(車両の説明)
図1に基づき、本発明の実施形態による車両用駆動装置1が搭載された車両100について説明する。図1において、太線は各装置間の機械的な接続を示し、破線による矢印は制御用の信号線を示している。図1に示すように、車両100には、エンジン2、トルクコンバータ3、自動変速機4、デファレンシャル17が、この順番に、直列に設けられている。デファレンシャル17には、車両100の駆動輪18R,18Lが接続されている。なお、駆動輪18R,18Lは、車両100の前輪又は後輪、或いは、前後輪である。また、車両100は、オイルポンプ5、エンジン制御部9、自動変速機制御部10、駆動輪回転速度センサ19、アクセルペダル51、及びアクセルストロークセンサ52を有している。
アクセルペダル51(駆動トルク操作部)は、エンジン2が出力するエンジントルクTe(駆動トルク)を可変に操作するためのものである。アクセルストロークセンサ52(操作量検出部)は、アクセルペダル51のストロークであるアクセルストロークStaを検出し、その検出結果をエンジン制御部9に出力する。
エンジン2(駆動源)は、ガソリンや軽油等の炭化水素系燃料を使用し、エンジントルクTe(駆動トルク)を出力するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等である。エンジン2は、ピストン(不図示)により回転駆動されるクランクシャフト2aを有している。エンジン2には、エンジン2のシリンダ(不図示)に連通し、シリンダに供給される空気が流通する吸気マニホールド21が設けられている。また、吸気マニホールド21やエンジン2のシリンダヘッド2bには、燃料供給装置22が設けられている。燃料供給装置22は、ガソリンや軽油等の燃料を供給する装置である。
エンジン2がガソリンエンジンである場合には、吸気マニホールド21には、スロットル23(駆動トルク操作部)が設けられている。スロットル23は、吸気マニホールド21の流路断面積を可変にすることより、シリンダに吸入される空気量(混合気量)を調整し、エンジントルクTe(駆動トルク)を可変に操作するものである。スロットル23は、バルブ23a、スロットルアクチュエータ23b、及びスロットルポジションセンサ23cを備えている。バルブ23aは、吸気マニホールド21の流路断面積を可変にするものであり、例えばバタフライバルブである。スロットルアクチュエータ23bは、エンジン制御部9からの指令によって、バルブ23aを駆動することにより、バルブ23aの開度(スロットル開度Thp)を調整するものである。スロットルポジションセンサ23c(操作量検出部)は、スロットル開度Thp(操作量)を検出し、その検出結果をエンジン制御部9に出力する。エンジン2がガソリンエンジンである場合には、シリンダヘッド2bには、シリンダ(不図示)内の混合気を点火するための点火装置29が設けられている。
吸気マニホールド21には、エアフロメータ26、吸気圧センサ27、吸気温センサ28が設けられている。エアフロメータ26は、吸気マニホールド21内を流通する空気(吸気)の単位時間あたりの流量を検出し、その検出結果をエンジン制御部9に出力するものである。吸気圧センサ27は、吸気マニホールド21内を流通する空気(吸気)の圧力(吸気圧)を検出し、その検出結果をエンジン制御部9に出力するものである。吸気温センサ28は、吸気マニホールド21内を流通する空気(吸気)の温度(吸気温)を検出し、その検出結果をエンジン制御部9に出力するものである。
クランクシャフト2aに隣接する位置には、クランクシャフト2aの回転速度であるエンジン回転速度Neを検出して、その検出結果をエンジン制御部9に出力するエンジン回転速度センサ24が設けられている。エンジン2には、エンジン2を潤滑するエンジンオイルの油温tを検出して、その検出結果をエンジン制御部9に出力する油温センサ25が設けられている。
トルクコンバータ3は、エンジン2のクランクシャフト2aと自動変速機4の入力軸41の間に設けられている。トルクコンバータ3は、エンジン2からのエンジントルクTeを増幅させたうえで入力軸41に伝達するものである。トルクコンバータ3は、カバー31、ポンプインペラ32、タービンランナ33、ロックアップクラッチ34、ロックアップコントロールバルブ37を備えている。
カバー31は、エンジン2のクランクシャフト2aに接続されている。カバー31の内部にはオイルが収容されている。ポンプインペラ32は、カバー31に接続されている。このような構成により、ポンプインペラ32は、カバー31を介してクランクシャフト2aに接続され、クランクシャフト2aと一体回転する。タービンランナ33は、ポンプインペラ32と対向して配置されている。タービンランナ33は、入力軸41に接続され、入力軸41と一体回転する。ポンプインペラ32とタービンランナ33の間には、上記オイルが満たされている。エンジン2が出力するエンジントルクTeによってポンプインペラ32が回転すると、ポンプインペラ32の回転によって発生するオイルの螺旋流により、エンジントルクTeのトルクが増幅されてタービンランナ33に伝達される。
ロックアップクラッチ34は、カバー31とタービンランナ33とを係合又は解放することにより、エンジン2のクランクシャフト2aと入力軸41とが直結したロックアップ状態と、エンジン2のクランクシャフト2aと入力軸41との直結を解除して、エンジン2のクランクシャフト2aと入力軸41との間に回転差が生じるトルクコンバータ状態とに切り換えるものである。ロックアップクラッチ34は、ピストン34a、摩擦材34b、及びダンパー34cを備えている。
ピストン34aは、円板形状であり、タービンランナ33に相対回転不能且つ軸線移動可能に取り付けられている。ピストン34aは、カバー31の内壁面と対向している。ピストン34aは、カバー31の内部を液密に区画している。ピストン34aとタービンランナ33の間には、液密な第一室35が形成されている。ピストン34aとカバー31の内周面との間には、液密な第二室36が形成されている。ピストン34aのカバー31の内壁面と対向する位置に、摩擦材34bが設けられている。
第一室35に油圧が供給されると、ピストン34aがカバー31の内壁面に側に移動して、摩擦材34bがカバー31の内壁面に押し付けられる。すると、カバー31とタービンランナ33とが直結して、トルクコンバータ3がロックアップ状態となる。すると、クランクシャフト2aと入力軸41とが直結し、後述のオイルによるトルク伝達に比べて、クランクシャフト2aと入力軸41間におけるトルクの伝達ロスが低減される。
一方で、第二室36に油圧が供給されると、ピストン34aがタービンランナ33側に移動し、摩擦材34bがカバー31の内壁面から離れ、カバー31とタービンランナ33との直結が解除され、トルクコンバータ3がトルクコンバータ状態となる。すると、エンジントルクTeが、ポンプインペラ32とタービンランナ33の間にあるオイルによってトルクが増幅されて、ポンプインペラ32からタービンランナ33に伝達される。
ピストン34aには、コイルスプリング等の弾性体で構成されたダンパー34cが設けられている。トルクコンバータ3がロックアップ状態となった場合に、ダンパー34cが変位(伸縮)することにより、エンジン2から入力軸41に入力されるエンジントルクTeのトルク変動が吸収される。
ロックアップコントロールバルブ37には、後述するオイルポンプ5からオイルが供給される。そして、ロックアップコントロールバルブ37は、自動変速機制御部10からの指令によって、供給されたオイルによる油圧を第一室35及び第二室36のいずれかに供給することにより、トルクコンバータ3をロックアップ状態にし、又はトルクコンバータ状態にする。
エンジン制御部9は、エンジン2を制御するものである。エンジン制御部9は、CPU、RAM、ROMや不揮発性メモリー等で構成された記憶部(いずれも不図示)を有している。CPUは、プログラムを実行する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶する。記憶部はプログラムや各種マップを記憶している。
エンジン制御部9は、アクセルストロークセンサ52によって検出されたアクセルストロークSta(操作量)に基づいて、要求エンジントルクTerを演算する。エンジン2がガソリンエンジンである場合には、エンジン制御部9は、エンジン2が出力するエンジントルクTeが要求エンジントルクTerとなるように、燃料供給装置22の燃料供給量を調整するとともに、スロットル23のスロットル開度Thpを調整し、点火装置を制御する。エンジン2がディーゼルエンジンである場合には、エンジン制御部9は、エンジン2が出力するエンジントルクTeが要求エンジントルクTerとなるように、燃料供給装置22の燃料供給量を調整する。なお、アクセルペダル51が踏まれていない場合には(アクセルストロークSta=0)、エンジン回転速度Neはアイドリング回転速度(例えば、700r.p.m.)に維持される。
エンジン制御部9は、エンジン2が出力しているエンジントルクTeを演算し、演算したエンジントルクTeを自動変速機制御部10に出力する。具体的には、エンジン制御部9は、エアフロメータ26、吸気圧センサ27、及び吸気温センサ28からの検出結果に基づいて、エンジン2に供給されている単位時間当たりの酸素供給量を演算する。次に、エンジン制御部9は、エンジン回転速度センサ24によって検出されたエンジン回転速度Ne、スロットルポジションセンサ23cによって検出されたスロットル開度Thp(エンジン2がガソリンエンジンの場合)、及び油温センサ25によって検出されたエンジンオイルの油温tに基づいて、エンジン2において発生するフリクショントルクを演算する。次に、エンジン制御部9は、エンジン回転速度センサ24によって検出されたエンジン回転速度Ne、上記演算した単位時間当たりの酸素供給量、燃料供給装置22が供給している単位時間当たりの燃料供給量、及び上記演算したフリクショントルクに基づいて、エンジントルクTeを演算する。
自動変速機4は、トルクコンバータ3とデファレンシャル17との間に設けられている。自動変速機4は、オイルタンク4a、入力軸41、出力軸42、複数の遊星歯車機構43、入力軸回転速度センサ44、出力軸回転速度センサ45、複数又は単一のATクラッチ46、複数又は単一のATブレーキ47、複数又は単一のATクラッチバルブ48、及び複数又は単一のATブレーキバルブ49を備えている。
入力軸41は、トルクコンバータ3を介してエンジン2からのエンジントルクTeが入力される。出力軸42は、デファレンシャル17を介して駆動輪18R,18Lに回転連結されている。複数の遊星歯車機構43は、入力軸41及び出力軸42に回転連結されている。ATクラッチ46は、複数の遊星歯車機構43の各要素(サンギヤ、キャリア、リングギヤ)同士を係脱可能に接続するものである。ATブレーキ47は、複数の遊星歯車機構43の要素を自動変速機4のハウジング(不図示)に係脱可能に連結するものである。
複数又は単一のATクラッチ46及び複数又は単一のATブレーキ47からなる係合要素(摩擦係合要素)のそれぞれが、係合状態又は解放状態に選択的に切り替えられることにより、複数の遊星歯車機構43の動力伝達経路が切り換えられる。複数の遊星歯車機構43の動力伝達経路の切換によって、入力軸41の回転速度(以下、入力軸回転速度Niと略す)を出力軸42の回転速度(以下、出力軸回転速度Noと略す)で除した変速比がそれぞれ異なる複数の変速段が形成される。ATクラッチ46及びATブレーキ47からなる係合要素は、油圧が供給されると係合状態となり、油圧の供給が停止されると(供給されている油圧が0になると)解放状態となる。
自動変速機4の変速時においては、複数の係合要素(ATクラッチ46、ATブレーキ47)のうち変速時に係合状態から解放状態にされる解放側係合要素が解放される。そして、複数の係合要素のうち変速時に解放状態から係合状態にされる係合側係合要素が係合される。
オイルタンク4aは、自動変速機4を構成する各要素やトルクコンバータ3に供給されるオイルが貯留されている。なお、オイルタンク4aは、自動変速機4と別体であっても、自動変速機4の下部にオイルパンを形成して構成しても差し支え無い。
オイルポンプ5は、本実施形態では、入力軸41の回転によって駆動される機械式のオイルポンプである。なお、オイルポンプ5は、モータによって駆動される電動オイルポンプであっても差し支え無い。オイルポンプ5は、オイルタンク4aからオイルを吸入して、ロックアップコントロールバルブ37、ATクラッチバルブ48、及びATブレーキバルブ49にオイルを供給する。
ATクラッチバルブ48は、オイルポンプ5と各ATクラッチ46との間の流路にそれぞれ設けられている。ATクラッチバルブ48は、自動変速機制御部10から出力された制御電流によって、オイルポンプ5とATクラッチ46間の流路の断面積を可変させ、又はこの流路を閉塞するリニア電磁弁である。ATクラッチバルブ48は、オイルポンプ5とATクラッチ46間の流路の断面積を可変させることにより、オイルポンプ5からATクラッチ46に供給される油圧を可変させる。また、ATクラッチバルブ48は、オイルポンプ5とATクラッチ46間の流路を閉塞することにより、オイルポンプ5からのATクラッチ46への油圧の供給を停止させる(ATクラッチ46に供給されている油圧を0にする)。
ATブレーキバルブ49は、オイルポンプ5と各ATブレーキ47との間の流路にそれぞれ設けられている。ATブレーキバルブ49は、自動変速機制御部10から出力された制御電流によって、オイルポンプ5とATブレーキ47間の流路の断面積を可変させ、又はこの流路をするリニア電磁弁である。ATブレーキバルブ49は、オイルポンプ5とATブレーキ47間の流路の断面積を可変させることにより、オイルポンプ5からATブレーキ47に供給される油圧を可変させる。また、ATブレーキバルブ49は、オイルポンプ5とATブレーキ47間の流路を閉塞することにより、オイルポンプ5からのATブレーキ47への油圧の供給を停止させる(ATブレーキ47に供給されている油圧を0にする)。
入力軸回転速度センサ44は、入力軸41に隣接する位置に設けられ、入力軸回転速度Ni(タービンランナ33の回転速度)を検出し、その検出結果を自動変速機制御部10に出力する。
出力軸回転速度センサ45は、出力軸42に隣接する位置に設けられ、出力軸回転速度Noを検出し、その検出結果を自動変速機制御部10に出力する。
駆動輪回転速度センサ19は、駆動輪18R,18Lの回転速度(以下、駆動輪回転速度Nwと略す)を検出し、その検出結果を自動変速機制御部10に出力する。
自動変速機制御部10は、自動変速機4を制御するものである。自動変速機制御部10は、エンジン制御部9と同様に、CPU、RAM、ROMや記憶部(いずれも不図示)を有している。自動変速機制御部10は、エンジン制御部9と通信可能に接続されている。自動変速機制御部10(変速制御部)は、ATクラッチバルブ48及びATブレーキバルブ49に駆動電流を供給して、これらを制御することにより、ATクラッチ46及びATブレーキ47に供給される油圧を制御する。
自動変速機制御部10(変速制御部)は、変速時において、ATクラッチバルブ48及びATブレーキバルブ49の少なくとも一方を制御することにより、解放側係合要素(ATクラッチ46及びATブレーキ47の少なくとも一方)に供給される油圧を徐々に減少させて、解放側係合要素を解放状態にする。そして、自動変速機制御部10は、変速時において、ATクラッチバルブ48及びATブレーキバルブ49の少なくとも一方を制御することにより、係合側係合要素(ATクラッチ46及びATブレーキ47の少なくとも一方)に供給される油圧を徐々に増加させて、係合側係合要素を係合状態にする。
自動変速機制御部10(変速制御部)は、変速時において、エンジン制御部9によって演算されたエンジントルクTeが大きい程、解放側係合要素に供給されている油圧の減少勾配を小さくし、係合側係合要素に供給されている油圧の増加勾配を大きくする。これにより、変速時において、解放側係合要素や係合側係合要素の滑りが防止される。
自動変速機制御部10は、ATクラッチバルブ48やATブレーキバルブ49に供給している駆動電流に基づいて、ATクラッチ46やATブレーキ47に供給されている油圧を演算する。自動変速機制御部10は、出力軸回転速度センサ45によって検出された出力軸回転速度Noに基づいて、車両100の車速Vを演算する。
上記した、エンジン2、トルクコンバータ3、自動変速機4、オイルポンプ5、エンジン制御部9、自動変速機制御部10、駆動輪回転速度センサ19、アクセルペダル51、及びアクセルストロークセンサ52を含めた構成が、本実施形態の車両用駆動装置1である。
(変速マップの説明)
以下に図2を用いて「変速マップ」について説明する。図2に示すように、「変速マップ」は、出力軸回転速度NoとアクセルストロークStaとの関係を表した「変速線」を複数有している。増速方向に向かって(出力軸回転速度Noが遅い方から速い方に向かって)順に、2速アップ変速線、3速アップ変速線(図2の実線で示す)が設定されている。また、増速方向に向かって順に、1速ダウン変速線、2速ダウン変速線(図2の破線で示す)が設定されている。これ以上の変速段についても、同様に「変速線」が設定されている。
自動変速機制御部10(認識変速段認識部)は、「変速マップ」を参照して、出力軸回転速度NoとアクセルストロークStaに対応する認識変速段を認識する。具体的には、図2において、自動変速機4の変速段が2速である状態(図2のP0)において、アクセルストロークStaが増加して、出力軸回転速度NoとアクセルストロークStaとの関係が1速ダウン変速線を越えると(図2のP1)、自動変速機制御部10(認識変速段認識部)は、認識変速段を2速から1速に変更する。一方で、自動変速機4の変速段が1速である状態(図2のP2)において、アクセルストロークStaが減少して、出力軸回転速度NoとアクセルストロークStaとの関係が2速アップ変速線を越えると(図2のP3)、自動変速機制御部10(認識変速段認識部)は、認識変速段を1速から2速に変更する。自動変速機制御部10(変速制御部)は、自動変速機4の変速段が認識変速段となるように、解放側係合要素を解放状態にするとともに、係合側係合要素を係合状態にする。
(ロックアップマップの説明)
以下に図3を用いて「ロックアップマップ」について説明する。図3に示すように、「ロックアップマップ」は、出力軸回転速度NoとアクセルストロークStaとの関係を表した「ロックアップ線」を複数有している。出力軸回転速度Noが遅い方から速い方に向かって順に、2速ロックアップOFF線、2速ロックアップON線、3速ロックアップOFF線、3速ロックアップON線が設定されている。これ以上の変速段についても、同様に「ロックアップ線」が設定されている。
自動変速機制御部10は、「ロックアップマップ」を参照して、出力軸回転速度NoとアクセルストロークStaに基づいて、トルクコンバータ3をトルクコンバータ状態又はロックアップ状態のいずれかにする。具体的には、図3において、自動変速機4の変速段が2速であり、トルクコンバータ3がロックアップ状態である場合(図3のP0)において、アクセルストロークStaが増加して、出力軸回転速度NoとアクセルストロークStaとの関係が2速ロックアップOFF線を越えると(図3のP1)、自動変速機制御部10は、ロックアップコントロールバルブ37を制御して、トルクコンバータ3をトルクコンバータ状態にする。一方で、自動変速機4の変速段が2速であり、トルクコンバータ3がトルクコンバータ状態である場合(図3のP2)において、アクセルストロークStaが減少して、出力軸回転速度NoとアクセルストロークStaとの関係が2速ロックアップON線を越えると(図3のP3)、自動変速機制御部10は、ロックアップコントロールバルブ37を制御して、トルクコンバータ3をロックアップ状態にする。
(変速ショック低減制御の概要)
運転者がアクセルペダル51を踏み込み又は離すことにより、アクセルストロークStaが変化し、出力軸回転速度NoとアクセルストロークStaとの関係が、図2に示す変速線を越えた場合には、認識変速段が変更され、自動変速機4が認識変速段に変速される。そして、アクセルストロークStaの変化により、エンジン2が出力するエンジントルクTeが変動する。トルクコンバータ3がロックアップ状態である場合には、変動するエンジントルクTeがそのまま入力軸41に入力される。すると、入力軸41が回転軸線回りに捩れ、その後捩れが解消される。これにより、入力軸41が回転軸線回りに沿って振動し、図4に示すように、入力軸回転速度Niが増減を繰り返して振動し、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動の特性値である入力軸回転速度Niの振幅が振動する。入力軸回転速度Niが振動している状態で、自動変速機4において変速が実行されると、変速ショックが発生する。
上記した変速ショックが発生する理由について以下に説明する。トルクコンバータ3がロックアップしている状態で、入力軸回転速度Niが振動すると、エンジン回転速度Neも増減を繰り返して振動する。エンジントルクTeはエンジン回転速度Neに基づいて演算されるので、エンジン回転速度Neが振動すると、演算されたエンジントルクTeの値が増減を繰り返して振動する。上述したように、自動変速機制御部10は、演算されたエンジントルクTeが大きい程、解放側係合要素に供給されている油圧の減少勾配を小さくし、係合側係合要素に供給されている油圧の増加勾配を大きくする。このため、エンジン制御部9によって演算されたエンジントルクTeが振動(変動)すると、解放側係合要素及び係合側係合要素に供給されている油圧もまた増減を繰り返す。この結果、この油圧の増減によるショックや、解放側係合要素及び係合側係合要素の係合トルクの変化によって、自動変速機4において変速ショックが発生する。
この変速ショックを低減させるために、自動変速機制御部10(解放制御開始遅延部、変速制御部)は、解放側係合要素を解放状態にする解放制御の開始を、入力軸回転速度Niの振動が減衰(低減)する時刻である振動減衰時刻Td(図4示)まで遅延させる解放制御開始遅延処理を実行する(図5のT4)。そして、自動変速機制御部10(変速制御部)は、振動減衰時刻Tdが経過してから、係合側係合要素を係合状態にする係合制御を開始させる(図5のT8)。これにより、自動変速機4の変速中において、解放側係合要素や係合側係合要素に供給されている油圧が増減を繰り返すことが抑制され、自動変速機4における変速ショックが抑制される。
自動変速機制御部10(プリチャージ開始部)は、振動減衰時刻Tdが経過する前に、係合側係合要素が係合を開始する直前状態にまで、係合側係合要素に油圧を供給するプリチャージを実行する(図5のT2〜T3)。すると、係合側係合要素にオイルが充填される。これにより、係合側係合要素にオイルが充填されていない状態で、係合側係合要素にオイルが供給されることに起因する係合側係合要素の係合トルクの急激な増加が抑制される。このため、自動変速機4におけるショックの発生が抑制される。
上記したように、振動減衰時刻Tdが経過する前に、予めプリチャージが実行される。このため、係合側係合要素の係合可能時期が到来した時に(図5のT8)、プリチャージの完了(図5に示すオイル充填待ち時間)を待たずに、係合側係合要素の係合を開始させることができる。この結果、振動減衰時刻Tdが経過した後にプリチャージが開始される場合と比較して、自動変速機における変速時間が短縮される。
(変速制御)
以下に、図6に示すフローチャートを用いて、「変速制御」について説明する。エンジン2が始動すると、自動変速機制御部10は、「変速制御」を開始させて、プログラムをステップS10に進める。
ステップS10において、自動変速機制御部10(認識変速段認識部)は、図2に示す「変速マップ」を参照して、出力軸回転速度No及びアクセルストロークStaに基づいて、認識変速段が変更されたと判断した場合には(ステップS10:YES)、プログラムをステップS11に進める。一方で、自動変速機制御部10(認識変速段認識部)は、認識変速段が変更されていないと判断した場合には(ステップS10:NO)、ステップS10の処理を繰り返す。
ステップS11において、自動変速機制御部10は、トルクコンバータ3がロックアップ状態であると判断した場合には(ステップS11:YES)、プログラムをステップS12に進める。一方で、自動変速機制御部10は、トルクコンバータ3がトルクコンバータ状態であると判断した場合には(ステップS11:NO)、プログラムをステップS30に進める。
ステップS12において、自動変速機制御部10は、入力軸回転速度Niの履歴を自身の記憶部に記憶させる処理を開始する。これにより、図4に示すように、入力軸回転速度Niの振動の記憶が開始される。図4において、基準入力軸回転速度Nibは、認識変速段段が変更された時点の入力軸回転速度Niである。入力軸回転速度Niの振動の振幅は、入力軸回転速度Niから基準入力軸回転速度Nibを減算した値である。
ステップS13において、自動変速機制御部10は、入力軸回転速度Niの単位時間当たりの変化量dNi/dt(入力軸41の回転軸線回りに沿った振動の特性値)が、規定変化量A(図4示)以上(規定以上)であると判断した場合には(ステップS13:YES)、プログラムをステップS20に進める。一方で、自動変速機制御部10は、入力軸回転速度Niの単位時間当たりの変化量dNi/dtが規定変化量Aよりも小さい(規定よりも小さい)と判断した場合には(ステップS13:NO)、プログラムをステップS14に進める。なお、規定変化量Aは、入力軸回転速度Niの振動(入力軸41の回転軸線回りに沿った振動)が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因するか、駆動輪18R,18Lに付与された衝撃に起因するかを判定するための閾値である。つまり、入力軸回転速度Niの単位時間当たりの変化量dNi/dtが規定変化量A以上である場合には、入力軸41の入力軸回転速度Niの振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因すると判定され、入力軸振動状態であると判定される。
ステップS14において、自動変速機制御部10は、入力軸回転速度Niの振動の振幅Am(入力軸41の回転軸線回りに沿った振動の特性値)が規定振幅B(図4示)以上(規定以上)であると判断した場合には(ステップS14:YES)、プログラムをステップS20に進める。一方で、自動変速機制御部10は、入力軸回転速度Niの振動の振幅Amが規定振幅Bよりも小さい(規定よりも小さい)と判断した場合には(ステップS14:NO)、プログラムをステップS15に進める。なお、規定振幅Bは、入力軸回転速度Niの振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因するか、駆動輪18R,18Lに付与された衝撃に起因するかを判定するための閾値である。つまり、入力軸回転速度Niの振動の振幅Amが規定振幅B以上である場合には、入力軸回転速度Niの振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因すると判定され、入力軸振動状態であると判定される。
ステップS15において、自動変速機制御部10は、入力軸回転速度Niと駆動輪回転速度Nwとの振動周波数が異なると判断した場合には(ステップS15:YES)、プログラムをステップS20に進める。一方で、自動変速機制御部10は、入力軸回転速度Niと駆動輪回転速度Nwとの振動周波数が一致していると判断した場合には(ステップS15:NO)、プログラムをステップS30に進める。なお、入力軸回転速度Niと駆動輪回転速度Nwとの振動周波数が一致している場合には、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)が、駆動輪18R,18Lに付与された衝撃に起因していると判定される。一方で、入力軸回転速度Niと駆動輪回転速度Nwとの振動周波数が異なる場合には、入力軸41の入力軸回転速度Niの振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因すると判定され、入力軸振動状態であると判定される。
ステップS20において、自動変速機制御部10は、図7に示す「解放側係合要素変速ショック低減制御」及び図8に示す「係合側係合要素変速ショック低減制御」からなる「変速ショック低減制御」を実行する。これら「解放側係合要素変速ショック低減制御」及び「係合側係合要素変速ショック低減制御」については、後で説明する。
このように、アクセルストロークStaの変化によって、認識変速段が変更され(ステップS11でYESと判断)、エンジントルクTeの変動に起因して入力軸回転速度Niが振動し、この振動が規定以上である入力軸振動状態である場合(ステップS13、S14でYESと判断)には、ステップS20において「変速ショック低減制御」が実行される。なお、ステップS13〜S15の処理は、後述する変速待ち時間(図5示)以内に実行される。
ステップS30において、自動変速機制御部10は、「通常変速機制御」を実行する。具体的には、自動変速機制御部10(変速制御部)は、認識変速段が変更されて(図5のT1)から変速待ち時間が経過した時に(図5のT2)、解放側係合要素が解放状態となるまで解放側係合要素の油圧を徐々に低下させる解放制御を開始する。これと同時に、自動変速機制御部10(プリチャージ実行部)は、係合側係合要素の油圧をプリチャージ圧にしてプリチャージを実行する。なお、変速待ち時間の間に、認識変速段が変更された場合には、自動変速機制御部10は、認識変速段が変更される前の認識変速段への自動変速機4の変速を中止し、新たに変更された認識変速段に自動変速機4を変速させる制御を開始する。自動変速機制御部10は、プリチャージの実行後にプリチャージ時間が経過した時に(図5のT3)、係合側係合要素の油圧をプリチャージ圧よりも低いプリチャージ保持圧に保持する。なお、プリチャージ時間が経過した時(図5のT3)には、係合側係合要素には約80%のオイルが充填されている。
自動変速機制御部10は、係合可能時期が経過し(図5のT5)、係合側係合要素の油圧をプリチャージ保持圧に変更してから(図5のT3)、オイル充填待ち時間が経過した時(図5のT6)に、係合側係合要素が係合状態となるまで係合側係合要素の油圧を徐々に増大させる係合制御を開始させる。なお、係合可能時期とは、解放側係合要素の油圧が係合側係合要素の油圧と同一になるまで低下した時である。また、オイル充填待ち時間が経過した時(図5のT6)には、係合側係合要素には殆ど(例えば99%)オイルが充填されている。自動変速機制御部10は、係合側係合要素の油圧が規定係合油圧に達した時(図5のT10)に、係合側係合要素の油圧を係合側係合要素が完全に係合する(係合状態となる)完全係合油圧に増大させる。このように、自動変速機制御部10は、解放側係合要素を解放状態にするとともに、係合側係合要素を係合状態して、自動変速機4を変速する。
このように、トルクコンバータ3がトルクコンバータ状態である場合(ステップS11でNOと判断)や、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)が、駆動輪18R,18Lに付与された衝撃に起因する場合には(ステップS15でYESと判断)、ステップS30において「通常変速制御」が実行される。
(解放側係合要素変速ショック低減制御)
以下に、図7に示すフローチャートを用いて、「解放側係合要素変速ショック低減制御」について説明する。図6に示すステップS20の「変速ショック低減制御」が開始されると、自動変速機制御部10は、「解放側係合要素変速ショック低減制御」を開始し、プログラムをステップS52に進める。
ステップS52において、自動変速機制御部10は、自身の記憶部に記憶されている入力軸回転速度Niの履歴を参照することにより、入力軸回転速度Niの振動の振幅が最大となる最大振幅Am1を検出したと判断した場合には(ステップS52:YES)、プログラムをステップS53に進める。一方で、自動変速機制御部10は、最大振幅Am1を検出していないと判断した場合には(ステップS52:NO)、ステップS52の処理を繰り返す。自動変速機制御部10は、入力軸回転速度Niの振動の振幅の極大値v2(図4示)が、この極大値v2よりも前の入力軸回転速度Niの振動の振幅の極大値v1(図4示)よりも低下したと判断した場合に、極大値v1を最大振幅Am1として検出する。
ステップS53において、自動変速機制御部10(振動減衰時刻演算部)は、減衰一次関数Fg(図4示)を演算する。具体的には、自動変速機制御部10は、最大振幅Am1(極大値v1)から最大振幅Am1の次に大きい振幅である第二振幅Am2(極大値v2)を減算することにより振幅減衰値ΔAmを演算する。次に、自動変速機制御部10は、入力軸回転速度Niが最大振幅Am1となった時から第二振幅Am2となった時までの経過時間Δtを演算する。次に、自動変速機制御部10は、振幅減衰値ΔAmを経過時間Δtで除算することにより、減衰一次関数Fgを演算する。このように演算された減衰一次関数Fgは、入力軸回転速度Niの振動の振幅の極大値の減衰を予測した直線であるといえる。
ステップS54において、自動変速機制御部10(振動減衰時刻演算部)は、図4に示すように、ステップS53で演算した減衰一次関数Fgと基準入力軸回転速度Nibとが交わる時刻を振動減衰時刻Tdとして演算する。振動減衰時刻Tdは、入力軸回転速度Niの振動の振幅が0(規定減衰値)にまで減衰した時刻であるとみなせる。
ステップS55において、自動変速機制御部10(解放制御開始遅延部)は、ステップS54で演算した振動減衰時刻Tdが経過したと判断した場合には(ステップS55:YES)、プログラムをステップS56に進める。一方で、自動変速機制御部10は、振動減衰時刻Tdが経過していないと判断した場合には(ステップS55:NO)、ステップS55の処理を繰り返す。
ステップS56において、自動変速機制御部10(解放制御開始遅延部、変速制御部)は、解放側係合要素が解放状態になるまで解放側係合要素に供給されている油圧を徐々に低下させる解放制御を開始する(図5のT4)。
ステップS57において、自動変速機制御部10は、解放側係合要素が解放状態である(油圧が0)と判断した場合には(ステップS57:YES、図5のT9)、「解放側係合要素変速ショック低減制御」を終了する。一方で、自動変速機制御部10は、解放側係合要素が解放状態でないと判断した場合には(ステップS57:NO)、ステップS57の処理を繰り返す。
(係合側係合要素変速ショック低減制御)
以下に、図8に示すフローチャートを用いて、「係合側係合要素変速ショック低減制御」について説明する。図6に示すステップS20の「変速ショック低減制御」が開始されると、自動変速機制御部10は、「係合側係合要素変速ショック低減制御」を開始し、プログラムをステップS61に進める。
ステップS61において、自動変速機制御部10は、認識変速段が変更されてから(図5のT1)、変速待ち時間が経過したと判断した場合には(ステップS61:YES)、プログラムをステップS62に進める。一方で、自動変速機制御部10は、認識変速段が変更されてから、変速待ち時間が経過していないと判断した場合には(ステップS61:NO)、ステップS61の処理を繰り返す。
ステップS62において、自動変速機制御部10は、係合側係合要素のプリチャージを実行する(図5のT2)。
ステップS63において、自動変速機制御部10は、係合側係合要素のプリチャージの実行を開始してから(図5のT2)、プリチャージ時間が経過したと判断した場合には(ステップS63:YES、図5のT3)、プログラムをステップS64に進める。一方で、自動変速機制御部10は、係合側係合要素のプリチャージの実行を開始してから、プリチャージ時間が経過していないと判断した場合には(ステップS63:NO)、ステップS63の処理を繰り返す。
ステップS64において、自動変速機制御部10は、係合側係合要素に供給されている油圧をプリチャージ保持圧に低下させて保持する(図5のT3)。
ステップS65において、自動変速機制御部10は、係合可能時期であると判断した場合には(ステップS65:YES、図5のT8)、プログラムをステップS67に進める。一方で、自動変速機制御部10は、係合可能時期でないと判断した場合には(ステップS65:NO)、ステップS65の処理を繰り返す。自動変速機制御部10は、解放側係合要素の油圧が係合側係合要素の油圧(プリチャージ保持圧)と同一になるまで低下した時を、係合可能時期(図5示)であると判断する。
ステップS66において、自動変速機制御部10は、係合側係合要素の油圧をプリチャージ保持圧に変更してから(図5のT3)、オイル充填待ち時間が経過したと判断した場合には(ステップS66:YES、図5のT6)、プログラムをステップS67に進める。一方で、自動変速機制御部10は、係合側係合要素の油圧をプリチャージ保持圧に変更してから、オイル充填待ち時間が経過していないと判断した場合には(ステップS66:NO)、ステップS66の処理を繰り返す。なお、殆どの場合には、図5に示すように、係合開始条件が成立した時(図5のT8)には、オイル充填待ち時間(図5のT6)が経過している。
ステップS67において、自動変速機制御部10は、係合側係合要素が係合状態となるように、係合側係合要素に供給される油圧を徐々に増大させる係合制御を開始する(図5のT8)。
ステップS68において、自動変速機制御部10は、係合側係合要素の油圧が規定係合油圧に達したと判断した場合には(ステップS68:YES、図5のT11)、プログラムをステップS69に進める。一方で、自動変速機制御部10は、係合側係合要素の油圧が規定係合油圧に達していないと判断した場合には(ステップS68:NO)、ステップS68の処理を繰り返す。
ステップS69において、自動変速機制御部10は、係合側係合要素に供給される油圧を係合側係合要素が完全に係合する(係合状態となる)完全係合油圧に増大させる。ステップS69が終了すると、自動変速機制御部10は、「係合側係合要素変速ショック低減制御」を終了する。
(本実施形態の効果)
以上の説明から明らかなように、自動変速機制御部10(解放制御開始遅延部)は、入力軸振動状態である場合に(図6のステップS13、S14、S15でYESと判断)、解放側係合要素を解放状態にする制御の開始を入力軸41の回転軸線回りに沿った振動の特性値である入力軸回転速度Niの振動が減衰するまで(図5のT4)遅延させる解放制御開始遅延処理を実行する。これにより、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)が減衰してから、解放側係合要素の解放制御が開始される(図5のT4)。このため、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)が発生している時に、解放側係合要素の解放制御が開始されることに起因して発生する変速ショックが低減される。このように、トルクコンバータ3がロックアップ状態であっても、自動変速機4における変速ショックが低減されるので、ロックアップ領域を拡大させることができる。このため、車両100の燃費を向上させることができる。
また、自動変速機制御部10(プリチャージ開始部)は、入力軸振動状態である場合に(図6のステップS13、S14、S15でYESと判断)、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)が減衰する振動減衰時刻Td(図5のT4)の前に、プリチャージを開始させる(図5のT2)。これにより、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)が減衰する前にプリチャージが開始される。このため、係合側係合要素の係合可能時期が到来した場合に(図8のステップS65でYESと判断、図5のT8)、プリチャージが完了しているので、オイル充填待ち時間(図5示)の経過を待たずに、直ちに係合側係合要素を係合状態にする係合制御を開始させることができる。一方で、図6のステップS30で実行される通常変速制御では、係合可能時期が到来した時には(図5のT5)、係合側係合要素へのオイルの充填が完了していないので、オイル充填待ち時間の経過を待って(図5のT6)、係合側係合要素を係合状態にする係合制御が開始される。上記したように、変速ショック低減制御では、オイル充填待ち時間(図5示)の経過を待たずに、係合側係合要素を係合状態にする係合制御が開始されるので、変速ショック低減制御が実行されることによる変速遅れ時間(図5のT10とT11との経過時間)が、変速開始遅延時間よりも短縮される。このため、通常変速制御と比べて、僅かな変速遅れ時間で、自動変速機4における変速ショックを抑制することができる。この結果、変速ショックを抑制しつつ、変速が遅れることによる車両の加速が遅れる等の車両100のドライバビリティの低下が抑制される。
自動変速機制御部10(振動減衰時刻演算部)は、入力軸回転速度センサ44(入力軸振動検出部)によって検出された入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の変化に基づいて、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が減衰する時刻である振動減衰時刻Tdを演算する(図7のステップS54)。そして、自動変速機制御部10(解放制御開始遅延部)は、振動減衰時刻Tdが経過するまで、解放側係合要素を解放状態にする解放制御の開始を遅延させる(図7のステップS56、図5のT4)。これにより、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が減衰する時刻である振動減衰時刻Tdまで、解放側係合要素の解放が開始されない。このため、入力軸41が回転軸線方向に沿って振動している時に解放側係合要素の解放が開始されることに起因して発生する変速ショックが確実に低減される。
自動変速機制御部10(振動減衰時刻演算部)は、入力軸回転速度センサ44(入力軸振動検出部)によって検出された入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の振幅の複数の極大値v1、v2(図4示)である最大振幅Am1及び第二振幅Am2に基づいて振動減衰時刻Td(図4示)を演算する(図7のステップS54)。つまり、自動変速機制御部10は、上述したように、最大振幅Am1(極大値v1)及び第二振幅Am2(極大値v2)から、減衰一次関数Fg(図4示)を演算する(図7のステップS53)。そして、自動変速機制御部10は、減衰一次関数Fgと基準入力軸回転速度Nibとが交わる時刻を、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動の振幅が規定減衰値(本実施形態では0)まで減衰する時刻である振動減衰時刻Tdとして演算する(図4示)。これにより、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動の振幅が減衰する時刻である振動減衰時刻Tdが精度高く演算される。このため、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が減衰していない状態で、係合側係合要素が解放されることに起因して発生する変速ショックが確実に抑制される。また、振動減衰時刻Tdが、上記した解放制御の前に予め演算されるので、解放制御の開始の遅れが抑制される。
自動変速機制御部10(振動判定部)は、図6のステップS13〜S15において、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因するか、駆動輪18R,18Lに付与された衝撃に起因するかのいずれかを判定する。そして、自動変速機制御部10が、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因すると判定した場合に限り(図6のステップS13〜S15でYESと判断)、解放側係合要素を解放状態にする解放制御の開始を遅延させる解放制御開始遅延処理を実行する。一方で、自動変速機制御部10は、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が、駆動輪18R,18Lに付与された衝撃に起因する場合に、「通常変速制御」を実行する(図6のステップS30)。このため、「変速ショック低減制御」の実行が不必要であるにも関わらず、「変速ショック低減制御」が実行されることによる自動変速機4における変速遅れの発生が防止される。
本実施形態の発明者は、入力軸回転速度Niの単位時間あたりの変化量dNi/dtが規定変化量A以上(規定以上)である場合に、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因することを見出した。そこで、自動変速機制御部10(振動判定部)は、入力軸回転速度Niの単位時間あたりの変化量dNi/dtが規定変化量A以上(規定以上)である場合に(図6のステップS13でYESと判断、図4示)、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因すると判定する。これにより、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因するか、駆動輪18R,18Lに付与された衝撃に起因するかのいずれかが確実に判定される。このため、「変速ショック低減制御」の実行が不必要であるにも関わらず、「変速ショック低減制御」が実行されることによる自動変速機4における変速遅れの発生が確実に防止される。
本実施形態の発明者は、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の振幅Amが規定振幅B以上(規定以上)である場合に、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因することを見出した。そこで、自動変速機制御部10(振動判定部)は、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の振幅Amが規定振幅B以上(規定以上)である場合に(図6のステップS14でYESと判断、図4示)、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因すると判定する。これにより、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因するか、駆動輪18R,18Lに付与された衝撃に起因するかのいずれかが確実に判定される。このため、「変速ショック低減制御」の実行が不必要であるにも関わらず、「変速ショック低減制御」が実行されることによる自動変速機4における変速遅れの発生が確実に防止される。
本実施形態の発明者は、駆動輪18R,18Lの回転軸線回りに沿った振動の周波数と、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の周波数とが一致する場合に、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)が、駆動輪18R,18Lに付与された衝撃に起因することを見出した。そこで、自動変速機制御部10(振動判定部)は、駆動輪18R,18Lの回転軸線回りに沿った振動の周波数と、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の周波数とが一致する場合に(図6のステップS15でNOと判断)、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が、駆動輪18R,18Lに付与された衝撃に起因すると判定する。これにより、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が、アクセルストロークStaの変化によるエンジントルクTeのトルク変動に起因するか、駆動輪18R,18Lに付与された衝撃に起因するかのいずれかが確実に判定される。このため、「変速ショック低減制御」が実行される必要が無いにも関わらず、「変速ショック低減制御」が実行されることによる自動変速機4における変速遅れの発生が確実に防止される。
(別の実施形態)
以上説明した実施形態では、ステップS54において、自動変速機制御部10(振動減衰時刻演算部)は、図4に示すように、ステップS53で演算した減衰一次関数Fgと基準入力軸回転速度Nibとが交わる時刻を振動減衰時刻Tdとして演算している。しかし、自動変速機制御部10が、ステップS53で演算した減衰一次関数Fgと、基準入力軸回転速度Nibよりも規定減衰値(0よりも大きい値)だけ速い回転速度とが交わる時刻を振動減衰時刻Tdとして演算する実施形態であっても差し支え無い。この実施形態では、振動減衰時刻Tdは、入力軸回転速度Niの振動の振幅が上記した規定減衰値まで減衰した時刻であるとみなせる。なお、この規定減衰値は、この規定減衰値によって演算される振動減衰時刻Tdが経過した際に、上記した解放制御が開始されても、自動変速機4において変速ショックが発生しないような値に設定されている。
以上説明した実施形態では、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動を検出する入力軸振動検出部は、入力軸回転速度センサ44である。しかし、入力軸振動検出部が、エンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ24である実施形態であっても差し支え無い。トルクコンバータ3がロックアップされている状態では、クランクシャフト2aと入力軸41は一体回転する。このため、エンジン回転速度センサ24によって、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動を検出することができる。この実施形態の場合には、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動の特性値は、エンジン回転速度Neの振幅や、エンジン回転速度Neの単位時間当たりの変化量である。
また、入力軸振動検出部は、エンジントルクTeを演算するエンジン制御部9であっても差し支え無い。トルクコンバータ3がロックアップされている状態では、クランクシャフト2aと入力軸41は一体回転し、入力軸回転速度Niの変動によってエンジン回転速度Neも変動する。このため、エンジン制御部9が演算するエンジントルクTeも入力軸回転速度Niの変化によって変動する。よって、エンジン制御部9が演算したエンジントルクTeによって、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動を検出することができる。この実施形態の場合には、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動の特性値は、エンジントルクTeの振幅や、エンジントルクTeの単位時間あたりの変化量である。
また、入力軸振動検出部は、出力軸回転速度センサ45であっても差し支え無い。また、入力軸振動検出部は、出力軸42の回転軸線方向の歪みを検出し、出力軸42に付与されているトルクを検出する出力軸トルクセンサ(不図示)であっても差し支え無い。入力軸41と出力軸42とは、複数の遊星歯車機構43によって回転連結されている。このため、出力軸回転速度センサ45や出力軸トルクセンサによって、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動を検出することができる。この実施形態の場合には、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動の特性値は、出力軸回転速度Noの振幅や、出力軸回転速度Noの単位時間当たりの変化量、出力軸42の回転軸線方向の歪みである。
図6の「変速制御」において、ステップS13、S14、S15は、任意の順番で実行されても差し支え無い。
以上説明した実施形態では、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の振幅の複数の極大値v1、v2(図4示)である最大振幅Am1及び第二振幅Am2に基づいて、振動減衰時刻Tdが演算される。つまり、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の振幅の減衰に基づいて、振動減衰時刻Tdが演算される。しかし、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の周波数(特性値)の減衰に基づいて、振動減衰時刻Tdが演算される実施形態であっても差し支え無い。この実施形態の場合には、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の周波数(特性値)が、規定周波数(規定減衰値)まで減衰する時が、振動減衰時刻Tdとして演算される。
以上説明した実施形態では、図7のステップS53において、自動変速機制御部10(振動減衰時刻演算部)は、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の振幅の複数の極大値v1、v2(図4示)に基づいて、減衰一次関数Fgを演算している。しかし、自動変速機制御部10(振動減衰時刻演算部)が、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動(入力軸回転速度Niの振動)の振幅の複数の極小値v3、v4(図4示)に基づいて、減衰一次関数Fgを演算する実施形態であっても差し支え無い。
以上説明した実施形態では、図8のステップS65において、自動変速機制御部10は、解放側係合要素の油圧が係合側係合要素の油圧(プリチャージ保持圧)と同一になるまで低下した時を、係合可能時期であると判断している。しかし、自動変速機制御部10が、解放側係合要素の油圧が係合側係合要素の油圧と同一になる時から所定時間だけ後の時又は前の時を、係合可能時期であると判断する実施形態であっても差し支え無い。
以上説明した実施形態では、「変速マップ」は、出力軸回転速度NoとアクセルストロークStaとの関係を表した「変速線」を複数有している。しかし、「変速マップ」が、出力軸回転速度Noとスロットル開度Thpとの関係を表した「変速線」を複数有している実施形態であっても差し支え無い。この実施形態の場合には、自動変速機制御部10(認識変速段認識部)は、「変速マップ」を参照して、出力軸回転速度Noとスロットル開度Thpに対応する認識変速段を認識する。この実施形態の場合には、エンジン2(駆動源)が出力するエンジントルクTe(駆動トルク)を可変に操作するための駆動トルク操作部は、スロットル23である。また、スロットル23(駆動トルク操作部)の操作量を検出する操作量検出部は、スロットルポジションセンサ23cである。
また、「変速マップ」が、車速VとアクセルストロークStaとの関係を表した「変速線」を複数有している実施形態であっても差し支え無い。この実施形態の場合には、自動変速機制御部10(認識変速段認識部)は、「変速マップ」を参照して、車速VとアクセルストロークStaに対応する認識変速段を認識する。
また、「変速マップ」が、車速Vとスロットル開度Thpとの関係を表した「変速線」を複数有している実施形態であっても差し支え無い。この実施形態の場合には、自動変速機制御部10(認識変速段認識部)は、「変速マップ」を参照して、車速Vとスロットル開度Thpに対応する認識変速段を認識する。
以上説明した実施形態では、「ロックアップマップ」は、出力軸回転速度NoとアクセルストロークStaとの関係を表した「ロックアップ線」を複数有している。しかし、「ロックアップマップ」が、出力軸回転速度Noとスロットル開度Thpとの関係を表した「ロックアップ線」を複数有している実施形態であっても差し支え無い。この実施形態の場合には、自動変速機制御部10は、「ロックアップマップ」を参照して、出力軸回転速度Noとスロットル開度Thpに基づいて、トルクコンバータ3をトルクコンバータ状態又はロックアップ状態のいずれかにする。
また、「ロックアップマップ」が、車速VとアクセルストロークStaとの関係を表した「ロックアップ線」を複数有している実施形態であっても差し支え無い。この実施形態の場合には、自動変速機制御部10は、「ロックアップマップ」を参照して、車速VとアクセルストロークStaに基づいて、トルクコンバータ3をトルクコンバータ状態又はロックアップ状態のいずれかにする。
また、「ロックアップマップ」が、車速Vとスロットル開度Thpとの関係を表した「ロックアップ線」を複数有している実施形態であっても差し支え無い。この実施形態の場合には、自動変速機制御部10は、「ロックアップマップ」を参照して、車速Vとスロットル開度Thpに基づいて、トルクコンバータ3をトルクコンバータ状態又はロックアップ状態のいずれかにする。
以上説明した実施形態では、自動変速機制御部10は、出力軸回転速度センサ45によって検出された出力軸回転速度Noに基づいて、車両100の車速Vを演算している。しかし、自動変速機制御部10が、車両100の車輪の回転速度を検出する車輪速センサに基づいて、車両100の車速Vを演算する実施形態であっても差し支え無い。
以上説明した実施形態では、認識変速段が変更されてから(図5のT1)、変速待ち時間が経過した際に(図5のT2)、係合側係合要素へのプリチャージが実行されている。しかし、係合側係合要素へのプリチャージが、認識変速段が変更されてから(図5のT1)、入力軸41の回転軸線回りに沿った振動が減衰する振動減衰時刻Td(図5のT4)の前までのいずれかのタイミングで実行される実施形態であっても差し支え無い。
エンジントルクTe(駆動トルク)を出力するエンジン2(駆動源)の代わりに、モータトルク(駆動トルク)を出力するモータ(駆動源)を有する車両用駆動装置1であっても差し支え無い。