WO2016009903A1 - 高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法 - Google Patents
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Abstract
高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接において、溶接部の健全性および溶接作業性に優れ、かつ、高温割れを抑制できる溶接方法を提供することにある。高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法は、ワイヤ送給速度(V)を50~120g/min、溶接速度(v)を20~60cm/minとし、前記ワイヤ送給速度と前記溶接速度との比で求める単位長さ当りの溶着量(V/v)を1.8~4.5g/cmとする条件で溶接することを特徴とする。
Description
本発明は、サブマージアーク溶接方法に関し、より詳しくは、高Cr系CSEF(Creep strength-Enhanced Ferritic:クリープ強度強化フェライト)鋼のシングルサブマージアーク溶接方法に関する。
火力発電ボイラやタービン、脱硫や改質(重油分解)用の化学反応容器(リアクタ)は、高温、高圧で運転されるため、材料としては、1.25Cr-0.5Mo鋼、2.25Cr-1.0Mo鋼、2.25Cr-1.0Mo-V鋼などが適用されている。近年、重油の有効利用や石油精製において、さらなる高能率化が求められており、8質量%以上のCrを含有する高Cr系CSEF鋼の適用が検討されている。高Cr系CSEF鋼には、ASTM(American Society for Testing and Materials:米国材料試験協会)規格やASME(American Society of Mechanical Engineers:米国機械協会)規格に規定されるSA387Gr.91、SA213Gr.T91等がある。
火力発電ボイラやタービン、リアクタは、鍛造リングやパイプ、曲げ加工鋼板を適宜組み合わせて溶接して形成される。ちなみに鍛造リングは、板厚150~450mm、最大外径7m弱、全長数~数10mにもなる。火力発電ボイラやタービン、リアクタの溶接方法としては、被覆アーク溶接、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接、サブマージアーク溶接が用いられる。また、火力発電ボイラやタービン、リアクタは、構造上、溶接部分の割合が大きくなるため、溶接材料の低減、溶接の高能率化が強く求められている。
一般的に、溶接材料の低減に対しては、開先幅を狭く、かつ、開先角度を小さくした狭開先を用いる方法がある。また、高能率化に対しては、サブマージアーク溶接が、他の溶接方法と比較して高能率であることから多用されている。しかし、高Cr系CSEF鋼のサブマージアーク溶接では、溶接時の高温割れに対しては、いずれも不利な条件となる。サブマージアーク溶接における高温割れを抑制し、溶接の高能率化を図る技術としては、以下のような技術が開示されている。
例えば、特許文献1には、所定量のC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、NbおよびNを含有し、MnおよびNiの総量を所定量に規制すると共に、P、S、Cu、Ti、Al、B、W、CoおよびOを所定量に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる改良9Cr-1Mo鋼用溶接ワイヤが開示されている。そして、特許文献1では、Cを0.070~0.150質量%とし、かつ、P、Sをいずれも0.010質量%以下に規制することによって、高温割れを抑制している。
また、特許文献2には、所定量のC、Mn、Cr、Mo、Ni、V、Nb、AlおよびNを含有し、かつ、SiおよびOを所定量に限定したワイヤと、所定量のCaF2、CaOおよびMgOの1種または2種、Al2O3およびZrO2の1種または2種、Alを含有し、かつ、SiO2を所定量に限定した溶接フラックスとを組み合わせて溶接を行う9Cr-1Mo鋼のサブマージアーク溶接方法が開示されている。そして、特許文献2では、Cを0.01~0.15wt%、Alを0.005~1.5wt%、Siを0.05wt%以下としたワイヤと、SiO2を5wt%以下(Siを実質的に含有せず)、CaF2を25~70wt%とした溶接フラックスとを組み合わせることで、高温割れを抑制している。
また、特許文献3では、所定形状の狭開先(開先幅10~25mm,開先角度15°以下)を1層1パスで溶接するナロウギャップサブマージアーク溶接方法が開示されている。そして、先行電極として2.4~3.2mmφの電極、後行電極として4.0~4.8mmφの電極、電極間距離を50~150mmとし、さらに特定成分組成の焼結型フラックスを用いることによって、溶接金属の健全性を確保しつつ溶接能率を向上させると共に、高温割れを抑制している。
しかしながら、従来の技術では、高Cr系CSEF鋼のサブマージアーク溶接において、以下の問題がある。
特許文献1の改良9Cr-1Mo鋼用溶接ワイヤにおいては、ワイヤ径が2.4mmφと細径ワイヤであるがために、アークの広がりに乏しく融合不良が発生しやすくなって健全な溶接部が得られない場合がある。また、ワイヤ径を4.0mmφに太径化してサブマージアーク溶接を行うと、母材希釈によるCピックアップが原因で初層に高温割れが発生する場合がある。
特許文献1の改良9Cr-1Mo鋼用溶接ワイヤにおいては、ワイヤ径が2.4mmφと細径ワイヤであるがために、アークの広がりに乏しく融合不良が発生しやすくなって健全な溶接部が得られない場合がある。また、ワイヤ径を4.0mmφに太径化してサブマージアーク溶接を行うと、母材希釈によるCピックアップが原因で初層に高温割れが発生する場合がある。
特許文献2の9Cr-1Mo鋼のサブマージアーク溶接方法においては、ワイヤおよび溶接フラックスが低Si設計であるため、前述の如く、板厚が450mmともなる厚板かつ狭開先への溶接に適用した際には、溶接作業性、特にビード形状が凸ビード化しやすく、結果として融合不良やスラグ巻込みを引き起こす場合がある。すなわち、溶接部の健全性が低下する場合がある。
特許文献3のナロウギャップサブマージアーク溶接方法においては、実施例に記載されているワイヤおよび母材は、軟鋼である。ここで、高Cr系CSEF鋼ワイヤは、軟鋼ワイヤと比較してジュール発熱が大きいため、溶着量が大きくなり、高温割れの感受性が高まる場合がある。つまり、特許文献3に記載の方法のみでは、高Cr系CSEF鋼の溶接における高温割れについての課題を解決することは難しい。
また、特許文献3はタンデムアーク溶接であるため、先行の電極で形成したスラグが、後行の電極で十分溶融しきれないリスクもあり、リアクタのような高精度の溶接に適さない。さらに、狭開先における初層溶接では、母材金属による希釈が大きい。殊に、サブマージアーク溶接の場合には、溶込みは深く希釈率は極めて高くなるため、母材成分(特にC)の影響を受けて高温割れが発生し易くなる。この高温割れを抑制するためには、母材の希釈を極力少なくし、かつ溶接金属を薄肉にするのがよい。しかしながら、タンデム溶接を行うと、溶着金属量が増加して溶接金属が厚くなるため、高温割れが発生し易くなる。
一般的に、溶接入熱を上げる、すなわち、溶接電流、アーク電圧を高め、溶接速度を低めにすることで溶接能率を高めることが可能である。しかし、溶接入熱を上げると、特に狭開先では溶込み形状がなし型となりやすく、高温割れの発生リスクが高まる。ここで問題となる高温割れは、溶着金属中に含まれるP、S、Si、Nbによる低融点化合物が凝固時にデンドライト間やオーステナイト結晶粒界に偏析し、さらに溶接収縮ひずみが加わって発生するいわゆる高温割れである。そのため、高温割れの抑制策として、溶接材料の化学成分調整、具体的には、P、S等の不純物を超高純度(EHP:Extra High Purity)溶解で100ppm以下に抑えることは効果的である。しかしながら、超高純度溶解は、電子ビーム溶解や専用の特殊炉壁耐火材を使わざるを得ないことから経済的に難点がある。このため一般的な不純物レベルでも高温割れの発生を抑制できる技術が求められている。
さらに、高Cr系CSEF鋼のサブマージアーク溶接は、ワイヤの主要成分にも高温割れを引き起こす原因がある。すなわち、高Cr系CSEF鋼と共材で構成されたサブマージアーク溶接用ソリッドワイヤは、従来使用されていた1.25Cr-0.5Mo、2.25Cr-1Mo、2.25Cr-1Mo-V鋼と共材で構成された各ソリッドワイヤと比較して、ジュール発熱が高い。すなわち、高Cr系CSEF鋼と共材で構成されたサブマージアーク溶接用ソリッドワイヤは、同一溶接電流であれば、ワイヤが溶けやく溶着量が多い。さらに、その溶着金属の凝固収縮量は、従来使用されていた1.25Cr-0.5Mo、2.25Cr-1Mo、2.25Cr-1Mo-V鋼と共材で構成されたソリッドワイヤのものと比較して大きい。これらが、高Cr系CSEF鋼のサブマージアーク溶接における高温割れの抑制を一層困難ならしめている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接において、溶接部の健全性および溶接作業性に優れ、かつ、高温割れを抑制できる溶接方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接において、ワイヤの送給速度、溶接速度、さらに両者の比で算出される単位長さ当りの溶着量を規定することにより、高温割れの発生を抑制できることを見出した。
すなわち、本発明に係る高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法は、ワイヤ送給速度(V)を50~120g/min、溶接速度(v)を20~60cm/minとし、前記ワイヤ送給速度と前記溶接速度との比で求める単位長さ当りの溶着量(V/v)を1.8~4.5g/cmとする条件で溶接することを特徴とする。
かかる溶接方法によれば、シングルサブマージアーク溶接方法は、スラグ巻込み、スラグ剥離性の悪化、融合不良、溶込み不良などの溶接部の不良が抑制され、ビード形状も良好なものとなる。また、溶接金属の高温割れが抑制される。
また、本発明の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法では、溶接ワイヤは、C:0.03~0.13質量%、Si:0.05~0.50質量%、Mn:0.50~2.20質量%、P:0.015質量%以下、S:0.010質量%以下、Ni:0.20質量%を超え1.00質量%以下、Cr:8.00~10.50質量%、Mo:0.20~1.20質量%、V:0.05~0.45質量%、Nb:0.020~0.080質量%、N:0.02~0.08質量%を含有し残部がFeおよび不可避的不純物であることが好ましい。
かかる溶接方法によれば、溶接ワイヤに特定の元素を含有させることによって、さらに靱性を改善し、またクリープ破断強度を向上させること等が可能となる。
また、本発明の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法では、溶接ワイヤは、さらにCu、B、W、Coのいずれか一種以上を、Cu:1.70質量%以下、B:0.005質量%以下、W:2.0質量%以下、Co:3.0質量%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であることが好ましい。
かかる溶接方法によれば、溶接ワイヤに特定の元素を含有させることによって、さらに靱性を改善し、またクリープ破断強度を向上させること等が可能となる。
また、本発明の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法では、溶接フラックスは、次式で示す塩基度が1.0~3.3であることが好ましい。
塩基度=(CaF2+CaO+MgO+SrO+Na2O+Li2O+1/2(MnO+FeO))/(SiO2+1/2(Al2O3+TiO2+ZrO2))
ここで、各化合物はフラックス全質量あたりの各化合物の含有量(質量%)を示す。
塩基度=(CaF2+CaO+MgO+SrO+Na2O+Li2O+1/2(MnO+FeO))/(SiO2+1/2(Al2O3+TiO2+ZrO2))
ここで、各化合物はフラックス全質量あたりの各化合物の含有量(質量%)を示す。
かかる溶接方法によれば、ビード外観、ビード形状および溶接金属の靱性の劣化等を抑制することができる。
また、本発明の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法では、チップ/母材間距離が20~40mmであることが好ましい。
かかる溶接方法によれば、チップのアークによる溶損、および溶着量が過剰となることをより確実に抑制できる。
また、本発明の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法では、チップ角度は、後退角αが0°から60°までの範囲、前進角βが0°から60°までの範囲であることが好ましい。
かかる溶接方法によれば、溶接ワイヤ送給速度をより確実に安定化できる。
また、本発明の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法では、チップ形状は、直管状またはベンド角材状であることが好ましい。
かかる溶接方法によれば、ワイヤ送給性と給電位置安定化をより確実に確保できる。
本発明に係る高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法は、溶接部の健全性および溶接作業性に優れ、かつ、高温割れを抑制できる。また、本発明の溶接方法は、初層シングルサブマージアーク溶接において優れた効果を奏し、特に初層1層1パス目のシングルサブマージアーク溶接においてさらに優れた効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の溶接方法は、高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法である。シングルサブマージアーク溶接方法とは、例えば図1~3に示すように、高Cr系CSEF鋼で構成された母材10を、ワイヤ12が内挿された1つの溶接チップ11と、図示しない溶接フラックスを用いてアーク溶接で溶接する方法である。特に、図4に示すような、狭開先における初層溶接、特に初層1層1パス目の溶接に好適に用いられる。
本発明の溶接方法は、高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法である。シングルサブマージアーク溶接方法とは、例えば図1~3に示すように、高Cr系CSEF鋼で構成された母材10を、ワイヤ12が内挿された1つの溶接チップ11と、図示しない溶接フラックスを用いてアーク溶接で溶接する方法である。特に、図4に示すような、狭開先における初層溶接、特に初層1層1パス目の溶接に好適に用いられる。
本発明の溶接方法は、母材(被溶接材)として高Cr系CSEF鋼を対象とするものである。高Cr系CSEF鋼には、各種の規格があり、例えば、ASTM規格やASME規格に規定されたSA387Gr.91、Gr.122、Gr.92、Gr.911およびSA213Gr.T91、EN規格(European standards:欧州規格)に規定されたX10CrMoVNb9-1、並びに社団法人火力原子力発電技術協会 発電用火力設備の技術基準-火力設備の技術基準の解釈[第10章 溶接部]-に規定された火SFVAF28、火SFVAF29、火STBA28、火STPA28、火SCMV28がある。
好ましい母材の化学成分としては、所定量のC、Si、Mn、P、S、Ni、Cr、Mo、V、Nb、Nを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である。あるいはさらに所定量のCu、B、W、Co(これらの4元素から選択される1種以上)を含有してもよい。
具体的には、C:0.07~0.14質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.70質量%以下、P:0.025質量%以下、S:0.015質量%以下、Ni:0.50質量%以下、Cr:8.00~11.50質量%、Mo:0.25~1.10質量%、V:0.15~0.35質量%、Nb:0.04~0.10質量%、N:0.03~0.10質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である。さらにCu:1.70質量%以下、B:0.060質量%以下、W:2.50質量%以下、Co:3.0質量%以下を含有してもよい。なお、不可避的不純物は、例えばTi、Al等である。
本発明の課題の1つである高温割れの発生を抑制する手法の一つとして、入熱を制限するという手法がとられている。しかしながら、溶接電流やアーク電圧は、ワークの状態、通電点などの溶接環境により、ワイヤの溶融に使われるエネルギーが変わってしまう傾向がある。すなわち、同じ入熱で溶接しても、高温割れの発生の有無に差が生じる。そこで、本発明者らは、ワイヤの送給速度、溶接速度、単位長さ当りの溶着量を規定することとした。
すなわち、本発明の溶接方法は、高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法であって、ワイヤ送給速度(V)を50~120g/min、溶接速度(v)を20~60cm/minとし、前記ワイヤ送給速度と前記溶接速度との比で求める単位長さ当りの溶着量(V/v)を1.8~4.5g/cmとする条件で溶接することを特徴とする。以下に各条件の数値限定理由について説明する。
<ワイヤ送給速度V:50~120g/min>
ワイヤ送給速度が50g/minを下回ると、溶接電流が低すぎてアークが不安定となり、溶込不良が発生する。一方、ワイヤの送給速度が120g/minを上回ると、溶着量が多すぎて高温割れが発生すると共に、スラグ剥離性も劣化する。よって、ワイヤ送給速度は、50~120g/minとする。また、ワイヤ送給速度は、溶込み不良の発生をさらに抑制する観点から55g/min以上が好ましく、高温割れの発生、スラグ剥離性の劣化をさらに抑制する観点から115g/min以下が好ましい。なお、ワイヤ送給速度は、例えば溶接電流およびアーク電圧を調整することによって、適正範囲にコントロールされる。
ワイヤ送給速度が50g/minを下回ると、溶接電流が低すぎてアークが不安定となり、溶込不良が発生する。一方、ワイヤの送給速度が120g/minを上回ると、溶着量が多すぎて高温割れが発生すると共に、スラグ剥離性も劣化する。よって、ワイヤ送給速度は、50~120g/minとする。また、ワイヤ送給速度は、溶込み不良の発生をさらに抑制する観点から55g/min以上が好ましく、高温割れの発生、スラグ剥離性の劣化をさらに抑制する観点から115g/min以下が好ましい。なお、ワイヤ送給速度は、例えば溶接電流およびアーク電圧を調整することによって、適正範囲にコントロールされる。
<溶接速度v:20~60cm/min>
溶接速度が20cm/minを下回ると、溶着量が多すぎて高温割れが発生する。一方、溶接速度が60cm/minを上回ると溶融金属の供給が間に合わず、ビード形状が不安定となって融合不良やスラグ巻込みが発生する。よって、溶接速度は、20~60cm/minとする。また、溶接速度は、高温割れの発生をさらに抑制する観点から25cm/min以上、ビード形状を安定させて融合不良やスラグ巻込みをさらに抑制する観点から、55cm/min以下が好ましい。なお、溶接速度とは、図1~3に示すように、溶接機の溶接チップ11の溶接方向への移動速度である。
溶接速度が20cm/minを下回ると、溶着量が多すぎて高温割れが発生する。一方、溶接速度が60cm/minを上回ると溶融金属の供給が間に合わず、ビード形状が不安定となって融合不良やスラグ巻込みが発生する。よって、溶接速度は、20~60cm/minとする。また、溶接速度は、高温割れの発生をさらに抑制する観点から25cm/min以上、ビード形状を安定させて融合不良やスラグ巻込みをさらに抑制する観点から、55cm/min以下が好ましい。なお、溶接速度とは、図1~3に示すように、溶接機の溶接チップ11の溶接方向への移動速度である。
<単位長さ当りの溶着量V/v:1.8~4.5g/cm>
単位長さ当りの溶着量は、ワイヤの送給速度/溶接速度により計算される。本発明のポイントは、この単位長さ当りの溶着量を適切に制御することにある。単位長さ当りの溶着量が1.8g/cmを下回ると、溶着量が少なすぎてビード形状が不安定となって融合不良やスラグ巻込みが発生する。一方、単位長さ当りの溶着量が4.5g/cmを上回ると溶着量が過剰となるため、溶接金属の凝固収縮量が過大かつ溶込み形状もなし形になるため、凝固収縮のかかる方向が最終凝固部に対し垂直となって高温割れが発生する。よって、単位長さ当たりの溶着量は、1.8~4.5g/cmとする。また、単位長さ当たりの溶着量は、ビード形状安定化と融合不良・スラグ巻込み防止の観点から2.0g/cm以上、高温割れの発生をさらに抑制する観点から4.3g/cm以下が好ましい。
単位長さ当りの溶着量は、ワイヤの送給速度/溶接速度により計算される。本発明のポイントは、この単位長さ当りの溶着量を適切に制御することにある。単位長さ当りの溶着量が1.8g/cmを下回ると、溶着量が少なすぎてビード形状が不安定となって融合不良やスラグ巻込みが発生する。一方、単位長さ当りの溶着量が4.5g/cmを上回ると溶着量が過剰となるため、溶接金属の凝固収縮量が過大かつ溶込み形状もなし形になるため、凝固収縮のかかる方向が最終凝固部に対し垂直となって高温割れが発生する。よって、単位長さ当たりの溶着量は、1.8~4.5g/cmとする。また、単位長さ当たりの溶着量は、ビード形状安定化と融合不良・スラグ巻込み防止の観点から2.0g/cm以上、高温割れの発生をさらに抑制する観点から4.3g/cm以下が好ましい。
本発明の溶接方法は、前記溶接条件の規定に加えて、所定の溶接ワイヤと、所定の溶接フラックスとを組み合わせて使用することが好ましい。具体的には、溶接ワイヤは、C、Si、Mn、P、S、Ni、Cr、Mo、V、Nb、Nを所定量含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、所定のワイヤ径を有するものである。また、溶接ワイヤは、母材成分に左右されるものではないが母材同等の機械性能を有することが好ましい。このため、ワイヤには、適宜、Cu、B、W、Co(これらの4元素から選択される1種以上)を所定量含有してもよい。また、溶接フラックスは、所定の塩基度をもったものである。以下、溶接ワイヤ、溶接フラックスについて説明する。
<溶接ワイヤ>
本発明で使用する溶接ワイヤは、C:0.03~0.13質量%、Si:0.05~0.50質量%、Mn:0.50~2.20質量%、P:0.015質量%以下、S:0.010質量%以下、Ni:0.20質量%を超え1.00質量%以下、Cr:8.00~10.50質量%、Mo:0.20~1.20質量%、V:0.05~0.45質量%、Nb:0.020~0.080質量%、N:0.02~0.08質量%を含有し、さらに適宜Cu、B、W、Co(これらの4元素から選択される1種以上)を所定量含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、ワイヤ径が3~5mmφが好ましい。以下、各構成の数値限定理由について説明する。
本発明で使用する溶接ワイヤは、C:0.03~0.13質量%、Si:0.05~0.50質量%、Mn:0.50~2.20質量%、P:0.015質量%以下、S:0.010質量%以下、Ni:0.20質量%を超え1.00質量%以下、Cr:8.00~10.50質量%、Mo:0.20~1.20質量%、V:0.05~0.45質量%、Nb:0.020~0.080質量%、N:0.02~0.08質量%を含有し、さらに適宜Cu、B、W、Co(これらの4元素から選択される1種以上)を所定量含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、ワイヤ径が3~5mmφが好ましい。以下、各構成の数値限定理由について説明する。
(C:0.03~0.13質量%)
Cは、NとともにCr、Mo、W、V、Nb、およびBと結合して各種炭窒化物を析出し、クリープ破断強度を向上させる効果がある。ただし、C含有量が0.03質量%未満では十分な効果が得られない。一方、Cを過剰に含有すると、具体的には、C含有量が0.13質量%を超えると、高温割れが発生する場合がある。よって、溶接ワイヤのC含有量は0.03~0.13質量%とする。C含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.04質量%以上である。また、高温割れの発生をさらに抑制する観点から、好ましくは0.12質量%以下である。
Cは、NとともにCr、Mo、W、V、Nb、およびBと結合して各種炭窒化物を析出し、クリープ破断強度を向上させる効果がある。ただし、C含有量が0.03質量%未満では十分な効果が得られない。一方、Cを過剰に含有すると、具体的には、C含有量が0.13質量%を超えると、高温割れが発生する場合がある。よって、溶接ワイヤのC含有量は0.03~0.13質量%とする。C含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.04質量%以上である。また、高温割れの発生をさらに抑制する観点から、好ましくは0.12質量%以下である。
(Si:0.05~0.50質量%)
Siは、脱酸剤として作用し、溶着金属中の酸素量を低減して溶接金属の靱性を改善する効果がある。ただし、Si含有量が0.05質量%未満では十分な効果が得られない。
一方、Siはフェライト生成元素であり、過剰に含有すると、具体的には、Si含有量が0.50質量%を超えると、溶接金属におけるδ-フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのSi含有量は0.05~0.50質量%とする。Si含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.05質量%を超えるものである。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは0.48質量%以下、より好ましくは0.45質量%以下である。
Siは、脱酸剤として作用し、溶着金属中の酸素量を低減して溶接金属の靱性を改善する効果がある。ただし、Si含有量が0.05質量%未満では十分な効果が得られない。
一方、Siはフェライト生成元素であり、過剰に含有すると、具体的には、Si含有量が0.50質量%を超えると、溶接金属におけるδ-フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのSi含有量は0.05~0.50質量%とする。Si含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.05質量%を超えるものである。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは0.48質量%以下、より好ましくは0.45質量%以下である。
(Mn:0.50~2.20質量%、Ni:0.20質量%を超え1.00質量%以下)
Mnは脱酸剤として作用し、溶着金属中の酸素量を低減して靱性を改善する効果がある。また、MnおよびNiはオーステナイト生成元素であり、いずれも溶接金属におけるδ-フェライトの残留による靱性劣化を抑制する効果がある。ただし、Mn含有量が0.50質量%未満の場合、または、Niが0.20質量%以下の場合は、これらの効果は得られず溶接金属の靱性が劣化する。一方、Mn含有量が2.20質量%を超える場合、または、Ni含有量が1.00質量%を超える場合は、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのMn含有量は0.50~2.20質量%、溶接ワイヤのNi含有量は0.20質量%を超え1.00質量%以下とする。なお、MnおよびNiの総含有量が1.50質量%を超える場合は、溶接金属の靱性が劣化すると共に溶着金属のAc1変態点が低下して高温焼戻しが不可能となり組織の安定化処理ができなくなる。したがって、MnおよびNiの総含有量は1.50質量%以下が好ましい。
Mnは脱酸剤として作用し、溶着金属中の酸素量を低減して靱性を改善する効果がある。また、MnおよびNiはオーステナイト生成元素であり、いずれも溶接金属におけるδ-フェライトの残留による靱性劣化を抑制する効果がある。ただし、Mn含有量が0.50質量%未満の場合、または、Niが0.20質量%以下の場合は、これらの効果は得られず溶接金属の靱性が劣化する。一方、Mn含有量が2.20質量%を超える場合、または、Ni含有量が1.00質量%を超える場合は、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのMn含有量は0.50~2.20質量%、溶接ワイヤのNi含有量は0.20質量%を超え1.00質量%以下とする。なお、MnおよびNiの総含有量が1.50質量%を超える場合は、溶接金属の靱性が劣化すると共に溶着金属のAc1変態点が低下して高温焼戻しが不可能となり組織の安定化処理ができなくなる。したがって、MnおよびNiの総含有量は1.50質量%以下が好ましい。
Mn含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.55質量%以上である。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは2.15質量%以下である。
Ni含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上である。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは0.95質量%未満ある。
Ni含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上である。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは0.95質量%未満ある。
(Cr:8.00~10.50質量%)
Crは、本発明で用いる溶接ワイヤが対象としている高Cr系CSEF鋼の主要元素であり、耐酸化性、高温強度を確保するために不可欠な元素である。ただし、Cr含有量が8.00質量%未満では、耐酸化性および高温強度が不十分になる。一方、Crはフェライト生成元素であり、過剰に含有すると、具体的には、Cr含有量が10.50質量%を超えると、δ-フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのCr含有量は8.00~10.50質量%とする。これにより、優れた耐酸化性および高温強度が得られる。Cr含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは8.05質量%以上である。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは10.45質量%以下である。
Crは、本発明で用いる溶接ワイヤが対象としている高Cr系CSEF鋼の主要元素であり、耐酸化性、高温強度を確保するために不可欠な元素である。ただし、Cr含有量が8.00質量%未満では、耐酸化性および高温強度が不十分になる。一方、Crはフェライト生成元素であり、過剰に含有すると、具体的には、Cr含有量が10.50質量%を超えると、δ-フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのCr含有量は8.00~10.50質量%とする。これにより、優れた耐酸化性および高温強度が得られる。Cr含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは8.05質量%以上である。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは10.45質量%以下である。
(Mo:0.20~1.20質量%)
Moは、固溶強化元素であり、クリープ破断強度を向上させる効果がある。ただし、Mo含有量が0.20質量%未満では、十分なクリープ破断強度が得られない。一方、Moはフェライト生成元素であるため、過剰に含有すると、具体的には、Moを含有量が1.20質量%を超えると、溶接金属におけるδ-フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのMo含有量は0.20~1.20質量%とする。Mo含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.22質量%以上である。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは1.18質量%以下である。
Moは、固溶強化元素であり、クリープ破断強度を向上させる効果がある。ただし、Mo含有量が0.20質量%未満では、十分なクリープ破断強度が得られない。一方、Moはフェライト生成元素であるため、過剰に含有すると、具体的には、Moを含有量が1.20質量%を超えると、溶接金属におけるδ-フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのMo含有量は0.20~1.20質量%とする。Mo含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.22質量%以上である。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは1.18質量%以下である。
(V:0.05~0.45質量%)
Vは、析出強化元素であり、炭窒化物として析出してクリープ破断強度を向上させる効果がある。ただし、V含有量が0.05質量%未満では、十分なクリープ破断強度が得られない。一方、Vはフェライト生成元素でもあり、過剰に含有すると、具体的には、V含有量が0.45質量%を超えると、溶接金属におけるδ-フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのV含有量は0.05~0.45質量%とする。V含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.10質量%以上である。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは0.40質量%以下である。
Vは、析出強化元素であり、炭窒化物として析出してクリープ破断強度を向上させる効果がある。ただし、V含有量が0.05質量%未満では、十分なクリープ破断強度が得られない。一方、Vはフェライト生成元素でもあり、過剰に含有すると、具体的には、V含有量が0.45質量%を超えると、溶接金属におけるδ-フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのV含有量は0.05~0.45質量%とする。V含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.10質量%以上である。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは0.40質量%以下である。
(Nb:0.020~0.080質量%)
Nbは、固溶強化および窒化物として析出してクリープ破断強度の安定化に寄与する元素である。ただし、Nb含有量が0.020質量%未満では、十分なクリープ破断強度が得られない。一方、Nbはフェライト生成元素でもあり、過剰に含有すると、具体的には、Nb含有量が0.080質量%を超えると、溶接金属におけるδ-フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのNb含有量は0.020~0.080質量%とする。Nb含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.022質量%以上である。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは0.078質量%以下である。
Nbは、固溶強化および窒化物として析出してクリープ破断強度の安定化に寄与する元素である。ただし、Nb含有量が0.020質量%未満では、十分なクリープ破断強度が得られない。一方、Nbはフェライト生成元素でもあり、過剰に含有すると、具体的には、Nb含有量が0.080質量%を超えると、溶接金属におけるδ-フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。よって、溶接ワイヤのNb含有量は0.020~0.080質量%とする。Nb含有量は、前記効果をより向上させる観点から、好ましくは0.022質量%以上である。また、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは0.078質量%以下である。
(P:0.015質量%以下)
Pは、高温割れ感受性を高める元素である。P含有量が0.015質量%を超えると、高温割れが発生する場合がある。よって、溶接ワイヤのP含有量は0.015質量%以下に規制する。P含有量は、高温割れの発生をさらに抑制する観点から、好ましくは0.010質量%以下である。
Pは、高温割れ感受性を高める元素である。P含有量が0.015質量%を超えると、高温割れが発生する場合がある。よって、溶接ワイヤのP含有量は0.015質量%以下に規制する。P含有量は、高温割れの発生をさらに抑制する観点から、好ましくは0.010質量%以下である。
(S:0.010質量%以下)
Sは、高温割れ感受性を高める元素である。S含有量が0.010質量%を超えると、高温割れが発生する場合がある。よって、溶接ワイヤのS含有量は0.010質量%以下に規制する。S含有量は、高温割れの発生をさらに抑制する観点から、好ましくは0.009質量%以下である。
Sは、高温割れ感受性を高める元素である。S含有量が0.010質量%を超えると、高温割れが発生する場合がある。よって、溶接ワイヤのS含有量は0.010質量%以下に規制する。S含有量は、高温割れの発生をさらに抑制する観点から、好ましくは0.009質量%以下である。
(N:0.02~0.08質量%)
Nは、CとともにCr、Mo、W、V、Nb、およびBと結合して各種炭窒化物を析出し、クリープ破断強度を向上させる効果がある。ただし、N含有量が0.02質量%未満では十分な効果が得られない。一方、Nを過剰に含有すると、具体的には、N含有量が0.08質量%を超えると、スラグ剥離性が劣化する。よって、溶接ワイヤのN含有量は0.02~0.08質量%とする。N含有量は、クリープ破断強度をさらに向上させる観点から、好ましくは0.03質量%以上である。また、スラグ剥離性の向上の観点から、好ましくは0.07質量%以下である。
Nは、CとともにCr、Mo、W、V、Nb、およびBと結合して各種炭窒化物を析出し、クリープ破断強度を向上させる効果がある。ただし、N含有量が0.02質量%未満では十分な効果が得られない。一方、Nを過剰に含有すると、具体的には、N含有量が0.08質量%を超えると、スラグ剥離性が劣化する。よって、溶接ワイヤのN含有量は0.02~0.08質量%とする。N含有量は、クリープ破断強度をさらに向上させる観点から、好ましくは0.03質量%以上である。また、スラグ剥離性の向上の観点から、好ましくは0.07質量%以下である。
適宜所定量含有してもよい成分として、Cu、B、W、Coの数値限定理由を説明する。
(Cu:1.70質量%以下)
Cuは、オーステナイト生成元素であり、溶接金属におけるδ-フェライトの残留による靱性劣化を抑制する効果があることから含有してもよい。一方、過剰な含有は高温割れを引き起こす場合がある。そのため、Cuは1.70質量%以下とする。Cuの望ましい上限は1.0質量%、更に望ましい上限は0.5質量%である。Cuの含有方法は、ワイヤ表面へのメッキでも構わない。
(Cu:1.70質量%以下)
Cuは、オーステナイト生成元素であり、溶接金属におけるδ-フェライトの残留による靱性劣化を抑制する効果があることから含有してもよい。一方、過剰な含有は高温割れを引き起こす場合がある。そのため、Cuは1.70質量%以下とする。Cuの望ましい上限は1.0質量%、更に望ましい上限は0.5質量%である。Cuの含有方法は、ワイヤ表面へのメッキでも構わない。
(B:0.005質量%以下)
Bは微量含有により炭化物を分散・安定化させ、クリープ破断強度を高める効果があるため、含有してもよい。一方、過剰な含有は高温割れを引き起こす場合がある。そのため、Bは0.005質量%以下とする。Bの望ましい上限は0.003質量%、更に望ましい上限は0.0015質量%である。
Bは微量含有により炭化物を分散・安定化させ、クリープ破断強度を高める効果があるため、含有してもよい。一方、過剰な含有は高温割れを引き起こす場合がある。そのため、Bは0.005質量%以下とする。Bの望ましい上限は0.003質量%、更に望ましい上限は0.0015質量%である。
(W:2.0質量%以下)
Wは、マトリックスの固溶強化と微細炭化物析出によってクリープ破断強度の安定化に寄与する元素であるため、含有してもよい。一方、Wはフェライト生成元素でもあることから過剰な含有は、δ-フェライトの残留による靱性劣化を引き起こす。このため、Wは2.0質量%以下とする。Wの望ましい上限は1.8質量%、更に望ましい上限は1.7質量%である。
Wは、マトリックスの固溶強化と微細炭化物析出によってクリープ破断強度の安定化に寄与する元素であるため、含有してもよい。一方、Wはフェライト生成元素でもあることから過剰な含有は、δ-フェライトの残留による靱性劣化を引き起こす。このため、Wは2.0質量%以下とする。Wの望ましい上限は1.8質量%、更に望ましい上限は1.7質量%である。
(Co:3.0質量%以下)
Coは、δフェライトの残留を抑制する元素であるため、含有してもよい。一方、過剰含有するとAc1点を下げるため、高温焼戻しが不可能となり組織の安定化処理ができなくなる。このためCoは3.0質量%以下とする。Coの望ましい上限は2.0質量%、更に望ましい上限は1.8質量%である。
Coは、δフェライトの残留を抑制する元素であるため、含有してもよい。一方、過剰含有するとAc1点を下げるため、高温焼戻しが不可能となり組織の安定化処理ができなくなる。このためCoは3.0質量%以下とする。Coの望ましい上限は2.0質量%、更に望ましい上限は1.8質量%である。
(残部:Feおよび不可避的不純物)
溶接ワイヤの成分の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えば、Ti、Al等が挙げられる。
溶接ワイヤの成分の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えば、Ti、Al等が挙げられる。
(溶接ワイヤのワイヤ径)
本発明で用いるワイヤ径は3~5mmφが好ましい。ワイヤ径が3mmφ未満では、十分な溶着量を得ることができず、溶接能率が犠牲になる。一方、5mmφを超えると、前記した溶接条件の工夫を図っても溶着量が多いため、高温割れの発生を抑制できない場合がある。
本発明で用いるワイヤ径は3~5mmφが好ましい。ワイヤ径が3mmφ未満では、十分な溶着量を得ることができず、溶接能率が犠牲になる。一方、5mmφを超えると、前記した溶接条件の工夫を図っても溶着量が多いため、高温割れの発生を抑制できない場合がある。
<溶接フラックス>
本発明で使用する溶接フラックスは、次式で示す塩基度が1.0~3.3であることが好ましい。
塩基度=(CaF2+CaO+MgO+SrO+Na2O+Li2O+1/2(MnO+FeO))/(SiO2+1/2(Al2O3+TiO2+ZrO2))
ここで、各化合物はフラックス全質量あたりの各化合物の含有量(質量%)を示す。
本発明で使用する溶接フラックスは、次式で示す塩基度が1.0~3.3であることが好ましい。
塩基度=(CaF2+CaO+MgO+SrO+Na2O+Li2O+1/2(MnO+FeO))/(SiO2+1/2(Al2O3+TiO2+ZrO2))
ここで、各化合物はフラックス全質量あたりの各化合物の含有量(質量%)を示す。
溶接フラックスの塩基度が1.0未満では、溶接金属中の酸素量が十分に下がらず低靭性となる。一方、塩基度が3.3を超えると、ビード外観やビード形状が劣化する。よって、塩基度は1.0~3.3の範囲内とする。塩基度は、溶接金属の靱性の劣化をより抑制する観点から、好ましくは1.3以上である。また、ビード外観やビード形状の劣化をより抑制する観点から、好ましくは3.2以下である。
なお、本発明で用いる溶接フラックスとしては、塩基度が前記範囲を満たすものであれば、溶接フラックスを構成する化合物などの他の条件は特に規定されるものではない。
なお、本発明で用いる溶接フラックスとしては、塩基度が前記範囲を満たすものであれば、溶接フラックスを構成する化合物などの他の条件は特に規定されるものではない。
本発明の溶接方法は、前記溶接条件に加えて、チップ/母材間距離、チップ形状、チップ角度を所定のものとすることが好ましい。
<チップ/母材間距離>
前記したように、高Cr系CSEF鋼と共材のサブマージアーク溶接用ソリッドワイヤは、1.25Cr-0.5Mo、2.25Cr-1Mo、2.25Cr-1Mo-V鋼と共材のソリッドワイヤと比較して電気抵抗が高く、このためジュール発熱量が大となり溶着量が多くなる。すなわち、高Cr系CSEF鋼と共材のワイヤは、同じ溶接電流であっても溶着量が多くなり、高温割れが発生し易くなる。そして、ジュール発熱量は、図1~3、図8~10、図11~13に示す溶接チップ11と母材10との間の距離が長くなるほど大となる。したがって、高温割れの発生をさらに抑制するためには、チップ/母材間距離Lを20~40mmに管理することが好ましい。チップ/母材間距離Lが20mm未満では、チップ先端部11aがアークによって溶損する危険性がある。チップ/母材間距離Lが40mmを超えると、溶着量が過剰となる。また、チップ/母材間距離Lは、チップ先端部11aの溶損をさらに抑制する観点から25mm以上、溶着量が過剰になるのをさらに抑制する観点から35mm以下が好ましい。
ここで、チップ/母材間距離は、図1~3、図8~13に示すように、ワイヤ12が、チップ先端部11aから露出する点と母材10との間の垂直な距離Lである。
前記したように、高Cr系CSEF鋼と共材のサブマージアーク溶接用ソリッドワイヤは、1.25Cr-0.5Mo、2.25Cr-1Mo、2.25Cr-1Mo-V鋼と共材のソリッドワイヤと比較して電気抵抗が高く、このためジュール発熱量が大となり溶着量が多くなる。すなわち、高Cr系CSEF鋼と共材のワイヤは、同じ溶接電流であっても溶着量が多くなり、高温割れが発生し易くなる。そして、ジュール発熱量は、図1~3、図8~10、図11~13に示す溶接チップ11と母材10との間の距離が長くなるほど大となる。したがって、高温割れの発生をさらに抑制するためには、チップ/母材間距離Lを20~40mmに管理することが好ましい。チップ/母材間距離Lが20mm未満では、チップ先端部11aがアークによって溶損する危険性がある。チップ/母材間距離Lが40mmを超えると、溶着量が過剰となる。また、チップ/母材間距離Lは、チップ先端部11aの溶損をさらに抑制する観点から25mm以上、溶着量が過剰になるのをさらに抑制する観点から35mm以下が好ましい。
ここで、チップ/母材間距離は、図1~3、図8~13に示すように、ワイヤ12が、チップ先端部11aから露出する点と母材10との間の垂直な距離Lである。
<チップ形状>
チップ形状は、図1~3に示すような直管状、図5~7に示すようなベンド角材状、あるいは特公昭62-58827公報のFig.3bに示されるような形状でも構わず、ワイヤ送給性と給電位置安定化を確保する観点から適宜選択される。特に、図5~7に示すような、ワイヤ送給を阻害しない範囲でチップ先端部11aが曲げられたベンド角材状チップでは、給電位置が安定化して、結果としてワイヤ送給速度が安定化する。
チップ形状は、図1~3に示すような直管状、図5~7に示すようなベンド角材状、あるいは特公昭62-58827公報のFig.3bに示されるような形状でも構わず、ワイヤ送給性と給電位置安定化を確保する観点から適宜選択される。特に、図5~7に示すような、ワイヤ送給を阻害しない範囲でチップ先端部11aが曲げられたベンド角材状チップでは、給電位置が安定化して、結果としてワイヤ送給速度が安定化する。
<チップ角度>
チップ角度は、図1~3、図8~10、図11~13に示すように、母材10の表面に対して垂直な線と、ワイヤ12が最終的に溶接チップ11から突出する部分であるチップ先端部11aでの軸線とがなす角度である。そして、チップ角度は、溶接アークによるワイヤの加熱度合を左右し、結果としてワイヤ送給速度を増減させる。具体的には、同じ溶接電流、同じチップ母材間距離Lであれば、チップ角度が前進角β(図2、図9、図12参照)のほうが後退角α(図1、図8、図11参照)よりもワイヤ送給速度が増加する。
このため、チップ角度は、後退角αで60°までの範囲、前進角βで60°までの範囲に管理することが、ワイヤ送給速度を安定化させるために好ましい。
前進角とは、図2、図9および図12のように、チップ先端部11aからワイヤが露出する点から溶接線に垂直な線を引き、この垂直線に対して溶接の進行方向と逆にワイヤが傾いて溶接する場合の、ワイヤと垂直線のなす角度のことである。
後退角とは、図1、図8および図11のように、チップ先端部11aからワイヤが露出する点から溶接線に垂直な線を引き、この垂直線に対して溶接の進行方向にワイヤが傾いて溶接する場合の、ワイヤと垂直線のなす角度のことである。
チップ角度は、図1~3、図8~10、図11~13に示すように、母材10の表面に対して垂直な線と、ワイヤ12が最終的に溶接チップ11から突出する部分であるチップ先端部11aでの軸線とがなす角度である。そして、チップ角度は、溶接アークによるワイヤの加熱度合を左右し、結果としてワイヤ送給速度を増減させる。具体的には、同じ溶接電流、同じチップ母材間距離Lであれば、チップ角度が前進角β(図2、図9、図12参照)のほうが後退角α(図1、図8、図11参照)よりもワイヤ送給速度が増加する。
このため、チップ角度は、後退角αで60°までの範囲、前進角βで60°までの範囲に管理することが、ワイヤ送給速度を安定化させるために好ましい。
前進角とは、図2、図9および図12のように、チップ先端部11aからワイヤが露出する点から溶接線に垂直な線を引き、この垂直線に対して溶接の進行方向と逆にワイヤが傾いて溶接する場合の、ワイヤと垂直線のなす角度のことである。
後退角とは、図1、図8および図11のように、チップ先端部11aからワイヤが露出する点から溶接線に垂直な線を引き、この垂直線に対して溶接の進行方向にワイヤが傾いて溶接する場合の、ワイヤと垂直線のなす角度のことである。
次に、本発明の溶接方法における電源特性、電源極性、母材板厚、母材開先形状について説明する。
電源特性は、垂下特性、定電圧特性いずれでも構わない。ここで、垂下特性とは、アーク長が変動しても、電流の変化が少なく安定した溶接ができる電源の特性のことである。具体的には、アーク長が長くなった場合は、一時的にワイヤの送給速度を速くし、アーク長が短くなった場合はワイヤの送給速度が遅くすることによって、電流を一定に安定化する。電源極性はDCEP(Direct Current Electrode Positive)、AC(Alternating Current)いずれでも構わない。
電源特性は、垂下特性、定電圧特性いずれでも構わない。ここで、垂下特性とは、アーク長が変動しても、電流の変化が少なく安定した溶接ができる電源の特性のことである。具体的には、アーク長が長くなった場合は、一時的にワイヤの送給速度を速くし、アーク長が短くなった場合はワイヤの送給速度が遅くすることによって、電流を一定に安定化する。電源極性はDCEP(Direct Current Electrode Positive)、AC(Alternating Current)いずれでも構わない。
本発明の溶接方法は、前記のように火力発電ボイラやタービン、リアクタを好適な溶接対象とする。したがって、母材板厚は150~450mmが好ましい。しかしながら、本発明の溶接方法は、母材板厚が150mm未満の溶接への適用も可能である。同様に、本発明の溶接方法は、母材開先形状として図4に示すような狭開先を好適な溶接対象とする。しかしながら、本発明の溶接方法は、図示しないV開先、X開先への適用も可能である。
本発明の溶接方法は、図4に示す初層21のみを好適な溶接対象とする初層シングルサブマージ溶接方法である。しかしながら、本発明の溶接方法は、図示しないが、初層21のみならず、初層21に溶接金属をさらに積層して最終層(最上層)まで溶接する場合においても、適用可能である。また、本発明の溶接方法は、図示しないV結線、スコット結線によるタンデムサブマージアーク溶接にも適用可能である。
以下、本発明の範囲に入る実施例(No.1~8)について、その効果を本発明の範囲から外れる比較例(No.9~14)と比較して説明する。
表1に示す化学成分の母材を3種類用意した。この母材について、図4に示すように、板厚tが250mm、溝底の曲率半径Rが10mm、開先角度θが4°の狭開先を機械加工で形成して試験体20とした。
また、表2に示す化学成分の溶接ワイヤを3種類使用した。ワイヤ径は4.0mmφである。表2に示すワイヤに含まれる0.01質量%のCuは、不可避的不純物として含まれたものである。また、表3に示す粒度、化学成分、塩基度の溶接フラックスを3種類使用した。
表1に示す化学成分の母材を3種類用意した。この母材について、図4に示すように、板厚tが250mm、溝底の曲率半径Rが10mm、開先角度θが4°の狭開先を機械加工で形成して試験体20とした。
また、表2に示す化学成分の溶接ワイヤを3種類使用した。ワイヤ径は4.0mmφである。表2に示すワイヤに含まれる0.01質量%のCuは、不可避的不純物として含まれたものである。また、表3に示す粒度、化学成分、塩基度の溶接フラックスを3種類使用した。
そして、図4に示す試験体20の狭開先内を、表2に記載の溶接ワイヤと表3に記載の溶接フラックスを用いて、ワイヤ送給速度および溶接速度を変化させ、サブマージアーク溶接を実施した。ワイヤ送給速度は、溶接電流、溶接速度を変化させることによりコントロールした。
溶接条件は以下のとおりである。また、その他の条件は表4に示す。なお、表中、本発明の範囲を満たさないものは数値に下線を引いて示す。
(溶接条件)
ワイヤ径:4mmφ
溶接チップ:図8~10に示す先端曲りチップ(ベント角材状チップ)
電極特性:垂下特性
電極極性:ACシングル
溶接姿勢:下向き
積層方法:初層1層1パス
溶接条件は以下のとおりである。また、その他の条件は表4に示す。なお、表中、本発明の範囲を満たさないものは数値に下線を引いて示す。
(溶接条件)
ワイヤ径:4mmφ
溶接チップ:図8~10に示す先端曲りチップ(ベント角材状チップ)
電極特性:垂下特性
電極極性:ACシングル
溶接姿勢:下向き
積層方法:初層1層1パス
この溶接を行った試験体20について、溶接部の健全性、耐高温割れ性を評価した。その結果を表4に示す。
(溶接部の健全性)
溶接終了後、目視、および、溶接ビードのスタート部およびエンド部(具体的には、それぞれ溶接ビードの端部から100mmのことをいう。以下において同じ。)を除外した300mmの範囲で50mmごとの断面でマクロ組織を観察して、溶接欠陥(スラグ巻込み、スラグ剥離性、融合不良、溶込み不良など)の有無を確認した。溶接欠陥のない場合を○(良好)、溶接欠陥のある場合×(不良)とした。なお、スラグ剥離性は、溶接終了後のビード表面に付着したフラックスをハンマーで3回たたき、スラグが容易に剥離した場合を○(良好)、剥離しなかった場合を×(不良)と判定した。
(溶接部の健全性)
溶接終了後、目視、および、溶接ビードのスタート部およびエンド部(具体的には、それぞれ溶接ビードの端部から100mmのことをいう。以下において同じ。)を除外した300mmの範囲で50mmごとの断面でマクロ組織を観察して、溶接欠陥(スラグ巻込み、スラグ剥離性、融合不良、溶込み不良など)の有無を確認した。溶接欠陥のない場合を○(良好)、溶接欠陥のある場合×(不良)とした。なお、スラグ剥離性は、溶接終了後のビード表面に付着したフラックスをハンマーで3回たたき、スラグが容易に剥離した場合を○(良好)、剥離しなかった場合を×(不良)と判定した。
溶接終了後、目視にて、ビード形状についても確認した。具体的には、前記スラグ剥離性の評価においてスラグを剥離した後の表面外観を目視で確認し、ビード形状が安定な場合を○(良好)、ビード形状が不安定な場合を×(不良)と判定した。
(耐高温割れ性)
溶接ビードのスタート部およびエンド部を除外した300mmの範囲で、50mmごとの断面でマクロ組織を観察した。計5つの断面全てで、高温割れが発生していない場合を○(良好)、高温割れが発生した場合を×(不良)と判定した。
溶接ビードのスタート部およびエンド部を除外した300mmの範囲で、50mmごとの断面でマクロ組織を観察した。計5つの断面全てで、高温割れが発生していない場合を○(良好)、高温割れが発生した場合を×(不良)と判定した。
表4に示すように、No.1~8は、本発明の範囲を満たしており、溶接部の健全性、耐高温割れ性に優れていた。
No.9は、ワイヤ送給速度が本発明の下限を外れている。No.9では、溶接電流が小さくワイヤ送給速度が小さいため、アークが安定せず、開先面とビードの境界で溶込み不良が発生した。No.9は、溶接部の健全性に劣っていた。
No.10は、ワイヤ送給速度が本発明の上限を外れている。No.10では、溶接電流が大きくワイヤ送給速度が大きいため、溶着量が多すぎて高温割れが発生すると共に、スラグ剥離性も低下した。No.10は、溶接部の健全性、耐高温割れ性に劣っていた。
No.11は、溶接速度が本発明の下限を外れ、単位長さ当たりの溶着量も本発明の上限を外れている。No.11では、溶接速度が遅いため、溶着量が多すぎて高温割れが発生した。No.11は、耐高温割れ性に劣っていた。
No.12は、溶接速度が本発明の上限を外れている。No.12では、ワイヤの送給(溶接金属の供給)が溶接速度に対して間に合わず、ビード形状が不安定となって融合不良やスラグ巻込みが発生した。No.12は、溶接部の健全性に劣っていた。
No.13は、単位長さ当りの溶着量が本発明の下限を外れている。No.13は、溶着量が少なすぎて、ビード形状が不安定となって融合不良やスラグ巻込みが発生した。No.13は、溶接部の健全性に劣っていた。
No.14は、単位長さ当りの溶着量が本発明の上限を外れている。No.14では、溶着量が過剰となるため、溶接金属の凝固収縮量が過大かつ溶込み形状もなし形になり、高温割れが発生した。No.14は、耐高温割れ性に劣っていた。
以上、本発明について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することが可能であることはいうまでもない。
本出願は、出願日が2014年7月18日である日本国特許出願、特願第2014-147994号を基礎出願とする優先権主張を伴い、特願第2014-147994号は参照することにより本明細書に取り込まれる。
10 母材(被溶接材)
11 溶接チップ
12 溶接ワイヤ
20 試験体
21 初層
11 溶接チップ
12 溶接ワイヤ
20 試験体
21 初層
Claims (7)
- ワイヤ送給速度(V)を50~120g/min、溶接速度(v)を20~60cm/minとし、前記ワイヤ送給速度と前記溶接速度との比で求める単位長さ当りの溶着量(V/v)を1.8~4.5g/cmとする条件で溶接することを特徴とする高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法。
- 溶接ワイヤは、C:0.03~0.13質量%、Si:0.05~0.50質量%、Mn:0.50~2.20質量%、P:0.015質量%以下、S:0.010質量%以下、Ni:0.20質量%を超え1.00質量%以下、Cr:8.00~10.50質量%、Mo:0.20~1.20質量%、V:0.05~0.45質量%、Nb:0.020~0.080質量%、N:0.02~0.08質量%を含有し残部がFeおよび不可避的不純物である、請求項1に記載の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法。
- 前記溶接ワイヤは、さらにCu、B、W、Coのいずれか一種以上を、Cu:1.70質量%以下、B:0.005質量%以下、W:2.0質量%以下、Co:3.0質量%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である、請求項2に記載の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法。
- 溶接フラックスは、次式で示す塩基度が1.0~3.3である請求項2または3に記載の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法。
塩基度=(CaF2+CaO+MgO+SrO+Na2O+Li2O+1/2(MnO+FeO))/(SiO2+1/2(Al2O3+TiO2+ZrO2))
ここで、各化合物はフラックス全質量あたりの各化合物の含有量(質量%)を示す - チップ/母材間距離が20~40mmである請求項4に記載の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法。
- チップ角度は、後退角αが0°から60°までの範囲、前進角βが0°から60°までの範囲である請求項5に記載の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法。
- チップ形状は、直管状またはベンド角材状である請求項6に記載の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法。
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