JP2016084106A - 車両用バックドア - Google Patents

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Abstract

【課題】車体に対するバックドアの組付け性を向上させ、且つバックドアの見栄えを良くする。
【解決手段】樹脂製インナパネル(5)のうち窓用開口(13)の両側の部分を構成する水平断面凹状のピラー部(23)にその両側壁(26,28)を橋渡しする橋絡片(25)を上下一対に設け、この橋絡片(25)を、インナパネル(5)にアッパアウタパネル(7a)及びロアアウタパネル(7b)を接着する際の位置決めに用いるようにした。
【選択図】図3

Description

本発明は、樹脂製のインナパネルに対しアウタパネルが接着剤で接合された構成を有する車両用バックドアに関する。
この種のバックドアは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1のバックドアでは、インナパネルのうち上半部に設けられた窓用開口よりも上側の部分に後方からアッパアウタパネルが取り付けられ、インナパネルのうち窓用開口よりも下側の部分に後方からロアアウタパネルが取り付けられている。そして、アッパアウタパネルとロアアウタパネルとの間には、窓用開口を塞ぐ窓パネルが取り付けられている。
アッパアウタパネル及びロアアウタパネルとインナパネルとは、接着剤で互いに固定されている。インナパネルのうち窓用開口の車幅方向における両側部分は、車両後方に開口を向ける水平断面凹状のピラー部で構成されている。窓パネルは、バックドアの外観見栄えを向上させるために、バックドアの左右両端に亘って延びるように横長に形成されて両ピラー部の開口を覆っている。また、特許文献1には開示されていないが、インナパネルのピラー部の底面部には、インナパネルにアウタロアパネルを接着する際の位置決めに用いる突起などの位置決め用の構造物が一体に設けられることがある。
特開2011−219000号公報
特許文献1に開示のようなバックドアでは、インナパネルが樹脂製であるためピラー部が外部からの押圧や温度変化によって開口を開く方向に変形しやすく、それに起因してピラー部と窓パネルとの寸法関係が崩れると、ピラー部が窓パネルからはみ出してしまい、バックドアを車体に組み付け難くなる上に、バックドアの見栄えが悪くなる。また、ピラー部の底面部に位置決め用の構造物が一体に設けられている場合には、当該構造物によるヒケがインナパネルの表面のうち車両前方に臨む面に生じて視認され易く、そのことでもバックドアの見栄えが悪くなる。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車体に対するバックドアの組付け性を向上させ、且つバックドアの見栄えを良くすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、ピラー部にその両側壁を橋渡しする橋絡片を設け、この橋絡片を、インナパネルにアウタパネルを接着する際の位置決めに用いるようにした。
具体的には、本発明は、上側に窓用開口を有し、この窓用開口の車幅方向における両側部分が車両後方に開口を向ける水平断面凹状のピラー部で構成された樹脂製のインナパネルと、インナパネルのうち窓用開口よりも上側の部分に対し車両後方に対応させて取り付けられるアッパアウタパネルと、インナパネルのうち窓用開口よりも下側の部分に対し車両後方に対応させて取り付けられるロアアウタパネルとを有するアウタパネルと、これらアッパアウタパネルとロアアウタパネルとの間で窓用開口を塞ぐと共に、両ピラー部の開口を覆う窓パネルと、を備えた車両用バックドアを対象とし、以下の解決手段を講じたものである。
すなわち、第1の発明は、インナパネルに対し、ピラー部の両側壁を橋渡しして連結し、車両後方に開口した位置決め孔を有する橋絡片が設けられた構成を有する。アッパアウタパネル及びロアアウタパネルのうち少なくとも一方のパネルには、インナパネルのピラー部に対応する箇所に延びる延出部が設けられている。この延出部は、ピラー部側に突出した位置決め突起を有する。そして、第1の発明は、上記延出部が設けられたパネルが、当該延出部の位置決め突起を橋絡片の位置決め孔に挿入することで位置決めされて、インナパネルに接着されていることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明の車両用バックドアにおいて、インナパネルに対し、車両後方に臨む第1パネル部と、この第1パネル部と交差する方向に延びる第2パネル部とで構成されたインナ凸コーナー部が設けられた構成を有する。アッパアウタパネル及びロアアウタパネルのうち延出部が設けられたパネルには、第1パネル部に対向する第3パネル部と、第2パネル部に対向する第4パネル部とで構成されたアウタ凸コーナー部が設けられている。そして、第2の発明は、インナ凸コーナー部の第2パネル部とアウタ凸コーナー部の第4パネル部とが、インナパネルに対し、位置決め孔に挿入された位置決め突起を中心に上記延出部が設けられたパネルを回転させて、互いにすれ違うように重ね合わせることにより接着されていることを特徴とする。
第3の発明は、第1又は第2の発明の車両用バックドアにおいて、橋絡片と延出部とが、互いに対応する挿通孔を有し、これら両挿通孔を挿通させたネジで締結されていることを特徴とする。
第1の発明によれば、インナパネルのピラー部にその両側壁を橋渡しして連結する橋絡片を設けるようにしたから、当該ピラー部の剛性が高められると共に、外部からの押圧や温度変化によってピラー部に対しその開口を開く方向へ変形させる力が働いても、ピラー部の変形が橋絡片で抑えられる。これによって、ピラー部と窓パネルとの寸法関係をなるべく維持して、車体に対するバックドアの組付け性を向上させることができ、且つバックドアの見栄えを良くすることができる。さらに、アッパアウタパネル及びロアアウタパネルのうち延出部が設けられたパネルをインナパネルに接着する際の位置決めに橋絡片を用いるようにしたので、位置決めによるヒケがインナパネルの車両前方に臨む面に生じることがなく、たとえ橋絡片によるヒケがインナパネルの表面に生じてもその位置はピラー部の側壁であることから視認され難い。そのことでも、バックドアの見栄えを良くすることができる。
第2の発明によれば、ピラー部の両側壁を連結する橋絡片を、上記延出部が設けられたパネルのアウタ凸コーナー部とインナパネルのインナ凸コーナー部とを接着する際の位置決めに用いるようにしたので、アウタパネルを回転させている途中でアウタ凸コーナー部の第4パネル部の下端部がインナ凸コーナー部の第2パネル部に塗布した接着剤に当たって削ぎ落とされるのを回避し、これら第2パネルと第4パネル部との間に接着不具合が生じるのを防止することができる。
第3の発明によれば、インナパネルに対する延出部の固定作業を容易化でき、インナパネルにアウタパネルを組み付け易くすることができる。
図1は、本発明の実施形態に係るバックドアを後側から見た全体斜視図である。 図2は、本発明の実施形態に係るバックドアの分解斜視図である。 図3は、図2のIIIで囲んだ部分を拡大して示す拡大斜視図である。 図4は、図3のIV−IV線に対応する部分のバックドアの断面図である。 図5は、図3のV−V線に対応する部分のバックドアの断面図である。 図6は、インナパネルにロアアウタパネルを取り付ける工程を示す図1のVI−VI線に対応する部分の断面図であって、(a)は、同工程においてインナパネルにロアアウタパネルを位置決めした状態を示し、(b)は、同工程において位置決め箇所を回転中心にロアアウタパネルを回転させている途中の状態を示し、(c)は、同工程においてロアアウタパネルを回転させた後の状態を示す図である。 図7(a),(b)及び(c)は、インナパネルにロアアウタパネルを取り付ける従来の工程を示す図6(a),(b)及び(c)にそれぞれ相当する図である。
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、或いはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下の実施形態では、説明の便宜上、車両前後方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、車両前方を向いて車幅方向における左側を「左」、右側を「右」と称し、車高方向における上側を「上」、下側を「下」と称する。
図1は、この実施形態に係る車両用バックドア1を後側から見た全体斜視図である。図1に示すバックドア1は、ハッチバック車の車体101後端に設けられたバックドア開口103を開閉する上下開閉式のバックドアである。バックドア1の上半部には、車内へ採光可能な窓部3が設けられている。また、バックドア1の下半部は、バックドア開口103における左右両側に設けられたリヤランプ105を車両後方に露出させるために、下方に向かうに連れて左右の幅が狭くなっている。
図2は、バックドア1の分解斜視図である。バックドア1は、図2に示すように、車内側に位置する樹脂製のインナパネル5と、車外側に位置する樹脂製のアウタパネル7及び窓パネル9と、を備える。これらインナパネル5、アウタパネル7及び窓パネル9は、互いに接着されてドア本体を構成している。
インナパネル5は、射出成形などで成形される一枚物のパネルであって、例えば、ガラス繊維入りポリプロピレン(PP−GF;Polypropylene Glass Fiber)や炭素繊維入りポリプロピレン(PP−CF:Polypropylene Carbon Fiber)などの繊維補強材を含有する熱可塑性樹脂からなる。インナパネル5は、アウタパネル7と前後方向において対向し、当該インナパネル5の主体をなす本体部11を有する。この本体部11は、車両前方に臨む面を構成している。
インナパネル5の本体部11における上半部分は、略台形状に形成されていて、車幅方向に延びる窓用開口13を有する。窓用開口13は、インナパネル5の本体部11における上半部分と相似形の略台形状に形成されている。インナパネル5の本体部11の外周縁には、アウタパネル7側に立ち上がる外側立ち壁15が全周に亘って環状に設けられている。この外側立ち壁15の後端には、接合用の外側フランジ17が外側方に張り出すように設けられている。
また、インナパネル5のうち本体部11の窓用開口13周りには、アウタパネル7側に立ち上がる内側立ち壁19が全周に亘って環状に設けられている。この内側立ち壁19の後端には、接合用の内側フランジ21が窓用開口13の内方に張り出すように設けられている。そして、インナパネル5のうち窓用開口13の左右両側の部分は、車両後方に開口を向ける水平断面凹状のピラー部23でそれぞれ構成されている。
ピラー部23は、凹状部分の底面を構成する底面部24と、車幅方向における外側に位置する外側壁26と、車幅方向における内側に位置する内側壁28とで構成されている。底面部24は、インナパネル5の本体部11の一部で形成されている。外側壁26は、外側立ち壁15及び外側フランジ17の一部で形成されている。また、内側壁28は、内側立ち壁19及び内側フランジ21の一部で形成されている。
このピラー部23には、外側壁26と内側壁28とを左右に橋渡しして連結する橋絡片25が、当該ピラー部23の上下に間隔をあけて一対に設けられている。この橋絡片25の構造については後に詳述する。ピラー部23の底面部24のうち車幅方向における外側部分を含めたインナパネル5の外周部分には、バックドア1がバックドア開口103を閉じた状態のときに、車内への雨風や埃、騒音などの浸入を防ぐために車体101に取り付けられたウェザストリップ107が前方から密着する(図4及び図5参照)。
また、インナパネル5のうち窓用開口13の下側には、ノブ機構やロック装置などを収納する収納ユニット41が設けられている。収納ユニット41は、内側立ち壁19の下辺部のうち左右方向における中間部分から外側立ち壁15の下辺部に亘って上下方向に延びている。この収納ユニット41は、その上下方向における中間よりやや上方の部位から下端にかけて形成された下側収納部41Aと、この下側収納部41Aの上方に形成された上側収納部41Bとを備える。
下側収納部41Aは、上側収納部41Bの直ぐ下側で後方に突出したインナ側プレート取付部47と、このインナ側プレート取付部47の左右両端から外側立ち壁15の下辺部にまで上下方向に延びる一対の縦壁部51とで構成されている。外側立ち壁15の下辺部で一対の縦壁部51の間には、ラッチ(不図示)が取り付けられるラッチ取付部45が設けられている。ラッチは、バックドア開口103の下縁部に設けられたストライカ(不図示)に着脱自在に係合する装置であって、ストライカと協働してバックドア1を閉状態で車体101にロックするロック装置である。
インナ側プレート取付部47及び一対の縦壁部51と外側立ち壁15のうち一対の縦壁部51の間に位置する部分とは、上記ラッチを収納するラッチ収納空間を囲んで仕切っている。また、インナ側プレート取付部47の中央部分には、ラッチ取付部45にラッチを取り付けたりハーネス等を配線したりするための取付用ないしメンテナンス用の作業用開口43が形成されている。
他方、上側収納部41Bは、下側収納部41Aよりも前後方向の高さが高く、下側収納部41Aよりも後方に突出させて形成されており、下側収納部41Aとの間に段差を形成している。この上側収納部41Bの下部の左右方向における中間部分には、当該上側収納部41Bの角を切り欠くようにして前方に凹んだ形状の部品取付凹部48が形成されている。この部品取付凹部48には、ロック装置のロック状態を操作するノブ機構やライセンスプレート照明用のランプ(共に不図示)が取り付けられる。
上側収納部41Bのうち部品取付凹部48の左右両側の部分は、上下方向に延びて後方に臨む第1パネル部としてのインナ縦パネル部53と、このインナ縦パネル部53の下端から前方に同パネル部53と交差する方向、例えば同パネル部53と垂直な方向に延びる第2パネル部としてのインナ横パネル部55とを有する。これらインナ縦パネル部53及びインナ横パネル部55は、後方に凸状のコーナーをなすインナ凸コーナー部57を構成している。
また、インナパネル5のうち窓用開口13よりも上側に位置する部分、具体的にはインナパネル5の上縁部における本体部11と外側立ち壁15との間の部分には、前側が凹んで後方に突出した一対のヒンジ取付部39が、車幅方向における左右両側に互いに間隔をあけて設けられている。これら一対のヒンジ取付部39には、バックドア開口103の上縁部に回転軸を車幅方向に沿わせて固定される開閉用ヒンジ(不図示)がボルト等の留め具で前方から取り付けられて固定される。バックドア1は、この開閉用ヒンジを介して車体101に開閉可能に取り付けられる。
アウタパネル7は、上下に2分割され、上側に位置するアッパアウタパネル7aと、下側に位置するロアアウタパネル7bとで構成されている。これらアッパアウタパネル7a及びロアアウタパネル7bは、例えば、タルク入りポリプロピレン(PP−T:Polypropylene Talc)やそれにエチレンプロピレンジエンメチレンゴム(EPDM:Ethylene Propylene Diene Monomer)を混合した合成樹脂からなり、例えば射出成形によって成形される。
アッパアウタパネル7aは、車幅方向に延びる横長の帯板状に形成されている。このアッパアウタパネル7aは、インナパネル5のうち窓用開口13よりも上側の部分に対向し、インナパネル5の外側フランジ17のうち左右両側の側辺部におけるピラー部23よりも上側に位置する上端部分及び上辺部分と内側フランジ21の上辺部とに外周縁部を後方から接着剤88で接着することにより、インナパネル5に取り付けられている。
このアッパアウタパネル7aの下縁部には、前方に凹むアッパ側段差部61が車幅方向における全体に亘って設けられている。このアッパ側段差部61の左右方向における両端部には、ピラー部23に沿って上側の橋絡片25に対応する箇所にまで下方に延びる延出部62が設けられている。この延出部65は、対応する橋絡片25と係合させることでアッパアウタパネル7aをインナパネル5に接着する際の位置決めに用いられる。
他方、ロアアウタパネル7bは、インナパネル5の下半部分の形状に対応して下方に向かうに連れて左右の幅が狭くなる形状に形成されている。このロアアウタパネル7bは、インナパネル5のうち窓用開口13よりも下側の部分に対向し、インナパネル5の外側フランジ17のうち左右両側の側辺部におけるピラー部23よりも下側に位置する部分及び下辺部と、内側フランジ21の下辺部とに外周縁部を後方から接着剤88で接着することにより、インナパネル5に取り付けられている。
このロアアウタパネル7bの中央部には、前方に向かって凹んだプレート取付凹部81が設けられている。プレート取付凹部81の開放面は、上辺が下辺よりも大きい台形状に形成されている。このプレート取付凹部81は、上方に向かって前側に傾斜した姿勢で後方に臨む底面部と、この底面部の左右両側で後方に延びる一対の側壁部と、底面部の上側で一対の側壁部の間を前後方向に延びる上壁部と、を備える。
プレート取付凹部81の底面部は、ライセンスプレート(ナンバープレート)が取り付けられる取付面部83を構成している。また、プレート取付凹部81の上壁部には、図示しないが、上側収納部41Bの部品取付凹部48に取り付けられたノブ機構を操作するためのノブ用開口と、同じく部品取付凹部48に取り付けられたライセンスプレート照明用のランプの光を通す投光用開口とが形成されている。
このプレート取付凹部81の上壁部は、第4パネル部としてのアウタ横パネル部85を構成している。そして、ロアアウタパネル7bには、このアウタ横パネル部85と、アウタ横パネル部85の後端縁から上下方向に延びる一般面部である第3パネル部としてのアウタ縦パネル部87とで構成されたアウタ凸コーナー部89が設けられている。インナ凸コーナー部57のインナ横パネル部55とアウタ凸コーナー部89のアウタ横パネル部85とは、詳しくは後述するが、インナパネル5に対し、位置決め孔32に挿入された位置決め突起69を中心にロアアウタパネル7bを回転させて、互いにすれ違うように重ね合わせることにより接着されている。
アウタ凸コーナー部89はインナ凸コーナー部57に沿わせて配置されていて、これら両者は互いに接着されている。アウタ縦パネル部87は、インナ縦パネル部53に対向して重ね合わされ、このインナ縦パネル部53に接着剤88で接着されている。アウタ横パネル部85は、インナ横パネル部55に対向して重ね合わされ、このインナ横パネル部55に接着剤88で接着されている。
また、ロアアウタパネル7bの上縁部には、前方に凹むロア側段差部63が車幅方向における全体に亘って設けられている。このロア側段差部63の左右方向における両端部には、ピラー部23に沿って下側の橋絡片25に対応する箇所にまで上方に延びる延出部65が設けられている。この延出部65は、対応する橋絡片25と係合させることでロアアウタパネル7bをインナパネル5に接着する際の位置決めに用いられる。
アッパアウタパネル7aにおける延出部62及びそれに係合するインナパネル5の橋絡片25の構造、並びにこれら延出部62と橋絡片25との係合構造と、ロアアウタパネル7bにおける延出部65及びそれに係合するインナパネル5の橋絡片25の構造、並びにこれら延出部65と橋絡片25との係合構造とは、その位置関係から上下反転している以外は同じ構造であるので、ロアアウタパネル7bの右側の延出部65及びそれに係合する橋絡片25を例に挙げて、図3〜図5を参照しながら説明する。
図3は、図2のIIIで囲んだ部分を拡大して示す拡大斜視図である。図4は、図3のIV−IV線に対応する部分のバックドア1の断面図である。図5は、図3のV−V線に対応する部分のバックドア1の断面図である。橋絡片25は、図3及び図5に示すように、前後方向に扁平な板状の本体板部27と、この本体板部27の上下方向における一側端(図示する例では上側端)に一体に設けられた上下方向に扁平な板状の側板部29とを有する。これら本体板部27及び側板部29は共に、ピラー部23の開口寄りの部分でピラー部23の両側壁26,28を連結している。
本体板部27には、位置決め孔32を有する位置決め用ボス31と、挿通孔34を有する固定用ボス33と、これら両ボス31,33同士を連結する補強リブ35とが、それぞれ後方に突出させて設けられている。本実施形態では、位置決め用ボス31及び固定用ボス33は左右方向に並べて設けられていて、位置決め孔32及び挿通孔34は共に本体板部27を前後方向に貫通している。補強リブ35は、位置決め用ボス31及び固定用ボス33をピラー部23の両側壁26,28とも連結している。
ピラー部23の外側フランジ17及び内側フランジ21のうち橋絡片25よりも下側の部分には、ロアアウタパネル7bの延出部65の厚さと接着剤88の厚さ分だけ前方に凹んだ段差部37が形成されている。そして、インナパネル5の外側フランジ17及び内側フランジ21のうちロアアウタパネル7bが接着される部分は、上下一対の橋絡片25の間の部分よりも前方に凹んで、ロアアウタパネル7bの外周部が嵌め入れられる嵌入れ部38を構成している。
ロアアウタパネル7bの延出部65の後方に臨む面には、図3及び図4に示すように、当該延出部65の剛性を補強する格子形状(図示する例では田の字状)の補強リブ75が後方に突出させて一体に設けられている。さらに、この延出部65の同面には、窓パネル9の前面に当接するスペーサ凸部77が設けられている。このスペーサ凸部77は、ロアアウタパネル7bのロア側段差部63と窓パネル9との間にこれら両パネル7b,9の接着に必要な間隔を保持するスペーサとして機能する。本実施形態のスペーサ凸部77は、補強リブ75と一体に形成されている。
また、この延出部65の先端には、橋絡片25の本体板部27と対向する面を有するL字形板状の突出片67が上方に突出させて設けられている。この突出片67は、橋絡片25の本体板部27と対向する面に、ピラー部23側に突出したピン形状の位置決め突起69と、固定用の挿通孔71とを有する。位置決め突起69は、突出片67のうち位置決め用ボス31に対応する部分に設けられている。ロアアウタパネル7bは、この位置決め突起69を位置決め孔32に挿入することで位置決めされる。
固定用の挿通孔71は、突出片67のうち固定用ボス33の挿通孔34に対応する部分に形成されている。そして、橋絡片25と突出片67とは、両方の挿通孔34,71を後方から挿通させたタッピングネジ73で締結される。これによって、ロアアウタパネル7bをインナパネル5に接着するときには、そのインナパネル5に対するロアアウタパネル7bの位置決め箇所及び締結箇所がピラー部23の底面部24よりも手前(車両後方)の開口側に位置するので、ロアアウタパネル7bの延出部65をインナパネル5に固定する作業を容易化でき、ロアアウタパネル7bをインナパネル5に組み付け易くなっている。
また、図示しないが、インナパネル5の外側フランジ17及び内側フランジ21のうちアッパアウタパネル7aが接着される部分も、ピラー部23のこれら両フランジ17,21のうち上下一対の橋絡片25の間の部分よりも前方に凹んで、アッパアウタパネル7aの外周部が嵌め入れられる嵌入れ部38を構成している。そして、アッパアウタパネル7a及びロアアウタパネル7bの延出部62,65は、上記嵌入れ部38に嵌め入れられてインナパネル5に固定された状態で、ピラー部23の両側壁26,28のうち上下一対の橋絡片25の両側及びそれら一対の橋絡片25の間の部分と面一の連続した窓パネル接着面を形成する。
窓パネル9は、ガラス製又は樹脂製のパネルであって、図2に示すように、バックドア1の左右両端に亘って車幅方向に延びる横長の略台形状に形成されている。この窓パネル9は、アッパアウタパネル7aのアッパ側段差部61とロアアウタパネル7bのロア側段差部63との間に嵌め込まれて、窓用開口13を塞ぐと共に、図4及び図5に示すように両ピラー部23の開口を覆っている。そして、窓パネル9の外周部分は、上記窓パネル接着面、アッパ側段差部61及びロア側段差部63とそれに連続する外側フランジ17及び内側フランジ21とに後方から接着剤91で接着されている。
窓パネル9のうち窓用開口13に対応する領域は透明な窓領域9aであって、この窓領域9aの外側に位置する領域は黒色のセラミックス等からなる隠蔽層によって隠蔽された隠蔽領域9bとなっている。窓パネル9の隠蔽領域9bは、アッパ側段差部61及びロア側段差部63と各ピラー部23とに対応する部分を含む。そのことで、インナパネル5、アッパアウタパネル7a及びロアアウタパネル7bと窓パネル9との接着部分とピラー部23の内側構造とが、窓パネル9の隠蔽領域9bにより車外側から視認されないように隠蔽されている。
次に、上記バックドア1の組立て手順について、図6を参照しながら説明する。図6は、インナパネル5にロアアウタパネル7bを取り付ける工程を示す図1のVI−VI線に対応する部分の断面図であって、(a)は、同工程においてインナパネル5にロアアウタパネル7bを位置決めした状態を示し、(b)は、同工程において位置決め箇所を回転中心にロアアウタパネル7bを回転させている途中の状態を示し、(c)は、同工程においてロアアウタパネル7bを回転させた後の状態を示す図である。
まず、インナパネル5の接着面に接着剤88を塗布する。このとき、インナパネル5の外側フランジ17及び内側フランジ21の他に、インナ縦パネル部53及びインナ横パネル部55の接着面にも接着剤88を塗布しておく。
次いで、インナパネル5の下半部にロアアウタパネル7bを重ね合わせて、両者を貼り合わせる。
具体的には、まず、図6(a)に示すように、ロアアウタパネル7bをインナパネル5に対して上側部分が相対的に接近し且つ下側部分が相対的に離間するように傾斜させた姿勢とし、当該ロアアウタパネル7bの両延出部65の位置決め突起69を対応する橋絡片25の位置決め孔32にそれぞれ挿入することで、ロアアウタパネル7bをインナパネル5に位置決めする。このとき、ロアアウタパネル7bの下側部分は、位置決め孔32に挿入された位置決め突起69を支点としてインナパネル5から離れるように浮き上がった状態とされる。
続いて、このように浮き上がった状態のロアアウタパネル7bを、図6(b)に示すように、位置決め突起69を中心に、アウタ凸コーナー部89がインナ凸コーナー部57に接近するように回転させる。この回転途中で、インナ横パネル部55とアウタ横パネル部85とがすれ違う。このとき、ロアアウタパネル7bの回転中心がピラー部23の開口付近に位置付けられているので、アウタ横パネル部85をインナ横パネル部55に対しそこに塗布した接着剤88の若干下側から重ね合せられる。これにより、これらインナ横パネル部55とアウタ横パネル部85との間に接着不具合が生じるのを防止することができる。
このことについて図7を参照しながら詳述する。図7(a),(b)及び(c)は、インナパネル5にロアアウタパネル7bを取り付ける従来の工程を示す図6(a),(b)及び(c)にそれぞれ相当する図である。
従来は、図7(a)に示すように、ロアアウタパネル7bの上端部に形成された位置決め孔203に、ピラー部23の底面部24に設けた位置決め凸部201を差し込んで位置決めしていたため、ロアアウタパネル7bをその位置決めした部分を中心にインナパネル5に近づけるように回転させて、インナ凸コーナー部57のインナ横パネル部55とアウタ凸コーナー部89のアウタ横パネル部85とを互いにすれ違うように重ね合わせることで接着すると、図7(b)に示すように、ロアアウタパネル7bを回転させている途中でアウタ横パネル部85の下端部がインナ横パネル部55に塗布した接着剤88に当たって削ぎ落とされる。そうなると、図7(c)に示すように、インナ横パネル部55とアウタ横パネル部85との間に隙間Sが形成されて、これら両パネル部55,58の接着性が損なわれる。
これに対し、本実施形態では、上記従来の構成に比べて、ロアアウタパネル7bの回転中心となる位置決め箇所が橋絡片25によって後方に位置することにより、アウタ横パネル部85の回転軌跡がインナ横パネル部55に対して離れ、上述した通り、アウタ横パネル部85がインナ横パネル部55に対しそこに塗布した接着剤88の下側から重ね合せられるため、アウタ横パネル部85の下端部がインナ横パネル部55に塗布された接着剤88に当たってその接着剤88が削ぎ落とされるのを回避することができ、インナ横パネル部55とアウタ横パネル部85との間に接着剤88が隙間なく充填される。そのことで、これらインナ横パネル部55とアウタ横パネル部85との間に接着不具合が生じるのを防止することができる。
ロアアウタパネル7bを回転させ終えると、ロアアウタパネル7bがインナパネル5の下半部を覆い、インナパネル5に接着剤88を介して貼り付けられた状態となる。その状態で、両延出部65の固定用の挿通孔71とそれに対応する橋絡片25の挿通孔34とにタッピングネジ73を挿通して、ロアアウタパネル7bをインナパネル5に仮固定する。
次に、インナパネル5の上部にアッパアウタパネル7aをロアアウタパネル7bと同様な手順で位置合わせしながら重ね合わせて、両者を接着剤88で貼り合わせた後にタッピングネジ73で仮固定する。
しかる後、アッパアウタパネル7aのアッパ側段差部61と、ロアアウタパネル7bのロア側段差部63と、外側フランジ17及び内側フランジ21のうち上下一対の橋絡片25の間でこれら両段差部61,63の各延出部65に連続する部分とに接着剤91を塗布し、インナパネル5とアウタパネル7との接合体に対しアッパアウタパネル7aとロアアウタパネル7bとの間に窓パネル9を重ねあわせて、両者を貼り合わせる。
最後に、これらインナパネル5、アウタパネル7及び窓パネル9を貼り合わせた接合体を乾燥炉に搬送し、乾燥炉で接着剤88,91を完全に硬化させることにより、インナパネル5、アウタパネル7及び窓パネル9を互いに接着させる。以上の手順により、バックドア1を組み立てることができる。
−実施形態の効果−
この実施形態によれば、インナパネル5のピラー部23にその両側壁26,28を橋渡しして連結する橋絡片25を上下一対に設けるようにしたから、当該ピラー部23の剛性が高められると共に、外部からの押圧や温度変化によってピラー部23に対しその開口を開く方向へ変形させる力が働いても、ピラー部23の変形が橋絡片25で抑えられる。これによって、ピラー部23と窓パネル9との寸法関係を成るべく維持して、車体101に対するバックドア1の組付け性を向上させることができ、且つバックドア1の見栄えを良くすることができる。さらに、アッパアウタパネル7a及びロアアウタパネル7bをインナパネル5に接着する際の位置決めに橋絡片25を用いるようにしたので、位置決めによるヒケがインナパネル5の車両前方に臨む面に生じることがなく、たとえ当該橋絡片25によるヒケがインナパネル5の表面に生じてもその位置はピラー部23の側壁26,28であることから視認され難い。そのことでも、バックドア1の見栄えを良くすることができる。
なお、上記実施形態では、アッパアウタパネル7a及びロアアウタパネル7bの両方がインナパネル5に接着する際の位置決めに橋絡片25を用いる形態を例示したが、これに限らず、アッパアウタパネル7a及びロアアウタパネル7bのうち一方のパネルのみが橋絡片25を位置決めに用いる形態であってもよい。すなわち、橋絡片25は、インナパネル5の両ピラー部23の上下一方側だけに設けられていてもよい。このような構成であっても、車体101に対するバックドア1の組付け性を向上させ、且つバックドア1の見栄えを良くすることができる。
また、上記実施形態では、アッパアウタパネル7a及びロアアウタパネル7bが共に樹脂製パネルである形態を例示したが、これに限らず、これら両パネル7a,7bは、例えば金属製パネル等のその他の材料からなるパネルであってもよい。
また、上記実施形態では、インナパネル5の下半部に設けられたインナ凸コーナー部57と、ロアアウタパネル7bに設けられたアウタ凸コーナー部89とが重ね合わせられて接着剤88で接着された構造を有するバックドア1を例示したが、これに限らず、これらインナ凸コーナー部57とアウタ凸コーナー部89との重ね合わせ構造と同様な構造は、アッパアウタパネル7bとそれに対応するインナパネル5部分にも設けられていてもよい。
具体的には、インナパネル5のうち窓用開口13よりも上側に、車両後方に臨む第1パネル部としてのインナ縦パネル部と、そのインナ縦パネル部と交差する方向に延びる第2パネル部としてのインナ横パネル部とで構成されたインナ凸コーナー部が設けられ、アッパアウタパネル7aに、インナ縦パネル部に対向する第3パネル部としてのアウタ縦パネル部と、インナ横パネル部に対向する第4パネル部としてのアウタ横パネル部とで構成されたアウタ凸コーナー部が設けられていてもよい。この場合には、アッパアウタパネル7bのアウタ横パネル部とインナ横パネル部との間においても、これら両パネル部を重ね合わせる際の接着剤88の削ぎ落としを回避し、接着不具合が生じるのを防止することができる。
また、上記実施形態では、アッパアウタパネル7a及びロアアウタパネル7bをインナパネル5に取り付けるときにインナパネル5のみに接着剤88を塗布しているが、これに限定されず、アッパアウタパネル7a及びロアアウタパネル7bに接着剤88を塗布してもよく、また、これらアッパアウタパネル7a及びロアアウタパネル7bとインナパネル5との両方に接着剤88を塗布するようにしても構わない。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に記載の範囲に限定されない。上記各実施形態が例示であり、それらの各構成要素の組合せに、さらに色々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲に属することは当業者に理解されるところである。
以上説明したように、本発明は、車両用バックドアについて有用であり、特に、車体に対するバックドアの組付け性を向上させ、且つバックドアの見栄えを良くすることが要望される車両用バックドアに適している。
1 車両用バックドア
5 インナパネル
7 アウタパネル
7a アッパアウタパネル
7b ロアアウタパネル
9 窓パネル
13 窓用開口
23 ピラー部
25 橋絡片
26 外側壁
28 内側壁
32 位置決め孔
34 挿通孔
53 インナ縦パネル部(第1パネル部)
55 インナ横パネル部(第2パネル部)
65 延出部
69 位置決め突起
71 挿通孔
73 タッピングネジ
85 アウタ横パネル部(第4パネル部)
87 アウタ縦パネル部(第3パネル部)

Claims (3)

  1. 上側に窓用開口(13)を有し、該窓用開口(13)の車幅方向における両側部分が車両後方に開口を向ける水平断面凹状のピラー部(23)で構成された樹脂製のインナパネル(5)と、
    前記インナパネル(5)のうち前記窓用開口(13)よりも上側の部分に対し車両後方に対応させて取り付けられるアッパアウタパネル(7a)と、前記インナパネル(5)のうち前記窓用開口(13)よりも下側の部分に対し車両後方に対応させて取り付けられるロアアウタパネル(7b)とを有するアウタパネル(7)と、
    前記アッパアウタパネル(7a)と前記ロアアウタパネル(7b)との間で前記窓用開口(13)を塞ぐと共に、前記両ピラー部(23)の開口を覆う窓パネル(9)と、を備えた車両用バックドアであって、
    前記インナパネル(5)には、前記ピラー部(23)の両側壁(26,28)を橋渡しして連結し、車両後方に開口した位置決め孔(32)を有する橋絡片(25)が設けられ、
    前記アッパアウタパネル(7a)及びロアアウタパネル(7b)のうち少なくとも一方のパネルには、前記インナパネル(5)のピラー部(23)に対応する箇所に延び、前記ピラー部(23)側に突出した位置決め突起(69)を有する延出部(65)が設けられ、
    前記延出部(65)が設けられたパネルは、前記位置決め突起(69)を前記橋絡片(25)の位置決め孔(32)に挿入することで位置決めされて、前記インナパネル(5)に接着されている
    ことを特徴とする車両用バックドア。
  2. 請求項1に記載された車両用バックドアにおいて、
    前記インナパネル(5)には、車両後方に臨む第1パネル部(53)と、該第1パネル部(53)と交差する方向に延びる第2パネル部(55)とで構成されたインナ凸コーナー部(57)が設けられ、
    前記アッパアウタパネル(7a)及びロアアウタパネル(7b)のうち前記延出部(65)が設けられたパネルには、前記第1パネル部(53)に対向する第3パネル部(87)と、前記第2パネル部(55)に対向する第4パネル部(85)とで構成されたアウタ凸コーナー部(89)が設けられ、
    前記インナ凸コーナー部(57)の第2パネル部(55)と前記アウタ凸コーナー部(89)の第4パネル部(85)とは、前記インナパネル(5)に対し、前記位置決め孔(32)に挿入された前記位置決め突起(69)を中心に前記延出部(65)が設けられたパネルを回転させて、互いにすれ違うように重ね合わせることにより接着されている
    ことを特徴とする車両用バックドア。
  3. 請求項1又は2に記載された車両用バックドアにおいて、
    前記橋絡片(25)と前記延出部(65)とは、互いに対応する挿通孔(34,71)を有し、これら両挿通孔(34,71)を挿通させたネジ(73)で締結されている
    ことを特徴とする車両用バックドア。
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