JP2016105472A - 太陽電池モジュール用シート及び太陽電池モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】封止材との接着強度、光耐候性、反射性、生産性に優れた太陽電池モジュール用シートを提供する。【解決手段】1枚のみの基材フィルムとC層を有するシートであり、C層はアクリル樹脂を主成分としシート片面に配置され、基材フィルムはA層とB層を有し、波長800nmの光線反射率が50%以上で、A層はポリエステル樹脂を主成分とし白色顔料を5.0〜25質量%含み、厚さ5μm以上で、シート他方片面に配置され、B層はポリエステル樹脂を主成分とし白色顔料を1.0〜5.0質量%含み、厚さがシート全体の厚さの70%以上である太陽電池モジュール用シート。【選択図】図1

Description

本発明は、長期にわたる過酷な屋外環境下での使用に耐え得る対封止材接着力や耐環境性に優れ、なおかつ発電効率に寄与する光反射特性や意匠性にも優れた太陽電池モジュール用部材である太陽電池モジュール用シートおよびそれを用いた太陽電池モジュールに関するものである。
近年、石油、石炭をはじめとする化石燃料の枯渇が危ぶまれ、これらの化石燃料により得られる代替エネルギーを確保するための開発が急務とされている。このため原子力発電、水力発電、風力発電、太陽光発電等の種々の方法が研究され、実際の利用に及んでいる。
太陽光エネルギーを電気エネルギーに直接変換することが可能な太陽光発電は、半永久的で無公害の新たなエネルギー源として実用化されつつあり、実際に利用される上での価格性能比の向上が目覚しく、クリーンなエネルギー源として非常に期待が高い。
太陽光発電に使用される太陽電池は、太陽光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換する太陽光発電システムの心臓部を構成するものであり、シリコンなどに代表される半導体からできている。その構造としては、太陽電池素子を直列、並列に配線し、20年程度の長期間にわたって素子を保護するために種々のパッケージングが施され、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットは太陽電池モジュールと呼ばれ、一般に太陽光が当たる面をガラスで覆い、熱可塑性樹脂からなる封止材で間隙を埋め、裏面を太陽電池バックシートなどと呼ばれる樹脂製の太陽電池モジュール用シートで保護した構成となっている。熱可塑性樹脂からなる封止材としては、透明性が高く、耐湿性にも優れているという理由でエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVA樹脂)が用いられることが多い。一方、太陽電池モジュール用シートには、機械強度、耐候性、耐熱性、耐水性、耐化学薬品性、光反射性、水蒸気遮断性、EVA樹脂に代表される封止材との熱接着性、意匠性、最外層の端子ボックス取り付け用シリコーン系樹脂接着剤との接着力といった特性が要求される。
従来から用いられている太陽電池モジュール用シートとしては、耐候性に優れる白色のポリフッ化ビニルフィルム(デュポン(株)、商品名:“テドラー”(登録商標))を両表層にポリウレタン系樹脂に代表される接着剤で貼り合わせた太陽電池モジュール用シートが例示でき、該フィルムでポリエステルフィルムをサンドイッチした積層構成の太陽電池モジュール用シートは当該用途で幅広く用いられている。また、耐候性、ガスバリア性に優れたポリエステル系フィルムを接着剤で貼り合わせた構成も例示できる(特許文献1)。一般的にポリエチレンテレフタレート樹脂に代表されるポリエステルフィルムと封止材用樹脂として最も汎用的に用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂との接着性はあまり高くない。そこで、接着強度向上の対策としてエチレン−酢酸ビニル共重合体系封止材層との接着性を改善するために、アクリル樹脂やエポキシ樹脂を構成成分とする易接着コート層を設けたものが提案されている(特許文献2)。
また、汎用的なポリエステル樹脂フィルムは加水分解により分子量が低下し、また、脆化が進行して機械物性などが低下するため、その改善、すなわち耐湿熱性の向上が求められている。そのため、ポリエステル樹脂の加水分解を抑制すべく様々な検討がなされてきた。例えば、二軸配向ポリエステルフィルムについては、フィルムを高IV(高固有粘度)とし、かつ面配向度を制御することで、耐湿熱性を向上させるといった検討が行われている(特許文献3)。
一方で、太陽電池モジュール用シート用途へ適用するためには、耐湿熱性以外の特性、特に耐紫外線性や光線反射性なども付与して高機能化することが望まれている。そのためにまた、2成分以上のポリエステルや、他の成分を混合し、より高機能化させるといった検討が行われている(例えば、特許文献4)。
また、太陽電池モジュールの意匠性の観点から、太陽電池モジュールを屋根の上に設置した際の太陽電池モジュール外観を良化させる目的で、太陽電池モジュールの発電層の隙間から見える太陽電池モジュール用シート部分を白色以外、特に黒色に着色したシートも検討されている(例えば、特許文献5)。
特開2002−026354号公報 特開2006−332091号公報 特開2007−70430号公報 国際公開第2010/140611号 特開2013−161817号公報
しかしながら、アクリル樹脂やエポキシ樹脂を構成成分とする易接着コート層を設けた場合、初期の対封止材層接着力は良好であっても、熱、湿度さらには紫外線などを環境ストレスに曝された場合には、易接着コート層と封止材層との界面接着力が低下し、極端な場合には層間で剥離を生じることもある。さらに、シリコンセル間を透過する光に曝されるため、太陽電池モジュール用シートが光劣化し、黄変などの不具合を生じることもある。
また、太陽電池モジュール用シートに関する要求特性のうち、長期に亘って安定な保護機能を保持するために重要な耐候性についてはポリエステルフィルム、特にエチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とするポリエステルフィルムの高機能化のために他の成分(例えば紫外線吸収剤や、無機粒子など)を混合させると、混練時や使用時に加水分解などによる劣化が進行する、あるいは添加する成分の機能は発現されるものの、耐湿熱性が低下するといった問題があった。
前記のポリフッ化ビニルフィルムをポリエステルフィルムに接着剤で貼り合わせた構成の太陽電池モジュール裏面封止シートにおいては、封止材層との接着力や両表面層の耐候性には優れ、このような課題はないが、高価である、接着剤層の湿熱劣化により剥離を生じる、あるいは、ポリフッ化ビニルフィルムの間に挟むポリエステルフィルムの特性によっては、長期に亘って熱、湿度に曝された場合、加水分解反応が進行し、機械強度の低下を招くなど十分な保護機能を維持することができない場合がある。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、太陽電池モジュール用シートとして必要とされる封止材との十分な接着強度、太陽電池モジュールの受光面側及び最裏面側からの光照射に対する耐候性、光反射特性、ならびに生産性に優れた太陽電池モジュール用シートを提供することである。
上記課題を解決するための本発明は、次の各構成を特徴とするものである。
(1)1枚のみの基材フィルム及びC層を有する太陽電池モジュール用シートであって、前記C層は、アクリル樹脂を主たる成分とし、太陽電池モジュール用シートの一方の最表面に配置され、前記基材フィルムは、A層及びB層を有し、波長800nmの光線反射率が50%以上であり、前記A層は、ポリエステル樹脂を主たる成分とし、A層の全成分100質量%中に白色顔料を5.0質量%以上25質量%以下含み、厚さが5μm以上であり、前記太陽電池モジュール用シートの他方の最表面に配置され、前記B層は、ポリエステル樹脂を主たる成分とし、B層の全成分100質量%中に白色顔料を1.0質量%以上5.0質量%未満含み、厚さが太陽電池モジュール用シート全体の70%以上を占めることを特徴とする、太陽電池モジュール用シート。
(2)前記C層が、白色以外の顔料を含むことを特徴とする、上記(1)に記載の太陽電池モジュール用シート。
(3)前記C層が、黒色顔料を含むことを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の太陽電池モジュール用シート。
(4)前記C層は、波長700−1000nmの範囲の分光透過率の平均が50%以上であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シート。
(5)前記太陽電池モジュール用シートから、縦20cm、横20cmのサイズに切り出したシートを、150℃で30分間加熱した際に、該シートの四隅の立ち上がりがいずれも30mm以下であることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シート。
(6)前記C層が、水酸基を有するアクリル樹脂、イソシアネート化合物、及び白色以外の顔料を含む組成物を用いて得られることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シート。
(7)前記白色以外の顔料として、黒色顔料を含むことを特徴とする、上記(6)に記載の太陽電池モジュール用シート。
(8)前記イソシアネート化合物として、イソシアネート基がブロック基で保護されたブロックイソシアネート化合物を含むことを特徴とする、上記(6)または(7)に記載の太陽電池モジュール用シート。
(9)前記C層が、水酸基を有するアクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、及び白色以外の顔料を含むことを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シート。
(10)前記白色以外の顔料として、黒色顔料を含むことを特徴とする、上記(9)に記載の太陽電池モジュール用シート。
(11)ISO2409(2013年版)の記載に従って測定したA層及びC層の表層凝集強度が、クラス0であることを特徴とする、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シート。
(12)上記(1)〜(11)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シートを有する太陽電池モジュールであって、前記太陽電池モジュール用シートのA層側の面およびC層側の面に、配線が存在することを特徴とする、太陽電池モジュール。
(13)上記(1)〜(11)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シートを有する太陽電池モジュールであって、前記太陽電池モジュール用シートのC層が、裏面側封止材と接することを特徴とする、太陽電池モジュール。
本発明によれば、長期にわたる過酷な屋外環境下での使用に耐え得る対封止材接着力を有し、光線反射特性、生産性、意匠性及び耐候性にも優れた太陽電池モジュール用シートが得られる。また、本発明の太陽電池モジュール用シートを用いれば、封止材と太陽電池モジュール用シートとの界面接着力、耐候性、発電特性及び長期に亘る太陽電池素子保護性能に優れた太陽電池モジュールが得られる。
本発明の太陽電池モジュール用シートの一例の概略図。 本発明の太陽電池モジュール用シートの一例の概略図。 本発明の太陽電池モジュールの概略図。
[太陽電池モジュール用シート]
本発明の太陽電池モジュール用シートは、1枚のみの基材フィルム及びC層を有する太陽電池モジュール用シートであって、前記C層は、アクリル樹脂を主たる成分とし、太陽電池モジュール用シートの一方の最表面に配置され、前記基材フィルムは、A層及びB層を有し、波長800nmの光線反射率が50%以上であり、前記A層は、ポリエステル樹脂を主たる成分とし、A層の全成分100質量%中に白色顔料を5.0質量%以上25質量%以下含み、厚さが5μm以上であり、前記太陽電池モジュール用シートの他方の最表面に配置され、前記B層は、ポリエステル樹脂を主たる成分とし、B層の全成分100質量%中に白色顔料を1.0質量%以上5.0質量%未満含み、厚さが太陽電池モジュール用シート全体の70%以上を占めることを特徴とする。
本発明の太陽電池モジュール用シートを実施形態に基づいて以下に説明する。
図1において、太陽電池モジュール用シート1は、A層30及びB層20からなる基材フィルム2、並びに、太陽電池モジュールを構成する際には封止材と貼り合されるC層11とから構成されており、基材フィルムとしては1枚のみからなる。
また、図2のように、太陽電池モジュール用シート1は、A層30、B層20およびD層40からなる基材フィルム2、並びに、太陽電池モジュールを構成する際に封止材と貼り合されるC層11から構成されていてもよい。
本発明の基材用フィルムは1枚のみからなるので、特許文献1等でみられる2枚以上の基材フィルムを貼り合わせて作成された基材フィルムで見られる構成フィルムの剥離の問題はなく、構成フィルム間の加熱収縮率差に起因するカール発生の懸念もなく好ましい。
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールは、図3に示すように、太陽光を受光するガラス等の受光面側保護基材5と、封止材6と、配線9で直列接続された太陽電池セル3と本発明の太陽電池モジュール用シート1とが重ねあわされて、真空ラミネートと呼ばれる加熱・圧着工程を経て一体化した後、配線9がモジュール裏面側外部に引き出されて、接着剤で取り付ける端子箱を通じて、電力が取り出される。なお、通常、長方形型の太陽電池モジュールの長辺、短辺はアルミ製に代表されるフレーム10が接着剤4を介して取り付けられて太陽電池モジュールとなる。
[基材フィルム]
本発明の太陽電池モジュール用シートを構成する基材フィルムとしては、機械強度、寸法安定性、熱安定性に優れ、比較的安価であるポリエステルフィルムを用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルムが例示できるが、中でも機械強度、寸法安定性、熱安定性や加工適性、耐候性付与の対象として優れていることからPETフィルムが特に好ましい。
本発明の太陽電池モジュール用シートに用いられるPETフィルム等のポリエステルフィルムは、耐加水分解性に優れるフィルム、すなわち耐加水分解性ポリエステルフィルムであることが好ましい。太陽電池モジュールが外気に直接さらされる環境下にて用いられ、裏側封止材との接着力の長期に亘る耐久性、太陽電池モジュール用シート構成内の各層界面(A層とB層間の界面、B層とC層間の界面)や本太陽電池モジュール用シートと接着される封止材との間の層間接着力の保持が重要であるが、かかる接着力を保持するためには基材フィルムを構成するポリエステル樹脂の湿熱劣化は小さい方が好ましいと考えられるからである。通常、ポリエステルフィルムはモノマーを縮合重合させたいわゆるポリマーを原料として製膜されるものであるが、モノマーとポリマーの中間に位置づけられるオリゴマーがPETフィルム100質量%中に1.5〜2質量%程度含まれている。これに対して耐加水分解性PETフィルムは、固相重合法で重合して得られるPET樹脂(環状三量体の含有量が該PET樹脂100質量%中に1.0質量%以下である。)を原料として、PETフィルムを得たものであり、かかる原料を用いて製膜することで、高温高湿度下での加水分解を抑制することが可能であり、さらに耐熱性及び耐候性にも優れたPETフィルムが得られるものである。
また、同様に本発明の太陽電池モジュール用シートに用いられる基材フィルムを構成するポリエステル樹脂は、その数平均分子量が10000〜40000の範囲で、固有粘度が5×10−5dl/g以上の耐加水分解性を有する樹脂が好ましい。
また、本発明の太陽電池モジュール用シートに用いられる基材フィルムは太陽電池モジュールの発電効率を向上させるために光線反射率に優れることが好ましい。基材フィルムの光線反射率について、具体的には太陽電池モジュールの発電層を構成する結晶シリコンセルの分光感度が高い波長800nmにおける光線反射率が50%以上であり、70%以上であることがより好ましい。通常、結晶シリコンセルは上下、左右に数mm程度の隙間を空けた状態で半田めっき銅線などに代表される配線で直列接続される。そのため、太陽電池モジュールに当たる太陽光の一部は結晶シリコンセル部に入光せず、前記の隙間から太陽電池モジュール用シート面に透過し、発電には寄与しない。ところが太陽電池モジュール用シートが光反射特性を有する場合には、前記の透過した光が反射され、ガラス面で再反射された場合には結晶シリコンセル部に再入光し、発電に寄与する。従って、光線反射機能を有する顔料などを配合した光線反射性に優れる基材フィルムを用いると、太陽電池モジュール用シートの光線反射率は高まり、好ましい。特に結晶シリコンセルが高い分光感度を示す可視光〜近赤外線領域の光を効率良く反射する基材フィルムを用いて太陽電池モジュール用シートを構成することが好ましい。なお、光線反射率はできるだけ高い方が好ましいが、光線反射機能を有する顔料や基材フィルムを構成する樹脂自体が光を吸収することは避けられないため、光線反射率の上限は98%程度となる。なお、基材フィルムの波長800nmにおける光線反射率は50%以上であるが、この光線反射率の測定面は、C層が形成されることとなる層の表面(A層とは反対側の最表層の表面)であり、測定法の詳細は後述する。
本発明の太陽電池モジュール用シートを構成する基材フィルムは1枚のみである。そのためこの基材フィルムは、例えばA層及びB層、または、A層、B層及びD層などの構成をあげることができる。そしてA層は、モジュール用シートの一方の最表面に配置される。ここで1枚のみの基材フィルムとは、A層、B層、及び必要に応じて他の層を共押出することによって積層して得た基材フィルムを意味する。そのため別々に押出して、接着剤や粘着剤などで貼り合せることで得た基材フィルムは、本発明においては1枚のみの基材フィルムとは言わない。
本発明の基材フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、耐電圧特性、部分放電電圧特性、太陽電池モジュール組み立て工程でのハンドリング性に影響するシートのコシの強さおよびコスト等を勘案すると、60〜300μmの範囲が好ましい。
[基材フィルム A層]
A層について説明する。
本発明の太陽電池モジュール用シートを用いた本発明の太陽電池モジュールは、C層が裏側封止材の側を向くようにして配置されてラミネートされることが好適なため、その場合にはA層は太陽電池モジュールの最裏面に配置されることとなる。このような本発明の太陽電池モジュールが長期に亘って屋外に設置される場合、特に近年のメガソーラー発電所のように地上に、斜めに立て掛けるように設置されると、太陽電池モジュールの最裏面であるA層は大気中を散乱あるいは地表面から反射する紫外線に曝される。20年あるいは30年にもおよぶ長期間に亘って設置される場合、この最裏面が耐候性に乏しいと太陽電池モジュール用シートは少しずつ紫外線劣化を生じ、太陽電池モジュール用シートが司る保護機能の維持に支障を来すことがある。太陽電池モジュール用シートが司る保護機能を長期に亘って保持するためには、A層の耐候性は極めて重要である。
A層は、ポリエステル樹脂を主たる成分とする。ここでポリエステル樹脂を主たる成分とするとは、層の全成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下のポリエステル樹脂を含む層を意味する。
またA層は、A層の全成分100質量%中に5.0質量%以上25質量%以下、より好ましくは10質量%以上20質量%以下の白色顔料を含む。
白色顔料としては特に限定されず、有機系、無機系のいずれの白色顔料も用いることができるが、長期に亘る発色安定性、耐久性および紫外線吸収性を考慮すると酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化チタンなどの無機系白色顔料が好ましい。中でも、耐紫外線性を考慮すると酸化チタンが好ましく、ルチル型であり、酸化チタン表面をアルミナやシリカなどの無機酸化物で被覆したタイプの酸化チタンを用いることが特に好ましい。
また、発色及び紫外線吸収性の均一性の観点から、白色顔料の平均粒子径は、0.1〜1.0μmが好ましく、A層中のポリエステル樹脂に対する分散性やコストの観点から、より好ましくは0.2〜0.5μmである。
A層中の白色顔料の含有量が5.0質量%以上であると、A層に紫外線が到達した場合、紫外線と白色顔料の衝突確率が低くなく、A層の主たる成分であるポリエステル樹脂を紫外線が顕著に劣化させにくくなる。太陽電池モジュール用シートの最裏面においてポリエステル樹脂が紫外線劣化して、黄変、機械強度の低下、膜厚みの減少あるいはクラックの発生等の不具合が発生しにくくなる。A層中の白色顔料の含有量が25質量%以下であると、紫外線吸収性能は十分発現し、ポリエステル樹脂に占める白色顔料の比率が高すぎず、A層の靱性、厚み方向の膜強度が低下しにくい。太陽電池モジュールとした際に、最裏面に配置されることとなるA層には、シリコーン樹脂に代表される接着剤を用いて端子箱が接着されるが、端子箱接着強度が低下したり、ケーブル固定時にA層に貼り付ける固定用テープなどの粘着テープを剥がす際に、A層が凝集破壊する、などの不具合が生じにくい。
なお、A層中の白色顔料の含有量は、無機系白色顔料を用いた場合には蛍光X線元素分析によって算出できる。一方で、A層中の白色顔料が有機系白色顔料の場合には、A層中の白色顔料の含有量は、樹脂成分を溶解させる有機溶剤を用いて顔料のみを濾過して捕集して、質量を測定する方法によって算出できる。ポリエステル樹脂に占める白色顔料の含有量を、後者の方法(質量測定する方法)で算出する場合は、有機溶剤としてヘキサフルオロイソプロパノールなどが好適に用いられる。
また、A層の厚さは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。A層が含む白色顔料の含有量は前記の通りであるが、太陽電池モジュール用シートにおいて求められる各種要求特性のうち、機械強度や電気絶縁性といった特性およびその耐久性は全体厚みに占める比率が高い、後述のB層が主に担う。従って、A層は、B層を紫外線劣化の原因となる紫外線から保護する機能、加水分解反応の原因となる外気中の湿度(水蒸気)から保護する機能を有することが好ましい。これらの機能のうち、紫外線から保護する機能は、すなわちA層による紫外線遮蔽機能であり、その機能はA層が含む白色顔料の種類、含有量、均一分散性及びA層の厚みによって左右される。本理由から、A層中の白色顔料の含有量は5.0質量%以上25質量%以下の範囲であり、単位厚みあたりの紫外線遮蔽率を考慮すると、A層の厚みは5μm以上であることが好ましい。外気中の湿度(水蒸気)から保護する機能に関しては、ポリエステル樹脂層の水蒸気透過率はポリエステ樹脂層の厚みに反比例することが知られており、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンナフタレート樹脂の厚み当たりの水蒸気バリア性から、A層はやはり5μm以上の厚みであることが好ましい。A層の厚みの上限は特に限定されないが、A層の厚みが70μmを超えると全体厚みに占めるB層の比率を下げざるを得ないことがあり、その場合には太陽電池モジュール用シートとして耐加水分解性が低下することもあり得るので、A層の厚みは70μm以下であることが好ましい。
[基材フィルム B層]
次に、B層について説明する。
B層は、その厚さが太陽電池モジュール用シート全体の厚さの70%以上、より好ましくは75%以上を占める。B層の厚さが太陽電池モジュール用シート全体の70%以上を占めることで、B層は太陽電池モジュール用シートに対して機械強度および電気絶縁性を付与することができる。
B層は、ポリエステル樹脂を主たる成分とする。ここでポリエステル樹脂を主たる成分とするとは、層の全成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下のポリエステル樹脂を含む層を意味する。
本発明の太陽電池モジュール用シートが貼り合わされた太陽電池モジュールが長期に亘って屋外に設置された場合、特に高温多湿環境下においては、太陽電池モジュール用シートの耐湿熱性は耐久性の観点で重要である。大気中の水分は太陽電池モジュール用シートの表層に吸着し、太陽電池モジュール用シートの厚み方向に拡散し、モジュール内部に侵入することが知られている。太陽電池モジュール用シートを構成する各層は水分と作用し、特にポリエステル樹脂については加水分解反応が進行することが知られている。ポリエステル樹脂に加水分解反応が起こると、分子量が低下し、例えば機械強度が低下する。極端に加水分解反応が進行した場合には破断強度あるいは破断伸度といった引っ張り応力に対する強度、伸度は大幅に低下し、太陽電池モジュールの温度変化に伴う太陽電池モジュール用シートや封止材層などの寸法変化に追従することができず、はなはだしい場合には太陽電池モジュール用シートが割れる、クラックを生じるなどの不具合が発生することがある。このような事態を避けるため、太陽電池モジュール用シートを構成するポリエステル樹脂としては、前記の通り、固相重合法で重合して得られる環状三量体の含有量が1.0質量%以下のポリエステル樹脂を原料としてポリエステル樹脂フィルムを製膜した耐加水分解性ポリエステルフィルムなどが好適に用いられる。
本発明者らは、それに加えてB層中に含有させる白色顔料の配合量を1.0質量%以上5.0質量%未満とした場合、良好な耐加水分解性を保持できることを見出した。つまり本発明のモジュール用シートに用いられる基材フィルムのB層は、B層の全成分100質量%中に白色顔料を1.0質量%以上5.0質量%未満、より好ましくは1.5質量%以上4.0質量%未満含む。本発明の太陽電池モジュール用シートを構成するB層が5.0質量%未満の白色顔料を含むと、白色顔料の可視光反射特性に起因して、太陽電池モジュール用シートの光線反射率が向上し、耐加水分解性に劣ることが生じにくくなる。また、B層中の白色顔料の含有量が5.0質量%未満であると、本発明のポリエステルフィルムを製膜する際に白色顔料の周囲に微少な空気孔(ボイド)を生じにくくなる。本発明の太陽電池モジュール用シートの全体厚みの70%以上を占めるB層が、多くの空気孔(ボイド)を有する場合には、極端な場合は部分放電電圧や難燃性が低下することがある。白色顔料の配合量が5.0質量%未満の場合には、基材フィルムを構成する主たる成分であるポリエステル樹脂が、本来有する耐加水分解性を保持することができ、空気孔(ボイド)を生じることが大きく増す懸念は生じにくい。B層中の白色顔料の含有量が1.0質量%以上であると、本発明の太陽電池モジュール用シートにおいて全体厚みの70%以上を占めるB層内に光反射性能を有する顔料が充分存在し、太陽電池モジュールの発電特性に寄与する光線反射特性を満足し好ましい。
B層が、本発明の太陽電池モジュール用シートの全体厚みの70%以上を占めると、B層内のトータル白色顔料量から実用上、十分な光線反射特性が発現し、また、太陽電池モジュール用シート全体の機械強度、電気絶縁性及びそれらの耐湿熱性を両立できる。一方、B層の厚みが、モジュール用シートの全体厚みの70%未満の場合には、白色顔料濃度が高いA層やC層の厚み比率が高くなり、耐湿熱性、機械強度が低下することがあり、コストが上がることがある。なお、モジュール用シートの全体の厚みに占めるB層の厚みは、90%以下が好ましい。基材フィルムの厚みが200μmを超えるような厚いフィルムを2台以上の押出機を用いて積層製膜する際に、B層の占める割合が90%を超える場合は、特定の押出機の吐出に頼り、他の押出機の能力は活用しきれず、生産性が乏しくなることがあるからである。
なお、本発明の太陽電池モジュール用シートを構成する基材フィルムのA層およびB層には、白色顔料以外にも必要に応じて、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、充填剤、着色顔料等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で添加することができる。
[基材フィルム D層]
本発明の太陽電池モジュール用シートは、1枚のみの基材フィルムとC層を有し、当該基材フィルムはA層とB層を有し、これらがA層/B層/C層の順で配置しているが、A層とB層の間やB層とC層の間には、別の層が存在しても構わない。つまり本発明の太陽電池モジュール用シートは、A層、B層、及びC層を有し、C層が一方の最表面に配置され、A層が他方の最表面に配置されさえすれば、内層には別の層を有していてもよい。例えばC層とB層の間にさらにポリエステル樹脂を主成分とする層(D層)を設けた例を図2に示す。特に太陽電池モジュール用シートの光線反射特性や封止材接着面側の耐候性をさらに向上させたい場合などは、B層よりも白色顔料の含有量が多いD層を、C層とB層との間に形成する設計は有効である。D層に白色顔料を含ませる場合、D層の全成分100質量%において、白色顔料の含有量は5質量%以上20質量%以下が好ましい。
[C層]
本発明の太陽電池モジュール用シートにおいてC層は、シートの一方の最表面に配置される。このように最表面に配置されることで、本発明の太陽電池モジュール用シートを用いて太陽電池モジュールを製造する際に、C層は裏側封止材と貼り合わされる。C層について、以下説明する。
C層は、アクリル樹脂を主たる成分とする層である。ここでアクリル樹脂を主たる成分とするとは、層の全成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下のアクリル樹脂を含むことを意味する。
C層は、太陽電池モジュールにおいて裏側封止材と接着させて使用するため、太陽電池セルと太陽電池セルの隙間を通過する紫外線を含む光はC層面に到達する。その到達した光の波長とC層を形成する組成およびその繰り返し構造が含む各結合の結合エネルギーによっては、その層は光劣化反応を生じることがある。また、封止材およびC層を光が透過する場合には、同様にC層の下地層に光劣化反応を生じることがある。
また、C層は太陽電池モジュールを形成する際にEVA樹脂シートなどに代表される封止材(裏側封止材)と熱圧着工程で強く接着する必要があり、またその接着強度を維持することが大切である。従って、C層を構成する樹脂は、耐候性と接着性を考慮した樹脂であることが好ましい。そこで本発明ではポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂などと比べて、比較的耐候性に優れるアクリル樹脂を主たる成分として用いることで、上記の課題の解決を図った。なおアクリル樹脂は、モノマーの選定、組み合わせ及び配合比率などの最適化によって基材フィルムとの接着力向上、他のポリマーとの分散(相溶)性向上などを図り易いという利点がある。
太陽電池モジュールに用いられる封止材(受光面側封止材及び裏側封止材)は、一般的にはEVA樹脂を主たる成分とする透明なシート部材であるが、その組成は多くの場合、紫外線吸収剤を含有する。また、通常、封止材は太陽電池モジュールを構成する際、2枚用いて、その2枚の間に配線によって直列接続された太陽電池セルを挟み込み、保護・充填するように用いられる。前述の通り、紫外線吸収剤を含み、厚みが400〜600μm程度ある封止材を2枚使用した太陽電池モジュールにおいて、受光面側から太陽電池モジュール用シート面に到達する紫外線量は、ガラスなどの受光面側保護基材のそれと比較して圧倒的に少なく、通常は10%以下である。しかし、本発明の太陽電池モジュール用シートが最裏面に貼り合わされた太陽電池モジュールが長期に亘って屋外に設置され、発電する場合、前記10%以下の紫外線が到達し続けることとなり、C層自体が耐候性に優れ、また、C層が紫外線遮蔽しなければ、C層の下地層であるポリエステルフィルムにまで紫外線が到達し、ポリエステル樹脂の紫外線劣化を引き起こすことがある。
また、本発明の太陽電池モジュール用シートのC層が裏面側封止剤と接するように配置した太陽電池モジュールを受光面側から見た外観は、結晶シリコンセル間の隙間部分から太陽電池モジュール用シートのC層の外観(色目)が目視できる外観となる。通常、結晶シリコンセルは青色から黒色のように濃い外観色を有するため、意匠性の観点から太陽電池モジュール用シートのC層側外観も濃い色の場合、太陽電池モジュール受光面側の色調統一性が発現し、意匠性に優れた太陽電池モジュールとなる。そのため、C層には白色以外の顔料を含むことが好ましい。ここで、白色以外の顔料とは、水に不溶な粒子であり、かつ可視光線の特定の波長を吸収する及び/または可視光線の全波長域における反射率が40%以下であるものをいう。
本発明の太陽電池モジュール用シートのC層においては、白色以外の顔料として、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料、紫色顔料、黄色顔料、及び黒色顔料等を用いることができ、所望の外観色に応じて、これらを適宜組み合わせて用いることができる。
赤色顔料としては、例えば、酸化鉄赤などの無機顔料や、アントラキノン、ジケトピロロールなどの有機顔料を用いることができる。青色顔料としては、例えば、プロシア青などの無機顔料や、インディゴ、フタロシアニン、アントラキノンなどの有機顔料を用いることができる。緑色顔料としては、例えば、アゾメチン、フタロシアニンなどを用いることができる。紫色顔料としては、例えば、酸化鉄紫、ジオキサジンなどを用いることができる。黄色顔料としては、例えば、クロム酸鉛、ペリレンなどを用いることができる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、黒酸化鉄、黒酸化チタン、銅マンガンブラック、銅クロムブラック、コバルトブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、ペリレンブラック系黒色顔料などを用いることができる。
また、太陽電池モジュールの発電効率の観点から、結晶シリコンセルの分光感度が高い波長400nm以上の可視光及び太陽電池モジュールの温度上昇を招く赤外領域の波長の光はC層を透過し、基材フィルムによって反射されることが好ましく、使用する顔料は波長400nm以上の可視光及び赤外領域の波長の光を透過するものが好ましい。
また、白色以外の顔料の配合量は顔料の種類、分散性、発色度合いや封止材との密着力などを鑑みて種々の範囲とすることができるが、C層を形成するアクリル樹脂100質量部に対して、3〜40質量部の範囲で配合することができる。3質量部よりも少ない場合には、C層の色調が薄く、白色以外の顔料濃度が低いために濃度ムラや色ムラを生じやすい。一方、40質量部よりも多い場合には、C層中に占める白色以外の顔料の濃度が高くなり、色調、色ムラなど外観品位は良好になりやすいが、塗膜の靱性が損なわれ、封止材との密着力が低下することがある。白色以外の顔料の配合量は発色度、封止材との密着力及びC層形成の容易さを考慮すると、C層を形成するアクリル樹脂100質量部に対して、5〜30質量%の範囲で配合することがより好ましい。
なお、C層中の白色以外の顔料の有無や含有量は、C層形成用塗料を調合した際の配合比率から決定することができる。
本発明者らは、C層の組成と太陽電池モジュール用シートの耐候性、対封止材接着力、光反射性能と意匠性との関係について鋭意研究した。
太陽電池モジュール用シートの耐候性、対封止材接着力の観点からは、C層を350nm以下の波長の光が50%よりも多く透過する場合には、主に基材ポリエステルフィルムの紫外線劣化によって、太陽電池モジュール用シートのC層面の色調変化が大きくなり、また太陽電池モジュール用シートの機械強度も低下することがあることが分かった。一方、C層を透過する光の量が波長350nmにおいて50%以下の場合は、ポリエステルフィルムの光劣化を抑制することができ、その結果、変色や機械強度の低下は生じにくくなる。なお、C層を波長350nmの光が透過する現象は、太陽電池モジュール用シート及び太陽電池モジュールのいずれにおいても何ら機能発現には寄与しないため、C層の組成、設計によってC層を透過する波長350nmの光の量が0%であっても良い。つまり本発明の太陽電池モジュール用シートは、C層の、波長350nmの光の分光透過率が0%以上50%以下であることが好ましい。
C層の波長350nmの光の分光透過率を50%以下とするためには、C層中に紫外線吸収性を有する材料を配合することが好ましい。紫外線吸収剤としてはカーボンブラック、ペリレンブラックなどの黒色紫外線吸収剤、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの無色あるいは白色紫外線吸収剤などを用いることができる。
一方、太陽電池モジュールの発電効率の観点からは、結晶シリコンセルの分光感度が高い波長400nm以上の可視光及び太陽電池モジュールの温度上昇を招く赤外領域の波長の光はC層を透過し、基材フィルムによって反射されることが好ましい。
特に、結晶シリコンセルの分光感度が最も高い波長700−1000nmの範囲におけるC層の分光透過率の平均が50%以上の場合、太陽電池モジュールにおいて配列された結晶シリコンセル間を透過した光が、太陽電池モジュール用シート面に到達する。C層を50%以上透過することで、光は、基材フィルムの光線反射特性により高効率に反射され、太陽電池モジュールの表面保護部材であるガラスによって再反射された後、結晶シリコンセルに入る。ゆえに、太陽電池モジュールの発電効率を引き上げる効果をより大きく発現させるには、波長700−1000nmの範囲におけるC層の分光透過率の平均を50%以上とすることが好ましい。なお、C層の波長700−1000nmの範囲の分光透過率の平均に上限はなく大きいほど好ましいが、現実的に95%よりも大きくすることは容易ではないため、上限は95%程度である。
前記の意匠性、紫外線に対する耐久性及び太陽電池モジュールの発電効率を鑑みると紫外線吸収性を有し、白色や黒色に調色可能な顔料やそれ以外の色目を呈する複数種類の無機系または有機系顔料および紫外線吸収剤を混合配合して、調色及び紫外線吸収性能の発現を図っても良い。
中でも特に、ペリレンブラックを用いる方法あるいは複数色の無機系または有機系顔料及び紫外線吸収剤を混合して用いる方法で、C層の外観を黒色系に調色し、波長350nmに代表される紫外線領域の光線は遮蔽し、なおかつ結晶シリコンセルの分光感度が高い波長400nm以上の可視光領域及びモジュール温度の上昇、発電効率の低下に寄与する赤外領域の波長の光線は透過させるような紫外線吸収剤処方を用いて太陽電池モジュールの意匠性及び発電性能を両立する処方が特に好ましい。本発明の太陽電池モジュール用シートはA層及びB層を有する基材フィルムが高い光線反射率を有するため、C層を可視光領域及び赤外領域の光線が透過した場合、基材フィルムが反射し、太陽電池モジュールの発電効率向上に寄与し、また太陽電池モジュールの温度上昇を低減することができる。
さらに、太陽電池モジュール用シートのC層側の外観色を黒色などの白色以外の色目に調色した場合、太陽電池モジュール用シートの表裏識別が容易となり、太陽電池モジュールの最裏面に太陽電池モジュール用シートとして使用する場合に表裏を誤って貼合してしまう懸念は大幅に低減する。
つまり、C層が紫外線吸収性、可視光及び赤外光透過性、黒色など白色以外の外観を有する場合は、意匠性に優れながらも耐候性、光線反射性及び表裏識別性などにも優れた太陽電池モジュール用シートとなり、それを用いた太陽電池モジュールは出力、耐久性及び意匠性などに優れるなど特に好ましい態様となる。
C層が紫外線吸収剤を含む場合、紫外線吸収材の含有量はC層の全成分100質量%において、3質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が、C層の全成分100質量%において、3質量%以上50質量%以下の範囲の場合、紫外線の遮蔽効果と封止材密着力を両立可能なだけでなく、アクリル樹脂と比較して比重が大きい紫外線吸収剤を含むものの、後述の方法でC層を形成する際に成膜安定性にも優れる。
次にC層の主たる成分であるアクリル樹脂について、詳細に説明する。本発明においてC層に用いられるアクリル樹脂は、その繰り返し構造中に少なくとも1種のアクリル系モノマーに由来する成分を含むポリマーである。少なくとも1種のアクリル系モノマーから得られるポリマーであり、少なくとも1種のアクリル系モノマーを含む複数のモノマーから得られる共重合ポリマーであってもよい。アクリル系モノマーとは、アクリル酸およびそのエステル、ならびにメタクリル酸およびそのエステルをいう。アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルとしてはメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、等が挙げられるが、メチルメタクリレート、メチルアクリレートが汎用性、価格、対光安定性の観点から特に好ましい。
アクリル系モノマー以外にアクリル樹脂を製造するために用いることが可能な共重合モノマーとしては、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ブタジエン、エチレン等の不飽和炭化水素、酢酸ビニル等のビニルエステルが挙げられる。
本発明に用いられるC層は、次の2つの理由により、反応性の官能基を導入すると共に該反応性の官能基と反応しうる架橋剤を加えて、架橋構造を導入することも可能である。
(ア)本発明の太陽電池モジュール用シートは、太陽電池モジュール製造工程において、高温処理に曝されることからC層の耐熱性を向上するため。
(イ)C層の紫外線遮蔽性向上の目的や調色などのため紫外線吸収剤、白色以外の顔料の配合などによるC層の脆化を抑制し、C層の靭性や強度の向上をするため。
かかる目的のためにC層に導入される反応性の官能基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、シリル基などが挙げられ、樹脂層の製造の容易さや架橋構造を形成するための反応様式に併せて適宜選択される。中でも、反応性が良好な点から水酸基、シアノ基、シリル基が好ましく、特に樹脂の入手が容易な点や反応性が良好な点から水酸基が好ましい。これらの反応性の官能基は、通常、反応性の官能基を含有する単量体を共重合することによりアクリル樹脂に導入される。つまりC層は、水酸基を有するアクリル樹脂を含むことが好ましく、またC層は、水酸基を有するアクリル樹脂を含む組成物を用いて得られる層であることが好ましい。さらに後述する理由により、C層は、水酸基を有するアクリル樹脂、イソシアネート化合物、及び白色以外の顔料を含む組成物を用いて得られることが好ましい。
水酸基を有するアクリル樹脂を重合するために用いるモノマーについて説明する。アクリル樹脂に水酸基を導入するために用いるモノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどの水酸基含有アクリル系モノマー、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニルエーテル類、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルなどの水酸基含有アリルエーテル類などが挙げられる。これらの水酸基を導入するためのモノマーは単独で、または2種類以上組み合わせて選択することができる。
次にC層を形成するための組成物中の反応性の官能基を有するアクリル樹脂中の当該官能基と結合することで架橋構造を形成し、塗膜の耐熱性向上や脆化を抑制する目的で用いることができる架橋剤について記す。
架橋剤を用いることにより、前述した架橋構造形成によるC層の耐熱性、靱性、強度の向上に加えて、基材フィルムとC層との間の接着力の向上効果も得ることができる。
本発明では、水酸基を有するアクリル樹脂を特に好適に用いることから、該水酸基と反応し得る架橋剤を使用しても良く、架橋剤としてイソシアネート化合物を使用し、ウレタン結合を生成させ、これにより架橋構造を形成させることが好ましい。
架橋剤として好適なイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物が挙げられ、芳香族系ポリイソシアネート、芳香脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネートおよび脂肪族系ポリイソシアネート等がこれに該当する。但し、樹脂骨格中に紫外線域の光の吸収帯を有する芳香環を含有する樹脂は、紫外線照射に伴い黄変し易いことから、脂環族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートを主成分とする架橋剤を用いることが好ましい。各々は以下に示すジイソシアネート化合物を原料とする化合物である。
脂環族系ポリイソシアネートの原料となるジイソシアネートとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)等が例示される。
脂肪族系ポリイソシアネートの原料となるジイソシアネートとしては、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、等が例示される。
ポリイソシアネートの原料としては、これらのジイソシアネートを複数種組み合わせて用いること、ビューレット変性体、ヌレート変性体などの変性体として用いることも可能である。
さらに、C層と基材フィルムおよびC層と封止材との界面密着力をより向上させるために、ブロックイソシアネート化合物を用いることもできる。
ブロックイソシアネート化合物とは、イソシアネート化合物中のイソシアネート基をブロック基で保護したものであり、加熱によってブロック基が脱離し、イソシアネート基が生成することで架橋反応が進行する。従って、ブロック基の脱離に必要な温度以下では、反応性を示さず、樹脂層の特性は安定(貯蔵安定性が良好)である。
そのためC層形成用原料として、イソシアネート基がブロック基で保護されたブロックイソシアネート化合物を用いた場合、本発明の太陽電池モジュール用シートの形成過程においては、ブロックイソシアネート化合物は未反応のままC層に含まれることとなる。よって本発明の太陽電池モジュール用シートのC層は、少なくとも水酸基を有するアクリル樹脂、ブロックイソシアネート化合物、紫外線吸収性を有する着色顔料を含む層であることが好ましい。
ブロックイソシアネート化合物に用いられるブロック化剤、つまり、イソシアネート化合物にブロック基を導入してブロックイソシアネート化合物を得るために用いられるブロック化剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、フェノール、クレゾール、オキシム、アルコールなどが挙げられるが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。ブロックイソシアネート化合物のなかでは、芳香環に直接結合したイソシアネート基を有しない無黄変性ブロックイソシアネート化合物が、C層の黄変を防止する観点から好ましい。
なお、本発明の太陽電池モジュール用シートは、C層が水酸基を有するアクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、及び黒色顔料及び/またはその他の白色以外の顔料を含むことが好ましい。C層が水酸基を有するアクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、及び黒色顔料及び/またはその他の白色以外の顔料を含む太陽電池モジュール用シートを形成するためには、水酸基を有するアクリル樹脂、脂環族ポリイソシアネートや脂肪族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、及び黒色顔料及び/またはその他の白色以外の顔料を含む組成物を用いてC層を形成する方法が好ましい。
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の太陽電池モジュール用シートのC層が、裏側封止材の側を向くようにして、受光面側保護基材、受光面側封止材、セル、裏側封止材、及びモジュール用シートを、この順に配置して、ラミネートすることで得られる。このラミネートにおいては、一般に真空ラミネートがされるが、この真空ラミネート工程で貼り合わされる際に、ブロック基の脱離に必要な熱が加えられるため、真空ラミネート工程中にブロック基の脱離、イソシアネート基の生成及び封止材に含まれる成分との間の架橋反応を生じ、初期から耐久性試験後、屋外実曝露下に亘って強固で安定な接着力を示す。
本発明の太陽電池モジュール用シートは、縦20cm、横20cmのサイズに切り出したシートを、150℃で30分間加熱した際に、シートの四隅の立ち上がりがいずれも30mm以下であることが好ましい。その理由は次の通りである。通常、太陽電池モジュールは後述の通り太陽電池モジュール用シートの封止材接着面が、裏側封止材の側を向くようにして、受光面側保護基材、受光面側封止材、セル、裏側封止材、及びモジュール用シートを、この順に配置したのち、その積層体を加熱可能な熱板、減圧用ポンプなどを兼ね備えた真空ラミネーターと呼ばれる装置内に搬入した後、ラミネートする方法で製造される。その際、常温の積層体が130から160℃程度の温度に加熱された真空ラミネーターの熱板上に搬送される場合、熱板温度が下がり、積層体への加熱が不均一になったり、ばらついたりして、封止材の架橋度にムラを生じるなど太陽電池モジュールの品質に差を生じる原因となりうる。そのため、積層体を予め予熱した後、真空ラミネーター内に搬送する手段が用いられる。ところが、その予熱の際に太陽電池モジュール用シートに加わる熱によって、太陽電池モジュール用シートにカールが生じた場合、搬送時に搬送経路内で装置とモジュール用シートが接触したり、真空ラミネーター内に搬送された後、降下する装置上部蓋にカールした太陽電池モジュール用シートが折り曲げられるなどの不具合が発生する。このような不具合に繋がる太陽電池モジュール用シートの加熱に伴うカールは、2枚あるいは3枚のフィルムが貼り合わさって構成される太陽電池モジュール用シートにおいて、それぞれのフィルムの加熱収縮率に差がある場合、加熱収縮率が大きいフィルムの側に太陽電池モジュール用シートが巻かれようとする力によって引き起こされる。そのような不具合を避ける手段としては太陽電池モジュール用シートを構成する各フィルムを低熱収化処理した後、接着剤で貼り合わせて太陽電池モジュール用シートとする方法が挙げられるが、搬送工程を含む工程が複数回に及ぶために傷等の欠点が生じる可能性があり、また、工程数が多くなるため生産性、経済性も劣る。一方、本発明の太陽電池モジュール用シートは1枚のみの基材フィルムによって構成されるため、フィルム間の加熱収縮率差に起因する加熱時のカールが発生することがないため好適に用いられる。
本発明の太陽電池モジュール用シートは、ISO2409(2013年版)の記載に従って測定したA層及びC層の表層凝集強度が、いずれもクラス0であることが好ましい。本発明の太陽電池モジュール用シートにおいて、最表面を形成するA層およびC層は、太陽電池モジュール組み立て工程において他部材と擦れる可能性がある。また、接着剤を介しての端子箱の取り付けや粘着テープを貼ってケーブルを仮留めし、太陽電池モジュール設置時にその仮留めテープを剥がすなどの工程もある。そのため本発明の太陽電池モジュールのA層及びC層は、前記の擦れや粘着テープを剥がす際の物理的なストレスに耐える表面の表層凝集強度を有することが好ましい。また、接着剤を介して取り付けられる端子箱は太陽電池モジュールとして屋外設置された後、長期に亘り太陽電池モジュール用シート面に密着していることが要求されるので、同様に太陽電池モジュールのA層及びC層は高い表層凝集強度を有することが好ましい。このように太陽電池モジュールの製造工程及び使用環境において実用上十分な表層凝集強度、つまりISO2409(2013年版)の記載に従って測定したA層及びC層の表層凝集強度をクラス0に制御するためには、以下の態様とすることが好ましい。
すなわち、A層は、A層の全成分100質量%中に5.0質量%以上25質量%以下の白色顔料を含むことが好ましい。白色顔料の含有量が前記範囲の場合は、ポリエステル樹脂中で白色顔料は島状に分散し、ポリエステル樹脂が海状の連続相を形成することができ、十分な表層凝集強度を発現する。また、C層は耐擦過性や耐傷付き性に優れるアクリル樹脂を主たる成分とすることで、同様に表層凝集強度を発現する。なお、C層のさらに好ましい態様は、水酸基を含有するアクリル樹脂をイソシアネート化合物で架橋する方法である。アクリル樹脂の水酸基とイソシアネート化合物が架橋反応によってウレタン結合を形成することでC層の表層凝集強度はさらに向上するので、C層はウレタン結合を有するアクリル樹脂を含むことが好ましい。
[製造方法]
本発明の太陽電池モジュール用シートは例えば次のようにして製造される。
本発明の太陽電池モジュール用シートに用いられるA層、B層を有する基材フィルムは公知の製膜方法を用いて作成することができる。たとえば、A層およびB層の主たる成分であるポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥し、2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出されたポリエステル樹脂を、マルチマニホールドダイやフィールドブロックやスタティックミキサー、ピノール等を用いて多層に積層する方法を使用することができる。また、これらを任意に組み合わせても良い。ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングシートが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ、急冷固化させるのが好ましい。このようにして得られたキャスティングシートは、2軸延伸することが好ましい。2軸延伸とは、縦方向および横方向に延伸することをいう。延伸は、逐次2軸延伸しても良いし、同時に2方向に延伸してもよい。また、さらに縦および/または横方向に再延伸を行ってもよい。
A層およびB層に白色顔料を一定の含有量となるように分散させる方法としては公知の技術を用いることができるが、白色顔料の添加方法は、コンパウンドによる方法が好ましい。具体的には、ポリエステル樹脂に酸化チタン顔料を50質量%添加しマスターチップとして準備しておき、希釈して目的の濃度にする方法が好ましい。また、分散助剤としては、たとえばポリアレキレングリコールまたはその共重合体などを使用することが出来、具体的にはポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレングリコール共重合体などが好ましく使用できる。
なお、A層とB層の間やB層とC層の間には、別の層が存在しても構わない。つまり本発明の太陽電池モジュール用シートは、A層、B層、及びC層を有し、C層が一方の最表面に配置され、A層が他方の最表面に配置されさえすれば、内層には別の層を有していてもよい。例えばC層とB層の間にさらにポリエステル樹脂を主成分とする層(D層)を設けた例を図2に示す。
また、基材フィルムには水蒸気バリア性を付与する目的で蒸着法等により少なくとも一層の金属薄膜や無機酸化物等の層を形成しても良い。その際、太陽電池モジュール用シートとしては、電気絶縁性が高いことが要求されるため、導電性層である金属薄膜の層ではなく、無機酸化物の層を有する水蒸気遮断層を形成することが好ましい。
さらに、樹脂フィルムには必要に応じて、例えば、コロナ放電やプラズマ放電等の放電処理、あるいは酸処理等の表面処理を行ってもよい。
C層の形成方法は、基材フィルムの成膜工程において、熱溶融あるいは水分散したC層形成用原料を積層あるいは塗布する手法、あるいは、C層形成用原料を水や有機溶剤を媒体とした塗布液として、基材フィルムに塗布処理する手法のいずれも可能である。中でもウェットコート法を用いてC層を形成する方法は生産性、C層の品質安定性に優れる。C層を塗布液として塗布する場合には、基材フィルムに塗布した後、加熱して乾燥させ、場合によっては紫外線照射等で硬化させる。塗布方法としては、グラビアコート、ロールコートなど公知の塗布方法が適用できる。なお、C層をウェットコート法で形成する場合、塗布後の乾燥工程で乾燥オーブンの温度設定を150℃以上の高温として、加熱・乾燥することでC層を形成すると同時に本発明の太陽電池モジュール用シートの加熱収縮率を減少させることもでき、経済的にも有用である。
本発明におけるC層をウェットコート法により形成する場合、コーティング液の溶剤としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよび水等を例示することができ、該コーティング液の性状としてはエマルジョン型および溶解型のいずれでもよい。
C層の厚みは特に限定されないが、0.2μm以上10μm未満が好ましい。C層の厚みが0.2μm以上10μm未満の範囲の場合、特にC層をウェットコート法により形成する場合には、ピンホールなどの外観不良が生じにくく、また比較的揮発させる希釈溶剤等が少ない条件で塗工可能なために乾燥効率に優れ、塗工速度を増速し易く、経済的にも優位となる。
本発明の太陽電池モジュールは、例えば次のようにして製造される。
上述のようにして得た太陽電池モジュール用シートのC層が、裏側封止材の側を向くようにして、受光面側保護基材、受光面側封止材、セル、裏側封止材、及び太陽電池モジュール用シートを、この順に配置して、ラミネートすることで得られる。
上述のようにして得た太陽電池モジュールの内部には、封止材層内で配線同士の重なりを生じる箇所が存在し、通常、この箇所に配線相互の絶縁性を確保するための樹脂製シート(絶縁シート)を挟む。本発明の太陽電池モジュール用シートは、絶縁シートとしても好適に用いることができる。このとき、A層側の面およびC層側の面に、配線が配置され、本発明の太陽電池モジュールシートは配線間の絶縁性を保持する機能を担う。
また、本発明の太陽電池モジュール用シートを絶縁シートとして用いると、最裏面の保護シートと絶縁シートとの色調統一性を保つことができ、受光面側の保護基材側から見た太陽電池モジュールの意匠性も向上する。
太陽電池モジュールに用いられる封止材(受光面側封止材、裏側封止材)としては、例えば、EVA樹脂、ポリビニルブチラール、変性ポリオレフィンなどが挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。これらのなかでは、耐候性や耐熱性及び部材コストの観点から、EVA樹脂が好ましい。
また、本発明の太陽電池モジュール用シートは、発電層の種類によって使用が制限されるものではなく、いずれのタイプの太陽電池モジュールにおいても、好適に用いることができる。
本実施例中で「部」とは、特に注釈のない限り「質量部」であることを意味する。
<特性の評価方法>
本実施例で用いた特性の評価方法は、下記のとおりである。
(1)各層の厚み
全体の厚みをJIS C2151(1990年版)に準じて測定し、積層断面をミクロトームで厚み方向に断面を切る前処理をしたのち、日立製作所製電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)S−800を用い、厚み断面を全体像が写る倍率(×1000)で撮像し、その断面写真の厚みを求めた。
(2)太陽電池モジュール用シートの全体の厚みに占めるB層の厚みの比率(厚み比率)
前記(1)の方法で各層厚みを断面写真から採寸した結果から下式に基づいてB層の厚み比率を算出した。
B層の厚み比率[%]=(B層の厚み)/(全体の厚み)×100
(3)各層における顔料の含有量
A層中の白色顔料の含有量は、太陽電池モジュール用シートをサンプルとして、蛍光X線元素分析装置(堀場製作所製、MESA−500W型)により、白色顔料を構成する特有の元素の元素量を求め、その元素量より含有量を求める。例えば、白色顔料として、酸化チタンを用いた場合は、酸化チタン特有の元素であるチタンの元素量を求めた。そのチタン元素量から酸化チタン含有量を換算した。
なお、C層中の顔料の含有量は、C層形成用塗料を調合した際の配合比率から求めた。
(4)基材フィルムの光線反射率
日立製分光光度計U−3310を用い、標準白色板用開口部と試験片開口部ともに標準白色板として硫酸バリウムを用いて波長800nmで試験片開口部の傾斜角度を10°として拡散反射率を測定し(T0)とし、そのときの反射率を100%とした。その後、試験片開口部を試験片に取り替え300〜1200nmの波長範囲について拡散反射率(T1)を測定した。測定面は、C層が形成される層の表面(A層とは反対側の最表層の表面)とした。その後、下記式により、光線反射率(R)に換算した。
R(%)=T1/T0×100
T0:標準白色板の拡散反射率
T1:試験片の拡散反射率。
(5)C層の分光透過率
C層のみからなる試料を作製して、C層の分光透過率を測定することが困難なため、紫外光及び可視光の透過率に優れるエチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE)透明フィルムを用いた以下の方法により、C層の分光透過率を測定した。
日立分光光度計U−3310を用い、標準白色板用開口部と試験片開口部ともに装置校正用の標準白色板として酸化アルミナを用いて300〜1200nmで試験片開口部の傾斜角度を10°として試料のない状態の透過率を測定し(A0)とし、そのときの透過率を100%に補正した。その後、入射光前面に、紫外光領域に吸収が少ないETFEフィルム(50μm、透明)を配置し、300〜1200nmの透過率を波長5nmおきに測定し、350nmにおける透過率Tetfe(350)及び700〜1000nmの波長範囲における平均透過率Tetfe(700−1000)を得た。次に前記ETFEフィルムにC層を形成したフィルムを配置し、同様に透過率Tetfe/c(350)およびTetfe/c(700−1000)を測定した。これら2つの透過率から下式の通り波長350nmにおけるC層の分光透過率T(350)(%)、700〜1000nmの波長範囲における分光透過率T(700−1000)(%)を求めた。
T(%)=Tetfe/c(%)/Tetfe(%)×100
(6)表層凝集強度の評価(クロスカットテスト)
作製した太陽電池モジュール用シートの両表面(A層、C層)についてISO2409(2013年版)に記載の方法でクロスカットテストを行い、ISO2409に記載の「Table1 Classification of test results」に従って特性分類をした。
(7)封止材との接着強度
JIS K 6854−2(1999年版)に基づいて、封止材として用いたEVA樹脂シートとの接着力を測定した。試験した疑似太陽電池モジュールサンプルは、作製した太陽電池モジュール用シートのC層面にEVA樹脂シートを重ね、さらにその上に厚さ3.2mmの半強化ガラスを重ね、市販の真空ラミネーターを用いて減圧後に142℃加熱条件下、1気圧の荷重で15分プレス処理をしたものを用いた。EVA樹脂シートは、サンビック(株)製の450μm厚シート(Fast cureタイプ)を用いた。接着強度試験の試験片の幅は10mmとし、2つの試験片について各々測定を1回行い、2つの測定値の平均値を接着強度の値とした。接着強度は40N/10mm以上あることが実用上問題ないレベルと判断した。
(8)加熱収縮率の測定
JIS C 2151(2006年版)に基づいて、オーブン内において150℃で30分間の熱処理を行い、加熱処理前後の寸法変化を、作製した太陽電池モジュール用シートの長手方向(MD)および幅方向(TD)について評価した。測定した寸法変化値から下式に従って加熱収縮率を算出した。
加熱収縮率[%]={(加熱処理前の長さ−加熱処理後の長さ)/加熱処理前の長さ}×100
(9)破断伸度の測定
ASTM−D882(ANNUAL BOOK OF ASTM STANDARDS1999年版を参照した)に基づいて、作製した太陽電池モジュール用シートを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度を測定した。なお、サンプル数はn=5とし、太陽電池モジュール用シートの長手方向について測定し、その結果を初期破断伸度E0とした。
(10)湿熱試験後の破断伸度保持率
試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、エスペック(株)製恒温恒湿オーブンにて、温度85℃、相対湿度85%RHの条件下にて2000時間処理を行い、その後上記(9)項に従って破断伸度を測定した。なお、測定はn=5とし、また、太陽電池モジュール用シートの長手方向について測定した後、その平均値を破断伸度E1とした。上記(9)項に従って測定した初期破断伸度E0と耐湿熱試験後の破断伸度E1を用いて、次の式により破断伸度保持率を算出した。
破断伸度保持率(%)=E1/E0×100
得られた伸度保持率について、以下のように判定した。
破断伸度保持率が50%以上の場合:◎
破断伸度保持率が40%以上50%未満の場合:○
破断伸度保持率が30%以上40%未満の場合:△
破断伸度保持率が30%未満の場合:×
(11)耐候性試験後の破断伸度保持率
作製した太陽電池モジュール用シートを7cm×20cmの形状に切り出し、スガ試験機(株)製キセノン耐候性試験装置“SX−75”にて、ブラックパネル温度65℃、相対湿度50%RH、照度180W/m(光源:キセノンランプ、波長範囲:300〜400nm)の条件とし、下記のサイクル1、2を繰り返して3000時間照射し、その後、紫外線照射試験済み試験片から1cm×20cmの短冊状サンプルに切り出した後、上記(9)項に従って破断伸度を測定した。
サイクル1 紫外線照射のみを108分間行う
サイクル2 紫外線照射と水噴霧を12分間行う
なお、測定はn=5とし、また、フィルムの長手方向について測定した後、その平均値を破断伸度E2とした。上記(9)項に従って測定した初期破断伸度E0と耐候性試験後の破断伸度E2を用いて、次の式により破断伸度保持率を算出した。
破断伸度保持率(%)=E2/E0×100
得られた伸度保持率について、以下のように判定した。
破断伸度保持率が50%以上の場合:◎
破断伸度保持率が40%以上50%未満の場合:○
破断伸度保持率が30%以上40%未満の場合:△
破断伸度保持率が30%未満の場合:×
(12)色調
太陽電池モジュール用シートのA層表面およびC層表面について、耐候性試験に伴う色調変化を、JISZ 8722(2009年度版)に基づいて、日本電色工業製簡易型分光色差計NF333を使用して、表色系b値を測定し、試験前後のb値の差であるΔb(b値(試験後)−b値(試験前))を求めた。n数は2で評価を実施した。b値が高いほど黄色の度合いが強く、Δb値が大きいほど試験前に比べて黄色に変化していることを意味する。
(13)加熱カール特性
縦20cm、横20cmのサイズに切り出した本太陽電池モジュール用シートのC層が熱板に接する向きになるように加熱可能な熱板上に平置きし、熱板を150℃に加熱して30分間放置した。その際、太陽電池モジュール用シートの4角の立ち上がり高さ(4角それぞれと熱板との垂直距離)で評価した。
シートの4角の全ての立ち上がりが10mm以下:◎
◎及び×のいずれにも該当しない:○
シートの4角の少なくとも1つの立ち上がりが30mmを超える:×
(14)太陽電池モジュールの出力評価
取り出し電極(半田めっき銅線)付き多結晶シリコンセルについてJIS C8912(2011年版)に従ってモジュールテスター(エヌ・ピー・シー製)を用いて出力測定を行い、出力Pmaxc(W)を評価した。
白板半強化ガラス(3.2mm厚、エンボス付き)、サンビック(株)製のEVA樹脂封止材シート(450μm厚、Fast cureタイプ)、取り出し電極(半田めっき銅線)付き多結晶シリコンセル、サンビック(株)製のEVA樹脂封止材シート(450μm厚、Fast cureタイプ)、及びC層がEVA封止剤シート側となる向きで本発明の太陽電池モジュール用シートをこの順で積層した。続いて、前記のように準備した積層体を市販の真空ラミネーターを用いて減圧後に142℃加熱条件下、1気圧の荷重で15分プレス処理をして、多結晶シリコンセルを1枚のみ含む単セル太陽電池モジュールを作製した。
次に、このようにして作製した単セル太陽電池モジュールについて、前記の方法でI−V測定を行い、同様に出力Pmaxm(W)を評価した。このようにして得られた出力データから本発明の太陽電池モジュール用シートを用いてモジュール化した前後の出力変化ΔPmaxを下式によって算出した。
ΔPmax[%]=(Pmaxm−Pmaxc)/Pmaxc ×100
(PETポリマーaの作製)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100部(質量部:以下単に部という)にエチレングリコール64部を混合し、さらに触媒として酢酸亜鉛を0.1部および三酸化アンチモン0.03部を添加し、エチレングリコールの環流温度でエステル交換を実施した。
これにトリメチルホスフェート0.08部を添加して徐々に昇温、減圧にして271℃
の温度で5時間重合を行った。得られたポリエチレンテレフタレート(PET)の固有粘度は0.55であった。 次にこのPETを高重合化温度220℃、真空度0.5mmHgの条件の回転式の真空装置(ロータリーバキュームドライヤー)に入れ、10時間撹拌しながら加熱して固相重合してPETポリマーを得た。
(PETポリマーb(高濃度酸化チタンマスターバッチ)の作製)
前記の方法で作製したPETポリマーaと酸化チタン(ルチル型、平均粒子径200nm)をコンパウンドして酸化チタンが50質量%のマスターチップとした。このマスターチップをPETポリマーbとした。
(PETポリマーc〜lの作製)
前記の方法で作製したPETポリマーaおよびPETポリマーbを表1に示す配合比で混合し、ポリエステルフィルム形成用樹脂原料PETポリマーc〜lを得た。
(C層形成用原料C1〜C3の作製)
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート18部、n−ブチルメタクリレート80部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、アクリル系共重合体溶液を得た。
次にアクリル系共重合体溶液100部に対して、MEKオキシムでブロックされた、イソホロンジイソシアネートの三量体とMEKオキシムでブロックされた、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体を、酢酸エチルで50質量%に希釈したポリイソシアネート化合物溶液10部を配合してアクリルポリマー溶液(C1)を得た。
この溶液に平均粒径100nmの酸化チタン顔料を樹脂固形分に対する質量比率が30質量%となるように配合し、酢酸エチルおよびメチルイソブチルケトンを希釈溶剤として追加して全固形分質量が溶液の50質量%となるように濃度調整して、酸化チタン含有アクリルポリマー溶液(C2)を得た。
次に、上記の酸化チタン含有アクリルポリマー溶液(C2)100部に対して、ポリイソシアネート硬化剤として住化バイエルウレタン社製ヘキサメチレンポリイソシアネート(HDI)含有硬化剤溶液“N−3200”を1部配合した後、メチルイソブチルケトンを追加配合して、全固形分質量が20質量%となるように濃度調整して、C層形成用原料(C3)を得た。
(C層形成用原料C4の作製)
前記の方法で得たポリイソシアネート化合物を配合したアクリルポリマー溶液(C1)を50部量りとり、ペリレンブラック顔料(BASF製“Paliogen”(登録商標) Black S 0084)10部を配合してペリレンブラック含有アクリルポリマー溶液を得た。次にペリレンブラック含有アクリルポリマー溶液にポリイソシアネート硬化剤として住化バイエルウレタン社製ヘキサメチレンポリイソシアネート(HDI)含有硬化剤溶液“N−3200”を1部配合した後、メチルイソブチルケトンを追加配合して、全固形分質量が30質量%となるように濃度調整して、C層形成用原料(C4)を得た。
(C層形成用原料C5の作製)
ペリレンブラック顔料を用いる代わりにカーボンブラック顔料(石原産業製“MA−100”)を用いる以外はC層形成用原料C4の作製と同様の方法でC層形成用原料(C5)を得た。
(C層形成用原料C6の作製)
前記の方法で得たアクリルポリマー溶液(C1)をメチルイソブチルケトンで希釈して全固形分濃度が50質量%になるように調整した。そのアクリルポリマー溶液100部に対して前記のヘキサメチレンポリイソシアネート(HDI)含有硬化剤溶液“N−3200”を1部配合した後、メチルイソブチルケトンを追加配合して、全固形分質量が30質量%となるように濃度調整して、C層形成用原料(C6)を得た。
なお、表2、表3において「原料種」とは、使用したPETポリマーc〜lのいずれかを、記号c〜lと省略して記している。
(実施例1)
PETポリマーeをA層形成用原料として、PETポリマーjをB層形成用原料としてB層/A層となるように積層装置を通して積層し、Tダイよりシート状に成形した。積層構成は、表2に示す通りA層の厚みが50μm、B層の厚みが200μmで総厚みが250μmとなるように押出機の吐出量を調整して積層した。Tダイより吐出したシート状成形物を表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸シートを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.3倍縦延伸し、21〜25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。その後テンター内で220℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取り厚み250μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次にこの2軸延伸ポリエステルフィルムのB層表面に、ワイヤーバーを用いてC層形成用原料C3を塗布し、180℃で60秒間乾燥し、乾燥後塗布厚みが2.0μmとなるようにC層を設けた。このようにして得たシートを40℃下で3日間エージングすることで、太陽電池モジュール用シートを製造した。
(実施例2〜4)
表2に示すPETポリマー原料をそれぞれ用いてA層およびB層を所定の厚みになるように実施例1に記載の方法と同様にして2軸延伸ポリエステルフィルムを製膜した以外は実施例1に記載の方法と同様にして太陽電池モジュール用シートを製造した。
(実施例5〜7)
表2に示すPETポリマー原料をそれぞれ用いてA層およびB層を所定の厚みになるように実施例1に記載の方法と同様にして2軸延伸ポリエステルフィルムを製膜した。
次にこの2軸延伸ポリエステルフィルムのB層表面に、ワイヤーバーを用いてC層形成用原料C4を塗布し、180℃で60秒間乾燥し、乾燥後塗布厚みが5.0μmとなるようにC層を設けた。このようにして得たシートを40℃下で3日間エージングすることで、太陽電池モジュール用シートを製造した。
(実施例8)
PETポリマーfをA層およびD層形成用原料として、PETポリマーiをB層形成用原料としてD層/B層/A層となるように積層装置を通して積層し、Tダイよりシート状に成形した。積層構成は、表2に示す通りA層およびD層の厚みが35μm、B層の厚みが195μmで総厚みが265μmとなるように押出機の吐出量を調整して積層した。Tダイより吐出したシート状成形物を表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸シートを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.3倍縦延伸し、21〜25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。その後テンター内で220℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取り厚み265μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次にこの2軸延伸ポリエステルフィルムのD層表面に、ワイヤーバーを用いてC層形成用原料C4を塗布し、180℃で60秒間乾燥し、乾燥後塗布厚みが5.0μmとなるようにC層を設けた。このようにして得たシートを40℃下で3日間エージングすることで、太陽電池モジュール用シートを製造した。
(実施例9)
表2に示すPETポリマー原料をそれぞれ用いてA層およびB層を所定の厚みになるように実施例1に記載の方法と同様にして2軸延伸ポリエステルフィルムを製膜した。
次にこの2軸延伸ポリエステルフィルムのB層表面に、ワイヤーバーを用いてC層形成用原料C5を塗布し、180℃で60秒間乾燥し、乾燥後塗布厚みが2.0μmとなるようにC層を設けた。このようにして得たシートを40℃下で3日間エージングすることで、太陽電池モジュール用シートを製造した。
(実施例10)
C層形成用原料C3の代わりにC層形成用原料C6を用いて、乾燥後厚みが2.9μmとなるようにC層を形成した以外は実施例1に記載の方法と同様にして太陽電池モジュール用シートを製造した。
(比較例1)
表3に示すPETポリマー原料をそれぞれ用いてA層およびB層を所定の厚みになるように実施例1に記載の方法と同様にして2軸延伸ポリエステルフィルムを製膜した。なお、このフィルムのA層の酸化チタン濃度は4.5質量%であった。
次にこの2軸延伸ポリエステルフィルムのB層表面に、ワイヤーバーを用いてC層形成用原料C4を塗布し、180℃で60秒間乾燥し、乾燥後塗布厚みが5.0μmとなるようにC層を設けた。このようにして得たシートを40℃下で3日間エージングすることで、太陽電池モジュール用シートを製造した。
(比較例2)
表3に示すPETポリマー原料をそれぞれ用いてA層およびB層を所定の厚みになるように実施例1に記載の方法と同様にして2軸延伸ポリエステルフィルムを製膜した。次に、比較例1に記載の方法でC層を形成して太陽電池モジュール用シートを製造した。なお、このフィルムのA層の酸化チタン濃度は28質量%であった。
(比較例3)
表3に示すPETポリマー原料をそれぞれ用いてA層およびB層を所定の厚みになるように実施例1に記載の方法と同様にして2軸延伸ポリエステルフィルムを製膜した。次に、比較例1に記載の方法でC層を形成して太陽電池モジュール用シートを製造した。なお、このフィルムのB層の酸化チタン濃度は6質量%であった。
(比較例4)
表3に示すPETポリマー原料をそれぞれ用いてA層およびB層を所定の厚みになるように実施例1に記載の方法と同様にして2軸延伸ポリエステルフィルムを製膜した。次に、比較例1に記載の方法でC層を形成して太陽電池モジュール用シートを製造した。なお、このフィルムのB層の酸化チタン濃度は0.5質量%であった。
(比較例5)
表3に示す通りA層にPETポリマーeを用いて、厚みが100μmとなるように、B層の厚みが150μmで総厚みが250μmとなるように押出機の吐出量を調整して積層した以外は実施例1に記載の方法と同様に基材フィルムを製造した。次にC層形成用原料C3を塗布し、180℃で60秒間乾燥し、乾燥後塗布厚みが2.0μmとなるようにC層を設けた。このようにして得たシートを40℃下で3日間エージングすることで、太陽電池モジュール用シートを製造した。
(比較例6)
表3に示すPETポリマー原料をそれぞれ用いてA層およびB層を所定の厚みになるように実施例1に記載の方法と同様にして2軸延伸ポリエステルフィルムを製膜し、C層を形成することなしに、太陽電池モジュール用シートを製造した。
(比較例7)
酸化チタン粒子を含有する酢酸ビニル配合比が5質量%であるEVAと酸化チタンからなる白色EVAフィルム(50μm)と透明ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”(登録商標)S10(東レ(株)製、210μm)および白色顔料を含有するフッ素樹脂フィルム“Tedlar”(登録商標)PV2001(Dupont社製、38μm)を用意した。また、DIC(株)製ドライラミネート剤“ディックドライ”(登録商標)LX−903を16部、硬化剤としてDIC(株)製KL−75を2部、および酢酸エチルを29.5部量りとり、15分間攪拌することにより固形分濃度20%のドライラミネート用接着剤を得た。
次に“ルミラー” (登録商標)S10の片面にドライラミネート用接着剤を塗布、乾燥した後、“Tedlar”(登録商標)フィルムをドライラミネートした。続いて、“ルミラー” (登録商標)S10の“Tedlar” (登録商標)フィルムをラミネートした面とは反対の面に再度、前記のドライラミネート用接着剤を塗布、乾燥した後、白色EVAフィルムをドライラミネートした。このようにして得たシートを40℃下で3日間エージングすることで、太陽電池モジュール用シートを得た。
実施例、比較例の太陽電池モジュール用シートの特性を表4、5に示す。
本発明の太陽電池用封止シートは、対封止材接着力、保存安定性、生産性及び耐環境性に優れ、太陽電池モジュールにおいて好適に用いられることから、本発明の太陽電池用封止シートおよびそれを用いた太陽電池モジュールに利用できる。
1 太陽電池モジュール用シート
2 基材フィルム
3 太陽電池セル
4 接着剤
5 受光面側保護基材
6 封止材
7 端子箱
8 接着剤
9 配線
10 フレーム
11 C層
20 B層
30 A層
40 D層

Claims (13)

  1. 1枚のみの基材フィルム及びC層を有する太陽電池モジュール用シートであって、
    前記C層は、アクリル樹脂を主たる成分とし、太陽電池モジュール用シートの一方の最表面に配置され、
    前記基材フィルムは、A層及びB層を有し、波長800nmの光線反射率が50%以上であり、
    前記A層は、ポリエステル樹脂を主たる成分とし、A層の全成分100質量%中に白色顔料を5.0質量%以上25質量%以下含み、厚さが5μm以上であり、前記太陽電池モジュール用シートの他方の最表面に配置され、
    前記B層は、ポリエステル樹脂を主たる成分とし、B層の全成分100質量%中に白色顔料を1.0質量%以上5.0質量%未満含み、厚さが太陽電池モジュール用シート全体の70%以上を占めることを特徴とする、太陽電池モジュール用シート。
  2. 前記C層が、白色以外の顔料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池モジュール用シート。
  3. 前記C層が、黒色顔料を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール用シート。
  4. 前記C層は、波長700−1000nmの範囲の分光透過率の平均が50%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シート。
  5. 前記太陽電池モジュール用シートから、縦20cm、横20cmのサイズに切り出したシートを、150℃で30分間加熱した際に、該シートの四隅の立ち上がりがいずれも30mm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シート。
  6. 前記C層が、水酸基を有するアクリル樹脂、イソシアネート化合物、及び白色以外の顔料を含む組成物を用いて得られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シート。
  7. 前記白色以外の顔料として、黒色顔料を含むことを特徴とする、請求項6に記載の太陽電池モジュール用シート。
  8. 前記イソシアネート化合物として、イソシアネート基がブロック基で保護されたブロックイソシアネート化合物を含むことを特徴とする、請求項6または7に記載の太陽電池モジュール用シート。
  9. 前記C層が、水酸基を有するアクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、及び白色以外の顔料を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シート。
  10. 前記白色以外の顔料として、黒色顔料を含むことを特徴とする、請求項9に記載の太陽電池モジュール用シート。
  11. ISO2409(2013年版)の記載に従って測定したA層及びC層の表層凝集強度が、クラス0であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シート。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シートを有する太陽電池モジュールであって、前記太陽電池モジュール用シートのA層側の面およびC層側の面に、配線が存在することを特徴とする、太陽電池モジュール。
  13. 請求項1〜11のいずれかに記載の太陽電池モジュール用シートを有する太陽電池モジュールであって、前記太陽電池モジュール用シートのC層が、裏面側封止材と接することを特徴とする、太陽電池モジュール。

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