JP2016084522A - 二相ステンレス鋼材および二相ステンレス鋼管 - Google Patents
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Abstract
【課題】塩化物、硫化水素、炭酸ガスなどの腐食性物質を含有する環境において、優れた耐食性を発現すると共に、熱間加工性にも優れた二相ステンレス鋼材および二相ステンレス鋼管を提供する。
【解決手段】二相ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼材であって、前記二相ステンレス鋼材の成分組成は、C:0.10%質量以下、Si:0.1〜2.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下、Al:0.001〜0.05質量%、Ni:1.0〜10.0質量%、Cr:22.0〜28.0質量%、Mo:2.0〜6.0質量%、N:0.2〜0.5質量%、Ta:0.01〜0.50質量%、O:0.030質量%以下、REM:0.0005〜0.07質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】二相ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼材であって、前記二相ステンレス鋼材の成分組成は、C:0.10%質量以下、Si:0.1〜2.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下、Al:0.001〜0.05質量%、Ni:1.0〜10.0質量%、Cr:22.0〜28.0質量%、Mo:2.0〜6.0質量%、N:0.2〜0.5質量%、Ta:0.01〜0.50質量%、O:0.030質量%以下、REM:0.0005〜0.07質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、塩化物、硫化水素(H2S)、炭酸ガス(CO2)などの腐食性物質を含有する環境(以下、腐食環境と称することがある)において使用される二相ステンレス鋼材および二相ステンレス鋼管に関するものである。
ステンレス鋼材は、腐食環境において不働態皮膜と呼ばれるCrの酸化物を主体とする安定な表面皮膜を自然に形成して、耐食性を発現する材料である。特に、フェライト相とオーステナイト相からなる二相ステンレス鋼材は、強度特性がオーステナイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼に対して優れ、耐孔食性と耐応力腐食割れ性が良好である。このような特徴のため、二相ステンレス鋼材は、アンビリカル、海水淡水化プラント、LNG気化器などの海水環境の構造材料をはじめとして、油井管や各種化学プラントなどの腐食性が厳しい環境の構造材料として使用されている。
しかしながら、使用環境に塩化物(塩化物イオン)などの腐食性物質が多量に含有される場合には、二相ステンレス鋼材中の介在物や不働態皮膜の欠陥などを起点として、二相ステンレス鋼材に局部腐食、いわゆる孔食が発生する場合がある。また、二相ステンレス鋼材の配管やフランジ等の構造的にすきまを形成する部分においては、すきま内部では塩化物イオンなどの腐食性物質が濃縮してより厳しい腐食環境となり、さらにすきま外部と内部との間で酸素濃淡電池を形成して、すきま内部の局部腐食がより促進され、いわゆるすきま腐食が発生する場合がある。さらに、孔食やすきま腐食などの局部腐食は、応力腐食割れ(SCC)の起点となる場合が多く、安全性の観点から耐食性、特に耐局部腐食性のさらなる向上が求められている。
特に、石油や天然ガスの掘削に用いられる油井管材料においては、近年、より深層の油井やガス井の開発が進められており、従来よりも高温で、かつ、硫化水素、炭酸ガス、塩化物などの腐食性物質を多量に含む環境に曝される場合が多くなっているため、従来よりもさらに優れた耐食性が要求されている。
ステンレス鋼の耐孔食性は、Cr量(質量%)を[Cr]、Mo量(質量%)を[Mo]、N量(質量%)を[N]、W量(質量%)を[W]とした際に、“[Cr]+3.3[Mo]+16[N]”で計算される孔食指数PRE(Pitting Resistance Equivalent)や、Wを含む場合は、“[Cr]+3.3([Mo]+0.5[W])+16[N]”で計算される孔食指数PREWで表される。そして、Cr、Mo、N、Wの含有量を多くすれば、優れた耐孔食性が得られることが知られている。通常の二相ステンレス鋼ではPRE(またはPREW)が35以上となるように、さらにスーパー二相ステンレス鋼では40以上になるように、Cr、Mo、N、Wの含有量が調整されている。また、Cr、Mo、Nの含有量の増加は、耐すきま腐食性の向上にも寄与することが知られている。
例えば、特許文献1には、Cr、Mo、N、Wの含有量の制御によりPREWが40以上である耐食性に優れた二相ステンレス鋼が開示されている。また、特許文献2には、Cr、Mo、W、Nの含有量の制御に加え、BやTa等の含有量を制御することによって、耐食性および熱間加工性に優れた二相ステンレス鋼が開示されている。
また、非特許文献1では、ステンレス鋼において鋼中介在物のMnSが局部腐食(孔食)の起点になっていることを実験的に示している。特許文献3では、熱間加工性に悪影響を及ぼす鋼中の硫化物系介在物を低減させるため、AODまたはVODにおいてCaOるつぼとCaO−CaF2−Al2O3系のスラグを用いることによって、S量を3ppm以下まで低減させている。
また、特許文献4には、鋳造時に鋳片の表面近傍に発生するピンホールや、これに起因して圧延時に発生する表面疵、および熱間圧延割れに起因する表面疵等を低減した高N含有ステンレス鋼およびその製造方法が開示されている。
また、特許文献5には、オーステナイト相とフェライト相の二相を持つ二相ステンレス鋼のうち、Ni、Mo等の高価な合金の含有量を抑えた省合金二相ステンレス鋼において、使用時の大きな課題の一つである溶接熱影響部の耐食性低下を抑制し、それにより溶接構造物への当該鋼適用時のネックとなり得る溶接作業性の向上を図ることが出来る省合金二相ステンレス鋼が開示されている。
二相ステンレス鋼材は、強度特性に優れる反面、圧延や引抜などの加工が通常のステンレス鋼材よりも難しい場合が多い。また近年開発が進んでいる高深度の油井など、硫化水素や炭酸ガス、塩化物イオンを含む厳しい腐食環境で二相ステンレス鋼材を適用するには、さらなる耐食性の向上が必要である。しかしながらCr、Mo、N、およびWの含有量の調整だけでは耐食性の改善が不十分な場合がある。さらに耐食性向上の目的で添加するCr、Moの増加によって、σ相析出が助長されるため、靱性や熱間加工性を劣化させる懸念がある。また介在物を起点とした局部腐食を抑制するためには鋼中のSやO量を制御する必要があるが、これらの低減には工業的な観点から限度がある。
そのため、特許文献1では、昨今求められる厳しい腐食環境においては、必ずしも十分な耐食性を確保できるとは言えない。また、特許文献2では、鋼中にBを添加しているが、Bは鋼中のNと結合してBNを生成することで、耐食性に寄与するN濃度を低下させてしまうおそれがある。また、特許文献2では、W添加量が5〜10質量%と高く、コスト上昇を招いて経済的に不利である。また、特許文献3では、Sを3ppm以下とするのは工業的に負荷が大きく、コスト高になる。
また、特許文献4では、Ta等を添加して、ピンホール生成を抑制し、製造性を向上させる技術が開示されている。しかしながら、実施例等に開示された組成では、CrやMoの含有量が少なかったり、窒化物を形成してNを低減させるZrが添加されてあったりするため、昨今の厳しい腐食環境で使用するには耐食性が不十分であると考えられる。
また、特許文献5には、鋼の熱間加工性を改善する目的でREMを添加することが開示されている。しかしながら、Mnの含有量が高く、Moの含有量が比較的少ない組成であるため、厳しい腐食環境で使用するには耐食性が不十分であると考えられる。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その課題は、塩化物、硫化水素、炭酸ガスなどの腐食性物質を含有する環境において、優れた耐食性を発現すると共に、熱間加工性にも優れた二相ステンレス鋼材および二相ステンレス鋼管を提供することにある。
ステンレス鋼材は、鋼材表面にCrの酸化物を主体とする不働態皮膜を形成することによって耐食性を発現する材料である。二相ステンレス鋼材は一般的に、フェライト相とオーステナイト相から構成されているため、これら異相界面で不連続性を有している。そのため、フェライト相とオーステナイト相との界面、または鋼中に不可避的に形成される介在物(酸化物、硫化物)と母材金属との界面において、不働態皮膜の連続性が低下することによって、不働態皮膜が不安定になる傾向が強い。その結果、塩化物イオンによる不働態皮膜の破壊作用を受けやすくなり、局部腐食が発生しやすくなる。
そこで、本発明者らは、製造面や諸特性を阻害しない範囲内において、二相ステンレス鋼材の不働態皮膜の安定性および保護性を強化することに着目し、これら局部腐食の原因となる介在物について鋭意検討を進めた。
特に鋼中介在物として鋼材の特性、耐食性に悪影響を与える代表的なものとしてMnSが挙げられる。MnSは非特許文献1に記載の様に、他の酸化物系介在物と比較して水溶性が高く溶出しやすいことから、局部腐食の起点になりやすいことが知られている。しかし、Mnはオーステナイト形成元素であること、また鋼材強度を高める効果があるために一定量含有させなければならない。またSは鋼中の不純物元素として含有されるため、できるだけ含有量は低い方が好ましいが、前述の通りSの低減には工業的に限度がある。そのため本発明者らは、鋼中のMnやSを低減させることなく局部腐食の起点となる介在物(酸化物、硫化物)を無害化する方法を着想した。その結果、Taを添加し、REMを添加することによって、介在物を改質して、耐食性を向上させられることを見出した。
本発明は、前記課題を解決するために、上記のような検討を重ねることによって、完成するに至ったものである。すなわち、本発明に係る二相ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼材であって、前記二相ステンレス鋼材の成分組成は、C:0.10%質量以下、Si:0.1〜2.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下、Al:0.001〜0.05質量%、Ni:1.0〜10.0質量%、Cr:22.0〜28.0質量%、Mo:2.0〜6.0質量%、N:0.2〜0.5質量%、Ta:0.01〜0.50質量%、O:0.030質量%以下、REM:0.0005〜0.07質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴としている。
前記のように、本発明に係る二相ステンレス鋼材は、所定量のC、Si、Mn、P、S、Al、Cr、Ni、Mo、N、Ta、O、REMを含有することによって、耐食性が向上すると共に、熱間加工性の低下が抑制される。Cは、所定値以下とすることによって、不要な炭化物が形成せず、耐食性の低下を抑制する効果がある。Si、Mn、Alは、脱酸のために効果がある。P、Sは、所定値以下とすることによって、耐食性および熱間加工性の低下を抑制する効果があり、特に、Sの値を抑制することによって、耐食性、靱性を損なうMnSの形成を低減させることができる。Cr、Mo、Nは、耐孔食性の向上に効果がある。Niは、耐食性の向上とオーステナイト相安定化に効果がある。Ta、REMは、孔食の起点となる硫化物系介在物を、孔食の起点となりにくいTa含有酸硫化物系複合介在物やREM含有酸硫化物系複合介在物に改質する効果がある。
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、前記成分組成が、さらにCo:0.1〜2.0質量%、Cu:0.1〜2.0質量%、V:0.01〜0.5質量%、Ti:0.01〜0.5質量%、Nb:0.01〜0.5質量%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
前記のように、二相ステンレス鋼材は、所定量のCo、Cu、V、Ti、Nbよりなる群から選ばれる1種以上をさらに含有することによって、耐食性がさらに向上する。Co、Cuは、耐食性の向上およびオーステナイト相の安定化に効果がある。V、Ti、Nbは、耐食性の向上、強度特性や加工性の向上に効果がある。
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、前記成分組成が、さらにMg:0.0005〜0.020質量%、Ca:0.0005〜0.020質量%の1種または2種を含有することが好ましい。
前記のように、二相ステンレス鋼材は、所定量のMg、Caの1種または2種をさらに含有することによって、熱間加工性がさらに向上する。CaおよびMgは、鋼中に不純物として含まれるSやOと結合して粒界に偏析するのを抑制し、熱間加工性の向上に効果がある。
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、前記成分組成が、さらにB:0.0005〜0.01質量%を含有することが好ましい。
前記のように、二相ステンレス鋼材は、所定量のBをさらに含有することによって、熱間加工性がさらに向上する。
前記のように、二相ステンレス鋼材は、所定量のBをさらに含有することによって、熱間加工性がさらに向上する。
本発明に係る二相ステンレス鋼管は、前記の二相ステンレス鋼材からなることを特徴とする。
前記のように、二相ステンレス鋼管は、鋼菅を二相ステンレス鋼材で構成することによって、局部腐食の起点となる介在物が改質され、耐食性が向上する。
前記のように、二相ステンレス鋼管は、鋼菅を二相ステンレス鋼材で構成することによって、局部腐食の起点となる介在物が改質され、耐食性が向上する。
本発明の二相ステンレス鋼材によれば、塩化物、硫化水素、炭酸ガスなどの腐食性物質を含有する環境において、優れた耐食性を発現すると共に、熱間加工性にも優れている。また、本発明の二相ステンレス鋼管によれば、優れた耐食性を発現するので、アンビリカル、海水淡水化プラント、LNG気化器などの海水環境の構造材料をはじめとして、油井菅や各種化学プラントなどの腐食性が厳しい環境の構造材料としての使用が可能となる。
<二相ステンレス鋼材>
本発明に係る二相ステンレス鋼材の実施形態について説明する。
二相ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼材である。二相ステンレス鋼材の成分組成は、所定量のC、Si、Mn、P、S、Al、Cr、Ni、Mo、N、Ta、O、REMを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。また、二相ステンレス鋼材は、成分組成が、所定量のCo、Cu、V、Ti、Nbよりなる群から選ばれる1種以上をさらに含有することが好ましい。さらに、二相ステンレス鋼材は、成分組成が、所定量のMg、Caの1種または2種をさらに含有することが好ましい。
以下、各構成について説明する。
本発明に係る二相ステンレス鋼材の実施形態について説明する。
二相ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼材である。二相ステンレス鋼材の成分組成は、所定量のC、Si、Mn、P、S、Al、Cr、Ni、Mo、N、Ta、O、REMを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。また、二相ステンレス鋼材は、成分組成が、所定量のCo、Cu、V、Ti、Nbよりなる群から選ばれる1種以上をさらに含有することが好ましい。さらに、二相ステンレス鋼材は、成分組成が、所定量のMg、Caの1種または2種をさらに含有することが好ましい。
以下、各構成について説明する。
(鋼材組織)
本発明の二相系ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相の二相からなるものである。フェライト相とオーステナイト相からなる二相系ステンレス鋼材においては、CrやMoなどのフェライト相安定化元素はフェライト相に濃縮し、NiやNなどのオーステナイト相安定化元素はオーステナイト相に濃縮する傾向にある。このとき、フェライト相のオーステナイト相に対する面積率が30%未満または70%を超える場合には、Cr、Mo、Ni、Nなどの耐食性に寄与する元素のフェライト相とオーステナイト相における濃度差異が大きくなりすぎて、フェライト相とオーステナイト相のいずれか耐食性に劣る側が選択腐食されて耐食性が劣化する傾向が大きくなる。したがって、フェライト相とオーステナイト相との比率も最適化することが推奨され、フェライト相のオーステナイト相に対する面積率は、耐食性の観点から30〜70%が好ましい。更に好ましくは、40%以上、あるいは、60%以下が好ましい。このようなフェライト相とオーステナイト相の面積率は、フェライト相安定化元素とオーステナイト相安定化元素の含有量を調整することによって適正化することが可能である。
本発明の二相系ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相の二相からなるものである。フェライト相とオーステナイト相からなる二相系ステンレス鋼材においては、CrやMoなどのフェライト相安定化元素はフェライト相に濃縮し、NiやNなどのオーステナイト相安定化元素はオーステナイト相に濃縮する傾向にある。このとき、フェライト相のオーステナイト相に対する面積率が30%未満または70%を超える場合には、Cr、Mo、Ni、Nなどの耐食性に寄与する元素のフェライト相とオーステナイト相における濃度差異が大きくなりすぎて、フェライト相とオーステナイト相のいずれか耐食性に劣る側が選択腐食されて耐食性が劣化する傾向が大きくなる。したがって、フェライト相とオーステナイト相との比率も最適化することが推奨され、フェライト相のオーステナイト相に対する面積率は、耐食性の観点から30〜70%が好ましい。更に好ましくは、40%以上、あるいは、60%以下が好ましい。このようなフェライト相とオーステナイト相の面積率は、フェライト相安定化元素とオーステナイト相安定化元素の含有量を調整することによって適正化することが可能である。
また、本発明の二相系ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相以外にσ相やCrの炭窒化物などの異相も耐食性や機械特性などの諸特性を害さない程度に許容できる。フェライト相とオーステナイト相との面積率の合計は、鋼材の全相(全組織)に対して95%以上とすることが好ましく、97%以上とすることがさらに好ましい。
二相ステンレス鋼材の成分組成の数値範囲とその限定理由について説明する。
(C:0.10質量%以下)
Cは、鋼材中でCr等との炭化物を形成して耐食性を低下させる有害な元素である。そのため、C含有量の上限を、0.10質量%以下とする。なお、C含有量は、できる限り少ない方が良いため、好ましくは0.08質量%以下、より好ましくは0.06質量%以下とする。また、Cは鋼材中に含有されていない、すなわち、0質量%であっても良い。
(C:0.10質量%以下)
Cは、鋼材中でCr等との炭化物を形成して耐食性を低下させる有害な元素である。そのため、C含有量の上限を、0.10質量%以下とする。なお、C含有量は、できる限り少ない方が良いため、好ましくは0.08質量%以下、より好ましくは0.06質量%以下とする。また、Cは鋼材中に含有されていない、すなわち、0質量%であっても良い。
(Si:0.1〜2.0質量%)
Siは、脱酸とフェライト相の安定化のために必要な元素である。このような効果を得るために、Si含有量の下限を、0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上とする。しかし、過剰にSiを含有させると加工性が劣化することから、Si含有量の上限を、2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下とする。
Siは、脱酸とフェライト相の安定化のために必要な元素である。このような効果を得るために、Si含有量の下限を、0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上とする。しかし、過剰にSiを含有させると加工性が劣化することから、Si含有量の上限を、2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下とする。
(Mn:0.1〜2.0質量%)
Mnは、Siと同様に脱酸効果があり、さらに強度確保のために必要な元素である。このような効果を得るために、Mn含有量の下限を、0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上とする。しかし、過剰にMnを含有させると粗大なMnSを形成して耐食性が劣化することから、Mn含有量の上限を、2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下とする。
Mnは、Siと同様に脱酸効果があり、さらに強度確保のために必要な元素である。このような効果を得るために、Mn含有量の下限を、0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上とする。しかし、過剰にMnを含有させると粗大なMnSを形成して耐食性が劣化することから、Mn含有量の上限を、2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下とする。
(P:0.05質量%以下)
Pは、不純物として不可避的に混入し、耐食性に有害な元素であり、溶接性や加工性も劣化させる元素である。そのために、P含有量の上限を、0.05質量%以下とする。なお、P含有量は、できる限り少ない方が良く、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下である。なお、Pは、鋼材中に含有されていない、すなわち、0質量%であっても良いが、P含有量の過度の低減は、製造コストの上昇をもたらすので、P含有量の実操業上の下限は、0.01質量%程度である。
Pは、不純物として不可避的に混入し、耐食性に有害な元素であり、溶接性や加工性も劣化させる元素である。そのために、P含有量の上限を、0.05質量%以下とする。なお、P含有量は、できる限り少ない方が良く、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下である。なお、Pは、鋼材中に含有されていない、すなわち、0質量%であっても良いが、P含有量の過度の低減は、製造コストの上昇をもたらすので、P含有量の実操業上の下限は、0.01質量%程度である。
(S:0.01質量%以下)
Sは、Pと同様に不純物として不可避的に混入し、Mn等と結合して硫化物系介在物(MnS)を形成して、耐食性や熱間加工性を劣化させる元素である。そして、Sを過剰に含有させると、酸硫化物系複合介在物へのTa添加による改質が不十分となり、耐食性が低下する。更に、熱間加工性が低化する。そのために、S含有量の上限を、0.01質量%以下、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.003質量%以下とする。なお、Sは、背景技術に記載のように、その含有量が低ければ低いほど好ましく、鋼材中に含有されていない、すなわち、0質量%であって良いが、S含有量の過度の低減は、製造コストの上昇をもたらすので、S含有量に応じた適切なTa含有量の制御を行えば、S含有量は、0.0004質量%を超えて含有されていても問題は無い。
Sは、Pと同様に不純物として不可避的に混入し、Mn等と結合して硫化物系介在物(MnS)を形成して、耐食性や熱間加工性を劣化させる元素である。そして、Sを過剰に含有させると、酸硫化物系複合介在物へのTa添加による改質が不十分となり、耐食性が低下する。更に、熱間加工性が低化する。そのために、S含有量の上限を、0.01質量%以下、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.003質量%以下とする。なお、Sは、背景技術に記載のように、その含有量が低ければ低いほど好ましく、鋼材中に含有されていない、すなわち、0質量%であって良いが、S含有量の過度の低減は、製造コストの上昇をもたらすので、S含有量に応じた適切なTa含有量の制御を行えば、S含有量は、0.0004質量%を超えて含有されていても問題は無い。
(Al:0.001〜0.05質量%)
Alは、脱酸元素であり、溶製時のO量およびS量の低減に必要な元素である。また、このような効果を得るために、Al含有量の下限を、0.001質量%以上、好ましくは0.003質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上とする。しかし、過剰にAlを含有させると粗大な酸化物系介在物を生成させて、耐孔食性に悪影響を及ぼすことから、Al含有量の上限を0.05質量%以下、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下とする。
Alは、脱酸元素であり、溶製時のO量およびS量の低減に必要な元素である。また、このような効果を得るために、Al含有量の下限を、0.001質量%以上、好ましくは0.003質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上とする。しかし、過剰にAlを含有させると粗大な酸化物系介在物を生成させて、耐孔食性に悪影響を及ぼすことから、Al含有量の上限を0.05質量%以下、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下とする。
(Ni:1.0〜10.0質量%)
Niは、耐食性向上に必要な元素であり、特に、塩化物環境における局部腐食抑制に効果が大きい。また、Niは、低温靱性を向上させるのにも有効であり、さらにオーステナイト相を安定化させるためにも必要な元素である。こうした効果を得るためには、Ni含有量の下限を、1.0質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上とする。しかし、過剰にNiを含有させると、オーステナイト相が多くなりすぎて、強度が低下することから、Ni含有量の上限を、10.0質量%以下、好ましくは9.5質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下とする。
Niは、耐食性向上に必要な元素であり、特に、塩化物環境における局部腐食抑制に効果が大きい。また、Niは、低温靱性を向上させるのにも有効であり、さらにオーステナイト相を安定化させるためにも必要な元素である。こうした効果を得るためには、Ni含有量の下限を、1.0質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上とする。しかし、過剰にNiを含有させると、オーステナイト相が多くなりすぎて、強度が低下することから、Ni含有量の上限を、10.0質量%以下、好ましくは9.5質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下とする。
(Cr:22.0〜28.0質量%)
Crは、不働態皮膜の主要成分であり、ステンレス鋼材の耐食性発現の基本元素である。また、Crは、フェライト相を安定化させる元素である。そのため、フェライトとオーステナイトの二相組織を維持して、耐食性、強度を両立させるためには、Cr含有量の下限を、22.0質量%以上、好ましくは23.0質量%以上、より好ましくは24.0質量%以上とする。Cr含有量が下限未満であると耐食性が低下する。しかし、過剰にCrを含有させると、熱間加工性を劣化させることから、Cr含有量の上限を、28.0質量%以下、好ましくは27.5質量%以下、より好ましくは27.0質量%以下とする。
Crは、不働態皮膜の主要成分であり、ステンレス鋼材の耐食性発現の基本元素である。また、Crは、フェライト相を安定化させる元素である。そのため、フェライトとオーステナイトの二相組織を維持して、耐食性、強度を両立させるためには、Cr含有量の下限を、22.0質量%以上、好ましくは23.0質量%以上、より好ましくは24.0質量%以上とする。Cr含有量が下限未満であると耐食性が低下する。しかし、過剰にCrを含有させると、熱間加工性を劣化させることから、Cr含有量の上限を、28.0質量%以下、好ましくは27.5質量%以下、より好ましくは27.0質量%以下とする。
(Mo:2.0〜6.0質量%)
Moは、溶解時にモリブデン酸を生成して、インヒビター作用により耐局部腐食性を向上させる効果を発揮し、耐食性を向上させる元素である。また、Moは、フェライト相を安定化させる元素であり、鋼材の耐孔食性・耐割れ性を改善させる効果がある。このような効果を得るためには、Mo含有量の下限を、2.0質量%以上、好ましくは2.2質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上とする。しかし、過剰にMoを含有させると、σ相等の金属間化合物の生成を助長し、耐食性および熱間加工性が低下することから、Mo含有量の上限を、6.0質量%以下、好ましくは5.5質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下とする。
Moは、溶解時にモリブデン酸を生成して、インヒビター作用により耐局部腐食性を向上させる効果を発揮し、耐食性を向上させる元素である。また、Moは、フェライト相を安定化させる元素であり、鋼材の耐孔食性・耐割れ性を改善させる効果がある。このような効果を得るためには、Mo含有量の下限を、2.0質量%以上、好ましくは2.2質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上とする。しかし、過剰にMoを含有させると、σ相等の金属間化合物の生成を助長し、耐食性および熱間加工性が低下することから、Mo含有量の上限を、6.0質量%以下、好ましくは5.5質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下とする。
(N:0.2〜0.5質量%)
Nは、強力なオーステナイト相を安定化させる元素であり、σ相の生成感受性を増加させずに耐食性を向上させる効果がある。さらに、Nは、鋼の高強度化にも有効な元素であるため、本発明では積極的に活用する。このような効果を得るためには、N含有量の下限を、0.2質量%以上、好ましくは0.22質量%以上、より好ましくは0.25質量%以上とする。しかし、過剰にNを含有させると、窒化物が形成され、靭性や耐食性が低下する。また、熱間加工性を劣化させ、鍛造・圧延時に耳割れや表面欠陥を生じさせる。そのため、N含有量の上限を、0.5質量%以下、好ましくは0.45質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下とする。
Nは、強力なオーステナイト相を安定化させる元素であり、σ相の生成感受性を増加させずに耐食性を向上させる効果がある。さらに、Nは、鋼の高強度化にも有効な元素であるため、本発明では積極的に活用する。このような効果を得るためには、N含有量の下限を、0.2質量%以上、好ましくは0.22質量%以上、より好ましくは0.25質量%以上とする。しかし、過剰にNを含有させると、窒化物が形成され、靭性や耐食性が低下する。また、熱間加工性を劣化させ、鍛造・圧延時に耳割れや表面欠陥を生じさせる。そのため、N含有量の上限を、0.5質量%以下、好ましくは0.45質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下とする。
(Ta:0.01〜0.50質量%)
Taは、耐食性に悪影響を及ぼす硫化物系介在物(MnS)をTaを含有する酸硫化物系複合介在物に改質することで、耐食性を向上させる元素である。また、Taは、Oと結合することで、Cr系酸化物の生成を抑制する元素であり、鋼材の実質的なCr濃度向上に寄与する効果がある。このような効果を得るためには、Ta含有量の下限を、0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上とする。しかし、過剰にTaを含有させると、鋼中のNと結合することで窒化物として析出してしまい、靱性、熱間加工性およびNの有効濃度を低減させてしまう。そのため、耐食性が低下する。また、Taで改質された酸硫化物系複合介在物が多数析出してしまい、熱間加工性を低下させる。そのため、Ta含有量の上限を、0.50質量%以下、好ましくは0.40質量%以下、より好ましくは0.30質量%以下とする。
Taは、耐食性に悪影響を及ぼす硫化物系介在物(MnS)をTaを含有する酸硫化物系複合介在物に改質することで、耐食性を向上させる元素である。また、Taは、Oと結合することで、Cr系酸化物の生成を抑制する元素であり、鋼材の実質的なCr濃度向上に寄与する効果がある。このような効果を得るためには、Ta含有量の下限を、0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上とする。しかし、過剰にTaを含有させると、鋼中のNと結合することで窒化物として析出してしまい、靱性、熱間加工性およびNの有効濃度を低減させてしまう。そのため、耐食性が低下する。また、Taで改質された酸硫化物系複合介在物が多数析出してしまい、熱間加工性を低下させる。そのため、Ta含有量の上限を、0.50質量%以下、好ましくは0.40質量%以下、より好ましくは0.30質量%以下とする。
(O:0.030質量%以下)
Oは、溶製時に混入する不純物であり、SiやAl等の脱酸元素と結合することで鋼中に酸化物として析出し、二相ステンレス鋼の加工性および耐食性を低下させる元素である。そして、Oを過剰に含有させると、酸硫化物系複合介在物のTaによる改質が不十分となると共に、酸硫化物系複合介在物が多数析出するため、耐食性および熱間加工性が低下する。そのため、O含有量の上限を、0.030質量%以下、好ましくは0.028質量%以下、より好ましくは0.024質量%以下とする。なお、O含有量は、低ければ低いほど好ましいが、過剰にOを低減するのはコストアップに繋がるため、その下限は、おおよそ0.0005質量%程度である。
Oは、溶製時に混入する不純物であり、SiやAl等の脱酸元素と結合することで鋼中に酸化物として析出し、二相ステンレス鋼の加工性および耐食性を低下させる元素である。そして、Oを過剰に含有させると、酸硫化物系複合介在物のTaによる改質が不十分となると共に、酸硫化物系複合介在物が多数析出するため、耐食性および熱間加工性が低下する。そのため、O含有量の上限を、0.030質量%以下、好ましくは0.028質量%以下、より好ましくは0.024質量%以下とする。なお、O含有量は、低ければ低いほど好ましいが、過剰にOを低減するのはコストアップに繋がるため、その下限は、おおよそ0.0005質量%程度である。
(REM:0.0005〜0.07質量%)
REMは、本発明を特徴づける元素である。本発明において、REMとは、ランタノイド元素(LaからLuまでの15元素)およびSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味である。これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、より好ましくはLaおよび/またはCeを含有するのがよい。
上記の通り、耐食性を改善するためには、非特許文献1で示されているように、鋼中介在物で局部腐食(孔食)の起点になるようなMnSを抑制することが重要である。REMは、耐食性に悪影響を及ぼす硫化物系介在物(MnS)をREMを含有する酸硫化物系複合介在物に改質することで、耐食性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、REM含有量の下限を、0.0005質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上とする。しかし、過剰にREMを含有させると粒界にREMが偏析して熱間加工性が乏しくなることから、REM含有量の上限を0.07質量%以下、好ましくは0.06質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下とする。
REMは、本発明を特徴づける元素である。本発明において、REMとは、ランタノイド元素(LaからLuまでの15元素)およびSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味である。これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、より好ましくはLaおよび/またはCeを含有するのがよい。
上記の通り、耐食性を改善するためには、非特許文献1で示されているように、鋼中介在物で局部腐食(孔食)の起点になるようなMnSを抑制することが重要である。REMは、耐食性に悪影響を及ぼす硫化物系介在物(MnS)をREMを含有する酸硫化物系複合介在物に改質することで、耐食性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、REM含有量の下限を、0.0005質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上とする。しかし、過剰にREMを含有させると粒界にREMが偏析して熱間加工性が乏しくなることから、REM含有量の上限を0.07質量%以下、好ましくは0.06質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下とする。
(Co:0.1〜2.0質量%、Cu:0.1〜2.0質量%、V:0.01〜0.5質量%、Ti:0.01〜0.5質量%、Nb:0.01〜0.5質量%よりなる群から選ばれる1種以上)
CoおよびCuは、耐食性の向上およびオーステナイト相を安定化させる元素である。このような効果を得るために、Co、Cuを含有させるときは、Co含有量およびCu含有量の下限を、それぞれ0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上とする。しかし、これらの元素を過剰に含有させると、熱間加工性を劣化させることから、Cu含有量およびCo含有量の上限を、それぞれ2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下とする。
CoおよびCuは、耐食性の向上およびオーステナイト相を安定化させる元素である。このような効果を得るために、Co、Cuを含有させるときは、Co含有量およびCu含有量の下限を、それぞれ0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上とする。しかし、これらの元素を過剰に含有させると、熱間加工性を劣化させることから、Cu含有量およびCo含有量の上限を、それぞれ2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下とする。
V、Ti、Nbは、耐食性を向上させ、強度特性や熱間加工性を向上させる元素である。このような効果を得るため、V、Ti、Nbを含有させるときは、V含有量、Ti含有量、Nb含有量の下限を、それぞれ0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上とする。しかし、これら元素を過剰に含有させると、粗大な炭化物や窒化物を形成し靱性を劣化させる。そのため、V含有量、Ti含有量、Nb含有量の上限を、それぞれ0.5質量%以下、好ましくは0.4質量%以下とする。また、Co、Cu、V、Ti、Nbの含有量の合計は、耐食性および熱間加工性を考慮して、0.02〜1.00質量%が好ましい。
(Mg:0.0005〜0.020質量%、Ca:0.0005〜0.020質量%の1種または2種)
MgおよびCaは、鋼中に不純物として含まれるSと結合して局部腐食の起点となりやすいMnSの形成を抑制して、耐局部腐食性を向上させる元素である。また、MgおよびCaは、鋼中のSやOと結合して、これらの介在物が粒界に偏析するのを抑制して熱間加工性を向上させる元素である。このような効果を得るために、Mg、Caを含有させるときは、Mg含有量、Ca含有量の下限を、0.0005質量%以上、好ましくは0.0010質量%以上とする。しかし、これらの元素を過剰に含有させると、酸化物系介在物の増加を招き、耐食性、加工性が劣化する。そのため、Mg含有量、Ca含有量の上限を、0.020質量%以下、好ましくは0.010質量%以下とする。また、MgおよびCaの含有量の合計は、耐食性および熱間加工性を考慮して、0.001〜0.020質量%が好ましい。
MgおよびCaは、鋼中に不純物として含まれるSと結合して局部腐食の起点となりやすいMnSの形成を抑制して、耐局部腐食性を向上させる元素である。また、MgおよびCaは、鋼中のSやOと結合して、これらの介在物が粒界に偏析するのを抑制して熱間加工性を向上させる元素である。このような効果を得るために、Mg、Caを含有させるときは、Mg含有量、Ca含有量の下限を、0.0005質量%以上、好ましくは0.0010質量%以上とする。しかし、これらの元素を過剰に含有させると、酸化物系介在物の増加を招き、耐食性、加工性が劣化する。そのため、Mg含有量、Ca含有量の上限を、0.020質量%以下、好ましくは0.010質量%以下とする。また、MgおよびCaの含有量の合計は、耐食性および熱間加工性を考慮して、0.001〜0.020質量%が好ましい。
(B:0.0005〜0.01質量%)
Bは、熱間加工性の向上に効果がある。このような効果を得るために、Bを含有させるときは、B含有量の下限を0.0005質量%以上、好ましくは0.0010質量%以上とする。しかし、これらの元素を過剰に含有させると、熱間加工時の割れを発生させたり、鋼中のNと結合してBNを生成することで、耐食性に寄与するN濃度を低下させ、耐食性が低下してしまうおそれがある。そのため、B含有量の上限を、0.01質量%以下、好ましくは0.005質量%以下、更に好ましくは0.002質量%以下とする。
Bは、熱間加工性の向上に効果がある。このような効果を得るために、Bを含有させるときは、B含有量の下限を0.0005質量%以上、好ましくは0.0010質量%以上とする。しかし、これらの元素を過剰に含有させると、熱間加工時の割れを発生させたり、鋼中のNと結合してBNを生成することで、耐食性に寄与するN濃度を低下させ、耐食性が低下してしまうおそれがある。そのため、B含有量の上限を、0.01質量%以下、好ましくは0.005質量%以下、更に好ましくは0.002質量%以下とする。
(Feおよび不可避的不純物)
二相ステンレス鋼材を構成する成分組成の基本成分は前記のとおりであり、残部成分はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物は、溶製時に不可避的に混入する不純物であり、鋼材の諸特性を害さない範囲で含有される。また、鋼材の成分組成は、本発明の鋼材の効果に悪影響を与えない範囲で、前記成分に加えて、さらに他の元素を含有させても良い。但し、Zrは、不可避的不純物としての許容量を超えて、0.05質量%以上含有させると、鋼中のNと結合することで窒化物が析出してしまい、靱性、熱間加工性を低下させ、Nの有効濃度を低減させてしまうため、耐食性も低下させる。
二相ステンレス鋼材を構成する成分組成の基本成分は前記のとおりであり、残部成分はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物は、溶製時に不可避的に混入する不純物であり、鋼材の諸特性を害さない範囲で含有される。また、鋼材の成分組成は、本発明の鋼材の効果に悪影響を与えない範囲で、前記成分に加えて、さらに他の元素を含有させても良い。但し、Zrは、不可避的不純物としての許容量を超えて、0.05質量%以上含有させると、鋼中のNと結合することで窒化物が析出してしまい、靱性、熱間加工性を低下させ、Nの有効濃度を低減させてしまうため、耐食性も低下させる。
(PRE)
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、前記成分組成が、Cr含有量(質量%)を[Cr]、Mo含有量(質量%)を[Mo]、N含有量(質量%)を[N]とした際に、[Cr]+3.3[Mo]+16[N]≧40であることが好ましい。[Cr]+3.3[Mo]+16[N]は、鋼材の耐食性を表す指標として従来知られている孔食性指数(PRE:Pitting Resistance Equivalent)である。PRE≧40とすることによって、組織中のCr量、Mo量、N量のバランスが適切なものとなり、鋼材の耐食性および強度を向上させることができる。
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、前記成分組成が、Cr含有量(質量%)を[Cr]、Mo含有量(質量%)を[Mo]、N含有量(質量%)を[N]とした際に、[Cr]+3.3[Mo]+16[N]≧40であることが好ましい。[Cr]+3.3[Mo]+16[N]は、鋼材の耐食性を表す指標として従来知られている孔食性指数(PRE:Pitting Resistance Equivalent)である。PRE≧40とすることによって、組織中のCr量、Mo量、N量のバランスが適切なものとなり、鋼材の耐食性および強度を向上させることができる。
<二相ステンレス鋼材の製造方法>
本発明の二相系ステンレス鋼材は、通常のステンレス鋼の量産に用いられている製造設備および製造方法によって製造することができる。鋼中の不純物としてのOを低減するためには、SiやAl等のOとの親和力の大きい元素を多めに添加して脱酸を行い、さらに、真空脱ガスやアルゴンガス攪拌などの二次精錬の時間を長時間化したり、複数回行うことによって酸化物系介在物を除去することができる。
本発明の二相系ステンレス鋼材は、通常のステンレス鋼の量産に用いられている製造設備および製造方法によって製造することができる。鋼中の不純物としてのOを低減するためには、SiやAl等のOとの親和力の大きい元素を多めに添加して脱酸を行い、さらに、真空脱ガスやアルゴンガス攪拌などの二次精錬の時間を長時間化したり、複数回行うことによって酸化物系介在物を除去することができる。
ここで、耐食性に劣る硫化物系介在物(MnS)を抑制し、耐食性に優れる所望のTaを含有する酸硫化物系複合介在物の存在状態とするためには、精錬工程でTaやREMを添加すればよい。REM源およびTa源の添加タイミングは、特に制限を受けるものではないが、脱酸および脱硫処理後に添加する方が、溶鋼中へのREMおよびTaの歩留りが高く望ましい。
REM源としては、純Laや純Ce、純Yなどを添加すればよい。また、溶鋼へミッシュメタルを添加してもよい。ミッシュメタルとは、希土類元素の混合物であり、具体的には、Ceを40〜50%程度、Laを20〜40%程度含有している。但し、ミッシュメタルには不純物としてCaを含むことが多いので、ミッシュメタルがCaを含む場合は、このCa量も含めて全Ca量が本発明で規定する範囲を満足する必要がある。また、Ta源としては、金属Ta、Ta合金、Ta酸化物((Ta,Nb)2O5)、Taフッ化物(K2TaF7)、タンタル塊・粉、タンタルコンデンサ製造時の工程くずなどを用いることができるが、特に限定はしない。
鋼塊の製造は、例えば、転炉あるいは電気炉にて溶解した溶鋼に対して、AOD法やVOD法などによる精錬を行って成分調整した後、連続鋳造法や造塊法などの鋳造方法で鋼塊とする。得られた鋼塊を1000〜1200℃程度の温度域にて熱間加工を行い、次いで冷間加工を行って所望の寸法形状にすることができる。
本発明においては、機械特性に有害な析出物を低減させるため、必要に応じて固溶化熱処理を施して急冷することが好ましい。固溶化熱処理の温度は、1000〜1100℃が好ましく、保持時間は10〜30分が好ましく、急冷は10℃/秒以上の冷却速度で冷却することが好ましい。また、必要に応じてスケール除去などの表面調整のための酸洗を行うことができる。
以上の製造方法によって製造された二相ステンレス鋼材は、腐食性物質を含有する環境において、優れた耐食性を発現すると共に、熱間加工性にも優れたものである。
<二相ステンレス鋼管>
本発明に係る二相ステンレス鋼管の実施形態について説明する。二相ステンレス鋼管は、前記二相ステンレス鋼材からなるもので、通常のステンレス鋼管の量産に用いられる製造設備および製造方法によって製造することができる。例えば、丸棒を素材とした押出製管やマンネスマン製管、板材を素材として成形後に継ぎ目を溶接する溶接製管などによって、所望の寸法にすることができる。また、二相ステンレス鋼管の寸法は、鋼管が使用される油井管、化学プラント、アンビリカルチューブ等に応じて適宜設定することができる。なお、二相ステンレス鋼管は、海水淡水化プラント、LNG気化器等にも使用することができる。
本発明に係る二相ステンレス鋼管の実施形態について説明する。二相ステンレス鋼管は、前記二相ステンレス鋼材からなるもので、通常のステンレス鋼管の量産に用いられる製造設備および製造方法によって製造することができる。例えば、丸棒を素材とした押出製管やマンネスマン製管、板材を素材として成形後に継ぎ目を溶接する溶接製管などによって、所望の寸法にすることができる。また、二相ステンレス鋼管の寸法は、鋼管が使用される油井管、化学プラント、アンビリカルチューブ等に応じて適宜設定することができる。なお、二相ステンレス鋼管は、海水淡水化プラント、LNG気化器等にも使用することができる。
以下、本発明を実施例によって、更に詳細に説明する。
(鋼材の作製)
小型溶解炉(容量53kg/1ch)によって、表1に示す成分組成の鋼を溶製し、角鋳型(本体:約120角×約350mm)を用いて鋳造した。また、各鋼について、PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]の算出結果についても表2に示す。なお、表1の成分組成欄において、空欄は該当成分が含有されていないことを示し、残部はFeおよび不可避的不純物である。凝固した鋼塊を1200℃まで加熱し、同温度で熱間鍛造(鍛造温度:1000〜1200℃)を施し、その後切断した。次に冷間圧延と1100℃で30分保持の固溶化熱処理を施し、冷速12℃/秒で水冷後に切断し、300×120×50mmの鋼材に仕上げた(鋼材No.A1〜A19、B1〜B12)。
(鋼材の作製)
小型溶解炉(容量53kg/1ch)によって、表1に示す成分組成の鋼を溶製し、角鋳型(本体:約120角×約350mm)を用いて鋳造した。また、各鋼について、PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]の算出結果についても表2に示す。なお、表1の成分組成欄において、空欄は該当成分が含有されていないことを示し、残部はFeおよび不可避的不純物である。凝固した鋼塊を1200℃まで加熱し、同温度で熱間鍛造(鍛造温度:1000〜1200℃)を施し、その後切断した。次に冷間圧延と1100℃で30分保持の固溶化熱処理を施し、冷速12℃/秒で水冷後に切断し、300×120×50mmの鋼材に仕上げた(鋼材No.A1〜A19、B1〜B12)。
(試料の採取)
次に、前記鋼材から加工方向に平行に採取した試料(20mm×30mm×2mmt)を用いて、以下に示す手順で、耐孔食性および熱間加工性を評価した。その結果を表1に示した。
次に、前記鋼材から加工方向に平行に採取した試料(20mm×30mm×2mmt)を用いて、以下に示す手順で、耐孔食性および熱間加工性を評価した。その結果を表1に示した。
また、前記試料を加工方向と垂直な断面を埋め込み、鏡面研磨し、シュウ酸水溶液中で電解エッチングを行った後、倍率100倍の光学顕微鏡観察を行い、各試料の組織を観察した。その結果、いずれの試料もフェライト相とオーステナイト相の二相からなるものであった。
(耐食性の評価)
耐食性の評価は、JIS G0577に記載の方法を参考にして評価をおこなった。試料表面をSiC#600研磨紙で湿式研磨し、超音波洗浄した後、スポット溶接で試料に導線の取り付けを行い、試料表面の試験面(10mm×10mm)の部分以外をエポキシ樹脂で被覆した。その試料を80℃に保持した20%NaCl水溶液中に10分間浸漬した。その後、20mV/minの掃引速度でアノード分極を行い、電流密度が0.1mA/cm2を超えた時点の電位を孔食電位(VC‘100 )とした。耐食性の評価は、孔食電位が500mV(vs.SCE(飽和カロメル電極))を超えるものを良好(○)、100〜500mV(vs.SCE)のものをやや不良(△)、100mV(vs.SCE)未満のものを不良(×)として評価した。その結果を表2に示した。
耐食性の評価は、JIS G0577に記載の方法を参考にして評価をおこなった。試料表面をSiC#600研磨紙で湿式研磨し、超音波洗浄した後、スポット溶接で試料に導線の取り付けを行い、試料表面の試験面(10mm×10mm)の部分以外をエポキシ樹脂で被覆した。その試料を80℃に保持した20%NaCl水溶液中に10分間浸漬した。その後、20mV/minの掃引速度でアノード分極を行い、電流密度が0.1mA/cm2を超えた時点の電位を孔食電位(VC‘100 )とした。耐食性の評価は、孔食電位が500mV(vs.SCE(飽和カロメル電極))を超えるものを良好(○)、100〜500mV(vs.SCE)のものをやや不良(△)、100mV(vs.SCE)未満のものを不良(×)として評価した。その結果を表2に示した。
(熱間加工性の評価)
前記試料の表面を目視にて観察し、表面欠陥の有無を観察した。そして、表面欠陥がないものを◎、わずかに表面欠陥があるものを○、表面欠陥が多発しているものを△、割れが発生しているものを×と評価した。その結果を表2に示した。
前記試料の表面を目視にて観察し、表面欠陥の有無を観察した。そして、表面欠陥がないものを◎、わずかに表面欠陥があるものを○、表面欠陥が多発しているものを△、割れが発生しているものを×と評価した。その結果を表2に示した。
尚、表1において、本発明の成分組成の要件を満足しない数値には下線を引いて示した。表2には、耐孔食性と熱間加工性の評価結果から、総合評価を示した。耐孔食性と熱間加工性のいずれも良好な性能であるものを○とし、いずれかの性能に劣るものを×として示した。
表の結果から、本発明の要件を満たす実施例(鋼材No.A1〜A19)については、いずれも優れた耐孔食性および熱間加工性を有していることが分かる。それに対して、本発明の要件を満たさない比較例(鋼材No.B1〜B12)については、以下の不具合を有している。
比較例(鋼材No.B1)は、Taの含有量が本発明の要件の上限を超えるため、耐食性と熱間加工性が劣っていた。比較例(鋼材No.B2)は、Taの含有量が本発明の要件の下限未満であるため、耐食性が劣っていた。比較例(鋼材No.B3)は、Oの含有量が本発明の要件の上限を超えるため、耐食性と熱間加工性が劣っていた。比較例(鋼材No.B4)は、Crの含有量が本発明の要件の下限未満であるため、耐食性が劣っていた。比較例(鋼材No.B5)は、Mnの含有量が本発明の要件の上限を超えるため、耐食性が劣っていた。比較例(鋼材No.B6)は、Sの含有量が本発明の要件の上限を超えるため、耐食性と熱間加工性が劣っていた。比較例(鋼材No.B7)は、Niの含有量が本発明の要件の下限未満であるため、耐食性が劣っていた。比較例(鋼材No.B8)は、REMの含有量が本発明の要件の上限を超えるため、熱間加工性が劣っていた。比較例(鋼材No.B9〜B12)は、いずれもREMを添加していない鋼材であるが、耐食性がやや劣っていた。
A1とB10、A2とB11、A3とB12は、それぞれREM以外の成分が近く、REM添加による耐食性改善効果を比較検討したものである。その結果、いずれの組み合わせにおいても、REMを添加していないB10、B11、B12は耐食性がやや劣り、REMを添加したA1、A2、A3は耐食性が改善する結果が得られた。これらの結果より、REM添加によって、耐食性の改善効果があることが分かった。
以上のように、本発明の二相ステンレス鋼材および二相ステンレス鋼管について説明したが、本発明は実施形態および実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含されるものである。
Claims (5)
- フェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼材であって、前記二相ステンレス鋼材の成分組成は、
C:0.10%質量以下、
Si:0.1〜2.0質量%、
Mn:0.1〜2.0質量%、
P:0.05質量%以下、
S:0.01質量%以下、
Al:0.001〜0.05質量%、
Ni:1.0〜10.0質量%、
Cr:22.0〜28.0質量%、
Mo:2.0〜6.0質量%、
N:0.2〜0.5質量%、
Ta:0.01〜0.50質量%、
O:0.030質量%以下、
REM:0.0005〜0.07質量%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする二相ステンレス鋼材。 - 前記成分組成が、さらに
Co:0.1〜2.0質量%、
Cu:0.1〜2.0質量%、
V:0.01〜0.5質量%、
Ti:0.01〜0.5質量%、
Nb:0.01〜0.5質量%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の二相ステンレス鋼材。 - 前記成分組成が、さらに
Mg:0.0005〜0.020質量%、
Ca:0.0005〜0.020質量%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二相ステンレス鋼材。 - 前期成分組成が、さらに
B:0.0005〜0.01質量%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の二相ステンレス鋼材。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の二相ステンレス鋼材からなることを特徴とする二相ステンレス鋼管。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110079744A (zh) * | 2019-05-14 | 2019-08-02 | 东南大学 | 一种含重稀土双相不锈钢及其制备方法 |
JP7364955B1 (ja) | 2022-07-04 | 2023-10-19 | 日本製鉄株式会社 | 二相ステンレス鋼材 |
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2014
- 2014-10-29 JP JP2014220262A patent/JP2016084522A/ja active Pending
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