JP6247196B2 - 二相ステンレス鋼材および二相ステンレス鋼管 - Google Patents

二相ステンレス鋼材および二相ステンレス鋼管 Download PDF

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Description

本発明は、塩化物、硫化水素(HS)、炭酸ガス(CO)などの腐食性物質を含有する環境(以下、腐食環境と称することがある)において使用される二相ステンレス鋼材および二相ステンレス鋼管に関するものである。
ステンレス鋼材は、腐食環境において不働態皮膜と呼ばれるCrの酸化物を主体とする安定な表面皮膜を自然に形成し、耐食性を発現する材料である。特に、フェライト相とオーステナイト相からなる二相ステンレス鋼材は、強度特性がオーステナイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼に対して優れ、耐孔食性と耐応力腐食割れ性が良好である。このような特徴のため、二相ステンレス鋼材は、アンビリカル、海水淡水化プラント、LNG気化器などの海水環境の構造材料をはじめとして、油井管や各種化学プラントなどの腐食性が厳しい環境の構造材料として使用されている。
しかしながら、使用環境に塩化物(塩化物イオン)などの腐食性物質が多量に含有される場合には、二相ステンレス鋼材中の介在物や不働態皮膜の欠陥などを起点として、二相ステンレス鋼材に局部腐食、いわゆる孔食が発生する場合がある。また、二相ステンレス鋼材の配管やフランジ等の構造的にすきまを形成する部分においては、すきま内部では塩化物イオンなどの腐食性物質が濃縮してより厳しい腐食環境となり、さらにすきま外部と内部との間で酸素濃淡電池を形成して、すきま内部の局部腐食がより促進され、いわゆるすきま腐食が発生する場合がある。さらに、孔食やすきま腐食などの局部腐食は、応力腐食割れ(SCC)の起点となる場合が多く、安全性の観点から耐食性、特に耐局部腐食特性のさらなる向上が求められている。
配管用途で二相ステンレス鋼材の配管を用いる場合、当該配管は、フランジによる接合だけではなく、溶接による接合もなされる。しかしながら、当該配管を用いて溶接による接合を行うと、非特許文献1に記載されているように、溶接部やその近傍の溶接熱影響部で孔食、すきま腐食、粒界腐食などの局部腐食や応力腐食割れ(SCC)が問題となる。
ステンレス鋼の耐孔食性は、Cr量(質量%)を[Cr]、Mo量(質量%)を[Mo]、W量(質量%)を[W]、N量(質量%)を[N]とした際、“[Cr]+3.3[Mo]+16[N]”で計算される孔食指数PRE(Pitting Resistance Equivalent)や、Wを含む場合は“[Cr]+3.3([Mo]+0.5[W])+16[N]”で計算されるPREWで表され、Cr、Mo、Nの含有量を多くすれば優れた耐孔食性が得られることが知られている。スタンダード二相ステンレス鋼ではPRE(またはPREW)を30以上となるように、さらにスーパー二相ステンレス鋼では40以上になるようにCr、Mo、N(またはW)の含有量が調整されている。また、Cr、Mo、Nの含有量の増加は、耐すきま腐食性の向上にも寄与することが知られている。
例えば、特許文献1には、Cr、Mo、N、Wの含有量の制御によりPREW値が40以上である耐食性に優れる二相ステンレス鋼が開示されている。また、特許文献2にはCr、Mo、W、Nの含有量の制御に加え、BやTa等の含有量を制御することによって、耐食性および熱間加工性に優れる二相ステンレス鋼が開示されている。
また、非特許文献2では、ステンレス鋼において鋼中介在物のMnSが局部腐食(孔食)の起点になっていることを実験的に示している。また、特許文献3では、熱間加工性や耐食性に悪影響を及ぼす鋼中の硫化物系介在物を低減するため、真空溶解炉でCaOるつぼとCaO−CaF−Al系のスラグを用いて、S量を3ppm以下まで低減させている。
また、特許文献4には、孔食の起点となる酸化物系介在物を制御する技術として、酸化物系介在物でのCaとMgとの合計含有量、S含有量を制御し、さらに介在物形態や密度を調整した二相ステンレス鋼が開示されている。そして、特許文献4には、不溶性のAl酸化物でもCa、Mg、Sを一定量以上含むものは局部腐食起点になるため、還元処理時のスラグ塩基度、取鍋でのキリング温度と時間、鋳造後の総加工比を最適に組み合わせることで上記介在物の大きさと個数を制御し、局部腐食の発生を抑制した二相ステンレス鋼が開示されている。
特開平5−132741号公報 特開平8−170153号公報 特開平3−291358号公報 国際公開第2005/014872号パンフレット
西本ら、溶接学会誌、Vol.68,No.3(1999),144− 武藤泉ら、ふぇらむVol.17(2012),No.12,858−
二相ステンレス鋼は強度特性に優れる反面、圧延や引抜などの加工が通常のステンレス鋼よりも難しい場合が多い。また近年開発が進んでいる高深度の油井など、硫化水素や炭酸ガス、塩化物イオンを多量に含む厳しい腐食環境で二相ステンレス鋼を適用するには、耐食性の向上が必要である。しかしながらCr、Mo、N、およびWの含有量の調整だけでは耐食性の改善が不十分な場合がある。さらに、耐食性を向上させる目的で添加するCr、Moの増加によりσ相(Fe−Cr化合物)の析出が助長されるため、特に溶接部や熱影響部においては所望の耐食性が得られないばかりか、靱性や加工性までをも劣化させる懸念がある。また、介在物を起点とした局部腐食を抑制するためには鋼中のSやO量を制御する必要があるが、これらの低減には工業的な観点から限度がある。
また、ステンレス鋼の耐食性を向上させる目的でCr、Moを添加すると、溶接の熱の影響を受けた部分(溶接熱影響部)において冷却時に生成するσ相によって、σ相近傍のCr濃度の低下が生じることがある。このようになると、母材と溶接熱影響部の硬度に差がついてしまい、かえって応力腐食割れ性が低下してしまうおそれがある。さらにσ相の生成は、耐衝撃性も低下させてしまうため、耐食性が求められる部材であったとしても、単純にCrやMoの添加量を増やす方法を採用するのは必ずしも得策とは言いがたい。
そして、特許文献1では、昨今求められる厳しい腐食環境においては、必ずしも十分な耐食性を確保できるとは言えない。また、特許文献2では、鋼中にBを添加しているが、Bは鋼中のNと結合してBNを生成することで、耐食性に寄与するN濃度を低下させてしまうおそれがある。さらに、特許文献2では、W添加量が5〜10質量%と高くコスト上昇を招いて経済的に不利である。
特許文献3では、Sを3ppm以下とするのは工業的に負荷が大きくコスト高になることや、臨界孔食発生温度が35℃以上のものを耐食性に優れると評価しており、昨今の厳しい腐食環境で使用するには不十分と考えられる。
特許文献4では、CaやMgを添加して介在物を制御しても、これらが凝集することで局部腐食や割れ起点になることが懸念されること、また特許文献4に記載の発明は基本的に従来の孔食起点となる介在物を低減させる方向であり、その形成源であるOやSを過剰に低減するのは工業的に負荷が大きくコスト高になる。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その課題は、塩化物、硫化水素、炭酸ガスなどの腐食性物質を含有する環境において、優れた耐食性を発現すると共に、熱間加工性にも優れ、且つ溶接部の応力腐食割れ性にも優れた二相ステンレス鋼材および二相ステンレス鋼管を提供することにある。
前記のようにステンレス鋼材は、鋼材表面にCrの酸化物を主体とする不働態皮膜により耐食性を発現する材料である。二相ステンレス鋼材は一般的にフェライト相とオーステナイト相から構成されているため、これら異相界面で不連続性を有しており、フェライト相とオーステナイト相との界面、また鋼中に不可避的に形成される介在物(酸化物、硫化物)と母材金属との界面においては不働態皮膜の連続性が低下することで不安定になる傾向が強いため、塩化物イオンの不働態皮膜破壊作用を受けやすく、局部腐食が発生しやすくなる。本発明者らは、これら局部腐食の原因となる介在物について鋭意検討を行った。
特に鋼中介在物として鋼材の特性、耐食性に悪影響を与える代表的なものとしてMnSが挙げられるが、MnSは非特許文献2に記載の様に他の酸化物系介在物と比較して水溶性が高く溶出しやすいことから局部腐食の起点になりやすいことが知られている。しかしMnはオーステナイト形成元素であること、また鋼材強度を高める効果があるために一定量含有させなければならない。またSは鋼中の不純物元素として含有されるため出来るだけ含有量は低い方が好ましいが、前述の通りその低減には工業的に限度がある。さらに溶接部や熱影響部などの耐食性が劣化しやすい部分においては、単純なCr、Mo量の増加は悪影響を及ぼすおそれがある。
そのため本発明者らは鋼中のMnやSを低減することなく局部腐食の起点となる介在物(酸化物、硫化物)を無害化することを着想した。その結果、Taの添加、および鋼中のO量を適切に制御し、さらに適切な製造条件(加熱温度、冷却速度、圧延条件など)を取ることにより、CrやMoを増やしてσ相の析出を促進せず介在物を改質することで耐食性を向上させられることを見出した。
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼材であって、前記二相ステンレス鋼材の成分組成は、C:0.10%質量以下、Si:0.1〜3.0質量%、Mn:0.1〜4.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下、Al:0.001〜0.050質量%、Cr:20.0〜2.0質量%、Ni:1.0〜10.0質量%、Mo:2.0〜5.0質量%、N:0.10〜0.19質量%、Ta:0.01〜0.50質量%、O:0.030質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、前記二相ステンレス鋼材の介在物のうち、長径が1μm以上であるTaを含有する硫・酸化物系複合介在物が、加工方向に垂直な断面1mmあたり500個以下であり、前記硫・酸化物系複合介在物のTa含有量が5原子%以上であることを特徴とする。
前記のように、二相ステンレス鋼材は、所定量のC、Si、Mn、P、S、Al、Cr、Ni、Mo、N、Ta、Oを含有することによって、耐食性が向上すると共に、熱間加工性の低下が抑制される。Cは、所定値以下とすることによって、不要な炭化物が形成せず、耐食性の低下を抑制する効果がある。Si、Mn、Alは、脱酸のために効果がある。P、Sは、所定値以下とすることによって、耐食性および熱間加工性の低下を抑制する効果がある。特に、Sは、耐食性、靱性を損なうMnSを形成する原因となる。Cr、Mo、Nは、耐孔食性の向上に効果がある。Niは、耐食性の向上とオーステナイト相安定化に効果がある。Taは、孔食の起点となる硫化物系介在物をTa含有硫・酸化物系複合介在物に改質する効果がある。また、上記したCなどの他の元素の成分量をベースに、N含有量を制御することにより、強度の確保と溶接部の耐応力腐食割れ性の向上に寄与する。そして、そのTaを含有する硫・酸化物系複合介在物の長径、個数密度およびTa含有量を規定することによって、耐局部腐食性、熱間加工性が向上する。
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、前記成分組成が、さらにCu:0.1〜2.0質量%、Co:0.1〜2.0質量%、V:0.01〜0.5質量%、Ti:0.01〜0.5質量%、Nb:0.01〜0.5質量%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
前記のように、二相ステンレス鋼材は、所定量のCu、Co、V、Ti、Nbよりなる群から選ばれる1種以上をさらに含有することによって、耐食性がさらに向上する。Cu、Coは、耐食性の向上、およびオーステナイト相の安定化に効果がある。V、Ti、Nbは、耐食性の向上、強度特性や加工性の向上に効果がある。
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、前記成分組成が、さらにMg:0.0005〜0.020質量%、Ca:0.0005〜0.020質量%の1種または2種を含有することが好ましい。
前記のように、二相ステンレス鋼材は、所定量のMg、Caの1種または2種をさらに含有することによって、熱間加工性がさらに向上する。CaおよびMgは、鋼中に不純物として含まれるSやOと結合して粒界に偏析するのを抑制し、熱間加工性の向上に効果がある。
本発明に係る二相ステンレス鋼管は、前記の二相ステンレス鋼材からなることを特徴とする。
前記のように、二相ステンレス鋼管は、鋼菅を二相ステンレス鋼材で構成することによって、局部腐食の起点となる介在物が改質され、耐食性が向上すると共に溶接部における耐応力腐食割れ性が向上する。
本発明に係る二相ステンレス鋼材によれば、塩化物、硫化水素、炭酸ガスなどの腐食性物質を含有する環境において、優れた耐食性を発現すると共に、熱間加工性にも優れ、且つ溶接部の応力腐食割れ性にも優れる。また、本発明に係る二相ステンレス鋼管によれば、優れた耐食性を発現するので、アンビリカル、海水淡水化プラント、LNG気化器などの海水環境の構造材料をはじめとして、油井菅や各種化学プラントなどの腐食性が厳しい環境の構造材料として使用が可能となる。
<二相ステンレス鋼材>
本発明に係る二相ステンレス鋼材の実施形態について説明する。
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼材であって、二相ステンレス鋼材の成分組成が、所定量のC、Si、Mn、P、S、Al、Cr、Ni、Mo、N、Ta、Oを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
また、二相ステンレス鋼材は、成分組成が、所定量のCu、Co、V、Ti、Nbよりなる群から選ばれる1種以上をさらに含有することが好ましい。
さらに、二相スレンレス鋼材は、成分組成が、所定量のMg、Caの1種または2種をさらに含有することが好ましい。
そして、二相ステンレス鋼材は、鋼材中の介在物のうちの、所定のTa含有量および長径を有する硫・酸化物系複合介在物が、所定の個数密度であることが特徴である。
以下、各構成について説明する。
(鋼材組織)
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相の二相からなるものである。フェライト相とオーステナイト相からなる二相ステンレス鋼材においては、CrやMoなどのフェライト相安定化元素はフェライト相に濃縮し、NiやNなどのオーステナイト相安定化元素はオーステナイト相に濃縮する傾向にある。このとき、フェライト相のオーステナイト相に対する面積率が30%未満または70%を超える場合には、Cr、Mo、Ni、Nなどの耐食性に寄与する元素のフェライト相とオーステナイト相における濃度差異が大きくなりすぎて、フェライト相とオーステナイト相のいずれか耐食性に劣る側が選択腐食されて耐食性が劣化する傾向が大きくなる。したがって、フェライト相とオーステナイト相との比率も最適化することが推奨され、フェライト相のオーステナイト相に対する面積率は、耐食性の観点から30〜70%が好ましく、40〜60%がさらに好ましい。このようなフェライト相とオーステナイト相の面積率は、フェライト相安定化元素とオーステナイト相安定化元素の含有量を調整することによって適正化することが可能である。
また、本発明に係る二相ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相以外にσ相やCrの炭窒化物などの異相も耐食性や機械特性などの諸特性を害さない程度に許容できる。フェライト相とオーステナイト相との面積率の合計は、鋼材の全相(全組織)に対して95%以上とすることが好ましく、97%以上とすることがさらに好ましい。
二相ステンレス鋼材の成分組成の数値範囲とその限定理由について説明する。
(C:0.10質量%以下)
Cは、鋼材中でCr等との炭化物を形成して耐食性を低下させる有害な元素である。また、C含有量が過剰であると熱間加工性が低下する。そのために、C含有量を、0.10質量%以下とする。なお、C含有量は、できる限り少ない方が良いため、好ましくは0.08質量%以下、より好ましくは0.06質量%以下とする。また、Cは鋼材中に含有されていない、すなわち、0質量%であっても良い。
(Si:0.1〜3.0質量%)
Siは、脱酸とフェライト相の安定化のために必要な元素である。このような効果を得るために、Si含有量を、0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上とする。しかし、過剰にSiを含有させると加工性が劣化することから、Si含有量を、3.0質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下とする。
(Mn:0.1〜4.0質量%)
Mnは、Siと同様に脱酸効果があり、さらに強度確保のために必要な元素である。このような効果を得るために、Mn含有量を、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上とする。しかし、過剰にMnを含有させると粗大なMnSを形成して耐食性が劣化する。また、過剰にMnを含有させると酸化物系介在物の生成を助長し、熱間加工性を劣化させることから、Mn含有量を、4.0質量%以下、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下とする。
(P:0.05質量%以下)
Pは、不純物として不可避的に混入し、耐食性に有害な元素であり、溶接性や加工性も劣化させる元素である。そのために、P含有量を、0.05質量%以下とする。なお、P含有量は、できる限り少ない方がよく、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下とする。なお、Pは、鋼材中に含有されていない、すなわち、0質量%であっても良いが、P含有量の過度の低減は、製造コストの上昇をもたらすので、P含有量の実操業上の下限は、0.010質量%程度である。
(S:0.01質量%以下)
Sは、Pと同様に不純物として不可避的に混入し、Mn等と結合して硫化物系介在物(MnS)を形成して、耐食性や熱間加工性を劣化させる元素である。そして、Sを過剰に含有させると、硫・酸化物系複合介在物のTaによる改質が不十分となり、耐食性が低下し、熱間加工性も低下する。そのために、S含有量を、0.01質量%以下、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.003質量%以下とする。なお、Sは、背景技術に記載のように、その含有量が低ければ低いほど好ましく、鋼材中に含有されていない、すなわち、0質量%であっても良いが、S含有量の過度の低減は、製造コストの上昇をもたらすので、適切なTa含有量およびO含有量の制御を伴えば、S含有量は、0.001質量%を超えて含有されていても問題は無い。
(Al:0.001〜0.050質量%)
Alは、脱酸元素であり、溶製時の酸素量の低減に必要な元素である。このような効果を得るために、Al含有量を、0.001質量%以上とする。しかし、過剰にAlを含有させると酸化物系介在物を生成して耐孔食性に悪影響を及ぼすことから、Al含有量を0.050質量%以下、好ましくは0.020質量%以下とする。
(Cr:20.0〜25.0質量%)
Crは、不働態皮膜の主要成分であり、ステンレス鋼材の耐食性発現の基本元素である。また、Crは、フェライト相を安定化させる元素である。そのため、フェライト相とオーステナイト相の二相組織を維持して、耐食性、強度を両立させるためには、Cr含有量を、20.0質量%以上、好ましくは20.5質量%以上、より好ましくは21.0質量%以上とする。しかし、過剰にCrを含有させると、溶接部や溶接熱影響部においてσ相が生成することにより熱間加工性を劣化させること、および母材と溶接熱影響部の硬度に差がついてしまって、かえって応力腐食割れ性が低下してしまうことから、Cr含有量を、25.0質量%以下、好ましくは24.5質量%以下、より好ましくは24.0質量%以下とする。
(Ni:1.0〜10.0質量%)
Niは、耐食性向上に必要な元素であり、特に、塩化物環境における局部腐食抑制に効果が大きい。また、Niは、低温靱性を向上させるのにも有効であり、さらにオーステナイト相を安定化させるためにも必要な元素である。こうした効果を得るためには、Ni含有量を、1.0質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上とする。しかし、過剰にNiを含有させると、オーステナイト相が多くなりすぎて、強度が低下することから、Ni含有量を、10.0質量%以下、好ましくは9.5質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下とする。
(Mo:2.0〜5.0質量%)
Moは、溶解時にモリブデン酸を生成して、インヒビター作用により耐局部腐食性を向上させる効果を発揮し、耐食性を向上させる元素である。また、Moは、フェライト相を安定化させる元素であり、鋼材の耐孔食性・耐割れ性を改善させる効果がある。このような効果を得るためには、Mo含有量を、2.0質量%以上、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上とする。しかし、過剰にMoを含有させると、σ相等の金属間化合物の生成を助長し、耐食性および熱間加工性が低下すること、および母材と溶接熱影響部の硬度に差がついてしまって、かえって応力腐食割れ性が低下してしまうことから、Mo含有量を、5.0質量%以下、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下とする。
(N:0.10〜0.20質量%)
Nは、強力なオーステナイト相を安定化させる元素であり、σ相の生成感受性を増加させずに耐食性を向上させる効果がある。さらに、Nは、鋼の高強度化にも有効な元素であるため、本発明では積極的に活用する。このような効果を得るためには、N含有量を、0.10質量%以上、好ましくは0.11質量%以上、より好ましくは0.12質量%以上とする。しかし、Cr、Moが前記説明したような含有量で添加された場合でも、N量が正しく制御されていないと、溶接時に溶接熱影響部において硬度が著しく低下することが判明した。母材と溶接熱影響部との間の硬度差が大きいと耐応力腐食割れ性が劣化するため、溶接熱影響部の硬度低下は出来るだけ抑制する必要がある。そのためには、N含有量を、0.20質量%以下、好ましくは0.19質量%以下、より好ましくは0.18質量%以下とする必要がある。
(Ta:0.01〜0.50質量%)
Taは、耐食性に悪影響を及ぼす硫化物系介在物(MnS)を、Taを含有する硫・酸化物系複合介在物に改質することで、耐食性を向上させる元素である。また、Taは、Oと結合することで、Cr系酸化物の生成を抑制する元素であり、鋼材の実質的なCr濃度向上に寄与する効果がある。このような効果を得るためには、Ta含有量を、0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上とする。しかし、過剰にTaを含有させると、鋼中のNと結合することで窒化物として析出してしまい、靱性、熱間加工性を低下させ、Nの有効濃度を低減させてしまい、耐食性が低下する。また、Taで改質された硫・酸化物系複合介在物が多数析出してしまい、熱間加工性を低下させる。そのため、Ta含有量を、0.50質量%以下、好ましくは0.40質量%以下、より好ましくは0.30質量%以下とする。
(O:0.030質量%以下)
Oは、溶製時に混入する不純物であり、SiやAl等の脱酸元素と結合することで鋼中に酸化物として析出し、二相ステンレス鋼の加工性および耐食性を低下させる元素である。そして、Oを過剰に含有させると、硫・酸化物系複合介在物のTaによる改質が不十分となると共に、硫・酸化物系複合介在物が多数析出するため、耐食性および熱間加工性が低下する。そのため、O含有量を、0.030質量%以下、好ましくは0.028質量%以下、より好ましくは0.025質量%以下、さらに好ましくは0.024質量%以下とする。なお、O含有量は、低ければ低いほど好ましいが、過剰にOを低減するのはコストアップに繋がるため、その下限は、おおよそ0.0005質量%程度である。
(Cu:0.1〜2.0質量%、Co:0.1〜2.0質量%、V:0.01〜0.5質量%、Ti:0.01〜0.5質量%、Nb:0.01〜0.5質量%よりなる群から選ばれる1種以上)
CuおよびCoは、耐食性の向上およびオーステナイト相を安定化させる元素である。そのため、Cu含有量、Co含有量を、それぞれ0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上とする。しかし、これらの元素を過剰に含有させると、熱間加工性を劣化させることから、Cu含有量、Co含有量を、それぞれ2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下とする。
V、Ti、Nbは、耐食性を向上させ、強度特性や熱間加工性を向上させる元素である。このような効果を得るため、V含有量、Ti含有量、Nb含有量を、それぞれ0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上とする。しかし、これらの元素を過剰に含有させると、粗大な炭化物や窒化物を形成し靱性を劣化させる。そのため、V含有量、Ti含有量、Nb含有量を、それぞれ0.5質量%以下、好ましくは0.4質量%以下とする。また、Cu、Co、V、Ti、Nbの含有量の合計は、耐食性および熱間加工性を考慮して、0.02〜1.00質量%が好ましい。
(Mg:0.0005〜0.020質量%、Ca:0.0005〜0.020質量%の1種または2種)
MgおよびCaは、鋼中に不純物として含まれるSと結合して局部腐食の起点となりやすいMnSの形成を抑制して、耐局部腐食性を向上させる元素である。また、MgおよびCaは、鋼中のSやOと結合して、これらの介在物が粒界に偏析するのを抑制して熱間加工性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、Mg含有量、Ca含有量を、0.0005質量%以上、好ましくは0.0020質量%以上とする。しかし、これらの元素を過剰に含有させると、酸化物系介在物の増加を招き、耐食性、加工性が劣化する。そのため、Mg含有量、Ca含有量を、0.020質量%以下とする。また、MgおよびCaの含有量の合計は、耐食性および熱間加工性を考慮して、0.001〜0.02質量%が好ましい。
(Feおよび不可避的不純物)
二相ステンレス鋼材を構成する成分組成の基本成分は前記のとおりであり、残部成分はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物は、溶製時に不可避的に混入する不純物であり、鋼材の諸特性を害さない範囲で含有される。
また、鋼材の成分組成は、本発明に係る鋼材の効果に悪影響を与えない範囲で、前記成分に加えて、さらに他の元素を積極的に含有させても良い。
(硫・酸化物系複合介在物)
本発明では、Taを添加し精錬することで、通常のステンレス鋼に含有される硫化物系介在物(MnS)を、Taを含有する硫・酸化物系複合介在物に改質する。そして、このTaを含有する硫・酸化物系複合介在物によって、耐局部腐食性を向上させている。
そのためには、このTaを含有する硫・酸化物系複合介在物のTa含有量を、5原子%以上、好ましくは7原子%以上、より好ましくは10原子%以上とする。なお、Ta含有量の上限は、特に定めないが、おおよそ50原子%程度である。
また、Ta添加により介在物の改質を行ったとしても、鋼中に粗大な介在物が多数存在する場合は熱間加工性の低下を招くため、長径が1μm以上のTaを含有する硫・酸化物系複合酸化物が加工方向に垂直な断面1mmあたり500個以下、好ましくは450個以下、より好ましくは400個以下とする。なお、Taを含有する硫・酸化物系複合介在物の個数密度の下限は、特に定めないが、1mmあたり20個程度である。そして、長径が1μmを下回るような微細な介在物は、耐局部腐食性に悪影響を及ぼす度合いが低いため対象から除外した。
また、このような硫・酸化物系複合介在物のTa含有量および個数密度は、二相ステンレス鋼材のTa含有量およびO含有量を制御し、かつ、鋼材製造の際の熱加工条件を制御することによって達成される。
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、前記成分組成が、Cr含有量(Cr量)を[Cr]、Mo含有量(Mo量)を[Mo]、N含有量(N量)を[N]とした際に、[Cr]+3.3[Mo]+16[N]≧30であることが好ましい。
[Cr]+3.3[Mo]+16[N]は、鋼材の耐食性を表す指標として従来知られている孔食性指数(PRE:Pitting Resistance Equivalent)である。本発明では、PRE≧30することによって、組織中のCr量、Mo量、N量のバランスが適切なものとなり、鋼材の耐食性および強度が向上する。
<二相ステンレス鋼材の製造方法>
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、通常のステンレス鋼の量産に用いられている製造設備および製造方法によって製造することができる。鋼中の不純物としてのOを低減するためには、SiやAl等のOとの親和力の大きい元素を多めに添加して脱酸を行い、さらに、真空脱ガスやアルゴンガス攪拌などの二次精錬の時間を長時間化したり、複数回行ったりすることにより酸化物系介在物を除去する。
例えば、転炉あるいは電気炉にて溶解した溶鋼に対して、AOD(Argon Oxygen Decarburization)法やVOD(Vacuum Oxygen Decarburization)法などによる精錬を行って成分調整した後、連続鋳造法や造塊法などの鋳造方法で鋼塊とする。得られた鋼塊を1000〜1200℃程度の温度域にて熱間加工を行い、次いで冷間加工を行って所望の寸法形状にすることができる。また、熱間加工時の総加工比(元鋼塊の断面積/加工後の断面積)は、通常通り10〜50程度とする。ここで、所望のTaを含有する硫・酸化物系複合介在物の存在状態にするためには、熱間加工時において、1100〜1200℃の温度域での加工比(加工前の断面積/加工後の断面積)が、総加工比のうちの50%を超える加工比となるように熱間加工することが好ましい。
なお、従来の二相ステンレス鋼材の製造においても、鋼塊を1000〜1200℃程度の温度域にて熱間加工を行なっているが、特に意識した制御を行なっていない。そのため、加工時の温度低下の影響から、1100〜1200℃の温度域での加工比よりも、1000〜1100℃の温度域での加工比の方が高くなっている。その結果、従来の製造においては、1100〜1200℃の温度域での加工比は、総加工比のうちの50%以下となっている。本発明では、前記のとおり、1100〜1200℃の温度域での加工比をあえて高めることで、所望のTaを含有する硫・酸化物系複合介在物の存在状態が得られる。すなわち、二相ステンレス鋼材の介在物のうち、長径が1μm以上であるTaを含有する硫・酸化物系複合介在物が、加工方向に垂直な断面1mmあたり500個以下であり、硫・酸化物系複合介在物のTa含有量を5原子%以上とすることができる。
本発明においては、機械特性に有害な析出物をなくすため、必要に応じて固溶化熱処理を施して急冷することが好ましい。固溶化熱処理の温度は、1000〜1100℃が好ましく、保持時間は10〜30分が好ましく、急冷は10℃/秒以上の冷却速度で冷却することが好ましい。また、必要に応じてスケール除去などの表面調整のための酸洗を行うことができる。
<二相ステンレス鋼管>
本発明に係る二相ステンレス鋼管の実施形態について説明する。
二相ステンレス鋼管は、前記二相ステンレス鋼材からなるもので、通常のステンレス鋼管の量産に用いられる製造設備および製造方法によって製造することができる。例えば、丸棒を素材とした押出製管やマンネスマン製管、板材を素材として成形後に継ぎ目を溶接する溶接製管などによって、所望の寸法にすることができる。また、二相ステンレス鋼管の寸法は、鋼管が使用される油井管、化学プラント、アンビリカルチューブ等に応じて適宜設定することができる。なお、二相ステンレス鋼管は、海水淡水化プラント、LNG気化器等にも使用できる。
なお、溶接製管を製造する場合や、2つ以上の二相ステンレス鋼管を溶接にて接合する場合の溶接法については一般的にステンレス鋼に用いられる手法、例えば各種アーク溶接(TIG、MIG、SAW、被覆アーク)をはじめ電子ビーム溶接、レーザー溶接、電気抵抗溶接など適した方法を用いれば良い。
以下、本発明を実施例によって、更に詳細に説明する。
(鋼材の作製)
電極アーク加熱機能を備える溶鋼処理設備によって、表1に示す成分組成の鋼(鋼記号:A〜S)をそれぞれ溶製し、50kgの丸鋳型(本体:約φ140×320mm)を用いて鋳造した。また、各鋼について、PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]の算出結果についても表1に示す。なお、表1の成分組成欄において、空欄は該当成分が含有されていないことを示し、残部はFeおよび不可避的不純物である。表1中の下線は本発明の要件を満たさないことを示している。凝固した鋼塊を1200℃まで加熱し同温度で熱間鍛造(鍛造温度:1000〜1200℃)を施し、その後切断した。次に冷間圧延と1100℃で30分保持の固溶化熱処理を施し、冷速12℃/秒で水冷後に切断し、300×120×10mmの鋼材(実験No.1〜19)に仕上げた。
(試料の採取)
次に、前記鋼材から加工方向に平行に採取した試料(20mm×30mm×2mmt)を用いて、以下に示す手順で、硫・酸化物系複合介在物の個数密度およびTa含有量を測定すると共に、耐孔食性および熱間加工性を評価した。その結果を表2に示す。なお、表2中の下線は本発明の要件を満たさないか、好ましくない結果であったことを示している。
また、前記試料を加工方向と垂直な断面を樹脂に埋め込み、鏡面研磨し、シュウ酸水溶液中で電解エッチングを行った後、倍率100倍の光学顕微鏡観察を行い、各試料の組織を観察した。その結果、いずれの試料もフェライト相とオーステナイト相の二相からなるものであった。
(硫・酸化物系複合介在物の個数密度およびTa含有量の測定)
介在物の長径(円相当直径)、個数密度およびTa含有量は、次の手順で測定できる。即ち、上記組織観察に用いた試料に対し、試料の表面について、SEM−EPMA(走査型電子顕微鏡−電子線プローブマイクロアナライザー、日本電子株式会社製「JXA−8900RL」、「XM−Z0043T」、「XM−87562」)による画像解析を行い、観察される介在物の成分組成をEDX(エネルギー分散型X線検出器)で分析した。EDXによる成分組成の分析は、長径が1μm以上の介在物を対象として行い、介在物の重心位置を1点につき10秒程度で自動分析すればよい。長径が1μm未満の介在物は、耐局部腐食性に悪影響を及ぼす度合いが低い。したがって、本発明では、測定効率を向上させるために、長径が1μm未満の介在物は測定対象から除外する。
硫・酸化物系複合介在物の個数密度およびTa含有量の測定については、上記の手順で自動EPMAにて観察し、測定面積3mmにおいて観察される長径が1μm以上の硫化物系介在物および酸化物系介在物について、個数密度およびそれぞれの介在物のTa含有量を測定し、その平均値として求めた。
(耐孔食性の評価)
耐孔食性の評価は、JIS G 0577:2005に記載の方法を参考にして評価した。試料表面をSiC#600研磨紙で湿式研磨し、超音波洗浄した後、スポット溶接で試料に導線の取り付けを行い、試料表面の試験面(10mm×10mm)の部分以外をエポキシ樹脂で被覆した。その試料を80℃に保持した20%NaCl水溶液中に10分間浸漬した後、20mV/minの掃引速度でアノード分極を行い、電流密度が0.1mA/cmを超えた時点の電位を孔食電位(V100)とした。耐孔食性(耐食性)の評価は孔食電位が350mV(vs.SCE(飽和カロメル電極))を超えるものを良好(○)とし、350mV(vs.SCE)以下を不良(×)として評価した。その結果を表2に示す。
(熱間加工性の評価)
前記試料の表面を目視にて観察し、表面欠陥の有無(◎:欠陥なし、○:わずかに欠陥あり、△:欠陥多発、×:割れ発生)を観察した。
(溶接性の評価)
直径80mm(肉厚5mm)の鋼管(略号E、J、MおよびS)に対し、TIG溶接を行った(実験No.20〜23)。開先形状は70度(底1mm)、突き合わせ間隔2mmとした。溶接材料はTG329J4L(φ16mm)を用い、電流80〜200A、溶接速度5〜15cm/min、シールドガスAr(15L/min)とした。溶接後の評価は母材と溶接部・熱影響部(溶接熱影響部)の硬さ差が60未満のものを溶接性(耐応力腐食割れ性)に優れる(○)とし、60以上のものを溶接性(耐応力腐食割れ性)に劣る(×)として評価した。その結果を表3に示す。なお、表3中の下線は好ましくない結果であったことを示している。
Figure 0006247196
Figure 0006247196
Figure 0006247196
表1、2に示すように、実験No.1〜10に係る試料は本発明の要件を満たしていたので、いずれも優れた耐孔食性および熱間加工性を有していた(実施例)。
それに対して、本発明の要件を満たさない比較例については、以下の不具合を有していた。
実験No.11に係る試料は、Ta含有量が下限未満であり、硫・酸化物系複合介在物のTa含有量が下限未満であったため、耐孔食性に劣った。
実験No.12に係る試料は、N含有量が下限未満であったため、耐孔食性に劣った。
実験No.13に係る試料は、Cr含有量が過剰であるため母材の耐孔食性は所望の値を満たしたが、溶接熱影響部の硬さ差を満たさなかった(表3の実験No.22参照)。また、実験No.13に係る試料は、熱間加工性も劣っていた。
実験No.14に係る試料は、Mo含有量が過剰であり、硫・酸化物系複合介在物のTa含有量が下限未満であったため、耐孔食性および熱間加工性に劣った。
実験No.15に係る試料は、C含有量が過剰であったため、Cr23の生成が促進され耐孔食性に劣った。また、実験No.15に係る試料は、熱間加工性も劣っていた。
実験No.16に係る試料は、S含有量が過剰であったため、析出物(硫化物系介在物(MnS))が多数存在していた。また、実験No.16に係る試料は、硫・酸化物系複合介在物のTa含有量が下限未満であった。実験No.16に係る試料は、これらの理由によって、耐孔食性と熱間加工性に劣っていた。
実験No.17に係る試料は、Mo含有量が不足したため耐孔食性に劣った。
実験No.18に係る試料は、Ta含有量が過剰であり、硫・酸化物系複合介在物の個数密度が多かったため、耐孔食性と熱間加工性に劣った。
なお、実験No.19に係る試料は、N含有量が多すぎる例である。実験No.19に係る試料は、耐孔食性と熱間加工性については良好な評価を得ることができたが後記実験No.23に係る試料について述べるように、溶接性の評価に劣った。
また、表3を参照して、溶接性に関する実験結果を見ると、本発明の要件を満たす実験No.20、21に係る試料は、母材とHAZ部(溶接熱影響部)との硬度さが小さく、耐応力腐食割れ性が優れていると判断された(実施例)。
しかしながら、実験No.22に係る試料は、Cr含有量が多すぎるため、母材とHAZ部との硬度さが大きく、耐応力腐食割れ性が劣っていると判断された(比較例)。
また、実験No.23に係る試料は、耐孔食性と熱間加工性については良好な評価を得ることができたが(表2のNo.19参照)、N含有量が多すぎるため、母材とHAZ部との硬度さが大きくなった(比較例)。

Claims (4)

  1. フェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼材であって、前記二相ステンレス鋼材の成分組成は、
    C:0.10%質量以下、
    Si:0.1〜3.0質量%、
    Mn:0.1〜4.0質量%、
    P:0.05質量%以下、
    S:0.01質量%以下、
    Al:0.001〜0.050質量%、
    Cr:20.0〜2.0質量%、
    Ni:1.0〜10.0質量%、
    Mo:2.0〜5.0質量%、
    N:0.10〜0.19質量%、
    Ta:0.01〜0.50質量%、
    O:0.030質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    前記二相ステンレス鋼材の介在物のうち、長径が1μm以上であるTaを含有する硫・酸化物系複合介在物が、加工方向に垂直な断面1mmあたり500個以下であり、前記硫・酸化物系複合介在物のTa含有量が5原子%以上であることを特徴とする二相ステンレス鋼材。
  2. 前記成分組成が、さらにCu:0.1〜2.0質量%、Co:0.1〜2.0質量%、V:0.01〜0.5質量%、Ti:0.01〜0.5質量%、Nb:0.01〜0.5質量%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の二相ステンレス鋼材。
  3. 前記成分組成が、さらにMg:0.0005〜0.020質量%、Ca:0.0005〜0.020質量%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二相ステンレス鋼材。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載された前記二相ステンレス鋼材からなることを特徴とする二相ステンレス鋼管。
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