JP2016113635A - 金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法 - Google Patents

金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】均一な粒子径を有し、分散安定に優れ、印刷物や導電性パターン形成にも利用可能かつ導電性ペーストとして利用した場合に、従来よりも低温で焼結させることができ、良好な物性が得られる金属ナノ粒子分散体の製造方法の提供。
【解決手段】有機酸の金属塩化合物とアミン化合物とを溶解させた非水性溶媒である第一溶液と、カルボジヒドラジド又は多塩基酸ポリヒドラジドを分散若しくは溶解させた、水溶性溶媒である第二溶液とを混合し、前記金属塩化合物を還元させる金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、分散安定性に優れる、導電性インキなどの原料として有用な金属ナノ粒子分散体の製造方法に関する。
従来から、プリント配線板等の基材上に電極や導電回路パターンを形成するため、導電性ペーストが広く用いられてきた。これは、導電性粉末や金属粒子を樹脂成分や有機溶媒等に分散したものである。
しかし近年、プリント配線板基材上の回路パターンのみならず、ICタグ、あるいは電磁波シールド用の回路パターンにも微細パターンの要求が高まってきている。このような、回路パターンの微小化の要求に伴い、従来使用してきたミクロンオーダーの金属粒子では対応が困難になってきており、より精密な導電性パターンを作製するために、ナノオーダーの金属ナノ粒子に注目が集まってきている。
さらにこのような回路における微細配線形成技術においては回路への負荷を低減し、より融点の低い基材を利用するために低温で焼結・配線形成可能な素材が求められている。
一般に、金属ナノ粒子の平均粒子径が数nm〜数10nm程度であるとき、粒子を形成する原子中において、粒子表面に存在するエネルギー状態の高い原子の占める割合が大きくなり、金属原子の表面拡散が極度に大きくなったことに起因し、バルクの金属の融点よりも格段に低い温度で焼結が起こることが知られている。近年、この現象を利用し、金属ナノ粒子を低温で焼結させて導電性被膜物を得る試みが注目を浴びており、様々な金属ナノ粒子の製造方法が提案されている。例えば銀(Ag)、銅(Cu)などの金属ナノ粒子は従来から上記のような微細配線材料として注目されてきた。
特に銀ナノ粒子は古くから研究が行われており、微細配線用途として既に実用化に至っている。銀の特性としてイオン化傾向が小さく、比較的安定であることから銀系粒子インキを主体として研究がすすんでいるが、一方で銀はエレクトロマイグレーションを起こしやすいため、微細配線材料として用いることを想定した場合、将来的なシングルミクロンピッチの超微細配線への適用は困難と考えられている。また銀はそれ自体貴金属として高価であるだけでなく投機対象となりやすいため価格変動のリスクが大きい。このような事情により銀から銅への代替が望まれている。
金属ナノ粒子の製造方法は様々なものが提案されており、例えば高分子量顔料分散剤を保護剤とし、非水性溶媒と水とを混合し、アミンで還元した後に非水性溶媒中に金属を抽出することにより微小な金属ナノ粒子を得る方法などがあるが、この方法では熱分解温度の高い高分子量顔料分散剤を用いているため、低温での焼結が困難であった。(特許文献1)
金属ナノ粒子の製造方法では、コスト的に液相法が有利であるといわれているが、その際、還元剤が重要な役割を果たすことが知られている。還元剤としては、一般的に水素、ジボラン、水素化ホウ素アルカリ金属塩、水素化ホウ素4級アンモニウム塩、ヒドラジン、クエン酸、アルコール類、アスコルビン酸、アミン化合物等がよく用いられている。しかし、ジボラン、水素化ホウ素アルカリ金属塩、水素化ホウ素4級アンモニウム塩、ヒドラジン等の還元剤の還元力は非常に強力で、金属化合物との反応が激しく進行するため、反応速度の制御が難しく、生成した金属ナノ粒子が凝集沈殿してしまい、微小な金属ナノ粒子分散体を収率良く得ることは困難であった。また、これら還元力の強い還元剤は強塩基や毒性を有するものも多く、作業上危険であった。クエン酸、アスコルビン酸、アルコール類は、緩やかに反応は進行するものの、還元時に還流などの高温条件下で反応を行う必要があり、生成した金属ナノ粒子が高い熱エネルギーを持つため、不安定で凝集が起こりやすく、高濃度化が困難であった。比較的温和に反応が進行するアルコールアミンを用いて還元する方法も報告されているが、この方法を用いても粒子径分布が広く、収率の良い金属ナノ粒子分散体は得られなかった。また、アミン化合物は金属種によってはアミン錯体を形成するのみで還元反応が進行しない場合があるため、使用できる金属種に制限があり、汎用性に欠けるという問題があった。
さらに銅などの卑金属においてはイオン化傾向が比較的大きいことから、金属銅へと還元させるためには強力な還元作用をもった還元剤を使用する必要があった。しかしやはり上記の理由により反応速度の制御が困難であり粒径分布が広くなりやすく、凝集沈殿しやすいという問題があった。
また、生産性の高い高濃度系において金属ナノ粒子を合成する方法として、ポリオール法が知られている。これは、金属塩などの前駆体をポリオール中で加熱還元する方法であり、ポリオールは溶媒、還元剤、場合によっては表面保護剤としての役割も兼ねている。多くの場合はポリオールの沸点付近で加熱するため150〜200℃以上の高温で反応を行う。
特許文献2には、ポリオールを還元剤として用い脂肪酸ならびに脂肪族アミンで被覆した金属ナノ粒子を得ている。ところが反応温度はポリオールの沸点近くの200℃以上と高温であり、系が高温になることに起因して粒子が凝集してしまう可能性があるばかりか、副生成物や反応残基(カウンターアニオン)などとの再反応が促進してしまうことが考えられる。
また特許文献3には、脂肪酸の金属塩化合物を、カルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドを用いて還元する金属微粒子分散体の製造方法が開示されている。この方法では、特に銅などの卑な金属については還元力が不足し、反応が十分に進行しない場合もあった。
いずれの還元剤を用いる場合も、均一で高濃度な金属ナノ粒子分散体を得ることが困難であり、昨今、安全で還元性に優れ、粒子径分布の狭い金属ナノ粒子を生成できる還元方法の開発が求められていた。
特開平11−80647号公報 特許第5311147号公報 特開2007−297665号公報
本発明はこのような従来の事情に鑑みなされたものであり、均一な粒子径を有し、分散安定に優れ、印刷物や導電性パターン形成にも利用可能かつ導電性ペーストとして利用した場合に、従来よりも低温で焼結させることができ、良好な物性が得られる金属ナノ粒子分散体の製造方法を提供するものである。
即ち本発明は、有機酸の金属塩化合物とアミン化合物とを溶解させた非水性溶媒である第一溶液と、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを分散もしくは溶解させた、水溶性溶媒である第二溶液とを混合し、前記金属塩化合物を還元させることを特徴とする金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法に関する。
Figure 2016113635









(式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)
また、本発明は、有機酸が、脂肪酸であることを特徴とする上記金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法に関する。
また、本発明は、アミン化合物が、炭素数3〜22である脂肪族アミンおよび炭素数3〜22であるアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法に関する。
また、本発明は、有機酸の金属塩化合物を構成する金属が、銀および銅から選ばれる金属である上記金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法に関する。
また、本発明は、水溶性溶媒が、多価アルコールであることを特徴とする上記金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法に関する。
また、本発明は、多塩基酸ポリヒドラジドが、二塩基酸ジヒドラジドである上記金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法に関する。
また、本発明は、上記金属ナノ粒子分散体の製造方法により製造されてなる金属ナノ粒子非水性分散体に関する。
また、本発明は、上記金属ナノ粒子非水性分散体を含有することを特徴とするインキに関する。
また、本発明は、基材と、上記インキから形成されてなる導電性パターンとからなる導電性部材に関する。
本発明の樹脂組成物または導電性インキは、粒子径が微小かつ粒度分布が狭い金属ナノ粒子を使用しているため、流動性や安定性に優れており、低温で低い体積抵抗値を有する導電性回路パターンなどの導電性被膜を形成することができる。そのため、フレキソ印刷、ロータリースクリーン印刷、オフセットグラビア印刷、グラビア印刷、レタープレス、インクジェット印刷といった通常の印刷方式で導電性パターンなどの導電性被膜の大量生産が可能となった。また、熱分解温度の低い脂肪酸によって微粒子が被覆されているため、塗膜の焼結を従来よりも低温で行うことができるようになり、回路を形成させる各種基材の選択肢が広がるだけでなく、これらの印刷法により形成される厚さ数μm程度の導電性パターンは、例えば非接触型メディアのアンテナ回路や、電磁波シールド用回路パターンに要求される性能を十分満たすと同時に、その性能は安定し信頼性に優れている。
本発明の導電樹脂組成物またはインキを使用することによって、導電性パターンなどの導電性被膜の実用性が高まり、低コスト化が可能になった。
以下本発明の実施の形態について説明するが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り本発明はこれらの実施の形態に限定されない。
まず本発明の金属ナノ粒子分散体の製造方法について説明する。
有機酸の金属塩化合物とアミン化合物とを溶解させた非水性溶媒である第一溶液と、還元剤である下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを分散もしくは溶解させた、水溶性溶媒である第二溶液とを混合し、前記金属塩化合物を還元させて得られるものである。
本発明は、非水性溶媒である第一溶液と、還元剤を分散ないし溶解した、水溶性溶媒である第二溶液とを混合し、液-液界面を通じて反応を進行させる2相還元法である。還元反応は、非水性溶媒に含まれる有機酸の金属塩化合物と、非水性溶液中に存在する水溶性溶媒液滴に含まれる還元剤とが界面近傍で接触した際に起こる。還元された金属は速やかに、界面付近の分散剤が吸着することにより非水性溶媒中に抽出・安定化されるため、局所的な反応が起こりにくく、そのため、粒子径の揃った微小な金属ナノ粒子を得ることができる。また、反応後に生成する副生成物やカウンターアニオンなどの反応残基、余剰の添加剤などは水溶性溶媒中に移行し、生成した金属ナノ粒子と分離されるため、副反応が起き難くなる。さらには金属粒子に対して少量の分散剤で安定化することができるため、反応後に静置して水溶性溶媒を除去するのみで、容易に高純度の金属ナノ粒子を得ることができるため好ましい。
〈第一溶液〉
第一溶液は非水性溶媒に有機酸の金属塩化合物とアミン化合物とを溶解させ、必要に応じて分散剤を添加した非水溶性溶液であることが好ましい。
金属塩化合物を構成する金属としては、特に限定されないが、導電性インキとしての物性、低温焼結性を考慮すると金、銀、銅、であることが好ましい。さらにコスト面を考慮すると銀、銅がより好ましい。
非水溶性溶媒としては特に限定されないが、急激な反応を抑えるために、第一溶液と第二溶液の界面で反応を行う観点から、水溶性溶媒と相分離する非水性溶媒が好ましい。例えば、クロロホルム、シクロヘキサン、ベンゼン、ノルマルヘキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、1−メトキシイソプロパノールアセテート、ジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、四塩化炭素、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、石油エーテル、シリコンオイル等があげられる。
また、非水性溶媒としては、反応性有機溶剤を用いることもできる。反応性有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、ポリアリル化合物等のエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。非水性溶媒は1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いられる有機酸の金属塩化合物を形成する有機酸の種類としては特に限定されない。有機酸とは酸の性質をもつ有機化合物であり、一般的に弱酸で、カルボン酸・スルホン酸・フェノール類などがある。
有機酸の中でも、低温分解性や非水性溶媒への溶解度を考慮すると脂肪酸が好ましく、さらに脂肪酸を構成するアルキル基の炭素数は3〜22であることが好ましい。有機酸は1種類で用いても複数種類を混合して金属塩としても良い。
脂肪酸とは、カルボキシル基1個以上を有するカルボン酸であり、鎖式構造を有するものであり、直鎖構造のものとアルキル基に分岐した側鎖を有するものとがあり、また飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とがある。
有機酸の金属塩化合物は、公知の方法を用いて合成することができる。例えば、市販の有機酸ナトリウムもしくは、有機酸と水酸化ナトリウムを水中で混合して得られた有機酸ナトリウム塩を、精製水中で溶解させておき、得ようとする金属の無機塩を等量添加し、析出した有機酸の金属塩化合物を吸引ろ過して濾別し、乾燥させることで容易に得ることができる。またこれらの金属の無機塩は1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
第一溶液における有機酸の金属塩化合物の濃度は特に限定されないが、非水溶性溶媒1重量部に対し、0.01〜0.5重量部の範囲であることが好ましい。
有機酸の種類としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブチル酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−ブロモ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、リンゴ酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、並びにそれらの分枝鎖異性体及びハロゲン置換誘導体であるものが挙げられる。
本発明では第一溶液に、アミン化合物を添加する。アミン化合物は特に限定されないが、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N'−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミン等をあげることができる。これらは1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
好ましくは炭素数3〜22の脂肪族アミン、炭素数3〜22のアルカノールアミンを挙げることができる。
これらアミンは金属塩化合物と錯体を形成し、安定化させ、局所的な反応を抑制するだけでなく、液−液界面における相間移動剤(抽出剤)としての役割も兼ねる。
本発明の金属ナノ粒子分散体の製造方法では、有機酸の金属塩化合物を非水溶性溶媒に分散させ、還元反応を行う過程において、有機酸の金属塩化合物または生成した金属ナノ粒子に対し、上記アミン化合物のみでも十分な分散効果を得ることができるが、必要に応じて分散安定化機能を有する化合物(以下「分散剤」と称する場合がある)を適宜添加してもよい。
上記分散安定化機能を有する化合物としては、特に限定されず、公知のものを自由に選択し用いることができるが、例えば、アミノ基、4級アンモニウム塩、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、チオール基、スルホン酸基等の顔料親和性基を1個または複数個有する化合物であることが好ましい。さらに、低温分解性や非水溶性溶媒への親和性等を考慮すると、炭素数が3〜22の脂肪酸であることが好ましい。非水溶性溶媒中での分散安定性の観点から、より好ましくは炭素数18〜22の脂肪酸である。
脂肪酸としては、特に限定されず、一般に知られているものを使用することができる。例えば、直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等があげられる。直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等があげられる。中でも、安定性や低温分解性を考慮するとカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等があげられる。溶剤に対する溶解性の観点から、直鎖不飽和脂肪酸が好ましい。
分岐脂肪酸としては、2−エチルヘキサン酸、2−エチルイソヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−ブチルオクタン酸、2−イソブチルイソオクタン酸、2−ペンチルノナン酸、2−イソペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘキシルイソデカン酸、2−ブチルドデカン酸、2−イソブチルドデカン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、2−イソヘプチルウンデカン酸、2−イソペプチルイソウンデカン酸、2−ドデシルヘキサン酸、2−イソドデシルヘキサン酸、2−オクチルドデカン酸、2−イソオクチルドデカン酸、2−オクチルイソドデカン酸、2−ノニルトリデカン酸、2−イソノニルイソトリデカン酸、2−デシルドデカン酸、2−イソデシルドデカン酸、2−デシルイソドデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、2−オクチルヘキサデカン酸、2−イソオクチルヘキサデカン酸、2−ウンデシルペンタデカン酸、2−イソウンデシルペンタデカン酸、2−ドデシルヘプタデカン酸、2−イソドデシルイソヘプタデカン酸、2−デシルオクタデカン酸、2−デシルイソオクタデカン酸、2−トリデシルヘプタデカン酸、2−イソトリデシルイソヘプタデカン酸、2−テトラデシルオクタデカン酸、2−イソテトラデシルオクタデカン酸、2−ヘキサデシルヘキサデカン酸、2−ヘキサデシルテトラデカン酸、2−ヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−イソヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−ペンタデシルノナデカン酸、2−イソペンタデシルイソノナデカン酸、2−テトラデシルベヘン酸、2−イソテトラデシルベヘン酸、2−テトラデシルイソベヘン酸、2−イソテトラデシルイソベヘン酸等があげられる。三級脂肪酸としては、例えば、ピバリン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、エクアシッド9(出光石油化学製)、エクアシッド13(出光石油化学製)などがあげられる。これらの分散剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
<第二溶液>
本発明における第二溶液は、水溶性溶媒またはその水溶液に、還元剤である下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを溶解させた水溶液であることが好ましい。
(式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)
本発明における還元剤である式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドとしては、特に制限はないが、例えば、二塩基酸ジヒドラジド、三塩基酸トリヒドラジド、四塩基酸テトラヒドラジド等があげられる。nは2以上の整数となる。上記多塩基酸ポリヒドラジドの中で、二塩基酸ジヒドラジドは、溶媒への溶解度が良好であるため、還元反応を均一に進行させることができ、貯蔵安定性も良いため好ましい。
二塩基酸ジヒドラジドとしては、例えば、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、タルタロジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、ヘキサデカン酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等があげられる。
三塩基酸トリヒドラジドとしては、例えば、クエン酸トリヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド等があげられる。四塩基酸テトラヒドラジドとしては、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等があげられる。
上記以外の多塩基酸ポリヒドラジドとしては、ポリアクリル酸ポリヒドラジド等が挙げられる。
これらの多塩基酸ポリヒドラジドは、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができ、カルボジヒドラジドと組み合わせて用いることもできる。
本発明で使用する水溶性溶媒は、反応温度に応じた沸点を有し、第一溶液である非水性溶媒と界面を形成するものであれば特に制限はないが、ポリオール類が好ましい。また特に好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等である。これら複数の水酸基をもつポリオール類はそれ自体に還元能があるために、生成した金属ナノ粒子の酸化を防ぎ安定化させる役割を有するため好ましい。また還元剤の溶解度や粘度を調整する目的で水を加えてもよい。
水溶性溶媒の使用量は、有機酸の金属塩化合物、還元剤の量によって異なるが、有機酸金属塩化合物1重量部に対して、一般的に0.01〜5重量部であり、好ましくは1〜2重量部である。また水溶性溶媒水溶液とする場合、水溶性溶媒と水との比率は水溶性溶媒と水全体を1重量部として、水溶性溶媒が0.01〜0.99重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.9重量部である。
本発明の金属ナノ粒子分散体の製造方法における還元反応は、室温でも十分進行するが、加熱して反応を行っても良い。ただし、あまり高温になると金属ナノ粒子自体のブラウン運動が激しくなり、凝集を引き起こしやすくなる恐れや、副反応を誘発する恐れがあるため必要以上に加熱することは避け、150℃以下で還元反応を行うことが好ましい。より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは90℃以下で行うのが良い。
本発明の金属ナノ粒子分散体の製造方法において、反応を通じて大気中で行っても差し支えないが、生成した金属ナノ粒子の酸化や硫化を防ぐため、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
本発明の金属ナノ粒子分散体は、必要に応じて第二溶液を除去した後に加熱や減圧蒸留等の方法を用いて非水性溶媒の一部を除去し、任意の濃度まで濃縮することができる。また、非水性溶媒を完全に除去した後、目的に応じて合成時と異なる溶媒を加えて再分散させ、任意の濃度の金属ナノ粒子分散体に調整することも可能である。このときの溶媒は非水性溶媒でも水性溶媒でもよいが、金属ナノ粒子近傍に存在する脂肪酸、または分散剤を用いる場合には該化合物が溶解する溶媒であることが好ましい。
本発明の方法で製造される金属ナノ粒子分散体の平均粒子径は、必要に応じて調節可能であるが、0.1〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜100nmである。低温で融着させて導電性被膜物を形成させる場合には、1〜30nmであると好ましい。ここでいう平均粒子径とは、凝集を加味しない一次粒子径のことであり、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて実測した100個以上の粒子径の平均値を示す。具体的には、本願実施例では、透過型電子顕微鏡(TEM)によって実測した300個の粒子の直径の平均値により求めた。粒子径は、ナノ粒子合成時の反応条件、還元剤、分散剤、原料濃度により調整が可能である。
また、本発明の方法で製造される金属ナノ粒子分散体の金属含有量は、固形分全体の85重量%以上であることが好ましい。より好ましくは87重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。本発明でいう金属含有量とは分散体における固形分中の金属含有量のことであり、分散体中の固形分をサンプルとして熱分析測定装置等による測定で求めることができる。具体的には、例えば熱分析測定装置TG/DTA6200(セイコーインスツル株式会社製)等で測定することができる。
次に、本発明の導電性インキについて説明する。
本発明の導電性インキは、本発明の方法で製造される金属ナノ粒子分散体を含むものであり、良好な導電性を得るためには、できるだけ金属ナノ粒子分散体以外の成分は含まないほうが好ましいが、そのインキとしての物性を向上させるために、必要に応じて金属粉、樹脂、その前駆体、またはそれらの混合物からなる担体を含ませたり、可塑剤、滑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、キレート剤等の通常用いられる各種添加剤を含ませたり、金属ナノ粒子を被覆している分散剤の溶解性を損なわない範囲で、各種の液状媒体を使用してもよい。
上記金属粉としては、箔状、フレーク状、球状、針状、鱗片状、板状、樹脂状、その他いずれの形状のものでもよく、これらの混合物を使用することもできる。また、他の導電性粉末、例えば、金属で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、インジウム− 錫複合酸化物等の金属酸化物、またはカーボンブラック、グラファイト等を含有させることができる。これらの導電性物質は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記樹脂、その前駆体、またはそれらの混合物からなる担体は、金属ナノ粒子や金属粉を各種基材に固着させたり、物性を付与したり、印刷インキとしての性能を維持する働きをする。
樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、スチレン− 無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/ 酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/ 酢酸ビニル/ マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ ビニルアルコール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂等から選ばれる1種または2種以上を、印刷方法の種類及び使用基材の種類や用途に応じて使用することができる。
樹脂の前駆体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、ポリアリル化合物等のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種または2種以上を使用することができる。
本発明の導電性インキは、担体として液状の樹脂前駆体を含む場合(樹脂組成物)には、紫外線、電子線等の活性エネルギー線に対して硬化性を有する無溶剤型インキとして調製することができる。また、担体として樹脂を含み、液状の樹脂前駆体を含まない場合には、樹脂を溶解すると共に、金属ナノ粒子や金属粉を分散安定化して、導電性インキに印刷適性を付与するために、液状媒体を含ませて一般的な熱乾燥型インキとして調製することができる。
液状媒体としては、金属ナノ粒子を被覆している分散剤の溶解性を損なわないものであれば特に制限はなく、担体として用いる樹脂、導電性パターンを形成する基材、印刷方法等の種類に応じて、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、水等を使用することができ、2種類以上を混合して使用することもできる。
エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3−メトキシブチル等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、及びこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられる。
脂肪族系溶剤としては、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられ、芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレンが挙げられる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネートが挙げられる。
また、樹脂の前駆体を含む本発明の導電性インキに、電子線を照射して硬化する場合は、樹脂の前駆体(エチレン性不飽和二重結合を有する化合物)の分子鎖切断によってラジカル重合が起こるが、紫外線を照射する場合は、導電性インキに光重合開始剤を添加するのが一般的である。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、ベンゾイン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ビスイミダゾール系、アクリジン系、カルバゾール− フェノン系、トリアジン系、オキシム系等の光重合開始剤を使用することができる。
樹脂の前駆体を含む本発明の導電性インキには、更に、光重合開始剤と共に、光重合促進剤、増感剤を含ませることができる。光重合促進剤および増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル等の脂肪族や芳香族のアミン類が挙げられる。
また、樹脂の前駆体を含む本発明の導電性インキには、導電性インキの安定性を高める目的で、(熱)重合禁止剤を含ませることができる。(熱)重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,6−t−ブチル−p−クレゾール、2,3−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、アンスラキノン、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
本発明の導電性インキには、必要に応じて可塑剤、滑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、キレート剤等の通常用いられる各種添加剤を含ませることができる。更に、本発明の目的に反しない範囲で、通常用いられる有機・無機充填剤を含ませてもよい。
最後に、本発明の導電性インキを用いて形成された導電性の被膜物について説明する。
上記導電性の被膜物の形態については、特に限定されないが、通常の印刷法で形成可能なパターンなどを挙げることができる。例えば、細線状、膜状、格子状、回路状などの形態が挙げられる。これらの用途として、微細導電回路、電磁波シールド、電極、アンテナ、めっき代替、印刷エレクトロニクス用導電材料、フレキシブル回路基板等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の導電性インキは、用途に応じて紙、プラスチック、ガラス等の基材の片面または両面上に、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェット印刷、オフセット印刷、ロータリースクリーン印刷、レタープレス、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート、バーコート等、従来公知の方法を用いて本発明の導電性インキを印刷し、溶剤を乾燥除去して得られた被膜物であるパターンを、加熱焼結することで導電性部材を形成することができる。また、溶剤の乾燥除去、および加熱焼結は同時に行うこともできる。
紙基材としては、コート紙、非コート紙の他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できるが、導電回路として安定した導電性を得るためには、コート紙、加工紙が好ましい。コート紙の場合は、平滑度の高いものほど、導電回路パターンの性能が安定するため好ましい。
プラスチック基材としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等の通常のプラスチック基材を使用することができる。プラスチックフィルムやガラス基材の表面には、密着性を高める目的で、必要に応じて、コロナ放電処理やプラズマ処理を施したり、またはポリウレタン、ポリイソシアネート、有機チタネート、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン等のアンカーコート剤を塗布したりすることができる。
本発明の導電性インキを用いることにより、通常の印刷方法によって導電回路が形成できるため、既存の設備を生かした設計が可能である。すなわち、絵柄等の非接触メディアの意匠性を高めるための通常の印刷を施した後に、そのまま導電回路を印刷、形成することが可能なため、従来、エッチング法や転写法で行っていた回路パターン形成法と比較して、生産性、初期投資コスト、ランニングコストの点ではるかに優れている。
導電性パターンを印刷、形成する前の工程において、導電性パターンと基材との密着性を高める目的で、基材にアンカーコート剤や各種ワニスを塗工してもよい。また、導電性パターン形成後に、該パターンの保護を目的としてオーバープリントワニス、各種コーティング剤等を塗工してもよい。これらの各種ワニス、コーティング剤としては、環境面から活性エネルギー線硬化型が好ましい。
また、導電性パターン上に接着剤を塗布し、そのまま絵柄等を印刷した紙基材やプラスチックフィルムを接着、またはプラスチックの溶融押し出し等によりラミネートして、電磁波シールドフィルムや非接触型メディアを得ることもできる。勿論、あらかじめ粘着剤、接着剤が塗布された基材を使用することもできる。
また、上記印刷方式を用いて導電性パターンを印刷し、通常の熱乾燥後または活性エネルギー線を用いて硬化させた後、導電性パターンの抵抗値をさらに低減させる、あるいは抵抗値の安定性を高める目的で、熱風乾燥オーブンを通して導電性パターンを加熱してもよい。加熱温度は特に限定されないが、使用する基材や印刷速度によって使用可能な温度で加熱することが好ましい。
加熱は、熱ロールまたは熱プレスロールを通して行ってもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、「部」および「%」とは、「重量部」および「重量%」をそれぞれ表す。
金属ナノ粒子の収率は、得られた非水溶液中の溶媒を除去し、残った固形分中の金含有属量と理論収量を比較算出することにより求めた。
金属含有量は、金属ナノ粒子分散体を、120℃にて乾燥させた後、残った固形分中の金属含有量を熱分析測定装置TG/DTA6200(セイコーインスツル株式会社製)での測定より求めた。
粒径は、透過型電子顕微鏡装置JEM101(日本電子株式会社製)により観察した粒子300個の一次粒子径を計測して求めた平均粒子径である。
セパラブル4つ口フラスコに冷却管、熱電対、窒素ガス導入用通気管、撹拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で撹拌しながらトルエン40部と、ヘキサン酸銀5.0部を混合した液に、分散剤としてオレイン酸を3.28部、アミンとしてオレイルアミン3.13部、ジメチルアミノエタノール(DMAE)0.9部を添加し、第一溶液とした。第一溶液はオイルバスを用いて90℃まで昇温した。次に、還元剤であるアジピン酸ヒドラジド(ADH)3.5部を、水溶性溶媒としてエチレングリコール(EG)5部と精製水5部に溶解させ第二溶液とした。第二溶液は70℃に昇温させた後、第一溶液に滴下した。反応液はそのまま90℃を維持したまま、1時間加熱撹拌を行った。その後室温まで放冷し、精製水100部をゆっくりと加え、緩やかに撹拌した。その後水相を除去することで還元剤や不純物等を除去した。つづいてトルエン相にメタノールを加え、凝集させた後遠心分離にて上澄みを除去する洗浄操作を3回繰り返した。得られた固体をトルエンに再分散させて、銀ナノ粒子分散体を得た。銀ナノ粒子の平均粒子径は10nm±2nmであり、40℃で1カ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
原料の金属塩を2ペンタン酸銅に、還元剤のADHをこはく酸ジヒドラジド(SUDH)に変更した以外は実施例1と同様の条件にて合成を行い、銅ナノ粒子分散体を得た。得られた銅ナノ粒子の平均粒子径は20±5nmであり、40℃で1カ月保存した後に平均粒子径は25±5nmとなったが、凝集はなく安定であった。
原料の金属塩を2オクタン酸銅に、還元剤のADHをこはく酸ジヒドラジド(SUDH)に、DMAEをジエタノールアミン(DEA)に変更した以外は実施例1と同様の条件にて合成を行い、銅ナノ粒子分散体を得た。得られた銅ナノ粒子の平均粒子径は22±5nmであり、40℃で1カ月保存した後に平均粒子径は28±5nmとなったが、凝集はなく安定であった。
(比較例1)
還元剤としてヒドラジン2.0部を精製水10部に溶解した水溶液を用いた以外は実施例1と同様の条件にて合成を行い、銀ナノ粒子を得た。得られた銀ナノ粒子は粗大粒子を多く含み、凝集沈殿が見られた。
(比較例2)
還元剤としてEG5.0部を精製水5.0部に溶解し、アミン化合物としてDMAEをDAEに変更した以外は実施例2と同様の条件にて合成を行った。得られた銅ナノ粒子を含む分散体濃度は非常に希薄で、反応途中であると思われた。
(比較例3)
還元剤としてSUDHを精製水10部に溶解した水溶液に変更し、アミン化合物を添加しなかった点以外は実施例3と同様の条件に合成を行った。
得られた銅ナノ粒子を含む分散体濃度は希薄で、反応途中であると思われた。
実施例で得られた金属ナノ粒子分散体の非水溶性溶媒相を、ロータリーエバポレーター
を用いて留去し、固形分50%に濃縮し、調製した導電性インキを基板上にスピンコート法によって塗布した。実施例1の場合は、120℃設定の熱風オーブン中で60分乾燥、焼成させて導電性被膜物を得た。実施例2,3については、350℃設定のオーブン中にて、窒素97%、水素3%気流下において60分乾燥、焼成させて導電性被膜物を得た。
導電性被膜物の膜厚、体積抵抗値について以下の方法で評価した。
[膜厚]
導電性被膜物の膜厚を膜厚計(株式会社仙台ニコン製「M H−15M型」)で測定した。
[体積抵抗値]
導電性被膜物を3mm幅に加工した後、導電性被膜物を30mm感覚で4箇所はさみ、その抵抗値を四探針抵抗測定器(三和電気計器株式会社製「DR−1000CU型」)で測定し、得られた抵抗値と膜厚から体積抵抗値を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2016113635
表1より実施例1〜3で得られた本発明の金属ナノ粒子分散体を使用することで、温和な反応条件においても高収率で金属ナノ粒子を合成でき、かつ低抵抗な導電性被膜物が作成可能である。

Claims (9)

  1. 有機酸の金属塩化合物とアミン化合物とを溶解させた非水性溶媒である第一溶液と、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを分散もしくは溶解させた、水溶性溶媒である第二溶液とを混合し、前記金属塩化合物を還元させることを特徴とする金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法。
    Figure 2016113635




    (式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)
  2. 有機酸が、脂肪酸であることを特徴とする請求項1記載の金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法。
  3. アミン化合物が、炭素数3〜22である脂肪族アミンおよび炭素数3〜22であるアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法。
  4. 有機酸の金属塩化合物を構成する金属が、銀および銅から選ばれる金属である請求項1〜3いずれか一項に記載の金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法。
  5. 水溶性溶媒が、多価アルコールであることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法。
  6. 多塩基酸ポリヒドラジドが、二塩基酸ジヒドラジドである請求項1〜5いずれか一項に記載の金属ナノ粒子非水性分散体の製造方法。
  7. 請求項1〜6いずれか記載の金属ナノ粒子分散体の製造方法により製造されてなる金属ナノ粒子非水性分散体。
  8. 請求項7記載の金属ナノ粒子非水性分散体を含有することを特徴とするインキ。
  9. 基材と、請求項8記載のインキから形成されてなる導電性パターンとからなる導電性部材。
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