図1にこの発明を適用できる車両の駆動系統および制御系統をブロック図で示してある。エンジン(Eng)1の出力側にトランスミッション(T/M)2が連結されている。そのトランスミッション2からドライブシャフト(D/S)3を介して図示しない駆動輪に駆動力が出力される。エンジン1は内燃機関であって、繰り返し生じる燃料の燃焼によって動力を出力する。したがって、出力トルクが不可避的に振動する。その振動は、所定の低い振動数で体感され易く、車両の乗り心地の悪化要因となるので、最低(下限)回転数が設定される。また、エンジン1はスロットルバルブ(図示せず)を備え、スロットル開度が大きいほど出力する動力が増大する。このエンジン1の運転点は、出力トルクと出力回転数とによって表される。その運転点には燃料消費率(燃費)が良好な運転点が存在する。出力トルクと出力回転数とをパラメータとしたマップ(動作線図)において、その燃費の良好な運転点を結んだ線が最適燃費線として予め求められており、定常的な走行の際には、エンジン1の動作状態がその最適燃費線上の運転点に可及的に一致するように出力回転数および出力トルクが制御される。
トランスミッション2は、変速比を連続的に変化させることのできる無段変速機構を備えている。また、トランスミッション2は、左右のドライブシャフト3に動力を分配するデファレンシャル4を備えたトランスアクスルとして構成されていてもよい。さらに、トランスミッション2は、捩り振動を低減するための後述するダンパ機構5(図2参照)を備えている。そのダンパ機構5は、バネによって振動を減衰させるバネ式のダンパ(スプリングダンパ)6と、質量体の振動を利用したダイナミックダンパ7とを備えている。図2にその一例を示してある。
図2は、ロックアップクラッチ8を備えているトルクコンバータ9を示している。このトルクコンバータ9がこの発明の実施形態における流体継手に相当している。エンジン1に連結されるフロントカバー10の内側の側面に対向してロックアップクラッチ8が配置されている。ロックアップクラッチ8は従来知られているロックアップクラッチと同様に、円盤状の部材であって、入力軸11の外周部もしくは入力軸11と一体の部材の外周部に、回転可能でかつ軸線方向に前後動可能に嵌合している。ロックアップクラッチ8の背面側(フロントカバー10とは反対側)にスプリングダンパ6が配置されている。このスプリングダンパ6は、従来知られているロックアップダンパと同様の構造を備えている。すなわち、ロックアップクラッチ8と一体となって回転する駆動側プレート12と、駆動側プレート12に対して対向して配置されかつ駆動側プレート12とは相対回転可能な従動側プレート13と、これらのプレート12,13に形成されている窓孔部の内部に配置され、各プレート12,13が相対回転することにより圧縮されるスプリング14とを備えている。
スプリングダンパ6と同一の軸線上にタービンランナ15が配置されている。このスプリングダンパ6とタービンランナ15との間に、ダイナミックダンパ7が配置されている。図2に示す例では、ダイナミックダンパ7は振り子式ダンパによって構成されている。質量体である振り子(もしくは転動体)16が、前記入力軸11に回転方向で一体化されている回転体17に保持されている。回転体17がこの発明に係る実施例におけるベース部に相当する。振り子16は、トルクの変動によって回転体17の回転数が変化した場合に、回転体17に対して揺動するように、回転体17に保持されている。
振り子16の保持の形態の一例を説明すると、回転体17には液密状に密閉された複数の転動室18が回転体17の回転方向に一定の間隔をあけて形成されている。各転動室18に円形形状の振り子16が配置されている。各転動室18の内面のうち、回転体17の半径方向で外側の面が転動面とされている。この転動面は、回転体17が所定の回転数以上の回転数で回転した場合に振り子16が遠心力によって押しつけられる面である。その転動面は、振り子16が所定の振り子中心を中心にして振り子運動をするように振り子16をガイドするように構成されている。具体的な一例を挙げれば、回転体17の中心から半径方向にずれた位置を中心とする円弧面として形成されている。なお、回転体17の回転中心から上記の振り子中心までの距離と、振り子中心から振り子16の重心までの距離との比の平方根が、回転体17の捩り振動の振動次数に相当する。
前述したスプリングダンパ6における従動側プレート13が回転体17に連結されている。また、入力軸11にはタービンハブ19が設けられており、このタービンハブ19にタービンランナ15が連結されている。タービンランナ15に対向してポンプインペラ(図示せず)が配置され、前述したフロントカバー10がポンプインペラに連結されている。そして、入力軸11が変速部20に連結されている。変速部20は前述した無段変速機構を主体として構成された部分である。
したがって、この発明の実施形態で対象とする上記の車両では、エンジン1とダイナミックダンパ7との間にスプリングダンパ6が介在しているのに対して、ダイナミックダンパ7からドライブシャフト3に到る動力の伝達経路は回転軸やギヤあるいは変速部20など、スプリングダンパ6に比較して実質的に剛体と見なすことのできる部材で構成されている。そのため、エンジン1からドライブシャフト3に到る動力の伝達経路を弾性系として見た場合、図3に示すように、上記のダイナミックダンパ7における回転体17とその回転体17につながっているタービンランナ15や入力軸11ならびに変速部20などは、単一の慣性体21として取り扱うことができる。この慣性体21は、主振動系から外れた箇所に重心があり、かつ変速比に応じて回転数が変化する部材を含む。したがって、慣性体21の等価慣性モーメントMは、変速部20で設定される変速比γに応じて変化する。具体的には、変速比γが大きくなるほど(Lo側になるほど)小さくなる。その変化の傾向を図4に線図で示してある。この等価慣性モーメントMと振り子16の慣性モーメントmとの比(m/M)を慣性比と称しており、この慣性比は図4に併記してあるように変速比γが大きくなるほど増大する。
振り子式ダンパなどのダイナミックダンパ7における慣性比(m/M)は、ダイナミックダンパ7の制振性能に大きく関係するパラメータであり、慣性比(m/M)が大きいほど制振性能が向上する。すなわち、変速比γが大きいほど、トルク変動量(dB)が小さくなる。これを図5に線図で示してある。なお、図5には、ダイナミックダンパと変速部との間にバネ式のダンパが介在するなど、ダイナミックダンパと変速部とが別の慣性体を構成する振動系(従来例)におけるトルク変動量(dB)を細い実線で示してある。
上記の変速部20は、ベルト式無段変速機構によって構成することができる。変速比の制御は、従来の自動変速機での変速制御と同様に、アクセル開度で代表される駆動要求量と変速部20の出力回転数で代表される車速とに基づいて行われる。変速比を連続的に変化させることができるように構成されているので、駆動要求量と出力回転数とに基づいて、エンジン回転数と出力トルクとが並行して制御される。図6はその制御の手順を説明するためのブロック図であり、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求駆動力Ftが求められる。車両が発生する駆動力は、車両の特性もしくは性能を決めるので、アクセル開度Accと車速Vとに応じた要求駆動力Ftは設計上、予め決めておくことができる。その要求駆動力Ftと車速Vとに基づいて目標出力Ptが求められる。エンジン1の最適燃費運転点は実験などによって求められ、エンジントルクTeとエンジン回転数Neとを変数としたマップ上にその最適燃費運転点をプロットし、その最適燃費運転点を結んだ線が最適燃費線となる。そのマップ上の等出力線と最適燃費線との交点が、目標出力Ptを最適燃費で出力できる運転点となる。その運転点でのエンジン回転数が目標エンジン回転数Netとして求められる。無段変速機(CVT)を搭載している車両では、実際のエンジン回転数が目標エンジン回転数Netに一致するようにCVTが制御される。このようにして制御されたエンジン回転数とトランスミッション2の出力回転数との比が、変速比γとなる。言い換えれば、通常の走行状態では、制御目標はエンジン回転数であり、変速比γはその制御の結果として演算することのできる値である。一方、目標エンジントルクTetは、目標出力Ptを目標エンジン回転数Netで除算することにより求められる。その目標エンジントルクTetを出力するようにエンジン1のスロットル開度あるいは燃料噴射量が制御される。
上述したエンジン制御およびトランスミッション制御を行うための電子制御装置(ECU)22が設けられている(図1参照)。ECU22は、この発明の実施例におけるコントローラに相当し、マイクロコンピュータを主体にして構成されている。ECU22は、入力されたデータおよび予め記憶しているデータを使用して、所定のプログラムに従って演算を行い、その演算の結果を制御指令信号として出力するように構成されている。外部から入力されるデータは、アクセル開度Accや車速V、エンジン回転数やタービン回転数などの各種の回転数を検出する回転数センサ23の検出値などである。予め記憶しているデータの例は、上記の最適燃費運転点を求めるためのマップである。そのECU22で算出された目標エンジン回転数Netを達成するように油圧制御装置24に指令信号が出力され、トランスミッション2が制御される。したがって、トランスミッション2での変速比が変化する。また一方、目標トルクNetを達成するようにスロットル開度θthが制御される。
エンジン1を低回転数で運転した場合、車両の振動あるいは騒音が悪化する。特に、前述したロックアップクラッチ8を係合させている状態(ロックアップ・オン状態)では、エンジン1から駆動輪に到るトルクの伝達がクラッチやギヤなどの機械的な手段で行われ、トルクコンバータ9におけるフルードなどの流体が介在しないので、エンジン1の出力トルクの変動が車体に伝達され易く、車体の振動や騒音が悪化しやすい。このような振動や騒音を改善するために、前述したように、運転中の最低回転数が設定される。その一例をエンジン制御のための前述したマップ(動作線図)に併記すると、図7に示すとおりである。この発明で対象とする前述した構成の車両では、ダイナミックダンパ7による制振性能が、変速比γや変速比γに応じた回転数などによって変化する。したがって、NV特性上、許容できる最低回転数は変速比γや変速比γに応じた回転数(以下、これら変速比γの値あるいは変速比γで決まる回転数や回転数比を変速比相当値という。)ごとに異なる。例えば変速比相当値が増大するほど、ロックアップクラッチ8が係合しているいわゆるロックアップ・オン状態でのエンジン1の最低回転数を低回転数側に設定することができる。
エンジン1の最低回転数は、車両の振動や騒音(すなわちNV特性)が悪化しないように設計上決められる。また、その振動や騒音は前述したダイナミックダンパ7やバネダンパ6などによって減衰させられる。そして、ダンパ機構5の制振性能は変速比γに応じて変化する。すなわち、変速比相当値が大きいほど制振性能が向上するから、NV特性上許容できるエンジン回転数の下限値であるロックアップ限界値が、変速比γもしくは変速比相当値に応じて設定されている。図7に示す例では、第1ないし第3の変速比γ1 ,γ2 ,γ3 (γ1 <γ2 <γ3 )に応じてロックアップ限界値が定められている。なお、各変速比γ1 ,γ2 ,γ3 は、相互に所定の偏差があるように設計上、適宜に決めることができ、トランスミッション2で設定可能であり、かつ車両のNV特性が許容限界内であること、エンジンストールに到らないなど、走行を維持できる範囲の値である。これらの各変速比γ1 ,γ2 ,γ3 がこの発明の実施形態における「予め定めた所定値」に相当している。
各変速比γ1 ,γ2 ,γ3 ごとのロックアップ限界値を、図7では、ロックアップ限界ラインL−γ1 ,L−γ2 ,L−γ3 で示してある。これらのロックアップ限界ラインL−γ1 ,L−γ2 ,L−γ3 と最適燃費線LF との交点のエンジン回転数が、各変速比γ1 ,γ2 ,γ3 ごとのロックアップ・オン状態における最低回転数No1,No2,No3とされている。すなわち、ロックアップクラッチ8が係合している状態で、エンジン1の運転点が、最適燃費線上の運転点より低トルクとなる場合、変速比γが所定の第1変速比γ1 であればエンジン回転数は第1最低回転数No1に維持され、同様に、変速比γが所定の第2変速比γ2 であればエンジン回転数は第2最低回転数No2に維持され、変速比γが所定の第3変速比γ3 であればエンジン回転数は第3最低回転数No3に維持される。これらの最低回転数No1,No2,No3を示す直線(この直線が、この発明の実施形態における低トルク動作線に相当する。)L1l,L2l,L3lは、最適燃費線LF 上の運転点より低トルクでかつそれぞれの最低回転数No1,No2,No3の各運転点を結ぶ線であって、最適燃費線LF に各最低回転数No1,No2,No3の運転点で連続している。第1最低回転数No1とこれに続く最適燃費線LF とを、以下、仮に第1動作線L1 とし、同様に、第2最低回転数No2とこれに続く最適燃費線LF とを、以下、仮に第2動作線L2 とし、第3最低回転数No3とこれに続く最適燃費線LF とを、以下、仮に第3動作線L3 とする。なお、各動作線L1 ,L2 ,L3 は、ロックアップ・オン状態でのエンジン1の動作点を示しており、したがってロックアップクラッチ8が解放されているロックアップ・オフの状態であれば、エンジン回転数は各最低回転数No1,No2,No3以下の回転数に制御される。
図7には3本の動作線を示してあるが、この発明の実施形態では、2本の動作線であってもよく、あるいは反対に更に多数の動作線を設定してもよい。例えば、更に大きい値の変速比およびそれぞれの変速比に対応した最低回転数を設定してもよい。あるいは上記の第1変速比γ1 と第3変速比γ3 との間を更に細分化して、更に多数の変速比およびそれぞれの変速比に対応した最低回転数を設定してもよい。なお、上記の第1ないし第3の変速比γ1 ,〜γ3 は、NV特性に加え、燃費や動作線の切替頻度などを考慮して設計上、適宜に設定することができる。
前述したECU22は、これらの動作線L1 〜L3 を含むマップを有している。この発明の実施形態における制御装置はこのECU22を含んでいて、そのマップに基づいて目標エンジン回転数Netを設定するように構成されている。その制御例を図8にフローチャートで示してある。図8に示すルーチンは、車両が発進した後に、あるいは走行している際に所定の短時間ごとに繰り返し実行される。無段変速機を搭載した車両では、エンジン回転数が目標回転数となるように無段変速機が制御され、その制御の結果として変速比が所定の値になるのであって、変速比を直接の制御目標もしくは制御対象としない。そこで、先ず、ロックアップクラッチ8を係合させた状態で、トランスミッション2における所定の回転数が検出される(ステップS1)。ベルト式CVTによって前記変速部20が構成されている場合には、駆動側のプライマリプーリと従動側のセカンダリプーリ(それぞれ図示せず)回転数が前述した回転数センサ23によって検出される。それらの回転数の比である変速比γが算出される(ステップS2)。
算出された変速比γが前述した第1変速比γ1 より大きいか否かが判断される(ステップS3)。算出された変速比γが第1変速比γ1 であり、もしくはそれ以下であることによりステップS3で否定的に判断された場合には、エンジン1の運転点を決める動作線として前述した第1動作線L1 が選択される(ステップS4)。
これとは反対にステップS3で肯定的に判断された場合には、算出された変速比γが前述した第2変速比γ2 より大きいか否かが判断される(ステップS5)。算出された変速比γが第2変速比γ2 以下であることによりステップS5で否定的に判断された場合には、エンジン1の運転点を決める動作線として前述した第2動作線L2 が選択される(ステップS6)。
また、ステップS3で肯定的に判断された場合には、エンジン1の運転点を決める動作線として前述した第3動作線L3 が選択される(ステップS7)。これらステップS4,S6,S7のいずれかで動作線を選択した後、その選択された動作線とアクセル開度や車速などとに基づいて目標エンジン回転数Netが求められる(ステップS8)。結局、この発明の実施形態におけるコントローラに相当する前記ECU22は、上記のステップS22での制御のように変速比もしくは変速比相当値を求め、その値が大きい場合には、ロックアップ・オン状態でのエンジン回転数が、その値が小さい場合に比較して低回転数となる運転点でエンジン1を運転する。
なお、前述したように動作線およびその動作線を選択するためのしきい値としての変速比は、図8あるいは図7に示すように3つに限られない。図8に示す制御ルーチンを、動作線およびその動作線を選択するためのしきい値としての変速比をn個、設定してある場合にまで拡大して説明すると、検出された変速比γを、先ず、最も小さい値のしきい値としての変速比と比較し、検出された変速比γがそのしきい値より大きい場合には、図8に示す例と同様に、第2番目に小さいしきい値と比較する。以降、同様にして、(n−1)番目に小さいしきい値(すなわち第2番目に大きいしきい値)と比較し、検出された変速比γがその第2番目に大きいしきい値としての変速比より大きい場合には、第n動作線Ln が選択される。また、検出された変速比γを第1番目のしきい値から第(n−1)番目のしきい値と比較していく過程で、検出された変速比γがいずれかのしきい値以下の判断が成立した場合には、その判断の成立したしきい値に対応する動作線が選択される。なお、検出された変速比γとしきい値との比較は、上述したように小さいしきい値から順に行うことに替えて、大きい値のしきい値としての変速比から順に比較することとしてもよい。また、変速比γの大小の判断は、上記のフローチャートに示す順序とは反対に第3変速比γ3 と比較することから始めてもよい。
上記の動作線L1 〜L3 の選択およびその動作線L1 〜L3 に基づく制御を行った場合の車両の挙動の一例を図9を参照して説明する。図9に示す例は、車両が発進して所定の車速まで加速し、その車速に維持した後に減速して停車し、その後、低車速でわずかに進行して停車し、さらに前述した所定車速より定車速で走行した後に停車した例である。発進前では、エンジン1がアイドル運転していてわずかなトルクを出力している。この状態では、車速およびスロットル開度は「ゼロ」であり、ロックアップクラッチ8は「L/U:OFF」、変速比γは最大変速比γmax になっている。したがって、動作線としては前述した第3動作線L3 が選択されている。
アクセルペダル(図示せず)が踏み込まれてスロットル開度が増大すると、エンジントルクおよびエンジン回転数が次第に増大し、車両が発進する。車速が増大することに伴って変速比γが次第に低下する。その過程でロックアップクラッチ8が「L/U:ON」に切り替わる。その際にエンジン回転数がわずかに低下し、その後、再度、エンジン回転数が増大する。
車速の増大に伴って変速比γが低下し、前述した変速比相当値が前述した第3変速比γ3 以下になると、動作線が前述した第2動作線L2 に切り替わる(t1 時点)。アクセルペダルが未だ踏み込まれていてスロットル開度が大きくなっているから、車両は加速状態になっており、エンジン回転数や車速は更に増大し続ける。こうして車速が所定の車速に達することによりアクセルペダルが戻されて定速走行に移行すると、エンジントルクおよびエンジン回転数が低下し、また、変速比γが低下する。変速比γが前述した第2変速比γ2 に達し、あるいは第2変速比γ2 以下になると(t2 時点)、動作線が前述した第1動作線L1 に切り替わる。この時点では、加速力が特には要求されていないので、エンジン1は前述した最適燃費線上の運転点で運転される。
その後、減速のためにスロットル開度が減じられると、エンジン1の運転点は最適燃費線上を低回転数・低トルク側に変化する。また、車速が次第に低下する。その過程で変速比γが前述した第2変速比γ2 より大きくなると、動作線が第2動作線L2 に切り替わる(t3 時点)。その後、車速を維持するべくスロットル開度が所定の開度に維持される。このように車速が維持されている状態では、エンジン1は最適燃費線に沿って運転される。この場合の第2動作線はL2 は、エンジン回転数を第1動作線L1 によるよりも低回転数に設定できる動作線であるから、エンジン回転数は動作線の切替に応じて低下する。すなわち、最適燃費線上において、より低回転数側の運転点でエンジン1が運転される。なお、この場合、動作線を切り替えずに第1動作線L1 上の運転点でエンジン1を運転するとすれば、エンジン回転数が大きくなるとともにその運転点は最適燃費線から外れた運転点になるから、燃費が悪化する。言い換えれば、動作線が変速比γに応じて上記のように切り替えられることにより、燃費が向上する。燃費が向上する領域を図9に破線で囲ってある。
車速が維持されている状態からスロットル開度が「ゼロ」に向けて減じられると、車速が低下するとともに、変速比γが停車時の変速比である最大変速比γmax に向けて次第に増大する。その過程で変速比γが前述した第3変速比γ3 を超えると、動作線が前述した第3動作線L3 に切り替わる(t4 時点)。そして、エンジン回転数が予め定められたロックアップ下限回転数を下回ることによりロックアップクラッチ8が解放させられる。したがって、ロックアップクラッチ8が解放している状態では、ロックアップクラッチ8が係合している場合よりも低い回転数でエンジン1が運転される。
車両が停車した後、わずかに前進するためにアクセルペダルが踏み込まれると(t5 時点)、エンジントルクおよびエンジン回転数ならびに車速が増大する。そして、車速が運転者の意図する車速に近づくことによりアクセルペダルが戻されてスロットル開度が減じられ、意図する低い車速を維持する開度に設定される。その場合、前述した第3動作線L3 が採用されているので、エンジン1の運転点は、第3動作線L3 における最適燃費線上の運転点となる。また、ロックアップクラッチ8が係合させられる。したがって、エンジン回転数は図9に実線で示す低い回転数となって燃費が良好になる。比較のために、上記のダイナミックダンパ7と変速部20との間に例えば図示しないバネを設けて、変速部20がダイナミックダンパ7の慣性質量として機能しないようにした場合について説明する。この場合には、前述した第1動作線L1 が採用され、そのエンジン回転数を図9に破線で示してある。上記の実線で示すエンジン回転数とこの破線で示すエンジン回転数と比較して明らかなように、第3動作線L3 を採用することにより、エンジン回転数を低下させて、燃費を向上させることができる。その燃費が向上する領域を図9に破線で囲ってある。また、ロックアップクラッチ8が係合しているものの、ダンパ機構5の制振性能が、変速比γが大きいことにより向上しているので、車両のNV特性が特に悪化することはない。
スロットル開度が「ゼロ」に減じられて停車した後、再度の発進のためにアクセルペダルが踏み込まれてスロットル開度が増大すると(t6 時点)、最初に述べた発進の際と同様に、エンジントルクおよびエンジン回転数ならびに車速が次第に増大し、また変速比γが最大変速比γmax から次第に低下する。停車時には解放していたロックアップクラッチ8がその過程で係合し、それに伴ってエンジン回転数が一時的に低下し、その後、エンジン回転数が次第に増大する。
車速を意図した車速に維持するべくスロットル開度が減じられると(t7 時点)、アクセル開度に基づいて求められるエンジン1の目標出力が低下し、それに伴って変速比γが低下する。変速比γが前述した第3変速比γ3 を下回ると、エンジン1を制御する動作線が第3動作線L3 から第2動作線L2 に切り替わる。すなわち、最適燃費線上で、より低いエンジン回転数の運転点を設定することが可能になる。したがって、この場合も、エンジン回転数を、前述した第1動作線L1 によってエンジン1を制御した場合の回転数(図9に破線で示す回転数)より低回転数に設定し、燃費を向上させることができる。また、ロックアップクラッチ8が係合していることにより動力損失を抑制して燃費を向上させることができる。また、変速比γが大きいことによりダンパ機構5の制振性能が向上しているので、車両のNV特性が悪化することはない。その燃費が向上する領域を図9に破線で囲ってある。なお、停車するためにスロットル開度が「ゼロ」に減じられると、前述した停車の際と同様に、エンジントルクおよびエンジン回転数が低下して車速が低下する。また、変速比γが最大変速比γmax に向けて増大し、その過程で第3動作線L3 が選択され(t8 時点)、またロックアップクラッチ8が解放させられる。
上述したように、この発明に係る制御装置によれば、変速部20で設定される変速比γの増大に応じてダンパ機構5による制振性能が向上することを利用して、NV特性を悪化させない低回転数側の運転点を設定してある。その運転点は車両が走行している際に変速部20で設定される変速比γに応じて選択される。その結果、この発明の実施形態における制御装置によれば、ロックアップ・オン状態で、従来では設定されていない低回転数側の運転点で、振動や騒音あるいは乗り心地を悪化させることなく、エンジンを運転できる。
なお、この発明の実施形態における動作線は、変速比相当値に基づいて選択されて、低出力側でのエンジン1の運転点を低回転数側あるいは高トルク側に設定できるように構成されていればよい。図10は動作線の他の例を示しており、ここに示す例では、前述した第3変速比γ3 に対応する最低回転数No3がエンジン1の下限回転数となっている。したがって、第1動作線L1 は、最適燃費線上の運転点と下限回転数No3での運転点との間で、運転点を変速比γ1 上の運転点に維持するように構成されている。同様に、第2動作線L2 は、最適燃費線上の運転点と下限回転数No3での運転点との間で、運転点を変速比γ2 上の運転点に維持するように構成されている。言い換えれば、各動作線L1 〜L3 による最低回転数は、それぞれの同一の下限回転数(最低出力回転数)No3になっており、最適燃費線と下限回転数No3との間に低トルク動作線L1l,L2l,L3lが、変速比γが大きいほど、高出力トルク側に設定されている。また、所定のエンジントルク(出力トルク)での運転点として説明すると、第2動作線L2 における低トルク動作線L2l上の運転点は、第1動作線L1 における低トルク動作線L1l上の運転点より低回転数の運転点になる。同様に、第3動作線L3 における低トルク動作線L3l上の運転点は、第2動作線L2 における低トルク動作線L2l上の運転点より低回転数の運転点になる。なお、この場合においても、第1ないし第3の変速比γ1 〜γ3 に対応するロックアップ限界ラインL−γ1 ,L−γ2 ,L−γ3 は、前述したNV特性に基づいて設定される線である。したがって、ロックアップ限界ラインL−γ1 ,L−γ2 ,L−γ3 とは、変速比が当該ロックアップ限界点に相当する変速比より大きい場合にはロックアップクラッチ8を解放する領域を画定する線である。
動作線を図10に示すように構成した場合であっても、ダンパ機構5の制振性能が向上することにより、変速比が大きい場合に選択される動作線が、低回転数側あるいは高トルク側の運転点を設定する動作線となっている。したがって、変速比に応じて低回転数側あるいは高トルク側でのエンジン1の運転が可能になり、最適燃費線上の運転に近くなるから、燃費を向上させることができる。また当然、NV特性が悪化することを回避もしくは抑制することができる。
この図10に示す動作線L1 〜L3 の選択およびその動作線L1 〜L3 に基づく制御を行った場合の車両の挙動の一例を図11を参照して説明する。図11に示す例における車速の変化パターンは、前述した図9に示す例と同様である。発進前では、エンジン1がアイドル運転していてわずかなトルクを出力している。この状態では、車速およびスロットル開度は「ゼロ」であり、ロックアップクラッチ8は「L/U:OFF」、変速比γは最大変速比γmax になっている。したがって、動作線としては前述した第3動作線L3 が選択されている。
アクセルペダル(図示せず)が踏み込まれてスロットル開度が増大すると、エンジントルクおよびエンジン回転数が次第に増大し、車両が発進する。車速が増大することに伴って変速比γが次第に低下する。その過程でロックアップクラッチ8が「L/U:ON」に切り替わる。その際にエンジン回転数がわずかに低下する。また、第3動作線L3 が採用されていることにより、エンジン回転数は増大せずに所定の前記最低回転数No3に維持される。そのため、その時点のエンジン出力によるエンジントルクが大きくなり、車両の駆動トルクが大きくなる。その領域を図11に破線で囲ってある。その後、第3動作線L3 に即した運転点の変化に応じてエンジン回転数が増大する。
車速の増大に伴って変速比γが低下し、前述した変速比相当値が前述した第3変速比γ3 以下になると、動作線が前述した第2動作線L2 に切り替わる(t11時点)。アクセルペダルが未だ踏み込まれていてスロットル開度が大きくなっているから、車両は加速状態になっており、エンジン回転数や車速は更に増大し続ける。こうして車速が所定の車速に達することによりアクセルペダルが戻されて定速走行に移行すると、エンジントルクおよびエンジン回転数が低下し、また、変速比γが低下する。変速比γが前述した第2変速比γ2 に達し、あるいは第2変速比γ2 以下になると(t12時点)、動作線が前述した第1動作線L1 に切り替わる。この時点では、加速力が特には要求されていないので、エンジン1は前述した最適燃費線上の運転点で運転される。
その後、減速のためにスロットル開度が減じられると、エンジン1の運転点は最適燃費線上を低回転数・低トルク側に変化する。また、車速が次第に低下し始める。このような変化の過程で変速比γが前述した第2変速比γ2 より大きくなると、動作線が第2動作線L2 に切り替わる(t13時点)。その後、車速を維持するべくスロットル開度が所定の開度に維持される。このように車速を維持している状態では、エンジン1は最適燃費線に沿って運転される。この場合の第2動作線はL2 は、出力トルクを第1動作線L1 によるよりも高トルク側に設定した動作線であるから、その出力トルクに対応するエンジン回転数は動作線の切替に応じて低下する。すなわち、最適燃費線上において、より低回転数側の運転点でエンジン1が運転される。なお、この場合、動作線を切り替えずに第1動作線L1 上の運転点でエンジン1を運転するとすれば、エンジン回転数が大きくなるとともにその運転点は最適燃費線から外れた運転点になるから、燃費が悪化する。言い換えれば、動作線が変速比γに応じて上記のように切り替えられることにより、燃費が向上する。燃費が向上する領域を図11に破線で囲ってある。
車速が維持されている状態からスロットル開度が「ゼロ」に向けて減じられると、車速が低下するとともに、変速比γが停車時の変速比である最大変速比γmax に向けて次第に増大する。その過程で変速比γが前述した第3変速比γ3 を超えると、動作線が前述した第3動作線L3 に切り替わる(t14時点)。そして、エンジン回転数が予め定められたロックアップ下限回転数を下回ることによりロックアップクラッチ8が解放させられる。したがって、ロックアップクラッチ8が解放している状態では、ロックアップクラッチ8が係合している場合よりも低い回転数でエンジン1が運転される。
車両が停車した後、わずかに前進するためにアクセルペダルが踏み込まれると(t15時点)、エンジントルクおよびエンジン回転数ならびに車速が増大する。そして、車速が運転者の意図する車速に近づくことによりアクセルペダルが戻されてスロットル開度が減じられ、意図する低い車速を維持する開度に設定される。その場合、前述した第3動作線L3 が採用されているので、エンジン1の運転点は、第3動作線L3 における最適燃費線上の運転点となる。また、ロックアップクラッチ8が係合させられる。したがって、エンジン回転数は低い回転数となって燃費が良好になる。このような効果を得られる運転領域を図11に破線で囲ってある。また、ロックアップクラッチ8が係合しているものの、ダンパ機構5の制振性能が、変速比γが大きいことにより向上しているので、車両のNV特性が特に悪化することはない。
スロットル開度が「ゼロ」に減じられて停車した後、再度の発進のためにアクセルペダルが踏み込まれてスロットル開度が増大すると(t16時点)、最初に述べた発進の際と同様に、エンジントルクおよびエンジン回転数ならびに車速が次第に増大し、また変速比γが最大変速比γmax から次第に小さくなる。停車時には解放していたロックアップクラッチ8がその過程で係合し、それに伴ってエンジン回転数が一時的に低下し、その後、エンジン回転数が次第に増大する。第3動作線L3 における低トルク動作線L3lは、図10に示すように、その一部が、第3の変速比γ3 に対応するロックアップ限界ラインL−γ3 と一致している。したがって、ロックアップ後のエンジン回転数はこの低トルク動作線L3lによる回転数に設定され、その運転点は第1動作線L1 や第2動作線L2 によるよりも高トルク側である。そのため、燃費が向上するとともにエンジントルクが増大して大きく駆動トルクを得ることができる。このように燃費および駆動トルクが改善される領域を図11に破線で囲ってある。
車速を意図した車速に維持するべくスロットル開度が減じられると(t17時点)、アクセル開度に基づいて求められるエンジン1の目標出力が低下し、それに伴って変速比γが低下する。変速比γが前述した第3変速比γ3 を下回ると、エンジン1を制御する動作線が第3動作線L3 から第2動作線L2 に切り替わる。すなわち、最適燃費線上で、より低いエンジン回転数の運転点を設定することが可能になる。したがって、この場合も、エンジン回転数を、前述した第1動作線L1 によってエンジン1を制御した場合の回転数(図10に破線で示す回転数)より低回転数に設定し、燃費を向上させることができる。併せてエンジントルクを増大させることができる。また、ロックアップクラッチ8が係合していることにより動力損失を抑制して燃費を向上させることができる。また、変速比γが大きいことによりダンパ機構5の制振性能が向上しているので、車両のNV特性が悪化することはない。その燃費が向上する領域を図11に破線で囲ってある。なお、停車するためにスロットル開度が「ゼロ」に減じられると、前述した停車の際と同様に、エンジントルクおよびエンジン回転数が低下して車速が低下する。また、変速比γが最大変速比γmax に向けて増大し、その過程で第3動作線L3 が選択され(t18時点)、またロックアップクラッチ8が解放させられる。
図12はこの発明における動作線の更に他の例を示している。ここに示す例は、車両の挙動が機敏になるスポーツ走行モードや駆動力が大きくなる登坂路走行モードなどが選択されている場合に採用される動作線の例である。これらの走行モードでは、大きい駆動力が要求されていることにより、燃費を向上させることよりも駆動力が大きくなることが優先されるので、通常時の動作線は最適燃費線より高トルク側の線となる。この高トルク側の動作線Lp1は、前述した第1動作線L1 を高出力トルク側に移動させた動作線となっている。また、第2の高トルク側動作線Lp2は、前述した第2動作線L2 を高出力トルク側に移動させ、かつ下限回転数を所定の最低回転数No2に制限した動作線となっている。なお、第1動作線L1 における低トルク動作線L1lは、前記第1の変速比γ1 に対応するロックアップ限界ラインL−γ1 に一致する線として設定され、また第2動作線L2 における前記低トルク動作線L2lは、前記第2の変速比γ2 に対応するロックアップ限界ラインL−γ2 と第2の高トルク側動作線LP2とが交差する点で第2の高トルク側動作線Lp2に連続した線となっている。したがって、所定のエンジントルク(出力トルク)での運転点として説明すると、第2動作線L2 における低トルク動作線L2l上の運転点は、第1動作線L1 における低トルク動作線L1l上の運転点より低回転数の運転点になる。
したがって、スポーツ走行モードや登坂路走行モードなどで変速比γが大きい場合には、変速比γが小さい場合に比較して低回転数側あるいは高トルク側の運転点でエンジン1を運転することができる。その場合、変速比γが大きいことによりダンパ機構5による制振性能が向上しているので、エンジン回転数が低回転数であり、あるいはエンジントルクが大きくなっているとしても、NV特性が悪化するなどの事態が回避もしくは抑制される。すなわち、所望の制振性能を満たしつつドライバビリティを向上させることができる。このように高トルク側でのエンジンの運転が可能になることにより、ディーゼルエンジンや過給機付きエンジンなでの高トルクエンジンの燃費を向上させることができる。また、車両の走行状態や走行モードに応じて動作線を変更する場合に動作線の選択の自由度が向上する。上述したようにダンパ機構の制振性能を向上させることができるので、小型もしくは低廉なダンパ機構であっても必要十分な制振性能を得ることができ、したがってダンパ機構あるいはこれを含む動力伝達装置の全体としての構成を小型化し、あるいは低廉化することができる。
この発明で対象とすることのできる車両は、前述したように、ダイナミックダンパを備えた車両であり、そのダイナミックダンパはスプリングダンパを介してエンジンに連結され、かつスプリングと比較して剛体と見なし得る形態で変速部に連結されていればよい。したがって、ダイナミックダンパは、ダンパマスをスプリングによって保持した構成であってもよい。その例を図13に示してある。図13の(A)は模式的な断面図であり、(B)はブロック図である。ここに示す例では、ダイナミックダンパ7のベース部7Aが入力軸11に一体化されており、そのベース部7Aの外周部に、回転方向に伸縮するスプリング7Bを介してダンパマス7Cが連結されている。したがって、このダンパマス7Cはスプリング7Bを繰り返し圧縮もしくは伸張させて回転方向に振動する。他の構成は、図2を参照して説明した構成と同様である。
また、図14に示すダイナミックダンパ7の例は、エンジン1の回転とダンパマスの回転とに位相差を設定してトルクの振動を抑制するように構成した例である。図14の(A)はその模式的な断面であり、(B)はブロック図である。エンジン1とダンパマス7Cとの間に遊星歯車機構30が配置されている。その遊星歯車機構30におけるリングギヤ31にエンジン1が連結されている。具体的には、この遊星歯車機構30はトルクコンバータ9の内部に配置されており、そのロックアップクラッチ8がリングギヤ31に連結されている。また、キャリヤ32にスプリングダンパ6における従動側プレート13が連結されている。そして、サンギヤ33にダンパマス7Cが取り付けられている。したがって、遊星歯車機構30におけるリングギヤ31とキャリヤ32との間にスプリングダンパ6が介在していることになるので、トルクの変動によってスプリングダンパ6に捩れが生じると、リングギヤ31とキャリヤ32との間に相対回転が生じる。その結果、ダンパマス7Cがエンジン1に対して更に大きく相対回転する。このような相対回転は、スプリングダンパ6における捩れによって生じるから、ダンパマス7Cは結局、回転方向に振動することになる。他の構成は、図2を参照して説明した構成と同様である。
したがって、図13あるいは図14に示す構成の駆動系を有する車両であっても、タービンランナ15や変速部20などの慣性モーメントが主振動系のモード慣性モーメントMに含まれるから、変速比相当回転数の増大に応じて制振性能が向上する。その機能を利用して前述した図7ないし図12に示す動作線を設定し、図8に示すように制御して、いわゆるロックアップ領域を低回転数域に拡大でき、また燃費を向上させ、あるいは高トルク領域での運転が可能になる。
上述したようにこの発明に係る制御装置は、制振特性が変速部での変速比に応じて変化することを利用して、NV特性が悪化しないように、複数の動作線を設定し、その動作線を車両の走行状態に応じて選択し、エンジンを運転するように構成されている。その制振特性は、変速比として把握することのできる回転数に応じて変化する。したがって、上述した具体例では、主として、変速比に基づいて動作線を選択するように構成されている。
この発明では、その変速比に替えて、変速比によって決まる適宜の回転数や適宜の回転数の比率に基づいて動作線を選択することとしてもよい。その回転数は、例えば変速部20の出力回転数やトルクコンバータ9におけるタービンの回転数あるいは変速部20を構成している適宜の回転部材の回転数などであってよく、また回転数比はそれらいずれか二つの回転数の比率であってよい。これらの回転数や回転数比あるいは変速比自体の値などがこの発明における変速比相当値に相当している。
変速比相当値が大きいことによって選択される動作線は、その時点で要求され、もしくは目標とされているパワーを、より低回転数で出力するように構成された動作線である。エンジンが出力するパワーは、回転数とトルクとの積で表されるから、そのパワーを出力できる運転点のうち回転数が相対的に小さい運転点では出力トルクが相対的に大きくなる。したがって、この発明において、変速比相当値が大きいことによって選択される動作線は、変速比相当値が小さい場合に選択される動作線よりも、出力トルクが大きくなる動作線と言うこともできる。
また、この発明におけるスプリングダンパは、ロックアップクラッチに付設されているスプリングダンパ以外に、エンジンと変速部とを接続するクラッチに設けられているスプリングダンパであってもよい。