図16では、スイッチング損失Eon11の波形の幅が図17よりも狭くなっており、スイッチング損失Eon11が図17よりも減少している。
また、図16では、スイッチング速度の増大に伴い、図17に比べて、リンギング電圧Vds(H).maxが若干高くなっているが、333[V]の上限値は、満たされている。
また、図16では、スイッチング速度の増大に伴い、図17に比べて、電圧Vds(H),Vds(L)の電圧変化率が高くなっているが、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件は満たされている。
(第4実施形態)
図18は、第4実施形態の駆動装置50を概略的に示す図である。図18では、説明を簡単にするために、アイソレータ91,92の図示が省略され、かつ、駆動部60の第2電位線W2がスイッチング素子Q11のソースに接続されている。しかし、実際の駆動装置50では、図1に示されるように、駆動部60とスイッチング素子Q11とは、アイソレータ91を介して接続され、駆動部60とスイッチング素子Q12とは、アイソレータ92を介して接続されている。以下、第1実施形態との相違点を中心に、第4実施形態が説明される。
駆動部60は、電源E1、スイッチSW3a、スイッチSW3b、スイッチSW3c、スイッチSW4、ダイオードD3、ダイオードD4、抵抗R1a、抵抗R1b、抵抗R1c、及び抵抗R2を備える。
第1電位線W1とスイッチング素子Q11のゲートとの間に、スイッチSW3a及び抵抗R1aの直列回路と、スイッチSW3b及び抵抗R1bの直列回路と、スイッチSW3c及び抵抗R1cの直列回路とが、互いに並列に設けられる。抵抗R1a,R1b,R1cの抵抗値については、後述される。
スイッチSW4及び抵抗R2の直列回路は、第2電位線W2とスイッチング素子Q11のゲートとの間に設けられる。図18の例では、スイッチSW3a,3b,3cは、Pチャネル型MOSFETであり、スイッチSW4は、Nチャネル型MOSFETである。
ダイオードD3は、第1電位線W1とスイッチング素子Q11のゲートとの間に逆方向に設けられる。すなわち、ダイオードD3は、第1電位Vccとスイッチング素子Q11のゲートとの間に逆バイアスで接続される。ダイオードD4は、第2電位線W2とスイッチング素子Q11のゲートとの間に逆方向に設けられる。すなわち、ダイオードD4は、第2電位Vssとスイッチング素子Q11のゲートとの間に逆バイアスで接続される。ダイオードD3及びダイオードD4は、例えば、ショットキーバリアダイオードであってもよい。
次に、図19を用いて、検出部70により検出された駆動状態に応じた、第4実施形態の制御部80による駆動部60の制御が説明される。
図19は、第4実施形態において、駆動状態に応じて最適な制御パラメータを求めるために行った実験結果を示すグラフである。図19の例では、駆動状態として、第1実施形態と同様に、電流センサ71(図1)により検出される入力電流Iin(以下、「電流ID」と称される)が採用されている。
図19では、図1に示されるDC−DCコンバータ20及び図18に示される駆動装置50を用いた場合の実験結果が示されている。また、図19では、駆動部60を制御する制御パラメータとして、第1電位線W1とスイッチング素子Q11のゲートとの間に接続される抵抗(図18では抵抗R1a又は抵抗R1b又は抵抗R1c)の抵抗値Rgが採用されている。図18の駆動部60では、抵抗値Rgが低くなるほど、スイッチング素子Q11のスイッチング速度が高くなる。
図19において左列のグラフは、抵抗値Rgを1.2Ω,1.6Ω,2.2Ω,2.5Ω,3Ω,3.5Ωのそれぞれに設定した場合における実験結果を示している。
また、図19において右列のグラフは、抵抗値Rgを3.5Ωに設定した場合と、抵抗値Rgを最適値に設定した場合との実験結果を示している。なお、図19の右列のグラフでは、各電流IDにおいて、最適値の実験結果が三角形のマークでプロットされ、3.5Ωの実験結果がひし形のマークでプロットされている。ここで、最適値は、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds(H)のピーク値(Vds(H).max:リンギング電圧)を340V以下にすることができる抵抗値Rgであって、スイッチング損失Eonを最小にできる抵抗値Rgが採用される。
図19において、セクション(a)は、抵抗値Rgに応じた、リンギング電圧(Vds(H).max)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸はリンギング電圧を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(b)は、抵抗値Rgに応じた、スイッチング損失(Eon)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は損失を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(c)は、抵抗値Rgに応じた、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧V(L)の電圧変化率(dV(L)/dt)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(d)は、抵抗値Rgに応じた、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧V(H)の電圧変化率(dV(H)/dt)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(a)の左列に示すように、リンギング電圧(Vds(H).max)は、抵抗値Rgが減少するにつれて増大していることが分かる。そのため、セクション(a)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧が低い側から順に、3.5Ω,3Ω,2.5Ω,2.2Ω,1.6Ω,1.2Ωの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
ここでは、リンギング電圧(Vds(H).max)を340V以下にするという条件が課せられており、全ての電流IDにおいてリンギング電圧を340V以下にできる最小の抵抗値Rgは3.5Ωであった。そのため、駆動状態に応じて抵抗値Rgを変動させない構成を採用する手法(以下、「比較例の手法」と記述する。)では、抵抗値Rgとして3.5Ωが設定される。これでは、電流IDに応じて最適な抵抗値Rgを設定できない。例えば、電流IDが20Aの場合、抵抗値Rgを2.2Ωに設定してもリンギング電圧(Vds(H).max)は340V以下になるにも拘わらず、比較例の手法では抵抗値Rgが3.5Ωに設定されるため、最適値が設定されていない。
セクション(b)の左列に示すように、スイッチング損失は、抵抗値Rgが増大するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(b)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、スイッチング損失が低い側から順に、1.2Ω,1.6Ω,2.2Ω,2.5Ω,3Ω,3.5Ωの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
そこで、本第4実施形態の手法(以下、「提案手法」と記述する。)では、セクション(a)の右列に示すように、各電流IDにおいて、リンギング電圧(Vds(H).max)を340V以下にできる抵抗値Rgのうち、スイッチング損失Eonを最小にできる抵抗値Rg(つまりセクション(b)から分かるように最小の抵抗値Rg)を設定する。
具体的には、電流IDが2.5及び5[A]のときは抵抗値Rgが3.5Ωに設定され、電流IDが10[A]のときは抵抗値Rgが3Ωに設定され、電流IDが15[A]のときは抵抗値Rgが2.5Ωに設定され、電流IDが20[A]のときは抵抗値Rgが2.2Ωに設定されている。これにより、抵抗値Rgの最適化が図られている。
セクション(b)の右列では、セクション(a)で設定された抵抗値Rgの最適値を採用した場合の各電流IDに対するスイッチング損失が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが2.5A及び5Aでは、提案手法と比較例とはスイッチング損失が同じであり、他の電流IDにおいて、提案手法の方が比較例よりもスイッチング損失が低く、電流IDが20Aにおいてはスイッチング損失が26%低減されていた。
セクション(c)の左列に示すように、電圧変化率(dV(L)/dt)は、リンギング電圧(Vds(H).max)と同様、抵抗値Rgが減少するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(c)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧変化率(dV(L)/dt)は、低い側から順に、3.5Ω,3Ω,2.5Ω,2.2Ω,1.6Ω,1.2Ωの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(c)の右列では、セクション(a)で設定された抵抗値Rgの最適値を採用した場合の各電流IDに対する電圧変化率(dV(L)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが10A以上では、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(L)/dt)が高くなっており、電流IDが2.5A及び5Aでは、同じになっている。
セクション(d)の左列に示すように、電圧変化率(dV(H)/dt)は、リンギング電圧(Vds(H).max)と同様、抵抗値Rgが減少するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(d)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧変化率(dV(H)/dt)は、低い側から順に、3.5Ω,3Ω,2.5Ω,2.2Ω,1.6Ω,1.2Ωの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(d)の右列では、セクション(a)で設定された抵抗値Rgの最適値を採用した場合の各電流IDに対する電圧変化率(dV(H)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが10A以上では、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(H)/dt)が高くなっており、電流IDが2.5A及び5Aでは、同じになっている。
なお、セクション(c)の右列に示される提案手法の抵抗値Rg、及びセクション(d)の右列に示される提案手法の抵抗値Rgは、いずれも、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件を満足している。
図20は、電流IDが10[A]の場合に抵抗値Rgを変えたときの各スイッチング特性を示すグラフである。図20において、セクション(a)はリンギング電圧(Vds(H).max)と抵抗値Rgとの関係を示したグラフであり、セクション(b)は電圧変化率(dV(L)/dt)と抵抗値Rgとの関係を示したグラフであり、セクション(c)はスイッチング損失(Eon)と抵抗値Rgとの関係を示したグラフであり、セクション(d)は電圧変化率(dV(H)/dt)と抵抗値Rgとの関係を示したグラフである。
セクション(a)、(b)、(d)に示すように、リンギング電圧(Vds(H).max)、電圧変化率(dV(L)/dt)、及び電圧変化率(dV(H)/dt)は抵抗値Rgが減少するにつれて増大しているが、セクション(c)に示すようにスイッチング損失(Eon)は抵抗値Rgが減少するにつれて減少している。これは、リンギング電圧(Vds(H).max)、電圧変化率(dV(L)/dt)、及び電圧変化率(dV(H)/dt)は、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度が増大するにつれて増大する特性を持つが、スイッチング損失(Eon)は、スイッチング速度が増大するにつれて減少する特性を持つからである。
第4実施形態の駆動装置50では、図19のセクション(a)の三角形のマークで示されるように、各電流IDに対して、リンギング電圧(Vds(H).max)を340V以下にするという条件を満足する抵抗値Rgのうち、スイッチング損失Eonが最小になる抵抗値Rg(つまり最小の抵抗値Rg)を予め求めておき、テーブルが作成される。制御部80は、作成されたテーブルを予め保持する。
図21は、第4実施形態の駆動装置50の制御部80が保持するテーブル84の一例を概略的に示す図である。
図19、図20の実験結果による提案手法では、電流IDが2.5及び5[A]のときは抵抗値Rgが3.5Ωに設定され、電流IDが10[A]のときは抵抗値Rgが3Ωに設定され、電流IDが15[A]のときは抵抗値Rgが2.5Ωに設定され、電流IDが20[A]のときは抵抗値Rgが2.2Ωに設定されていた。
一方、第4実施形態の駆動装置50は、図18に示されるように、3種類の抵抗R1a,R1b,R1cを備えている。そこで、図19、図20の実験結果から、抵抗R1aとして、抵抗値が2.2Ωの抵抗が採用され、抵抗R1bとして、抵抗値が3Ωの抵抗が採用され、抵抗R1cとして、抵抗値が3.5Ωの抵抗が採用される。
そして、第4実施形態のテーブル84では、図21に示されるように、電流IDが0<ID≦5[A]では、使用するスイッチは、抵抗値が3.5Ωの抵抗R1cに対応するスイッチSW3cに設定され、電流IDが5<ID≦15[A]では、使用するスイッチは、抵抗値が3Ωの抵抗R1bに対応するスイッチSW3bに設定され、電流IDが15<ID≦20[A]では、使用するスイッチは、抵抗値が2.2Ωの抵抗R1aに対応するスイッチSW3aに設定されている。
すなわち、図19の実験結果では、セクション(a)に示されるように、電流IDが15[A]のときは抵抗値Rgが2.5Ωに設定されていたが、第4実施形態では、抵抗が3種類であるので、電流IDが15[A]のときも、抵抗値が3Ωの抵抗R1bが使用される。
制御部80は、検出部70の電流センサ71(図1)により検出された電流IDを取得する。制御部80は、取得した電流IDに対応するスイッチを、保持しているテーブル84から抽出する。制御部80は、抽出したスイッチを使用するように、駆動部60を制御する。
次に、図22、図23を用いて、電流IDが20[A]の場合において、第4実施形態の提案手法の波形と比較例の手法の波形とが比較される。
図22は、第4実施形態の提案手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。図23は、比較例の手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。
図22、図23において、セクション(a)は、DC−DCコンバータ20のタイミングチャートであり、縦軸は電圧、電流、及び電力を示し、横軸は時間を示している。セクション(b)は、駆動装置50のタイミングチャートであり、縦軸は電圧及び電流を示し、横軸は時間を示している。
図19を用いて説明されたように、電流IDが20[A]の場合には、図22の提案手法では、抵抗値Rgは2.2[Ω]に設定され、図23の比較例の手法では、抵抗値Rgは3.5[Ω]に設定されている。すなわち、図22では、スイッチSW3a(図18)が使用される。また、図23では、抵抗値が3.5Ωの抵抗が接続された1種類のスイッチSW3が使用される。
図22において、時刻tq1にスイッチSW3aがターンオンされる。すると、スイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11が供給され、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の電圧Vgs11が徐々に増大し、容量Cissが充電される。一方、スイッチSW3b,SW3cは、オフの状態が維持される。
そして、時刻tq2に、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電流Ids11が上昇し始め、且つ、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が低下し始める。
時刻tq3に、電圧Vgs11が閾値を超えている。これにより、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が、急速に低下し始め、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧Vds(H)が、上昇し始める。
時刻tq4では、電圧Vds(L)は完全に立ち下がり、電圧Vds(H)は完全に立ち上がり、電流Ids11は完全に立ち上がっている。
時刻tq4以降の電圧Vds(H)の波形は本来的には平坦に推移するべきであるが、セクション(a)に示すように、電圧Vds(H)の波形にはリンギング(うねり)が発生している。
Eon11は、スイッチング素子Q11のスイッチング損失を示し、ほぼ時刻tq2で上昇し始め、ほぼ時刻tq3でピークに到達し、時刻tq4には立ち下がっている。
図23のタイミングチャートにおける制御の概要は図22と同じあるが、図23では、抵抗値Rgが3.5[Ω]と、図22の2.2[Ω]よりも高く設定されている。
このため、図22では、スイッチング速度が図23よりも高くなっている。したがって、図22では、スイッチング損失Eon11の波形の幅が図23よりも狭くなっており、スイッチング損失Eon11が図22よりも減少している。
また、図22では、スイッチング速度の増大に伴い、図23に比べて、リンギング電圧Vds(H).maxが若干高くなっているが、340[V]の上限値は、満たされている。
また、図22では、スイッチング速度の増大に伴い、図23に比べて、電圧Vds(H),Vds(L)の電圧変化率が高くなっているが、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件は満たされている。
なお、図18の駆動部60は、スイッチSW3a及び抵抗3aの直列回路と、スイッチSW3b及び抵抗3bの直列回路と、スイッチSW3c及び抵抗3cの直列回路との、3個の直列回路を備えているが、第4実施形態は、これに限られない。本開示の第4実施形態は、2個の直列回路又は4個以上の直列回路を備えてもよい。直列回路の個数が増えると、抵抗値の種類を増やすことができるため、スイッチング速度をよりきめ細かく変更することができる。
(第5実施形態)
図24は、第5実施形態の駆動装置50を概略的に示す図である。図24では、説明を簡単にするために、アイソレータ91,92の図示が省略され、かつ、駆動部60の第2電位線W2がスイッチング素子Q11のソースに接続されている。しかし、実際の駆動装置50では、図1に示されるように、駆動部60とスイッチング素子Q11とは、アイソレータ91を介して接続され、駆動部60とスイッチング素子Q12とは、アイソレータ92を介して接続されている。以下、第1実施形態との相違点を中心に、第5実施形態が説明される。
駆動部60は、電源E1、スタート部63及びクランプ部62を有する。スタート部63は、スイッチSW1、スイッチSW2、及び抵抗R3を含む。抵抗R3の入力側端子Rt31は、スイッチSW1を介して第1電位線W1と接続可能に構成されている。抵抗R3の入力側端子Rt31は、スイッチSW2を介して第2電位線W2と接続可能に構成されている。抵抗R3の出力側端子Rt32は、スイッチング素子Q11のゲートに接続されている。
抵抗R3の抵抗値は、抵抗R1の抵抗値より高い値に決められている。言い換えると、抵抗R1の抵抗値は、抵抗R3の抵抗値より低い値に決められている。
次に、図25を用いて、検出部70により検出された駆動状態に応じた、第5実施形態の制御部80による駆動部60の制御が説明される。
図25は、第5実施形態において、駆動状態に応じて最適な制御パラメータを求めるために行った実験結果を示すグラフである。図25の例では、駆動状態として、第1実施形態と同様に、電流センサ71(図1)により検出される入力電流Iin(以下、「電流ID」と称される)が採用されている。
図25では、図1に示されるDC−DCコンバータ20及び図24に示される駆動装置50を用いた場合の実験結果が示されている。また、図25では、駆動部60を制御する制御パラメータとして、スイッチSW1がターンオンされてからターンオフされるまでのオン時間(以下、「充電時間」と称される)が採用されている。図24の駆動部60では、上述のように、抵抗R3の抵抗値は、抵抗R1の抵抗値より高い値に決められている。したがって、スイッチSW1の充電時間が短くなるほど(つまりスイッチSW3のターンオンが早くなるほど)、スイッチング素子Q11のスイッチング速度が高くなる。
図25において左列のグラフは、充電時間を20ns,30ns,40ns,45nsのそれぞれに設定した場合における実験結果を示している。
また、図25において右列のグラフは、充電時間を45nsに設定した場合と、充電時間を最適値に設定した場合との実験結果を示している。なお、図25の右列のグラフでは、各電流IDにおいて、最適値の実験結果が三角形のマークでプロットされ、45nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。ここで、最適値は、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds(H)のピーク値(Vds(H).max:リンギング電圧)を340V以下にすることができる充電時間であって、スイッチング損失Eonを最小にできる充電時間が採用される。
図25において、セクション(a)は、充電時間に応じた、リンギング電圧(Vds(H).max)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸はリンギング電圧を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(b)は、充電時間に応じた、スイッチング損失(Eon)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は損失を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(c)は、充電時間に応じた、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧V(L)の電圧変化率(dV(L)/dt)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(d)は、充電時間に応じた、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧V(H)の電圧変化率(dV(H)/dt)と電流IDとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電流IDを示している。
セクション(a)の左列に示すように、リンギング電圧(Vds(H).max)は、充電時間が減少するにつれて増大し、ピーク値を付けた後、減少していることが分かる。そのため、セクション(a)の左列のグラフでは、例えば電流IDが10Aにおいて、電圧が低い側から順に、45ns,40ns,20ns,30nsの実験結果がひし形のマークでプロットされ、例えば電流IDが15Aにおいて、電圧が低い側から順に、45ns,20ns,40ns,30nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
ここでは、リンギング電圧(Vds(H).max)を340V以下にするという条件が課せられており、全ての電流IDにおいてリンギング電圧を340V以下にできる最小の充電時間は45nsであった。そのため、駆動状態に応じて充電時間を変動させない構成を採用する手法(以下、「比較例の手法」と記述する。)では、充電時間として45nsが設定される。これでは、電流IDに応じて最適な充電時間を設定できない。例えば、電流IDが20Aの場合、充電時間を20nsに設定してもリンギング電圧(Vds(H).max)は340V以下になるにも拘わらず、比較例の手法では充電時間が45nsに設定されるため、最適値が設定されていない。
セクション(b)の左列に示すように、スイッチング損失は、充電時間が増大するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(b)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、スイッチング損失が低い側から順に、20ns,30ns,40ns,45nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
そこで、本第5実施形態の手法(以下、「提案手法」と記述する。)では、セクション(a)の右列に示すように、各電流IDにおいて、リンギング電圧(Vds(H).max)を340V以下にできる充電時間のうち、スイッチング損失Eonを最小にできる充電時間(つまりセクション(b)から分かるように最小の充電時間)を設定する。
具体的には、電流IDが2.5[A]のときは充電時間が40nsに設定され、電流IDが10[A]、15[A]のときは充電時間が45nsに設定され、電流IDが20[A]のときは充電時間が20nsに設定されている。これにより、充電時間の最適化が図られている。
セクション(b)の右列では、セクション(a)で設定された充電時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対するスイッチング損失が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが10A,15Aにおいて、提案手法と比較例とでスイッチング損失が同じであり、電流IDが2.5A,20Aにおいて、提案手法の方が比較例よりもスイッチング損失が低く、電流IDが20Aにおいてはスイッチング損失が38%低減されていた。
セクション(c)の左列に示すように、電圧変化率(dV(L)/dt)は、リンギング電圧(Vds(H).max)と同様、充電時間が減少するにつれて増大し、ピーク値を付けた後、減少していることが分かる。そのため、セクション(c)の左列のグラフでは、例えば電流IDが10Aにおいて、電圧変化率(dV(L)/dt)は、低い側から順に、45ns,40ns,20ns,30nsの実験結果がひし形のマークでプロットされ、例えば電流IDが15Aにおいて、電圧変化率(dV(L)/dt)は、低い側から順に、45ns,20ns,40ns,30nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(c)の右列では、セクション(a)で設定された充電時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対する電圧変化率(dV(L)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが10A,15Aにおいて、提案手法と比較例とで電圧変化率(dV(L)/dt)が同じであり、電流IDが2.5A,20Aにおいて、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(L)/dt)が高くなっている。
セクション(d)の左列に示すように、電圧変化率(dV(H)/dt)は、充電時間が減少するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(d)の左列のグラフでは、各電流IDにおいて、電圧変化率(dV(H)/dt)は、低い側から順に、45ns,40ns,30ns,20nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(d)の右列では、セクション(a)で設定された充電時間の最適値を採用した場合の各電流IDに対する電圧変化率(dV(H)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、電流IDが10A,15Aでは、提案手法と比較例とで電圧変化率(dV(H)/dt)が同じであり、電流IDが2.5A,20Aにおいて、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(H)/dt)が高くなっている。
なお、セクション(c)の右列に示される提案手法の充電時間、及びセクション(d)の右列に示される提案手法の充電時間は、いずれも、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件を満足している。
図26は、電流IDが10[A]の場合に充電時間を変えたときの各スイッチング特性を示すグラフである。図26において、セクション(a)はリンギング電圧(Vds(H).max)と充電時間との関係を示したグラフであり、セクション(b)は電圧変化率(dV(L)/dt)と充電時間との関係を示したグラフであり、セクション(c)はスイッチング損失(Eon)と充電時間との関係を示したグラフであり、セクション(d)は電圧変化率(dV(H)/dt)と充電時間との関係を示したグラフである。
セクション(a)、(b)に示すように、リンギング電圧(Vds(H).max)、及び電圧変化率(dV(L)/dt)は充電時間が減少するにつれて増大し、ピーク値を付けた後、減少している。
また、セクション(d)に示すように、電圧変化率(dV(H)/dt)は充電時間が減少するにつれて増大しているが、セクション(c)に示すようにスイッチング損失(Eon)は充電時間が減少するにつれて減少している。これは、電圧変化率(dV(H)/dt)は、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング速度が増大するにつれて増大する特性を持つが、スイッチング損失(Eon)は、スイッチング速度が増大するにつれて減少する特性を持つからである。
第5実施形態の駆動装置50では、図25のセクション(a)の三角形のマークで示されるように、各電流IDに対して、リンギング電圧(Vds(H).max)を340V以下にするという条件を満足する充電時間のうち、スイッチング損失Eonが最小になる充電時間(つまり最小の充電時間)を予め求めておき、テーブルが作成される。制御部80は、作成されたテーブルを予め保持する。
図27は、第5実施形態の駆動装置50の制御部80が保持するテーブル85の一例を概略的に示す図である。
図25、図26の実験結果から、第5実施形態のテーブル85では、電流IDが0<ID≦2.5[A]では、充電時間TDは40nsに設定され、電流IDが2.5<ID≦15[A]では、充電時間TDは45nsに設定され、電流IDが15<ID≦20[A]では、充電時間TDは20nsに設定されている。
制御部80は、検出部70の電流センサ71(図1)により検出された電流IDを取得する。制御部80は、取得した電流IDに対応する充電時間TDを、保持しているテーブル85から抽出する。制御部80は、スイッチSW1のオン時間が抽出した充電時間TDに一致するように、駆動部60を制御する。
次に、図28、図29を用いて、電流IDが20[A]の場合において、第5実施形態の提案手法の波形と比較例の手法の波形とが比較される。
図28は、提案手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。図29は、比較例の手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。
図28、図29において、セクション(a)は、DC−DCコンバータ20のタイミングチャートであり、縦軸は電圧、電流、及び電力を示し、横軸は時間を示している。セクション(b)は、駆動装置50のタイミングチャートであり、縦軸は電圧及び電流を示し、横軸は時間を示している。
図25を用いて説明されたように、電流IDが20[A]の場合には、図28の提案手法では、充電時間TDは20[ns]に設定され、図29の比較例の手法では、充電時間TDは45[ns]に設定されている。
図28において、時刻tr1に、スイッチSW1がターンオンされている。これにより、第1電位線W1からスイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11が供給され、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の電圧Vgs11が徐々に増大し、容量Cissが充電される。
時刻tr2に、スイッチSW1がターンオオフされ、かつ、スイッチSW3がターンオンされている。これにより、スイッチング素子Q11の電圧Vgsが第1電位Vccでクランプされる。また、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電流Ids11が上昇し始め、且つ、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が低下し始める。
時刻tr3では、電圧Vgs11が閾値を超えている。これにより、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が、急速に低下し始め、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧Vds(H)が、上昇し始める。
時刻tr4では、電圧Vds(L)は完全に立ち下がり、電圧Vds(H)は完全に立ち上がり、電流Ids11は完全に立ち上がっている。
時刻tr4以降の電圧Vds(H)の波形は本来的には平坦に推移するべきであるが、セクション(a)に示すように、電圧Vds(H)の波形にはリンギング(うねり)が発生している。
Eon11は、スイッチング素子Q11のスイッチング損失を示し、時刻tr2の少し後で上昇し始め、時刻tr3の少し後でピークに到達し、時刻tr4には立ち下がっている。
図29のタイミングチャートにおける制御の概要は図28と同じあるが、図29では、充電時間TDが45[ns]と、図28の20[ns]よりも長く設定されている。
このため、図28では、スイッチング速度が図29よりも高くなっている。したがって、図28では、スイッチング損失Eon11の波形の幅が図29よりも狭くなっており、スイッチング損失Eon11が図29よりも減少している。
また、図28では、スイッチング速度の増大に伴い、図29に比べて、リンギング電圧Vds(H).maxが若干高くなっているが、340[V]の上限値は満たされている。
また、図28では、スイッチング速度の増大に伴い、図29に比べて、電圧Vds(H),Vds(L)の電圧変化率が高くなっているが、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件は満たされている。
上記第5実施形態では、上述のように、抵抗R3の抵抗値は、抵抗R1の抵抗値より高い値に決められている。しかし、上記第5実施形態は、これに限られず、抵抗R3の抵抗値は、抵抗R1の抵抗値より低い値に決めてもよい。この場合には、スイッチSW1がターンオンされてからターンオフされるまでのオン時間(充電時間)が長いほど、スイッチング素子Q11のスイッチング速度は高くなる。この場合でも、上記第5実施形態と同様に制御することができる。
(第6実施形態)
第6実施形態の駆動装置50の構成は、図2に示される第1実施形態の駆動装置50と同じである。以下、第1実施形態との相違点を中心に、第6実施形態が説明される。
図30を用いて、検出部70により検出された駆動状態に応じた、第6実施形態の制御部80による駆動部60の制御が説明される。
図30は、第6実施形態において、駆動状態に応じて最適な制御パラメータを求めるために行った実験結果を示すグラフである。図30の例では、駆動状態として、第1実施形態と異なり、電圧センサ74(図1)により検出される出力電圧Vout(以下、「電圧Vdc」と称される)が採用されている。
図1に示されるDC−DCコンバータ20は、例えば、入力電源E11が太陽電池で構成されるパワーコンディショナー又は充電器に適用されることができる。この場合、電圧Vdcが変動する。そこで、この第6実施形態では、電圧Vdcが320V〜420Vの範囲で変動するシステムに、図1に示されるDC−DCコンバータ20が適用されることを想定している。
図30では、図1に示されるDC−DCコンバータ20及び図2に示される駆動装置50を用いた場合の実験結果が示されている。また、図30では、駆動部60を制御する制御パラメータとして、第3実施形態と同様に、スイッチSW1,SW4の両方がオンにされている時間(以下、「プリチャージ時間」と称される)が採用されている。図2の駆動部60では、上述のように、プリチャージ時間が長くなるほど、スイッチング素子Q11のスイッチング速度が高くなる。
図30において左列のグラフは、プリチャージ時間を80ns,90ns,100ns,110ns,120nsのそれぞれに設定した場合における実験結果を示している。
また、図30において右列のグラフは、プリチャージ時間を90nsに設定した場合と、プリチャージ時間を最適値に設定した場合との実験結果を示している。なお、図30の右列のグラフでは、各電圧Vdcにおいて、最適値の実験結果が三角形のマークでプロットされ、90nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。ここで、最適値は、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds(H)のピーク値(Vds(H).max:リンギング電圧)を440V以下にすることができるプリチャージ時間であって、スイッチング損失Eonを最小にできるプリチャージ時間が採用される。
図30において、セクション(a)は、プリチャージ時間に応じた、リンギング電圧(Vds(H).max)と電圧Vdcとの関係を示すグラフであり、縦軸はリンギング電圧を示し、横軸は電圧Vdcを示している。
セクション(b)は、プリチャージ時間に応じた、スイッチング損失(Eon)と電圧Vdcとの関係を示すグラフであり、縦軸は損失を示し、横軸は電圧Vdcを示している。
セクション(c)は、プリチャージ時間に応じた、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧V(L)の電圧変化率(dV(L)/dt)と電圧Vdcとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電圧Vdcを示している。
セクション(d)は、プリチャージ時間に応じた、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧V(H)の電圧変化率(dV(H)/dt)と電圧Vdcとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸は電圧Vdcを示している。
セクション(a)の左列に示すように、リンギング電圧(Vds(H).max)は、プリチャージ時間が増大するにつれて増大していることが分かる。そのため、セクション(a)の左列のグラフでは、各電圧Vdcにおいて、電圧が低い側から順に、80ns,90ns,100ns,110ns,120nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
ここでは、リンギング電圧(Vds(H).max)を440V以下にするという条件が課せられており、全ての電圧Vdcにおいてリンギング電圧を440V以下にできる最大のプリチャージ時間は90nsであった。そのため、駆動状態に応じてプリチャージ時間を変動させない構成を採用する手法(以下、「比較例の手法」と記述する。)では、プリチャージ時間として90nsが設定される。これでは、電圧Vdcに応じて最適なプリチャージ時間を設定できない。例えば、電圧Vdcが370Vの場合、プリチャージ時間を120nsに設定してもリンギング電圧(Vds(H).max)は440V以下になるにも拘わらず、比較例の手法ではプリチャージ時間が90nsに設定されるため、最適値が設定されていない。
セクション(b)の左列に示すように、スイッチング損失は、プリチャージ時間が減少するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(b)の左列のグラフでは、各電圧Vdcにおいて、スイッチング損失が低い側から順に、120ns,110ns,100ns,90ns,80nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
そこで、本第6実施形態の手法(以下、「提案手法」と記述する。)では、セクション(a)の右列に示すように、各電圧Vdcにおいて、リンギング電圧(Vds(H).max)を440V以下にできるプリチャージ時間のうち、スイッチング損失Eonを最小にできるプリチャージ時間(つまりセクション(b)から分かるように最大のプリチャージ時間)を設定する。
具体的には、電圧Vdcが320[V]、370[V]のときはプリチャージ時間が120nsに設定され、電圧Vdcが420[V]のときはプリチャージ時間が90nsに設定されている。これにより、プリチャージ時間の最適化が図られている。
セクション(b)の右列では、セクション(a)で設定されたプリチャージ時間の最適値を採用した場合の各電圧Vdcに対するスイッチング損失が三角形のマークでプロットされている。この場合、電圧Vdcが420Vにおいて、提案手法と比較例とはスイッチング損失が同じであり、他の電圧Vdcにおいて、提案手法の方が比較例よりもスイッチング損失が低く、電圧Vdcが370Vにおいてはスイッチング損失が26%低減されていた。
セクション(c)の左列に示すように、電圧変化率(dV(L)/dt)は、プリチャージ時間とは、あまり相関が見られないことが分かる。セクション(c)の左列のグラフでは、各電圧Vdcにおいて、電圧変化率(dV(L)/dt)は、120nsが最も低く、100nsが最も高いという実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(c)の右列では、セクション(a)で設定されたプリチャージ時間の最適値を採用した場合の各電圧Vdcに対する電圧変化率(dV(L)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、電圧Vdcが420V以外では、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(L)/dt)が高くなっており、電圧Vdcが420Vでは、同じになっている。
セクション(d)の左列に示すように、電圧変化率(dV(H)/dt)は、リンギング電圧(Vds(H).max)と同様、プリチャージ時間が増大するにつれて、増大していることが分かる。そのため、セクション(d)の左列のグラフでは、各電圧Vdcにおいて、電圧変化率(dV(H)/dt)は、低い側から順に、80ns,90ns,100ns,110ns,120nsの実験結果がひし形のマークでプロットされている。
セクション(d)の右列では、セクション(a)で設定されたプリチャージ時間の最適値を採用した場合の各電圧Vdcに対する電圧変化率(dV(H)/dt)が三角形のマークでプロットされている。この場合、電圧Vdcが420V以外では、提案手法の方が比較例よりも電圧変化率(dV(H)/dt)が高くなっており、電圧Vdcが420Vでは、同じになっている。
なお、セクション(c)の右列に示される提案手法のプリチャージ時間、及びセクション(d)の右列に示される提案手法のプリチャージ時間は、いずれも、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件を満足している。
第6実施形態の駆動装置50では、図30のセクション(a)の三角形のマークで示されるように、各電圧Vdcに対して、リンギング電圧(Vds(H).max)を440V以下にするという条件を満足するプリチャージ時間のうち、スイッチング損失Eonが最小になるプリチャージ時間(つまり最大のプリチャージ時間)を予め求めておき、テーブル(設定情報の一例)が作成される。制御部80は、作成されたテーブルを予め保持する。
図31は、第6実施形態の駆動装置50の制御部80が保持するテーブル86の一例を概略的に示す図である。
図30の実験結果から、第6実施形態のテーブル86では、電圧Vdcが320≦Vdc≦370[V]の範囲(区分の一例)では、プリチャージ時間TEは120nsに設定され、電圧Vdcが370<Vdc≦420[V]の範囲(区分の一例)では、プリチャージ時間TEは90nsに設定されている。
制御部80は、検出部70の電圧センサ74(図1)により検出された電圧Vdcを取得する。制御部80は、取得した電圧Vdcに対応するプリチャージ時間TEを、保持しているテーブル86から抽出する。制御部80は、スイッチSW1,SW4の両方がオンにされる時間が、抽出したプリチャージ時間TEに一致するように、駆動部60を制御する。
次に、図32、図33を用いて、電圧Vdcが370[V]の場合において、第6実施形態の提案手法の波形と比較例の手法の波形とが比較される。
図32は、第6実施形態の提案手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。図33は、比較例の手法によりスイッチング素子Q11をターンオンさせる際の駆動装置50のシミュレーション結果を概略的に示すタイミングチャートである。
図32、図33において、セクション(a)は、DC−DCコンバータ20のタイミングチャートであり、縦軸は電圧、電流、及び電力を示し、横軸は時間を示している。セクション(b)は、駆動装置50のタイミングチャートであり、縦軸は電圧及び電流を示し、横軸は時間を示している。
図30を用いて説明されたように、電圧Vdcが370[V]の場合には、図32の提案手法では、プリチャージ時間TEは120[ns]に設定され、図33の比較例の手法では、プリチャージ時間TEは90[ns]に設定されている。
図32において、時刻ts1にスイッチSW1がターンオンされる。なお、時刻ts1の以前から、スイッチSW4はオンにされており、スイッチング素子Q11のゲートは第2電位Vssにクランプされている。このため、スイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11は供給されず、コイルL1にエネルギーが蓄積される。
時刻ts2に、スイッチSW1,SW4がターンオフされる。すると、コイルL1に蓄積されたエネルギーが放電されて、スイッチング素子Q11のゲートにゲート電流Ig11が供給され、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間の電圧Vgs11が徐々に増大し、容量Cissが充電される。
そして、時刻ts3に、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電流Ids11が上昇し始め、且つ、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が低下し始める。
時刻ts4に、電圧Vgs11が閾値を超えている。これにより、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間の電圧Vds(L)が、急速に低下し始め、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間の電圧Vds(H)が、上昇し始める。
時刻ts5では、電圧Vds(L)は完全に立ち下がり、電圧Vds(H)は完全に立ち上がり、電流Ids11は完全に立ち上がっている。
時刻ts5以降の電圧Vds(H)の波形は本来的には平坦に推移するべきであるが、セクション(a)に示すように、電圧Vds(H)の波形にはリンギング(うねり)が発生している。
Eon11は、スイッチング素子Q11のスイッチング損失を示し、ほぼ時刻ts3で上昇し始め、ほぼ時刻ts4でピークに到達し、時刻ts5には立ち下がっている。
図33のタイミングチャートにおける制御の概要は図32と同じあるが、図33では、プリチャージ時間TEが90[ns]と、図32の120[ns]よりも短く設定されている。
このため、図32では、スイッチング速度が図33よりも高くなっている。したがって、図32では、スイッチング損失Eon11の波形の幅が図33よりも狭くなっており、スイッチング損失Eon11が図33よりも減少している。
また、図32では、スイッチング速度の増大に伴い、図33に比べて、リンギング電圧Vds(H).maxが若干高くなっているが、440[V]の上限値は、満たされている。
また、図32では、スイッチング速度の増大に伴い、図33に比べて、電圧Vds(H),Vds(L)の電圧変化率が高くなっているが、アイソレータ91,92が規定する電圧変化率の条件は満たされている。
なお、この第6実施形態では、駆動部60を制御する制御パラメータとして、第3実施形態と同様に、プリチャージ時間が採用されている。代替的に、第6実施形態では、第1実施形態と同様の充電時間、又は第2実施形態と同様の放電時間が、制御パラメータとして採用されてもよい。
(第7実施形態)
上記第1、第3、第4実施形態では、例えば図3、図13、図19のセクション(a)の左列に示されるように、リンギング電圧Vds(H).maxは、電流IDが増大するにつれて、減少している。しかし、スイッチング素子Q12の寄生ダイオードの逆回復時間Trrが悪い場合又は寄生インダクタンスLp1,Lp2(図1)が大きい場合等には、リンギング電圧Vds(H).maxは、電流IDが増大するにつれて、増大する場合もある。この第7実施形態では、そのような場合が検討されている。
図34は、第7実施形態の駆動装置50を概略的に示す図である。図34では、説明を簡単にするために、アイソレータ91,92の図示が省略され、かつ、駆動部60の第2電位線W2がスイッチング素子Q11のソースに接続されている。しかし、実際の駆動装置50では、図1に示されるように、駆動部60とスイッチング素子Q11とは、アイソレータ91を介して接続され、駆動部60とスイッチング素子Q12とは、アイソレータ92を介して接続されている。以下、第1実施形態との相違点を中心に、第7実施形態が説明される。
駆動部60は、電源E1、及びクランプ部62を有する。すなわち、第7実施形態の駆動装置50では、スイッチSW3をターンオンし、スイッチSW4をターンオフして、スイッチング素子Q11のゲートを第1電位Vccにクランプすることにより、スイッチング素子Q11をターンオンしている。また、スイッチSW3をターンオフし、スイッチSW4をターンオンして、スイッチング素子Q11のゲートを第2電位Vssにクランプすることにより、スイッチング素子Q11をターンオフしている。
次に、図35を用いて、検出部70により検出された駆動状態に応じた、第7実施形態の制御部80による駆動部60の制御が説明される。
図35は、第7実施形態において、駆動状態に応じて最適な制御パラメータを求めるために行った実験結果を示すグラフである。図35の例では、駆動状態として、第1実施形態と異なり、電流センサ73(図1)により検出されるドレイン電流Idsが採用されている。
図35では、図1に示されるDC−DCコンバータ20及び図34に示される駆動装置50を用いた場合の実験結果が示されている。図35では、図34の駆動装置50の抵抗R1の抵抗値を3種類に切り替えることにより、3種類の速度でスイッチングが行われている。すなわち、図35には、抵抗R1の抵抗値を高くしたときの低速スイッチングLSのデータと、抵抗R1の抵抗値を低くしたときの高速スイッチングHSのデータと、抵抗R1の抵抗値を中間値にしたときの中速スイッチングMSのデータとがプロットされている。また、図35には、この第7実施形態の制御により、ドレイン電流Idsに応じてスイッチング速度を最適値に変更した最適スイッチングATのデータがプロットされている。
図35において、セクション(a)は、スイッチング速度に応じた、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds(L)の電圧変化率(dV(L)/dt)とドレイン電流Idsとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸はドレイン電流Idsを示している。
セクション(b)は、スイッチング速度に応じた、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds(H)の電圧変化率(dV(H)/dt)とドレイン電流Idsとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸はドレイン電流Idsを示している。
セクション(c)は、スイッチング速度に応じた、リンギング電圧(Vds(H).max)とドレイン電流Idsとの関係を示すグラフであり、縦軸はリンギング電圧を示し、横軸はドレイン電流Idsを示している。
図35のセクション(a)に示されるように、電圧変化率(dV(L)/dt)は、アイソレータ91,92の同相除去電圧により50[V/ns]以下に制限されている。図35のセクション(b)に示されるように、電圧変化率(dV(H)/dt)は、アイソレータ91,92の同相除去電圧により50[V/ns]以下に制限されている。図35のセクション(c)に示されるように、リンギング電圧(Vds(H).max)は、420[V]以下に制限されている。
図35のセクション(c)において、スイッチング速度が固定されている場合に、全てのドレイン電流Idsの範囲で、リンギング電圧(Vds(H).max)が420[V]以下という条件を満たすためには、低速スイッチングLSを採用する必要がある。
これに対して、この第7実施形態の制御による最適スイッチングATでは、ドレイン電流Idsが4[A]以下において、高速スイッチングHSが採用され、ドレイン電流Idsが6[A]において、中速スイッチングMSが採用され、ドレイン電流Idsが7.2[A]において、低速スイッチングLSが採用されている。そして、4<Ids<6[A]の範囲A2では、(Vds(H).max)<420[V]が維持されるようなスイッチング速度が採用されている。
その結果、図35のセクション(a)、(b)に示されるように、電圧変化率(dV(L)/dt)、電圧変化率(dV(H)/dt)も、50[V/ns]以下という制限が満たされている。例えばセクション(a)に示されるように、最適スイッチングATでは、ドレイン電流Idsが低電流値から中電流値の範囲A1において、高速スイッチングHSが採用されている。これによって、電圧変化率dV(L)/dtが増大され、スイッチング損失が低減されている。
図36は、図35の実験を行ったときのDC−DCコンバータ20における入力電流Iin、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs11、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds(L)、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds(H)の各波形を概略的に示す図である。
図36において、セクション(a)は、ドレイン電流Idsが7.2[A]で低速スイッチングLSの場合の各波形を示し、セクション(b)は、ドレイン電流Idsが4[A]で低速スイッチングLSの場合の各波形を示し、セクション(c)は、ドレイン電流Idsが4[A]で高速スイッチングHSの場合の各波形を示す。
図35のセクション(c)を用いて説明されたように、ドレイン電流Idsが7.2[A]のときは、リンギング電圧(Vds(H).max)が420[V]以下という条件を満たすために、最適スイッチングATでは、低速スイッチングLSが採用されている。この場合のリンギング電圧(Vds(H).max)は、図36のセクション(a)に示されるように、比較的大きい値になっている。
図35のセクション(c)を用いて説明されたように、スイッチング速度が固定されている場合には、リンギング電圧(Vds(H).max)が420[V]以下という条件を満たすために、低速スイッチングLSが採用される。ドレイン電流Idsが4[A]のときに、低速スイッチングLSが採用されると、リンギング電圧(Vds(H).max)は、図36のセクション(b)に示されるように、比較的小さい値になる。
図35のセクション(c)を用いて説明されたように、この第7実施形態の制御による最適スイッチングATでは、ドレイン電流Idsが4[A]のときは、高速スイッチングHSが採用される。この場合のリンギング電圧(Vds(H).max)は、図36のセクション(c)に示されるように、セクション(a)と同程度の比較的大きい値になる。
このように、この第7実施形態の制御では、ドレイン電流Idsが4[A]のときは、高速スイッチングHSが採用される。これによって、リンギング電圧(Vds(H).max)の上限値の制限を満たしつつ、スイッチング損失の低減が図られている。
この第7実施形態では、図34に示される駆動装置50を用いて実験が行われているが、本開示の駆動装置50は、これに限られない。代替的に、図2に示される駆動装置50を用いて、第1実施形態〜第3実施形態、第6実施形態のように、テーブルを作成してスイッチング速度を制御することにより、この第7実施形態の制御を実現するようにしてもよい。さらに代替的に、図18に示される駆動装置50を用いて、第4実施形態のように、スイッチング速度を制御することにより、この第7実施形態の制御を実現するようにしてもよい。さらに代替的に、図24に示される駆動装置50を用いて、第5実施形態のように、スイッチング速度を制御することにより、この第7実施形態の制御を実現するようにしてもよい。
(第8実施形態)
上記第7実施形態では、図35に示されるように、例えばドレイン電流Idsが7.2[A]では、低速スイッチングLSが採用されている。しかし、DC−DCコンバータ20の寄生インダクタンスLp1,Lp2又は寄生キャパシタンスCp1,Cp2(図1)の状態によっては、ドレイン電流Idsが大きい範囲では、低速スイッチングLSを採用しても、輻射ノイズが過大になる場合もある。
例えば、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds(H)の電圧変化率(dV(H)/dt)が大きいことに起因して、ピーク値(つまりリンギング電圧)となった後のうねり(高周波成分)の振幅が大きい場合には、発生する輻射ノイズが大きくなることが多い。この第8実施形態では、そのような場合が検討されている。
第8実施形態の駆動装置50の構成は、図34に示される第7実施形態の駆動装置50と同じである。図37を用いて、検出部70により検出された駆動状態に応じた、第8実施形態の制御部80による駆動部60の制御が説明される。
図37は、第8実施形態において、駆動状態に応じて最適な制御パラメータを求めるために行った実験結果を示すグラフである。図37の例では、駆動状態として、第7実施形態と同様に、電流センサ73(図1)により検出されるドレイン電流Idsが採用されている。
図37では、図1に示されるDC−DCコンバータ20及び図34に示される駆動装置50を用いた場合の実験結果が示されている。図37では、図34の駆動装置50の抵抗R1の抵抗値を3種類に切り替えることにより、3種類の速度でスイッチングが行われている。すなわち、図37には、抵抗R1の抵抗値を高くしたときの低速スイッチングLSのデータと、抵抗R1の抵抗値を低くしたときの高速スイッチングHSのデータと、抵抗R1の抵抗値を中間値にしたときの中速スイッチングMSのデータとがプロットされている。また、図37には、輻射ノイズを低下させるために、この第8実施形態の制御により、ドレイン電流Idsに応じてスイッチング速度を更に変更した低輻射ノイズスイッチングLNのデータがプロットされている。
図37において、セクション(a)は、スイッチング速度に応じた、リンギング電圧(Vds(H).max)とドレイン電流Idsとの関係を示すグラフであり、縦軸はリンギング電圧を示し、横軸はドレイン電流Idsを示している。
セクション(b)は、スイッチング速度に応じた、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds(H)の電圧変化率(dV(H)/dt)とドレイン電流Idsとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸はドレイン電流Idsを示している。
セクション(c)は、スイッチング速度に応じた、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds(L)の最小値(Vds(L).min)とドレイン電流Idsとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧最小値を示し、横軸はドレイン電流Idsを示している。
セクション(d)は、スイッチング速度に応じた、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds(L)の電圧変化率(dV(L)/dt)とドレイン電流Idsとの関係を示すグラフであり、縦軸は電圧変化率を示し、横軸はドレイン電流Idsを示している。
セクション(a)に示されるように、この第8実施形態の制御による、低輻射ノイズスイッチングLNでは、ドレイン電流Idsが6〜7.2[A]の大電流領域では、スイッチング速度を低速スイッチングLSより更に低下させている。これによって、大電流領域におけるリンギング電圧(Vds(H).max)が更に低下されている。
その結果、セクション(b)に矢印P1で示されるように、大電流領域におけるスイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧の電圧変化率(dV(H)/dt)が低減されている。
また、大電流領域において、スイッチング速度を低速スイッチングLSより更に低下させることにより、セクション(c)に示されるように、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds(L)の最小値(Vds(L).min)の絶対値が低減されている。
その結果、セクション(d)に矢印P2で示されるように、大電流領域におけるスイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧の電圧変化率(dV(L)/dt)が低減されている。
一般に、大電流領域において、電圧変化率(dV(H)/dt)、(dV(L)/dt)が所定レベルより大きくなると、発生する輻射ノイズのレベルが許容レベルを超えてくる。これに対して、第8実施形態では、大電流領域において、スイッチング速度が低速スイッチングLSよりさらに低下されて、電圧変化率(dV(H)/dt)、(dV(L)/dt)が低減されている。したがって、第8実施形態によれば、発生する輻射ノイズのレベルが、許容レベルを超えないようにすることができる。
この第8実施形態では、図34に示される駆動装置50を用いて実験が行われているが、本開示の駆動装置50は、これに限られない。代替的に、図2に示される駆動装置50を用いて、第1実施形態〜第3実施形態、第6実施形態のように、テーブルを作成してスイッチング速度を制御することにより、この第8実施形態の制御を実現するようにしてもよい。
(第9実施形態)
上記第8実施形態では、図37を用いて説明されたように、大電流領域において、低速スイッチングLSよりさらに低いスイッチング速度を採用することにより、輻射ノイズが低減されている。第9実施形態では、第8実施形態と異なる手法で、輻射ノイズの低減が図られている。
第9実施形態の駆動装置50の構成は、図2に示される第1実施形態の駆動装置50と同じである。また、第9実施形態では、第1実施形態と同様に、制御部80は、検出部70により検出される駆動状態に応じて、テーブル81を用いて、充電時間(スイッチSW1のオン時間)を制御する。以下、第1実施形態との相違点を中心に、第9実施形態の制御部80による駆動部60の制御が説明される。
図38は、第9実施形態において、スイッチング素子Q11,Q12がターンオン及びターンオフされるときの、スイッチング素子Q11のゲート−ソース間電圧Vgs(L)と、スイッチング素子Q11のドレイン−ソース間電圧Vds(L)と、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間電圧Vds(H)との各波形を概略的に示すタイミングチャートである。
第9実施形態では、制御部80は、1パルスごとに、予め定められた微小値ずつ充電時間をばらつかせている。この場合において、制御部80は、ばらつかせた充電時間の平均値が、テーブル81から抽出された充電時間に一致するように、充電時間を制御する。これによって、第9実施形態では、1パルスごとに、スイッチング素子Q11,Q12のドレイン−ソース間電圧の電圧変化率dV(L)/dt,dV(H)/dtが微小値ずつ拡散されている。
図38において、時刻tk1,tk2,tk3に、スイッチング素子Q11がターンオンされている。時刻tk2では、制御部80は、テーブル81から抽出された充電時間CTで駆動部60を制御する。例えば、電流IDが20[A]であれば、図5に示されるように、充電時間を80[ns]として駆動部60を制御する。
時刻tk2の1パルス前の時刻tk1では、制御部80は、テーブル81から抽出された充電時間CTより短い充電時間(C−ΔC)Tで駆動部60を制御する。例えば、電流IDが20[A]であれば、充電時間を80[ns]より5[ns]短い75[ns]として駆動部60を制御する。
時刻tk2の充電時間CTのタイミングチャートと、時刻tk1の充電時間(C−ΔC)Tのタイミングチャートとを比較すると明らかなように、充電時間CTに比べて、充電時間(C−ΔC)Tでは、ドレイン−ソース間電圧Vds(L),Vds(H)は緩やかに変化している。すなわち、充電時間CTに比べて、充電時間(C−ΔC)Tでは、電圧変化率dV(L)/dt,dV(H)/dtが小さくなっている。
時刻tk2の1パルス後の時刻tk3では、制御部80は、テーブル81から抽出された充電時間CTより長い充電時間(C+ΔC)Tで駆動部60を制御する。例えば、電流IDが20[A]であれば、充電時間を80[ns]より5[ns]長い85[ns]として駆動部60を制御する。
時刻tk2の充電時間CTのタイミングチャートと、時刻tk3の充電時間(C+ΔC)Tのタイミングチャートとを比較すると明らかなように、充電時間CTに比べて、充電時間(C+ΔC)Tでは、ドレイン−ソース間電圧Vds(L),Vds(H)は急峻に変化している。すなわち、充電時間CTに比べて、充電時間(C+ΔC)Tでは、電圧変化率dV(L)/dt,dV(H)/dtが大きくなっている。
時刻tk3以降も同様に、制御部80は、充電時間をばらつかせる。この場合、上述のように、制御部80は、ばらついている充電時間の平均値が、テーブル81から抽出された充電時間CTに一致するように、充電時間をばらつかせる。
上述のように、充電時間をばらつかせてスイッチング速度をばらつかせる場合には、ばらつかせる範囲の最大スイッチング速度で、リンギング電圧の上限が満たされるようにしておく必要がある。例えば充電時間が85[ns]では、リンギング電圧の上限を超えてしまう場合には、テーブル81に保存される充電時間は、例えば75[ns]としておく必要がある。
また、図38では、充電時間をCT、(C+ΔC)T、(C−ΔC)Tの3種類でばらつかせているが、本開示は、これに限られない。例えば、充電時間をCT、(C+ΔC)T、(C−ΔC)T、(C+2×ΔC)T、(C−2×ΔC)Tの5種類でばらつかせてもよい。要は、ばらつかせた充電時間の平均値が、テーブル81に保存されている充電時間に一致すればよい。
次に、図39、図40を用いて、電圧変化率dV(L)/dt,dV(H)/dtが微小値ずつ拡散されることによる効果が説明される。
図39は、拡散に用いる理想台形波を説明する図である。図39において、セクション(a)は、理想台形波の立上り波形を示し、セクション(b)は、理想台形波の立下り波形を示す。セクション(a)、(b)において、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。セクション(c)は、電圧変化率dV/dtが8〜16の9種類の理想台形波の立上り時間Tr及び逆数1/Trを示す。セクション(c)の最下段の理想台形波AVGの立上り時間は、その上の9種類の理想台形波の立上り時間の平均値である28[ns]になっている。
図40は、重ね合わされた理想台形波の高速フーリエ変換(FFT)の波形を概略的に示す図である。図40において、縦軸は実効電圧値を示し、横軸は周波数を示す。
図40に示される波形WV1は、図39のセクション(c)に示される、電圧変化率dV/dtが8〜16の9種類の理想台形波を拡散させたもののFFTである。波形WV2は、図39のセクション(c)の最下段に示される、立上り時間Trが9種類の理想台形波の立上り時間Trの平均値の28[ns]である理想台形波AVGのFFTである。
理想台形波は、理論的に、n/Tr[MHz]に極小値を持ち、1.5×n/Tr[MHz]に極大値を持つ。理想台形波を拡散させると、この極小値及び極大値が分散されることになり、平均化される。このため、拡散された理想台形波を用いると、図40に示されるように、波形WV2に比べた波形WV1の実効電圧値の低減効果は、1.5×n/Tr[MHz]の極大値において最も大きくなる。スイッチング素子から出力される電圧波形の高調波成分の実効電圧値は、輻射ノイズ強度と正の相関がある。このため、拡散された理想台形波を用いると、輻射ノイズ強度を低減することができる。
以上説明されたように、第9実施形態では、充電時間をばらつかせて、電圧変化率(dV(H)/dt)、(dV(L)/dt)を拡散させている。これによって、第9実施形態によれば、発生する輻射ノイズのレベルが、許容レベルを超えないようにすることができる。
上記第9実施形態では、例えばテーブル81に保存されている全ての充電時間をばらつかせてもよい。代替的に、テーブル81に保存されている充電時間のうちで、輻射ノイズのレベルが許容レベルを超える箇所の充電時間のみ、ばらつかせるようにしてもよい。
上記第9実施形態では、図2に示される駆動装置50を用いて、第1実施形態の手法により駆動部60が制御されているが、本開示の駆動装置50は、これに限られない。代替的に、図2に示される駆動装置50を用いて、第2実施形態、第3実施形態、第6実施形態のように、テーブルを作成してスイッチング速度を制御することにより、この第9実施形態の制御を実現するようにしてもよい。
(その他)
(1)検出部70により検出される駆動状態として、上記第1〜第5、第9実施形態では、電流センサ71(図1)により検出される入力電流Iinが採用され、上記第6実施形態では、電圧センサ74(図1)により検出される出力電圧Voutが採用され、上記第7、第8実施形態では、電流センサ73(図1)により検出されるドレイン電流Idsが採用されている。しかし、本開示の駆動装置50は、これらに限られない。
検出部70により検出される駆動状態として、例えば、電圧センサ72(図1)により検出される入力電圧Vinが採用されてもよく、あるいは、電流センサ75(図1)により検出される出力電流Ioutが採用されてもよく、温度センサ76又は温度センサ77(図1)により検出される接合温度Tjが採用されてもよい。
さらに、検出部70により検出される駆動状態として、入力電流Iin、ドレイン電流Ids、及び出力電流Ioutのうちのいずれかの電流と、入力電圧Vin及び出力電圧Voutのうちのいずれかの電圧との組合せが採用されてもよい。この場合、充電時間などの制御パラメータが電流値及び電圧値に対応付けられたテーブルを作成すればよい。
(2)検出部70は、スイッチング素子Q11,Q12がスイッチングする際の電流、電圧を直接的に検出するのが好ましいが、これに限られない。検出部70は、例えば、DC−DCコンバータ20全体の入出力電流、入出力電圧(図1の例では、入力電源E11から流れ込む電流Iin、出力電流Iout、入力電圧Vin、出力電圧Vout)と、DC−DCコンバータ20の制御指令値(例えば、スイッチング素子Q11のオンデューティ比、オン期間、オフ期間、スイッチング周波数)又は回路定数(例えば、リアクトル71のインダクタンス値、平滑コンデンサC12の容量)などから、算出してもよい。すなわち、検出部70は、スイッチング素子Q11,Q12がスイッチングする際の電流、電圧を間接的に検出してもよい。
(3)上記各実施形態では、スイッチング素子Q12は、Nチャネル型MOSFETで構成されているが、本開示は、これに限られない。例えば、スイッチング素子Q12として、ダイオードが採用されてもよい。
(4)上記各実施形態では、スイッチング素子Q11をターンオンさせる場合について説明されているが、スイッチング素子Q11をターンオフさせる場合についても、同様に制御することができる。
(5)上記第4実施形態では、変更できるスイッチング速度の種類は、スイッチ及び抵抗の直列回路の個数に依存する。これに対して、上記第1〜第3、第5、及び第6実施形態では、駆動状態の区分を増やして、設定時間の種類を増やすことにより、変更できるスイッチング速度の種類を増やすことができる。したがって、上記第1〜第3、第5、及び第6実施形態によれば、上記第4実施形態に比べて、スイッチの個数及び信号線の本数を増やすことなく、スイッチング速度をきめ細かく制御することができる。
(6)上記実施形態において、駆動部60の回路構成が同じ複数の実施形態を組み合わせてもよい。例えば第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせて、0<ID≦5の場合に充電時間65ns、放電時間60nsに設定し、5<ID≦10の場合に充電時間70ns、放電時間65nsに設定し、10<ID≦15の場合に充電時間75ns、放電時間55nsに設定し、15<ID≦20の場合に充電時間80ns、放電時間50nsに設定してもよい。
また、例えば第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせて、0<ID≦2.5の場合に放電時間60ns、プリチャージ時間60nsに設定し、2.5<ID≦10の場合に放電時間65ns、プリチャージ時間70nsに設定し、10<ID≦15の場合に放電時間55ns、プリチャージ時間75nsに設定し、15<ID≦20の場合に放電時間50ns、プリチャージ時間75nsに設定してもよい。
このように実施形態を組み合わせることによって、多様にスイッチング速度を制御することができる。