(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるスイッチング素子の駆動回路を車載主機として回転機及び内燃機関を備えるハイブリッド車両に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる制御システムの全体構成を示す。
モータジェネレータ10は、車載主機であり、図示しない駆動輪に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータIV及び直流電源としての昇圧コンバータCVを介して高電圧バッテリ12に接続されている。ここで、昇圧コンバータCVは、コンデンサCと、コンデンサCに並列接続された一対のスイッチング素子Scp,Scnと、一対のスイッチング素子Scp,Scnの接続点と高電圧バッテリ12の正極とを接続するリアクトルLとを備えている。詳しくは、昇圧コンバータCVは、スイッチング素子Scp,Scnのオンオフ操作によって、高電圧バッテリ12の電圧(例えば百V以上)を所定の電圧(例えば「666V」)を上限として昇圧する機能を有する。
一方、インバータIVは、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。
ちなみに、本実施形態では、上記スイッチング素子S*#(*=u,v,w,c;#=p,n)として、電圧制御形のものが用いられ、より具体的には、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードD*#が逆並列に接続されている。
制御装置14は、低電圧バッテリ16を電源し、モータジェネレータ10の制御量(例えばトルク)を所望に制御すべく、インバータIVや昇圧コンバータCVを操作する。詳しくは、制御装置14は、昇圧コンバータCVのスイッチング素子Scp,Scnを操作すべく、操作信号gcp、gcnをドライブユニットDUに出力し、また、インバータIVのスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnを操作すべく、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnをドライブユニットDUに出力する。ここで、高電位側の操作信号g*pと、対応する低電位側の操作信号g*nとは、互いに相補的な信号となっている。換言すれば、高電位側のスイッチング素子S*pと、対応する低電位側のスイッチング素子S*nとは、交互にオン状態とされる。
なお、高電圧バッテリ12を備える高電圧システムと低電圧バッテリ16を備える低電圧システムとは、互いに絶縁されており、これらの間の信号の授受は、例えばフォトカプラ等の絶縁素子を備えるインターフェース18を介して行われる。
続いて、図2を用いて、上記ドライブユニットDUの構成について説明する。
図示されるように、ドライブユニットDUは、1チップ化された半導体集積回路であるドライブIC20を備えている。ドライブIC20は、端子電圧VH(例えば15V)を有する定電圧電源22を備え、定電圧電源22は、定電流回路24、PチャネルMOS電界効果トランジスタ(定電流用スイッチング素子26)及びドライブIC20の端子T1を介してスイッチング素子S*#の開閉制御端子(ゲート)に接続されている。なお、本実施形態では、定電流回路24として、出力電流を可変設定可能なものが用いられている。また、図2では、上記フリーホイールダイオードD*#の図示を省略している。
スイッチング素子S*#のゲートは、放電用抵抗体28、ドライブIC20の端子T2及びNチャネルMOS電界効果トランジスタ(放電用スイッチング素子30)を介してドライブIC20の端子T3に接続されている。そして、端子T3は、スイッチング素子S*#の出力端子(エミッタ)に接続されている。
スイッチング素子S*#のゲートは、また、ドライブIC20の端子T4、ツェナーダイオード34及びNチャネルMOS電界効果トランジスタ(クランプ用スイッチング素子36)を介して端子T3に接続されている。ここで、ツェナーダイオード34のブレークダウン電圧(以下、クランプ電圧)は、例えば、スイッチング素子S*#の信頼性が短時間で過度に低下するような電流が流れない程度の電圧(例えば12V)にスイッチング素子S*#の開閉制御端子の印加電圧(ゲート電圧)を制限するものである。
スイッチング素子S*#のゲートは、さらに、ソフト遮断用抵抗体38、ドライブIC20の端子T5及びNチャネルMOS電界効果トランジスタ(ソフト遮断用スイッチング素子40)を介して端子T3に接続されている。なお、ゲートからソフト遮断用スイッチング素子40を介してエミッタに至る電気経路が、ゲートに接続される放電経路に相当する。
スイッチング素子S*#は、その入力端子(コレクタ)及びエミッタ間に流れる電流(以下、コレクタ電流Ice)と相関を有する微少電流(例えば、コレクタ電流Iceの「1/10000」)を出力するセンス端子Stを備えている。センス端子Stは、抵抗体(センス抵抗42)を介してスイッチング素子S*#のエミッタに接続されている。これにより、センス端子Stから出力される微少電流によってセンス抵抗42に電圧降下が生じるため、センス抵抗42のうちセンス端子St側の電位(以下、センス電圧Vse)を、コレクタ電流と相関を有する電気的な状態量とすることができる。
ちなみに、本実施形態では、センス抵抗42の両端のうちセンス端子St側の電位がエミッタの電位よりも高い場合のセンス電圧Vseを正と定義する。また、エミッタの電位を「0」とする。
上記定電流用スイッチング素子26及び放電用スイッチング素子30は、ドライブIC20内の駆動制御部44によって操作される。駆動制御部44は、ドライブIC20の端子T6を介して入力される上記操作信号g*#に基づき、定電流用スイッチング素子26と放電用スイッチング素子30とを交互にオン・オフ操作することでスイッチング素子S*#を駆動する。詳しくは、操作信号g*#がオン操作指令となることで、放電用スイッチング素子30をオフ操作し、また、定電流用スイッチング素子26をオン操作する。一方、操作信号g*#がオフ操作指令となることで、定電流用スイッチング素子26をオフ操作し、また、放電用スイッチング素子30をオン操作する。
なお、本実施形態では、上記定電流回路24を備えるため、定電流用スイッチング素子26がオン操作される期間においてゲートの充電電流を一定値とすることができる。すなわち、スイッチング素子S*#のゲート充電処理を定電流制御にて行うことができる。
駆動制御部44は、さらに、端子T1を介して入力されるゲート電圧Vgeや、ドライブIC20の端子T7を介して入力されるセンス電圧Vse等に基づき、過電流保護処理を行う。以下、図3及び図4を用いて、過電流保護処理について説明する。
まず、図3を用いて、スイッチング素子S*#に過電流が流れない場合の上記処理について説明する。詳しくは、図3(a)は、定電流用スイッチング素子26の操作状態の推移を示し、図3(b)は、放電用スイッチング素子30の操作状態の推移を示し、図3(c)は、ゲート電圧Vgeの推移を示し、図3(d)は、クランプ用スイッチング素子36の操作状態の推移を示し、図3(e)は、センス電圧Vseの推移を示し、図3(f)は、ソフト遮断用スイッチング素子40の操作状態の推移を示す。
図示されるように、時刻t1において放電用スイッチング素子30がオフ操作に切り替えられ、その後時刻t2において定電流用スイッチング素子26がオン操作に切り替えられることで、ゲート電圧Vgeが上昇し始める。これにより、コレクタ電流Iceが流れ始め、センス電圧Vseも上昇し始める。
その後、ゲート電圧Vgeが第1の規定電圧Vα(例えば、ミラー電圧よりも低い電圧である3.3V)に到達する時刻t3からクランプフィルタ時間Tclamp(例えば、固定時間)に渡ってクランプ用スイッチング素子36がオン操作されるクランプ処理が行われる。これにより、ゲート電圧Vgeは、その上限電圧(上記端子電圧VH)に到達する以前にクランプ電圧Vclampで制限されることとなる。
なお、本実施形態において、ゲートの充電処理の初期においてクランプ用スイッチング素子36をオン操作するのは、例えば、上下アーム短絡が生じる場合において、後述するソフト遮断処理によってスイッチング素子をオフ状態に切り替えるまでにスイッチング素子S*#に流れるコレクタ電流Iceを制限するためである。また、図3に示す例では、スイッチング素子S*#に過電流が流れないことから、センス電圧Vseが閾値電圧Vthに到達しない。ここで、閾値電圧Vthとは、スイッチング素子S*#の信頼性を維持可能な観点から定められる値のことであり、センス電圧Vseが閾値電圧Vthとなる場合のコレクタ電流Iceは、ゲート電圧Vgeがクランプ電圧Vclampとなる場合のコレクタ電流Iceよりも小さい。
ちなみに、上下アーム短絡とは、高電位側のスイッチング素子S*p及び低電位側のスイッチング素子S*nの双方がオン状態とされることでスイッチング素子S*#の過電流(短絡電流)の流通経路が形成されることをいう。この上下アーム短絡は、例えば、高電位側のスイッチング素子S*p及び低電位側のスイッチング素子S*nのうち一方にショート故障が生じる状況下、他方がオン状態に切り替えられることで生じる。
その後、クランプフィルタ時間Tclampが経過する時刻t4において、クランプ用スイッチング素子36がオフ操作に切り替えられる。そして、時刻t5において定電流用スイッチング素子26がオフ操作に切り替えれ、その後時刻t6において放電用スイッチング素子30がオン操作に切り替えられる。
次に、図4を用いて、上下アーム短絡が生じてスイッチング素子S*#に過電流が流れる場合の過電流保護処理について説明する。詳しくは、図4(a)〜図4(f)は、先の図3(a)〜図3(f)に対応している。
図示されるように、時刻t1において放電用スイッチング素子30がオフ操作に切り替えられ、時刻t2において定電流用スイッチング素子26がオン操作に切り替えられた後、時刻t3においてゲート電圧Vgeが規定電圧Vαに到達する。そして、時刻t3からクランプフィルタ時間Tclampに渡ってクランプ用スイッチング素子36がオン操作される。
ここで、本実施形態において、上記クランプフィルタ時間Tclampは、上下アーム短絡が生じる場合において、ゲート電圧Vgeが第1の規定電圧Vαを超えてからセンス電圧Vseが閾値電圧Vthを超えるまでの時間の最大値と、ソフト遮断処理で用いられる所定時間Tcutとの加算値よりもやや長い時間に設定されている。このため、図4に示す例では、クランプフィルタ時間Tclamp内の時刻t4においてセンス電圧Vseが閾値電圧Vthを超えることとなる。
その後、センス電圧Vseが閾値電圧Vthを超えると判断される状態が時刻t4から上記所定時間Tcut継続される。このため、時刻t5において、ソフト遮断用スイッチング素子40がオン操作されるソフト遮断処理が行われる。これにより、スイッチング素子S*#が強制的にオフ状態とされる。ここで、ソフト遮断用抵抗体38は、ゲート電荷の放電経路の抵抗値を高抵抗とするためのものである。より具体的には、ソフト遮断用抵抗体38の抵抗値Raは、放電用抵抗体28の抵抗値Rbよりも高く設定されている。これは、コレクタ電流Iceが過大である状況下にあっては、スイッチング素子S*#をオン状態からオフ状態へと切り替える速度、換言すればコレクタ及びエミッタ間の遮断速度を大きくすると、サージ電圧が過大となるおそれがあることに鑑みたものである。なお、その後、クランプフィルタ時間Tclampが経過する時刻t6においてクランプ用スイッチング素子36がオフ操作に切り替えられる。
ちなみに、ソフト遮断処理が行われた場合、駆動制御部44は、フェール信号FLを出力する処理と、定電流用スイッチング素子26及び放電用スイッチング素子30の駆動を禁止する処理とを併せて行う。上記フェール信号FLは、先の図2に示すように、ドライブIC20の端子T8を介して低電圧システム(制御装置14)に出力される。このフェール信号FLによって、先の図1に示すフェール処理部18aでは、インバータIVや昇圧コンバータCVのシャットダウンが行われ、また、制御装置14では、例えば、走行動力源をエンジンのみとした車両の退避走行処理が行われる。ここで、フェール処理部18aの構成は、例えば、特開2009−60358号公報の図3に記載のものとすればよい。
ところで、インバータIVの備えるスイッチング素子S¥#(¥=u,v,w)について、過電流が流れる要因としては、上下アーム短絡の他に、相間短絡もある。ここで、相間短絡とは、例えば、インバータIV及びモータジェネレータ10を接続する3相の電気経路(例えば、バスバやモータケーブル)のうち2つが短絡したり、インバータIVに設けられてかつ3相の電気経路が接続される出力端子台のうち2つが短絡したり、モータジェネレータ10内の3相の電気経路のうち2つが短絡したりする状況下、短絡した相のうち一方に対応する高電位側のスイッチング素子と、他方に対応する低電位側のスイッチング素子とがオン状態とされることで過電流の流通経路が形成されることである。
図5に、先の図1に示したシステムの全体構成のうち、インバータIVのV,W相アーム部とモータジェネレータ10とを示す。
図示される例では、V,W相の上記電気経路同士が短絡する状況下、V相の高電位側のスイッチング素子Svpと、W相の低電位側のスイッチング素子Swnとがオン状態とされることで過電流の流通経路が形成される相間短絡を示している。
相間短絡が生じると、スイッチング素子S¥#に過電流が流れることから、その後、ソフト遮断処理が行われることとなる。しかし、ソフト遮断処理が行われると、スイッチング素子S¥#がオフ状態に切り替えられる際に生じるサージ電圧が増大するおそれがある。これは、相間短絡の生じる場合の過電流の流通経路が上下アーム短絡の生じる場合の過電流の流通経路よりも長いこと等に起因して、相間短絡の生じる場合の過電流の流通経路のインダクタンス(例えば180nH)が、上下アーム短絡の生じる場合の過電流の流通経路のインダクタンス(例えば60nH)よりも大きいことに起因する。
図6に、相間短絡及び上下アーム短絡が生じる場合におけるサージ電圧の発生態様を示す。詳しくは、図6(b)は、コレクタ・エミッタ間電圧Vceの推移を示し、図6(c)は、コレクタ電流Iceの推移を示し、図6(d)は、スイッチング素子S*#に生じる損失Wce(コレクタ・エミッタ間電圧Vce及びコレクタ電流Iceの乗算値)の推移を示し、図6(a)は、先の図3(c)に対応している。なお、図中、破線にて上下アーム短絡が生じる場合の推移を示し、実線にて相間短絡が生じる場合の推移を示している。
図示される例では、時刻t1においてゲート電荷の充電が開始されている。上下アーム短絡が生じる場合、その後時刻t2においてソフト遮断処理が行われる。一方、相間短絡が生じる場合には、過電流の流通経路のインダクタンスが上下アーム短絡が生じる場合の過電流の流通経路のインダクタンスよりも大きいことから、センス電圧Vseの上昇速度が低く、時刻t3においてソフト遮断処理が行われる。ここで、サージ電圧の大きさは、過電流の流通経路のインダクタンス及び上記流通経路を流れる電流の変化速度の乗算値に比例することから、過電流の流通経路のインダクタンスが大きいと、サージ電圧が大きくなる。このため、図示されるように、相間短絡が生じる場合のサージ電圧ΔVsrg1は、上下アーム短絡が生じる場合のサージ電圧ΔVsrg2よりも大きくなっている。このため、相間短絡が生じる場合にソフト遮断処理が行われると、スイッチング素子S¥#にこの素子の耐圧を超える電圧が印加され、スイッチング素子S¥#の信頼性が低下するおそれがある。また、サージ電圧の増大により、相間短絡が生じる場合のスイッチング損失は、上下アーム短絡が生じる場合のスイッチング損失よりも大きくなる。
さらに、図7に示すように、相間短絡の発生によってソフト遮断処理が開始されるタイミングにおけるコレクタ電流(Vse1)は、上下アーム短絡の発生によってソフト遮断処理が開始されるタイミングにおけるコレクタ電流(Vse2)よりも大きい。これは、ゲート電圧Vgeのクランプが解除され、ゲート電圧Vgeが上記端子電圧VHとされる状態でソフト遮断処理が開始されるからである。このため、ソフト遮断処理によってスイッチング素子S¥#がオフ状態に切り替えられる際に生じるサージ電圧の増大が顕著となるおそれがある。なお、図7(a)〜図7(f)は、先の図3(a)〜図3(f)に対応している。
こうした問題に対処すべく、本実施形態では、相間短絡が生じた場合のソフト遮断処理におけるゲート電荷の放電速度を、上下アーム短絡が生じた場合の放電速度よりも低く設定する。これにより、相間短絡が生じる場合のソフト遮断処理によってスイッチング素子S¥#がオフ状態に切り替えられる際に生じるサージ電圧の低減を図る。
ちなみに、相間短絡が生じる場合のソフト遮断処理において、ゲート電荷の放電速度を低く設定しても、スイッチング損失は過度に大きくならない。これは、先の図6に示すように、相間短絡が生じる場合におけるスイッチング素子S*#がオン状態とされているときのコレクタ・エミッタ間電圧Von1が、上下アーム短絡が生じる場合におけるスイッチング素子S*#がオン状態とされているときのコレクタ・エミッタ間電圧Von2よりも低くなるためである。ここで、コレクタ・エミッタ間電圧が低くなるのは、相間短絡が生じる場合の過電流の流通経路の抵抗値のうち、高電位側のスイッチング素子のエミッタから低電位側のスイッチング素子のコレクタまでの経路(例えば、上記バスバ)の抵抗値が占める割合が上下アーム短絡の場合よりも高くなり、上記経路における電圧降下量が大きくなることによる。なお、上記割合が高くなる要因としては、主に、相間短絡が生じる場合の過電流の流通経路が上下アーム短絡が生じる場合の過電流の流通経路よりも長いことによる。
また、ソフト遮断処理におけるゲート電荷の放電速度を、相間短絡が生じる場合と上下アーム短絡が生じる場合とで共通化しないのは、以下の理由による。つまり、上下アーム短絡が生じる場合に放電速度を低く設定すると、図8に示すように、サージ電圧は低下するものの、コレクタ電流Iceが遮断されるまでの時間が長くなることに起因して、スイッチング損失が増大する。このため、放電速度を共通化しない。なお、スイッチング損失が増大すると、過電流の流通時間がスイッチング素子S*#の短絡耐量を超え、スイッチング素子S*#の信頼性が低下するおそれがある。また、図8(a)〜図8(d)は、先の図6(a)〜図6(d)に対応している。
図9に、駆動制御部44によって実行される本実施形態にかかる放電速度設定処理の手順を示す。なお、本実施形態にかかる駆動制御部44は、ハードウェアであるため、図9に示す処理は、実際にはロジック回路によって実行される。
この一連の処理では、ますステップS10において操作信号g¥#(¥=u,v,w:#=p,n)がオフ操作指令からオン操作指令に切り替えられたか否かを判断する。
続くステップS12では、操作信号g¥#がオン操作指令に切り替えられてから第1の規定時間Ta経過するまで待機する。ここで、第1の規定時間Taは、例えば、上下アーム短絡が生じる状況下、オン操作指令に切り替えられてからセンス電圧Vseが閾値電圧Vthを超えるまでの時間の最小値よりもやや短い時間に設定すればよい。
続くステップS14では、第1の規定時間Ta経過したタイミング(例えば、先の図4の時刻t3)におけるセンス電圧Vseの上昇速度(以下、電圧上昇速度Sse)を算出し、算出された電圧上昇速度Sseが規定速度Sα未満であるか否かを判断する。この処理は、相間短絡が生じているか否かを判断するための処理である。ここで、規定速度Sαは、例えば、相間短絡が生じる場合の電圧上昇速度Sseの最大値に設定すればよい。また、電圧上昇速度Sseは、センス電圧Vseの時間微分値として算出すればよい。
ステップS14において否定判断された場合には、相間短絡が生じていないと判断し、ステップS16に進む。ステップS16では、フラグFの値を「0」とする。ここで、フラグFは、「0」によってソフト遮断処理が行われる場合のゲート電荷の放電速度を上下アーム短絡に対応した速度に設定することを指示し、「1」によって上記放電速度を相間短絡に対応した速度に設定することを指示する。
一方、上記ステップS14において肯定判断された場合には、スイッチング素子S¥#の短絡状態として相間短絡が生じていると判断し、ステップS18に進む。ステップS18では、フラグFの値を「1」とする。
なお、上記ステップS10において否定判断された場合や、ステップS16、S18の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
図10に、駆動制御部44によって実行される本実施形態にかかるソフト遮断処理の手順を示す。なお、本実施形態にかかる駆動制御部44は、ハードウェアであるため、図10に示す処理は、実際にはロジック回路によって実行される。
この一連の処理では、まずステップS20において、センス電圧Vseが閾値電圧Vthを超える状態が所定時間Tcut継続されたか否かを判断する。
ステップS20において肯定判断された場合には、ステップS22に進み、フラグFの値が「1」であるか否かを判断する。
ステップS22において否定判断された場合には、ステップS24に進み、上下アーム短絡に対応したゲート電荷の放電速度にてゲート電荷を放電させる。具体的には、放電用スイッチング素子30をオフ操作してかつ、ソフト遮断用スイッチング素子40をオン操作する。
一方、上記ステップS22において肯定判断された場合には、相間短絡に対応したゲート電荷の放電速度にてゲート電荷を放電させる。具体的には、放電用スイッチング素子30をオフ操作してかつ、ソフト遮断用スイッチング素子40及び定電流用スイッチング素子26の双方をオン操作する。こうした処理によれば、定電流回路24からゲートへと電荷が充電されるため、ゲート電荷の放電が妨げられる。このため、ゲート電荷の放電速度は、上記ステップS24における放電速度よりも低く設定されることとなる。
ちなみに、本ステップにおいて、定電流回路24の出力電流を調節することで、放電速度を連続的又は段階的に調節することもできる。ここでは、上記出力電流(単位時間あたりの電荷の供給量)を大きくするほど、放電速度が低く設定される。
なお、上記ステップS20において否定判断された場合や、ステップS24、S26の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)電圧上昇速度Sseが規定速度Sα未満であると判断された場合、相間短絡が生じていると判断し、ゲート電荷の放電速度を低下させる処理を行った。これにより、相間短絡が生じる状況下、ソフト遮断処理によってスイッチング素子S¥#がオフ状態に切り替えられる際に生じるサージ電圧を低減することができる。これにより、スイッチング素子S¥#の信頼性の低下を好適に抑制することができる。
(2)相間短絡が生じていると判断された場合、定電流用スイッチング素子26をオン操作することでゲート電荷の放電速度を低く設定可能な回路構成とした。モータジェネレータ10の制御システム毎に、相間短絡が生じる場合の過電流の流通経路のインダクタンスに個体差が生じ得る。この場合、制御システム毎のインダクタンスに応じてゲート電荷の放電速度を調節することが望ましい。ここで、上記回路構成によれば、定電流回路24の出力電流の調節によって放電速度を調節することができる。なお、放電速度の調節手法としては、具体的には、例えば、制御システム毎の上記インダクタンスをあらかじめ測定して駆動制御部44等のメモリに記憶しておき、記憶されたインダクタンスに基づき放電速度を調節する手法が考えられる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、電圧上昇速度Sseに代えて、クランプフィルタ時間Tclampに基づき放電速度を設定する。
図11に、駆動制御部44によって実行される放電速度設定処理の手順を示す。なお、本実施形態にかかる駆動制御部44は、ハードウェアであるため、図11に示す処理は、実際にはロジック回路によって実行される。また、図11において、先の図9と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
この一連の処理では、まずステップS28において、操作信号g¥#がオン操作指令であるか否かを判断する。
ステップS28において肯定判断された場合には、ステップS30に進み、クランプ処理が開始されてからクランプフィルタ時間Tclamp経過したか否かを判断する。
ステップS30において否定判断された場合には、ステップS16に進む。一方、上記ステップS30において肯定判断された場合には、クランプ電圧Vclampによるゲート電圧Vgeの制限が完了したと判断し、ステップS18に進む。ここで、ステップS30において肯定判断された場合にフラグFの値を「1」とするのは、クランプフィルタ時間Tclamp経過後にソフト遮断処理が行われる状況は、相間短絡によってスイッチング素子S¥#に過電流が流れている蓋然性が高い状況であることによる。
なお、上記ステップS28において否定判断された場合や、ステップS16、S18の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
このように、クランプフィルタ時間Tclampによっても、ソフト遮断処理における放電速度を適切に設定することができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、電圧上昇速度Sseに代えて、コレクタ・エミッタ間電圧Vceの検出値に基づき、相間短絡が生じているか否かを判断する。
図12に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの構成を示す。なお、図12において、先の図2に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。
図示されるように、スイッチング素子S*#のコレクタ・エミッタ間電圧Vceは、ドライブIC20の端子T9,T3を介して電圧検出部46によって検出される。
図13に、駆動制御部44によって実行される放電速度設定処理の手順を示す。なお、本実施形態にかかる駆動制御部44は、ハードウェアであるため、図13に示す処理は、実際にはロジック回路によって実行される。また、図13において、先の図9と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
この一連の処理では、ステップS12において肯定判断された場合、ステップS32に進み、電圧検出部46によって検出されたコレクタ・エミッタ間電圧Vdtが第2の規定電圧Vβを超えるか否かを判断する。ここで、第2の規定電圧Vβは、例えば、スイッチング素子S¥#に過電流が流れない正常時におけるコレクタ電流Iceの上限値(換言すれば、上下アーム短絡や相間短絡が生じない状況下、スイッチング素子S*#がオン状態とされている場合のコレクタ電流Iceの上限値)に対応するコレクタ・エミッタ間電圧Vceに設定すればよい。
ステップS32において肯定判断された場合には、スイッチング素子S¥#に過電流が流れていると判断し、ステップS34に進む。ステップS34では、コレクタ・エミッタ間電圧Vdtが第2の規定電圧Vβよりも高い第3の規定電圧Vγ未満であるか否かを判断する。ここで、第3の規定電圧Vγは、スイッチング素子S¥#に過電流が流れる状況下、相間短絡及び上下アーム短絡のいずれが生じているかを判別可能な値(例えば、先の図6(b)の「Von1」及び「Von2」の間の値)に設定される。この処理は、相間短絡及び上下アーム短絡のうちいずれが生じているかを判断するための処理である。
上記ステップS32やステップS34において否定判断された場合には、スイッチング素子S¥#の短絡状態として上下アーム短絡が生じていると判断し、ステップS16に進む。一方、上記ステップS34において肯定判断された場合には、スイッチング素子S¥#の短絡状態として相間短絡が生じていると判断し、ステップS18に進む。
なお、上記ステップS10において否定判断された場合や、ステップS16、S18の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
このように、スイッチング素子S¥#がオン状態とされている場合のコレクタ・エミッタ間電圧Vdtによっても、ソフト遮断処理における放電速度を適切に設定することができる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、ソフト遮断処理が行われる場合の放電速度を設定する回路構成を変更する。
図14に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの構成を示す。なお、図14において、先の図2に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。なお、本実施形態では、ソフト遮断用抵抗体38を第1のソフト遮断用抵抗体と称し、ソフト遮断用スイッチング素子40を第1のソフト遮断用スイッチング素子と称すこととする。
図示されるように、スイッチング素子S*#のゲートは、第2のソフト遮断用抵抗体48、ドライブIC20の端子T10及びNチャネルMOS電界効果トランジスタ(第2のソフト遮断用スイッチング素子50)を介して端子T3に接続されている。ここで、第2のソフト遮断用抵抗体48の抵抗値Rcは、第1のソフト遮断用抵抗体38の抵抗値Raよりも高く設定されている。なお、第2のソフト遮断用スイッチング素子50は、駆動制御部44によって操作される。
ちなみに、ゲートから第1のソフト遮断用スイッチング素子40を介してエミッタに至る電気経路と、ゲートから第2のソフト遮断用スイッチング素子50を介してエミッタに至る電気経路とが、ゲートに接続される複数の放電経路に相当する。
続いて、本実施形態にかかるソフト遮断処理について説明する。
本実施形態にかかるソフト遮断処理は、先の図10に示した処理に準じた処理によって行うことができる。詳しくは、ステップS24の処理を、放電用スイッチング素子30及び第2のソフト遮断用スイッチング素子50をオフ操作してかつ、第1のソフト遮断用スイッチング素子40をオン操作する処理に置き換える。また、ステップS26の処理を、放電用スイッチング素子30及び第1のソフト遮断用スイッチング素子40をオフ操作してかつ、第2のソフト遮断用スイッチング素子50をオン操作する処理に置き換える。
以上説明した回路構成によっても、放電速度を低く設定することができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記各実施形態において、昇圧コンバータCVが備えるスイッチング素子Sc#についても、インバータIVが備えるスイッチング素子S¥#と同様に、過電流の流通経路のインダクタンスが想定したものよりも大きくなることがあるなら、放電速度設定処理の適用が有効である。
・短絡判断手段としては、上記第1の実施形態に例示したものに限らない。例えば、オン操作指令への切り替えタイミングから所定の閾値時間内に電圧上昇速度Sseが上記規定速度Sαを超えないと判断された場合、スイッチング素子S¥#の短絡状態が相間短絡であると判断し、ステップS18に進む制御ロジックを採用してもよい。
また、短絡判断手段としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。
例えば、オン操作指令の切り替えタイミングからクランプフィルタ時間Tclampが経過した後、さらにセンス電圧Vseが閾値電圧Vthを超えたと判断された場合にフラグFの値を「1」にする制御ロジックを採用してもよい。
また、例えば、オン操作指令の切り替えタイミングから所定の閾値時間が経過する以前においては、フラグFの値を「0」とし、上記所定の閾値時間が経過した後においては、フラグFの値を「1」に設定する制御ロジックを採用してもよい。この制御ロジックは、上記切り替えタイミングからソフト遮断処理が行われるタイミングまでの時間が長くなるほど、相間短絡によってスイッチング素子S¥#に過電流が流れている状況でソフト遮断処理が行われる蓋然性が高くなることによる。なお、上記所定の閾値時間は、上下アーム短絡と相間短絡とを判別可能な値に設定すればよい。具体的には、例えば、上記所定の閾値時間は、上下アーム短絡が生じる状況下、上記切り替えタイミングからセンス電圧Vseが閾値電圧Vthを超えるまでの時間の最大値に、上記クランプフィルタ時間Tclampを加算した値に設定すればよい。
・上記第1の実施形態において、クランプ処理の開始タイミングをオン操作指令への切り替えタイミングに同期させてもよい。
・高電位側のスイッチング素子S*p及び低電位側のスイッチング素子S*nの直列接続体が並列接続された直流電源としては、コンバータCVに限らない。例えば、上記第1の実施形態においてコンバータCVが備えられない場合や、コンバータCVの動作が停止される場合、高電圧バッテリ12が直流電源となる。
・制限手段としては、スイッチング素子をオフ状態に切り替えてコレクタ電流Iceの流通を阻止するものに限らない。例えば、ゲート電圧Vgeを低下させるなどして、コレクタ電流Iceの流通を許容しつつもコレクタ電流Iceを低下させるものであってもよい。
・上記各実施形態では、ソフト遮断処理による電荷の放電速度を2通りに設定可能な回路構成を採用したがこれに限らない。モータジェネレータ10内の電気経路同士の短絡や、インバータIVの出力端子台における短絡等、相間短絡の態様によっても過電流の流通経路のインダクタンスが大きく相違することも考えられる。このため、過電流の流通経路のインダクタンスが大きく相違する態様がN個以上(Nは3以上の整数)ある場合、電荷の放電速度をN通り以上に設定可能な回路構成を採用してもよい。
・電流検出手段としては、コレクタ電流Iceをセンス電圧Vseとして検出するセンス抵抗42を備えるものに限らない。例えば、ホール素子を備えるもの等、他の電流検出手段であってもよい。また、例えば、コレクタ・エミッタ間電圧Vceに基づきコレクタ電流Iceを検出するものであってもよい。これは、スイッチング素子がオン状態とされている場合のコレクタ・エミッタ間電圧Vceが高いほど、コレクタ電流Iceが大きいことに基づくものである。
・放電速度を可変設定する回路構成としては、上記各実施形態に例示したものに限らず、以下(A)〜(D)に説明するものを採用してもよい。
(A)上記第1の実施形態において、ソフト遮断用スイッチング素子40のオン抵抗を変更することで放電速度を可変設定してもよい。具体的には、フラグFの値が「0」であると判断された場合、ソフト遮断用スイッチング素子40をオン状態とさせるときにおけるこのスイッチング素子のゲート電圧を、ソフト遮断用スイッチング素子40のドレイン・ソース間電圧の上昇に伴ってドレイン電流が増大する非飽和領域でソフト遮断用スイッチング素子40を駆動させる電圧に設定する。これにより、ソフト遮断用スイッチング素子40のオン抵抗は略0とされる。一方、フラグFの値が「1」であると判断された場合、上記ゲート電圧を、ソフト遮断用スイッチング素子40のドレイン・ソース間電圧の大きさにかかわらずドレイン電流が一定となる飽和領域でソフト遮断用スイッチング素子40を駆動させる電圧に設定する。これにより、ソフト遮断用スイッチング素子40のオン抵抗は、フラグFの値が「0」とされる場合のオン抵抗よりも高くなり、放電速度が低く設定されることとなる。
(B)過電流の流通経路のインダクタンスが大きく相違する態様がN個以上(Nは3以上の整数)ある場合、上記第4の実施形態において、ソフト遮断処理で用いられる放電経路をN個以上備える回路構成を採用してもよい。
(C)スイッチング素子S*#のゲートに、ソフト遮断用抵抗体38を含む複数の抵抗体の直列接続体を備える放電経路を接続し、また、複数の抵抗体のうち少なくとも1つの両端を短絡するためのスイッチを備える。こうした構成において、スイッチの開閉操作によって放電経路の抵抗値を変更することで放電速度を可変設定してもよい。この場合、複数の放電経路とは、スイッチの開閉操作態様で定まる全ての放電経路を併せたもののことである。
(D)エミッタ又はエミッタよりも低電位となる箇所と、ゲートとの接続を切り替え可能なスイッチをドライブユニットDUに備える。こうした構成において、スイッチの操作によってゲートとエミッタとを接続することで放電速度を低く設定し、ゲートをエミッタよりも低電位となる箇所に接続することで放電速度を高く設定してもよい。
・スイッチング素子としては、IGBTに限らず、例えばMOSFETであってもよい。
・本願発明が適用される車両としては、例えば、車載主機として回転機のみを備える電気自動車であってもよい。
・本願発明の適用対象としては、車載主機を駆動するための電力変換回路(インバータIVや昇圧コンバータCV)に限らず、例えば、空調用の圧縮機を駆動するための電力変換回路であってもよい。また、本願発明の適用対象としては、車両に搭載される電力変換回路に限らない。なお、この場合、過電流の流通経路としては、上下アーム短絡や相間短絡によって形成されるものに限らない。スイッチング素子に過電流が流れる状況が他にもあってかつ、インダクタンスが互いに相違する複数の過電流の流通経路が想定されるなら、例えば、電圧上昇速度Sseに基づき短絡状態を判断し、この判断結果に基づき放電速度を可変設定する本願発明の適用が有効である。