JP2023019471A - 炭素繊維複合材料及びその製造方法 - Google Patents

炭素繊維複合材料及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023019471A
JP2023019471A JP2021124211A JP2021124211A JP2023019471A JP 2023019471 A JP2023019471 A JP 2023019471A JP 2021124211 A JP2021124211 A JP 2021124211A JP 2021124211 A JP2021124211 A JP 2021124211A JP 2023019471 A JP2023019471 A JP 2023019471A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon
composite material
fiber composite
carbon fiber
carbon black
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021124211A
Other languages
English (en)
Inventor
建作 佐藤
Kensaku Sato
宏之 植木
Hiroyuki Ueki
圭一 川本
Keiichi Kawamoto
博光 伊藤
Hiromitsu Ito
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Astemo Ltd
Original Assignee
Hitachi Astemo Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Astemo Ltd filed Critical Hitachi Astemo Ltd
Priority to JP2021124211A priority Critical patent/JP2023019471A/ja
Publication of JP2023019471A publication Critical patent/JP2023019471A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、硬度75度以下であって、引裂き強さ及び機械的強度に優れる含フッ素エラストマーを用いた炭素繊維複合材料を提供する。【解決手段】本発明に係る炭素繊維複合材料は、架橋された含フッ素エラストマー中に炭素系補強材を含む炭素繊維複合材料50である。炭素繊維複合材料50の断面において、隣接する2以上の炭素系補強材が100nm以下の距離で近接または接触した集合構造84を複数有する。炭素系補強材は、カーボンナノチューブ81とハイストラクチャーカーボンブラック82とを含む。集合構造84における隣接する炭素系補強材間の平均距離は、10nm以上100nm未満である。集合構造84に外接する外接円C1は、直径が10nm~4μmであり、かつ、平均直径が50nm~1.2μmである。断面における集合構造84の占める面積が5%~40%である。【選択図】図1

Description

本発明は、低硬度の炭素繊維複合材料及びその製造方法に関する。
近年、カーボンナノチューブで機械的強度を向上させた複合材料が注目されている。しかしながら、カーボンナノチューブは、強い凝集性を有するため、凝集塊になりやすく、繊維状の補強材として複合材料に用いることは非常に困難であった。
これに対し、エラストマーにカーボンナノチューブを混練する過程で、エラストマー分子がカーボンナノチューブの末端のラジカルと結合することにより、カーボンナノチューブの凝集力を弱め、カーボンナノチューブを解繊した状態で複合化した炭素繊維複合材料が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、エラストマーとして含フッ素エラストマーを用いた炭素繊維複合材料も報告されており、石油や天然ガスなどの地下資源を探査するためのダウンホール装置に用いることができる高い耐熱性を有する耐熱シール材が提案されている(例えば、特許文献2)。
また、上述の炭素繊維複合材料の他に、含フッ素エラストマーを用いた炭素繊維複合材料として、高価なカーボンナノチューブの使用量を削減してコスト競争力を高めると共に、カーボンナノチューブを用いながら従来よりもゴム硬度の調節が容易な炭素繊維複合材料も提案されている(特許文献3)。
特開2005-97525号公報 国際公開番号WO2009/125503号公報 特許第6415284号公報
一般的にエラストマーを用いたOリングやダイヤフラムなどのゴム製品は、硬度が75度以下のものが多いが、含フッ素エラストマーにカーボンナノチューブを配合して機械的強度等を向上させた炭素繊維複合材料では硬度75以下のものは市場に流通していない。一方で、低硬度のゴム製品は、脱型時に破損しやすい傾向があり、成型不良を減らすことによる歩留まりの向上が望まれる。
そこで、本発明では、硬度75度以下であって、機械的強度に優れる含フッ素エラストマーを用いた炭素繊維複合材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[1]本発明に係る炭素繊維複合材料の一態様は、
架橋された含フッ素エラストマー中に炭素系補強材を含む炭素繊維複合材料であって、
前記炭素繊維複合材料の断面において、隣接する2以上の炭素系補強材が100nm以下の距離で近接または接触した集合構造を複数有し、
前記炭素系補強材は、平均直径が0.7nm~30nmのカーボンナノチューブと平均粒径が35nm~300nmのカーボンブラックとを含み、
前記集合構造における隣接する前記炭素系補強材間の平均距離は、10nm以上100nm未満であり、
前記集合構造に外接する外接円は、直径が10nm~4μmであり、かつ、平均直径が50nm~1.2μmであり、
前記断面における前記集合構造の占める面積が5%~40%であることを特徴とする。
[2]上記炭素繊維複合材料の一態様において、
前記カーボンブラックは、平均粒径が35nm~80nmのハイストラクチャーカーボンブラックを含むことができる。
[3]上記炭素繊維複合材料の一態様において、
前記カーボンブラックは、ハイストラクチャーカーボンブラック以外の他のカーボンブラックをさらに含み、
前記他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm~300nmであることができる。
[4]上記炭素繊維複合材料の一態様において、
前記含フッ素エラストマー100質量部に対して、前記カーボンナノチューブを0.1質量部~3質量部と、前記ハイストラクチャーカーボンブラックを1質量部~10質量部と、前記他のカーボンブラックを0質量部~4質量部と、を含むことができる。
[5]本発明に係る炭素繊維複合材料の一態様は、
含フッ素エラストマー100質量部に対して、カーボンナノチューブを0.1質量部~3質量部と、ハイストラクチャーカーボンブラックを1質量部~10質量部と、前記ハイストラクチャーカーボンブラック以外の他のカーボンブラックを0質量部~4質量部と、を含み、
前記カーボンナノチューブは、平均直径が0.7nm~30nmであり、
前記ハイストラクチャーカーボンブラックは、平均粒径が35nm~80nmであり、
前記他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm~300nmであり、
前記カーボンナノチューブに対する前記ハイストラクチャーカーボンブラックと前記他のカーボンブラックとの総量の質量比が、1:140~3:1であることを特徴とする。
[6]上記炭素繊維複合材料の一態様において、
前記カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブ及び単層カーボンナノチューブを含むことができる。
[7]上記炭素繊維複合材料の一態様において、
前記炭素繊維複合材料は、室温におけるJIS K6252に準拠した引裂き試験における引裂き強さが39.0N/mm以上であることができる。
[8]上記炭素繊維複合材料の一態様において、
前記炭素繊維複合材料は、200℃におけるJIS K6252に準拠した引裂き試験における引裂き強さが10.0N/mm以上であることができる。
[9]上記炭素繊維複合材料の一態様において、
前記炭素繊維複合材料は、200℃における最大引張応力1.9N/mm、周波数1Hzの引裂き疲労試験における破断回数が20回以上であることができる。
[10]上記炭素繊維複合材料の一態様において、
前記炭素繊維複合材料は、100%伸び時の応力が6.0MPa以上であることができる。
[11]本発明に係る炭素繊維複合材料の製造方法の一態様は、
架橋前の前記含フッ素エラストマーに前記炭素系補強材を混合して未架橋の炭素繊維複合材料を得る工程と、前記未架橋の炭素繊維複合材料における前記含フッ素エラストマーを架橋して上記炭素繊維複合材料の一態様を得る架橋工程と、を含むことを特徴とする。
炭素繊維複合材料の断面における構造を説明する模式図である。 炭素繊維複合材料の引張破断面のSEM画像である。 集合構造を説明するための炭素繊維複合材料の引張破断面のSEM画像である。 炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。 炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。 炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.第1の実施形態に係る炭素繊維複合材料
本発明の第1の実施形態に係る炭素繊維複合材料は、架橋された含フッ素エラストマー中に炭素系補強材を含む炭素繊維複合材料であって、前記炭素繊維複合材料の断面において、隣接する2以上の炭素系補強材が100nm以下の距離で近接または接触した集合構造を複数有し、前記炭素系補強材は、平均直径が0.7nm~30nmのカーボンナノチューブと平均粒径が35nm~300nmのカーボンブラックとを含み、前記集合構造における隣接する前記炭素系補強材間の平均距離は、10nm以上100nm未満であり、前記集合構造に外接する外接円は、直径が10nm~4μmであり、かつ、平均直径が50nm~1.2μmであり、前記断面における前記集合構造の占める面積が5%~40%である。
第1の実施形態に係る炭素繊維複合材料は、カーボンブラックとして平均粒径が35nm~80nmのハイストラクチャーカーボンブラックを含むことができる。また、カーボンブラックは、ハイストラクチャーカーボンブラック以外の他のカーボンブラックをさらに含むことができ、他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm~300nmであることができる。
1.1.集合構造
炭素繊維複合材料について本発明者等が走査型電子顕微鏡を用いた計測を行った結果、硬度75度以下で機械的強度に優れる炭素繊維複合材料には共通する構造的特徴があることがわかった。
そこで、図1~図3を用いて、炭素繊維複合材料50の構造的特徴について詳細に説明する。図1は炭素繊維複合材料50の断面の画像90における構造を説明する模式図であり、図2は炭素繊維複合材料50の引張破断面のSEMの画像90であり、図3は図2の画像90に集合構造84及び外接円C1を破線で示した画像90である。なお、「断面」
は凍結割断面であってもよいし、引張破断面であってもよい。また、「SEM」は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)の略称である。
図1~図3に示す炭素繊維複合材料50は、架橋された含フッ素エラストマー30中に炭素系補強材を含む。炭素系補強材は、平均直径が0.7nm~30nmのカーボンナノチューブ81と平均粒径が35nm~300nmのカーボンブラックとを含む。カーボンブラックは、後述の「3.2.ハイストラクチャーカーボンブラック」で説明する平均粒径が35nm~80nmのハイストラクチャーカーボンブラック82と、後述の「3.4.他のカーボンブラック」で説明する平均粒径が100nm~300nmの他のカーボンブラック83を含むことが好ましく、図1~図3ではこの例について示す。
図1~図3に示すように、炭素繊維複合材料50の断面において、隣接する2以上の炭素系補強材が100nm以下の距離L1で近接または接触した集合構造84を複数有する。距離L1は、隣接する炭素系補強材の最も近接している位置における距離であり、隣接する炭素系補強材が接触している場合には距離L1=0nmとして計測する。図1で網掛けの領域は各炭素系補強材の周囲100nmの範囲であり、集合構造84を示す。また、図3で破線の自由曲線は、各炭素系補強材の周囲100nmを囲むことで集合構造84を示す。
集合構造84における隣接する炭素系補強材間の距離L1の平均値は、10nm以上100nm未満である。さらに、距離L1の平均値は、10nm~95nmであることができる。図1において距離L1は、隣接するハイストラクチャーカーボンブラック82,82の間の距離を示すが、これに限らず、隣接する他のカーボンブラック83,83間の距離、隣接するカーボンナノチューブ81,81間の距離、隣接するカーボンナノチューブ81とカーボンブラック間の距離である。距離L1の平均値が10nm未満であると炭素繊維複合材料50の硬度が75度を超え、柔軟性が低下する。また、距離L1の平均値が100nm以上だと炭素系補強材間の相互作用が減少して補強効果が低下する。距離L1は走査型電子顕微鏡の画像90上で計測する。
図1及び図3の集合構造84に外接する外接円C1は、直径が10nm~4μmであり、かつ、平均直径が50nm~1.2μmである。外接円C1は、走査型電子顕微鏡の画像90上で集合構造84に外接する円を描くことができる。炭素繊維複合材料50は、断面における集合構造84の占める面積が5%~40%である。当該面積は、画像90上で測定できる。
集合構造84は、含フッ素エラストマー30だけの相よりも高い弾性率を有することにより、炭素繊維複合材料50の中で一つの構造体に近い挙動を示すと推測される。そのため、集合構造84が炭素繊維複合材料50に対する応力を負担することで室温、高温下における引裂き、引張、繰り返し負荷に対して高い抵抗力を発揮する。集合構造84の中では隣接する炭素系補強材の応力場による相互作用が生じると考えられる。また、複数の集合構造84が炭素繊維複合材料50の中にそれぞれ独立して点在することにより、変形時の柔軟性を維持する。
2.第2の実施形態に係る炭素繊維複合材料
本発明の第2の実施形態に係る炭素繊維複合材料は、含フッ素エラストマー100質量部に対して、カーボンナノチューブを0.1質量部~3質量部と、ハイストラクチャーカーボンブラックを1質量部~10質量部と、前記ハイストラクチャーカーボンブラック以外の他のカーボンブラックを0質量部~4質量部含み、前記カーボンナノチューブは、平均直径が0.7nm~30nmであり、前記ハイストラクチャーカーボンブラックは、平
均粒径が35nm~80nmであり、前記他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm~300nmであり、前記カーボンナノチューブに対する前記ハイストラクチャーカーボンブラックと前記他のカーボンブラックとの総量の質量比が、1:140~3:1である。
第2の実施形態に係る炭素繊維複合材料は、第1の実施形態に係る炭素繊維複合材料と同じ上述の集合構造を形成する。以下、第2の実施形態に係る炭素繊維複合材料について説明するが、第1の実施形態に係る炭素繊維複合材料も第2の実施形態と同じ原料と配合であれば同じ性能を備える。
炭素繊維複合材料は、硬度(JIS-A)が75度以下であることができる。一般的なOリングやダイヤフラムなどのゴム製品は硬度75度以下が多く、これらと同程度の硬度とすることにより、機械的強度、耐熱性が高い炭素繊維複合材料の適用範囲・用途・市場を拡大することができる。また、炭素繊維複合材料は、硬度(JIS-A)が75度~65度の範囲であることがより好ましい。
また、炭素繊維複合材料が硬度75度以下で機械的強度に優れることにより成形における脱型時の破損を抑制することができる。具体的には、炭素繊維複合材料がOリングやダイヤフラム等の製品として成形される際に、製品を高温の金型から取り出す工程(脱型)で金型に貼りついたり、引っかかったりして引っ張られることがあるが、炭素繊維複合材料は機械的強度に優れるため、製品が引裂かれたり、ちぎれたりする成形不良の発生を抑制できる。ここで機械的強度は、引裂き試験における引裂き強さであり、特に高温における引裂き強さである。また、近年各種産業・工業用途のゴム製品はさらなる耐久性の向上が要望され、例えば高温など過酷環境下での使用用途が増えている。特に過酷環境下での使用が多い含フッ素エラストマーを用いたゴム製品は耐久性、耐熱性及び機械的強度を備えることが望まれる。
炭素繊維複合材料は、伸びと柔軟性を維持した上で上述の硬度及び機械的強度を備える。ここで伸び及び柔軟性は引張試験における切断時伸びで評価できる。これらの性能を備える炭素繊維複合材料は、比較的少量の解繊されたカーボンナノチューブに加えて、カーボンブラックを所定量配合することにより達成できる。また、カーボンブラックとしては少なくともハイストラクチャーカーボンブラックを含むことが好ましく、さらにハイストラクチャーカーボンブラック以外の他のカーボンブラックを含んでもよい。
炭素繊維複合材料は、カーボンナノチューブが解繊された状態で全体に分散している。炭素繊維複合材料は、カーボンナノチューブの凝集塊が存在しない。凝集塊が存在すると破壊の起点となり、機械的強度の低下を招くからである。
炭素繊維複合材料は、室温におけるJIS K6252に準拠した引裂き試験における引裂き強さが39.0N/mm以上であることができ、54.0N/mm以下であることができる。室温における炭素繊維複合材料の引裂き強さが39.0N/mm以上であることにより、機械的強度に優れる。このため、炭素繊維複合材料は、成形における脱型時の破損を抑制することができる。また、炭素繊維複合材料は、室温におけるJIS K6252に準拠した引裂き試験における引裂き強さが39.5N/mm以上であることがより好ましく、40.0N/mm以上であることがさらに好ましい。
炭素繊維複合材料は、200℃におけるJIS K6252に準拠した引裂き試験における引裂き強さが10.0N/mm以上であることができ、16.0N/mm以下であることができる。高温の200℃における炭素繊維複合材料の引裂き強さが10.0N/mm以上であることにより、高温における機械的強度に優れ、また耐熱性に優れる。このた
め、炭素繊維複合材料は、成形における高温の金型からの脱型時の破損を抑制することができる。また、炭素繊維複合材料は、200℃におけるJIS K6252に準拠した引裂き試験における引裂き強さが11.0N/mm以上であることがより好ましい。
炭素繊維複合材料は、200℃における最大引張応力1.9N/mm、周波数1Hzの引裂き疲労試験における破断回数が20回以上であることができる。200℃における炭素繊維複合材料の破断回数が20回以上であることにより、炭素繊維複合材料の熱時の繰り返し引張疲労強度が向上する。このため、炭素繊維複合材料は、成形における高温の金型からの脱型時の破損を抑制することができる。また、炭素繊維複合材料は、200℃における最大引張応力1.9N/mm、周波数1Hzの引裂き疲労試験における破断回数が50回以上であることがより好ましい。
炭素繊維複合材料は、100%伸び時の応力(M100)が6.0MPa以上であることができ、10.5MPa以下であることができる。炭素繊維複合材料の100%伸び時の応力が6.0MPa以上であることにより、変形抵抗性が高く引っ張った際に引きちぎられることを抑制する効果がある。
3.原料
次に、第2の実施形態に係る炭素繊維複合材料を構成する原料について説明する。なお、第1の実施形態に係る炭素繊維複合材料を構成する原料も基本的には同じであるので、重複する説明は省略する。
3.1.含フッ素エラストマー
本発明における含フッ素エラストマーは、分子中にフッ素原子を含むフッ化ビニリデン系の合成ゴム(FKM)またはテトラフルオロエチレン-プロピレン系の合成ゴム(FEPM)である。含フッ素エラストマーとしては、2元系、3元系、低温性改良タイプ、耐塩基グレードなどがある。
2元系、3元系の含フッ素エラストマーとしては、例えば、フッ化ビニリデン(VDF)-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)2元共重合体(VDF-HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)-プロピレン(P)の2元共重合体(TFE-P)、フッ化ビニリデン(VDF)-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)-テトラフルオロエチレン(TFE)3元共重合体(VDF-HFP-TFE)などが挙げられる。低温性改良タイプの含フッ素エラストマーとしては、例えば、3元共重合体のヘキサフルオロプロピレンをフッ素化ビニルエーテル(FVE)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)などに置き換えたものなどが挙げられる。耐塩基グレードの含フッ素エラストマーとしては、例えばフッ化ビニリデン(VDF)-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)-テトラフルオロエチレン(TFE)-エチレン(E)-パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)5元共重合体(VDF-HEP-TFE-E-PMVE)などが挙げられる。
含フッ素エラストマーとしては、例えば、ケマーズ社製の商品名バイトン、ダイキン工業社製の商品名ダイエル、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製の商品名テクノフロン、スリーエム社製の商品名ダイニオン、AGC社製のAFLASなどをあげることができる。以下の説明では、含フッ素エラストマーをFKM、FEPMと省略する場合がある。
含フッ素エラストマーは、重量平均分子量が好ましくは50,000~300,000であることができる。含フッ素エラストマーの分子量がこの範囲であると、含フッ素エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、含フッ素エラストマーはカーボンナノチューブを分散させるために良好な弾性を有することができる。含フッ素エラ
ストマーは、粘性を有しているので凝集したカーボンナノチューブの相互に侵入しやすく、さらに弾性を有することによってカーボンナノチューブ同士を分離することができる。含フッ素エラストマーの重量平均分子量が50,000より小さいと、含フッ素エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけても弾性が小さいためカーボンナノチューブを分散させる効果が小さくなる傾向がある。また、含フッ素エラストマーの重量平均分子量が300,000より大きいと、含フッ素エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる傾向がある。
含フッ素エラストマーは、公知の架橋剤を用いることができ、例えば、ポリアミン架橋、ポリオール架橋、または過酸化物架橋することができ、過酸化物架橋が好ましい。含フッ素エラストマーを架橋剤で架橋することによって、耐熱性や耐薬品性に優れた炭素繊維複合材料を製造することができる。
含フッ素エラストマーは、フッ素含有量が57質量%以上であり、さらに、57質量%~72質量%であることができ、特に、65質量%~72質量%であることができる。含フッ素エラストマーは、フッ素含有量が57質量%以上であると耐熱性に優れることができる。また、含フッ素エラストマーは、耐薬品性を考慮すると、フッ素含有量が65質量%以上であることが望ましい。
含フッ素エラストマーは、カーボンナノチューブ、特にその末端のラジカルに対して親和性を有するハロゲン基を有する。カーボンナノチューブは、通常、側面は炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっている。また、含フッ素エラストマーの主鎖、側鎖及び末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノチューブのラジカルと親和性(反応性または極性)が高いハロゲン基を有することにより、含フッ素エラストマーとカーボンナノチューブとを結合することができる。このことにより、カーボンナノチューブの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。
3.2.ハイストラクチャーカーボンブラック
ハイストラクチャーカーボンブラック(以下、「HSカーボン」という)の平均粒径は、35nm~80nmであることができる。ここでストラクチャーとは粒子の凝集状態であり、ハイストラクチャーになると粒子同士のつながり度合いが多く、粒子の凝集力で直接増強作用を与えるため引張応力などに影響を与える。HSカーボンの平均粒径は、HSカーボンの凝集体を構成する小さな球状の成分を単一粒子(基本粒子)とみなしてその粒子直径を走査型電子顕微鏡による2000個以上の撮像によって測定して算術平均値として求めることができる。
HSカーボンのDBP吸収量(A法)は、さらに140cm/100g~160cm/100gであることができる。DBP吸収量は、HSカーボン100gが吸収するDBP(ジブチルフタレート)量(cm/100g)であり、JIS K6217-4(ASTM D 2414)に従って測定される。DBP吸収量によって、HSカーボン粒子同士が融着したアグリゲートの発達度合いであるストラクチャーを間接的に定量することができる。ここでいうHSカーボンのDBP吸収量は、含フッ素エラストマーに配合する前の状態における測定値である。
炭素繊維複合材料におけるHSカーボンは、含フッ素エラストマー100質量部に対して、1質量部~10質量部含む。また、炭素繊維複合材料におけるHSカーボンは、含フッ素エラストマー100質量部に対して、2質量部~8質量部含むことができる。HSカーボンは、後述する他のカーボンブラックに比べて粒子同士のつながり度合いが多く、少
量で相互作用しやすく複合材料中のカーボンナノチューブとの集合構造の形成に寄与すると共に、機械的強度の向上に寄与するため、1質量部以上配合することが好ましい。また、HSカーボンは、10質量部以下とすることが硬度調整のしやすさから好ましい。
3.3.カーボンナノチューブ
本発明の一実施の形態に用いるカーボンナノチューブは、平均直径(繊維径)が0.7nm~30nmであることができ、さらに2nm~20nmであることができる。このようなカーボンナノチューブは、その平均直径が比較的細いため、比表面積が大きく、マトリックスであるエラストマーとの表面反応性が向上し、エラストマー中におけるカーボンナノチューブの分散不良を改善しやすい傾向がある。カーボンナノチューブは、直径が0.7nm以上であれば市場で入手可能であり、30nm以下であれば引裂き疲労性及び耐摩耗性に優れるという効果を有する。カーボンナノチューブは、その表面のエラストマーとの反応性を向上させるために、公知の活性化処理を施すことができる。カーボンナノチューブの平均直径は、電子顕微鏡による観察によって計測することができる。なお、本発明の詳細な説明においてカーボンナノチューブの平均直径及び平均長さは、電子顕微鏡による例えば5,000倍の撮像(カーボンナノチューブのサイズによって適宜倍率は変更できる)から200箇所以上の直径及び長さを計測し、その算術平均値として計算して得ることができる。
カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面(グラフェンシート)を巻いて筒状にした形状を有するいわゆる多層カーボンナノチューブ(MWCNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)及び単層カーボンナノチューブ(SWCNT:シングルウォールカーボンナノチューブ)の少なくとも一方であり、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブ及び単層カーボンナノチューブを含んでもよい。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブ、気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
カーボンナノチューブは、気相成長法によって得ることができる。気相成長法は、触媒気相合成法(Catalytic Chemical Vapor Deposition:CCVD)とも呼ばれ、炭化水素等のガスを金属系触媒の存在下で気相熱分解させて未処理のカーボンナノチューブを製造する方法である。より詳細に気相成長法を説明すると、例えば、ベンゼン、トルエン等の有機化合物を原料とし、フェロセン、ニッケルセン等の有機遷移金属化合物を金属系触媒として用い、これらをキャリアーガスとともに高温例えば400℃~1000℃の反応温度に設定された反応炉に導入し、浮遊状態あるいは反応炉壁にカーボンナノチューブを生成させる浮遊流動反応法(Floating Reaction Method)や、あらかじめアルミナ、酸化マグネシウム等のセラミックス上に担持された金属含有粒子を炭素含有化合物と高温で接触させてカーボンナノチューブを基板上に生成させる触媒担持反応法(Substrate Reaction Method)等を用いることができる。例えば、平均直径が9nm~20nmのカーボンナノチューブは触媒担持反応法によって得ることができ、これより太いカーボンナノチューブは浮遊流動反応法によって得ることができる。カーボンナノチューブの直径は、例えば金属含有粒子の大きさや反応時間などで調節することができる。
カーボンナノチューブの配合量は、HSカーボンや他のカーボンブラックの配合量と共に調整することができ、含フッ素エラストマー100質量部に対し、0.1質量部~3質量部を配合する。また、カーボンナノチューブは、含フッ素エラストマー100質量部に対し、0.3質量部~3質量部を配合することがより好ましく、0.5質量部~3質量部を配合することがさらに好ましい。カーボンナノチューブは、3質量部以下であれば、伸びや柔軟性を維持したままゴム硬度を75度以下に調整しやすく、カーボンナノチューブ
が3質量部以下でカーボンブラックと併用することで機械的強度を高めたままコスト競争力をもたせることができる。また、カーボンナノチューブは、0.1質量部以上を含フッ素エラストマー100質量部に配合し解繊した状態で複合化することによって、微小セル構造が点在するように形成され補強効果を発揮する。微小セル構造は、カーボンナノチューブが3次元に張り巡らされた網目構造によってマトリックス材料を囲むように形成されることができる。これまでの研究結果から1つのセルの最大径はおおよそカーボンナノチューブの平均直径の2倍~10倍程度になることが判っている。また、カーボンブラック系の補強剤を所定量含ませることで複合材料中のカーボンナノチューブと共に集合構造を形成させることで機械的強度を高めることができる。
3.4.他のカーボンブラック
炭素繊維複合材料に用いるHSカーボン以外の他のカーボンブラックは、種々の原料を用いた種々のグレードの他のカーボンブラックを用いることができる。他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm~300nmであることができる。他のカーボンブラックの平均粒径は、走査型電子顕微鏡の撮像によって観察して基本構成粒子の粒子直径を2000個以上測定して算術平均して求めることができる。
このような他のカーボンブラックとしては、例えば、FTグレード,MTグレードなどの補強用カーボンブラックなどを用いることができる。比較的大きな粒径を有するカーボンブラックを用いることにより、炭素繊維複合材料の柔軟性を維持しつつ補強することができる。また、比較的大きな粒径の他のカーボンブラックは比表面積が小さくなるため、炭素繊維複合材料における硬度上昇及び伸びの低下を抑えたうえで柔軟な補強効果をもたらす。また、比較的粒径の大きな他のカーボンブラックがカーボンナノチューブやHSカーボン間の隙間をうめることで集合構造の形成にも関与し伸びの低下を抑えたうえで補強効果をもたらす。
他のカーボンブラックの配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対し、0質量部~4質量部である。また、他のカーボンブラックの配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対し、1質量部~4質量部であることが好ましく、2質量部~4質量部であることがさらに好ましい。また、上記の範囲で他のカーボンブラックを使用することで炭素繊維複合材料の伸びや柔軟性を維持しつつ含フッ素エラストマーやカーボンナノチューブとの相互作用により補強性を高めることができる。また、硬度調整もしやすくなる。
3.5.質量比
炭素繊維複合材料は、上述の各配合量の範囲内で、カーボンナノチューブに対するHSカーボンと他のカーボンブラックとの総量(以下「カーボンブラック総量」)の質量比が、1:140~3:1である。質量比1:140は、カーボンナノチューブが最小量である0.1質量部に対しカーボンブラック総量が最大量である14質量部である。また、質量比3:1は、カーボンナノチューブが最大量である3質量部に対しカーボンブラック総量が最小量である1質量部である。また、炭素繊維複合材料は、カーボンナノチューブに対するカーボンブラック総量の質量比が1:47~3:1であることが好ましく、さらに1:28~2.5:1であることが好ましく、1:22~1:1であることがより好ましい。
炭素繊維複合材料は、上述の各配合量の範囲内で、カーボンナノチューブに対するHSカーボンと他のカーボンブラックとの質量比が、1:140~3:1である場合に、複合材料中で微小セル構造が点在するように形成され、さらにカーボンブラック系の補強剤とカーボンナノチューブとの相互作用により集合構造が形成されることによりゴム硬度75度以下で機械的強度を高めることができる。
3.6.その他の配合剤
含フッ素エラストマーに対して、ゴムの一般的な配合剤として用いられているカーボンブラック、シリカ等の補強剤、過酸化物等の架橋剤、多官能性不飽和化合物共架橋剤、酸化亜鉛等の金属酸化物、炭酸カルシウム、タルク、クレー、グラファイト、けい酸カルシウム等の充填剤、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス等の加工助剤、可塑剤、液状エラストマー、その他老化防止剤等を必要に応じて適宜添加して用いることができる。また、石炭の一種で高品位炭と呼ばれる瀝青炭を含む石炭一般を粉砕したものである瀝青炭粉砕物も用いることができる。さらに、瀝青炭粉砕物の平均粒径は1μm~10μmであることができ、特に、瀝青炭粉砕物の平均粒径は3μm~8μmであることができる。このような配合剤は、炭素繊維複合材料のゴム硬度の調整に用いてもよい。
4.炭素繊維複合材料の製造方法
炭素繊維複合材料の製造方法について図4~図6を用いて詳細に説明する。
図4~図6は、本発明の一実施形態にかかるオープンロール法による炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。炭素繊維複合材料の製造方法は、架橋前の含フッ素エラストマーに炭素系補強材を混合して未架橋の炭素繊維複合材料を得る工程と、前記未架橋の炭素繊維複合材料における前記含フッ素エラストマーを架橋して炭素繊維複合材料を得る架橋工程と、を含む。未架橋の炭素繊維複合材料を得る工程は、例えば、含フッ素エラストマーに炭素系補強材を混合して混合物を得る混合工程と、混合物をロール間隔が0.5mm以下のオープンロールに投入して薄通しして未架橋の炭素繊維複合材料を得る薄通し工程と、を含むことができる。なお、各原料及び配合量については上記2及び3の通りであるので、重複する説明は省略する。
図4~図6に示すように、2本ロールのオープンロール100における第1のロール110と第2のロール120とは、所定のロール間隔d、例えば0.5mm~1.5mmの間隔で配置され、図4~図6において矢印で示す方向に回転速度V1,V2で正転あるいは逆転で回転する。
まず、図4に示すように、第1のロール110に巻き付けられた架橋前の含フッ素エラストマー30の素練りを行ない、含フッ素エラストマー分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成する。素練りによって生成された含フッ素エラストマーのフリーラジカルがカーボンナノチューブと結びつきやすい状態となる。
4.1.混合工程
次に、図5に示すように、第1のロール110に巻き付けられた含フッ素エラストマー30のバンク34に、HSカーボン、カーボンナノチューブ及び他のカーボンブラックなどの充填剤80を投入し、混練し、混合物を得る。この混練における含フッ素エラストマー30の温度は、例えば0℃~100℃であることができ、さらに0℃~50℃であることができる。含フッ素エラストマー30と充填剤80とを混合する工程は、オープンロール法に限定されず、例えば密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。
4.2.薄通し工程
さらに、図6に示すように、第1のロール110と第2のロール120とのロール間隔dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0mmを超え0.5mm以下の間隔に設定し、混合物36をオープンロール100に投入して薄通しを行なう。
薄通しの回数は、例えば1回~10回程度行なうことができる。
第1のロール110の表面速度をV1、第2のロール120の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05~3.00であることができ、さらに1.05~1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。
このように狭いロール間から押し出された炭素繊維複合材料50は、含フッ素エラストマーの弾性による復元力で図6のように大きく変形し、その際に含フッ素エラストマーと共にカーボンナノチューブが大きく移動する。
薄通しして得られた炭素繊維複合材料50は、ロールで圧延されて所定厚さのシート状に分出ししてもよい。
この薄通しの工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を例えば0~50℃、より好ましくは5~30℃の比較的低い温度に設定して行われ、含フッ素エラストマーの実測温度も0~50℃に調整されることができる。
このようにして得られた剪断力により、含フッ素エラストマーに高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノチューブが含フッ素エラストマー分子に1本ずつ引き抜かれるように相互に分離して解繊し、含フッ素エラストマー中に分散される。特に、含フッ素エラストマーは、弾性と、粘性と、カーボンナノチューブとの化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノチューブを容易に分散することができる。そして、カーボンナノチューブの分散性及び分散安定性(カーボンナノチューブが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料50を得ることができる。
より具体的には、オープンロールで含フッ素エラストマーとカーボンナノチューブとを混合すると、粘性を有する含フッ素エラストマーがカーボンナノチューブの相互に侵入し、かつ、含フッ素エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノチューブの活性の高い部分と結合する。カーボンナノチューブの表面の活性が適度に高いと、特に含フッ素エラストマー分子と結合し易くなることができる。次に、含フッ素エラストマーに強い剪断力が作用すると、含フッ素エラストマー分子の移動に伴ってカーボンナノチューブも移動し、さらに剪断後の弾性による含フッ素エラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノチューブが分離されて、含フッ素エラストマー中に分散されることになる。
本実施の形態によれば、炭素繊維複合材料が狭いロール間から押し出された際に、含フッ素エラストマーの弾性による復元力で炭素繊維複合材料はロール間隔より厚く変形する。その変形は、強い剪断力の作用した炭素繊維複合材料をさらに複雑に流動させ、カーボンナノチューブを含フッ素エラストマー中に分散させると推測できる。そして、一旦分散したカーボンナノチューブは、含フッ素エラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。
薄通し工程は、含フッ素エラストマーにカーボンナノチューブを剪断力によって解繊させることができれば、前記オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集したカーボンナノチューブを分離して解繊できる剪断力を含フッ素エラストマーに与えることができればよい。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。含フッ素エラストマーとカーボンナノチューブとの混合前、混合中、あるいは薄通し後の分出しされた炭素繊維複合材料に、架橋剤を混合することができる。含フッ素エラストマーの架橋は、例えば、耐熱性に優れた過酸化物架橋を用いることができる。
4.3.架橋工程
架橋工程は、薄通し工程で得られた未架橋の炭素繊維複合材料における含フッ素エラストマーを架橋して炭素繊維複合材料を得る。架橋工程は、例えば、架橋剤を含む炭素繊維複合材料を金型内に配置し、金型を加熱することで含フッ素エラストマーを架橋すると共にプレス加工することで炭素繊維複合材料を用いた所望形状のゴム製品を成形することができる。架橋工程で得られた炭素繊維複合材料は、その断面の走査型電子顕微鏡の画像において前述した集合構造を観察できる。
前記のように、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて、本発明の範囲に含まれるものとする。
(1)サンプルの作製
実施例1~7及び比較例1~5のサンプルは、以下の工程によって作製した。
混練工程:ロール径が6インチのオープンロール(ロール温度10~20℃)に、表1及び表2に示す100質量部(phr)の含フッ素エラストマー(表1及び表2では「FKM」、「FEPM」と記載した)を投入して、ロールに巻き付かせた(図4参照)。
次に、表1及び表2に示す質量部(phr)のHSカーボン等の配合剤(表1及び表2では「MT-CB」、「HS-CB」、「MWCNT」、「SWCNT」と記載した)を含フッ素エラストマーに投入した(図5参照)。このとき、ロール間隔dを1.5mmとした。
薄通し工程:カーボンナノチューブが混合された含フッ素エラストマーの混合物をロールから取り出し、ロール間隔dを1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物をオープンロールに投入して薄通しをし、第1混合物を得た(図6参照)。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し5回行った。
さらに、架橋剤として有機過酸化物、多官能性不飽和化合物共架橋剤を加え、ロールを所定の間隔(1.0mmから2.5mm)にセットして、未架橋の炭素繊維複合材料を分出しした。
成形工程:実施例1~6及び比較例1,4については、未架橋の炭素繊維複合材料(比較例2,3は未架橋のゴム組成物)を真空プレス機に投入し、160℃、5分間プレス成形(1次架橋)した。実施例7は、未架橋の炭素繊維複合材料(比較例5は未架橋のゴム組成物)を真空プレス機に投入し、170℃、5分間プレス成形(1次架橋)した。
さらに、炭素繊維複合材料をオーブンに移して、230℃、4時間2次架橋して、実施例1~6及び比較例1、4の過酸化物架橋したシート状の炭素繊維複合材料サンプル(比較例2,3は過酸化物架橋したゴム組成物サンプル)、200℃、4時間2次架橋して、実施例7の過酸化物架橋したシート状の炭素繊維複合材料サンプル(比較例5は過酸化物架橋したゴム組成物サンプル)を得た。
実施例1~7及び比較例1~5の各サンプルは、ゴム硬度(Hs)が75度以下、70度±5度程度になるように、炭素系補強材の配合量を調整した。
なお、表の配合欄における含フッ素エラストマー及び各種配合剤の詳細は以下の通りで
あった。また、「質量比」として、カーボンナノチューブに対するHS-CBとMT-CBの総量の質量比を記載した。
FKM:3元系FKM、ムーニー粘度ML1+10121℃(中心値)48、
FEPM:FEPM、ムーニー粘度ML1+10121℃(中心値)85、
MT-CB:MTグレードのカーボンブラック、平均直径200nm、
HS-CB:ハイストラクチャーSRFグレードのカーボンブラック、平均直径70nm、DBP吸収量(A法)152cm/100g、
MWCNT:マルチウォールカーボンナノチューブ、平均直径15.3nm、
SWCNT:シングルウォールカーボンナノチューブ、平均直径5nm、
であった。
実施例1~7及び比較例1~5の試験サンプルについて、以下に説明する各種試験を行い、試験結果を表1及び表2に示した。
(2)基本特性試験
実施例及び比較例の各サンプルについて、ゴム硬度(Hs(JIS-A))をJIS K 6253に基づいて測定した。
また、実施例及び比較例の各サンプルのJIS3号形ダンベル形状に打ち抜いた試験片について、島津製作所社製オートグラフAG-Xの引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行い、引張強さ(TS(MPa))、破断伸び(Eb(%))、50%応力(M50(MPa))、100%応力(M100(MPa))、及び破壊エネルギー(破壊E(J))を測定した。測定結果は、表の各欄に示した。
(3)引裂き試験
実施例及び比較例の各サンプルの試験片を、JIS K6252切込み無しのアングル形試験片に打ち抜き、島津製作所社製オートグラフAG-Xを用いて、室温と200℃において、引張速度500mm/minでJIS K6252に準拠して引裂き試験を行い、引裂き強さ(N/mm)を計算した。測定結果は、表の各欄に示した。
(4)引裂き疲労試験
実施例及び比較例の各サンプルを、20mm×幅4mm×厚さ1mmの短冊状の試験片に打ち抜き、その試験片の長辺の中心から幅方向へ深さ1mmの切込みを入れ、SII社製TMA/SS6100試験機を用いて、大気雰囲気中、200℃、周波数1Hzの条件で最大引張応力を1.9N/mmの条件で、繰返し引張荷重(0N/mm~1.9N/mm)をかけて引裂き疲労試験を行い、試験片が破断するまでの引張回数(疲労寿命(回数))を測定した。測定結果は、表の「疲労寿命(回数)」の欄に示した。
(5)SEM計測
実施例及び比較例の引張試験後の各サンプルの破断面をSEMで画像を撮影した。各画像における隣接する炭素系補強材(MT-CB、HS-CB、MWCNT及びSWCNT)間の距離を計測し、100nm以下で隣接する炭素系補強材に基づいて集合構造を推定すると共に集合構造の面積を計測し、各集合構造の外接円を画像に描き、外接円の直径を測定した。測定結果は、表1及び表2に記載した。表1及び表2における「外接円平均径」は集合構造の外接円の直径の平均値であり、「外接円最大径」及び「外接円最小径」は集合構造の外接円の直径の最大値と最小値であり、「距離平均」及び「距離標準偏差」は集合構造における隣接する炭素系補強材間の距離から算出し、「面積」は画像における集合構造の面積の百分率(%)である。
Figure 2023019471000002
Figure 2023019471000003
表1及び表2によれば、実施例1~実施例7及び比較例1~比較例5の炭素繊維複合材料サンプルは、硬度が74度以下であった。
表1及び表2によれば、実施例1~実施例7の炭素繊維複合材料サンプルは、100%応力(M100)が6.1MPaを超える値を示した。比較例1~比較例5のサンプルは、100%応力(M100)が5.6MPa以下であった。
表1及び表2によれば、実施例1~実施例7の炭素繊維複合材料サンプルは、室温における引裂き強さが39.5N/mm以上であった。比較例1~比較例5のサンプルは、室温における引裂き強さが38.0N/mm以下であった。
表1及び表2によれば、実施例1~実施例7の炭素繊維複合材料サンプルは、200℃における引裂き強さが11.1N/mm以上であった。比較例1~比較例5のサンプルは、200℃における引裂き強さが9.4N/mm以下であった。
表1及び表2によれば、実施例1~実施例7の炭素繊維複合材料サンプルは、引裂き疲労試験における疲労寿命が53回以上であった。比較例1~比較例5のサンプルは、引裂
き疲労試験における疲労寿命が3回以下であった。
表1及び表2によれば、実施例1~実施例7の炭素繊維複合材料サンプルの集合構造における外接円の直径は0.38μm~1.89μm、平均直径は0.66μm~1.16μm、距離の平均値は56.3nm~65.5nm、距離の標準偏差は23.3nm~31.2nm、面積は15.3%~24.5%であった。比較例1~比較例5のサンプルの集合構造における外接円の直径は0.55μm~2.43μm、平均直径は1.21μm~1.35μm、距離の平均値は51.8nm~60.5nm、距離の標準偏差は28.8nm~31.9nm、面積は19.8%~32.6%であった。
30…含フッ素エラストマー、34…バンク、36…混合物、50…炭素繊維複合材料、80…充填剤、81…カーボンナノチューブ、82…ハイストラクチャーカーボンブラック、83…他のカーボンブラック、84…集合構造、90…画像、100…オープンロール、110…第1のロール、120…第2のロール、d…ロール間隔、C1…外接円、L1…距離、V1,V2…回転速度

Claims (11)

  1. 架橋された含フッ素エラストマー中に炭素系補強材を含む炭素繊維複合材料であって、
    前記炭素繊維複合材料の断面において、隣接する2以上の炭素系補強材が100nm以下の距離で近接または接触した集合構造を複数有し、
    前記炭素系補強材は、平均直径が0.7nm~30nmのカーボンナノチューブと平均粒径が35nm~300nmのカーボンブラックとを含み、
    前記集合構造における隣接する前記炭素系補強材間の平均距離は、10nm以上100nm未満であり、
    前記集合構造に外接する外接円は、直径が10nm~4μmであり、かつ、平均直径が50nm~1.2μmであり、
    前記断面における前記集合構造の占める面積が5%~40%である、炭素繊維複合材料。
  2. 請求項1において、
    前記カーボンブラックは、平均粒径が35nm~80nmのハイストラクチャーカーボンブラックを含む、炭素繊維複合材料。
  3. 請求項2において、
    前記カーボンブラックは、前記ハイストラクチャーカーボンブラック以外の他のカーボンブラックをさらに含み、
    前記他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm~300nmである、炭素繊維複合材料。
  4. 請求項3において、
    前記含フッ素エラストマー100質量部に対して、前記カーボンナノチューブを0.1質量部~3質量部と、前記ハイストラクチャーカーボンブラックを1質量部~10質量部と、前記他のカーボンブラックを0質量部~4質量部と、を含む、炭素繊維複合材料。
  5. 含フッ素エラストマー100質量部に対して、カーボンナノチューブを0.1質量部~3質量部と、ハイストラクチャーカーボンブラックを1質量部~10質量部と、前記ハイストラクチャーカーボンブラック以外の他のカーボンブラックを0質量部~4質量部と、を含み、
    前記カーボンナノチューブは、平均直径が0.7nm~30nmであり、
    前記ハイストラクチャーカーボンブラックは、平均粒径が35nm~80nmであり、
    前記他のカーボンブラックは、平均粒径が100nm~300nmであり、
    前記カーボンナノチューブに対する前記ハイストラクチャーカーボンブラックと前記他のカーボンブラックとの総量の質量比が、1:140~3:1である、炭素繊維複合材料。
  6. 請求項1~請求項5のいずれか一項において、
    前記カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブ及び単層カーボンナノチューブを含む、炭素繊維複合材料。
  7. 請求項1~請求項6のいずれか一項において、
    前記炭素繊維複合材料は、室温におけるJIS K6252に準拠した引裂き試験における引裂き強さが39.0N/mm以上である、炭素繊維複合材料。
  8. 請求項1~請求項7のいずれか一項において、
    前記炭素繊維複合材料は、200℃におけるJIS K6252に準拠した引裂き試験
    における引裂き強さが10.0N/mm以上である、炭素繊維複合材料。
  9. 請求項1~請求項8のいずれか一項において、
    前記炭素繊維複合材料は、200℃における最大引張応力1.9N/mm、周波数1Hzの引裂き疲労試験における破断回数が20回以上である、炭素繊維複合材料。
  10. 請求項1~請求項9のいずれか一項において、
    前記炭素繊維複合材料は、100%伸び時の応力が6.0MPa以上である、炭素繊維複合材料。
  11. 架橋前の前記含フッ素エラストマーに前記炭素系補強材を混合して未架橋の炭素繊維複合材料を得る工程と、前記未架橋の炭素繊維複合材料における前記含フッ素エラストマーを架橋して請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の前記炭素繊維複合材料を得る架橋工程と、を含む、炭素繊維複合材料の製造方法。
JP2021124211A 2021-07-29 2021-07-29 炭素繊維複合材料及びその製造方法 Pending JP2023019471A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021124211A JP2023019471A (ja) 2021-07-29 2021-07-29 炭素繊維複合材料及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021124211A JP2023019471A (ja) 2021-07-29 2021-07-29 炭素繊維複合材料及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023019471A true JP2023019471A (ja) 2023-02-09

Family

ID=85160591

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021124211A Pending JP2023019471A (ja) 2021-07-29 2021-07-29 炭素繊維複合材料及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023019471A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6415284B2 (ja) 炭素繊維複合材料
JP5934587B2 (ja) ニードルバルブ
JP2009275337A (ja) カーボンナノファイバー及びその製造方法、カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料の製造方法及び炭素繊維複合材料
JP2010222582A (ja) ナノチューブの含有量が高いエラストマーの複合材料の製造方法
WO2017175807A1 (ja) 含フッ素エラストマー組成物および成形体
WO2020195799A1 (ja) エラストマー組成物および成形体
JP6623033B2 (ja) 炭素繊維複合材料及び炭素繊維複合材料の製造方法
JP2017008244A (ja) エラストマー組成物の製造方法、エラストマー組成物、マスターバッチ、エラストマー混合物及びエラストマー混合物の製造方法
JP7309726B2 (ja) シール材
Heidarian et al. Improving the thermal properties of fluoroelastomer (Viton GF-600S) using acidic surface modified carbon nanotube
JP6284394B2 (ja) 炭素繊維複合材料及びシール部材
JP6473588B2 (ja) 炭素繊維複合材料及び炭素繊維複合材料の製造方法
JP5432974B2 (ja) 炭素繊維複合材料の製造方法及び炭素繊維複合材料
JP2023019471A (ja) 炭素繊維複合材料及びその製造方法
JP5800746B2 (ja) シール部材
JP7151760B2 (ja) ゴム組成物の製造方法
JP7155567B2 (ja) 成形体
JP6310736B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂組成物
JP2009161652A (ja) 炭素繊維複合材料
JP7276319B2 (ja) 複合材料の製造方法
JP6503164B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物の製造方法
JP2023082827A (ja) 炭素繊維複合材料及びその製造方法
JP2021067362A (ja) ピストンシール部材及びディスクブレーキ
JP6630477B2 (ja) 炭素繊維複合材料の製造方法及び炭素繊維複合材料
JP2023020935A (ja) 炭素繊維複合材料及び炭素繊維複合材料の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240417