JP2016109595A - 屈折率分布計測方法、屈折率分布計測装置、及び光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 被検レンズの屈折率分布を簡易に計測する。【解決手段】 2つの被検レンズ60の位置関係が光軸に垂直な軸に関して対称性を有する複数の配置において、光源10からの光を被検光と参照光に分割し、被検光を2つの被検レンズ60に入射させ、2つの被検レンズ60を透過した被検光と参照光とを干渉させた干渉光の位相を測定する。複数の配置における干渉光の位相と2つの被検レンズ60の位置関係とから、2つの被検レンズ60の屈折率分布の平均値を被検レンズ60の屈折率分布として算出する。【選択図】 図1
Description
本発明は、光学素子の屈折率分布を計測する屈折率分布計測方法及び屈折率分布計測装置に関する。
モールドによるレンズ製造方法は、レンズ内部に屈折率分布を発生させる。レンズ内部の屈折率分布は、光学性能に悪影響を及ぼす。そのため、モールドレンズの製造には、モールド後に非破壊で屈折率分布を計測する技術が必要である。
特許文献1に開示された計測方法では、被検物の屈折率よりも低い屈折率を有する第1の媒質中において被検物の第1の透過波面を測定する。さらに、被検物の屈折率よりも低く、第1の媒質の屈折率と異なる屈折率を有する第2の媒質中において第2の透過波面を測定する。そして、第1及び第2の透過波面の測定結果と、特定の屈折率分布を有する基準被検物の第1及び第2の媒質中それぞれにおける透過波面とから、被検物の屈折率分布を算出する。
特許文献2に開示された計測方法では、2つのプローブ光学系で、屈折率と厚みが既知の基準物を挟み、基準物内の光路長と2つのプローブ位置とを測定する。基準物の代わりに被検物を設置し、被検物内の光路長と2つのプローブ位置とを測定する。そして、基準物と被検物の測定値から被検物の屈折率分布を算出する。
特許文献1に開示された方法では、高価な波面センサが必要である。また、高屈折率かつ大口径の凹レンズの透過波面を測定する場合、透過波面の光束がセンササイズよりも大きくなる。そのため、透過波面を小領域に分割し、小領域に分割された透過波面を測定し、測定された各透過波面を各透過波面の重なり領域を用いてつなぎ合わせる演算が必要である。透過波面の分割測定とつなぎ合わせ演算は、作業工程が煩雑である。
特許文献2に開示された方法では、プローブ位置の制御やノイズ除去が難しい。また、計測装置の構成が複雑である。
本発明は、被検物の屈折率分布を簡易に計測することができる屈折率分布計測方法および屈折率分布計測装置を提供することを例示的な目的とする。
本発明の一側面としての屈折率分布計測方法は、光源からの光を被検光と参照光に分割し、被検光を2つの被検レンズに入射させ、2つの被検レンズを透過した被検光と参照光とを干渉させた干渉光の位相を測定することによって被検レンズの屈折率分布を算出する屈折率分布計測方法であって、2つの被検レンズの位置関係が光軸に垂直な軸に関して対称性を有する複数の配置において、干渉光の位相を測定する測定ステップと、複数の配置における干渉光の位相と2つの被検レンズの位置関係とから2つの被検レンズの屈折率分布の平均値を被検レンズの屈折率分布として算出する算出ステップと、を有することを特徴とする。
尚、光学素子をモールドするステップと、上記の屈折率分布計測方法を用いて光学素子の屈折率分布を計測することによって、モールドされた光学素子の光学性能を評価するステップとを含む光学素子の製造方法も、本発明の他の一側面を構成する。
また、本発明のさらに他の一側面としての屈折率分布計測装置は、光源と、光源からの光を被検光と参照光に分割し、被検光を2つの被検レンズに入射させ、2つの被検レンズを透過した被検光と参照光を干渉させる干渉光学系と、被検光と参照光による干渉光を検出する検出器と、2つの被検レンズの位置関係が光軸に垂直な軸に関して対称性を有する複数の配置について測定した干渉光の位相と、2つの被検レンズの位置関係とから2つの被検レンズの屈折率分布の平均値を被検レンズの屈折率分布として算出する演算手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、被検物の屈折率分布を簡易に計測することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明における実施例1の屈折率分布計測装置の概略構成を示している。本実施例の屈折率分布計測装置は、マイケルソン型ヘテロダイン干渉計をもとに構成されている。計測装置は、光源10、干渉光学系、検出器80、コンピュータ90を有する。
光源10は、波長λの光と波長λ+Δλの光の2種類の光を射出する光源(例えば、ゼーマンレーザ)である。波長λの光と波長λ+Δλの光の偏光は、互いに直交する直線偏光である。本実施例では、光源10から射出される光の方向に光軸を設定している。本実施例において、波長λと波長λ+Δλは空気中における波長を意味している。
干渉光学系は、ピンホール30、31、コリメータレンズ40、41、偏光ビームスプリッタ100、1/4波長板120、121、ミラー110、111、絞り35を有する。干渉光学系は、光源からの光を、被検レンズを透過する被検光(波長λ)と被検物を透過しない参照光(波長λ+Δλ)に分割し、被検光と参照光を干渉させて、その干渉光を検出器80(例えば、フォトダイオード)に導光する。
2つの被検レンズ60は、2つの被検レンズ60の位置関係が光軸に垂直な軸に関して対称性を有するように配置されている。本実施例において、光軸に垂直な軸とは、図面に垂直な方向の軸200である。2つの被検レンズ60は、不図示の駆動機構により、図1中の矢印方向に駆動される。駆動機構は、例えば、ピエゾステージ等から構成される。2つの被検レンズ60の駆動量(2つの被検レンズの位置関係)は、不図示の測長器(例えば、レーザ変位計やエンコーダ)によって測定され、コンピュータ90によって制御される。本実施例において、2つの被検レンズ60は、同一条件で製作されたレンズ(例えば、同一のモールド条件でモールドされたレンズ)である。絞り35は、2つの被検レンズの間に設置されており、不要光を除去する役割を有する。
光源から射出された光は、ピンホール30を通って発散波となり、コリメータレンズ40を通って平行光となる。平行光のうち、波長λの光(被検光)は偏光ビームスプリッタ100を透過し、波長λ+Δλの光(参照光)は偏光ビームスプリッタ100で反射する。
偏光ビームスプリッタ100を透過した被検光は、1/4波長板120を通って円偏光となり、2つの被検レンズ60を透過する。2つの被検レンズ60を透過する光のうち、対称軸200を透過する光は、入射方向と同じ方向(光軸方向)に進む。2つの被検レンズ60を透過して光軸方向に進んだ光は、ミラー110で反射された後、同じ光路を逆進する。同じ光路を逆進した光は、1/4波長板120を透過して直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ100で反射する。
偏光ビームスプリッタ100で反射した参照光は、1/4波長板121を通って円偏光となり、ミラー111で反射する。ミラー111で反射した光は、1/4波長板121を通って直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ100を透過する。尚、ミラー111は、不図示の駆動機構により、図1中の矢印方向に駆動される。ミラー111の駆動機構は、参照光の光路長を調整する役割を有し、駆動量は不図示の測長器によって測定され、コンピュータ90によって制御される。
偏光ビームスプリッタ100で反射した被検光と、偏光ビームスプリッタ100を透過した参照光は、重ね合わさって干渉光となり、コリメータレンズ41を介して検出器80に導光される。ピンホール31は、参照光と異なる方向に進む被検光(つまり、光軸に平行に進まなかった被検光)を遮光する役割を有する。検出器80で検出された信号はコンピュータ90に送られ、干渉光の位相が測定される。
コンピュータ90は、検出器80の検出結果と、2つの被検レンズ60の位置関係に基づいて被検レンズ60の屈折率分布を算出する演算手段や、2つの被検レンズ60及びミラー111の駆動量を制御する制御手段を有し、CPU等から成る。
図2は、被検レンズ60の屈折率分布を算出する算出手順を示すフローチャートである。まず、2つの被検レンズ60の位置関係が光軸に垂直な軸に関して対称性を有するように、2つの被検レンズが配置される(S10)。次に、被検光と参照光を干渉させた干渉光の位相が測定される(S20)。
図3(a)は、被検レンズ60上に定義された座標系を示す図である。図3(b)は、図3(a)の点(x,y)を通る被検光に関する2つの被検レンズ間の光路を示す図である。本実施例のヘテロダイン干渉計によって測定される干渉光の位相φ(x,y,λ)は、数式1で表される。
ただし、n(x,y,λ)は波長λにおける2つの被検レンズ60の屈折率の平均値、L(x,y)、d(x,y)、D(x,y)は図3(b)に示した各面の幾何学的距離である。L(x,y)は被検光の光路に沿った被検レンズ60の厚みを意味している。Δは被検光路上に2つの被検レンズ60が配置されていないときの、被検光と参照光の光路長差である。尚、2つの被検レンズ60の位置関係を示すL(x,y)、d(x,y)、D(x,y)と、光路長差Δは、既知の量としている。
そして、屈折率分布を計測したい領域D(例えば、D={(x,y)|x=0,y=0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10})のすべてにおいて、干渉光の位相の測定が完了したかどうか判断される(S30)。領域Dすべてを測定していない場合、2つの被検レンズ60が異なる位置に移動し(S40)、ステップS10へ戻る。一方、領域Dすべての測定が完了した場合、ステップS50へ移る。
最後に、複数の配置(領域Dすべてに対応する干渉光を測定するための配置)における干渉光の位相と2つの被検レンズ60の位置関係とから、2つの被検レンズ60の屈折率分布の平均値が被検レンズ60の屈折率分布として算出される(S50)。本実施例におけるステップS50の詳細は次の通りである。
まず、屈折率n(0,0,λ)かつ一様な屈折率分布(特定の屈折率分布)を有する2つの基準被検レンズが2つの被検レンズ60の代わりに配置されているときの位相(基準位相)をシミュレーションによって算出する。基準位相φ0(x,y,λ)は、2つの被検レンズ60の位置関係を示すL(x,y)、d(x,y)、D(x,y)と光路長差Δとを用いて、数式2のように表される。
n(0,0,λ)は、図3(a)の座標(0,0)を通る被検光の光路における、2つの被検レンズ60の屈折率の平均値に相当する。本実施例においてn(0,0,λ)、n(0,0,λ+Δλ)は既知の量としている。つぎに、位相φ(x,y,λ)と基準位相φ0(x,y,λ)の差をとることで、位相φ(x,y,λ)を補正する。位相φ(x,y,λ)と基準位相φ0(x,y,λ)の差分は、数式3のように算出される。
さらに、数式4の近似式を用いて数式3を変形すると、数式5のように、2つの被検レンズ60の屈折率分布の平均値n(x,y,λ)−n(0,0,λ)が被検レンズ60の屈折率分布として算出される。
以上のように、本実施例では、2つの被検レンズによる対称配置を利用して被検光が光軸に平行になる状態を作り出し、一般的な干渉計で位相を測定し、被検レンズの屈折率分布を計測している。本実施例を用いれば、煩雑な作業や複雑な装置が必要ないため、被検レンズの屈折率分布が簡易に計測される。
本実施例では、2つの被検レンズ60の屈折率分布の平均値を、被検レンズ60の屈折率分布として算出している。同一条件で製作された被検レンズはほぼ同一の物性を有しているため、2つの被検レンズの屈折率分布平均値を被検レンズ単体の屈折率分布としても問題ない。例えば、金型や温度等が同一の条件下で大量に生産されるモールドレンズは、本実施例の被検レンズとして適している。
本実施例では、干渉光学系にマイケルソン型の干渉計を用いた。その代わりにマッハツェンダ型の干渉計やフィゾー型の干渉計など、参照光と被検光の光路長差を測定できる干渉計であればよい。また、本実施例では、ヘテロダイン干渉法により干渉光の位相を測定しているが、ミラー111の駆動を利用した位相シフト法を用いてもよい。
本実施例では、2つの被検レンズ60を両方駆動させる構成をとっているが、少なくとも1つの被検レンズを駆動できる構成であればよい。本実施例では、光軸に垂直な軸として図面に垂直な軸200を設定しているが、光軸に垂直であれば任意の方向の軸でよい。また、本実施例では、2つの被検レンズ60を光軸に垂直方向に駆動させているが、2つの被検レンズ60の位置関係が軸200に関して対称性を有する状態であれば、駆動方向は任意の方向(例えば、光軸と45°を成す方向)でよい。
一般に、研削、研磨によって製作されたレンズやモールドによって製作されたレンズは、屈折率の分散分布が発生しにくいため、数式4の近似が成り立つ。一方、色収差を低減するために故意に分散分布を発生させたレンズは、数式4の近似が成り立たない。本実施例を用いて分散分布レンズの屈折率分布を計測する場合は、誤差が混入するので注意する。
光路長分布(=屈折率分布×L(x,y))は、レンズの光学性能を示す物理量として、屈折率分布に代用することができる。したがって、本発明の屈折率分布計測方法(屈折率分布計測装置)は、光路長分布計測方法(光路長分布計測装置)も意味する。
本実施例では、実施例1と異なり、被検レンズ60の正確な形状(厚み)が未知である場合の屈折率分布計測方法を説明する。図4は、本発明における実施例2の屈折率分布計測装置の概略構成を示している。本実施例の屈折率分布計測装置は、マッハツェンダ干渉計をもとに構成されている。計測装置は、光源11、干渉光学系、2つの被検レンズ60(例えば、屈折率〜1.8の凸レンズ)と媒質70(例えば、屈折率〜1.75のオイル)を収納可能な容器50、検出器81、コンピュータ90を有する。
光源11は、複数の波長の光を射出することができる光源(例えば、スーパーコンティニューム光源)である。本実施例では、光源11から射出された光の方向を光軸としている。複数の波長の光は、分光器20を通って準単色光となる。分光器20を通った光は、ピンホール30を通って発散波となり、コリメータレンズ40を通って平行光となる。
干渉光学系は、ビームスプリッタ100、101、ミラー112、113を有する。干渉光学系は、コリメータレンズ40を通った光を、被検光と参照光に分割し、被検光と参照光を干渉させて、その干渉光を検出器81に導光する。
容器50には、2つの被検レンズ60と媒質70とガラスプリズム120が収容される。容器内における被検光の光路長と参照光の光路長は、被検レンズ60やガラスプリズム110が容器内に配置されていない状態において、等しいことが好ましい。したがって、容器50の両側面は厚さが同一かつ平行であり、屈折率が均一であることが好ましい。
容器50に入射した被検光の一部は、媒質70及び被検レンズ60を透過し、別の被検光の一部は、媒質70及びガラスプリズム120を透過する。容器50に入射したその他の被検光は、媒質70のみを透過する。一方、ビームスプリッタ100を透過した参照光は、容器50の側面及び媒質70を透過し、ミラー113で反射される。被検光と参照光は、ビームスプリッタ101で重ね合わさって干渉光を形成する。
媒質70の屈折率は、媒質70内に配置された屈折率及び形状が既知のガラスプリズム120の透過波面から算出される。媒質70の屈折率は、温度計を用いて媒質70の温度を測定し、測定した温度と媒質70の屈折率の温度係数に基づいて算出することもできる。
本実施例では、2つの被検レンズ60のうち、片方の被検レンズのみが不図示の駆動機構によって駆動される。駆動方向は、2つの被検レンズ60の位置関係が光軸に垂直な軸(対称軸)に関して対称性を有する状態を保てばよい。対称軸は、光軸に垂直であれば任意の方向を向いていてもよい。
ミラー113も、不図示の駆動機構により、図4中の矢印方向に駆動される。駆動方向は図4の矢印方向に限らず、ミラー113の駆動によって被検光と参照光の光路長差が変化すれば任意の方向でよい。ミラー113の駆動機構は、例えば、ピエゾステージ等から構成される。ミラー113の駆動量は、不図示の測長器によって測定され、コンピュータ90によって制御される。
ビームスプリッタ101で形成された干渉光は、結像レンズ42を介して検出器81(例えば、CCDやCMOS)で検出される。検出器81で検出された干渉信号は、コンピュータ90に送られる。検出器81は、2つの被検レンズ60及びガラスプリズム120の位置と、結像レンズ42に関して共役な位置に配置されている。
ピンホール31は、結像レンズ42に略平行に入射する光以外を遮光する役割を有する。2つの被検レンズ60を透過した被検光のうち、光軸に平行な方向(被検レンズ60に入射する光の方向と同じ方向)に進む被検光のみがピンホール31を通過し検出器81に至る。本実施例では、被検レンズ60の屈折率(〜1.8)と媒質70の屈折率(〜1.75)が近い値である。このため、2つの被検レンズ60を透過して光軸に平行な方向に進む被検光は、被検レンズ60の内部及び2つの被検レンズ60の間においても、ほぼ光軸に平行に進む。
コンピュータ90は、検出器81の検出結果に基づいて被検レンズ60の屈折率分布を算出する演算手段や、分光器20を透過する波長及び被検レンズ60やミラー113の駆動量を制御する制御手段を有し、CPU等から成る。
本実施例における、被検レンズ60の屈折率分布算出フローは次の通りである。まず、2つの被検レンズ60の位置関係が光軸に垂直な軸に関して対称性を有するように、2つの被検レンズが配置される(S10)。次に、被検光と参照光を干渉させた干渉光の位相が、分光器20を用いた波長掃引とミラー113の駆動を用いた位相シフト法とを用いて、複数の波長で測定される(S20)。本実施例において、測定される干渉光の位相φ(x,y,λ)は、数式6で表される。
ただし、nmedium(λ)は波長λにおける媒質70の屈折率、L(x,y)は被検レンズ60の設計厚み、δ(x,y)は被検レンズ60の設計厚みからの形状誤差(形状成分)である。Δは被検光路上に2つの被検レンズ60が配置されていないときの、被検光と参照光の光路長差である。本実施例で測定される位相φ(x,y,λ)は、2πの整数倍に対応する未知数2πm(λ)(m(λ)は波長に依存する整数)を含む。
本実施例では、L(x,y)とΔは、実施例1同様に既知だが、2つの被検レンズ60の形状誤差δ(x,y)は未知である。媒質70の屈折率nmedium(λ)は、ガラスプリズム120の透過波面とガラスプリズム120の屈折率及び形状とを用いて算出される。
そして、屈折率分布を計測したい領域Dのすべてにおいて、干渉光の位相の測定が完了したかどうか判断される(S30)。領域Dすべてを測定していない場合、2つの被検レンズ60のうちの片方が異なる位置に移動し(S40)、ステップS10へ戻る。一方、領域Dすべての測定が完了した場合、ステップS50へ移る。
最後に、複数の配置における干渉光の位相と2つの被検レンズ60の位置関係(片方の被検レンズの駆動方向と駆動量により決まる関係)とから、2つの被検レンズ60の屈折率分布の平均値が被検レンズ60の屈折率分布として算出される(S50)。本実施例におけるステップS50の詳細は次の通りである。
もし、被検レンズ60のある点(x0,y0)における屈折率n(x0,y0,λ)が既知であれば、数式6は、数式7の近似式を用いて、数式8のように変形される。
数式8における左辺は測定値と既知の値の組合せなので、数式8の左辺をΦ(x,y,λ)と定義すると、数式8は数式9のように表される。
さらに、Φ(x,y,λ)と点(x0,y0)におけるΦ(x0,y0,λ)との差をとることで、未知の整数m(λ)を除去する。Φ(x,y,λ)とΦ(x0,y0,λ)の差分量Ψ(x,y,λ)は、数式10のように表される。
第1波長λ1の干渉光の位相φ(x,y,λ1)から算出されるΨ(x,y,λ1)と、第1波長λ1とは異なる第2波長λ2の干渉光の位相φ(x,y,λ2)から算出されるΨ(x,y,λ2)とを用いて、被検物60の形状誤差δ(x,y)を消去できる。Ψ(x,y,λ1)とΨ(x,y,λ2)とからδ(x,y)を消去し、さらに数式11の近似式を用いると、数式12のように、第1波長における被検レンズ60の屈折率分布n(x,y,λ1)−n(0,0,λ1)が算出される。さらに、n(x,y,λ1)−n(0,0,λ1)を数式11に代入すると、第2波長における被検レンズ60の屈折率分布n(x,y,λ2)−n(0,0,λ2)も算出される。
本実施例では、第1波長λ1の干渉光の位相φ(x,y,λ1)と、第2波長λ2の干渉光の位相φ(x,y,λ2)とを用いて形状誤差δ(x,y)を消去した。2種類の波長の光を用いる代わりに、互いに屈折率の異なる2種類の媒質を用いて形状誤差δ(x,y)を消去できる。
まず、第1の屈折率n1 medium(λ)を有する第1の媒質中における第1の干渉光の位相と、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率n2 medium(λ)を有する第2の媒質中における第2の干渉光の位相とが測定される。第1の屈折率n1 medium(λ)は、例えば1.75程度、第2の屈折率n2 medium(λ)は、例えば1.78程度とすれば良い。そして、上記の本実施例のフローと同様に、第1の干渉光の位相から算出される第1の媒質中におけるΨ1(x,y,λ)と、第2の干渉光の位相から算出される第2の媒質中におけるΨ2(x,y,λ)とが、数式13のように算出される。
Ψ1(x,y,λ)とΨ2(x,y,λ)とから形状誤差δ(x,y)を消去すると、数式14のように、2つの被検レンズ60の屈折率分布の平均値n(x,y,λ)−n(0,0,λ)が被検レンズ60の屈折率分布として算出される。
本実施例では、被検レンズ60のある点(x0,y0)における屈折率n(x0,y0,λ)が既知であるという条件のもとに、未知数m(λ)を消去し、被検レンズ60の屈折率分布を算出した。もし正確な屈折率n(x0,y0,λ)を知らなくても、次のような方法を用いれば、屈折率n(x0,y0,λ)に近い値(例えば、被検レンズ60の設計屈折率N0(λ))を用いて、被検レンズ60の屈折率分布を算出することができる。
まず、第1の媒質中において第1波長の干渉光の位相φ1(x,y,λ1)と第2波長の干渉光の位相φ1(x,y,λ2)との差である位相差φ1(x,y,λ2)−1(x,y,λ1)が、数式15のように算出される。
整数m(λ1)と整数m(λ2)は未知数であるが、整数m(λ1)と整数m(λ2)の差分の整数m(λ2)−m(λ1)は、図5の干渉信号から算出することができる。図5は、分光器20で波長を変化させながら検出器81で検出した干渉信号を示す図である。第1の波長λ1と第2の波長λ2が図5に示された波長のとき、第1の波長λ1と位相差φ1(x,y,λ)の極値をとる波長λ0との間には1周期分の差が、第2の波長λ2と波長λ0との間には2周期分の差がある。つまり、|m(λ1)−m(λ0)|=1、|m(λ2)−m(λ0)|=2である。極値φ(λ0)が極大値か極小値かは、被検物60の設計値と媒質70の屈折率等の測定条件とから算出できる。極値φ1(x,y,λ0)が極大値とすると、m(λ1)−m(λ0)=−1、m(λ2)−m(λ0)=−2となるため、差分の整数m(λ2)−m(λ1)=−1と算出できる。
差分の整数m(λ2)−m(λ1)を特定した後、数式16で表される第1の媒質中のθ1(x,y,λ1,λ2)が算出できる。第2の媒質中のθ2(x,y,λ1,λ2)は、同様にして数式17のように算出される。
数式16、数式17より形状誤差(形状成分)δ(x,y)を消去すると、数式18で表されるΘ(x,y,λ1,λ2)が得られる。さらに、Θ(x,y,λ1,λ2)と、点(x0,y0)におけるΘ(x0,y0,λ1,λ2)との差をとると、数式19が得られる。
数式19に、設計屈折率N0(λ)を用いた数式20の近似式を適用すると、数式21のように、第1波長における被検レンズ60の屈折率分布n(x,y,λ1)−n(0,0,λ1)が算出される。さらに、n(x,y,λ1)−n(0,0,λ1)を数式20に代入すると、第2波長における被検レンズ60の屈折率分布n(x,y,λ2)−n(0,0,λ2)も算出される。
数式15〜21では、被検レンズ60の形状誤差δ(x,y)を消去するため2種類の媒質を用いる計測フローを示したが、形状誤差δ(x,y)が既知であれば、1種類の媒質中における計測フローだけになる。
本実施例では、複数の波長の光を射出する光源と分光器との組み合わせで波長を走査した。複数の波長の光を射出する光源としてスーパーコンティニューム光源が使用されているが、スーパールミネッセントダイオード(SLD)や短パルスレーザやハロゲンランプ等が代用できる。複数の波長の光を射出する光源と分光器の組み合わせの代わりに、波長掃引光源でもよいし、複数の波長を離散的に射出するマルチラインレーザでもよい。複数の波長の光を射出する光源は、単一の光源に限らず、複数の光源の組み合わせでもよい。本実施例は、2種類以上の波長の光を射出する光源であれば足りる。
実施例1、実施例2で説明した計測装置および計測方法を用いた屈折率分布の計測結果をレンズ等の光学素子の製造方法にフィードバックすることも可能である。
図6には、モールドを利用した光学素子の製造工程の例を示している。
光学素子は、光学素子の設計工程、金型の設計工程および該金型を用いた光学素子のモールド工程を経て製造される。モールドされた光学素子は、その形状精度が評価され、精度不足である場合は金型を補正して再度モールドを行う。形状精度が良好であれば、該光学素子の光学性能が評価される。この光学性能の評価工程に、本発明の屈折率分布計測方法を組み込むことで、モールドされる光学素子を精度良く量産することができる。
なお、光学性能が低い場合は、光学面を補正した光学素子を設計し直す。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
10 光源
60 被検レンズ
80 検出器
90 コンピュータ
60 被検レンズ
80 検出器
90 コンピュータ
Claims (15)
- 光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記被検光を2つの被検レンズに入射させ、前記2つの被検レンズを透過した被検光と前記参照光とを干渉させた干渉光の位相を測定することによって前記被検レンズの屈折率分布を算出する屈折率分布計測方法であって、
前記2つの被検レンズの位置関係が光軸に垂直な軸に関して対称性を有する複数の配置において、前記干渉光の位相を測定する測定ステップと、
前記複数の配置における前記干渉光の位相と前記2つの被検レンズの位置関係とから前記2つの被検レンズの屈折率分布の平均値を前記被検レンズの屈折率分布として算出する算出ステップと、
を有することを特徴とする屈折率分布計測方法。 - 前記2つの被検レンズは、同一条件で製作されたレンズであることを特徴とする請求項1に記載の屈折率分布計測方法。
- 前記干渉光は、前記2つの被検レンズを透過して光軸と同じ方向に進む被検光と前記参照光とを干渉させた干渉光であることを特徴とする請求項1または2に記載の屈折率分布計測方法。
- 特定の屈折率分布を有する2つの基準被検レンズについての前記複数の配置における干渉光の位相である基準位相を用いて、前記2つの被検レンズについて測定された前記干渉光の位相を補正することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の屈折率分布計測方法。
- 第1の屈折率を有する第1の媒質中における前記複数の配置において、第1の干渉光の位相を測定し、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質中における前記複数の配置において、第2の干渉光の位相を測定し、
前記複数の配置における前記第1の干渉光の位相及び前記第2の干渉光の位相と前記2つの被検レンズの位置関係とから前記被検レンズの形状成分を消去して、前記2つの被検レンズの屈折率分布の平均値を前記被検レンズの屈折率分布として算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の屈折率分布計測方法。 - 前記複数の配置における第1波長の干渉光の位相と第1波長とは異なる第2波長の干渉光の位相とを測定し、
前記複数の配置における前記第1波長の干渉光の位相と前記第2波長の干渉光の位相と前記2つの被検レンズの位置関係とから前記被検レンズの形状成分を消去して、前記2つの被検レンズの屈折率分布の平均値を前記被検レンズの屈折率分布として算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の屈折率分布計測方法。 - 前記複数の配置における第1波長の干渉光の位相と第1波長とは異なる第2波長の干渉光の位相とを測定し、
前記複数の配置における前記第1波長の干渉光の位相と前記第2波長の干渉光の位相との差分である位相差を算出し、前記位相差と前記2つの被検レンズの位置関係とから、前記2つの被検レンズの屈折率分布の平均値を前記被検レンズの屈折率分布として算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の屈折率分布計測方法。 - 光学素子をモールドするステップと、
請求項1から7のいずれか1項に記載の屈折率分布計測方法を用いて前記光学素子の屈折率分布を計測することによって、モールドされた光学素子の光学性能を評価するステップと、を含むことを特徴とする光学素子の製造方法。 - 光源と、
前記光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記被検光を2つの被検レンズに入射させ、前記2つの被検レンズを透過した被検光と前記参照光を干渉させる干渉光学系と、
前記被検光と前記参照光による干渉光を検出する検出器と、
前記2つの被検レンズの位置関係が光軸に垂直な軸に関して対称性を有する複数の配置について測定した干渉光の位相と、前記2つの被検レンズの位置関係とから前記2つの被検レンズの屈折率分布の平均値を前記被検レンズの屈折率分布として算出する演算手段とを有することを特徴とする屈折率分布計測装置。 - 前記2つの被検レンズは、同一条件で製作されたレンズであることを特徴とする請求項9に記載の屈折率分布計測装置。
- 前記干渉光は、前記2つの被検レンズを透過して光軸と同じ方向に進む被検光と前記参照光とを干渉させた干渉光であることを特徴とする請求項9または10に記載の屈折率分布計測装置。
- 前記演算手段は、特定の屈折率分布を有する2つの基準被検レンズについての前記複数の配置における干渉光の位相である基準位相を用いて、前記2つの被検レンズについて測定された前記干渉光の位相を補正することを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の屈折率分布計測装置。
- 第1の屈折率を有する第1の媒質中における前記複数の配置において、第1の干渉光の位相を測定し、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質中における前記複数の配置において、第2の干渉光の位相を測定し、
前記演算手段は、前記複数の配置における前記第1の干渉光の位相及び前記第2の干渉光の位相と前記2つの被検レンズの位置関係とから前記被検レンズの形状成分を消去して、前記2つの被検レンズの屈折率分布の平均値を前記被検レンズの屈折率分布として算出することを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の屈折率分布計測装置。 - 前記複数の配置における第1波長の干渉光の位相と第1波長とは異なる第2波長の干渉光の位相とを測定し、
前記演算手段は、前記複数の配置における前記第1波長の干渉光の位相と前記第2波長の干渉光の位相と前記2つの被検レンズの位置関係とから前記被検レンズの形状成分を消去して、前記2つの被検レンズの屈折率分布の平均値を前記被検レンズの屈折率分布として算出することを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の屈折率分布計測装置。 - 前記複数の配置における第1波長の干渉光の位相と第1波長とは異なる第2波長の干渉光の位相とを測定し、
前記演算手段は、前記複数の配置における前記第1波長の干渉光の位相と前記第2波長の干渉光の位相との差分である位相差を算出し、前記位相差と前記2つの被検レンズの位置関係とから、前記2つの被検レンズの屈折率分布の平均値を前記被検レンズの屈折率分布として算出することを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の屈折率分布計測装置。
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JP2014248479A JP2016109595A (ja) | 2014-12-08 | 2014-12-08 | 屈折率分布計測方法、屈折率分布計測装置、及び光学素子の製造方法 |
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