JP2016115728A - 有機トランジスタの製造方法、有機トランジスタ - Google Patents
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Abstract
Description
有機トランジスタの製造においては、有機半導体化合物を溶媒等に高濃度に溶解させた溶液(インク)を介する印刷技術により、省エネルギーかつ低コストで大面積の有機半導体層を製造することができる可能性がある。
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にして、ソース電極上およびドレイン電極上を横切る環状のバンクを用いて、バンク内に有機半導体層を形成して有機トランジスタを作製し、その移動度を評価したところ、得られた移動度は昨今求められるレベルを満たしておらず、さらなる改良が必要であることを知見した。
特許文献1においては、図11(B)に示すように、環状のバンク20内にインク50を付与することにより、環状のバンク20の側面に接するインク層22が形成され、インク層22内に含まれる溶媒を揮発させることにより、図11(C)に示すように、有機半導体層24が形成される。その際、図11(B)の白抜き矢印で示すように、インク層22中の溶媒はインク層22の表面から様々な方向に揮発しやすく、有機半導体化合物の析出が至る場所で生じてしまい、結果として形成される有機半導体層24中の有機半導体化合物の結晶の配向が無秩序となりやすい。そのため、ソース電極16およびドレイン電極18間での移動度が低下したものと思われる。
また、本発明は、高い移動度を示す有機トランジスタを提供することも目的とする。
基板上にゲート電極を形成する工程と、
ゲート電極を覆うように、基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
ゲート絶縁膜上に、ゲート絶縁膜よりもインクに対する濡れ性が低い表面を有する、ソース電極およびドレイン電極を第1の方向に互いに対向するように形成する工程と、
ソース電極とドレイン電極との間に挟まれた電極間領域の外側で、ソース電極およびドレイン電極のうち一方の電極側に偏って配置され、かつ、ソース電極およびドレイン電極の表面よりもインクに対する濡れ性が低い障壁領域を形成する工程と、
障壁領域とソース電極およびドレイン電極のうち他方の電極との間にインクを供給して、障壁領域から他方の電極上にまで至り、一端部が障壁領域に接し、かつ、他端部が他方の電極上にて第1の方向に交差する第2の方向に沿って略直線状に延びるインク層を形成する工程と、
インク層を乾燥させることで、それぞれソース電極とドレイン電極とを互いに連結し、第1の方向に延びる複数の結晶粒を含む有機半導体層を形成する工程とを備える、有機トランジスタの製造方法。
(2) インク層を乾燥させることにより、インク層の固液界面が他方の電極側から障壁領域側に移動するように、インク層に含まれる溶媒が揮発し、有機半導体化合物が順次析出し、有機半導体層が形成される、(1)に記載の有機トランジスタの製造方法。
(3) インクの供給をインクジェット法にて実施する、(1)または(2)に記載の有機トランジスタの製造方法。
(4) インクを供給する際に、第2の方向に沿って複数のインクの液滴を供給する、(1)〜(3)のいずれかに記載の有機トランジスタの製造方法。
(5) 障壁領域が、ソース電極およびドレイン電極よりも第2の方向に張り出すように第2の方向に延在する領域である、(1)〜(4)のいずれかに記載の有機トランジスタの製造方法。
(6) 障壁領域が、一方の電極上に重なって配置される、(1)〜(5)のいずれかに記載の有機トランジスタの製造方法。
(7) ソース電極およびドレイン電極の表面に撥液化処理が施されている、(1)〜(6)のいずれかに記載の有機トランジスタの製造方法。
(8) 基板と、
基板上に配置されたゲート電極と、
ゲート電極を覆うように配置されたゲート絶縁膜と、
ゲート絶縁膜上に第1の方向に互いに対向して配置されたソース電極およびドレイン電極と、
ソース電極とドレイン電極との間に挟まれた電極間領域の外側で、かつ、ソース電極およびドレイン電極のうち一方の電極側に偏って配置された障壁領域と、
それぞれソース電極とドレイン電極とを互いに連結し、第1の方向に延びる複数の結晶粒を含み、かつ、一端部が障壁領域に接触し、他端部が他方の電極上にて第1の方向に交差する第2の方向に沿って略直線状に延びる有機半導体層と、を備える、有機トランジスタ。
また、本発明によれば、高い移動度を示す有機トランジスタを提供することもできる。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において「第1の方向」とは、ソース電極、ドレイン電極が形成するチャネルの長さ(電極間の距離)方向、また「第2の方向」とは第1の方向と直交する方向を該当する。
まず、本発明の特徴点としては、形成されるインク層の範囲を制御すると共に、電極上に位置するインク層の固液界面から溶媒を徐々に揮発させて、一定の方向に沿って有機半導体化合物を順次析出させることにより、移動度に優れる有機トランジスタを製造している点が挙げられる。
以下、本発明に係る有機トランジスタの製造方法についての好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
本発明の有機トランジスタの製造方法の第1実施形態は、基板上にゲート電極を形成する工程S1と、ゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜を基板上に形成する工程S2と、ゲート絶縁膜上にソース電極およびドレイン電極を形成する工程S3と、所定の障壁部を形成する工程S4と、有機半導体化合物および溶媒を含むインク(以後、単に「インク」とも称する)を用いてインク層を形成する工程S5と、インク層から有機半導体層を形成する工程S6とを備える。
図1は、本発明の有機トランジスタの製造方法の第1実施形態を工程順に示す図である。以下に、図面を参照しながら、各工程で使用される材料およびその手順について詳述する。
工程S1は、基板上にゲート電極を形成する工程である。具体的には、図1(A)に示すように、本工程S1を実施することにより、基板10上にゲート電極12が形成される。
また、導電性高分子の溶液または分散液を用いて直接インクジェット法により基板10上にパターニングしてゲート電極12を形成してもよいし、フォトリソグラフ法やレーザアブレーション法を用いて塗工膜からゲート電極12を形成してもよい。さらに導電性高分子や導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
ゲート電極12の厚みは特に制限されないが、20〜1000nmであることが好ましい。
ゲート電極12のパターン形状は特に制限されず、適宜最適な形状が選択される。
工程S2は、ゲート電極を覆うように、基板上にゲート絶縁膜を形成する工程である。具体的には、図1(B)に示すように、本工程S2を実施することにより、基板10上にゲート電極12を覆うようにゲート絶縁膜14が形成される。
ゲート絶縁膜14の材料としてポリマーを用いる場合、架橋剤(例えば、メラミン)を併用するのが好ましい。架橋剤を併用することで、ポリマーが架橋されて、形成されるゲート絶縁膜14の耐久性が向上する。
なお、ゲート絶縁膜形成用組成物には、必要に応じて、溶媒(水、または、有機溶媒)が含まれていてもよい。また、ゲート絶縁膜形成用組成物には架橋成分が含まれてもよい。例えば、ヒドロキシ基を含有する有機絶縁材料に対し、メラミン等の架橋成分を添加することで、ゲート絶縁膜14に架橋構造を導入することもできる。
ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、インクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが好ましい。
ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布してゲート絶縁膜14を形成する場合、溶媒除去、架橋などを目的として、塗布後に加熱(ベーク)してもよい。
工程S3は、ゲート絶縁膜上に、ゲート絶縁膜よりもインクに対する濡れ性が低い表面を有するソース電極およびドレイン電極を第1の方向に互いに対向するように形成する工程である。具体的には、図1(C)に示すように、本工程S3を実施することにより、ゲート絶縁膜14上に、第1の方向に互いに対向するソース電極16およびドレイン電極18が形成される。
なお、本明細書において、直交とは、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。具体的には、90±10°未満の範囲内であることを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましい。
ソース電極16およびドレイン電極18の厚みは特に制限されないが、20〜1000nmであることが好ましい。
なお、上記撥液材料としては、例えば、フッ素原子含有化合物や、炭化水素化合物が挙げられる。なお、これらの化合物には、チオール基、ジスルフィド基、または、アルコキシシラン基などが含まれていてもよく、これらの基を介してソース電極およびドレイン電極に結合してもよい。撥液材料の具体例としては、フッ化アルキル系シランカップリング剤、アルキルチオール、または、パーフルオロアルキルチオールなどが挙げられる。
なお、本明細書における濡れ性の大小は、水、および、ヨウ化メチルの接触角から計算される表面エネルギーの値で決定している。一般に表面エネルギーが大きいほど濡れ性が大きく、表面エネルギーが小さいほど濡れ性が小さい。
工程S4は、ソース電極とドレイン電極との間に挟まれた電極間領域の外側で、ソース電極およびドレイン電極のうち一方の電極側に偏って配置され、かつ、ソース電極およびドレイン電極よりもインクに対する濡れ性が低い障壁領域を形成する工程である。具体的には、図1(D)に示すように、本工程S4を実施することにより、ソース電極16とドレイン電極18との間の電極間領域30に重ならないように、電極間領域30の外側で、ソース電極16側に偏って配置された障壁部32が形成される。
なお、図2は図1(D)の障壁部32を有する積層体を上面から見た上面図(図1(D)中の上側から下側に向かって見た図)であり、図1(D)は図2の断面B−Bで切断した断面図である。
また、障壁部32は、ソース電極16およびドレイン電極18よりも第2の方向に張り出すように、第2の方向に延在する。言い換えれば、障壁部32は、ソース電極16およびドレイン電極18よりも第2の方向においてより長い。
また、障壁部32は、ゲート絶縁膜14と接し、かつ、ソース電極16上の一部に重なるように配置される。より具体的には、障壁部32は、ソース電極16の外側(電極間領域30とは反対側)に位置するゲート絶縁膜14と接する。また、障壁部32は、ソース電極16表面上の外側(電極間領域30とは反対側)の領域と接する。
なお、図1(D)においては、ソース電極16上に障壁部32が形成されているが、この態様には限定されず、ドレイン電極18上に障壁部32が配置されていてもよい。
障壁部32のパターンは、所定のマスクを使用する方法や、フォトリソグラフ法にて適宜調整される。
障壁部32の厚みは特に制限されず、例えば、0.1〜50μmに適宜調整することができる。
工程S5は、障壁領域とソース電極およびドレイン電極のうち他方の電極との間にインクを供給して、障壁領域から他方の電極上にまで至り、一端部が障壁領域に接し、かつ、一端部と対向する他端部が他方の電極上にて第1の方向に交差する第2の方向に沿って略直線状に延びるインク層を形成する工程である。
より具体的には、まず、図1(E)に示すように、障壁部32とドレイン電極18との間であって、ソース電極16の近傍にインク50が供給される。
なお、図3は図1(E)のインク50が供給される積層体を上面から見た上面図であり、図1(E)は図3の断面C−Cで切断した断面図である。
なお、複数のインクの液滴を供給する方法としては、インクを吐出するノズルを第2の方向に走査しながらインクを吐出する方法や、第2の方向に沿って複数配置されたノズルからインクを吐出する方法などが挙げられる。
インクの供給方法としては、上述したインクジェット法に限定されず、ディスペンサー法、スクリーン印刷法なども適宜利用できる。
また、インクの供給量は、所定のインク層22が形成される量が適宜選択される。
なお、略直線状とは、厳密な意味での直線を意味するものだけではなく、全体として実質的な直線であるものも含むことを意味しており、ある程度湾曲していたり、一部屈曲部や湾曲部を含んでいたりしてもよい。より具体的には、延在する方向に直交する方向にて多少の振れ幅(振幅)を有していてもよく、その振幅は20μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。なお、振れ幅とは、図4(B)に示すように、延在する方向とは直交する方向における、他端部36の障壁部32に最も近い点と、他端部36の障壁部32に最も遠い点との間の距離を意図する。
図4(A)は図1(F)のインク層22を有する積層体を上面から見た上面図であり、図1(F)は図4(A)の断面D−Dで切断した断面図である。
図4(A)に示すように、インク層22の他端部36がドレイン電極18の第2の方向の全域にわたって位置するように、インク層22は形成される。このような態様であれば、ソース電極16とドレイン電極18との間の電極間領域30の全域にわたって有機半導体層が形成され、好ましい。
工程S6は、インク層を乾燥させることで、それぞれソース電極とドレイン電極とを互いに連結し、第1の方向に延びる複数の結晶粒を含む有機半導体層を形成する工程である。
具体的には、図1(F)に示すように、上記工程S5にて得られたインク層22のドレイン電極18上の他端部36近傍は、障壁部32近傍と比較して、インク層22の厚みが薄く、溶媒が揮発しやすい状態にある。そのため、インク層22の他端部36近傍にて、優先的に溶媒の揮発が進行し、インクが飽和状態になり有機半導体化合物の結晶が析出し始め、いわゆる種結晶が生成する。一旦種結晶が生成すると、図1(G)に示すように、インク層22のドレイン電極18側の固液界面38が黒矢印の方向に向かって単調に移動するように、インク層22中の溶媒の揮発が進行する。結果として、溶媒の揮発と共に、有機半導体化合物の結晶化が進展し、有機半導体層40が成長していく。
すなわち、ドレイン電極18側からソース電極16側(言い換えれば、障壁部32側)に向かって有機半導体化合物の結晶の成長が進み、有機半導体層40が漸次形成されてゆく。このような、有機半導体化合物の結晶成長の異方性が生じることにより、結果として、図6(A)および(B)に示すように、ソース電極16とドレイン電極18とを互いに連結し、第1の方向に延びる複数の結晶粒42が含まれる有機半導体層40が形成され、所望の有機トランジスタ100が得られる。言い換えれば、それぞれドレイン電極18表面上から障壁部32まで延びる複数の結晶粒42からなる有機半導体層40が形成される。有機半導体層40中においては、結晶粒42は、第2の方向に沿って隣接して配列している。
なお、図6(B)は、図6(A)の有機トランジスタを上面から見た一部拡大上面図である。
なお、図5は図1(G)のインク層22を有する積層体を上面から見た上面図であり、図1(G)は図5の断面E−Eで切断した断面図である。
なお、必要に応じて、加熱処理などの乾燥処理を実施してもよい。
本工程S6で使用されるインクには、有機半導体化合物および溶媒が少なくとも含まれる。
有機半導体化合物の種類は特に制限されず、公知の有機半導体化合物を使用することができる。具体的には、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPSペンタセン)、テトラメチルペンタセン、パーフルオロペンタセン等のペンタセン類、TES−ADT、diF−TES−ADT(2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラジチオフェン)等のアントラジチオフェン類、DPh−BTBT、Cn−BTBT等のベンゾチエノベンゾチオフェン類、Cn−DNTT等のジナフトチエノチオフェン類、ペリキサンテノキサンテン等のジオキサアンタントレン類、ルブレン類、C60、PCBM等のフラーレン類、銅フタロシアニン、フッ素化銅フタロシアニン等のフタロシアニン類、P3RT、PQT、P3HT、PQT等のポリチオフェン類、ポリ[2,5−ビス(3−ドデシルチオフェン−2−イル)チエノ[3,2−b]チオフェン](PBTTT)等のポリチエノチオフェン類等が例示される。
例えば、高分子化合物が含まれていてもよい。高分子化合物の種類は特に制限されず、公知の高分子化合物が挙げられる。高分子化合物の好適態様としては、ベンゼン環を有する高分子化合物(ベンゼン環基を有する繰り返し単位を有する高分子)が好ましい。
上記高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルシンナメート、ポリ(4−ビニルフェニル)またはポリ(4−メチルスチレン)などが挙げられる。
インク中における溶媒の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、インク全質量に対して、90〜99.6質量%が好ましく、95〜99.0質量%がより好ましい。
本発明の有機トランジスタの製造方法の第2実施形態は、障壁部を配置する位置が異なる以外は、第1実施形態と同じ手順を実施する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に、第2実施形態について詳述する。
第2実施形態においては、図7(A)および(B)に示すように、障壁部32を、ソース電極16よりも外側(電極間領域とは反対側)で、ソース電極16と重ならないように、ゲート絶縁膜14上に配置する。この実施形態においてインク層を形成する場合、障壁部32とドレイン電極18との間にインクを供給して、図8に示すように、ソース電極16を覆うようにインク層22を形成する。インク層22の態様は、上述した第1実施形態と同じく、障壁部32からドレイン電極18上にまで至り、一端部34が障壁部32に接触し、かつ、他端部36がドレイン電極18上にて第1の方向に直交する第2の方向に沿って略直線状に延びるインク層22が形成される。
本実施形態においては、障壁部32とドレイン電極18間の距離が広がるため、インクを供給する位置の自由度が増え、使用できるインク供給装置の自由度が高まる。
なお、図7(A)は障壁部32を配置した状態の積層体の上面図であり、図7(B)は図7(A)の断面F−Fで切断した断面図である。
本発明の有機トランジスタの製造方法の第3実施形態は、壁状の障壁部を使用する代わりに、撥液領域を使用する以外は、第1実施形態と同じ手順を実施する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に、第3実施形態について詳述する。
第3実施形態においては、図9に示すように、障壁部32の代わりに、ソース電極16上にインクに対して撥液性を示す撥液領域44を形成する。撥液領域44は、上述した障壁部32と同様に、インク層の広がりを抑制する障壁領域に該当する。
撥液領域44は、上述した第1実施形態および第2実施形態で説明した障壁部32と同様に、インクに対する濡れ性が、ソース電極16およびドレイン電極18の表面よりも低い。このような撥液領域44の形成方法は特に制限されず、上述した撥液化処理が挙げられ、より具体的には、上述した撥液材料を所定の位置に付与して、撥液領域44を形成する方法や、CF4などのフッ素系ガスを用いた撥液化処理を所定の位置に施して、撥液領域44を形成する方法が挙げられる。
なお、図9においては、撥液領域44はソース電極16上にのみ形成されているがこの態様には限定されず、例えば、第2実施形態で述べたように、ソース電極16よりも外側(電極間領域とは反対側)であって、ソース電極16と重ならないように、撥液領域をゲート絶縁膜14上に配置してもよい。
本実施形態においては、撥液領域44を使用することにより障壁領域の高さを低く抑えることができ、その表面の凹凸形状を小さくすることができるため、ソース電極16およびドレイン電極18上に他の層(例えば、封止層)を配置しやすい。
洗浄したガラス基板上にAl電極を真空蒸着法で30nmの厚みで形成し、図1(A)に示すような、ゲート電極とした。
次に、ポリビニルアルコール(PVA)を含むプロピレングリコール−1−メチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液(PVAの含有量は、溶液全質量に対して10質量%)と、メラミンを含むPGMEA溶液(メラミンの含有量は、溶液全質量に対して10質量%)とを質量比1:1で混合し、得られた溶液をゲート電極上にスピンコート法にて塗布して成膜したのち、ホットプレート上で150℃にて1時間アニール処理を施し、ゲート絶縁膜を形成した。
次に、Au電極を真空蒸着法で50nmの厚みで形成し、図1(C)に示すような、ソース電極およびドレイン電極を形成した。ソース電極およびドレイン電極間のチャネル長は50μmであり、チャネル幅は1mmであった。続いて、30mMに調製したペンタフルオロベンゼンチオールのイソプロパノール溶液にソース電極およびドレイン電極が配置されたガラス基板を10分間浸漬させ、ソース電極およびドレイン電極表面上にペンタフルオロベンゼンチオールの自己組織化単分子膜を形成した。なお、以上のようにして表面処理されたソース電極およびドレイン電極は、後述するインクに対する濡れ性がゲート絶縁膜よりも低かった。
次に、ディスペンサー装置を用いて、図1(D)に示すように、その一部分がソース電極の一部と重複し、他の部分がゲート絶縁膜と接するように、テフロン(登録商標)を塗布して、障壁部を形成した。障壁部は、ソース電極とドレイン電極とが対向する方向(上述した第1の方向)に直交する方向(上述した第2の方向)に沿って延在する矩形状のパターンであった。なお、障壁部は、後述するインクに対する濡れ性が表面処理されたソース電極およびドレイン電極よりも低かった。
次に、2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラジチオフェン(diF−TES−ADT)とポリスチレン(重量平均分子量280,000)とを、メシチレンに溶解させ、インクを調製した。なお、インク中において、diF−TES−ADTの含有量はインク全質量に対して2質量%であり、ポリスチレンの含有量はインク全質量に対して0.5質量%であった。得られたインクをインクジェット用カートリッジに封入したのち、インクジェット装置を用いて、図1(E)に示すように、ソース電極とドレイン電極との中間よりもソース電極側の位置に、複数のインクを第2の方向に沿って吐出して、図1(F)に示すような、障壁部からソース電極および電極間領域上を経てドレイン電極上にまで至り、かつ、一端部が障壁部と接触し、他端部がドレイン電極上にて第2の方向に沿って略直線状になるインク層を形成した。
このインク層を自然乾燥させると、図1(G)に示すように、インク層のドレイン電極上の端部から乾燥が始まり、インク層の固液界面がドレイン電極側からソース電極側に移動しながら、徐々に溶媒が揮発して、diF−TES−ADTが析出して、有機半導体層が得られた。得られた有機半導体層を顕微鏡にて観察したところ、有機半導体層内にて、ソース電極とドレイン電極とを連結し、第1の方向に延びる複数の線状の結晶粒が確認された。これらの結晶粒は、第2の方向に沿って隣接して配置されていた。なお、有機半導体層は、チャネル幅の全域に形成された。
得られた有機トランジスタの移動度(キャリア移動度)を半導体特性評価装置4155C(アジレント社製)を用いて測定したところ、ドレイン電圧−40V印加時において1.5cm2/Vsであった。
障壁部の形状を図11および12に示すように環状にして、環状のバンク(障壁部)内にインクを供給した以外は、実施例1と同様の手順に従って、有機トランジスタを製造した。
なお、有機半導体層の形成時にインク液面から溶媒が四方に揮発したため、顕微鏡にて有機半導体層を確認したところ、有機半導体層中には異方性のある結晶粒は確認されなかった。
得られた有機トランジスタの移動度(キャリア移動度)を半導体特性評価装置4155C(アジレント社製)を用いて測定したところ、ドレイン電圧−40V印加時において0.4cm2/Vsであった。
12 ゲート電極
14 ゲート絶縁膜
16 ソース電極
18 ドレイン電極
20 環状のバンク
22 インク層
24,40 有機半導体層
30 電極間領域
32 障壁部
34 一端部
36 他端部
38 固液界面
42 結晶粒
44 撥液領域
50 インク
100 有機トランジスタ
Claims (8)
- 有機半導体化合物および溶媒を含むインクを用いて形成される有機半導体層を備える有機トランジスタの製造方法であって、
基板上にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極を覆うように、前記基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、前記ゲート絶縁膜よりも前記インクに対する濡れ性が低い表面を有する、ソース電極およびドレイン電極を第1の方向に互いに対向するように形成する工程と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に挟まれた電極間領域の外側で、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうち一方の電極側に偏って配置され、かつ、前記ソース電極および前記ドレイン電極の表面よりも前記インクに対する濡れ性が低い障壁領域を形成する工程と、
前記障壁領域と前記ソース電極および前記ドレイン電極のうち他方の電極との間に前記インクを供給して、前記障壁領域から前記他方の電極上にまで至り、一端部が前記障壁領域に接し、かつ、他端部が前記他方の電極上にて前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って略直線状に延びるインク層を形成する工程と、
前記インク層を乾燥させることで、それぞれ前記ソース電極と前記ドレイン電極とを互いに連結し、前記第1の方向に延びる複数の結晶粒を含む前記有機半導体層を形成する工程とを備える、有機トランジスタの製造方法。 - 前記インク層を乾燥させることにより、前記インク層の固液界面が前記他方の電極側から前記障壁領域側に移動するように、前記インク層に含まれる前記溶媒が揮発し、前記有機半導体化合物が順次析出し、有機半導体層が形成される、請求項1に記載の有機トランジスタの製造方法。
- 前記インクの供給をインクジェット法にて実施する、請求項1または2に記載の有機トランジスタの製造方法。
- 前記インクを供給する際に、前記第2の方向に沿って複数のインクの液滴を供給する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機トランジスタの製造方法。
- 前記障壁領域が、前記ソース電極および前記ドレイン電極よりも前記第2の方向に張り出すように前記第2の方向に延在する領域である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機トランジスタの製造方法。
- 前記障壁領域が、前記一方の電極上に重なって配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機トランジスタの製造方法。
- 前記ソース電極および前記ドレイン電極の表面に撥液化処理が施されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機トランジスタの製造方法。
- 基板と、
前記基板上に配置されたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うように配置されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に第1の方向に互いに対向して配置されたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に挟まれた電極間領域の外側で、かつ、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうち一方の電極側に偏って配置された障壁領域と、
それぞれ前記ソース電極と前記ドレイン電極とを互いに連結し、前記第1の方向に延びる複数の結晶粒を含み、かつ、一端部が前記障壁領域に接触し、他端部が前記他方の電極上にて前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って略直線状に延びる有機半導体層と、を備える、有機トランジスタ。
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