(本開示に至った経緯)
本発明者らは、効率的なスイッチングを実現できる駆動装置について鋭意検討を行った。
第一に、駆動装置の損失を低減することが検討された。LC方式を用いた従来の駆動装置において、スイッチング後のゲート電圧を安定させるために、スイッチング素子のゲート端子にクランプ電圧を印加する構成が提案されている。この構成において、共振コイルに蓄積されたエネルギーによって、共振電流がクランプ用の経路を介して循環する場合、または、共振電流がクランプ用の経路を介して電源に回生する場合がある。このとき、循環電流または回生電流が流れる経路は、配線抵抗を有するため、電流が流れることにより損失を発生させる。
本発明者らは、駆動装置の電力損失を低減する技術を検討し、本開示のある態様を得るに至った。
第二に、スイッチング素子の損失を低減することが検討された。スイッチング素子のスイッチング損失は、例えば、スイッチング素子のゲート容量を高速に充電することによって、低減される。ゲート容量の充電速度は、ゲート端子に供給されるゲート電流を増加させることによって、向上する。従来の方法でゲート電流を増加させようとすると、駆動装置の回路規模が増大する。
本発明者らは、駆動装置において回路規模の増大を抑制しつつ、スイッチング特性を向上させる技術を検討し、本開示のある態様を得るに至った。
(実施の形態の概要)
本開示の一態様に係る駆動装置は、例えば、制御端子を備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、第一電位を与える第一電位線と、前記第一電位よりも小さい第二電位を与える第二電位線と、第一端子と第二端子とを有し、前記第二端子が前記スイッチング素子の制御端子に接続されるコイルと、前記第一電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第一電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする充電用スイッチと、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子の間に接続され、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、前記第二電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第二電位線から前記コイルの前記第一端子に電流を流す充電用ダイオードと、前記充電用スイッチをターンオンさせ、前記スイッチング素子の前記制御端子の電位が前記第一電位に到達する前に前記充電用スイッチをターンオフさせる充電制御信号と、前記充電用スイッチがターンオンされた後に前記クランプスイッチをターンオンさせるクランプ制御信号とを出力する制御回路とを備える。
スイッチング素子の制御端子の電位が第一電位に到達する前に充電用スイッチがターンオフされるため、無駄な循環電流および回生電流が抑制される。その結果、駆動装置の電力損失が低減される。これにより効率的なスイッチングが実現される。
本開示の一態様の駆動装置において、例えば、前記クランプ制御信号は、前記スイッチング素子の前記制御端子の電位が前記第一電位に到達する前に、前記クランプスイッチをターンオンさせてもよい。
本開示の一態様の駆動装置において、例えば、前記クランプ制御信号は、前記充電用スイッチがターンオフされる前に、前記クランプスイッチをターンオンさせてもよい。
充電用スイッチを介して流れる電流と、クランプスイッチを介して流れる電流とによって、スイッチング素子の制御端子に電荷が供給される。これにより、スイッチング素子がターンオンするタイミングの近辺で、スイッチング素子の制御端子に流れる電流を大きくすることができる。電流が効率的にスイッチング素子のターンオンに使用されるため、効率的なスイッチングが実現される。
本開示の一態様の駆動装置において、例えば、前記クランプ制御信号は、前記充電用スイッチがターンオフされた後に、前記クランプスイッチをターンオンさせてもよい。
本開示の一態様の駆動装置において、例えば、前記充電用ダイオード及び前記コイルを通る経路で前記スイッチング素子の前記制御端子に電荷が供給されてもよい。
本開示の一態様の駆動装置は、例えば、前記コイルから流れる電流と前記第一電位線から前記クランプスイッチを介して流れる電流とを前記スイッチング素子の前記制御端子に同時に流す期間を有してもよい。
これにより、スイッチング素子がターンオンするタイミングの近辺で、スイッチング素子の制御端子に流れる電流を大きくすることができる。電流が効率的にスイッチング素子のターンオンに使用されるため、効率的なスイッチングが実現される。
本開示の一態様の駆動装置において、例えば、前記スイッチング素子は、第一導通端子と第二導通端子とをさらに備え、前記制御端子と前記第一導通端子との間に容量を有し、前記コイルと前記容量との間に共振電流が流れてもよい。
これにより、コイルと容量とによって構成されるLC直列共振回路に、共振電流が流れる。
本開示の一態様の駆動装置において、例えば、前記容量のキャパシタンスをC、前記コイルのインダクタンスをLとし、前記充電用スイッチがターンオンされてからターンオフされるまでの期間をt ON とするとき、t ON <π(LC) 1/2 の関係を満たしてもよい。
この関係をみたすことにより、過剰な共振電流が発生しない。そのため、無駄な循環電流および回生電流が抑制され、駆動装置の電力損失が低減される。これにより効率的なスイッチングが実現される。
本開示の一態様の駆動装置は、例えば、前記クランプスイッチは第一クランプスイッチであり、前記クランプ制御信号は第一クランプ制御信号であり、前記駆動装置は、前記第二電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第二電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする放電用スイッチと、前記第二電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子の間に接続され、前記第二電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフする第二クランプスイッチと、前記第一電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第二電位線から前記コイルの前記第一端子に電流を流す放電用ダイオードとをさらに備え、前記制御回路は、前記放電用スイッチをターンオンさせ、前記スイッチング素子の前記制御端子の電位が前記第二電位に到達する前に前記放電用スイッチをターンオフさせる放電制御信号と、前記放電用スイッチがターンオンされた後に前記第二クランプスイッチをターンオンさせる第二クランプ制御信号とをさらに出力してもよい。
スイッチング素子の制御端子の電位が第二電位に到達する前に放電用スイッチがターンオフされるため、無駄な循環電流および回生電流が抑制される。その結果、駆動装置の電力損失が低減される。これにより効率的なスイッチングが実現される。
本開示の一態様の駆動装置において、例えば、前記第二クランプ制御信号は、前記スイッチング素子の前記制御端子の電位が前記第二電位に到達する前に、前記第二クランプスイッチをターンオンさせてもよい。
本開示の一態様の駆動装置において、例えば、前記第二クランプ制御信号は、前記放電用スイッチがターンオフされる前に、前記第二クランプスイッチをターンオンさせてもよい。
放電用スイッチを介して流れる電流と、第二クランプスイッチを介して流れる電流とによって、スイッチング素子の制御端子から電荷が引き抜かれる。これにより、スイッチング素子がターンオフするタイミングの近辺で、スイッチング素子の制御端子から流れる電流を大きくすることができる。電流が効率的にスイッチング素子のターンオフに使用されるため、効率的なスイッチングが実現される。
本開示の一態様の駆動装置において、例えば、前記第二クランプ制御信号は、前記放電用スイッチがターンオフされた後に、前記第二クランプスイッチをターンオンさせてもよい。
本開示の一態様の駆動装置において、例えば、前記スイッチング素子は、第一導通端子と第二導通端子とをさらに備え、前記第二電位線は、前記スイッチング素子の前記第一導通端子に接続されてもよい。
本開示の一態様の駆動装置において、例えば、前記スイッチング素子は、第一導通端子と第二導通端子とをさらに備え、前記駆動装置は、前記第二電位線と前記スイッチング素子の前記第一導通端子の間に、前記スイッチング素子の前記第一導通端子の電位を前記第二電位線の電位よりも高くする補助電源をさらに備えてもよい。
これにより、スイッチング素子の制御端子と第二電位線とが通電したときに、スイッチング素子の制御端子と第一導通端子との間に負の電圧が印加されうる。
本開示の一態様の電力変換装置は、例えば、入力される電力を変換して出力する電力変換装置であって、前記スイッチング素子と、前記スイッチング素子を駆動する上記のいずれか1つの駆動装置とを備える。
本開示の別の態様の駆動装置は、例えば、制御端子を備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、第一電位を与える第一電位線と、前記第一電位よりも小さい第二電位を与える第二電位線と、第一端子と第二端子とを有し、前記第二端子が前記スイッチング素子の制御端子に接続されるコイルと、前記第二電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第二電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする放電用スイッチと、前記第二電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子の間に接続され、前記第二電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、前記第一電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第二電位線から前記コイルの前記第一端子に電流を流す放電用ダイオードと、前記放電用スイッチをターンオンさせ、前記スイッチング素子の前記制御端子の電位が前記第二電位に到達する前に前記放電用スイッチをターンオフさせる放電制御信号と、前記放電用スイッチがターンオンされた後に前記クランプスイッチをターンオンさせるクランプ制御信号とを出力する制御回路とを備えてもよい。
スイッチング素子の制御端子の電位が第二電位に到達する前に放電用スイッチがターンオフされるため、無駄な循環電流および回生電流が抑制される。その結果、駆動装置の電力損失が低減される。これにより効率的なスイッチングが実現される。
本開示の一態様の駆動装置は、例えば、制御端子と第一導通端子と第二導通端子とを備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続される出力端子と、前記スイッチング素子の前記第一導通端子及び前記第二導通端子の一方に接続される基準端子と、共振用電源を含む共振部と、前記出力端子及び前記基準端子間に固定電圧を印加するクランプ部と、を備え、前記スイッチング素子の前記制御端子と前記基準端子との間に印加される電圧の立ち上がり波形の振幅は、前記共振用電源の電圧から、共振開始前の前記制御端子と前記基準端子間の電圧を減算した電圧より小さく、前記出力端子及び前記基準端子間に印加される出力電圧の絶対値が増加し始めるときに前記出力端子を流れる出力電流の絶対値が増加し始め、前記出力電圧が前記固定電圧に到達する前に前記出力電流の絶対値が最大ピークに到達し、前記出力電圧が前記固定電圧に到達するときに前記出力電流の絶対値は前記最大ピークの値よりも減少してもよい。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図において、同一又は相当部分には、同一の符号が付され、重複する説明は省略される場合がある。
また、以下で説明される実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置、接続形態、波形などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態1)
[ゲート駆動装置の全体構成]
図1は、実施の形態1に係るゲート駆動装置100の構成例を示す。ゲート駆動装置100は、電圧制御型のパワースイッチング素子Pを、共振により発生する制御信号をもとに駆動する。電圧制御型のパワースイッチング素子Pは、ゲートを容量とみなせるパワースイッチング素子である。パワースイッチング素子Pは、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であってもよい。図3以降では、電圧制御型のパワースイッチング素子Pのうち、入力容量Cissに相当する部分を、等価回路で容量C1として描く場合がある。なお、後述のとおり、容量C1は、パワースイッチング素子Pの入力容量Cissと、その他の寄生容量とから構成されてもよい。
パワースイッチング素子Pは、制御端子と、第一導通端子と、第二導通端子とを備える。例えば、パワースイッチング素子PがMOSFETである場合、制御端子はゲート端子であり、第一導通端子及び第二導通端子の一方はソース端子であり、他方はドレイン端子である。例えば、パワースイッチング素子PがIGBTである場合、制御端子はゲート端子であり、第一導通端子及び第二導通端子の一方はコレクタ端子であり、他方はエミッタ端子である。また、第一導通端子及び第二導通端子の一方は、制御端子の電圧の基準となる基準端子となる。以下では、パワースイッチング素子PがMOSFETであり、制御端子はゲート端子であり、第一導通端子がソース端子であり、第二導通端子がドレイン端子であり、ソース端子が基準端子である例について説明する。また、ゲート端子とソース端子の間の電圧を、ゲート電圧と呼ぶ場合がある。ドレイン端子とソース端子の間の電圧をドレイン電圧と呼ぶ場合がある。ただし、パワースイッチング素子Pはこれに限定されず、上記の通り適宜読み替えることによって他の形態も説明される。
ゲート駆動装置100は、ゲート駆動部10及び制御回路20を備える。ゲート駆動部10と制御回路20は同一基板に実装されてもよいし、別々の基板に実装されてもよい。ゲート駆動部10は、電源E1、共振回路部11及びクランプ部12を有する。共振回路部11は、コイルL1及び回収部を有する。回収部は、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2、第1回収ダイオードD1及び第2回収ダイオードD2を含む。クランプ部12は、第1クランプスイッチSW3、第2クランプスイッチSW4、第1クランプダイオードD3、第2クランプダイオードD4、第1抵抗R1及び第2抵抗R2を含む。
共振回路部11のコイルL1の入力側端子は、第1回収スイッチSW1を介して電源E1の第1基準電位線と接続可能な構成である。第1基準電位線は、第1基準電位Vccを与える。共振回路部11のコイルL1の入力側端子は、第2回収スイッチSW2を介して電源E1の第2基準電位線と接続可能な構成である。第2基準電位線は、第2基準電位Vssを与える。第1基準電位Vccは、第2基準電位Vssよりも高い。コイルL1の出力側端子は、パワースイッチング素子Pの制御端子であるゲート端子に直列に接続される。電源E1の第2基準電位Vssと、パワースイッチング素子Pのソース電位は共通する。従ってコイルL1と容量C1はLC直列共振回路を構成する。
なお、第1基準電位Vccは第一電位の一例であり、第二基準電位Vssは第二電位の一例である。第1基準電位線は第一電位線の一例であり、第二基準電位線は第二電位線の一例である。また、本開示において、第一電位線は、第一電位を有する電流経路であればよく、配線でなくてもよい。同様に、第二電位線は、第二電位を有する電流経路であればよく、配線でなくてもよい。例えば、配線でない電流経路は、回路素子の端子同士を接続することによって形成される電流経路であってもよい。
本開示において第1回収スイッチが充電用スイッチと呼ばれ、第2回収スイッチが放電用スイッチと呼ばれることがある。本開示において、後述する中点方式以外の場合において、第1回収ダイオードが放電用ダイオードと呼ばれ、第2回収ダイオードが充電用ダイオードと呼ばれることがある。本開示において、コイルの入力側端子が第一端子と呼ばれ、出力側端子が第二端子と呼ばれることがある。
電源E1は、パワースイッチング素子のゲート端子に第1基準電位Vccまたは第2基準電位Vssを供給する。例えば、電源E1は、パワースイッチング素子Pがオン状態のとき、パワースイッチング素子Pのゲート電位を第1基準電位Vccと同電位に固定し、パワースイッチング素子Pがオフ状態のとき、ゲート電位を第2基準電位Vssと同電位に固定する。換言すれば、電源E1は、パワースイッチング素子Pのスイッチングが完了した後の安定した状態において、パワースイッチング素子Pのゲート端子及びソース端子間に、固定電圧を印加する。
図1に示される例では、第2基準電位Vssとパワースイッチング素子Pのソース端子とが同電位である。そのため、パワースイッチング素子Pのゲート電位が第1基準電位Vccに固定されるとき、パワースイッチング素子Pのソース端子を基準とするゲート端子の電圧は、Vcc−Vss、すなわち電源E1の電圧と等しい。パワースイッチング素子Pのゲート電位が第2基準電位Vssに固定されるとき、パワースイッチング素子Pのソース端子を基準とするゲート端子の電圧は、0Vである。なお、本開示において、「AとBが同じ電位である」「Aの電位がBの電位に到達する」とは、Aの電位とBの電位との間に、例えば配線抵抗、トランジスタのオン抵抗、及び電気素子の寄生抵抗に由来する微小な電位差が生じる場合をも含む。なお、電源E1は、ゲート駆動装置100の外部に配置されてもよい。
第1回収スイッチSW1は、第1基準電位線とコイルL1の入力側端子の間に設けられる。第2回収スイッチSW2は、第2基準電位線とコイルL1の入力側端子の間に設けられる。図1は、第1回収スイッチSW1がpチャンネル型のMOSFETであり、第2回収スイッチSW2がnチャンネル型のMOSFETである例を示す。pチャンネル型のMOSFETには、ドレインからソース方向を順方向とする寄生ダイオードが形成される。nチャンネル型のMOSFETには、ソースからドレイン方向を順方向とする寄生ダイオードが形成される。なお、第1回収スイッチSW1および第2回収スイッチSW2は、例えば、バイポーラトランジスタ、リレー等の他のスイッチング素子であってもよい。
第1回収ダイオードD1は、第1基準電位線とコイルL1の入力側端子の間に逆方向に設けられる。逆方向とは、第1基準電位Vcc側から第2基準電位Vss側の方向に電流が流れている状態で、電位が高い方の端子にカソード端子が接続され、電位が低い方の端子にアノード端子が接続される方向である。すなわち、第1回収ダイオードD1は、第1基準電位線とコイルL1の入力側端子の間に逆バイアスで接続される。第2回収ダイオードD2は、コイルL1の入力側端子と第2基準電位線との間に逆方向に設けられる。すなわち、第2回収ダイオードD2は、コイルL1の入力側端子と第2基準電位線との間に逆バイアスで接続される。図面上ではダイオードが接続されるべき2点のうち、上側の点にカソード端子が接続され、下側の点にアノード端子が接続されている。後述するように、回生電流または循環電流が発生すると、第2基準電位線側から第1基準電位線側の方向に電流が流れる場合がある。その場合、逆方向に設けられた第1回収ダイオードD1及び第2回収ダイオードD2は通電する。第1回収ダイオードD1のカソード端子は、第1基準電位線に接続され、第2回収ダイオードD2のアノード端子は、第2基準電位線に接続される。第1回収ダイオードD1及び第2回収ダイオードD2は、例えば、ショットキーバリアダイオードであってもよい。
第1クランプスイッチSW3は、第1基準電位線とコイルL1の出力側端子の間に設けられる。第2クランプスイッチSW4は、第2基準電位線とコイルL1の出力側端子の間に設けられる。図1は、第1クランプスイッチSW3がpチャンネル型のMOSFETであり、第2クランプスイッチSW4がnチャンネル型のMOSFETである例を示す。第1クランプダイオードD3は、第1基準電位VccとコイルL1の出力側端子の間に逆方向に設けられる。すなわち、第1クランプダイオードD3は、第1基準電位線とコイルL1の出力側端子との間に逆バイアス接続される。第2クランプダイオードD4は、コイルL1の出力側端子と第2基準電位線との間に逆方向に設けられる。すなわち第2クランプダイオードD4は、コイルL1の出力側端子と第2基準電位線との間に逆バイアス接続される。第1クランプダイオードD3及び第2クランプダイオードD4は、例えば、ショットキーバリアダイオードであってもよい。
第1抵抗R1は、第1クランプスイッチSW3とコイルL1の出力側端子との間に挿入される。第2抵抗R2は、コイルL1の出力側端子と第2クランプスイッチSW4との間に挿入される。第1抵抗R1及び第2抵抗R2は、パワースイッチング素子Pのゲート及びソース間のリンギングを抑制するためのものである。なお、第1抵抗R1及び第2抵抗R2は省略されてもよい。その場合、ゲート駆動部10はリンギング抑制機能を有しない。
ゲート駆動部10は、コイルL1、4つのスイッチSW1〜SW4、及び4つのダイオードD1〜D4を含むブリッジ回路を有する。第1クランプスイッチSW3及び第1クランプダイオードD3は並列接続される。第1クランプスイッチSW3がオン状態のとき、パワースイッチング素子Pのゲート電位は第1基準電位Vccにクランプされる。パワースイッチング素子Pのゲート電位が第1基準電位Vccより高くなると、第1クランプダイオードD3を介してゲート端子から電流が引き抜かれる。パワースイッチング素子Pのゲート電位が第1基準電位Vccより低くなると、第1クランプスイッチSW3を介してゲート端子に電流が供給される。
第2クランプスイッチSW4及び第2クランプダイオードD4は並列接続される。第2クランプスイッチSW4がオン状態のとき、パワースイッチング素子Pのゲート電位は第2基準電位Vssにクランプされる。パワースイッチング素子Pのゲート電位が第2基準電位Vssより高くなると、第2クランプスイッチSW4を介してゲート端子から電流が引き抜かれる。パワースイッチング素子Pのゲート電位が第2基準電位Vssより低くなると、第2クランプダイオードD4を介してゲート端子に電流が供給される。
パワースイッチング素子Pがターンオンされる際、第1回収スイッチSW1がターンオンすることによって、容量C1が充電され始め、コイルL1にエネルギーが蓄積される。その後、第1回収スイッチSW1がターンオフするとコイルL1、容量C1及び第2回収ダイオードD2により閉ループが形成され、コイルL1に蓄積されたエネルギーによって、容量C1が充電される。
パワースイッチング素子Pがターンオフされる際、第2回収スイッチSW2がターンオンすることによって、容量C1が放電され始め、放電されたエネルギーがコイルL1に蓄積される。その後、第2回収スイッチSW2がターンオフすると、コイルL1と容量C1に残っているエネルギーが、第1回収ダイオードD1を介して電源E1に回生される。
制御回路20は、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2、第1クランプスイッチSW3及び第2クランプスイッチSW4を制御する。具体的には、各スイッチSW1〜SW4の制御端子(図1ではゲート端子)にパルス信号を入力して、各スイッチSW1〜SW4のオン/オフ状態を制御する。以下、具体的な動作例を説明する。
[検討例]
実施の形態1に係る制御方法を説明する前に、本発明者らが検討した検討例について説明する。
図2は、検討例に係る、各スイッチSW1〜SW4に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgs、およびコイル電流ILの波形を模式的に示す。ゲート電圧Vgsはゲート駆動部10からパワースイッチング素子Pのゲート端子及びソース端子間に印加される電圧を示す。ここでは、ゲート電圧Vgsの基準電位は第2基準電位Vssである。コイル電流ILはコイルL1に流れる電流を示す。検討例において、パワースイッチング素子Pは、ゲート電圧Vgsがローレベルからハイレベルに立ち上がることによりターンオンし、ゲート電圧Vgsがハイレベルからローレベルに立ち下がることによりターンオフする。
図3の(a)、(b)および(c)は、それぞれ、図2に示される第1状態(i)、第2状態(ii)および第3状態(iii)において、ゲート駆動部10内とパワースイッチング素子Pの入力容量とを流れる電流経路を示す。図4の(a)、(b)および(c)は、それぞれ、図2に示される第4状態(iv)、第5状態(v)および第6状態(vi)において、ゲート駆動部10内とパワースイッチング素子Pの入力容量とを流れる電流経路を示す。図3及び図4において、回路構成を分かりやすくするために、各スイッチSW1〜SW4は、MOSFETの記号ではなくスイッチの記号で描かれている。また、図3及び図4において、第1抵抗R1及び第2抵抗R2が省略されている。
図2において、パワースイッチング素子Pをターンオンする場合について説明する。
まず、制御回路20は、第1回収スイッチSW1をターンオンすることによって、第1回収スイッチSW1がオンであって、かつ、第1クランプスイッチSW3、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである状態にする。この状態は、第1状態(i)または第2状態(ii)と呼ばれる。第1状態(i)は、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達する前の状態である。第2状態(ii)は、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達した後の状態である。第1基準電位Vccは、パワースイッチング素子Pがオン状態であるときの固定電位である。
図3(a)に示すように、第1状態(i)において、電源E1から第1回収スイッチSW1を介してコイルL1及び容量C1に電流が流れる。これにより、コイルL1にエネルギーが蓄積され、容量C1が充電される。図2に示すように、ゲート電圧Vgs及びコイル電流ILは共に増加している。このとき、コイルL1と容量C1とが共振しているため、第1基準電位線からパワースイッチング素子Pのゲート端子に向かう方向に共振電流が流れている。
図2に示すように、第2状態(ii)において、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達している。この状態において、コイルL1の両端の電位は第1基準電位Vccになる。そのため、図3(b)に示すように、コイルL1に蓄積されたエネルギーによって流れる電流は、容量C1を充電しなくなり、第1クランプダイオードD3及び第1回収スイッチSW1を介して循環する。このとき、配線抵抗がゼロである理想的な配線であれば、循環電流による電力損失は発生しない。しかし、実際には、配線抵抗が存在するため、循環電流による電力損失が発生する。図2に示すように、この期間のコイル電流ILは、一定ではなく、少し減少している。このコイル電流ILの減少は、配線抵抗と、各回収スイッチのオン抵抗及び各クランプスイッチのオン抵抗による電力損失を示している。
次に、制御回路20は、第1回収スイッチSW1をターンオフすることによって、第1回収スイッチSW1、第1クランプスイッチSW3、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第3状態(iii)にする。図3(c)に示すように、コイルL1に蓄積されたエネルギーによって流れる電流は、第1クランプダイオードD3、電源E1、第2回収ダイオードD2の経路で電源E1に回生する。このとき、配線抵抗がゼロである理想的な配線であれば、回生電流による電力損失は発生しない。しかし、実際には、配線抵抗が存在するため、回生電流による電力損失が発生する。コイルL1に蓄積されたエネルギーが消滅すると、回生電流が流れなくなり、図2に示すようにコイル電流ILがゼロになる。
次に、制御回路20は、第1クランプスイッチSW3をターンオンすることによって、第1クランプスイッチSW3がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである状態にする。この状態では、ゲート電位が第1基準電位Vccに固定される。
次に、図2において、パワースイッチング素子Pをターンオフする場合について説明する。
まず、制御回路20は、第2回収スイッチSW2をターンオンすることによって、第2回収スイッチSW2がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第1クランプスイッチSW3及び第2クランプスイッチSW4がオフである状態にする。この状態は、第4状態(iv)または第5状態(v)と呼ばれる。第4状態(iv)はゲート電位が第2基準電位Vssに到達する前の状態である。第5状態(v)はゲート電位が第2基準電位Vssに到達した後の状態である。第2基準電位Vssは、パワースイッチング素子Pがオフ状態であるときの固定電位である。
図4(a)に示すように、第4状態(iv)において、容量C1が放電され、コイルL1および第2回収スイッチSW2を流れる電流によって、コイルL1にエネルギーが蓄積される。図2に示すように、ゲート電圧Vgsが低下し、コイル電流ILが負方向に増加している。このとき、コイルL1と容量C1とが共振しているため、パワースイッチング素子Pのゲート端子から第2基準電位線に向かう方向に共振電流が流れている。
図2に示すように、第5状態(v)において、ゲート電位が第2基準電位Vssに到達している。この状態において、コイルL1の両端の電位は第2基準電位Vssになる。そのため、図4(b)に示すように、コイルL1に蓄積されたエネルギーによって流れる電流は、第2回収スイッチSW2及び第2クランプダイオードD4を介して循環する。この循環電流により電力損失が発生する。
次に、制御回路20は、第2回収スイッチSW2をターンオフすることによって、第1回収スイッチSW1、第1クランプスイッチSW3、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第6状態(vi)にする。図4(c)に示すように、コイルL1に蓄積されたエネルギーによって流れる電流は、第1回収ダイオードD1、電源E1、第2クランプダイオードD4の経路で電源E1に回生する。この回生電流により電力損失が発生する。コイルL1に蓄積されたエネルギーが消滅すると、回生電流が流れなくなり、図2に示すようにコイル電流ILがゼロになる。
次に、制御回路20は、第2クランプスイッチSW4をターンオンすることによって、第2クランプスイッチSW4がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2及び第1クランプスイッチSW3がオフである状態にする。この状態では、ゲート電位が第2基準電位Vssに固定される。図2において、コイル電流ILの斜線領域は、容量C1の充放電に利用されない無駄な電流が流れている状態を示している。
[制御方法1]
図5は、実施の形態1に係る、各スイッチSW1〜SW4に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgs、およびゲート電流Igの波形の一例を模式的に示す。ゲート電圧Vgsはゲート駆動部10からパワースイッチング素子Pのゲート端子及びソース端子間に印加される電圧を示す。ここでは、ゲート電圧Vgsの基準電位は第2基準電位Vssである。ゲート電流Igはゲート駆動部10からパワースイッチング素子Pのゲート端子に流れる電流を示す。
図6の(a)、(b)および(c)は、それぞれ、図5に示される第1状態(i)、第2状態(ii)および第3状態(iii)において、ゲート駆動部10内とパワースイッチング素子Pの入力容量とを流れる電流経路を示す。図7の(a)、(b)および(c)は、それぞれ、図5に示される第4状態(iv)、第5状態(v)および第6状態(vi)において、ゲート駆動部10内とパワースイッチング素子Pの入力容量とを流れる電流経路を示す。図6及び図7において、回路構成を分かりやすくするために、各スイッチSW1〜SW4は、MOSFETの記号ではなくスイッチの記号で描かれている。また、図3及び図4において、第1抵抗R1及び第2抵抗R2が省略されている。
図5において、パワースイッチング素子Pをターンオンする場合について説明する。
まず、制御回路20は、第1回収スイッチSW1をターンオンすることによって、第1回収スイッチSW1がオンであって、かつ、第1クランプスイッチSW3、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第1状態(i)にする。図6(a)に示すように、第1状態(i)において、電源E1から第1回収スイッチSW1を介してコイルL1及び容量C1に電流が流れる。これにより、コイルL1にエネルギーが蓄積され、容量C1が充電される。図5に示すように、ゲート電圧Vgs及びゲート電流Igは共に増加している。このとき、コイルL1と容量C1とが共振しているため、第1基準電位線からパワースイッチング素子Pのゲート端子へ向かう方向に共振電流が流れている。
次に、制御回路20は、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達する前に、第1回収スイッチSW1をターンオフし、第1回収スイッチSW1、第1クランプスイッチSW3、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第2状態(ii)にする。図6(b)に示すように、第2状態(ii)において、コイルL1、容量C1、第2回収ダイオードD2により閉ループが形成される。コイルL1に蓄積されたエネルギーによって流れる電流が、容量C1を充電する。すなわち、コイルL1から容量C1に向かう方向に共振電流が流れる。コイルL1に蓄積されたエネルギーによって流れる電流は、還流電流および回生電流とならず、全て容量C1に充電される。
次に、制御回路20は、第1クランプスイッチSW3をターンオンすることによって、第1クランプスイッチSW3がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第3状態(iii)にする。図6(c)に示すように、第1クランプスイッチSW3がターンオンされた時点でゲート電位が第1基準電位Vccに到達していない場合、第1基準電位Vccから第1クランプスイッチSW3を介して、ゲート端子にクランプ電流が流れる。その後、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達すると、クランプ電流が流れなくなり、ゲート電位が第1基準電位Vccに固定される。なお、図2に示される検討例のように、第1クランプスイッチSW3がターンオンされた時点でゲート電位が第1基準電位Vccに到達している場合、クランプ電流は流れない。
次にパワースイッチング素子Pをターンオフする場合について説明する。
まず、制御回路20は、第2回収スイッチSW2をターンオンすることによって、第2回収スイッチSW2がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第1クランプスイッチSW3及び第2クランプスイッチSW4がオフである第4状態(iv)にする。図7(a)に示すように、第4状態(iv)において、容量C1が放電され、コイルL1および第2回収スイッチSW2を流れる電流によって、コイルL1にエネルギーが蓄積される。図5に示すように、ゲート電圧Vgsが低下し、ゲート電流Igが負方向に増加している。コイルL1と容量C1とが共振しているため、パワースイッチング素子Pのゲート端子から第2基準電位線に向かう方向に共振電流が流れている。
次に、制御回路20は、ゲート電位が第2基準電位Vssに到達する前に第2回収スイッチSW2をターンオフし、第1回収スイッチSW1、第1クランプスイッチSW3、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第5状態(v)にする。図7(b)に示すように、第5状態(v)において、コイルL1に蓄積されたエネルギーによって流れる電流が、容量C1を放電させ、第1回収ダイオードD1を介して電源E1にエネルギーを回生させる。すなわち、共振電流は、容量C1及びコイルL1から第1回収ダイオードD1を介して電源E1に回生される。このようにコイルL1に蓄積されたエネルギーは全て電源E1に回生される。
次に、制御回路20は、第2クランプスイッチSW4をターンオンすることによって、第2クランプスイッチSW4がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2及び第1クランプスイッチSW3がオフである第6状態(vi)にする。図7(c)に示すように、第2クランプスイッチSW4がターンオンされた時点でゲート電位が第2基準電位Vssに到達していない場合、容量C1から第2クランプスイッチSW4を介して第2基準電位Vssにクランプ電流が流れる。その後、ゲート電位が第2基準電位Vssに到達すると、クランプ電流が流れなくなり、ゲート電位が第2基準電位Vssに固定される。なお、図2に示される検討例のように、第2クランプスイッチSW4がターンオンされた時点でゲート電位が第2基準電位Vssに到達している場合、クランプ電流は流れない。
[検討例と制御方法1の実施例1との比較]
図8は、検討例に係るシミュレーション結果の一例を示す。図9は、実施の形態1の実施例1に係るシミュレーション結果の一例を示す。図8および図9は、ゲート電圧Vgs、コイル電流IL、およびゲート電流Igの関係を示している。実験の前提条件は以下の通りであった。駆動対象のパワースイッチング素子Pは、ドレイン電流Idが100Aクラスのパワーモジュールであった。第1基準電位Vccが20V、第2基準電位Vssが−5Vに設定された。コイルL1のインダクタンス値が数100nH、ゲート抵抗の抵抗値が数Ω、容量C1の容量値が数10nFにそれぞれ設定された。
実施例1と検討例の違いは、第1回収スイッチSW1をターンオフするタイミングである。実施例において、制御回路20は、第1回収スイッチSW1がターンオンされた後であって、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達する前に、第1回収スイッチSW1をターンオフした。一方、検討例において、制御回路20は、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達した後に、第1回収スイッチSW1をターンオフした。第1基準電位Vccは、パワースイッチング素子Pをオン状態に固定するための固定電位である。
第1回収スイッチSW1のオン時間を長くすれば、ゲート電位を確実に固定電位まで到達させることができる。しかし、第1回収スイッチSW1のオン時間を長くすれば、コイルL1に過剰なエネルギーが蓄積され、過剰な電流が発生しやすくなる。コイルL1から流れる過剰な電流は、循環電流または回生電流として流れる。図8において、ゲート電流Igとコイル電流ILとが途中一致しない箇所がある。これは、コイル電流ILが循環電流または回生電流として流れる期間であり、コイル電流ILが容量C1に充電されない期間である。上述のように、循環電流または回生電流が流れると、電流経路上の抵抗成分によって損失が発生する。
抵抗成分が存在しない理想的なLC直列共振回路において、コイルと容量の間のノード電位が入力電位の1/2に到達した時点で、コイルから容量に電流を流し始めると、容量への充電に過不足が発生しない。そのため、実施例1において、第2基準電位Vssを基準として、ゲート電位が第1基準電位Vccの1/2に到達した時点で第1回収スイッチSW1がターンオフされて、コイルL1を流れる電流によって容量C1を充電し始める。コイルと容量の間のノード電位が入力電位の1/2に到達する時点は、共振周期の1/6の時点に相当する。なお、共振周期Tは、2π√(LC)で表される。Cはゲート−ソース間に存在する寄生容量である。例えば、キャパシタンスCは、パワースイッチング素子Pのゲート−ソース間容量とその他のキャパシタの容量との合計であってもよい。なお、パワースイッチング素子Pのゲート−ソース間容量は、実際にはドレイン電圧Vdsにより変動するが、ドレイン電圧Vdsが0Vの時の容量として定義される。また、インダクタンスLは、容量Cを含む閉ループ内のインダクタンスである。例えば、インダクタンスLは、コイルL1のインダクタンスと、その閉ループ内の配線によるインダクタンスとの合計である。
実施例1において、制御回路20は、第1回収スイッチSW1がターンオンされてから共振周期の約1/6が経過した時点(すなわち、ゲート電位が第1基準電位Vccの約1/2の電位に到達した時点)で、第1回収スイッチSW1をターンオフした。これに対して検討例において、制御回路20は、第1回収スイッチSW1がターンオンされてから共振周期の約30%が経過した時点で、第1回収スイッチSW1をターンオフしている。なお、検討例は、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達するまでの時間が抵抗によって大きくなるため、第1回収スイッチSW1がターンオンされてからターンオフされるまでの期間は、共振周期の30%に設定された。
実施例1において、制御回路20は、第1回収スイッチSW1をターンオフしてから、設定期間が経過した後に、第1クランプスイッチSW3をターンオンした。実施例1において、共振電流がゼロになった後に、第1クランプスイッチSW3がターンオンされた。第1クランプスイッチSW3がターンオンされることにより、パワースイッチング素子Pのゲート電位が、第1基準電位Vccにクランプされた。ただし、第1クランプスイッチSW3がターンオンされるタイミングは、共振電流がゼロになる前であってもよい。
実施例1は、パワースイッチング素子Pのゲート電位が第1基準電位Vccに到達する前に第1回収スイッチSW1がターンオフされた。そのため、共振電流のみでは、パワースイッチング素子Pのゲート電位を第1基準電位Vccに到達させることができなかった。具体的には、図5及び図9に示す例において、第1基準電位Vccに基づいて生じる共振電流と、コイルL1に蓄積されたエネルギーに基づいて生じる共振電流とだけでは、ゲート電位を第1基準電位Vccに到達させることができなかった。このため、第1クランプスイッチSW3がターンオンされることによって、第1基準電位線から第1クランプスイッチSW3を介してパワースイッチング素子Pのゲート端子にクランプ電流が流れ、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達するまでゲート端子に電荷が供給された。
検討例と実施例1とは、第1回収スイッチSW1がターンオンされてからターンオフされるまでのオン時間が異なるため、ゲート電流Igの波形が異なった。検討例において、ゲート電流Igは、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達した時点で、ピーク値を示した。一方、実施例1において、ゲート電流Igは、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達する前にピーク値を示し、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達した時点では、ゲート電流Igがピーク値から減少していた。
以下、実施例1のゲート電流Igについて、より詳細に説明する。パワースイッチング素子Pをターンオンする動作は、第1回収スイッチSW1をターンオンすることにより始まった。ゲート電流Igの絶対値は、第1回収スイッチSW1のターンオン時から増加し続けた。ゲート電位が第1基準電位Vccに到達する前に、ゲート電流Igの絶対値は最大ピーク値に到達した。ゲート電流Igの絶対値は、最大ピーク値に到達した後に減少した。その後、ゲート電流Igの絶対値は、再度増加し、当該最大ピーク値より小さいピーク値に到達した。その後、ゲート電流Igの絶対値は、再度減少した。
実施例1において、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達する前に第1回収スイッチSW1がターンオフされ、その後、ゲート電流Igが減少した後に第1クランプスイッチSW3がターンオンされた。そのため、ゲート電流Igに2つの山が発生した。2つの山のピークのうち、最初のピークのほうが大きかった。なお、第1クランプスイッチSW3がターンオンされた際に、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達している場合、クランプ電流が流れないため、山は1つになる。いずれの場合も、共振電流のほうがクランプ電流より大きいため、最初に発生する山のピークが、ゲート電流Igの最大ピーク値になると予測される。
ゲート電位が第1基準電位Vccに到達したときのゲート電流Igの絶対値は、ゲート電流Igの絶対値の最大ピーク値の2/3より小さくてもよい。ゲート電位が第1基準電位Vccに到達したときのゲート電流Igの絶対値は、ゲート電流Igの絶対値の最大ピーク値の1/2より小さくてもよい。ゲート電位が第1基準電位Vccに到達したときのゲート電流Igの絶対値は、実質的にゼロであってもよい。この場合、回生電流が完全に抑制される。
検討例および実施例1において、制御回路20は、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2、第1クランプスイッチSW3、及び第2クランプスイッチSW4のオン/オフを制御する。これにより、ゲート電圧Vgs及びゲート電流Igが発生し、パワースイッチング素子Pのゲート端子に供給される。なお、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2、第1クランプスイッチSW3、及び第2クランプスイッチSW4がオンまたはオフされるタイミングは、理論値、又は実験もしくはシミュレーションにより得られた値にもとづき決定されてもよい。それらのタイミングの情報は制御回路20内に予め記録されていてもよい。なお、実施例1とは異なるが、例えば、ゲート駆動装置100が、ゲート電圧Vgs及び/又はゲート電流Igを検出する検出部を備え、検出部によって検出された検出値が制御回路20にフィードバックされてもよい。この場合、制御回路20が、検出値にもとづいて、各スイッチのオン/オフのタイミングを決定してもよい。
図10は、制御方法の検討例の実験結果を詳細に示す。図11は、実施の形態1に係る制御方法1の実施例1の実験結果を詳細に示す。図10および図11は、ゲート電圧Vgs、コイル電流IL、およびゲート電流Igに加えて、ドレイン電圧Vds、ドレイン電流Id、およびターンオン損失Eonの関係を示している。図10に示される実験結果は、図8に示されるシミュレーション結果に対応しており、図11に示される実験結果は、図9に示されるシミュレーション結果に対応している。
パワースイッチング素子Pは、例えば、ゲート電圧Vgsが閾値電圧Vthを超えるとターンオンする。パワースイッチング素子Pのスイッチング速度は、閾値電圧Vthを超える付近におけるゲート電圧の時間変化率ΔVgs/Δtが大きいほど、早い。そして、ゲート電圧の時間変化率ΔVgs/Δtは、ゲート電流Igが大きいほど、大きい。
以下、より具体的に説明する。パワースイッチング素子Pの入力容量Cissが理想キャパシタである場合、下記式(1)が成り立つ。
Ig=Ciss・ΔVgs/Δt ・・・式(1)
このように、ゲート電圧の時間変化率ΔVgs/Δtは、ゲート電流Igに比例する。なお、実際のパワースイッチング素子Pにおいて、入力容量Cissはドレイン電圧Vdsに依存する。そのため、電圧の時間変化率ΔVgs/Δtとゲート電流Igとは完全には比例しない。しかしながら、電圧の時間変化率ΔVgs/Δtとゲート電流Igとは比例関係に似た関係となる。パワースイッチング素子Pのオン抵抗は、ゲート電圧Vgsが高いほど低い。そのため、スイッチング時のゲート電流Igを大きくすることによって、電圧の時間変化率ΔVgs/Δtが大きくなり、パワースイッチング素子Pのオン抵抗を早く減少させることができる。
図10及び図11において、パワースイッチング素子Pがターンオンされるタイミングは、ターンオン損失Eonが最大となる時点に相当する。図10に示す検討例において、パワースイッチング素子がターンオンされるタイミングと、ゲート電流Igがピークとなるタイミングとは時間的に離れていた。具体的には、パワースイッチング素子Pのゲート電圧Vgsが閾値電圧Vthを超えることによってパワースイッチング素子Pがターンオンされ、その後、共振電流によってゲート電流Igが最大となった。一方、図11に示される実施例1において、パワースイッチング素子がターンオンされるタイミングの近辺で、ゲート電流Igが最大ピークとなった。
図10に示す検討例に係る実験結果と、図11に示す実施例1に係る実験結果とを比較すると、ドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtはほぼ同じであった。ターンオン損失Eonも両者の間でほぼ同じであった。ゲート−ソース間のリンギング電圧も両者の間でほぼ同じであった。ゲート駆動部10の損失であるドライバ損失Pdrvは、実施例1のほうが検討例よりも小さかった。
上述のように、検討例と実施例1とは、第1回収スイッチSW1がターンオフされるタイミングが異なる。以下では、共振周期に対する第1回収スイッチSW1のオン時間の割合を、オン時間/共振周期と呼ぶ場合がある。実施例1のオン時間/共振周期は1/6(≒16.7%)であり、検討例のオン時間/共振周期は30%であった。
図12は、オン時間/共振周期と、ドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δt及びドライバ損失Pdrvとの関係の一例を示す。三角マークでプロットされている折れ線グラフがドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtを示し、丸マークでプロットされている折れ線グラフがドライバ損失Pdrvを示している。ドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtは、ゲート駆動装置100がパワースイッチング素子Pをスイッチングする際のスイッチング特性を示す指標の1つである。従って、ドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtが高く、かつ、ドライバ損失Pdrvが小さいゲート駆動装置が、高品質なゲート駆動装置となる。
ドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtは、オン時間/共振周期が15%以上となる範囲において、一定の値で安定した。オン時間/共振周期が15%以上となる範囲において、オン時間/共振周期が大きくなるほど、ドライバ損失Pdrvが大きくなった。これは、オン時間/共振周期が大きくなるほど、不要な循環電流や回生電流が発生するためである。一方、オン時間/共振周期が15%より低い範囲において、オン時間/共振周期が小さくなるほど、ドライバ損失Pdrvが大きくなった。これは、オン時間/共振周期が小さ過ぎると、共振電流によって到達させることのできる電位が低くなり、クランプ電流による損失が大きくなるためである。
上述のように検討例のオン時間/共振周期は30%、実施例1のオン時間/共振周期は16.7%であった。図12に示される通り、オン時間/共振周期が30%の場合と16.7%との場合とを比べると、ドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtはほぼ同じであった。一方、ドライバ損失Pdrvは、オン時間/共振周期が16.7%の場合のほうが、30%の場合よりも、かなり小さかった。図12に示される例では、オン時間/共振周期が16.7%の場合のドライバ損失Pdrvは、オン時間/共振周期が30%の場合のドライバ損失Pdrvに比べて、約17%低くなっていた。
このように、実施例1に係る駆動方法は、検討例に係る駆動方法と比較して、スイッチング特性が同等でありながら、ドライバ損失を大幅に削減でき、リンギング電圧も小さくできる。実施例1に係る駆動方法は、不要な循環電流および回生電流を発生させないため、ドライバ損失が低減された。また、スイッチング特性が同等である理由は、実施例1に係る駆動方法が、ゲート電流Igが最大になるタイミング付近でパワースイッチング素子Pをターンオンさせるためである。これにより、ゲート電流Igが効率的に使用される。
[共振電圧とゲート電圧の関係]
駆動装置に含まれる共振用電源及びコイルと、パワースイッチング素子の入力容量とは、LC直列共振回路を構成する。共振用の電源とは、共振時に構成される閉ループ内にある電源である。パワースイッチング素子の入力容量の電圧は、ゲート電圧に相当する。以下、共振電圧の振幅と、ゲート電圧の振幅との関係について説明する。
まず、共振電圧の振幅について説明する。共振が開始されると、パワースイッチング素子のゲート端子に、共振電流が流れ始める。このとき、共振電圧は、共振用電源が与える電位を基準として、実質的な共振源電圧を振幅とする波形で変動し始める。すなわち、もし閉ループ内を流れる電流が遮断されることがなく共振現象が継続されれば、パワースイッチング素子のゲート電圧は、実質的な共振源電圧の2倍の範囲を変動することができる。
ここで、実質的な共振源電圧とは、共振用電源が供給する電圧に対して、共振開始直前のゲート電圧を減算または加算した値である。例えば、ゲート電圧の立ち上がり直前において、パワースイッチング素子の入力容量が有する初期ゲート電圧が正の極性である場合、初期ゲート電圧は、共振用電源が供給する電圧を打ち消す方向に作用する。すなわち、ゲート電圧の立ち上がり時において、実質的な共振源電圧は、共振用電源が供給する電圧から、初期ゲート電圧を減算した値になる。例えば、ゲート電圧の立ち下がり直前において、パワースイッチング素子の入力容量が有する初期ゲート電圧が正の極性である場合、その初期ゲート電圧は、共振用電源が供給する電圧に上乗せされる方向に作用する。すなわち、ゲート電圧の立ち下がり時において、実質的な共振源電圧は、共振用電源が供給する電圧に、初期ゲート電圧を加算した値になる。なお、実質的な共振源電圧は、共振開始直後のコイルの両端電圧と等しい。LC直列共振回路において、コイルの両端に印加された電圧と等しい値が、容量に印加される共振電圧の振幅となる。
次に、ゲート電圧の振幅について説明する。パワースイッチング素子の制御端子の電位は、第二基準電位Vss及び第一基準電位Vccの間で切り替わる。別の見方をすれば、パワースイッチング素子のゲート電圧は、第一基準電位Vccと第二基準電位Vssの中間値を基準として、(Vcc−Vss)×1/2の振幅で変化する。本開示では、この振幅を、ゲート電圧の振幅と呼ぶ場合がある。
パワースイッチング素子は、実質的な共振源電圧がゲート電圧の振幅以上である場合に、共振電流によって一方の基準電位から他方の基準電位へと到達させることができる。しかし、実質的な共振源電圧が、ゲート電圧の振幅よりも大きい場合、過剰な電流が発生しうる。例えば、図1に示されるように、共振用電源が供給する電圧がVcc−Vssである場合、過剰な電流が発生しうる。
図2に示される検討例では、上述のように、過剰な電流は、循環電流及び回生電流として回収される。しかし、この場合、電力損失が生じる。図5に示される実施の形態1に係る制御方法の例では、入力容量の電圧がVcc−Vssに到達する前に、第1回収スイッチSW1がオフされる。そのため、循環電流及び回生電流が発生せず、電力損失が発生しない。すなわち、実施の形態1は、実質的な共振源電圧がゲート電圧の振幅よりも大きい場合に、適用されうる。
一方、実質的な共振源電圧を、ゲート電圧の振幅と等しくすることによって、過剰な電流を生じさせない方法が考えられる。例えば、図13に示される駆動装置は、第一基準電位Vcc及び第二基準電位Vssを与える電源E1と、電源E1の半分の電圧(Vcc−Vss)×1/2を与える共振用補助電源E2とを備える。この場合、入力容量C1に印加される電圧が(Vcc−Vss)×1/2に達した時点で、コイルへのエネルギーの蓄積が完了し、コイルに蓄積されたエネルギーが放出され始める。そのため、第1回収スイッチSW1がオフにされなくても、パワースイッチング素子に供給される共振電流が減衰する。そのため、共振用電源はLC直列共振回路に電圧を供給し続けても、パワースイッチング素子の制御端子を流れる共振電流が0近傍に減衰する。そのため、循環電流及び回生電流が発生しない。本開示では、パワースイッチング素子の制御端子を流れる共振電流が0近傍に減衰するまで共振用電源からの電圧がLC直列共振回路に供給され続ける方式を、中点方式(Middle voltage methodなど)と呼ぶ。
以下、実施の形態1に係る駆動方法と、中点方式に係る駆動方法と違いについて説明する。
図13は、中点方式で駆動されるゲート駆動部と、スイッチング素子Pの入力容量C1との構成を示す。図13に示されるゲート駆動部は、図1に示されるゲート駆動装置100と構成が異なる。図13に示されるゲート駆動部は、図1に示される実施の形態1のゲート駆動部10と比較して、補助電源E2を備える点、第1クランプダイオードD3及び第2クランプダイオードD4が省略されている点で相違する。補助電源E2は、電源E1により生成される第1基準電位Vccの1/2の電位を生成する。以下、補助電源E2が生成する電位を第3基準電位と呼び、第3基準電位を供給する電流経路を第3基準電位線と呼ぶ場合がある。図13に示される例において、補助電源E2の低電位側の基準電位は、第2基準電位Vssと共通である。
第1回収スイッチSW1と第2回収スイッチSW2の接続点に第3基準電位線が接続され、補助電源E2が共振用電源となる。
第1回収スイッチSW1の一端は第3基準電位線に接続され、他端は第1回収ダイオードD1のアノード端子に接続される。第1回収ダイオードD1のカソード端子は、コイルL1の入力側端子に接続される。図13は、第1回収スイッチSW1がpチャンネル型のMOSFETであり、pチャンネル型のMOSFETのソース端子が第3基準電位線に接続され、ドレイン端子が第1回収ダイオードD1のアノード端子に接続される例を示す。図13に示される例において、第1回収ダイオードD1のアノード端子は、pチャンネル型のMOSFETのドレイン端子に接続され、カソード端子はコイルL1の入力側端子に接続される。
第2回収スイッチSW2の一端は第3基準電位線に接続され、他端は第2回収ダイオードD2のカソード端子に接続される。第2回収ダイオードD2のアノード端子は、コイルL1の入力側端子に接続される。図13は、第2回収スイッチSW2がnチャンネル型のMOSFETであり、nチャンネル型のMOSFETのソース端子が第3基準電位線に接続され、ドレイン端子が第2回収ダイオードD2のカソード端子に接続される例を示す。図13に示される例において、第2回収ダイオードD2のカソード端子は、nチャンネル型のMOSFETのドレイン端子に接続され、アノード端子はコイルL1の入力側端子に接続される。
なお、第1回収スイッチSW1と第1回収ダイオードD1は第3基準電位線とコイルL1の入力側端子との間に直列に設けられればよい。例えば、第1回収スイッチSW1と第3基準電位線との間に第1回収ダイオードD1が設けられてもよい。第2回収スイッチSW2と第2回収ダイオードD2は第3基準電位線とコイルL1の入力端子との間に直列に設けられればよい。例えば、第2回収スイッチSW2と第3基準電位線との間に第2回収ダイオードD2が設けられてもよい。中点方式のゲート駆動部において、第1回収ダイオードが充電用ダイオードと呼ばれ、第2回収ダイオードが放電用ダイオードと呼ばれることがある。
中点方式において、パワースイッチング素子Pをターンオンする場合について説明する。まず、第1回収スイッチSW1がターンオンされて、コイルL1にエネルギーが蓄積され、容量C1が充電される。補助電源E2の電圧は、電源E1の電圧の1/2であるため、ゲート電位が第1基準電位Vccの1/2の電位である第3基準電位に到達すると、コイルL1へのエネルギーの蓄積が完了する。その後、コイルL1に蓄積されたエネルギーが放出され始める。従って、第1回収スイッチSW1がターンオフされなくても、ゲート電位が第3基準電位に到達すると、共振電流が減少し始める。次いで、共振電流がゼロになる近辺において、第1クランプスイッチSW3がターンオンされて、パワースイッチング素子Pのゲート端子にクランプ電流が流れる。このように、中点方式では、コイルL1に過剰なエネルギーが蓄積されず、過剰な共振電流が流れないため、不要な循環電流および回生電流が流れない。パワースイッチング素子Pをターンオフする場合についても、同様に説明される。
図14は、参考例1〜6における、第1回収スイッチSW1がターンオンされてからの経過時間とゲート電圧Vgsとの関係を示す。参考例1〜3は、図13に示される回路に対して、入力容量C1に直列に接続された抵抗Rsがさらに追加された回路を想定し、この回路の第1回収スイッチSW1をターンオンした後のゲート電圧Vgsの時間変化をシミュレートした。参考例1、2および3における抵抗Rsの抵抗値は、それぞれ、0Ω、1Ω、2Ωとした。参考例4〜6は、図1に示される回路に対して、入力容量C1に直列に接続された抵抗Rsがさらに追加された回路を想定し、この回路の第1回収スイッチSW1をターンオンした後のゲート電圧Vgsの時間変化をシミュレートした。参考例4、5および6における抵抗Rsの抵抗値は、それぞれ、0Ω、1Ω、2Ωとした。なお、参考例4、5および6は、ゲート電圧Vgが固定電圧に到達した後にも第1回収スイッチSW1がオン状態に維持される点で、実施の形態1の制御方法1と相違する。なお、参考例1〜6において、ゲート電圧Vgsの固定電圧は、いずれも25Vに設定された。なお、参考例1〜6において、抵抗Rsは、例えば、ゲート駆動部10内のコイルL1もしくは配線の抵抗成分、または、パワースイッチング素子Pの内部の抵抗に相当する。
図14に示されるとおり、参考例1〜3、および、参考例4〜6において、ゲート電圧Vgsが固定電圧レベルに到達するタイミングは、抵抗Rsの抵抗値が増大するほど遅くなった。
参考例2および参考例3において、ゲート電圧Vgsは固定電圧まで到達しなかった。これは、図13に示されるゲート駆動装置において、共振用電源E2が供給する電圧の2倍が、固定電圧と等しいことに起因する。この場合、抵抗Rsによって損失が生じた場合に、ゲート電圧Vgsを固定電圧まで到達させることが困難になる。中点方式で制御される参考例1〜3の場合、例えば、第1クランプスイッチSW3がターンオンされれば、クランプ電流による電荷が入力容量C1に供給され、ゲート電圧Vgsが固定電圧まで到達しうる。しかし、クランプ電流が大きくなるほど、クランプ部12での損失が大きくなる。
一方、参考例4〜6において、タイミングが異なるものの、いずれもゲート電圧Vgsが固定電圧に到達した。これは、図1に示されるゲート駆動装置100において、共振用電源E1が供給する電圧の2倍が、固定電圧よりも十分大きいことに起因する。したがって、この参考例4〜6の結果は、実施の形態1のゲート駆動装置100の次の効果を裏付ける。すなわち、実施の形態1のゲート駆動装置100は、たとえ寄生抵抗Rsを有する場合であっても、第1回収スイッチSW1をターンオフするタイミングが制御されることによって、ゲート電位を固定電位に近づけるために十分な共振電流が発生しうる。なお、同様の効果は、パワースイッチング素子Pをターンオフする場合にも奏される。すなわち、実施の形態1のゲート駆動装置100は、たとえ寄生抵抗Rsを有する場合であっても、第2回収スイッチSW2がターンオフされるタイミングを制御することによって、ゲート電位を固定電位に近づけるために十分な共振電流が発生しうる。
中点方式の制御方法の場合、オン時間/共振周期は1/2以上となる。一方、実施の形態1の制御方法の場合、オン時間/共振周期は1/6以上であればよい。すなわち、実施の形態1の制御方法は、第1回収スイッチSW1がターンオンしてから、共振周期の1/6の期間が経過した後であって、共振周期の1/2の期間が経過する前に、第1回収スイッチSW1をターンオフすることができる。
[まとめ]
実施の形態1に係る駆動方法は、無駄な循環電流および回生電流を抑制できるため、ゲート駆動装置100の電力損失を低減できる。また、実施の形態1に係る駆動方法は、ゲート電圧Vgsが閾値電圧Vthを超える近辺で、ゲート電流Igが最大ピーク値となるように制御する。従って、ゲート電流Igが効率的に使用されるため、パワースイッチング素子Pのスイッチング特性が維持または向上しうる。
(実施の形態1の種々の変形例)
以下、実施の形態1に係るゲート駆動装置100の変形例について説明する。なお、以下の説明において、図1に示される駆動装置100、および図5に示される制御方法と重複する部分については、説明および図示が省略される場合がある。例えば、図15〜21、23および24は、ゲート駆動部10およびパワースイッチング素子の入力容量C1を例示する。例えば、図15〜20に示されるゲート駆動装置100は、例えば図5に示される制御方法によって駆動されうる。
図15は、実施の形態1の変形例1に係るゲート駆動装置100の構成を示す。変形例1に係るゲート駆動装置100は、図1に示されるゲート駆動装置100に対して、第1回収ダイオードD1及び第2回収ダイオードD2が省略されている。変形例1に係るゲート駆動装置100は、第1回収スイッチSW1が第1MOSFETであり、第2回収スイッチSW2が第2MOSFETであり、第1回収ダイオードD1は第1MOSFETのボディダイオードであり、第2回収ダイオードD2は第2MOSFETのボディダイオードである。なお、図1に示されるように、MOSFETのボディダイオードと他のダイオードとが併用される場合、特性がよいダイオードに優先的に電流が流れる。
図16は、実施の形態1の変形例2に係るゲート駆動装置100の構成を示す。変形例2に係るゲート駆動装置100は、第1回収スイッチSW1及び第1クランプスイッチSW3が、nチャンネル型のMOSFETである。
図17は、実施の形態1の変形例3に係るゲート駆動装置100の構成を示す。変形例3に係るゲート駆動装置100は、電源E1の第2基準電位Vssが負電位に設定されている。パワースイッチング素子Pのソース端子と第2基準電位線との間に、補助電源E3が設けられている。そのため、パワースイッチング素子Pのソース端子には、第2基準電位線から第2基準電位Vssが供給されず、補助電源E3の電位が供給される。図17の例において、電源E1の第1基準電位Vccが20V、第2基準電位Vssが−5V、補助電源E3が供給する電圧は5Vであってもよい。この場合、変形例3に係るゲート駆動装置100は、パワースイッチング素子Pのゲート−ソース間に−5Vのゲート電圧を印加できる。変形例3に係るゲート駆動装置100は、例えば、パワースイッチング素子Pがノーマリーオン型のパワーデバイスまたは閾値の低いパワーデバイスである場合に、パワースイッチング素子Pのゲート−ソース間に負バイアスを印加させることができる。すなわち、変形例3に係るゲート駆動装置100は、パワースイッチング素子Pをターンオフした後に、パワースイッチング素子のゲート−ソース間の電圧を負電圧に固定できる。
図18は、実施の形態1の変形例4に係るゲート駆動装置100の構成を示す。変形例4に係るゲート駆動装置100は、第1回収スイッチSW1とコイルL1の入力側端子との間に逆流防止用のダイオードD5と、第2回収スイッチSW2とコイルL1の入力側端子との間に逆流防止用のダイオードD6とを、備える。逆流防止用のダイオードD5は、第1回収スイッチSW1のボディダイオードに電流が流れることを阻止でき、その電流を専ら第1回収ダイオードD1に流すことができる。逆流防止用のダイオードD6は、第2回収スイッチSW2のボディダイオードに電流が流れることを阻止でき、その電流を専ら第2回収ダイオードD2に流すことができる。
図19は、実施の形態1の変形例5に係るゲート駆動装置100の構成を示す。変形例5に係るゲート駆動装置100は、図1に示されるゲート駆動装置100に対して、第1クランプダイオードD3及び第2クランプダイオードD4が省略されている。第1クランプスイッチSW3が第3MOSFETである場合、第1クランプダイオードD3は第1MOSFETのボディダイオードである。第2クランプスイッチSW4が第4MOSFETである場合、第2クランプダイオードD4は第2MOSFETのボディダイオードである。なお、図1に示されるように、MOSFETのボディダイオードと他のダイオードが併用される場合、特性がよいダイオードに優先的に電流が流れる。
図20は、実施の形態1の変形例6に係るゲート駆動装置100の構成を示す。変形例6に係るゲート駆動装置100は、第1コイルL1と第2コイルL2とを備える。これにより、ゲート電圧Vgsの立ち上がり波形と、立ち下がり波形とが異なる形状になりうる。具体的には、第1コイルL1の入力側端子と第1基準電位線の間に第1回収スイッチSW1が接続され、第1コイルL1の入力側端子と第2基準電位線の間に逆方向に第2回収ダイオードD2が接続される。第1コイルL1の出力側端子はパワースイッチング素子Pのゲート端子に接続される。第2コイルL2の入力側端子と第1基準電位線の間に逆方向に第1回収ダイオードD1が接続され、第2コイルL2の入力側端子と第2基準電位線の間に第2回収スイッチSW2が接続される。第2コイルL2の出力側端子はパワースイッチング素子Pのゲート端子に接続される。この構成において、コイルL1とコイルL2のインダクタンス値を異ならせた場合、ゲート電圧Vgsの立ち上がり波形と、立ち下がり波形とが異なる。
図21は、実施の形態1の変形例7に係るゲート駆動装置100の構成を示す。変形例7に係るゲート駆動装置100は、図1に示されるゲート駆動装置100に対して第1クランプスイッチSW3及び第2クランプスイッチSW4が省略されている。変形例7に係るゲート駆動装置100は、パワースイッチング素子Pのゲート端子にクランプ電流を追加で流すことができない。そのため、変形例7に係るゲート駆動装置において、ゲート電圧Vgsが固定電圧に到達するために十分な共振電流が、パワースイッチング素子Pのゲート端子に供給される。
図22は、実施の形態1の変形例7に係る、スイッチSW1およびスイッチSW2に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgs、およびゲート電流Igの波形の一例を模式的に示す。図22のゲート電流Igの波形と図5のゲート電流Igの波形を比較すると、図22のゲート電流Igはクランプ電流による2つ目の山がない。また、図22のゲート電圧Vgsの波形と図5のゲート電圧Vgsの波形を比較すると、図22のゲート電圧Vgsの波形は、急速に立ち上がる。これは、変形例7に係るゲート駆動装置100において、比較的大きな共振電流が流れるためである。
図23は、実施の形態1の変形例8に係るゲート駆動装置100の構成を示す。変形例8に係るゲート駆動装置100は、図1に示されるゲート駆動装置100に対して第1クランプスイッチSW3、第2クランプスイッチSW4、第1クランプダイオードD3及び第2クランプダイオードD4が省略され、第1ツィナーダイオードDz1及び第2ツィナーダイオードDz2を追加されている。具体的には、コイルL1の出力側端子に第1ツィナーダイオードDz1のカソード端子が接続され、第1ツィナーダイオードDz1のアノード端子に第2ツィナーダイオードDz2のアノード端子が接続され、第2ツィナーダイオードDz2のカソード端子に第2基準電位線が接続される。変形例8に係るゲート駆動装置100は、図22に示される制御方法によって駆動されうる。これにより、変形例7と同様の効果を奏することができる。
図24は、実施の形態1の変形例9に係るゲート駆動装置100の構成を示す。変形例9に係るゲート駆動装置100は、図1に示されるゲート駆動装置100に対して、第2回収スイッチSW2及び第1回収ダイオードD1が省略されている。
図25は、実施の形態1の変形例9に係る、スイッチSW1、SW3およびSW4に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgs、およびゲート電流Igの波形の一例を模式的に示す。図25における、第1回収スイッチSW1および第1クランプスイッチSW3に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgsの立ち上がり波形、および立ち上がり時のゲート電流Igの波形は、図5に示される例と同様である。一方、図25における、第2クランプスイッチSW4に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgsの立ち下がり波形、および立ち下がり時のゲート電流Igの波形は、図5に示される例と異なる。具体的には、変形例9において、ゲート電圧Vgsの立ち下がり波形は、第2クランプスイッチSW4がターンオンされてから、RC時定数に従って減少する。なお、変形例9に係るゲート駆動装置100は、図1に示されるゲート駆動装置100に対して、第1回収スイッチSW1及び第2回収ダイオードD2が省略されてもよい。この場合、ゲート電圧Vgsの立ち上がり波形がRC時定数に従い増加する。
実施の形態1の変形例1〜9に係るゲート駆動装置100のうち、図1に示されるゲート駆動装置100から少なくとも一つの電気素子が省略されるものは、図1に示される例と比較して、回路面積およびコストが削減されうる。
(実施の形態2)
実施の形態2に係るゲート駆動装置および駆動方法について説明する。なお、実施の形態2は、実施の形態1と異なる部分のみが説明され、実施の形態1と同一の部分については説明が省略される場合がある。
実施の形態2に係るゲート駆動装置100は、例えば、図1に示される構成を備え、図5と異なる制御方法によってゲート駆動部10が駆動される。
[制御方法2]
図26は、実施の形態2に係る、各スイッチSW1〜SW4に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgs、およびゲート電流Igの波形の第1の例を模式的に示す。ゲート電圧Vgsはゲート駆動部10からパワースイッチング素子Pのゲート端子及びソース端子間に印加される電圧を示す。ここでは、ゲート電圧Vgsの基準電位は第2基準電位Vssである。ゲート電流Igはゲート駆動部10からパワースイッチング素子Pのゲート端子に流れる電流を示す。
図27の(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれ、図26に示される第1状態(i)、第2状態(ii)、第3状態(iii)および第4状態(iv)において、ゲート駆動部10内とパワースイッチング素子Pの入力容量とを流れる電流経路を示す。図28の(a)、(b)、(c)および(d)は、図26の第5状態(v)、第6状態(vi)、第7状態(vii)および第8状態(viii)におけるゲート駆動部10内とパワースイッチング素子Pの入力容量とを流れる電流経路を示す。図28及び図29において、回路構成を分かりやすくするために、各スイッチSW1〜SW4は、MOSFETの記号ではなくスイッチの記号で描かれている。また、第1抵抗R1及び第2抵抗R2が省略されている。
図26において、パワースイッチング素子Pをターンオンする場合について説明する。
まず、制御回路20は、第1回収スイッチSW1をターンオンすることによって、第1回収スイッチSW1がオンであって、かつ、第1クランプスイッチSW3、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第1状態(i)にする。図27(a)に示すように、第1状態(i)において、電源E1から第1回収スイッチSW1を介してコイルL1及び容量C1に電流が流れる。これにより、コイルL1にエネルギーが蓄積され、容量C1が充電される。図26に示すように、ゲート電圧Vgs及びゲート電流Igは共に増加している。このとき、コイルL1と容量C1とが共振しているため、第1基準電位線からパワースイッチング素子Pのゲート端子へ向かう方向に共振電流が流れている。
次に、制御回路20は、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達する前に第1回収スイッチSW1をターンオフし、第1回収スイッチSW1、第1クランプスイッチSW3、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第2状態(ii)にする。図27(b)に示すように、第2状態(ii)において、コイルL1、容量C1、第2回収ダイオードD2により閉ループが形成される。コイルL1に蓄積されたエネルギーによって流れる電流が、容量C1を充電する。すなわち、コイルL1から容量C1に向かう方向に共振電流が流れる。
次に、制御回路20は、共振電流が流れている間に第1クランプスイッチSW3をターンオンすることによって、第1クランプスイッチSW3がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第3状態(iii)にする。第1クランプスイッチSW3がターンオンされた時点でゲート電位が第1基準電位Vccに到達していない。そのため、図27(c)に示されるように、共振電流が第2回収ダイオードD2及びコイルL1を介して容量C1に流れ、クランプ電流が第1基準電位線から第1クランプスイッチSW3を介して容量C1に流れる。従って、第3状態(iii)では、共振電流とクランプ電流が同時にパワースイッチング素子Pのゲート端子に供給される。クランプ電流は、共振電流が流れる経路とは異なる経路を流れる。
コイルL1に蓄積されたエネルギーが無くなっても、まだゲート電位が第1基準電位Vccに到達していない場合、図27(d)に示されるように、クランプ電流は、第1基準電位線から第1クランプスイッチSW3を介して、パワースイッチング素子Pのゲート端子に至る経路で流れる。ゲート電位が第1基準電位Vccに到達すると、クランプ電流が流れなくなり、ゲート電位が第1基準電位Vccに固定される。この状態は、第4状態(iv)と呼ばれる。
次に、パワースイッチング素子Pをターンオフする場合について説明する。
まず、制御回路20は、第2回収スイッチSW2をターンオンすることによって、第2回収スイッチSW2がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第1クランプスイッチSW3及び第2クランプスイッチSW4がオフである第5状態(v)にする。図28(a)に示すように、第5状態(v)において、容量C1が放電され、コイルL1および第2回収スイッチSW2を流れる電流によって、コイルL1にエネルギーが蓄積される。図26に示すように、ゲート電圧Vgsが低下し、ゲート電流Igが負方向に増加している。コイルL1と容量C1とが共振しているため、パワースイッチング素子Pのゲート端子から第2基準電位線に向かう方向に共振電流が流れている。
次に、制御回路20は、ゲート電位が第2基準電位Vssに到達する前に第2回収スイッチSW2をターンオフし、第1回収スイッチSW1、第1クランプスイッチSW3、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第6状態(vi)にする。図28(b)に示すように、第6状態(vi)において、コイルL1に蓄積されたエネルギーによって流れる電流が、容量C1を放電させ、第1回収ダイオードD1を介して電源E1にエネルギーを回生させる。すなわち、共振電流は、容量C1及びコイルL1から第1回収ダイオードD1を介して電源E1に回生される。
次に、制御回路20は、共振電流が流れている間に第2クランプスイッチSW4をターンオンすることによって、第2クランプスイッチSW4がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2及び第1クランプスイッチSW3がオフである第7状態(vii)にする。第2クランプスイッチSW4がターンオンされた時点でゲート電位が第2基準電位Vssに到達していない。そのため、図28(c)に示されるように、共振電流が容量C1からコイルL1と第1回収ダイオードD1を介して電源E1へ流れ、かつ、クランプ電流が容量C1から第2クランプスイッチSW4を介して第2基準電位Vssへ流れる。従って、第7状態(vii)において、共振電流とクランプ電流が同時にゲート端子から電荷を引き抜く。
コイルL1に蓄積されたエネルギーが無くなっても、またゲート電位が第2基準電位Vssに到達していない場合、図28(d)に示されるように、クランプ電流は、ゲート端子から第2クランプスイッチSW4を介して、第2基準電位線に至る経路で流れる。ゲート電位が第2基準電位Vssに到達すると、クランプ電流が流れなくなり、ゲート電位が第2基準電位Vssに固定される。この状態は、第8状態(viii)と呼ばれる。
このように実施の形態2に係る制御方法2は、パワースイッチング素子Pがターンオンされる時、および/または、ターンオフされる時に、共振電流とクランプ電流が、パワースイッチング素子Pのゲート端子に同時に流れる期間を有する。
[制御方法3]
図29は、実施の形態2に係る、各スイッチSW1〜SW4に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgs、およびゲート電流Igの波形の第2の例を模式的に示す。図30(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれ、図29に示される第1状態(i)、第2状態(ii)、第3状態(iii)および第4状態(iv)において、ゲート駆動部10内とパワースイッチング素子Pの入力容量とを流れる電流経路を示す。図31(a)、(b)、(c)および(d)は、図29の第5状態(v)、第6状態(vi)、第7状態(vii)および第8状態(viii)におけるゲート駆動部10内とパワースイッチング素子Pの入力容量とを流れる電流経路を示す。
図29において、パワースイッチング素子Pをターンオンする場合について説明する。
まず、制御回路20は、第1回収スイッチSW1をターンオンすることによって、第1回収スイッチSW1がオンであって、かつ、第1クランプスイッチSW3、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第1状態(i)にする。図30(a)に示すように、第1状態(i)において、電源E1から第1回収スイッチSW1を介してコイルL1及び容量C1に電流が流れる。これにより、コイルL1にエネルギーが蓄積され、容量C1が充電される。
次に、制御回路20は、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達する前であって、かつ、第1回収スイッチSW1がターンオフされる前に第1クランプスイッチSW3をターンオンし、第1回収スイッチSW1及び第1クランプスイッチSW3がオンであって、かつ、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第2状態(ii)にする。図30(b)に示すように、第2状態(ii)において、電源E1から第1回収スイッチSW1、コイルL1を介して容量C1に流れる共振電流と、電源E1から第1クランプスイッチSW3を介して容量C1に流れるクランプ電流とが同時にゲート端子に供給される。
次に、制御回路20は、共振電流およびクランプ電流が流れている間に第1回収スイッチSW1をターンオフし、第1クランプスイッチSW3がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオフである第3状態(iii)にする。第1回収スイッチSW1がターンオフされた時点でゲート電位が第1基準電位Vccに到達していないため、図30(c)に示されるように、共振電流とクランプ電流とが、同時にパワースイッチング素子Pのゲート端子に供給される。なお、第1回収スイッチSW1がターンオフされた時点でゲート電位が第1基準電位Vccに到達していてもよい。この場合、ゲート端子にゲート電流Igは流れない。
コイルL1に蓄積されたエネルギーが無くなっても、まだゲート電位が第1基準電位Vccに到達していない場合、図30(d)に示されるように、クランプ電流は、第1基準電位線から第1クランプスイッチSW3を介して、パワースイッチング素子Pのゲート端子に至る経路で流れる。ゲート電位が第1基準電位Vccに到達すると、クランプ電流が流れなくなり、ゲート電位が第1基準電位Vccに固定される。この状態は、第4状態(iv)と呼ばれる。
次に、パワースイッチング素子Pをターンオフする場合について説明する。
まず、制御回路20は、第2回収スイッチSW2をターンオンすることによって、第2回収スイッチSW2がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第1クランプスイッチSW3及び第2クランプスイッチSW4がオフである第5状態(v)にする。図31(a)に示すように、第5状態(v)において、容量C1が放電され、コイルL1および第2回収スイッチSW2を流れる電流によって、コイルL1にエネルギーが蓄積される。
次に、制御回路20は、ゲート電位が第2基準電位Vssに到達する前であり、かつ第2回収スイッチSW2がターンオフされる前に第2クランプスイッチSW4をターンオンすることによって、第1回収スイッチSW1及び第1クランプスイッチSW3がオフであって、かつ、第2回収スイッチSW2及び第2クランプスイッチSW4がオンである第6状態(vi)にする。図31(b)に示すように、第6状態(vi)において、共振電流が容量C1からコイルL1、及び第2回収スイッチSW2を介して第2基準電位線へ流れ、かつ、クランプ電流が容量C1から第2クランプスイッチSW4を介して第2基準電位線へ流れる。従って、第6状態(vi)において、共振電流とクランプ電流とが同時にゲート端子から電荷を引き抜く。
次に、制御回路20は、共振電流およびクランプ電流が流れている間に第2回収スイッチSW2をターンオフし、第2クランプスイッチSW4がオンであって、かつ、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2及び第1クランプスイッチSW3がオフである第7状態(vii)にする。第2回収スイッチSW2がターンオフされた時点でゲート電位が第2基準電位Vssに到達していないため、図31(c)に示されるように、共振電流とクランプ電流とが同時にゲート端子から電荷を引き抜く。なお、第1回収スイッチSW1がターンオフされた時点でゲート電位が第2基準電位Vssに到達していてもよい。この場合、ゲート端子からゲート電流Igは流れない。
コイルL1に蓄積されたエネルギーが無くなっても、まだゲート電位が第2基準電位Vssに到達していない場合、図31(d)に示されるように、クランプ電流は、ゲート端子から第2クランプスイッチSW4を介して、第2基準電位Vssに至る経路で流れる。ゲート電位が第2基準電位Vssに到達すると、クランプ電流が流れなくなり、ゲート電位が第2基準電位Vssに固定される。この状態は、第8状態(viii)と呼ばれる。
[検討例と、制御方法2の実施例2および制御方法3の実施例3との比較]
以下、実施の形態1で検討例と、制御方法2の実施例2および制御方法3の実施例3とを比較する。
図32は、実施の形態2の実施例2に係るシミュレーション結果の一例を示す。図33は、実施の形態3の実施例3に係るシミュレーション結果の一例を示す。図32および図33は、ゲート電圧Vgs、コイル電流IL、およびゲート電流Igの関係を示している。実験の前提条件は以下の通りであった。駆動対象のパワースイッチング素子Pは、ドレイン電流Idが100Aクラスのパワーモジュールであった。第1基準電位Vccが20V、第2基準電位Vssが−5Vに設定された。コイルL1のインダクタンス値が数100nH、ゲート抵抗の抵抗値が数Ω、容量C1の容量値が数10nFにそれぞれ設定された。
実施例2および実施例3と検討例の違いは、第1回収スイッチSW1をターンオフするタイミング、及び、第1クランプスイッチSW3をターンオンするタイミングである。実施例2および実施例3において、制御回路20は、第1回収スイッチSW1がターンオンされた後であって、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達する前に、第1回収スイッチSW1をターンオフした。実施例2および実施例3において、制御回路20は、第1回収スイッチSW1がターンオフされるタイミングに近接するタイミングで、第1クランプスイッチSW3をターンオンした。具体的には、実施例2において、制御回路20は、第1回収スイッチSW1がターンオフされた後に、第1クランプスイッチSW3をターンオンした。実施例3において、制御回路20は、第1回収スイッチSW1がターンオフされる前に、第1クランプスイッチSW3をターンオンした。なお、実施の形態2において、制御回路20は、第1回収スイッチSW1をターンオフするときに、同時に、第1クランプスイッチSW3をターンオンしてもよい。
一方、検討例において、制御回路20は、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達した後に第1回収スイッチSW1をターンオフし、その後、第1クランプスイッチSW3をターンオンした。
第1回収スイッチSW1がターンオフされるタイミング、及び第1クランプスイッチSW3がターンオンされるタイミングが異なるため、検討例、実施例2、および実施例3のゲート電流Igの波形が異なった。検討例において、ゲート電流Igは、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達した時点で、ピーク値を示した。一方、実施例2および実施例3において、ゲート電流Igは、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達する前にピーク値を示し、ゲート電位が第1基準電位Vccに到達した時点では、ゲート電流Igがピーク値から減少していた。
以下、実施例2および実施例3のゲート電流Igについて、より詳細に説明する。実施例2および実施例3において、ゲート電流Igの絶対値の増加率は、ゲート電流Igの絶対値が最大ピーク値に到達するまでに、複数段階で変化した。また、実施例2および実施例3において、ゲート電流Igの絶対値の増加率は、ゲート電流Igの絶対値が最大ピーク値に到達する直前の段階で、最大になった。一方、検討例において、ゲート電流Igの絶対値の増加率は、ゲート電流Igの絶対値が最大ピーク値に到達する直前の段階では、最大にならなかった。また、実施例2および実施例3のゲート電流Igの絶対値の最大ピーク値は、検討例のゲート電流Igの絶対値の最大ピーク値より大きくなった。
ゲート電位が第1基準電位Vccに到達したときのゲート電流Igの絶対値は、ゲート電流Igの絶対値の最大ピーク値の2/3より小さくてもよい。ゲート電位が第1基準電位Vccに到達したときのゲート電流Igの絶対値は、ゲート電流Igの絶対値の最大ピーク値の1/2より小さくてもよい。ゲート電位が第1基準電位Vccに到達したときのゲート電流Igの絶対値は、実質的にゼロであってもよい。
検討例、実施例2および実施例3において、制御回路20は、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2、第1クランプスイッチSW3及び第2クランプスイッチSW4のオン/オフを制御する。これにより、ゲート電圧Vgs及びゲート電流Igが発生し、パワースイッチング素子Pのゲート端子に供給される。なお、第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2、第1クランプスイッチSW3、及び第2クランプスイッチSW4がオンまたはオフされるタイミングは、理論値、又は実験もしくはシミュレーションにより得られた値にもとづき決定されてもよい。それらのタイミングの情報は、制御回路20内に予め記録されていてもよい。なお、実施例2および実施例3とは異なるが、例えば、ゲート駆動装置100は、ゲート電圧Vgs及び/又はゲート電流Igを検出する検出部を備え、検出部によって検出された検出値が制御回路20にフィードバックされてもよい。この場合、制御回路20が、検出値にもとづいて、各スイッチのオン/オフのタイミングを決定してもよい。
図34は、実施の形態2に係る制御方法2の実施例2の実験結果を詳細に示す。図34は、ゲート電圧Vgs、コイル電流IL、ゲート電流Igに加えて、ドレイン電圧Vds、ドレイン電流Id、およびターンオン損失Eonの関係を示している。図34に示される実験結果は、図32に示されるシミュレーション結果に対応している。
図34において、パワースイッチング素子Pがターンオンされるタイミングは、ターンオン損失Eonが最大となる時点に相当する。図34に示される実施例2において、パワースイッチング素子Pがターンオンされるタイミングの近辺でゲート電流Igが最大ピークとなった。これは、パワースイッチング素子Pがターンオンされるタイミングの近辺で、共振電流と、クランプ電流とが同時にゲート端子に流れ込んだと考えられる。
図10に示す検討例に係る実験結果と、図34に示す実施例2に係る実験結果とを比較すると、実施例2のドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtは、検討例よりも顕著に大きかった。実施例2のターンオン損失Eonは、検討例よりも顕著に小さかった。実施例2のゲート−ソース間のリンギング電圧は検討例よりもやや小さかった。
上述のように、検討例と実施例2とは、第1クランプスイッチSW3がターンオンされるタイミングが異なる。以下、第1回収スイッチSW1がターンオンされてから第1クランプスイッチSW3がターンオンされるまでの時間が未クランプ時間と呼ばれ、共振周期に対する未クランプ時間の割合が未クランプ時間/共振周期と呼ばれる場合がある。実施例2の未クランプ時間は、検討例よりも大幅に短かった。実施例2の未クランプ時間/共振周期は、検討例よりも大幅に小さかった。なお、共振周期Tは、2π√(LC)で表される。Cはゲート−ソース間に存在する寄生容量である。例えば、キャパシタンスCは、パワースイッチング素子Pのゲート−ソース間容量とその他のキャパシタの容量の合計であってもよい。なお、パワースイッチング素子Pのゲート−ソース間容量は、実際にはドレイン電圧Vdsにより変動するが、ドレイン電圧Vdsが0Vの時の容量として定義される。また、インダクタンスLは、容量Cを含む閉ループ内のインダクタンスである。例えば、インダクタンスLは、コイルL1のインダクタンスと、その閉ループ内の配線によるインダクタンスとの合計である。実施例2では未クランプ時間/共振周期が約12%に設定された。
図35は、未クランプ時間/共振周期と、ドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δt及びドライバ損失Pdrvとの関係の一例を示す。三角マークでプロットされている折れ線グラフがドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtを示し、丸マークでプロットされている折れ線グラフがドライバ損失Pdrvを示している。ドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtは、ゲート駆動装置100がパワースイッチング素子Pをスイッチングする際のスイッチング特性を示す指標の1つである。従って、ドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtが高く、かつ、ドライバ損失Pdrvが小さいゲート駆動装置が、高品質なゲート駆動装置となる。
ドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtは、未クランプ時間が短くなるほど高くなる。未クランプ時間が短くなるほど、より早いタイミングでクランプ電流が供給開始されるため、ゲート電流Igがより急峻に増加する。その結果、パワースイッチング素子Pのスイッチング特性が向上する。未クランプ時間/共振周期が20%より小さい範囲において、未クランプ時間が短くなるにつれてドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtが急激に増加した。ドライバ損失Pdrvは、未クランプ時間が短くなるにつれて大きくなった。これは、未クランプ時間が早くなるほど、RC方式による電流が多くなったためである。
実施例2は検討例に比べて、未クランプ時間が大幅に短いため、ドレイン電圧の時間変化率ΔVds/Δtが大幅に増大した。従って、実施例2のパワースイッチング素子Pのスイッチング特性は、検討例よりも高い。実施例2のターンオン損失Eonは、検討例よりも大幅に短かった。実施例2のゲート−ソース間のリンギング電圧は、検討例よりも小さかった。
実施例2および実施例3によれば、パワースイッチング素子Pのゲート端子に共振電流とクランプ電流が同時に供給されることにより、パワースイッチング素子Pがターンオンするタイミングの近辺でゲート電流Igの絶対値の最大ピークが発生する。また、パワースイッチング素子Pがターンオンするタイミングの近辺で、ゲート電流Igの傾きが最も急峻になる。ゲート電流Igの傾きが最も急峻になるとは、ゲート電流の時間変化率ΔIg/Δtが最大になることを意味する。
[まとめ]
実施の形態2に係る制御方法2および制御方法3は、パワースイッチング素子Pがスイッチングするタイミングの近辺で、ゲート電流Igの絶対値が最大のピークを示す。これにより、ゲート電流Igが効率的に使用されるため、パワースイッチング素子Pのスイッチング損失が低減され、スイッチング速度が向上しうる。また、効果的なタイミングでゲート電流Igの絶対値が大きくなるため、不要な循環電流または回生電流が発生しにくく、ゲート駆動装置100の電力損失が低減されうる。
なお、実施の形態2に係る制御方法3において、第1回収スイッチSW1がターンオフされる前に、第1クランプスイッチSW3がターンオンされる。これにより、パワースイッチング素子Pのゲート端子に流れている共振電流が増加しているときに、ゲート端子にクランプ電流が流れ始める。従って、ゲート電流Igの絶対値の最大ピークは、制御方法2よりも大きくなる。そのため、制御方法3は、制御方法2に比べて、パワースイッチング素子Pがターンオンするタイミング近辺におけるゲート電圧の時間変化率ΔVgs/Δtをより大きくできる。
(実施の形態2の種々の変形例)
以下、実施の形態2に係るゲート駆動装置100の変形例について説明する。なお、以下の説明において、図1に示される駆動装置100、および図26および図29に示される制御方法と重複する部分については、説明および図示が省略される場合がある。例えば、図13、15〜20、24および38は、ゲート駆動装置100のうち、ゲート駆動部10およびパワースイッチング素子の入力容量C1のみを例示する。例えば、図15〜20に示されるゲート駆動装置100は、例えば図26および図29に示される制御方法によって駆動されうる。
実施の形態2に係る制御方法2および制御方法3は、図1に示されるゲート駆動装置100に替えて、図15〜20に示されるゲート駆動装置100に対して適用されうる。すなわち、実施の形態2の変形例1〜6は、それぞれ、実施の形態1の変形例1〜6で説明された回路で実現されうる。
実施の形態2の変形例7のゲート駆動装置100の構成は、図1に示されるゲート駆動装置100に替えて、図24に示されるゲート駆動装置100に対して適用されうる。すなわち、実施の形態2の変形例7は、実施の形態1の変形例9で説明された回路で実現されうる。
図36は、実施の形態2の変形例7に係る、スイッチSW1、SW3、およびSW4に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgs、およびゲート電流Igの波形の一例を模式的に示す。図36における、第1回収スイッチSW1および第1クランプスイッチSW3に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgsの立ち上がり波形、および立ち上がり時のゲート電流Igの波形は、図29に示される例と同様である。一方、図36における、第2クランプスイッチSW4に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgsの立ち下がり波形、および立ち下がり時のゲート電流Igの波形は、図29に示される例と異なる。具体的には、変形例7において、ゲート電圧Vgsの立ち下がり波形は、第2クランプスイッチSW4がターンオフされてから、RC時定数に従って減少する。なお、変形例7に係るゲート駆動装置100は、図1に示されるゲート駆動装置100に対して、第1回収スイッチSW1及び第2回収ダイオードD2が省略されてもよい。この場合、ゲート電圧Vgsの立ち上がり波形がRC時定数に従い増加する。
実施の形態2の変形例8に係るゲート駆動装置100は、図1に示されるゲート駆動装置100に替えて、図13に示されるゲート駆動装置100に対して適用されうる。
図37は、実施の形態2の変形例8に係る、各スイッチSW1〜SW4に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgs、およびゲート電流Igの波形の一例を模式的に示す。図37に示される制御方法は、上述の中点方式の制御方法に対して、第1クランプスイッチSW3がターンオンされるタイミングを早めたものである。パワースイッチング素子Pをターンオンする場合について説明する。まず、第1回収スイッチSW1がターンオンされて、コイルL1にエネルギーが蓄積され、容量C1が充電される。図13に示される補助電源E2の電圧は、電源E1の電圧の1/2である。そのため、ゲート電位が第1基準電位Vccの1/2の電位である第3基準電位に到達すると、コイルL1へのエネルギーの蓄積が完了し、コイルL1に蓄積されたエネルギーが放出され始める。従って、第1回収スイッチSW1がターンオフされなくても、ゲート電位が第3基準電位に到達すると、共振電流が減少し始める。次いで、ゲート電圧Vgsが閾値電圧Vthを超える近辺で、第1クランプスイッチSW3がターンオンされる。これにより、ゲート端子にクランプ電流が流れる。このように、中点方式では、コイルL1に過剰なエネルギーが蓄積されず、過剰な共振電流が流れないため、不要な循環電流および回生電流が流れない。パワースイッチング素子Pをターンオフする場合についても、同様に説明される。
図38は、実施の形態2の変形例9に係るゲート駆動装置100の構成を示す。変形例9に係るゲート駆動装置100は、電源E1の第2基準電位Vssが負電位に設定されている。パワースイッチング素子Pのソース端子と第2基準電位線との間に、補助電源E3が設けられている。そのため、パワースイッチング素子Pのソース端子には、第2基準電位線から第2基準電位Vssが供給されず、補助電源E3の電位が供給される。また、第3基準電位線は、補助電源E3およびソース端子に接続されている。図38の例において、電源E1の第1基準電位Vccが20V、第2基準電位Vssが−5V、補助電源E3が供給する電圧は5Vであってもよい。この場合、変形例9に係るゲート駆動装置100は、パワースイッチング素子Pのゲート−ソース間に−5Vのゲート電圧を印加できる。変形例9に係るゲート駆動装置100は、例えば図37に示される制御方法によって駆動されうる。
図39は、変形例10に係る、各スイッチSW1〜SW4に入力される制御信号の波形、ゲート電圧Vgs、およびゲート電流Igの波形を示す。変形例10の制御方法は、例えば、図1に示されるゲート駆動装置100に適用されうる。変形例10の制御方法は、予めコイルL1がプリチャージされてから、パワースイッチング素子Pのゲート端子に電流が供給される。
パワースイッチング素子Pをターンオンする場合について説明する。まず、制御回路20は、第1回収スイッチSW1及び第2クランプスイッチSW4がオンであって、かつ、第2回収スイッチSW2及び第1クランプスイッチSW3がオフである状態にする。これにより、コイルL1にエネルギーが蓄積される。この状態において、容量C1は充電されない。次に、制御回路20は、第2クランプスイッチSW4をターンオフする。これにより、容量C1への充電が開始される。このとき、コイルL1に予めエネルギーが蓄積されているため、ゲート電流Igの立ち上がりが早くなる。パワースイッチング素子Pをターンオフする場合についても、予めコイルL1にエネルギーがプリチャージされることにより、ゲート電流Igの負方向への立ち上がりが早くなる。なお、第1回収スイッチSW1は、第1クランプスイッチSW3がオンになった後に、ターンオフされてもよい。
実施の形態2の変形例1〜9に係るゲート駆動装置100のうち、図1に示されるゲート駆動装置100の構成から少なくとも一つの電気素子が省略されるものは、図1に示される例と比較して、回路面積およびコストが削減されうる。
(実施の形態3)
実施の形態3に係る電力変換回路は、実施の形態1および実施の形態2に係るゲート駆動装置100と、パワースイッチング素子Pとを含む。以下では、電力変換回路が、DC−DCコンバータである例、及びインバータである例について説明する。特に、DC−DCコンバータまたはインバータは、例えば、車両または蓄電システムに搭載される。
図40は、実施の形態1または実施の形態2に係るゲート駆動装置100を含むモータ駆動システム600の第1構成例を示す。モータ駆動システム600は、バッテリ200、DC−DCコンバータ300、インバータ(DC−ACコンバータ)400及びモータ500を備える。
DC−DCコンバータ300は、コイル310、容量320、ハイサイドパワースイッチング素子P1、ローサイドパワースイッチング素子P2、容量330、及びゲート駆動装置100aを備える。ハイサイドパワースイッチング素子P1及びローサイドパワースイッチング素子P2は、例えばMOSFETまたはIGBTで構成される。ハイサイドパワースイッチング素子P1及びローサイドパワースイッチング素子P2は、それぞれゲート駆動装置100aにより駆動される。ゲート駆動装置100aは、例えば、上述の実施の形態1または実施の形態2に係るゲート駆動装置100である。
まず、昇圧動作について説明する。ゲート駆動装置100aがローサイドパワースイッチング素子P2をオン/オフ制御することにより、バッテリ200のエネルギーは、コイル310を介して容量330に移動する。容量330の電圧は、バッテリ200の電圧に対して昇圧されている。この昇圧された電圧はインバータ400で交流電圧に変換され、その交流電圧でモータ500が駆動される。
次に、降圧動作について説明する。モータ500で発電された交流電力は、インバータ400で直流電力に変換され、直流電力が容量330に蓄えられる。ゲート駆動装置100aがハイサイドパワースイッチング素子P1をオン/オフ制御することにより、容量330に蓄えられたエネルギーが、コイル310を介してバッテリ200に移動する。バッテリ200の電圧は、容量330の電圧に対して降圧されている。
ゲート駆動装置100aは、制御回路20からの制御信号を受けて、ハイサイドパワースイッチング素子P1及びローサイドパワースイッチング素子P2のゲート端子に駆動信号を供給する。ハイサイドパワースイッチング素子P1及びローサイドパワースイッチング素子P2は、例えばPWM制御によってオン/オフされる。
図41は、実施の形態1または実施の形態2に係るゲート駆動装置100を含むモータ駆動システム600の第2構成例を示す。第2構成例において、実施の形態1または実施の形態2に係るゲート駆動装置100は、インバータ400に含まれる。
図41は、レグが3個並列接続された3相インバータの例を示している。図41に示すインバータ400は、U相ハイサイドパワースイッチング素子P3、U相ローサイドパワースイッチング素子P4、V相ハイサイドパワースイッチング素子P5、V相ローサイドパワースイッチング素子P6、W相ハイサイドパワースイッチング素子P7、W相ローサイドパワースイッチング素子P8、およびゲート駆動装置100bを備える。6個のパワースイッチング素子P3〜P8は3相ブリッジ接続される。ブリッジ接続された6個のパワースイッチング素子P3〜P8は、例えばMOSFETまたはIGBTで構成される。パワースイッチング素子P3〜P8は、それぞれゲート駆動装置100bにより駆動される。ゲート駆動装置100bは、例えば、上述の実施の形態1または実施の形態2に係るゲート駆動装置100が使用される。
3相ブリッジ接続された6個のパワースイッチング素子P3〜P8は、ゲート駆動装置100bから供給される駆動信号に応じて、スイッチングされる。これにより、3相ブリッジ接続された6個のパワースイッチング素子P3〜P8は、DC−DCコンバータ300から与えられる直流電力を可変電圧および可変周波数の交流電力に変換して、交流電力をモータ500に供給する。
ゲート駆動装置100bは、制御回路20からのPWM制御信号を受けて、3相ブリッジ接続された6個のパワースイッチング素子P3〜P8のゲート端子に駆動信号を供給する。6個のパワースイッチング素子P3〜P8は、例えば、PWM制御によってオン/オフされる。
図40に示される第1構成例と図41に示される第2構成例とは、組み合わせて使用されうる。すなわち、モータ駆動システム600のうち、DC−DCコンバータ300とインバータ400とのそれぞれが、実施の形態1または実施の形態2に係るゲート駆動装置100を備えてもよい。なお、バッテリ200の電圧とインバータ400の電圧とが同じに設計される場合、DC−DCコンバータ300が省略されてもよい。
図42は、図40または図41のモータ駆動システム600を搭載する車両700の構成例を示す。図42に示される車両700は、走行用のモータ500を搭載するハイブリッドカー(HV)、プラグインハイブリッドカー(PHV)または電気自動車(EV)である。なおモータ500は自走可能な高出力モータに限らず、マイルドハイブリッドカーに搭載される走行アシストモータであってもよい。モータ500は、例えば交流同期モータである。
図42に示す車両700は、バッテリ200、DC−DCコンバータ300、インバータ400、及びモータ500を備える。バッテリ200は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの蓄電池であってもよい。バッテリ200、DC−DCコンバータ300、インバータ400、及びモータ500は、図40または図41に示される構成であってもよい。なお、車両700が減速時のエネルギー回生機能を搭載している場合、DC−DCコンバータ300及びインバータ400は、双方向のDC−DCコンバータ及びインバータであってもよい。
車両700において、図40及び図41のゲート駆動装置100a、100bに、ECU(Electronic Control Unit)からCAN(Controller Area Network)を介して制御信号が供給されてもよい。
図43は、実施の形態1または実施の形態2に係るゲート駆動装置100を含む蓄電システム800の構成例を示す。図43に示す蓄電システム800は、太陽電池200a、蓄電池200b、DC−DCコンバータ300a、DC−DCコンバータ300b、およびインバータ400を備える。太陽電池200aにより発電された直流電力は、DC−DCコンバータ300aによって所定電圧の直流電力に変換される。直流電力は、インバータ400によって交流電力に変換されて系統900に出力される。または、直流電力は、DC−DCコンバータ300bによって蓄電用電圧の直流電力に変換されて、蓄電池200bに蓄積される。
DC−DCコンバータ300a及びDC−DCコンバータ300bの少なくとも一方は、図40の構成のDC−DCコンバータ300であってもよい。インバータ400は、図41の構成のインバータ400であってもよい。
なお、蓄電池200b及びDC−DCコンバータ300bは省略されてもよい。すなわち、実施の形態1または実施の形態2に係るゲート駆動装置100は、蓄電機能のない太陽光発電システムに適用されうる。また、太陽電池200a及びDC−DCコンバータ300aは省略されてもよい。すなわち、実施の形態1または実施の形態2に係るゲート駆動装置100は、発電機能のない蓄電システムに適用されうる。
モータ駆動システム600、車両700または蓄電システム800は、実施の形態1または実施の形態2に係るゲート駆動装置100を備えることにより、システムまたは装置全体の消費電力が低減されうる。また、DC−DCコンバータ300またはインバータ400を構成するパワースイッチング素子のスイッチング特性が維持または向上する。そのため、モータ駆動システム600、車両700または蓄電システム800全体の動作特性が維持または向上する。
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態1〜3は例示である。実施の形態1〜3で説明された各構成要素や各制御プロセスは、いろいろな変形例が可能である。そうした変形例も本開示に含まれる。
例えば、コイルL1は、ゲート端子に接続される配線の寄生インダクタンスで代替されうる。この場合も、直列共振回路が構成される。
第1回収スイッチSW1及び第2回収スイッチSW2は、ワンチップのICで構成されてもよい。第1回収スイッチSW1、第2回収スイッチSW2及びコイルL1は、ワンチップのICで構成されてもよい。
本開示は、上記回路構成と同様に、本開示の特徴的な機能を実現できる回路も含む。例えば、上記回路構成と同様の機能を実現できる範囲で、ある素子に対して、直列または並列に、スイッチング素子(トランジスタ)、抵抗素子、または容量素子等の素子を接続したものも本開示に含まれる。言い換えれば、本開示における「接続される」は、2つの端子(ノード)が直接接続される場合に限定されるものではなく、同様の機能が実現できる範囲において、当該2つの端子(ノード)が、素子を介して接続される場合が含まれる。
例えば、駆動装置は、制御端子を備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、第一電位を与える第一電位線と、前記第一電位よりも小さい第二電位を与える第二電位線と、第一端子と第二端子とを有し、前記第二端子が前記スイッチング素子の制御端子に接続されるコイルと、前記第一電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第一電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフするスイッチと、前記スイッチをターンオンさせ、前記スイッチング素子の前記制御端子の電位が前記第一電位に到達する前に前記スイッチをターンオフさせ、前記スイッチを再びターンオンさせる制御信号を出力する制御回路とを備えてもよい。
例えば、駆動装置は、制御端子を備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、第一電位を与える第一電位線と、前記第一電位よりも小さい第二電位を与える第二電位線と、第一端子と第二端子とを有し、前記第二端子が前記スイッチング素子の制御端子に接続されるコイルと、前記第二電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第一電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフするスイッチと、前記スイッチをターンオンさせ、前記スイッチング素子の前記制御端子の電位が前記第二電位に到達する前に前記スイッチをターンオフさせ、前記スイッチを再びターンオンさせる制御信号を出力する制御回路とを備えてもよい。
例えば、駆動装置は、制御端子を備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、第一電位を与える第一電位線と、前記第一電位よりも小さい第二電位を与える第二電位線と、第一端子と第二端子とを有し、前記第二端子が前記スイッチング素子の制御端子に接続されるコイルと、前記第一電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第一電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする充電用スイッチと、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子の間に接続され、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、前記第二電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第二電位線から前記コイルの前記第一端子に電流を流す充電用ダイオードと、前記充電用スイッチをターンオンさせ、その後ターンオフさせる充電制御信号と、前記スイッチング素子の前記制御端子の電位が前記第一電位に到達する前に前記クランプスイッチをターンオンさせるクランプ制御信号とを出力する制御回路とを備えてもよい。
例えば、駆動装置は、制御端子を備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、第一電位を与える第一電位線と、前記第一電位よりも小さい第二電位を与える第二電位線と、第一端子と第二端子とを有し、前記第二端子が前記スイッチング素子の制御端子に接続されるコイルと、前記第二電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第二電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする放電用スイッチと、前記第二電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子の間に接続され、前記第二電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、前記第一電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第二電位線から前記コイルの前記第一端子に電流を流す放電用ダイオードと、前記放電用スイッチをターンオンさせ、その後ターンオフさせる充電制御信号と、前記スイッチング素子の前記制御端子の電位が前記第二電位に到達する前に前記クランプスイッチをターンオンさせるクランプ制御信号とを出力する制御回路とを備えてもよい。
例えば、駆動装置は、制御端子を備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、第一電位を与える第一電位線と、前記第一電位よりも小さい第二電位を与える第二電位線と、前記第一電位よりも小さく前記第二電位よりも大きい第三電位を与える第三電位線と、第一端子と第二端子とを有し、前記第二端子が前記スイッチング素子の制御端子に接続されるコイルと、前記第三電位線と前記コイルの前記第一端子との間に設けられ、前記第三電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする充電用スイッチと、前記第三電位線と前記コイルの前記第一端子との間において前記充電用スイッチと直列に接続され、前記第三電位線から前記コイルの前記第一端子に電流を流す充電用ダイオードと、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子の間に接続され、前記第一電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、前記充電用スイッチをターンオンさせ、その後ターンオフさせる充電制御信号と、前記スイッチング素子の前記制御端子の電位が前記第一電位に到達する前に前記クランプスイッチをターンオンさせるクランプ制御信号とを出力する制御回路とを備えてもよい。
例えば、駆動装置は、制御端子を備えるスイッチング素子を駆動する駆動装置であって、第一電位を与える第一電位線と、前記第一電位よりも小さい第二電位を与える第二電位線と、前記第一電位よりも小さく前記第二電位よりも大きい第三電位を与える第三電位線と、第一端子と第二端子とを有し、前記第二端子が前記スイッチング素子の制御端子に接続されるコイルと、前記第三電位線と前記コイルの前記第一端子との間に接続され、前記第三電位線と前記コイルとの間の通電をオンオフする放電用スイッチと、前記第三電位線と前記コイルの前記第一端子との間において前記放電用スイッチと直列に接続され、前記コイルの前記第一端子から前記第三電位線に電流を流す放電用ダイオードと、前記第二電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子の間に接続され、前記第二電位線と前記スイッチング素子の前記制御端子との間の通電をオンオフするクランプスイッチと、前記放電用スイッチをターンオンさせ、その後ターンオフさせる充電制御信号と、前記スイッチング素子の前記制御端子の電位が前記第二電位に到達する前に前記クランプスイッチをターンオンさせるクランプ制御信号とを出力する制御回路とを備えてもよい。
例えば、駆動装置は、電圧制御型のスイッチング素子を、共振により発生する信号をもとに駆動する駆動装置であって、前記スイッチング素子の制御端子と電位固定の基準端子間に印加する電圧の立ち上がり波形の振幅が、共振源の電圧から、共振開始前の前記制御端子と前記基準端子間の電圧を減算した電圧より小さく、前記制御端子に流れる電流の絶対値がスイッチング開始から増加し続け、前記制御端子と前記基準端子間の電圧が、前記スイッチング素子のスイッチング後に固定されるべき固定電圧に到達する前に当該電流の絶対値がその増加方向の最大ピーク値に到達し、かつ前記制御端子と前記基準端子間の電圧が前記固定電圧に到達したとき当該電流の絶対値が前記最大ピーク値より減少しているよう、前記制御端子に信号を入力してもよい。
例えば、駆動装置は、電圧制御型のスイッチング素子を、共振により発生する信号をもとに駆動する駆動装置であって、前記スイッチング素子の制御端子と電位固定の基準端子間に印加する電圧の立ち下がり波形の振幅が、共振源の電圧に、共振開始前の前記制御端子と前記基準端子間の電圧を加算した電圧より小さく、前記制御端子に流れる電流の絶対値がスイッチング開始から増加し続け、前記制御端子と前記基準端子間の電圧が、前記スイッチング素子のスイッチング後に固定されるべき固定電圧に到達する前に当該電流の絶対値がその増加方向の最大ピーク値に到達し、かつ前記制御端子と前記基準端子間の電圧が前記固定電圧に到達したとき当該電流の絶対値が前記最大ピーク値より減少しているよう、前記制御端子に信号を入力してもよい。
例えば、駆動装置は、前記制御端子に流れる電流の絶対値が、前記最大ピーク値に到達した後に減少し、その後に前記最大ピーク値より小さいピーク値まで再度増加し、その後に減少するよう、前記制御端子に信号を入力してもよい。
例えば、駆動装置は、前記制御端子と前記基準端子間の電圧が前記固定電圧レベルに到達したときの当該制御端子に流れる電流が、前記最大ピーク値の2/3より減少しているよう、前記制御端子に信号を入力してもよい。
例えば、駆動装置は、電圧制御型のスイッチング素子の制御端子に直列に接続されるコイルと、本駆動装置の電源の一方の電位である第1電位と、前記コイルの入力側端子の間に設けられる第1スイッチと、前記電源の他方の電位である第2電位と、前記コイルの入力側端子の間に逆方向に設けられる第1ダイオードと、を備え、前記制御端子に流れる電流の絶対値がスイッチング開始から増加し続け、前記制御端子と電位固定の基準端子間の電圧が、前記スイッチング素子のスイッチング後に固定されるべき固定電圧に到達する前に当該電流の絶対値がその増加方向の最大ピーク値に到達し、かつ前記制御端子と前記基準端子間の電圧が前記固定電圧に到達したとき当該電流の絶対値が前記最大ピーク値より減少しているよう、前記制御端子に信号を入力してもよい。
例えば、駆動装置は、電圧制御型のスイッチング素子の制御端子に直列に接続されるコイルと、本駆動装置の電源の一方の電位である第1電位と、前記コイルの入力側端子の間に設けられる第1スイッチと、前記電源の他方の電位である第2電位と、前記コイルの入力側端子の間に逆方向に設けられる第1ダイオードと、前記第1スイッチを制御する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記第1スイッチをターンオンした後、前記制御端子の電位が前記第1電位と同電位に到達する前に、前記第1スイッチをターンオフしてもよい。
例えば、駆動装置は、前記制御回路は、2π(√LC)で定義される共振周期Tの1/2以下の時点で前記第1スイッチをターンオフしてもよい。
例えば、駆動装置は、前記第1電位と、前記コイルの出力側端子の間に逆方向に設けられる第2ダイオードと、前記第1電位と、前記コイルの出力側端子の間に設けられる第2スイッチと、をさらに備え、前記制御回路は、前記第1スイッチをターンオフしてから設定時間経過後、前記第2スイッチをターンオンしてもよい。
例えば、駆動装置は、電圧制御型のスイッチング素子を、共振により発生する信号をもとに駆動する駆動装置であって、前記スイッチング素子のターンオンまたはターンオフ時に、共振電流と、当該共振電流が流れる経路以外の経路を流れる別の電流を、前記スイッチング素子の制御端子に同時に流す期間を有してもよい。
例えば、駆動装置は、前記制御端子に流れている共振電流の絶対値がその増加方向の最大ピークに到達する前に、前記制御端子に、前記別の電流を流し始めてもよい。
例えば、駆動装置は、前記制御端子の電圧が、スイッチング後に固定されるべき固定電圧に到達する前に、前記制御端子に流れる電流の絶対値がその増加方向の最大ピーク値に到達してもよい。
例えば、駆動装置は、前記制御端子に流れる電流の絶対値がその増加方向の最大ピーク値に到達する前に、当該電流の傾きが複数段階あり、当該最大ピーク値に到達する最後の段階で当該電流の傾きが最大になるよう、前記制御端子に信号を入力してもよい。
例えば、駆動装置は、スイッチング後に固定されるべき固定電圧レベルと同電位を供給する電源を共振源として前記共振電流を生成するとともに、前記制御端子と前記電源の一端を導通させて、前記別の電流を生成してもよい。
例えば、駆動装置は、電圧制御型のスイッチング素子の制御端子に直列に接続されるコイルと、本駆動装置の電源の一方の電位である第1電位と、前記コイルの入力側端子の間に設けられる第1スイッチと、前記電源の他方の電位である第2電位と、前記コイルの入力側端子の間に逆方向に設けられる第1ダイオードと、前記第1電位と、前記コイルの出力側端子の間に設けられる第2スイッチと、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを制御する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記第1スイッチをターンオフさせた後であって、前記制御端子の電圧が前記第1電位に到達する前に前記第2スイッチをターンオンさせてもよい。
例えば、駆動装置は、電圧制御型のスイッチング素子の制御端子に直列に接続されるコイルと、本駆動装置の電源の一方の電位である第1電位と、前記コイルの入力側端子の間に設けられる第1スイッチと、前記電源の他方の電位である第2電位と、前記コイルの入力側端子の間に逆方向に設けられる第1ダイオードと、前記第1電位と、前記コイルの出力側端子の間に設けられる第2スイッチと、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを制御する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記第1スイッチをターンオフさせる前であって、前記制御端子の電圧が前記第1電位に到達する前に前記第2スイッチをターンオンさせてもよい。
例えば、駆動装置は、前記スイッチング素子のスイッチング後に前記制御端子を負電圧に固定してもよい。
例えば、電力変換装置は、入力電力を別の出力電力に変換する電力変換装置であって、少なくとも一つの電圧制御型のスイッチング素子と、前記電圧制御型のスイッチング素子を駆動する駆動装置とを備えてもよい。