JP2016109670A - 屈折率分布計測方法、屈折率分布計測装置、及び光学素子の製造方法 - Google Patents

屈折率分布計測方法、屈折率分布計測装置、及び光学素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 被検レンズの屈折率分布を高精度に計測する。【解決手段】 形状及び屈折率が既知の第1基準レンズ120と、形状及び屈折率が既知の第2基準レンズ125と、媒質71とを用いて被検レンズ60を挟み、被検ユニット200を構成する。被検ユニット200の透過波面を測定し、第1基準レンズ120の形状及び屈折率と第2基準レンズの形状及び屈折率と、被検ユニット200の透過波面とを用いて被検レンズ60の屈折率分布を算出する。【選択図】 図1

Description

本発明は、光学素子の屈折率分布を計測する屈折率分布計測方法及び屈折率分布計測装置に関する。
モールドによるレンズ製造方法では、形状、屈折率、屈折率分布の3つの物理量が設計値から乖離する。特に、レンズ内部に発生する屈折率分布は、光学性能に悪影響を及ぼす。そのため、モールドレンズの製造には、形状および屈折率が設計値と異なるという条件のもとで、モールド後のレンズの屈折率分布を非破壊で計測する技術が必要である。
特許文献1に開示された計測方法では、被検物の屈折率と略同じ屈折率を有し、被検物の面形状と逆の面形状を有する第1および第2基準素子で被検物を挟み、第1及び第2基準素子と被検物との隙間にマッチングオイルを充填させて測定セルを構成する。そして、測定セルの干渉縞を測定し、干渉縞から位相分布データを算出し、あらかじめ設定された基準値との差を求めることで被検物の屈折率分布を求める。
特開2014−196966号公報
特許文献1に開示された計測方法では、被検物の屈折率と略同じ屈折率を有する基準素子とマッチングオイルとを用いて、被検物の形状による屈折の影響を低減して被検物の屈折率分布を求めている。しかしながら、モールドによるレンズ製造方法では、モールド条件ごとに被検物の形状だけでなく被検物の屈折率も設計値から乖離するため、被検物、基準素子、マッチングオイルそれぞれの屈折率の間に差異が生じる。
この屈折率の差異によって、被検物の形状誤差(形状の設計値からの乖離)が、屈折率分布の誤差となって現れる。さらに、被検物と基準素子の屈折率の差そのものも、屈折率分布の算出誤差につながる。そのため、高精度に屈折率分布を求めるためには被検物の形状誤差及び被検物の屈折率誤差(屈折率の設計値からの乖離)の影響を補正する演算が必要である。
本発明は、レンズの屈折率分布を非破壊かつ高精度に計測することができる屈折率分布計測方法および屈折率分布計測装置を提供することを例示的な目的とする。
本発明の一側面としての屈折率分布計測方法は、形状及び屈折率が既知の第1基準レンズと、形状及び屈折率が既知の第2基準レンズと、媒質とを用いて前記被検レンズを挟むことにより構成される被検ユニットの透過波面を測定する測定ステップと、前記第1基準レンズの形状及び屈折率と、前記第2基準レンズの形状及び屈折率と、前記被検ユニットの透過波面とを用いて、前記被検レンズの屈折率分布を算出する算出ステップと、を含むことを特徴とする。
尚、レンズをモールドするステップと、上記の屈折率分布計測方法を用いてレンズの屈折率分布を計測することによって、モールドされたレンズの光学性能を評価するステップとを含むレンズの製造方法も、本発明の他の一側面を構成する。
また、本発明のさらに他の一側面としての屈折率分布計測装置は、形状及び屈折率が既知の第1基準レンズと、形状及び屈折率が既知の第2基準レンズと、媒質を用いて前記被検レンズを挟むことにより構成される被検ユニットの透過波面を測定する測定手段と、前記第1基準レンズの形状及び屈折率と、前記第2基準レンズの形状及び屈折率と、前記被検ユニットの透過波面とを用いて、前記被検レンズの屈折率分布を算出する算出手段と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、レンズの屈折率分布を非破壊かつ高精度に計測することができる。
本発明における実施例1の屈折率分布計測装置の概略構成を示す図。 実施例1における被検レンズの屈折率分布の算出手順を示すフローチャート。 実施例1における被検レンズと第1及び第2基準レンズの屈折率の分散曲線を示す図。 実施例1において被検レンズ上に定義された座標系と計測装置内での光線の光路を示す図。 実施例1において被検光に対する被検ユニットの傾きが異なる複数の配置を示す図。 本発明における実施例2の屈折率分布計測装置の概略構成を示す図。 本発明の光学素子の製造方法の製造工程を示す図。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明における実施例1の屈折率分布計測装置の概略構成を示している。本実施例の屈折率分布計測装置は、マッハツェンダ干渉計をもとに構成されている。計測装置は、光源10、干渉光学系、被検ユニット200、補償板130、検出器80、コンピュータ90を有し、被検レンズ60の屈折率分布を計測する。本実施例では、被検レンズは正の屈折力を有するレンズであるが、屈折力の正負に依らず、屈折型光学素子であれば屈折率分布の計測を行うことができる。
光源10は、複数の波長の光を射出することができる光源(例えば、スーパーコンティニューム光源)である。複数の波長の光は、モノクロメータ20を通って準単色光となる。モノクロメータ20を通った光は、ピンホール30を通って発散波となり、コリメータレンズ40を通って平行光となる。
干渉光学系は、ビームスプリッタ100、101、ミラー105、106を有する。干渉光学系は、コリメータレンズ40を通った光を、被検レンズを透過しない参照光と被検レンズを透過する被検光に分割し、参照光と被検光を干渉させて、その干渉光を検出器80に導光する。
被検ユニット200は、被検レンズ60、第1基準レンズ120、第2基準レンズ125、媒質71で構成され、第1基準レンズ120、媒質71、被検レンズ60、媒質71、第2基準レンズ125の順で並んでいる。
第1基準レンズ120は、特定の波長において被検レンズ60の屈折率と等しい屈折率を有する。被検レンズ60は屈折率分布をもつため、上記被検レンズ60の屈折率とは、被検レンズ60の特定の一部の屈折率を指している。特定の一部は、任意の部分でよい。
第2基準レンズ125は、第1基準レンズ120と同一の材料でつくられている。媒質71の屈折率は、被検レンズ60の屈折率と等しい必要はない(例えば、被検レンズ60の屈折率nが約1.9であるとき、媒質71の屈折率nを約1.7程度でよい)。尚、媒質の屈折率は被検レンズ60の屈折率に近いほど被検レンズ60の表面における屈折の影響を低減できるため好ましいが、媒質を空気とすることもできる。
第1基準レンズ120は、平面と被検レンズ60の第1面の面形状とほぼ等しい形状の面とを有し、第2基準レンズ125は、被検レンズ60の第2面の面形状とほぼ等しい形状の面と平面とを有している。すなわち、第1基準レンズ120及び第2基準レンズ125は、被検レンズ60に対向する面とは反対側の面が平面である。
本実施例において、ほぼ等しい形状の面とは、例えば、被検レンズの面形状の製造誤差程度の範囲で形状が一致している面のことである。第1基準レンズ120と第2基準レンズ125の面形状及び屈折率は既知である。第1基準レンズ120及び第2基準レンズ125は、屈折率分布が無視できるレンズであり、例えば、研削・研磨で製作されたものである。被検ユニット200は、入射する被検光に対して垂直方向に回転軸をもつ回転ステージ140上に配置されている。
ビームスプリッタ100で反射した被検光は、ミラー106で反射し、被検ユニット200を透過する。一方、ビームスプリッタ100を透過した参照光は、補償板130を透過し、ミラー105で反射する。補償板130は、被検光と参照光の光路長差を小さくするためのガラスブロックである。モノクロメータ20を透過した光の可干渉距離が長ければ、補償板130は必要ない。参照光と被検光は、ビームスプリッタ101で合波されて、干渉光を形成する。
媒質71の屈折率は、不図示の温度計を用いて媒質71付近の大気の温度を測定し、測定した温度をもとに屈折率に換算することで算出できる。ただし、本実施例では、媒質71の屈折率の算出は必須ではない。
ミラー105は、不図示の駆動機構により、図1中の矢印方向に駆動される。駆動方向は図1の矢印方向に限らず、ミラー105の駆動によって参照光と被検光の光路長差が変化しさえすれば任意の方向でよい。ミラー105の駆動機構は、例えば、ピエゾステージ等から構成される。ミラー105の駆動量は、不図示の測長器(例えば、レーザ変位計やエンコーダ)によって測定され、コンピュータ90によって制御される。参照光と被検光の光路長差は、ミラー105の駆動機構によって調整される。
ビームスプリッタ101で形成された干渉光は、結像レンズ45を介して検出器80(例えば、CCDやCMOS)で検出される。検出器80で検出された干渉信号は、コンピュータ90に送られる。検出器80は、被検レンズ60の位置と、結像レンズ45に関して共役な位置に配置されている。つまり、被検レンズ60の像と干渉縞とが検出器80上に結像される。
コンピュータ90は、検出器80の検出結果をもとに被検レンズの屈折率分布を算出する算出手段や、モノクロメータ20を透過する光の波長、ミラー105の駆動量、回転ステージ140の回転量を制御する制御手段を有し、CPU等から成る。
図2は、被検レンズ60の屈折率分布を算出する算出手順を示すフローチャートである。本実施例では、まず、第1基準レンズ120と第2基準レンズ125と媒質71とを用いて被検レンズ60を挟み、被検ユニット200を構成する(S10)。
第1基準レンズ120と第2基準レンズ125は、図3に示すように、被検レンズ60とは異なる屈折率分散を有し、特定の波長λにおいて被検レンズ60の屈折率と等しい屈折率を有する。一般に、モールドレンズの屈折率絶対値は、モールドの条件によって大きく変化する。もし、第1及び第2基準レンズが被検レンズ60と同じ屈折率分散を有していると、図3の2つの曲線がほぼ同じ傾きとなるため、2曲線の交点(特定の波長λ)が存在しない場合がある。したがって、本実施例では、第1基準レンズ120と第2基準レンズ125は、被検レンズ60の材料とは異なる材料が望ましい。
次に、被検ユニット200が被検光路上に配置される(S20)。モノクロメータ20で波長を制御しながら、複数の波長における被検ユニット200の透過波面が測定される(S30)。そして、複数の波長における被検ユニット200の透過波面から特定の波長λが決定される(S40)。
特定の波長λとは、被検レンズ60内部の特定の位置の屈折率と第1及び第2基準レンズの屈折率とが一致する波長である。屈折率が一致している波長においては、被検ユニット200の前後で波面の変化が小さくなるため、透過波面の大きさから特定の波長λを決定できる。特に、被検レンズ60の第1面に対する第2面の傾きが急な部分において透過波面は大きくなるため、その部分を用いると特定の波長λを決定しやすい。例えば、被検レンズの切断端(コバ)付近の透過波面が特定の波長λの決定に適している。
特定の波長λは、透過波面ではなく干渉縞から決定することもできる。干渉縞から特定の波長λを決定する場合、モノクロメータ20で波長を制御しながら複数の波長における干渉縞を測定し、干渉縞が最も少なくなる波長(=特定の波長λ)を決定すればよい。
透過波面は、ミラー105の駆動を用いたフリンジスキャン法によって測定される。特定の波長λにおける被検ユニットの透過波面W(λ,x,y)は、数式1のように表される。
Figure 2016109670
(x,y)、L(x,y)、L(x,y)、L(x,y)、L(x,y)は、図4(b)に示される光線に沿った各構成要素間の幾何学距離である。図4(b)の光線は、図4(a)に示す被検レンズ60の内部にある点(x,y)を通る光線を指す。図4(b)は、各面における屈折による光線の偏向を無視して描かれている。
L(x,y)は被検レンズ60の厚み、L(x,y)は第1基準レンズ120の厚み、L(x,y)は第2基準レンズ125の厚みである。L(x,y)、L(x,y)は、触針式の面形状計測方法等によって計測されているものとし、ここでは既知の量と定義している。L(x,y)とL(x,y)は、第1基準レンズ120の第2面と被検レンズ60の第1面、被検レンズ60の第2面と第2基準レンズ125の第1面、の面形状がわずかに異なることによって発生する隙間であり、その隙間には媒質71が満たされている。
sample(λ,x,y)は、特定の波長λにおける被検レンズ60の屈折率である。n(λ)は、第1基準レンズ120、第2基準レンズ125の特定の波長λにおける屈折率であり、既知である。本実施例では、第1基準レンズ120、第2基準レンズ125の屈折率は同一で、レンズ内に一様に分布しているものと仮定している。nmedium(λ)は、特定の波長λにおける媒質71の屈折率である。
Lは、L(x,y)、L(x,y)、L(x,y)、L(x,y)、L(x,y)の和である。つまり、数式2の関係式がある。数式2の右辺は既知の量であり、被検レンズ60の厚みの設計値とほぼ等しい。
Figure 2016109670
Cは任意定数である。干渉計では、波面、つまり等位相面の定数成分(DC成分)を測定できない。したがって、干渉計で測定された波面は、定数成分の不確定量Cを含む。数式1のn(λ)Lの項は、定数項であり定数項Cの一部であるが、後の計算のため、定数項Cから分離して表記している。数式1は、数式2を用いて数式3のように変形できる。
Figure 2016109670
数式3の両辺を、L−(L(x,y)+L(x,y))で除算すれば、数式4で表される屈折率分布が算出される。数式4中の右辺第2項と右辺第3項は、屈折率分布の算出誤差に相当する。
Figure 2016109670
数式4の第3項は、干渉計で測定できない不確定な定数項Cに由来する成分のため、Cの値によっては大きな屈折率分布誤差になりうる。そこで、以下のような補正演算を行う。
被検レンズ60内部の特定の位置(x,y)において、被検レンズ60の屈折率が第1及び第2基準レンズの屈折率n(λ)と等しいとする(nsample(λ,x,y)=n(λ))。このとき、数式3は位置(x,y)において、数式5のように表される。数式3を数式5で減算した後に、L−(L(x,y)+L(x,y))で除算すれば、数式6のように、定数項Cに由来する屈折率分布の誤差成分が混入しない屈折率分布が得られる。
Figure 2016109670
Figure 2016109670
定数項Cは、被検レンズ60の屈折率と第1及び第2基準レンズの屈折率との差が小さく、かつ、被検レンズ60の屈折率分布がゼロに近ければ、C=0としても問題ない。しかし、一般的に、モールドによって被検レンズ60の屈折率は変化し、屈折率分布も発生するため、C=0とすると精度が悪化する。本実施例では、被検レンズ60の屈折率と第1及び第2基準レンズの屈折率とが等しくなる特定の波長λにおいて透過波面を測定し、数式5及び数式6の演算によって定数項Cに由来する屈折率分布誤差を消去しているため、精度が高い。
被検レンズ60の第1面の面形状と第1基準レンズ120の第2面の面形状、及び被検レンズ60の第2面の面形状と第2基準レンズ125の第1面の面形状が、被検レンズの面形状の製造誤差程度の範囲で一致していれば、数式6の右辺第2項は無視できる。つまり、数式7の近似が成り立つ。
Figure 2016109670
以上より、特定の波長における被検レンズ60の屈折率分布GI(λ,x,y)が、数式8のように算出される。数式8の右辺の分母L−(L(x,y)+L(x,y))は、被検レンズ60の厚みの設計値とほぼ等しいため、L−(L(x,y)+L(x,y))の代わりに被検レンズ60の厚みの設計値で代用してもよい。
Figure 2016109670
本実施例の計測方法は、被検レンズ60の形状誤差(形状の設計値からの乖離)及び被検レンズ60の屈折率誤差(屈折率の設計値からの乖離)によって発生する屈折率分布の算出誤差を、基準レンズの形状及び屈折率を用いて補正している。そのため、光学素子の屈折率分布を非破壊かつ高精度に計測できる。
本実施例の計測方法は、被検レンズ60の屈折率とほぼ等しい屈折率を有する媒質(マッチング液)を用いずに、被検レンズ60の屈折率分布を計測する。したがって、実効的なマッチング液が得られない高屈折率(n〜1.8以上)の光学素子の屈折率分布も、高精度に算出できる。
本実施例では、図1のように、被検レンズ60に対して被検光が垂直に入射する構成で被検レンズ60の屈折率分布を計測したが、図5のように被検レンズ60に対して被検光が斜めに入射する構成でも被検レンズ60の屈折率分布を計測できる。斜入射配置による被検レンズ60の屈折率分布計測によって、被検レンズ60の光軸方向の屈折率分布が算出できる。光軸方向とは、被検レンズ60の第1面頂点から第2面頂点に向かう方向を指す。
まず、被検光に対して被検ユニット200の傾きが異なる複数の配置において、被検ユニット200の透過波面が測定される。被検光に対する被検ユニット200の傾き角度は、回転ステージ140の回転量をコンピュータ90で制御することで調整される。
そして、複数の配置において、被検レンズ60の屈折率分布が算出される。本実施例で算出される屈折率分布は、被検レンズ60の3次元屈折率分布を、被検光の透過方向に投影した屈折率分布投影値である。斜入射配置による被検レンズ60の屈折率分布投影値は、傾き角度に応じた被検レンズ60の光軸方向の屈折率分布情報を有する。複数の配置において屈折率分布投影値を算出すれば、被検レンズ60の光軸方向の屈折率分布情報を抽出できる。
図5(a)、(b)は、被検光に対して被検ユニット200を傾けたときの光線の進み方を示している。被検ユニット200の傾き角が大きくなるに従い、被検ユニット200の表面における屈折角が大きくなる。屈折角が大きくなると、入射する被検光に対して透過する被検光のシフト量が大きくなる。また、この屈折の影響で、被検レンズ60に対する被検光の入射角度が、被検ユニット200の傾き角度に比べて小さいという問題がある。入射角度が小さいと、被検レンズ60の光軸方向の屈折率分布情報はあまり得られない。
図5(c)、(d)は、上記問題を解決する方法を示している。被検ユニット200の傾き角度と同じ角度の頂角を有するプリズム150、151、155、156を被検ユニット200の前後に挿入することで、屈折の影響を低減している。
プリズム150、151、155、156は、第1及び第2基準レンズと同一材質で製作されている。プリズム150、151、155、156と被検ユニット200のそれぞれの隙間には、隙間における屈折の影響を低減するために媒質71が塗布されている。
図5(c)、(d)のように、被検ユニット200の傾き角と同じ頂角を有するプリズムを用いることで、被検ユニット200の傾き角度と同じ入射角度の屈折率分布投影値が得られる。
光路長分布(=屈折率分布×L(x,y))は、モールドレンズの光学性能を示す物理量として、屈折率分布の代用が可能である。したがって、本発明の屈折率分布計測方法(屈折率分布計測装置)は、光路長分布計測方法(光路長分布計測装置)も意味する。
本実施例では、複数の波長の光を射出する光源とモノクロメータの組み合わせで波長を走査した。複数の波長の光を射出する光源としてスーパーコンティニューム光源が使用されているが、光周波数コム、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、短パルスレーザ、ハロゲンランプが代用できる。
複数の波長の光を射出する光源とモノクロメータの組み合わせの代わりに、波長掃引光源でもよいし、複数の波長を離散的に射出するマルチラインレーザでもよい。複数の波長の光を射出する光源は、単一の光源に限らず、複数の光源を組み合わせでもよい。本実施例は、2種類以上の波長の光を射出する光源であれば足りる。
本実施例では、干渉光学系にマッハツェンダ干渉計を用いた。その代わりにトワイマングリーン干渉計やフィゾー干渉計が代用できる。
本実施例では、第1基準レンズ120の第2面の面形状と被検レンズ60の第1面の面形状との差、及び被検レンズ60の第2面の面形状と第2基準レンズの第1面の面形状との差が、実施例1よりも大きい場合の屈折率分布計測方法を説明する。本実施例では、この面形状の差(形状成分)を、2種類の異なる波長における透過波面を用いて除去する。
図6は、本発明における実施例2の屈折率分布計測装置の概略構成を示す図である。本実施例では、実施例1で使用した干渉光学系を使用せずに、シャックハルトマンセンサ81を用いて透過波面を測定する。光源11はマルチラインガスレーザ(例えば、アルゴンレーザやクリプトンレーザ)、被検レンズ60は負の屈折力をもつレンズである。実施例1と同様の構成については、同一の符号を付して説明する。
被検ユニット200は、容器50内に満たされた媒質70中に配置されている。本実施例における被検ユニット200は、図6のように、第1基準レンズ120、被検レンズ60、第2基準レンズ125、媒質70、補助ガラス127、128、129で構成されており、全体で直方体(または円柱)になっている。被検レンズ60の第1面及び第2面は非球面である。第1基準レンズ120の第2面は、被検レンズ60の第1面の非球面形状に近い球面であり、第2基準レンズ125の第1面は、被検レンズ60の第2面の非球面形状に近い球面である。
本実施例では、被検レンズ60の切断端(コバ)付近の屈折率nsample(λ,a,b)が既知としている。被検レンズ60の屈折率は、例えば、被検レンズ60のコバ付近をプリズム形状に加工して最小偏角法で計測できる。また、第1基準レンズ120、第2基準レンズ125、補助ガラス127、128、129はすべて同一材質で製作されており、すべての面形状及び屈折率n(λ)が既知の量である。
光源11から射出した光は、モノクロメータ20によって分光され、ピンホール30を透過して発散光となり、コリメータレンズ40によって平行光となる。平行光は、容器50内の媒質70中に配置された被検ユニット200を透過し、シャックハルトマンセンサ81で検出される。シャックハルトマン81で検出された信号は、コンピュータ90に送られる。容器50には、不図示の温度計が配置されている。媒質70の屈折率は、温度計により測定された媒質70の温度と、媒質70の屈折率の温度係数とを用いてコンピュータ90で算出される。
本実施例における被検レンズ60の屈折率分布の算出方法を以下に示す。本実施例は、まず、被検レンズ60を第1基準レンズ120と第2基準レンズ125と媒質70と補助ガラス127、128、129とで挟んで被検ユニット200を構成し、被検ユニット200を容器50内の光路上に配置する。
そして、第1の波長λ(例えば、λ=457nm)における被検ユニット200の第1の透過波面W(λ,x,y)と、第2の波長λ(例えば、λ=514nm)における被検ユニット200の第2の透過波面W(λ,x,y)とを測定する。波長λにおける透過波面W(λ,x,y)は、数式9で表される。さらに、数式9は、数式2と、数式10の近似を用いて数式11のように変形できる。数式11は、座標(a,b)において、数式12のように表される。数式13は、数式11から数式12を減算して、定数項Cを消去した式である。数式中の記号の意味は、実施例1と同一である。
Figure 2016109670
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第1基準レンズ120の形状及び屈折率と、第2基準レンズ125の形状及び屈折率と、第1の波長における被検ユニット200の透過波面と、第2の波長における被検ユニット200の透過波面とを用いて、第1及び第2基準レンズと被検レンズ60との面形状の差(形状成分)L(x,y)−L(0,0)+L(x,y)−L(0,0)を除去できる。
第1波長における被検レンズ60の屈折率分布GI(λ,x,y)は、数式14の近似を用いて数式15のように算出される。第2波長における被検レンズ60の屈折率分布GI(λ,x,y)は、数式14、数式15を用いて数式16のように表される。
Figure 2016109670
Figure 2016109670
Figure 2016109670
本実施例では、第1及び第2基準レンズと被検レンズとの面形状差が大きい場合に、異なる2種類の波長における透過波面を用いて面形状差(形状成分)を除去して屈折率分布を算出した。形状成分の除去には、2種類の波長の代わりに、屈折率の異なる2種類の媒質を利用してもよい。屈折率の異なる2種類の媒質を用いて被検ユニット200を構成し、被検ユニット200の透過波面を測定すれば、形状成分を除去して屈折率分布を算出できる。その方法は次のとおりである。
第1基準レンズ120と、第2基準レンズ125と、第1の屈折率n medium(λ)を有する第1の媒質と補助ガラス127、128、129とを用いて被検レンズ60を挟み、第1の被検ユニットを構成する。そして、第1の被検ユニットの第1の透過波面を測定する。第1の被検ユニットの第1の透過波面W(λ,x,y)は、数式17のように表される。
Figure 2016109670
第1基準レンズ120と、第2基準レンズ125と、第1の屈折率n medium(λ)と異なる第2の屈折率n medium(λ)を有する第2の媒質と補助ガラス127、128、129とを用いて被検レンズ60を挟み、第2の被検ユニットを構成する。そして、第2の被検ユニットの第2の透過波面を測定する。第2の被検ユニットの第2の透過波面W(λ,x,y)は、数式18のように表される。
Figure 2016109670
最後に、第1基準レンズ120の形状及び屈折率と、第2基準レンズ125の形状及び屈折率と、第1の透過波面と、第2の透過波面とを用いて、被検レンズ60の形状成分を除去して屈折率分布を算出する。定数項Cは、数式12、13と同様の方法で消去できる。被検レンズ60の屈折率分布GI(λ,x,y)は、数式19のように表される。
Figure 2016109670
2種類の波長や2種類の媒質を用いる代わりに、第1、第2基準レンズを用いて特定の屈折率分布を有する基準被検レンズを挟んで構成された基準被検ユニットの透過波面を用いて、第1、第2基準レンズと被検レンズ60との面形状の差の影響を低減できる。
本実施例では、基準被検レンズの屈折率分布として、屈折率nsample(λ,a,b)の一様な屈折率分布を仮定する。基準被検レンズの形状として被検レンズ60の設計値を用いる。第1基準レンズと第2基準レンズとを用いて基準被検レンズを挟むことにより構成される基準被検ユニットの透過波面Wsim(λ,x,y)は、数式20のように表される。ただし、C’は任意定数である。
Figure 2016109670
δL(x,y)は被検レンズ60の第1面形状と基準被検レンズの第1面形状との差、δL(x,y)は被検レンズ60の第2面形状と基準被検レンズの第2面形状との差である。この基準被検ユニットの透過波面Wsim(λ,x,y)を用いると、第1及び第2基準レンズと被検レンズ60との面形状の差の影響(数式11の右辺第2項)を低減できる。
被検ユニット200の透過波面W(λ,x,y)(数式11)と、基準被検ユニットの透過波面Wsim(λ,x,y)(数式20)との差は、数式21のように表される。
Figure 2016109670
δL(x,y)やδL(x,y)は、被検レンズ60の製造誤差程度の小さな値なので、数式22の近似が成り立つ。数式21から数式12、13と同様の方法で定数項C−C’を消去して、数式22の近似を用いると、被検レンズ60の屈折率分布GI(λ,x,y)が、数式23のように表される。
Figure 2016109670
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本実施例では、被検ユニット200の透過波面の測定にシャックハルトマンセンサ81を使用した。シャックハルトマンセンサの代わりにタルボ干渉計のようなシアリング干渉計を用いてもよい。
本実施例では、モノクロメータ20を用いて波長を制御したが、モノクロメータの代わりに波長選択フィルタを用いてもよい。
本実施例では、複数の波長を射出する光源(マルチラインガスレーザ)を用いたが、2種類の媒質を用いる方式や基準被検レンズを用いる方式を使用する場合は、単一波長の光源(例えば、HeNeレーザ)で良い。
実施例1、実施例2で説明した装置及び方法を用いて計測された屈折率分布の結果を、モールドレンズ等の光学素子の製造方法にフィードバックすることも可能である。
図7には、モールド成型を利用した光学素子の製造工程の例を示している。
光学素子は、光学素子の設計工程、金型の設計工程及び、設計された金型を用いた光学素子のモールド工程を経て製造される。モールドされた光学素子は、その形状精度が評価され、精度不足である場合は金型を補正して再度モールドを行う。形状精度が良好であれば、光学素子の光学性能が評価される。この光学性能の評価工程に、本発明の屈折率分布計測方法を組み込むことで、高屈折率硝材を母材としてモールドされる光学素子の量産が可能になる。なお、光学性能が低い場合は、光学面を補正した光学素子を設計し直す。
以上、説明した各実施例は代表的な例に過ぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
10 光源
60 被検レンズ
71 媒質
80 検出器
90 コンピュータ
120 第1基準レンズ
125 第2基準レンズ
200 被検ユニット

Claims (13)

  1. 形状及び屈折率が既知の第1基準レンズと、形状及び屈折率が既知の第2基準レンズと、媒質とを用いて前記被検レンズを挟むことにより構成される被検ユニットの透過波面を測定する測定ステップと、
    前記第1基準レンズの形状及び屈折率と、前記第2基準レンズの形状及び屈折率と、前記被検ユニットの透過波面とを用いて、前記被検レンズの屈折率分布を算出する算出ステップと、
    を含むことを特徴とする屈折率分布計測方法。
  2. 前記第1基準レンズと前記第2基準レンズは同一の材料で形成されており、前記第1基準レンズと前記第2基準レンズは、特定の波長において前記被検レンズの屈折率と等しい屈折率を有することを特徴とする請求項1に記載の屈折率分布計測方法。
  3. 複数の波長において前記被検ユニットの透過波面を測定し、
    前記複数の波長における前記被検ユニットの透過波面から前記特定の波長を決定し、
    前記特定の波長における透過波面を用いて、前記被検レンズの屈折率分布を算出することを特徴とする請求項2に記載の屈折率分布計測方法。
  4. 前記被検光に対する前記被検ユニットの傾きが異なる複数の配置について前記被検ユニットの透過波面を測定し、
    前記複数の配置における前記被検ユニットの透過波面を用いて、前記被検レンズの光軸方向の屈折率分布を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の屈折率分布計測方法。
  5. 第1の波長における前記被検ユニットの透過波面と、前記第1の波長とは異なる第2の波長における前記被検ユニットの透過波面とを測定し、
    前記第1基準レンズの形状及び屈折率と、前記第2基準レンズの形状及び屈折率と、前記第1の波長における前記被検ユニットの透過波面と、前記第2の波長における前記被検ユニットの透過波面とを用いて、前記被検レンズの形状成分を除去して、前記被検レンズの屈折率分布を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の屈折率分布計測方法。
  6. 前記第1基準レンズと、前記第2基準レンズと、第1の屈折率を有する第1の媒質とを用いて前記被検レンズを挟むことにより構成される第1の被検ユニットの透過波面を測定し、
    前記第1基準レンズと、前記第2基準レンズと、前記第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有する第2の媒質とを用いて前記被検レンズを挟むことにより構成される第2の被検ユニットの透過波面を測定し、
    前記第1基準レンズの形状及び屈折率と、前記第2基準レンズの形状及び屈折率と、前記第1の被検ユニットの透過波面と、前記第2の被検ユニットの透過波面とを用いて、前記被検レンズの形状成分を除去して、前記被検レンズの屈折率分布を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の屈折率分布計測方法。
  7. 前記第1基準レンズの形状及び屈折率と、前記第2基準レンズの形状及び屈折率と、前記被検ユニットの透過波面と、前記第1基準レンズと前記第2基準レンズとを用いて特定の屈折率分布を有する基準被検レンズを挟むことにより構成される基準被検ユニットの透過波面とを用いて、前記被検レンズの屈折率分布を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の屈折率分布計測方法。
  8. 光学素子をモールドするステップと、
    請求項1から7のいずれか1項に記載の屈折率分布計測方法を用いて前記光学素子の屈折率分布を計測することによって、モールドされた光学素子の光学性能を評価するステップと、を含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
  9. 形状及び屈折率が既知の第1基準レンズと、形状及び屈折率が既知の第2基準レンズと、媒質を用いて前記被検レンズを挟むことにより構成される被検ユニットの透過波面を測定する測定手段と、
    前記第1基準レンズの形状及び屈折率と、前記第2基準レンズの形状及び屈折率と、前記被検ユニットの透過波面とを用いて、前記被検レンズの屈折率分布を算出する算出手段と、
    を有することを特徴とする屈折率分布計測装置。
  10. 前記第1及び第2基準レンズは、前記被検レンズに対向する面とは反対側の面が平面であることを特徴とする請求項9に記載の屈折率分布計測装置。
  11. 前記測定手段は、マッハツェンダ干渉計を有することを特徴とする請求項9または10に記載の屈折率分布計測装置。
  12. 前記測定手段は、シャックハルトマンセンサを有することを特徴とする請求項9または10に記載の屈折率分布計測装置。
  13. 前記測定手段は、シアリング干渉計を有することを特徴とする請求項9または10に記載の屈折率分布計測装置。
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