JP2016106170A - 樹脂組成物および樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
近年地球規模での環境問題に対して、植物由来の樹脂の利用は、温室効果ガス排出量を低減し得る材料として大きな期待が寄せられている。従来から知られている植物由来の樹脂の一つに、セルロース誘導体がある。セルロース誘導体は、従来、塗料としての用途や、繊維としての用途では、広く利用されているが、セルロース誘導体の樹脂成形体への利用に際しては、まだ用いられている例はほとんど見られない。
即ち、請求項1に係る発明は、
セルロースアセテートプロピオネートを50phr以上95phr以下と、
アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂を5phr以上50phr以下と、
難燃剤として縮合リン酸エステルを5phr以上40phr以下と、
アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上25phr以下と、を含む樹脂組成物(但し、phrとは、前記セルロースアセテートプロピオネートと、前記アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂とを全樹脂成分としたときの全樹脂成分100質量部に対する質量部を意味する。)。
さらに、イオン価数IからIIIまでの元素を単独又は2種以上含有する無機化合物を0.1phr以上10phr以下含む請求項1に記載の樹脂組成物。
前記アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上20phr以下含む請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
セルロースアセテートプロピオネートを50phr以上95phr以下と、
アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂を5phr以上50phr以下と、
難燃剤として縮合リン酸エステルを5phr以上40phr以下と、
アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上25phr以下と、を含む樹脂成形体(但し、phrとは、前記セルロースアセテートプロピオネートと、前記アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂とを全樹脂成分としたときの全樹脂成分100質量部に対する質量部を意味する。)。
さらに、イオン価数IからIIIまでの元素を単独又は2種以上含有する無機化合物を0.1phr以上10phr以下含む請求項4に記載の樹脂成形体。
前記アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上20phr以下含む請求項4又は請求項5に記載の樹脂成形体。
請求項1に係る発明によれば、セルロースエステルを50phr以上95phr以下と、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂を5phr以上50phr以下と、を含む組成において、縮合リン酸エステルを5phr以上40phr以下で含まない場合に比べ、得られる樹脂成形体の機械的強度がより向上する樹脂組成物を提供することができる。
請求項2に係る発明によれば、セルロースエステルを50phr以上95phr以下と、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂を5phr以上50phr以下と、を含む組成において、イオン価数IからIIIまでの元素を単独又は2種以上含有する無機化合物を0.1phr以上10phr以下で含まない場合に比べ、得られる樹脂成形体の寸法安定性が向上する樹脂組成物を提供することができる。
請求項3に係る発明によれば、セルロースエステルを50phr以上95phr以下と、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂を5phr以上50phr以下と、を含む組成において、アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上で含まない場合に比べ、得られる樹脂成形体の寸法安定性が向上する樹脂組成物を提供することができる。
請求項3に係る発明によれば、アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を20phrを超えて含む場合に比べ、得られる樹脂成形体の引張強さが向上する樹脂組成物を提供することができる。
請求項4に係る発明によれば、セルロースエステルを50phr以上95phr以下と、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂を5phr以上50phr以下と、を含む組成において、縮合リン酸エステルを5phr以上10phr以下で含まない場合に比べ、機械的強度がより向上した樹脂成形体を提供することができる。
請求項5に係る発明によれば、セルロースエステルを50phr以上95phr以下と、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂を5phr以上50phr以下と、を含む組成において、イオン価数IからIIIまでの元素を単独又は2種以上含有する無機化合物を0.1phr以上10phr以下で含まない場合に比べ、寸法安定性が向上した樹脂成形体を提供することができる。
請求項6に係る発明によれば、セルロースエステルを50phr以上95phr以下と、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂を5phr以上50phr以下と、を含む組成において、アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上で含まない場合に比べ、寸法安定性が向上した樹脂成形体を提供することができる。
請求項6に係る発明によれば、アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を20phrを超えて含む場合に比べ、引張強さが向上した樹脂成形体を提供することができる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、セルロースエステルと、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂(以下、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂と称する)と、を含む樹脂組成物である。
そして、セルロースエステルの含有量を50phr以上95phr以下とし、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂の含有量を5phr以上50phr以下としている。
以下の実施形態では、セルロースエステルとしてセルロースアセテートプロピオネートを適用する。また、本実施形態に係る樹脂組成物は、難燃剤として縮合リン酸エステルを5phr以上40phr以下と、アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上25phr以下と、を含む。
なお、「phr」とは、「per hundred resin」の略であり、全樹脂成分100質量部に対する「質量部」である。
但し、本実施形態における「phr」とは、前記セルロースアセテートプロピオネートと、前記アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂とを全樹脂成分としたときの全樹脂成分100質量部に対する質量部を意味する。
具体的には、例えば、成形時の樹脂の流動方向(以下、「マシンダイレクション方向」とも言う。)の機械的強度は、セルロースエステル単体で30Mpa程度、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂(例えばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)単体で40Mpa程度であるのに対し、本実施形態に係る樹脂組成物では、上記配合比で両者を混合することにより、セルロースエステルの単体よりも向上する。
また、例えば、成形時の樹脂の流動方向を横断する方向(以下、「トラバースダイレクション方向」とも言う。)の機械的強度は、セルロースエステル単体で30Mpa程度、アクリロニトリル・スチレンポリマー共重合体単体で50Mpa程度であるのに対し、本実施形態に係る樹脂組成物では、上記配合比で両者を混合することにより、例えば、60Mpaを超え、それぞれの単体を超える結果となる。
このことから、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂の微細な短繊維がセルロースエステル中に存在することで、成形時の樹脂の流動方向を横断する面でも短繊維が相互貫入し、マシンダイレクション方向とトラバースダイレクション方向の双方において、更には特にトラバースダイレクション方向において、機械的強度が向上すると推測している。
上記組成により、本実施形態に係る樹脂組成物では、得られる樹脂成形体の機械的強度(特に伸び)が向上する。
この理由は定かではないが、縮合リン酸エステルのエステル部分とセルロースエステルのエステル部分との親和性により、セルロースエステルが可塑化されるためであると推測される。
上記組成により、本実施形態に係る樹脂組成物では、得られる樹脂成形体の寸法安定性が向上する。
この理由は定かではないが、特定の樹脂組成において上記特定の無機化合物が充填剤としての働き(いわゆるフィラー効果)を有効に発現するためであると推測される。
しかしながら、環境問題を背景に、植物由来の樹脂を多く使用することが求められる昨今、植物性由来の樹脂、つまりセルロース誘導体(例えばセルロースエステルなど)を50phr以上と豊富な組成にすると、得られる樹脂成形体の寸法安定性が不十分であることがわかってきた。この傾向は、湿熱環境下(温度65℃、湿度85%の環境下を意味する。この表現は、特に定義をしない場合、以下でも同様の条件を意味する。)でより顕著に現れることもわかってきた。
なお、この理由は定かではないが、本実施形態に係る樹脂組成物のゲル分率を測定すると、当該ゲル分率が向上しているため、相溶化剤としてのアクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体(その重合成分としてのグリシジル化合物)に含まれるエポキシ基とセルロースエステルに含まれる水酸基とが結合し、この結合により架橋構造を形成すると推測されるためである。
ここで、樹脂成形体の光沢は表面で種類の異なる樹脂が乱反射して生じることが知られているが、相溶化剤としてアクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体重合体を選択することで、乱反射が発生し難い度合いまで樹脂(セルロースエステルとアクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂)が分散されるため、得られる樹脂成形体の光沢性が低減されると考えられる。
そして、樹脂(セルロースエステルとアクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂)が分散されることから、機械的特性(特に伸び)も向上すると考えられる。
上記組成により、上記同様の理由から、得られる樹脂成形体の機械的特性が向上する。
加えて、得られる樹脂成形体の光沢性の低減、機械的特性(特に伸び)の向上についても実現される。
−セルロースエステル−
セルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート類が好適に挙げられ、具体的には、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートメチレート、セルロースアセテートヒドロキシエチレート、セルロースアセテートヒドロキシプロピレート、セルロースブチレートヒドロキシプロピレート、セルロースジアセテート等が挙げられる。
可塑剤の含有量が少なすぎると、樹脂成形体の耐衝撃性が得られ難くなり、多すぎると、樹脂組成物の流動性の低下、樹脂成形体の引張り強さが低下し易くなることがある。
この重量平均分子量が小さすぎる場合、流動性が過剰となり加工できない場合があり、この重量平均分子量が大きすぎる場合には流動性が不足し加工できない場合がある。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー装置(島津製作所製Prominence GPC型)を用い、測定カラムにはShim−pack GPC−80Mを使用して測定された値である。以下、同様である。
この含有量が少なすぎると、樹脂組成物(その成形体)が日本バイオプラスチック協会による「グリーンプラ」又は「バイオマスプラ」識別表示制度の認証が得られ難い一方、多すぎると、樹脂成形体の荷重たわみ温度(熱変形温度HDT: Heat Deflection Temperature、)が低下し易くなることがある。
アクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂は、特に限定されるものではなく、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体(その共重合比が質量比で例えば10:1乃至1:10)を含む樹脂であればよい。
アクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂として具体的には、例えば、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸樹脂SAN樹脂)、及びアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)等の少なくとも1種が挙げられ、これら2種以上の混合物(ポリマーアロイ)であってもよい。
これらの樹脂の中でも、コストの観点からは、AS樹脂や、ABS樹脂がよい。AS樹脂や、ABS樹脂も、特には限定するものではないが、共重合だけでなく、ポリマーブレンド法で製造されたものであってもよい。
この重量平均分子量が小さすぎる場合、流動性が過剰となり加工性が低下する場合があり、この重量平均分子量が大きすぎる場合には流動性が不足して加工性が低下する場合がある。
但し、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂は、後述するポリカーボネートと併用する場合、樹脂組成物中に、ポリカーボネートとの合計量で20phr以上50phr以下含むことがよい。
この含有量が、少なすぎると、樹脂成形体の荷重たわみ温度(熱変形温度HDT: Heat Deflection Temperature、)が低下し易くなる一方、多すぎると、樹脂組成物(その成形体)が日本バイオプラスチック協会による「グリーンプラ」又は「バイオマスプラ」識別表示制度の認証が得られ難くなることがある。
この理由は定かではないが、上述のように、セルロースエステル中でアクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂が微細に分散されるためと考えられるためである。
特に、相溶化剤としてアクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を配合した場合、当該共重合体(その重合成分としてのグリシジル化合物)に含まれるエポキシ基とセルロースエステルに含まれる水酸基とが結合し、この結合により架橋構造を形成すると共に、当該共重合体に含まれるアクリロニトリル・スチレンポリマー部位がアクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂と相溶すると考えられ、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体含有樹脂がセルロースエステルにより微細に分散されると考えられることから、得られる樹脂成形体の透明性が発現し易くなる。
ポリカーボネートは、特に限定されるものではなく、例えば、繰り返し単位として、(−O−R−OCO−)を有するものが挙げられる。なお、Rは、ジフェニルプロパン、P−キシレンなどが挙げられる。−O−R−Oは、ジオキシ化合物であれば特に限定されるものではない。
ポリカーボネートとして具体的には、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート、ビスフェノールS型ポリカーボネート、ビフェニル型ポリカーボネート等の、芳香族ポリカーボネートが挙げられる。
ポリカーボネートは、シリコーンや、ウンデカ酸アミドとの共重合体であってもよい。
ポリカーボネートの重量平均分子量が5000未満の場合、流動性が過剰となり加工性が低下する場合があり、ポリカーボネートの重量平均分子量が30000を超える場合には流動性が不足して加工性が低下する場合がある。
この含有量が、少なすぎると、樹脂成形体の荷重たわみ温度(熱変形温度HDT: Heat Deflection Temperature、)が低下し易くなる一方、多すぎると、樹脂組成物(その成形体)が日本バイオプラスチック協会による「グリーンプラ」又は「バイオマスプラ」識別表示制度の認証が得られ難くなることがある。
相溶化剤としては、アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体が適用される。
アクリロニトリル・スチレンポリマーは、単量体としてのアクリロニトリルとスチレンとの共重合体(例えば、重合比:アクリロニトリル/スチレン=10/100以上100/10以下)である。
グリシジル化合物としては、例えば、グリシジル基を持つ単量体(例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられ、好適にはグリシジルメタクリレート)が挙げられ、グリシジル基を持つ単量体と、メタクリレート、アクリレート、アルケン(例えばエチレン等)等の他の単量体との共重合体からなるポリマーも挙げられる。
この含有量が、0.1phr未満であると、樹脂成形体の寸法安定性が実現され難くなったり、樹脂組成物の成形性が低下し易くなることがあり、また、樹脂成形体の光沢が発現し易くなることがある。なお、相溶化剤としてのアクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体の含有量がある程度多くなると、セルロースエステルとの架橋が強くなり過ぎて、脆化し易くなり、柔軟な構造が作用して得られる樹脂成形体の引張強さが低下する傾向があるため、引張強さを考慮した用途に樹脂成形体を使用する場合には、20phr以下で含有することがよい。
例えば、ポリカーボネートを含ませる場合、その含有量が相対的に多い樹脂組成物と少ない樹脂組成物とについて、上記他の成分としてポリカーボネートを多く含む相溶化剤を使用するときには、ポリカーボネートの含有量が相対的に多い樹脂組成物よりも相対的に少ない樹脂組成物に対して、相溶化剤をより多く含有するよう調整することがよい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、効果を損なわない範囲で上記各成分の他、その他の成分を含んでいてもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、難燃性を付与する目的で、難燃剤を含んでもよい。
難燃剤としては、例えば、リン系、シリコーン系、含窒素系、硫酸系、無機水酸化物系等の難燃剤が挙げられる。
リン系難燃剤としては、縮合リン酸エステル、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アルミニウム、ピロリン酸メラミン等が挙げられる。
シリコーン系難燃剤としては、ジメチルシロキサン、ナノシリカ、シリコーン変性ポリカーボネート等が挙げられる。
含窒素系難燃剤としては、メラミン化合物、トリアジン化合物等が挙げられる。
硫酸系難燃剤としては、硫酸メラミン、硫酸グアニジン等が挙げられる。
無機水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、モンモリロナイト等が挙げられる。
リン系難燃剤の市販品としては、大八化学工業社製のPX−200、PX−202、CR−741、CE−733S、TPP、ブーテンハイム製のTERRAJU C80、クラリアント製のEXOLIT AP422、EXOLIT OP930等が挙げられる。
シリコーン系難燃剤の市販品としては、東レダウシリコーン製のDC4−7081等が挙げられる。
含窒素系難燃剤の市販品としては、ADEKA製のFP2200等が挙げられる。
硫酸系難燃剤の市販品としては、三和ケミカル製のアピノン901、下関三井化学製のピロリンサンメラミン、ADEKA製のFP2100等が挙げられる。
無機水酸化物系難燃剤の市販品としては、堺化学工業製のMGZ3、MGZ300、日本軽金属製B103ST等が挙げられる。
この含有量が、少なすぎると、樹脂成形体に難燃性が発現し難くなる一方、多すぎると、樹脂組成物の成形性が低下することがある。
このリン酸エステルを上記範囲で配合することにより、得られる樹脂成形体の機械的強度がより向上する。
縮合リン酸エステルとしては、特に、1,3−フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート(大八化学工業社製のPX−200)がよい。この1,3−フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート(大八化学工業社製のPX−200)は、常温(例えば25℃)で固体の化合物で、その製品はパウダー状(粉状)で、押出機成形時のホッパー(投入部)への投入の際、取り扱い性(ハンドリング性)に優れる。なお、これ以外のリン酸エステルは、加温液中ポンプが必要となる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、イオン価数IからIIIまでの元素を単独又は2種以上含有する無機化合物(以下、単に無機化合物と称する)を含んでもよい。
無機化合物を構成するイオン価数IからIIIまでの元素としては、Li,Na,K、Mg、Ca、Ba、Ni、Zn、Fe、Sn、Pb、Mn、Al、Cr等が挙げられる。 これらの元素を単独又は2種以上含有する無機化合物は、セルロースエステルから発生する酸を補足する作用が発現されるものと推測される。
無機化合物として具体的には、その他、例えば、タルクや受酸剤が代表的なものとして挙げられるが、タルク、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ウオスライト、ゼオライト、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
その中でも、無機化合物としては、タルクとハイドロタルサイトが特によい。
無機化合物を上記範囲で含有することにより、得られる樹脂成形体の寸法安定性が向上し易くなる。
その他の成分としては、例えば、難燃助剤、ドリップ防止剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)等が挙げられる。
その他成分は、樹脂組成物中に、例えば、0phr以上10phr以下であることがよく、0phr以上5phr以下であることがより望ましい。ここで、「0phr」とはその他の成分を含まない形態を意味する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分を溶融混練することにより製造される。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形体は、上記本実施形態に係る樹脂組成物を含んで構成される。具体的には、本実施形態に係る樹脂成形体は、上記本実施形態に係る樹脂組成物を成形することにより得られる。
なお、例えば射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーテイング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などの成形方法により本実施形態に係る樹脂組成物を成形し、本実施形態に係る樹脂成形体が得られる。
この成形温度が低すぎると、成形性が悪化する傾向があり、高すぎると、得られる樹脂成形体の機械的特性(特に伸び)が低下し、硬く脆くなる傾向がある。
ここで、ポリカーボネートを含む場合であっても、当該ポリカーボネートは本来240℃以上の成形温度が必要であるが、相溶化剤としてアクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を配合した場合、上記範囲の成形温度での成形が実現される。
特に、本実施形態に係る樹脂成形体がポリカーボネート不配合のときなど透明性を有する場合には、プラテンカバー等の透明性を必要とする透明部品に好適に適用され得る。
図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作するよう開閉自在となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりする。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
表1〜表9に従った成分(数量の単位は「phr」)を2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)にて、シリンダ温度210℃で混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを、射出成型機(東芝機械社製、製品名「NEX500」)を用いてシリンダ温度210℃、金型温度50℃で射出成型し、長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片(ISO527引張試験、ISO178曲げ試験に対応、試験部厚さ4mm、幅10mm)と、UL−94におけるVテスト用UL試験片(厚さ:0.8mm、1.6mm)を成形した。
(植物度)
各例で使用した樹脂組成物について、植物度を下記式により算出した。
式:植物度=セルロースエステル質量×(セルロース質量/セルロースエステル質量)/全質量
得られた樹脂組成物のペレットをプレス成型機(東洋精機製 ファインラボプレス M−1)により成形し、厚み100μmの試験用シートを作製した。
その試験用シートの光透過率を、紫外・可視光分光光度計(島津製作所製UV−1800)により測定し、透明性を評価した。
なお、測定波長は550nmとした。
また、表中、「−」は測定不可を示している。
(光沢)
得られた試験片を目視し、光沢の有無について調べた。
−UL−V試験−
Vテスト用UL試験片を用い、UL−94HB試験に規定の方法に準拠して、ULチャンバ(東洋精機製)にて、UL−Vテストを実施した。結果の表示は、難燃性が高い方から順にV−0、V−1、V−2、HBであり、HBより劣る場合、即ち試験片が延焼してしまった場合を「failure」と示した。
なお、射出成形できず、試験片を作製できなかったものは、実質上生産不可能という理由から、検討を中止した。
−引張り強さ、伸び−
長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片を用い、ISO527に準拠して、評価装置(島津製作所製、精密万能試験機オートグラフAG−IS 5kN)にて、引張り強さ、及び伸びについて測定した。
長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片にノッチ加工を施し、これを用い、JIS−K7111(2006年)に準拠して、評価装置(東洋精機製DG−UB2)にて、シャルピー衝撃試験より耐衝撃性を測定した。
長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片を用い、ISO178曲げ試験に準拠して、HDT測定装置(東洋精機社製、HDT−3)を用にて、1.8MPaの荷重における荷重たわみ温度(℃)を測定した。
−湿熱試験後の耐衝撃性−
長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片に対して、次のようにして湿熱試験を行った後、上記同様にして耐衝撃性を測定した。
湿熱試験は、湿熱試験機(THN042PA;ADVANTEC製)にて65℃×85%×400時間の条件で行った。
長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片に対して、上記湿熱試験を行う前後で、ダンベル試験片のTD方向(幅方向)の寸法変化(湿熱試験前/湿熱試験後)を調べた。但し、寸法安定性については、実施例1〜61、比較例1〜5について行った。
長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片を用い、ISO527に準拠して、評価装置(島津製作所製、精密万能試験機オートグラフAG−IS 5kN)にて、マシンダイレクション方向における引張り強さ及びトラバースダイレクション方向における曲げ強さについて測定した。
但し、ウェルド強度については、実施例38〜40、比較例6〜11について行った。
実施例1〜36では、比較例1、2、4,5に比べ、寸法安定性が向上していることがわかる。
また、ポリカーボネートを配合せず、セルロースエステルとアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂とを配合した実施例では、透明性が発現していることもわかる。
難燃剤として縮合リン酸エステルを含む実施例41〜44では、縮合リン酸エステルを含まない実施例39に比べ、伸びが向上していることがわかる。実施例45〜47と実施例39、実施例49〜51と実施例40についても同様の関係であることがわかる。
さらに、難燃剤として縮合リン酸エステルを含む実施例42では、難燃剤として縮合リン酸エステル以外を含む実施例44に比べ、伸びが大きく向上していることがわかる。実施例46と実施例48、実施例51と実施例55についても同様の関係であることがわかる。
特定の無機化合物を含む実施例53〜55では、特定の無機化合物を含まない実施例41に比べ、寸法安定性が向上していることがわかる。実施例56〜58と実施例45、実施例59〜61と実施例49についても同様の結果であることがわかる。
−樹脂−
・CAP482(イーストマンケミカル社製):セルロースアセテートプロピオネート
・TP360A40000−12(イーストマンケミカル社製):セルロースアセテートプロピオネートの可塑剤入り
・PA756S(チーメイ製社製):ABS樹脂
・スタイラックAS 783(旭化成ケミカル社製):AS樹脂
・パンライトTN7300(帝人化成社製):ポリカーボネート/ABS樹脂
−相溶化剤−
・モディパーA4400(日本油脂社製):アクリロニトリル・スチレンポリマーとエチレン・グリシジルメタクリレートポリマーとのグラフト共重合体
−難燃剤−
・PX−200(大八化学工業社製):芳香族縮合リン酸エステル化合物
・AP−422(クラリアント社製):ポリリン酸アンモニウム
−無機化合物−
・DHT−4A(協和化学製):ハイドロタルサイト
110 本体装置
120a、120b フロントカバー
136 用紙供給部
138 用紙排出部
142 プロセスカートリッジ
150、152 筐体
Claims (6)
- セルロースアセテートプロピオネートを50phr以上95phr以下と、
アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂を5phr以上50phr以下と、
難燃剤として縮合リン酸エステルを5phr以上40phr以下と、
アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上25phr以下と、を含む樹脂組成物(但し、phrとは、前記セルロースアセテートプロピオネートと、前記アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂とを全樹脂成分としたときの全樹脂成分100質量部に対する質量部を意味する。)。 - さらに、イオン価数IからIIIまでの元素を単独又は2種以上含有する無機化合物を0.1phr以上10phr以下含む請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上20phr以下含む請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- セルロースアセテートプロピオネートを50phr以上95phr以下と、
アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂を5phr以上50phr以下と、
難燃剤として縮合リン酸エステルを5phr以上40phr以下と、
アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上25phr以下と、を含む樹脂成形体(但し、phrとは、前記セルロースアセテートプロピオネートと、前記アクリロニトリル及びスチレンの共重合体を含有する樹脂とを全樹脂成分としたときの全樹脂成分100質量部に対する質量部を意味する。)。 - さらに、イオン価数IからIIIまでの元素を単独又は2種以上含有する無機化合物を0.1phr以上10phr以下含む請求項4に記載の樹脂成形体。
- 前記アクリロニトリル・スチレンポリマー及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上20phr以下含む請求項4又は請求項5に記載の樹脂成形体。
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