JP2016110690A - 導電性基板 - Google Patents

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洋介 田口
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吉信 大森
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Abstract

【課題】導電性及び密着性に優れた導電性基板を提供することを目的とする。【解決手段】絶縁樹脂基材の一面側に多孔性銅層を備えた積層体であって、前記銅層の孔の少なくとも一部に、前記絶縁樹脂基材由来の成分を含む基材由来成分含有領域を有し、前記銅層の体積抵抗率が20μΩ・cm以下である、導電性基板である。【選択図】図1

Description

本発明は、導電性基板に関するものである。
従来、基材上に導電性の配線を施した回路基板の製造には、基材上にスパッタ等の蒸着法により金属層を形成し、或いは、基材上に金属箔を貼り合わせて金属層を形成し、当該金属層上にフォトレジストを塗布し、所望の回路パターンを露光し、ケミカルエッチングによりパターンを形成する方法等が用いられてきた。上記フォトレジスト法によれば、体積抵抗率が小さく、高性能の導電性基板を製造することができる。一方、当該方法は工程数が多く、煩雑であるとともに、フォトレジスト材料を要する等の欠点があった。
これに対し、金属粒子を分散させた金属粒子分散体を用いて、スクリーン印刷やインクジェット印刷などの印刷プロセスにより、基材に直接パターンを印刷し、金属粒子を焼結させることにより、回路パターンを形成する手法が注目されている。基材に直接パターンを印刷する手法によれば、従来のフォトレジスト法等と比較して、生産性が飛躍的に向上する。
しかしながら、このような金属粒子分散体を用いて回路パターンを形成する場合、得られる金属粒子の焼結膜は多孔質なものとなるため、前記フォトレジスト法と比較して、体積抵抗率を小さくすることや、基材と金属層との間の密着性を向上させにくいという問題があった。
特許文献1には、金属微粒子分散液を用いて、実用上十分な導電性を有し、基材と導電性薄膜の密着性が高い導電性基板を得る手法として、導電性薄膜の少なくとも最表面は金属微粒子が融着し、少なくとも基材と接する面では微粒子が粒子形状を維持するように焼成条件を調整する手法が開示されている。しかしながら特許文献1の手法は、基材と接する面の金属微粒子同士を敢えて融着していないため、導電性薄膜の体積抵抗率を更に低下することは困難であった。
特許文献2には、導電性が高く、基材との密着性に優れた導電膜として、金属銅および樹脂を有し、前記金属銅と前記樹脂の含有割合が厚み方向で所定の変化をしている導電膜が開示されている。当該導電膜の製造方法として、酸化銅粒子を含有する金属インクと、硬化性化合物を含有する樹脂インクとを準備し、混合比を調整しながら塗布し、半硬化することにより前駆体膜を形成した後、当該前駆体膜を硬化し、酸化銅粒子を還元し、焼結させる方法が開示されている。引用文献2によれば、酸化銅を用いることにより密着性が向上するとされている。
しかしながら当該特許文献2の手法では、酸化銅を還元処理しても全ての粒子が金属銅に還元されず、酸化銅が残存していた。また、導電膜の下層領域に存在する銅粒子は他の銅粒子と隣接しないものが多く、当該銅粒子は導電性に寄与していない。そのため、引用文献2の導電膜では、導電性が不十分であった。
特開2012−104857号公報 特開2014−98178号公報
本発明は、このような状況下になされたものであり、導電性及び密着性に優れた導電性基板を提供することを目的とする。
本発明に係る導電性基板は、絶縁樹脂基材の一面側に多孔性銅層を備えた積層体であって、前記銅層の孔の少なくとも一部に、前記絶縁樹脂基材由来の成分を含む基材由来成分含有領域を有し、前記銅層の体積抵抗率が20μΩ・cm以下であることを特徴とする。
本発明の導電性基板は、JIS−K 7121に準拠した示差走査熱量測定により測定された、前記絶縁樹脂基材のガラス転移温度(Tg)が150℃以下であることが、当該基材と銅層との密着性を向上する点から好ましい。
本発明の導電性基板は、前記基材由来成分含有領域において、前記銅層側表面から前記絶縁樹脂基材への方向を深さ方向とし、前記深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの、水平断面内における前記絶縁樹脂基材由来の成分の断面積占有率が、前記絶縁樹脂基材方向に近づくに従い漸次増加する構造を有することが、導電性及び密着性の点から好ましい。
また、本発明の導電性基板は、前記銅層側表面から前記絶縁樹脂基材への方向を深さ方向とし、飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記導電性基板の深さ方向プロファイルにおいて、
銅層側表面から、銅由来のイオンの検出強度Iが当該銅由来のイオンの最大検出強度Iの30%となる点までを基準深さDとし、前記銅層側表面から当該基準深さDの85%深さにおいて、絶縁樹脂基材由来のイオンの検出強度I’が、絶縁樹脂基材由来のイオンの最大検出強度I’の1%以上の検出強度を有することが、導電性及び密着性の点から好ましい。
本発明によれば、導電性及び密着性に優れた導電性基板を提供することができる。
図1は、本発明の導電性基板の一例を示す概略断面図である。 図2は、実施例1の導電性基板の断面SEM像を示す拡大写真である。 図3は、実施例2の導電性基板の断面SEM像を示す拡大写真である。 図4は、実施例3の導電性基板の断面SEM像を示す拡大写真である。 図5は、実施例4の導電性基板の断面SEM像を示す拡大写真である。 図6は、比較例1の導電性基板の断面SEM像を示す拡大写真である。 図7は、比較例2の導電性基板の断面SEM像を示す拡大写真である。 図8は、実施例1の導電性基板における、飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記導電性基板の深さ方向プロファイルである。 図9は、実施例2の導電性基板における、飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記導電性基板の深さ方向プロファイルである。 図10は、実施例3の導電性基板における、飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記導電性基板の深さ方向プロファイルである。 図11は、実施例4の導電性基板における、飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記導電性基板の深さ方向プロファイルである。 図12は、比較例1の導電性基板における、飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記導電性基板の深さ方向プロファイルである。 図13は、比較例2の導電性基板における、飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記導電性基板の深さ方向プロファイルである。
[導電性基板]
本発明に係る導電性基板は、絶縁樹脂基材の一面側に多孔性銅層を備えた積層体であって、前記銅層の孔の少なくとも一部に、前記絶縁樹脂基材由来の成分を含む基材由来成分含有領域を有し、前記銅層の体積抵抗率が20μΩ・cm以下であることを特徴とする。
上記本発明に係る導電性基板について、図を参照して説明する。図1は、本発明の導電性基板の一例を示す概略断面図である。本発明の導電性基板10は、絶縁樹脂基材1の一面側に多孔性銅層2を有している。本発明の導電性基板は、当該多孔性銅層2が有する孔の少なくとも一部の内部に絶縁樹脂基板由来の成分を含む基材由来成分含有領域3(以下、単に含有領域ということがある)を形成している。当該基材由来成分含有領域3を有することにより、絶縁樹脂基材1と多孔性銅層2とが接触する表面積が、平坦面である場合と比較して極めて大きいものとなるのみならず、複雑に入り組んだ孔の内部に絶縁樹脂基板由来の成分が入り込むため、優れた密着性を得ることができる。
また、本発明の導電性基板の多孔性銅層は、絶縁樹脂基板付近の銅粒子も焼結されて、銅粒子同士が融着しているため、体積抵抗率が20μΩ・cm以下を達成することができる。その結果、多孔性銅層を従来よりも薄層化した場合であっても優れた導電性を得ることができる。
このように本発明によれば、多孔性銅層と絶縁樹脂基材との密着性に優れ、多孔性銅層を薄層化した場合であっても導電性に優れた導電性基板を得ることができる。
本発明の導電性基板は、少なくとも絶縁樹脂基材と、基材由来成分含有領域を有する多孔性銅層を有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の層を有していてもよいものである。以下、このような本発明の導電性基板の構成について説明する。
<絶縁樹脂基材>
本発明の導電性基板は、基材として絶縁樹脂基材が用いられる。絶縁樹脂基材を用いることにより、多孔性銅層から基材側への漏電を防ぎ、且つ、多孔性銅層内に絶縁樹脂基材由来の成分を含む基材由来成分含有領域が形成される。
本発明においては、絶縁樹脂基材由来の成分が、多孔性銅層中に前記含有領域を形成する点から、絶縁樹脂基材中の樹脂のガラス転移温度(Tg)が、後述する多孔性銅層形成時の焼成温度よりも低いことが好ましく、中でもガラス転移温度(Tg)が150℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度(Tg)が150℃以下の樹脂を含む基材を用いることにより、多孔性銅層形成時の焼成において、多孔性銅層の孔内に上記樹脂成分自体が浸漬するため、前記含有領域が形成されやすく、密着性に優れている。
絶縁樹脂基材中に含まれるガラス転移温度(Tg)が150℃以下の樹脂の含有割合は、密着性の点から、絶縁樹脂基材全量に対して当該樹脂が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更により好ましい。
なお、本発明においてガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じて測定した示差走査熱量分析(DSC)測定により得られたものである。
また本発明において絶縁樹脂基材は、絶縁性を担保する点から、通常、体積抵抗率が10Ω・cm以上の基材の中から選択すればよく、中でも、10Ω・cm以上の基材を用いることが好ましい。
本発明の絶縁樹脂基材の好適な具体例としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラス−エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリノルボルネン等のポリシクロオレフィン、液晶性高分子化合物等の樹脂フィルムが挙げられ、多孔性銅層との密着性及び基材の絶縁性の点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが好ましい。
絶縁樹脂基材の形状は、用途に応じて適宜選択すればよく、平板状であっても、曲面を有するものであってもよいが、通常は平板状である。平板状の基材を用いる場合、当該基材の厚みは、用途に応じて適宜設定すればよく、例えば1μm〜1mm程度のものとすることができる。
<多孔性銅層>
本発明の導電性基板においては、前記絶縁樹脂基材の一面側に多孔性銅層を備えており、当該銅層の孔の少なくとも一部に、前記絶縁樹脂基材由来の成分を含む基材由来成分含有領域を有している。
本発明における多孔性銅層は、このような基材由来成分含有領域を有するため、前記絶縁樹脂基板との密着性に優れている。
なお、本発明において多孔性銅層とは、多数の孔を有する銅層をいい、同じ体積をもつ孔のない銅層よりも表面積が拡大されている。
本発明において多孔性銅層は、体積抵抗率が20μΩ・cm以下である。このように低体積抵抗率の多孔性銅層を用いることにより、薄層化した場合であっても優れた導電性を有する。なお、本発明において多孔質銅層の体積抵抗率は、表面抵抗計(ダイアインスツルメンツ製「ロレスタGP」、PSPプローブタイプ)を用い、導電性基板の多孔性銅層に4探針を接触させ、4探針法により表面抵抗を測定し、後述の方法により測定した多孔性銅層の膜厚から算出することができる。
本発明において多孔性銅層中の孔の形状は、少なくとも一部の孔に前記絶縁樹脂基材由来の成分が浸漬可能な形状であればよく、特に限定されない。少なくとも前記絶縁樹脂基材側の面においては、多数の孔が互いに連結した連通孔を有することが好ましい。
多孔性銅層中の孔の割合(空孔率)は、導電性と密着性を両立可能な範囲に適宜調整すればよく、特に限定されない。中でも、基材由来成分含有領域を形成しやすく、且つ、導電性に優れる点から、空孔率が5%〜25%であることが好ましく、10%〜20%であることがより好ましい。なお、本発明における空孔率は、銅が存在していない部分を表すものであり、前記絶縁樹脂基材由来の成分が存在する部分も含まれる。
本発明において空孔率は、導電性基板の断面(例えば、図2)を走査型電子顕微鏡(SEM)像から確認することができる。具体的には、得られたSEM像から孔の面積と、絶縁樹脂基材由来の成分の面積と、銅の面積とをそれぞれ算出し、孔の面積と前記絶縁基材由来成分の面積との合計を、多孔性銅層の面積(即ち、孔の面積と前記絶縁樹脂基材由来成分の面積と銅の面積との合計)で除することにより当該断面における空孔率を求めることができる。導電性基板の大きさに応じて適宜複数の断面について同様に空孔率を求め、その平均値を多孔性銅層の空孔率とする。
空孔率は、後述する製造方法において、銅粒子分散体に用いられる銅粒子の粒径や、分散剤の種類、焼成条件等により適宜調整することができる。
本発明において多孔性銅層の膜厚は、用途に応じて適宜調整すればよいものであるが、通常、0.01〜50μmの範囲であり、密着性及び導電性の点から、0.1〜20μmであることが好ましい。
多孔性銅層中の基材由来成分含有領域の厚みは、絶縁樹脂基材と多孔性銅層との密着性に優れる点から、多孔性銅層の膜厚の15%〜100%であることが好ましく、20%〜80%であることがより好ましい。本発明においては、当該銅層が孔を有していても優れた導電性を有していることから、基材由来成分含有領域の厚みが多孔性銅層の膜厚の100%、即ち、多孔性銅層の最表面まで絶縁樹脂基材由来の成分を含有している場合であっても導電性に優れている。
また、多孔性銅層中の基材由来成分含有領域は、前記銅層側表面から前記絶縁樹脂基材への方向を深さ方向とし、前記深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの、水平断面内における前記絶縁樹脂基材由来の成分の断面積占有率が、前記絶縁樹脂基材方向に近づくに従い漸次増加する構造を有することが、密着性及び導電性の点から好ましい。
なお、本発明において上記断面積占有率が漸次増加する構造を有することは、後述する飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)により測定された前記導電性基板の深さ方向プロファイルから確認することができる。
即ち、前記銅層側表面から前記絶縁樹脂基材への方向を深さ方向にプロファイルされたTOF−SIMSの測定結果において、銅由来のイオンがほぼ一定の強度(最大検出強度Iの80%強度まで)検出される範囲内で、絶縁樹脂基材由来のイオンの検出強度I’が漸次増加していれば、前記絶縁樹脂基材由来の成分の断面積占有率が漸次増加する構造を有すると判断できる。
更に本発明の多孔性銅層は、前記銅層側表面から前記絶縁樹脂基材への方向を深さ方向とし、飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記導電性基板の深さ方向プロファイルにおいて、
銅層側表面から、銅由来のイオンの検出強度Iが当該銅由来のイオンの最大検出強度Iの30%となる点までを基準深さDとし、前記銅層側表面から当該基準深さDの85%深さの点において、絶縁樹脂基材由来のイオンの検出強度I’が、絶縁樹脂基材由来のイオンの最大検出強度I’の1%以上の検出強度、好ましくは5%以上の検出強度、より好ましくは10%以上の検出強度を有することが、多孔性銅層と絶縁樹脂基材との密着性に優れ、且つ、導電性にも優れる点から好ましい。
また、前記銅層側表面から当該基準深さDの80%深さの点において、絶縁樹脂基材由来のイオンの検出強度I’が、絶縁樹脂基材由来のイオンの最大検出強度I’の1%以上の検出強度、好ましくは3%以上の検出感度、より好ましくは5%以上の検出感度であることが、多孔性銅層と絶縁樹脂基材との密着性に優れ、且つ、導電性にも優れる点から好ましい。
なお本発明において、基準深さDのX%深さの点とは、前記銅層側表面から深さ方向へ[D×X(%)]進んだ点をいう。
(導電性基板の深さ方向プロファイルの測定方法、及び評価方法)
本発明において導電性基板の深さ方向プロファイルは、導電性基板の多孔性銅層側表面を最表面とし、Cs(セシウム)イオン銃により一定の条件でソフトエッチングを繰り返しながら、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて、銅由来のイオンと、絶縁樹脂基材由来の成分に由来するイオン(単に、絶縁樹脂基材由来のイオンと称することがある)とを測定することにより得られる。
上記TOF−SIMSに用いられる飛行時間型二次イオン質量分析計としてはION TOF社製、TOF.SIMS5を用いることができる。
なお、測定対象となる銅由来のイオンは、通常、複数ある銅由来のイオンの中から他の成分由来のイオンとの切り分けが可能で、且つ十分な強度を有するものを選択すればよい。本発明においては、Cu3−イオンを選択することが好ましい。
また、上記絶縁樹脂基材由来の成分に由来するイオンは、予め絶縁樹脂基材を測定すること等により、複数ある絶縁樹脂基材由来のイオンの中から他の成分由来のイオンとの切り分けが可能で、且つ十分な強度を有するものを選択すればよい。
次に、実施例1(図8)の結果を参照して評価方法を説明する。図8は、実施例1の導電性基板の深さ方向プロファイルである。図8は、縦軸は検出強度(Intensity)を、横軸はエッチング回数を示す。エッチング回数0回の点は多孔性銅層側最表面の測定結果であり、以下エッチング回数が大きいほど、導電性基板の絶縁樹脂基材側に進んでいく。
実施例1の深さ方向プロファイルの結果に示される通り、銅由来のイオンの検出強度が十分に高く多孔性銅層内であると考えられるエッチング回数230回付近から、絶縁樹脂基材由来のイオンが検出され、エッチング回数の増加と共に検出強度が増大している。このように、実施例1の導電性基板は、多孔性銅層内に絶縁樹脂基材由来の成分を含む基材由来成分含有領域を有することが分かる。なお、実施例1では、絶縁樹脂基材としてPETフィルムを用いているため、絶縁樹脂基材由来の成分に由来するイオンとしてC イオンを選択し、銅由来のイオンとしてCu3−イオンを選択している。
なお、エッチング回数0〜5回の部分は、導電性基板表面に付着した不純物などを検出しているため、この部分は、後述する最大検出強度の評価対象とはしないものとする。
また、検出強度が10カウント以下の部分は、ノイズであると考えられるため、検出強度が10カウント以下の成分は不検出として取り扱うものとする。
本発明において上記深さ方向プロファイルは、少なくとも銅由来のイオンの検出強度が10カウント以下となり、絶縁樹脂基材由来の成分に由来するイオンの検出感度がほぼ一定となる部分まで測定すればよい。
まず、上記深さ方向プロファイルの結果から、銅由来のイオンの最大検出強度I、及び、絶縁樹脂基材由来のイオンの最大検出強度I’を求める。実施例1の場合、エッチング回数が167回の点で、銅由来のイオンの最大検出強度I=680であり、エッチング回数が405回の点で、絶縁樹脂基材由来のイオンの最大検出強度I’=421となった。
次に銅層側表面から、銅由来のイオンの検出感度Iが当該銅由来のイオンの最大検出強度Iの30%となる点までを基準深さDとする。一致する値が無い場合には、銅由来のイオンの最大検出強度Iの30%を初めて下回った点を基準深さDとする。実施例1の場合、Iの30%である226.7を初めて下回るのは、エッチング回数316回の点であったため、銅層側表面からこの点までを基準深さDとした。なお、銅由来のイオンの最大検出強度Iの30%となる点までを基準深さDとするのは、当該基準深さD付近が多孔性銅層の最下端となるためである。
次に、銅層側表面から当該基準深さDの85%深さの点までにおける、絶縁樹脂基材由来のイオンの検出強度I’を求める。実施例1においては、316×0.85=268.6であったため、エッチング回数269回の点を基準深さDの85%深さの点とし、当該基準深さDの85%深さの点における絶縁樹脂基材由来のイオンの検出強度I’は47カウントであった。
実施例1において、上述の通り求められた絶縁樹脂基材由来のイオンの最大検出強度I’とI’の比(I’/I’)が47/421=0.11となり、絶縁樹脂基材由来のイオンの検出強度I’が、絶縁樹脂基材由来のイオンの最大検出強度I’の1%以上の検出強度を有している。このような実施例1の導電性基板は、後述の通り導電性に優れ、且つ、多孔性銅層と絶縁樹脂基材との密着性に優れている。
<導電性基板の製造方法>
本発明において、基材由来成分含有領域を有する多孔性銅層を有する導電性基板の製造方法は、従来公知の方法の中から適宜選択すればよく、特に限定されない。多孔性銅層を効率よく製造可能な点から、銅粒子分散体を用いた、以下のような製造方法とすることが好ましい。
即ち、銅粒子分散体を準備する工程と、
絶縁樹脂基材上に、前記銅粒子分散体を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を焼成することにより、多孔性銅層を形成すると同時に、前記銅層の少なくとも一部に、前記絶縁樹脂基材由来の成分を含む基材由来成分含有領域を形成する工程とを有する、導電性基板の製造方法が好ましい。
以下、上記好ましい製造方法について説明する。なお、絶縁樹脂基材については前述のとおりであるので、ここでの説明は省略する。
(銅粒子分散体)
上記好ましい製造方法においては、まず銅粒子分散体を準備する。銅粒子分散体は市販品を用いてもよく、調製してもよい。銅粒子分散体は、少なくとも銅粒子と、これを分散する溶媒を有し、銅粒子の分散性の点、及び基材由来成分含有領域の形成性の点から、適宜分散剤を組み合わせて用いることが好ましい。
(1)銅粒子
本発明において銅粒子は、典型的には金属状態の銅粒子であるが、銅は非常に酸化され易い金属のため、金属状態の銅粒子の表面が一部酸化されて酸化物となっている場合が含まれていてもよいものである。
銅粒子の粒径は、特に限定されないが、上記空孔率を調整して導電性及び密着性に優れる点や、低温での焼結が進行しやすい点、また微細配線の点から、銅粒子の平均一次粒径が1nm〜200nmであることが好ましく、10nm〜60nmであることがより好ましい。
銅粒子の平均一次粒径が上記下限値以上であれば、前記多孔性銅層に十分な空孔が形成されて、絶縁樹脂基材由来の成分が含有しやすい。一方、銅粒子の平均一次粒径が上記上限値以下であれば、空孔が適切な大きさとなると共に銅層内における空孔の分布が均一となる。そのため、銅粒子の平均一次粒径が上記範囲内であれば、特に密着性に優れている。
なお、上記銅粒子の平均一次粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、透過型電子顕微鏡写真(TEM)(例えば、日立ハイテク製 H−7650)にて粒子像を測定し、ランダムに選択した100個の一次粒子の最長部の長さの平均値を平均一次粒径とすることができる。
上記銅粒子分散体において、銅粒子の含有量は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、分散性の点から、銅粒子分散体の全量に対して、0.01〜90質量%であることが好ましく、更に、0.1〜85質量%の範囲内であることがより好ましい。
上記銅粒子の調製方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、メカノケミカル法などにより銅粉を粉砕する物理的な方法;化学気相法(CVD法)や蒸着法、スパッタ法、熱プラズマ法、レーザー法のような化学的な乾式法;熱分解法、化学還元法、電気分解法、超音波法、レーザーアブレーション法、超臨界流体法、マイクロ波合成法等による化学的な湿式法等を用いて銅粒子を得ることができる。
例えば、蒸着法では、高真空下で分散剤を含む低蒸気圧液体中に加熱蒸発した銅の蒸気を接触させて微粒子を製造する。
また、化学還元法の1種としては、錯化剤及び有機保護剤の存在下で、含銅化合物と還元剤とを溶媒中で混合して生成する方法が挙げられる。
なお、上記の方法の他、市販の銅粒子を適宜用いることができる。
本発明においては、中でも、銅粒子にカルボン酸とアルキルアミンを被覆させることが所望の多孔性銅層を形成しやすい点から好ましい。そのため、本発明においては、有機保護剤としてカルボン酸とアルキルアミンとを用いて、水酸化銅などの含銅化合物と還元剤とを溶媒中で混合して銅粒子を生成する方法が好適に用いられる。
上記カルボン酸は、配位子として、酸素原子により銅に結合し得る化合物である。従って、銅粒子分散体において、分散に寄与している当該カルボン酸は、通常、少なくとも1つの酸素原子により銅に結合した状態で存在する。
カルボン酸の具体例としては、特開2012−72418号公報の段落0029に記載のものを挙げることができ、中でも、炭素数が10以下のカルボン酸であることが、低温焼成性が良好になり、前記多孔性銅層の空孔率が適切な範囲となって導電性が向上する点から好ましく、更に炭素数が9以下のカルボン酸であることがより好ましい。また、分散性の点から炭素数が2以上のカルボン酸が用いられる。特に、炭素数が10以下の、好ましくは炭素数が9以下の脂肪族カルボン酸であることが、分散性、低温焼成性が良好になり、導電性が向上する点から好ましい。なお、当該脂肪族カルボン酸は、飽和、不飽和のどちらでもよい。
上記カルボン酸は、1種のカルボン酸を使用してもよく、2種以上のカルボン酸を混合して使用してもよい。
上記カルボン酸は、極性が比較的弱く、焼成時に脱離しやすい点から、分子内に一つもしくは二つのカルボキシル基を有するカルボン酸を用いることが好ましく、更に分子内に一つのカルボキシル基を有するカルボン酸を用いることが好ましい。
また、上記カルボン酸は、焼成時に脱離しやすい点から、分子量が高過ぎないことが好ましく、分子量が300以下であることが好ましく、更に200以下であることが好ましい。また、沸点が400℃以下であることが好ましく、更に300℃以下であることが好ましい。一方で、銅粒子作製時、保管時の脱離、揮発防止の点から、カルボン酸の分子量は50以上であることが好ましい。また、沸点が50℃以上であることが好ましい。
用いられる前記銅粒子において、カルボン酸の含有量は、用途に応じて適宜選択すれば良いが、低温焼成性の点から、銅100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、更に、0.1〜20質量部の範囲内であることがより好ましい。
上記アルキルアミンは、製造される銅粒子に期待される特性等に応じて、公知のアルキルアミンから適宜選択して用いることができる。
アルキルアミンは、プロトンを捕捉する機能を有することにより、銅原子が酸化されることを防止していると推定される。
上記アルキルアミンの具体例としては、特開2012−72418号公報の段落0047及び段落0049に記載されたものを好適に挙げることができ、本発明においては、中でも、炭素原子及び水素原子以外の原子を含有しない炭化水素鎖を有するアルキルアミンであることが、密着性や導電性の点から好ましい。
上記アルキルアミンは、1種のアルキルアミンを使用しても良いが、2種以上のアルキルアミンを混合して使用してもよい。
上記アルキルアミンは、極性が比較的弱く、焼成時に脱離しやすい点から、分子内に一つもしくは二つのアミノ基を有するアルキルアミンを用いることが好ましく、分子内に一つのアミノ基を有するアルキルアミンがより好ましい。
また、上記アルキルアミンは、焼成時に脱離しやすい点から、分子量が高すぎないことが好ましく、分子量が300以下であることが好ましく、更に200以下であることが好ましい。また、本発明で用いられるアルキルアミンは、焼成時に脱離しやすい点から、炭素数が8以下であることが好ましく、更に6以下であることが好ましい。
また、本発明で用いられるアルキルアミンは、焼成時に脱離しやすい点から、沸点が300℃以下であることが好ましく、更に200℃以下であることが好ましい。一方で、銅粒子作製時、保管時の脱離、揮発防止の点から、アルキルアミンの分子量は50以上であることが好ましい。また、沸点は23℃以上であることが好ましく、更に50℃以上であることが好ましい。
用いられる上記銅粒子において、アルキルアミンの含有量は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、低温焼成性の点から、銅100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、更に、0.1〜20質量部の範囲内であることがより好ましい。
(2)分散剤
上記銅粒子分散体において、銅粒子の分散性を向上する点から、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、銅粒子を分散可能な従来公知の分散剤の中から適宜選択して用いることができる。本発明においては、銅粒子の凝集を防ぎ、分散性及び分散安定性に優れ、多孔性銅層中に基材由来成分含有領域が形成されやすく、密着性及び導電性を向上する点から、分散剤として酸価及びアミン価の少なくとも1種を有する高分子分散剤を用いることが好ましい。
また、上記高分子分散剤は、90%熱重量減少温度が380〜450℃であること、中でも390〜420℃であることが、低温焼成性及び焼結後の塗膜の導電性が優れ、且つ、基材由来成分含有領域が形成されやすい点から好ましい。なお、ここでの90%熱重量減少温度は、熱重量測定(TG)により次のようにして測定した値とする。熱重量測定装置(例えば、島津製作所製DTG−60A)を用い、試料約5mgについて窒素雰囲気下で測定する。昇温速度は10℃/分とし、室温(23℃)〜600℃まで測定する。本発明においては、室温時点の試料重量を基準に90%が減量した時点の温度を90%熱重量減少温度と定義する。
90%熱重量減少温度が380℃以上の高分子分散剤を用いることにより、当該高分子分散剤は、銅粒子分散体の塗膜の焼成時において比較的緩やかに分解乃至揮散していくものと推定される。そのため、銅粒子同士が融着して多孔性銅層を形成する間に、前記絶縁樹脂基材由来の成分が、孔内に十分に浸漬するものと推定される。また、90%熱重量減少温度が450℃以下の高分子分散剤を用いることにより、銅粒子分散体の塗膜は比較的低温で焼成することができるため、多孔性銅層との界面付近の絶縁樹脂基材は軟化させながら、絶縁樹脂基材の内部や多孔性銅層とは反対側の界面付近にはダメージを与えにくい。そのため、90%熱重量減少温度が上記範囲内の高分子分散剤を選択して用いることにより、多孔性銅層内に基材由来成分含有領域が形成され、絶縁樹脂基材と多孔性銅層との密着性に優れると共に、導電性にも優れた導電性基板を得ることができる。
上記高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。
上記高分子分散剤としては、中でも、アミン価及び酸価の一方が30〜160mgKOH/g、アミン価及び酸価の他の一方が0〜160mgKOH/gである高分子分散剤であり、塩基性官能基及び酸性官能基の少なくとも1種を有するものが好ましい。
塩基性官能基としては一級、二級、又は三級アミノ基、ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素ヘテロ環等をあげることができる。また、酸性官能基としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
なお、アミン価とは、遊離塩基、塩基の総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に対して当量の水酸化カリウムのmg数で表したものである。また、酸価とは、遊離酸、酸の総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表したものである。アミン価はJIS−K7237に準拠した方法で、酸価はJIS−K0070に準拠した方法で測定することができる。
アミン価を有する高分子分散剤を用いる場合、当該アミン価は、銅粒子の分散性の点から、30〜160mgKOH/gであることが好ましく、中でも40〜140mgKOH/gであることがより好ましい。
上記好ましいアミン価を有する高分子分散剤は、銅粒子と安定して吸着することにより、分散性及び分散安定性が向上するため、銅粒子の分散粒径を小さくすることができる。そのため、上記高分子分散剤を用いると銅粒子分散体の塗膜の平滑性、均一性が優れたものとなり、また塗膜中の銅粒子は高密度に配列する。従って、焼結が均一に進行し易く、銅粒子同士が融着し易い。また当該高分子分散剤は、上記アルキルアミンとの相乗効果によって焼成により分解乃至揮散されやすく、得られた導電性基板は、銅粒子に吸着する有機成分の残存が抑制される。これらの結果、得られた多孔性銅層は導電性に優れると推定される。
アミン価を有する高分子分散剤としては、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に、ポリエステル骨格又はポリエーテル骨格を有することが好ましい。このような高分子分散剤は、その骨格構造に起因して、低温での焼成により分解されやすく、有機物が残存しにくいため、焼成後の膜の導電性に優れている。
上記アミン価を有する高分子分散剤としては、分散性と塗布適性が優れる点から、重量平均分子量が、800以上であることが好ましく、更に900以上であることが好ましく、特に1000以上であることが好ましい。一方で、低温焼成性が優れる点から、50000以下であることが好ましく、更に30000以下であることが好ましく、特に20000以下であることが好ましい。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定することができる。
一方、酸価を有する高分子分散剤としては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和単量体との共重合体である不飽和カルボン酸共重合体が好ましい。当該不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和単量体との共重合体は、分子内に2個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸ポリマーである。カルボキシル基は銅粒子表面に強く吸着し得る官能基であり、且つ、分子内に2個以上のカルボキシル基を有することから、不飽和カルボン酸共重合体は、分子内に2個以上のカルボキシル基により銅粒子に比較的強く吸着し、一方でポリマー鎖部分により立体障害をもたらし、銅粒子同士の凝集を安定して防止していると推定される。
上記特定の構造を有する不飽和カルボン酸共重合体が、銅粒子と強く吸着することにより、分散性及び分散安定性が向上するため、銅粒子の分散粒径を小さくすることができる。また、そのため、上記不飽和カルボン酸共重合体を用いると銅粒子分散体を含む塗布液の塗膜の平滑性、均一性が優れたものとなる。従って、焼結が均一に進行しやすい。また当該不飽和カルボン酸共重合体は、上記アルキルアミンとの相乗効果により導電性基板を製造する際の焼成により分解乃至揮散されやすく、得られた導電性基板は、有機成分の残存が抑制される。これらの結果、得られた多孔性銅層は導電性に優れると推定される。
前記不飽和カルボン酸共重合体に用いられる不飽和カルボン酸は、不飽和結合及びカルボキシル基を含有する単量体である。当該不飽和結合としては、エチレン性不飽和結合のような炭素−炭素二重結合であることが好ましいが、エチレン性不飽和結合と共重合可能であれば環状構造に含まれる不飽和結合であっても良い。
エチレン性不飽和単量体は、エチレン性不飽和結合を含有する単量体であって、上記不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体であれば、分散に用いられる溶媒との相溶性に応じて適宜選択されれば良いものである。
不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和単量体との共重合体中、不飽和カルボン酸由来の構成単位の含有割合は、当該共重合体の全構成単位を100質量%としたときに、3〜80質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。
上記共重合体は、中でもブロック共重合体又はグラフト共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体であると、不飽和カルボン酸由来の構成単位を含むブロック部によって銅粒子に更に吸着し易くなり、且つ、その他のエチレン性不飽和単量体由来の構成単位を含むブロック部によって立体障害や溶媒親和性をもたらすというように機能が分離されることから分散性が向上し、塗布適性や成膜性を向上し易い。また、グラフト共重合体であると、不飽和カルボン酸由来の構成単位がそれぞれ銅粒子に吸着し、グラフト部分のポリマー鎖が立体障害や溶媒親和性をもたらすというように機能が分離されることから分散性が向上し、塗布適性や成膜性を向上し易い。
不飽和カルボン酸共重合体としては、中でも、耐酸化性、分散性、塗布適性、及び低温又は短時間での焼結性のバランスに優れる点から、下記一般式(I)で表される構成単位を有する共重合体であることが好ましい。
(一般式(I)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
一般式(I)のAにおいて、直接結合とは、COOHが連結基を介することなく一般式(I)における炭素原子に直接結合していることを意味し、すなわち、アクリル酸又はメタクリル酸由来の構成単位である。
Aにおける2価の連結基としては、例えば、炭素原子数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−基、−COO−基、炭素原子数1〜10のエーテル基(−R'−OR”−:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
中でも、分散性の点から、一般式(I)におけるAは、直接結合、又は、−COO−基と炭素原子数1〜10のアルキレン基とを含む2価の連結基であることが好ましい。−COO−基と炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、例えば、−COO−CHCH−OOC−CHCH−等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
上記一般式(I)で表される構成単位としては、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸等から誘導される構成単位が挙げられるが、これらに限定されない。
一般式(I)で表される構成単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の構成単位を含むものであってもよい。
上記少なくとも一般式(I)で表される構成単位を有する共重合体としては、分散性、分散安定性、塗布適性及び低温焼結性の点から、中でも、前記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有するブロック共重合体であるか、又は、前記一般式(I)で表される構成単位と、下記一般式(III)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体であることが好ましい。
(一般式(II)中、A’は、直接結合又は2価の連結基、R10は、水素原子又はメチル基、R11は、炭化水素基、−[CH(R12)−CH(R13)−O]−R14又は−[(CH−O]−R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
(一般式(III)中、R16は、水素原子又はメチル基、Lは、直接結合又は2価の連結基、Polymerは、下記一般式(IV)又は一般式(V)で表される構成単位を少なくとも1種有するポリマー鎖を表す。)
(一般式(IV)及び一般式(V)中、R17は水素原子又はメチル基であり、R18は炭化水素基、シアノ基、−[CH(R19)−CH(R20)−O]−R21、−[(CH−O]−R21、−[CO−(CH−O]−R21、−CO−O−R22又は−O−CO−R23で示される1価の基である。R19及びR20は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
21は、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CHCHO又は−CHCOOR24で示される1価の基であり、R22は、炭化水素基、シアノ基、−[CH(R19)−CH(R20)−O]−R21、−[(CH−O]−R21、−[CO−(CH−O]−R21で示される1価の基である。R23は炭素数1〜18のアルキル基であり、R24は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
mは1〜5の整数、n及びn’は5〜200の整数を示す。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
(ブロック共重合体)
一般式(II)において、A’の2価の連結基は、一般式(I)のAと同様のものが挙げられる。中でも、分散性の点から、一般式(II)におけるA’は、直接結合、−CONH−基、又は、−COO−基を含む2価の連結基であることが好ましい。
一般式(II)において、R11における炭化水素基としては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、又はアリール基であることが好ましい。
上記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−エトキシエチル基などを挙げることができる。
上記炭素数2〜18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、上記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
また、上記R14は水素原子、炭化水素基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であって、直鎖状、分岐状、又は環状のいずれであってもよい。
上記R14における炭化水素基は、前記R11で示したものと同様のものとすることができる。
上記R11において、xは好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
また、上記一般式(II)で表される構成単位中のR11は、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
上記R11としては、中でも、分散体を調製する際の溶媒との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、具体的には、例えば上記溶媒が、銅粒子分散体の溶媒として一般的に使用されているエーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系などの溶媒を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。
一般式(I)で表される構成単位を有するブロック共重合体中、一般式(I)で表される構成単位の含有割合は、一般式(I)で表される構成単位を有するブロック共重合体の全構成単位を100質量%としたときに、5〜60質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
また、一般式(II)で表される構成単位の含有割合は、ブロック共重合体の全構成単位を100質量%としたときに、40〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%以上であることがより好ましい。
なお、一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部において、一般式(II)で表される構成単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。本発明においては、上記カルボキシル基を有する構成単位がブロック部として含まれれば良く、一般式(II)で表される構成単位が2種以上の構成単位を含む場合に、当該ブロック部内は2種以上の構成単位がランダムに配列していてもよい。
(グラフト共重合体)
前記一般式(III)において、Lは、直接結合又は2価の連結基である。Lにおける2価の連結基としては、エチレン性不飽和二重結合とポリマー鎖を連結可能であれば、特に制限はない。Lにおける2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、水酸基を有するアルキレン基、アリーレン基、−CONH−基、−COO−基、−NHCOO−基、エーテル基(−O−基)、チオエーテル基(−S−基)、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。なお、本発明において、2価の連結基の結合の向きは任意である。すなわち、2価の連結基に−CONH−が含まれる場合、−COが主鎖の炭素原子側で−NHが側鎖のポリマー鎖側であっても良いし、反対に、−NHが主鎖の炭素原子側で−COが側鎖のポリマー鎖側であっても良い。
前記一般式(IV)中、R18における炭化水素基としては、前記R11で示したものと同様のものとすることができる。
上記R21、及びR22のうちの炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記のR11で示したものと同様のものとすることができる。
上記R23、及びR24のうちのアルキル基は、前記のR11で示したものと同様であってよい。
上記R18、R21、R22、及びR23が、芳香環を有する基である場合、当該芳香環はさらに置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば炭素数1〜5の直鎖
状、分岐状、環状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、F、Cl、Br等のハロゲン原子などが挙げられる。
上記R18及びR22おいて、x、y及びzは、前記R11で説明したものと同様であってよい。
一般式(V)において、mは1〜5の整数であり、好ましくは2〜5の整数、より好ましくは4又は5の整数である。また、ポリマー鎖の構成単位のユニット数n及びn’は、5〜200の整数であればよく、特に限定されないが、5〜100の範囲内であることが好ましい。
上記R18及びR22としては、中でも、分散体を調製する際の溶媒との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、具体的には、例えば上記溶媒が、銅粒子分散体の溶媒として一般的に使用されているエーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系などの溶媒を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。
上記ポリマー鎖は、単独重合体でもよく、共重合体であってもよい。また、一般式(II)で表される構成単位に含まれるポリマー鎖は、グラフト共重合体において、1種単独でも良いが、2種以上混合していても良い。
Polymerにおけるポリマー鎖の質量平均分子量Mwは、500〜15000の範囲内であることが好ましく、1000〜8000の範囲内であることがより好ましい。上記範囲であることにより、分散剤としての十分な立体反発効果を保持できるとともに、立体効果による銅粒子の分散に要する時間の増大を抑制することもできる。
上記グラフト共重合体において、前記一般式(I)で表される構成単位は、一般式(I)で表される構成単位を有するグラフト共重合体の全構成単位を100質量%としたときに、3〜80質量%の割合で含まれていることが好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。
また、上記グラフト共重合体は、粒径を揃える点からは、ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)が小さいことが好ましく、2.0以下であることが好ましい。
上記銅粒子分散体において、上記分散剤としては、1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量は、用いる銅粒子の種類等に応じて適宜設定されるが、銅粒子100質量部に対して、通常、0.1〜100質量部の範囲であり、1〜50質量部であることが好ましく、2〜30質量部であることがより好ましい。
上記高分子分散剤の含有量が上記下限値以上であれば、銅粒子分散体の分散性及び分散安定性を優れたものとすることができる。また上記上限値以下であれば、焼成後の多孔性銅層の導電性に優れている。
(3)溶媒
上記銅粒子分散体は、通常、溶媒を含有する。銅粒子分散体に用いられる溶媒としては、銅粒子分散体中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶媒であればよく、特に限定されない。銅粒子分散体に従来用いられている有機溶媒を適宜選択して用いれば良い。中でも、溶媒として、MBA(酢酸3−メトキシブチル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、DMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)又はこれらを混合したものが、上記高分子分散剤の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
上記銅粒子分散体における溶媒の含有量は、該銅粒子分散体の各構成を均一に溶解又は分散することができるものであればよく、特に限定されない。本発明においては、該銅粒子分散体中の固形分含有量が、5〜95質量%の範囲が好ましく、10〜90質量%の範囲がより好ましい。上記範囲であることにより、塗布に適した粘度とすることができる。
(4)その他の成分
上記銅粒子分散体には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、従来銅粒子分散体に用いられている公知のその他の成分を適宜含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、錯化剤、有機保護剤、還元剤、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調製剤、等が挙げられる。また、本発明の効果が損なわれない限り、他の分散剤が含まれていてもよい。更に、本発明の効果が損なわれない範囲で、造膜性、印刷適性や分散性の点から、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、オレフィン樹脂等の樹脂バインダーを添加してもよい。
(5)銅粒子分散体の調製方法
銅粒子分散体の調製方法は、銅粒子が良好に分散できる方法であればよく、従来公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、まずカルボン酸及びアルキルアミンが付着した銅粒子を準備し、当該銅粒子を、従来公知の方法により、溶媒中で上記高分子分散剤により分散する方法が挙げられる。
カルボン酸及びアルキルアミンが付着した銅粒子を準備する方法としては、製造時に保護剤としてカルボン酸及びアルキルアミンを用いて製造された銅粒子を用いても良いし、他の保護剤を用いて製造された銅粒子の保護剤を公知の方法でカルボン酸やアルキルアミンに置換しても良い。
中でも、本発明において、好ましい銅粒子分散体の調製方法は、銅を含む化合物、還元性化合物、カルボン酸、及びアルキルアミンを含む混合物、又は、カルボン酸銅、還元性化合物、及びアルキルアミンを含む混合物のいずれかを加熱することにより銅粒子を調製する工程と、前記銅粒子を、前記分散剤により溶媒中で分散することにより、銅粒子分散体を調製する工程とを有することが好ましい。
上記銅粒子を調製する工程は、例えば特開2012−72418号公報に記載の被覆銅微粒子の製造方法などを参照して調製することができる。
前記調製工程で得られた銅粒子を、溶媒中で前記特定の高分子分散剤により分散することにより、動的光散乱法による体積平均粒径が500nm以下である銅粒子分散体を調製することが好ましい。
例えば、前記特定の高分子分散剤を前記溶媒に混合、攪拌し、高分子分散剤溶液を調製した後、当該高分子分散剤溶液に、前記調製工程で得られた銅粒子と、必要に応じて他の成分を混合し、公知の攪拌機、又は分散機等を用いて分散させることよって、銅粒子分散体を調製することができる。
なお、本発明において体積平均粒径は、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、銅粒子分散体に用いられている溶媒で、銅粒子分散体をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。
(塗膜の形成)
上記銅粒子分散体を上記絶縁樹脂基材上に塗布する方法は、従来公知の塗布乃至印刷方法の中から適宜選択すればよい。中でも、導電性パターンを印刷するに当たり、微細なパターニングを行うことができる点から、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、反転オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、及びインクジェット印刷が好ましい。或いは、塗布方法には全面を塗布する場合も包含される。全面塗布の場合には、当該塗膜を焼成処理して得られる多孔性銅層に対して、公知の化学エッチング法によりパターンを形成することが可能である。
基材上の銅粒子分散体は、塗布後、通常の方法で乾燥してもよい。
(塗膜の焼成)
上記により得られた塗膜を焼成することにより、銅粒子同士が融着して焼結膜を形成し、多孔性銅層が得られる。
焼成方法は、従来公知の焼成方法の中から適宜選択して用いることができる。焼成方法の具体例としては、例えば、焼成炉(オーブン)により加熱する方法の他、赤外線加熱、各種レーザーアニール、紫外線、可視光、フラッシュ光による光照射焼成、マイクロ波加熱などの方法が挙げられ、不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下で行われることが好ましく、また大気雰囲気の場合には、焼成時の酸化を防ぐため、瞬間的に加熱が行われることが好ましい。
本発明においては、中でも、焼成する工程が、プラズマ焼成、中でもマイクロ波エネルギーの印加により発生する表面波プラズマにより焼成する工程、又は、フラッシュ光の照射により焼成する工程(以下、フラッシュ光焼成と称することがある。)のいずれかであることが好ましい。
これらの方法を用いると、絶縁樹脂基材の銅粒子分散体の塗膜界面付近の樹脂成分に流動性を与えつつ、絶縁樹脂基材全体への熱ダメージを少なくすることができ、多孔性銅層中に基材由来成分含有領域を形成することができると共に、焼成時の銅の酸化も抑制できる。また、短時間焼成であるため、生産性が高いというメリットもある。
(プラズマ焼成)
マイクロ波表面波プラズマを用いた焼成は、不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下で行うのが、得られる焼結膜の導電性の観点から好ましい。
特に、本発明においては、マイクロ波表面波プラズマを、還元性ガス雰囲気下で発生させることが好ましく、中でも、水素ガス雰囲気下で発生させることがより好ましい。これにより、銅粒子表面に存在する絶縁性の酸化物が還元除去され、導電性能の良好な導電パターンが形成される。
マイクロ波表面波プラズマ処理の前に、銅粒子分散体を塗布した塗膜に含まれるアルキルアミン、カルボン酸、高分子分散剤等の有機物を除去するために、大気下又は酸素を含む雰囲気下、50〜200℃程度の温度で1分から2時間程度焼成してもよい。なお、この処理は減圧下で行ってもよい。この焼成により、有機物が酸化分解除去され、マイクロ波表面波プラズマ処理において、銅粒子の融着が促進される。
前記マイクロ波表面波プラズマの発生方法は、従来公知の方法の中から適宜選択すればよい。例えば、国際公開第2011/040189号パンフレットに記載の方法を用いることができる。
(フラッシュ光焼成)
フラッシュ光焼成とは、フラッシュ光の照射により極めて短時間で焼成する方法である。ここで、本発明においてフラッシュ光とは、点灯時間が比較的短時間の光のことをいい、当該点灯時間をパルス幅という。フラッシュ光の光源は特に限定されないが、キセノン等の希ガスが封入されたフラッシュランプやレーザー等が挙げられる。中でも、紫外線から赤外線までの連続的な波長スペクトルをもつ光を照射することが好ましく、具体的には、キセノンフラッシュランプを用いることが好ましい。このような光源を用いた場合には、加熱と同時にUV照射を行ったのと同様の効果を得ることができ、極めて短時間で焼成が可能となる。また、このような光源を用いた場合には、パルス幅と照射エネルギーを制御することにより、銅粒子分散体の塗膜、及びその近傍のみを加熱することができ、基材に対する熱の影響を抑えることができる。特に、上記好ましい高分子分散剤は、上記アルキルアミン及びカルボン酸との相乗効果により、銅粒子の周囲に均一に存在することから、フラッシュ光の照射により容易に分解乃至揮発しやすく、多孔性銅層に残存しにくいため、極短時間のフラッシュ光の照射であっても容易に焼結させることができる。そのため、本発明においてフラッシュ光焼成は好適に用いられる。
本発明において、フラッシュ光のパルス幅は、適宜調整すればよいものであるが、1μs〜10000μsの間で設定されることが好ましく、10μs〜5000μsの範囲内とすることがより好ましい。また、フラッシュ光の1回あたりの照射エネルギーは、0.1J/cm〜100J/cmが好ましく、0.5J/cm〜50J/cmがより好ましい。
フラッシュ光焼成においてフラッシュ光の照射回数は、銅粒子分散体の塗膜の組成や、膜厚、面積などに応じて適宜調整すればよく、照射回数は1回のみであってもよく、2回以上繰り返し行ってもよい。中でも、照射回数を1〜100回とすることが好ましく、1〜50回とすることが好ましい。フラッシュ光を複数回照射する場合には、フラッシュ光の照射間隔は適宜調整すればよい。中でも照射間隔を10μ秒〜2秒の範囲内で設定することが好ましく、100μ秒〜1秒の範囲内に設定することがより好ましい。
フラッシュ光を上記のように設定することにより、基材への影響を抑えるとともに、銅粒子の酸化を抑制することが可能であり、且つ、銅粒子分散体に含まれるアルキルアミン、カルボン酸、上記高分子分散剤等の有機物も脱離乃至分解しやすく導電性に優れた導電性基板を得ることができる。
このようなフラッシュ光焼成は、銅粒子分散体の塗膜、及びその近傍のみを加熱することができるため、絶縁樹脂基材の銅粒子分散体の塗膜側界面付近の樹脂成分に流動性を与え、且つ絶縁樹脂基材全体には熱ダメージを与えにくい。また、前記塗膜を低温かつ短時間で焼成することが可能であり、多孔性銅層中に基材由来成分含有領域を形成することができると共に、緻密かつ平滑な銅粒子焼結膜を形成することができる。フラッシュ光焼成は、フラッシュ光のパルス幅と照射エネルギーを適宜調整することで、加熱温度と処理深さを制御することができる。その結果、不均一な膜が形成されることが少なく、また粒成長を防ぐことができるため、非常に緻密で、平滑な膜が得られる。また、極めて短時間で焼成が可能であるので、銅粒子の酸化を抑えることができ、導電性に優れた焼結膜を得ることができる。
上記フラッシュ光焼成は、大気中、大気圧下で行うことが可能であるが、不活性ガス雰囲気下、還元性ガス雰囲気下、減圧下で行ってもよい。また、塗膜を加熱しながら、フラッシュ光焼成を行ってもよい。
このようにして得られた導電性基板の多孔性銅層は、上記基材由来成分含有領域を有するため、絶縁樹脂基材との密着性に優れると共に、体積抵抗率が20μΩ・cm以下を達成することができる。
また、本発明の導電性基板において多孔性銅層は、表面が平滑で低抵抗であって、また、基材との界面に空隙が発生しにくく、密着性が良好で、且つ適度な空隙を有している。そのため、前述のように全面塗布により多孔性銅層を形成後に、更に化学的エッチングすることにより、微細な配線を形成することにも適している。
化学的エッチングによるパターン形成は、全面塗布による多孔性銅層に対し、フォトレジストを塗布するか又はドライフィルムレジストをラミネートしてフォトレジスト層を形成し、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィ法により露光、現像してパターンを形成した後、塩化第二鉄、塩化第二銅、リン硝酢酸などによるエッチングを行い、残ったレジストを剥離して、パターン状の多孔性銅層を形成することができる。
また、基材上に、前記銅粒子分散体をパターン状に塗布して、塗膜を形成し、該塗膜を焼成して、パターン状の多孔性銅層を形成するパターン状導電性基板の製造方法であってもよい。
本発明の導電性基板は、密着性及び導電性に優れている。このような導電性基板を用いた電子部材としては、表面抵抗の低い電磁波シールド用フィルム、導電膜、フレキシブルプリント配線板などに有効に利用することができる。また、本発明の導電性基板において多孔性銅層は、めっき用のシード層等とすることができ、例えば、光学装置用の鏡面や、各種装飾用途等に用いることができる。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
(合成例1 銅粒子の合成)
200ml三ッ口フラスコ中に、水酸化銅 10.0g(0.1mol、和光純薬工業製)、ノナン酸 31.5g(0.2mol、東京化成工業製、沸点254℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 18.5g(20ml、関東化学製)を量り取った。この混合液を撹拌しながら100℃まで加熱し、その温度を20分維持した。その後、ヘキシルアミン 40.5g(0.4mol、東京化成工業製、沸点130℃)を添加し、100℃で10分加熱、撹拌した。この混合液を、氷浴を用いて10℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物 10.0g(0.2mol、関東化学製)をPGME 18.5g(20ml、関東化学製)に溶解させた溶液を添加し、10分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を10分維持した。30℃まで冷却後、ヘキサン 33g(50ml、関東化学製)を添加した。遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、ノナン酸とヘキシルアミンで被覆された銅粒子を得た。
得られた銅粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は39nmであった。具体的には、得られた銅粒子をトルエンに分散させ、これをTEM基板(日立ハイテクフィールディング製、エラスチックカーボン支持膜付Cuグリッド)へ滴下し、乾燥させることで観察用サンプルを作製した。TEM(日立ハイテク製 H−7650)にて粒子像を測定し、ランダムに選択した100個の一次粒子の最長部の長さの平均値を平均一次粒径とした。
(合成例2 銅粒子の合成)
合成例1において、ヘキシルアミン 40.5g(0.4mol)の代わりに、3−エトキシプロピルアミン 41.3g(0.4mol、広栄化学工業製、沸点135℃)を用い、ノナン酸 31.5g(0.2mol)の代わりに、デカン酸 34.5g(0.2mol、花王製ルナック10−98、沸点268℃)を用い、ヘキサン33.0g(50ml)を添加する代わりに、ヘキサン66.0g(100ml)を添加した以外は、合成例1と同様にして、デカン酸と3−エトキシプロピルアミンで被覆された銅粒子を得た。
得られた銅粒子を、合成例1と同様にして透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は65nmであった。
(合成例3 高分子分散剤GP−1の合成)
(1)マクロモノマーの合成
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA 100.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。メタクリル酸メチル50.0質量部、メタクリル酸ブチル15.0質量部、メタクリル酸ベンジル15.0質量部、メタクリル酸エトキシエチル20.0質量部、2−メルカプトエタノール4.0質量部、パーブチルO(日油製)1.3質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工製)8.74質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.125質量部、p−メトキシフェノール0.125質量部、及びPGMEA20質量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーMM−1の49.8質量%溶液を得た。得られたマクロモノマーMM−1を、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N−メチルピロリドン、0.01mol/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、質量平均分子量(Mw)3657、数平均分子量(Mn)1772、分子量分布(Mw/Mn)は2.06であった。
(2)グラフト共重合体の合成
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA85.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。上記(1)のマクロモノマーMM−1溶液66.93質量部(有効固形分33.33質量部)、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート16.67質量部、n−ドデシルメルカプタン1.86質量部、PGMEA20.0質量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部、PGMEA10.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体GP−1の26.1質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体GP−1をロータリーエバポレーターで減圧乾燥させた。
得られたグラフト共重合体GP−1は、GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)6900、数平均分子量(Mn)5000、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であり、90%熱重量減少温度は414.9℃であった。
(実施例1 導電性基板の製造)
次の手順で、銅粒子分散体を調製した。合成例1で得られた銅粒子 3.0質量部、合成例3で得られた高分子分散剤GP−1 0.3質量部、PGME 4.2質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、銅粒子分散体1を得た。
上記銅粒子分散体1を、厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)にワイヤーバーで塗布、乾燥した。その後、水素ガスを導入圧力20Paで導入しながら、マイクロ波表面波プラズマ処理装置(MSP−1500、ミクロ電子株式会社製)を用いて、マイクロ波出力400Wで286秒間焼成し、PETフィルムの一面側に多孔性銅層を備えた導電性基板を得た。
(実施例2 導電性基板の製造)
次の手順で、銅粒子分散体を調製した。合成例1で得られた銅粒子 3.0質量部、ソルスパース71000(日本ルーブリゾール製、酸価0mgKOH/g、アミン価77.4mgKOH/g、重量平均分子量4700、90%熱重量減少温度が405.9℃) 0.3質量部、PGME 4.2質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、銅粒子分散体2を得た。
上記銅粒子分散体2を、厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)にワイヤーバーで塗布、乾燥した。その後、水素ガスを導入圧力20Paで導入しながら、マイクロ波表面波プラズマ処理装置(MSP−1500、ミクロ電子株式会社製)を用いて、マイクロ波出力400Wで307秒間焼成し、PETフィルムの一面側に多孔性銅層を備えた導電性基板を得た。
(実施例3 導電性基板の製造)
上記実施例1の銅粒子分散体1を、厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)にワイヤーバーで塗布、乾燥した。その後、水素ガスを導入圧力20Paで導入しながら、マイクロ波表面波プラズマ処理装置(MSP−1500、ミクロ電子株式会社製)を用いて、マイクロ波出力500Wで317秒間焼成し、PETフィルムの一面側に多孔性銅層を備えた導電性基板を得た。
(実施例4 導電性基板の製造)
上記実施例2の銅粒子分散体2を、厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)にワイヤーバーで塗布、乾燥した。その後、水素ガスを導入圧力20Paで導入しながら、マイクロ波表面波プラズマ処理装置(MSP−1500、ミクロ電子株式会社製)を用いて、マイクロ波出力450Wで391秒間焼成し、PETフィルムの一面側に多孔性銅層を備えた導電性基板を得た。
(比較例1 導電性基板の製造)
厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)上にスパッタ法にて孔を有しない銅層を積層し、比較例1の導電性基板とした。
(比較例2 導電性基板の製造)
次の手順で、銅粒子分散体を調製した。合成例2で得られた銅粒子 3.0質量部、ソルスパース41000(日本ルーブリゾール製、酸価50mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、重量平均分子量3500、90%熱重量減少温度が370.4℃) 0.3質量部、PGME 4.2質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、銅粒子分散体1を得た。
上記銅粒子分散体1を、厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)にワイヤーバーで塗布、乾燥した。その後、水素ガスを導入圧力20Paで導入しながら、マイクロ波表面波プラズマ処理装置(MSP−1500、ミクロ電子株式会社製)を用いて、マイクロ波出力450Wで240秒間焼成し、導電性基板を得た。
<膜厚測定>
上記実施例及び比較例で導電性基板について、膜厚評価を行った。各実施例、及び比較例で作製した導電性基板について保護層として銅層上部に真空蒸着法にてカーボンを、スパッタ法にて白金を順次積層し、次いでFIB(集束イオンビーム、日立ハイテク製 FB−2100)を用いてタングステンを積層後、銅層の断面を作製した。その後、SEM(日立ハイテク製 S−4800)を用いて基板を45°傾斜させた状態にて銅層断面を観察し、SEM像より膜厚を測定した。膜厚は30k〜40kの倍率で測定したSEM像内で10箇所測長し、傾斜分を補正した後、その平均値を膜厚とした。結果を表1に示す。またSEM像を図2〜図7に示す。なお、図2〜図7は、実施例及び比較例の導電性基板の多孔性銅層2乃至銅層2’上にカーボン層5、及び、白金/タングステン層6が形成された積層体のSEM像である。
<空孔率測定>
上記膜厚測定において得られたSEM像における、孔の面積と、絶縁樹脂基材由来の成分の面積と、銅の面積とをそれぞれ算出し、孔の面積と前記絶縁樹脂基材由来の成分の面積との合計を、多孔性銅層の面積で除することにより当該断面における空孔率を求めた。結果を表1に示す。
<導電性評価>
上記実施例及び比較例で導電性基板について、導電性評価を行った。表面抵抗計(ダイアインスツルメンツ製「ロレスタGP」、PSPプローブタイプ)を用い、各実施例、及び比較例の導電性基板の多孔性銅層に4探針を接触させ、4探針法により表面抵抗を測定した。上記膜厚の結果を用いて、体積抵抗率を算出した。結果を表1に示す。
<密着性評価>
JIS K5600−5−6のクロスカット法に準拠して、0〜5の分類で密着性の評価を行った。具体的には、実施例及び比較例の導電性基板にカッターナイフを用いて1mm間隔で碁盤目状に切れ込みを入れ、25マスの格子を形成した。次いで、当該格子上にセロハンテープ(ニチバン(株))を貼り付けた後剥離して、銅層の剥離を観察し、上記JIS K5600−5−6の表1に記載の分類0〜5に基づいて密着性を評価した。当該分類が”0”又は”1”であれば密着性に優れている。結果を表1に示す。
<基材成分の銅層への浸漬評価>
基材成分の浸透評価は、飛行時間型二次イオン質量分析計(ION TOF社製、TOF.SIMS5)深さ方向プロファイルにて行った。具体的には、実施例及び比較例の導電性基板それぞれについて、Csイオン銃によりソフトエッチングを繰り返しながらTOF−SIMSにより銅層最表面から絶縁樹脂基材方向への組成解析を実施し、銅層由来のCu イオンと基材成分由来のイオンとして、PET基材由来のC イオンを指標に銅層内での基材の存在量を把握することで行った。なお、銅層の厚みに応じて、Csイオン銃の条件を下記の通り変更した。
前記銅層から前記絶縁樹脂基材への方向を深さ方向とし、飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記導電性基板の深さ方向プロファイルにおいて、
銅の検出強度Iが、当該銅の最大検出強度Iの30%となる点を基準深さDとし、当該基準深さDの85%深さにおける、絶縁樹脂基材由来の成分の検出強度I’が、絶縁樹脂基材由来の成分の最大検出強度I’の1%以上の検出強度を有する場合に基材由来成分含有領域を持つと判断した。
なお、エッチング回数0〜5回の部分は、導電性基板表面に付着した不純物などを検出しているため、この部分は、後述する最大検出強度の評価対象とはしないものとした。
また、検出強度が10カウント以下の部分は、ノイズであると考えられるため、検出強度が10カウント以下の成分は不検出として取り扱うものとした。上記深さ方向プロファイルを図8〜図13に示す。また、上記により算出されたI’/I’の値を表1に示し、その算出過程を表2に示す。
[エッチング条件]
(1)実施例1、実施例2、比較例1、比較例2
イオン銃種:Cs
加速電圧:2keV
電流:50nA
エッチング時間:5秒/cycle
(2)実施例3、実施例4
イオン銃種:Cs
加速電圧:2keV
電流:100nA
エッチング時間:10秒/cycle
[結果のまとめ]
図2〜図7に示される通り、銅粒子分散体の塗膜を焼成して形成された実施例1〜4及び比較例2の導電性基板は、多孔性銅層2が形成された。一方、比較例1の導電性基板は、銅層をスパッタ法で形成したため、多孔性銅層とはならなかった(図6参照)。
このような比較例1の導電性基板は、体積抵抗率は低いものの、密着性が悪かった。比較例2の導電性基板は、銅粒子分散体を用いて形成することにより、多孔性銅層となっている(図7参照)。しかしながら、当該多孔性銅層の孔内に前記絶縁樹脂基材由来の成分がほとんど浸漬していないことが明らかとなった。これは90%熱重量減少温度が380℃未満の分散剤を用いたため、絶縁樹脂基材由来の成分が十分に浸漬しないうちに、多孔性銅層が形成されたことによるものと推定された。
実施例1〜4の導電性基板は、基材由来成分含有領域を有する多孔性銅層を有しているため、密着性に優れ、且つ、体積抵抗率も20μΩ・cm以下を達成し、優れた導電性を有することが明らかとなった。
1 絶縁樹脂基材
2 多孔性銅層
2’ 銅層
3 基材由来成分含有領域
4 基材由来成分を含有しない領域
5 カーボン層
6 白金/タングステン層
10 導電性基板

Claims (4)

  1. 絶縁樹脂基材の一面側に多孔性銅層を備えた積層体であって、前記銅層の孔の少なくとも一部に、前記絶縁樹脂基材由来の成分を含む基材由来成分含有領域を有し、前記銅層の体積抵抗率が20μΩ・cm以下である、導電性基板。
  2. JIS−K 7121に準拠した示差走査熱量測定により測定された、前記絶縁樹脂基材中の樹脂のガラス転移温度(Tg)が150℃以下である、請求項1に記載の導電性基板。
  3. 前記基材由来成分含有領域において、前記銅層側表面から前記絶縁樹脂基材への方向を深さ方向とし、前記深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの、水平断面内における前記絶縁樹脂基材由来の成分の断面積占有率が、前記絶縁樹脂基材方向に近づくに従い漸次増加する構造を有する、請求項1又は2に記載の導電性基板。
  4. 前記銅層側表面から前記絶縁樹脂基材への方向を深さ方向とし、飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記導電性基板の深さ方向プロファイルにおいて、
    銅層側表面から、銅由来のイオンの検出強度Iが当該銅由来のイオンの最大検出強度Iの30%となる点までを基準深さDとし、前記銅層側表面から当該基準深さDの85%深さの点において、絶縁樹脂基材由来のイオンの検出強度I’が、絶縁樹脂基材由来のイオンの最大検出強度I’の1%以上の検出強度を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性基板。
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