JP6330322B2 - 被覆銅ナノ粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1の技術によっても、被覆銅微粒子の分散性が不十分であり、塗布適性が悪く、PETフィルム等の樹脂基材上に塗布する際にムラが生じるという課題があった。
しかしながら、特許文献2の手法によれば、低分子量の化合物を用いて銅微粒子を分散するため、銅微粒子の分散性が悪く、塗布適性が悪く、PETフィルム等の樹脂基材上に塗布際にムラが生じるという課題があった。更に、脂肪族モノカルボン酸で表面が被覆された銅微粒子は、焼結温度が高く、PETフィルム等の低耐熱フィルム上で使用するには更なる焼結温度の低温化が必要であった。
本発明は、このような状況下になされたものであり、耐酸化性、分散性、塗布適性、及び低温又は短時間での焼結性に優れた、被覆銅ナノ粒子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
(i)銅を含む化合物、還元性化合物、及びアルキルアミンを少なくとも混合して銅を生成可能な複合化合物を含む混合物(1−a)を調製する工程と、前記混合物(1−a)と、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーとを含む混合物(1−b)を加熱する工程を有するか、
(ii)銅を含む化合物、及び還元性化合物を少なくとも混合して銅を生成可能な複合化合物を含む混合物(2−a)を調製する工程と、前記混合物(2−a)と、アルキルアミンと、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーとを含む混合物(2−b)を加熱する工程を有するか、或いは、
(iii)銅を含む化合物、還元性化合物、アルキルアミン、並びに、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーを含む混合物(3)を加熱する工程を有する。
Rc及びRdは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。Reは、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2又は−CH2COORe’で示される1価の基であり、Re’は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Rf、Rg、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基であって、Rf及びRhは、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、置換基Rlを有していてもよく、Rlは、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基である。
上記炭化水素基は置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。)
なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
(i)銅を含む化合物、還元性化合物、及びアルキルアミンを少なくとも混合して銅を生成可能な複合化合物を含む混合物(1−a)を調製する工程と、前記混合物(1−a)と、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーとを含む混合物(1−b)を加熱する工程を有するか、
(ii)銅を含む化合物、及び還元性化合物を少なくとも混合して銅を生成可能な複合化合物を含む混合物(2−a)を調製する工程と、前記混合物(2−a)と、アルキルアミンと、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーとを含む混合物(2−b)を加熱する工程を有するか、或いは、
(iii)銅を含む化合物、還元性化合物、アルキルアミン、並びに、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーを含む混合物(3)を加熱する工程を有する、ことを特徴とする。
Rc及びRdは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。Reは、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2又は−CH2COORe’で示される1価の基であり、Re’は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Rf、Rg、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基であって、Rf及びRhは、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、置換基Rlを有していてもよく、Rlは、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基である。
上記炭化水素基は置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。)
銅ナノ粒子の分散性を付与するには、銅ナノ粒子表面に強く吸着する官能基を有する化合物を用いることが望ましいが、一方で、化合物の吸着が強すぎると焼成工程で当該化合物が銅ナノ粒子から脱離し難くなり、結果として低温焼結が困難になり、更に導電性悪化の要因となると考えられる。その点、本発明においては、銅ナノ粒子表面に比較的強く吸着し得るカルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーと、銅ナノ粒子表面に弱く吸着する比較的低分子量のアルキルアミンとの両方が、銅ナノ粒子を被覆するようにしている。
本発明においては、銅ナノ粒子表面に比較的強く吸着し得るカルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーが、強い吸着により溶剤中でも銅ナノ粒子を取り囲んで安定して存在し、ポリマー鎖の立体障害により銅ナノ粒子同士の凝集がより生じ難くなり、銅ナノ粒子の分散性が優れると推定される。また、本発明においては、銅ナノ粒子がカルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーに取り囲まれて安定して均一に分散されていることから、ポリマー鎖の成膜性によって、銅ナノ粒子分散体の塗布適性が優れると推定される。一方、銅ナノ粒子表面に、カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーと共に存在している比較的低分子量のアルキルアミンは、銅ナノ粒子表面に弱く吸着しているため、低温や短時間の焼成でも脱離し易い。そのため、焼成時には、銅ナノ粒子表面に上記特定のポリマーと混在しているアルキルアミンが脱離することにより、銅ナノ粒子表面に存在している上記特定のポリマーも脱離し易くなって、本発明の銅ナノ粒子は低温又は短時間での焼結性に優れていることが推定される。
更に、アルキルアミンが銅ナノ粒子表面に付着していることにより、アミンの還元性によって銅の酸化を抑制すると共に、銅ナノ粒子表面に比較的強く吸着し得る上記特定のポリマーが、銅ナノ粒子を取り囲んでいることから、本発明においては、銅ナノ粒子の酸化を抑制する効果が高くなっていることが推定される。
また、本発明の被覆銅ナノ粒子の製造方法によれば、保護剤の1つとして、高分子分散剤として機能する上記特定のポリマーを銅ナノ粒子の製造時に付着させているため、溶剤を含む分散体を調製する際は、撹拌する程度で良好に分散し得る。そのため、銅ナノ粒子の調製後に、高分子分散剤と溶剤とを用いた分散工程を有して分散体を調製する場合に比べて、分散体の製造プロセスが簡易化されるというメリットがある。
また、本発明の被覆銅ナノ粒子の製造方法によれば、保護剤の1つとして、高分子分散剤として機能する上記特定のポリマーを銅ナノ粒子の製造時に付着させているため、銅ナノ粒子の調製後に高分子分散剤と溶剤とを用いた分散工程を経て分散体を調製する場合に比べて、無駄な高分子分散剤が分散体に入り込むことを防止でき、分散体中の高分子分散剤の含有量を抑制できることから、低温又は短時間での焼結性をより向上可能である。
更に、本発明の被覆銅ナノ粒子の製造方法によれば、保護剤や分散剤にカルボン酸金属塩等の「塩」を用いないので、塩成分が解離して移動し絶縁部分に蓄積して回路がショートするなどの問題が抑制される。
以下、本発明の被覆銅ナノ粒子の製造に用いられる各成分について順に詳細に説明する。
本発明に係る被覆銅ナノ粒子の製造方法においては、銅とその他の原子または原子群が結合して構成される銅を含む化合物(以下、含銅化合物ということがある)を銅原子の供給源として被覆銅ナノ粒子を製造する。本発明において用いられる含銅化合物としては、後述の還元性化合物との間で錯体等の複合化合物を生成可能な含銅化合物が好適に用いられる。また、製造する銅ナノ粒子に含まれる不純物を軽減するために、銅以外の金属元素を含有しない含銅化合物を用いることが望ましい。
このような含銅化合物としては、例えば、シュウ酸銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、イソ酪酸銅、吉草酸銅、イソ吉草酸銅、カプロン酸銅、エナント酸銅、カプリル酸銅、ノナン酸銅、カプリン酸銅、ピバリン酸銅、マロン酸銅、コハク酸銅、マレイン酸銅、安息香酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅、硝酸銅、亜硝酸銅、亜硫酸銅、硫酸銅、リン酸銅のような銅の有機酸塩や無機酸塩等が例示される他、アセチルアセトンが配位結合したアセチルアセトナト銅に代表される錯化合物が例示される。中でも、炭素原子数10以下の脂肪酸銅を用いることが好ましい。炭素原子数10以下の脂肪酸銅を被覆銅ナノ粒子の原料として用いることにより、分解物である脂肪酸の一部が銅ナノ粒子表面に吸着することで製造時の凝集を抑制するため、被覆銅ナノ粒子を製造するプロセスの自由度が向上すると共に、より低い温度で銅ナノ粒子を製造でき、且つ、低温焼結性が良好になる。なお、ここで脂肪酸銅とは、炭素数が2以上の脂肪酸と銅との塩化合物であって、当該脂肪酸は、飽和、不飽和のどちらでもよい。
また、含銅化合物として用いる脂肪酸銅としては、例えば、水酸化銅と脂肪酸との組み合わせのように、脂肪酸銅が生成する原料を組み合わせて用いても良い。
本発明においては、上記含銅化合物に対して還元作用を有する還元性化合物を、主に適宜の溶媒中で混合して、含銅化合物と還元性化合物との錯体等の、銅を生成可能な複合化合物を生成させることが好ましい。このような錯体等の複合化合物が形成されることで、還元性化合物が含銅化合物中の銅イオンに対する電子のドナーとなり銅イオンの還元を生じ易いため、使用した含銅化合物と比較して自発的な熱分解による銅原子の遊離を生じ易いからである。また、このような錯体等の複合化合物が形成される場合には、単に含銅化合物と還元性化合物との混合により銅イオンの還元反応を生じる場合に比べて、反応に関与する物質の供給に律速されることがなく、温度や圧力などの条件設定により錯体等の自発的な分解反応を生じさせることで銅原子が供給され、均一な被覆銅ナノ粒子を製造することが可能となる。なお、本発明において、銅を生成可能な複合化合物とは、典型的には、熱分解により銅原子を遊離し得る化合物をいう。
中でも、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン及びこれらの誘導体等のアミノ基を有する還元性化合物が好ましい。アミノ基を有する還元性化合物は、窒素原子が含銅化合物中の銅原子等に対して配位結合を形成し易く、含銅化合物の構造を維持した状態で容易に含銅化合物との複合化合物を生成すると共に、銅の還元反応を生じるからである。
ヒドラジン、ヒドロキシルアミンに代えてその誘導体を適宜選択して使用することで、含銅化合物との反応性を調整することが可能であり、使用する含銅化合物に応じて適切な条件で自発分解を生じる錯体を生成することができる。例えば、ヒドラジンと混合した際に錯体を生じることなく還元反応を生じやすい含銅化合物を用いる際には、適宜選択されるヒドラジン誘導体を使用して複合化合物の生成を促進することが好ましい。
使用する還元性化合物は、その性質に応じて2種以上組み合わせて混合して用いても良い。
水に対する溶解度を示すアルコールとしては、1個の水酸基を有する直鎖のアルキルアルコールとして炭素数1のメタノールから炭素数8のオクタノールや、2個の水酸基を有するグリコール類や、3個の水酸基を有するグリセリン、フェノールや、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の分子内にエーテル結合を有する炭化水素の水素原子を水酸基で置換したもの等が挙げられ、適宜選択して用いることができる。
原料の含銅化合物として、脂肪酸銅を用い、還元性化合物を混合する場合には、1−プロパノール又は2−プロパノールが好適に用いられる。
また、例えば水酸化銅と脂肪酸との組み合わせのように、製造時に脂肪酸銅を合成する場合には、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の分子内にエーテル結合を有する炭化水素の水素原子を水酸基で置換したものが好適に用いられる。
本発明においては、沸点が高く100℃の加熱が安定して実施でき、且つ、カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーの溶解性が高い点から、中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好適に用いられる。
本発明においてアルキルアミンは、主に錯体等の複合化合物の分解反応の反応媒として機能すると共に、還元性化合物の還元作用によって生じるプロトンを捕捉し、反応溶液が酸性に傾いて空気中の酸素によって生じた銅原子が酸化されることを防止し、且つ、還元されて生じた銅原子に付着して、最終的に後述の特定のポリマーと共に銅ナノ粒子を被覆することで、大気中で熱分解を行った場合においても銅原子の酸化を抑制していると推定される。また、アルキルアミンは、被覆銅ナノ粒子の表面に弱く付着しており、且つ比較的低分子化合物であることから、焼成時に脱離し易く、低温又は短時間での焼結性を向上している。
また、本発明においてアルキルアミンは、脂肪酸銅等の含銅化合物に、還元性化合物を混合する前に、添加して加熱することにより、後から添加した還元性化合物の反応を促進する効果を有する。これは、脂肪酸銅等の含銅化合物と還元性化合物との反応生成物である錯体等の複合化合物が生成される前に、中間体のように、脂肪酸銅等の含銅化合物とアルキルアミンが銅−アミン錯体等の複合化合物を生成し、当該銅−アミン錯体等の複合化合物が還元性化合物と反応しやすく、脂肪酸銅等の含銅化合物と還元性化合物との反応生成物である錯体等の複合化合物が生成しやすくなるからではないかと推定される。
以上の作用を考慮し、本発明において使用されるアルキルアミンは、錯体等の複合化合物の熱分解条件、製造される被覆銅ナノ粒子に期待される特性等に応じて、公知のアルキルアミンから適宜選択して用いることができる。
本発明で用いられるアルキルアミンは、極性が比較的弱く、焼成時に脱離しやすい点から、分子内に1つもしくは二つのアミノ基を有するアルキルアミンを用いることが好ましい。
また、本発明で用いられるアルキルアミンは、焼成時に脱離しやすい点から、分子量が高過ぎないことが好ましく、分子量が300以下であることが好ましく、更に200以下であることが好ましい。また、沸点が300℃以下であることが好ましく、更に200℃以下であることが好ましい。一方で、ナノ粒子作製時、保管時の脱離、揮発防止の点から、アルキルアミンの分子量は50以上であることが好ましい。また、沸点が50℃以上であることが好ましい。
本発明において用いられるポリマーは、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーである。
Rc及びRdは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。Reは、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2又は−CH2COORe’で示される1価の基であり、Re’は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Rf、Rg、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基であって、Rf及びRhは、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、置換基Rlを有していてもよく、Rlは、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基である。
上記炭化水素基は置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。)
上記カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーは、ポリマー中にカルボキシル基及び特定のリン含有官能基の両方を有していても良いが、通常は、カルボキシル基を有するポリマーか、上記特定のリン含有官能基を有するポリマーが用いられる。以下、各々をカルボキシル基含有ポリマー、リン含有官能基含有ポリマーと称することがある。
本発明に用いられるカルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーとしては、例えば、不飽和結合及びカルボキシル基を含有する不飽和カルボン酸の(共)重合体、不飽和結合及び上記特定のリン含有官能基を含有する不飽和リン含有化合物の(共)重合体等が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和単量体との共重合体、不飽和結合及び上記特定のリン含有官能基を含有する不飽和リン含有化合物とエチレン性不飽和単量体との共重合体が、耐酸化性、分散性、塗布適性、及び低温又は短時間での焼結性のバランスに優れる点から好適に用いられる。上記共重合体は、中でもブロック共重合体又はグラフト共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体であると、カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有する構成単位を含むブロック部が銅ナノ粒子に吸着し、その他のブロック部が立体障害や溶剤親和性をもたらすことから分散性が良好になる。また、グラフト共重合体であると、カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有する構成単位がそれぞれ銅ナノ粒子に吸着し、グラフト部分のポリマー鎖が立体障害や溶剤親和性をもたらすことから分散性が良好になる。
上記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−エトキシエチル基などを挙げることができる。
上記炭素数2〜18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
また、上記アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、上記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
置換基Rlにおける、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基は、前記Rf、Rg、Rh、Ri、Rj及びRkにおけるものと同様のものとすることができる。
上記一般式(A)で表される基としては、Ra及びRbの一方が水素原子であり、Ra及びRbのもう一方が、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(Rc)−CH(Rd)−O]s−Re、−[(CH2)t−O]u−Re、又は−O−Ra’で示される1価の基であり、Ra’は、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(Rc)−CH(Rd)−O]s−Re、−[(CH2)t−O]u−Reであり、Rc及びRdが、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Reが−CO−CH=CH2又は−CO−C(CH3)=CH2であるものが分散される粒子の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。中でも、Ra及びRbの一方が水素原子であり、Ra及びRbのもう一方が、置換基を有していてもよいアリール基が分散性の点からより好ましい。一方、還元力を高め、分散された粒子の酸化を抑制する点からは、Ra及びRbの両方が、水素原子であることが好ましい。
中でも、分散性の点から、一般式(I)におけるAは、直接結合、又は、−COO−基と炭素原子数1〜10のアルキレン基とを含む2価の連結基であることが好ましい。−COO−基と炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、例えば、−COO−CH2CH2−OOC−CH2CH2−等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、分散性の点から、一般式(II)におけるAは、−COO−基を含む2価の連結基であることが好ましく、中でも、−COOA’−基を含む2価の連結基(A’は、水酸基を有していても良い炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(Rm)−CH(Rn)−O]x−、又は−[(CH2)y−O]z−(CH2)y−O−、−[CH(Ro)]w−O−、であり、Rm、Rn及びRoは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、又は水酸基である。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数、wは1〜18の整数を表す。)であることが好ましい。一般式(II)におけるAとしては、−COOCH2CH(OH)CH2−O−が好適に用いられる。
また、上記一般式(II)で表される構成単位としては、例えば下記化学式(1)や下記化学式(2)で表されるビニル単量体等の上記一般式(A)で表される基含有ビニル単量体等から誘導される構成単位が挙げられるが、これらに限定されない。上記一般式(A)で表される基を含有するビニル単量体は、例えば、不飽和結合及びグリシジル基を含む化合物と、RaRbP(=O)(OH)とを反応させることにより得ることができる。
一般式(I)で表される構成単位及び一般式(II)で表される構成単位の少なくとも1種は、重合体中に、1種類単独で含まれていても良く、2種以上含まれていても良い。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
R21は、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CH2CHO又は−CH2COOR24で示される1価の基であり、R22は、炭化水素基、シアノ基、−[CH(R19)−CH(R20)−O]x−R21、−[(CH2)y−O]z−R21、−[CO−(CH2)y−O]z−R21で示される1価の基である。R23は炭素数1〜18のアルキル基であり、R24は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
mは1〜5の整数、n及びn’は5〜200の整数を示す。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
一般式(III)において、A’の2価の連結基は、一般式(I)のAと同様のものが挙げられる。中でも、分散性の点から、一般式(III)におけるA’は、直接結合、−CONH−基、又は、−COO−基を含む2価の連結基であることが好ましい。
一般式(III)において、R11における炭化水素基としては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、又はアリール基であることが好ましい。
上記R11及び上記R14における炭化水素基としては、上記Raで示したものと同様のものとすることができる。
上記R11において、xは好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
また、上記一般式(II)で表される構成単位中のR11は、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
また、一般式(III)で表される構成単位の含有割合は、ブロック共重合体の全構成単位を100質量%としたときに、40〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%以上であることがより好ましい。
なお、一般式(III)で表される構成単位を有するブロック部において、一般式(III)で表される構成単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。本発明においては、前記一般式(I)で表される構成単位及び前記一般式(II)で表される構成単位の少なくとも1種がブロック部として含まれれば良く、一般式(III)で表される構成単位が2種以上の構成単位を含む場合に、当該ブロック部内は2種以上の構成単位がランダムに配列していてもよい。
前記一般式(IV)において、Lは、直接結合又は2価の連結基である。Lにおける2価の連結基としては、エチレン性不飽和二重結合とポリマー鎖を連結可能であれば、特に制限はない。Lにおける2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、水酸基を有するアルキレン基、アリーレン基、−CONH−基、−COO−基、−NHCOO−基、エーテル基(−O−基)、チオエーテル基(−S−基)、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。なお、本発明において、2価の連結基の結合の向きは任意である。すなわち、2価の連結基に−CONH−が含まれる場合、−COが主鎖の炭素原子側で−NHが側鎖のポリマー鎖側であっても良いし、反対に、−NHが主鎖の炭素原子側で−COが側鎖のポリマー鎖側であっても良い。
上記R18、R21、R22、及びR23が、芳香環を有する基である場合、当該芳香環はさらに置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、F、Cl、Br等のハロゲン原子などが挙げられる。
上記R18及びR22おいて、x、y及びzは、前記R11で説明したものと同様であってよい。
上記ポリマー鎖は、単独重合体でもよく、共重合体であってもよい。また、一般式(II)で表される構成単位に含まれるポリマー鎖は、グラフト共重合体において、1種単独でも良いが、2種以上混合していても良い。
また、上記グラフト共重合体は、粒径を揃える点からは、ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)が小さいことが好ましく、2.0以下であることが好ましい。
本発明の被覆銅ナノ粒子の製造方法において、カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーの配合量は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、耐酸化性、低温焼結性の点から、上記含銅化合物中の銅原子重量の100質量部に対して、1〜80質量部であることが好ましく、更に、3〜60質量部の範囲内であることがより好ましい。
カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーの配合量が上記下限値以上であると、被覆銅ナノ粒子の分散性及び分散安定性がより優れる点から好ましい。また上記上限値以下であると、焼成後の膜の導電性に優れる点から好ましい。
また、本発明の被覆銅ナノ粒子の製造方法において、アルキルアミンと、カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーの配合量は、アルキルアミン100重量部に対して、カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーが0.01〜100重量部であることが好ましく、更に0.1〜50重量部であることが好ましい。
本発明は、上記工程(i)においては、アルキルアミンと銅を生成可能な複合化合物を含む混合物(1−a)と、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーとを含む混合物(1−b)を加熱する工程を有し、上記工程(ii)においては、銅を生成可能な複合化合物を含む混合物(2−a)と、アルキルアミンと、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーとを含む混合物(2−b)を加熱する工程を有し、上記工程(iii)においては、銅を含む化合物、還元性化合物、アルキルアミン、並びに、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーを含む混合物(3)を加熱する工程を有する。このように、銅を生成可能な複合化合物、乃至、銅を含む化合物と還元性化合物との混合物を、アルキルアミン及びポリマー存在下で加熱する工程を有する。
銅ナノ粒子を調製する際には、工程(i)又は工程(ii)のように、複合化合物を含む混合物を調製する第1の工程と、複合化合物を含む混合物とアルキルアミンと上記特定のポリマーの存在下に加熱して銅ナノ粒子を生成させる第2の工程とを、逐次的に行うことが好ましい。還元により分解される含銅化合物の分子に対して、予め還元性化合物を所定の割合で結合させた複合化合物を生成させる場合には、還元性化合物が含銅化合物中の銅イオンに対する電子のドナーとなり、銅イオンの還元を生じやすいため、使用した含銅化合物を単に還元剤で処理する場合と比較して自発的な熱分解による銅原子の遊離を生じやすいからである。
その中でも、工程(i)の前記混合物(1−a)を調製する工程において、まず、銅を含む化合物とアルキルアミンを含む混合物(1’−a)を調製後、当該混合物(1’−a)に還元性化合物を混合して銅を生成可能な複合化合物を含む混合物(1−a)を調製することが、銅を生成可能な複合化合物の生成反応が進行し易い点から好ましい。銅を含む化合物とアルキルアミンを含む混合物(1’−a)において、銅−アミン錯体が生成することにより、銅−アミン錯体と還元性化合物の反応がより進行し易くなるからと推定される。
本発明において製造される被覆銅ナノ粒子において、含まれる銅ナノ粒子は、典型的には金属状態の銅粒子であるが、銅は非常に酸化され易い金属のため、金属状態の銅ナノ粒子の表面が一部酸化されて酸化物となっている場合が含まれていてもよいものである。
本発明の被覆銅ナノ粒子の製造方法は、10nm以上150nm以下、更に、10nm以上100nm以下の被覆銅微粒子を製造するのに好適な製造方法である。
なお、上記銅ナノ粒子の平均一次粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、透過型電子顕微鏡写真(TEM)(例えば、日立ハイテク製 H−7650)にて粒子像を測定し、ランダムに選択した100個の一次粒子の最長部の長さの平均値を平均一次粒径とすることができる。
また、本発明で製造される被覆銅ナノ粒子において、カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーの含有量は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、耐酸化性、低温焼結性の点から、被覆銅ナノ粒子の全量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、更に、0.1〜20質量%の範囲内であることがより好ましい。
なお、銅ナノ粒子表面を被覆している化合物については、例えば、被覆銅ナノ粒子を不活性ガス雰囲気で加熱した際に揮発するガス成分を捕集することで分析することができる。ガス成分を、例えば、各種質量分析、赤外吸収スペクトル、NMRなどで分析することで被覆化合物の構造を明らかにすることができる。
なお、上記銅ナノ粒子分散体には、適宜他の成分を添加しても良い。他の成分としては、例えば、界面活性剤、シランカップリング剤、酸化防止剤等の他、ペーストとするための熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
また、上記金属膜の体積抵抗率は、1.0×10−4Ω・cm以下であることが好ましい。
また、本発明の製造方法により製造される被覆銅ナノ粒子を含む膜を導体化して得られる金属膜の用途としては、例えば、導電性基板の配線、光学装置用の鏡面、各種装飾用途等が挙げられる。
(合成例1 カルボキシル基含有ポリマーGP−1の合成)
(1)マクロモノマーの合成
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA) 100.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。メタクリル酸メチル50.0質量部、メタクリル酸ブチル15.0質量部、メタクリル酸ベンジル15.0質量部、メタクリル酸エトキシエチル20.0質量部、2−メルカプトエタノール4.0質量部、パーブチルO(日油製)1.3質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工製)8.74質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.125質量部、p−メトキシフェノール0.125質量部、及びPGMEA20質量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーMM−1の49.8質量%溶液を得た。得られたマクロモノマーMM−1を、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N−メチルピロリドン、0.01mol/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、質量平均分子量(Mw)3657、数平均分子量(Mn)1772、分子量分布(Mw/Mn)は2.06であった。
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA85.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。上記(1)で得られたマクロモノマーMM−1溶液66.93質量部(有効固形分33.33質量部)、メタクリル酸16.67質量部、n−ドデシルメルカプタン1.86質量部、PGMEA20.0質量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部、PGMEA10.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体であるカルボキシル基含有ポリマーGP−1の26.1質量%溶液を得た。得られたカルボキシル基含有ポリマーGP−1は、GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)10000、数平均分子量(Mn)7100、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。得られたカルボキシル基含有ポリマーGP−1をロータリーエバポレーターで減圧乾燥させた。
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA85.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。合成例1と同様にして得られたマクロモノマーMM−1溶液66.93質量部(有効固形分33.33質量部)、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート16.67質量部、n−ドデシルメルカプタン1.86質量部、PGMEA20.0質量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部、PGMEA10.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体であるカルボキシル基含有ポリマーGP−2の26.1質量%溶液を得た。得られたカルボキシル基含有ポリマーGP−2は、GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)6900、数平均分子量(Mn)5000、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。得られたカルボキシル基含有ポリマーGP−2をロータリーエバポレーターで減圧乾燥させた。
(1)リン含有モノマーの合成
冷却管、添加用ロート、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)100.23質量部とフェニルホスフィン酸(東京化成製)50.00質量部、p−メトキシフェノール0.13質量部を仕込み、乾燥空気でバブリングしながら、温度100℃まで加温した。PGMEA50.00質量部、メタクリル酸グリシジル50.02質量部の混合溶液を30分かけて滴下し、1時間加熱攪拌することで、下記化学式(1)で表されるリン含有モノマーの40.00%溶液を得た。1H−NMR測定によりエポキシ基の消失を確認した。また、31P−NMR測定によりホスフィン酸エステルの生成を確認した。
合成例1と同様にして得られたマクロモノマーMM−1溶液を得た。
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA85.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。1−ビニル−2−ピロリドン8.33質量部、(1)で得られた前記化学式(1)で表されるリン含有モノマーを20.82質量部、マクロモノマーMM−1溶液66.93質量部(有効固形分33.33質量部)、n−ドデシルメルカプタン1.25質量部、PGMEA20.0質量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部、PGMEA10.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、リン含有官能基含有ポリマーGP−3の24.8質量%溶液を得た。得られたリン含有官能基含有ポリマーGP−3は、GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)7000、数平均分子量(Mn)5500、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であった。
次の手順で、ノナン酸銅(II)とヒドラジン一水和物とを用い、ヘキシルアミンとカルボキシル基含有ポリマーGP−1で被覆された被覆銅ナノ粒子を合成した。
100ml三ッ口フラスコ中に、水酸化銅 2.0g(0.02mol、和光純薬工業株式会社)、ノナン酸 6.3g(0.04mol、東京化成工業株式会社)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 3.7g(4ml、関東化学株式会社)を量り取った。この混合液を撹拌しながら100℃まで加熱し、その温度を20分維持した。その後、ヘキシルアミン 8.1g(0.08mol、東京化成工業株式会社)を添加し、100℃で10分加熱、撹拌した。この混合液を氷浴を用いて10℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物 2.0g(0.04mol、関東化学株式会社)をPGME 3.7g(4ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加し、10分撹拌した。その後、合成例1で得られたカルボキシル基含有ポリマーGP−1 0.13gをPGME 0.9g(1ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加し、5分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を10分維持した。30℃まで冷却後、ヘキサン 6.6g(10ml、関東化学株式会社)を添加した。遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、ヘキシルアミンとカルボキシル基含有ポリマーGP−1で被覆された被覆銅ナノ粒子を得た。得られた被覆銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は12nmであった。
実施例1において、合成例1で得られたカルボキシル基含有ポリマーGP−1 0.13gをPGME 0.9g(1ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加した代わりに、合成例1で得られたカルボキシル基含有ポリマーGP−1 0.65gをPGME 4.6g(5ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加した以外は、実施例1と同様にして、ヘキシルアミンとカルボキシル基含有ポリマーGP−1で被覆された実施例2の被覆銅ナノ粒子を得た。得られた銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は18nmであった。
実施例1において、合成例1で得られたカルボキシル基含有ポリマーGP−1の代わりに、合成例2で得られたカルボキシル基含有ポリマーGP−2を用いた以外は、実施例1と同様にして、ヘキシルアミンとカルボキシル基含有ポリマーGP−2で被覆された実施例3の被覆銅ナノ粒子を得た。得られた被覆銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は32nmであった。
実施例1において、合成例1で得られたカルボキシル基含有ポリマーGP−1 0.13gをPGME 0.9g(1ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加した代わりに、合成例2で得られたカルボキシル基含有ポリマーGP−2 0.65gをPGME 4.6g(5ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加した以外は、実施例1と同様にして、ヘキシルアミンとカルボキシル基含有ポリマーGP−2で被覆された実施例4の被覆銅ナノ粒子を得た。得られた被覆銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は22nmであった。
次の手順で、オクタン酸銅(II)とヒドラジン一水和物とを用い、ヘキシルアミンとリン含有官能基含有ポリマーGP−3で被覆された被覆銅ナノ粒子を合成した。
200ml三ッ口フラスコ中に、オクタン酸銅(II) 35.0g(0.1mol、三津和化学薬品株式会社)、1−プロパノール 6.0g(7.5ml、関東化学株式会社)を量り取った。この混合液を撹拌しながら80℃まで加熱し、その温度を20分維持した。その後、ヘキシルアミン 40.5g(0.4mol、東京化成工業株式会社)を添加し、80℃で10分加熱、撹拌した。この混合液を氷浴を用いて10℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物 10.0g(0.2mol、関東化学株式会社)を1−プロパノール 24g(30ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加し、5分撹拌した。その後、合成例3で得られたリン含有官能基含有ポリマーGP−3 0.65gを1−プロパノール 4.0g(5ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加し、5分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を10分維持した。ヘキサン 33g(50ml、関東化学株式会社)を添加し、遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、ヘキシルアミンとリン含有官能基含有ポリマーGP−3で被覆された被覆銅ナノ粒子を得た。得られた銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は31nmであった。
次の手順で、オクタン酸銅(II)及び酢酸銅(II)一水和物とヒドラジン一水和物とを用い、ヘキシルアミンとリン含有官能基含有ポリマーGP−3で被覆された被覆銅ナノ粒子を合成した。
100ml三ッ口フラスコ中に、オクタン酸銅(II) 3.5g(0.01mol、三津和化学薬品株式会社)、酢酸銅(II)一水和物 2.0g(0.01mol、関東化学株式会社)、1−プロパノール 6.0g(7.5ml、関東化学株式会社)を量り取った。この混合液を撹拌しながら80℃まで加熱し、その温度を10分維持した。この混合液を氷浴を用いて3℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物 2.0g(0.04mol、関東化学株式会社)を1−プロパノール 4.8g(6ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加し、5分撹拌した。その後、合成例3で得られたリン含有官能基含有ポリマーGP−3 0.13gをヘキシルアミン 6.1g(0.08mol、東京化成工業株式会社)に溶解させた溶液を添加し、5分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を5分維持した。ヘキサン 6.6g(10ml、関東化学株式会社)を添加し、遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、ヘキシルアミンとリン含有官能基含有ポリマーGP−3で被覆された被覆銅ナノ粒子を得た。得られた被覆銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は55nmであった。
200ml三ッ口フラスコ中に、水酸化銅 10.0g(0.1mol、和光純薬工業株式会社)、ノナン酸 31.5g(0.2mol、東京化成工業株式会社)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 18.5g(20ml、関東化学株式会社)を量り取った。この混合液を撹拌しながら100℃まで加熱し、その温度を20分維持した。その後、ヘキシルアミン 40.5g(0.4mol、東京化成工業株式会社)を添加し、100℃で10分加熱、撹拌した。この混合液を氷浴を用いて10℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物 10.0g(0.2mol、関東化学株式会社)をPGME 18.5g(20ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加し、10分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を10分維持した。30℃まで冷却後、ヘキサン 33g(50ml、関東化学株式会社)を添加した。遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、ヘキシルアミンで被覆され、ポリマーで被覆されていない被覆銅ナノ粒子を得た。得られた被覆銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は39nmであった。
200ml三ッ口フラスコ中に、水酸化銅 6.0g(0.06mol、和光純薬工業株式会社)、ノナン酸 18.9g(0.12mol、東京化成工業株式会社)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 11.1g(12ml、関東化学株式会社)を量り取った。この混合液を撹拌しながら100℃まで加熱し、その温度を20分維持した。その後、1−ヘキサノール 24.5g(0.24mol、関東化学株式会社)を添加し、100℃で10分加熱、撹拌した。この混合液を氷浴を用いて10℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物 6.0g(0.12mol、関東化学株式会社)をPGME 11.1g(12ml、関東化学株式会社)に溶解させた溶液を添加し、10分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を10分維持した。30℃まで冷却後、ヘキサン 20g(30ml、関東化学株式会社)を添加した。遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、1−ヘキサノールとカルボキシル基含有ポリマーGP−2で被覆された被覆銅ナノ粒子を得た。得られた被覆銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均一次粒径は17nmであった。
<分散性評価>
各実施例及び比較例で得られた被覆銅ナノ粒子を、トルエン中へ40重量%の濃度となるように添加し、室温で撹拌して分散性を評価した。評価結果を、表1に示す。
[分散性評価基準]
A:1時間撹拌後に溶液が懸濁している。
B:1時間撹拌後に溶液が懸濁していない。もしくは溶液が高粘度化し液状ではない。
各実施例及び比較例で得られた被覆銅ナノ粒子を、トルエン中へ40重量%の濃度となるように添加し、室温で撹拌して被覆銅ナノ粒子分散体を調製した。当該被覆銅ナノ粒子分散体の塗膜を形成した後、焼成前に塗膜の膜質を目視で観察することにより塗布適性評価を行った。評価の結果を、表1に示す。
[塗布適性評価基準]
A:はじきがなく、塗膜が均一である。
B:はじきがあり、塗膜が不均一である。
得られた被覆銅ナノ粒子粉末の結晶構造を解析することで耐酸化性を評価した。X線回折装置(リガク製、Smart Lab)を用い、X線源としてCuKα線、管電圧45kV、管電流200mAの条件で実施した。2θ/θスキャン法でスキャン速度が毎分4°、ステップ角が0.052°の条件で測定し、Cu(111)に対するCu2O(111)のピーク強度にて耐酸化性を評価した。評価の結果を、表1に示す。
A:Cu(111)に対するCu2O(111)のピーク強度が30%未満
B:Cu(111)に対するCu2O(111)のピーク強度が30%以上
実施例3及び実施例5で得られた被覆銅ナノ粒子をそれぞれ、トルエン中へ40重量%の濃度となるように添加し、室温で撹拌して銅ナノ粒子分散体を調製した。
各銅ナノ粒子分散体を、厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)にワイヤーバーで塗布し、乾燥して、膜厚が1μmの塗膜とした。その後、水素ガスを導入圧力20Paで導入しながら、マイクロ波表面波プラズマ処理装置(MSP−1500、ミクロ電子株式会社製)を用いて、実施例3の被覆銅ナノ粒子はマイクロ波出力300Wで230秒間焼成し、実施例5の被覆銅ナノ粒子はマイクロ波出力350Wで120秒間焼成し、それぞれ導電性基板を得た。
得られた導電性基板を用いて、導電性評価を行った。表面抵抗計(ダイアインスツルメンツ製「ロレスタGP」、PSPプローブタイプ)を用いて、各導電性基板の金属膜に4探針を接触させ、4探針法によりシート抵抗値を測定した。評価の結果を、表2に示す。
実施例3、実施例5及び実施例6で得られた被覆銅ナノ粒子をそれぞれ、トルエン中へ40重量%の濃度となるように添加し、室温で撹拌して銅ナノ粒子分散体を調製した。
各被覆ナノ粒子分散体を、厚さ100μmのPETフィルム(コスモシャイン A4100)にワイヤーバーで塗布し、乾燥して、膜厚が1μmの塗膜とした。その後、パルスドキセノンランプ装置(SINTERON 2000(Xenon Corporation製))を用いて、実施例3の被覆銅ナノ粒子はパルス幅500μ秒、印加電圧3.2kVで1回照射、実施例5の被覆銅ナノ粒子はパルス幅500μ秒、印加電圧3.0kVで1回照射、実施例6の被覆銅ナノ粒子はパルス幅500μ秒、印加電圧3.3kVで1回照射してそれぞれ導電性基板を得た。
実施例1〜6により、本発明に係るアルキルアミンと、カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーとで被覆されている被覆銅ナノ粒子は、耐酸化性に優れながら、分散性、及び塗布適性に優れること、更に、低温又は短時間での焼結性に優れ、高い導電性が得られることが明らかにされた。
また実施例5と比較して、実施例6の被覆銅ナノ粒子は表面抵抗がより低下しているが、これは銅原料を複数用いることで粒径の異なる銅ナノ粒子の混合物が合成され、その結果、単一粒径の銅ナノ粒子と比較して銅ナノ粒子が密に詰まった塗膜が形成できることに由来して導電性が向上したものと推測される。
一方、アルキルアミンで被覆され、カルボキシル基及び特定のリン含有官能基の少なくとも1種を有するポリマーを含まない、比較例1の被覆銅ナノ粒子は、耐酸化性には優れるものの、分散性が悪く、塗膜を形成しても、はじきがあり、不均一な塗膜しか形成できなかった。
また、カルボキシル基含有ポリマーと1−ヘキサノールで被覆され、アルキルアミンで被覆されていない、比較例2の被覆銅ナノ粒子は、カルボキシル基含有ポリマーにより分散性と塗布適性は付与されていたものの、耐酸化性が悪かった。
Claims (3)
- (i)銅を含む化合物、還元性化合物、及びアルキルアミンを少なくとも混合して銅を生成可能な複合化合物を含む混合物(1−a)を調製する工程と、前記混合物(1−a)と、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーとを含む混合物(1−b)を加熱する工程を有するか、
(ii)銅を含む化合物、及び還元性化合物を少なくとも混合して銅を生成可能な複合化合物を含む混合物(2−a)を調製する工程と、前記混合物(2−a)と、アルキルアミンと、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーとを含む混合物(2−b)を加熱する工程を有するか、或いは、
(iii)銅を含む化合物、還元性化合物、アルキルアミン、並びに、カルボキシル基及び下記一般式(A)で表される基の少なくとも1種を有するポリマーを含む混合物(3)を加熱する工程を有する、被覆銅ナノ粒子の製造方法。
Rc及びRdは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。Reは、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2又は−CH2COORe’で示される1価の基であり、Re’は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Rf、Rg、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基であって、Rf及びRhは、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、置換基Rlを有していてもよく、Rlは、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基である。
上記炭化水素基は置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。) - 前記銅を含む化合物は、炭素原子数10以下の脂肪酸銅である、請求項1に記載の被覆銅ナノ粒子の製造方法。
- 平均一次粒径が10nm以上200nm以下の被覆銅ナノ粒子を製造する、請求項1又は2に記載の被覆銅ナノ粒子の製造方法。
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