以下、実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
<車載システム>
先ず、図1に基づいて車載システム100を説明する。この車載システム100は電気自動車用のシステムを構成している。車載システム100は、バッテリ200、電力変換器300、および、モータ400を有する。
また車載システム100は複数のECUを有する。図1ではこれら複数のECUの代表として、電池ECU501とMGECU502を図示している。これら複数のECUはバス配線500を介して相互に信号を送受信している。複数のECUは協調して電気自動車を制御している。複数のECUの制御により、バッテリ200のSOCに応じたモータ400の回生と力行が制御される。SOCはstate of chargeの略である。ECUはelectronic control unitの略である。
なお、ECUは、少なくとも1つの演算処理装置(CPU)と、プログラムおよびデータを記憶する記憶媒体としての少なくとも1つのメモリ装置(MMR)と、を有する。ECUはコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体はコンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供され得る。以下、車載システム100の構成要素を個別に概説する。
バッテリ200は複数の二次電池を有する。これら複数の二次電池は直列接続された電池スタックを構成している。この電池スタックのSOCがバッテリ200のSOCに相当する。二次電池としてはリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、および、有機ラジカル電池などを採用することができる。
電力変換器300はバッテリ200とモータ400との間の電力変換を行う。電力変換器300はバッテリ200の直流電力をモータ400の力行に適した電圧レベルの交流電力に変換する。電力変換器300はモータ400の発電(回生)によって生成された交流電力をバッテリ200の充電に適した電圧レベルの直流電力に変換する。電力変換器300については後で詳説する。
モータ400は図示しない電気自動車の出力軸に連結されている。モータ400の回転エネルギーは出力軸を介して電気自動車の走行輪に伝達される。逆に、走行輪の回転エネルギーは出力軸を介してモータ400に伝達される。
モータ400は電力変換器300から供給される交流電力によって力行する。これにより走行輪への推進力の付与が成される。またモータ400は走行輪から伝達される回転エネルギーによって回生する。この回生によって発生した交流電力は、電力変換器300によって直流電力に変換されるとともに降圧される。この直流電力がバッテリ200に供給される。また直流電力は電気自動車に搭載された各種電気負荷にも供給される。
<電力変換器>
次に電力変換器300を説明する。電力変換器300はコンバータ310とインバータ320を備えている。コンバータ310はバッテリ200の直流電力をモータ400の力行に適した電圧レベルに昇圧する。インバータ320はこの直流電力を交流電力に変換する。この交流電力がモータ400に供給される。またインバータ320はモータ400で生成された交流電力を直流電力に変換する。コンバータ310はこの直流電力をバッテリ200の充電に適した電圧レベルに降圧する。
図1に示すようにコンバータ310は第1電力ライン301と第2電力ライン302を介してバッテリ200と電気的に接続されている。コンバータ310は第3電力ライン303と第4電力ライン304を介してインバータ320と電気的に接続されている。
第1電力ライン301はバッテリ200の正極に接続されている。第2電力ライン302はバッテリ200の負極に接続されている。これら第1電力ライン301と第2電力ライン302に第1平滑コンデンサ305が接続されている。第1平滑コンデンサ305の有する2つの電極のうちの一方が第1電力ライン301に接続され、他方が第2電力ライン302に接続されている。
第3電力ライン303は後述のハイサイド開閉部311と接続されている。第4電力ライン304は第2電力ライン302と接続されている。これら第3電力ライン303と第4電力ライン304に第2平滑コンデンサ306が接続されている。第2平滑コンデンサ306の有する2つの電極のうちの一方が第3電力ライン303に接続され、他方が第4電力ライン304に接続されている。
インバータ320はU相バスバー331~W相バスバー333を介してモータ400のU相ステータコイル401~W相ステータコイル403と電気的に接続されている。
<コンバータ>
コンバータ310は、ハイサイド開閉部311、ローサイド開閉部312、および、リアクトル313を有する。これらハイサイド開閉部311とローサイド開閉部312は、後で詳説するように、並列接続されたNチャネル型のパワーMOSFETとIGBTを有する。パワーMOSFETは寄生ダイオードを有する。IGBTには還流ダイオードが逆並列接続されている。
図1に示すようにハイサイド開閉部311とローサイド開閉部312は第3電力ライン303から第2電力ライン302(第4電力ライン304)に向かって順に直列接続されている。そしてハイサイド開閉部311とローサイド開閉部312との間の中点に第1電力ライン301が接続されている。第1電力ライン301にリアクトル313が設けられている。これによりリアクトル313はハイサイド開閉部311とローサイド開閉部312との間の中点とバッテリ200の正極とに接続されている。
コンバータ310のハイサイド開閉部311とローサイド開閉部312はMGECU502によって開閉制御される。MGECU502は制御信号を生成し、それをゲートドライバ503に出力する。ゲートドライバ503は制御信号を増幅して開閉部のゲート電極に出力する。これによりMGECU502はコンバータ310に入力される直流電力の電圧レベルを昇降圧する。
MGECU502は制御信号としてパルス信号を生成している。MGECU502はこのパルス信号のオンデューティ比と周波数を調整することで直流電力の昇降圧レベルを調整している。このようにMGECU502はコンバータ310をPWM制御している。昇降圧レベルはモータ400の目標トルクとバッテリ200のSOCに応じて決定される。
バッテリ200の直流電力を昇圧する場合、MGECU502はハイサイド開閉部311とローサイド開閉部312それぞれを交互に開閉する。これとは反対にインバータ320から供給された直流電力を降圧する場合、MGECU502はローサイド開閉部312に出力する制御信号をローレベルに固定する。それとともにMGECU502はハイサイド開閉部311に出力する制御信号をハイレベルとローレベルに順次切り換える。
<インバータ>
インバータ320は第1開閉部321~第6開閉部326を有する。第1開閉部321~第6開閉部326は、コンバータ310の開閉部と同様にして、並列接続されたNチャネル型のパワーMOSFETとIGBTを有する。パワーMOSFETは寄生ダイオードを有する。IGBTには還流ダイオードが逆並列接続されている。
第1開閉部321と第2開閉部322は第3電力ライン303から第4電力ライン304へ向かって順に直列接続されている。第1開閉部321と第2開閉部322によってU相レグが構成されている。第1開閉部321と第2開閉部322との間の中点にU相バスバー331の一端が接続されている。U相バスバー331の他端がモータ400のU相ステータコイル401と接続されている。
第3開閉部323と第4開閉部324は第3電力ライン303から第4電力ライン304へ向かって順に直列接続されている。第3開閉部323と第4開閉部324によってV相レグが構成されている。第3開閉部323と第4開閉部324との間の中点にV相バスバー332の一端が接続されている。V相バスバー332の他端がモータ400のV相ステータコイル402と接続されている。
第5開閉部325と第6開閉部326は第3電力ライン303から第4電力ライン304へ向かって順に直列接続されている。第5開閉部325と第6開閉部326によってW相レグが構成されている。第5開閉部325と第6開閉部326との間の中点にW相バスバー333の一端が接続されている。W相バスバー333の他端がモータ400のW相ステータコイル403と接続されている。
以上に示したようにインバータ320はモータ400のU相ステータコイル401~W相ステータコイル403それぞれに対応する3相のレグを有する。これら3相のレグを構成する第1開閉部321~第6開閉部326のゲート電極に、ゲートドライバ503によって増幅されたMGECU502の制御信号が入力される。
モータ400を力行する場合、MGECU502からの制御信号の出力によって第1開閉部321~第6開閉部326がPWM制御される。これによりインバータ320で3相交流が生成される。モータ400が発電(回生)する場合、MGECU502は例えば制御信号の出力を停止する。これによりモータ400の発電によって生成された交流電力が開閉部の有するダイオードを通る。この結果、交流電力が直流電力に変換される。
<開閉部>
次に、図2に基づいて開閉部を説明する。図2には、電力変換器300を構成する8つの開閉部のうちの代表として、第2開閉部322を示している。他の開閉部の構成は第2開閉部322の構成と同等である。そのためにその説明を省略する。
第2開閉部322はIGBT340とMOSFET350を有する。IGBTは半導体で製造される。MOSFETはワイドギャップ半導体で製造される。本実施形態ではIGBTはSiで製造される。MOSFETはSiCで製造される。MOSFET350はIGBT340よりもターンオン遅延時間とターンオフ遅延時間がともに短くなっている。
IGBT340とMOSFET350それぞれは、半導体チップに形成された数千個のトランジスタが連結されてなるパワートランジスタである。この数千個のトランジスタは、電力変換器300を流れる電流を制御する役割を果たす第1トランジスタと、流れる電流を検出する役割を果たす第2トランジスタと、に種別される。
第1トランジスタに流れる電流と第2トランジスタに流れる電流の比は、およそ8000対1である。そのために第2トランジスタに流れる電流の量は微量となっている。
IGBT340は、コレクタ電極340a、エミッタ電極340b、ゲート電極340c、および、センサ電極340dを有する。これら4つの電極のうち、コレクタ電極340aとゲート電極340cが第1トランジスタと第2トランジスタで共有となっている。これに対して、エミッタ電極340bとセンサ電極340dが第1トランジスタと第2トランジスタで分けられている。第1トランジスタがエミッタ電極340bを有する。第2トランジスタがセンサ電極340dを有する。このセンサ電極340dに流れる電流の量が、エミッタ電極340bに流れる電流に比べて微量となっている。その比が1:8000となっている。以下においてはこの比をセンサ比と示す。MGECU502はこのセンサ比を記憶している。
MOSFET350は、ドレイン電極350a、ソース電極350b、ゲート電極350c、および、センサ電極350dを有する。これら4つの電極のうち、ドレイン電極350aとゲート電極350cが第1トランジスタと第2トランジスタで共有となっている。これに対して、ソース電極350bとセンサ電極350dが第1トランジスタと第2トランジスタで分けられている。第1トランジスタがソース電極350bを有する。第2トランジスタがセンサ電極350dを有する。このセンサ電極350dに流れる電流の量が、ソース電極350bに流れる電流に比べて微量となっている。その比が上記のセンサ比と同等になっている。
図2に示すようにIGBT340には還流ダイオード341が接続されている。還流ダイオード341のカソード電極がコレクタ電極340aに接続されている。還流ダイオード341のアノード電極がエミッタ電極340bに接続されている。これによって還流ダイオード341はIGBT340に逆並列接続されている。
MOSFET350は寄生ダイオード351を有する。この寄生ダイオード351のカソード電極がドレイン電極350aに接続されている。寄生ダイオード351のアノード電極がソース電極350bに接続されている。これによって寄生ダイオード351はMOSFET350に逆並列接続されている。
図2に示すようにIGBT340のコレクタ電極340aとMOSFET350のドレイン電極350aが電気的に接続されている。そしてエミッタ電極340bとソース電極350bが電気的に接続されている。これによってIGBT340とMOSFET350は並列接続されている。
コレクタ電極340aとドレイン電極350aの接続点は第3電力ライン303側に位置している。エミッタ電極340bとソース電極350bの接続点は第4電力ライン304(第2電力ライン302)側に位置している。コレクタ電極340aとドレイン電極350aの接続点が第1接続点に相当する。エミッタ電極340bとソース電極350bの接続点が第2接続点に相当する。
IGBT340のセンサ電極340dは第1センサ抵抗342を介してグランドに接続されている。このために第1センサ抵抗342には、センサ電極340dからグランドに向かって微量な電流が流れる。この微量な電流は、IGBT340のコレクタ-エミッタ間を流れる電流(コレクタ電流)に依存する。
第1センサ抵抗342に微量な電流が流動することによって、第1センサ抵抗342のセンサ電極340d側の電圧が変動する。この第1センサ抵抗342のセンサ電極340d側の電圧が、MGECU502に入力される。MGECU502は第1センサ抵抗342の抵抗値を記憶している。MGECU502は入力された電圧、記憶している抵抗値、および、センサ比に基づいてコレクタ電流を検出する。
MOSFET350のセンサ電極350dは第2センサ抵抗352を介してグランドに接続されている。このために第2センサ抵抗352には、センサ電極350dからグランドに向かって微量な電流が流れる。この微量な電流は、MOSFET350のドレイン-ソース間を流れる電流(ドレイン電流)に依存する。
第2センサ抵抗352に微量な電流が流動することによって、第2センサ抵抗352のセンサ電極350d側の電圧が変動する。この第2センサ抵抗352のセンサ電極350d側の電圧が、MGECU502に入力される。MGECU502は第2センサ抵抗352の抵抗値を記憶している。MGECU502は入力された電圧、記憶している抵抗値、および、センサ比に基づいてドレイン電流を検出する。
MGECU502が制御部に相当する。第1センサ抵抗342と第2センサ抵抗352がセンサに相当する。
<ゲートドライバ>
次に、図2に基づいてゲートドライバ503を説明する。図2には、ゲートドライバ503における第2開閉部322の駆動を制御する部位を示している。ゲートドライバ503の他の開閉部を制御する部位は、図2に示す部位と同等である。そのためにその説明を省略する。
なお、図2ではMGECU502を図示していないが、MGECU502とゲートドライバ503を有する制御回路を明示するための符号600を示す。この制御回路600は、MGECU502とゲートドライバ503の他に、第1センサ抵抗342と第2センサ抵抗352を有する。
ゲートドライバ503はIGBT340のゲート電極340cに接続される第1オン回路504と第1オフ回路505を有する。同様にして、ゲートドライバ503はMOSFET350のゲート電極350cに接続される第2オン回路506と第2オフ回路507を有する。
<第1オン回路>
第1オン回路504は、第1制御配線510、電源511、第1オンスイッチ512、および、第1オン抵抗513を有する。電源511とIGBT340のゲート電極340cとが第1制御配線510を介して接続されている。この第1制御配線510に第1オンスイッチ512と第1オン抵抗513が設けられている。第1オンスイッチ512と第1オン抵抗513は電源511からゲート電極340cに向かって順に直列接続されている。
第1オンスイッチ512はPチャネル型MOSFETである。第1オンスイッチ512のゲート電極にMGECU502の出力する制御信号に基づく駆動信号が入力される。これにより第1オンスイッチ512がオンオフ制御される。
第1オンスイッチ512がオフ状態からオン状態になると、第1オン抵抗513と後述の第1バランス抵抗530とによって電圧降下された電源511の電圧(電源電圧)がゲート電極340cに印加される。これによりIGBT340はオフ状態からオン状態になる。これとは逆に第1オンスイッチ512がオン状態からオフ状態になると、電源電圧のゲート電極340cへの印加が停止する。これによりIGBT340はオン状態からオフ状態に遷移しようとする。
<第1オフ回路>
第1オフ回路505は、第1基準配線521、第2基準配線522、第3基準配線523、第1オフ抵抗524、第2オフ抵抗525、第1ダイオード526、第1オフスイッチ527、第2オフスイッチ528、第3オフスイッチ529を有する。また第1オフ回路505は、第1制御配線510に設けられる第1バランス抵抗530を有する。第1バランス抵抗530は、第1制御配線510において第1オン抵抗513とゲート電極340cとの間に設けられている。第1オン回路504と第1オフ回路505は第1制御配線510と第1バランス抵抗530を共有している。
第1基準配線521と第2基準配線522それぞれの一端は、第1制御配線510における第1オン抵抗513と第1バランス抵抗530との間に接続されている。第3基準配線523の一端は、第1制御配線510における第1バランス抵抗530とゲート電極340cとの間に接続されている。そしてこれら第1基準配線521~第3基準配線523それぞれの他端はグランドに接続されている。なお、第1基準配線521~第3基準配線523それぞれの他端は例えば-5Vの負電源に接続されてもよい。グランド若しくは負電源が基準電位に相当する。
第1基準配線521に第1オフ抵抗524と第1オフスイッチ527が設けられている。第1オフ抵抗524と第1オフスイッチ527は第1基準配線521の一端から他端に向かって順に直列接続されている。
第2基準配線522に第2オフ抵抗525と第2オフスイッチ528が設けられている。第2オフ抵抗525と第2オフスイッチ528は第2基準配線522の一端から他端に向かって順に直列接続されている。
第3基準配線523に第1ダイオード526と第3オフスイッチ529が設けられている。第1ダイオード526と第3オフスイッチ529は第3基準配線523の一端から他端に向かって順に直列接続されている。
第1ダイオード526のアノード電極は第3基準配線523の一端側に接続されている。第1ダイオード526のカソード電極は第3基準配線523の他端側に接続されている。そのために第1ダイオード526のアノード電極はゲート電極340cに接続されている。第1ダイオード526のカソード電極は第3オフスイッチ529に接続されている。
第1オフスイッチ527~第3オフスイッチ529はNチャネル型MOSFETである。これら3つのオフスイッチのゲート電極にMGECU502の出力する制御信号に基づく駆動信号が入力される。これによりオフスイッチがオンオフ制御される。
第1オフスイッチ527がオフ状態からオン状態になると、第1バランス抵抗530と第1オフ抵抗524を介してゲート電極340cがグランドに接続される。これによりIGBT340に蓄積された電荷がグランドに流れる。IGBT340はオン状態からオフ状態になる。
第2オフスイッチ528がオフ状態からオン状態になると、第1バランス抵抗530と第2オフ抵抗525を介してゲート電極340cがグランドに接続される。これによりIGBT340に蓄積された電荷がグランドに流れる。IGBT340はオン状態からオフ状態になる。
第2オフ抵抗525は第1オフ抵抗524よりも抵抗値が高い。したがって第2オフスイッチ528をオン状態にした場合、第1オフスイッチ527をオン状態にした時と比べて、IGBT340に蓄積された電荷は緩やかにグランドに流れる。そのためにIGBT340のオン状態からオフ状態への遷移は緩やかになる。IGBT340のコレクタ電極340aとエミッタ電極340bとの間を流れるコレクタ電流の時間変化が緩やかになる。そのためにIGBT340のコレクタ電流の電流量が大きくとも、その電流量の時間変化の増大が抑制される。
第3オフスイッチ529がオフ状態からオン状態になると、第1ダイオード526を介してゲート電極340cがグランドに接続される。これによりIGBT340は低インピーダンスでグランドに接続される。IGBT340のオフ状態が固定される。
この第3オフスイッチ529のオフ状態からオン状態への制御は、第1オフスイッチ527若しくは第2オフスイッチ528のオンによるIGBT340の電荷の引き抜きを終えた後に行われる。
第1基準配線521~第3基準配線523が第1配線に相当する。第1オフスイッチ527~第3オフスイッチ529が第1スイッチに相当する。第1オフ抵抗524と第2オフ抵抗525が第1抵抗に相当する。そして、第1基準配線521と第2基準配線522が第3配線に相当する。第3基準配線523が第4配線に相当する。
次に、MOSFET350のゲート電極350cに接続される第2オン回路506と第2オフ回路507を説明する。
<第2オン回路>
第2オン回路506は、第2制御配線540、電源541、第2オンスイッチ542、および、第2オン抵抗543を有する。電源541とMOSFET350のゲート電極350cとが第2制御配線540を介して接続されている。この第2制御配線540に第2オンスイッチ542と第2オン抵抗543が設けられている。第2オンスイッチ542と第2オン抵抗543は電源541からゲート電極350cに向かって順に直列接続されている。なお電源541と電源511は同一でもよいし、別でもよい。
第2オンスイッチ542はPチャネル型MOSFETである。第2オンスイッチ542のゲート電極にMGECU502の出力する制御信号に基づく駆動信号が入力される。これにより第2オンスイッチ542がオンオフ制御される。
第2オンスイッチ542がオフ状態からオン状態になると、第2オン抵抗543と後述の第2バランス抵抗555とによって電圧降下された電源541の電圧(電源電圧)がゲート電極350cに印加される。これによりMOSFET350はオフ状態からオン状態になる。これとは逆に第2オンスイッチ542がオン状態からオフ状態になると、電源電圧のゲート電極350cへの印加が停止する。これによりMOSFET350はオン状態からオフ状態に遷移しようとする。
<第2オフ回路>
第2オフ回路507は、第4基準配線551、第4オフスイッチ552、接続配線553、第2ダイオード554、および、第2バランス抵抗555を有する。この第2バランス抵抗555は第2制御配線540に設けられる。第2バランス抵抗555は、第2制御配線540において第2オン抵抗543とゲート電極350cとの間に設けられている。第2オン回路506と第2オフ回路507は第2制御配線540と第2バランス抵抗555を共有している。
第4基準配線551の一端は、第2制御配線540における第2オン抵抗543と第2バランス抵抗555との間に接続されている。そして第4基準配線551の他端はグランドに接続されている。この第4基準配線551に第4オフスイッチ552が設けられている。なお、第4基準配線551の他端は例えば-5Vの負電源に接続されてもよい。
第4オフスイッチ552はNチャネル型MOSFETである。第4オフスイッチ552のゲート電極にMGECU502の出力する制御信号に基づく駆動信号が入力される。これにより第4オフスイッチ552がオンオフ制御される。
第4オフスイッチ552がオフ状態からオン状態になると、第2バランス抵抗555を介してゲート電極350cがグランドに接続される。これによりMOSFET350に蓄積された電荷がグランドに流れる。MOSFET350はオン状態からオフ状態になる。
接続配線553の一端は、第2制御配線540における第2バランス抵抗555とゲート電極350cとの間に接続されている。そして接続配線553の他端は、第1オフ回路505の第3基準配線523における第1ダイオード526と第3オフスイッチ529との間に接続されている。この接続配線553に第2ダイオード554が設けられている。
第2ダイオード554のアノード電極は接続配線553の一端側に接続されている。第2ダイオード554のカソード電極は接続配線553の他端側に接続されている。このために第2ダイオード554のアノード電極はMOSFET350のゲート電極350cと接続されている。第2ダイオード554のカソード電極は第1ダイオード526のカソード電極と第3オフスイッチ529のドレイン電極との間の中点に接続されている。
以上に示した接続構成により、ゲート電極350cとゲート電極340cは、第2制御配線540、接続配線553、第2ダイオード554、第3基準配線523、第1ダイオード526、および、第1制御配線510を介して接続されている。そして上記した2つのダイオードの接続形態により、ゲート電極350cとゲート電極340cとの間の通電が抑制されている。
すなわち、MOSFET350のゲート電極350cからIGBT340のゲート電極340cへの通電が、この通電方向に対して逆接続態様の第1ダイオード526によって抑制されている。IGBT340のゲート電極340cからMOSFET350のゲート電極350cへの通電が、この通電方向に対して逆接続態様の第2ダイオード554によって抑制されている。これによりゲート容量や配線のインダクタンス成分などに起因する寄生共振による電流がゲート電極350cとゲート電極340cとの間で流れることが抑制されている。
また、上記したように第2制御配線540は接続配線553を介して第3基準配線523に接続されている。したがって、上記したように第3基準配線523に設けられた第3オフスイッチ529がオフ状態からオン状態になると、第2ダイオード554を介してゲート電極350cがグランドに接続される。これによりMOSFET350は低インピーダンスでグランドに接続される。MOSFET350のオフ状態が固定される。
第4基準配線551が第2配線に相当する。第4オフスイッチ552が第2スイッチに相当する。第2バランス抵抗555が第2抵抗に相当する。
<オンオフ制御>
次に、図3および図4に基づいてIGBT340とMOSFET350のオンオフ制御を説明する。図3は、IGBT340とMOSFET350それぞれに異常が発生していないとMGECU502が判断した際のオンオフ制御を示している。これに対して図4は、IGBT340とMOSFET350の少なくとも一方に異常が発生したとMGECU502が判断した際のオンオフ制御を示している。このような異常は、上記のセンサ抵抗を流れる電流などに基づいて検出される。
図3および図4では、IGBT340のゲート-エミッタ間の電圧をVge、MOSFET350のゲート-ソース間の電圧をVgsと示している。これら電圧をMGECU502は所定周期で検出している。また図3および図4では各スイッチのゲート電極に入力される駆動信号も示している。
<正常時のオンオフ制御>
図3の時間t0において、第1オンスイッチ512と第2オンスイッチ542はともにオフ状態になっている。これに対して第1オフスイッチ527と第3オフスイッチ529がオン状態になっている。これにより電圧Vgeと電圧Vgsはそれぞれグランド電位になっている。IGBT340とMOSFET350はそれぞれオフ状態になっている。
なお図3において第2オフスイッチ528と第4オフスイッチ552は常時オフ状態になっている。これは、第2オフスイッチ528と第4オフスイッチ552が、本実施形態では異常検出時に制御されるスイッチのためである。上記したように図3は異常が発生していないとMGECU502が判断した際のオンオフ制御を示している。そのために図3において第2オフスイッチ528と第4オフスイッチ552は常時オフ状態になっている。以下においては第2オフスイッチ528と第4オフスイッチ552の説明を省略する。
時間t0から時間t1に至ると、MGECU502は第1オンスイッチ512をオン状態にするとともに、第1オフスイッチ527と第3オフスイッチ529をオフ状態にする。これによりIGBT340のゲート電極340cに電源電圧が印加される。IGBT340のゲート-エミッタ間の容量が充電され始める。
時間t2に至ると、IGBT340は完全にオン状態になる。この際、ミラー効果のために電圧Vgeは一定になる。
時間t3に至ると、MGECU502は、電圧Vgeの時間変化が一定であるために、IGBT340が完全にオン状態になったと判断する。そしてMGECU502は第2オンスイッチ542をオン状態にする。これによりMOSFET350のゲート電極350cに電源電圧が印加される。MOSFET350のゲート-ソース間の容量が充電され始める。この後にMOSFET350はオン状態になる。これによりIGBT340とMOSFET350の両方に電流が流れる。
なお、上記したようにIGBT340が完全にオン状態になったことを確認したのちにMOSFET350をオン状態に制御し始めなくともよい。これら並列接続されたIGBT340とMOSFET350をオン状態に制御し始めるタイミングは、両者で差があってもよいし、同時でもよい。第1オンスイッチ512と第2オンスイッチ542の制御タイミングは異なってもよいし、同時でもよい。ただし、第1オフスイッチ527と第3オフスイッチ529は、IGBT340とMOSFET350のうちの少なくとも一方を制御し始める際、オフ状態に制御される。
時間t4に至ると、MGECU502は第1オンスイッチ512をオフ状態にするとともに、第1オフスイッチ527をオン状態にする。これによりIGBT340のゲート電極340cに蓄積された電荷が第1バランス抵抗530と第1オフ抵抗524を介してグランドに流れる。電圧Vgeが下がり始める。
時間t5に至ると、IGBT340は完全にオフ状態になる。この際、ミラー効果のために一定だった電圧Vgeは減少し始める。
時間t6に至ると、MGECU502は、電圧Vgeの時間変化が一定から減少に変化したために、IGBT340が完全にオフ状態になったと判断する。そしてMGECU502は第2オンスイッチ542をオフ状態にする。それとともにMGECU502は第3オフスイッチ529をオン状態にする。これによりIGBT340とMOSFET350は低インピーダンスでグランドに接続される。
この際、IGBT340に電流は流れていない。そのためにIGBT340には電流の時間変化に基づくサージ電圧が発生しない。これに対してMOSFET350には電流が流れている。そのためにMOSFET350には電流の時間変化に基づくサージ電圧が発生する。しかしながらMOSFET350は、リーク電流が少なく、サージ電圧の発生時間が短い場合、アバランシェ降伏しない性質を有する。そのためにMOSFET350はIGBT340と比べてアバランシェ耐量が高い性質を有する。また本実施形態のMOSFET350はSiCで製造されている。そのためにMOSFET350は高耐量ともなっている。これらのため、上記のサージ電圧の発生によるMOSFET350の損傷が抑制されている。
<異常時のオンオフ制御>
図4の時間t0~時間t3までの制御と、図3の時間t0~時間t3までの制御は同一である。そのためにその説明を省略する。
図4に示す、時間t3以後のIGBT340とMOSFET350の両方がオン状態となっている時間t7において、IGBT340とMOSFET350のうちの少なくとも一方に異常が発生したとする。そしてこの異常の発生を、時間t7後の時間t8においてMGECU502が認識したとする。
このような異常を認識すると、MGECU502は、IGBT340とMOSFET350の通電を止める制御を実施する。すなわちMGECU502は、先ずIGBT340の通電を止めるべく、第1オンスイッチ512をオフ状態する。そしてこの際、MGECU502は第1オフスイッチ527ではなく、第2オフスイッチ528をオン状態にする。これによりIGBT340に蓄積された電荷は、第1オフスイッチ527をオン状態にした時と比べて緩やかにグランドに流れる。そのためにIGBT340のオン状態からオフ状態への遷移が緩やかになる。例えIGBT340に大電流の流れる異常が発生していたとしても、IGBT340を流れている電流の時間変化が急峻となることが抑制される。これによりIGBT340にサージ電圧が発生することが抑制されている。
時間t9に至ると、IGBT340は完全にオフ状態になる。この際に一定だった電圧Vgeが減少し始める。
時間t10に至ると、MGECU502は電圧Vgeの時間変化が一定から減少に変化したために、IGBT340が完全にオフ状態になったと判断する。そしてMGECU502は第2オンスイッチ542をオフ状態にするとともに、第4オフスイッチ552をオン状態にする。これによりMOSFET350に蓄積された電荷は、第2バランス抵抗555を介してグランドに流れる。そのためにMOSFET350のオン状態からオフ状態への遷移が緩やかになる。例えMOSFET350に大電流の流れる異常が発生していたとしても、MOSFET350を流れている電流の時間変化が急峻となることが抑制される。これによりMOSFET350にサージ電圧が発生することが抑制されている。
時間t11に至ると、MGECU502はIGBT340とMOSFET350それぞれの電荷がグランドに流れ切ったと判断する。そしてMGECU502は第3オフスイッチ529をオン状態にする。これによりIGBT340とMOSFET350それぞれのゲート電極が低インピーダンスでグランドに接続される。IGBT340とMOSFET350それぞれがオフ状態に固定される。なおMGECU502は、第4オフスイッチ552をオン状態にしてから所定時間経過後に第3オフスイッチ529をオン状態にする。この所定時間は、MOSFET350がオン状態からオフ状態に切り換わるのに要する時間に基づいて予め求められている。MGECU502にこの所定時間が記憶されている。
<作用効果>
上記したように、第2オフ回路507の接続配線553が第1オフ回路505の第3基準配線523に接続されている。これによりMOSFET350のゲート電極350cが接続配線553を介して第3基準配線523に接続されている。
したがって第3基準配線523に設けられた第3オフスイッチ529が閉状態になると、IGBT340のゲート電極340cだけではなく、MOSFET350のゲート電極350cもグランドに接続される。IGBT340とMOSFET350の両方のゲート電極が第1オフ回路505の第3オフスイッチ529を介してグランドに接続される。
このように第1オフ回路505の有する複数のオフスイッチのうちの一部が、MOSFET350のゲート電極350cとグランドとの接続を制御する機能を果たしている。そのために、第2オフ回路507の有するオフスイッチの数を、第1オフ回路505の有するオフスイッチの数に比べて削減することができる。具体的に言えば、図2に明示されてあるようにオフスイッチを2個削減することができる。これによりゲートドライバ503の体格の増大が抑制される。制御回路600の体格の増大が抑制される。
第3基準配線523に第1ダイオード526が設けられている。接続配線553に第2ダイオード554が設けられている。第1ダイオード526と第2ダイオード554は互いにカソード電極が接続されている。第1ダイオード526のアノード電極がIGBT340のゲート電極340cに接続されている。第2ダイオード554のアノード電極がMOSFET350のゲート電極350cに接続されている。
上記構成により、MOSFET350のゲート電極350cからIGBT340のゲート電極340cへの通電が第1ダイオード526によって抑制されている。IGBT340のゲート電極340cからMOSFET350のゲート電極350cへの通電が第2ダイオード554によって抑制されている。
したがって、寄生共振に起因する電流がゲート電極350cとゲート電極340cとの間で流れることが抑制される。このためにMOSFET350とIGBT340のオン状態が不安定となることが抑制される。この結果、ドレイン電流とコレクタ電流が不安定になることが抑制される。MOSFET350とIGBT340に損傷が生じるほどに過剰な電流が流れることが抑制される。
IGBT340とMOSFET350それぞれに異常が発生していないと判断した場合、MGECU502は第1オフスイッチ527をオン状態にしてIGBT340のゲート電極340cの電荷を引き抜いた後に、第3オフスイッチ529をオン状態にする。
これによれば、ゲート電極340cはオン状態の第1オフスイッチ527と第1オフ抵抗524を介してグランドに接続される。これによりゲート電極340cの電荷が緩やかにグランドに引き抜かれる。IGBT340のコレクタ電流が緩やかに減少する。この後に、ゲート電極340cはオン状態の第3オフスイッチ529を介してグランドに接続される。これによりIGBT340にサージ電圧が発生することが抑制されるとともに、ゲート電極340cが低インピーダンスでグランドに接続される。
これに対してゲート電極350cは、ゲート電極350cの電荷がグランドに引き抜かれていない状態で、オン状態の第3オフスイッチ529を介してグランドに接続される。このためにゲート電極350cの電荷が速やかにグランドに引き抜かれる。MOSFET350のドレイン電流が急激に減少する。これによりMOSFET350にサージ電圧が発生する。しかしながらMOSFET350はIGBT340と比べてアバランシェ耐量が高い性質を有する。またMOSFET350はSiCで製造されているために高耐量でもある。そのためにMOSFET350にこのようなサージ電圧が発生したとしても、MOSFET350に損傷が生じることが抑制される。
IGBT340とMOSFET350の少なくとも一方に異常が発生していると判断した場合、MGECU502は第2オフスイッチ528をオン状態にしてIGBT340のゲート電極340cの電荷を引き抜く。そしてMGECU502は第4オフスイッチ552をオン状態にしてMOSFET350のゲート電極350cの電荷を引き抜く。最後にMGECU502は第3オフスイッチ529をオン状態にする。
これによれば、ゲート電極340cはオン状態の第2オフスイッチ528と第2オフ抵抗525を介してグランドに接続される。ゲート電極350cはオン状態の第4オフスイッチ552と第2バランス抵抗555を介してグランドに接続される。これによりゲート電極340cとゲート電極350cの電荷が緩やかにグランドに引き抜かれる。コレクタ電流とドレイン電流が緩やかに減少する。この後に、ゲート電極340cとゲート電極350cがオン状態の第3オフスイッチ529を介してグランドに接続される。これによりIGBT340とMOSFET350にサージ電圧が発生することが抑制されるとともに、IGBT340とMOSFET350それぞれのゲート電極が低インピーダンスでグランドに接続される。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図5および図6に基づいて説明する。以下に示す各実施形態にかかる回路構成は上記した実施形態によるものと共通点が多い。そのため以下においては共通部分の説明を省略し、異なる部分を重点的に説明する。また以下においては上記した実施形態で示した要素と同一の要素には同一の符号を付与する。
第1実施形態では、正常時のオンオフ制御において、第3オフスイッチ529を介してMOSFET350のゲート電極350cの電荷を引き抜く例を示した。これに対して本実施形態では、第4オフスイッチ552を介してMOSFET350のゲート電極350cの電荷を引き抜く。
図5に正常時のオンオフ制御を示す。図5の時間t0~時間t3までの制御と、図3の時間t0~時間t3までの制御とはほぼ同一である。唯一、第3オフスイッチ529が時間t1までオン状態であったことが相違するだけで、他は同一である。そのためにその説明を省略する。
時間t3以後のIGBT340とMOSFET350の両方がオン状態となっている時間t21に至ると、MGECU502は第2オンスイッチ542をオフ状態にするとともに、第4オフスイッチ552をオン状態にする。これによりMOSFET350のゲート電極350cに蓄積された電荷が第2バランス抵抗555を介してグランドに流れる。電圧Vgsが下がり始める。
時間t22に至ると、MOSFET350は完全にオフ状態になる。この際、ミラー効果のために一定だった電圧Vgsは減少し始める。
時間t23に至ると、MGECU502は、電圧Vgsの時間変化が一定から減少に変化したために、MOSFET350が完全にオフ状態になったと判断する。そしてMGECU502は第1オンスイッチ512をオフ状態にする。それとともにMGECU502は第1オフスイッチ527をオン状態にする。これによりIGBT340のゲート電極340cに蓄積された電荷が第1バランス抵抗530と第1オフ抵抗524を介してグランドに流れる。電圧Vgeが下がり始める。
時間t24に至ると、IGBT340は完全にオフ状態になる。この際、ミラー効果のために一定だった電圧Vgeは減少し始める。
時間t24以降の時間t25において、MGECU502は第3オフスイッチ529をオン状態にする。これによりIGBT340とMOSFET350は低インピーダンスでグランドに接続される。この第3オフスイッチ529をオン状態にする時間t25は、時間t23からIGBT340がオン状態からオフ状態に切り換わるのに要する所要時間に基づいて求めることができる。MGECU502にこの所要時間が記憶されている。
以上に示した制御によれば、MOSFET350のゲート電極350cはオン状態の第4オフスイッチ552と第2バランス抵抗555を介してグランドに接続される。IGBT340のゲート電極340cはオン状態の第1オフスイッチ527と第1オフ抵抗524を介してグランドに接続される。これによりMOSFET350とIGBT340のゲート電極に蓄積された電荷が緩やかにグランドに引き抜かれる。ドレイン電流とコレクタ電流が緩やかに減少する。この後に、MOSFET350とIGBT340のゲート電極は第3基準配線523に設けられたオン状態の第3オフスイッチ529を介してグランドに接続される。これによりMOSFET350とIGBT340にサージ電圧が発生することが抑制されるとともに、MOSFET350とIGBT340それぞれのゲート電極が低インピーダンスでグランドに接続される。
なお、上記したようにMOSFET350をオフ状態にした後にIGBT340をオフ状態にする例を示した。しかしながらMOSFET350がオン状態からオフ状態に遷移している際にIGBT340をオン状態からオフ状態に遷移させ始めてもよい。逆に、IGBT340を先にオフ状態に遷移させてから、MOSFET350をオフ状態に遷移させてもよい。
第1実施形態では、異常時のオンオフ制御において、第2オフスイッチ528と第4オフスイッチ552を順にオン状態にした後に第3オフスイッチ529をオン状態にする例を示した。これに対して本実施形態では第2オフスイッチ528をオン状態にした後に第3オフスイッチ529をオン状態にする。
図6に異常時のオンオフ制御を示す。図6の時間t0~時間t3までの制御と、図5の時間t0~時間t3までの制御は同一である。そのためにその説明を省略する。
図6に示す、時間t3以後のIGBT340とMOSFET350の両方がオン状態となっている時間t26において、IGBT340とMOSFET350のうちの少なくとも一方に異常が発生したとする。そしてこの異常の発生を、時間t26後の時間t27においてMGECU502が認識したとする。
このような異常を認識すると、MGECU502は、第1オンスイッチ512と第2オンスイッチ542をオフ状態する。それとともにMGECU502は第2オフスイッチ528をオン状態にする。これによりIGBT340に蓄積された電荷は緩やかにグランドに流れる。またMOSFET350のゲート電極350cへの電源電圧の印加が停止する。そのために電圧Vgsは逓減し始める。
時間t28に至ると、IGBT340は完全にオフ状態になる。
時間t29に至ると、MGECU502は電圧Vgeの時間変化が一定から減少に変化したために、IGBT340が完全にオフ状態になったと判断する。そしてMGECU502は第3オフスイッチ529をオン状態にする。これによりIGBT340とMOSFET350それぞれのゲート電極が低インピーダンスでグランドに接続される。IGBT340とMOSFET350それぞれがオフ状態に固定される。
この際、MOSFET350のゲート電極350cには、第2オンスイッチ542のオフによって多少放電されたものの、電荷が蓄積されている。上記したようにゲート電極350cは低インピーダンスでグランドに接続される。そのために例えば第4オフスイッチ552がオン状態になることで第2バランス抵抗555を介してゲート電極350cがグランドに接続される構成と比べて、電荷は速やかにグランドに引き抜かれる。これにより、一点鎖線で示す第4オフスイッチ552をオン状態にした場合の電圧Vgsと比べて、電圧Vgsは早くグランド電位になる。そのためにMOSFET350は早くオン状態からオフ状態に遷移し、MOSFET350に電流の流れる時間が短くなる。
以上に示した制御によれば、第1実施形態と同様にして、IGBT340にサージ電圧が発生することが抑制されるとともに、ゲート電極340cが低インピーダンスでグランドに接続される。
これに対してMOSFET350のゲート電極350cは、多少電荷が残っている状態で、第3基準配線523に設けられたオン状態の第3オフスイッチ529を介してグランドに接続される。このためにゲート電極350cの電荷が速やかにグランドに引き抜かれる。ドレイン電流が急激に減少する。これによりMOSFET350にサージ電圧が発生する。
例えば通電状態の異常が、通電電流量の増大の場合、MOSFET350に生じるサージ電圧は大きくなる。しかしながらこの際に生じるサージ電圧は瞬間的なものである。そして上記したように第2オンスイッチ542のオフによって多少なりともゲート電極350cに蓄積された電荷が放電されている。またこれまでに説明したようにMOSFETはIGBTと比べてアバランシェ耐量が高い性質を有する。MOSFET350はSiCで製造されるために高耐量ともなっている。これらのため、MOSFET350にサージ電圧が発生したとしても、MOSFET350に損傷が生じることが抑制される。
また、このような異常は幾度も起こることは想定されない。1度や数度の異常発生時の制御によってMOSFET350にサージ電圧が発生したとしても、それによってMOSFET350に損傷が生じる可能性は高くなりがたいことが想定される。
さらに言えば、上記したようにMOSFET350の電荷は速やかにグランドに引き抜かれる。そのためにMOSFET350にドレイン電流の流れている時間は短くなる。これによってMOSFET350に損傷が生じることが抑制されてもいる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図7~図9に基づいて説明する。
図7に示すように本実施形態の第1オフ回路505は、第2オフ抵抗525の代わりに第3ダイオード531を有する。第3ダイオード531は第2基準配線522に設けられている。第3ダイオード531のアノード電極は第2基準配線522の一端側と接続されている。第3ダイオード531のカソード電極は第2基準配線522の他端側と接続されている。これにより第3ダイオード531のアノード電極は第1制御配線510に接続されている。第3ダイオード531のカソード電極は第2オフスイッチ528に接続されている。
本実施形態の第2オフ回路507は、接続配線553と第2ダイオード554の代わりに、第1接続配線556、第2接続配線557、第4ダイオード558、および、第5ダイオード559を有する。
第1接続配線556は第2制御配線540と第3基準配線523とを接続している。第1接続配線556の一端は第2制御配線540における第4基準配線551との接続点と、第2バランス抵抗555との間に接続されている。第1接続配線556の他端は第3基準配線523における第1ダイオード526と第3オフスイッチ529との間に接続されている。
この第1接続配線556に第4ダイオード558が設けられている。第4ダイオード558のアノード電極は第1接続配線556の一端側と接続されている。第4ダイオード558のカソード電極は第1接続配線556の他端側と接続されている。これにより第4ダイオード558のアノード電極は第2バランス抵抗555を介してMOSFET350のゲート電極350cに接続されている。第4ダイオード558のカソード電極は第1ダイオード526のカソード電極と第3オフスイッチ529のドレイン電極との間の中点に接続されている。
以上に示した接続構成により、ゲート電極350cとゲート電極340cは、第2制御配線540、第1接続配線556、第4ダイオード558、第3基準配線523、第1ダイオード526、および、第1制御配線510を介して接続されている。そしてこれら2つのダイオードの接続形態により、ゲート電極350cとゲート電極340cとの間の通電が抑制されている。
すなわち、ゲート電極350cからゲート電極340cへの通電が、この通電方向に対して逆接続態様の第1ダイオード526によって抑制されている。ゲート電極340cからゲート電極350cへの通電が、この通電方向に対して逆接続態様の第4ダイオード558によって抑制されている。
また、第3基準配線523に設けられた第3オフスイッチ529がオフ状態からオン状態になると、第4ダイオード558を介してゲート電極350cがグランドに接続される。
第2接続配線557は第2制御配線540と第2基準配線522とを接続している。第2接続配線557の一端は第2制御配線540における第2バランス抵抗555とゲート電極350cとの間に接続されている。第2接続配線557の他端は第2基準配線522における第3ダイオード531と第2オフスイッチ528との間に接続されている。
この第2接続配線557に第5ダイオード559が設けられている。第5ダイオード559のアノード電極は第2接続配線557の一端側と接続されている。第5ダイオード559のカソード電極は第2接続配線557の他端側と接続されている。これにより第5ダイオード559のアノード電極はMOSFET350のゲート電極350cに接続されている。第5ダイオード559のカソード電極は第3ダイオード531のカソード電極と第2オフスイッチ528のドレイン電極との間の中点に接続されている。
以上に示した接続構成により、ゲート電極350cとゲート電極340cは、第2制御配線540、第2接続配線557、第5ダイオード559、第2基準配線522、第3ダイオード531、および、第1制御配線510を介して接続されている。そしてこれら2つのダイオードの接続形態により、ゲート電極350cとゲート電極340cとの間の通電が抑制されている。
すなわち、ゲート電極350cからゲート電極340cへの通電が、この通電方向に対して逆接続態様の第3ダイオード531によって抑制されている。ゲート電極340cからゲート電極350cへの通電が、この通電方向に対して逆接続態様の第5ダイオード559によって抑制されている。
また、第2基準配線522に設けられた第2オフスイッチ528がオフ状態からオン状態になると、第5ダイオード559を介してゲート電極350cがグランドに接続される。
第1基準配線521が第4配線に相当する。第2基準配線522が第5配線に相当する。第3基準配線523が第6配線に相当する。
次に、スイッチのオンオフ制御を図8および図9に基づいて説明する。
図8に正常時のオンオフ制御を示す。図8の時間t0~時間t3までの制御と、図5の時間t0~時間t3までの制御とはほぼ同一である。唯一、第1オフスイッチ527が時間t1までオン状態であったことが相違するだけで、他は同一である。そのためにその説明を省略する。
時間t3以後のIGBT340とMOSFET350の両方がオン状態となっている時間t31に至ると、MGECU502は第1オンスイッチ512と第2オンスイッチ542をオフ状態にするとともに、第2オフスイッチ528をオン状態にする。これによりIGBT340のゲート電極340cに蓄積された電荷が第1バランス抵抗530を介してグランドに流れる。それとともにMOSFET350のゲート電極350cに蓄積された電荷がグランドに流れる。
時間t31以降の時間t32において、MGECU502は第3オフスイッチ529をオン状態にする。これによりIGBT340とMOSFET350はともに低インピーダンスでグランドに接続される。この第3オフスイッチ529をオン状態にする時間t32は、時間t31からの所要時間に基づいて求められる。
なお、上記のオンオフ制御とは反対に、時間t31において第3オフスイッチ529をオン状態にした後に、時間t32において第2オフスイッチ528をオン状態にしてもよい。
図9に異常時のオンオフ制御を示す。図9の時間t0~時間t3までの制御と、図8の時間t0~時間t3までの制御は同一である。そのためにその説明を省略する。
図9に示す、時間t3以後のIGBT340とMOSFET350の両方がオン状態となっている時間t33において、IGBT340とMOSFET350のうちの少なくとも一方に異常が発生したとする。そしてこの異常の発生を、時間t33後の時間t34においてMGECU502が認識したとする。
このような異常を認識すると、MGECU502は、第1オンスイッチ512と第2オンスイッチ542をオフ状態する。それとともにMGECU502は第1オフスイッチ527と第4オフスイッチ552をオン状態にする。これによりIGBT340とMOSFET350に蓄積された電荷は緩やかにグランドに流れる。
時間t34以降の時間t35において、MGECU502は第2オフスイッチ528と第3オフスイッチ529をオン状態にする。これによりIGBT340とMOSFET350はともに低インピーダンスでグランドに接続される。この第2オフスイッチ528と第3オフスイッチ529をオン状態にする時間t35は、時間t34からの所要時間に基づいて求められる。
本構成においても、これまでに記載した各種形態と同等の構成要素を有するとともに同等の動作をする。そのために同等の作用効果を奏することは言うまでもない。したがって作用効果の記載を省略する。
以上、本開示物の好ましい実施形態について説明したが、本開示物は上記した実施形態になんら制限されることなく、本開示物の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
(第1の変形例)
各実施形態では寄生共振に起因するゲート電極間の通電を抑制する素子としてオフ回路がダイオードを有する例を示した。しかしながらこのような機能を果たす素子としてはダイオードに限定されない。例えばダイオードの代わりに、高周波数の電流の通電時に高抵抗となるチップビーズを採用することもできる。ダイオードとチップビーズが通電抑制素子に相当する。
(その他の変形例)
各実施形態では、制御回路600に含まれるゲートドライバの例として、電気自動車用の車載システムを構成する電力変換器300のゲートドライバ503を示した。しかしながら制御回路600に含まれるゲートドライバの適用としては特に上記例に限定されない。例えばモータと内燃機関を備えるハイブリッドシステムの電力変換器のゲートドライバに適用することができる。
各実施形態では電力変換器300が1つのコンバータ310と1つのインバータ320を有する例を示した。しかしながら、例えば図10に示すように車載システム100がモータ400を2つ有する構成の場合、電力変換器300が1つのコンバータ310と2つのインバータ320を有する構成を採用することもできる。
各実施形態では制御回路600が、MGECU502、ゲートドライバ503、および、第1センサ抵抗342と第2センサ抵抗352を有する例を示した。しかしながら体格の増大抑制という課題解決のためであれば、制御回路600がゲートドライバ503だけを有してもよい。