JP2014091849A - 高純度の金属ナノ粒子分散体ならびにその製造方法 - Google Patents

高純度の金属ナノ粒子分散体ならびにその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低分子量の分散剤を使用し、分散安定性に優れ、印刷物や導電性パターン形成にも利用可能で、かつ導電性ペーストとして利用した際に、低温で焼結させることができる良好な物性が得られる高純度な金属ナノ粒子分散体の製造方法、およびパターン性に優れた導電性インキ、導電性被膜物を提供する。
【解決手段】脂肪酸の金属塩化合物と、分子量が1000未満である分散剤とを分散及び/又は溶解した非水性溶液である第一溶液と、還元剤であるカルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドを溶解した水溶液である第二溶液とを微小流路内で混合させ、前記金属塩化合物を還元させ、平均粒子径が0.1〜200nmである金属ナノ粒子非水分散体を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、150℃以下の低温で焼結することができ、また分散安定性に優れる、導電性インキなどの原料として有用な金属ナノ粒子分散体の製造方法に関する。
従来から、プリント配線板等の基材上に電極や導電回路パターンを形成するため、導電性ペーストが広く用いられてきた。これは、導電性粉末や金属粒子を樹脂成分や有機溶媒等に分散したものである。
しかし近年、プリント配線板基材上の回路パターンのみならず、ICタグ、あるいは電磁波シールド用の回路パターンにも微細パターンの要求が高まってきている。このような、回路パターンの微小化の要求に伴い、従来使用してきたミクロンオーダーの金属粒子では対応が困難になってきており、より精密な導電性パターンを作製するために、ナノオーダーの金属ナノ粒子に注目が集まってきている。従来のミクロンサイズの金属粉末を用いた導電性ペーストでは、回路を形成させ、焼結を行う際には400℃以上の高温下で焼結を進行させる必要があったため、回路を形成する基板に制約があり、プラスチックフィルム等の基材上で回路を形成させるためには、150〜200℃以下で、さらに好ましくは150℃以下で焼結させる必要があった。一般に、金属ナノ粒子の平均粒子径が数nm〜数10nm程度であるとき、粒子を形成する原子中において、粒子表面に存在するエネルギー状態の高い原子の占める割合が大きくなり、金属原子の表面拡散が極度に大きくなったことに起因し、バルクの金属の融点よりも格段に低い温度で焼結が起こることが知られている。近年、この現象を利用し、金属ナノ粒子を低温で焼結させて導電性被膜物を得る試みが注目を浴びており、様々な金属ナノ粒子の製造方法が提案されている。
また、微小経路を利用した製造方法は反応制御が容易であることなどから、金属ナノ粒子の製造方法においても利用できることが知られている。例えば、銀塩を溶解した非水性還元溶媒をマイクロ流路内で加熱し、還元反応させる方法があるものの、反応温度が100℃以上の高温であることや、流量が500μL/min以下であり処理量が著しく低いために生産性が悪く、さらに分散剤の熱分解温度が高いため回路を形成する際に低温での焼結が困難であった(特許文献1)。
また、高分子量顔料分散剤の存在下で金属化合物溶液と還元性化合物溶液とをマイクロ流路内で混合し、金属化合物を還元する方法では、室温程度にて比較的大流量の処理が可能であるものの、熱分解温度の高い高分子量顔料分散剤を大量に用いているため、低温での焼結が困難であった(特許文献2)。いずれの方法も、単に金属ナノ粒子分散体を得るのみであり、分散剤を低分子量にすること、ならびに金属含有量を向上させることによる低温焼結性向上については効果的でなかった。
一方、特許文献3には、脂肪酸の金属塩化合物を、カルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドを用いて還元する金属微粒子分散体の製造方法が開示されている。この方法では、低分子量の分散剤を使用することが可能ではあるが、金属含有量を向上するという観点からは検討が不十分であり、低温での焼結が困難であった。
特開2006−124787号公報 特開2004−33901号公報 特開2007−297665号公報
本発明は、低分子量の分散剤を使用し、分散安定性に優れ、印刷物や導電性パターン形成にも利用可能で、かつ導電性ペーストとして利用した際に、低温で焼結させることができる良好な物性が得られる高純度な金属ナノ粒子分散体の製造方法を提供すること目的とする。
また、本発明は、パターン性に優れた導電性インキと該導電性インキ物を用いた導電パターンなどの導電性被膜物の提供を目的とする。
本発明は、脂肪酸の金属塩化合物と、分子量が1000未満である分散剤とを分散及び/又は溶解した非水性溶液である第一溶液と、還元剤である下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを溶解した水溶液である第二溶液とを微小流路内で混合させ、前記金属塩化合物を還元させることを特徴とする、平均粒子径が0.1〜200nmである金属ナノ粒子非水分散体の製造方法に関する。
Figure 2014091849

(式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)
また、本発明は、上記第一溶液と前記第二溶液の流量比率が、第一溶液/第二溶液=0.3〜3であることを特徴とする金属ナノ粒子分散体の製造方法に関する。
また、本発明は、上記第一溶液と第二溶液の混合が、相当径10mm以下の微小流路で行われることを特徴とする金属ナノ粒子分散体の製造方法に関する。
また、本発明は、上記分散剤が、炭素数3〜22である飽和脂肪酸および炭素数3〜22である不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする金属ナノ粒子分散体の製造方法に関する。
また、本発明は、上記脂肪酸の金属塩化合物を構成する金属が、銀および銅から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする金属ナノ粒子分散体の製造方法に関する。
また、本発明は、上記多塩基酸ポリヒドラジドが二塩基酸ジヒドラジドである金属ナノ粒子分散体の製造方法に関する。
また、本発明は、上記金属ナノ粒子分散体の製造方法により製造されてなる金属ナノ粒子分散体に関する。
また、本発明は、上記金属ナノ粒子分散体を含有することを特徴とするインキに関する。
また、本発明は、上記インキを基材上に塗布してなる被膜に関する。
また、本発明は、上記被膜物を、150℃以下で焼成してなる導電性被膜物に関する。
本発明の方法により、低分子量の分散剤を使用し、分散安定性に優れ、印刷物や導電性パターン形成にも利用可能で、かつ導電性ペーストとして利用した際に、低温で焼結させることができる良好な物性が得られる高純度な金属ナノ粒子分散体の製造方法を提供することができた。
本発明で製造させる金属ナノ粒子分散体は、脂肪酸の金属塩化合物と分散剤を混合した非水性溶媒と、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジド、または下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを溶解させた水溶液を微小流路内に流通、還元反応させることにより得られる。上記分散剤は、ナノ粒子を安定に存在させる役割を果たすが、導電性インキとして用いる際に導電性を阻害する原因の一つとなるため、極力使用する量を抑える必要がある。また、上記分散剤は、熱分解温度が低く、150℃以下でも熱分解反応が進むため、低温焼結性に優れるという特徴を持っている。
上記カルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドは、pHが中性〜弱塩基性であるため作業上安全であり、還元剤として使用した場合、ヒドラジンや水素化ホウ素ナトリウムのように激しく反応することはないが、還元反応は高温で加熱する必要なく迅速に進行するため、反応後の金属ナノ粒子の凝集が抑えられ、微小で粒子径の揃った金属ナノ粒子の分散体を得ることができる。
Figure 2014091849

(式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)

本発明の導電性インキは、微小かつ高純度な金属ナノ粒子を使用しているため、流動性や安定性に優れており、低温で低い体積抵抗値を有する導電性回路パターンなどの導電性被膜物を形成することができる。そのため、フレキソ印刷、ロータリースクリーン印刷、オフセットグラビア印刷、グラビア印刷、レタープレス、インクジェット印刷といった通常の印刷方式で導電性パターンなどの導電性被膜物の大量生産が可能となった。また、熱分解温度の低い分散剤によってナノ粒子が被覆されているため、塗膜の焼結を低温で行うことができるようになり、PETフィルム、紙等、各種基材上に回路を形成させることが可能となった。これらの印刷法により形成される厚さ数μm程度の導電性パターンは、例えば非接触型メディアのアンテナ回路や、電磁波シールド用回路パターンに要求される性能を十分満たすと同時に、その性能は安定し信頼性に優れている。
本発明の導電性インキを使用することによって、導電性パターンなどの導電性被膜物の実用性が高まり、低コスト化が可能になった。
以下、本発明について、実施の形態について更に詳しく説明するが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
まず、本発明の金属ナノ粒子分散体の製造方法について説明する。
本発明は、脂肪酸の金属塩化合物と、分子量が1000未満である分散剤とを分散及び/又は溶解した非水性溶液である第一溶液と、還元剤である下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを溶解した水溶液である第二溶液とを微小流路内で混合させ、前記金属塩化合物を還元させることにより金属ナノ粒子分散体が製造されるものである。
詳細には、非水性溶液である前記第一溶液と、水性溶液である前記第二溶液を別々に作製した後、微小流路に前記2液を流通、混合し、二相が懸濁した状態で一定の滞留時間をかけて反応させ、金属ナノ粒子を留出させる。ここで、本発明でいう微小流路とは、2以上の流入路、1以上の流出路ならびに、混合部位として前記2流路以上の流入路と1以上の流出路が合流する空間を有するものであって、混合部位の相当径が0.01mm以上20mm以下であるものをいう。
還元反応は、非水性溶液に含まれる脂肪酸の金属塩化合物と、非水性溶液中に存在する水性の微小液滴に含まれる還元剤とが接触した際に起こる。還元された金属は速やかに非水性溶媒中で分散剤が吸着することにより安定化されるため、局所的な反応が起こりにくく、そのため、粒子径の揃った微小な金属ナノ粒子を得ることができる。また、金属粒子に対して少量の分散剤で安定化することができるため、反応後に静置して水相を除去するのみで、容易に高純度の金属ナノ粒子を得ることができるため好ましい。
混合部位の相当径が0.01mm〜20mmである微小経路で反応させることで、反応物の拡散速度が速く、均一に反応させることができる。上記観点から、好ましくは、混合部位の相当径が0.1mm〜10mmである。また、混合部位の相当径が20mmより大きい場合、反応物の拡散速度が遅くなり迅速な混合がなされず、あるいは均一な反応ができず好ましくない場合がある。また、混合部位の形状は特に限定されないが、円筒形が好ましい。
<第一溶液>
第一溶液は、非水溶媒に、脂肪酸の金属塩化合物を分散させ、分子量が1000未満である分散剤を溶解させた非水性溶液であることが好ましい。
脂肪酸の金属塩化合物を形成する金属としては、特に限定されないが、導電性インキとしての物性、低温焼結性を考慮すると金、銀、銅であることが好ましい。また、コスト面からは銀、銅がより好ましい。
脂肪酸の金属塩化合物を形成する脂肪酸の種類としては、特に限定されないが、反応後その一部はナノ粒子の分散剤としても機能するため、低温分解性や非水性溶媒への親和性等を考慮すると炭素数は3〜22であることが好ましい。より好ましくは炭素数が3〜17である。炭素数が3〜17であると、還元反応が起こり金属ナノ粒子が生成した後に、ナノ粒子の分散剤として過剰の脂肪酸が水層に移動するため、非水層の金属含有量が向上するため好ましい。さらに好ましくは、炭素数が3〜15、最も好ましくは炭素数が3〜12である。脂肪酸は一種類で用いても複数種を混合して用いても良い。
脂肪酸の金属塩化合物は、公知の方法を用いて簡単に得ることができる。例えば、市販の脂肪酸ナトリウムもしくは、脂肪酸と水酸化ナトリウムを水中で混合して得られた脂肪酸ナトリウム塩を、純水中で溶解させておき、得ようとする金属の無機塩を等量添加し、析出した脂肪酸の金属塩化合物を吸引濾過して濾別し、乾燥させることで容易に脂肪酸の金属塩化合物を得ることができる。また、これらの金属の無機塩は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
第一溶液における、脂肪酸の金属塩化合物の濃度は特に限定されないが、非水溶媒100mlに対し、1〜50gの範囲であることが好ましい。より好ましくは、5〜25gである。
本発明で使用する分散剤としては分子量が1000未満であることが好ましく、分子量500以下であることがより好ましい。上記分散剤としては特に限定されないが、低温分解性や非水性溶媒への親和性等を考慮すると、炭素数が3〜22の脂肪酸であることが好ましい。非水溶媒中での分散安定性の観点から、より好ましくは炭素数18〜22の脂肪酸である。
脂肪酸とは、カルボキシル基1個を有するカルボン酸RCOOHのうち、鎖式構造を有するものをいい、直鎖構造のものとアルキル基に分岐した側鎖を有するものとがあり、また、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とがある。
脂肪酸としては、特に限定されず、一般に脂肪酸として知られているものを使用することができる。例えば、分散剤としての脂肪酸としては、金属塩化合物を形成する脂肪酸と同じ脂肪酸を使用しても、異なる脂肪酸を使用してもよく、特に限定されないが、直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等があげられる。直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等があげられる。中でも、安定性や低温分解性を考慮するとカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等があげられる。溶剤に対する溶解性の観点から、直鎖不飽和脂肪酸が好ましい。
分岐脂肪酸としては、2−エチルヘキサン酸、2−エチルイソヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−ブチルオクタン酸、2−イソブチルイソオクタン酸、2−ペンチルノナン酸、2−イソペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘキシルイソデカン酸、2−ブチルドデカン酸、2−イソブチルドデカン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、2−イソヘプチルウンデカン酸、2−イソペプチルイソウンデカン酸、2−ドデシルヘキサン酸、2−イソドデシルヘキサン酸、2−オクチルドデカン酸、2−イソオクチルドデカン酸、2−オクチルイソドデカン酸、2−ノニルトリデカン酸、2−イソノニルイソトリデカン酸、2−デシルドデカン酸、2−イソデシルドデカン酸、2−デシルイソドデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、2−オクチルヘキサデカン酸、2−イソオクチルヘキサデカン酸、2−ウンデシルペンタデカン酸、2−イソウンデシルペンタデカン酸、2−ドデシルヘプタデカン酸、2−イソドデシルイソヘプタデカン酸、2−デシルオクタデカン酸、2−デシルイソオクタデカン酸、2−トリデシルヘプタデカン酸、2−イソトリデシルイソヘプタデカン酸、2−テトラデシルオクタデカン酸、2−イソテトラデシルオクタデカン酸、2−ヘキサデシルヘキサデカン酸、2−ヘキサデシルテトラデカン酸、2−ヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−イソヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−ペンタデシルノナデカン酸、2−イソペンタデシルイソノナデカン酸、2−テトラデシルベヘン酸、2−イソテトラデシルベヘン酸、2−テトラデシルイソベヘン酸、2−イソテトラデシルイソベヘン酸等があげられる。三級脂肪酸としては、例えば、ピバリン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、エクアシッド9(出光石油化学製)、エクアシッド13(出光石油化学製)などがあげられる。
これらの分散剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明は、微小流路を用いて反応させることで、少量の分散剤でも生成した金属ナノ粒子を分散安定化することができる。分散剤の添加量は、金属塩化合物中の金属100重量部に対し0.01〜20重量部であることが好ましい。さらに好ましくは0.01〜15重量部である。添加量が0.01重量部未満の場合、分散剤の添加による十分な効果が得られず、また、20重量部を超える場合、安定化に寄与しない余剰の化合物が分散体中に存在することになり、コスト的に不利であるだけでなく、分散体における固形分中の金属含有量が低下し、焼結の阻害等の悪影響を与えるため好ましくない。
本発明の金属ナノ粒子分散体の製造方法は、必要に応じてさらに反応促進機能を有する化合物を適宜添加してもよい。
ここでいう反応促進機能を有する化合物とは、具体的には、アミノ基、4級アンモニウム塩、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、チオール基、スルホン酸基等の顔料親和性基を1個または複数個有する化合物であることが好ましい。顔料親和性基は、化合物の主鎖に含まれていても、側鎖もしくは主鎖と側差の双方に含まれていてもよい。
詳細は定かではないが、上記化合物は第一溶液の脂肪酸の金属塩化合物を第二溶液である水相との界面付近へ移行させ、水相中の還元剤と反応しやすくさせる効果がある。また、反応後には生成する脂肪酸を水相へ溶解、移動させることによって第二溶液である水相を除去する際に過剰の脂肪酸と同時に除去されるものと推察している。よって、金属ナノ粒子を含む非水性分散体には含まれないため、金属ナノ粒子分散体の金属濃度を上げる役割も有している。
上記メカニズムを考慮すると、反応促進機能を有する化合物として好ましくは顔料親和性基としてアミノ基を有する化合物である。
非水性溶媒としては特に限定されないが、急激な反応を抑えるために、第一溶液と第二溶液の界面で反応を行う観点から、水と相分離する非水性溶媒が好ましい。
水と相分離する非水性溶媒としては、例えば、クロロホルム、シクロヘキサン、ベンゼン、ノルマルヘキサン、トルエン、シクロヘキサノン、1−メトキシイソプロパノールアセテート、ジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、四塩化炭素、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、石油エーテル、シリコンオイル等があげられる。
また、非水性溶媒としては、反応性有機溶剤を用いることもできる。反応性有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、ポリアリル化合物等のエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。非水性溶媒は1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
<第二溶液>
本発明における第二溶液は、水中に還元剤である下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを溶解させた水溶液であることが好ましい。
本発明における還元剤である、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドは、通常は樹脂の硬化剤や改質剤として用いられている化合物である。
Figure 2014091849


(式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)
本発明の金属ナノ粒子分散体の製造方法は有機溶剤と水との二相における界面で還元反応を行うことから、還元剤である式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドとしては、水溶性のものが好ましい。例えば、二塩基酸ジヒドラジド、三塩基酸トリヒドラジド、四塩基酸テトラヒドラジド等があげられる。上記多塩基酸ポリヒドラジドの中で、二塩基酸ジヒドラジドは、水への溶解度が良好であるため、還元反応を均一に進行させることができ、貯蔵安定性もよいため好ましい。
還元剤の使用量は、金属塩化合物の種類や濃度によっても異なるが、通常は少なくとも金属塩化合物溶液から金属が還元析出するのに必要な化学量論比の量を使用すればよい。本発明の製造方法に使用される還元剤はジヒドラジド類であり、還元能のある官能基を2個以上有していることから、金属が還元析出するのに必要な化学量論比はヒドラジド基で換算して添加するのが好ましい。還元後に水相を除去する場合には、余剰の還元剤も同時に除去できるため、化学量論比以上の還元剤を使用しても良く、その上限は特に定められるものではないが、洗浄工程やコストを考えると、ヒドラジド換算の化学量論比で金属化合物を還元するのに必要な添加量の6倍以下であることが好ましい。
<反応条件>
微小流路における流量は特に限定されないが、生産性の観点から1ml/min以上であることが好ましい。ここでいう流量とは、微小流路中の混合部位における、第一溶及び第二溶液の合計量を示す。
混合部位で反応を完結する為には、二相懸濁の状態を均一に保つことが好ましい。そのためには、原料の化学量論比に関わらず、混合させる第一溶液と第二溶液の流量比率が、第一溶液/第二溶液=0.1〜4の範囲が好ましく、0.3〜3の範囲がより好ましい。上記範囲内であると、分散剤の使用量が少なくてもナノ粒子が凝集沈殿しにくくなり、高収率でナノ粒子分散体を得られるため好ましい。
還元反応は、室温でも十分に終了するが、加熱して反応を行っても差し支えない。但し、あまり高温になると金属ナノ粒子のブラウン運動が激しくなり、凝集が起こりやすくなる恐れや、顔料分散剤を添加した場合には、顔料分散剤が熱で変性してしまう恐れがあるため、150℃以下で還元反応を行うことが好ましい。より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは90℃以下、最も好ましくは70℃以下で行うのがよい。
本発明の金属ナノ粒子分散体の製造方法において、反応を通じて大気中で行っても差し支えないが、生成した金属ナノ粒子の酸化や硫化を防ぐ、または酸素が存在することによる副反応物の生成を防ぐため、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。本発明の金属ナノ粒子分散体は、必要に応じて水相を除去した後に加熱や減圧蒸留等の方法を用いて非水性溶媒の一部を除去し、任意の濃度まで濃縮することができる。また、非水性溶媒を完全に除去した後、目的に応じて合成時と異なる溶媒を加えて再分散させ、任意の濃度の金属ナノ粒子分散体に調整することも可能である。このときの溶媒は非水性溶媒でも水性溶媒でもよいが、金属ナノ粒子近傍に存在する脂肪酸、または分散剤を用いる場合には該化合物が溶解する溶媒であることが好ましい。
本発明の方法で製造される金属ナノ粒子分散体の平均粒子径は、必要に応じて調節可能であるが、0.1〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜100nmである。低温で融着させて導電性被膜物を形成させる場合には、1 〜30nmであると好ましい。ここでいう平均粒子径とは、凝集を加味しない一次粒子径のことであり、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて実測した100個以上の粒子径の平均値を示す。具体的には、本願実施例では、透過型電子顕微鏡(TEM)によって実測した300個の粒子の直径の平均値により求めた。粒子径は、ナノ粒子合成時の反応条件、還元剤、分散剤、原料濃度により調整が可能である。
また、本発明の方法で製造される金属ナノ粒子分散体の金属含有量は、85重量%以上であることが好ましい。より好ましくは87%以上、さらに好ましくは90%以上である。本発明でいう金属含有量とは分散体における固形分中の金属含有量のことであり、分散体中の固形分をサンプルとして熱分析測定装置等による測定で求めることができる。具体的には、例えば熱分析測定装置TG/DTA6200(セイコーインスツル株式会社製)等で測定することができる。
次に、本発明の導電性インキについて説明する。
本発明の導電性インキは、本発明の方法で製造される金属ナノ粒子分散体を含むものであり、良好な導電性を得るためには、できるだけ金属ナノ粒子分散体以外の成分は含まないほうが好ましいが、そのインキとしての物性を向上させるために、必要に応じて金属粉、樹脂、その前駆体、またはそれらの混合物からなる担体を含ませたり、可塑剤、滑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、キレート剤等の通常用いられる各種添加剤を含ませたり、金属ナノ粒子を被覆している分散剤の溶解性を損なわない範囲で、各種の液状媒体を使用してもよい。
上記金属粉としては、箔状、フレーク状、球状、針状、鱗片状、板状、樹脂状、その他いずれの形状のものでもよく、これらの混合物を使用することもできる。また、他の導電性粉末、例えば、金属で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、インジウム− 錫複合酸化物等の金属酸化物、またはカーボンブラック、グラファイト等を含有させることができる。これらの導電性物質は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記樹脂、その前駆体、またはそれらの混合物からなる担体は、金属ナノ粒子や金属粉を各種基材に固着させたり、物性を付与したり、印刷インキとしての性能を維持する働きをする。
樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン− アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース( トリ) アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、スチレン− 無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/ 酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/ 酢酸ビニル/ マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ ビニルアルコール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂等から選ばれる1 種または2 種以上を、印刷方法の種類及び使用基材の種類や用途に応じて使用することができる。
樹脂の前駆体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、ポリアリル化合物等のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種または2種以上を使用することができる。
本発明の導電性インキは、担体として液状の樹脂前駆体を含む場合(樹脂組成物)には、紫外線、電子線等の活性エネルギー線に対して硬化性を有する無溶剤型インキとして調製することができる。また、担体として樹脂を含み、液状の樹脂前駆体を含まない場合には、樹脂を溶解すると共に、金属ナノ粒子や金属粉を分散安定化して、導電性インキに印刷適性を付与するために、液状媒体を含ませて一般的な熱乾燥型インキとして調製することができる。
液状媒体としては、金属ナノ粒子を被覆している分散剤の溶解性を損なわないものであれば特に制限はなく、担体として用いる樹脂、導電性パターンを形成する基材、印刷方法等の種類に応じて、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、水等を使用することができ、2種類以上を混合して使用することもできる。
エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3−メトキシブチル等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、及びこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられる。
脂肪族系溶剤としては、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられ、芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレンが挙げられる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネートが挙げられる。
また、樹脂の前駆体を含む本発明の導電性インキに、電子線を照射して硬化する場合は、樹脂の前駆体(エチレン性不飽和二重結合を有する化合物)の分子鎖切断によってラジカル重合が起こるが、紫外線を照射する場合は、導電性インキに光重合開始剤を添加するのが一般的である。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、ベンゾイン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ビスイミダゾール系、アクリジン系、カルバゾール− フェノン系、トリアジン系、オキシム系等の光重合開始剤を使用することができる。
樹脂の前駆体を含む本発明の導電性インキには、更に、光重合開始剤と共に、光重合促進剤、増感剤を含ませることができる。光重合促進剤および増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル等の脂肪族や芳香族のアミン類が挙げられる。
また、樹脂の前駆体を含む本発明の導電性インキには、導電性インキの安定性を高める目的で、(熱)重合禁止剤を含ませることができる。(熱)重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,6−t−ブチル−p−クレゾール、2,3−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、アンスラキノン、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
本発明の導電性インキには、必要に応じて可塑剤、滑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、キレート剤等の通常用いられる各種添加剤を含ませることができる。更に、本発明の目的に反しない範囲で、通常用いられる有機・無機充填剤を含ませてもよい。
最後に、本発明の導電性インキを用いて形成された導電性の被膜物について説明する。
上記導電性の被膜物の形態については、特に限定されないが、通常の印刷法で形成可能なパターンなどを挙げることができる。例えば、細線状、膜状、格子状、回路状などの形態が挙げられる。これらの用途として、微細導電回路、電磁波シールド、電極、アンテナ、めっき代替、印刷エレクトロニクス用導電材料、フレキシブル回路基板等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の導電性インキは、分散安定性に優れる上に、200℃ 以下の低温で導電性を発現させることができるため、用途に応じて紙、プラスチック、ガラス等の基材の片面または両面上に、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェット印刷、オフセット印刷、ロータリースクリーン印刷、レタープレス、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート、バーコート等、従来公知の方法を用いて本発明の導電性インキを印刷し、溶剤を乾燥除去して得られた被膜物を、加熱焼結することで導電性被膜物を形成することができる。また、溶剤の乾燥除去、および加熱焼結は同時に行うこともできる。
紙基材としては、コート紙、非コート紙の他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できるが、導電回路として安定した導電性を得るためには、コート紙、加工紙が好ましい。コート紙の場合は、平滑度の高いものほど、導電回路パターンの性能が安定するため好ましい。
プラスチック基材としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等の通常のプラスチック基材を使用することができる。プラスチックフィルムやガラス基材の表面には、密着性を高める目的で、必要に応じて、コロナ放電処理やプラズマ処理を施したり、またはポリウレタン、ポリイソシアネート、有機チタネート、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン等のアンカーコート剤を塗布したりすることができる。
本発明の導電性インキを用いることにより、通常の印刷方法によって導電回路が形成できるため、既存の設備を生かした設計が可能である。すなわち、絵柄等の非接触メディアの意匠性を高めるための通常の印刷を施した後に、そのまま導電回路を印刷、形成するとが可能なため、従来、エッチング法や転写法で行っていた回路パターン形成法と比較して、生産性、初期投資コスト、ランニングコストの点ではるかに優れている。
導電性パターンを印刷、形成する前の工程において、導電性パターンと基材との密着性を高める目的で、基材にアンカーコート剤や各種ワニスを塗工してもよい。また、導電性パターン形成後に、該パターンの保護を目的としてオーバープリントワニス、各種コーティング剤等を塗工してもよい。これらの各種ワニス、コーティング剤としては、環境面から活性エネルギー線硬化型が好ましい。
また、導電性パターン上に接着剤を塗布し、そのまま絵柄等を印刷した紙基材やプラスチックフィルムを接着、またはプラスチックの溶融押し出し等によりラミネートして、電磁波シールドフィルムや非接触型メディアを得ることもできる。勿論、あらかじめ粘着剤、接着剤が塗布された基材を使用することもできる。
また、上記印刷方式を用いて導電性パターンを印刷し、通常の熱乾燥後または活性エネルギー線を用いて硬化させた後、導電性パターンの抵抗値をさらに低減させる、あるいは抵抗値の安定性を高める目的で、熱風乾燥オーブンを通して導電性パターンを加熱してもよい。加熱温度は特に限定されないが、使用する基材や印刷速度によって使用可能な温度で加熱することが好ましい。
加熱は、熱ロールまたは熱プレスロールを通して行ってもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、「部」および「%」とは、「重量部」および「重量%」をそれぞれ表す。
金属ナノ粒子の収率は、得られた非水溶液中の溶媒を除去し、残った固形分中の金含有属量と理論収量を比較算出することにより求めた。
金属含有量は、金属ナノ粒子分散体を、120℃にて乾燥させた後、残った固形分中の金属含有量を熱分析測定装置TG/DTA6200(セイコーインスツル株式会社製)での測定より求めた。
粒径は、透過型電子顕微鏡装置JEM101(日本電子株式会社製)により観察した粒子300個の一次粒子径を計測して求めた平均粒子径である。
[実施例1]
トルエン17部にペンタン酸銀2.3部を混合した液に、分散剤としてリノール酸0.03部およびジエチルアミノエタノール(DEAE)0.9部を添加し、第一溶液とした。次に、還元剤であるアジピン酸ジヒドラジド(ADH)3.5部を精製水20.4部に溶解させ、第二溶液とした。
2つのシリンジポンプにて第一溶液ならびに第二溶液を吸引し、各々4mL/minの吐出量にて微小流路の混合部位の温度を30℃に保ちながら流通させることで、還元反応により銀ナノ粒子を含む反応液を得た。得られた反応液に精製水20部を添加し懸濁させた後、二相に分離するまで静置し、下層部を除去する操作を3回繰り返すことにより精製し、銀ナノ粒子分散体を得た。上記微小流路は、T字型の形状で内径φ1.2mmのものを用いた。得られた銀ナノ粒子の収率は91%、平均粒子径は10nmであり、銀純度は91%であった。40℃にて一ヶ月保存した後でも、粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例2]
微小流路の流路径を内径φ3mmに変更した以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体を得た。得られた銀ナノ粒子の収率は85%、平均粒子径は12nmであり、銀純度は90%であった。40℃にて一ヶ月保存した後でも、粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例3]
第一溶液の吐出量を2mL/minとした以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体を得た。得られた銀ナノ粒子の収率は82%、平均粒子径は8nmであり、銀純度は90%であった。40℃にて一ヶ月保存した後でも、粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例4]
第二溶液の吐出量を2mL/minとした以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体を得た。得られた銀ナノ粒子の収率は75%、平均粒子径は8nmであり、銀純度は88%であった。40℃にて一ヶ月保存した後でも、粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例5]
第一溶液の吐出量を0.8mL/minとした以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体を得た。得られた銀ナノ粒子の収率は35%、平均粒子径は9nmであり、銀純度は89%であった。40℃にて一ヶ月保存した後でも、粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例6]
第一溶液の吐出量を0.8mL/minとし、第一溶液のリノール酸を0.15部に変更した以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体を得た。得られた銀ナノ粒子の収率は70%、平均粒子径は8nmであり、銀純度は85%であった。40℃にて一ヶ月保存した後でも、粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例7]
原料の金属塩をプロピオン酸銀1.8部、分散剤をオレイン酸に変更した以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体を得た。得られた銀ナノ粒子の収率は88%、平均粒子径は、11nmであり、銀純度は90%であった。40℃ にて一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例8]
原料の金属塩をミリスチン酸銀3.3部に変更した以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体を得た。得られた銀ナノ粒子の収率は93%、平均粒子径は、9nmであり、銀純度は89%であった。40℃にて一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例9]
分散剤をエルカ酸0.03部、還元剤をコハク酸ジヒドラジド(SUDH)3.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体を得た。得られた銀ナノ粒子の収率は85%、平均粒子径は、8nmであり、銀純度は90%であった。40℃ にて一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例10]
還元剤をコハク酸ジヒドラジド(SUDH)3.0部、金属塩をプロピオン酸銀1.8部に変更した以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体を得た。得られた銀ナノ粒子の収率は86%、平均粒子径は、10nmであり、銀純度は91%であった。40℃ にて一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例11]
原料の金属塩をパルミチン酸銀3.6部に変更した以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体を得た。得られた銀ナノ粒子の収率は89%、平均粒子径は、8nmであり、銀純度は87%であった。40℃にて一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例12]
原料の金属塩をペンタン酸銅1.7部に変更した以外は、実施例1と同様にして赤色の銅ナノ粒子分散体を得た。得られた銅ナノ粒子の収率は65%、平均粒子径は、11nmであり、銅純度は89% であった。40℃にて一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例13]
分散剤の脂肪酸をアラキドン酸0.03部に変更した以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体を得た。得られた銀ナノ粒子の収率は82%、平均粒子径は、11nmであり、銀純度は89%であった。40℃にて一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[比較例1]
実施例1と同様にして第一溶液および第二溶液を作製した。第一溶液をフラスコに入れ撹拌しながら、第二溶液を滴下した後、4h撹拌することで還元反応させた。しかし、この条件ではほとんどの粒子が凝集沈殿してしまい、ナノ粒子を得ることができなかった。
[比較例2]
第一溶液および第二溶液を実施例1と同様に作製した。2つのシリンジポンプにて第一溶液ならびに第二溶液を吸引し、各々4mL/minの吐出量にてフラスコに滴下することで並行注入による還元反応を行った。しかし、この条件ではほとんどの粒子が凝集沈殿してしまい、ナノ粒子を得ることができなかった。
[比較例3]
混合部位の流路径を内径φ30mmに変更した以外は、実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散体の作製を行った。しかし、この条件ではほとんどの粒子が凝集沈殿してしまい、ナノ粒子を得ることができなかった。
[比較例4]
第一溶液のリノール酸を0.3部に変更した以外は、比較例1と同様にして銀ナノ粒子分散体の作製を行った。得られた銀ナノ粒子の収率は85%、平均粒子径は、7nmであり、銀純度は83%であった。40℃ にて一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
実施例1〜13、比較例4で得られた銀ナノ粒子分散体のトルエンを、ロータリーエバポレータを用いて留去し、固形分50%に濃縮して作成した導電性インキを、PET基板上に、スピンコート法によって塗布、120℃の熱風乾燥オーブン中で60分乾燥および焼結させて導電性被膜物を得た。
導電性被膜物の膜厚、体積抵抗値について以下の方法で評価した。結果を表1および2に示す。
[膜厚]
導電性被膜物の膜厚を膜厚計(株式会社仙台ニコン製「M H−15M型」)で測定した。
[体積抵抗値]
導電性被膜物を3mm幅に加工した後、導電性被膜物を30mm感覚で4箇所はさみ、その抵抗値を四探針抵抗測定器(三和電気計器株式会社製「DR−1000CU型」)で測定し、得られた抵抗値と膜厚から体積抵抗値を算出した。
Figure 2014091849
Figure 2014091849
表1および2より、実施例1〜13で得られた本発明の金属ナノ粒子分散体を使用することで、120℃ 以下の温和な乾燥条件においても、ほとんどの実施例で10- 5Ω・cmオーダー以下の体積抵抗値が得られ、PET基材上への導電性被膜物が可能となった。
一方、比較例1〜3は、微小流路を用いなかったためにナノ粒子分散体を得ることができなかった。また、比較例4は、ナノ粒子分散体を得られたものの、金属濃度が低いため抵抗値が5000000×10−6Ω・cm(=50Ω・cm)と非常に高い結果となった。

Claims (10)

  1. 脂肪酸の金属塩化合物と、分子量が1000未満である分散剤とを分散及び/又は溶解した非水性溶液である第一溶液と、還元剤である下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを溶解した水溶液である第二溶液とを微小流路内で混合させ、前記金属塩化合物を還元させることを特徴とする、平均粒子径が0.1〜200nmである金属ナノ粒子非水分散体の製造方法。
    Figure 2014091849

    (式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)
  2. 前記第一溶液と前記第二溶液の流量比率が、第一溶液/第二溶液=0.3〜3であることを特徴とする請求項1記載の金属ナノ粒子分散体の製造方法。
  3. 前記第一溶液と第二溶液の混合が、相当径10mm以下の微小流路で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の金属ナノ粒子分散体の製造方法。
  4. 前記分散剤が、炭素数3〜22である飽和脂肪酸および炭素数3〜22である不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の金属ナノ粒子分散体の製造方法。
  5. 前記脂肪酸の金属塩化合物を構成する金属が、銀および銅から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の金属ナノ粒子分散体の製造方法。
  6. 多塩基酸ポリヒドラジドが二塩基酸ジヒドラジドである請求項1〜5いずれか一項に記載の金属ナノ粒子分散体の製造方法。
  7. 請求項1〜6いずれか記載の金属ナノ粒子分散体の製造方法により製造されてなる金属ナノ粒子分散体。
  8. 請求項7記載の金属ナノ粒子分散体を含有することを特徴とするインキ。
  9. 請求項8記載のインキを基材上に塗布してなる被膜。
  10. 請求項9記載の被膜物を、150℃以下で焼成してなる導電性被膜物。
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