JP2016118772A - 樹脂組成物及び積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、樹脂組成物を基板にコーティングする際の作業性を向上でき、且つ、基板上に層を形成する材料として優れた密着性、耐熱性を有する樹脂組成物、及び、該樹脂組成物からなる層を基板上に形成して得られる、優れた耐熱性を有する積層体を提供することを目的とする。特に、ガラス基板との密着性が高く、耐熱性及び耐湿熱性に優れる樹脂組成物及びこれをコーティングして作製した積層体を提供することを主目的とする。【解決手段】第一に、近赤外線吸収色素と、アミノ基を有するシランカップリング剤と、溶剤可溶性樹脂であるポリ(アミド)イミド樹脂とを含有する樹脂組成物を見出した。第二に、ガラス基板上に樹脂層を形成させた積層体において、樹脂層が、上記樹脂組成物から形成される(好ましくはコーティングして作製する)積層体を見出した。【選択図】なし

Description

本発明は、近赤外線吸収色素と、特定のシランカップリング剤と、特定の樹脂とを含有する樹脂組成物及び該組成物を用いて作製される積層体に関する。
近年、表示素子や撮像素子等の光学デバイス等、種々の分野においては、多機能化を図るため、ガラス等からなる基板上に様々な層を形成した積層構造の部材・材料が広く用いられるようになっている。基板上に形成する層としては、例えば、タッチパネル等に用いられるITO(インジウム・スズ複合酸化物)透明導電層、撮像素子における光学ノイズを低減させる(近)赤外線(IR)カット層、基板表面での光の反射を低減させる反射防止層等が挙げられる。
撮像素子は、固体撮像素子又はイメージセンサチップとも称され、被写体の光を電気信号に変換して出力する電子部品であり、例えば、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等に使用されている。このような撮像素子は、通常、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサー)及びレンズを備えた構成からなるが、多機能化及び高性能化を図るため、画像処理等の妨げとなる光学ノイズの低減への要求が高まっている。
撮像素子における光学ノイズの低減は、従来、銅イオンをドープさせたブルーガラス等の吸収ガラスや、光学ノイズを低減させる光吸収機能又は反射機能を樹脂成分にもたせた樹脂フィルター等を撮像素子に備えることで行われてきた。しかし、吸収ガラスは耐熱性に非常に優れるものの、クラック(割れ)やチッピング(欠け)が生じやすく、加工性が充分ではない。他方、樹脂フィルターはクラックやチッピングの発生を抑制できるうえ、加工性にも優れるが、その一方で、ガラスに比べると耐熱性は充分ではなく、線膨張による反りが発生しやすい。そこで近年では、ガラス等の基板上に光吸収機能や反射機能を有する層を形成した、積層構造の光学フィルターの開発が進められている。
上記積層構造の光学フィルター等としては、例えば、ガラス基板上に、光吸収剤を含む第1の層と、屈折率の異なる2種類の膜を交互に積層させた第2の層とを具備する光吸収フィルター(特許文献1参照);ガラス基板上に、フタロシアニン化合物を含有する着色硬化性組成物からなる着色膜を有するカラーフィルタ(特許文献2参照);ガラス基板上に、液状樹脂組成物等からなる有機高分子層と、誘電体多層膜からなる近赤外線反射膜とを有する近赤外線カットフィルター(特許文献3参照);ガラス基板上に、近赤外線吸収剤を含有する樹脂層を有する積層板を含み、所定の透過率を示す近赤外線カットフィルター(特許文献4参照);等が開示されている。
特開2008−51985号公報 特開2012−167145号公報 特開2013−50593号公報 特開2012−103340号公報
上述したように、近年では、基板上にIRカット層等を形成した積層体の開発が進んでおり、それを得るための積層用材料の検討がなされている。
ところで、基板上にIRカット層等の層を形成する際は、基板とIRカット層等との高い密着性が求められている。
上記のように、特許文献1〜4では、多層構造のIRカットフィルター等が提案されている。しかしながら、従来の技術には、密着性や耐熱性の特性に優れた成形体を与える樹脂組成物について、更に検討する余地があった。また、作業性において、例えば、樹脂組成物の溶液(1液)を基板にコーティングする作業において、基板との密着性を高く維持できる樹脂組成物について、更に検討する余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、樹脂組成物を基板にコーティングする際の作業性を向上でき、且つ、基板上に層を形成する材料として優れた密着性、耐熱性を有する樹脂組成物、及び、該樹脂組成物からなる層を基板上に形成して得られる、優れた耐熱性を有する積層体を提供することを目的とする。
特に、透明基板との密着性が高く、耐熱性及び耐湿熱性に優れる樹脂組成物及びこれをコーティングして作製した積層体(特に近赤外線カットフィルター)を提供することを主目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、近赤外線吸収色素(近赤外線吸収性化合物)と、アミノ基を有するシランカップリング剤と、溶剤可溶性樹脂であるポリ(アミド)イミド樹脂とを含有させた樹脂組成物及び上記樹脂組成物を用いて作製される(好ましくはコーティングして作製する)積層体が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に示すものである。
第一の発明は、近赤外線吸収色素と、アミノ基を有するシランカップリング剤と、溶剤可溶性樹脂であるポリ(アミド)イミド樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物である。
第二の発明は、上記近赤外線吸収色素が、フタロシアニン系化合物及び/又はオキソカーボン系化合物を含有し、上記色素は600〜900nmの波長域に吸収極大を有する色素(化合物)であることを特徴とする第一の発明に記載の樹脂組成物である。
第三の発明は、上記シランカップリング剤の含有量が、上記ポリ(アミド)イミド樹脂100質量部に対して0.3〜5.0質量部であることを特徴とする第一又は第二の発明に記載の樹脂組成物である。
第四の発明は、上記シランカップリング剤が、第一級アミノ基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする第一から第三の発明のいずれかに記載の樹脂組成物である。
第五の発明は、基板上に樹脂層を形成させた積層体において、該樹脂層が、第一から第四の発明のいずれかに記載の樹脂組成物から形成されることを特徴とする積層体である。
第六の発明は、透明基板上に樹脂層を形成させた近赤外線カットフィルターにおいて、樹脂層が、第一から第四の発明のいずれかに記載の樹脂組成物から形成される(好ましくはコーティングして作製する)ことを特徴とする近赤外線カットフィルターである。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本明細書中、「吸収極大」とは、波長と吸光度との関係を、X軸とY軸との2次元グラフ(但し、X軸を波長とし、Y軸を吸光度とする)で表した場合に、吸光度が増加から減少に転じる頂点を意味する。また、吸収極大波長の中で、吸光度が最大のものを、「最大吸収波長」と称す。
本発明の樹脂組成物を用いることで、透明基板との密着性が高い樹脂層を形成できる。また、耐熱性及び耐湿熱性に優れた積層体(特に、近赤外線カットフィルター)を得ることができる。
本発明の樹脂組成物及び積層体について説明する。
<樹脂組成物>
まず、樹脂組成物について説明する。本発明の樹脂組成物は、近赤外線吸収色素と、特定のシランカップリング剤と、特定の樹脂とを含有するものである。本発明の樹脂組成物は、コーティング用であることが好ましく、近赤外線遮断用であることが好ましく、透明基板への積層用樹脂組成物であることが好ましい。
<近赤外線吸収色素(近赤外線吸収性化合物)>
本発明の樹脂組成物において、色素は、600〜900nmの波長域に吸収極大を有する色素(以下、特定色素とも称す)を含むことが好ましい。このような色素を含むことで、特に580nm〜1000nmの赤外線を低減でき、これに起因する光学ノイズを除去することが可能となる。これによって、可視光透過率が高く、かつ近赤外領域の遮断性能に優れるという、光学ノイズ低減のために好適な性能が得られることになる。上記特定色素としてより好ましくは、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素であり、さらに好ましくは650〜750nmの波長域に吸収極大を有する色素である。
上記特定色素は、600〜900nmの波長域に吸収極大を複数有していてもよい。600〜900nmの波長域における吸収極大のうち、最も短波長側の吸収極大が650〜750nmの波長域にあることが好ましい。上記特定色素はまた、400nm以上、600nm未満の波長域に実質的に吸収極大を持たないものであることが好ましい。
本発明の樹脂組成物における特定色素の含有量は、樹脂組成物(固形分)100質量%中、好ましくは0.05〜30質量%であり、より好ましくは1〜25質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。
上記樹脂組成物において、色素は、樹脂組成物中に分散又は溶解されていることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物中に色素が溶解して含有されてなる形態である。すなわち、色素が樹脂組成物に含まれる樹脂成分や溶媒に溶解するものであることが好ましい。このような近赤外線吸収色素と共に溶剤可溶性である後述のポリ(アミド)イミド樹脂を用いることにより、色素を高濃度で均一に分散した樹脂層を形成することができる。色素は、1種又は2種以上を使用することができる。
上記樹脂組成物に含まれる色素は、分子内にπ電子結合を有する色素が好ましい。分子内にπ電子結合を有する色素としては、芳香環を含む化合物であることが好適である。より好ましくは、1分子内に2個以上の芳香環を含む化合物である。
なお、上記分子内にπ電子結合を有する色素が、上述した波長域に吸収極大を有するものであること、すなわち特定色素であること、が特に好ましい。
上記分子内にπ電子結合を有する色素としては、例えば、フタロシアニン系色素、オキソカーボン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、アゾ系化合物、ジインモニウム系化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。耐熱性、耐候性、透過性、本発明に含まれるポリ(アミド)イミド樹脂との相溶性の観点から、特に、フタロシアニン系色素及び/又はオキソカーボン系色素が好適である。
本発明の樹脂組成物はまた、2種以上の色素を含むものであってもよい。中でも、吸収特性の異なる2種以上の特定色素を含むことが好ましく、当該2種以上の色素が、吸収特性の異なる色素α及び色素βを少なくとも含み、該色素αは、フタロシアニン系色素及び/又はオキソカーボン系色素であり、かつ該色素αと樹脂成分(バインダー樹脂)とからなる樹脂層の吸収スペクトルを測定した際に、600〜650nm及び680〜750nmの波長域にそれぞれ吸収極大を示すものであり、該色素βは、該色素βと測定樹脂とからなる樹脂層の吸収スペクトルを測定した際に、650〜680nmの波長域に吸収極大を示すものであることがより好適である。これにより、本発明の樹脂組成物又は積層体(特に、近赤外線カットフィルター)を撮像素子用途に適用した場合に、充分な光吸収幅を確保でき、かつフレアやゴーストの発生を充分に抑制できるうえ、反射膜と組み合わせた場合に課題となりうる入射角依存性を充分に低減することができる。また、本発明の積層体を、例えば反射膜や干渉膜と併用した場合に、人間の目の感度に近い光選択透過性を発揮することも可能になる。
上記色素αはフタロシアニン系色素及び/又はオキソカーボン系色素であるが、色素βもまた、フタロシアニン系色素及び/又はオキソカーボン系色素であることが好ましい。色素α及び色素βは、後述の一般式(I)で表されるフタロシアニン系化合物、後述の一般式(5S)で表されるスクアリリウム系化合物、及び後述の一般式(S2)で表されるクロコニウム系化合物より選択される少なくとも1種であることが好適である。フタロシアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、及びクロコニウム系化合物の詳細については後述する。
上記樹脂組成物は、特定色素以外の他の色素を含んでいてもよい。例えば、600〜900nmの波長域以外の近赤外線、赤外線、紫外線、可視光の各帯域において特定の波長に特性吸収を有する色素を使用目的に応じて適宜選択すればよく、光学材料の各種用途に適用することができる。例えば、耐光性を向上させるためにベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収色素を併せて用いてもよい。
上記他の色素の含有量は、色素の総量100質量%に対し、50質量%以下であることが好適である。より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。言い換えれば、色素の総量100質量%に対し、特定色素が50質量%以上であることが好適であり、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
上記樹脂組成物において、全ての色素の総量は、例えば、樹脂組成物の総量(固形分)100質量%中、0.0001質量%以上、35質量%以下であることが好ましい。これにより、可視光透過率がより高く、かつ近赤外領域の遮断性能により優れた硬化物(樹脂層)を得ることが可能になる。色素の含有量の下限値としてより好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上であり、最も好ましくは1質量%以上である。また、上限値としてより好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。
色素(化合物)としては、耐熱性の観点で、より好ましくは、フタロシアニン系化合物(フタロシアニン系色素)であり、分光光学特性の観点で、より好ましくは、オキソカーボン系化合物(オキソカーボン系色素)である。前記オキソカーボン系化合物は、スクアリリウム系化合物及びクロコニウム系化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
[フタロシアニン系化合物]
上記フタロシアニン系化合物としては、金属フタロシアニン錯体が好適であり、例えば、銅、亜鉛、インジウム、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等の金属元素を中心金属とする金属フタロシアニン錯体が挙げられる。これらの金属元素の中でも、溶解性又は分散性(例えば、樹脂成分への溶解性又は分散性)、可視光透過性、耐光性がより優れることから、銅、バナジウム及び亜鉛のいずれか1以上を中心金属とする金属フタロシアニン錯体が好ましい。すなわち中心金属として好ましくは銅、亜鉛及びバナジウムであり、より好ましくは銅及び亜鉛である。銅を用いたフタロシアニンは、どのような樹脂成分(バインダー樹脂)に分散させても光による劣化がなく、非常に優れた耐光性を有する。また、亜鉛を中心金属とするフタロシアニン錯体(フタロシアニン系色素)は、樹脂成分に対する溶解性に優れ、光選択透過性がより高い積層体(特に、近赤外線カットフィルター)が得られ易いため、好適である。
上記フタロシアニン系化合物の中でも特に好ましくは、下記一般式(I)で表される化合物である。このような化合物を含む樹脂組成物を用いると、クラックやチッピング、反りの発生がより抑制され、かつ高温蒸着にもより充分に耐えうる積層体を得ることが可能になる。また、このような積層体を撮像素子用途に適用した場合に、フレアやゴーストの発生を充分に抑制できるうえ、反射膜と組み合わせた場合に課題となりうる入射角依存性を充分に低減することもできる。更に、該積層体を、例えば反射膜や干渉膜と併用した場合に、人間の目の感度に近い光選択透過性を発揮することも可能になる。また、下記一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素を用いると、本発明の樹脂組成物を用いて得た積層体(特に、近赤外線カットフィルター)が650〜680nmの波長域に吸収極大を持ちやすくなる。
式中Mは、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。Ra1〜Ra4、Rb1b4、Rc1〜Rc4及びRd1〜Rd4は、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)、又は、置換基を有していてもよいORi基を表す。ORi基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。上記フタロシアニン系化合物の合成後は、従来公知の方法に従って、晶析、濾過、洗浄、及び/又は、乾燥を行ってもよい。
一般式(I)で表される化合物として、好ましい形態としては、例えば、中国特許出願公開第103923438号明細書に記載されているフタロシアニンが挙げられる。
[スクアリリウム系化合物]
スクアリリウム系化合物としては、特に構造は限定されないが、下記式(5S)で表されるスクアリリウム系化合物が特に好ましい。なお、下記式(5S)中の特定の構造単位であるRa1とRa2は、同一構造であっても異なっていてもよい。
式(5S)中、Ra1〜Ra2はそれぞれ独立して下記式(6S)又は下記(7S)で示される構造単位である。
(式(6S)中、
環Aは4〜9員の不飽和炭化水素環である。
X及びYはそれぞれ独立して有機基又は極性官能基である。
nは0〜6の整数であり、かつm以下(ただし、mは環Aの構成員数から3を引いた値である)であり、nが2以上である場合、複数のYは同じであってもよいし異なっていてもよい。
環Bは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はこれら環構造を含む縮合環である。
なお*は式(5S)中の4員環との結合部位を表す。)
(式(7S)中、Rf1、Rf2、Rf4、Rf5はそれぞれ独立して有機基、極性官能基、又は水素原子であり、Rf3は窒素原子を含む有機基又は極性官能基であり、Rf1及びRf5は少なくとも一方が、窒素原子又は酸素原子を含む有機基又は極性官能基である。
なお*は式(5S)中の4員環との結合部位を表す。)
式(6S)中、*は式(5S)で示されるスクアリリウム骨格との結合部位を表しており、スクアリリウム骨格に結合する炭素原子(上記式(6S)中、矢印で示す炭素原子)が炭化水素環(環A)を形成している点に特徴を有する。また、式(7S)中、*は式(5S)で示されるスクアリリウム骨格との結合部位を表しており、スクアリリウム骨格に結合する炭素原子(上記式(7S)中、矢印で示す炭素原子)が芳香族環を形成している点に特徴を有する。
以下、式(6S)及び式(7S)について順に詳細を説明する。
(式(6S)について)
式(6S)中、環Aは、構成員数が4〜9員である不飽和炭化水素環である。環Aは、スクアリリウム骨格に結合する炭素原子(上記式(6S)中、矢印で示す炭素原子)とピロール環を構成する炭素原子との間に少なくとも1個の二重結合を有する不飽和炭化水素環であればよく、当該二重結合以外にも不飽和結合(好ましくは二重結合)を有するものであってもよいが、好ましくは環Aが有する二重結合は1個であるのがよい。環Aは、好ましくは5〜8員環であり、より好ましくは6〜8員環であり、さらに好ましくは6員環又は8員環である。
環Aの構造としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロノネン、シクロノナジエン、シクロノナトリエン、シクロノナテトラエン等のシクロアルケン構造が挙げられる。中でも、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロアルカンモノエンが好ましい。
式(6S)中、nは、0〜6の整数であり、かつm以下(ただし、mは環Aの構成員数から3を引いた値である)である。nは、好ましくは0〜5の整数であり、より好ましくは0〜3の整数であり、さらに好ましくは0〜2の整数である。nが1以上である場合、環Aを構成する炭素原子に結合する水素原子はYで置換されることになる。
式(6S)中、X及びYは有機基又は極性官能基である。X及びYの例である好ましい有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)、アルキルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオオキシ基(アリールチオ基)、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アミド基(−NHCOR)、スルホンアミド基(−NHSO2R)、カルボキシ基(カルボン酸基)、シアノ基などが挙げられる。また極性官能基としては、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。
Xの例である有機基又は極性官能基としては、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基又はアリール基がよい。この場合、アルキル基の炭素数は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であれば1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、脂環式のアルキル基であれば4〜7が好ましく、より好ましくは5〜6である。アリール基の炭素数は6〜10が好ましく、より好ましくは6〜8である。具体的には、Xの例である有機基又は極性官能基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が好ましく挙げられる。
Yの例である有機基又は極性官能基としては、上記の中でも、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、フェニル基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、アミド基、スルホンアミド基、水酸基が好ましく、より好ましくはアルキル基又は水酸基である。この場合、アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1〜2である。具体的には、Yの例である有機基又は極性官能基としては、メチル基、エチル基、水酸基等が好ましく挙げられる。
前記nが2以上であり、Yが複数存在する場合には、各Yは同じであってもよいし異なっていてもよい。また前記nが2以上である場合、複数のYは各々別の炭素原子に結合していてもよいし、2個のYが1個の炭素原子に結合していてもよい。
式(6S)中、環Bは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はこれら環構造を含む縮合環である。環Bとしては、例えば、下記式(A−1)〜(A−12)の構造を有する環、及びこれら環の水素原子の1つ以上が任意の置換基で置換された環が挙げられる。これらの中でも、ベンゼン環(A−1)、ナフタレン環(A−2、A−3)、キノリン環(A−8、A−13、A−14)、又はこれらに下記置換基が置換した環が好ましい。ここで置換基としては、X及びYの例である有機基又は極性官能基として上述した基が挙げられるが、それらの中でも特に、アルキル基(特に好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基)、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基(特に好ましくは炭素数1〜2)、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、芳香族複素環基、水酸基、チオール基、ベンゾチアゾール基などの電子供与性基、ハロゲノ基(特に好ましくは、クロロ基、ブロモ基等)、ハロゲノアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のパーハロゲノアルキル基)、シアノ基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、カルボキシ基(カルボン酸基)、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、スルホ基(スルホン酸基)、ニトロ基等の電子吸引性基が好ましく、特に電子吸引性基が好ましい。環Bの置換基の数は1つでもよいし2つ以上(例えば、2又は3)でもよい。また置換基を有さなくてもよい。置換基を有する場合、その数は、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
なお、上記式(A−1)〜(A−14)は、環Bをピロール環の一部を含んで表したものであり、例えば式(A−1)は、下図中aの矢印で示されるピロール環のβ位の炭素原子と、下図中bの矢印で示されるピロール環のα位の炭素原子とを含んで表記されている。
(式(6S)の構造単位を有するスクアリリウム系化合物の製造方法について)
本発明に用いられる好適なスクアリリウム系化合物の一つである上記式(6S)で示される特定の構造単位を有するスクアリリウム系化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記式(7):
(式(7)中、環A、環B、X、Y及びnは式(6S)に同じ)で表されるピロール環含有化合物を中間原料とし、これをスクアリン酸と反応させることにより製造することができる。
中間原料として用いるピロール環含有化合物は、公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、以下の論文に記載の合成法によってピロール環含有化合物を合成することができる。
SAJJADIFAR ET AL: 'New 3H-Indole Synthesis by Fischer’s Method. Part I.' Molecules 2010, no. 15, April 2010, pages 2491-2498
また、スクアリリウム系化合物は、ピロール環含有化合物とスクアリン酸とを反応させる公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、以下の論文に記載の合成法によってピロール環含有化合物を合成することができる。
Serguei Miltsov ET AL; 'New Cyanine Dyes:Norindosquarocyanines ', Tetrahedron Letters, Volume 40, Issue 21, May 1999, pages 4067-4068
得られたスクアリリウム系化合物は、必要に応じて、濾過、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華精製、再結晶、晶析など公知の精製手段によって適宜精製することができる。
(式(7S)について)
式(7S)中、Rf1及びRf5は少なくとも一方が、窒素原子又は酸素原子を含む有機基又は極性官能基である。好ましくは、Rf1及びRf5は一方が−NHRg1又はヒドロキシル基であり、他方は、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基もしくはアルコキシ基、−NRg2g3、または−NRg4である。Rg1〜Rg3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、−S(=O)2−Rg5、または−C(=O)−Rg6(Rg5、Rg6は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜11のアリール基もしくはアルアリール基)である。Rg4は、構成員数が3〜9員のシクロアルキル基又は、シクロアルキル基中の一部の−CH2−が、−O−、−S−、−Se−、−S(=O)2−、−C(=O)−、または−NRg7−(Rg7は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜11のアリール基もしくはアルアリール基)で置換された構成員数が3〜9員のシクロアルキル基である。Rf1、Rf5は、共に−NHRg1及びヒドロキシル基のいずれか一方であることが好ましい。
式(7S)中、Rf2、Rf4は、それぞれ独立して、有機基、極性官能基、又は水素原子である。Rf2及びRf4の例である有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)、アルキルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオオキシ基(アリールチオ基)、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アミド基(−NHCOR)、スルホンアミド基(−NHSO2R)、カルボキシ基(カルボン酸基)、シアノ基などが挙げられる。また極性官能基としては、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。
式(7S)中、Rf3は窒素原子を含む有機基又は極性官能基であり、Rf3はNRg8g9またはNRg10であることが好ましい。Rg8、Rg9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または−C(=O)−Rg11(Rg11は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜11のアリール基もしくはアルアリール基)である。Rg10は、構成員数が3〜9員のシクロアルキル基又は、シクロアルキル基中の一部の−CH2−が、−O−、−S−、−Se−、−S(=O)2−、−C(=O)−、−CHRg12−または−CRg13g14−(Rg12〜Rg14はそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基)で置換された構成員数が3〜9員のシクロアルキル基である。Rf3がNRg10であるとき、Rf3は、Rf2又はRf4と結合して環を形成していてもよい。
なお、式(7S)では、置換基を有するベンゼン環を有するスクアリリウム系化合物の構造を示しているが、ナフタレン環などの多環芳香族炭化水素を有するスクアリリウム系化合物であってもよい。多環芳香族炭化水素を有するスクアリリウム系化合物は比較的大きい波長域(800nm付近)に吸収極大を有する色素とすることができる。
(式(7S)の構造単位を有するスクアリリウム系化合物の製造方法について)
本発明に用いられる好適なスクアリリウム系化合物の一つである上記式(7S)で示される特定の構造単位を有するスクアリリウム系化合物の製造方法は、特に限定されず、公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。
[クロコニウム系化合物]
クロコニウム系化合物としては、特に構造は限定されないが、例えば、下記式(S2)で表される化合物が挙げられる。
[式(S2)中、Ra3〜Ra4はそれぞれ独立して下記式(S3)で示される構造単位である。
(式(S3)中、
環Aは4〜9員の不飽和炭化水素環である。
X及びYはそれぞれ独立して有機基又は極性官能基である。
nは0〜6の整数であり、かつm以下(ただし、mは環Aの構成員数から3を引いた値である)であり、nが2以上である場合、複数のYは同じであってもよいし異なっていてもよい。
環Bは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はこれら環構造を含む縮合環である。
なお*は式(S2)中の5員環との結合部位を表す。)]
式(S3)中の環A、環B、n、X、及びYは、上述の式(6S)と同じである。
上記クロコニウム系化合物の合成方法は、特に限定されないが、例えば、特開2002−286931号公報、特開2007−31644号公報、特開2007−31645号公報、特開2007−169315号公報に記載されている方法で合成することができる。
<シランカップリング剤>
本発明に用いるシランカップリング剤は、アミノ基を有するシランカップリング剤である。上記シランカップリング剤を、樹脂組成物に含有させることで、透明基板との密着性を向上させる効果や撥水作用により樹脂組成物中への水分の浸入を抑制する効果があり、その結果、耐熱性や耐湿熱性に優れる近赤外線カットフィルターを得ることができる。具体的には、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制することが可能となる。
上記シランカップリング剤としては、例えば、中心金属として、ケイ素を含むものである。シランカップリング剤を用いることにより、近赤外線カットフィルターの耐湿熱性をより一層向上することが可能になる。上記シランカップリング剤はまた、反応性基として、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、オキシラン基(オキシラン環)、アミノ基、メルカプト基、イソシアナート等を有するカップリング剤が好適である。中でも、反応性基としてアミノ基を必須として有する。また、アルコキシ基を有することが好ましい。
アミノ基含有シランカップリング剤の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなどが挙げられる。この中でも、第一級アミン(第一級アミノ基を有するシランカップリング剤)は、透明基板との接着性が良好なため好ましい。アルコキシ基を有するアミノ基含有シランカップリング剤がさらに好ましく、鎖状(好ましくは環構造を有しない直鎖状)であるアミノ基含有シランカップリング剤が特に好ましい。第一級アミノ基を有するシランカップリング剤の中でも、第一級アミノ基を含有するトリアルコキシシランが好ましく、第一級アミノ基を含有するトリメトキシシラン及び第一級アミノ基を含有するトリエトキシシランよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、第一級アミノ基を含有するトリメトキシシランがさらに好ましい。特に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどは入手し易い上に、透明基板に対して高い接着性を発現するため好ましい。より好ましくは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。また、シランカップリング剤の分子量が230以下であることが好ましい。
上記シランカップリング剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、信越シリコーン社製KBM−903(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、東レ・ダウコーニング社製Z−6610(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、東レ・ダウコーニング社製Z−6011(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、東レ・ダウコーニング社製Z−6020(3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン)等が好適に用いられる。
樹脂組成物におけるアミノ基含有シランカップリング剤の含有量は、樹脂組成物(溶媒を含む全量)100質量%に対して、0.00001〜10質量%が好ましく挙げられ、0.00001〜5.0質量%がより好ましく挙げられ、0.00005〜4.0質量%が特に好ましく挙げられる。
また、上記アミノ基含有シランカップリング剤の含有量が、上記ポリ(アミド)イミド樹脂100質量部に対して、0.3〜5.0質量部であることが好ましく挙げられ、0.5〜3.0質量部であることがより好ましく挙げられる。
上記含有量とすることで、透明基板との密着性に優れ、耐熱性が高い積層体(特に近赤外線カットフィルター)を得ることができる。
<ポリ(アミド)イミド樹脂>
本発明に用いるポリ(アミド)イミド樹脂は、溶剤可溶性樹脂であるポリ(アミド)イミド樹脂である。このような樹脂を用いた層は、後述する溶媒キャスト法によって形成(成膜)することができるため、色素を高濃度で均一に分散できるとともに、比較的低温で樹脂層を形成することができる。
本明細書において、溶剤可溶性樹脂とは、溶剤可溶性の樹脂、すなわち樹脂であって溶剤可溶性であるものをいう。なお、上記樹脂には、樹脂の前駆体が含まれるものとする。また、樹脂層自体は溶剤可溶性であっても不溶性であってもよい。
上記溶剤可溶性樹脂としては、有機溶剤に可溶であれば特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド又はN−メチルピロリドン100質量部に対し、1質量部以上溶解する樹脂であることが好適である。具体的には、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及び/又はそれらの前駆体等が挙げられる。例えば、下記一般式(2)および/または一般式(3)で表される化合物である。
(一般式(2)中、XおよびYは、それぞれ独立に、単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基、または、単環式もしくは縮合多環式の芳香族基を含有し、構成する炭素原子数が2〜39である置換基を有しても良い連結基を表す。好ましくは構成する炭素原子数が4〜30である連結基を表す。)
ただし、一般式(3)中、Xは酸無水物基1個及びカルボキシル基1個を有する化合物のその酸無水物基及びカルボキシル基を除いた3価の有機基(好ましくは単環式の脂肪族基または芳香族基を含有)を示し、Yは一般式(II)
(ただし、一般式(II)中、2個のR1は、それぞれ独立に、水素又は非イオン性で不活性な置換基を示し、R2は−CH2−、−CO−、−SO2−又は−O−を示す。)で表される二価の基を示す)、またはYは一般式(III)
(ただし、一般式(III)中、R1は、一般式(II)に同じである。)で表される二価の基を示す。)
これらの溶剤可溶性樹脂は、架橋反応(硬化反応)することが可能な反応性基(例えば、エポキシ基やオキセタン環、エチレンスルフィド基等の開環重合性基や、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等のラジカル硬化性基及び/又は付加硬化性基)を有するものであってもよい。
樹脂層を形成するための樹脂形成成分として上記溶剤可溶性樹脂を用いる場合、該樹脂形成成分がそのまま、得られた樹脂層を構成する樹脂成分となってもよく、該樹脂形成成分が架橋反応等により変化したものが、上記樹脂層を構成する樹脂成分となってもよい。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂とは、狭義のポリイミド樹脂(イミド結合を含み、アミド結合を含まない樹脂、ここでいうアミド結合とは、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合を意味する)、及び、ポリアミドイミド樹脂(アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合とイミド結合とを含む樹脂)のいずれをも包含する。
なお、ポリイミド樹脂におけるイミド結合は、通常、アミド結合とそれに隣接するカルボキシル基とを有する結合鎖(本発明では、該結合鎖をアミック酸ともいう。通常は、アミド結合が結合した炭素原子に隣接する炭素原子にカルボキシル基が結合した構造である。)におけるアミド結合とカルボキシル基との脱水反応により形成される。ポリアミック酸から脱水反応によりポリイミド樹脂を生成させる際、分子内に若干量のアミック酸は残存し得る。したがって、本発明で「ポリイミド樹脂」という場合は、イミド結合を含み、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合は含まないが、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合は含まないか、若干量含んでいてもよい。
本発明で用いる溶剤可溶性樹脂としては、イミド結合含有率(イミド化反応によりイミド化し得るアミド結合数とイミド結合数の合計量100モル%に対するイミド結合数の割合)が80モル%以上であるポリイミド樹脂が好ましい。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂は、多価カルボン酸化合物と、多価アミン化合物及び/又は多価イソシアネート化合物との反応により得られるポリ(アミド)イミド樹脂の原料(ポリ(アミド)イミド前駆体とも称す)を、イミド化反応して得ることができる。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂はまた、透明性を有することが好ましい。透明性向上のためには、芳香環が少ないほうが好ましい。中でも、芳香環を脂環又は脂肪鎖等で置き換えた構造を有することが更に好ましい。より好ましくは、ポリ(アミド)イミド樹脂100質量%中の芳香環の重量が65質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
ポリイミド樹脂としては、イミド結合を有する化合物であれば特に限定されないが、好ましくは、下記一般式(5):
(式中、R4は炭素数2〜39の2価の有機基を表す。)で表される繰り返し単位を有する化合物(ポリマー)が好適である。
上記一般式(5)におけるR4としては、炭素数2〜39の2価の脂肪族、脂環族、芳香族、又は、それらの組合せからなる有機基であることが好ましい。上記R4で表される有機基は窒素原子に直接結合していてもよいし、結合基として、−O−、−SO2−、−CO−、−CH2−、−C(CH32−、−Si(CH2−、−C24O−、−S−等を有していてもよい。上記一般式(5)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
本発明で用いる溶剤可溶性樹脂として使用するポリアミドイミド樹脂は、好ましくはポリイミドのポリマー主鎖中にアミド基を有する化合物(例えばコポリマー)であり、例えば、一般式(9)で表される部分構造を基本的な繰り返し単位とするポリマーである。
具体的には東洋紡社製バイロマックス(登録商標)シリーズ、特開2011−213849号公報に開示のポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。
上述した溶剤可溶性樹脂を用いると耐光性に優れる傾向がある。これは、溶剤可溶性樹脂を用いた場合、分散した色素の吸収性能の劣化を引き起こしにくいためと考えられる。その理由として、溶剤可溶性樹脂は、そのモノマーや前駆体から調整し、重合や反応を完結させている。更に精製を行う場合もある。こうして得られた溶剤可溶性樹脂には、色素の劣化、分解を促進させる未反応物、反応性末端、イオン性基、触媒、酸・塩基性基等がほとんどないと考えられる。耐光性の観点から、溶剤可溶性樹脂を用いることが好適であり、特に好ましくは溶剤可溶性樹脂であるポリイミド樹脂である。
本発明で用いる近赤外線吸収色素が樹脂層中に均一に分散または溶解されてなる形態において、該色素が分散または溶解された樹脂層の形成方法としては特に限定されず、例えば、練込法や溶媒キャスト法等を採用することができる。中でも、溶媒キャスト法を採用することが好ましい。これにより、樹脂層中に色素をより均一に分散または溶解できるため、光選択吸収性により優れた光吸収膜を形成することができる。また、樹脂層中に色素を高濃度で分散または溶解が可能であるため薄膜化が可能であり、撮像レンズ素子等の部材の低背化要求に応えることができる。更に、比較的低温で樹脂層を形成することができるため、比較的耐熱性の低い色素も使用することができる。このように、上記樹脂層が溶媒キャスト法によって形成されてなる形態は、本発明における好適な実施形態の1つである。
一方、練込法においては、樹脂を高温(例えば、200℃以上)で溶融して用いることになるため、耐熱性の低い色素は分解してしまい、充分な光吸収性が得られないおそれがある。また、樹脂層中における色素の分散性も充分に高くならないおそれがある。
上記溶媒キャスト法において使用する溶媒(有機溶剤)としては、上記樹脂層を形成するための樹脂形成成分を溶解可能であれば特に限定されず、適宜選択可能であるが、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類;PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−ピロリドン(より具体的には、1−メチル−2−ピロリドン等)等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプチルエーテル等のエーテル類、その他、γ―ブチロラクトン等の環状カルボン酸エステル類が好適である。より好ましくは、PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、N−メチルピロリドン、γ―ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、シクロペンタノンである。
上記溶媒の使用量としては、上記樹脂層を形成するための樹脂形成成分(溶剤可溶性樹脂)の総量100質量%に対して、150質量%以上であることが好ましく、また、2500質量%以下が好ましい。より好ましくは、200質量%以上であり、また、2000質量%以下である。
溶媒キャスト法においては、溶媒に樹脂層を形成するための樹脂形成成分(バインダー樹脂)を溶解して得られる溶液に色素を均一に分散させた分散液を、基板上に塗布・乾燥(硬化)することにより樹脂層を製膜(成膜)することになる。
樹脂組成物におけるポリ(アミド)イミド樹脂の含有量は、樹脂組成物(溶媒を含む全量)100質量%に対して、0.5〜30質量%が好ましく挙げられ、1〜20質量%がより好ましく挙げられ、2〜10質量%が特に好ましく挙げられる。
<溶媒>
樹脂組成物は、上述した溶媒を含んでいてもよい。塗工性を高める観点から、近赤外線樹脂組成物が塗布される際には、溶媒を用いるのが好ましい。溶媒は特に限定されないが、モノアルコール類;グリコール類;環状エーテル類;グリコールモノエーテル類;グリコールエーテル類;グリコールモノエーテルのエステル類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等);アルキルエステル類;ケトン類;芳香族炭化水素類;ハロゲン化芳香族炭化水素類;脂肪族炭化水素類;アミド類;等が好ましい。フタロシアニン系化合物を含有する樹脂層用組成物に対しては、上述した中でもPGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、シクロペンタノンが特に好ましい。また、オキソカーボン系化合物は、双極子モーメントが小さい溶媒中で高い耐久性を有するので、オキソカーボン系化合物を含有する樹脂層用組成物に対しては、双極子モーメントが4.5D以下である溶媒が好ましく、双極子モーメントが3.5D以下である溶媒がより好ましく、3D以下である溶媒が特に好ましい。このような溶媒の具体例として、例えば、シクロペンタノン、o−ジクロロベンゼン、PGMEA、エチルシクロヘキサン、キシレン、トリメチルベンゼン、リモネン等が好ましい。上述した中でも、シクロペンタノン、o−ジクロロベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルシクロヘキサン、キシレン、リモネンが特に好ましい。
上記双極子モーメントが4.5D以下の溶媒はまた、沸点が90℃以上であることが好ましい。例えば、上記組成物が更に樹脂を含む場合、上記沸点の溶媒を少なくとも含むことで、コーティング時等に揮発することが充分に抑制され、ムラ等の発生も抑制することができる。沸点は、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上、最も好ましくは130℃以上である。また、上限は特に限定されないが、例えば、250℃以下であることが好ましい。
本発明では、双極子モーメントが4.5D以下の溶媒の他、その他の溶媒を1種又は2種以上含んでもよいが、本発明の効果をより一層高める観点では、溶媒の総量(双極子モーメントが4.5D以下の溶媒とその他の溶媒との合計量)100質量%中、双極子モーメントが4.5D以下の溶媒を50質量%以上用いることが好ましい。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
その他の溶媒は特に限定されないが、本発明で使用する溶媒総量100質量%中の水分含有量は、3質量%以下であることが好ましい。
上記組成物中、溶媒の含有量は特に限定されないが、例えば、上記組成物が溶媒を含む場合は、樹脂総量(固形分)100質量部に対し、溶媒の総量(双極子モーメントが4.5D以下の溶媒とその他の溶媒との合計量)を10〜4000質量部とすることが好ましい。より好ましくは300〜3000質量部であり、更に好ましくは500〜2000質量部である。
<添加剤>
樹脂組成物は、目的に応じて、適切な添加剤を含有してもよい。例えば、樹脂組成物の総量(固形分)100質量%に対して、0.00001質量%以上、10質量%以下の範囲で含有していることが好ましい。添加剤の具体例としては、硬化剤、レベリング剤、顔料、顔料分散剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、耐光安定剤、金属不活性化剤、過酸化物分解剤、充填剤、補強材、可塑剤、潤滑剤、防食剤、防錆剤、乳化剤、鋳型脱型剤、蛍光性増白剤、有機防炎剤、無機防炎剤、滴下防止剤、溶融流改質剤、静電防止剤、すべり付与剤、密着性付与剤、防汚剤、界面活性剤、消泡剤、重合禁止剤、光増感剤、表面改良剤、IRカット剤、カップリング剤以外の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤等が挙げられる。
近赤外線吸収組成物は、任意の適切な有機微粒子又は無機微粒子を含有してもよい。典型的には、これらの有機微粒子又は無機微粒子は、目的に応じた機能(屈折率、導電性等)を付与するために用いられる。
近赤外線吸収組成物よりなる層の高屈折率化や導電性付与に有用な微粒子の具体例として、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。近赤外線吸収組成物よりなる層の低屈折率化に有用な微粒子の具体例として、フッ化マグネシウム、シリカ、中空シリカ等が挙げられる。防眩性付与に有用な微粒子の具体例としては、上記の微粒子に加え、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン等の無機微粒子:シリコン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアミン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びこれらの共重合樹脂等の有機微粒子が挙げられる。これらの微粒子は、単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わされても良い。
<(近赤外線吸収性)樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、含有成分を通常の方法で混合することにより得ることができる。含有成分を混合する際には、必要に応じて、各成分又は混合物を加熱して、均一組成になるように混合することもできる。加熱温度としては、好ましくは140〜20℃、より好ましくは120〜40℃である。
混合方法としては、各種の混合機や分散機を用いて混合、分散することによって調製することができる。分散工程及び混合工程は、特に限定されず、通常の手法により行えばよい。また、通常行われる他の工程を更に含むものであってもよい。
本発明の樹脂組成物の調製の際、各成分の添加混合する順は適宜選択できるが、ポリ(アミド)イミド樹脂に色素を添加混合した後、さらにシランカップリング剤を添加混合する形態が好ましく、ポリ(アミド)イミド樹脂にシランカップリング剤を添加混合した後、さらに色素を添加する形態がより好ましい。
上記樹脂組成物の粘度は10000Pa・s以下であることが好ましい。これによって、加工特性に優れ、例えば、コーティング時に表面が平滑な膜を得ることが可能となる。より好ましくは1000Pa・s以下、更に好ましくは200Pa・s以下、一層好ましくは10000mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下、最も好ましくは50mPa・s以下である。また、0.01mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mPa・s以上である。
粘度の測定は、樹脂組成物について、E型粘度計(東機産業社製)を用いて、評価可能である。上記粘度の数値は、25℃の条件下で評価した値であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、樹脂溶液の保管時や塗布膜の乾燥時・熱硬化時に酸素が存在すると、オキソカーボン系化合物の構造変化、分解物の発生による吸光特性の変化、可視光透過率の低下などの理由により、樹脂組成物の耐久性が低下するおそれがある。そのため、樹脂溶液の保管時や塗布膜の乾燥工程・熱硬化工程時には酸素濃度が低い方が好ましい。酸素濃度は、10体積%以下が好ましく、より好ましくは1体積%以下であり、さらに好ましくは0.1体積%以下であり、最も好ましくは0.05体積%以下である。
酸素濃度を上述した範囲にする手段は特に限定されないが、例えば、系中の酸素を不活性ガスと置換して、不活性ガス雰囲気下にて硬化を行うことが好適である。不活性ガスは特に限定されず、例えば、窒素やヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスなどが挙げられる。中でも、アルゴン、窒素が好ましく、特に窒素が好ましい。また、減圧下、常圧下、加圧下のいずれの雰囲気下でもよい。
<透明基板>
本発明の近赤外線カットフィルターは、透明基板と本発明の樹脂組成物からなる樹脂層(近赤外線吸収層)とを少なくとも含む構造である。透明基板の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、メチルメタクリレート系共重合物等のアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ガラス等が挙げられる。
特に好ましい透明基板は、本発明の樹脂組成物との密着性に優れる点で、ガラスである。透明基板がガラスである場合、ガラス基板と樹脂層との密着性が優れたものとなり、樹脂層のクラックやチッピング、反りの発生をより抑制でき、耐熱性にもより優れる積層体が得られるため好適である。また、ガラスを形成する材料中に遷移金属イオンを含有させて得られるものであってもよい。遷移金属イオンとしては、光吸収能を有するものとして通常使用されるものを1種又は2種以上用いればよく、例えば、Ag+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等が挙げられる。
透明基板の大きさは、近赤外線カットフィルターとして使用される大きさや使用する装置等に合わせて適宜調整される。透明基板の厚みは、装置の小型化、薄型化、および取り扱い時の破損を抑制する点から、0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましい。また、軽量化および強度の点から、2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましい。
<樹脂層>
上記樹脂組成物からなる層(樹脂層)の厚みは特に限定されないが、成膜時やリフロー時の耐熱性及び透明性の観点、熱膨張による界面での剥離や割れを防止する観点から、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下であり、特に好ましくは10μm以下であり、最も好ましくは5μm以下である。また、一般的な異物サイズよりも膜厚を充分に厚くすることにより欠点を防ぐ観点、樹脂組成物へ溶解させる色素濃度を低減し、色素の会合や析出を抑制する観点から、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上である。
<積層体>
本発明の樹脂組成物を用いて得られる積層体は、透明基板(以下、単に「基板」ともいう)上に、樹脂層を有する。すなわち本発明のコーティング用樹脂組成物は、基板上に層を形成する材料として使用することができる。樹脂層は、基板の片面のみに有していてもよいし、両面に有していてもよい。また、基板及び樹脂層は、それぞれ単層構造又は多層構造のいずれであってもよい。
上記積層体は、基板上に樹脂層を形成することにより得られるが、その形成方法としては、樹脂組成物を基板上に塗布して加熱乾燥することにより形成する方法が好適である。すなわち、基板上に塗膜を形成する方法が好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、コーティング用であることが好適である。本発明の樹脂組成物は、特に近赤外線遮断用コーティング組成物として好適である。
ここで、「基板上に樹脂層を有する」とは、基板に、直接、樹脂層が接している形態だけでなく、基板上に存在する他の構成部材を介して樹脂層を有する形態も含むこととする。「基板上に樹脂層を形成する」についても同様であり、基板上に樹脂層を直接形成する場合だけでなく、基板上に存在する他の構成部材を介して樹脂層を形成する場合も含むこととする。「樹脂組成物を基板上に塗布する」についても同様であり、樹脂組成物を基板上に直接塗布する場合だけでなく、基板上に存在する他の構成部材を介して樹脂組成物を塗布する場合も含むこととする。
上記他の構成部材を介して樹脂組成物を塗布する形態では、接着性を向上させる観点から、例えば、シランカップリング剤等の金属酸化物前駆体を含む液状物によって当該構成部材の表面処理を施した上に、樹脂組成物を塗布することが好適である。これにより、例えば、湿熱環境における使用において、剥がれ等をより抑制することが可能になる。
上記基板(又は他の構成部材)上に樹脂組成物からなる塗膜を形成する方法としては、溶液塗布法が好適である。具体的には、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等の通常使用される方法が挙げられる。これらの中では、スピンコート法が、基板上のコート層の偏差を小さくする観点で好ましい。スピンコート法により塗膜を形成する場合、室温(25℃)付近で、透明無機材料層(又は他の構成部材)を500〜4000rpmで10〜60秒間程度回転させながら、溶媒を(半)乾燥させることが好ましいが、溶媒の半乾燥は回転時以外に行われてもよい。ここでの(半)乾燥とは、完全に溶媒が除去されていてもよく、残留溶媒が微量含まれていてもよい。また、インクジェット法で行うことも、スピンコートでは得にくい丸型以外のサンプルを得つつ、偏差を小さくするという観点では好ましい。
このような積層体として具体的には、650〜750nmの波長域に吸収極大を有し、かつ400〜750nmの波長域に吸収極大を1つのみ有するという吸収特性を示す吸収色素(好ましくはフタロシアニン系色素及び/又はオキソカーボン系色素)を必須とする形態が挙げられる。この形態により、耐熱性の高い積層体を作製することが可能となり、無機反射膜や無機干渉膜との組み合わせによって、400〜750nmに吸収極大を1つしか有さないスペクトルを得ることが可能となる。これにより、上記積層体は人間の目の感度に近い光選択透過性を発揮することができるため、撮像素子用途に極めて有用な積層体となる。また、上記積層体を撮像素子用途に適用した場合に、フレアやゴーストの発生を充分に抑制できるうえ、反射膜と組み合わせた場合に課題となりうる入射角依存性も充分に低減することができる。上記積層体としてより好ましくは、650〜750nmの波長域に吸収極大を有し、かつ400〜750nmの波長域に吸収極大を1つのみ有するものである。これにより、上記効果をより一層発揮することができる。
ここで、「400〜750nmの波長域に吸収極大を1つのみ有する」とは、400〜750nmの波長域に、吸光度が増加から減少に転じる頂点(吸収極大)が1つしか認められないことを意味する。この吸収極大を頂点とするピークは、シャープなものであってもよいし、ブロードなものであってもよい。後者の場合、シャープな吸収ピークが2以上重なることによって全体としてブロードな吸収ピークが形成され、吸光度が増加から減少に転じる頂点(吸収極大)が1つのみとなった形態であってもよい。
上記積層体はまた、波長550nmの透過率が80%以上であることが好ましい。波長550nmで80%以上の透過率であれば、より優れた光選択透過性を発揮することができる。上記透過率としてより好ましくは83%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは87%以上、最も好ましくは89%以上である。上記積層体はさらに、最大吸収波長における透過率は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは5%以下であり、さらに特に好ましくは2.5%以下であり、最も好ましくは1%以下である。
<近赤外線カットフィルター>
本発明の近赤外線カットフィルターは、好ましくは透明基板上に樹脂層を形成させた近赤外線カットフィルターであり、樹脂層が、上記樹脂組成物をコーティングして作製されたことを特徴とする近赤外線カットフィルターであることが特に好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルターの製造方法は、透明基板(好ましくはガラス基板)上に樹脂組成物を塗工して、加熱乾燥させて近赤外線吸収樹脂層を有する近赤外線カットフィルターを製造することができる。
好ましくは、溶剤可溶性樹脂であるポリ(アミド)イミド樹脂、近赤外線吸収色素、アミノ基を有するシランカップリング剤および溶媒を含む液状樹脂組成物をガラス基板の上にキャスティングして溶剤を除去することにより製造することが挙げられる。上記方法で得られた近赤外線カットフィルターにおける樹脂層中の残留溶剤量は可能な限り少ない方がよく、通常3質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。残留溶剤量が3質量%を超える場合、経時的に樹脂層が変形したり特性が変化したりして所望の機能が発揮できなくなることがある。
本発明では作業効率を考慮し、アンダーコーティングをしないで、上記組成物1液で塗ることでも透明基板との密着性を高く維持できる。
樹脂組成物の塗工は、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、リップコート法又はダイコーター法、スピンコート法等の公知の塗工方法で塗布される。仕上がりの膜厚が通常0.5〜100μm、好ましくは0.5〜10μmとなるように樹脂組成物が塗付され、80〜250℃、好ましくは100〜220℃で乾燥することによって処理層が固定される。本発明では乾燥温度を変更して乾燥を実施することで透明基板と樹脂層の密着性がさらに向上することを見出した。例えば、初期乾燥と追加乾燥の2段階での乾燥が好ましい。初期乾燥は100〜150℃で2〜10分、追加乾燥は150〜220℃で20〜60分行うことが好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルターは、透明基板(好ましくはガラス基板)上に(近赤外線吸収)樹脂層を設けられている構成を最低限の構成要件として、蛍光灯等の映り込みを低減する反射防止性及び/又は防眩性を有する層や傷付き防止性能を有する層、その他の機能を有する層を積層してもよく、透明基板、フィルター等を積層してもよい。
本発明ではさらに近赤外線反射膜を積層することが好ましい。近赤外線反射膜は、近赤外線を反射する能力を有する膜である。このような近赤外線反射膜としては、アルミ蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化錫を少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜などを用いることができる。近赤外線反射膜を積層したフィルターとすることで、さらに、近赤外線を十分にカットすることができる。近赤外線反射膜は透明基板の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合には、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合には、高い強度を有し、ソリの生じにくい近赤外線カットフィルターを得ることができる。これら近赤外線反射膜の中では、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を好適に用いることができる。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.7〜2.5の材料が選択される。高屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし、酸化錫、酸化セリウムなどを少量含有させたものなどが挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.2〜1.6の材料が選択される。低屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
近赤外線吸収色素は、単独で用いるか、或いは、波長850nm付近の近赤外線吸収性能を補うため、前記特定色素以外のフタロシアニン系化合物、ジチオール系化合物、前記特定色素以外のオキソカーボン系化合物等を併用して用いることもできる。また、耐光性を向上させるためにベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収色素を添加して用いてもよい。
本発明の樹脂組成物を用いることで、1液の塗工でも、密着性と耐湿熱性に優れる近赤外線カットフィルターを得ることができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
(化学構造の解析方法)
得られた化合物約1mgをガラス棒に塗布して付着させ、直接イオン化ユニット(DART)(島津製作所社製「DART−OS」、ヒーター温度500℃)にてイオン化し、質量分析計(島津製作所社製「LCMS−2020」、M/Z=50−2000、ポジティブ,ネガティブ同時スキャン)により、得られた化合物のMSスペクトルを測定した。
<調製例1(ポリイミド樹脂の調製)>
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸(アルドリッチ製、純度95%)5部と無水酢酸(和光純薬工業社製)44部とを、フラスコに仕込み、攪拌しながら反応器内を窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下で溶剤の還流温度まで昇温し、10分間溶剤を還流させた。その後、攪拌しながら室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を固液分離し、乾燥して目的物(1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物)の結晶を得た。続いて、温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えたフラスコに、窒素気流下、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(和光純薬工業社製)0.89部と、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン7.6部を仕込んで溶解させた後、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物1部を室温にて固体のまま1時間かけて分割投入し、室温下2時間撹拌した。共沸脱水剤としてキシレンを2.6部添加して180℃で3時間反応を行い、ディーンスタークで還流して共沸する生成水を分離した。190℃に昇温しながらキシレンを留去した後、冷却しポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液を得たあと、このN−メチル−2−ピロリドン溶液をγ―ブチロラクトンでさらに希釈し、固形分3%のポリイミド樹脂溶液とした。このポリイミド樹脂溶液1部に対して、メタノール50部で再沈し、固液分離した。固液分離したポリイミド樹脂をγ−ブチロラクトンで溶解し、再び固形分3%とし、先程と同様にメタノールで再沈し、固液分離した。再沈して得られた樹脂を乾燥してポリイミド樹脂Aを得た。
<調製例2(ポリアミドイミド樹脂の調製)>
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管を備えたガラス容器に、4,4−オキシジアニリン27.63g(0.138mol)を仕込み、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」と称す。)300g、トリエチルアミン13.96g(0.138mol)を加え、一定時間攪拌して均一溶液を作製した。作製した均一溶液を、氷冷しながら、40℃を超えないように無水シクロヘキサントリカルボン酸クロライド30.00g(0.138mol)をゆっくり添加した。添加終了後、氷冷をやめ、室温にて2時間反応させた後、アニリン0.21g(0.002mol)を添加し、さらに30分攪拌し、粘度19psのポリアミド溶液を作製した。この様にして作製したポリアミド溶液に、無水酢酸26mL、ピリジン12mLを添加し、55℃にて2時間攪拌し、イミド化を行った。得られた反応溶液を、水/メタノール混合溶液に添加し、得られた粉末を水洗、乾燥することによりポリアミドイミド樹脂Bを得た。
<合成例1(フタロシアニン(1)の合成)>
(工程1)
1000mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル54g(0.27mol)、フッ化カリウム34.5g(0.59mol)、及び、アセトン126gを仕込み、更に滴下ロートに3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸メトキシエチルエステル127g(0.55mol)及びアセトン216gを仕込んだ。反応容器を氷冷下、攪拌しながら、滴下ロートより3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸メトキシエチルエステル溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、中間体(1)を108.7g(収率64.8%)を得た。この工程1の反応を、以下に簡略して示す。
(工程2)
200mlの四つ口フラスコに、工程1で得られた中間体(1)20.0g(0.032mol)、ヨウ化亜鉛(II)2.57g(0.0081mol)、及び、ベンゾニトリル30.0gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、メチルセロソルブ52.7gを反応液に加えた後、メタノールと水の混合溶液に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、メタノールと水の混合溶液で撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて90℃で24時間乾燥後、目的物であるフタロシアニン(1)を17.78g(収率86.7%)得た。この工程2の反応を、以下に簡略して示す。
合成例1で得たフタロシアニン(1)は、上記構造中、主骨格中に「*」で示す部分(合計8個)のそれぞれに、右側に示す置換基が置換した構造からなる。
実施例において使用したスクアリリウム化合物01〜08の構造式を以下に示す。スクアリリウム化合物01〜07は、ピロール環含有化合物とスクアリン酸とを反応させる公知の合成手法、すなわち明細書中に挙げた論文に記載された合成方法によって作製したものである。また、スクアリリウム化合物08としては、米国特許第5,543,086号明細書のFormula 17に開示されていたスクアリリウム化合物を用いた。なお、スクアリリウム化合物01〜08については上記方法で分析し、以下に示す構造を有することを確認した。
<実施例1>
ポリイミド樹脂Aを5部と溶媒であるγ―ブチロラクトン(GBL)80部、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)15部の混合液に、色素として上記フタロシアニン(1)(吸収最大波長:670nm)1.05部、シランカップリング剤として3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903、信越シリコーン社製)0.15部を加え、混合、溶解して樹脂組成物溶液を調製した。得られた樹脂組成物溶液をイソプロパノール溶媒で洗浄したガラス基板(松波硝子工業社製、水縁磨スライドガラス、S9213、76mm×52mm×1.2〜1.5mm)上に0.6cc垂らした後、スピンコーター(ミカサ株式会社製1H−D7)を用い、0.2秒間かけて2000回転にし、10秒間その回転数で保持し、その後0.2秒間かけて0回転(rpm)になるようにして樹脂層を成膜した。樹脂層を成膜したガラス基板を、精密恒温器(ヤマト科学社製DH611)を用いて、100℃で3分間初期乾燥した後に、イナートオーブン(ヤマト科学社製DN610I)を用いて50℃で30分間窒素置換した後、15分程度で200℃に昇温し、200℃で30分間追加乾燥(窒素雰囲気下)し、樹脂層を備えたガラス基板(以下、樹脂層積層基板という)を得た。
乾燥後の樹脂層の膜厚は1μmであった。なお、乾燥後の樹脂層の膜厚は、成膜前のガラス基板の厚み、及び、成膜及び乾燥後の評価用サンプルの厚みをマイクロメーターを用いて測定し、両者の差をコート膜厚とした。
(PCT(Pressure Cooker Test)試験)
密着性試験サンプルの作製方法は以下の通りである。
コーティングガラス基板の表面にカッター(エヌティー社製A−300)で切り込みを入れ、縦列、横列にそれぞれ2mm間隔で10本のクロスカット線を設けることによって4mm2の四角を81マス作製し、評価用サンプル基板を作製した。次に、この評価用サンプル基板を、120℃、2気圧、湿度100%の高圧高温高湿槽(パーソナルプレッシャークッカーPC−242HS−E(平山製作所社製)、動作モード1)に、15時間または50時間入れた。続いて、室温にて、空気が入らないようにテープ(3M(スリーエム)社製スコッチ(登録商標)透明粘着テープ透明美色(登録商標))を貼り付け、10秒間放置した。その後、基板からのテープの剥離を1秒以内に行い、下記基準で評価した。なお、いずれのマスにおいても剥離力が一定となるようにテープの剥離を行った。
○:作製した81マスの四角のうち、1マスも剥がれが発生しなかった。
△:作製した81マスの四角のうち、1〜9マスに剥がれが発生した。
×:作製した81マスの四角のうち、10〜81マスに剥がれが発生した。
<実施例2>〜<実施例12>、<比較例1>〜<比較例8>
樹脂組成物を構成する各組成の種類や量、成膜条件を表1及び表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして各樹脂組成物を得た。各実施例及び比較例の樹脂組成物を用いて、表1及び表2に記載の成膜条件で塗布及び乾燥を行い、コーティングガラス基板を得た。得られた各コーティングガラス基板の樹脂層とガラス基板との密着性(以下、単に「密着性」という)を、上述のPCT耐湿熱試験にて評価した。その結果を以下の表1、表2にまとめた。
表1の実施例の方が、表2の比較例よりも密着性に優れた結果となった。上記結果から、本発明の構成とすることによる効果が優れたものであることが確認された。例えば、シランカップリング剤の官能基がアミノ基であるKBM−903、Z−6011、Z−6020を用いた実施例1〜12では、官能基がエポキシ基であるZ−6040、Z−6043を用いた比較例1〜4より密着性が向上することを確認できた。
また、溶剤可溶性樹脂であるポリ(アミド)イミド樹脂を用いた実施例1〜12では、その他の樹脂を用いた比較例5〜8より密着性が向上することを確認できた。
その他、吸収色素について、フタロシアニン系化合物(実施例1)を用いた場合とスクアリリウム系化合物(吸収最大波長:701nm、実施例2)を用いた場合には、用いる化合物に応じて溶媒を変更することで同様に調製することができた。フタロシアニン系化合物を用いた場合であっても、スクアリリウム系化合物を用いた場合であっても密着性が向上することも各々確認できた。
上記実施例では具体的に示されてはいないが、オキソカーボン系化合物(色素)に特有の現象として、オキソカーボン系化合物の入った樹脂層をガラス基板に塗布し、且つ、その樹脂層の上にSiO2等の無機蒸着膜を積層し、樹脂層を無機物等の被覆により酸素を遮断した系にすると、オキソカーボン系化合物の耐熱性や耐光性が高くなることが分かった。理由は定かではないが、この現象をもとに加熱条件等を検討したところ、空気雰囲気下よりも、窒素雰囲気下での乾燥・熱硬化(加熱)によるオキソカーボン系色素の劣化が少ないこと、空気雰囲気下よりも窒素雰囲気下での耐紫外線が強いことも分かった。
実施例1〜12で得られた樹脂層積層基板の片面に反射防止膜、もう一方の面に近赤外反射膜を積層して、近赤外線カットフィルターを作製した。近赤外線反射膜及び反射防止膜は、イオンアシスト法(IAD)によってシリカ層と酸化チタン層とを交互に蒸着させることによって作製した。なお、シリカ層及び酸化チタン層を蒸着させる際の蒸着温度は、各樹脂のTg以下になるようにした。得られた近赤外線カットフィルターに対して、耐紫外線性、耐湿熱性、耐水性、耐候性、耐衝撃性、耐熱性評価を実施したところ、いずれの近赤外線カットフィルターにおいても、色素の劣化がなく、非常に優れた耐久性を示すことが分かった。
なお、上記実施例で調製した組成および配合割合について、本明細書中に記載された好ましい範囲内において有利な効果を奏することが立証されている。
*表中の記号、略語は、下記のとおりである。
KBM−903:信越シリコーン社製KBM−903(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)
Z−6011:東レ・ダウコーニング社製Z−6011(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)
Z−6020:東レ・ダウコーニング社製Z−6020(3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン)
Z−6040:東レ・ダウコーニング社製Z−6040(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
Z−6043:東レ・ダウコーニング社製Z−6043(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)
P−1700NT11:ソルベイスペシャリティポリマーズ社製UDEL(登録商標) P−1700NT11(ポリスルホン樹脂)
アートン樹脂:ARTON(登録商標)(JSR社製シクロオレフィンポリマー樹脂)
GBL:γ―ブチロラクトン
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
なお、シクロペンタノンの双極子モーメントは3.3Dであり、沸点は130.6℃である。
本発明の樹脂組成物及びそれを用いた積層体は、耐湿熱性及び耐熱性に優れるため、表示素子や撮像素子等の光学デバイス等、種々の分野において用いることが可能である。例えば、本発明の樹脂組成物及びそれを用いた積層体は、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等の電子部品に使用できる。

Claims (6)

  1. 近赤外線吸収色素と、アミノ基を有するシランカップリング剤と、溶剤可溶性樹脂であるポリ(アミド)イミド樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記近赤外線吸収色素は、フタロシアニン系化合物及び/又はオキソカーボン系化合物を含有し、該色素は600〜900nmの波長域に吸収極大を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記シランカップリング剤の含有量が、前記ポリ(アミド)イミド樹脂100質量部に対して0.3〜5.0質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記シランカップリング剤は第一級アミノ基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 基板上に樹脂層を形成させた積層体において、
    該樹脂層が、請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成されることを特徴とする積層体。
  6. 透明基板上に樹脂層を形成させた近赤外線カットフィルターにおいて、
    該樹脂層が、請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成されることを特徴とする近赤外線カットフィルター。
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