JP2017212438A - 太陽電池モジュール用バックシート及び太陽電池モジュール - Google Patents

太陽電池モジュール用バックシート及び太陽電池モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、太陽電池モジュールとした後にも長期間に亘って十分な絶縁性を有する太陽電池モジュール用バックシート、及び絶縁性に優れた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。【解決手段】 層を構成する全成分を100質量%としたときに、ポリエステル樹脂とフッ素樹脂を合計で50質量%より多く含む2つの層(A層、B層)と、接着層とを有し、B層、接着層、及びA層がこの順に位置し、B層がA層よりも無機粒子を多く含み、かつ全体厚みが300μmを超え425μm以下であることを特徴とする、太陽電池モジュール用バックシート。【選択図】図1

Description

太陽電池モジュール用バックシート及び太陽電池モジュールに関するものである。
近年、二酸化炭素の増加による温室効果で地球の温暖化が生じることが予測され、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーへの要求が高まっている。このような状況下で、太陽電池モジュールを利用した太陽光発電は、安全性と汎用性の高さから非常に注目されている。一般に、太陽電池モジュールは、受光面側から順に透明基板、表側封止材、光電変換を行う発電素子、裏側封止材、および太陽電池モジュール用バックシートが積層された概略構成を有する。
太陽電池モジュール用バックシートは、太陽電池モジュールの受光面側と反対側(裏側)の面を保護する部材であり、長期間に亘って高温度、高湿度、高電圧下にさらされるため、高い耐熱性、耐候性、水蒸気バリア性、及び絶縁性が要求される。そして、近年、太陽電池モジュールの発電効率向上に伴いシステム電圧がより高電圧化する傾向にあるため、太陽電池モジュール用バックシートの絶縁性の向上が試みられている。
太陽電池モジュール用バックシートの絶縁性を向上させる技術としては、例えば、特許文献1に示すような熱可塑性樹脂と表面抵抗の調整により絶縁性を担保する技術や、特許文献2に示すように、単にシートの厚みを250μmから400μmと厚くすることで良好な絶縁性を担保する技術が提案されている。
特開2015−146411号公報 特開2015−192107号公報
しかしながら、特許文献1や2に示すような技術により得られる太陽電池モジュール用バックシートを用いた場合、太陽電池モジュールの生産工程でシートの厚みが減少する可能性が有り、太陽電池モジュールとした後に長期間に亘って十分な絶縁性能を担保することが困難であるという問題点がある。
本発明はかかる従来技術の問題点を改良し、太陽電池モジュールとした後にも長期間に亘って十分な絶縁性を有する太陽電池モジュール用バックシート、並びに絶縁性に優れた太陽電池モジュールを提供することをその課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、下記の構成からなる。
(1) 層を構成する全成分を100質量%としたときに、ポリエステル樹脂とフッ素樹脂を合計で50質量%より多く含む2つの層(A層、B層)と、接着層とを有し、B層、接着層、及びA層がこの順に位置し、B層がA層よりも無機粒子を多く含み、かつ全体厚みが300μmを超え425μm以下であることを特徴とする、太陽電池モジュール用バックシート。
(2) 前記ポリエステル樹脂と前記フッ素樹脂の少なくとも一方のJIS K7121(1987)に規定の方法により得られる融点が150℃以上であることを特徴とする、(1)に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
(3) 層を構成する全成分を100質量%としたときに、次の群1から選択される成分を単独又は合計で50質量%よりも多く含む層(C層)を有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
群1:ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート共重合体
(4) 前記C層、前記A層、前記接着層、及び前記B層がこの順に位置することを特徴とする、(3)に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
(5) 熱抵抗値が5K/W以下であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用バックシート。
(6) 前記A層がポリエステル樹脂を50質量%より多く含む層であって、かつ、空洞を含むことを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用バックシート。
(7) 700〜1,000nmにおける平均反射率が70%以上であることを特徴とする、(6)に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
(8) 気中法における部分放電の最大許容システム電圧が1,200V以上であることを特徴とする、(6)又は(7)に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
(9) 150℃で30分間の熱処理を行った後の熱収縮率の最大値が、0.0%以上1.5%以下であることを特徴とする、(6)〜(8)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用バックシート。
(10) (1)〜(9)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用バックシートを有する、太陽電池モジュール。
本発明によれば、太陽電池モジュールとした後にも長期間に亘って十分な絶縁性を有する太陽電池モジュール用バックシート、及び絶縁性に優れた太陽電池モジュールを提供することが可能である。
本発明の一実施態様に係る太陽電池モジュール用バックシートの側面図(A層、B層が単層構成である態様)。 本発明の一実施態様に係る太陽電池モジュール用バックシートの側面図(A層、B層がいずれも積層構成である態様)。 本発明の一実施態様に係る太陽電池モジュール用バックシートの側面図(A層と接着層の間に機能層が存在する態様)。 本発明の一実施態様に係る太陽電池モジュール用バックシートの側面図(C層が存在する態様)。 本発明の一実施態様に係る太陽電池モジュールを受光面と垂直な面で切断したときの断面図である。 太陽電池モジュールの生産工程を模擬した熱プレスを模式的に示す側面図である。 本発明の一実施態様に係る太陽電池モジュール用バックシートのA層の厚み方向断面図(A層が積層構成であり、空洞を含む態様)。
以下本発明の太陽電池モジュール用バックシートについて説明する。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、層を構成する全成分を100質量%としたときに、ポリエステル樹脂とフッ素樹脂を合計で50質量%より多く含む2つの層(A層、B層)と、接着層とを有し、B層、接着層、及びA層がこの順に位置し、B層がA層よりも無機粒子を多く含み、かつ全体厚みが300μmを超え425μm以下であることが重要である。
層を構成する全成分を100質量%としたときに、ポリエステル樹脂とフッ素樹脂を合計で50質量%より多く含むとは、層を構成する全成分を100質量%としたときのポリエステル樹脂の含有量(質量%)と、層を構成する全成分を100質量%としたときのフッ素樹脂の含有量(質量%)の合計が50質量%を超えることをいう。
このとき、ポリエステル樹脂とフッ素樹脂の両方を含むことは必須でなく、ポリエステル樹脂とフッ素樹脂の少なくとも一つを、層を構成する全成分100質量%に対して50質量%を超えて含んでもよい。また、A層とB層で樹脂組成が同じであっても異なっていてもよい。
また、A層及びB層は、本発明の効果を損なわない限り、単層構成であっても、「層を構成する全成分を100質量%としたときに、ポリエステル樹脂とフッ素樹脂を合計で50質量%より多く含む」との要件を満たす層を複数有し、かつ、これらの層の間に該要件を満たさない層を含まない積層構成であってもよい。
図1と図2は本発明の一実施態様に係る太陽電池モジュール用バックシートの側面図であり、図1はA層とB層が共に単層構成である態様を、図2はA層とB層がいずれも積層構成である態様を表している。A層が積層構成を有する場合においては、「層を構成する全成分を100質量%としたときに、ポリエステル樹脂とフッ素樹脂を合計で50質量%より多く含む」との要件を満たす層全体(図2の6)をA層とする。B層についても同様である(図2の7)。
接着層とは、層間の接着を担う層であり、その詳細については後述する。
B層がA層よりも無機粒子を多く含むとは、B層を構成する全成分を100質量%としたときのB層における無機粒子の含有量(質量%)が、A層を構成する全成分を100質量%としたときのA層における無機粒子の含有量(質量%)よりも大きいことをいう。但し、A層が積層構成を有する場合は、A層を構成する各層(図2の6−A〜6−C)のうち、層を構成する全成分を100質量%としたときの該層における無機粒子の含有量(質量%)が最も大きい層をA層として扱う。B層が積層構成の場合も同様である。
B層、接着層、及びA層がこの順に位置するとは、B層と接着層の間や接着層とA層の間に他の層が存在するか否かを問わず、B層、接着層、及びA層がこの順に存在する状態をいう。B層、接着層、及びA層以外の層を有しながら該要件を満たす態様としては、例えば、図3に示すようにA層と接着層の間に機能層(「層を構成する全成分を100質量%としたときに、ポリエステル樹脂とフッ素樹脂を合計で50質量%より多く含む」との要件を満たさないもの。)を有する態様が挙げられる。機能層とは、太陽電池モジュール用バックシートとしたときに何らかの機能を発現する層をいい、例えば、金属蒸着により形成する水蒸気バリア層等が該当する。
全体厚みとは、太陽電池モジュール用バックシート全体の厚み方向の長さをいい、これは電界放射型走査電子顕微鏡で撮影した画像を測長することにより測定することができる。なお、厚み方向とは、シート面と垂直な方向をいう。
本発明においてポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体(以下、これらを総称してジカルボン酸等ということがある。)とジオール又はその誘導体(以下、これらを総称してジオール等ということがある。)が縮重合した樹脂、一分子内にカルボキシル基と水酸基を有する化合物が縮重合した樹脂、及びこれらの2つの縮重合の組み合わせにより得られる樹脂をいう。
ジカルボン酸等としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸などの芳香族ジカルボン酸、及びそのエステル誘導体などを単独で又は複数種類を組み合わせて用いることができる。
また、上述のジカルボン酸等の少なくとも一方のカルボキシ末端に、l−ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類およびその誘導体や該オキシ酸類が複数個連なったもの等を縮合させたジカルボキシ化合物を用いてもよい。
ジオール等としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール、ビスフェノールA、1,3−ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香族ジオールなどを単独で又は複数種類を組み合わせて用いることができる。
また、上述のジオール等の少なくとも一方のヒドロキシ末端に上記以外の水酸基を有する化合物を縮合させて形成されるジヒドロキシ化合物も用いてもよい。
一分子内にカルボキシル基と水酸基を有する化合物の例としては、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類およびその誘導体、オキシ酸類のオリゴマー、ジカルボン酸の一方のカルボキシル基にオキシ酸が縮合したもの等があげられる。
A層、B層におけるポリエステル樹脂は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリ−1,4−シクロへキシレンジメチレンテレフタレート等を単独で又は複数種類を混合して用いることができる。中でも製膜性の観点から、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用いることが好ましく、さらに接着層との密着性も考慮すると、ポリエチレンテレフタレートを用いることがより好ましい。
ここでポリエチレンテレフタレートとは、ジオール等成分全100モル%中にエチレングリコール成分を55モル%以上100モル%以下含み、かつ、ジカルボン等酸成分全100モル%中にテレフタル酸成分を55モル%以上100モル%以下含むホモポリエステル樹脂又はコポリエステル樹脂をいう。なお、ジオール等成分とは、縮重合によりポリマー鎖中に組み込まれた成分のうちジオール等に由来するものをいい、ジカルボン酸等成分とは、縮重合によりポリマー鎖中に組み込まれた成分のうちジカルボン酸等に由来するものをいう。
A層、B層におけるポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、太陽電池モジュール用バックシートとしたときの耐湿熱性向上の観点から、35当量/トン以下であることが好ましく、30当量/トン以下であることがより好ましく、25当量/トン以下であることがさらに好ましく、20当量/トン以下であることが特に好ましく、17当量/トン以下であることが最も好ましい。ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量の下限は、接着層との密着性の観点から、7当量/トンであることが好ましく、11量/トンであることがより好ましい。末端カルボキシル基量が7当量/トン未満であると表面の極性末端基が不足し、A層やB層と接着層との密着強度が低下する場合がある。なお、ここで末端カルボキシル基量とは、Mauliceの方法に準じて測定したものをいう。(文献:M.J. Maulice, F. Huizinga, Anal.Chim.Acta,22 363(1960))
末端カルボキシル基量を上記好ましい範囲とする手段は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、重合時の温度や固相重合の時間を調節する方法が挙げられる。より具体的には、重合時の温度を高くすることで末端カルボキシル基量を増加させることができ、固相重合の時間を長くすることで末端カルボキシル基量が減少させることができる。
A層、B層におけるポリエステル樹脂の固有粘度(IV)は、0.63dl/g以上0.80dl/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.65dl/g以上0.80dl/g以下、さらに好ましくは0.67dl/g以上0.80dl/g以下である。ポリエステル樹脂の固有粘度が0.63dl/g未満であると、A層やB層と接着層との密着性や、各層の耐湿熱性が低下することがあり、一方、0.80dl/gを超えると、ポリエステル樹脂の押出性が悪くなることがある。すなわち、A層、B層におけるポリエステル樹脂の固有粘度を0.63dl/g以上0.80dl/g以下とすることで、層間密着性、耐湿熱性、及び加工性が向上する。なお、ここで固有粘度とは、オルトクロロフェノールに固形分が完全になくなるまで溶解させ、その溶液の25℃での粘度をオストワルド粘度計により測定したものをいう。
固有粘度を上記好ましい範囲とする手段は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、重合時の温度や固相重合の時間を調節する方法が挙げられる。より具体的には、固相重合時の温度を高く、時間を短くすることで固有粘度を減少させることができ、固相重合時の温度を低く、時間を長くすることで固有粘度を増加させることができる。
A層、B層におけるポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、8,000〜40,000であることが好ましく、より好ましくは9,000〜30,000、さらに好ましくは10,000〜20,000である。ポリエステル樹脂の数平均分子量が8,000に満たないと、太陽電池モジュール用バックシートとしたときの耐湿熱性、耐熱性、及び耐久性が低下することがあり、一方、40,000を超えると、重合が困難であり、重合できたとしてもその押出性が悪くなることがある。なお、ここで数平均分子量とは、GPC法により測定したものをいう。
数平均分子量を上記好ましい範囲とする手段は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、重合時の温度や固相重合の時間を調節する方法が挙げられる。より具体的には、固相重合時の温度を高く、時間を短くすることで数平均分子量を減少させることができ、固相重合時の温度を低く、時間を長くすることで固有粘度を増加させることができる。
本発明においてフッ素樹脂とは、樹脂を形成する全原子100モル%中、フッ素原子を20モル%以上含む樹脂のことをいう。
本発明のA層やB層におけるフッ素樹脂は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン−六フッ化ポリプロピレン共重合体(FEP)等を単独で又は複数種類を混合して用いることができる。中でも、太陽電池モジュールとしたときの長期耐久性の観点から、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンを用いることが好ましい。
A層、B層におけるポリエステル樹脂、フッ素樹脂、又はこれらの混合物には、後述する空洞核剤、無機粒子以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、有機系/無機系の易滑剤、有機系/無機系の微粒子、充填剤、核剤、染料、カップリング剤等の添加剤を一種類以上含有してもよい。例えば、紫外線吸収剤を含有することにより、紫外線によるポリエステル樹脂の劣化が軽減され、太陽電池モジュール用バックシートの耐紫外線性が向上する。また、帯電防止剤を含有することにより、太陽電池モジュール用バックシートの絶縁性が向上する。
本発明において接着層は、層間の密着性を向上させることができる層であれば、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。接着層には、例えばアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸2−エチルヘキシルエステルなどのアクリル系のホモポリマー、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリルおよびスチレンなどとの共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、およびメタクリル酸などのモノマーをエチレンと共重合させたエチレン共重合体系接着剤、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂などからなるポリオレフィン系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレンおよびイソプレンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケートおよび低融点ガラス等からなる無機系接着剤等(以下、これらのホモポリマーや接着剤を総称して、各種接着剤ということがある。)を用いることができる。これらの中でも、ポリエステル樹脂やフッ素樹脂との密着性の観点から、ポリウレタン系接着剤を用いることが好ましい。ここでポリウレタン系接着剤とは、接着剤を乾燥させた後の成分全体100質量%のうち、ポリウレタンが50質量%を超えるものをいう。他の接着剤についても同様である。
本発明においては、高耐熱性と耐湿熱性等に優れた太陽電池モジュール用バックシートを得るために、上記の接着剤に硬化剤や架橋剤を加えることにより、接着剤成分を架橋させることが好ましい。このような硬化剤または架橋剤としては、脂肪族系と脂環系のイソシアネート、あるいは、芳香族系イソシアネート等のイソシアネート系化合物を単独で又は複数種類を組み合わせて用いることができる。より具体的には、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、およびキシリレンジイソシアネート(XDI)等を単独で又は複数種類を組み合わせて用いることができる。この中でも、湿熱による黄変耐性があるという点から、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが好ましい。
接着層は、ロールコート法、グラビアロールコート法、及びキスコート法等のコート法、あるいは印刷法等によって、A層又はB層上に接着剤を含む塗材を塗布して乾燥させることにより形成させることができる。接着剤の塗布量は、乾燥状態の固形成分換算で0.1g/m〜10g/mの範囲内となる量とすることが好ましい。
各種接着剤は、必要に応じて、A層、B層における樹脂が含有することができるものとして先に列記した添加剤を一種類以上含有してもよい。例えば、紫外線吸収剤を含有する場合、太陽電池モジュールとしたときに接着層が紫外線劣化することを軽減できる。添加剤の含有量は、その種類や粒子形状、密度などによって異なるが、各種接着剤成分全体100質量%に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。なお、添加剤が複数成分である場合、その含有量は全ての成分を合算して算出するものとする。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートにおいては、B層がA層よりも無機粒子を多く含むことが重要である。無機粒子は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されることなく選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、アルミナ、マイカ、雲母、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、およびフッ化カルシウムを単独で又は複数種類を組み合わせて用いることができる。
中でも、取り扱いが容易な点から、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、及び硫酸バリウムのうち少なくとも一つ以上を用いることが好ましく、さらに太陽電池モジュール用バックシートの耐紫外線性を考慮すると、酸化チタンを単独で又は炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、及び硫酸バリウムと組み合わせて用いることがより好ましい。また、酸化チタンについては、例えばアナタース型酸化チタン、およびルチル型酸化チタンのような結晶型の酸化チタンを用いることが好ましく、より耐紫外線性に優れる観点から、ルチル型酸化チタンを用いることがより好ましい。
また、B層が無機粒子をA層よりも多く含むことが重要である。このような態様とすれば、太陽電池モジュールとする際に無機粒子を豊富に含む層(B層)を最外層に配置することが容易となり、太陽電池モジュールは地面からの反射光に対して良好な耐候性を有するものとなる。
A層に含まれる無機粒子の量は、A層を構成する全成分100質量%に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。A層は無機粒子を含まなくてもよいが、無機粒子を含むことで太陽電池モジュール用バックシートの隠蔽性が向上する。一方、A層に含まれる無機粒子の量を、A層を構成する全成分100質量%に対して15質量%以下に留めることにより、層間密着性や製膜性の悪化を軽減できる。
B層に含まれる無機粒子の量は、B層を構成する全成分100質量%に対して5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、8質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。B層に含まれる無機粒子の量を、B層を構成する全成分100質量%に対して5%以上とすることで、太陽電池モジュール用バックシートの耐候性が向上し、その結果、太陽電池モジュールとして長期間使用したときの樹脂の劣化や、それに伴う絶縁性の低下も軽減することができる。一方、B層を構成する全成分100質量%に対して50質量%以下に留めることにより、層間密着性や製膜性の悪化を軽減できる。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートは全体厚みが300μmを超え425μm以下であることが重要である。全体厚みが300μmを超えることで、太陽電池モジュールとしたときに長期間に亘って十分な絶縁性を容易に確保できる。また、全体厚みを425μm以下とすることで太陽電池モジュール用バックシートの巻き径が小さくなり、製品ロール1本あたりに巻き取ることができるシートの長さが長くなるため、太陽電池モジュール用バックシートや太陽電池モジュールの生産性が向上する。上記観点から、全体厚みは310μm以上400μm以下が好ましく、320μm以上390μm以下がより好ましい。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、本発明の効果を損なわない限り、A層の外側(接着層と反対側)に、層中の樹脂成分全体100質量%に対し層ポリウレタンを50%以上含む層(以下、ポリウレタン層)を有してもよい。このような態様とすることで、太陽電池モジュールとしたときにA層と裏側封止材の間にポリウレタン層が位置することとなり、A層と裏側封止材との密着性が向上する。
ここで、ポリウレタンとは、イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物から得られた重合体の総称である。イソシアネート基を有する化合物としては、トリメチレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンビス(4、1−フェニレン)−ジイソシアネート(MDI)、3−イソシアネートメチル−3、5、5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のジイソシアネートや、これらジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、これらジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート体、これらジイソシアネートのビューレット結合体、ポリメリックジイソシアネートなどがあるが、これらの中でも色調の観点からヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。水酸基を有する化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、フッ素系ポリオールなどがあるが、耐湿熱性、耐候性の観点からポリアクリルポリオール、フッ素系ポリオールが好ましい。
ポリウレタン層の厚みは1μm以上20μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。ポリウレタン層を1μm以上とすることで耐候性が向上し、20μm以下とすることで太陽電池モジュール用バックシートの加工性が向上する。
ポリウレタン層を前記A層と積層する方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、およびその他のコート法、あるいは印刷法等から適宜選択することができる。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートにおいては、ポリエステル樹脂とフッ素樹脂の少なくとも一方のJIS C7121(1987)に規定の方法により得られる融点が150℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましく、210℃以上であることがさらに好ましい。このような態様とすることで、太陽電池モジュールの生産工程における加熱に伴う樹脂の溶融が抑制され、太陽電池モジュール用バックシートの厚み減少を軽減できる。また、厚み減少を軽減する結果、絶縁破壊強さも担保することが可能となる。これらの樹脂の融点の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、製膜性の観点から、300℃あれば十分である。
ここで、「ポリエステル樹脂とフッ素樹脂の少なくとも一方のJIS C7121(1987)に規定の方法により得られる融点が150℃以上である」とは、A層又はB層中の、ポリエステル樹脂又はフッ素樹脂に該当する成分のうち少なくとも一つについて、JIS C7121(1987)に規定の方法により得られる融点が150℃以上であることをいう。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、層を構成する全成分を100質量%としたときに、次の群1から選択される成分を単独又は合計で50質量%よりも多く含む層(C層)を有することが好ましく、C層、A層、接着層、及びB層がこの順に位置することがより好ましい。この順に位置するについては、前述のB層、接着層、A層と同様に解釈することができる。
群1:ポリエチレン(以下、単にPEと記載する場合もある)、ポリプロピレン(以下、単にPPと記載する場合もある)、エチレンビニルアセテート共重合体(以下、単にEVAと記載する場合もある)
群1に記載の成分は、いずれも一般的に裏側封止材に用いられる樹脂との密着性に優れている。そのため、このような態様とすれば、太陽電池モジュールを製造する際にC層と裏側封止材とを直接積層することができるため、太陽電池モジュール用バックシートと裏側封止材との密着がより強固になる。群1から選択される成分は、裏側封止材の組成にもよるが、耐候性や水蒸気バリア性の観点から、ポリエチレンであることが好ましい。
C層の厚みは、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、30μm以上200μm以下であることが好ましく、50μm以上150μm以下であることがより好ましい。C層の厚みを30μm以上とすることで水蒸気バリア性や太陽電池モジュールとしたときの絶縁性が向上し、200μm以下とすることで太陽電池モジュール製造にあたり太陽電池モジュール用バックシートを加熱した際に、C層の樹脂が溶融してはみ出すことによる工程汚染を軽減できる。
太陽電池モジュール用バックシート全体に占めるC層の厚みは、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。また、太陽電池モジュール用バックシート全体に占めるC層の厚みの下限値は本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、裏側封止材との密着強化効果を得る観点からは5%あれば十分である。太陽電池モジュール用バックシート全体に占めるC層の厚みを50%以下に留めることにより、太陽電池モジュールの製造にあたり、太陽電池モジュール用バックシートを加熱した際に溶融する部分が少なくなり、厚みの減少が軽減される。また、太陽電池モジュール用バックシートの厚みの減少が軽減される結果、絶縁破壊強さも担保することが可能となる。
C層も、本発明の効果を損なわない範囲で、無機粒子や前述の添加剤を含んでもよい。C層がこれらの成分を含むことで、太陽電池モジュール用バックシートの性能を向上させることができる。例えば、C層が、紫外線吸収剤を含むことで耐紫外線性を、帯電防止剤を含むことで電気絶縁性を、無機粒子を含むことで反射率をそれぞれ向上させることができる。
本発明のA層とC層を積層する方法は、特に限られるものではないが、各層を直接積層する方法や、本発明の効果を阻害しない範囲で、本発明の接着剤などを介してA層とC層を積層する方法が挙げられる。C層を有し、かつ接着剤などを介してA層とC層を積層させた太陽電池モジュール用バックシートの側面図を図4に示す。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、熱抵抗値が5K/W以下であることが好ましく、4K/W以下であることがより好ましい。熱抵抗値は厚みを薄くすることや、各層の熱伝導率を高くすることで低下する。熱抵抗値を低くすると、発電時に発電素子が発生する熱が大気に放出されやすくなるため、太陽電池モジュールの発電量が向上する。さらに、発電時の太陽電池モジュール用バックシートの温度も下がるため、熱による太陽電池モジュール用バックシートの劣化も軽減される。熱抵抗値の下限値は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、実現可能な値として、2K/Wあれば十分である。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、A層がポリエステル樹脂を50質量%より多く含む層であって、かつ、空洞を含むことが好ましい。A層が空洞を含むことで、反射率や、絶縁性の指標である部分放電電圧が向上する。本発明において「空洞」とは、太陽電池モジュール用バックシートを厚み方向に潰すことなく、シート面と垂直に切断して得られる断面に観察される、面積が0.1μm以上の空隙をいう。 A層における空隙率(A層断面における空洞の占める割合)が10%以上あることが好ましく、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上である。空隙率の測定方法の詳細は後述する。A層の空隙率が高いほど後述する太陽電池モジュール用バックシートの最大許容システム電圧が向上する。A層の空隙率は、太陽電池モジュール用バックシートの最大許容システム電圧を向上させる観点から、10%以上が好ましく、15%以上が好ましい。一方、A層の空隙率を60%以下に留めることで、A層の製膜性の悪化を軽減できる。なお、A層が複数層からなる場合におけるA層の空隙率は、A層を形成する各層のうち空隙率が最も高い層の空隙率とする。
A層の内部に空洞を形成させる方法は、特に限定されるものではないが、A層中に空洞核剤を含有させた後に延伸することによって形成されるものが好ましい。
ここで、空洞核剤としてはポリエステル樹脂と非相溶であるオレフィン系樹脂などの有機系核剤や、無機粒子やガラスビーズなどの無機系核剤が挙げられる。得られる空洞の大きさを製膜条件により調整可能という観点から、空洞核剤としては有機系核剤が好ましい。
有機系核剤としてはオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロンMXD6、ナイロン6Tなどのポリアミド系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーなどのスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミドなどのスーパーエンプラ、あるいは本発明のポリエステルフィルムの構成するポリエステル樹脂と非相溶である異なる種類のポリエステル樹脂なども用いることができる。
オレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリメチルペンテンなどの脂肪族ポリオレフィン樹脂、シクロオレフィンポリマーやシクロオレフィンコポリマーなど環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられ、中でもA層に微細な空洞を形成し反射性をより高めることで出力向上性が良化する点から、有機系核剤としてはビカット軟化点が140℃以上のオレフィン系樹脂が好ましく、ビカット軟化点が180℃以上のオレフィン系樹脂がより好ましい。有機系核剤としてビカット軟化点が140℃未満のオレフィン系樹脂を用いた場合、空洞の形状が粗大化し過ぎて、太陽電池モジュール用バックシートの層間密着性や反射率が低下する場合がある。ここで、ビカット軟化点とは一定の試験荷重をかけて一定の速度で伝熱媒体を昇温させ、針状圧子が試験片の表面から1mm侵入したときの伝熱媒体の温度をいい、JIS K 7206(1999)に基づき測定することができる。
また、A層中の空洞核剤含有量は、A層の全成分100質量%に対して1質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは4質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは8質量%以上13質量%以下である。A層中の空洞核剤含有量が1質量%未満の場合、太陽電池モジュール用バックシートは密着性には優れるものの、反射性が低下することで太陽電池モジュールとしたときの出力向上性に劣ることがある。一方でA層中の空洞核剤含有量が30質量%を超える場合、太陽電池モジュールとしたときの出力向上性には優れるものの、空洞が多すぎて層間密着性に劣ることがある。
なお、A層が複数層からなる場合、A層を形成する各層のうち空洞核剤含有量が最も高い層の空洞核剤含有量を、A層の空洞核剤含有量とする。さらに有機系核剤を用いる場合、分散助剤を同時に併用することが好ましい。分散助剤としてはポリエーテル構造や屈曲骨格構造、嵩高いシクロヘキサン骨格構造などが共重合されたポリエステル系エラストマーや非晶性ポリエステル樹脂を好ましく用いることができる。分散性のさらなる向上の点からは、分散助剤を2種以上併用する態様も好ましい。
また、A層中に含まれる分散助剤量はA層を構成する全成分100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上6質量%以下である。ここでA層中に含まれる分散助剤量が1質量%未満の場合、分散助剤としての効果が不足し、層間密着性が低下することがある。一方で分散助剤量が10質量%を超える場合、分散性が過分に向上することでかえって層間密着性が低下することがあり、結晶性の低下によりA層の耐湿熱性も低下することがある。
なお、A層が複数層からなる場合、A層を形成する各層のうち分散助剤量が最も多い層の分散助剤量をA層の分散助剤量とする。
A層は、A層の厚み方向断面の観察画像内の空洞が、A層の一方の表面からもう一方の表面に面方向に垂直な直線を引き、該直線を厚み方向に4等分する3点(A層厚み方向中心点(C1点)、A層厚み方向中心点とA層表面との中間点(C2−1点)、(C2−2点))を通るA層厚み方向に垂直な直線(分割水平線)において、C1点を通る分割水平線上に存在する空洞1個当たりの平均面積をSc(μm)、C2−1点を通る分割水平線上に存在する空洞1個当たりの平均面積をScs(μm)、C2−2点を通る分割水平線上に存在する空洞1個当たりの平均面積をScs’(μm)としたとき、(Sc/Scs)、(Sc/Scs’)のうち少なくとも一方が1.1以上35以下であることが好ましく、1.5以上20以下であることがより好ましく、2.0以上15以下であることがさらに好ましい。
通常、A層が空洞を有すると反射性が向上するが、空洞部分をきっかけとして層間の剥離が生じることがある。このときA層中に含有する空洞の大きさを、(Sc/Scs)、(Sc/Scs’)のうち少なくとも一方が1.1以上35以下となるように調節すると、A層と他の層との密着性の低下を軽減することができる。この効果がいかなる理由によって起こるかは完全に明らかではないが、以下のように推定される。(Sc/Scs)、(Sc/Scs’)がいずれも1.1未満である(A層中に含有する空洞の大きさの厚み方向の傾斜が小さい)と、A層内部に微細な空洞を形成していたとしても、B層やC層と貼り合せた際に密着面を剥がそうとする力がフィルム面内に均一にかかりすぎるため層間密着性が低下する。一方で(Sc/Scs)、(Sc/Scs’)のいずれも35を超える(A層中に含有する空洞の大きさの厚み方向の傾斜が大きい)と、厚み断面内の空洞面積の偏りが大きくなり過ぎて、粗大な空洞部分から剥離が進行しやくなり結果的に層間密着性が低下する。
本発明において(Sc/Scs)や(Sc/Scs’)は、空洞の形状を前記の空洞核剤の種類や、空洞核剤量、分散剤量によって調整することにより調節することができる。例えばビカット軟化点が140℃以上のオレフィン系樹脂を有機系核剤として用いて、空洞核剤量と分散助剤量を好ましい範囲内で大きくすることで、より空洞が均一に微細化してA層中の空洞量が多くなり、(Sc/Scs)や(Sc/Scs’)が小さくなる。一方で空洞核剤量と分散助剤量を好ましい範囲内で小さくすることで、厚み断面内の空洞面積の偏りが大きくなり、(Sc/Scs)や(Sc/Scs’)が大きくなる。すなわち、A層内部の空洞核剤の種類や、空洞核剤量、分散剤量を好ましい範囲内で調整することで(Sc/Scs)、(Sc/Scs’)のうち少なくとも一方を1.1以上35以下とすることができる。
なお、(Sc/Scs)と(Sc/Scs’)のいずれもが1.1以上35以下であると、A層の両表面で密着性が優れるため、例えばA層の片面をB層、及びC層と貼り合わせた構成においても、A層両表面で優れた密着性が得られることからより好ましい。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、700〜1,000nmにおける平均反射率が70%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。一般的に、受光面側の透明基板側から受光した太陽光の一部は発電素子と発電素子の隙間を抜けて太陽電池モジュール用バックシートに入射する。この際に、太陽電池モジュール用バックシートに入射した太陽光は透明基板側に反射して発電に寄与する。そして、発電への寄与は太陽電池モジュール用バックシートの反射率が高いほど大きくなる。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、気中法における部分放電の最大許容システム電圧が1,200V以上であることが好ましく、1,500V以上であることがより好ましい。気中法における部分放電の最大許容システム電圧の測定法は後述するが、本最大許容システム電圧が高ければ、太陽電池モジュールを使用する際に太陽電池モジュール用バックシートに高電圧が印加されても、太陽電池モジュール用バックシート内部で部分放電が発生しにくくなる。その結果、太陽電池モジュール用バックシートの電気絶縁性を担保されやすくなる。気中法における部分放電の最大許容システム電圧は、太陽電池モジュール用バックシートの全体厚みを厚くするか、A層の空隙率を高めることで高くすることが可能である。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、後述する真空ラミネート工程における収縮応力を低減して、電極を取り出すため発電素子に配したリード線や太陽電池セルのズレを抑制する観点から、150℃で30分間の熱処理を行った後の熱収縮率の最大値が、0.0%以上1.5%以下であることが好ましく、0.0%以上1.0%以下であることがより好ましい。
150℃で30分間の熱処理を行った後の熱収縮率の最大値は、以下の方法により測定することができる。先ず、任意の方向を長辺とする2cm×15cmの太陽電池モジュール用バックシートサンプルを採取し、150℃で30分間の熱処理を行った後、JIS C 2151(2006)に記載の方法により長辺方向の寸法変化を測定する。次いで、先のサンプルの長辺方向より右に5°回転させて得られる直線を長辺とする2cm×15cmのサンプルを採取して同様の測定を行い、これを最初のサンプルの長辺方向との角度が175°となるまで繰り返す。得られた全ての値より最も大きな値を熱収縮率の最大値とする。なお、熱収縮率が0.0%であることは、熱処理の前後で寸法の変化がないことを意味する。また、加熱により太陽電池モジュール用バックシートサンプルが膨張する場合は、その熱収縮率はマイナス表記で表すものとする。
150℃で30分間の熱処理を行った後の熱収縮率の最大値が1.5%より大きい場合、太陽電池モジュール用バックシートの収縮応力が大きく、発電素子に配したリード線の屈曲や太陽電池セルのズレを十分に抑制できないことがある。熱収縮率の最大値が0.0%より小さい場合、後述するアニール処理(熱処理)に長時間が必要になるため、経済的に不利になることがある。
150℃で30分間の熱処理を行った後の熱収縮率の最大値を0.0%以上1.5%以下又は上記の好ましい範囲とする方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、オーブン等により150℃から180℃の温度で加熱し、太陽電池モジュール用バックシートを構成する少なくとも一つの層を収縮させるアニール処理と呼ばれる方法が挙げられる。
次に、A層及びB層がいずれも単層構成かつポリエステル樹脂を主成分とする本発明の太陽電池モジュール用バックシートの製造方法について説明する。これは本発明の太陽電池モジュール用バックシートの一例であり、本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、かかる例によって得られる物のみに限定されない。
まず、本発明のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体と、ジオールを周知の方法でエステル交換反応、もしくはエステル化反応させることによって得ることができる。これらの反応においては、公知の触媒、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、及びリン化合物などを用いることが好ましく、重合触媒としてアルカリ金属化合物、マンガン化合物、アンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を用いることが好ましい。太陽電池モジュール用バックシート用フィルムの層間密着性をより高める観点からは、ナトリウム化合物、マンガン化合物を用いることがより好ましい。触媒の添加方法については、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、例えば、マンガン化合物を用いる場合は、そのまま添加することが好ましい。
また、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、重合時の温度や、ポリエステル樹脂を重合した後、190℃以上ポリエステル樹脂の融点未満の温度で、減圧または窒素ガスのような不活性気体の流通下で加熱する、いわゆる固相重合の時間によってコントロールすることができる。具体的には重合時の温度が高くなると末端カルボキシル基量が増加し、固相重合の時間を長くすると末端カルボキシル基量が低くなる。
本発明のポリエステル樹脂に後述する空洞核剤や無機粒子などを含有させる方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、ベント式二軸混練押出機やタンデム型押出機を用いて予め原料を溶融混練して作製したマスターペレットをブレンドする方法が好ましい。この際、マスターペレットは熱履歴を受けるため少なからず熱劣化が進行する懸念がある。そのため、より高濃度で空洞核剤や無機粒子を含有するマスターペレットを作製し、それらを混合希釈して用いる方法がより好ましい。
次に本発明のポリエステル樹脂を使用した層の製膜方法は、層を構成する全成分100質量%に対してポリエステル樹脂を50%以上含有するように調整した原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。
次いで、押し出されたシート状物をキャストドラムで冷却して無配向シートを得る。キャストドラムの温度は80℃以下であることが好ましく、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。キャストドラムの温度が80℃を超えると、ポリエステル樹脂の結晶化が進行しすぎて後述する延伸時に破れが発生する場合がある。キャストドラムの温度の下限はキャストドラムに結露が発生しない温度であれば特に制限は無く、30℃であれば十分である。
続いて得られた無配向シートを70〜140℃の温度に加熱されたロール群に導き、シートの進行方向(以下、長手方向ということがある。)に延伸し、20〜50℃の温度のロール群で冷却する。続いて、シートの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、80〜150℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向及び厚み方向に垂直な方向(以下、幅方向ということがある。)に延伸し、二軸配向シートを得る。この際、延伸倍率は面倍率で2倍以上30倍以下の倍率であることが好ましく、より好ましくは4倍以上25倍以下、更に好ましくは6倍以上20倍以下である。前記の倍率で延伸することにより二軸配向シートとすることができ、耐湿熱性が向上する。面倍率が2倍に満たない場合、耐湿熱性が劣る場合がある。一方で面倍率が30倍を超えると製膜機械への負荷が大きくなりすぎることがある。
さらに長手方向と幅方向の延伸倍率の差は4倍以下が好ましく、より好ましくは2倍以下、更に好ましくは1倍以下である。前記の延伸倍率の差が4倍を超えると製膜機械への負荷が大きくなりすぎることがある。
すなわち、長手方向と幅方向の延伸倍率の差を4倍以下、面倍率を2倍以上30倍以下の条件で無配向シートを延伸することで、優れた耐湿熱性を有し、加工性にも優れたポリエステル樹脂シートを形成することができる。
続いて延伸後にテンター内で熱固定を行う。この時の設定温度は150℃以上250℃以下が好ましく、より好ましくは170℃以上230℃以下、更に好ましくは180℃以上220℃以下である。熱固定を150℃未満で行った場合、太陽電池モジュール用バックシート用フィルムの熱寸法安定性が低下し、バックシート加工時にカール等の問題が発生することがある。一方で250℃を超える温度で熱固定を行った場合、フィルム内の配向が小さくなり、シートの耐湿熱性が低下することがある。
さらに、太陽電池モジュールを製造する際の真空ラミネート工程における収縮応力を低減するため、A層及び/またはB層へのアニール処理を行ってもよい。アニール処理は、例えばA層及び/またはB層をオーブンで加熱することにより行うことができる。アニール処理における温度は150〜180℃が好ましく、また、アニール処理を行う時間は20〜60秒が好ましい。A層やB層は、取扱が容易な大きさに切断してからアニール処理をしても、ロールから巻き出してオーブンを通過させてアニール処理をしてもよいが、連続処理が可能で生産性に優れることから、ロールから巻き出してオーブンを通過させる方法が好ましい。また、接着層をコート法や印刷法等で形成する際の乾燥工程において、オーブンの温度を上記の好ましい範囲に設定し、接着層の形成とアニール処理を同時に行ってもよい。
このようにして得られたA層及びB層に相当する層を接着剤で貼り合わせることにより、本発明の太陽電池モジュール用バックシートを得ることができる。
(太陽電池モジュール)
次に、本発明の太陽電池モジュールについて説明する。本発明の太陽電池モジュールは、前記の太陽電池モジュール用バックシートを有する。
本発明の本発明の一実施態様に係る太陽電池モジュールを受光面と垂直な面で切断したときの断面図を図5に示す。電気を取り出すリード線(図5には示していない)を接続した発電素子8をエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)などの透明な表側封止材7、裏側封止材9で封止したものに、ガラスなどの透明基板10と太陽電池モジュール用バックシート1として貼り合わせた構成を有するが、これに限定されず任意の構成に用いることができる。
太陽電池モジュールは、通常、上記の各部材を積層させ、熱圧着して一体化することにより製造することができる。各部材を熱圧着して一体化する工程は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、真空ラミネート工程を用いることが一般的である。具体的には、各部材を上記の順に積層したものを真空ラミネータにより加熱しつつ減圧し、真空ラミネータのダイヤフラムシートで1気圧程度の圧力でプレスする。この過程で封止材が溶融・架橋して硬化し、ガラスなどの透明基板から太陽電池モジュール用バックシートまでの各部材が一体化される。
ここで、本発明の太陽電池モジュールは、受光面から、透明基板、表側封止材、発電素子、裏側封止材、及び太陽電池モジュール用バックシートの順に位置する。ここで太陽電池モジュール用バックシートはA層がB層と裏側封止材の間に位置するように配置することが、太陽電池モジュール用バックシートの地面からの反射光による劣化を防ぐ点で好ましい。
発電素子は、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、結晶シリコン系、多結晶シリコン系、微結晶シリコン系、アモルファスシリコン系、銅インジウムセレナイド系、化合物半導体系、色素増感系など、目的に応じて任意の素子を、所望する電圧あるいは電流に応じて複数個を直列または並列に接続して使用することができる。透光性を有する透明基板は太陽電池モジュールの最表層に位置するため、高透過率のほかに、高耐候性、高耐汚染性、高機械強度特性を有する透明材料が使用される。
本発明の太陽電池モジュールにおいて、透光性を有する透明基板は上記特性と満たせばいずれの材質をも用いることができ、その例としてはガラス、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂などのフッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく挙げられる。
ガラスの場合、強化されているものを用いるのがより好ましい。また樹脂製の透光基材を用いる場合は、機械的強度の観点から、上記樹脂を一軸または二軸に延伸したものも好ましく用いられる。また、これら透明基板には発電素子の封止材料であるEVA樹脂などとの接着性を付与するために、表面に、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、易接着処理を施すことも好ましい。
発電素子を封止するための表側封止材、裏側封止材は、発電素子の表面の凹凸を樹脂で被覆し固定し、外部環境から発電素子を保護し、電気絶縁の目的の他、透光性を有する基材やバックシートと発電素子に接着するため、高透明性、高耐候性、高接着性、高耐熱性を有する材料が使用される。その例としては、エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく用いられる。
以上のように、本発明の太陽電池モジュール用バックシートを太陽電池モジュールに搭載することにより、従来の太陽電池モジュールと比べて太陽電池モジュールの電気絶縁性が向上するとともに、長期間屋外に置かれた場合でも太陽電池モジュール用バックシートの耐候性も向上する。本発明の太陽電池モジュールは、太陽光発電システム、小型電子部品の電源など、屋外用途、屋内用途に限定されず各種用途に好適に用いることができる。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
〔特性の測定方法および評価方法〕
実施例中に示す測定や評価は次に示すような条件で行った。
(各フィルムの物性評価方法)
貼り合わせて太陽電池モジュール用バックシートとする前の各フィルムの特性について、以下の方法により評価した。
(1)厚みと空隙率
(1−1)各層の厚み及びフィルムの全体厚み
太陽電池モジュール用バックシートの各層として用いるフィルム(後述)の上に、幅方向と平行に線を引き、その上における点を任意に10個選定した。次いで、これらの点において、フィルムを厚み方向に潰すことなく、ミクロトームを用いてフィルム面と垂直な面で切断した。このようにして得られた切断面を、日立製作所製電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)S−800を用いて厚み方向全体が観察できる最大の倍率で観察し、その画像を機器に取り込み、各層の厚み及びフィルムの全体厚みを測定した。10点の測定値の平均値をそれぞれ各層の厚み及びフィルムの全体厚みとした。
(1−2)空隙率
「(1−1)各層の厚み及びフィルムの全体厚み」の項で機器に取り込んだ画像より、フィルムを構成する各層のうち空洞が最も多く含まれている層を特定した。次いで、該層における空洞部分のみを透明なフィルム上にトレースし、イメージアナライザー(ニレコ株式会社製:“ルーゼックス”(登録商標)IID)を用いて測定した空洞面積と、観察画像内の該層に相当する部分の面積との比を算出した。10点の測定値の平均値を該フィルムの空隙率とした。なお、面積が0.1μmに達していない空洞は存在しないものとして扱った。
(2)空洞面積比
(2−1)空洞面積の測定
空洞面積の測定について図7に基づいて説明する。まず、(1)と同様に作製した観察断面について、フィルム(A層に相当)の厚み方向12全体が観察できる最大の倍率で観察した画像を準備した。その後、観察画像の中心部を通り、フィルムの厚み方向に垂直であり、かつ両側のフィルム表面を結ぶ直線を引き、その直線を4等分する3点(厚み方向中心点(C1点)13、厚み方向中心点と表面との中間点(C2−1点及びC2−2点)14及び15)を取り、これらの各点を通る厚み方向に垂直な線(分割水平線)16を引いた。各分割水平線16上に存在する空洞17のみを透明なフィルム上にトレースし、イメージアナライザー(ニレコ株式会社製:“ルーゼックス”(登録商標)IID)を用いて各分割水平線上に存在する空洞の平均面積を求めた。なお、トレースする空洞の個数については、観察画像内の分割水平線上に存在する空洞が20個未満の場合はすべての空洞についてトレースし、20個以上の空洞が存在する場合は空洞の重心が、C1点、C2−1点、C2−2点に近い空洞20個をそれぞれ選択してトレースを行うこととした。
(2−2)平均空洞面積比(Sc/Scs)、(Sc/Scs’)の算出
(2−1)によって得られた平均面積について、C1点を通る分割水平線上に存在する空洞1個当たりの平均面積をSc(μm)、C2−1点を通る分割水平線上に存在する空洞1個当たりの平均面積をScs(μm)、C2−2点を通る分割水平線上に存在する空洞1個当たりの平均面積をScs’(μm)として、空洞面積比(Sc/Scs)、(Sc/Scs’)を算出し、計10箇所の平均値をフィルム(A層)の平均空洞面積比(Sc/Scs)、(Sc/Scs’)とした。
(3)無機粒子量濃度の測定
事前に5mm×5mmにカットした各フィルムを、その合計の重さがそれぞれ10gとなるように計り取って耐熱るつぼに入れ、耐熱るつぼを含む重量(熱分解前の重量)を測定した。その後、耐熱るつぼを800℃のオーブンに入れて酸素が十分に供給される条件下で樹脂成分の熱分解を行い、全ての樹脂が熱分解した後の耐熱るつぼを含む重量(熱分解後の重量)を測定した。得られた値より、以下の式に従い、無機粒子量濃度(%)を算出した。
無機粒子量濃度(%) = (熱分解後の重量 / 熱分解前の重量) ×100
(4)各フィルムの主成分である樹脂の融点
各フィルムについて、JIS K 7191(1987)のDSC法による測定を行った。得られた波形において、最も高さの高いピークに相当する温度をフィルムの主成分である樹脂の融点とした。
(バックシートの特性評価方法)
太陽電池モジュール用バックシートの特性について、以下の方法により評価した。
(5)熱プレス後の厚みと絶縁破壊強さ
(5−1)熱プレス後の厚み
モジュール生産工程における太陽電池モジュール用バックシートの厚み変化を模擬する試験として、太陽電池モジュール用バックシートに熱プレスを行った後に、厚みと絶縁破壊強さの測定を行った。熱プレスは、真空ラミネータの熱板の上に、透明基板として190mm×190mmのガラス(旭硝子社製太陽電池用3.2mm厚白板熱処理ガラス)及び、金属ワイヤーとして直径0.8mm、長さ100mmの半田線(半田線全体100質量%に対し、Sn:60質量%、Pb:40質量%)、190mm×190mmの太陽電池モジュール用バックシートをこの順に重ねて積層した状態で、熱板設定温度を150℃として4分間減圧し、その後100kPaで10分間プレスした(図6)。プレスされた積層体から、ガラスを取り除き、得られた太陽電池モジュール用バックシートサンプルを得た。次いで、得られた太陽電池バックシート用サンプルの一部をミクロトームにより厚み方向に切断し、切片サンプルを得た。切片サンプルの断面を、日立製作所製電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)S−800を用いて、太陽電池モジュール用バックシートの断面全体が確認できる最も高い倍率で画像を撮影し、最も厚みが薄くなっている部分を特定し、その部分の厚みを測定した。得られた熱プレス後の厚みを以下の基準で評価し、A、Bを合格とした。
A:熱プレス後の厚みが300μm以上
B:熱プレス後の厚みが220μm以上300μm未満
C:熱プレス後の厚みが220μm未満
(5−2)絶縁破壊強さ
また、熱プレス前後の太陽電池モジュール用バックシートサンプルを用いて、金属ワイヤーが直接試験電極と接するようにした状態で、JIS C 2151(2006)に基づき熱プレス後の絶縁破壊強さを測定した。得られた絶縁破壊強さを以下の基準で評価し、A、Bを合格とした。
A:熱プレス後の絶縁破壊強さが30kV以上
B:熱プレス後の絶縁破壊強さが25kV以上30kV未満
C:熱プレス後の絶縁破壊強さが25kV未満
(6)耐紫外線性(紫外線処理試験時の色調変化)
(6−1)色調(b値)測定
JIS−Z−8722(2000)に基づき、分光式色差計SE−2000(日本電色工業(株)製、光源 ハロゲンランプ 12V4A、0°〜−45°後分光方式)を用いて反射法により太陽電池モジュール用バックシートのB層表面の色調(b値)をn=3で測定し、その平均値として求めた。
(6−2)紫外線照射処理試験前後の色調変化(Δb)
本発明の太陽電池モジュール用バックシートにアイスーパー紫外線テスターS−W151(岩崎電気(株)製)にて、温度60℃、相対湿度60%、照度100mW/cm(光源:メタルハライドランプ、波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)の条件下でB層側に48時間照射した前後の色調(b値)を前記(5−1)項に従い測定し、次の式(α)より紫外線照射後の色調変化(Δb)を算出した。
紫外線照射後の色調変化(Δb)=b1−b0 式(α)
b0:紫外線照射前の色調(b値)
b1:紫外線照射後の色調(b値)
得られた紫外線処理試験前後の色調変化(Δb)から、耐紫外線性を以下の基準で評価し、A、Bを合格とした。
A:紫外線照射処理試験前後の色調変化(Δb)が3未満
B:紫外線照射処理試験前後の色調変化(Δb)が3以上6未満
C:紫外線照射処理試験前後の色調変化(Δb)が6以上
(7)A層、B層間密着強度測定
(7−1)貼り合わせサンプルの作製
本発明のA層、B層を接着剤(“タケラック”(登録商標)A310(三井武田ケミカル(株)製)90質量部、“タケネート”(登録商標)A3(三井武田ケミカル(株)製)10質量部を混合したもの)にて、乾燥後の接着剤塗布量が5g/mとなるようA層に接着剤を塗布し、B層と貼り合わせた後、40℃に温度調整した恒温槽で48hrエージングを行った。
(7−2)層間密着性評価
「(7−1)貼り合わせサンプルの作製」で得られたサンプルについて、本発明のA層側を水平に固定して、B層側を200mm/分の速度で180°剥離させて剥離試験を実施した際のA層、B層間密着強度(N/15mm)を測定した。評価は以下の基準で行い、A、Bを合格とした。
A:A層、B層間密着強度が6N/15mm以上
B:A層、B層間密着強度が3N/15mm以上、6N/15mm未満
C:A層、B層間密着強度が3N/15mm未満
(8)裏側封止材密着強度測定
(8−1)封止材密着強度測定サンプルの作製
105mm×105mmのガラス(旭硝子社製太陽電池用3.2mm厚白板熱処理ガラス)と、表側封止材として105mm×105mmのエチレンビニルアセテート(サンビック社製封止材0.5mm厚)と、裏側封止材として105mm×105mmのエチレンビニルアセテート(サンビック社製封止材0.5mm厚)と、105mm×105mmに裁断した本発明の太陽電池バックシートをA層がB層と裏側封止材の間に位置するような向きとなるように、順に重ねて固定し、該ガラスを真空ラミネータの熱板と接触するようにセットし、熱板温度145℃、真空引き4分、プレス1分および保持時間10分の条件で、真空ラミネートを行い評価用の裏側封止材密着強度測定用サンプルを作製した。
(8−2)太陽電池モジュール用バックシートの裏側封止材密着強度
「(8−1)封止材密着強度測定サンプルの作製」で得られたサンプルについて、ガラスを含む層を水平に固定して、太陽電池モジュール用バックシート側を200mm/分の速度で180°剥離させて剥離試験を実施した際の剥離強度(N/10mm)を測定し、太陽電池モジュール用バックシートの裏側封止材密着強度を以下の基準で評価した。太陽電池モジュール用バックシートの裏側封止材密着強度は、A、Bを合格とした。
A:剥離強度が80N/10mm以上
B:剥離強度が30N/10mm以上、80N/10mm未満
C:剥離強度が30N/10mm未満
(9)熱抵抗値評価
本発明の太陽電池モジュール用バックシートの熱抵抗値評価として、ATSM E 1530−11に基づき試験を行った。下部ヒーターを30℃、上部ヒーターを80℃とし、n=3で測定し、その平均値を熱抵抗値とした。熱抵抗値は以下の基準で評価し、A、Bを合格とした。
A:熱抵抗値が4K/W以下
B:熱抵抗値が4K/Wを超えて5K/W以下
C:熱抵抗値が5K/Wを超える。
(10)平均反射率:
太陽電池モジュール用バックシートを5cm×5cmで切り出した。島津製作所製分光光度計(UV−3150 UV−VIS−NIR Spectrophotometer)に付属の積分球を用いた基本構成で700nm〜1,000nmにおける平均反射率の測定を行った。測定は、装置付属の硫酸バリウムの副白板を基準とし、測定条件としてスリットは12nmとし、サンプリングピッチは1nmとし、スキャンスピードは高速とした。また、測定光の入射面が裏側封止材と接する側となるようにサンプルを配置して測定を実施した。得られた平均反射率の測定結果から、平均反射率を以下の基準で評価し、A、Bを合格とした。
A:平均反射率が90%以上
B:平均反射率が70%以上90%未満
C:平均反射率が70%未満
(11)部分放電の最大許容システム電圧の測定
200mm×300mmの太陽電池モジュール用バックシートをMPS社製部分放電試験機“TPP5”を使用し、部分放電電圧を測定した。温度23±2℃、湿度50±5%RHに調節された部屋において、0Vから印加電圧を上昇させ電荷量が2pCとなる電圧を開始電圧とした。この開始電圧の1.1倍の電圧まで印加電圧を上昇させ、この電圧で10秒間印加した。その後、印加電圧を下げていき電荷が消滅する電圧(閾値1pC)となる電圧を部分放電消滅電圧(V)とした。この部分放電消滅電圧のn=10での測定結果の平均、標準偏差、安全係数(1.25、1.2)、交流から直流への変換を用いて、以下の式に従い計算し、得られた値を部分放電の最大許容システム電圧とし、下記の評価基準に従って評価した。A、Bを合格とした。
最大許容システム電圧(V)=(部分放電消滅電圧平均値−部分放電消滅電圧標準偏差)×1.414/(1.2×1.25)
○:部分放電の最大許容システム電圧が1,500V以上
△:部分放電の最大許容システム電圧1,200V以上1,500V未満
×:部分放電の最大許容システム電圧が1,200V未満
(12)熱収縮率
先ず、任意の直線を長辺とする2cm×15cmの太陽電池モジュール用バックシートサンプルを採取し、エスペック社製オーブン(GPHH−202)により150℃で30分間の熱処理を行った後、JIS C 2151(2006)に基づいて長辺方向の寸法変化率を測定した。次いで、先のサンプルの長辺方向より右に5°回転させて得られる直線を長辺とする2cm×15cmのサンプルを採取して同様の測定を行い、これを最初のサンプルの長辺方向との角度が175°となるまで繰り返した。得られた全ての値の最大値を熱収縮率の最大値とし、以下の基準で熱収縮率を評価した。
A:0.0%以上1.0%以下
B:1.0%を超え1.5%以下
C:A、Bのいずれにも該当しない。
〔各層として用いたフィルム〕
1.ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載)フィルムA(PET−A)
P1層として、ポリエチレンテレフタレートのチップ96質量部と、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン50質量%を分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ全体100質量%に対して二酸化チタンを50質量%含有)を4質量部とを、180℃の温度で3時間真空乾燥した後、280℃の温度に加熱された押出機Aに供給し、Tダイからシート状に成形しフィルムを得た。さらに、このフィルムを、表面温度が25℃の冷却ドラムで冷却固化して得られた未延伸フィルムを、90℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向に3.4倍縦延伸し、21℃の温度のロール群で冷却した。続いて、このようにして得られた縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃の温度に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。その後、テンター内で200℃の温度の熱固定を行い、均一に徐冷後、25℃まで冷却して、巻き取り厚み150μmのPETフィルムAを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
2.PETフィルムB(PET−B)
PETフィルムAと、厚みが188μmである以外は同様にして、PETフィルムBを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
3.PETフィルムC(PET−C)
PETフィルムAと、厚みが250μmである以外は同様にして、PETフィルムCを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
4.PETフィルムD(PET−D)
PETフィルムAと、厚みが300μmである以外は同様にして、PETフィルムDを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
5.PETフィルムE(PET−E)
P1層として、ポリエチレンテレフタレートのチップ96質量部と、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン50質量%を分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ全体100質量%に対して二酸化チタンを50質量%含有)を4質量部とを、180℃の温度で3時間真空乾燥した後、280℃の温度に加熱された押出機Aに供給した。一方、P2層として、ポリエチレンテレフタレートのチップ72質量部と、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン50質量%を分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ全体100質量%に対して二酸化チタンを50質量%含有)を28質量部とを、180℃の温度で3時間真空乾燥した後、280℃の温度に加熱された押出機Bに供給し、これらのポリマーを、P1層/P2層となり、層厚み比(P1層:P2層)が40:10となるように積層装置を通して積層し、Tダイからシート状吐出させた。さらに、このシート状物を、表面温度が25℃の冷却ドラムで冷却固化して得られた未延伸フィルムを、90℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向に3.4倍縦延伸し、21℃の温度のロール群で冷却した。続いて、このようにして得られた縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃の温度に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。その後、テンター内で200℃の温度の熱固定を行い、均一に徐冷後、25℃まで冷却して、巻き取り厚み50μmのPETフィルムEを得た。同時に、無機粒子濃度を測定するためのフィルムとして、P1層、P2層それぞれの積層厚みのフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
6.PETフィルムF(PET−F)
フィルム厚み比(P1層:P2層)が60:15とした点、フィルムの厚みを75μmとした点以外はPETフィルムEと同様にして、PETフィルムFを得た。同時に、無機粒子濃度を測定するためのフィルムとして、P1層、P2層それぞれの積層厚みのフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
7.PETフィルムG(PET−G)
フィルム厚み比(P1層:P2層)を120:30とした点、フィルムの厚みを150μmとした点以外はPETフィルムEと同様にして、PETフィルムGを得た。同時に、無機粒子濃度を測定するためのフィルムとして、P1層、P2層それぞれの積層厚みのフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
8.PETフィルムH(PET−H)
P1層として、ポリエチレンテレフタレートのチップ80質量部と、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン50質量%を分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ全体100質量%に対して二酸化チタン50質量%含有)を20質量部とを、180℃の温度で3時間真空乾燥した後、280℃の温度に加熱された押出機Aに供給した。一方、P2層として、ポリエチレンテレフタレートを82質量部と、分散助剤としてポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(PBT/PTMG、商品名:東レデュポン社製“ハイトレル”(登録商標))を5質量部と、全ジカルボン酸単位100質量%に対しイソフタル酸を10mol%、及び全ジオール単位100質量%に対し分子量1,000のポリエチレングリコールを5mol%が共重合されたポリエチレンテレフタレート共重合体(PET/I/PEG)を10質量部と、非相溶ポリマーとしてポリメチルペンテン3質量部とを、調整混合し、180℃の温度で3時間乾燥させた後、280℃の温度に加熱された押出機Bに供給した。押出機に供給したこれらのポリマーを、層構成がP1層/P2層/P1層、厚み比(P1層:P2層:P1層)が10:140:10となるように積層装置を通して積層し、Tダイからシート状に吐出させた。さらに、このシート状物を、表面温度が25℃の冷却ドラムで冷却固化して得られた未延伸フィルムを、90℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向に3.4倍縦延伸し、21℃の温度のロール群で冷却した。続いて、このようにして得られた縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃の温度に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。その後、テンター内で200℃の温度の熱固定を行い、均一に徐冷後、25℃まで冷却して、巻き取り厚み160μmのPETフィルムHを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
9.PETフィルムI(PET−I)
P2層のポリエチレンテレフタレートを79質量部、ポリメチルペンテンを6質量部でとした以外はPETフィルムHと同様にして、PETフィルムIを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
10.PETフィルムJ(PET−J)
P2層のポリエチレンテレフタレートを75質量部、ポリメチルペンテンを10質量部とした以外はPETフィルムHと同様にして、PETフィルムJを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
11.PETフィルムK(PET−K)
厚み比(P1層:P2層:P1層)を20:260:20とし、フィルムの厚みを300μmとした以外はPETフィルムJと同様にして、PETフィルムKを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
12.PETフィルムL(PET−L)
P2層のポリエチレンテレフタレートを77.5質量部、PBT/PTMGを4質量部、PET/I/PEGを3.5質量部、非相溶ポリマー(ポリプラスチックス株式会社製シクロオレフィンコポリマー “TOPAS”(登録商標)6018 以下、単にCOCということがある。)を15質量部とした以外はPETフィルムHと同様にして、PETフィルムLを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
13.PETフィルムM(PET−M)
P2層のポリエチレンテレフタレートを78.5質量部、COCを14質量部とした以外はPETフィルムLと同様にして、PETフィルムMを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
14.PETフィルムN(PET−N)
P2層のポリエチレンテレフタレートを84質量部、PBT/PTMGを4質量部、COCを12質量部(PET/I/PEGは使用しない。)とした以外はPETフィルムLと同様にして、PETフィルムNを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
15.PETフィルムO(PET−O)
P2層のポリエチレンテレフタレートを83.5質量部、COCを9質量部とした以外はPETフィルムLと同様にして、PETフィルムOを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
16.PETフィルムP(PET−P)
P2層のポリエチレンテレフタレートを87質量部、PBT/PTMGを4質量部、COCを9質量部(PET/I/PEGは使用しない。)とした以外はPETフィルムLと同様にして、PETフィルムPを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
17.PETフィルムQ(PET−Q)
P2層のポリエチレンテレフタレートを91質量部、COCを9質量部(PBT/PTMGとPET/I/PEGは使用しない。)とした以外はPETフィルムLと同様にして、PETフィルムQを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
18.PETフィルムR(PET−R)
P2層のポリエチレンテレフタレートを91質量部、PBT/PTMGを4質量部、COCを5質量部(PET/I/PEGは使用しない。)とした以外はPETフィルムLと同様にして、PETフィルムRを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
19.PETフィルムS(PET−S)
P2層のポリエチレンテレフタレートを95質量部、COCを5質量部(PBT/PTMGとPET/I/PEGは使用しない。)とした以外はPETフィルムLと同様にして、PETフィルムSを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
20.PVFフィルムA(PVF−A)
デュポン社製38μm“テドラー”(登録商標)を使用した。本フィルムの厚み、無機粒子濃度を表1に示す。
21.PVDFフィルムA(PVDF−A)
アルケマ社製25μm“カイナー”(登録商標)を使用した。本フィルムの厚み、無機粒子濃度を表1に示す。
22.PEフィルムA(PE−A)
ポリエチレンのチップ50質量部と、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン20質量%を分散させたポリエチレンマスターチップ(マスターチップ全体100質量%に対して二酸化チタン20質量%含有)50質量部とを、160℃の温度に加熱された押出機に供給し、厚みが30μmとなるようにTダイから押し出して製膜し、ポリPEフィルムAを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
23.PEフィルムB(PE−B)
厚みを50μmとした以外はPEフィルムAと同様にして、PEフィルムBを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
24.PEフィルムC(PE−C)
厚みを150μmとした以外はPEフィルムAと同様にして、PEフィルムCを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
25.PEフィルムD(PE−D)
厚みを200μmとした以外はPEフィルムAと同様にして、PEフィルムDを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
26.PPフィルムA(PP−A)
ポリプロピレンのチップ50質量部と、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン20質量%を分散させたポリプロピレンマスターチップ(マスターチップ全体100質量%に対して二酸化チタン20質量%含有)50質量部とを、230℃の温度に加熱された押出機に供給し、厚みが150μmとなるようにTダイから押し出して製膜し、PPフィルムAを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
27.エチレンビニルアセテート(EVA)フィルムA(EVA−A)
エチレンビニルアセテート(エチレンビニルアセテート全体100質量%に対するビニルアセテート含有量5質量%)のチップ50質量部と、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン20質量%を分散させたエチレンビニルアセテートマスターチップ(マスターチップ全体100質量%に対して二酸化チタン20質量%含有)50質量部とを、170℃の温度に加熱された押出機に供給し、厚みが150μmとなるようにTダイから押し出して製膜し、EVAフィルムAを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
Figure 2017212438
組成の「質量%」はフィルムを構成する全成分を100質量%としたときの値を記載した。ポリメチルペンテン、COCの、JIS K 7206(1999)に基づき測定したビカット軟化点はそれぞれ172℃、188℃であった。また、PET−EからPET−Kまでのフィルムの無機粒子濃度は、これらのフィルムに含まれる層のうち最も無機粒子濃度の大きい層における値とした。
28.接着層用塗剤(塗剤a)
A層、B層を積層するための接着層用塗剤として、DIC(株)製ドライラミネート剤“ディックドライ”(登録商標)TAF−300を36質量部、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート系樹脂を主成分とするDIC(株)製TAFハードナーAH−3を3質量部、および酢酸エチルを30質量部量りとり、15分間攪拌することにより固形分濃度30質量%の接着層用塗剤である塗剤aを得た。
29.ウレタンコート用塗剤(塗剤b)
塗剤bの調合として、表2の主剤の欄に示される配合によって、(株)日本触媒製のアクリル系コーティング剤である“ハルスハイブリット”(登録商標)ポリマー UV−G301(固形分濃度:40質量%)に、着色顔料のテイカ(株)製酸化チタン粒子JR−709、および溶剤を一括混合し、ビーズミル機を用いてこれらの混合物を分散させた。その後、可塑剤としてDIC(株)製ポリエステル系可塑剤“ポリサイザー”(登録商標)W−220ELを添加して、固形分濃度が51質量%である樹脂層形成用の塗剤bの主剤を得た。
上記のようにして得られた主剤に、表2に示されるヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂である住化バイエルウレタン(株)製“デスモジュール”(登録商標)N3300(固形分濃度:100質量%)を、前記の樹脂層形成用主剤との質量比が100:4の比になるように予め計算した量を配合し、さらに固形分濃度20質量%となるように予め算出した表2に示される希釈剤:酢酸n−プロピルを量りとり、15分間攪拌することにより固形分濃度20質量%の塗剤bを得た。
Figure 2017212438
主剤の固形分濃度と塗剤の固形分濃度は、それぞれ主剤全体、塗剤全体を100質量%として算出した。
(実施例1)
A層にPET−Bを用いた。A層の一方の面に、乾燥後の塗膜厚みが5.0μmとなるようにワイヤーバーを用いて接着層用塗剤aを塗布し、80℃で45秒間乾燥して接着層を形成した。次に、B層としてPET−GをP1層が接着層と接するように積層し、40℃の温度で3日間エージングして、A層/接着層/B層の層構成を有する太陽電池モジュール用バックシートとした。その特性評価結果を表4に示す。
(実施例2〜5、16)
A層、B層を表3のとおりとした以外は、実施例1と同様にして太陽電池モジュール用バックシートを得た。その特性評価結果を表4に示す。
(実施例6)
A層、B層を表3のとおりとして、実施例1と同様に太陽電池モジュール用バックシートを得た。次に、A層の接着層が塗布されていない面に、乾燥後の厚みが5μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗剤bを塗布し、100℃の温度で60秒間乾燥してウレタン層を有する太陽電池モジュール用バックシートを得た。その特性評価結果を表4に示す。
(実施例7)
A層にPET−Aを用いた。A層の一方の面に、乾燥後の塗膜厚みが5.0μmとなるようにワイヤーバーを用いて接着層用塗剤aを塗布し、80℃の温度で45秒間乾燥して接着層を形成した。次に、B層としてPET−FをP1層が接着層と接するように積層し、40℃の温度で3日間エージングした。さらに、A層の接着層が塗布されていない面に、乾燥後の塗膜厚みが5.0μmとなるようにワイヤーバーを用いて接着層用塗剤aを塗布し、80℃の温度で45秒間乾燥して接着層を形成した。次に、C層としてPE−Cを積層し、40℃の温度で3日間エージングして、C層/接着層/A層/接着層/B層の層構成を有する太陽電池モジュール用バックシートとした。その特性評価結果を表4に示す。
(実施例8〜15、17〜24)
A層、B層を表3のとおりとした以外は、実施例7と同様にして太陽電池モジュール用バックシートを得た。その特性評価結果を表4に示す。
(実施例25)
A層にPET−Hを用い、B層にPET−Fを用いて、A層に170℃の温度で20秒間の熱処理をしたこと以外は、実施例7と同様にして太陽電池モジュール用バックシートを得た。その特性評価結果を表4に示す。
(実施例26)
A層にPET−Hを用い、B層にPET−Fを用いて、A層に170℃の温度で60秒間の熱処理をしたこと以外は、実施例7と同様にして太陽電池モジュール用バックシートを得た。その特性評価結果を表4に示す。
(実施例27)
A層にPET−Hを用い、B層にPET−Fを用いて、B層に170℃の温度で60秒間の熱処理をしたこと以外は、実施例7と同様にして太陽電池モジュール用バックシートを得た。その特性評価結果を表4に示す。
(実施例28)
A層にPET−Hを用い、B層にPET−Fを用いて、A層とB層の両方に170℃の温度で60秒間の熱処理をしたこと以外は、実施例7と同様にして太陽電池モジュール用バックシートを得た。その特性評価結果を表4に示す。
(比較例1〜3)
A層、B層を表3のとおりとした以外は、実施例1と同様にして太陽電池モジュール用バックシートを得た。なお、比較例2においては、接着層用塗剤aはA層のP2層に塗布した。その特性評価結果を表4に示す。
Figure 2017212438
Figure 2017212438
本発明によれば、太陽電池モジュールとした後にも長期間に亘って十分な絶縁性を有する太陽電池モジュール用バックシート、及び絶縁性に優れた太陽電池モジュールを提供することが可能である。本発明の太陽電池モジュールは、太陽光発電システム、小型電子部品の電源など、屋外用途、屋内用途に限定されず各種用途に好適に用いることができる。
1:太陽電池モジュール用バックシート
2:A層
2−A〜2−C:A層を構成する各層
3:接着層
4:B層
4−A〜4−B:B層を構成する各層
5:機能層
6:C層
7:表側封止材
8:発電素子
9:裏側封止材
10:透明基板
11:金属ワイヤー
12:フィルムの厚み方向
13:C1点
14:C2−1点
15:C2−2点
16:分割水平線
17:空洞

Claims (10)

  1. 層を構成する全成分を100質量%としたときに、ポリエステル樹脂とフッ素樹脂を合計で50質量%より多く含む2つの層(A層、B層)と、接着層とを有し、
    B層、接着層、及びA層がこの順に位置し、
    B層がA層よりも無機粒子を多く含み、
    かつ全体厚みが300μmを超え425μm以下であることを特徴とする、太陽電池モジュール用バックシート。
  2. 前記ポリエステル樹脂と前記フッ素樹脂の少なくとも一方のJIS K7121(1987)に規定の方法により得られる融点が150℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
  3. 層を構成する全成分を100質量%としたときに、次の群1から選択される成分を単独又は合計で50質量%よりも多く含む層(C層)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
    群1:ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート共重合体
  4. 前記C層、前記A層、前記接着層、及び前記B層がこの順に位置することを特徴とする、請求項3に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
  5. 熱抵抗値が5K/W以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用バックシート。
  6. 前記A層がポリエステル樹脂を50質量%より多く含む層であって、かつ、空洞を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池モジュール用バックシート。
  7. 700〜1,000nmにおける平均反射率が70%以上であることを特徴とする、請求項6に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
  8. 気中法における部分放電の最大許容システム電圧が1,200V以上であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
  9. 150℃で30分間の熱処理を行った後の熱収縮率の最大値が、0.0%以上1.5%以下であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の太陽電池モジュール用バックシート。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の太陽電池モジュール用バックシートを有する、太陽電池モジュール。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019148331A1 (zh) * 2018-01-30 2019-08-08 江苏科力斯通新材料有限公司 一种光伏组件背板

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