JP2016108476A - 炭素繊維複合材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、高価なカーボンナノチューブの使用量を削減してコスト競争力を高めると共に、カーボンナノチューブを用いながら従来よりもゴム硬度の調節が容易な炭素繊維複合材料を提供する。【解決手段】 炭素繊維複合材料50は、含フッ素エラストマー30、カーボンナノチューブ83、ハイストラクチャーカーボンブラック82を含む。その配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して、カーボンナノチューブを0.1質量部〜6質量部と、ハイストラクチャーカーボンブラックを3質量部〜25質量部である。カーボンナノチューブ83は、平均直径が0.7nm〜30nmである。ハイストラクチャーカーボンブラック82は、平均粒径が35nm〜80nmであり、かつ、DBP吸収量(A法)が140cm3/100g〜160cm3/100gである。【選択図】図3

Description

本発明は、コスト競争力に優れ、ゴム硬度の調節が容易な炭素繊維複合材料に関する。
近年、カーボンナノチューブで機械的強度を向上させた複合材料が注目されている。カーボンナノチューブは、強い凝集性を有するため、凝集塊になりやすく、複合材料として用いても繊維状の補強材として用いることは非常に困難であった。
エラストマーにカーボンナノチューブを混練することで、エラストマー分子がカーボンナノチューブの末端のラジカルと結合することにより、カーボンナノチューブの凝集力を弱め、カーボンナノチューブを解繊した状態で複合化した炭素繊維複合材料が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、石油や天然ガスなどの地下資源を探査するためのダウンホール装置に用いることができる高い耐熱性を有する耐熱シール材が提案されている(例えば、特許文献2)。この耐熱シール材は、3元系の含フッ素エラストマーを用いることにより耐熱性及び耐薬品性に優れ、比較的太い気相成長炭素繊維と比較的大きいカーボンブラックとを組み合わせて所定量配合することで高温での高い剛性を維持しながらも優れた柔軟性を有することができる。また、この耐熱シール材は、高温における圧縮永久ひずみが小さいので、高温でもヘタリが小さく優れたシール性を有することができる。
しかしながら、量産化によって比較的細い10nm前後のカーボンナノチューブの低価格化は徐々に進みつつあるものの、同じゴムの補強剤であるカーボンブラックに比べると未だに高価な配合剤である。
特開2005−97525号公報 国際公開番号WO2009/125503号公報
本発明の目的は、高価なカーボンナノチューブの使用量を削減してコスト競争力を高めると共に、カーボンナノチューブを用いながら従来よりもゴム硬度の調節が容易な炭素繊維複合材料を提供することにある。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
本適用例にかかる炭素繊維複合材料の一態様は、
含フッ素エラストマー100質量部に対して、カーボンナノチューブを0.1質量部〜6質量部と、ハイストラクチャーカーボンブラックを3質量部〜25質量部と、を含み、
前記カーボンナノチューブは、平均直径が0.7nm〜30nmであり、
前記ハイストラクチャーカーボンブラックは、平均粒径が35nm〜80nmであり、かつ、DBP吸収量(A法)が140cm/100g〜160cm/100gであることを特徴とする。
本適用例にかかる炭素繊維複合材料によれば、特許文献2で用いられるような太いカーボンナノチューブの代わりに、ハイストラクチャーカーボンブラックを配合して炭素繊維複合材料中の骨格部分を形成することで、コスト競争力を高めることができる。カーボンナノチューブは一般にゴムの配合剤としては高価であるため、本適用例によればカーボンナノチューブの配合量を少量とすることにより、コスト競争力を高めることができる。また、本適用例に係る炭素繊維複合材料によれば、高価なカーボンナノチューブの中でも比較的低コストで入手可能な細いカーボンナノチューブを用いることにより、コスト競争力を高めることができる。さらに、本適用例に係る炭素繊維複合材料によれば、細いカーボンナノチューブとハイストラクチャーカーボンブラックとを組み合わせて用いることで、太いカーボンナノチューブを用いた場合よりも、ゴム硬度を容易に調節できる。
本適用例にかかる炭素繊維複合材料において、
前記ハイストラクチャーカーボンブラック以外の他のカーボンブラックをさらに5質量部〜35質量部含み、
前記他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm〜300nmであることができる。
本適用例にかかる炭素繊維複合材料において、
瀝青炭粉砕物をさらに5質量部〜35質量部含み、
前記瀝青炭粉砕物は、平均粒径が1μm〜100μmであることができる。
本適用例にかかる炭素繊維複合材料において、
JIS K 6251に準拠して測定した引張強さが20MPa以上、破断伸びが90%以上であり、
JIS K 6262に準拠して測定した、25%圧縮して200℃で70時間保持した後の圧縮永久ひずみが20%以下であることができる。
本適用例にかかる炭素繊維複合材料の製造方法の一態様は、
含フッ素エラストマー100質量部に対して、平均直径が0.7nm〜30nmのカーボンナノチューブを0.1質量部〜6質量部と、平均粒径が35nm〜80nmであり、かつ、DBP吸収量(A法)が140cm/100g〜160cm/100gであるハイストラクチャーカーボンブラックを3質量部〜25質量部と、を混練して混合物を得る混合工程と、
前記混合物をロール間隔が0.5mm以下で、0〜50℃のオープンロールに投入して、カーボンナノチューブが含フッ素エラストマー中で解繊する薄通し工程と、
を含むことを特徴とする。
本適用例にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、特許文献2で用いられるような太いカーボンナノチューブの代わりに、ハイストラクチャーカーボンブラックを配合して炭素繊維複合材料中の骨格部分を形成することで、コスト競争力の高い炭素繊維複合材料を製造することができる。カーボンナノチューブは一般にゴムの配合剤としては高価であるため、本適用例によればカーボンナノチューブの配合量を少量とすることにより、コスト競争力を高めることができる。また、本適用例に係る炭素繊維複合材料の製造方法によれば、高価なカーボンナノチューブの中でも比較的低コストで入手可能な細いカーボンナノチューブを用いることにより、コスト競争力の高い炭素繊維複合材料を製造することができる。さらに、本適用例に係る炭素繊維複合材料の製造方法によれば、細いカーボンナノチューブとハイストラクチャーカーボンブラックとを組み合わせて用いることで、太いカーボンナノチューブを用いた場合よりも、炭素繊維複合材料のゴム硬度を容易に調節できる。
本適用例にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記混合工程は、前記ハイストラクチャーカーボンブラック以外の他のカーボンブラック5質量部〜35質量部をさらに含フッ素エラストマーに混合する工程を含み、
前記他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm〜300nmであることができる。
本適用例にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記混合工程は、瀝青炭粉砕物をさらに5質量部〜35質量部をさらに含フッ素エラストマーに混合する工程を含み、
前記他のカーボンブラックは、平均粒径が1μm〜100μmであることができる。
従来の炭素繊維複合材料を模式的に示す図である。 ゴム組成物を模式的に示す図である。 本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料を模式的に示す図である。 炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。 炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。 炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。 実施例8の炭素繊維複合材料サンプルの引張破断面を示す電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(A)炭素繊維複合材料
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の一態様は、含フッ素エラストマー100質量部に対して、カーボンナノチューブを0.1質量部〜6質量部と、ハイストラクチャーカーボンブラックを3質量部〜25質量部と、を含み、前記カーボンナノチューブは、平均直径が0.7nm〜30nmであり、前記ハイストラクチャーカーボンブラックは、平均粒径が35nm〜80nmであり、かつ、DBP吸収量(A法)が140cm/100g〜160cm/100gであることを特徴とする。
まず、従来の炭素繊維複合材料50Aについて説明する。図1は、従来の炭素繊維複合材料50Aを模式的に示す図である。従来の炭素繊維複合材料50Aは、含フッ素エラストマー30をマトリックスとして、平均直径が30nmを超える比較的太いカーボンナノチューブ81を解繊した状態で含む。カーボンナノチューブ81は、その周囲に界面相30aが形成され、界面相30aが含フッ素エラストマー30を囲む小さなセル(cel)構造300a(図1では一点鎖線で示す)が多数形成されている。界面相30aは、いわゆるバウンドラバーのようなものであり、エラストマーとカーボンの両者の相互作用により分子運動の影響を受けている高分子鎖のことである。
このように、従来の炭素繊維複合材料50Aは、カーボンナノチューブ81と界面相30aが複合材料の骨格であるタイ(tai)構造を形成する。従来の炭素繊維複合材料50Aは、背景技術の欄で説明したような格別の効果を有するが、カーボンナノチューブは高価であり、ゴム硬度が高くなりやすい。
炭素繊維複合材料50Aのようにゴム硬度が高くなると、ゴム硬度を低く再度調整することは難しく、柔軟性が要求されることが多いゴム製品への適用可能な範囲が狭まることになる。
図2は、図1に示した従来の炭素繊維複合材料50Aのカーボンナノチューブ81に代えてハイストラクチャーカーボンブラック82を用いた場合のゴム組成物50Bを模式的に示す図である。ハイストラクチャーカーボンブラック82も界面相30bによって含フッ素エラストマー30を囲むセル構造300bを形成すると考えられる。ゴム組成物50Bは、従来の炭素繊維複合材料50Aより価格競争力及び柔軟性に優れるが、引張強さなどの諸物性、特に引裂き疲労特性及び耐摩耗性において従来の炭素繊維複合材料50Aよりも劣る。
図3は、本実施の形態に係る炭素繊維複合材料50を説明するための模式図である。炭素繊維複合材料50は、図2で示したセル構造300bの中に平均直径が0.7nm〜30nmの比較的細いカーボンナノチューブ83が延在している。また、カーボンナノチューブ83は、ハイストラクチャーカーボンブラック82に部分的に寄り添うように存在し、ハイストラクチャーカーボンブラック82と界面相30bによって形成された骨格であるタイ(tai)構造を補強する。そのため、ハイストラクチャーカーボンブラック82だけでは外部からの応力によって動きやすかったタイ構造がカーボンナノチューブ82によってさらに補強されて、特に引裂き疲労特性及び耐摩耗性が向上する。
また、平均直径が0.7nm〜30nmのカーボンナノチューブ83は、太いカーボンナノチューブ81に比べて価格競争力に優れ、しかも、カーボンナノチューブ83を0.1質量部〜6質量部と極めて少ない配合量とすることで、より価格競争力に優れることができる。
さらに、このようにカーボンナノチューブ83を0.1質量部〜6質量部と少量にすることで、ゴム硬度が高くなりすぎることが無く、ゴム硬度をハイストラクチャーカーボンブラック82や他の配合剤によって比較的容易に調整することができる。ゴム硬度は、ゴム組成物からなる製品、例えばOリングのようなシール材を作業者が選択する上で重要な判断要素である。炭素繊維複合材料50のゴム硬度のバリエーションを増やすことは作業者の選択の幅を増やすことになり、望ましい。
(A−1)含フッ素エラストマー
含フッ素エラストマーは、3元系の含フッ素エラストマーであって、分子中にフッ素原子を含むフッ化ビニリデン系の合成ゴムであり、3元系フッ素ゴムとも呼ばれ、例えば、フッ化ビニリデン(VDF)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−テトラフルオロエチレン(TFE)3元共重合体(VDF−HFP−TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)−パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE)−テトラフルオロエチレン(TFE)3元共重合体(VDF−HFP−TFE)などが挙げられる。
3元系の含フッ素エラストマーとしては、例えば、デュポン社製の商品名バイトン、ダイキン工業社製の商品名ダイエル、ソルベイスペシャリティポリマーズ社製の商品名テクノフロンなどをあげることができる。以下の説明では、3元系の含フッ素エラストマーをFKMと省略する場合がある。
3元系の含フッ素エラストマーは、重量平均分子量が好ましくは50,000〜300,000であることができる。3元系の含フッ素エラストマーの分子量がこの範囲であると、3元系の含フッ素エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、3元系の含フッ素エラストマーはカーボンナノチューブを分散させるために良好な弾性を有することができる。3元系の含フッ素エラストマーは、粘性を有しているので凝集したカーボンナノチューブの相互に侵入しやすく、さらに弾性を有することによってカーボンナノチューブ同士を分離することができる。3元系の含フッ素エラストマーの重量平均分
子量が50,000より小さいと、3元系の含フッ素エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけても弾性が小さいためカーボンナノチューブを分散させる効果が小さくなる傾向がある。また、3元系の含フッ素エラストマーの重量平均分子量が300,000より大きいと、3元系の含フッ素エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる傾向がある。
含フッ素エラストマーは、公知の加硫剤を用いることができ、例えば、ポリアミン加硫、ポリオール加硫、または過酸化物加硫することができ、パーオキサイド加硫が好ましい。含フッ素エラストマーを加硫剤で架橋することによって、耐熱性や耐薬品性に優れた炭素繊維複合材料を製造することができる。
3元系の含フッ素エラストマーは、フッ素含有量が60質量%以上であり、さらに、60質量%〜72質量%であることができ、特に、65質量%〜72質量%であることができる。3元系の含フッ素エラストマーは、フッ素含有量が60質量%以上であると耐熱性に優れることができる。また、3元系の含フッ素エラストマーは、耐薬品性を考慮すると、フッ素含有量が65質量%以上であることが望ましい。
3元系の含フッ素エラストマーは、ムーニー粘度(ML1+10121℃)の中心値が15〜75であることができる。また、ムーニー粘度(ML1+10121℃)の中心値が15〜75であれば適度な粘度を有するのでカーボンナノチューブを混合する際の加工性に優れることができる。
含フッ素エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃、観測核が1Hで測定した、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃
)が好ましくは30ないし100μ秒、より好ましくは45ないし60μ秒である。上記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、含フッ素エラストマーは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができ、すなわちカーボンナノチューブを分散させるために適度な弾性を有することになる。また、含フッ素エラストマーは粘性を有しているので、含フッ素エラストマーとカーボンナノチューブとを混合したときに、含フッ素エラストマーは高い分子運動によりカーボンナノチューブの相互の隙間に容易に侵入することができる。スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が30μ秒より短いと、含フッ素エラストマーが充分な分子運動性を有することができない。また、スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が100μ秒より長いと、含フッ素エラストマーが液体のように流れやすく、弾性が小さい(粘性は有している)ため、カーボンナノチューブを分散させることが困難となる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法により含フッ素エラストマーのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、含フッ素エラストマーは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、含フッ素エラストマーは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかる炭素繊維複合材料は中程度のスピン−スピン緩和時間(
T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
含フッ素エラストマーは、カーボンナノチューブ、特にその末端のラジカルに対して親和性を有するハロゲン基を有する。カーボンナノチューブは、通常、側面は炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっている。また、含フッ素エラストマーの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノチューブのラジカルと親和性(反応性または極性)が高いハロゲン基を有することにより、含フッ素エラストマーとカーボンナノチューブとを結合することができる。このことにより、カーボンナノチューブの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。
(A−2)ハイストラクチャーカーボンブラック
ハイストラクチャーカーボンブラック(以下、「HSカーボン」という)の平均粒径は、35nm〜80nmであることができる。HSカーボンの平均粒径は、HSカーボンの凝集体を構成する小さな球状の成分を単一粒子(基本粒子)とみなしてその粒子直径を2000個以上を走査型電子顕微鏡の撮像によって測定して算術平均値として求めることができる。
HSカーボンのDBP吸収量(A法)は、さらに140cm/100g〜160cm/100gであることができる。DBP吸収量は、HSカーボン100gが吸収するDBP(ジブチルフタレート)量(cm/100g)であり、JIS K6217−4(ASTM D 2414)に従って測定される。DBP吸収量によって、HSカーボン粒子同士が融着したアグリゲートの発達度合いであるストラクチャーを間接的に定量することができる。ここでいうHSカーボンのDBP吸収量は、含フッ素エラストマーに配合する前の状態における測定値である。
HSカーボンは、単位質量当たりの価格がカーボンナノチューブよりも低い。しかし、HSカーボンは、カーボンナノチューブのように繊維ではなく、凝集体の弱い部分から破壊されやすい。したがって、HSカーボンを配合したゴム組成物が太い(30nmを超える)カーボンナノチューブをそれと同じ量配合した炭素繊維複合材料と同等の引張強さ、剛性、引裂き疲労特性及び摩耗特性が得られるわけではない。
そのため、HSカーボンは、含フッ素エラストマー100質量部に対して、3質量部〜25質量部含むことができる。HSカーボンを3質量部以上配合することで、架橋した炭素繊維複合材料が優れた圧縮永久ひずみ特性を有しながら引張強さ及び剛性を向上することができる。また、HSカーボンを25質量部以下配合することで、上記のように少量のカーボンナノチューブを配合しても炭素繊維複合材料のゴム硬度を容易に調整可能である。
(A−3)カーボンナノチューブ
本発明の一実施の形態に用いるカーボンナノチューブは、平均直径(繊維径)が0.7nm〜30nmであることができ、さらに2nm〜20nmであることができる。このようなカーボンナノチューブは、その平均直径が比較的細いため、比表面積が大きく、マトリックスであるエラストマーとの表面反応性が向上し、エラストマー中におけるカーボンナノチューブの分散不良を改善しやすい傾向がある。カーボンナノチューブは、直径が0.7nm以上であれば市場で入手可能であり、逆に30nm以下では引裂き疲労性及び耐摩耗性に優れると共に柔軟性が比較的高くゴム硬度が高くなりにくいという効果を有する
。カーボンナノチューブによって形成される微小セル構造は、カーボンナノチューブが3次元に張り巡らされた網目構造によってマトリックス材料を囲むように形成されることができる。また、カーボンナノチューブは、その表面のエラストマーとの反応性を向上させるために、公知の活性化処理を施すことができる。カーボンナノチューブの平均直径は、電子顕微鏡による観察によって計測することができる。なお、本発明の詳細な説明においてカーボンナノチューブの平均直径及び平均長さは、電子顕微鏡による例えば5,000倍の撮像(カーボンナノチューブのサイズによって適宜倍率は変更できる)から200箇所以上の直径及び長さを計測し、その算術平均値として計算して得ることができる。
カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面(グラフェンシート)を巻いて筒状にした形状を有するいわゆる多層カーボンナノチューブ(MWCNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)又は単層カーボンナノチューブ(SWCNT:シングルウォールカーボンナノチューブ)であり、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブ、気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
カーボンナノチューブは、気相成長法によって得ることができる。気相成長法は、触媒気相合成法(Catalytic Chemical Vapor Deposition:CCVD)とも呼ばれ、炭化水素等のガスを金属系触媒の存在下で気相熱分解させて未処理のカーボンナノチューブを製造する方法である。より詳細に気相成長法を説明すると、例えば、ベンゼン、トルエン等の有機化合物を原料とし、フェロセン、ニッケルセン等の有機遷移金属化合物を金属系触媒として用い、これらをキャリアーガスとともに高温例えば400℃〜1000℃の反応温度に設定された反応炉に導入し、浮遊状態あるいは反応炉壁にカーボンナノチューブを生成させる浮遊流動反応法(Floating Reaction Method)や、あらかじめアルミナ、酸化マグネシウム等のセラミックス上に担持された金属含有粒子を炭素含有化合物と高温で接触させてカーボンナノチューブを基板上に生成させる触媒担持反応法(Substrate Reaction Method)等を用いることができる。例えば、平均直径が9nm〜20nmのカーボンナノチューブは触媒担持反応法によって得ることができ、これより太いカーボンナノチューブは浮遊流動反応法によって得ることができる。カーボンナノチューブの直径は、例えば金属含有粒子の大きさや反応時間などで調節することができる。
カーボンナノチューブの配合量は、HSカーボンや他のカーボンブラックの配合量と共に調整することができ、3元系の含フッ素エラストマー100質量部に対し、0.1質量部〜6質量部を配合する。特に、カーボンナノチューブは、3元系の含フッ素エラストマー100質量部に対し、0.5質量部〜5.5質量部を配合することができる。カーボンナノチューブは、6質量部以下であれば、高温(200℃及び230℃)における優れた圧縮永久ひずみ(CS)を有することができる。平均直径が0.7nm〜30nmという細いカーボンナノチューブは、大量に配合すると圧縮永久ひずみ(CS)特性を損ないやすいからである。また、カーボンナノチューブは、0.1質量部以上を3元系の含フッ素エラストマー100質量部に配合し解繊した状態で複合化することによって、HSカーボンによって構成された骨格部分を補強することができる。ここで、「質量部」は、特に指定しない限り「phr」を示し、「phr」は、parts per hundred of resin or rubberの省略形であって、ゴム等に対する添加剤等の外掛百分率を表すものである。
(A−4)その他の配合剤
含フッ素エラストマーに対して、ゴムの一般的な配合剤として用いられているカーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、タルク、クレー、グラファイト、けい酸カルシ
ウム等の充填剤、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス等の加工助剤、老化防止剤、可塑剤等を必要に応じて適宜添加して用いることができる。このような配合剤は、炭素繊維複合材料のゴム硬度の調整に用いてもよい。
(A−4−1)カーボンブラック
炭素繊維複合材料に用いるHSカーボン以外の他のカーボンブラックは、種々の原料を用いた種々のグレードの他のカーボンブラックを用いることができる。他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm〜300nmであることができる。他のカーボンブラックの平均粒径は、走査型電子顕微鏡の撮像によって観察して基本構成粒子の粒子直径を2000個以上測定して算術平均して求めることができる。
このような他のカーボンブラックとしては、例えば、FTグレード,MTグレードなどの補強用カーボンブラックなどを用いることができる。比較的大きな粒径を有するカーボンブラックを用いることにより、炭素繊維複合材料の柔軟性を維持しつつ、カーボンブラックの間にできた隙間にある含フッ素エラストマーを分散したカーボンナノチューブによって囲むように構成することで、カーボンナノチューブによって囲まれた微小セルを形成して補強することができる。MTグレードのカーボンブラックを用いることができる。
(A−4−2)瀝青炭粉砕物
炭素繊維複合材料に用いる瀝青炭粉砕物(bitumious coal)は、石炭の一種で高品位炭と呼ばれる瀝青炭(JIS M1002の石炭分類でB1、B2、C)を含む石炭一般を、平均粒径1μm〜100μmに粉砕したものである。さらに、瀝青炭粉砕物の平均粒径は1μm〜10μmであることができ、特に、瀝青炭粉砕物の平均粒径は3μm〜8μmであることができる。瀝青炭粉砕物は、カーボンブラックの1つの種類と考えられることもあるが、ここではカーボンブラックには含まれないものとして説明する。
瀝青炭粉砕物の平均粒径は、市販されている場合はメーカーで平均粒径を測定し公表しているが、瀝青炭粉砕物を走査型電子顕微鏡の撮像によって観察して単一粒子(基本粒子)とみなしての粒子直径を2000個以上測定して算術平均値として求めることができる。
また、瀝青炭粉砕物は、比重が1.6以下であることができ、さらに1.35以下であることができる。
(B)炭素繊維複合材料の製造方法
炭素繊維複合材料の製造方法について図4〜図6を用いて詳細に説明する。
図4〜図6は、本発明の一実施形態にかかるオープンロール法による炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
図4〜図6に示すように、2本ロールのオープンロール2における第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、例えば0.5mm〜1.5mmの間隔で配置され、図4〜図6において矢印で示す方向に回転速度V1,V2で正転あるいは逆転で回転する。
まず、図4に示すように、第1のロール10に巻き付けられた含フッ素エラストマー30の素練りを行ない、含フッ素エラストマー分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成する。素練りによって生成された含フッ素エラストマーのフリーラジカルがカーボンナノチューブと結びつきやすい状態となる。
(B−1)混合工程
次に、図5に示すように、第1のロール10に巻き付けられた含フッ素エラストマー30のバンク34に、HSカーボン、カーボンナノチューブ、瀝青炭粉砕物及び他のカーボンブラックなどの充填剤80を投入し、混練し、混合物を得る。この混練における含フッ素エラストマー30の温度は、例えば0℃〜50℃であることができ、さらに10℃〜20℃であることができる。含フッ素エラストマー30と充填剤80とを混合する工程は、オープンロール法に限定されず、例えば密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。
(B−2)薄通し工程
さらに、図6に示すように、第1のロール10と第2のロール20とのロール間隔dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0mm〜0.5mmの間隔に設定し、混合物36をオープンロール2に投入して薄通しを行なう。
薄通しの回数は、例えば1回〜10回程度行なうことができる。
第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05〜3.00であることができ、さらに1.05〜1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。
このように狭いロール間から押し出された炭素繊維複合材料50は、含フッ素エラストマーの弾性による復元力で図6のように大きく変形し、その際に含フッ素エラストマーと共にカーボンナノチューブが大きく移動する。
薄通しして得られた炭素繊維複合材料50は、ロールで圧延されて所定厚さのシート状に分出しされる。
この薄通しの工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を例えば0〜50℃、より好ましくは5〜30℃の比較的低い温度に設定して行われ、含フッ素エラストマーの実測温度も0〜50℃に調整されることができる。
このようにして得られた剪断力により、含フッ素エラストマーに高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノチューブが含フッ素エラストマー分子に1本ずつ引き抜かれるように相互に分離して解繊し、含フッ素エラストマー中に分散される。特に、含フッ素エラストマーは、弾性と、粘性と、カーボンナノチューブとの化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノチューブを容易に分散することができる。そして、カーボンナノチューブの分散性および分散安定性(カーボンナノチューブが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料50を得ることができる。
より具体的には、オープンロールで含フッ素エラストマーとカーボンナノチューブとを混合すると、粘性を有する含フッ素エラストマーがカーボンナノチューブの相互に侵入し、かつ、含フッ素エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノチューブの活性の高い部分と結合する。カーボンナノチューブの表面の活性が適度に高いと、特に含フッ素エラストマー分子と結合し易くなることができる。次に、含フッ素エラストマーに強い剪断力が作用すると、含フッ素エラストマー分子の移動に伴ってカーボンナノチューブも移動し、さらに剪断後の弾性による含フッ素エラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノチューブが分離されて、含フッ素エラストマー中に分散されることになる。
本実施の形態によれば、炭素繊維複合材料が狭いロール間から押し出された際に、含フッ素エラストマーの弾性による復元力で炭素繊維複合材料はロール間隔より厚く変形する。その変形は、強い剪断力の作用した炭素繊維複合材料をさらに複雑に流動させ、カーボンナノチューブを含フッ素エラストマー中に分散させると推測できる。そして、一旦分散したカーボンナノチューブは、含フッ素エラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。
薄通し工程は、含フッ素エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって解繊させることができれば、前記オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集したカーボンナノチューブを分離して解繊できる剪断力を含フッ素エラストマーに与えることができればよい。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。含フッ素エラストマーとカーボンナノチューブとの混合前、混合中、あるいは薄通し後の分出しされた炭素繊維複合材料に、架橋剤を混合することができ、架橋して架橋体の炭素繊維複合材料とすることができる。含フッ素エラストマーの架橋は、例えば、耐熱性に優れたパーオキサイド加硫を用いることができる。
シール部材は、炭素繊維複合材料を成形して得る。シール部材の成形は、一般に採用されるゴムの成形加工例えば、射出成形法、トランスファー成形法、プレス成形法、押出成形法、カレンダー加工法などによって所望の形状例えば無端状に成形することで得ることができる。シール部材は、架橋された炭素繊維複合材料からなることができる。
前記のように、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて、本発明の範囲に含まれるものとする。
(1)サンプルの作製
実施例1〜3のサンプルは、以下の工程によって作製した。
混練工程:ロール径が6インチのオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、表1に示す100質量部(phr)の含フッ素エラストマー(表1では「FKM」と記載した)を投入して、ロールに巻き付かせた(図4参照)。
次に、表1に示す質量部(phr)のHSカーボン等の配合剤(表1では「HS−CB」、「MT−CB」、「オースチンブラック」、「MWCNT−1」、「SWCNT」、「MWCNT−2」と記載した)を含フッ素エラストマーに投入した(図5参照)。このとき、ロール間隙dを1.5mmとした。
薄通し工程:カーボンナノチューブが混合された含フッ素エラストマーの混合物をロールから取り出し、ロール間隙dを1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをし、第1混合物を得た(図6参照)。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し5回行った。
さらに、ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、未架橋の炭素繊維複合材料を分出しした。
成形工程:未架橋の炭素繊維複合材料を真空プレス機に投入し、160℃、10分間プレ
ス成形(1次加硫)した。
さらに、炭素繊維複合材料をオーブンに移して、230℃、4時間2次加硫して、実施例1〜3のパーオキサイド架橋したシート状の炭素繊維複合材料サンプルを得た。
実施例1,2及び比較例1はゴム硬度(Hs)が80度程度に、実施例3,4及び比較例2はゴム硬度(Hs)が85度程度に、実施例5,6及び比較例3,4,5はゴム硬度(Hs)が90度程度になるように、カーボンナノチューブ及びカーボンブラックの配合量を調整した。
なお、表において、含フッ素エラストマー及び各種配合剤の詳細は以下の通りであった。
FKM:3元系含FKM。ムーニー粘度ML(1+4)121℃(中心値)65。
HS−CB:ハイストラクチャーSRFグレードのカーボンブラック、平均直径70nm、DBP吸収量(A法)152cm/100g
MT−CB:MTグレードのカーボンブラック、平均直径200nm
オースチンブラック:平均直径5μmの瀝青炭粉砕物
MWCNT−1:マルチウォールカーボンナノチューブ、平均直径15.3nm
SWCNT:シングルウォールカーボンナノチューブ、平均直径5nm
MWCNT−2:マルチウォールカーボンナノチューブ、平均直径68nm
実施例1〜3及び比較例1〜5の試験サンプルについて、以下に説明する各種試験を行い、試験結果を表1〜表3及び図7に示した。
(2)基本特性試験
実施例及び比較例のサンプルについて、ゴム硬度(Hs(JIS−A))をJIS K
6253に基づいて測定した。
また、実施例及び比較例のサンプルのJIS6号形ダンベル形状に打ち抜いた試験片について、島津製作所社製オートグラフAG−Xの引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行い、引張強さ(TS(MPa))、破断伸び(Eb(%))及び50%応力(σ50(MPa))を測定した。測定結果は、表の各欄に示した。
(3)圧縮永久ひずみ試験
実施例及び比較例のサンプルのJIS大型試験片(直径29.0±0.5mm、厚さ12.5±0.5mmの試験片)を、JIS K6262に準拠して、200℃及び230℃、70時間、25%圧縮の条件で、圧縮永久ひずみ(CS(%))を測定した。測定結果は、表の「CS 200℃ 70h」と「CS 230℃ 70h」の欄に示した。
(4)引裂き疲労試験
実施例及び比較例のサンプルを、10mm×幅4mm×厚さ1mmの短冊状の試験片に打ち抜き、その試験片の長辺の中心から幅方向へ深さ1mmの切込みを入れ、SII社製TMA/SS6100試験機を用いて、大気雰囲気中、200℃、周波数1Hzの条件で最大引張応力を2N/mmの条件と3N/mmの条件とで、繰り返し引っ張り荷重(0N/mm〜2N/mm、0N/mm〜3N/mm)をかけて引裂き疲労試験を行い、試験片が破断するまでの引張回数(疲労寿命(回))を測定した。測定結果は、表の「Tr 2N/mm」と「Tr 3N/mm」の欄に示した。なお、引張回数は、最大10万回とし、10万回で破断しなかった場合は表に「100,000」と記載した。
(5)DIN摩耗試験
実施例及び比較例のサンプルを、直径16mm、高さ10mmの円柱状サンプルに加圧成型し、安田精機製作所社製の恒温槽付きDIN摩耗試験機No.151−OVを用いて、JIS K−6264に従って、空気中、100℃、B法(回転あり)、摩耗距離40m、荷重2Nで試験を行い、摩耗試験前後の試験片の体積(mm)を計測し、比摩耗量(mm/Nm)を算出した。測定結果は、表の「比摩耗量」の欄に示した。
表1によれば、実施例1,2及び比較例1のサンプルは、ゴム硬度(Hs)が77度〜79度であって、80度に近似するように調整できた。実施例1,2のサンプルは、比較例1のサンプルに比べて、同程度の圧縮永久ひずみ(CS)特性を維持しながら、引張強さ(TS)、破断伸び(Eb)、50%応力(σ50)、引裂き疲労寿命(Tr)、比摩耗量に優れていた。
表2によれば、実施例3〜5及び比較例2のサンプルは、ゴム硬度(Hs)が84度〜85度であって、85度に近似するように調整できた。実施例3〜5のサンプルは、比較例2のサンプルに比べて、同程度の圧縮永久ひずみ(CS)特性を維持しながら、引張強さ(TS)、破断伸び(Eb)、50%応力(σ50)、引裂き疲労寿命(Tr)、比摩耗量に優れていた。
表3によれば、実施例6〜8及び比較例3〜5のサンプルは、ゴム硬度(Hs)が89度〜92度であって、90度に近似するように調整できた。実施例6〜8のサンプルは、比較例3〜5のサンプルに比べて、同程度の圧縮永久ひずみ(CS)特性を維持しながら、引張強さ(TS)、破断伸び(Eb)、50%応力(σ50)、引裂き疲労寿命(Tr)、比摩耗量に優れていた。特に、比較例4のサンプルは、引張強さ(TS)、破断伸び(Eb)、50%応力(σ50)、引裂き疲労寿命(Tr)、比摩耗量については実施例
6〜8のサンプルと同程度であるものの、静的シール部材などに要求される圧縮永久ひずみ(CS)に劣っていた。
(6)電子顕微鏡観察
実施例8のサンプルの引張破断面を走査型電子顕微鏡で観察し、その撮像を図7に示した。図7に示すように、HSカーボン82と、解繊されて凝集塊の無いカーボンナノチューブ83が観察できた。他の実施例のサンプルにおいてもカーボンナノチューブは解繊され、凝集塊が見当たらなかった。
2 オープンロール、10 第1のロール、20 第2のロール、30 含フッ素エラストマー、30a 界面相、30b 界面相、34 バンク、36 混合物、50 炭素繊維複合材料、50A 従来の炭素繊維複合材料、50B ゴム組成物、80 充填剤、81 カーボンナノチューブ、82 ハイストラクチャーカーボンブラック、83 カーボンナノチューブ、300a,300b セル構造、V1,V2 回転速度

Claims (7)

  1. 含フッ素エラストマー100質量部に対して、カーボンナノチューブを0.1質量部〜6質量部と、ハイストラクチャーカーボンブラックを3質量部〜25質量部と、を含み、
    前記カーボンナノチューブは、平均直径が0.7nm〜30nmであり、
    前記ハイストラクチャーカーボンブラックは、平均粒径が35nm〜80nmであり、かつ、DBP吸収量(A法)が140cm/100g〜160cm/100gである、炭素繊維複合材料。
  2. 請求項1において、
    前記ハイストラクチャーカーボンブラック以外の他のカーボンブラックをさらに5質量部〜35質量部含み、
    前記他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm〜300nmである、炭素繊維複合材料。
  3. 請求項1または2において、
    瀝青炭粉砕物をさらに5質量部〜35質量部含み、
    前記瀝青炭粉砕物は、平均粒径が1μm〜100μmである、炭素繊維複合材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、
    JIS K 6251に準拠して測定した引張強さが20MPa以上、破断伸びが90%以上であり、
    JIS K 6262に準拠して測定した、25%圧縮して200℃で70時間保持した後の圧縮永久ひずみが20%以下である、炭素繊維複合材料。
  5. 含フッ素エラストマー100質量部に対して、平均直径が0.7nm〜30nmのカーボンナノチューブを0.1質量部〜6質量部と、平均粒径が35nm〜80nmであり、かつ、DBP吸収量(A法)が140cm/100g〜160cm/100gであるハイストラクチャーカーボンブラックを3質量部〜25質量部と、を混練して混合物を得る混合工程と、
    前記混合物をロール間隔が0.5mm以下で、0〜50℃のオープンロールに投入して、カーボンナノチューブが含フッ素エラストマー中で解繊する薄通し工程と、
    を含む、炭素繊維複合材料の製造方法。
  6. 請求項5において、
    前記混合工程は、前記ハイストラクチャーカーボンブラック以外の他のカーボンブラック5質量部〜35質量部をさらに含フッ素エラストマーに混合する工程を含み、
    前記他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm〜300nmである、炭素繊維複合材料の製造方法。
  7. 請求項5または6において、
    前記混合工程は、瀝青炭粉砕物をさらに5質量部〜35質量部をさらに含フッ素エラストマーに混合する工程を含み、
    前記他のカーボンブラックは、平均粒径が1μm〜100μmである、炭素繊維複合材料の製造方法。
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