車体重量およびコストの増加を抑えつつ、デッキカバー後部の支持剛性向上を図るという目的を、デッキカバーを備えた自動車のデッキカバー支持構造であって、左右の車体側壁を車幅方向に連結するリヤアッパメンバを設け、上記デッキカバーのサイド部の少なくとも後部を、上記リヤアッパメンバより後方まで延設すると共に、上記リヤアッパメンバの側部が上記デッキカバーのサイド部の後側支持部まで延設されるという構成にて実現した。
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車のデッキカバー支持構造を示し、図1は当該デッキカバー支持構造を備えた自動車を開閉ルーフの閉鎖状態にて示す側面図、図2はその平面図、図3は開閉ルーフを閉鎖状態から開放状態に移行する時の側面図、図4は開閉ルーフの開放状態を示す側面図である。
この実施例では2シーター構造のオープンカーを示している。
図1〜図4に示すように、車体後部構造は、開閉ルーフ1と、ルーフ格納室2と、デッキカバーとしてのリヤデッキカバー3と、トランクルーム4と、トランクリッド5と、リヤデッキカバー3を開閉する平行リンク構造のリンク機構6(図3参照)と、開閉ルーフ1および後述するバックウインド9を開閉するルーフ開閉リンク機構(図示せず)とを備えている。
開閉ルーフ1は、乗員室7(つまり車室)を覆うルーフ閉鎖状態(図1,2参照)と、ルーフ格納室2に格納されて乗員室7を開放するルーフ開放状態(図4参照)との間で変位可能に車体に支持されている。
開閉ルーフ1は、ハードトップタイプの可動ルーフである。開閉ルーフ1は、フロントルーフ1Aと、ミドルルーフ1Bとを備えている。
図1に示すように、フロントルーフ1Aは、乗員室7の上方を覆うルーフであり、またミドルルーフ1Bは、ルーフ閉鎖状態において、フロントルーフ1Aの後側に連設されるルーフである。
図1,図2に示すルーフ閉鎖状態において、ミドルルーフ1Bの後側には、リヤデッキカバー3の構成要素である板状のリヤヘッダ8が連設され、さらに、リヤヘッダ8の下方にはバックウィンド9(図2参照)が連設されている。
図1,図2に示すように、フロントルーフ1Aと、ミドルルーフ1Bと、リヤヘッダ8と、バックウィンド9は、ルーフ閉鎖状態においては、図示しないシール部材を介して互いに密着している。一方、フロントルーフ1Aと、ミドルルーフ1Bと、リヤヘッダ8と、バックウィンド9は、ルーフ開放状態においては、図4に示すように、互いに分離された状態になる。
フロントルーフ1Aと、ミドルルーフ1Bと、バックウィンド9は、車幅方向左右両側において、ルーフ開閉リンク機構(図示せず)を介して相互に連結されると共に、当該ルーフ開閉リンク機構を介して車体に連結されている。但し、上述のリヤヘッダ8は、ルーフ開閉リンク機構には連結されていない。
ルーフ格納室2(図1参照)は、乗員室7と、該乗員室7の後方に設けられたトランクルーム4の間に設けられる。ルーフ格納室2は、開閉ルーフ1(フロントルーフ1Aおよびミドルルーフ1B)と、バックウィンド9とを格納する区画である。フロントルーフ1Aと、ミドルルーフ1Bと、バックウィンド9は、図3,図4に点線で示すように、上下方向に重なった状態で格納される。
リヤデッキカバー3は、ルーフ格納室2の開口部2a(図1参照)を開閉可能に覆う。リヤデッキカバー3は、ベース部3Aと、左右の隆起部3B,3Bと、リヤヘッダ8と、ハイマウントストップランプ10とを備えている(図2参照)。
ベース部3Aは、平面視で台形状を成す板状部分であり、前部が後部よりも車幅方向の長さが短くなっている(図2参照)。ベース部3Aの車幅方向中央部の上面には、ハイマウントストップランプ10が設けられている。
隆起部3Bは、ベース部3Aの左端(車幅方向の一端)および右端(車幅方向の他端)に一体に設けられている。隆起部3Bは、ベース部3Aに対して上方に突出すると共に前後方向に延びている。
隆起部3Bは、車両側面視で略三角形状に形成されている。すなわち、隆起部3Bの上縁部3aが前部から後部にかけて斜め下向きに傾斜し、隆起部3Bの下端部3bが略水平方向に延びることにより、隆起部3Bが側面視で三角形状に形成されている。上縁部3aおよび下端部3bは、それぞれ、上側に凸の若干の丸みを帯びている。その三角形の前側部分には、後側に向かって切り欠かれた切欠部3cが形成されており、この切欠部3cにクォータウィンド11が設けられている。
切欠部3cは、図1に示すように、ルーフ閉鎖状態およびルーフ開放状態において、車両側面視で前上がりに傾斜するバックウィンド9の上端部よりも後方へ延在している。ルーフ閉鎖状態において、隆起部3Bの上縁部3aの傾斜の方が、バックウィンド9の傾斜よりも緩い。これにより、バックウィンド9の側辺部の後方に、隆起部3Bの車幅方向内側の側面を構成する側面視で三角形状の壁部としての車幅方向内側壁3Dが形成される(図2参照)。この車幅方向内側壁3Dは、図2に示すように、ハイマウントストップランプ10と切欠部3cの間に介在している。
上述の隆起部3Bと、上述の車幅方向内側壁3Dとで、リヤデッキカバー3の左右のサイド部3S,3Sが形成されている。
隆起部3Bの後端部は、ベース部3Aの後端部よりも後方へ突出している(図2参照)。この後方への突出部分は、その車幅方向および上下方向の寸法(幅と高さ)が共に後方側ほど小さくなるように後ろ窄まり状に形成されている。
車幅方向左側の隆起部3Bの上端部3aと、車幅方向右端側の隆起部3Bの上端部3aは、リヤヘッダ8を介して車幅方向に連結されている。左側の隆起部3B、リヤヘッダ8、および右側の隆起部3Bは一体、または一体的に形成されている。
左側の隆起部3Bは、左側のリヤピラーとしての機能を有し、また、右側の隆起部3Bは、右側のリヤピラーとしての機能を有している。
なお、リヤヘッダ8は、隆起部3Bの下端部より上側の何れかの位置に連結されていればよく、必ずしも上端部に連結されていなくてもよい。
左側の隆起部3B、右側の隆起部3B、リヤヘッダ8、およびベース部3Aによって囲まれる四角形状の領域が、バックウィンド9が臨む開口部3dを形成する(図2,4参照)。
左側の隆起部3Bおよび右側の隆起部3Bは、開口部3dおよび切欠部3cに近づくにつれて平面視で車幅方向内側へ次第に拡張する形状を有する(図2参照)。
リヤデッキカバー3を開閉する上述のリンク機構6(図3,図8参照)は、ルーフ格納室2内の車幅方向両端部(左端部および右端部)にそれぞれ設けられている。該リンク機構6は、リヤデッキカバー3の底部とルーフ格納室2の側部とを連結する。また、該リンク機構6は、隆起部3Bの前部寄りの箇所を支持している。
図1に示すルーフ閉鎖状態の開閉ルーフ1を、図4に示すようにルーフ格納室2に折畳んで格納する際には、まずリンク機構6(図3参照)でリヤデッキカバー3をリフトアップし、このリヤデッキカバー3がリフトアップされた状態下において、図示しないルーフ開閉リンク機構によりフロントルーフ1A、ミドルルーフ1Bおよびバックウィンド9を上下方向に折畳んでルーフ格納室2に格納し(図3参照)、次に、リンク機構6でリヤデッキカバー3をリフトダウンさせると、図4に示すように、開閉ルーフ1をルーフ格納室2内に格納すると共に、その上部をリヤデッキカバー3で覆うことができる。
図2に平面図で示すように、上述のリヤデッキカバー3の隆起部3B下端はその後部が後方に向けて先鋭となる車両デザインに形成されている。換言すれば、左右の各隆起部3B,3B下端の車両前方側の車幅方向の幅が広く、左右の各隆起部3B,3B下端の車両後方側の車幅方向の幅が狭く、左右の各隆起部3B,3Bの下端は何れも平面視で略直線状に前後方向へ延びるように形成されている。
図5は開閉ルーフ1、リヤデッキカバー3およびリンク機構6を取外した状態で示す車両後部の平面図、図6は図5の要部斜視図、図7は第1ブラケットを単品にて示す斜視図、図8は第1および第2の各ブラケットとリンク機構6との関連構造を示す斜視図、図9は図5のA−A線矢視断面図、図10は図5のB−B線矢視断面図、図11は図5のC−C線矢視断面図、図12はリヤアッパメンバの給油口カップ部側の構成を示す車両左側の斜視図である。
図9に示すように、ルーフ格納室2およびトランクルーム4の床面を形成するリヤフロアパネル12を設け、該リヤフロアパネル12の車幅方向外側下部には、車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム13を接合固定して、このリヤサイドフレーム13とリヤフロアパネル12との間には、車両の前後方向に延びるリヤサイド閉断面14を形成して、下部車体剛性の向上を図っている。
図9に示すように、上述のリヤフロアパネル12の車幅方向外側には、ホイールハウスインナ15とホイールハウスアウタ16とを接合固定して、ホイールハウス17を構成している。同図に示すように、ホイールハウスアウタ16のさらに外側にはリヤフェンダアウタ18(車体外板)とリヤフェンダインナ19とから成るリヤフェンダ20を接合固定している。
図9に示すように、リヤフェンダインナ19の下端と、ホイールハウスインナ15上端と、ホイールハウスアウタ16上端と、の接合部21に対して、リヤフェンダ20の上縁20aが車幅方向内側に位置するように形成されていて、後部車体剛性の向上を図っている。
図5に示すように、前側のルーフ格納室2と、後側のトランクルーム4との間において、左右の車体側壁相互間を、複数の部材から成るリヤアッパメンバ30(リヤデッキメンバと同意)で車幅方向に連結している。
このリヤアッパメンバ30は、車幅方向中央側に位置するロアパネル31、フロントパネル32、リヤパネル33と、車幅方向の左右両側部に位置するサイドパネル34,35とを有している。
一方で、図6,図12に示すように、ホイールハウスインナ15の車幅方向内側で、かつ後寄りの部位には、切り株状(stump、いわゆるスタンプ状)に隆起する左右のダンパ支持部22を、当該ホイールハウスインナ15と一体的に形成している。
そして、リヤアッパメンバ30の左右のサイドパネル34,35と、上述の各ダンパ支持部22,22の後面との間を、何れも高剛性の上部取付けブラケット23、ダイヤゴナルブラケット24、下部取付けブラケット25および後部取付けブラケット29(図13〜図15参照)を介して略上下方向に連結している。
図6,図8,図9に示すように、上述のリヤデッキカバー3を開閉するリンク機構6は、ホイールハウスインナ15に第1ブラケット41と第2ブラケット42とを介して取付けられている。これら各要素6,41,42の構成は左右略対称であるので、以下の説明においては、主として、車両右側の構成について説明する。
リンク機構6は、図8に示すように、下部リンクに相当し、下部に略水平な取付け座6aを有するベース部6Bと、前側リンク6Fと、後側リンク6Rと、上端に略水平なリヤデッキカバー取付け部6bを有する上側リンク6Uとを備えた平行リンクで構成されており、図9に示すように、リヤデッキカバー取付け部6bに、ボルト、ナット等の取付け部材26を用いて、上述のリヤデッキカバー3を取付けている。
ここで、上述のベース部6Bの上部、前側リンク6F、後側リンク6R、上側リンク6Uは、平行リンク機構を構成すべくピン連結されると共に、このリンク機構6は、当該リンク機構6を駆動するためのアクチュエータを備えている。
第1ブラケット41は、図6,図7に示すように、ホイールハウスインナ15の頂部に取付けられる前後の外側取付け部41a,41bが設けられており、これら前後の外側取付け部41a,41bと上述のホイールハウスインナ15との間には前後の閉断面43,44がそれぞれ形成されると共に、これら前後の各閉断面43,44を車両前後方向に繋ぐ連結閉断面部45が設けられている。
また、図7に示すように、上述の第1ブラケット41の車幅方向内側には前後の内側取付け部41c,41d(ホイールハウス車幅方向内側接合部)が一体形成されると共に、車幅方向外側端部にはホイールハウスインナ15の上端フランジ部と接合される複数のフランジ部41e,41f,41gが前後に離間して一体形成されている。
図7に×印で示すように、第1ブラケット41は複数のスポット溶接箇所SW1〜SW11によりホイールハウスインナ15の対応部に接合固定されている。
特に、第1ブラケット41のフランジ部41fにおけるスポット溶接箇所SW8,SW9は、図10に示すように、ホイールハウスアウタ16とホイールハウスインナ15とフランジ部41fとの3枚溶接にて接合されている。
そして、上述の連結閉断面部45と当該第1ブラケット41の車幅方向外側の接合部であるフランジ部41fとの間には、図7に示すように、前後方向に延びる凹部41hが形成されていて、この凹部41hの形成により車両前後方向に延びる複数の稜線X1,X2,X3を形成(図7では3つの稜線を示すが、具体的には4つの稜線が形成される)して、これにより第1ブラケット41それ自体の剛性向上を図っている。
図10に示すように、第1ブラケット41の凹部41hはホイールハウスインナ15の上面に、複数のスポット溶接箇所SW12(但し、図10では一箇所のみを示す)にて連結されている。
上述の前後の閉断面43,44を連結閉断面部45で車両前後方向に繋ぐことで、リヤデッキカバー3から入力される荷重を前後方向に分散して、第1ブラケット41の強度を高めるように構成している。
また、図7に示すように、上述の凹部41hの形成により稜線X1,X2,X3を増やして、第1ブラケット41それ自体の剛性を高めるように構成すると共に、図10に示すように、当該凹部41hをホイールハウスインナ15の上面に連結することで、上記入力荷重をホイールハウス17にも荷重分散すべく構成している。
さらに、図7に示すように、第1ブラケット41の前後の外側取付け部41a,41b相互間には、車幅方向に比較的広い連結閉断面部45が形成されることで、当該第1ブラケット41の車幅方向剛性も確保するように構成している。
図6,図8,図9,図11に示すように、第1ブラケット41に連結される第2ブラケット42は、第1ブラケット41よりも厚肉高剛性に形成されており、この第2ブラケット42には、ホイールハウスインナ15の頂部に対して車幅方向内側にオフセットして上述のリンク機構6を支持する略水平な取付け座42aと、この取付け座42aの前後両部から下方に延びる脚部42b,42cを介して形成され、かつ車幅方向外側が高く、車幅方向内側が低くなるよう傾斜するスラント構造の下側取付け部42d,42eと、上述の取付け座42aよりも車幅方向外側に位置する前後の外側取付け部42f,42gとが設けられている。
そして、上述の下側取付け部42d,42eは、図9,図11に示すように、ウエルドボルト46およびナット47などの取付け部材を用いて、第1ブラケット41の内側取付け部41c,41dに斜めに締結固定されている。
図9,図11に示すように、上述の第2ブラケット42の下側取付け部42d,42eは、垂直線(上下方向に延びる仮想垂直線)に対して鋭角となるよう斜めに取付けられている。
また、図6,図9,図11に示すように、第2ブラケット42の外側取付け部42f,42gは、第1ブラケット41の外側取付け部41a,41b(図7参照)に、ボルト、ナットなどの取付け部材48を用いて、斜めに連結固定されている。
図9に示すように、上述の第2ブラケット42の外側取付け部42f,42gは、水平線(左右横方向つまり車幅方向に延びる仮想水平線)に対して鋭角となるよう斜めに取付けられている。
図8に矢印αで示すように、車両走行時の開閉ルーフ1のルーフ格納および展開時、並びに、リヤデッキカバー3のリフトアップ、リフトダウン時に、加減速や路面凹凸の振動を受けてリンク機構6の取付け座6aには、前後方向に荷重がかかり、また、図8に矢印βで示すように、リンク機構6の取付け座6aがホイールハウスインナ15の内側に張り出すことで、車幅方向および上下方向の振動荷重がかかるが、リヤデッキカバー3から入力される上下方向の荷重を第2ブラケット42の下側取付け部42d,42eで斜め方向に受止め、上下方向の荷重に対してせん断方向の荷重割合を増やし、ホイールハウスインナ15と第1ブラケット41との接合部(スポット溶接箇所参照)が剥離する方向の荷重を低減して、第1ブラケット41がホイールハウスインナ15から剥離することを抑制して、リヤデッキカバー支持構造の剛性を高めるように構成している。
また、車幅方向の荷重に対しては、第2ブラケット42の外側取付け部42f,42gで斜め方向に受止め、車幅方向の荷重に対してせん断方向の荷重割合を増やし、ホイールハウスインナ15と第1ブラケット41との接合部(スポット溶接箇所参照)が剥離する方向の荷重を低減して、第1ブラケット41がホイールハウスインナ15から剥離することを抑制して、リヤデッキカバー支持構造の剛性を高めるように構成している。
図6,図8に示すように、第2ブラケット42の取付け座42aには、ボルト、ナットなどの取付け部材49を用いてリンク機構6におけるベース部6Bの取付け座6aが締結固定されている。
図9,図11に示すように、上述の第1ブラケット41の内側取付け部41c,41dの延長線上に、該第1ブラケット41と上述の第2ブラケット42とのそれぞれの外側取付け部41a,41b,42f,42gが設けられており、リヤデッキカバー3から入力される荷重でホイールハウスインナ15を押し下げることなく、当該ホイールハウスインナ15の面方向に沿って荷重を伝えるように構成している。
さらに、図10,図11に示すように、車両走行時にサスペンションからの荷重が入力される荷重入力点である上述のダンパ支持部22から延びるホイールハウスインナ15の車幅方向内側の側面の延長線上に、第2ブラケット42の支持部(各取付け部42d,42e,42f,42g参照)を水平方向に対して斜めに設けており、これにより第1ブラケット41、第2ブラケット42の両ブラケットにおいて、剥離荷重を低減し、せん断荷重として多くの荷重を受止めて、接合強度に関して有利となるように構成している。
ところで、図1〜図4に示すように、車両左側の車体側部であるリヤフェンダアウタ18には給油口50が設けられている。この給油口50は図5,図12に示すように、カップ部51を備えている。このカップ部51はリヤフェンダ20から車幅方向内側へ突出するように設けられている。
図12に示すように、上述の給油口50およびそのカップ部51が配設される側(つまり車両左側)において、上述のリヤアッパメンバ30の端部である左側のサイドパネル34には、上記カップ部51を避けるよう下方に折曲げられた下方屈曲部34Aが形成されている。
一方、図6,図8,図10に示すように、上述のリヤアッパメンバ30において下方屈曲部34Aが形成された側(車両左側)と車幅方向反対側の端部である車両右側のサイドパネル35には、トランクルーム4内から補機としてのジャッキ60をキャビン側へ挿通可能な開口部35aが形成されており、この開口部35aの口縁には車両前方へ突出するフランジ部35bが一体に形成されている。
図13は図5のD−D線矢視断面図であって、図12,図13に示すように、上述の給油口50、カップ部51に対してサイドパネル34の下方屈曲部34Aが車両側面視でオーバラップするように構成されている。
また、上述の下方屈曲部34Aは、前壁34aと、給油口50の車幅方向内側に位置して前後方向に延びる上壁34bとを備えて側面断面がL字状に形成されている。さらに、上述の前壁34aの下部から前方に向けて接合舌片34cを一体形成し、この接合舌片34cを上述の第1ブラケット41およびホイールハウスインナ15と3枚溶接固定している。
図12,図13で示したように、リヤアッパメンバ30の左側のサイドパネル34の下方屈曲部34Aが給油口50と車両側面視でオーバラップすることで、給油口50のレイアウト性が高まり、当該給油口50が下方屈曲部34Aとオーバラップすることにより、トランクルーム4のスペースが給油管で阻害されることなく、当該トランクルームスペースの確保を図るように構成している。
また、下方屈曲部34Aが前壁34aと上壁34bとを備えて側面断面がL字状に形成されており、これにより車体剛性の向上と車体側部における給油口部分の剛性向上との両立を図るように形成している。ここで、上述の下方屈曲部34Aの上壁34bはトランクサイドアッパパネル27と接合されている。
さらに、上述のリヤアッパメンバ30を給油口50と重なる位置まで後方配置して、リヤアッパメンバ30前方の補機配置スペース(この実施例では、開閉ルーフ1の配置スペース)の拡大を図るように構成している。
特に、車体後部の車両前後方向の長さが短い車両にあっては、上記補機配置スペースおよびトランク空間の拡大を図りつつ、車体剛性を確保するよう構成したものである。
図6,図13に示すように、下方屈曲部34Aが形成された側(車両左側)と車幅方向の反対側である車両右側のサイドパネル35は、上壁35cと、L字状の下壁35dと、これら上下の両壁35c,35d間に形成された上述の開口部35aとを備えている。
上述の開口部35aは、図13に示すように、トランクルーム4内から補機としての長尺物であるジャッキ60をキャビン側へ挿通し得るように形成されている。
また、図6に示すように、上述のL字状の下壁35dの下部には、当該下部から前方に向けて延びる接合舌片35eを一体形成しており、この接合舌片35eを上述の第1ブラケット41およびホイールハウスインナ15と3枚溶接固定している。
図6,図13に示すように、リヤアッパメンバ30の車幅方向一端側(この実施例では左端側)には、上記下方屈曲部34Aが形成されており、車幅方向他端側(この実施例では右端側)には、リヤアッパメンバサイド部としてのサイドパネル35が設けられており、これにより、車両の左右剛性のバランスを図り、さらに、トランクルーム4内から上述の開口部35aを介してキャビン側へ挿通可能な補機(ジャッキ60参照)の収納スペース確保を図るように構成している。ここで、上述のサイドパネル35の上壁35cはトランクサイドアッパパネル27と接合されている。
図8に示すように、リヤアッパメンバ30の反対側の端部、つまり車両右側の端部において補機であるジャッキ60を収納する補機収納部60Aは、開閉ルーフ1またはリヤデッキカバー3を開閉するリンク機構(この実施例では、リヤデッキカバー3を開閉するリンク機構6)の後方に位置している。
図8に示すように、上述の補機収納部60Aが、リヤデッキカバー3を開閉するリンク機構6の後方に位置することで、デッドスペースを有効活用して補機としてのジャッキ60を収納するように構成している。
また、上述のリヤアッパメンバ30の前部はオープンカーのルーフ格納室2に設定されており、車室としての乗員室7はルーフ格納室2のさらに前方に位置しており、これにより、車両後突時に補機であるジャッキ60が車室内へ飛散するのを防止すべく構成している。
図14の(a)は図5のE−E線に沿う要部の矢視断面図、図14の(b)は図5のG−G線に沿う要部の矢視断面図、図15の(a)は図5のH−H線に沿う要部の矢視断面図、図15の(b)は図5のJ−J線に沿う要部の矢視断面図である。
図5のD−D線矢視断面図である図13(背面図)に示すように、上述のリヤアッパメンバ30はダンパ支持部22と連結される所定幅の連結部30D,30Dを、その左右に有している。これら左右の各連結部30D,30Dは、上部取付けブラケット23または後部取付けブラケット29の車幅方向の幅に相当する所定幅を有するものである。
図14の(b)および図15の(a)に示すように、リヤアッパメンバ30の上述の連結部30Dよりも車幅方向中央側は、ロアパネル31、フロントパネル32、リヤパネル33で囲繞された閉断面S1,S2に形成される一方で、図14の(a)および図15の(b)に示すように、リヤアッパメンバ30の上述の連結部30Dよりも車幅方向外側はサイドパネル35、サイドパネル34により開断面に形成されている。
これにより、リヤアッパメンバ30の左右のダンパ支持部22,22を連結する連結部30D,30Dを、閉断面S1,S2の高剛性部材で車幅方向に連結すると共に、連結部30D,30Dよりも車幅方向外側は開断面と成して、局部的な剛性が低くなり、周辺部材との連結部分における応力の集中を回避して、高剛性にて左右のダンパ支持部22,22を連結すると共に、周辺部材に対する補強を省略し、軽量化を図るように構成している。
つまり、リヤアッパメンバ30をスリムかつ高剛性化しつつ、周辺部材(サイドパネル34,35の車幅方向端部側の周辺部材)に対する応力集中を回避して、その補強を省略すべく構成したものである。
図5,図15の(a)に示すように、リヤアッパメンバ30の車幅方向中央側の閉断面S2は後面部としてのリヤパネル33と、他の面部としてのロアパネル31、フロントパネル32とを有しており、後面部(リヤパネル33)はトランクルーム4の開口縁4aに連結されるパネルで構成されており、このパネル(リヤパネル33)は、他の面部を構成するパネル(ロアパネル31、フロントパネル32)よりも薄肉に形成されている。
これにより、リヤアッパメンバ30の高剛性化と、当該リヤアッパメンバ30のトランクルーム開口縁4aパネルとしての機能との両立を図り、トランクルーム4に対しても応力の集中がなく、荷重を緩和しつつ荷重伝達して、車体全体としての高剛性化に寄与すべく構成したものである。
さらに、図14の(b)と図15の(a)との対比から明らかなように、リヤアッパメンバ30は上述のダンパ支持部22との連結部30Dの閉断面S1が他部としての車幅方向中央側の閉断面S2に対して閉断面積が最も大きく、閉断面S1とのみ対向する閉断面周辺長さが、閉断面S2とのみ対向する閉断面周辺長さよりも短く、閉断面S1は前後方向、上下方向の中央に概ね集中するように形成されている。
つまり、リヤアッパメンバ30はその連結部30D,30D間において、車幅方向外側の閉断面S1と車幅方向内側の閉断面S2とで断面形状が異なるように形成されている。
上述のリヤアッパメンバ30の連結部30Dはジョイント部として機能すると共に、その閉断面S1の断面積が最も大きいので、各方向からの応力に対してバランスがとれ、当該連結部30Dにてダンパからの荷重を受止めて、連結部30Dの車幅方向両側に荷重を円滑に伝達するよう構成したものである。
図14,図15に示すように、リヤアッパメンバ30の前下には左右のダンパ支持部22,22が設けられている。
図15の(a)に示すように、該リヤアッパメンバ30を構成するロアパネル31は前部フランジ部31aと後部フランジ31bとを有している。また、フロントパネル32は下部フランジ32aと上部フランジ32bとを有している。さらに、リヤパネル33は前部フランジ33aと後部フランジ33bとを有している。
そして、図15の(a)に示すように、リヤアッパメンバ30の車幅方向中央部は、閉断面S2の中心部から前下に延びる前下延長部30Fと、上方に延びる上側延長部30Uと、後方に延びる後側延長部30Rとを有する三又閉断面に形成されている。
図15の(a)に示すように、上述の前下延長部30Fは各フランジ31a,32aの接合構造により形成されており、上述の上側延長部30Uは各フランジ32b,33aの接合構造により形成されており、上述の後側延長部30Rは各フランジ31b,33bの接合構造により形成されている。
この構成により、左右のダンパ支持部22,22に対して、その後方にリヤアッパメンバ30の閉断面S2の断面中心を配置し、細身化された三又閉断面を形成することで、左右のダンパ支持部22,22間に補機(この実施例では開閉ルーフ1)などの他部材の配置空間を拡大しつつ、左右のダンパ支持部22,22を、当該ダンパ支持部22からの入力荷重を前下延長部30Fの延びる方向で強固に受止め、この前下延長部30Fが位置ずれしないよう、三又閉断面のうちの残る二又方向に延びる他の延長部(上側延長部30Uと後側延長部30R)で補強するよう構成したものである。
図13に示すように、リヤアッパメンバ30のダンパ支持部22との連結部30Dは、車幅方向の左右に位置するサイドパネル34,35と、車幅方向の中央側に位置するロアパネル31、フロントパネル32、リヤパネル33との接合部位に設定されている。
これにより、連結部30Dにおけるパネル枚数の増加を図って、せん断荷重に対する耐力の向上を図り、この部分(連結部30D)にてダンパからの荷重を確実に受止めるように構成している。
図6,図8〜図10において、61は、車両前後方向に延びるリヤフェンダインナ19と車幅方向に延びるリヤアッパメンバ30の端部とを連結するブレースサイドパネルである。
図16の(a)は図2のK−K線に沿う要部の矢視断面図、図16の(b)は図16の(a)の要部拡大図である。
上述のリヤアッパメンバ30の側部としての左右のサイドパネル34,35は、ダンパ支持部22と、ホイールハウス17上に設けられてリヤデッキカバー3を開閉するリンク機構6(図8参照)の支持部である第2ブラケット42の取付け座42aとに連結されている。
すなわち、車両左側のサイドパネル34は、図12,図13,図15の(b)、図16の(a)に示すように、連結部30Dが上部取付けブラケット23、ダイヤゴナルブラケット24、下部取付けブラケット25を介してダンパ支持部22に連結されている。
また、上述の左側のサイドパネル34の接合舌片34cが、図16の(a)に示すように、第1ブラケット41、第2ブラケット42を介して当該第2ブラケット42の取付け座42aに連結されている。
車両右側のサイドパネル35は、図6,図13,図14の(a)に示すように、連結部30Dが上部取付けブラケット23、ダイヤゴナルブラケット24、下部取付けブラケット25を介してダンパ支持部22に連結されている。
また、上述の右側のサイドパネル35の接合舌片35e(図14の(a)参照)が、図6に示すように、第1ブラケット41、第2ブラケット42を介して当該第2ブラケット42の取付け座42aに連結されている。
図16の(a)、(b)は車両左側のリヤデッキカバー支持構造を示すが、車両右側のリヤデッキカバー支持構造は左側のそれと略左右対称に形成されている。
図16の(a)に示すように、リヤデッキカバー3のサイド部3Sの後部3eは、リヤアッパメンバ30、詳しくは、サイドパネル34の上壁34bの後端よりもさらに後方まで延設されており、リヤアッパメンバ30の側部であるサイドパネル34は、リヤデッキカバー3のサイド部3Sの後側支持部としての凸状部材62および凹状部材63の取付け位置まで後方へ延設している。換言すれば、上述のサイド部3Sの後部3eは、図1に示すようにトランクルーム4と上下方向に対応する位置まで後方に延設されている。
詳しくは、図5,図16の(a)に示すように、左右のサイドパネル34,35の上壁34b,35cを、上述の凸状部材62、凹状部材63の配設位置まで後方へ延設したものである。
上述のリヤアッパメンバ30の側部としてのサイドパネル34,35の後側支持部(凸状部材62、凹状部材63)への延設構造により、リヤデッキカバー3後部の支持部(凸状部材62)を補強し、車体重量およびコストの増加を抑えつつ、リヤデッキカバー3後部の支持剛性向上と、車体剛性向上との両立を図るように構成したものである。
図16の(a)(b)に示すように、リヤデッキカバー3はそのベース部3Aを形成するベース部材64を有しており、このベース部材64には、車両前後方向に離間して下向き凸状の2つのボス部64a,64bが一体形成されている。
そして、これらの各ボス部64a,64bには、車両側面視で逆ハット形状のブラケット65を取付けており、該ブラケット65の下部に上述の凸状部材62を取付けている。この実施例では、該凸状部材62はストッパラバーで形成されると共に、該凸状部材62は略円柱状に形成されている。
一方、図16の(a)に示すように、トランクサイドアッパパネル27には、ブラケット65、凸状部材62、凹状部材63の上下方向の寸法を考慮して、リヤデッキカバー3がトランクサイド上面から浮上がらないように凹部66が形成されている。
この凹部66の凹底位置に対応して、凹状部材63の底壁、トランクサイドアッパパネル27、ブレースサイドパネル61、サイドパネル34を上下方向に貫通するボルト67と、ナット68との取付け部材を用いて、凹状部材63をこれら各要素27,61,34、なかんずく、サイドパネル34の上壁34bに固定している。
ここで、上述のナット68は予めサイドパネル34の上壁34b下面に溶接固定されたものである。また、上述の凹状部材63は、ゴム部材により、その上部中央に凸状部材62を嵌合可能な穴部63aを有する略円錐台形状に形成されている。
この実施例では、リヤアッパメンバ30の側部であるサイドパネル34,35の後側に設けられた支持部(凹状部材63)は凹部に設定されており、一方で、リヤデッキカバー3のサイド部3Sの後側に設けられた支持部(凸状部材62)は凸部に設定されており、この凸状部材62と上述の凹状部材63とが互いに着脱可能に嵌合できる嵌合構造に形成されている。
これにより、凹部である凹状部材63と、凸部である凸状部材62とを、リヤデッキカバー3の自重で凹凸嵌合し、当該嵌合構造が可動部を有さないので、該嵌合構造を低コストに形成すると共に、防錆性についても有利となるように構成している。
ここで、上述のリンク機構6は図示しない付勢手段によりリヤデッキカバー3のリフトダウン方向に付勢されているので、この付勢手段による付勢とリヤデッキカバー3の自重との双方により、上記嵌合構造をより一層簡単かつ安価に構成したものである。
また、上述の凹状部材63が取付けられる部位は、トランク周縁よりも低く、排水路を形成する凹部66になっており、これにより、排水性とトランク周縁の高剛性化との両立を図るように構成している。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
このように、上記実施例の自動車のデッキカバー支持構造は、リヤデッキカバー3を備えた自動車のデッキカバー支持構造であって、左右の車体側壁を車幅方向に連結するリヤアッパメンバ30を設け、上記リヤデッキカバー30のサイド部3Sの少なくとも後部を、上記リヤアッパメンバ30より後方まで延設すると共に、上記リヤアッパメンバ30の側部(サイドパネル34,35参照)を上記リヤデッキカバー3のサイド部3Sの後側支持部(凸状部材62、凹状部材63参照)まで延設したものである(図5,図16の(a)参照)。
この構成によれば、リヤアッパメンバ30の側部(サイドパネル34,35)の後側支持部(凸状部材62、凹状部材63)への延設構造により、リヤデッキカバー3後部の支持部を補強することができ、車体重量およびコストの増加を抑えつつ、リヤデッキカバー3後部の支持剛性向上と、車体剛性向上との両立を図ることができる。
また、この発明の一実施形態においては、上記リヤアッパメンバ30の側部(サイドパネル34,35参照)は、ダンパ支持部22と、ホイールハウス17(詳しくは、ホイールハウスインナ15)上に設けられて上記リヤデッキカバー3を開閉するリンク機構6の支持部(第2ブラケット42の取付け座42a参照)とに連結されたものである(図6,図8,図13,図14,図15の(b)、図16の(a)参照)。
この構成によれば、リヤデッキカバー3のリンク機構6および後側支持部(凸状部材62、凹状部材63)が上述のダンパ支持部22に連結されることになり、車両走行時に上述のリヤデッキカバー3を開閉したとしても、その走行時の荷重が車体の他の部位に付勢されないので、車体の振動や変形を抑制することができ、軽量高剛性化を図ることができる。
さらに、この発明の一実施形態においては、上記リヤアッパメンバ30の側部(サイドパネル34,35参照)および上記リヤデッキカバー3のサイド部3Sの後側に設けられた支持部(凸状部材62、凹状部材63)は、一方が凹部で、他方が凸部で形成され、互に嵌合できる嵌合構造に形成されたものである(図16の(b)参照)。
この構成によれば、上述の凹部(凹状部材63)と凸部(凸状部材62)をリヤデッキカバー3の自重で凹凸嵌合することができ、嵌合構造は可動部を有さないので、当該嵌合構造を低コストに形成することができる。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のデッキカバーは、実施例のリヤデッキカバー3に対応し、
以下同様に、
リヤアッパメンバの側部は、サイドパネル34,35に対応し、
後側支持部は、凸状部材62、凹状部材63に対応し、
リンク機構の支持部は、第2ブラケット42の取付け座42aに対応し、
凹部は、凹状部材63に対応し、
凸部は、凸状部材62に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては凹状部材63と凸状部材62とによる凹凸嵌合構造を採用したが、この構成に代えてラッチ&ストライカによる係合構造を採用してもよい。この場合、ラッチとストライカとの何れをリヤデッキカバー3側に取付けてもよいが、リンク機構6によるリヤデッキカバー3の重量を考慮すると、ストライカをリヤデッキカバー3側に取付けることが好ましく、防錆性能を考慮すると、ラッチをリヤデッキカバー3側に、ストライカをボディ側に取付けることが好ましい。