以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は一実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムの構成を示す図である。
各地域に点在する建物に本システムが監視対象としている複数台のエレベータ11a,11b…,12a,12b…,13a,13b…が設置されている。なお、図1の例では、A地域,B地域,C地域の3つに区分されているが、特にこの3つの区分に限定されるものではない。
各地域のエレベータ11a,11b…,12a,12b…,13a,13b…は、それぞれに通信ネットワーク21を介して監視センタ22に接続されている。監視センタ22は、遠隔地に存在し、これらのエレベータ11a,11b…,12a,12b…,13a,13b…の状態を常時監視している。
具体的には、監視センタ22は、エレベータ11a,11b…,12a,12b…,13a,13b…から送られてくる各種信号(動作状態情報)を監視画面に表示するなどして、何らかの異常を検出した場合に保守員を現場に派遣するなどして対応する。また、監視センタ22では、常時数人のオペレータが待機しており、顧客からのエレベータ事故に関する問い合わせの電話に応答している。
ここで、各地域には保守員23a,23b,23c…が存在し、それぞれに管轄地域内の各エレベータを定期的に巡回して保守点検している。なお、図1の例では、各地域に一人の保守員しか図示されていないが、実際には各地域毎に多数の保守員がいて、定期的に巡回して保守点検を行っている。
保守員23a,23b,23c…は、それぞれに保守端末装置24a,24b,24c…を携帯している。保守端末装置24a,24b,24c…は、保守点検専用の携帯型の端末装置であり、保守点検に必要な各種機能が備えられている。また、保守端末装置24a,24b,24c…は、無線通信機能を備えており、監視センタ22との間で無線による通信が可能である。
図2は同実施形態における遠隔監視システムに用いられるエレベータの機能構成を示すブロック図である。なお、以下では便宜的にエレベータ11a,11b…,12a,12b…,13a,13b…のいずれかを示す場合にはエレベータ11と表記するものとする。
エレベータ11には、エレベータ制御装置31と遠隔監視装置32とを備える。エレベータ制御装置31は、コンピュータからなり、乗りかごを駆動するモータの制御やドアの開閉制御などを含むエレベータの運転制御を行う。
遠隔監視装置32は、エレベータ制御装置31とは独立して設けられたコンピュータである。遠隔監視装置32は、監視センタ22との間の通信機能を備え、エレベータ制御装置31から取得したエレベータの動作状態情報を通信ネットワーク21を介して監視センタ13に送信する。また、遠隔監視装置32は、監視センタ13から通信ネットワーク21を介して送られて来る各種情報(後述する保守員の出動情報を含む)を受信してエレベータ制御装置31に与える。
図3は同実施形態におけるエレベータの乗りかごの構成を示す図である。
エレベータ11は、図3に示すような乗りかご41を備えている。乗りかご41の正面にはかごドア42が開閉自在に取り付けられている。このかごドア42の横には操作パネル43、非常電話機44、表示器45などが設置されている。
操作パネル43には、各階に対応した行先階ボタン43a、戸開ボタン43b、戸閉ボタン43cなどを含む各種操作ボタンが配設されている。非常電話機44は、非常時に使用する電話機であり、外部(例えばビルの監視室)と繋がっている。表示器45は、例えば小型のLCD(Liquid Crystal Display)からなり、乗りかご41の現在位置や運転方向などの運転状態の他、後述する保守員の出動情報などを表示する。
図4は同実施形態におけるエレベータの乗場の構成を示す図である。
エレベータの乗場51には、乗場ドア52が開閉自在に取り付けられている。乗場ドア52は、図3に示した乗りかご41が当該階に到着したときに、かごドア42に係合して開閉動作する。乗場ドア52の上部には、乗りかご41の現在位置と運転方向を示すインジケータ53が設置されている。また、乗場ドア52の横には乗場呼びボタン54、表示器55などが設置されている。乗場呼びボタン54は、行先方向を指定するための方向ボタン(上方向ボタンと下方向ボタン)で構成される。表示器55は、小型のLCDからなり、後述する保守員の出動情報などを表示する。
なお、表示器55は、各階の全てに設置されていても良いし、特定の階(例えば基準階)だけに設置されていても良い。
図5は同実施形態における遠隔監視システムに用いられる監視センタの機能構成を示すブロック図である。
監視センタ22には、IVR装置(Interactive Voice Response:音声自動応答装置)61と、故障管理装置62、記憶装置63、通信装置64、オペレータ端末装置65a,65b,65c…などが備えられている。
IVR装置61は、公衆電話回線に接続されており、顧客からのエレベータ事故に関する問い合わせを電話で受け付け、予め登録された音声ガイダンスに従ってエレベータ事故の内容を確認する。なお、ここで言う「顧客」とは、監視センタ22が監視対象としている各建物の管理者の他に、これらの建物内でエレベータを利用している人たちも含まれる。
故障管理装置62は、コンピュータ(制御装置)からなり、監視センタ22が監視対象としている各エレベータの故障管理を行っている。本実施形態において、この故障管理装置62には、緊急性判断部62a、メール送信部62b、出動情報送信部62cが備えられいる。
緊急性判断部62aは、IVR装置61で確認したエレベータ事故の内容と当該エレベータの動作状態情報とに基づいてエレベータ事故の緊急性を判断する。例えば、IVR装置61で確認したエレベータ事故の内容が「かご内の閉じ込め」に関するものであった場合あるいは該当エレベータから「かご内の閉じ込め」を示す動作状態情報が送られて来た場合には、緊急性判断部62aは緊急状態であると判断する。
メール送信部62bは、緊急性判断部62aによって判断された緊急性(緊急か否か)に応じて保守員23a,23b,23c…が持つ端末装置11a,11b…に電子メールを送信して、事故現場への出動を要請する。なお、全ての保守員23a,23b,23c…に必ずしも電子メールを送信するのではなく、事故現場に近い地域を巡回している保守員を優先して電子メールを送信する。
出動情報送信部62cは、電子メールを受けた保守員によって入力された出動情報を当該保守員の出動先であるエレベータに送信する。後述するように、出動情報には、到着予定日時、出動者、復旧予定日時などの情報が含まれる(図16参照)。出動情報送信部62cは、この出動情報の一部あるいは全部を当該保守員の出動先であるエレベータに送り、そのエレベータの乗りかご内に設置された表示器および乗場に設置された表示器のすくなくとも一方に表示する(図3の表示器45、図4の表示器55参照)。
記憶装置63は、監視対象としている各建物の住所やこれらの建物に設置されたエレベの機種などの情報、各保守員の名前、所属、連絡先などの情報を記憶している。また、この記憶装置63には、IVR装置61で受け付けたエレベータ事故に関する情報が記憶される。
通信装置64は、保守員23a,23b,23c…が持つ保守端末装置24a,24b,24c…との間で無線通信を行う。
オペレータ端末装置65a,65b,65c…は、図示せぬオペレータが使用する端末装置であり、入力装置や表示装置などを含む一般的なコンピュータシステムからなる。このオペレータ端末装置65a,65b,65c…には、IVR装置61で受け付けた顧客の電話回線が接続される。
図6は同実施形態における遠隔監視システムに用いられる保守端末装置の機能構成を示すブロック図である。
なお、以下の説明では保守端末装置24a,24b,24c…のいずかれかを示す場合には保守端末装置24と表記するものとする。同様に、保守員23a,23b,23c…のいずかれかを示す場合には保守員23と表記するものとする。
保守端末装置24は、例えば携帯電話機などであり、通信機能を備えた小型の端末装置からなる。この保守端末装置24には、入力装置71、表示装置72、制御装置73、GPS(Global Positioning System)モジュール74、通信装置75などが備えられている。
入力装置71は、各種キーやボタンなどからなり、データの入力や指示を行う。表示装置72は、例えばLCDからなり、データの表示を行う。なお、入力装置71として、例えば透明のタッチパネルを用い、表示装置72の画面上でデータ入力・指示を行う構成でも良い。
制御装置73は、CPUからなり、所定のプログラムの起動により保守点検作業に関わる各種機能を実行する。GPSモジュール74は、現在位置を検出するために用いられる。通信装置75は、監視センタ22や他の端末装置との間での電子メールを含む各種データの送受信処理を行う。
ここで、本実施形態において、制御装置73には、監視センタ22から送られて来た電子メールの表示処理に関する機能として、第1の表示処理部73aと第2の表示処理部73bが備えられている。
第1の表示処理部73aは、電子メールに含まれる第1の情報の選択操作に伴い、事故現場の位置と保守員の現在位置を示す地図情報を表示装置72に表示する。第2の表示処理部73bは、電子メールに含まれる第2の情報の選択操作に伴い、事故現場に関する詳細画面を表示装置72に表示する。なお、地図情報と詳細画面については、後に図13および図14を参照して詳しく説明する。
図7は同実施形態における監視センタの通常時(通常の事故発生時)の対応を模式的に示した図である。図中の丸数字は手順の番号を示す。
顧客10からエレベータ事故に関する問い合わせの電話が監視センタ22に入ると、IVR装置61が応答し、例えば「こちらは○○センターです。音声ガイダンスに従って入力して下さい」といったような音声ガイダンスが再生される。顧客10は、この音声ガイダンスに従って電話のボタン操作により故障内容等を入力する(手順1)。
ここで、通常時(通常の事故発生時)は、顧客10の電話回線がIVR装置61を介してオペレータ端末装置65a,65b,65c…のいずれかに接続され、オペレータが当該顧客10の問い合わせに対応することができる。また、オペレータの操作により、発信元電話番号や事故内容等が当該顧客10の受付情報として入力され、記憶装置63に登録される。
一方、保守員23は、任意のタイミングで保守端末装置24の操作により監視センタ22にアクセスし、記憶装置63に登録された受付情報を閲覧することができる(手順3)。また、保守員23が事故現場に行く場合には、事故現場への到着予定時刻などを含む出動情報を所定のWeb画面に入力する(手順4)。
監視センタ22では、保守員23の出動情報を受信すると、その出動情報の中の少なくとも到着予定時刻と出動者の情報を保守員23の出動先であるエレベータ11に送り、乗りかご41内の表示器45および乗場51の表示器55の少なくとも一方に表示する(手順5)。
このように、通常時にはオペレータが電話で応対し、そのときに入力された顧客10の受付情報が記憶装置63に登録される。保守員23は、保守端末装置24の操作により監視センタ22にアクセスして記憶装置63に登録された受付情報を確認し、必要に応じて事故現場に出向いて対処することになる。
図8は同実施形態における監視センタの緊急時(緊急出動を要する事故発生時)の対応を模式的に示した図である。図中の丸数字は手順の番号を示す。
いま、地震等の広域災害が発生し、エレベータ11の運転が停止して、乗りかご41内に乗客が閉じ込められたとする。乗りかご41内に乗客が閉じ込められると、エレベータ11に設けられた遠隔監視装置32からエレベータ11の動作状態情報の1つとしてかご内閉じ込め信号が監視センタ22に発報される(手順1)。
また、顧客10からエレベータ事故に関する問い合わせの電話が監視センタ22に入り、IVR装置61の音声ガイダンスに従って閉じ込め事故が発生したことが電話のボタン操作によって入力される(手順2)。
なお、地震等の広域災害時には電話が集中してオペレータに繋がらない可能性がある。その場合、オペレータを介さずに音声ガイダンスだけでエレベータ事故の内容を受け付ける。このときの内容は、発信元電話番号などと共に顧客10の受付情報として記憶装置63に登録される。
ここで、故障管理装置62は、IVR装置61で受け付けたエレベータ事故の内容とエレベータ11から送られて来る動作状態情報とに基づいてエレベータ事故の緊急性を判断する。かご内閉じ込め事故などは緊急性が高いと判断される。緊急性が高い場合、故障管理装置62は、保守員23が持つ保守端末装置24に電子メールを送信して、事故現場への出動を要請する(手順4)。
保守員23は、保守端末装置24の表示装置72に表示された電子メールから事故内容を確認した後(手順5)、現場への到着予定時刻など含む出動情報を所定のWeb画面に入力する(手順6)。
監視センタ22では、保守員23の出動情報を受信すると、その出動情報の中の少なくとも到着予定時刻と出動者の情報を保守員23の出動先であるエレベータ11に送り、乗りかご41内の表示器45および乗場51の表示器55の少なくとも一方に表示する(手順7)。
このように、緊急時には保守員23の保守端末装置24に出動要請の電子メールが送られる。保守員23はこの電子メールから事故内容を確認し、事故現場に出向いて対処することができる。
次に、本システムの動作について、(a)監視センタの処理、(b)保守端末装置の処理に分けて説明する。
(a)監視センタの処理
図9は監視センタ22に設けられた故障管理装置62の処理を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、コンピュータである故障管理装置62が所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
顧客10からエレベータ事故に関する問い合わせの電話が監視センタ22に入ると、IVR装置61がその電話を受け付け、エレベータ事故の内容を故障管理装置62に与える(ステップS11)。故障管理装置62では、IVR装置61で受け付けたエレベータ事故の内容とエレベータ11から送られて来る動作状態情報とに基づいてエレベータ事故の緊急性を判断する(ステップS12)。
この場合、IVR装置61で受け付けたエレベータ事故の内容と動作状態情報の両方が予め決められた通常事故に分類されるものであれば、緊急性が低いと判断される。通常事故に分類されるものとしては、例えば照明機器の劣化やドアの異音などがある。つまり、保守員23の緊急出動を必要とせず、通常の運転サービスを継続できるような事故は緊急性が低いと判断される。
一方、IVR装置61で受け付けたエレベータ事故の内容と動作状態情報のどちらか一方が予め決められた緊急事故に分類されるものであれば、緊急性が高いと判断される。緊急事故に分類されるものとしては、例えばかご内閉じ込め事故などがある。つまり、保守員23の緊急出動を必要とする事故は緊急性が高いと判断される。
通常事故の場合(ステップS12の通常)、顧客10の電話回線がIVR装置61を介してオペレータ端末装置65a,65b,65c…のいずれかに接続され、オペレータが当該顧客10の問い合わせに対応する(ステップS13)。その際、エレベータ事故の内容や発信元電話番号などが当該顧客10の受付情報として記憶装置63に登録される(ステップS14)。
ここで、任意のタイミングで保守員23の保守端末装置24から監視センタ22にアクセスがあると(ステップS15のYes)、故障管理装置62は、記憶装置63に登録された受付情報を閲覧可能な状態にして保守端末装置24に送信する(ステップS16)。また、保守端末装置24から保守員23の出動情報が監視センタ22に送られて来ると(ステップS17のYes)、故障管理装置62は、この出動情報の中の少なくとも到着予定時刻と出動者の情報を保守員23の出動先であるエレベータ11に送って、乗りかご41内の表示器45および乗場51の表示器55の少なくとも一方に表示する(ステップS18)。
一方、緊急事故であった場合(ステップS12の緊急)、上記通常事故と同様にオペレータが対応することもある(ステップS19)。しかし、電話の輻輳状態によってはオペレータが対応できないこともあり、その場合にはオペレータを介さずに音声ガイダンスだけでエレベータ事故の内容を受け付けて、発信元電話番号などと共に当該顧客10の受付情報として記憶装置63に登録される(ステップS20)。
ここで、故障管理装置62は、上記受付情報から事故現場の位置を確認する。そして、故障管理装置62は、例えば図11に示すような保守員データベース(以下、保守員DBと称す)66を参照して、各地域を巡回する保守員23の中から現場に近い保守員を優先的に選出する(ステップS21)。
保守員DB66は、例えば図5に示した記憶装置63に設けられている。保守員DB66には、各地域を巡回する保守員23の名前と連絡先(携帯番号,メールアドレス)などが登録されている。例えば現場がA地域であった場合には、A地域を巡回する保守員23が選出されることになる。
また、各地域を巡回する保守員23は、それぞれにGPS機能付きの保守端末装置24を携帯している。故障管理装置62は、保守端末装置24のGPS機能を利用して各保守員23の現在位置を検出し、現場に最も近い順から所定数(例えば3名)の保守員を選出する。
現場に近い保守員23が少なくとも一人以上選出されると、故障管理装置62は、この保守員23が持つ保守端末装置24に対して所定形式の電子メール81を送信し、現場への出動を要請する(ステップS22)。なお、電子メール81の形式については、後に図12を参照して詳しく説明する。
電子メール81の送信後、保守員23の保守端末装置24から出動情報が送られて来る。故障管理装置62は、保守員23の出動情報を通信装置64を介して受信すると(ステップS23のYes)、この出動情報の中の少なくとも到着予定時刻と出動者の情報を保守員23の出動先であるエレベータ11に送り、乗りかご41内の表示器45および乗場51の表示器55の少なくとも一方に表示する(ステップS24)。
詳しくは、監視センタ22からエレベータ11に送られた出動情報は、図2に示した遠隔監視装置32を介してエレベータ制御装置31に与えられる。このエレベータ制御装置31の表示制御により、当該出動情報が乗りかご41内に設置された表示器45(図3参照)あるいは乗場51に設置された表示器55(図4参照)に表示される。
なお、出動情報を乗りかご41内の表示器45と乗場51の表示器55の両方に当該情報を表示することでも良い。また、例えばかご内閉じ込め事故などのかご内に関係する事故であれば、乗りかご41内の表示器45に表示し、かご内には関係しない事故であれば、乗場51の表示器55に表示することでも良い。
(b)保守端末装置の処理
図10は保守端末装置24に設けられた制御装置73の処理を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、コンピュータである制御装置73が所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
いま、保守員23が持つ保守端末装置24に監視センタ22から出動要請のための電子メール81が送られて来たとする。保守端末装置24に設けられた制御装置73は、通信装置75を介して電子メール81を受信する(ステップS31)。制御装置73は、この電子メール81を表示装置72に送って画面上に視認可能に表示する(ステップS32)。
図12は保守端末装置24の表示装置72に表示される電子メール81の一例を示す図である。
電子メール81は、件名82と本文83を有する。件名82には、出動要請の通知名が付される。この通知名は、例えば受付内容(事故内容)あるいはエレベータ11の動作状態情報(異常信号の種類)によって自動的に付される。図11の例では、「閉じ込め通知」といった通知名が付されている。
本文83には、事故現場に関する情報として、エレベータ11の管理番号、設置番号、建物名、住所などの物件情報84が含まれる。さらに、本文83には、地図アクセス情報85と詳細アクセス情報86が含まれる。
地図アクセス情報85は、事故現場の位置と保守員23の現在位置を示す地図情報91(図13参照)を表示するための情報である。詳細アクセス情報86は、事故現場に関する詳細画面100(図14参照)を表示するための情報である。地図アクセス情報85と詳細アクセス情報86は、具体的には監視センタ22が管理しているWeb上の特定のサイトにログインするためのURLで構成される。
ここで、保守員23が所定の操作により電子メール81上の地図アクセス情報85を選択すると(ステップS33のYes)、事故現場を示す所定範囲の地図情報91が保守端末装置24に送られてきて表示装置72に表示される(ステップS34)。
図13に示すように、地図情報91には、現場マーク92と保守員マーク93が付加されている。現場マーク92は、事故現場である建物の位置を示すマーク情報であり、地図情報91上の当該建物の位置に所定の表示形態(形や色)で表示される。
保守員マーク93は、保守員23の現在位置を示すマーク情報であり、地図情報91上の当該保守員23の現在位置に現場マーク92とは異なる表示形態で表示される。この保守員マーク93の表示位置は、保守員23の移動に追従して更新される。上述したように、保守員23の位置は、その保守員23が持つ保守端末装置24のGPS機能によって検出されている。さらに、この地図情報91では、保守員23の現在位置から事故現場までの最短経路94が矢印等によって示される。
また、保守員23が所定の操作により電子メール81上の詳細アクセス情報86を選択すると(ステップS35のYes)、事故現場に関する詳細画面100が保守端末装置24に送られてきて表示装置72に表示される(ステップS36)。
図14に詳細画面100の一例を示す。
詳細画面100は、出動指示一覧表示として、「昇降機番号」,「作業状態区分」,「受付日時」,「受付者」,「重点JOB」,「受付内容」,「閉じ込め人数」の表示項目101〜107を有する。
なお、表示項目102に表示される「作業状態区分」とは、現在の状態を示すものである。図14の「選出中」とは、保守員23を選出中の状態であることを示す。保守員23が選出されると、例えば「選出済み」の表示に変わる。
表示項目106に表示される「受付内容」とは、事故内容のことである。図14の例では、「閉じ込め事故」と表示されている。
表示項目107に表示される「閉じ込め人数」は、エレベータ11の乗りかご41内に閉じ込められている乗客の人数を示すものである。閉じ込め人数は、顧客からの電話で確認するか、あるいは、乗りかご41内に設置された図示せぬ荷重センサの情報や図示せぬ監視カメラの画像などを利用して推測される。
また、詳細画面100には、メニュー項目108とログアウト項目109が設けられている。メニュー項目108の選択操作により、例えば図15に示すような出動者候補画面120や図16に示すような出動情報入力画面130に切り換えられる。また、ログアウト項目109の選択操作により、監視センタ22のWebサイトからログアウトして図示せぬ通常画面に切り換えられる。
出動者候補画面120には、事故現場に近い保守員23が出動者候補として所定人数分(例えば3名)表示される。図15の例では、「保守員A」,「保守員B」,「保守員C」の3名の名前が現場に近い順に出動者候補として挙げられ、それぞれに現在位置から事故現場までの距離と所要時間が表示されている。これにより、保守員23は、この出動者候補画面120を見て自分が事故現場に行くべきかどうかを判断できる。
保守員23が事故現場に行く場合には、図16の出動情報入力画面130に切り換えて出動情報の入力操作を行う。この出動情報入力画面130には、「到着予定日時」,「出動者」,「復旧予定日時」の入力項目131〜133が設けられている。保守員23は、所定の操作により入力項目131〜133に必要な情報を入力してから事故現場に向かう。
この場合、入力項目131の到着予定日時は、図15の出動者候補画面120に表示される所要時間を参考にして入力できる。また、入力項目133の復旧予定日時は、図14の詳細画面100の表示項目106に表示される受付内容(事故内容)を参考にして入力できる。
図10のフローチャートに戻って、上記出動情報入力画面130の各入力項目131〜133に入力された情報は制御装置73に与えられる(ステップS37)。制御装置73は、これらの情報を保守員23の出動情報として通信装置25を介して監視センタ22に送信する(ステップS38)。
図9で説明したように、通常事故あるいは緊急事故が発生した場合において、監視センタ22に保守員23の出動情報が送られて来ると、監視センタ22では、この出動情報の中の少なくとも到着予定時刻と出動者の情報を保守員23の出動先であるエレベータ11に送る。エレベータ11では、これらの情報を乗りかご41内の表示器45および乗場51の表示器55の少なくとも一方に表示する。
図17はエレベータ側の表示器に表示される緊急連絡画面の一例を示す図である。
監視センタ22から保守員23の出動情報がエレベータ11に送られて来ると、乗りかご41内の表示器45および乗場51の表示器55の少なくとも一方に図17に示すような緊急連絡画面140が表示される。
この緊急連絡画面140には、現在発生中のエレベータ事故に関するメッセージ141の他に保守員23の出動情報142が含まれている。図17の例では、出動情報142として、出動情報入力画面130の入力項目132に入力された「出動者」と、入力項目131に入力された「到着予定日時」が表示されている。なお、入力項目131に入力された「到着予定日時」を含めて表示することでも良い。
このような出動情報142の表示により、事故現場で保守員23の到着日時などを事前に知ることができる。したがって、例えばかご内閉じ込め事故などが発生した場合に、乗客たちは安心して待つことができる。
このように本システムでは、監視対象としているエレベータ11に緊急事故が発生した場合には、各地域を巡回している保守員23に電子メール81が自動配信されて事故現場への出動が要請される。したがって、このときに監視センタ22に各地域の顧客からエレベータ事故に関する電話が集中してオペレータが対応できない状況になった場合でも保守員23を迅速に手配して対処することができる。
また、電子メール81を送信する場合に、事故現場に近い保守員23に優先的に送ることで、事故現場の復旧作業やかご内閉じ込め事故による乗客の救出作業などを一刻でも早く始めることができる。
また、図12で説明したように、電子メール81には地図アクセス情報85が含まれており、この地図アクセス情報85の選択操作により、事故現場の位置と保守員23の現在位置を示す地図情報91が保守員23の保守端末装置24に表示される。したがって、保守員23は、この地図情報91を見ながら事故現場に急行することができる。その際、地図情報91上に付加された最短経路94を参考にすれば、道に迷わずに事故現場に行くことができる。
さらに、電子メール81には詳細アクセス情報86が含まれており、この詳細アクセス情報86の選択操作により、事故現場に関する詳細画面100が保守員23の保守端末装置24に表示されるので、保守員23は監視センタ13に確認しなくとも、自分の保守端末装置24を通じて事故内容などの詳細を知ることができる。
一方、この電子メール81を受けた保守員23が事故現場へ出動する際に、図16の出動情報入力画面130に入力した出動情報が監視センタ13を介して出動先のエレベータ11に送られて、乗りかご41内の表示器45および乗場51の表示器55の少なくとも一方に表示される。これにより、事故現場で保守員23の到着日時などを知ることができ、乗客たちは安心して待つことができる。
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、監視センタにエレベータ事故に関する問い合わせが集中した場合でも保守員を事故現場に迅速に手配して対処することのできるエレベータの遠隔監視システム及び端末装置を提供することができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本実施形態に係る端末装置は、各地域に存在する多数のエレベータを保守点検する保守員によって携帯され、上記各エレベータの動作状態を遠隔的に監視する監視センタとの間で無線通信を行う端末装置であって、上記監視センタに顧客からエレベータ事故に関する問い合わせがあったときに、顧客から受け付けた上記エレベータ事故の内容と当該エレベータから送られて来る動作状態情報とに基づいて上記エレベータ事故の緊急性が通常事故よりも高いと判断された場合に、上記監視センタから上記各地域を巡回する各保守員の中で事故現場に近い保守員に優先的に送られて来る緊急出動用の電子メールを受信する通信手段と、この通信手段によって受信された上記電子メールを表示する表示手段と、この表示手段によって表示された上記電子メールに含まれる第1の情報の選択操作に伴い、上記事故現場の位置と上記保守員の現在位置を示す地図情報を上記表示手段に表示する第1の表示処理手段とを具備する。
故障管理装置62は、コンピュータ(制御装置)からなり、監視センタ22が監視対象としている各エレベータの故障管理を行っている。本実施形態において、この故障管理装置62には、緊急性判断部62a、メール送信部62b、出動情報送信部62cが備えられている。