JP2016111927A - 生物材料の低温保存用の保存剤及び低温での生物材料の保存方法 - Google Patents

生物材料の低温保存用の保存剤及び低温での生物材料の保存方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フラボノール化合物を含む生物材料の低温保存用の保存剤を提供する。【解決手段】ミリセチン、クエルセチン、ケンペロール、ガランギン、イソラムネチン、フィセチン及びフラボノールからなる群から選ばれる少なくとも1種であるフラボノイド配糖体化合物、又は、フラボノール構造を有する化合物を含む、動物若しくは植物細胞、培養細胞シート、組織、器官又は臓器、又は、牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉、貝類、穀類、野菜若しくは果実、又は花卉である、である生物材料の低温保存用の保存剤。【選択図】なし

Description

本発明は、生物材料の低温保存用の保存剤、並びに該保存剤を含む生物材料の低温保存用の保存液及び臓器保存液に関する。さらに、本発明は、低温での生物材料の保存方法及び臓器の保存方法に関する。
細胞は細胞膜を挟んで細胞内外でイオンの組成が異なっており、この電荷を持つイオンの分布の差が、電位差をもたらす。通常、細胞内は細胞外に対して負の電位にあり(膜電位)、この膜電位は生物共通の基本原理として動植物を問わず存在している。膜電位の調節機構は生命維持や細胞の機能を発揮するのに必須であり、その破綻は生命あるいは細胞の死に直結する。
このため、細胞内外の膜上には様々なイオンポンプやイオンチャンネルがあり、恒常的にイオンバランスの調節が行われている。その最も重要な調節機構として、動物細胞ではナトリウムポンプ(Na+-K+ATPase)が、植物細胞ではプロトンポンプ(H+-ATPase)が挙げられる。これらのイオンポンプはATPエネルギーを利用して特定のイオンを能動輸送する膜タンパク質である。何らかの原因によりATPが枯渇あるいは環境温度が至適範囲から逸脱するとイオンポンプの機能は低下あるいは停止することになる。
動物細胞では生理的条件下では主にナトリウムポンプの働きによって、1回毎に細胞内のナトリウムイオン3つが細胞外に汲み出され、逆にカリウムイオン2つが細胞外から細胞内に汲み入れられる。したがって、通常は細胞内はカリウム濃度が高く(ナトリウム濃度は低く)、細胞外はナトリウム濃度が高く(カリウム濃度は低く)維持されている。細胞は一定の温度以下の低温になるとナトリウムポンプの機能が低下し、ナトリウムを細胞外に汲み出すことができなくなり、細胞内のナトリウム濃度が上昇する。ナトリウム濃度の上昇に伴い細胞内浸透圧が上昇し、水分子の流入により細胞が膨潤、最終的に細胞破裂(細胞障害)に至る。
医療現場での臓器移植に際し、移植用臓器を低温保存した場合の細胞障害は、上記のメカニズムが主要な原因の一つと考えられ、電解質の基本組成を細胞内型の低ナトリウム、高カリウムとした臓器保存液が開発された。その代表例がユーロコリンズ(EC)液やUW (University of Wisconsin)液である。これらは、それまでのリンゲル液を中心とした細胞外型(高ナトリウム、低カリウム)の保存液と比べ、大幅な臓器保存期間の延長を可能とし、国内外において主要な臓器保存液として臨床応用されている。しかしながら、これら細胞内型保存液は保存温度が上昇した場合には一転して細胞障害性を起こす危険性を持っている。また、これらが全ての組織、臓器に適用できるわけではなく、更なる保存期間の延長も含め、より一層の性能向上が待望されている。
近年、再生医療の発展は著しく、胚性幹細胞(ES細胞)並びに人工多能性幹細胞(iPS細胞)の医療応用が期待されているが、これらの幹細胞の最も効果的な維持培養法は、マウス胚性線維芽(MEF)細胞フィーダー細胞層での共培養とされている。このMEF細胞の長期保存は-80℃ディープフリーザーあるいは液体窒素内での凍結保存が一般的であるが、短期保存では細胞を凍結することは必ずしも好ましいことではなく、凍結せず低温で保存することができれば、その応用範囲が広がることが期待される。
一方、ウシ体外受精技術は、屠畜場由来の卵巣から良質な体外受精胚の作製を可能とした。しかし、食肉処理場でのBSE検査開始に伴って、検査結果が陰性と判明するまで採取した卵巣を持ち出すことが困難となっている。そのため、屠畜から体外受精卵を作製するまでの間、生存性への影響を最小限にした形で卵巣を保存することが必要とされている。また、ウシ体外受精用の卵子はウシ生体からも採取されているが、ウシ生体より採取した後、直ぐに適切な条件で培養を行わなければ生存性を保持できないという問題がある。
家畜育種の分野でも卵巣(卵子細胞)、受精卵、精子などの低温保存に関しては現在もなお、様々な課題が残されており、成功率が高く且つ簡便な保存及び輸送方法の開発は、家畜育種産業の発展に大きく寄与することが可能となる。
このような問題に対応するための方法として、特許文献1には、シクロヘキシミドに代表されるタンパク質合成阻害剤を含有する培地を用いることにより採取した未成熟卵子を室温条件下且つ大気中で保存する方法が開示されている。また、特許文献2には、ウシ卵巣を保存液に浸漬し、10〜20℃で冷却保存することによりウシ卵巣を保存する方法が開示されている。
さらに、上記のような細胞や臓器を保存する技術としては、例えば、次の特許文献3〜6に開示がある。
特許文献3には、一以上のポリフェノールを含む保存溶液を生物学的材料に添加し、冷却することによる生物学的材料の保存方法が開示され、実施例においてはポリフェノールとしてはカテキン類が開示されているのみである。
特許文献4には、細胞培養液中にエンケファリン誘導体を添加することによる、水が結晶化しない温度、例えば4℃前後の温度で細胞を冷蔵保存する方法が開示されている。
特許文献5には、ポリフェノールと0.0001〜0.05重量%のアスコルビン酸又はアスコルビン酸金属塩とを含有する、細胞保存剤、組織保存剤等として使用するための医用ポリフェノール溶液、当該医用ポリフェノール溶液によりポリフェノールの分解が抑制され、過酸化水素の発生が抑制されることが開示されている。そして、実施例においてはポリフェノールとしてはエピガロカテキンガレート(EGCg)が開示されているのみである。
特許文献6には、有効成分としてエピガロカテキンガレートを90質量%以上含有する保存剤用組成物が開示され、エピガロカテキンガレートを高純度に精製して用いることで細胞の保存効果をより一定にできることが記載されている。
また、特許文献7では、水溶液の過冷却能力を促進する能力があるフラボノイド配糖体について開示され、この過冷却促進物質を用いることにより水が約-15℃程度で利用できる不凍性液体となるので当該不凍性液体中で生物材料等を保存できることが記載されている。特許文献7で開示されている過冷却促進物質のフラボノイド配糖体の使用方法としては、次の特許文献8〜10にも報告がある。
特許文献8には、上記フラボノイド配糖体を含んだ過冷却状態を維持できる飲料が開示されている。また、特許文献9には、ガラス化溶液に上記フラボノイド配糖体を含んだ凍結保存液が開示され、従来のガラス化溶液よりも毒性が低く、保存による細胞等の生存性を上昇させることができることが記載されている。
さらには、特許文献10には、上記フラボノイド配糖体を含む臓器保存液を用いることにより、凍結が起こらない状態で0℃以下の温度で動物の臓器を保存することが可能となることが開示されている。
特開2001-89302号公報 特開平5-112401号公報 特表2007-519712号公報 特開2002-335954号公報 特開2006-188436号公報 特開2003-267801号公報 国際公開第2008/007684号 特開2009-219394号公報 特開2009-219395号公報 特開2009-221128号公報
特許文献1〜6には細胞や臓器を保存する溶液にフラボノール構造を有する化合物を使用することは実質的には開示されていない。特許文献7、10には、フラボノイド配糖体を用いることにより、凍結することなく、氷点下の温度にまで過冷却できるため、凍結による傷害を伴うことなく0℃以下で細胞などを保存できることが開示されているが、通常の低温条件での低温障害の軽減については開示されていない。また、糖を含まないフラボノール化合物について、このような開示はない。
細胞や臓器、生体組織などを低温下で簡便に保存することは、一般に実施されている方法である。しかしながら、対象物の凍結を伴わない場合でも、その低温条件に起因する障害が発生することも知られている。
本発明では、これらの低温障害を軽減すべく、糖を有しないフラボノール化合物を使用することによる、生物材料の低温保存用の保存剤、該保存剤を含む生物材料の低温保存用の保存液、及びフラボノール化合物を用いた低温での生物材料の保存方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、糖を有していないフラボノール構造を有する特定の化合物を、過冷却能力を有する特定のフラボノイド配糖体化合物と併用し、凍結を伴わない氷点下前後の低温から通常の冷蔵温度までの低温で細胞を保存することで、相乗効果により細胞の生存率が高められ低温障害保護効果が得られるという知見を得た。本発明は、これら知見に基づき完成されたものであり、次の保存剤、保存液、及び保存方法を提供するものである。
(I) 保存剤
(I-1) 式(I):
Figure 2016111927
〔式中、R1〜R9は、同一又は異なって、-H、-OH又はアルコキシ基である〕で表されるフラボノイド化合物、及び
式(II):
Figure 2016111927
〔式中、R10及びR11は、-H、-OH又はグルコース残基であって、少なくとも一方はグルコース残基であり、R12〜R18は、同一又は異なって、-H、-OH又はアルコキシ基である〕で表されるフラボノイド配糖体化合物を含む生物材料の低温保存用の保存剤。
(I-2) 前記式(I)で表されるフラボノイド化合物がミリセチン、クエルセチン、ケンペロール、ガランギン、イソラムネチン、フィセチン及びフラボノールからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記式(II)で表されるフラボノイド配糖体化合物がクエルセチン-3-グルコシド、ケンペロール-7-グルコシド及びアピゲニン-7-グルコシドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、(I-1)に記載の保存剤。
(I-3) 前記生物材料が動物若しくは植物細胞、培養細胞シート、組織、器官又は臓器である、(I-1)又は(I-2)に記載の保存剤。
(I-4) 前記生物材料が卵子細胞、受精卵細胞、精子細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、成体幹細胞、組織幹細胞、線維芽細胞、フィーダー細胞、血管内皮細胞、骨髄細胞、免疫細胞、肝細胞、腎臓細胞、神経細胞、膵臓細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、筋芽細胞、角膜細胞、網膜細胞、軟骨細胞、軟骨前駆細胞、滑膜由来細胞、滑膜幹細胞、骨芽細胞、歯芽細胞、歯根膜細胞、口腔粘膜細胞、間葉系幹細胞、脂肪細胞、脂肪幹細胞、卵巣、精液、血液、血球、血小板又は心臓である、(I-1)〜(I-3)のいずれか一項に記載の保存剤。
(I-5) 前記生物材料が食品としての牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉、貝類、穀類、野菜若しくは果実、又は花卉である、(I-1)又は(I-2)に記載の保存剤。
(I-6) 前記低温は前記生物材料が完全な凍結をしない温度、すなわち、-15℃〜20℃の温度である、(I-1)〜(I-5)のいずれか一項に記載の保存剤。
(I-7) 式(I)で表されるフラボノイド化合物及び式(II)で表されるフラボノイド配糖体化合物を含む低温障害保護剤。
(II) 保存液
(II-1) (I-1)〜(I-7)のいずれか一項に記載の保存剤を含む生物材料の低温保存用の保存液。
(II-2) (I-1)〜(I-7)のいずれか一項に記載の保存剤を含む臓器保存液。
(III)保存方法
(III-1) (I-1)で規定される式(I)で表されるフラボノイド化合物及び式(II)で表されるフラボノイド配糖体化合物を含む溶液に生物材料を浸漬し、該溶液を低温に保持することを特徴とする生物材料の保存方法。
(III-2) 前記式(I)で表されるフラボノイド化合物がミリセチン、クエルセチン、ケンペロール、ガランギン、イソラムネチン、フィセチン及びフラボノールからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記式(II)で表されるフラボノイド配糖体化合物がクエルセチン-3-グルコシド、ケンペロール-7-グルコシド及びアピゲニン-7-グルコシドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、(III-1)に記載の方法。
(III-3) 前記生物材料が動物若しくは植物細胞、培養細胞シート、組織、器官又は臓器である、(III-1)又は(III-2)に記載の方法。
(III-4) 前記生物材料が卵子細胞、受精卵細胞、精子細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、成体幹細胞、組織幹細胞、線維芽細胞、フィーダー細胞、血管内皮細胞、骨髄細胞、免疫細胞、肝細胞、腎臓細胞、神経細胞、膵臓細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、筋芽細胞、角膜細胞、網膜細胞、軟骨細胞、軟骨前駆細胞、滑膜由来細胞、滑膜幹細胞、骨芽細胞、歯芽細胞、歯根膜細胞、口腔粘膜細胞、間葉系幹細胞、脂肪細胞、脂肪幹細胞、卵巣、精液、血液、血球、血小板又は心臓である、(III-1)〜(III-3)のいずれか一項に記載の方法。
(III-5) 前記生物材料が食品としての牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉、貝類、穀類、野菜若しくは果実、又は花卉である、(III-1)又は(III-2)に記載の方法。
(III-6) 前記低温は前記生物材料が完全な凍結をしない温度、すなわち、-15℃〜20℃の温度である、(III-1)〜(III-5)のいずれか一項に記載の方法。
(III-7) (I-1)で規定される式(I)で表されるフラボノイド化合物及び式(II)で表されるフラボノイド配糖体化合物を含む溶液に臓器を浸漬することを特徴とする臓器の保存方法。
本発明の保存剤及び方法により、完全に凍結をしない-15℃から20℃の通常の冷蔵保管の低温で生物材料を保存することで、2種類の化合物の相乗効果により細胞等の生物材料の生存率を高めることができ低温障害保護効果が得られる。したがって、生物材料の保存に適した低温下で且つそれに起因する低温障害を抑制することができる条件で、生物材料を保存することが可能となるので、細胞や臓器等の生物材料の更なる生存率の向上が期待できる。そのため、本発明は、臓器移植、輸血医療、再生医療、家畜育種、生鮮食品などの分野における応用が期待できる。
試験例1における生理食塩水中でのHL-60細胞の低温(4℃)保存に対する化合物(I)と化合物(II)との併用効果を示すグラフである。(A)クエルセチンとA7Gの併用、(B)クエルセチンとK7Gの併用、図中のプロットはそれぞれ(1)化合物(II)単独の生存細胞数、(2)化合物(I)と化合物(II)を併用した場合の生存細胞数、(3)化合物(I)単独の生存細胞数と化合物(II)単独の生存細胞数の合計値の平均値及び標準偏差値(n=3)を表す。 試験例1におけるUW液中でのHL-60細胞の低温(4℃)保存に対する化合物(I)と化合物(II)との併用効果を示すグラフである。(A)クエルセチンとA7Gの併用、(B)クエルセチンとQ3Gの併用、(C)クエルセチンとK7Gの併用、図中のプロットはそれぞれ(1)化合物(II)単独の生存細胞数、(2)化合物(I)と化合物(II)を併用した場合の生存細胞数、(3)化合物(I)単独の生存細胞数と化合物(II)単独の生存細胞数の合計値の平均値及び標準偏差値(n=3)を表す。 試験例2における生理食塩水中でのHAEC細胞の低温(-5℃)保存に対する化合物(I)(クエルセチン)と化合物(II)(K7G)との併用効果を示すグラフである。図中のプロットはそれぞれ(1)化合物(II)単独の生存細胞数、(2)化合物(I)と化合物(II)を併用した場合の生存細胞数、(3) 化合物(I)単独の生存細胞数と化合物(II)単独の生存細胞数の合計値の平均値及び標準偏差値(n=3)を表す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の生物材料の低温保存用の保存剤は、式(I):
Figure 2016111927
〔式中、R1〜R9は、同一又は異なって、-H、-OH又はアルコキシ基である〕で表されるフラボノイド化合物、及び
式(II):
Figure 2016111927
〔式中、R10及びR11は、-H、-OH又はグルコース残基であって、少なくとも一方はグルコース残基であり、R12〜R18は、同一又は異なって、-H、-OH又はアルコキシ基である〕で表されるフラボノイド配糖体化合物を含むことを特徴とする。
また、本発明の生物材料の保存方法は、上記式(I)で表されるフラボノイド化合物及び式(II)で表されるフラボノイド配糖体化合物を含む溶液に生物材料を浸漬し、該溶液を低温に保持することを特徴とする。
R1〜R4、R12及びR13は、好ましくは、同一又は異なって、-H又は-OHである。
上記アルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、特に好ましくは-OCH3である。当該アルコキシ基のアルキル部分は、直鎖状又は分枝状のいずれであってもよい。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられる。
上記フラボノイド化合物(I)としては、例えば、ミリセチン(Myricetin)、クエルセチン(Quercetin)、ケンペロール(Kaempferol)、ガランギン(Galangin)、イソラムネチン(Isorhamnetin)、フィセチン(Fisetin)、フラボノール(Flavonol)などが挙げられる。
上記フラボノイド配糖体化合物(II)としては、例えば、クエルセチン-3-グルコシド(Quercetin-3-Glucoside)(Q3G)、ケンペロール-7-グルコシド(Kaempferol-7-Glucoside)(K7G)、アピゲニン-7-グルコシド(Apigenin-7-Glucoside)(A7G)などが挙げられる。
上記フラボノイド化合物(I)及びフラボノイド配糖体化合物(II)は、公知の方法により化学的に合成することができるし、植物等の生物に含まれているので、これらから公知の方法により抽出することで入手することもできる。また、市販品により入手することも可能である。
本発明において低温とは、前記生物材料が完全な凍結をしない温度、すなわち、-15℃以上、好ましくは-10℃以上、より好ましくは-5℃以上且つ20℃以下、好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下の温度である。
本明細書で使用する低温障害とは、低温により引き起こされる細胞障害を意味し、低温障害保護効果とは、該低温障害から細胞を保護する効果を意味する。したがって、この意味を勘案すると、本発明の保存剤は低温障害保護剤と称することもできる。
本発明で使用する生物材料としては、本発明の効果が得られる限り、どのような生物由来のものであっても制限されないが、例えば、動物又は植物細胞、培養細胞シート、組織、器官、臓器、個体などが挙げられる。当該組織、器官及び個体は動物及び植物の何れに由来するものであってもよい。本発明が対象とする動物としては、哺乳類(ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラットなど)が望ましい。
動物細胞としては、卵子細胞、受精卵細胞、精子細胞、ES細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞、成体幹細胞、造血幹細胞、組織幹細胞、線維芽細胞、フィーダー細胞、骨髄(幹)細胞、歯髄(幹)細胞、免疫細胞、肝細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、血液細胞(血球)(赤血球、白血球及び血小板)、心筋細胞、骨芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞、骨細胞、破骨細胞、軟骨細胞、軟骨前駆細胞、脂肪細胞、脂肪幹細胞、上皮細胞、内皮細胞、筋細胞、表皮細胞、筋芽細胞、角膜細胞、網膜細胞、滑膜由来細胞、滑膜幹細胞、歯芽細胞、歯根膜細胞、口腔粘膜細胞、間葉系幹細胞などが挙げられる。免疫細胞とは、免疫反応に関与する細胞のことを意味し、そのような細胞としては、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、単球、樹状細胞、マクロファージ、好酸球、好中球、好塩基球などが挙げられる。
動物の器官及び臓器としては、卵巣、精液、血液、皮膚、血管、隔膜、角膜、腎臓、心臓、脳、肝臓、眼球、脾臓、肺、腸、神経、胎盤、臍帯、網膜などが挙げられ、心臓が特に好ましい。
また、本発明で使用する生物材料としては、食品として使用される食肉類、動物及び植物であってもよく、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉、貝類、穀類、野菜、果実などが挙げられる。その他の生物材料としては、観賞用の植物である花卉が挙げられる。
本発明の保存剤は、フラボノイド化合物(I)及びフラボノイド配糖体化合物(II)以外にも、公知の添加剤が適宜配合されていてもよい。
本発明の生物材料の低温保存用の保存液は、上記保存剤を含むことを特徴とする。本発明において生物材料を低温保存する際には、フラボノイド化合物(I)及びフラボノイド配糖体化合物(II)は、通常、溶液として使用する。フラボノイド化合物(I)及びフラボノイド配糖体化合物(II)を溶解する溶剤としては、特に限定されないが、例えば、生理食塩水、輸液類(電解質輸液、栄養輸液、糖質輸液、アミノ酸輸液、ブドウ糖液、リンゲル液、酢酸リンゲル液、乳酸リンゲル液等)、緩衝液(PBS、トリス緩衝液、Hepes緩衝液、MOPS緩衝液、PIPES緩衝液等)、細胞培養液(RPMI1640、DMEM等)、臓器保存液(EC液、UW液等)、モデナ液などが挙げられる。
本発明の保存液におけるフラボノイド化合物(I)の濃度としては、通常、0.001〜1000μg/ml、好ましくは0.01〜100μg/mlである。本発明の保存液におけるフラボノイド配糖体化合物(II)の濃度としては、通常、0.001〜1000μg/ml、好ましくは0.01〜100μg/mlである。なお、本発明の保存液には従来の他の成分、例えば、緩衝剤、抗生物質、抗菌剤、抗酸化剤、血清、糖類、脂質、ビタミン、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、pH指示薬、キレート剤、浸透圧調節剤などを含むこともできる。
本発明において、生物材料の保存は、フラボノイド化合物(I)及びフラボノイド配糖体化合物(II)を含む溶液に生物材料を浸漬することにより行うことができる。その際、該溶液は生物材料を浸漬する前に低温に冷却されてもよいし、また生物材料を浸漬した後に低温に冷却されてもよい。生物材料を含む溶液が一旦低温まで冷却された後は、低温に保持されるが、常に一定の温度に維持される必要はなく、短時間なら低温の範囲外の温度になってもよい。
上記フラボノイド化合物(I)及びフラボノイド配糖体化合物(II)は、臓器保存液の成分として特に好適に使用することができる。また、本発明において、臓器の保存は、フラボノイド化合物(I)及びフラボノイド配糖体化合物(II)を含む溶液に臓器を浸漬することにより行うことができる。このように、フラボノイド化合物(I)及びフラボノイド配糖体化合物(II)を臓器保存液の成分として使用する場合の溶剤の種類、化合物の濃度、他の成分などの各種条件は前述するものと同様である。
フラボノイド配糖体化合物(II)は、特許文献7に過冷却促進剤として使用できることが記載されている。当該フラボノイド配糖体化合物(II)を、フラボノイド化合物(I)と併用することで相乗効果を発揮し、各々の化合物単独で得られる効果の合計を上回る低温障害保護効果を得られることが本発明により初めて明らかになった。
本発明のフラボノイド化合物(I)及びフラボノイド配糖体化合物(II)を含む溶液を使用することにより、低温で細胞を保存することで、生物材料の生存率を有意に高めることができ低温障害保護効果が得られる。本発明は、生物材料の保存に適した低温下で且つそれに起因する低温障害を抑制できるので、細胞や臓器等の生物材料を適切な状態で保存することが可能となる。
上記のような特徴を有する本発明の保存液は、臓器移植の分野における摘出臓器(特に心臓)の保存液、輸血医療分野における血球成分の保存液、再生医療分野におけるES細胞、iPS細胞、組織幹細胞及びフィーダー細胞の保存液、家畜育種の分野における卵巣、卵子細胞、受精卵及び精子細胞の保存液、生鮮食品の分野における青果(野菜・果物)、鮮魚及び精肉の保存液、観賞用植物の分野における花卉の保存液などとしての応用が期待される。
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
試験例1(インビトロ試験における化合物(I)と化合物(II)との併用効果1)
化合物(I)と化合物(II)を併用した時のヒト前骨髄性白血病細胞株HL-60(HL-60細胞)の低温障害に対する保護作用を以下の方法により評価した。
5%炭酸ガス、37℃のインキュベーター(三洋電機社製、MCO-17AIC)内において10%ウシ胎仔血清(Thermo社、No.SH3D396.03)を含有したRPMI-1640 (SIGMA社、No.R8758)(10%FBS-RPMI)培養液中で培養したHL-60細胞を回収し、4℃、1,000rpm、5分間遠心(TOMY社製、EIX-135)後、上清を除去し2×106個/mlとなるよう生理食塩水にて再懸濁した。この細胞懸濁液0.25 mlと供試化合物調製液0.25 mlを2 ml滅菌済マイクロチューブ内にて混合した。なお、化合物(I)及び化合物(II)は試験前にジメチルスルフォキサイド(ナカライテスク社、No.13407-45)(DMSO)にて100 mg/mlに溶解し、さらに化合物(II)は10倍公比にて10、1、0.1mg/ml希釈液(DMSO)を調製した。それぞれの化合物は生理食塩水(大塚製薬、大塚生食注)に500倍希釈となるよう単独あるいは混合添加し、供試化合物調製液とした。
この細胞懸濁液と供試化合物調製液との混合液を4℃に設定した冷却容器(TWINBIRD社製、No.SC-DF25)内にて約24時間静置した。その後10%FBS-RPMI培養液2.5 mlを添加して4℃、1,000rpm、5分間遠心した。上清除去後、2.5 mlの10%FBS-RPMI培養液にて懸濁し、96穴マイクロプレート(IWAKI社、No.3860-096)に0.1 ml/ウェル添加し、5%炭酸ガス、37℃のインキュベーター内で約24時間培養した。続いてWST-8液(ナカライテスク社、Cell Count Reagent SF、No.07553-44) 10μl/ウェルを添加し、更にインキュベーター内にて3時間培養した後、450 nmの波長にて吸光度を測定した(WAKO社、SPECTRA MAX250)。この吸光度の値から、前もって作成した細胞数と吸光度との標準線(生存細胞数=56375×吸光度、R2=0.9995)により生存細胞数として算定した。図1の(A)にクエルセチンとA7G、(B)にクエルセチンとK7Gを併用した結果を示す。
その結果、図1(A)及び(B)に示すように化合物(II)単独では低温障害保護効果がほとんど認められないか、十分な効果が得られない濃度範囲(0.1〜100μg/ml)で、化合物(II)と化合物(I)を併用することにより両者が相乗的に作用し、予想を上回る低温障害保護効果が得られることが確認された。
また、低温保存時に検討化合物を調製する溶媒を生理食塩水から、UW液(ビアスパン;アステラス製薬製)に変更して同様の試験を行った。図2の(A)にクエルセチンとA7G、(B)にクエルセチンとQ3G、(C)にクエルセチンとK7Gを併用した結果を示す。
その結果、図2(A)〜(C)に示すように化合物(II)単独では低温障害保護効果がほとんど認められない濃度範囲(0.1〜100μg/ml)で、化合物(II)と化合物(I)を併用することにより両者が相乗的に作用し、予想を上回る低温障害保護効果が得られることが確認された。
試験例2(インビトロ試験における化合物(I)と化合物(II)との併用効果2)
化合物(I)と化合物(II)を併用した時のヒト大動脈由来血管内皮細胞(HAEC)(Lonza、No.CC-2535)の低温障害に対する保護作用を以下の方法により評価した。
EGM-2培地(Lonza、No.CC-3162)に細胞を懸濁し、1×104個/0.1 ml/ウェルとなるように96穴マイクロプレートに播種し、5%炭酸ガス、37℃のインキュベーター内で2時間培養した。その後、上清を除去し、生理食塩水で1000倍希釈して濃度調整した化合物(I)(最終濃度0.01μg/ml)と化合物(II)(最終濃度10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/ml、又は0.01μg/ml)を単独あるいは混合液として細胞に0.1 ml/ウェル添加した。この96穴マイクロプレートを-5℃に設定した冷却容器内にて3日間保存した。続いて上清を除去しEGM-2培地に置き換え、5%炭酸ガス、37℃のインキュベーター内で約24時間培養した後、WST-8液10μl/ウェルを添加し、更に3時間培養した。450 nmの波長にて吸光度を測定し、前もって作成した細胞数と吸光度との標準線(生存細胞数=5170×吸光度、R2=0.999)から生存細胞数を算定した。
図3にクエルセチンとK7Gを併用した結果を示す。その結果、化合物(II)単独では低温障害保護効果が十分得られない濃度範囲(0.01〜1μg/ml)で、化合物(I)及び化合物(II)を併用することにより両者が相乗的に作用し、予想を上回る低温障害保護効果が得られることが確認された。
試験例3(インビボ試験における併用効果)
化合物(I)及び化合物(II)を併用した時の同種異所性心移植モデルにおける低温障害に対する保護作用を以下の方法により評価した。
心筋保護、心臓保存液としてUW液のみ、K7G (100μg/ml)を含有したUW液、及びK7G (100μg/ml)とクエルセチン(1μg/ml)を含有したUW液を用いた。
Lewisラットを麻酔下、胸骨正中切開し心臓を露出、剥離後、大動脈を腕頭動脈分岐直後で切断し、切断孔より前記心臓保存液約6 mlを注入し、心停止を得た。肺動脈を分岐直前で切断し、下大静脈は個別に結紮後、上大静脈・肺静脈を一括して結紮し心臓を取り出した。心内外の血液を十分に洗い流し、前記心臓保存液15 mlに浸漬後プログラムフリーザーを用いて、-5℃で24時間保存した。その後ドナーの大動脈とレシピエントの腹部大動脈を、ドナーの肺大動脈をレシピエントの下大静脈に単側吻合するという同種異所性心移植モデルを確立し再灌流を行った。
視覚的評価は、移植した心臓の収縮状態の評価を再灌流後15分及び2時間に行い、全く収縮しないものを「0」、正常収縮を「6」として肉眼観察にてスコア化し、その様子をビデオ撮影した。
また、病理学的評価には再灌流2時間後の収縮評価後に心臓を摘出し、24時間ホルマリン固定後、心筋組織をパラフィン包埋し組織切片を作製した。組織切片をDAPIにて核染色(対比染色)するとともに、TUNEL染色にてアポトーシス陽性細胞をカウントした。カウントには短軸切片で、左室自由壁の5〜7時の部位の任意の20箇所を選定し、蛍光顕微鏡を用いて400倍視野で蛍光を発する核を持つ細胞をアポトーシス陽性細胞と判断しカウントした。
2群間の比較はノンパラメトリック検定(Mann-Whitney test)で行い、P<0.05を統計的に有意差ありと判定した。
その結果、表1に示すとおり再潅流15分後及び2時間後の視覚的評価のスコアにおいて、K7G及びクエルセチンを含有するUW液処理群は、K7Gのみを含有するUW液処理群と比較して有意に高い値を示し、心臓機能がより正常に近い状態で維持されていることが確認された。なお、UW液のみの処理群のスコアは「0」であった。また、表2に示すとおり病理学的評価のアポトーシス陽性細胞数において、K7G及びクエルセチンを含有するUW液処理群は、K7Gのみを含有するUW液処理群と比較して有意に低い値を示し、再灌流後の心筋細胞のアポトーシス誘導が低く抑えられていることが確認された。
Figure 2016111927
Figure 2016111927

Claims (13)

  1. 式(I):
    Figure 2016111927
    〔式中、R1〜R9は、同一又は異なって、-H、-OH又はアルコキシ基である〕で表されるフラボノイド化合物、及び
    式(II):
    Figure 2016111927
    〔式中、R10及びR11は、-H、-OH又はグルコース残基であって、少なくとも一方はグルコース残基であり、R12〜R18は、同一又は異なって、-H、-OH又はアルコキシ基である〕で表されるフラボノイド配糖体化合物を含む生物材料の低温保存用の保存剤。
  2. 前記式(I)で表されるフラボノイド化合物がミリセチン、クエルセチン、ケンペロール、ガランギン、イソラムネチン、フィセチン及びフラボノールからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記式(II)で表されるフラボノイド配糖体化合物がクエルセチン-3-グルコシド、ケンペロール-7-グルコシド及びアピゲニン-7-グルコシドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の保存剤。
  3. 前記生物材料が動物若しくは植物細胞、培養細胞シート、組織、器官又は臓器である、請求項1又は2に記載の保存剤。
  4. 前記生物材料が卵子細胞、受精卵細胞、精子細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、成体幹細胞、組織幹細胞、線維芽細胞、フィーダー細胞、血管内皮細胞、骨髄細胞、免疫細胞、肝細胞、腎臓細胞、神経細胞、膵臓細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、筋芽細胞、角膜細胞、網膜細胞、軟骨細胞、軟骨前駆細胞、滑膜由来細胞、滑膜幹細胞、骨芽細胞、歯芽細胞、歯根膜細胞、口腔粘膜細胞、間葉系幹細胞、脂肪細胞、脂肪幹細胞、卵巣、精液、血液、血球、血小板又は心臓である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の保存剤。
  5. 前記生物材料が食品としての牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉、貝類、穀類、野菜若しくは果実、又は花卉である、請求項1又は2に記載の保存剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の保存剤を含む生物材料の低温保存用の保存液。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の保存剤を含む臓器保存液。
  8. 請求項1で規定される式(I)で表されるフラボノイド化合物及び式(II)で表されるフラボノイド配糖体化合物を含む溶液に生物材料を浸漬し、該溶液を低温に保持することを特徴とする生物材料の保存方法。
  9. 前記式(I)で表されるフラボノイド化合物がミリセチン、クエルセチン、ケンペロール、ガランギン、イソラムネチン、フィセチン及びフラボノールからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記式(II)で表されるフラボノイド配糖体化合物がクエルセチン-3-グルコシド、ケンペロール-7-グルコシド及びアピゲニン-7-グルコシドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記生物材料が動物若しくは植物細胞、培養細胞シート、組織、器官又は臓器である、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 前記生物材料が卵子細胞、受精卵細胞、精子細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、成体幹細胞、組織幹細胞、線維芽細胞、フィーダー細胞、血管内皮細胞、骨髄細胞、免疫細胞、肝細胞、腎臓細胞、神経細胞、膵臓細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、筋芽細胞、角膜細胞、網膜細胞、軟骨細胞、軟骨前駆細胞、滑膜由来細胞、滑膜幹細胞、骨芽細胞、歯芽細胞、歯根膜細胞、口腔粘膜細胞、間葉系幹細胞、脂肪細胞、脂肪幹細胞、卵巣、精液、血液、血球、血小板又は心臓である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記生物材料が食品としての牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉、貝類、穀類、野菜若しくは果実、又は花卉である、請求項8又は9に記載の方法。
  13. 請求項1で規定される式(I)で表されるフラボノイド化合物及び式(II)で表されるフラボノイド配糖体化合物を含む溶液に臓器を浸漬することを特徴とする臓器の保存方法。
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