以下、本発明の有機半導体素子の製造方法について詳細に説明する。
本発明の有機半導体素子の製造方法は、有機半導体層の形成位置と、親液部および撥液部の形成位置とに応じて、4つの態様に大別することができる。以下、本発明の有機半導体素子の製造方法について、各態様に分けて説明する。
A.第1態様の有機半導体素子の製造方法
まず、本発明の第1態様の有機半導体素子の製造方法について説明する。本態様の有機半導体素子の製造方法は、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層上にソース電極およびドレイン電極を形成するソース電極およびドレイン電極形成工程と、上記ソース電極および上記ドレイン電極を覆うように上記配向層上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、基板、ならびに上記基板上にパターン状に形成された親液部および撥液部を有する有機半導体層転写基板を用い、上記撥液部が上記有機半導体層上の少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に配置されるように、上記有機半導体層転写基板を上記有機半導体層上に積層してから、上記有機半導体層を上記親液部上に、上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する有機半導体層熱転写工程と、上記液晶相温度よりも低い温度で、上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離することにより、上記親液部上に熱転写された上記有機半導体層を上記配向層から除去する有機半導体層除去工程と、を有することを特徴とするものである。
このような本態様の有機半導体素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本発明の第1態様の有機半導体素子の製造方法の一例を示す工程図である。図1および図2に例示するように、本態様の有機半導体素子の製造方法は、基材11と、基材11上に形成されたゲート電極12と、ゲート電極12を覆うように基材11上に形成されたゲート絶縁層13とを有する電極積層体14を用い(図1(a))、電極積層体14のゲート絶縁層13上に、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層1を形成する配向層形成工程(図1(b))と、配向層1上にソース電極2およびドレイン電極3を形成するソース電極およびドレイン電極形成工程(図1(c))と、ソース電極2およびドレイン電極3を覆うように配向層1上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層4を形成する有機半導体層形成工程(図1(d))と、基板5、ならびに基板5上にパターン状に形成された親液部6および撥液部7を有する有機半導体層転写基板8を用い(図1(e))、撥液部7が有機半導体層4上の少なくともソース電極2およびドレイン電極3間のチャネル領域C上に配置されるように、有機半導体層転写基板8を有機半導体層4上に積層してから、有機半導体層4を親液部6上に、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する有機半導体層熱転写工程(図2(a))と、液晶相温度よりも低い温度で、有機半導体層転写基板8を配向層1から剥離することにより、親液部6上に熱転写された有機半導体層4を配向層1から除去する有機半導体層除去工程(図2(b))と、を有することにより、有機半導体素子10を製造するものである(図2(b))。
本態様によれば、予め親液部および撥液部を設けた有機半導体層転写基板を用いて、有機半導体層を上記親液部上に熱転写し、上記親液部上に熱転写された上記有機半導体層を配向層から除去することで、少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層を残すように有機半導体層をパターニングすることができるため、パターン加熱および凹凸構造等が不要となり、有機半導体層のパターン精度を向上させることができるとともに、手間を削減することができる。このとき、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写を行うことにより、上記有機半導体層を上記親液部上により密着させることができ、転写性を向上させることができる。
また、上記有機半導体層を構成する材料として、規則的に配向させることが可能な液晶性有機半導体材料が用いられ、かつ、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層上に上記有機半導体層が形成されていることから、上記有機半導体層を液晶相温度に加熱することで上記液晶性有機半導体材料の配向処理を上記有機半導体層のパターニングと同時に行うことができ、トランジスタ性能が向上した有機半導体素子を簡便な工程で手間なく得ることができる。
このようなことから、本態様によれば、有機半導体層のパターン精度が良好であり、トランジスタ特性に優れた有機半導体素子を容易に製造することができる。
さらに、本態様においては、上記有機半導体層が上記配向層上に形成されており、上記撥液部上に上記有機半導体層を形成する必要がないため、上記有機半導体層を塗布形成することができ、有機半導体素子の生産性の向上および製造コストの削減を図ることができる。
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも、ソース電極およびドレイン電極形成工程と、有機半導体層形成工程と、有機半導体層熱転写工程と、有機半導体層除去工程とを有するものであり、必要に応じて他の任意の工程を有していてもよいものである。
以下、本態様の有機半導体素子の製造方法における各工程について説明する。
1.ソース電極およびドレイン電極形成工程
まず、本態様におけるソース電極およびドレイン電極形成工程について説明する。本工程は、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層上に、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程である。
本工程に用いられる配向層は、液晶性有機半導体材料を配向させる機能を有するものである。上記配向層は、後述する有機半導体層形成工程により形成される有機半導体層に含まれる液晶性有機半導体材料を配向させることができるものであれば特に限定されるものではなく、液晶性有機半導体材料の種類に応じて適宜選択して用いることができる。このような配向層としては、上記液晶性有機半導体材料を配向層上において配向層の表面に対して平行方向に配向させる平行配向膜と、上記液晶性有機半導体材料を配向層上において配向層の表面に対して垂直に配向させる垂直配向膜とを挙げることができる。
上記平行配向膜としては、液晶性有機半導体材料を所定の方向に配向させることができるものであれば特に限定されるものではない。このような平行配向膜としては、例えば、ラビング処理を施すことによりラビング方向に液晶性有機半導体材料を配向させる機能を付与することができるラビング膜や、光反応性材料が用いられ、偏光が照射されることにより一定の方向に液晶性有機半導体材料を配向させる機能を付与することができる光配向膜等を挙げることができる。
上記ラビング膜としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ナイロン等からなる膜を挙げることができる。
また、上記光配向膜としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルシンナメート等からなる膜を挙げることができる。
一方、上記垂直配向膜としては、液晶性有機半導体材料を配向層の表面に対して垂直方向に配向させることができるものであれば特に限定されるものではない。このような垂直配向膜としては、例えば、ポリイミド、フッ素系ポリマー、シランカップリング剤、シリコーン系ポリマー等からなる膜を挙げることができる。
本工程に用いられる配向層としては、上記平行配向膜または上記垂直配向膜のいずれであっても好適に用いることができるが、中でも、垂直配向膜を用いることが好ましい。上記配向層として垂直配向膜を用いることにより、配向層上に形成された有機半導体層の面内方向の移動度を向上させることができ、その結果として、本態様により製造される有機半導体素子のトランジスタ性能をさらに向上させることができるからである。
本工程に用いられる配向層の厚みは、配向層として用いられる配向膜の種類等に応じて、所望の配向機能を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、1nm〜1μmの範囲内であることが好ましく、1nm〜0.5μmの範囲内であることがより好ましく、1nm〜0.1μmの範囲内であることがさらに好ましい。
本工程により形成されるソース電極およびドレイン電極は、配向層上に、通常、互いに一定の間隔をもって対向するように形成されるものである。また、ソース電極およびドレイン電極間に設けられた間隔は、チャネル領域となるものである。上記ソース電極および上記ドレイン電極の構成材料としては、所望の導電性を有する導電性材料であれば特に限定されるものではない。このような導電性材料としては、例えば、Ta、Ti、Al、Zr、Cr、Nb、Hf、Mo、Au、Ag、Pt、Mo−Ta合金、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の無機材料、および、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)等の導電性を有する有機材料を挙げることができる。なお、ソース電極およびドレイン電極は、1種類の導電性材料からなるものであってもよく、2種類以上の導電性材料からなるものであってもよい。また、ソース電極およびドレイン電極において、同一の導電性材料が用いられていてもよく、互いに異なる導電性材料が用いられていてもよい。
本工程においてソース電極およびドレイン電極を形成する方法としては、所望の導電性材料を用いて予め定められた形状のソース電極およびドレイン電極を上記配向層上に形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、プラズマCVD法、熱CVD法、レーザーCVD法等のCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法等のドライプロセス、および、電解メッキ法、浸漬メッキ法、無電解メッキ法、ゾルゲル法、有機金属分解(MOD)法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクトプリント法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等のウェットプロセスを挙げることができる。
また、本工程により形成されるソース電極およびドレイン電極間にはチャネル領域が形成されることになるが、上記ソース電極および上記ドレイン電極間の距離は、通常、0.1μm〜1mmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜200μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、本工程により形成されるソース電極およびドレイン電極の厚みは、使用される導電性材料の種類に応じて、所望の電気抵抗を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、1nm〜1μmの範囲内であることが好ましく、10nm〜200nmの範囲内であることがより好ましく、20nm〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。
2.有機半導体層形成工程
次に、本態様における有機半導体層形成工程について説明する。本工程は、上記ソース電極および上記ドレイン電極を覆うように上記配向層上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を形成する工程である。
本工程により形成される有機半導体層は、液晶性有機半導体材料を有するものである。本工程に用いられる液晶性有機半導体材料としては、半導体特性を備え、所定の温度で液晶相を示す材料であれば特に限定されるものではなく、本態様により製造される有機半導体素子の用途等に応じて、適宜選択して用いることができる。中でも、本工程に用いられる液晶性有機半導体材料は、液晶相を示す液晶相温度が、450℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。なお、上記液晶相温度は、通常、40℃以上である。
ここで、上記液晶相温度とは、上記液晶性有機半導体材料が液晶相を発現する温度を意味するものである。このような液晶相温度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)による熱分析や、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察等によって測定することができる。
本工程に用いられる液晶性有機半導体材料としては、高分子系液晶性有機半導体材料と、低分子系液晶性有機半導体材料とを挙げることができる。本工程においては、高分子系液晶性有機半導体材料と、低分子系液晶性有機半導体材料とのいずれであっても好適に用いることができる。
上記高分子系液晶性有機半導体材料としては、例えば、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリジアセチレン誘導体、ポリトリフェニルアミン誘導体、トリフェニルアミンとフェニレンビニレンとの共重合誘導体、チオフェンとフェニレンとの共重合誘導体、チオフェンとチエノチオフェンとの共重合誘導体、およびチオフェンとフルオレンとの共重合誘導体等を挙げることができる。
一方、上記低分子系液晶性有機半導体材料としては、例えば、オリゴカルコゲノフェン誘導体、オリゴフェニレン誘導体、カルコゲノフェンとフェニレンのコオリゴマー誘導体、テトラチエノアセン等のカルコゲノフェンの縮環化合物誘導体、カルコゲノフェンとフェニレンの縮環化合物誘導体、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ピレン、トリフェニレン、コロネン等の縮合多環炭化水素誘導体、カルコゲノフェンと縮合多環炭化水素とのコオリゴマー誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラチオフルバレン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、チアゾロチアゾール誘導体、アントラジチフォエン誘導体、ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、ジナフトチエノチオフェン誘導体およびフラーレン誘導体等を挙げることができる。
中でも、本態様においては、本工程に用いられる液晶性有機半導体材料が上記低分子系液晶性有機半導体材料であることが好ましい。
なお、本工程に用いられる液晶性有機半導体材料は、1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。
本工程において有機半導体層を形成する方法としては、所望の液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を、上記ソース電極および上記ドレイン電極を覆うように上記配向層上に形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層形成用塗工液を用い、当該有機半導体層形成用塗工液を上記ソース電極および上記ドレイン電極が形成された上記配向層上の全面に、例えば、スピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクトプリント法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等のウェットプロセスによって塗布する方法、また、真空蒸着法等のドライプロセスによって、液晶性有機半導体材料を上記ソース電極および上記ドレイン電極が形成された上記配向層上の全面に成膜する方法等を挙げることができる。中でも、本態様においては、有機半導体層を塗布形成することが好ましい。有機半導体素子の生産性の向上および製造コストの削減を図ることができるからである。
本工程により形成される有機半導体層の厚みとしては、上記液晶性有機半導体材料の種類等に応じて、所望の半導体特性を備える有機半導体層を形成できる範囲であれば特に限定されないが、通常、1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、5nm〜500nmの範囲内であることがより好ましく、10nm〜300nmの範囲内であることがさらに好ましい。
3.有機半導体層熱転写工程
次に、本態様における有機半導体層熱転写工程について説明する。本工程は、基板、ならびに上記基板上にパターン状に形成された親液部および撥液部を有する有機半導体層転写基板を用い、上記撥液部が上記有機半導体層上の少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に配置されるように、上記有機半導体層転写基板を上記有機半導体層上に積層してから、上記有機半導体層を上記親液部上に、上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する工程である。
(1)有機半導体層転写基板
まず、本工程に用いられる有機半導体転写基板について説明する。本工程に用いられる有機半導体層転写基板は、基板、ならびに上記基板上に形成された親液部および撥液部を有するものである。
(a)親液部および撥液部
本態様に用いられる親液部および撥液部は、上記有機半導体層の濡れ性が異なるものであり、上記配向層を基準としたときの表面エネルギーの大小関係で定義されるものである。すなわち、上記親液部は、上記配向層よりも表面エネルギーが高く、濡れやすいものであり、上記撥液部は、上記配向層よりも表面エネルギーが低く、濡れにくいものである。表面エネルギーが、親液部>配向層>撥液部の関係を満たすことにより、本工程において有機半導体層の熱転写をする際に、配向層よりも表面エネルギーが高い親液部上には有機半導体層が熱転写されるが、配向層よりも表面エネルギーが低い撥液部上には有機半導体層が熱転写されず、有機半導体層が配向層上に残る。したがって、上記撥液部を少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上の有機半導体層と接するようにすることで、有機半導体層の熱転写時に、上記撥液部上には有機半導体層が熱転写されず、有機半導体層除去工程において、配向層上の少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に有機半導体層を残すことが可能となる。
本態様に用いられる親液部の表面エネルギーは、上記配向層の表面エネルギーよりも高いものである。親液部の表面エネルギーと、配向層の表面エネルギーとの差は、特に限定されるものではなく、有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類や液晶相温度等に応じて適宜決定することができるが、中でも、0.1mN/m以上であることが好ましく、0.5mN/m以上であることがより好ましく、1.0mN/m以上であることがさらに好ましい。表面エネルギー差が上記範囲内であることにより、本態様の有機半導体素子の製造方法において、上記有機半導体層を上記親液部上に熱転写する際の転写性を向上させることが可能になるからである。
一方、本態様に用いられる撥液部の表面エネルギーは、上記配向層の表面エネルギーよりも低いものである。撥液部の表面エネルギーと、配向層の表面エネルギーとの差は、特に限定されるものではなく、有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類や液晶相温度等に応じて適宜決定することができるが、中でも、0.1mN/m以上であることが好ましく、0.5mN/m以上であることがより好ましく、1.0mN/m以上であることがさらに好ましい。表面エネルギー差が上記範囲内であることにより、本態様の有機半導体素子の製造方法において、上記有機半導体層を上記親液部上に熱転写する際に、上記撥液部に接する上記有機半導体層を上記撥液部上に熱転写しにくく、上記配向層上に残しやすくなるからである。
本態様に用いられる親液部および撥液部は、基板上にパターン状に形成されたものであるが、上記親液部および上記撥液部のパターン形状としては、少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域を覆うことができる上記撥液部と、上記撥液部を囲む上記親液部とが配置されたものであれば特に限定されるものではない。
また、本態様に用いられる親液部の厚みは、本工程において、有機半導体層が親液部上に熱転写され、有機半導体層除去工程において、親液部上に熱転写された有機半導体層を配向層から除去することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、親液部の構成材料や有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜決定することができる。また、本態様に用いられる撥液部の厚みは、本工程において、有機半導体層が撥液部上に熱転写されず、有機半導体層除去工程において、撥液部上に熱転写されなかった有機半導体層を配向層上に残すことができる厚みであれば特に限定されるものではなく、撥液部の構成材料や有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜決定することができるが、有機半導体層をパターニングする観点から、上記親液部との膜厚差が小さいことが好ましい。中でも、本態様においては、上記親液部および上記撥液部の膜厚差が、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。なお、上記親液部および上記撥液部の厚みは、通常、1nm〜2μmの範囲内である。
上記親液部および上記撥液部を形成する方法としては、所望のパターン状の親液部および撥液部を基板上に形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、プラズマCVD法、熱CVD法、レーザーCVD法等のCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法等のドライプロセス、および、電解メッキ法、浸漬メッキ法、無電解メッキ法、ゾルゲル法、有機金属分解(MOD)法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクトプリント法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等のウェットプロセスを挙げることができる。
上記方法に用いられる親液部の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリパラキシレン等の有機材料や、SiO2(二酸化ケイ素)、SiNx(窒化ケイ素)、Al2O3(酸化アルミニウム)等の無機材料を挙げることができる。一方、上記方法に用いられる撥液部の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリパラキシレン、もしくはフッ素系やシリコーン系の添加剤が入った樹脂等の有機材料や、SiO2、SiNx、Al2O3等の無機材料を挙げることができる。
また、上記親液部および上記撥液部の形成方法として、上記配向層よりも表面エネルギーが高い基板を用い、上記基板上に、上記配向層よりも表面エネルギーが低い撥液部のみをパターン状に形成し、上記撥液部が形成されずに上記基板表面が露出している領域を親液部とする方法を用いてもよい。
また、上記親液部および上記撥液部の形成方法として、上記配向層よりも表面エネルギーが低い基板を用い、上記基板上に、上記配向層よりも表面エネルギーが高い親液部のみをパターン状に形成し、上記親液部が形成されずに上記基板表面が露出している領域を撥液部とする方法を用いてもよい。
また、上記親液部および上記撥液部の形成方法として、表面処理を施すことによって表面エネルギーが配向層に対して相対的に高い親液部と相対的に低い撥液部とを形成することが可能な樹脂を基板上にスピンコート等の塗布手段や各種の印刷手段で塗布し、その後、上記樹脂に所定の表面処理を施す方法を用いてもよく、その際の撥液部の形成方法として、例えば、シランカップリング剤等を用いた気相、浸漬法による表面処理、放電プラズマとCF4ガスとを用いた表面処理等を挙げることができ、また、親液部の形成方法として、例えば、UVオゾン、VUV等を用いた表面処理等を挙げることができる。
(b)基板
本態様に用いられる基板は、上述した親液部および撥液部を支持するものである。上記基板としては、上記親液部および上記撥液部を形成し、支持することができるものであれば特に限定されるものではない。このような基板としては、例えば、シリコーン系樹脂基板、フッ素系樹脂基板、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブダジエンゴム等に代表される弾性ゴム基板、または、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニルスルフィド、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなる基板を挙げることができる。さらに、無機材料からなる基板であってもよい。
また、上記基板の厚みは、通常、1μm〜700μmの範囲内であることが好ましい。
(2)有機半導体層の熱転写方法
次に、本工程において有機半導体層転写基板の親液部上に有機半導体層を熱転写する方法について説明する。本工程において有機半導体層を上記親液部上に熱転写する方法は、有機半導体層転写基板の撥液部が有機半導体層上の少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に配置されるように、上記有機半導体層転写基板を上記有機半導体層上に積層してから、上記有機半導体層に含まれる液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写することを特徴とするものである。撥液部が有機半導体層上の少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に配置されるように、有機半導体層転写基板を有機半導体層上に積層することで、本工程において有機半導体層を親液部上に熱転写する際に、撥液部上には有機半導体層が熱転写されないため、有機半導体層除去工程において親液部上に熱転写された有機半導体層を配向層から除去することで、配向層上の少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に有機半導体層を残すことができ、有機半導体層を精度高くパターニングすることができる。また、有機半導体層を熱転写する際の熱転写温度を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度とすることで、有機半導体層を親液部上により密着させることができ、転写性を向上させることができる。なお、液晶相温度については、上記「2.有機半導体層形成工程」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本工程において上記有機半導体層を熱転写する温度としては、上記液晶相温度に該当する温度であれば特に限定されるものではなく、具体的な熱転写温度は液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜決定することができるものである。有機半導体層の熱転写温度が液晶相温度であると、有機半導体層が液晶相に相転移して半液体状態となり、有機半導体層を挟む上下部材の密着性が向上するため、有機半導体層を親液部上により密着させることができると考えられる。
本工程において上記有機半導体層を熱転写する際には、上記有機半導体層を上記液晶相温度に加熱するが、このとき、上記有機半導体層の全面を加熱する。本態様においては、有機半導体層を全面加熱することにより、有機半導体層の親液部上への熱転写と、撥液部上に熱転写されることなく配向層上に残る有機半導体層、すなわち少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上の有機半導体層に含まれる液晶性有機半導体材料の配向処理とを同時に行うことができる。
4.有機半導体層除去工程
次に、本態様における有機半導体層除去工程について説明する。本工程は、上記液晶相温度よりも低い温度で、上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離することにより、上記親液部上に熱転写された上記有機半導体層を上記配向層から除去する工程である。
本工程においては、上記親液部上に熱転写された上記有機半導体層を上記配向層から除去することで、上記配向層上の少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層を残すことができ、その結果、有機半導体層を精度高くパターニングすることができる。なお、上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層が残っていれば、上記ソース電極および上記ドレイン電極上に上記有機半導体層が残っていてもよく、残っていなくてもよい。
本工程において上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離する際の温度は、上記液晶相温度より低い温度であり、本態様に用いられる液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜選択されるものであるが、通常、液晶相温度よりも10℃以上低い温度であることが好ましい。なお、上記剥離時の温度は、通常、室温付近である。
本工程において上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離する方法としては、上記有機半導体層のパターニングを確実に行うことができる程度に、上記親液部上に熱転写された上記有機半導体層を上記配向層から十分に除去し、かつ、上記撥液部上に熱転写されなかった上記有機半導体層を上記配向層上に十分に残すことができる方法であれば特に限定されるものではない。
5.その他の工程
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも、ソース電極およびドレイン電極形成工程と、有機半導体層形成工程と、有機半導体層熱転写工程と、有機半導体層除去工程とを有するものであるが、必要に応じて他の工程を有していてもよいものである。本態様に用いられる他の工程は、特に限定されるものではなく、本態様において製造される有機半導体素子の用途等に応じて、任意の工程を用いることができる。本態様においては、上記他の工程として、上記ソース電極およびドレイン電極形成工程の前に、基材と、上記基材上に形成されたゲート電極と、上記ゲート電極を覆うように上記基材上に形成されたゲート絶縁層とを有する電極積層体を用い、上記電極積層体の上記ゲート絶縁層上に上記配向層を形成する配向層形成工程を有していてもよい。上記配向層形成工程を有することにより、ボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機半導体素子を形成することができる。
本態様の有機半導体素子の製造方法が、上記配向層形成工程を有する場合、上述した図1および図2に例示するように、基材11上に形成されたゲート電極12と、ゲート電極12を覆うように基材11上に形成されたゲート絶縁層13とを有する電極積層体14を用い(図1(a))、電極積層体14のゲート絶縁層13上に、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層1を形成し(図1(b)、配向層形成工程)、配向層1上にソース電極2およびドレイン電極3を形成し(図1(c)、ソース電極およびドレイン電極形成工程)、ソース電極2およびドレイン電極3を覆うように配向層1上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層4を形成し(図1(d)、有機半導体層形成工程)、基板5、ならびに基板5上にパターン状に形成された親液部6および撥液部7を有する有機半導体層転写基板8を用い(図1(e))、撥液部7が有機半導体層4上の少なくともソース電極2およびドレイン電極3間のチャネル領域C上に配置されるように、有機半導体層転写基板8を有機半導体層4上に積層してから、有機半導体層4を親液部6上に、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写し(図2(a)、有機半導体層熱転写工程)、液晶相温度よりも低い温度で、有機半導体層転写基板8を配向層1から剥離することにより、親液部6上に熱転写された有機半導体層4を配向層1から除去し(図2(b)、有機半導体層除去工程)、有機半導体素子10を製造する(図2(b))。
電極積層体に用いられる基材は、本態様により製造される有機半導体素子の用途等に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではない。したがって、上記基材は、可撓性を有するフレキシブル基板であってもよく、可撓性を有しないリジット基板であってもよい。上記基材の具体例としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化樹脂、フェノール樹脂等からなるものや、ガラス基板、SUS基板等を挙げることができる。
また、上記基材の厚みは、上記基材の種類等に応じて適宜決定されるものであるが、通常、1mm以下であることが好ましく、中でも、1μm〜700μmの範囲内であることが好ましい。
電極積層体に用いられるゲート電極は、上述した基材上に形成されるものである。上記ゲート電極は、上記基材上に所定のパターン状に形成されるのが通常である。上記ゲート電極としては、所望の導電性を備える導電性材料からなるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に有機トランジスタのゲート電極に用いられる導電性材料を用いることができる。このような導電性材料としては、例えば、Ta、Ti、Al、Zr、Cr、Nb、Hf、Mo、Au、Ag、Pt、Mo−Ta合金、ITO、IZO等の無機材料、および、PEDOT/PSS等の導電性を有する有機材料を挙げることができる。
また、上記ゲート電極の厚みは、当該ゲート電極を形成するために用いられる導電性材料の種類等に応じて、所望の導電性を達成できる範囲内で適宜決定されるものであるが、通常、1nm〜1μmの範囲内であることが好ましい。
電極積層体に用いられるゲート絶縁層は、上記ゲート電極を覆うように上記基材上に形成されるものである。また、本態様により製造される有機半導体素子において、ソース電極およびドレイン電極と、ゲート電極とを絶縁する機能を有するものである。上記ゲート絶縁層を構成する材料としては、所望の絶縁性を有する絶縁性材料であれば特に限定されるものではない。このような絶縁性材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリパラキシレン等の有機材料や、SiO2、SiNx、Al2O3等の無機材料を挙げることができる。なお、上記ゲート絶縁層に用いられる絶縁性材料は、1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。
また、上記ゲート絶縁層の厚みは、当該ゲート絶縁層を形成するために用いられる絶縁性材料の種類等に応じて、所望の絶縁性を達成できる範囲内で適宜決定されるものであるが、通常、10nm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
上記配向層形成工程において配向層を形成する方法としては、液晶性有機半導体材料を所望の方向に配向させる配向層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、スピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、浸漬法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクトプリント法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等を挙げることができる。
なお、上記配向層形成工程において、配向層を形成するために用いられる構成材料、および形成される配向層の厚みについては、上記「1.ソース電極およびドレイン電極形成工程」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様においては、上記他の工程として、上記ソース電極およびドレイン電極形成工程の前に、基材を用い、上記基材上に上記配向層を形成する配向層形成工程と、上記有機半導体層除去工程の後に、上記有機半導体層を覆うように上記配向層上にゲート絶縁層を形成し、上記ゲート絶縁層上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程とを有していてもよい。上記配向層形成工程および上記ゲート電極形成工程を有することにより、トップゲート・ボトムコンタクト型の有機半導体素子を形成することができる。
本態様の有機半導体素子の製造方法が、上記配向層形成工程および上記ゲート電極形成工程を有する場合、図3および図4に例示するように、基材11を用い(図3(a))、基材11上に液晶性有機半導体材料を配向させる配向層1を形成し(図3(b)、配向層形成工程)、配向層1上にソース電極2およびドレイン電極3を形成し(図3(c)、ソース電極およびドレイン電極形成工程)、ソース電極2およびドレイン電極3を覆うように配向層1上に、有機半導体層4を形成し(図3(d)、有機半導体層形成工程)、基板5、ならびに基板5上にパターン状に形成された親液部6および撥液部7を有する有機半導体層転写基板8を用い(図3(e))、撥液部7が有機半導体層4上の少なくともソース電極2およびドレイン電極3間のチャネル領域C上に配置されるように、有機半導体層転写基板8を有機半導体層4上に積層してから、有機半導体層4を親液部6上に、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写し(図4(a)、有機半導体層熱転写工程)、液晶相温度よりも低い温度で、有機半導体層転写基板8を配向層1から剥離することにより、親液部6上に熱転写された有機半導体層4を配向層1から除去し(図4(b)、有機半導体層除去工程)、有機半導体層4を覆うように配向層1上に、ゲート絶縁層13を形成し、ゲート絶縁層13上にゲート電極12を形成し(図4(c)、ゲート電極形成工程)、有機半導体素子10を製造する(図4(c))。なお、図3および図4は、本態様の有機半導体素子の製造方法の他の例を示す工程図である。
なお、上記配向層形成工程に用いられる基材については、上述した電極積層体に用いられる基材と同様である。また、上記配向層形成工程において、配向層を形成するために用いられる構成材料、および形成される配向層の厚みについては、上記「1.ソース電極およびドレイン電極形成工程」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記ゲート電極形成工程においてゲート絶縁層を形成する方法としては、構成材料として使用する絶縁性材料の種類に応じて、所望の絶縁性を備えるゲート絶縁層を、上記有機半導体層を覆うように上記配向層上に形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、絶縁性材料として有機材料を用いる場合には、有機材料を溶媒に溶解させたゲート絶縁層形成用塗工液を調製し、当該塗工液を、上記有機半導体層を覆うように塗工する方法を挙げることができ、絶縁性材料として無機材料を用いる場合には、CVD法等を用いることができる。
なお、上記ゲート電極形成工程において、ゲート絶縁層を形成するために用いられる絶縁性材料、および形成されるゲート絶縁層の厚みについては、上述した内容と同様である。
一方、上記ゲート電極工程においてゲート電極を形成する方法としては、構成材料として使用する導電性材料の種類に応じて、所望の形態のゲート電極を形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、プラズマCVD法、熱CVD法、レーザーCVD法等のCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法等のドライプロセス、および、電解メッキ法、浸漬メッキ法、無電解メッキ法、ゾルゲル法、有機金属分解(MOD)法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクトプリント法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等のウェットプロセスを挙げることができる。
また、上記ゲート電極形成工程においては、通常、上記ゲート絶縁層上にパターン状にゲート電極を形成するが、パターン状にゲート電極を形成する方法としては、上述した方法によってゲート絶縁層の全面にゲート電極を形成した後、これをパターニングする方法であってもよく、または、ゲート絶縁層上に直接パターン状のゲート電極を形成する方法であってもよい。
ここで、上記ゲート電極をパターニングする方法としては、通常、リソグラフィー法が用いられ、中でも、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法が好適に用いられる。一方、上記パターン状のゲート電極を直接形成する方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法等の印刷法や、マスク蒸着法等が好適に用いられる。
なお、上記ゲート電極形成工程において、ゲート電極を形成するために用いられる導電性材料、および形成されるゲート電極の厚みについては、上述した内容と同様である。
さらに、本態様においては、本態様により製造される有機半導体素子がボトムゲート・ボトムコンタクト型のものである場合、上記他の工程として、上記有機半導体層除去工程の後に、上記有機半導体層を覆うように上記配向層上にパッシベーション層を形成するパッシベーション層形成工程を有していてもよく、本態様により製造される有機半導体素子がトップゲート・ボトムコンタクト型のものである場合、上記他の工程として、上記ゲート電極形成工程の後に、上記ゲート電極を覆うように上記ゲート絶縁層上にパッシベーション層を形成するパッシベーション層形成工程を有していてもよい。有機半導体素子の経時劣化を防止する機能を有するパッシベーション層を形成することで、本態様により製造される有機半導体素子を耐久性に優れたものにすることができる。
上記パッシベーション層形成工程に用いられるパッシベーション層の構成材料としては、本態様により製造される有機半導体素子において、有機半導体層が空気中に含有される水分等に曝露されることを所望の程度に防止できるものであれば特に限定されるものではない。このような材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、ビニルアセテート系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の樹脂材料を挙げることができる。
上記パッシベーション層形成工程においてパッシベーション層を形成する方法としては、所望の保護機能を備えるパッシベーション層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。中でも、本工程においては、樹脂材料を溶媒に溶解したパッシベーション層形成用塗工液を用い、これを所望の領域に塗工する方法が好適に用いられる。このような方法としては、印刷法を用い、上記パッシベーション層形成用塗工液をパターン状に印刷する方法と、上記パッシベーション層形成用塗工液を全面に塗工することにより、パターニングされていないパッシベーション層を形成する方法とを挙げることができる。本工程においては、上記のいずれの方法であっても好適に用いることができる。
また、上記パッシベーション層形成工程により形成されるパッシベーション層の厚みは、構成材料の種類等に応じて所望の耐久性を実現できる範囲で適宜決定されるものであり、特に限定されないが、通常、1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
B.第2態様の有機半導体素子の製造方法
次に、本発明の第2態様の有機半導体素子の製造方法について説明する。本態様の有機半導体素子の製造方法は、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層上にソース電極およびドレイン電極を形成するソース電極およびドレイン電極形成工程と、基板、ならびに上記基板上にパターン状に形成された親液部および撥液部を有する有機半導体層転写基板を用い、上記親液部および上記撥液部上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、上記撥液部上の上記有機半導体層が少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に配置されるように、上記有機半導体層が形成された上記有機半導体層転写基板を上記ソース電極および上記ドレイン電極が形成された上記配向層上に積層してから、上記撥液部上の上記有機半導体層を上記配向層上に、上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する有機半導体層熱転写工程と、上記液晶相温度よりも低い温度で、上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離することにより、上記配向層上に熱転写された上記撥液部上の上記有機半導体層を上記撥液部から除去する有機半導体層除去工程と、を有することを特徴とするものである。
このような本態様の有機半導体素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図5および図6は、本発明の第2態様の有機半導体素子の製造方法の一例を示す工程図である。図5および図6に例示するように、本態様の有機半導体素子の製造方法は、基材11と、基材11上に形成されたゲート電極12と、ゲート電極12を覆うように基材11上に形成されたゲート絶縁層13とを有する電極積層体14を用い(図5(a))、電極積層体14のゲート絶縁層13上に、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層1を形成する配向層形成工程(図5(b))と、配向層1上にソース電極2およびドレイン電極3を形成するソース電極およびドレイン電極形成工程(図5(c))と、基板5、ならびに基板5上にパターン状に形成された親液部6および撥液部7を有する有機半導体層転写基板8を用い(図5(d))、親液部6および撥液部7上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層4を形成する有機半導体層形成工程(図5(e))と、撥液部7上の有機半導体層4上が少なくともソース電極2およびドレイン電極3間のチャネル領域C上に配置されるように、有機半導体層4が形成された有機半導体層転写基板8をソース電極2およびドレイン電極3が形成された配向層1上に積層してから、撥液部7上の有機半導体層4を配向層1上に、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する有機半導体層熱転写工程(図6(a))と、液晶相温度よりも低い温度で、有機半導体層転写基板8を配向層1から剥離することにより、配向層1上に熱転写された撥液部7上の有機半導体層4を撥液部7から除去する有機半導体層除去工程(図6(b))と、を有することにより、有機半導体素子10を製造するものである(図6(b))。
本態様によれば、予め親液部および撥液部を設けた有機半導体層転写基板を用いて、上記撥液部上の有機半導体層を配向層上に熱転写し、上記配向層上に熱転写された上記撥液部上の上記有機半導体層を上記撥液部から除去することで、少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層を残すように有機半導体層をパターニングすることができるため、パターン加熱および凹凸構造等が不要となり、有機半導体層のパターン精度を向上させることができるとともに、手間を削減することができる。このとき、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写を行うことにより、上記撥液部上の上記有機半導体層を上記配向層上により密着させることができ、転写性を向上させることができる。
また、上記有機半導体層を構成する材料として、規則的に配向させることが可能な液晶性有機半導体材料が用いられ、かつ、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層上に上記有機半導体層が形成されていることから、上記有機半導体層を液晶相温度に加熱することで上記液晶性有機半導体材料の配向処理を上記有機半導体層のパターニングと同時に行うことができ、トランジスタ性能が向上した有機半導体素子を簡便な工程で手間なく得ることができる。
このようなことから、本態様によれば、有機半導体層のパターン精度が良好であり、トランジスタ特性に優れた有機半導体素子を容易に製造することができる。
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも、ソース電極およびドレイン電極形成工程と、有機半導体層形成工程と、有機半導体層熱転写工程と、有機半導体層除去工程とを有するものであり、必要に応じて他の任意の工程を有していてもよいものである。
以下、本態様の有機半導体素子の製造方法における各工程について説明する。
なお、本態様におけるソース電極およびドレイン電極形成工程については、上記「A.第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明した工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
1.有機半導体層形成工程
まず、本態様における有機半導体層形成工程について説明する。本工程は、基板、ならびに上記基板上にパターン状に形成された親液部および撥液部を有する有機半導体層転写基板を用い、上記親液部および上記撥液部上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を形成する工程である。
本工程に用いられる有機半導体層転写基板は、基板、ならびに上記基板上にパターン状に形成された親液部および撥液部を有するものである。本態様に用いられる親液部および撥液部は、本工程により形成される有機半導体層の濡れ性が異なるものであり、上記配向層を基準としたときの表面エネルギーの大小関係で定義されるものである。すなわち、上記親液部は、上記配向層よりも表面エネルギーが高く、濡れやすいものであり、上記撥液部は、上記配向層よりも表面エネルギーが低く、濡れにくいものである。表面エネルギーが、親液部>配向層>撥液部の関係を満たすことにより、有機半導体層熱転写工程において有機半導体層の熱転写をする際に、配向層よりも表面エネルギーが低い撥液部上の有機半導体層は配向層上に熱転写されるが、配向層よりも表面エネルギーが高い親液部上の有機半導体層は配向層上に熱転写されず、上記親液部上に残る。したがって、上記撥液部上の有機半導体層を少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に配置することで、有機半導体層熱転写工程において、上記撥液部上の有機半導体層が配向層上に熱転写され、有機半導体層除去工程において、配向層上の少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に有機半導体層を残すことが可能となる。
本態様に用いられる撥液部の表面エネルギーは、上記配向層の表面エネルギーよりも低いものである。撥液部の表面エネルギーと、配向層の表面エネルギーとの差は、特に限定されるものではなく、有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類や液晶相温度等に応じて適宜決定することができるが、中でも、0.1mN/m以上であることが好ましく、0.5mN/m以上であることがより好ましく、1.0mN/m以上であることがさらに好ましい。表面エネルギー差が上記範囲内であることにより、本態様の有機半導体素子の製造方法において、上記撥液部上の上記有機半導体層を上記配向層上に熱転写する際の転写性を向上させることが可能になるからである。
一方、本態様に用いられる親液部の表面エネルギーは、上記配向層の表面エネルギーよりも高いものである。親液部の表面エネルギーと、配向層の表面エネルギーとの差は、特に限定されるものではなく、有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類や液晶相温度等に応じて適宜決定することができるが、中でも、0.1mN/m以上であることが好ましく、0.5mN/m以上であることがより好ましく、1.0mN/m以上であることがさらに好ましい。表面エネルギー差が上記範囲内であることにより、本態様の有機半導体素子の製造方法において、上記撥液部上の上記有機半導体層を上記配向層上に熱転写する際に、上記親液部上の上記有機半導体層を上記配向層上に熱転写しにくく、上記親液部上に残しやすくすることができるからである。
また、本態様に用いられる撥液部の厚みは、有機半導体層熱転写工程において、撥液部上の有機半導体層が配向層上に熱転写され、有機半導体層除去工程において、配向層上に熱転写された撥液部上の有機半導体層を撥液部から除去することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、撥液部の構成材料や有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜決定することができる。また、本態様に用いられる親液部の厚みは、有機半導体層熱転写工程において、親液部上の有機半導体層が配向層上に熱転写されず、有機半導体層除去工程において、配向層上に熱転写されなかった親液部上の有機半導体層を親液部上に残すことができる厚みであれば特に限定されるものではなく、親液部の構成材料や有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜決定することができるが、有機半導体層をパターニングする観点から、上記撥液部との膜厚差が小さいことが好ましい。中でも、本態様においては、上記親液部および上記撥液部の膜厚差が、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。なお、上記親液部および上記撥液部の厚みは、通常、1nm〜2μmの範囲内である。
なお、本態様に用いられる親液部および撥液部のパターン形状、形成方法および材料、ならびに本態様に用いられる基板については、上記「A.第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本工程において有機半導体層を形成する方法としては、所望の液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を、有機半導体層転写基板の親液部および撥液部上に形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層形成用塗工液を上記親液部および上記撥液部の全面に塗布するスピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクトプリント法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等のウェットプロセスや、液晶性有機半導体材料を上記親液部および上記撥液部の全面に真空蒸着するドライプロセス等を挙げることができる。
なお、本工程に用いられる液晶性有機半導体材料、および、本工程により形成される有機半導体層の厚みについては、上記「A.第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
2.有機半導体層熱転写工程
次に、本態様における有機半導体層熱転写工程について説明する。本工程は、上記撥液部上の上記有機半導体層が少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に配置されるように、上記有機半導体層が形成された上記有機半導体層転写基板を上記ソース電極および上記ドレイン電極が形成された上記配向層上に積層してから、上記撥液部上の上記有機半導体層を上記配向層上に、上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する工程である。
本工程において撥液部上の有機半導体層を配向層上に熱転写する方法は、有機半導体層転写基板の撥液部上の有機半導体層が少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に配置されるように、上記有機半導体層が形成された上記有機半導体層転写基板を上記ソース電極および上記ドレイン電極が形成された上記配向層上に積層してから、上記有機半導体層に含まれる液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写することを特徴とするものである。撥液部上の有機半導体層が少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に配置されるように、有機半導体層が形成された有機半導体層転写基板をソース電極およびドレイン電極が形成された配向層上に積層することで、本工程において撥液部上の有機半導体層を配向層上に熱転写する際に、配向層上には親液部上の有機半導体層が熱転写されないため、有機半導体層除去工程において配向層上に熱転写された撥液部上の有機半導体層を撥液部から除去することで、配向層上の少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に有機半導体層を残すことができ、有機半導体層を精度高くパターニングすることができる。また、有機半導体層を熱転写する際の熱転写温度を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度とすることで、撥液部上の有機半導体層を配向層上により密着させることができ、転写性を向上させることができる。
本工程において上記撥液部上の上記有機半導体層を熱転写する温度としては、上記液晶相温度に該当する温度であれば特に限定されるものではなく、具体的な熱転写温度は液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜決定することができるものである。有機半導体層の熱転写温度が液晶相温度であると、有機半導体層が液晶相に相転移して半液体状態となり、有機半導体層を挟む上下部材の密着性が向上するため、撥液部上の有機半導体層を配向層上により密着させることができると考えられる。
本工程において上記撥液部上の上記有機半導体層を熱転写する際には、上記有機半導体層を上記液晶相温度に加熱するが、このとき、上記有機半導体層の全面を加熱する。本態様においては、有機半導体層を全面加熱することにより、撥液部上の有機半導体層の配向層上への熱転写と、配向層上に熱転写された撥液部上の有機半導体層、すなわち少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上の有機半導体層に含まれる液晶性有機半導体材料の配向処理とを同時に行うことができる。
3.有機半導体層除去工程
次に、本態様における有機半導体層除去工程について説明する。本工程は、上記液晶相温度よりも低い温度で、上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離することにより、上記配向層上に熱転写された上記撥液部上の上記有機半導体層を上記撥液部から除去する工程である。
本工程においては、上記配向層上に熱転写された上記撥液部上の上記有機半導体層を上記撥液部から除去することで、配向層上の少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層を残すことができ、その結果、有機半導体層を精度高くパターニングすることができる。なお、上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層が残っていれば、上記ソース電極および上記ドレイン電極上に上記有機半導体層が残っていてもよく、残っていなくてもよい。
本工程において上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離する際の温度は、上記液晶相温度より低い温度であり、本態様に用いられる液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜選択されるものであるが、通常、液晶相温度よりも10℃以上低い温度であることが好ましい。なお、上記剥離時の温度は、通常、室温付近である。
本工程において上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離する方法としては、上記有機半導体層のパターニングを確実に行うことができる程度に、上記配向層上に熱転写された上記撥液部上の上記有機半導体層を上記撥液部から十分に除去し、かつ、上記配向層上に熱転写されなかった上記親液部上の上記有機半導体層を上記親液部上に十分に残すことができる方法であれば特に限定されるものではない。
4.その他の工程
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも、ソース電極およびドレイン電極形成工程と、有機半導体層形成工程と、有機半導体層熱転写工程と、有機半導体層除去工程とを有するものであるが、必要に応じて他の工程を有していてもよいものである。本態様に用いられる他の工程は、特に限定されるものではなく、本態様において製造される有機半導体素子の用途等に応じて、任意の工程を用いることができる。なお、本態様に用いられる他の工程については、上記「A.第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明した工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
C.第3態様の有機半導体素子の製造方法
次に、本発明の第3態様の有機半導体素子の製造方法について説明する。本態様の有機半導体素子の製造方法は、パターン状に形成された親液部および撥液部を有し、かつ液晶性有機半導体材料を配向させる配向層を用い、少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域が上記親液部上に配置されるように、上記配向層上にソース電極およびドレイン電極を形成するソース電極およびドレイン電極形成工程と、上記ソース電極および上記ドレイン電極を覆うように上記配向層上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、基板を有する有機半導体層転写基板を用い、上記基板が上記有機半導体層に接するように、上記有機半導体層上に上記有機半導体層転写基板を積層してから、上記撥液部上の上記有機半導体層を上記基板上に、上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する有機半導体層熱転写工程と、上記液晶相温度よりも低い温度で、上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離することにより、上記基板上に熱転写された上記撥液部上の上記有機半導体層を上記撥液部から除去する有機半導体層除去工程と、を有することを特徴とするものである。
このような本態様の有機半導体素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図7および図8は、本発明の第3態様の有機半導体素子の製造方法の一例を示す工程図である。図7および図8に例示するように、本態様の有機半導体素子の製造方法は、基材11と、基材11上に形成されたゲート電極12と、ゲート電極12を覆うように基材11上に形成されたゲート絶縁層13とを有する電極積層体14を用い(図7(a))、電極積層体14のゲート絶縁層13上に、パターン状に形成された親液部6および撥液部7を有し、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層1を形成する配向層形成工程(図7(b))と、配向層1を用い、少なくともソース電極2およびドレイン電極3間のチャネル領域Cが親液部6上に配置されるように、配向層1上にソース電極2およびドレイン電極3を形成するソース電極およびドレイン電極形成工程(図7(c))と、ソース電極2およびドレイン電極3を覆うように配向層1上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層4を形成する有機半導体層形成工程(図7(d))と、基板5を有する有機半導体層転写基板8を用い(図7(e))、基板5が有機半導体層4に接するように、有機半導体層4上に有機半導体層転写基板8を積層してから、撥液部7上の有機半導体層4を基板5上に、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する有機半導体層熱転写工程(図8(a))と、液晶相温度よりも低い温度で、有機半導体層転写基板8を配向層1から剥離することにより、基板5上に熱転写された撥液部7上の有機半導体層4を撥液部7から除去する有機半導体層除去工程(図8(b))と、を有することにより、有機半導体素子10を製造するものである(図8(b))。
本態様によれば、予め親液部および撥液部を設けた配向層を用いて、上記撥液部上の有機半導体層を有機半導体層転写基板が有する基板上に熱転写し、上記基板上に熱転写された上記撥液部上の上記有機半導体層を上記撥液部から除去することで、少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層を残すように有機半導体層をパターニングすることができるため、パターン加熱および凹凸構造等が不要となり、有機半導体層のパターン精度を向上させることができるとともに、手間を削減することができる。このとき、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写を行うことにより、上記撥液部上の上記有機半導体層を上記基板上により密着させることができ、転写性を向上させることができる。
また、上記有機半導体層を構成する材料として、規則的に配向させることが可能な液晶性有機半導体材料が用いられ、かつ、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層上に上記有機半導体層が形成されていることから、上記有機半導体層を液晶相温度に加熱することで上記液晶性有機半導体材料の配向処理を上記有機半導体層のパターニングと同時に行うことができ、トランジスタ性能が向上した有機半導体素子を簡便な工程で手間なく得ることができる。
このようなことから、本態様によれば、有機半導体層のパターン精度が良好であり、トランジスタ特性に優れた有機半導体素子を容易に製造することができる。
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも、ソース電極およびドレイン電極形成工程と、有機半導体層形成工程と、有機半導体層熱転写工程と、有機半導体層除去工程とを有するものであり、必要に応じて他の任意の工程を有していてもよいものである。
以下、本態様の有機半導体素子の製造方法における各工程について説明する。
1.ソース電極およびドレイン電極形成工程
まず、本態様におけるソース電極およびドレイン電極形成工程について説明する。本工程は、パターン状に形成された親液部および撥液部を有し、かつ液晶性有機半導体材料を配向させる配向層を用い、少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域が上記親液部上に配置されるように、上記配向層上にソース電極およびドレイン電極を形成する工程である。
本工程に用いられる配向層は、パターン状に形成された親液部および撥液部を有するものである。本態様に用いられる親液部および撥液部は、有機半導体層形成工程により形成される有機半導体層の濡れ性が異なるものであり、有機半導体層熱転写工程に用いられる有機半導体層転写基板が有する基板を基準としたときの表面エネルギーの大小関係で定義されるものである。すなわち、上記親液部は、上記基板よりも表面エネルギーが高く、濡れやすいものであり、上記撥液部は、上記基板よりも表面エネルギーが低く、濡れにくいものである。なお、上記基板上に、表面エネルギーを調整する機能層が形成されている場合には、上記機能層を基準とする。表面エネルギーが、親液部>基板>撥液部の関係を満たすことにより、有機半導体層熱転写工程において有機半導体層の熱転写をする際に、基板よりも表面エネルギーが低い撥液部上の有機半導体層は基板上に熱転写されるが、基板よりも表面エネルギーが高い親液部上の有機半導体層は基板上に熱転写されず、上記親液部上に残る。したがって、上記親液部上に少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域を配置することで、有機半導体層熱転写工程において、上記撥液部上の有機半導体層が基板上に熱転写され、有機半導体層除去工程において、配向層上の少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に有機半導体層を残すことが可能となる。
なお、本態様においては、上記親液部は、液晶性有機半導体材料を配向させる機能を有するものであり、上記撥液部は、液晶性有機半導体材料を配向させる機能を有するものであってもよく、有しないものであってもよい。
本態様に用いられる撥液部の表面エネルギーは、有機半導体層転写基板が有する基板の表面エネルギーよりも低いものである。撥液部の表面エネルギーと、基板の表面エネルギーとの差は、特に限定されるものではなく、有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類や液晶相温度等に応じて適宜決定することができるが、中でも、0.1mN/m以上であることが好ましく、0.5mN/m以上であることがより好ましく、1.0mN/m以上であることがさらに好ましい。表面エネルギー差が上記範囲内であることにより、本態様の有機半導体素子の製造方法において、上記撥液部上の上記有機半導体層を上記基板上に熱転写する際の転写性を向上させることが可能になるからである。
一方、本態様に用いられる親液部の表面エネルギーは、有機半導体層転写基板が有する基板の表面エネルギーよりも高いものである。親液部の表面エネルギーと、基板の表面エネルギーとの差は、特に限定されるものではなく、有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類や液晶相温度等に応じて適宜決定することができるが、中でも、0.1mN/m以上であることが好ましく、0.5mN/m以上であることがより好ましく、1.0mN/m以上であることがさらに好ましい。表面エネルギー差が上記範囲内であることにより、本態様の有機半導体素子の製造方法において、上記撥液部上の上記有機半導体層を上記基板上に熱転写する際に、上記親液部上の上記有機半導体層を上記基板上に熱転写しにくく、上記親液部上に残しやすくすることができるからである。
本態様に用いられる親液部および撥液部は、パターン状に形成されたものであるが、上記親液部および上記撥液部のパターン形状としては、少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域を覆うことができる上記親液部と、上記親液部を囲む上記撥液部とが配置されたものであれば特に限定されるものではない。
本態様に用いられる撥液部の厚みは、有機半導体層熱転写工程において、撥液部上の有機半導体層が基板上に熱転写され、有機半導体層除去工程において、基板上に熱転写された撥液部上の有機半導体層を撥液部から除去することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、撥液部の構成材料や有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜決定することができる。また、本態様に用いられる親液部の厚みは、有機半導体層熱転写工程において、親液部上の有機半導体層が基板上に熱転写されず、有機半導体層除去工程において、基板上に熱転写されなかった親液部上の有機半導体層を親液部上に残すことができる厚みであれば特に限定されるものではなく、親液部の構成材料や有機半導体層に用いられる液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜決定することができるが、有機半導体層をパターニングする観点から、上記撥液部との膜厚差が小さいことが好ましい。中でも、本態様においては、上記親液部と上記撥液部との膜厚差が、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。なお、上記親液部および上記撥液部の厚みは、通常、1nm〜2μmの範囲内である。
また、本工程に用いられる配向層は、液晶性有機半導体材料を配向させる機能を有するものである。このような配向層としては、上記液晶性有機半導体材料を配向層上において配向層の表面に対して平行方向に配向させる平行配向膜と、上記液晶性有機半導体材料を配向層上において配向層の表面に対して垂直に配向させる垂直配向膜とを挙げることができるが、中でも、垂直配向膜を用いることが好ましい。上記配向層として垂直配向膜を用いることにより、配向層上に形成された有機半導体層の面内方向の移動度を向上させることができ、その結果として、本態様により製造される有機半導体素子のトランジスタ性能をさらに向上させることができるからである。
本工程に用いられる垂直配向膜としては、上記親液部および上記撥液部を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド、フッ素系ポリマー、シランカップリング剤、シリコーン系ポリマー等からなる膜を挙げることができる。一方、本工程に用いられる平行配向膜としては、上記親液部および上記撥液部を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ラビング処理を施すことによりラビング方向に液晶性有機半導体材料を配向させる機能を付与することができるラビング膜や、光反応性材料が用いられ、偏光が照射されることにより一定の方向に液晶性有機半導体材料を配向させる機能を付与することができる光配向膜等を挙げることができる。
上記ラビング膜としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ナイロン等からなる膜を挙げることができる。
また、上記光配向膜としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルシンナメート等からなる膜を挙げることができる。
なお、本工程に用いられる配向層の厚みは、上記親液部および上記撥液部の厚みと同様とすることができる。
本工程においてソース電極およびドレイン電極を形成する方法としては、所望の導電性材料を用いて予め定められた形状のソース電極およびドレイン電極を上記配向層上に形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、プラズマCVD法、熱CVD法、レーザーCVD法等のCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法等のドライプロセス、および、電解メッキ法、浸漬メッキ法、無電解メッキ法、ゾルゲル法、有機金属分解(MOD)法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクトプリント法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等のウェットプロセスを挙げることができる。
また、本工程においては、少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域が上記親液部上に配置されるように、上記配向層上にソース電極およびドレイン電極を形成する。このように、少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域を上記親液部上に配置することで、有機半導体層形成工程において上記チャネル領域上に形成される有機半導体層を、有機半導体層熱転写工程において有機半導体層転写基板が有する基板上に熱転写させず、有機半導体層除去工程において上記チャネル領域上に有機半導体層を残すことができる。
なお、上記ソース電極および上記ドレイン電極間の距離および上記ソース電極および上記ドレイン電極の厚みについては、上記「A.第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
2.有機半導体層形成工程
次に、本態様における有機半導体層形成工程について説明する。本工程は、上記ソース電極および上記ドレイン電極を覆うように上記配向層上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を形成する工程である。
本工程において有機半導体層を形成する方法としては、所望の液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を、上記ソース電極および上記ドレイン電極を覆うように上記配向層上に形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層形成用塗工液を用い、当該有機半導体層形成用塗工液を上記ソース電極および上記ドレイン電極が形成された上記配向層上の全面に、例えば、スピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクトプリント法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等のウェットプロセスによって塗布する方法、また、真空蒸着法等のドライプロセスによって、液晶性有機半導体材料を上記ソース電極および上記ドレイン電極が形成された上記配向層上の全面に成膜する方法等を挙げることができる。
なお、本工程に用いられる液晶性有機半導体材料、および本工程により形成される有機半導体層の厚みについては、上記「A.第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
3.有機半導体層熱転写工程
次に、本態様における有機半導体層熱転写工程について説明する。本工程は、基板を有する有機半導体層転写基板を用い、上記基板が上記有機半導体層に接するように、上記有機半導体層上に上記有機半導体層転写基板を積層してから、上記撥液部上の上記有機半導体層を上記基板上に、上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する工程である。
本工程に用いられる有機半導体層転写基板は、基板を有するものである。上記有機半導体層転写基板が有する基板としては、上記「A.第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明された有機半導体層転写基板が有する基板と同様のものを用いることができる。なお、本態様においては、上記基板の表面に、表面エネルギーを調整する機能層が形成されていてもよい。この場合、上記撥液部上の有機半導体層を上記機能層上に熱転写する。
本工程において撥液部上の有機半導体層を基板上に熱転写する方法は、基板を有する有機半導体層転写基板を用い、上記基板が上記有機半導体層に接するように、有機半導体層上に上記有機半導体層転写基板を積層してから、上記有機半導体層に含まれる液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写することを特徴とするものである。基板が有機半導体層に接するように、有機半導体層上に有機半導体層転写基板を積層することで、本工程において撥液部上の有機半導体層を基板上に熱転写する際に、基板上には親液部上の有機半導体層が熱転写されないため、有機半導体層除去工程において基板上に熱転写された撥液部上の有機半導体層を撥液部から除去することで、親液部上の少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に有機半導体層を残すことができ、有機半導体層を精度高くパターニングすることができる。また、有機半導体層を熱転写する際の熱転写温度を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度とすることで、撥液部上の有機半導体層を基板上により密着させることができ、転写性を向上させることができる。
本工程において上記撥液部上の上記有機半導体層を熱転写する温度としては、上記液晶相温度に該当する温度であれば特に限定されるものではなく、具体的な熱転写温度は液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜決定することができるものである。有機半導体層の熱転写温度が液晶相温度であると、有機半導体層が液晶相に相転移して半液体状態となり、有機半導体層を挟む上下部材の密着性が向上するため、撥液部上の有機半導体層を基板上により密着させることができると考えられる。
本工程において上記撥液部上の上記有機半導体層を熱転写する際には、上記有機半導体層を上記液晶相温度に加熱するが、このとき、上記有機半導体層の全面を加熱する。本態様においては、有機半導体層を全面加熱することにより、撥液部上の有機半導体層の基板上への熱転写と、基板上に熱転写されることなく親液部上に残る有機半導体層、すなわち少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上の有機半導体層に含まれる液晶性有機半導体材料の配向処理とを同時に行うことができる。
4.有機半導体層除去工程
次に、本態様における有機半導体層除去工程について説明する。本工程は、上記液晶相温度よりも低い温度で、上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離することにより、上記基板上に熱転写された上記撥液部上の上記有機半導体層を上記撥液部から除去する工程である。
本工程においては、上記基板上に熱転写された上記撥液部上の上記有機半導体層を上記撥液部から除去することで、上記親液部上の少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層を残すことができ、その結果、有機半導体層を精度高くパターニングすることができる。なお、上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層が残っていれば、上記ソース電極および上記ドレイン電極上に上記有機半導体層が残っていてもよく、残っていなくてもよい。
本工程において上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離する際の温度は、上記液晶相温度より低い温度であり、本態様に用いられる液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜選択されるものであるが、通常、液晶相温度よりも10℃以上低い温度であることが好ましい。なお、上記剥離時の温度は、通常、室温付近である。
本工程において上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離する方法としては、上記有機半導体層のパターニングを確実に行うことができる程度に、上記基板上に熱転写された上記撥液部上の上記有機半導体層を上記撥液部から十分に除去し、かつ、上記基板上に熱転写されなかった上記親液部上の上記有機半導体層を上記親液部上に十分に残すことができる方法であれば特に限定されるものではない。
5.その他の工程
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも、ソース電極およびドレイン電極形成工程と、有機半導体層形成工程と、有機半導体層熱転写工程と、有機半導体層除去工程とを有するものであるが、必要に応じて他の工程を有していてもよいものである。本態様に用いられる他の工程は、特に限定されるものではなく、本態様において製造される有機半導体素子の用途等に応じて、任意の工程を用いることができる。本態様においては、上記他の工程として、上記ソース電極およびドレイン電極形成工程の前に、基材と、上記基材上に形成されたゲート電極と、上記ゲート電極を覆うように上記基材上に形成されたゲート絶縁層とを有する電極積層体を用い、上記電極積層体の上記ゲート絶縁層上に上記配向層を形成する配向層形成工程を有していてもよい。上記配向層形成工程を有することにより、ボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機半導体素子を形成することができる。
本態様の有機半導体素子の製造方法が、上記配向層形成工程を有する場合、上述した図7および図8に例示するように、基材11と、基材11上に形成されたゲート電極12と、ゲート電極12を覆うように基材11上に形成されたゲート絶縁層13とを有する電極積層体14を用い(図7(a))、電極積層体14のゲート絶縁層13上に、パターン状に形成された親液部6および撥液部7を有し、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層1を形成し(図7(b)、配向層形成工程)、配向層1を用い、少なくともソース電極2およびドレイン電極3間のチャネル領域Cが親液部6上に配置されるように、配向層1上にソース電極2およびドレイン電極3を形成し(図7(c)、ソース電極およびドレイン電極形成工程)、ソース電極2およびドレイン電極3を覆うように配向層1上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層4を形成し(図7(d)、有機半導体層形成工程)、基板5を有する有機半導体層転写基板8を用い(図7(e))、基板5が有機半導体層4に接するように、有機半導体層4上に有機半導体層転写基板8を積層してから、撥液部7上の有機半導体層4を基板5上に、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写し(図8(a)、有機半導体層熱転写工程)、液晶相温度よりも低い温度で、有機半導体層転写基板8を配向層1から剥離することにより、基板5上に熱転写された撥液部7上の有機半導体層4を撥液部7から除去し(図8(b)、有機半導体層除去工程)、有機半導体素子10を製造する(図8(b))。
上記配向層形成工程において配向層を形成する方法としては、所望のパターン状の親液部および撥液部を有し、液晶性有機半導体材料を所望の方向に配向させる配向層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、表面処理を施すことによって表面エネルギーが有機半導体層転写基板に対して相対的に高い親液部と相対的に低い撥液部とを形成することが可能な配向層形成用樹脂を上記電極積層体の上記ゲート絶縁層上にスピンコート等の塗布手段や各種の印刷手段で塗布し、その後、上記樹脂に所定の表面処理を施す方法を挙げることができる。その際の撥液部の形成方法として、例えば、シランカップリング剤等を用いた気相、浸漬法による表面処理、放電プラズマとCF4ガスとを用いた表面処理等を挙げることができ、また、親液部の形成方法として、例えば、UVオゾン、VUV等を用いた表面処理等を挙げることができる。
なお、上記配向層形成工程において、配向層を形成するために用いられる構成材料、および形成される配向層の厚みについては、上記「1.ソース電極およびドレイン電極形成工程」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。また、上記配向層形成工程に用いられる電極積層体については、上記「A.第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様においては、上記他の工程として、上記ソース電極およびドレイン電極形成工程の前に、基材を用い、上記基材上に上記配向層を形成する配向層形成工程と、上記有機半導体層除去工程の後に、上記有機半導体層を覆うように上記配向層上にゲート絶縁層を形成し、上記ゲート絶縁層上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程とを有していてもよい。上記配向層形成工程および上記ゲート電極形成工程を有することにより、トップゲート・ボトムコンタクト型の有機半導体素子を形成することができる。
本態様の有機半導体素子の製造方法が、上記配向層形成工程および上記ゲート電極形成工程を有する場合、図9および図10に例示するように、基材11を用い(図9(a))、基材11上に、パターン状に形成された親液部6および撥液部7を有し、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層1を形成し(図9(b)、配向層形成工程)、配向層1を用い、少なくともソース電極2およびドレイン電極3間のチャネル領域Cが親液部6上に配置されるように、配向層1上にソース電極2およびドレイン電極3を形成し(図9(c)、ソース電極およびドレイン電極形成工程)、ソース電極2およびドレイン電極3を覆うように配向層1上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層4を形成し(図9(d)、有機半導体層形成工程)、基板5を有する有機半導体層転写基板8を用い(図9(e))、基板5が有機半導体層4に接するように、有機半導体層4上に有機半導体層転写基板8を積層してから、撥液部7上の有機半導体層4を基板5上に、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写し(図10(a)、有機半導体層熱転写工程)、液晶相温度よりも低い温度で、有機半導体層転写基板8を配向層1から剥離することにより、基板5上に熱転写された撥液部7上の有機半導体層4を撥液部7から除去し(図10(b)、有機半導体層除去工程)、有機半導体層4を覆うように配向層1上に、ゲート絶縁層13を形成し、ゲート絶縁層13上にゲート電極12を形成し(図10(c)、ゲート電極形成工程)、有機半導体素子10を製造する(図10(c))。なお、図9および図10は、本態様の有機半導体素子の製造方法の他の例を示す工程図である。
なお、上記配向層形成工程において配向層を形成する方法については、上述したボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機半導体素子を形成する場合の配向層形成工程と同様であり、上記配向層形成工程に用いられる基材については、上述した電極積層体に用いられる基材と同様である。また、上記配向層形成工程において、配向層を形成するために用いられる構成材料、および形成される配向層の厚みについては、上記「1.ソース電極およびドレイン電極形成工程」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記ゲート電極形成工程においてゲート絶縁層を形成する方法としては、上記有機半導体層を覆うように上記配向層上に、所望の絶縁性を備えるゲート絶縁層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、ゲート絶縁層の材料と、有機半導体層の材料を侵さない溶媒とを含有するゲート絶縁層形成用塗工液を用い、スクリーン印刷等の印刷法で当該ゲート絶縁層形成用塗工液を有機半導体層を覆うように配向層上に塗布するウェットプロセス、もしくはゲート絶縁層の材料のターゲットを用い、プラズマCVD法、熱CVD法、レーザーCVD法等のCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法等の成膜法で有機半導体層を覆うように配向層上にゲート絶縁層を堆積させるドライプロセス等を用いることができる。
なお、上記ゲート電極形成工程のその他の点については、上記「A.第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
さらに、本態様においては、本態様により製造される有機半導体素子がボトムゲート・ボトムコンタクト型のものである場合、上記他の工程として、上記有機半導体層除去工程の後に、上記有機半導体層を覆うように上記配向層上にパッシベーション層を形成するパッシベーション層形成工程を有していてもよく、本態様により製造される有機半導体素子がトップゲート・ボトムコンタクト型のものである場合、上記他の工程として、上記ゲート電極形成工程の後に、上記ゲート電極を覆うように上記ゲート絶縁層上にパッシベーション層を形成するパッシベーション層形成工程を有していてもよい。有機半導体素子の経時劣化を防止する機能を有するパッシベーション層を形成することで、本態様により製造される有機半導体素子を耐久性に優れたものにすることができる。
ボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機半導体素子を製造する場合、上記パッシベーション層形成工程においてパッシベーション層を形成する方法としては、上記有機半導体層を覆うように上記配向層上に、所望の保護機能を備えるパッシベーション層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、パッシベーション層の材料と、フッ素系溶媒等の有機半導体層に影響を与えない溶媒とを含有するパッシベーション層形成用塗工液を用い、スクリーン印刷等の印刷法で当該パッシベーション層形成用塗工液を有機半導体層を覆うように配向層上に塗布する方法、パッシベーション層の材料のターゲットを用い、プラズマCVD法、熱CVD法、レーザーCVD法等のCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法等の成膜法で有機半導体層を覆うように配向層上にパッシベーション層を堆積させる方法等を挙げることができる。
なお、本態様によりボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機半導体素子を製造する場合の上記パッシベーション層形成工程のその他の点については、上記「A.第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様によりトップゲート・ボトムコンタクト型の有機半導体素子を製造する場合の上記パッシベーション層形成工程については、上記「A.第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
D.第4態様の有機半導体素子の製造方法
次に、本発明の第4態様の有機半導体素子の製造方法について説明する。本態様の有機半導体素子の製造方法は、パターン状に形成された親液部および撥液部を有し、かつ液晶性有機半導体材料を配向させる配向層を用い、少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域が上記親液部上に配置されるように、上記配向層上にソース電極およびドレイン電極を形成するソース電極およびドレイン電極形成工程と、基板を有する有機半導体層転写基板を用い、上記基板上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、上記有機半導体層が上記ソース電極および上記ドレイン電極を覆うように、上記有機半導体層が形成された上記有機半導体層転写基板を上記ソース電極および上記ドレイン電極が形成された上記配向層上に積層してから、上記有機半導体層を上記親液部上に、上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する有機半導体層熱転写工程と、上記液晶相温度よりも低い温度で、上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離することにより、上記親液部上に熱転写された上記有機半導体層を上記基板から除去する有機半導体層除去工程と、を有することを特徴とするものである。
このような本態様の有機半導体素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図11および図12は、本発明の第4態様の有機半導体素子の製造方法の一例を示す工程図である。図11および図12に例示するように、本態様の有機半導体素子の製造方法は、基材11と、基材11上に形成されたゲート電極12と、ゲート電極12を覆うように基材11上に形成されたゲート絶縁層13とを有する電極積層体14を用い(図11(a))、電極積層体14のゲート絶縁層13上に、パターン状に形成された親液部6および撥液部7を有し、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層1を形成する配向層形成工程(図11(b))と、配向層1を用い、少なくともソース電極2およびドレイン電極3間のチャネル領域Cが親液部6上に配置されるように、配向層1上にソース電極2およびドレイン電極3を形成するソース電極およびドレイン電極形成工程(図11(c))と、基板5を有する有機半導体層転写基板8を用い(図11(d))、基板5上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層4を形成する有機半導体層形成工程(図11(e))と、有機半導体層4がソース電極2およびドレイン電極3を覆うように、有機半導体層4が形成された有機半導体層転写基板8をソース電極2およびドレイン電極3が形成された配向層1上に積層してから、有機半導体層4を親液部6上に、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する有機半導体層熱転写工程(図12(a))と、液晶相温度よりも低い温度で、有機半導体層転写基板8を配向層1から剥離することにより、親液部6上に熱転写された有機半導体層4を基板5から除去する有機半導体層除去工程(図12(b))と、を有することにより、有機半導体素子10を製造するものである(図12(b))。
本態様によれば、予め親液部および撥液部を設けた配向層を用いて、有機半導体層を上記親液部上に熱転写し、上記親液部上に熱転写された有機半導体層を上記基板から除去することで、少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層を残すように有機半導体層をパターニングすることができるため、パターン加熱および凹凸構造等が不要となり、有機半導体層のパターン精度を向上させることができるとともに、手間を削減することができる。このとき、液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写を行うことにより、上記有機半導体層を上記親液部上により密着させることができ、転写性を向上させることができる。
また、上記有機半導体層を構成する材料として、規則的に配向させることが可能な液晶性有機半導体材料が用いられ、かつ、液晶性有機半導体材料を配向させる配向層上に上記有機半導体層が形成されていることから、上記有機半導体層を液晶相温度に加熱することで上記液晶性有機半導体材料の配向処理を上記有機半導体層のパターニングと同時に行うことができ、トランジスタ性能が向上した有機半導体素子を簡便な工程で手間なく得ることができる。
このようなことから、本態様によれば、有機半導体層のパターン精度が良好であり、トランジスタ特性に優れた有機半導体素子を容易に製造することができる。
さらに、本態様においては、上記有機半導体層が有機半導体層転写基板上に形成されており、上記撥液部上に上記有機半導体層を形成する必要がないため、上記有機半導体層を塗布形成することができ、有機半導体素子の生産性の向上および製造コストの削減を図ることができる。
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも、ソース電極およびドレイン電極形成工程と、有機半導体層形成工程と、有機半導体層熱転写工程と、有機半導体層除去工程とを有するものであり、必要に応じて他の任意の工程を有していてもよいものである。
以下、本態様の有機半導体素子の製造方法における各工程について説明する。
なお、本態様におけるソース電極およびドレイン電極形成工程については、上記「C.第3態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明した工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
1.有機半導体層形成工程
まず、本態様における有機半導体層形成工程について説明する。本工程は、基板を有する有機半導体層転写基板を用い、上記基板上に、液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を形成する工程である。
本工程において有機半導体層を形成する方法としては、所望の液晶性有機半導体材料を有する有機半導体層を、有機半導体層転写基板が有する基板上に形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層形成用塗工液を用い、当該有機半導体層形成用塗工液を上記基板上の全面に、例えば、スピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクトプリント法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等のウェットプロセスによって塗布する方法、また、液晶性有機半導体材料を上記基板上の全面に真空蒸着法等のドライプロセスによって成膜する方法等を挙げることができる。中でも、本態様においては、有機半導体層を塗布形成することが好ましい。有機半導体素子の生産性の向上および製造コストの削減を図ることができるからである。
なお、本工程に用いられる有機半導体層転写基板および液晶性有機半導体材料、ならびに本工程により形成される有機半導体層の厚みについては、上記「C.第3態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
2.有機半導体層熱転写工程
次に、本態様における有機半導体層熱転写工程について説明する。本工程は、上記有機半導体層が上記ソース電極および上記ドレイン電極を覆うように、上記有機半導体層が形成された上記有機半導体層転写基板を上記ソース電極および上記ドレイン電極が形成された上記配向層上に積層してから、上記有機半導体層を上記親液部上に、上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写する工程である。
本工程において有機半導体層を親液部上に熱転写する方法は、有機半導体層がソース電極およびドレイン電極を覆うように、上記有機半導体層が形成された有機半導体層転写基板を上記ソース電極および上記ドレイン電極が形成された配向層上に積層してから、上記有機半導体層に含まれる液晶性有機半導体材料の液晶相温度で熱転写することを特徴とするものである。有機半導体層がソース電極およびドレイン電極を覆うように、有機半導体層が形成された有機半導体層転写基板をソース電極およびドレイン電極が形成された配向層上に積層することで、本工程において有機半導体層を親液部上に熱転写する際に、撥液部上には有機半導体層が熱転写されないため、有機半導体層除去工程において親液部上に熱転写された有機半導体層を基板から除去することで、親液部上の少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上に有機半導体層を残すことができ、有機半導体層を精度高くパターニングすることができる。また、有機半導体層を熱転写する際の熱転写温度を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度とすることで、有機半導体層を親液部上により密着させることができ、転写性を向上させることができる。
本工程において上記有機半導体層を熱転写する温度としては、上記液晶相温度に該当する温度であれば特に限定されるものではなく、具体的な熱転写温度は液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜決定することができるものである。有機半導体層の熱転写温度が液晶相温度であると、有機半導体層が液晶相に相転移して半液体状態となり、有機半導体層を挟む上下部材の密着性が向上するため、有機半導体層を親液部上により密着させることができると考えられる。
本工程において上記有機半導体層を熱転写する際には、上記有機半導体層を上記液晶相温度に加熱するが、このとき、上記有機半導体層の全面を加熱する。本態様においては、有機半導体層を全面加熱することにより、有機半導体層の親液部上への熱転写と、親液部上に熱転写された有機半導体層、すなわち少なくともソース電極およびドレイン電極間のチャネル領域上の有機半導体層に含まれる液晶性有機半導体材料の配向処理とを同時に行うことができる。
3.有機半導体層除去工程
次に、本態様における有機半導体層除去工程について説明する。本工程は、上記液晶相温度よりも低い温度で、上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離することにより、上記親液部上に熱転写された上記有機半導体層を上記基板から除去する工程である。
本工程においては、上記親液部上に熱転写された上記有機半導体層を上記基板から除去することで、上記親液部上の少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層を残すことができ、その結果、有機半導体層を精度高くパターニングすることができる。なお、上記ソース電極および上記ドレイン電極間のチャネル領域上に上記有機半導体層が残っていれば、上記ソース電極および上記ドレイン電極上に上記有機半導体層が残っていてもよく、残っていなくてもよい。
本工程において上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離する際の温度は、上記液晶相温度より低い温度であり、本態様に用いられる液晶性有機半導体材料の種類等に応じて適宜選択されるものであるが、通常、液晶相温度よりも10℃以上低い温度であることが好ましい。なお、上記剥離時の温度は、通常、室温付近である。
本工程において上記有機半導体層転写基板を上記配向層から剥離する方法としては、上記有機半導体層のパターニングを確実に行うことができる程度に、上記親液部上に熱転写された上記有機半導体層を上記基板から十分に除去し、かつ、上記撥液部上に熱転写されなかった上記有機半導体層を上記基板上に十分に残すことができる方法であれば特に限定されるものではない。
4.その他の工程
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも、ソース電極およびドレイン電極形成工程と、有機半導体層形成工程と、有機半導体層熱転写工程と、有機半導体層除去工程とを有するものであるが、必要に応じて他の工程を有していてもよいものである。本態様に用いられる他の工程は、特に限定されるものではなく、本態様において製造される有機半導体素子の用途等に応じて、任意の工程を用いることができる。なお、本態様に用いられる他の工程については、上記「C.第3態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明した工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げることにより、本発明について具体的に説明する。
[実施例]
(液晶相同定・相転移温度確認実験)
液晶性有機半導体材料である5,5’’−Dioctyl−2,2’:5’,2’’−Terthiophene、(以下、「8−TTP−8」)の液晶相、相転移温度を確認するため、加熱ステージ(メトラー・ドレド社製FP82HT、FP80HT)を用いた偏光顕微鏡(オリンパス株式会社製BH2−UMA)によるテクスチャー観察、およびDSC(示差走査型熱量計:Differential Scanning Calorimeter,NETZSCH社製DSC204 μ‐Sensor)測定を実施し、Iso 92.0 SmC 88.1 SmF 73.6 SmG 65.3 Cryst.(℃)の結果を得た。
(電極積層体の作製)
<基材、ゲート電極およびゲート絶縁層>
基材として、厚さ約3000Å(300nm)の酸化ケイ素層が付した厚さ0.6mmのn−ヘビードープシリコンウエハを用いた。これは、n−ヘビードープシリコン部がゲート電極として機能する一方、酸化ケイ素層はゲート絶縁層として働くものであり、その静電容量は約11nF/cm2(ナノファラッド/平方センチメートル)であった。
(配向層形成工程)
上記電極積層体を0.1Mのn−Octyltrichlorosilane(OTS)の脱水トルエン溶液に60℃で20分間浸した。次いで、この電極積層体をトルエン、アセトン、イソプロピルアルコールで洗い、残液を窒素ガンで除いた後、100℃で1時間乾燥することにより、液晶性有機半導体材料を表面に対して垂直に配向させる配向層(厚さ1〜2nm)を形成した。
(ソース電極およびドレイン電極形成工程)
上記配向層上に、厚さ3nmのCrおよび厚さ27nmのAuを、W(幅)=1000μm、L(長さ)=50μmにてシャドウマスクを通して真空蒸着し、ソース電極およびドレイン電極とした。
(有機半導体層形成工程)
上記ソース電極および上記ドレイン電極を覆うように上記配向層上に、真空蒸着法にて液晶性有機半導体材料である上記8−TTP−8を4wt%含有するクロロホルム溶液をスピンコート(2000rpm、10秒)し、厚さ100nm程度の有機半導体層を形成した。
(有機半導体層熱転写工程)
厚さ100μmのPEN基板上に、Teflon AF(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)を6wt%でFC−40(住友スリーエム株式会社製)に溶解させた撥液部形成用塗工液をスクリーン印刷法にて塗布し、100℃で30分間乾燥することにより、幅2000μm、長さ2000μm、厚さ550nmの撥液部を形成し、上記撥液部がされていないPEN基板表面を親液部とすることで、パターン状に形成された撥液部および親液部を有する有機半導体層転写基板を得た。
上記有機半導体層転写基板を上記有機半導体層上に積層し、熱転写装置(GLM350R6・GBC株式会社製)を用いて、上記有機半導体層を上記有機半導体層転写基板の上記親液部上に、ローラー温度90℃にて熱転写した。
(有機半導体層除去工程)
25℃にて、上記有機半導体層転写基板を上記有機半導体層から剥離し、上記有機半導体層転写基板の上記親液部上に熱転写された上記有機半導体層を除去した。これにより、ボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機半導体素子を作製した。
[比較例]
上記有機半導体層熱転写工程および上記有機半導体層除去工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により、有機半導体素子を作製した。
[評価]
(トランジスタ特性評価)
上記実施例および比較例において作製した有機半導体素子について、トランジスタ特性評価した。トランジスタ特性評価は、KEITHLEY製 237HIGH VOLTAGE SOURCE MEASUREMENT UNITで行った。キャリヤ移動度(μ)は、飽和領域(ゲート電圧Vg<ソース・ドレイン電圧Vsd)におけるデータより、下記式に従って計算した。式中、Idは飽和領域におけるドレイン電流であり、WとLはそれぞれ半導体チャネルの幅と長さであり、Ciはゲート電極の単位面積当たりの静電容量であり、VgおよびVthはそれぞれ、ゲート電圧および閾電圧である。この装置のVthは、飽和領域におけるIdの平方根と、測定データからId=0を外挿して求めた装置のVgとの関係から求めた。
Id=Ciμ(W/2L)(Vg−Vth)2
評価結果を以下の表1に示す。また、実施例および比較例で作製された有機半導体素子のトランジスタ特性評価の結果をそれぞれ図13および図14に示す。なお、下記表1における移動度は5個以上のトランジスタから得られた有機半導体層の移動度の平均値であり、測定条件は大気下、ゲート電圧Vgを+20V〜−40V、ソース・ドレイン電圧Vsdを−80V印加した。また、図13および図14におけるFEMは、有機半導体層の移動度を表す。
表1、図13および図14から、実施例では比較例よりもOFF電流値が低下し、ON/OFF比が向上していることが確認された。また、実施例では比較例に比べて有機半導体層の移動度が若干低下しているものの、高い移動度が得られていることが確認された。
以上の結果から、本発明の有機半導体素子の製造方法により、有機半導体層のパターン精度が良好で、トランジスタ特性に優れた有機半導体素子が容易に得られたと考えられる。