(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるスイッチング素子の駆動回路を車載主機として回転機及び内燃機関を備えるハイブリッド車両に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる制御システムの全体構成を示す。
モータジェネレータ10は、車載主機であり、図示しない駆動輪に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータIV及び直流電源としての昇圧コンバータCVを介して高電圧バッテリ12に接続されている。ここで、昇圧コンバータCVは、コンデンサCと、コンデンサCに並列接続された一対のスイッチング素子Scp,Scnと、一対のスイッチング素子Scp,Scnの接続点と高電圧バッテリ12の正極とを接続するリアクトルLとを備えている。詳しくは、昇圧コンバータCVは、スイッチング素子Scp,Scnのオンオフ操作によって、高電圧バッテリ12の電圧(例えば百V以上)を所定の電圧(例えば「666V」)を上限として昇圧する機能を有する。
一方、インバータIVは、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。
ちなみに、本実施形態では、上記スイッチング素子S*#(*=c,u,v,w;#=p,n)として、電圧制御形のものが用いられ、より具体的には、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードD*#が逆並列に接続されている。
制御装置14は、低電圧バッテリ16を電源し、モータジェネレータ10の制御量(例えばトルク)を所望に制御すべく、インバータIVや昇圧コンバータCVを操作する。詳しくは、制御装置14は、昇圧コンバータCVのスイッチング素子Scp,Scnを操作すべく、操作信号gcp、gcnをドライブユニットDUに出力し、また、インバータIVのスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnを操作すべく、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnをドライブユニットDUに出力する。ここで、高電位側の操作信号g*pと、対応する低電位側の操作信号g*nとは、互いに相補的な信号となっている。換言すれば、高電位側のスイッチング素子S*pと、対応する低電位側のスイッチング素子S*nとは、交互にオン状態とされる。
なお、高電圧バッテリ12を備える高電圧システムと低電圧バッテリ16を備える低電圧システムとは、互いに絶縁されており、これらの間の信号の授受は、例えばフォトカプラ等の絶縁素子を備えるインターフェース18を介して行われる。
続いて、図2を用いて、上記ドライブユニットDUの構成について説明する。
図示されるように、ドライブユニットDUは、1チップ化された半導体集積回路であるドライブIC20を備えている。ドライブIC20は、端子電圧VH(例えば15V)を有する定電圧電源22を備え、定電圧電源22は、定電流回路24、PチャネルMOS電界効果トランジスタ(定電流用スイッチング素子26)及びドライブIC20の端子T1を介してスイッチング素子S*#の開閉制御端子(ゲート)に接続されている。なお、図2では、上記フリーホイールダイオードD*#の図示を省略している。
スイッチング素子S*#のゲートは、放電用抵抗体28、ドライブIC20の端子T2及びNチャネルMOS電界効果トランジスタ(放電用スイッチング素子30)を介してドライブIC20の端子T3に接続されている。そして、端子T3は、スイッチング素子S*#の出力端子(エミッタ)に接続されている。
スイッチング素子S*#のゲートは、また、ドライブIC20の端子T4、第1のツェナーダイオード34及びNチャネルMOS電界効果トランジスタ(第1のクランプ用スイッチング素子36)を介して端子T3に接続されている。さらに、スイッチング素子S*#のゲートは、ドライブIC20の端子T5、第2のツェナーダイオード38及びNチャネルMOS電界効果トランジスタ(第2のクランプ用スイッチング素子40)を介して端子T3に接続されている。
ここで、第1のツェナーダイオード34のブレークダウン電圧(以下、第1のクランプ電圧Vc1)及び第2のツェナーダイオード38のブレークダウン電圧(以下、第2のクランプ電圧Vc2)は、例えば、スイッチング素子S*#の信頼性が短時間で過度に低下するような電流が流れない程度の電圧にスイッチング素子S*#の開閉制御端子の印加電圧(ゲート電圧Vge)を制限する電圧である。本実施形態では、これらクランプ電圧Vc1,Vc2は、スイッチング素子S*#のミラー電圧よりも高い電圧に設定されている。また、第2のクランプ電圧Vc2は、第1のクランプ電圧Vc1(例えば12V)よりも高くてかつ定電圧電源22の端子電圧VHよりも低い電圧(例えば、13.5V)に設定されている。
スイッチング素子S*#のゲートは、ソフト遮断用抵抗体42、ドライブIC20の端子T6及びNチャネルMOS電界効果トランジスタ(ソフト遮断用スイッチング素子44)を介して端子T3に接続されている。
スイッチング素子S*#は、その入力端子(コレクタ)及びエミッタ間に流れる電流(以下、コレクタ電流Ice)と相関を有する微少電流(例えば、コレクタ電流Iceの「1/10000」)を出力するセンス端子Stを備えている。センス端子Stは、抵抗体(センス抵抗46)を介してスイッチング素子S*#のエミッタに接続されている。これにより、センス端子Stから出力される微少電流によってセンス抵抗46に電圧降下が生じるため、センス抵抗46のうちセンス端子St側の電位(以下、センス電圧Vse)を、コレクタ電流と相関を有する電気的な状態量とすることができる。なお、センス電圧Vseは、ドライブIC20の端子T7を介してドライブIC20内の駆動制御部48に入力される。
ちなみに、本実施形態では、センス抵抗46の両端のうちセンス端子St側の電位がエミッタの電位よりも高い場合のセンス電圧Vseを正と定義する。また、エミッタの電位を「0」とする。
上記定電流用スイッチング素子26及び放電用スイッチング素子30は、上記駆動制御部48によって操作される。駆動制御部48は、ドライブIC20の端子T8を介して入力される上記操作信号g*#に基づき、定電流用スイッチング素子26と放電用スイッチング素子30とを交互にオン・オフ操作することでスイッチング素子S*#を駆動する。詳しくは、操作信号g*#がオン操作指令となることで、放電用スイッチング素子30をオフ操作し、また、定電流用スイッチング素子26をオン操作する。一方、操作信号g*#がオフ操作指令となることで、定電流用スイッチング素子26をオフ操作し、また、放電用スイッチング素子30をオン操作する。
なお、本実施形態では、上記定電流回路24を備えるため、定電流用スイッチング素子26がオン操作される期間においてゲートの充電電流を一定値とすることができる。すなわち、スイッチング素子S*#のゲート充電処理を定電流制御にて行うことができる。
駆動制御部48は、さらに、過電流保護処理を行う。この処理は、ソフト遮断処理と、本実施形態にかかる特徴的構成である第1のクランプ処理及び第2のクランプ処理とを含む処理である。以下、これら処理について説明する。
まず、ソフト遮断処理について説明する。
この処理は、センス電圧Vseが第1の閾値OCを超える状態が所定時間Tcut継続されたと判断された場合、放電用スイッチング素子30をオフ操作してかつ、ソフト遮断用スイッチング素子44をオン操作する処理である。ここで、第1の閾値OCは、スイッチング素子S*#の信頼性が大きく低下しないとの観点から設定される値であり、ゲート電圧Vgeが第1のクランプ電圧Vc1のクランプ電圧Vclampや第2のクランプ電圧Vc2とされる場合のセンス電圧Vseよりも低い値に設定されている。上記ソフト遮断処理の実行により、スイッチング素子S*#が強制的にオフ状態とされる。
なお、上記ソフト遮断用抵抗体42は、ゲート電荷の放電経路の抵抗値を高抵抗とするためのものである。より具体的には、ソフト遮断用抵抗体42の抵抗値Raは、放電用抵抗体28の抵抗値Rbよりも高く設定されている。これは、コレクタ電流Iceが過大である状況下にあっては、スイッチング素子S*#をオン状態からオフ状態へと切り替える速度、換言すればコレクタ及びエミッタ間の遮断速度を大きくすると、サージ電圧が過大となるおそれがあることに鑑みたものである。
ちなみに、ソフト遮断処理が行われた場合、駆動制御部48は、フェール信号FLを出力する処理と、定電流用スイッチング素子26及び放電用スイッチング素子30の駆動を禁止する処理とを併せて行う。上記フェール信号FLは、先の図2に示すドライブIC20の端子T9を介して低電圧システム(制御装置14)に出力される。このフェール信号FLによって、先の図1に示すフェール処理部18aでは、インバータIVや昇圧コンバータCVのシャットダウンが行われ、また、制御装置14では、例えば、走行動力源をエンジンのみとした車両の退避走行処理が行われる。ここで、フェール処理部18aの構成は、例えば、特開2009−60358号公報の図3に記載のものとすればよい。
続いて、第1のクランプ処理について説明する。
この処理は、操作信号g*#がオン操作指令とされてゲート電荷の充電が行われる状況下、ゲート電圧Vgeがその上限電圧(定電圧電源22の端子電圧VH)に到達する以前において、ゲート電圧を第1のクランプ電圧Vc1で制限した後、第2のクランプ電圧Vc2で制限する処理である。以下、図3を用いて、この処理について説明する。
図3は、ゲート電圧Vgeが上昇し始めてから端子電圧VHに到達するまでのゲート電圧Vge等の推移を示す。詳しくは、図3(a)は、ゲート電圧Vgeの推移を示し、図3(b)は、第1のクランプ用スイッチング素子36の操作状態の推移を示し、図3(c)は、第2のクランプ用スイッチング素子40の操作状態の推移を示す。
図示されるように、定電流用スイッチング素子26がオン操作に切り替えられてゲート電圧Vgeが上昇し始めた後、時刻t1においてゲート電圧が所定電圧Vαを超えると判断されることで、第1のクランプ用スイッチング素子36が第1のクランプ時間Tc1に渡ってオン操作される。
その後、ゲート電圧Vgeがミラー電圧Vmillとなるミラー期間が開始される。ミラー期間の終了後、ゲート電圧Vgeはさらに上昇して第1のクランプ電圧Vc1に維持される。
その後、時刻t1から第1のクランプ時間Tc1が経過する時刻t2において、第1のクランプ用スイッチング素子36がオフ操作に切り替えられ、また、第2のクランプ用スイッチング素子40が第2のクランプ時間Tc2に渡ってオン操作される。これにより、その後、ゲート電圧Vgeは、第2のクランプ電圧Vc2に維持される。なお、本実施形態では、第1のクランプ時間Tc1及び第2のクランプ時間Tc2を、予め定められた固定時間としている。
その後、時刻t2から第2のクランプ時間Tc2が経過する時刻t3において、第2のクランプ用スイッチング素子40がオフ操作に切り替えられる。これにより、その後、ゲート電圧Vgeは、定電圧電源22の端子電圧VHまで上昇することとなる。上記第1のクランプ処理によれば、センス電圧Vseが第1の閾値OCを超えてから所定時間Tcut経過するまでの期間にセンス電圧Vseが第2の閾値SCを超えるようにクランプ電圧が設定される。
続いて、第2のクランプ処理について説明する。
この処理は、操作信号g*#がオン操作指令とされてゲート電荷の充電が行われる状況下、センス電圧Vseが第1の閾値OCよりも高い第2の閾値SCを超えたと判断された場合、ゲート電圧Vgeを第1のクランプ電圧Vc1又は第2のクランプ電圧Vc2で制限する処理である。詳しくは、センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えたと判断された場合、第1のクランプ用スイッチング素子36及び第2のクランプ用スイッチング素子40のうち上記判断タイミングでオン操作されている素子のオン操作を継続させる。
ちなみに、第1の閾値OCは、スイッチング素子S*#がオン状態に切り替えられてから十分時間が経過してコレクタ電流Iceが安定している定常状態におけるセンス電圧Vseに基づき設定されている。また、第2の閾値SCは、スイッチング素子S*#がオフ状態からオン状態に移行される過渡状態におけるセンス電圧Vseに基づき設定されている。ここで、同一のコレクタ電流Iceに対して、上記過度状態におけるセンス電圧Vseは、上記定常状態におけるセンス電圧Vseよりも高い。これは、上記過渡状態においては、コレクタ電流に加えて、スイッチング素子S*#の帰還容量の放電電流がコレクタ・エミッタ間を流れ、これによりセンス端子Stの出力電流が増大するためである。
ここで、上記第1のクランプ処理において、複数のクランプ電圧Vc1,Vc2を設定するのは、上下アーム短絡と、相間短絡とに備えたものである。ここで、上下アーム短絡とは、高電位側のスイッチング素子S*p及び低電位側のスイッチング素子S*nの双方がオン状態とされることでスイッチング素子S*#の過電流(短絡電流)の流通経路が形成されることである。この上下アーム短絡は、例えば、高電位側のスイッチング素子S*p及び低電位側のスイッチング素子S*nのうち一方にショート故障が生じる状況下、他方がオン状態に切り替えられることで生じる。
また、相間短絡とは、例えば、インバータIV及びモータジェネレータ10を接続する3相の電気経路(例えば、バスバやモータケーブル)のうち2つが短絡したり、インバータIVに設けられてかつ3相の電気経路が接続される出力端子台のうち2つが短絡したり、モータジェネレータ10内の3相の電気経路のうち2つが短絡したりする状況下、短絡した相のうち一方に対応する高電位側のスイッチング素子と他方に対応する低電位側のスイッチング素子とがオン状態とされることで過電流の流通経路が形成されることである。
図4に、先の図1に示したシステムの全体構成のうち、インバータIVのV,W相アーム部とモータジェネレータ10とを示す。図示される例では、V,W相の上記電気経路同士が短絡する状況下、V相の高電位側のスイッチング素子Svpと、W相の低電位側のスイッチング素子Swnとがオン状態とされる相間短絡を示している。
ここで、本実施形態にかかる過電流保護処理と、本発明者らが当初採用しようとした過電流保護処理(以下、当初の過電流保護処理)とを対比することで、本実施形態にかかる第1のクランプ処理の特徴について説明する。
まず、図5を用いて、当初の過電流保護処理について説明する。なお、図5は、先の図3(a)に対応している。
当初の過電流保護処理に含まれるクランプ処理とは、図中実線にて示すように、操作信号g*#がオン操作指令とされてゲート電荷の充電が行われる状況下、ゲート電圧Vgeが上記端子電圧VHに到達する以前において、ゲート電圧を1つのクランプ電圧Vclampでクランプ時間Tclamp(予め定められた固定時間)に渡って制限する処理である。なお、当初の過電流保護処理に含まれるクランプ処理に関して、ゲート電圧Vgeの制限を開始する条件は、本実施形態にかかる第1のクランプ処理と同じ条件とする。また、上記クランプ電圧Vclampは、スイッチング素子S*#のミラー電圧よりも高くてかつ上記端子電圧VH未満の電圧に設定されている。また、当初の過電流保護処理を行うためのドライブユニットDUの回路構成では、第2のツェナーダイオード38及び第2のクランプ用スイッチング素子40は備えられていない。
続いて、上下アーム短絡が生じる場合と、相間短絡が生じる場合における当初の過電流保護処理について、図6及び図7を用いて説明する。
まず、図6を用いて、上下アーム短絡が生じる場合について説明する。詳しくは、図6(a)は、ゲート電圧Vgeの推移を示し、図6(b)は、センス電圧Vseの推移を示し、図6(c)は、ソフト遮断用スイッチング素子44の操作状態の推移を示す。
図示される例では、時刻t1において定電流用スイッチング素子26がオン状態に切り替えられることで、ゲート電圧Vgeが上昇し始め、これによりセンス電圧Vseも上昇し始める。そして、時刻t2において、センス電圧Vseが第1の閾値OCを超えたと判断される。
その後、ゲート電圧Vgeが所定電圧Vαを超えたと判断されてからクランプ時間Tclampが経過する時刻t4以前の時刻t3において、センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えたと判断される。これにより、その後、クランプ時間Tclampが経過する時刻t4以降においても、クランプ用スイッチング素子のオン操作が継続されてゲート電圧Vgeがクランプ電圧Vclampで制限される。なお、時刻t3〜t4の間において、ゲート電圧Vgeが一時的にクランプ電圧Vclampを超える事態が生じているのは、クランプ用スイッチング素子に対してオン指令がなされてからこの素子が実際にオン状態とされるまでのタイムラグのためである。
その後、時刻t5において、センス電圧Vseが第1の閾値OCを超える状態が所定時間Tcut継続されたと判断されることで、ソフト遮断用スイッチング素子44がオン操作される。
続いて、図7を用いて、相間短絡が生じる場合の過電流保護処理について説明する。詳しくは、図7(a)〜図7(c)は、先の図6(a)〜図6(c)に対応している。
図示される例では、時刻t1においてセンス電圧Vseが上昇し始める。ここで、相間短絡が生じる場合のセンス電圧Vseの上昇速度は、上下アーム短絡が生じる場合のセンス電圧Vseの上昇速度よりも低い。これは、相間短絡の生じる場合の過電流の流通経路が上下アーム短絡の生じる場合の過電流の流通経路よりも長いこと等に起因して、相間短絡の生じる場合の過電流の流通経路のインダクタンスが、上下アーム短絡の生じる場合の過電流の流通経路のインダクタンスよりも大きいことに起因する。
センス電圧Vseの上昇速度が低いことに起因して、センス電圧Vseが上昇し始めてからセンス電圧Vseが第1の閾値OCを超えたと判断されるタイミング(時刻t2)までの時間が上下アーム短絡が生じる場合の時間よりも長くなる。このため、ゲート電圧Vgeが所定電圧Vαを超えたと判断されてからクランプ時間Tclampが経過する時刻t3までの期間においてセンス電圧Vseが第2の閾値SCを超えたと判断されない。これにより、クランプ電圧Vclampによるゲート電圧Vgeの制限が解除されてゲート電圧Vgeが上記端子電圧VHまで上昇することとなる。
ここで、時刻t3以降において、センス電圧Vseがコレクタ電流Iceに応じた当初の想定値Vdl(図中破線にて表記)よりも低くなる現象が生じる。これは、ゲート電圧Vgeが端子電圧VHまで上昇することによってコレクタ・エミッタ間電圧Vceが低下したためである。ここで、この電圧Vceの低下によってセンス電圧Vseが上記当初の想定値Vdlよりも低くなるのは、センス電圧Vseがコレクタ・エミッタ間電圧Vce以上となることができないためである。そして、センス電圧Vseがコレクタ・エミッタ間電圧Vce以上となることができないのは、エミッタからスイッチング素子S*#のコレクタ電流流通部(メインセル部)を介してコレクタに至る経路における電圧降下量と、エミッタからセンス抵抗46及びセンス端子St(センスセル部)を介してコレクタに至る経路における電圧降下量とが同一であることによる。
センス電圧Vseが上記当初の想定値Vdlよりも低くなる現象が生じることで、ソフト遮断用スイッチング素子44がオン操作に切り替えられる時刻t4までにおいて、センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えない事態が生じる。このため、ソフト遮断用スイッチング素子44がオン操作されるタイミングにおけるコレクタ電流Iceが、上限アーム短絡が生じる場合にソフト遮断用スイッチング素子44がオン操作されるタイミングにおけるコレクタ電流Iceよりも大きくなる。このことに起因して、スイッチング素子S*#がオフ状態に切り替えられる際に生じるサージ電圧が上下アーム短絡が生じる場合のサージ電圧よりも増大する。特に、上述したように、相間短絡が生じる場合の過電流の流通経路のインダクタンスは、上下アーム短絡が生じる場合の過電流の流通経路のインダクタンスよりも大きいことから、サージ電圧の増大が顕著となるおそれがある。
また、センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えない場合、過電流の流通時間がスイッチング素子S*#の短絡耐量を超えるおそれもある。上記サージ電圧の増大や短絡耐量超えにより、スイッチング素子S*#の信頼性が大きく低下するおそれがある。
次に、上下アーム短絡が生じる場合と、相間短絡が生じる場合とにおける本実施形態にかかる過電流保護処理について、図8及び図9を用いて説明する。
まず、図8を用いて、上下アーム短絡が生じる場合について説明する。詳しくは、図8(a)〜図8(c)は、先の図6(a)〜図6(c)に対応している。
図示される例では、時刻t1においてセンス電圧Vseが上昇し始め、その後時刻t2においてセンス電圧Vseが第1の閾値OCを超えたと判断される。
その後、ゲート電圧Vgeが所定電圧Vαを超えたと判断されてから第1のクランプ時間Tc1が経過する時刻t4以前の時刻t3において、センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えたと判断される。このため、その後、第2のクランプ時間Tc2が経過する時刻t5以降においても、第2のクランプ処理によって第1のクランプ用スイッチング素子36のオン操作が継続され、第1のクランプ電圧Vc1によってゲート電圧Vgeが制限され続ける。なお、その後、時刻t6においてソフト遮断用スイッチング素子44がオン操作される。
続いて、図9を用いて、相間短絡が生じる場合について説明する。詳しくは、図9(a)〜図9(c)は、先の図6(a)〜図6(c)に対応している。
図示される例では、時刻t1においてセンス電圧Vseが上昇し始めるものの、センス電圧Vseの上昇速度は、上下アーム短絡が生じる場合のセンス電圧Vseの上昇速度よりも低い。このため、センス電圧Vseが第1の閾値OCを超えたと判断されるタイミング(時刻t2)が遅延する。そして、ゲート電圧Vgeが所定電圧Vαを超えたと判断されてから第1のクランプ時間Tc1が経過する時刻t3までの期間においてセンス電圧Vseが第2の閾値SCを超えないこととなる。
ここで、本実施形態では、その後時刻t3〜t5において、第2のクランプ電圧Vc2よってゲート電圧Vgeがさらに制限される。すなわち、本実施形態にかかる第1のクランプ処理によれば、当初の過電流保護処理に含まれるクランプ処理と比較して、ゲート電圧Vgeが制限される時間を長くすることができる(先の図5の破線参照)。このため、コレクタ・エミッタ間電圧Vceを端子電圧VH未満とする時間を長くすることができ、センス電圧Vseがコレクタ電流Iceに応じた当初の想定値よりも低くなる事態を回避できる。これにより、ゲート電圧Vgeが第2のクランプ電圧Vc2で制限される期間(時刻t3〜t5)内の時刻t4においてセンス電圧Vseが第2の閾値SCを超えたと判断される。そして、これにより、第2のクランプ時間Tc2の経過後も第2のクランプ用スイッチング素子40のオン操作が継続され、ゲート電圧Vgeは、第2のクランプ時間Tc2の経過後も継続して第2のクランプ電圧Vc2で制限されることとなる。
このため、その後、ソフト遮断用スイッチング素子44がオン操作される時刻t6におけるコレクタ電流Iceは、当初の過電流保護処理が行われる場合よりも小さくなる。
このように、本実施形態では、ゲート電荷の充電が行われる状況下、ゲート電圧Vgeが定電圧電源22の端子電圧VHに到達する以前において、第1のクランプ電圧Vc1及び第2のクランプ電圧Vc2によってゲート電圧Vgeを段階的に制限した。このため、相間短絡が生じる場合であっても、ゲート電圧Vgeが制限された状態でソフト遮断処理を行うことができる。これにより、スイッチング素子S*#がオフ状態に切り替えられる際に生じるサージ電圧を好適に低減することができる。
さらに、クランプ電圧を段階的に上昇させたため、例えば、第1のクランプ時間Tc1及び第2のクランプ時間Tc2を合わせた期間に渡って単一のクランプ電圧によってゲート電圧Vgeを制限する構成と比較して、ゲート電圧Vgeを早期に端子電圧VHまで上昇させてスイッチング損失を低減するとの要求、ゲート電圧Vgeをクランプ電圧で制限する時間を長くするとの要求、及びコレクタ電流Iceを制限するとの要求のバランスを取りやすくすることもできる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、第2のクランプ処理の処理内容を変更する。
図10に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの構成を示す。なお、図10において、先の図2に示した部材等と同一の部材等については、便宜上、同一の符号を付している。
図示されるように、スイッチング素子S*#のゲートは、抵抗体50を介して端子T4に接続されている。
続いて、図11を用いて、本実施形態にかかる第2のクランプ処理について説明する。なお、図11(a)〜(c)は、先の図3(a)〜(c)に対応している。また、図11は、センス電圧Vseが第1の閾値OCを超える状況におけるゲート電圧Vge等の推移を示している。
図示されるように、本実施形態では、センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えたタイミング(時刻t1)におけるクランプ電圧が第2のクランプ電圧Vc2であると判断された場合、クランプ電圧を第2のクランプ電圧Vc2から第1のクランプ電圧Vc1まで低下させる処理を行う。具体的には、第2のクランプ用スイッチング素子40をオフ操作に切り替えてかつ、第1のクランプ用スイッチング素子36をオン操作に切り替える処理を行う。これにより、その後ソフト遮断用スイッチング素子44がオン操作に切り替えられるタイミングにおけるコレクタ電流Iceを低減させ、ソフト遮断処理によってスイッチング素子S*#がオフ状態に切り替えられる際に生じるサージ電圧をより低減することができる。
さらに、本実施形態では、ドライブユニットDUに抵抗体50を備えている。このため、第2のクランプ用スイッチング素子40をオフ操作に切り替えてかつ第1のクランプ用スイッチング素子36をオン操作に切り替えた場合、抵抗体50によって電流の流通が制限されるため、図11の時刻t1〜t2に示すように、ゲート電圧Vgeを第2のクランプ電圧Vc2から第1のクランプ電圧Vc1まで低下させる場合のゲート電圧Vgeの低下速度を緩和させることができる。これにより、ゲート電圧Vgeを低下させる場合のコレクタ電流Iceの低下速度を低くすることができ、クランプ電圧を低下させることに起因するサージ電圧を低減することができる。
なお、本実施形態では、抵抗体50の抵抗値及び第1のツェナーダイオード34のブレークダウン電圧の設定によって、上記第1の実施形態で説明した第1のクランプ電圧Vc1を実現している。
以上説明した第2のクランプ処理によれば、ソフト遮断処理によってスイッチング素子S*#がオフ状態に切り替えられる際に生じるサージ電圧をより好適に低減することができる。また、ドライブユニットDUに抵抗体50を備えたため、クランプ電圧の低下に起因したサージ電圧も低減することができる。
さらに、クランプ電圧を低下させる場合の目標値となるクランプ電圧を第1のクランプ電圧Vc1とした。このため、例えば、上記目標値として、第1のクランプ電圧Vc1以外の電圧であってかつ第2のクランプ電圧Vc2未満の電圧を選択する構成と比較して、この目標値を生成するためのツェナーダイオード等、ドライブユニットDUを構成する部品数の増大を回避することができる。これにより、ドライブユニットDUの体格の増大を回避することもできる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、センス電圧Vseが第1の閾値OCを超えてから所定時間Tcut経過するまでの期間に、センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えるようにクランプ電圧を設定する手法を変更する。
図12に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの構成を示す。なお、図12において、先の図2に示した部材等と同一の部材等については、便宜上、同一の符号を付している。なお、本実施形態において、ドライブユニットDUには、第2のツェナーダイオード38及び第2のクランプ用スイッチング素子40が備えられていない。また、本実施形態において、第1のクランプ用スイッチング素子36を、単にクランプ用スイッチング素子36と称すこととする。
図示されるように、スイッチング素子S*#のコレクタ・エミッタ間電圧Vceは、ドライブIC20の端子T10,T3を介して電圧検出部52によって検出される。電圧検出部52によって検出されたコレクタ・エミッタ間電圧Vdtは、駆動制御部48に入力される。
端子T4及びクランプ用スイッチング素子36の間には、クランプ電圧設定回路54が設けられている。クランプ電圧設定回路54は、クランプ電圧Vcmを可変設定する機能を有しており、本実施形態では、クランプ電圧Vcmを連続的に可変設定可能なものを用いている。
なお、本実施形態にかかる第1のクランプ処理は、規定時間(「Tc1+Tc2」)において段階的に上昇させることなく、所定のクランプ時間に渡って単一のクランプ電圧Vcmでゲート電圧Vgeを制限する処理とする。ここで、上記クランプ時間は、上記第1のクランプ時間Tc1及び第2のクランプ時間Tc2を合わせた時間よりも短い時間に設定することができる。
次に、本実施形態にかかる特徴的構成であるクランプ電圧設定処理について説明する。
この処理は、駆動制御部48によって実行され、スイッチング素子S*#がオフ状態とされている場合のコレクタ・エミッタ間電圧の検出値Vdtが低いほどクランプ電圧Vcmを低く設定すべく、クランプ電圧設定回路54を操作する処理である。以下、この処理を設ける理由について説明する。
スイッチング素子S*#がオフ状態とされる場合のコレクタ・エミッタ間電圧Vceが低いほど、スイッチング素子S*#がオフ状態からオン状態に移行される過渡状態とされる状況下における実際のセンス電圧Vseが、コレクタ電流Iceに応じた当初の想定値よりも低くなる。すなわち、スイッチング素子S*#のオン操作が開始された後、センス電圧Vseはコレクタ電流Iceの上昇に応じて基本的には上昇するものの、オフ時のコレクタ・エミッタ間電圧Vceが低いほど、センス電圧Vseの上昇速度が当初の想定値よりも低くなる。これは、スイッチング素子S*#がオフ状態とされている場合のコレクタ・エミッタ間電圧Vceが低いほど、上記過渡状態におけるコレクタ・エミッタ間電圧Vceの低下速度が低くなることに起因して、コレクタ側へと流れるスイッチング素子S*#の帰還容量の放電電流が小さくなることによる。
センス電圧Vseの上昇速度が上記当初の想定値よりも低くなると、第1のクランプ処理によってゲート電圧Vgeがクランプ電圧Vcmで制限される期間において、センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えないことがある。特に、相間短絡が生じる場合には、センス電圧Vseの上昇速度がさらに低下することから、センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えない蓋然性が高い。センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えないと、上述したように、その後ゲート電圧Vgeの制限が解除される起因して、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが低下する。これにより、センス電圧Vseがコレクタ電流Iceに応じた当初の想定値よりも低くなり、ソフト遮断処理の開始タイミングにおいてゲート電圧Vgeをクランプ電圧で制限することができず、スイッチング素子S*#がオフ状態に切り替えられる際に生じるサージ電圧が増大する。こうした事態を回避すべく、上記クランプ電圧設定処理を行う。
ここで、本実施形態では、クランプ電圧設定処理を、図13に示す態様でスイッチング周期毎に行う。詳しくは、基本的には、スイッチング素子S*#がオフ状態とされている場合のコレクタ・エミッタ間電圧Vdtが所定値Vβを超えると判断された場合、操作信号g*#が次回オン操作指令とされるときのクランプ電圧Vcmを上記第2のクランプ電圧Vc2に設定し、コレクタ・エミッタ間電圧Vdtが所定値Vβ以下であると判断された場合、クランプ電圧Vcmを上記第1のクランプ電圧Vc1に設定する。ここでは、所定値Vβを中心としてクランプ電圧Vcmの設定にヒステリシスを持たせている。具体的には、コレクタ・エミッタ間電圧Vdtが所定値Vβを下から上に跨ごうとする状況下においては、コレクタ・エミッタ間電圧Vdtが所定値Vβからこの値よりもやや高い値に向かって上昇するにつれて、クランプ電圧Vcmが第1のクランプ電圧Vc1から第2のクランプ電圧Vc2に向かって徐々に上昇するようにクランプ電圧Vcmが設定される。また、コレクタ・エミッタ間電圧Vdtが所定値Vβを上から下に跨ごうとする状況下においては、コレクタ・エミッタ間電圧Vdtが所定値Vβからこの値よりもやや低い値に向かって低下するにつれて、クランプ電圧Vcmが第2のクランプ電圧Vc2から第1のクランプ電圧Vc1に向かって徐々に低下するようにクランプ電圧Vcmが設定される。
以上説明したクランプ電圧設定処理によれば、スイッチング素子S*#がオフ状態とされている場合のコレクタ・エミッタ間電圧Vceが低く、その後の上記過渡状態においてセンス電圧Vseがコレクタ電流Iceに応じた当初の想定値よりも低くなる事態が生じたとしても、ゲート電圧Vgeをクランプ電圧Vcmで制限することができる。このため、スイッチング素子S*#に過電流が流れる状況下、第1のクランプ処理によってゲート電圧Vgeが制限される期間において、センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えることとなる。これにより、ゲート電圧Vgeをクランプ電圧Vcmで制限した状態でソフト遮断処理を行うことができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記第1の実施形態において、第1のクランプ電圧Vc1を、スイッチング素子S*#のミラー電圧Vmillと同じ電圧に設定してもよい。
・上記第1の実施形態において、第1のクランプ処理の開始タイミングをオン操作指令への切り替えタイミングに同期させてもよい。
・制限手段としては、ソフト遮断処理によってスイッチング素子S*#の駆動を禁止してコレクタ電流Iceの流通を阻止するものに限らない。例えば、スイッチング素子S*#のミラー電圧Vmillよりも高くてかつ第1のクランプ電圧Vc1よりも低い電圧までゲート電圧Vgeを低下させるなどして、コレクタ電流Iceの流通を許容しつつもコレクタ電流Iceを低下させるものであってもよい。この場合であっても、コレクタ電流Iceの低下に起因してサージ電圧が増大するおそれがあるなら、過電流保護処理が有効である。
・上記第1,第2の実施形態では、クランプ電圧を2段階に設定したがこれに限らず、3段階以上に設定してもよい。この場合、例えば先の図2において、ゲート電圧を制限するためのクランプ用スイッチング素子及びツェナーダイオードを3組以上備えてかつ、これらツェナーダイオードのブレークダウン電圧を互いに相違させればよい。ここでは、ゲート電圧Vgeを早期に端子電圧VHまで上昇させてスイッチング損失を低減するとの要求、及びゲート電圧Vgeをクランプ電圧で制限する時間を長くするとの要求に基づき、クランプ電圧の設定数と、各クランプ電圧のクランプ時間とを設定すればよい。
なお、上記構成の場合、センス電圧Vseが第2の閾値SCを超えたと判断されたとき、クランプ電圧を、複数のクランプ電圧のうち上記判断時点のクランプ電圧以下の任意の電圧まで低下させればよい。
・スイッチング素子S*#がオフ状態とされている場合のコレクタ・エミッタ間電圧の検出手法としては、上記第3の実施形態に例示したものに限らない。例えば、インバータIVの入力電圧を検出する手段(電圧センサ)を備え、上記コレクタ・エミッタ間電圧を電圧センサによって検出する手法を採用してもよい。
・上記第3の実施形態において、クランプ電圧Vcmの設定にヒステリシスを持たせなくてもよい。この場合、クランプ電圧Vcmの設定が2値的になされることから、クランプ電圧設定回路54の構成を、先の図2に示したように、第1のツェナーダイオード34、第1のクランプ用スイッチング素子36、第2のツェナーダイオード38及び第2のクランプ用スイッチング素子40を備える構成としてもよい。
・上記第3の実施形態において、コレクタ・エミッタ間電圧Vdtに基づきクランプ電圧Vcmを連続的に可変設定する構成を採用してもよい。この場合、コレクタ・エミッタ間電圧Vdtが低いほど、クランプ電圧Vcmを低く設定すればよい。
・過電流の流通経路のインダクタンスが大きく相違する状況としては、2つに限らない。例えば、モータジェネレータ10内の電気経路同士の短絡や、インバータIVの出力端子台における短絡等、相間短絡の態様によっても過電流の流通経路のインダクタンスが大きく相違することがあるなら、上記相違する状況が3つ以上あることも考えられる。この場合、想定される短絡態様のうち過電流の流通経路のインダクタンスが最大となる短絡が発生したときであっても、ゲート電圧Vgeがクランプ電圧で制限されている期間にセンス電圧Vseが第2の閾値SCを超えることが可能なように、例えば、第1のクランプ処理におけるクランプ電圧の数やクランプ時間を設定すればよい。
・緩和手段としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。例えば、ドライブユニットDUから抵抗体50を除去し、ゲート電圧Vgeを第1のクランプ電圧Vc1まで低下させる期間(先の図11の時刻t1〜t2)において定電流用スイッチング素子26をオン操作し、上記期間に定電流回路24からゲートへと電荷を供給するものであってもよい。これにより、ゲート電荷の放電が妨げられ、ゲート電圧Vgeの低下速度を緩和することができると考えられる。なお、ここでは、上記電荷の供給量が大きいほど、上記低下速度が低くなると考えられる。
・電流検出手段としては、センス端子Stの出力電流をセンス電圧Vseとして検出するセンス抵抗46を備えるものに限らない。例えば、センス端子Stからエミッタまでの電気経路を流れる電流を検出可能であるなら、ホール素子を備えるもの等、他の電流検出手段であってもよい。なお、この場合、センス端子及びエミッタ間が短絡されないように上記電気経路にある程度の抵抗を持たせることが望ましい。
・上記各実施形態では、センス端子Stがセンス抵抗46を介してスイッチング素子S*#のエミッタに接続される回路構成を採用したがこれに限らない。例えば、エミッタに代えて、エミッタの電位と同じ電位を有する部材(例えば電源)に接続してもよい。この場合、この電源の電位は、実際のエミッタの電位に応じて可変設定されることとなる。
・スイッチング素子としては、IGBTに限らず、例えばMOSFETであってもよい。
・本願発明が適用される車両としては、例えば、車載主機として回転機のみを備える電気自動車であってもよい。
・本願発明の適用対象としては、車載主機を駆動するための電力変換回路(インバータIVや昇圧コンバータCV)に備えられるスイッチング素子に限らず、例えば、空調用の圧縮機を駆動するための電力変換回路に備えられるスイッチング素子であってもよい。また、本願発明の適用対象としては、車両に搭載される電力変換回路に限らず、さらに電力変換回路に限らない。