JP6331386B2 - 被覆銅ナノ粒子、銅ナノ粒子分散体、及び導電性基板の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1の技術によれば、後述の比較例のように、銅微粒子の分散性が悪く、塗布適性が悪く、PETフィルム等の樹脂基材上に塗布する際にムラが生じるという課題があった。更に、分散性を高めようとするとアルキルアミンを大量に使用する必要があり、焼結性が悪化するという問題があった。
しかしながら、特許文献2の手法によれば、低分子量の化合物を用いて銅微粒子を分散するため、銅微粒子の分散性が悪く、塗布適性が悪く、PETフィルム等の樹脂基材上に塗布する際にムラが生じるという課題があった。更に、脂肪族モノカルボン酸で表面が被覆された銅微粒子は、焼結温度が高く、PETフィルム等の低耐熱フィルム上で使用するには更なる焼結温度の低温化が必要であった。
しかしながら、特許文献3の手法によれば、銅ナノ粒子塗膜の焼成には高いマイクロ波出力による長時間焼成が必要となっている。実際には実施例に記載の通りポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム上での銅ナノ粒子塗膜の焼成が限界であり、より安価で汎用的な低耐熱基材であるPETフィルム等に塗布して特許文献3と同条件で焼成しようすると導電性が発現する前に基材が変形し焼成できないという課題があった。PETフィルム等に塗布して焼成するには更なる焼結温度の低温化が必要であった。
本発明は、このような状況下になされたものであり、耐酸化性、分散性、塗布適性、及び低温又は短時間での焼結性に優れた、被覆銅ナノ粒子及び銅ナノ粒子分散体、並びに、低温又は短時間での焼成により、優れた導電性を有する導電性基板を得ることができる、導電性基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
また、本発明に係る銅ナノ粒子分散体は、銅ナノ粒子と、アルキルアミンと、下記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体と、溶剤とを含有することを特徴とする。
また、本発明に係る第一の態様の導電性基板の製造方法は、銅ナノ粒子と、アルキルアミンと、下記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体と、溶剤とを含有する銅ナノ粒子分散体を含む塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜を焼成する工程とを有することを特徴とする。
また、本発明に係る第二の態様の導電性基板の製造方法は、銅を含む化合物、還元性化合物、及びアルキルアミンを含む混合物を加熱することにより銅ナノ粒子を調製する工程と、前記銅ナノ粒子を、溶剤中で下記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体により分散することにより分散体を調製する工程と、前記分散体を含む塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜を焼成する工程とを有することを特徴とする。
なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのいずれかであることを意味する。
本発明に係る被覆銅ナノ粒子は、銅ナノ粒子が、アルキルアミンと、下記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体とで被覆されていることを特徴とする。
また、本発明に係る銅ナノ粒子分散体は、銅ナノ粒子と、アルキルアミンと、下記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体と、溶剤とを含有することを特徴とする。
なお、本発明において被覆とは、粒子表面の全部が覆われている形態のみならず、粒子表面の一部に付着している形態をも含むものとする。
銅ナノ粒子の分散性を付与するには、銅ナノ粒子表面に比較的強く吸着する官能基を有する化合物を用いることが望ましいが、一方で、化合物の吸着が強すぎると焼成工程で当該化合物が銅ナノ粒子から脱離し難くなり、結果として低温焼結が困難になり、更に結果として導電性悪化の要因となると考えられる。その点、本発明においては、銅ナノ粒子表面に比較的強く吸着し得る−NH3+−OCO−基や−NHCO−基を有するポリアリルアミン誘導体と、銅ナノ粒子表面に弱く吸着する比較的低分子量のアルキルアミンとの両方が、銅ナノ粒子を被覆している。本発明に係る銅ナノ粒子分散体においても、銅ナノ粒子表面にアルキルアミンと上記ポリアリルアミン誘導体とが付着して、溶剤中に当該銅ナノ粒子が分散されてなる。
本発明においては、銅ナノ粒子表面に比較的強く吸着し得る−NH3+−OCO−基や−NHCO−基を有するポリアリルアミン誘導体が、比較的強い吸着により溶剤中でも銅ナノ粒子を取り囲んで安定して存在し、ポリマー鎖の立体障害により銅ナノ粒子同士の凝集がより生じ難くなり、銅ナノ粒子の分散性が優れると推定される。また、本発明においては、銅ナノ粒子が上記特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体に取り囲まれて安定して均一に分散されていることから、ポリマー鎖の成膜性によって、銅ナノ粒子分散体の塗布適性が優れると推定される。一方、銅ナノ粒子表面に特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体と共に存在しているアルキルアミンは、銅ナノ粒子表面に弱く吸着しており、且つ比較的低分子量であるため、低温や短時間の焼成でも脱離し易い。そのため、焼成時には、銅ナノ粒子表面に上記ポリアリルアミン誘導体と混在しているアルキルアミンが脱離することにより、銅ナノ粒子表面に存在している上記ポリアリルアミン誘導体も脱離し易くなって、本発明の銅ナノ粒子は低温又は短時間での焼結性に優れていることが推定される。
更に、アルキルアミンは、アミノ基がプロトンを捕捉する機能を有するため、銅ナノ粒子表面に付着することにより、銅原子が酸化されることを抑制していると推定される。更に、アミノ基も含むポリアリルアミンが、銅ナノ粒子を被覆して取り囲んでいることから、本発明においては、銅ナノ粒子の酸化を抑制する効果がより高くなっていることが推定される。そのため、焼成時の酸化による焼結阻害も生じ難くなり、焼成後に高い導電性を有する膜を形成可能になると推定される。
以下、本発明の被覆銅ナノ粒子、銅ナノ粒子分散体の各成分について順に詳細に説明する。
本発明において銅ナノ粒子は、典型的には金属状態の銅粒子であるが、銅は非常に酸化され易い金属のため、金属状態の銅ナノ粒子の表面が一部酸化されて酸化物となっている場合が含まれていてもよいものである。
なお、上記銅ナノ粒子の平均一次粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、透過型電子顕微鏡写真(TEM)(例えば、日立ハイテク製 H−7650)にて粒子像を測定し、ランダムに選択した100個の一次粒子の最長部の長さの平均値を平均一次粒径とすることができる。
また、化学還元法の1種としては、錯化剤及び有機保護剤の存在下で、金属化合物と還元剤とを溶剤中で混合して生成する方法が挙げられる。
なお、上記の方法の他、市販の銅ナノ粒子を適宜用いることができる。
本発明においては、銅ナノ粒子にアルキルアミンを被覆させることから、中でも、後に詳述するように、有機保護剤としてアルキルアミンを用いて、金属化合物と還元剤とを溶剤中で混合して銅ナノ粒子を生成する方法が好適に用いられる。
また、本発明の被覆銅ナノ粒子において、銅ナノ粒子の含有量は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、分散性の点から、被覆銅ナノ粒子の全量に対して、50〜99.9質量%であることが好ましく、更に、70〜99.9質量%の範囲内であることがより好ましい。
本発明において使用されるアルキルアミンは、製造される被覆銅ナノ粒子に期待される特性等に応じて、公知のアルキルアミンから適宜選択して用いることができる。
アルキルアミンは、プロトンを捕捉する機能を有することにより、銅原子が酸化されることを防止していると推定される。
アルキルアミンはアルキル基の一部にアミノ基の結合した構造を有している。銅原子に対して配位結合を形成するために、使用するアルキルアミンに含まれるアミノ基の少なくとも1つが一級アミノ基であるRNH2(Rは炭化水素鎖)または二級アミノ基であるR1R2NH(R1、R2は炭化水素鎖で同じであっても異なっていてもよい)であることが望ましい。また、炭化水素鎖には酸素、珪素、窒素、硫黄、リンなどの炭素以外の原子が含有されても良い。
本発明で用いられるアルキルアミンは、極性が比較的弱く、焼成時に脱離しやすい点から、分子内に1つもしくは2つのアミノ基を有するアルキルアミンを用いることが好ましい。
また、本発明で用いられるアルキルアミンは、焼成時に脱離しやすい点から、分子量が高過ぎないことが好ましく、分子量が300以下であることが好ましく、更に200以下であることが好ましい。また、沸点が300℃以下であることが好ましく、更に200℃以下であることが好ましい。一方で、ナノ粒子作製時、保管時の脱離、揮発防止の点から、アルキルアミンの分子量は50以上であることが好ましい。また、沸点が50℃以上であることが好ましい。
また、本発明の被覆銅ナノ粒子において、アルキルアミンの含有量は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、耐酸化性、低温焼結性の点から、被覆銅ナノ粒子の全量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、更に、0.1〜20質量%の範囲内であることがより好ましい。
本発明において用いられるポリアリルアミン誘導体は、下記一般式(I)で表される構成単位を有する重合体である。
更に具体的には、上記一般式(I)で表されるポリアリルアミン誘導体は、アリルアミン重合体と、遊離のカルボキシル基を有する、下記一般式(IV)または下記一般式(V)で表されるポリエステル、及び下記一般式(VI)または下記一般式(VII)で表されるポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種を用いて、アミノ基とカルボキシル基を反応させて得ることができる。
本発明においては、重合度2〜1000のポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有する、下記一般式(IV)または(V)で表されるポリエステルおよび下記一般式(VI)または(VII)で表されるポリアミドの1種を単独でまたは2種以上を併用して反応させて得られたポリアリルアミン誘導体が好ましい。
また、式(I)において、n個のR1中、一般式(III)で表される基の割合が60〜95モル%であることが好ましい。
本発明の銅ナノ粒子分散体において、上記特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体の含有量は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、分散性、塗布適性、低温焼結性の点から、銅ナノ粒子分散体の全量に対して、0.05〜25質量%であることが好ましく、更に、0.5〜15質量%の範囲内であることがより好ましい。
また、本発明の被覆銅ナノ粒子において、上記特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体の含有量は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、分散性、塗布適性、低温焼結性の点から、被覆銅ナノ粒子の全量に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、更に、1〜25質量%の範囲内であることがより好ましい。
特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体の含有量が上記下限値以上であれば、銅ナノ粒子分散体の分散性及び塗布適性を優れたものとすることができる。また上記上限値以下であれば、焼成後の膜の導電性に優れている。
本発明の銅ナノ粒子分散体おいて、溶剤は、銅ナノ粒子分散体中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されない。銅ナノ粒子分散体に従来用いられている有機溶剤を適宜選択して用いれば良い。
中でも、本発明に用いられる溶剤としては、MBA(酢酸3−メトキシブチル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、DMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)又はこれらを混合したものが、特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
本発明の被覆銅ナノ粒子、銅ナノ粒子分散体には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、従来被覆金属ナノ粒子や金属粒子分散体に用いられているその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、錯化剤、有機保護剤、還元剤、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調製剤等が挙げられる。また、本発明の効果が損なわれない限り、他の分散剤が含まれていてもよい。
本発明において、被覆銅ナノ粒子、銅ナノ粒子分散体の製造方法は、銅ナノ粒子が良好に分散できる方法であればよく、従来公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、まずアルキルアミンが付着した銅ナノ粒子を準備し、銅ナノ粒子を、従来公知の方法により、溶剤中で特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体により分散する方法が挙げられる。
アルキルアミンが付着した銅ナノ粒子を準備する方法としては、製造時に保護剤としてアルキルアミンを用いて製造された銅ナノ粒子を用いても良いし、他の保護剤を用いて製造された銅ナノ粒子の保護剤を公知の方法でアルキルアミンに置換しても良い。
また、本発明において、被覆銅ナノ粒子の製造方法は、銅を含む化合物、還元性化合物、及びアルキルアミンを含む混合物を加熱することにより銅ナノ粒子を調製する工程と、前記銅ナノ粒子を、溶剤中で特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体により分散することにより分散体を調製する工程と、前記分散体中の溶剤を除去する工程とを有することが好ましい。
上記銅ナノ粒子を調製する工程において、銅を含む化合物は、還元性化合物との間で錯体等の複合化合物を生成可能な含銅化合物が、銅ナノ粒子の金属源として用いられる。また、製造する銅ナノ粒子に含まれる不純物を軽減するために、銅以外の金属元素を含有しない含銅化合物を用いることが望ましい。
このような含銅化合物としては、例えば、シュウ酸銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、イソ酪酸銅、吉草酸銅、イソ吉草酸銅、カプロン酸銅、エナント酸銅、カプリル酸銅、ノナン酸銅、カプリン酸銅、ピバリン酸銅、マロン酸銅、コハク酸銅、マレイン酸銅、安息香酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅、硝酸銅、亜硝酸銅、亜硫酸銅、硫酸銅、リン酸銅のような銅の有機酸塩や無機酸塩等が例示される他、アセチルアセトンが配位結合したアセチルアセトナト銅に代表される錯化合物が例示される。中でも、炭素原子数10以下の脂肪酸銅を用いることが、より低い温度で銅ナノ粒子を製造でき、且つ、低温焼結性が良好になる点から好ましい。なお、ここで脂肪酸銅とは、炭素数が2以上の脂肪酸と銅との塩化合物であって、当該脂肪酸は、飽和、不飽和のどちらでもよい。
また、含銅化合物として用いる脂肪酸銅としては、例えば、水酸化銅と脂肪酸との組み合わせのように、脂肪酸銅が生成する原料を組み合わせて用いても良い。
この際に使用される還元性化合物としては、例えば、特開2012−72418号公報に記載の還元性化合物を適宜選択して用いることができる。
中でも、ヒドラジン、ヒドラジンの水和物、ヒドロキシルアミン及びこれらの誘導体等のアミノ基を有する還元性化合物が、好適に用いられる。
また、錯体等の複合化合物の生成のために脂肪酸銅等の含銅化合物に混合される還元性化合物の比率は、含銅化合物と還元性化合物から生成する錯体等の複合化合物における両者のモル比率(以下、「定比」という。)と等しい比率か、還元性化合物を定比の1〜3倍とすることが、銅ナノ粒子の収率を向上する点から好ましい。
使用する含銅化合物と還元性化合物によって銅原子を生成する反応は相違するが、例えば、例えばノナン酸銅のような炭素原子数10以下の脂肪酸銅とヒドラジン、ヒドラジンの水和物又はその誘導体を使用した場合には、銅−ヒドラジン錯体が生成し、これをアルキルアミンと混合して加熱することで、ノナン酸銅のような炭素原子数10以下の脂肪酸銅が100℃程度の低温においても熱分解を生じて銅ナノ粒子が調製される点から好ましい。脂肪酸銅等の含銅化合物やアルキルアミンの分子量を調整することで、生成する銅微粒子の粒子径を所望の大きさに調節することが可能である。
上記含銅化合物と還元性化合物との混合物に対する、アルキルアミンの混合比は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、耐酸化性、低温焼結性の点から、含銅化合物1モルに対して、1〜10モルであることが好ましく、更に、2〜6モルの範囲内であることがより好ましい。
銅ナノ粒子を調製する際には、前記第1工程と第2工程とを、逐次的に行うことが好ましく、前記第1の工程が約30℃以下に冷却して行われ、前記第2の工程が60℃〜150℃に加熱して行われることが好ましい。
前記調製工程で得られた銅ナノ粒子を、溶剤中で特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体により分散することにより分散体を調製する。
例えば、前記特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体を前記溶剤に混合、攪拌し、ポリマー溶液を調製した後、当該ポリマー溶液に、前記調製工程で得られた銅ナノ粒子と、必要に応じて他の成分を混合し、公知の攪拌機、又は分散機等を用いて分散させることよって、被覆銅ナノ粒子、及び銅ナノ粒子分散体を調製することができる。
なお、銅ナノ粒子表面を被覆している化合物については、例えば、被覆銅ナノ粒子を不活性ガス雰囲気で加熱した際に揮発するガス成分を捕集することで分析することができる。ガス成分を、例えば、各種質量分析、赤外吸収スペクトル、NMRなどで分析することで被覆化合物の構造を明らかにすることができる。
本発明の被覆銅ナノ粒子及び銅ナノ粒子分散体は、上記用途に限られず、各種金属膜に応用することができ、例えば、光学装置用の鏡面や、各種装飾用途等に用いることができる。
本発明に係る第一の態様の導電性基板の製造方法は、銅ナノ粒子と、アルキルアミンと、下記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体と、溶剤とを含有する銅ナノ粒子分散体を含む塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜を焼成する工程とを有することを特徴とする。
また、本発明に係る第二の態様の導電性基板の製造方法は、銅を含む化合物、還元性化合物、及びアルキルアミンを含む混合物を加熱することにより銅ナノ粒子を調製する工程と、前記銅ナノ粒子を、溶剤中で、下記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体により分散することにより分散体を調製する工程と、前記分散体を含む塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜を焼成する工程とを有することを特徴とする。
以下、第一の態様と第二の態様に共通する、塗膜を形成する工程と、当該塗膜を焼成する工程の各工程について、順に説明する。
なお、本発明に係る上記導電性基板の製造方法は、本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて他の工程を有していてもよいものである。
(銅ナノ粒子分散体を含む塗布液)
銅ナノ粒子分散体を含む塗布液は、上記本発明に係る銅ナノ粒子分散体をそのまま塗布液とすることもできるが、必要に応じて、溶剤や、その他の成分を加えて塗布液としてもよいものである。
溶剤及びその他の成分としては、例えば、上記本発明に係る銅ナノ粒子分散体で挙げられた溶剤や、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調整剤等を用いることができる。更に、本発明の効果が損なわれない範囲で、造膜性、印刷適性や分散性の点から、アクリル樹脂やポリエステル樹脂等の樹脂バインダーを添加してもよい。
本発明に用いられる基材は、導電性基板に用いられる基材の中から、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、ガラス、アルミナ、シリカなどの無機材料を用いることができ、さらに高分子材料や、紙などを用いることもできる。前記本発明に係る導電性基板用金属微粒子分散体は、従来よりも低温で焼成しても導電性に優れた金属膜が得られることから、従来適用が困難であったソーダライムガラスや、高分子材料であっても好適に用いることができ、特に樹脂フィルムを用いることができる点で非常に有用である。
上記塗布液を上記基材上に塗布する方法は、従来公知の方法の中から適宜選択すればよい。中でも、導電性パターンを印刷するに当たり、微細なパターニングを行うことができる点から、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、反転オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、及びインクジェット印刷が好ましい。
本工程は、上記工程で得られた塗膜を焼成して、金属膜を形成する工程である。
焼成方法は、従来公知の焼成処理方法の中から適宜選択して用いることができる。焼成方法の具体例としては、例えば、焼成炉(オーブン)により加熱する方法の他、赤外線加熱、還元ガス雰囲気下での焼成、レーザーアニールによる焼成、マイクロ波加熱などの方法が挙げられる。
本発明の銅ナノ粒子分散体は、低温や、短時間で焼成可能なため、従来の方法よりも低温で焼成することができる。
これらの方法を用いると、基材への熱ダメージを少なくすることができると共に、焼成時の金属の酸化も抑制できる。また、短時間焼成であるため、生産性が高いというメリットもある。
マイクロ波表面波プラズマを用いた焼成は、不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下で行うのが、得られる焼結膜の導電性の観点から好ましい。
特に、本発明においては、マイクロ波表面波プラズマを、還元性ガス雰囲気下で発生させることが好ましく、中でも、水素ガス雰囲気下で発生させることがより好ましい。これにより、銅ナノ粒子表面に存在する絶縁性の酸化物が還元除去され、導電性能の良好な導電パターンが形成される。
フラッシュ光焼成とは、フラッシュ光の照射により極めて短時間で焼成する方法である。ここで、本発明においてフラッシュ光とは、点灯時間が比較的短時間の光のことをいい、当該点灯時間をパルス幅という。フラッシュ光の光源は特に限定されないが、キセノン等の希ガスが封入されたフラッシュランプやレーザー等が挙げられる。中でも、紫外線から赤外線までの連続的な波長スペクトルをもつ光を照射することが好ましく、具体的には、キセノンフラッシュランプを用いることが好ましい。このような光源を用いた場合には、加熱と同時にUV照射を行ったのと同様の効果を得ることができ、極めて短時間で焼成が可能となる。また、このような光源を用いた場合には、パルス幅と照射エネルギーを制御することにより、銅ナノ粒子分散体を含む塗布液の塗膜、及びその近傍のみを加熱することができ、基材に対する熱の影響を抑えることができる。特に、本発明で用いられるアルキルアミン及び上記アリルアミン誘導体は、フラッシュ光の照射により容易に分解乃至揮発しやすく、金属膜に残存しにくいため、極短時間のフラッシュ光の照射であっても容易に焼結させることができることから、本発明においてフラッシュ光焼成は好適に用いられる。
フラッシュ光焼成においてフラッシュ光の照射回数は、塗膜の組成や、膜厚、面積などに応じて適宜調整すればよく、照射回数は1回のみであってもよく、2回以上繰り返し行ってもよい。中でも、照射回数を1〜100回とすることが好ましく、1〜50回とすることが好ましい。フラッシュ光を複数回照射する場合には、フラッシュ光の照射間隔は適宜調整すればよい。中でも照射間隔を10μ秒〜2秒の範囲内で設定することが好ましく、100μ秒〜1秒の範囲内に設定することがより好ましい。
フラッシュ光を上記のように設定することにより、基材への影響を抑えるとともに、銅ナノ粒子の酸化を抑制することが可能であり、且つ、銅ナノ粒子分散体に含まれるアルキルアミンや特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体も脱離乃至分解しやすく導電性に優れた導電性基板を得ることができる。
上記フラッシュ光焼成は、大気中、大気圧下で行うことが可能であるが、不活性雰囲気下、還元雰囲気下、減圧下で行ってもよい。また、塗膜を加熱しながら、フラッシュ光焼成を行ってもよい。
また、上記金属膜の体積抵抗率は、1.0×10−4Ω・cm以下であることが好ましい。
本発明の導電性基板の製造方法により得られた導電性基板は、パターン精度が良好で、優れた導電性を有する。このような導電性基板を用いた電子部材としては、表面抵抗の低い電磁波シールド用フィルム、導電膜、フレキシブルプリント配線板などに有効に利用することができる。
(実施例1)
(1)銅ナノ粒子の合成
200ml三ッ口フラスコ中に、水酸化銅 10.0g(0.1mol、和光純薬工業株式会社)、ノナン酸 31.5g(0.2mol、東京化成工業株式会社)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 18.5g(20ml、関東化学株式会社)を量り取った。この混合液を撹拌しながら100℃まで加熱し、その温度を20分維持した。その後、ヘキシルアミン 40.5g(0.4mol、東京化成工業株式会社、沸点130℃)を添加し、100℃で10分加熱、撹拌した。この混合液を、氷浴を用いて10℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物 10.0g(0.2mol、関東化学株式会社)をPGME 18.5g(20ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加し、10分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を10分維持した。30℃まで冷却後、ヘキサン 33g(50ml、関東化学株式会社)を添加した。遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、ヘキシルアミンで被覆された銅ナノ粒子を得た。
またX線回折装置にて得られた銅ナノ粒子の結晶構造を測定したところ、銅ナノ粒子の主構造はCu(Cubic)で一部Cu2O(Cubic)構造が見られ、Cu(111)に対するCu2O(111)のピーク強度は約3%であった。
上記で得られたヘキシルアミンで被覆された銅ナノ粒子 0.75質量部、前記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体を含む分散剤(味の素ファインテクノ製、アジスパーPB821) 0.075質量部、PGMEA 6.675質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、被覆銅ナノ粒子が含まれる銅ナノ粒子分散体1を得た。
(1)銅ナノ粒子の合成
実施例1において、ヘキシルアミン 40.5g(0.4mol)の代わりに、3−エトキシプロピルアミン 41.3g(0.4mol、広栄化学工業株式会社、沸点135℃)を用い、ヘキサン 33g(50ml)を添加する代わりに、ヘキサン 66g(100ml)を添加した以外は、実施例1と同様にして、3−エトキシプロピルアミンで被覆された銅ナノ粒子を得た。
またX線回折装置にて得られた銅ナノ粒子の結晶構造を測定したところ、銅ナノ粒子の主構造はCu(Cubic)で一部Cu2O(Cubic)構造が見られ、Cu(111)に対するCu2O(111)のピーク強度は約5%であった。
上記で得られた3−エトキシプロピルアミンで被覆された銅ナノ粒子 0.75質量部、前記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体を含む分散剤(味の素ファインテクノ製、アジスパーPB821) 0.075質量部、PGMEA 6.675質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、被覆銅ナノ粒子が含まれる銅ナノ粒子分散体2を得た。
(1)銅ナノ粒子の合成
実施例1において、ヘキシルアミン 40.5g(0.4mol)の代わりに、ジメチルアミノプロピルアミン 40.9g(0.4mol、広栄化学工業株式会社、沸点135℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ジメチルアミノプロピルアミンで被覆された銅ナノ粒子を得た。
またX線回折装置にて得られた銅ナノ粒子の結晶構造を測定したところ、銅ナノ粒子の主構造はCu(Cubic)で一部Cu2O(Cubic)構造が見られ、Cu(111)に対するCu2O(111)のピーク強度は約1%であった。
上記で得られたジメチルアミノプロピルアミンで被覆された銅ナノ粒子 0.75質量部、前記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体を含む分散剤(味の素ファインテクノ製、アジスパーPB821) 0.075質量部、PGMEA 6.675質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、被覆銅ナノ粒子が含まれる銅ナノ粒子分散体3を得た。
実施例1の(1)と同様にして、ヘキシルアミンで被覆された銅ナノ粒子を得た。
当該ヘキシルアミンで被覆された銅ナノ粒子 3.0質量部、PGMEA 4.5質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散したが、銅ナノ粒子が凝集して分散されず、銅ナノ粒子分散体を得ることはできなかった。
(1)銅ナノ粒子の合成
実施例1において、ヘキシルアミン 40.5g(0.4mol)の代わりに、1−ヘキサノール 40.9g(0.4mol、関東化学株式会社、沸点157℃)を用い、ヘキサン 33g(50ml)を添加する代わりに、ヘキサン 66g(100ml)を添加した以外は、実施例1と同様にして、1−ヘキサノールで被覆された銅ナノ粒子を得た。得られた銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は24nmであった。またX線回折装置にて得られた銅ナノ粒子の結晶構造を測定したところ、銅ナノ粒子はCu(Cubic)とCu2O(Cubic)が含まれた構造が見られ、Cu(111)に対するCu2O(111)のピーク強度は約85%であった。
上記で得られた銅ナノ粒子 0.75質量部、前記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体を含む分散剤(味の素ファインテクノ製、アジスパーPB821) 0.075質量部、PGMEA 6.675質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、比較被覆銅ナノ粒子が含まれる比較銅ナノ粒子分散体2を得た。
実施例1の(1)と同様にして、ヘキシルアミンで被覆された銅ナノ粒子を得た。
上記で得られたヘキシルアミンで被覆された銅ナノ粒子 3.0質量部、前記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体を含む分散剤(味の素ファインテクノ製、アジスパーPB821) 0.3質量部、PGMEA 4.2質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、銅ナノ粒子分散体4を得た。
上記銅ナノ粒子分散体4を、厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)にワイヤーバーで塗布、乾燥して、膜厚が1μmの塗膜とした。
その後、水素ガスを導入圧力20Paで導入しながら、マイクロ波表面波プラズマ処理装置(MSP−1500、ミクロ電子株式会社製)を用いて、マイクロ波出力400Wで374秒間焼成し、導電性基板を得た。
比較例2の(1)と同様にして、1−ヘキサノールで被覆された銅ナノ粒子を得た。
上記で得られた1−ヘキサノールで被覆された銅ナノ粒子 3.0質量部、前記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体を含む分散剤(味の素ファインテクノ製、アジスパーPB821) 0.3質量部、PGMEA 4.2質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、比較銅ナノ粒子分散体3を得た。
上記比較銅ナノ粒子分散体3を、厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)にワイヤーバーで塗布、乾燥して、膜厚が1μmの塗膜とした。
その後、水素ガスを導入圧力20Paで導入しながら、マイクロ波表面波プラズマ処理装置(MSP−1500、ミクロ電子株式会社製)を用いて、マイクロ波出力450Wで300秒間焼成し、導電性基板を得た。
実施例1の(1)と同様にして、ヘキシルアミンで被覆された銅ナノ粒子を得た。
上記で得られたヘキシルアミンで被覆された銅ナノ粒子 3.0質量部、前記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体を含む分散剤(味の素ファインテクノ製、アジスパーPB821) 0.6質量部、PGMEA 3.9質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、銅ナノ粒子分散体5を得た。
上記銅ナノ粒子分散体5を、厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)にワイヤーバーで塗布、乾燥して、膜厚が1μmの塗膜とした。
その後、パルスドキセノンランプ装置(SINTERON 2000(Xenon Corporation製))を用いて、パルス幅500μ秒、印加電圧3.4kVで1回照射して、導電性基板を得た。
実施例2の(1)と同様にして、3−エトキシプロピルアミンで被覆された銅ナノ粒子を得た。
上記で得られた3−エトキシプロピルアミンで被覆された銅ナノ粒子 3.0質量部、前記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体を含む分散剤(味の素ファインテクノ製、アジスパーPB821) 0.3質量部、PGMEA 4.2質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで2時間分散し、銅ナノ粒子分散体6を得た。
上記銅ナノ粒子分散体6を、厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)にワイヤーバーで塗布、乾燥して、膜厚が1μmの塗膜とした。その後、パルスドキセノンランプ装置(SINTERON 2000(Xenon Corporation製))を用いて、パルス幅500μ秒、印加電圧3.2kVで1回照射して、導電性基板を得た。
<分散性評価>
銅ナノ粒子の分散性の評価として、各実施例及び比較例で得られた銅ナノ粒子分散体中の銅ナノ粒子の分散平均粒径の測定を行った。分散平均粒径の測定には、日機装製「マイクロトラック粒度分布計UPA−EX150」を用いた。分散平均粒径の値は体積平均粒径の値を用いることとし、また12時間放置後に沈降してしまう分散体は分散不可とした。各実施例及び比較例の分散体の分散平均粒径の結果を、表1〜3に示す。
各実施例及び比較例で得られた銅ナノ粒子分散体の塗膜を形成した後、焼成前に金属微粒子分散体の塗膜の膜質を目視で観察することにより塗布適性評価を行った。各実施例及び比較例の分散体の塗布適性評価の結果を、表1に示す。
[塗布適性評価基準]
A:はじきがなく、塗膜が均一である。
B:はじきがあり、塗膜が不均一である。
得られた銅ナノ粒子の結晶構造を解析することで耐酸化性を評価した。測定サンプルには、銅ナノ粒子分散体をPET基材上に塗布し、室温乾燥させて作製した銅ナノ粒子塗膜を用いた。X線回折装置(リガク製、Smart Lab)を用い、X線源としてCuKα線、管電圧45kV、管電流200mAの条件で実施した。スキャン速度が毎分4°、ステップ角が0.05°の条件で測定し、Cu(111)に対するCu2O(111)のピーク強度にて耐酸化性を評価した。各実施例及び比較例の評価の結果を、表1に示す。
A:Cu(111)に対するCu2O(111)のピーク強度が10%未満
B:Cu(111)に対するCu2O(111)のピーク強度が10%以上
導電性基板について、導電性評価を行った。表面抵抗計(ダイアインスツルメンツ製「ロレスタGP」、PSPプローブタイプ)を用いて、各実施例及び比較例の導電性基板の金属膜に4探針を接触させ、4探針法によりシート抵抗値を測定した。評価の結果を、表2〜3に示す。
実施例1〜6により、本発明に係るアルキルアミンと前記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体と溶剤とを含有する銅ナノ粒子分散体、乃至、アルキルアミンと前記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体とで被覆されている被覆銅ナノ粒子は、耐酸化性に優れながら、分散性、及び塗布適性に優れること、更に、低温又は短時間での焼結性に優れ、表面抵抗1Ω/□以下の高い導電性が得られることが明らかにされた。本発明に係る銅ナノ粒子分散体及び被覆銅ナノ粒子を用いると、このように塗布適性に優れることから、回路パターンを精度よく形成することが可能である。
一方、アルキルアミンで被覆されポリアリルアミン誘導体を含まない、比較例1の銅ナノ粒子分散体乃至被覆銅ナノ粒子は、耐酸化性には優れるものの、分散性が悪く、塗膜を形成しても、はじきがあり、不均一な塗膜しか形成できなかった。この例のように塗布適性が悪いと、回路パターンを精度よく形成することができず、また、良好な導電性を得ることはできない。
また、特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体と1−ヘキサノールで被覆され、アルキルアミンで被覆されていない、比較例2の銅ナノ粒子分散体乃至被覆銅ナノ粒子は、ポリアリルアミン誘導体により分散性と塗布適性は付与されていたものの、耐酸化性が悪く、更に分散性に劣っていた。また、比較例3の結果から、特定の構造を有するポリアリルアミン誘導体と1−ヘキサノールで被覆され、アルキルアミンで被覆されていない場合には、塗布適性は付与されていても、低温焼結性が悪いため、良好な導電性を得ることができないことが明らかにされた。
2 金属膜
100 基板
Claims (12)
- 前記銅ナノ粒子は、平均一次粒径が10nm以上1μm未満の銅ナノ粒子である、請求項1に記載の被覆銅ナノ粒子。
- 前記銅ナノ粒子は、平均一次粒径が10nm以上1μm未満の銅ナノ粒子である、請求項3に記載の銅ナノ粒子分散体。
- 銅ナノ粒子と、アルキルアミンと、下記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体と、溶剤とを含有する銅ナノ粒子分散体を含む塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜を焼成する工程とを有する、導電性基板の製造方法。
- 前記銅ナノ粒子は、平均一次粒径が10nm以上1μm未満の銅ナノ粒子である、請求項5に記載の導電性基板の製造方法。
- 前記焼成する工程が、フラッシュ光の照射により焼成する工程である、請求項5又は6に記載の導電性基板の製造方法。
- 銅を含む化合物、還元性化合物、及びアルキルアミンを含む混合物を加熱することにより銅ナノ粒子を調製する工程と、前記銅ナノ粒子を、溶剤中で、下記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体により分散する工程とを有する、銅ナノ粒子分散体の製造方法。
- 前記銅ナノ粒子は、平均一次粒径が10nm以上1μm未満の銅ナノ粒子である、請求項8に記載の銅ナノ粒子分散体の製造方法。
- 銅を含む化合物、還元性化合物、及びアルキルアミンを含む混合物を加熱することにより銅ナノ粒子を調製する工程と、前記銅ナノ粒子を、溶剤中で、下記一般式(I)で表される構成単位を有するポリアリルアミン誘導体により分散することにより分散体を調製する工程と、前記分散体を含む塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜を焼成する工程とを有する、導電性基板の製造方法。
- 前記銅ナノ粒子は、平均一次粒径が10nm以上1μm未満の銅ナノ粒子である、請求項10に記載の導電性基板の製造方法。
- 前記焼成する工程が、フラッシュ光の照射により焼成する工程である、請求項10又は11に記載の導電性基板の製造方法。
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