JP2016087892A - 多層フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐ピンホール性を示し、かつ歩留まりを向上可能な多層フィルム及びその製造方法の提供。【解決手段】一態様において、熱可塑性樹脂を含む第1樹脂層と接着性樹脂を含む第2樹脂層とが交互に8層以上積層されてなる積層体と、回収層とを含む多層フィルムであって、前記回収層は、多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を樹脂原料の少なくとも一部として含む樹脂層である多層フィルムに関する。一態様において、熱可塑性樹脂を含む第1樹脂層と接着性樹脂を含む第2樹脂層とが交互に8層以上積層されてなる積層体と、熱可塑性樹脂及び接着性樹脂を含む回収層とを有する多層フィルムを形成することを含む、多層フィルムの製造方法であって、前記回収層の樹脂原料は、多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を含む多層フィルムの製造方法に関する。【選択図】図1

Description

本開示は、多層フィルム及びその製造方法に関する。
食品包装用の多層フィルムとして、特許文献1〜4では、様々な汎用多層フィルムが提案されている。特許文献1は、小さいボイル用深絞り底材フィルムに適した共押出複合フィルムを開示する。特許文献2は、軟質多層フィルムからなるスキンパック包装用底材として機能する多層フィルムを開示する。特許文献3は、食品のピロー包装用の積層された共押出フィルムを開示する。特許文献4は、2つの積層体と、前記2つの積層体の間に配置されたコア層とを有する多層フィルムを開示する。
深絞り包装とは、包装容器の下フィルムを深絞り包装器の容器形成部で製品に適した形に凹み成形し、前記成形した下フィルムの中に製品を収容した後、上フィルムをかけて脱気すると共に、前記上下フィルムの当接部分を加熱によりシールしてなる包装形態である。
特開平10−76616号公報 特開平11−310265号公報 特開2005−289399号公報 特開2013−111822号公報
これらの多層フィルムの製造過程において、製膜後の端部をスリット等により切断した切断端材が排出される。切断端材は通常廃棄処分されるが、廃棄処分すると歩留まりが低下するとともに、廃棄のために余分なコストがかかるという問題がある。
そこで本開示は、一又は複数の実施形態において、優れた耐ピンホール性を維持でき、かつ歩留まりを向上可能な多層フィルム及びその製造方法を提供する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、熱可塑性樹脂を含む第1樹脂層と接着性樹脂を含む第2樹脂層とが交互に8層以上積層されてなる積層体と、回収層とを含む多層フィルムであって、前記回収層は、多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を樹脂原料の少なくとも一部として含む樹脂層である多層フィルムに関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、熱可塑性樹脂を含む第1樹脂層と接着性樹脂を含む第2樹脂層とが交互に8層以上積層されてなる積層体と、熱可塑性樹脂及び接着性樹脂を含む回収層とを有する多層フィルムを形成することを含む、多層フィルムの製造方法であって、前記回収層の樹脂原料は、多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を含む多層フィルムの製造方法に関する。
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、優れた耐ピンホール性を維持でき、かつ歩留まりを向上可能な多層フィルム及びその製造方法を提供できる。
図1は、本開示に係る多層フィルムの一例を示す概略断面図である。
本開示は、一又は複数の実施形態において、製造過程で排出される切断端材(フィルム片)を樹脂原料とした層を設けた場合であっても、従来の深絞り包装用多層フィルムと比較して優れた耐ピンホール性を維持できる多層フィルムが得られ、かつ歩留まりを向上できる、という知見に基づく。
[多層フィルム]
本開示は、一又は複数の実施形態において、熱可塑性樹脂を含む第1樹脂層と接着性樹脂を含む第2樹脂層とが交互に8層以上積層されてなる積層体と、回収層とを含む多層フィルムであって、前記回収層は、多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を樹脂原料の少なくとも一部として含む樹脂層である多層フィルム(以下、「本開示に係る多層フィルム」ともいう)に関する。
以下、本開示に係る多層フィルムについて詳細に説明する。
<回収層>
本開示に係る多層フィルムは、熱可塑性樹脂と接着性樹脂とを含み、多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を含む樹脂を原料とする回収層を含む。本開示に係る多層フィルムによれば、通常廃棄されるフィルム片を回収層の原料とするため、多層フィルム製造における歩留まりを向上できる。
本開示において「フィルム片」とは、一又は複数の実施形態において、多層フィルムの製造過程において排出されるフィルム端部のトリミング片等といった耳と称される切断端片等の成形廃品をいう。
回収層の樹脂原料は、一又は複数の実施形態において、少なくともフィルム片を含んでいればよく、フィルム片とその他の樹脂との混合物であってもよい。その他の樹脂としては、一又は複数の実施形態において、低密度ポリエチレン樹脂(以下、「LDPE樹脂」という。)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(以下、「LLDPE樹脂」という。)、中密度ポリエチレン樹脂(以下、「MDPE樹脂」という。)及び高密度ポリエチレン樹脂(以下、「HDPE樹脂」という。)、EVA樹脂、EMMA樹脂、EEA樹脂、EMA樹脂、E−EA−MAH樹脂、EAA樹脂、EMAA樹脂及びION樹脂等のポリエチレン系の共重合体またはポリプロピレン樹脂(以下、「PP樹脂」という。)等のポリプロピレン系樹脂が挙げられ、好ましくはポリエチレン系樹脂である。
回収層の樹脂原料におけるフィルム片の含有率は、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は100%である。
回収層は、一又は複数の実施形態において、ポリアミド系樹脂を含む。回収層におけるポリアミド系樹脂の含有率は、一又は複数の実施形態において、1%〜40%であり、耐ピンホール性の点から、1%〜20%である。
回収層は、一又は複数の実施形態において、ポリエチレン系樹脂を含む。回収層におけるポリエチレン系樹脂の含有率は、一又は複数の実施形態において、50%〜99%であり、耐ピンホール性の点から、75%〜99%である。
回収層の厚さは、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、多層フィルムの耐ピンホール性の観点から、1μm以上70μm以下である。
本開示に係る多層フィルムにおいて回収層の場所は特に限定されない。回収層は、一又は複数の実施形態において、多層フィルムの機能をより維持しやすくする点から、積層体と後述するシール層との間に位置するように配置する。
<積層体>
本開示に係る多層フィルムを構成する積層体は、一又は複数の実施形態において、熱可塑性樹脂を含む第1樹脂層と接着性樹脂を含む第2樹脂層とが交互に8層以上積層されたものである。本開示に係る多層フィルムを構成する積層体は、一又は複数の実施形態において、少なくとも2種類以上の樹脂が積層されたものであって、複数の第1樹脂層及び複数の第2樹脂層を含み、第1樹脂層と第2樹脂層とが交互に積層されたものである。本開示に係る多層フィルムを構成する積層体は、その他の一又は複数の実施形態において、複数の第1樹脂層及び複数の第2樹脂層からなり、第1樹脂層と第2樹脂層とが交互に積層されたものである。
[第1樹脂層]
第1樹脂層は、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層である。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つ以上の樹脂が好ましく、特に、ポリアミド系樹脂が好ましい。ポリアミド系樹脂は、優れた強度、伸度、及び剛性を有するため、多層フィルムの強度を向上できる。
ポリアミド系樹脂としては、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、ナイロン−6(以下、「6−Ny」という。)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とからなるナイロン−6T、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸とからなるナイロン−6I、ノナンジアミンとテレフタル酸とからなるナイロン−9T、メチルペンタジアミンとテレフタル酸とからなるナイロン−M5T、カプロラクタムとラウリルラクタムとからなるナイロン−6,12等が挙げられる。さらに、一又は複数の実施形態において、これらの樹脂のいずれかと、ナイロン−6、ナイロン−11、及びナイロン−12からなる群から選択される少なくとも1種との共重合体を用いてもよい。これらは、1種単独で又は2種以上を併用して使用できる。また、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)を用いてもよい。
[第2樹脂層]
第2樹脂層は、接着性樹脂を含む接着性樹脂層である。
接着性樹脂としては、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、一又は複数の実施形態において、ポリエチレン系共重合体、ポリプロピレン系共重合体、ブテン系共重合体が挙げられ、これらの中でも、ポリエチレン系共重合体が好ましい。また、これら共重合体の形態としては、接着性を向上できる観点から、一又は複数の実施形態において、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が用いられ、特にランダム共重合体が好ましい。
ポリエチレン系共重合体としては、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体としては、一又は複数の実施形態において、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE−g−MAH」という。)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA樹脂」という。)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(以下、「EMMA樹脂」という。)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(以下、「EEA樹脂」という。)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(以下、「EMA樹脂」という。)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(以下、「E−EA−MAH樹脂」という。)、エチレン−アクリル酸共重合体(以下、「EAA樹脂」という。)、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下、「EMAA樹脂」という。)、アイオノマー(以下、「ION樹脂」という。)、エチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。本開示において、ION樹脂とは、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体を、酸部分と金属イオンとの塩形成によってイオン橋かけ構造にしたものを指す。
EMAA樹脂のメタクリル酸共重合比率は、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、多層フィルムの耐ピンホール性を向上できる観点から、5重量%以上40重量%以下、又は8重量%以上20重量%以下である。
これらの中でも、LLDPE−g−MAH、EMAA樹脂、ION樹脂、及びエチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。これにより、柔軟かつ高い伸度を有する接着性樹脂層を実現できるため、これを第2樹脂層として用いることで、多層フィルムの耐ピンホール性を向上できるとともに、従来の多層フィルムよりも厚さを薄くできる。
さらに、第2樹脂層は、上記以外にも、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有していてもよい。この場合、良好な耐ピンホール性、及び酸素バリア性を有する第2樹脂層を実現でき、これにより、良好な耐ピンホール性、及び酸素バリア性を有する多層フィルムであって、従来の多層フィルムよりも厚さが薄い多層フィルムを実現できる。
ポリプロピレン系共重合体としては、特に限定はされないが、一又は複数の実施形態において、プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体が挙げられる。
プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体としては、特に制限はないが、一又は複数の実施形態において、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリプロピレン(以下、「PP−g−MAH」という。)、プロピレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これにより、柔軟かつ高い伸度を有する接着性樹脂層を実現できるため、これを第2樹脂層として用いることで、多層フィルムの耐ピンホール性を向上できるとともに、従来の多層フィルムよりも厚さを薄くできる。
ブテン系共重合体としては、一又は複数の実施形態において、1−ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、2−ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
積層体を構成する第1樹脂層及び第2樹脂層の合計層数は、8層以上である。一又は複数の実施形態において、第1樹脂層及び第2樹脂層の合計層数は、耐ピンホール性を向上させる観点から、9層以上が好ましく、また、製膜性の観点から、5000層以下が好ましく、100層以下がより好ましく、50層以下が更に好ましい。多層フィルムが積層体を2以上含む場合、それぞれの積層体における合計層数が、一又は複数の実施形態において、8層又は9層以上であり、また、好ましくは50層以下である。
積層体の厚みは、一又は複数の実施形態において、耐ピンホール性向上の観点から、10μm以上が好ましく、より好ましくは20μm以上である。また、積層体の厚みの上限は特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、製膜性の観点から、500μm以下が好ましい。多層フィルムが積層体を2以上含む場合、それぞれの積層体の厚みが、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、また、500μm以下が好ましい。なお、本開示において、積層体の厚みは、実施例に記載の方法で測定できる。
積層体における第1樹脂層と第2樹脂層との厚みの比率は、70:30〜30:70が好ましい。上記範囲よりも一方の樹脂比率を向上させると製膜性が悪化してしまうため好ましくない。
本開示に係る多層フィルムは、一又は複数の実施形態において、積層体を2つ含んでいてもよく、2つの積層体が後述する接着層を介して積層されていてもよい。これにより、多層フィルムの表面及び裏面における耐ピンホール性をより向上できる。
2つの積層体は、一又は複数の実施形態において、積層体を構成する各層の樹脂原料が、同じであってもよいし異なっていてもよいが、耐ピンホール性をより向上できる観点から、同じであることが好ましい。
2つの積層体は、一又は複数の実施形態において、積層体を構成する第1樹脂層及び第2樹脂層の合計層数は、同じであってもよいし異なっていてもよい。
2つの積層体は、一又は複数の実施形態において、積層体を構成する第1樹脂層及び第2樹脂層の各層の平均厚さは、同じであってもよいし異なっていてもよい。
2つの積層体は、一又は複数の実施形態において、接着層を挟んで実質的に対称的な構造であることが好ましい。これにより、多層フィルムの両面の耐ピンホール性が同等になり、フィルム強度をより向上できる。
本開示に係る多層フィルムは、一又は複数の実施形態において、製膜性及び二次成形の観点から、上述の積層体のほかに外層及びシール層をさらに有していてもよい。一方で、本開示に係る多層フィルムは、その他の一又は複数の実施形態において、該積層体からなる多層フィルムであってもよい。
<外層>
外層を形成する樹脂原料としては、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂及びエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH樹脂」という。)等が挙げられる。
外層には、一又は複数の実施形態において、フィルムの物性を損ねない範囲で、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が添加されていてもよい。
外層の厚さは、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、低コスト化の観点から、3μm以上100μm以下、5μm以上85μm以下、又は、7μm以上70μm以下である。
<シール層>
シール層は、耐内容物性の機能と、シールする相手材とのシール適性の機能とを有している。本開示において耐内容物性とは、内容物が薬品や油分を多く含む食品等の場合、この薬品や油分によってシール層が相手材とのシール適性に係る機能を失わない性質のことを指す。
シール層を形成する樹脂原料としては、一又は複数の実施形態において、LDPE樹脂、LLDPE樹脂、MDPE樹脂、HDPE樹脂、PP樹脂、EVA樹脂、EMMA樹脂、EEA樹脂、EMA樹脂、E−EA−MAH樹脂、EAA樹脂、EMAA樹脂、ION樹脂等の樹脂が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、透明性及びシール強度等を向上できる観点から、LLDPE樹脂及びEVA樹脂が好ましい。
また、シール層は、一又は複数の実施形態において、イージーピール機能をさらに有してもよい。これにより、多層フィルムを包装体に用いた際に、簡便に開封することができ
る。イージーピール機能を付与するために、シール層を形成する樹脂原料としては、例えば、一又は複数の実施形態において、EMAA樹脂又はEMMA樹脂等のエチレン共重合体:10重量部以上90重量部以下と、PP樹脂:10重量部以上90重量部以下とを含有させたものが用いられる。エチレン共重合体を10重量部以上とすることで、シール層は良好なイージーピール性を有する。エチレン共重合体を90重量部以下とすることで、シール層のピール強度のばらつきが小さくなる。
シール層には、一又は複数の実施形態において、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が添加されていてもよい。
シール層の厚さは、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、低コスト化の観点から、2μm以上80μm以下、又は3μm以上70μm以下である。
本開示に係る多層フィルムは、一又は複数の実施形態において、外層と積層体との間、積層体と積層体との間、積層体と回収層との間、及び/又は、シール層と積層体との間に、接着層をさらに含有していてもよい。これにより、これらの間の接着強度、多層フィルムの腰の強さ、耐ピンホール性、柔軟性又は成形性等を向上できる観点から、接着層をさらに含有していてもよい。
<接着層>
接着層を形成する樹脂原料としては、公知の接着性樹脂を用いることができ、一又は複数の実施形態において、接着性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリレート−グリシジルアクリレート三元共重合体;各種ポリオレフィンに一塩基性不飽和脂肪酸、二塩基性不飽和脂肪酸、もしくはこれらの無水物をグラフトさせたもの;等が挙げられる。一塩基性不飽和脂肪酸としては、一又は複数の実施形態において、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。二塩基性不飽和脂肪酸としては、一又は複数の実施形態において、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。各種ポリオレフィンに一塩基性不飽和脂肪酸、二塩基性不飽和脂肪酸、もしくはこれらの無水物をグラフトさせたものとしては、一又は複数の実施形態において、マレイン酸グラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体、マレイン酸グラフト化エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。EVOHを使用した場合はバリア層としても機能できる。
接着層の厚さは、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、低コスト化の観点から、2μm以上50μm以下、又は、3μm以上40μm以下である。
外層と積層体との間、並びに、回収層と積層体との間及び/又はシール層と積層体との間の双方に接着層を設ける場合、これら接着層は、同じ樹脂原料で形成されていてもよいし、異なる樹脂原料で形成されていてもよい。また、厚みも同じ厚みであってもよいし、異なる厚みであってもよい。
次に、本開示に係る多層フィルムの一例を図1に示す。
図1に示す多層フィルム100は、外層1、接着層2、積層体3、接着層4、積層体5、接着層6、回収層7及びシール層8がこの順で配置されたものである。積層体3は、5層の第1樹脂層(熱可塑性樹脂層)31及び4層の第2樹脂層(接着性樹脂層)32が交互に積層されてなる。積層体5は、5層の第1樹脂層(熱可塑性樹脂層)51及び4層の第2樹脂層(接着性樹脂層)52が交互に積層されてなる。多層フィルム100は、一又は複数の実施形態において、深絞り包装の用途に用いることができる。
本開示に係る多層フィルムは2次成形することにより、深絞り包装体とすることができる。すなわち、本開示に係る多層フィルムは、耐ピンホール性が向上しているため、薄肉化も可能である。本開示に係る多層フィルムを2次成形する方法としては、特に限定されないが、例えば真空成形又は圧空成形等が挙げられる。
[多層フィルムの製造方法]
本開示は、一又は複数の実施形態において、熱可塑性樹脂を含む第1樹脂層と接着性樹脂を含む第2樹脂層とが交互に8層以上積層されてなる積層体と、熱可塑性樹脂及び接着性樹脂を含む回収層とを有する多層フィルムを形成することを含む、多層フィルムの製造方法であって、前記回収層の樹脂原料は、多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を含む多層フィルムの製造方法(以下、「本開示に係る製造方法」ともいう)に関する。本開示に係る製造方法によれば、本開示に係る多層フィルムを製造できる。
本開示に係る製造方法は、一又は複数の実施形態において、前記多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を回収することを含む。本開示に係る製造方法は、一又は複数の実施形態において、回収したフィルム片を樹脂原料の少なくとも一部として回収層を形成することを含む。
本開示に係る製造方法は、一又は複数の実施形態において、複数の第1樹脂層と、複数の第2樹脂層と、回収層と、必要に応じて接着剤層と、外層と、シール層とを共押出しすることを含む。共押出しの方法は、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、数台の押出機により、原料となる樹脂等を溶融押出するフィードブロック法やマルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等が挙げられるが、層の厚さ精度の点から、共押出Tダイ法が好ましい。
本開示は、さらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
〔1〕 熱可塑性樹脂を含む第1樹脂層と接着性樹脂を含む第2樹脂層とが交互に8層以上積層されてなる積層体と、
回収層とを含む多層フィルムであって、
前記回収層は、多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を樹脂原料の少なくとも一部として含む樹脂層である、多層フィルム。
〔2〕 前記回収層はポリアミド系樹脂を含み、回収層におけるポリアミド系樹脂の含有率は1%〜40%である、〔1〕記載の多層フィルム。
〔3〕 外層と、シール層とをさらに含み、
前記外層と前記シール層との間に、前記積層体が配置される、〔1〕又は〔2〕に記載の多層フィルム。
〔4〕 前記回収層は、前記シール層と前記積層体との間に配置される、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の多層フィルム。
〔5〕 前記積層体を少なくとも2つ含む、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の多層フィルム。
〔6〕 前記第1樹脂層は、ポリアミド系樹脂を含む、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の多層フィルム。
〔7〕 前記第2樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂を含む、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の多層フィルム。
〔8〕 前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系共重合体及びポリプロピレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項7記載の多層フィルム。
〔9〕 深絞り包装用多層フィルムである、〔1〕から〔8〕のいずれかに記載の多層フィルム。
〔10〕 熱可塑性樹脂を含む第1樹脂層と接着性樹脂を含む第2樹脂層とが交互に8層以上積層されてなる積層体と、回収層とを有する多層フィルムを形成することを含む、多層フィルムの製造方法であって、
前記回収層の樹脂原料は、多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を含む、多層フィルムの製造方法。
〔11〕 複数の第1樹脂層と、複数の第2樹脂層と、回収層と、必要に応じて接着剤層と、外層と、シール層とを共押出しすることを含む、〔10〕記載の製造方法。
〔12〕 前記多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を回収することを含む、〔10〕又は〔11〕記載の多層フィルムの製造方法。
本開示を実施例により更に詳細に説明するが、これは単なる例示であり、本開示はこれにより限定されるものではない。
(参考例1)
図1に示す多層フィルム100において回収層7に替えてコア層を有する多層フィルムを作製した。外層1、接着層2、積層体3、接着層4、積層体5、接着層6、コア層7及びシール層8の各々を形成する樹脂原料として以下のものを準備した。
外層1:ポリアミド系樹脂、6−Ny(商品名“1022B”、宇部興産社製)
接着層2:接着性樹脂、LLDPE−g−MAH(商品名“NF536”、三井化学社製)
積層体3の熱可塑性樹脂層(第1樹脂層)31:ポリアミド系樹脂、6−Ny(商品名“1022B”、宇部興産社製)
積層体3の接着性樹脂層(第2樹脂層)32:接着性樹脂、LLDPE−g−MAH(商品名“NF536”、三井化学社製)
接着層4:接着性樹脂、EVOH(商品名“J171B”、クラレ製)
積層体5の熱可塑性樹脂層(第1樹脂層)51:ポリアミド系樹脂、6−Ny(商品名“1022B”、宇部興産社製)
積層体5の接着性樹脂層(第2樹脂層)52:接着性樹脂、LLDPE−g−MAH(商品名“NF536”、三井化学社製)
接着層6:接着性樹脂、LLDPE−g−MAH(商品名“NF536”、三井化学社製)
コア層7:ポリエチレン樹脂、LLDPE(商品名“2022L”、プライムポリマー社製)
シール層8:ポリエチレン樹脂、LLDPE(商品名“2022L”、プライムポリマー社製)
ポリアミド系樹脂は275℃に調整された押出機に供給し、接着性樹脂及びポリエチレン樹脂はそれぞれ240℃に調整された押出機に供給し、外層1/接着層2/積層体3/コア層4/積層体5/接着層6/コア層7/シール層8の順序で積層され、フィードブロック及びダイを用いて共押出しを行い、端部(フィルム片)をスリット機でスリットし、多層フィルムを得た。
(実施例1)
スリットにより排出された端部(フィルム片)を粉砕機で細かく砕いた。このフィルム片の粉砕物とポリエチレン樹脂(LLDPE)とを樹脂原料としてコア層7に替えて回収層7を形成した以外は、参考例1と同様にして図1に示す多層フィルム100を得た。回収層7の原料におけるフィルム片ペレットの含有比率は9%とした(回収層におけるNY比率:3.4%)。
(実施例2)
回収層7の樹脂原料におけるフィルム片の含有比率は20%とした以外は、実施例1と同様にして多層フィルム100を得た(回収層におけるNY比率:7.6%)。
(実施例3)
回収層7の樹脂原料におけるフィルム片の含有比率は50%とした以外は、実施例1と同様にして多層フィルム100を得た(回収層におけるNY比率:19%)。
(比較例1)
接着層2、積層体3及び接着層6を設けず、かつ、積層体5における熱可塑性樹脂層51及び接着性樹脂層52の層数を1層とした以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。
(比較例2)
接着層2、積層体3及び接着層6を設けず、かつ、積層体5における熱可塑性樹脂層51及び接着性樹脂層52の層数を1層とした以外は、実施例2と同様にして多層フィルムを得た。
(参考例2)
接着層2、積層体3及び接着層6を設けず、かつ、積層体5における熱可塑性樹脂層51及び接着性樹脂層52の層数を1層とした以外は、参考例1と同様にして多層フィルムを得た。
実施例1〜3、比較例1〜2及び参考例1〜2の各多層フィルムについて、下記の通り、耐衝撃性、耐屈曲性及び突刺強度に基づいて耐ピンホール性の評価を行った。
(耐衝撃性)
多層フィルムを幅100mm及び長さ100mmの大きさにカットしたサンプルを作製した。この作製したサンプルを落錘衝撃試験機(インストロン製)にセットした。そして、直径:10mmのストライカーを落下速度2.7m/秒で多層フィルムの外層1(表面)側及びシール層8(裏面)側に衝突させた。この試験を20個のサンプルについてそれぞれ行い、フィルム貫通に必要なエネルギー量を算出した。算出には、日本工業規格(JIS)K7124−2に準ずる方法で実施した。
(耐屈曲性)
ASTMF392に準拠して、ゲルボフレックステスター(理学工業株式会社製)により、多層フィルムの耐屈曲性に関わる測定を行った。具体的には、多層フィルムのサンプルを、ゲルボフレックステスターの対向する直径8.8cmの2つの円板に巻き付けて固定し、円筒状になった多層フィルムにひねりを加えることで、屈曲処理を行った。この屈曲処理を温度23℃の条件で2000回行った。この試験を10枚のサンプルについて行い、各サンプルの発生したピンホールの個数を数えた。そして、サンプル1枚あたりのピンホールの平均発生数を算出した。
(突刺強度)
突刺強度はJIS Z 1707に準拠して測定を行った。すなわち、まず、フィルムを幅80mm及び長さ400mmの大きさにカットしたサンプルを作製した。このサンプルを固定し、試料面に直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50±0.5mmの速度で突刺し、針が貫通するまでの最大荷重を測定した。
上記各評価結果を表1に示した。
Figure 2016087892
実施例1〜3は、回収層7の耳含有比率(NY比率)に関わらずいずれも、回収層7に替えてコア層7を含む参考例1とほぼ同等の高い耐ピンホール性を示した。また、実施例1〜3は、積層体に含まれる樹脂層が1層である比較例1及び2並びに参考例2に比べて、非常に高い耐ピンホール性を示した。したがって、8層以上の樹脂層を含む積層体を備える実施例1〜3の多層フィルムは、回収層の影響が十分に低減され、優れた耐ピンホール性を示すと考えられる。
本開示の多層フィルムは、食品、医薬品、工業用部品及び電子材料等の深絞り包装用途に用いられるものであるが、その応用範囲がこれに限られるものではない。
1 外層
2 接着層
3 積層体
31 第1樹脂層(熱可塑性樹脂層)
32 第2樹脂層(接着性樹脂層)
4 接着層
5 積層体
51 第1樹脂層(熱可塑性樹脂層)
52 第2樹脂層(接着性樹脂層)
6 接着層
7 回収層
8 シール層
100 多層フィルム

Claims (12)

  1. 熱可塑性樹脂を含む第1樹脂層と接着性樹脂を含む第2樹脂層とが交互に8層以上積層されてなる積層体と、
    回収層とを含む多層フィルムであって、
    前記回収層は、多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を樹脂原料の少なくとも一部として含む樹脂層である、多層フィルム。
  2. 前記回収層はポリアミド系樹脂を含み、回収層におけるポリアミド系樹脂の含有率は1%〜40%である、請求項1記載の多層フィルム。
  3. 外層と、シール層とをさらに含み、
    前記外層と前記シール層との間に、前記積層体が配置される、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
  4. 前記回収層は、前記シール層と前記積層体との間に配置される、請求項1から3のいずれかに記載の多層フィルム。
  5. 前記積層体を少なくとも2つ含む、請求項1から4のいずれかに記載の多層フィルム。
  6. 前記第1樹脂層は、ポリアミド系樹脂を含む、請求項1から5のいずれかに記載の多層フィルム。
  7. 前記第2樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1から6のいずれかに記載の多層フィルム。
  8. 前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系共重合体及びポリプロピレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項7記載の多層フィルム。
  9. 深絞り包装用多層フィルムである、請求項1から8のいずれかに記載の多層フィルム。
  10. 熱可塑性樹脂を含む第1樹脂層と接着性樹脂を含む第2樹脂層とが交互に8層以上積層されてなる積層体と、回収層とを有する多層フィルムを形成することを含む、多層フィルムの製造方法であって、
    前記回収層の樹脂原料は、多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を含む、多層フィルムの製造方法。
  11. 複数の第1樹脂層と、複数の第2樹脂層と、回収層と、必要に応じて接着剤層と、外層と、シール層とを共押出しすることを含む、請求項10記載の製造方法。
  12. 前記多層フィルム製造時に排出されるフィルム片を回収することを含む、請求項10又は11記載の多層フィルムの製造方法。
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