JP5481967B2 - 樹脂組成物、成形体、および樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

樹脂組成物、成形体、および樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂組成物、成形体、および樹脂組成物の製造方法に関する。
従来から、電気製品や電子・電気機器の部品には、ポリ乳酸系の樹脂材料を用いる検討がなされている。
具体的には、ポリ乳酸と特定の熱可塑性樹脂とグラフト共重合体とからなる樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、ポリ乳酸を主成分として含む樹脂と、充填剤としてのガラス繊維と、添加剤としてリン酸系難燃剤との混合物から構成され、前記樹脂としては前記主成分たるポリ乳酸以外にポリブチレンテレフタレートのみを含有する樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
更に、ポリ乳酸樹脂と、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも2種の難燃剤と、を含有してなる樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開2005−320409号公報 特許3971289号明細書 特開2004−190025号公報
本発明は、(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物を含有しない場合に比べ、高い流動性を有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
少なくとも、全固形分に対する含有量が50質量%以上である(A)ポリ乳酸と、(B)リン酸塩と、(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物と、を含む樹脂組成物である。
請求項2に係る発明は、
前記(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物が、縮合リン酸エステル系化合物およびホスファゼン化合物から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の樹脂組成物である。
請求項3に係る発明は、
前記(B)リン酸塩が、ポリリン酸アンモニウムである請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物である。
請求項4に係る発明は、
前記(B)リン酸塩の含有量が9.1質量%以上50質量%以下であり、前記(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物の含有量が0.6質量%以上40質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項5に係る発明は、
前記(B)リン酸塩の含有量が9.1質量%以上30.6質量%以下であり、前記(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物の含有量が0.6質量%以上18.3質量%以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項6に係る発明は、
樹脂として前記(A)ポリ乳酸以外の樹脂を含まない請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項7に係る発明は、
前記(A)ポリ乳酸の末端基と反応し得る官能基を2つ以上持つ(D)多官能化合物を0.1質量%以上3質量%以下含み、且つ(E)シロキサン系化合物を0.5質量%以上10質量%以下含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項に係る発明は、
少なくとも、全固形分に対する含有量が50質量%以上である(A)ポリ乳酸と(B)リン酸塩と(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物とを、前記(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物の該融点以上の温度で混練する樹脂組成物の製造方法である。
請求項に係る発明は、
樹脂として前記(A)ポリ乳酸以外の樹脂を含まない請求項に記載の樹脂組成物の製造方法である。
請求項10に係る発明は、
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られた成形体。
請求項1に係る発明によれば、(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物を含有しない場合に比べ、高い流動性が得られる。
請求項2に係る発明によれば、(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物が縮合リン酸エステル系化合物およびホスファゼン化合物でない場合に比べ、高い流動性が得られる。
請求項3に係る発明によれば、(B)リン酸塩がポリリン酸アンモニウムでない場合に比べ、高い難燃性が得られる。
請求項に係る発明によれば、混練を(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物の該融点未満の温度で行う場合に比べ、高い難燃性を有する樹脂組成物が容易に製造される。
請求項10に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、成形の精度が高い成形体が提供される。
本実施形態の成形体を備える電子・電気機器の部品の一例を示す模式図である。
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
≪樹脂組成物≫
本実施形態に係る樹脂組成物は、少なくとも、全固形分に対する含有量が50質量%以上である(A)ポリ乳酸と、(B)リン酸塩と、(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物と、を含むことを特徴とする。
このポリ乳酸を主原料とする樹脂組成物において、高い流動性が実現される理由は定かではないが、以下のように推察される。従来、ポリ乳酸を主原料としリン酸塩を添加した樹脂組成物では、成形体を作製する際のポリ乳酸の成形温度の付近ではリン酸塩が分解し、ポリ乳酸の分解が促進されていたものと考えられ、成形が安定しなかった。これに対し本実施形態では、(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物の可塑効果により低温で成型し得るものとなり、結果としてポリ乳酸の分解が抑制され、高い流動性が得られるものと推察される。
以下、本実施形態に係る樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
<(A)ポリ乳酸>
ポリ乳酸は、植物由来であり、環境負荷の低減、具体的にはCOの排出量削減、石油使用量の削減効果がある。
ポリ乳酸としては、乳酸の縮合体であれば、特に限定されるものではなく、L乳酸であっても、D乳酸であっても、それらが共重合やブレンドにより交じり合ったものでもよい。
ポリ乳酸は、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ユニチカ(株)製のテラマックTE4000、TE7000、TE8000、三井化学(株)製のレイシアH100等が挙げられる。
ポリ乳酸は1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
尚、ポリ乳酸は、乳酸モノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合し得る上記他のモノマーとしては、例えば、ジカルボン酸類として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−ジシクロヘキサン−ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、およびこれらのエステル形成誘導体等が挙げられる。また、ジオール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジ−、トリ−、テトラ−プロピレングリコール等が挙げられる。上記他のモノマーは、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
ポリ乳酸の分子量も特に限定されるものではないが、重量平均分子量で30,000以上200,000以下が望ましく、50,000以上150,000以下がより望ましい。
ポリ乳酸の含有量(2種以上併用する場合には総含有量)には特に限定はないが、樹脂組成物の全量に対し、50質量%以上90質量%以下であることが望ましく、50質量%以上80質量%以下であることがより望ましい。
<(B)リン酸塩>
リン酸塩としては、特に制限はなく、有機リン酸塩、無機リン酸塩のいずれも挙げられる。
有機リン酸塩としては、リン酸アンモニウム、リン酸メラミン、リン酸グアジニン等が挙げられる。無機リン酸塩としては、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸マンガン等が挙げられる。これらの中でも、有機リン酸塩、特にポリリン酸アンモニウムが望ましい。
リン酸塩は1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
リン酸塩は、1%分解温度が200℃以上のものが望ましく、210℃以上400℃以下がより望ましく、250℃以上350℃以下がさらに望ましい。
尚、上記分解温度の測定は以下の方法により行われ本明細書に記載の数値は該方法により行われたものである。乾燥したリン酸塩について、熱重量分析(TG)測定を行い、initial温度(15℃以上35℃以下)から600℃以上まで加熱し、initial温度におけるリン酸塩の質量に対し、1%の質量減少が見られる温度を1%分解温度として求める。
リン酸塩は、リン(P)の含有量が15質量%以上40質量%以下であることが望ましく、20質量%以上35質量%以下であることがより望ましい。
リン酸塩の含有量(2種以上併用する場合には総含有量)には特に限定はないが、樹脂組成物の全量に対し、10質量%以上50質量%以下であることが望ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより望ましい。
<(C)リン含有化合物>
本実施形態に用いられるリン含有化合物は、融点が110℃以上200℃以下であることおよびリンを含有することを要件とする。
リン含有化合物の融点は、更に190℃以下が望ましい。
尚、融点の測定は以下の方法により行われ、本明細書に記載の数値は該方法により行われたものである。示差走査熱量計(セイコー電子工業社製:DSC−20)を用い、室温(25℃)から150℃まで昇温速度10℃/分の条件下で測定することにより求められる。
リン含有化合物としては、特に制限はなく、例えば縮合リン酸エステル系化合物、ホスファゼン化合物、リン酸エステル化合物、亜リン酸エステル系化合物等が挙げられる。中でも、縮合リン酸エステル系化合物またはホスファゼン化合物が特に好適に用いられる。
縮合リン酸エステル系化合物の具体例としては、PX202、CR741(以上、大八化学株式会社製)、SP−703、SP−670(以上、四国化成株式会社製)等が挙げられる。ホスファゼン化合物の具体例としては、FP−110、200(以上、伏見製薬工業株式会社製)、SPS−100、SPH−100(以上、大塚化学工業製)等が挙げられる。
リン含有化合物は1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
リン含有化合物の含有量(2種以上併用する場合には総含有量)には特に限定はないが、樹脂組成物の全量に対し、5質量%以上40質量%以下であることが望ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより望ましい。
また、(B)リン酸塩と(C)リン含有化合物との混合比率((B)の量:(C)の量)は、質量比率で50:50乃至95:5であることが望ましく、60:40乃至90:10であることがより望ましい。
<その他成分>
・繊維
本実施形態に係る樹脂組成物には、更に繊維を含んでもよい。
繊維としては、特に制限はないが、ガラス繊維が好適に用いられ、更に該ガラス繊維は表面がエポキシ系処理剤によって表面処理されてなるものがより望ましい。
ガラス繊維を表面処理するエポキシ系処理剤としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ処理剤、フェノール型エポキシ処理剤、シロキサン変性型エポキシ処理剤等が挙げられる。
このエポキシ系処理剤による処理量は、例えば、0.01%以上5%以下が望ましく、0.1%以上3%以下がより望ましい。
ガラス繊維の径は、6μm以上15μm以下が望ましく、8μm以上10μm以下がより望ましい。
ガラス繊維の繊維長は、1mm以上4mm以下であることが望ましく、2mm以上3mm以下がより望ましい。
ガラス繊維の含有量(2種以上併用する場合には総含有量)には特に限定はないが、樹脂組成物の全量に対し、3質量%以上20質量%以下であることが望ましく、4質量%以上15質量%以下であることがより望ましく、5質量%以上10質量%以下であることが特に望ましい。
・多官能化合物
本実施形態に係る樹脂組成物には、更にポリ乳酸の末端基と反応し得る多官能化合物を含んでもよい。多官能化合物は、ポリ乳酸の末端基(例えば、カルボキシル基、水酸基等)と反応する官能基を2つ以上持つ化合物である。
ポリ乳酸の末端基と反応する官能基を持つ多官能化合物としては、例えば、カルボジイミド化合物、ジカルボン酸化合物、ジオール化合物、ヒドロキシカルボン酸化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。
カルボジイミド化合物としては、例えば、脂肪族モノカルボジイミド、脂肪族ジカルボジイミド、芳香族モノカルボジイミド、芳香族ジカルボジイミド等が挙げられる。
ジカルボン酸化合物としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノールA等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸化合物としては、例えば、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、6−ヒドロキシヘキサン酸等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ、ノボラック型エポキシ等が挙げられる。
これらの中でも、多官能化合物としては、2官能化合物(2つの官能基を持つ多官能化合物)、特に、2官能のカルボジイミド化合物が望ましい。
多官能化合物は1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
多官能化合物の含有量(2種以上併用する場合には総含有量)には特に限定はないが、樹脂組成物の全量に対し、0.1質量%以上3質量%以下であることが望ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることがより望ましく、1質量%以上1.5質量%以下であることが特に望ましい。
・シロキサン系化合物
本実施形態に係る樹脂組成物は、シロキサン構造を持つ化合物(シロキサン系化合物)を含有してもよい。
シロキサン構造を持つ化合物は、シロキサン構造(Si−0)を分子構造中に有する化合物であれば、特に制限はないが、例えば、ポリジメチルシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
シロキサン構造を持つ化合物の含有量には、特に限定はないが、耐熱性、難燃性の観点からは、樹脂組成物の全量に対し、0.5質量%以上10質量%以下であることが望ましく、1質量%以上7質量%以下であることがより望ましい。
・その他充填剤
本実施形態に係る樹脂組成物は、その他充填剤を含有してもよい。
その他充填剤としては、例えば、クレイ、タルク、マイカ、モンモリナイト等が挙げられる。また、その他充填剤としては、メラミン含有粒子、フォスフェート粒子、酸化チタン等も挙げられる。
その他充填剤は1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
充填剤の粒子径は、数平均粒子径で0.01μm以上5μm以下が望ましく、0.05μm以上2μm以下がより望ましい。
その他充填剤としては、合成したものを用いてもよいし市販品を用いてもよい。また、天然のものを用いてもよい。
クレイの市販品としては、ナノコア社製のナノクレイMX等が挙げられる。
タルクの市販品としては、日本タルク社製のマイクロエースP8等が挙げられる。
マイカの市販品としては、日本マイカ製作所製のマイカパウダー、山口雲母工業SJ−005、SYA21−RS、等が挙げられる。
モンモリナイトの市販品としては、クニミネ工業社のクニピアF等が挙げられる。
なお、例えば、その他充填剤は、ポリ乳酸の市販品に予め配合されているものを適用してもよい。
その他充填剤の含有量には、特に限定はないが、耐熱性、難燃性の観点からは、樹脂組成物の全量に対し、1質量%以上50質量%以下であることが望ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより望ましい。
・その他難燃剤
また、本実施形態に係る樹脂組成物には、その他難燃剤を含有してもよい。
その他難燃剤としては、シリコーン系難燃剤、窒素系難燃剤、無機水酸化物系難燃剤等が挙げられる。
その他難燃剤は1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他難燃剤としては、合成したものを用いてもよいし市販品を用いてもよい。
リン系難燃剤の市販品としては、大八化学製のPX−200、PX−202、ブーテンハイム製のTERRAJU C80、クラリアント製のEXOLIT AP422、EXOLIT OP930、等が挙げられる。
シリコーン系難燃剤の市販品としては、東レダウシリコーン製のDC4−7081等が挙げられる。
窒素系難燃剤の市販品としては、三和ケミカル製のアピノン901、下関三井化学製のピロリン酸メラミン、ADEKA製のFP2100、FP2200等が挙げられる。
無機水酸化物系難燃剤の市販品としては、堺化学工業製MGZ300、日本軽金属製B103ST、等が挙げられる。
その他難燃剤の含有量には、特に限定はないが、難燃性と耐衝撃強度の観点から、樹脂組成物の全量に対し、2質量%以上20質量%以下であることが望ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより望ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物は、離型剤、耐候剤、耐光剤、着色剤等を含有してもよい。
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記(A)乃至(C)の成分と、必要に応じてその他成分とを、混練して作製される。
前記混練は、例えば、2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)、簡易ニーダー(東洋精機製、ラボプラストミル)等の公知の混練装置を用いて行う。
ここで、混練の温度条件(シリンダ温度条件)としては、リン含有化合物が確実に溶解することにより、得られる樹脂組成物の難燃性が向上する観点から、(C)リン含有化合物の融点以上の温度で行われることが望ましい。また、(B)リン酸塩の融点以上の温度であることが望ましい。具体的には、150℃以上190℃以下が望ましく、160℃以上180℃以下がより望ましい。
≪成形体≫
本実施形態の成形体は、上述した本実施形態の樹脂組成物を成形することにより得られる。例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形などの成形方法により成形して、本実施形態に係る成形体が得られる。本実施形態においては、本実施形態の樹脂組成物を射出成形して得られたものであることが望ましい。
前記射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行う。
この際、シリンダ温度としては、160℃以上240℃以下とすることが望ましく、170℃以上210℃以下とすることがより望ましい。
また、金型温度としては、30℃以上120℃以下とすることが望ましく、30℃以上60℃以下とすることがより望ましい。
また、本実施形態の成形体中における、(A)ポリ乳酸の結晶化度は20%以上が望ましい。
ここで、結晶化度は、密度勾配管法により測定した値を指す。具体的には、結晶化度100%と0%の標準試験片を、2種類のアルコールの混合系で作った密度勾配管中に浮遊させる。これら2種類の標準試験片の浮遊位置から密度が決められ、密度と結晶化度の検量線を作成する。次に、この密度勾配管中に、結晶化度を測定したいサンプルの試験片(標準試験片と同体積のもの)を浮遊させ、浮遊位置から密度を求め、検量線から結晶化度を求めた値を指す。
前述の本実施形態の成形体は、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。電子・電気機器の部品は、複雑な形状を有しているものが多いが、本実施形態の樹脂成形体によれば、この要求特性を十分満足するものが提供される。
図1は、本実施形態の成形体を備える電子・電気機器の部品の一例を示す模式図である。本図は、本実施形態の成形体を備える電子・電気機器の部品の一例である画像形成装置を、前側から見た外観斜視図である。
図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作するよう開閉自在となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりする。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件が操作者からの操作によって入力される操作パネル130、および、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を搬送する自動原稿搬送装置134を備えている。更に、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置および制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱自在なプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって行われる。
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーが補充される。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙供給部136が備えられており、ここからも用紙が供給される。
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に接触する2個の定着ロールで挟まれる領域に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙供給部136が設けられている側と反対側に用紙排出部138が複数備えられており、これらの用紙排出部に画像形成後の用紙が排出される。
画像形成装置100において、例えば、フロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、および筐体152などの事務機器用部材として、本実施形態に係る成形体が好適に用いられるものである。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、以下に示す実施例2、5、8、10、および12は、本発明に対する参考例として示すものである。
〔実施例1乃至実施例11、比較例1乃至比較例2〕
<樹脂組成物の作製>
表1に示す材料および組成の原材料を2軸混練装置(TEM58SS、東芝機械社製)に投入し、シリンダ温度180℃で混練して樹脂組成物(コンパウンド)を得た。
<成形体(試験片)の作製>
次に、得られた樹脂組成物を用いて射出成形装置(NEX150E、日精樹脂社製)にて、下記表1に示す成形温度(シリンダ温度)、且つ金型温度120℃にて射出成形を行い、ISO多目的試験片(ISO527引張試験及びISO178曲げ試験に対応、試験部厚さ4mm、幅10mm)、及びUL94におけるVテスト用UL試験片(厚さ1.6mm)を得た。
尚、上記表1における各材料は以下のとおりである。
(ポリ乳酸)
A1:テラマックTE7000/ユニチカ社製(重量平均分子量10万)
A2:テラマックTE4000/ユニチカ社製(重量平均分子量6万)
(リン酸塩)
B1:テラージュC80/ブーデンハイム社製(ポリリン酸アンモニウム)
B2:クラリアントAP422/クラリアント社製(ポリリン酸アンモニウム)
B3:テラージュC60/ブーデンハイム社製(ポリリン酸アンモニウム)
B4:クラリアントAP462/クラリアント社製(ポリリン酸アンモニウム)
B5:MPP−B/三和ケミカル社製(ポリリン酸メラミン)
(リン含有化合物)
C1:PX200/大八化学社製
(縮合リン酸エステル系化合物、融点95℃)
C2:SP−703/四国化成社製
(縮合リン酸エステル系化合物、融点180℃)
C3:ラビトルFP−110/伏見製薬株式会社製
(ホスファゼン化合物、融点110℃)
C4:アデカ・スタブPEP−4C/旭電化社製
(亜リン酸エステル系化合物、融点235℃)
(繊維) :GF/オーウェンスコーニング製
(多官能化合物) :カルボジイミド(LA1)/日清紡製
(シロキサン系化合物):SX005/三菱レイヨン製
(ドリップ防止剤) :PTFE/ダイキン工業製
<測定・評価>
得られた試験片を用いて、下記各測定・評価を行った。表2に結果を示す。
(流動性)
上記実施例および比較例で得られた樹脂組成物(コンパウンド)を、幅10mm、厚さ2mmのバーフロー状のキャビティをもつ金型を用いて射出成形装置(NEX150E、日精樹脂社製)にて、下記表1に示す成形温度(シリンダ温度)、且つ金型温度120℃、射出圧100MPaにて射出成形を行い、以下の基準により評価した。
○ : 長さが250mm以上
△ : 長さが100mm以上250mm未満
× : 長さが100mm未満
(UL−Vテスト)
UL−94におけるVテスト用UL試験片(厚さ1.6mm)を用い、UL−94の方法でUL−Vテストを実施した。UL−Vテストの基準は以下のとおりである。
V−0 : 最も難燃性が高い
V−1 : V−0に次いで難燃性が高い
V−2 : V−1に次いで難燃性が高い
V−not: V−2よりも難燃性に劣る
(シャルピー耐衝撃強度の測定)
ISO多目的ダンベル試験片(ISO527引張試験、ISO178曲げ試験に対応、試験部厚さ4mm、幅10mm)を加工して、ISO179に従い耐衝撃試験装置(東洋精機製、DG−5)にてシャルピー耐衝撃強度を測定した。
シャルピー耐衝撃強度は、数値が大きい程、耐衝撃性に優れていることを示す。

100 画像形成装置
110 本体装置
120a、120b フロントカバー
136 用紙供給部
138 用紙排出部
142 プロセスカートリッジ
150、152 筐体

Claims (10)

  1. 少なくとも、全固形分に対する含有量が50質量%以上である(A)ポリ乳酸と、(B)リン酸塩と、(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物と、を含む樹脂組成物。
  2. 前記(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物が、縮合リン酸エステル系化合物およびホスファゼン化合物から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記(B)リン酸塩が、ポリリン酸アンモニウムである請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記(B)リン酸塩の含有量が9.1質量%以上50質量%以下であり、前記(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物の含有量が0.6質量%以上40質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記(B)リン酸塩の含有量が9.1質量%以上30.6質量%以下であり、前記(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物の含有量が0.6質量%以上18.3質量%以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 樹脂として前記(A)ポリ乳酸以外の樹脂を含まない請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記(A)ポリ乳酸の末端基と反応し得る官能基を2つ以上持つ(D)多官能化合物を0.1質量%以上3質量%以下含み、且つ(E)シロキサン系化合物を0.5質量%以上10質量%以下含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 少なくとも、全固形分に対する含有量が50質量%以上である(A)ポリ乳酸と(B)リン酸塩と(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物とを、前記(C)融点が110℃以上200℃以下であるリン含有化合物の該融点以上の温度で混練する樹脂組成物の製造方法。
  9. 樹脂として前記(A)ポリ乳酸以外の樹脂を含まない請求項に記載の樹脂組成物の製造方法。
  10. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られた成形体。
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