JP2016089316A - 撥水性繊維構造物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フルオロカーボン(FC)類を主原料とするフッ素系撥水剤を用いることなく、フッ素系撥水剤を使用した場合と同等又はそれ以上の耐久性ある撥水機能を備えた繊維構造物及びその製造方法の提供。
【解決手段】式(1)で表されるアニオン性官能基を有する2,6−ジハロゲノ−s−トリアジン誘導体(金属塩を含む。)が繊維に結合され、さらに、カチオン性撥水剤(フッ素系炭化水素基を含むもの除く。)がアニオン性官能基と結合されている撥水性が付与された繊維構造物。
Figure 2016089316

【選択図】なし

Description

本発明は、撥水剤としてフルオロカーボン誘導体を使用しない撥水性繊維構造物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、2,6−ジハロゲノ−s−トリアジン誘導体(以下、「ジハロトリアジン誘導体」という。)を被処理繊維構造物(以下「被処理繊維」という。)に適用して撥水性が付与された撥水性繊維構造物及びその製造方法に係る発明である。
本発明で、「ows %」及び「owm(owf) %」とは、それぞれ、被処理繊維の質量に対する、薬剤(加工剤)(純分)の浴仕込み質量比率及び付着質量比率を意味する。したがって、絞り率「a%」とした場合、「ows%×a/100=owm(owf)%」となり、被処理繊維を絞らない場合は「ows%=owm(owf)%」となる。
また、本発明で「浸漬(dipping)」と「液浸(soaking/ immersing)」は、共に液に「浸す」を意味するが、前者は「ちょっと浸す」意味であり、後者は「液が内部に浸透するまで浸す」意味である。したがって、浸し時間は、前者の場合は、通常、2〜10秒、せいぜい1分以内、液浸の場合は、通常、15分以上とする。
上記のようにジハロトリアジン誘導体を適用して撥水性が付与された撥水性繊維構造物およびその製造方法に係る先行技術文献として、特許文献1・2等がある。特許文献1の段落0002〜0005を次に引用する。
「従来から、繊維構造物に耐久性ある撥水加工を付与する場合、フッ素系撥水剤を使用することが必須条件である。そのフッ素系撥水剤としては、炭素数が8個以上の長鎖のCF基を有した物質でなければ撥水性を付与できなかった。更に磨耗耐久性を向上させるためにメラミン樹脂及びウレタン樹脂を併用して撥水耐久性を維持していた。
近年、炭素数8以上のフッ素系撥水剤には、その製造過程で、自然界には存在し得ないとされる人工の化学物質が発生することが、米国で明らかになった。そのような化学物質は、フッ素系撥水剤炭素数8個の場合はパーフルオロオクタン酸(以下、PFOAという)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(以下、PFOSという)になる。フッ素系撥水剤が炭素数8以上の長鎖を有する場合はパーフルオロカルボン酸となる。
これらの物質は非意図的な不純物として前記フッ素系撥水剤に含まれるが、化学的に極めて安定な物質であるため、自然界では分解されずに残留すると考えられている。人体に取り込まれると排出されにくい性質すなわち生体蓄積性を有し、長期にわたり摂取した場合は発ガン性が指摘されている。
このように、炭素数8以上のフッ素系撥水剤が人体や環境に与える影響や、その安全性が取りざたされるようになってきている。安全性を問う学者や学術者は、その使用を差し止め、フッ素系撥水剤製造従業者・繊維染色加工従業者及び消費者は、これらの懸念される物質を全く含有しないフッ素系撥水剤を用いる繊維構造物の加工方法を望んでいる。懸念される物質を全く含有していないフッ素系撥水剤とは、炭素数6以下のフッ素系撥水剤である。
しかし、炭素数6以下のフッ素系撥水剤の撥水性能は、繊維構造物が摩耗していない状態での撥水性能ですら、繊維染色加工業界及び消費者の目標にははるかに及ばない。したがって、現在は、一時的な撥水加工品にのみ使用されている。
炭素数8以上のフッ素系撥水剤であって、前述した不純物、PFOA及びPFOSを全く含有しないものを製造することは不可能である。したがって、炭素数6以下のフッ素系撥水剤を使用して、現状の撥水性能を維持するか、又は、更なる恒久的な耐久性ある撥水性能を得る加工方法を見出す必要が生じてきた。」(引用終わり)
上記課題を解決するために、特許文献1では、「繊維改質剤として、(A)2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウム塩と、(B)ジアミノベンゼンスルホン酸アルカリ塩との反応混合物であって、(A)と(B)とのモル比が(A):(B)=1:1〜1:3である反応混合物を繊維構造物に適用する工程を含む繊維構造物の製造方法」(請求項1等)、及び、「該製造方法で得られた繊維構造物を、炭素数6以下のフッ素系撥水剤を含有する水溶液に含浸する工程を含む繊維構造物の製造方法」(請求項6等)が提案されている。
また、特許文献2では、「親水性置換基を有するジハロトリアジン誘導体と多価アルコール類および多価アミノ化合物を共存させ有機繊維構造物を改質、疏水化の機能性を付与させる」撥水性繊維構造物の改質・疏水化製造方法が提案されている(請求項1等)。
また、その際に使用するジハロトリアジン誘導体は、本発明と同様なアニオン性官能基を有するジハロトリアジン誘導体を使用することが記載されている(請求項2等)。
そのときの、撥水性処理は、ジハロトリアジン誘導体の水溶液の中にアルコール類及び多価アミノ化合物を共存させ含浸させたのち「乾熱連続法」乃至「浴中吸尽法」を用いて、繊維構造物を30℃〜90℃で熱処理する第1段階と、その後120℃〜180℃の乾熱の中で実質的に乾燥するまで熱処理する第2段階とを含むものであることが記載されている(請求項3等)。
さらに、浴中処理は、水系(水性)フルオロアクリレートを含有させて行うことが記載されている(請求項6等)。
上記各特許文献1・2においては、確かに、米国環境保護局により2015年までに排出量・製品含有量を全廃することが勧告されているPOFA類(前駆体・類似物質)は、使用しないで済む発明が記載されている。
しかし、炭素数6未満のフッ素系撥水剤を用いるとしても、当該炭素数6未満のフッ素系撥水剤の製造に際して、炭素数6以上のPFOA類を100%副生させないことは不可であるとともに、それら原料となるフルオロ炭化水素(有機フッ素)も使用禁止化学物質に指定されていることが多い。例えば、パーフルオロカーボン(PFC)類(化学物質No.69)は、意図的添加に限るとされている使用禁止化学物質であるが、昨今の環境問題意識の高まりから、近い将来、全面禁止になると考えられる。
事実、フッ素系撥水剤のメーカ11社が2015年にフッ素系撥水剤の製造を中止し、2016年に全廃することに同意している。
なお、繊維加工の技術分野では、フッ素系撥水剤を使用しなければ、耐久性のある撥水性を繊維構造物に付与できないとするのが、当業者常識であった。
また、本発明の特許性に影響を与えるものではないが、特許文献3には、塗料液として繊維基材の片面にポリウレタンエラストマーの極性有機溶剤溶液を使用し、該塗料液に含浸させた後、熱処理を施して、耐久性のある撥水性を付与された多孔質コーティング皮膜を備えた防水性コーティング布帛に係る発明が記載されている。
特許第5509342号公報 特開2008−63708号公報 特公昭40−47954号公報
本発明は、上記にかんがみて、フッ素系炭化水素(FC)基を含まないフッ素フリーの撥水剤により、フッ素系撥水剤を使用した場合と同等又はそれ以上の耐久性ある撥水機能を備えた繊維構造物及びその製造方法を提供することを目的(課題)とする。
前述の如く、フッ素フリーの撥水剤は、現在要求される撥水性能を満たさないばかりか、耐久性も無く不適な化合物として、現在ほとんど使用されていない。
本発明者は、反応性染料の反応機構に着目して、アニオン性のジハロトリアジン誘導体を繊維構造物に浸透結合させることを介して、カチオン性の柔軟剤や静電防止剤を撥水剤として、繊維構造物に結合されたジハロトリアジン誘導体に結合させれば、フッ素系撥水剤に優るとも劣らない撥水性能および撥水耐久性のある優れた撥水性能を繊維構造物に付与できることを知見して、下記構成の撥水性繊維構造物及びその製造方法に想到した。
本発明に係る繊維構造物は、撥水性が付与された繊維構造物であって、アニオン性官能基を有する2,6−ジハロゲノ−s−トリアジン誘導体(以下、「ジハロトリアジン誘導体」という。)が繊維に結合され、さらに、カチオン性撥水剤(FC基を含むものを除く。)がアニオン性官能基と結合されていることを特徴とする。
本発明に係る撥水性繊維構造物の製造方法の一つは、撥水性繊維構造物を、乾熱連続法により製造する方法であって、
被処理繊維構造物(以下「被処理繊維」という。)を、ジハロトリアジン誘導体を含有し弱アルカリ性とされた第一浸漬浴に浸漬・絞り後、前段乾熱処理する第一工程と、
第一工程で得た被処理繊維を、カチオン性撥水剤を含有し弱酸性とされた第二浸漬浴に浸漬・絞り後、前記被処理繊維を後段乾熱処理する第二工程を含む、ことを特徴とする。
上記構成の撥水性繊維構造物の製造方法の他の一つは、浴中吸尽法により製造する方法であって、
前記被処理繊維を、前記ジハロトリアジン誘導体を含有し弱アルカリ性とされた液浸浴に、徐昇温させて沸点以下の設定温度で液浸処理する第一工程と、
前記第一工程で得た被処理繊維を、カチオン性撥水剤を含有し弱酸性とされた浸漬浴に浸漬・絞り後、前記被処理繊維を乾熱処理する第二工程を含む、ことを特徴とする。
フッ素フリーの撥水剤は、フッ素系撥水剤が開発される以前の従来の撥水剤である。 フッ素系撥水剤は、その凝集体がナノレベルで簡単に繊維内部に浸透し結合する。他方、フッ素フリーの撥水剤は、製造直後は0.5〜1μmであるが、経時変化にともない化合物が凝集して数ミクロン単位の凝集体(ミセル)となる。
すなわち、フッ素フリーの撥水剤が、繊維表面に結合することなく繊維表面に付着しているだけであり、毛管現象等により繊維表面から脱離してしまって撥水効果が無くなるということになる。他方、フッ素系撥水剤はCF長鎖により耐久性のあるすぐれた撥水効果を得ることができる。
本発明の繊維構造物が、フッ素系撥水剤を超える耐久性のある優れた撥水性能を繊維構造物に付与できるのは、下記理由によると考えられる。
撥水性処理の第一工程において、アニオン性官能基を有するジハロトリアジン誘導体を被処理繊維に結合させるとともに、第二工程において、カチオン性撥水剤(撥水性を有するカチオン性化合物)及び適宜架橋助剤を被処理繊維に付着させ乾熱処理することにより、カチオン性撥水剤が被処理繊維に結合したアニオン性官能基とイオン結合される。
しかし、フッ素フリーのカチオン性撥水剤は、前記の如く、数ミクロン単位の凝集体となっている。このため、浸漬浴に、水と自由混和する非イオン性有機溶剤を添加して拡散機(グラインダー型撹拌樹)を用いてカチオン性撥水剤の凝集体を破壊・分散させて、被処理繊維にカチオン性撥水剤を浸透付着させることが望ましい。
上記非イオン性有機溶剤としては、IPA等の低級アルコールが望ましいが、ジメチルエーテル、セロソルブ(UCC社のエチレングリコールのモノエチルエーテルの商品名)等を使用可能である。
このことによって、繊維内部に浸透したFC基を含まないフッ素フリーの撥水剤は、繊維部及びポリマー分子の空間部に滞留して乾熱処理によって、繊維構造物に共有結合されたトリアジン環の有するアニオン性官能基と、フッ素フリーのカチオン性撥水剤とがイオン結合等して耐久性ある繊維構造物が得られる。
炭素数6以下のフッ素系撥水剤の撥水耐久性の低下原因の一つは、CF鎖の配列乱れやCF鎖の倒壊であるとされている(特許文献1段落0009)。
特許文献1の場合は、ヒドロキシトリアジンとジアミノベンゼンスルホン酸の反応混合物が、炭素数6以下のフッ素系撥水剤のCF鎖との間に留まり、熱処理によりイオン結合するか又はそれらと縮合反応してCF鎖の配列乱れ等を防止し、その結果、耐久性のある撥水性を付与できたものと推察されている(同段落0009)。
特許文献2の場合は、ヒドロキシ基やカルボキシル基、スルホン酸基等のアニオン性官能基を有するパーフルオロアルキルアルキレート(主剤)およびシリコーンソフナー等の撥水剤又はブロックドイソシアネート(助剤)からなる撥水剤が繊維と共有結合したジハロトリアジン誘導体と反応して、三次元的な架橋結合が形成されて、疏水性(撥水性)等が付与される(段落0020)。
他方、本発明における、フッ素フリーのカチオン性撥水剤は、被処理繊維に共有結合されたトリアジン誘導体が有するアニオン性官能基と乾熱処理によりイオン結合して、繊維構造物の繊維表面に強固な網目的な三次元の遮断壁を形成して、その結果、耐久性ある撥水性を付与できたものと考えられる。
そして、本発明に係る撥水性繊維構造物は、炭素数8以上のフッ素系撥水剤は勿論のこと、炭素数8未満のフッ素系撥水剤を用いなくても、後述の実施例の試験例(表1〜4)で示す如く、フッ素フリーで現在要求される30回以上の実用洗濯にも耐えられる。そして、市販のフッ素系撥水剤を用いた場合もしのぐ撥水性及び耐久性が得られた(表4参照)。
すなわち、本発明の撥水性繊維構造物は近年の健康や環境問題にも対応し、長年の課題であった耐摩擦・耐摩耗性にも極めて優れている。
さらに、本発明に係る繊維構造物の製造方法の特長は、既存の染色設備乃至装置を利用することができるとともに、1)本発明で使用する撥水剤は、ホルマリン等の有害な薬剤を含まず、安全で環境適合性に優れ、かつ安価であること、2)特許文献3のような樹脂コーティング等による撥水性付与に比して、多量のエネルギーを消費することなく二酸化炭素や窒素酸化物の削減にも寄与し、熱や揮発性有機溶剤による作業環境の低下も防ぐことができる。
上記の如く、本発明の撥水性繊維構造物の製造方法は、新規の設備を設置することなく、遊休設備を活用できるなど優れた経済性のもとで、従来は制約が多かった衣料分野のみならず繊維構造物からなる工業乃至産業資材の各種分野での用途の拡大が期待できる。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
A.先ず、本発明で使用する薬剤である<ジハロトリアジン誘導体>及び<カチオン性撥水剤>並びに、被処理繊維である<繊維構造体>について、説明する。
<ジハロトリアジン誘導体>
ジハロトリアジン誘導体としては、前記特許文献1に記載のものも使用可能であるが(例えば、下記一般式でベンゼン環をナフタレン環としたもの)、下記の一般式(1)、(2)で示されるものを使用することが望ましい。
Figure 2016089316
(但し、XはCl、F,Brのいずれかであり、YはOH、SOH、SH、COOHのいずれかの官能基(酸基)又はそれらのアルカリ・アルカリ土類金族塩のいずれかである。)
Figure 2016089316
(但し、XはCl、F,Brのいずれかであり、AはNH、O、Sのいずれかであり、YはOH、SOH、SH、COOHのいずれか又はそれらのアルカリ・アルカリ土類金族塩のいずれかであり、n=1、2又は3である。)
より具体的には下記化合物を挙げることができる。
2,6−ジクロロ−4−(3−スルホアリニノ)−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−(4−スルホアリニノ)−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−(3−スルホアリニノ)−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−(2,5−ジスルホアリニノ)−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−(3,5−ジスルホアリニノ)−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−(3−カルボキシアリニノ)−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−(4−カルボキシアリニノ)−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−(2−カルボキシアリニノ)−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−(β−カルボキシエチルアミノ)−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−ウレイド−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−チオウレイド−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−(4−カルボキシフェノキシ)−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−(4−カルボキシフェニルチオ)−s−トリアジン
2,6−ジクロロ−4−オキシ−s−トリアジンNa塩
2,6−ジクロロ−4−オキシ−s−トリアジンLi塩
2,6−ジクロロ−4−オキシ−s−トリアジンMg塩
2,6−ジクロロ−4−チオ−s−トリアジンNa塩
上記ジハロトリアジン誘導体は、例えば、下記のようにして製造する。
トリハロゲノ−s−トリアジン、好ましくは塩化シアヌルを主原料として用い、カルボキシル基、水酸基、チオール基、アミノ基、スルホン基、スルホン酸基等の水溶性化合物あるいはアニオン性官能基を有するアニリン類、フェノール類、チオフェノール類、ナフチルアミン類、ナフトール類、アミノ酸類、トリアジン類等の化合物あるいは混合物を塩化シアヌル1モルに対して1モルを酸結合剤を共存させた中性ないし弱アルカリ性で縮合させるか、あるいは塩化シアヌルを重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ、苛性ソーダ、苛性カリ、水酸化マグネシウム等を用いてアルカリ性で加水分解させることによって得られる。これらの化合物は純粋である必要はなく、前記2種以上の混合物と塩化シアヌルを反応させたものであってもよいし、純粋に作られたものをあとから混合して多成分系としたものであってもよい。
ジハロトリアジン誘導体は、カチオン性撥水剤との結合のためにアニオン性官能基を有するとともに、被処理繊維との結合、さらには架橋構造形成のために活性ハロゲン原子またはそれに類する官能基を2個以上有することが必須である。
また、このジハロトリアジン誘導体は、ドイツ公開特許第2357252号公報、あるいはアメリカ特許第5601971号明細書等に記載があるように公知の合成法に準じて合成することができるが、その概要は次の通りである。
例えば、塩化シアヌル1.00モルを5℃以下の氷水の中へ仕込み、次いで例えばm-スルファニル酸1.02モルと炭酸ソーダ約1モルをよく撹拌しながら徐々に仕込む。m-スルファニル酸と炭酸ソーダの仕込みはpH=7±1で約3時間を要して5〜10℃で仕込み、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析し、塩化シアヌルがほぼ消滅すれば、更に1時間保湿撹拌して反応を完結させる。この間pHは6〜8に維持し、HPLCによって組成を分析し、モノスルフアニル体が90%以上となれば反応を終了する。反応後微量の不溶物を濾過して除き、最終的にはpH7に調整する。このようにして2,6−ジクロロ−4−(3−スルホアニリノ)−s−トリアジンNa塩水溶液が高収率で得られる。この化合物は冷蔵庫内で5℃以下で保管すれば約1ヶ月間は安定である。
<カチオン性撥水剤>
カチオン性撥水剤は、カチオン性(+帯電)を有し且つフッ素フリーであれば特に限定されない。旧来からの撥水剤、静電防止剤、柔軟剤として多用されている水性パラフィン系、水性ウレタン系、水性シリコーン系、アルキルリン酸塩系、等のものを適宜選定可能である。
具体的には、水性パラフィン系としてハインツマン社製の、例えば、「PHOBOTEX」等、水性ウレタン系としてヘイク社製の「Heiq Barrier」等、水性シリコーン系としてコリア・ポリコム社製「ECODRY」等、アルキルリン酸塩系としてルドルフ社製の「RUCO-GUARD」等、の各商標名で上市されている各種グレードのものを適宜選択して使用可能である。
上記撥水剤には、架橋補助剤としてブロック型イソシアネートを併用することが望ましい。繊維に結合した上記ジハロトリアジン誘導体(活性水素を有する。)さらにはジハロトリアジン誘導体に結合した上記撥水剤(活性水素を有する場合。)とNCO基とが反応して架橋構造を促進させ耐久性に優れた撥水能を付与することが期待できる。
上記ブロック型イソシアネートのブロック剤としては、アルキルケトオキシム類(例えばメチルエチルケトオキシム)、フェノール類(例えばフェノール、クレゾール)、アルコール類(例えばイソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール)、β−ジケトン類(例えばアセチルアセトン)、ラクタム(例えばε−カプロラクタム)が好ましい。特に、メチルエチルケトオキシム等のジアルキルケトオキシム類、ε−カプロラクタム等のラクタム類で、第二工程の乾熱処理温度(例えば、120〜180℃)で解離するブロック剤が好ましい。
具体的なブロック型イソシアネートとしては、明成化学工業社製「メイカネートMF・BP−11・NBP−75・、NBP−231」、武田薬品工業社製「WB−730・WB−920、XWB−72−Z56」、日本ポリウレタン社製「BI−8」等が挙げられる(いずれも商標)。
<繊維構造物>
ここで繊維構造物とは、繊維で形成される、綿や糸等の繊維原料、それらの織物、編物や、不織布等の生地、生地を裁断した半製品、更には衣料品その他の繊維製品を意味する。
本発明の撥水処理方法を適用可能な繊維製品としては、撥水機能が要求されるあらゆるものを挙げることができる。
本発明によれば、殆どの繊維製品に対して有効な撥水性向上を示す。これにより、消費者のライフスタイルの幅を広げ、楽しさとゆとりを与えることができる。
すなわち、本発明の撥水性が付与された撥水性繊維構造物から、あらゆるスポーツ衣類・カジュアルウエア類・スーツ類・シャツ類・コート類・パンツ類・ボトム類・スカート類・その他セーター類を含む衣料品全般、更には、その他の繊維製品を製造することができる。
その他の繊維製品としては、例えば、傘・クツ・鞄類・帽子等の着用品、テント類・寝袋類・パタグライダー関連類・防寒具・スキーウェア等のアウトドア用品、カーカバー・幌・資材カバー等のシートカバー類、障子用布帛類・壁用クロス類・畳等の内装品、更には、水を使用する工場乃至現場で使用されるベルト、保護カバー等の製品を挙げることができる。
そして、上記繊維構造物を形成する有機高分子繊維としては、木綿、麻等のセルロース系繊維、羊毛、絹等の動物性繊維、アセテート系、レーヨン系等の人造繊維、ポリビニルアルコール(PVA)系、ポリ塩化ビニル系(PVC)、ポリアミド系(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリエステル系、ポリエーテル系、アクリル系等の合成繊維の混紡又は混用物、更には、ダウン(羽毛)、ファー(毛皮)及び洋紙、和紙、い草等が挙げられる。
B.次に、上記構成の撥水性繊維構造物の製造方法について、<乾熱連続法>による場合と、<浴中吸尽法>による場合に分けて説明する。
本発明は、ジハロトリアジン誘導体を繊維に結合させ、更に、該ジハロトリアジン誘導体にカチオン性撥水剤を結合させることができれば、下記<乾熱連続法>や<浴中吸尽法>に限定されるものではない。
<乾熱連続法>
テンター乾燥機、シェリンク乾燥機などの乾燥機の内部に付設されている該処理槽を浸漬浴として連続的に第一・第二工程(前段・後段乾熱処理)を行う方法である。この方法は、第一工程のジハロトリアジン誘導体を繊維に付着させ、更に、第二工程のカチオン性撥水剤をジハロトリアジン誘導体に付着させるために、第一・第二工程ともに、浸漬浴にちょっと浸すだけですみ、かつ、同一装置内で行うことができる。このため、製造時間が<浴中吸尽法>に比して短くて済み、生産性が良好乃至製造コストが低減できる。
(1)第一工程(前段乾熱処理)
上記乾燥機内の浸漬浴に、被処理繊維を浸漬・絞り後、前段乾熱処理する。
ここで、乾燥機の室温度は、通常、30〜100℃、望ましくは60〜100℃とする。室温度が低いとジハロトリアジン誘導体の繊維付着量が低下するとともに、乾燥時間が長くなり、乾熱連続法による長所(生産性)が低減する。室温度が高すぎると被処理繊維に結合したトリアジン誘導体が解離するおそれがある。
浸漬浴における組成は、被処理繊維に対して、ジハロトリアジン誘導体の仕込み量は、通常、ows0.5〜10%、望ましくはows1〜5%、絞り率30〜70%においてowm0.15〜7%、望ましくはowm0.3〜3.5%となるような量とする。
このときの浸漬浴のpHは、ジハロトリアジン誘導体を被処理繊維と結合させるために弱アルカリ性(pH7超10以下)、望ましくはpH8.5〜9.5とする。pH調節剤としては、特に限定されないが、ソーダ灰(NaCO)や重曹(NaHCO)を好適に使用できる。
なお、第一工程後の被処理繊維は、中和処理しておくことが望ましい。次工程におけるカチオン性撥水剤の浸漬浴におけるトリアジン誘導体との結合反応を促進させるためである。
この中和処理剤(酸性化合物)としては、特に限定されないが、ギ酸、酢酸、クエン酸等の有機酸が好ましい。
(2)第二工程(後段乾熱処理)
第二工程は、前記第一工程で得た被処理繊維を、カチオン性撥水剤を含有する第二浸漬浴に浸漬・絞り後、乾熱処理を実施して前記アニオン性官能基に前記カチオン性撥水剤を反応結合させる工程である。
ここで、乾燥機の室温度は、通常、60〜200℃、望ましくは100〜200℃とする。室温度が低いとカチオン性撥水剤のジハロトリアジン誘導体のアニオン性官能基に対する反応速度が低下して、生産性が低下する。室温度が高すぎると、第一工程と同様被処理繊維に結合したトリアジン誘導体が解離するおそれがある。
前記カチオン性撥水剤(純分)の処理浴中の仕込み量は、撥水剤の種類および絞り率により異なるが、通常ows5〜20%、絞り率60〜70%においてowm3〜14%となるような量とする。
更に、架橋補助剤としてブロック型イソシアネートを併用することが望ましい。ブロック型イソシアナート(純分)の浴中仕込み比率は、絞り率及びブロック型イソシアネートの種類により変動するが、ows 1〜30%、望ましくは4〜10%、絞り率50〜90%においてowm0.5〜27%、望ましくはowm2〜9%となるような量とする。
上記において、第二工程の浸漬浴は、カチオン性撥水剤自体が酸性化合物であるため、中性から弱酸性(pH7未満5以上)となるが、カチオン性撥水剤の浸漬浴におけるトリアジン誘導体との結合反応を促進させるために、前述の酸性化合物を適宜加えてもよい。このときのpHは5〜6とすることが望ましい。
<浴中吸尽法>
第一工程を、液流染色機、ウインス染色機、ジッカー染色機、ワッシャー染色機などの染色浴を用いて行う。すなわち、被処理繊維を液浸させ、徐昇温させて、ジハロトリアジン誘導体(薬剤)を被処理繊維に結合させる方法で、時間は嵩むが、ジハロトリアジン誘導体を確実に被処理繊維に結合させることができ、耐久性の向上が期待できる。また、被処理繊維の染色と連続的に行うことができ、被処理繊維に通常要求される染色工程と連続的な処理が可能となり好適である。
(1)第一工程(液浸処理)
被処理繊維の染色に続いて、染色液を廃液後、ジハロトリアジン誘導体を含有する液浸浴に液浸し、徐昇温させて沸点以下の温度で液浸処理をする。このとき、トリアジン系反応性染料と良く似た条件で行う。
すなわち、ジハロトリアジン誘導体を、ows0.5〜30%、望ましくはows1〜25%となるように液浸浴を調製する。そして、乾熱連続法と同様に、液浸浴は弱アルカリ性としておく。このときの、pH及びpH調節剤も同様とする。
その後、液浸処理を被処理繊維構造物(被処理繊維)に適合した温度及び時間で行う。例えば、浴温30〜100℃×合計時間30〜60minの条件で、同一浴温で1回又は異なる浴温で複数回行う。なお、浴温は沸点上昇により沸点が100℃以上となる場合は、100℃を若干超える浴温でも処理も可能である。
ここで、液浸処理の設定温度が30℃未満の温度で実施した場合、被処理繊維へのジハロトリアジン誘導体を介してのアニオン性官能基の導入効率が低下する。他方、100℃以上で実施すると、浴中に残存するジハロトリアジン誘導体のアニオン性官能基導入の原料である酸性化合物によってジハロトリアジン誘導体のアニオン性官能基が加水分解(左側に平衡移動)されて、被処理繊維へのアニオン性官能基の導入率を低下させる。
そして、処理浴温までの昇温は徐昇温(例えば、2℃/min以下)とする。
ここで徐昇温とするのは、ジハロトリアジン誘導体の繊維との急激かつ不均一な反応を防止することにより、被処理繊維に対してジハロトリアジン誘導体をアニオン性を残したまま結合させるためである。
なお、染色の浴中吸尽法の前段で添加されていた繊維構造物の粗硬化を防ぐための柔軟剤、例えば、水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体及び水系ウレタン等の添加は、適宜行う。しかし、これらの柔軟剤の添加量は、必要最小限とする。これらの第一工程での添加は、繊維の活性水素及び柔軟剤がジハロトリアジン誘導体と競争反応をして被処理繊維のジハロトリアジン誘導体との結合率を低下させ、結果的にアニオン性官能基の被処理繊維への導入率を低下させる。 第一工程の液浸処理を実施後、浴中吸尽法による染色と同様にして、中和処理、水洗(湯洗を含む。)・脱水・乾燥を行う。このとき、乾燥室温(熱風温度)・時間はジハロトリアジン誘導体の導入官能基(酸基)が離脱しないような温度(例えば、120℃以下)及び時間(例えば、5分以下)とする。
(2)第二工程(乾熱処理)
上記第一工程で得た被処理繊維を、乾燥機内の浴槽で浸漬浴を調製し、前記乾熱連続法における第二工程(後段乾熱処理)と同様にして実施する。
A.以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれらの実施例に制約されるものでは無い。なお、以下の各実施例・比較例における「浸漬時間」は、いずれも「10秒」とした。
<実施例1(浴中吸尽法)>
(1)第一工程
液流染色機浴(浴槽)に染色綿ニット素材36kg、水300Lとともに、2,6−ジクロロ−4−(3−スルホアリニノ)−s−トリアジンの10%水溶液7.2kg仕込み、さらにソーダ灰でpH9.0に調節して、常温で5min撹拌運転を実施して第一工程の処理浴を調製した。
そして、70℃まで徐昇温(昇温速度2℃/min:以下同じ。)させ、この浴温を30min維持しながら液浸処理を行った後排水した。
そして、浴に再度水を300L補給し、被処理繊維を、酢酸で中和処理をして排水した。さらに、湯洗い・排水・脱水後、テンター乾燥機の室温を120℃に設定して120s乾燥させた。こうして第一工程を終了した。
(2)第二工程(乾熱処理)
上記テンター乾燥機を用い、乾燥室の温度を180℃に設定しておき、乾燥機の浴槽に、水100Lとともに市販の水性パラフィン系撥水剤8kg(80g/L)、市販のブロックドイソシアネート1kg(10g/L)およびIPA10cc/Lを投入して良く撹拌してpH5.5の浸漬浴を調製した。該浸漬浴に第一工程で得た被処理繊維を浸積後、マングルで絞り率70%に絞った被処理繊維を、室温180℃×120sの条件で乾熱処理を実施して、実質的に絶乾させた。こうして第二工程を終了した。
<比較例1>
第一工程の液浸処理を実施せず、第二工程の乾熱処理のみを実施した。
<実施例2(浴中吸尽法)>
(1)第一工程(液浸処理)
ジッカー染色機で、綿100%帆布生地20kgを染色した後、当該染色機の浴に水200Lとともに、2,6−ジクロロ−4−チオ−s−トリアジンNa4kg(ows20%)仕込み、さらにソーダ灰(NaCO)でpH9.0に調節して、常温で10min撹拌し第一工程の液浸浴を調製した。
当該処理浴を40℃まで徐昇温し、この浴温を20min維持して液浸処理を行い、更に80℃まで徐昇温し、この浴温を30min維持して液浸処理を行った。その後、処理浴に水を注入して浴温50℃まで降温させ排水した。
再度200Lの水を注入し酢酸で中和して、浴温50℃まで徐昇温させ、その浴温で20min液浸処理を実施し、処理浴を中和処理後、排水した。
その後、水を注入しながら被処理繊維(布帛)を、20min水洗いし、実施例1と同様にして、排水・脱水・乾燥して第一工程の液浸処理を終了した。
(2)第二工程(乾熱処理)
テンター乾燥機の設定温度を190℃に設定しておき、乾燥機の浴槽に水200Lとともに市販の水性ウレタン系撥水剤12kg、市販のブロックドイソシアネート2kg(10g/L)、及びIPA20cc/Lを投入して撹拌し、第二工程の処理浴を調製した。該処理浴中に前記構造物を浸積した後、マングルで絞り率80%に絞った被処理繊維を、190℃×120sの条件で乾熱処理を実施して、実質的に絶乾させた。こうして第二工程を終了した。
<比較例2>
第一工程の液浸処理を実施せず、第二工程の乾熱処理のみを実施した。
<実施例3(連続乾熱法)>
(1)第一工程(前段乾熱処理)
テンター乾燥機のチャンバー内温度を80℃に設定して、該乾燥機内の浴槽に、水100Lとともに2,6−ジクロロ−4−(3,5−ジスルホアリニノ)−s−トリアジン3kg(ows3%)を仕込み、更にソーダ灰と重曹でpH9.0に調節して第一工程の浸漬浴を調製した。
この浸漬浴に分散染料染色のポリエステルタフタ(被処理繊維)10kgを投入し引き上げた後、当該被処理繊維をマングルで絞り率70%(owm2.1%)に絞った後、80℃×90sの条件で乾燥させた。こうして前段乾熱処理を終了した。
(2)第二工程(後段乾熱処理)
第二工程の後段乾熱処理は、実施例1と同様に実施した。
<比較例3>
第一工程の前段乾熱処理を実施せず、第二工程の後段乾熱処理のみを実施した。
<実施例4(浴中吸尽法)>
(1)第一工程(液浸処理)
液流染色機で、被処理繊維(綿100%ニット地/亀の子)50kgを染色した後、モノクロトリアジン反応染料にて染色後、脱水・水洗して、当該染色機の浴槽に水500Lとともに、2,6−ジクロロ−4−オキソ−s−トリアジンMg塩10kg(ows20%)を仕込み、更に、ソーダ灰と重曹でpH9.0に調節して常温で撹拌して第一工程の液浸浴を調製した。
そのあと、実施例1と同様の条件で液浸処理を実施し、酢酸で中和処理後、更に、排水・脱水・乾燥をして第一工程を終了した。
(2)第二工程(乾熱処理)
テンター乾燥機の温度を160℃に設定しておき乾燥機の浴槽に水100Lとともに市販の水性ウレタン系撥水剤1kg(100g/L)、市販のブロックドイソシアネート1kg(10g/L)、IPA10cc/Lを投入し良く撹拌し、酢酸でpH5.5に調節して第二工程の浸漬浴を調製した。該浸漬浴に第一工程終了後の被処理繊維を浸積したあと、マングルで絞り率70%で絞り、乾燥時間120sで実質的に絶乾させた。こうして第二工程を終了した。
<比較例4>
第一工程の液浸処理は、実施例4と同一で実施した。
第二工程の乾熱処理は、実施例4における水系ウレタン系撥水剤を、フッ素系撥水剤(クラリアント社製「NOVA-N2114」)に変更して同量使用して同一の乾熱処理を実施した。
上記各実施例における液浸浴乃至浸漬浴の組成等をまとめたものを表1〜4に示す。
Figure 2016089316
Figure 2016089316
Figure 2016089316
Figure 2016089316
B.上記実施例・比較例で得た撥水処理繊維構造物について、本発明の効果を確認するために、各項目の特性試験を行った。
<撥水度試験(スプレー法)>
(1)実施例1・3及び比較例1・3:JISL0217(103法)に準じて、表示の各回数洗濯後、80℃でアイロンプレスをして調製した各試験片について、JIS L1092スプレー法に準拠して撥水評価をした。
評価基準は、表面全体に湿潤乃至水滴の付着がないもの:100、あるもの:0としてその間の百分率で表示してある。
(2)実施例2・4及び比較例2・4:下記(a)〜(d)の処理を行って調製した各試験片について、JIS L1092スプレー法に準拠して評価した。
(a)JIS L2017 103法(吊干し)で10回洗濯・風乾、
(b)同じく30回洗濯・風乾、
(c)同じく10回洗濯後、アイロンプレス(180℃)
(d)同じく10回洗濯後、JIS L 1092F-2のタンブル乾燥(80℃)
評価基準は、JIS L1092「7.2撥水度試験(スプレー試験)」に準拠した。評価基準は、1級(表面全体に湿潤を示すもの)から5級(表面に湿潤乃至水滴の付着のないもの)の間の5段階とした。
<試験結果・考察>
各実施例・比較例の評価試験結果を表5〜8にそれぞれ示すが、本発明の各実施例は、各比較例に比して優れた撥水性および撥水維持性を示すことが分かる。
特に、実施例4は、市販のフッ素系撥水剤を用いた比較例4より優れた撥水性及び撥水耐久性を示し、本発明は顕著な効果を奏することが確認できた。
Figure 2016089316
Figure 2016089316
Figure 2016089316
Figure 2016089316
(4)遊離ホルムアルデヒド試験
実施例4で得たフッ素フリー撥水性繊維構造物を公的機関である、京都府織物機械金属振興センター(6織第一号の34)にて遊離ホルムアルデヒド試験を実施した。
試験方法は、JIS L 1041(2011)8.1.3遊離ホルムアルデヒド試験 A法(2.5g法)に準拠して、下記の如く行った。
1)アセチルアセトン試液は、酢酸アンモニウム15.0gを水約80mLに溶解し、酢酸0.3mL、アセチルアセトン0.2mLを加えよく振り混ぜた後、水を加えて100mLとして調整した。
2)緩衝液は、酢酸アンモニウム15.0gを水約80mLに溶解し、これに酢酸0.3mLを加えよく振り混ぜた後、水を加えて100mLとして調液した。
3)標定したホルムアルデヒド液400/Cpgを正しく量り、水を加えて正確に100mLとし、この溶液1mLを分取し、水で10倍量に希釈する操作を5回繰り返してホルムアルデヒド標準液とした。
試験結果は、遊離ホルムアルデヒド濃度定量限界以下となり、ノンホルマリンを達成していることが確認できた。

Claims (18)

  1. 撥水性が付与された繊維構造物であって、
    アニオン性官能基を有する2,6−ジハロゲノ−s−トリアジン誘導体(以下、「ジハロトリアジン誘導体」という。)が繊維に結合され、さらに、カチオン性撥水剤(フッ素系炭化水素基を含むものを除く。)が前記アニオン性官能基と結合されていることを特徴とする撥水性繊維構造物。
  2. 前記ジハロトリアジン誘導体が下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とする請求項1記載の撥水性繊維構造物。
    Figure 2016089316
    (但し、XはCl、F,Brのいずれかであり、YはOH、SOH、SH、COOHのいずれか又はそれらのアルカリ・アルカリ土類金族塩のいずれかである。)
  3. 前記一般式(1)において、XがClであることを特徴とする請求項2記載の撥水性繊維構造物。
  4. 前記ジハロトリアジン誘導体が下記一般式(2)で示されるものであることを特徴とする請求項1記載の撥水性繊維構造物。
    Figure 2016089316
    (但し、XはCl、F,Brのいずれかであり、AはNH、O、Sのいずれかであり、YはOH、SOH、SH、COOHのいずれか又はそれらのアルカリ・アルカリ土類金族塩のいずれかであり、n=1、2又は3である。)
  5. 前記一般式(2)において、XはClであり、AはNHであることを特徴とする請求項4記載の撥水性繊維構造物。
  6. 前記カチオン性撥水剤が、水性シリコーン系、水性パラフィン系、水性ウレタン系、アルキルリン酸塩系、のいずれか又はそれらが併用されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の撥水性繊維構造物。
  7. 前記カチオン性撥水剤とともに、さらに、補助架橋剤としてブロック型イソシアネートが併用されていること特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の繊維構造物。
  8. 前記繊維構造物が、セルロース系繊維、動物性繊維、アセテート系、レーヨン系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、アクリル系、及びこれらの混紡及び混用物、並びにダウン、ファー及び洋紙、和紙若しくはい草のいずれかであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の撥水性繊維構造物。
  9. 請求項8記載の撥水性繊維構造物から形成される繊維製品。
  10. 請求項1〜7のいずれか記載の撥水性繊維構造物を、乾熱連続法により製造する方法であって、
    被処理繊維構造物(以下「被処理繊維」という。)を、前記ジハロトリアジン誘導体を含有し弱アルカリ性とされた第一浸漬浴に浸漬・絞り後、前段乾熱処理する第一工程と、
    該第一工程で得た被処理繊維を、カチオン性撥水剤を含有し弱酸性とされた第二浸漬浴に浸漬・絞り後、前記被処理繊維を後段乾熱処理する第二工程を含む、
    ことを特徴とする撥水性繊維構造物の製造方法。
  11. 該第一工程の前段乾熱処理は、30〜100℃で、前記第二工程の後段乾熱処理は60〜200℃で実施することを特徴とする請求項10記載の撥水性繊維構造物の製造方法。
  12. 前記第一工程の浸漬浴がpH7超10以下であるとともに、前記第二工程の浸漬浴がpH7未満5以上であることを特徴とする請求項10又は11記載の撥水性繊維構造物の製造方法。
  13. 請求項1〜7のいずれか記載の撥水性繊維構造物を、浴中吸尽法により製造する方法であって、
    被処理繊維を、前記ジハロトリアジン誘導体を含有し弱アルカリ性とされた液浸浴に、徐昇温させて沸点以下の設定温度で液浸処理する第一工程と、
    該第一工程で得た被処理繊維を、カチオン性撥水剤を含有し弱酸性とされた浸漬浴に浸漬・絞り後、前記被処理繊維を乾熱処理する第二工程を含む、
    ことを特徴とする撥水性繊維構造物の製造方法。
  14. 前記液浸処理は、浴温30〜100℃に2℃/min以下で徐昇温させて同一の又は異なる浴温で複数回実施し、
    前記乾熱処理は、室温60〜200℃で、乾燥するまで実施することを特徴とする請求項13記載の撥水性繊維構造物の製造方法。
  15. 前記第一工程の液浸浴がpH7超10以下であるとともに、前記第二工程の浸漬浴がpH7未満5以上であることを特徴とする請求項13又は14記載の撥水性繊維構造物の製造方法。
  16. 第二工程における被処理繊維の浸漬を、水と自由混和する非イオン性有機溶剤を添加して攪拌し前記カチオン性撥水剤の凝集体を破壊・分散させた状態で行うことを特徴とする請求10〜15いずれか記載の撥水性繊維構造物の製造方法。
  17. 前記第二工程の浸漬浴に、前記カチオン性撥水剤とともに、ブロック型イソシアネートを含有させることを特徴とする請求10〜16のいずれか記載の撥水性繊維構造物の製造方法。
  18. 前記第一工程後の被処理繊維を中和処理することを特徴とする請求項10〜16のいずれか記載の撥水性繊維構造物の製造方法。
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