リヤホイールハウスおよびその周辺の車体後部構造は、ショックアブソーバリンフォースをはじめとする複数のパネル部材が組み合わさって構成されている。特に、上記のようにショックアブソーバがリヤホイールハウス(ショックアブソーバリンフォース)に直接的に接続される場合、リヤホイールハウスには高い剛性が求められる。その場合の剛性の向上は、専用の部品によって行うものよりも、各パネル部材の組み付けの形状や構造を工夫することで行うほうが汎用性が高く、コストの面からも有利である。
本発明は、このような課題に鑑み、各パネル部材の組付け方によって剛性を向上させた車体後部構造を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、リヤホイール周辺の車体後部構造において、当該車体後部構造は、車体後部のバックドア開口から下方へ延びたスカート基部、およびスカート基部の上部から車両後方へ屈曲したスカート後方フランジを有するリヤスカートパネルと、スカート基部の車両前側に接続されてリヤホイールの上方へわたりリヤホイール用のショックアブソーバが固定されるショックアブソーバリンフォースと、スカート後方フランジからショックアブソーバリンフォースの上部にわたって接続されてこれらの間に閉断面を形成するクォータインナロアとを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、ショックアブソーバリンフォースと、リヤスカートパネルのスカート後方フランジとの間に、クォータインナロアによって比較的大きな閉断面が形成される。この閉断面を形成することで、ショックアブソーバリンフォースを含む車体後部の剛性は高められ、ショックアブソーバからの振動や衝撃に対する変形がより十全に防止される。特に上記構成では、ショックアブソーバリンフォース、リヤスカートパネル、およびクォータインナロアという3種類のパネル部材の組付け方を工夫することで剛性の向上を果たしているため、専用の部品を使用して行う場合に比べて、汎用性やコストの面で有利である。
当該車体後部構造はさらに、スカート基部の車両前側にバックドア開口に沿って取り付けられ閉断面に内包されるテールエンドパネルを備え、テールエンドパネルは、車両前方に突出してクォータインナロアに接続されるテールエンド接続部を有してもよい。テールエンドパネルを組み付けることで、車両後部の剛性をさらに向上させることができる。
上記のショックアブソーバリンフォースは、リヤスカートパネルよりも板厚が厚くてもよい。この構成によって、ショックアブソーバリンフォースの剛性はさらに向上する。
本発明によれば、各パネル部材の組付け方によって剛性を向上させた車体後部構造を提供することが可能になる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本発明の実施形態にかかる車体後部構造100の斜視図である。本実施形態の車体後部構造100は、バックドアを有するハッチバック車にて実施されている。また、図1に示す車体後部構造100は、車体後部右側のリヤホイール周辺の構造として実施している。
ホイールハウスインナパネル102は、車両前後方向へ伸びて車両のリヤホイール(図示省略)を覆うパネルである。ホイールハウスインナパネル102は、上方へ凸のアーチ形をしていて、リヤホイールの上方前側を包囲している。ホイールハウスインナパネル102の後端には、ショックアブソーバリンフォース104が接続されている。
ショックアブソーバリンフォース104は、リヤホイール用のショックアブソーバ(図示省略)が固定される部材である。ショックアブソーバリンフォース104は、ホイールハウスインナパネル102の車両後側に接合され、リヤホイールハウスの一部を構成し、リヤホイールの上方後側を包囲している。
ショックアブソーバリンフォース104には、ホイールハウスインナパネル102と後方のリヤスカートパネル114との間の位置に、入力面112が形成されている。入力面112にはリンフォースアッパパネル106(リアショックアブソーバリンフォースアッパパネルとも称す)が重なっている。リンフォースアッパパネル106にはショックアブソーバのボルトを挿通するための開口108が形成されている。開口108と同様の孔は、その下の入力面112にも設けられている。
リンフォースアッパパネル106は、入力面112に重なってこれを補強するパネルである。リンフォースアッパパネル106は、入力面112よりも一回り大きく、入力面112全体を覆うようにこれに接合されている。リンフォースアッパパネル106は、ブラケット110によってホイールハウスインナパネル102にもつながれ、設置剛性が高められている。
リヤスカートパネル114は、ショックアブソーバリンフォース104の車両後側が接続するパネルである。図2は、図1の矢視A図である。図2に例示するように、リヤスカートパネル114は、車体後部の下側にて車幅方向および上下方向に広がっている。リヤスカートパネル114は、バックドアが設置されるバックドア開口116の下縁および側縁の一部を形成している。
再び図1を参照する。クォータインナロア118は、バックドア開口116の側縁の下側を形成しているパネルである。クォータインナロア118は、リヤスカートパネル114およびショックアブソーバリンフォース104にまたがって設置されている。特に本実施形態では、クォータインナロア118は、ショックアブソーバリンフォース104の設置剛性の向上に貢献している。
図3は、図1のB−B断面図である。図3に示すように、リヤスカートパネル114は、大きく分けて、主要部分としてバックドア開口116から下方へ延びているスカート基部120と、スカート基部120の上部から車両後方へ屈曲しているスカート後方フランジ122とを有している。ショックアブソーバリンフォース104は、スカート後方フランジ122から見て下方であって、スカート基部120の車両前側に接続されている。ショックアブソーバリンフォース104は、リヤスカートパネル114よりも板厚が厚く、元々の剛性が高く設定されている。
クォータインナロア118は、スカート後方フランジ122からショックアブソーバリンフォース104の上部にわたって接続されてこれらの間に閉断面124を形成する。具体的には、クォータインナロア118は、後部フランジ126がスカート後方フランジ122に接合し、そこから車両前側に延びた後に下方へ縦壁部128が延び、縦壁部128の下部から車両前側に屈曲した前部フランジ130にてショックアブソーバリンフォース104に接合されている。
クォータインナロア118による閉断面124は、ショックアブソーバリンフォース104と、リヤスカートパネル114のスカート後方フランジ122との間に、比較的大きく形成されている。この閉断面124を形成することで、ショックアブソーバリンフォース104の剛性は高められ、ショックアブソーバからの振動や衝撃に対する変形がより十全に防止される。このようにして、本実施形態ではショックアブソーバリンフォース104の設置剛性の向上を3種類のパネル部材の組付け方を工夫することで果たしているため、専用の部品を使用して行う場合に比べて汎用性やコストの面で有利である。
図4は、図1のC−C断面図である。図4は部分断面図であり、一部が斜視図になっている。図4に示すように、閉断面124の内部には、テールエンドパネル132が内包されている。テールエンドパネル132は、スカート基部120の車両前側にて、バックドア開口116に沿って車幅方向に延びるように組み付けられるパネルである。テールエンドパネル132は、クォータインナロア118とリヤスカートパネル114とに挟まれるようにして設置されている。テールエンドパネル132が組み付けられていることによっても、車体後部構造100の剛性は向上する。
テールエンドパネル132には、テールエンド接続部134が設けられている。テールエンド接続部134は、車両前方に突出してクォータインナロア118とボルト136によって接続される。クォータインナロア118は、テールエンドパネル132が組み付けられることで設置剛性が高まっている。したがって、クォータインナロア118が接続しているショックアブソーバリンフォース104の設置剛性も、テールエンドパネル132に起因してさらに高められている。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。