以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、説明の便宜上、車両前後方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、車両前方を向いて車幅方向における左側を「左」、右側を「右」と称し、車高方向における上側を「上」、下側を「下」と称する。
図1に、この実施形態に係るバックドア1を後側から見た斜視図を示す。図2に、バックドア1の分解斜視図を示す。図3に、バックドア1のアッパアウタパネル69側の要部の分解斜視図を示す。図4に、バックドア1のロアアウタパネル71側の要部の分解斜視図を示す。また、図5に、図1のV−V線におけるバックドア1の断面図を示す。
図1に示すバックドア1は、ハッチバック車の車体後端に設けられたバックドア開口を開閉する上下開閉式のバックドアである。このバックドア1は、図2に示すように、車内側(前側)に位置するインナパネル3と、車外側(後側)に位置するアウタパネル5及び窓パネル7とを主たる構成として備える。これらインナパネル3、アウタパネル5及び窓パネル7は、互いに接着剤72,129により接合されている。
インナパネル3は、射出成形などで成形される一枚物の樹脂成形品であって、例えば、ガラス繊維入りポリプロピレン(PP−GF:Polypropylene Glass Fiber)や炭素繊維入りポリプロピレン(PP−CF:Polypropylene Carbon Fiber)などの繊維補強材を含有する熱可塑性樹脂からなる。インナパネル3の上半部分には、車幅方向に延びる略矩形状の窓用開口9が形成されている。
インナパネル3のうち窓用開口9の周縁部分には、後方に立ち上がった内側立壁11と、内側立壁11の後端から窓用開口9の内方へ突出した内側接合片13とが設けられている。さらに、インナパネル3の外周縁部には、後方に立ち上がった外側立壁15と、外側立壁15の後端から外側方へ突出した外側接合片17とが設けられている。このように、インナパネル3は全体として、窓用開口9周りの内周縁部13と外周縁部15とが後方に立ち上がった凹形状とされている。
そして、インナパネル3のうち窓用開口9の車幅方向における両側の部分は、後方に開口を向ける水平断面凹状に形成されたピラー部19をそれぞれ構成している。ピラー部19は、凹状部分の底面を構成する底面部21と、車幅方向における内側に位置する内側壁23と、車幅方向における外側に位置する外側壁25とで構成されている。内側壁23は、内側立壁11及び内側接合片13の一部で形成されている。外側壁25は、外側立壁15及び外側接合片17の一部で形成されている。
ピラー部19内には、内側壁23と外側壁25とを左右に橋渡しして連結する橋絡片27が1つずつ設けられている。橋絡片27の車幅方向における車内側の端部は内側壁23に一体に接続され、橋絡片27の車幅方向における車外側の端部は外側壁25に一体に接続されている。この橋絡片27は、後面を後側斜め下方に向けた姿勢に形成された板状片であり、アウタパネル5を接合する際の位置決めに用いられる構造物である他、ピラー部19の剛性を向上させる役割を担っている。
橋絡片27には、アウタパネル5との位置決めに用いられる位置決めピン33と、締結孔を有するボス部37とが、後方に向けて突出させて設けられている。これら位置決めピン33とボス部37とは左右に並べて配置されている。本実施形態では、位置決めピン33が車幅方向における内側に位置し、ボス部37が車幅方向における外側に位置している。位置決めピン33は、後側に向かって斜め下方に延びており、位置決め部の一例である。ボス部37は、位置決めピン33と同じ方向に傾斜している。
また、外側接合片17のうちピラー部19を構成するピラー接合部分39には、アウタパネル5との接合部分に沿う方向、つまり上下方向においてクランク状に折れ曲がった屈曲部41A,41Bが設けられている。屈曲部41A,41Bは、ピラー接合部分39の上下両側にそれぞれ形成されている。
上側の屈曲部41Aは、後述するリヤスポイラ73に接合される部分であって、窓パネル7を嵌め込むための段差を形成する部分を兼ねる。この屈曲部41Aは、図3〜図5に示すように、後側に向かって斜め下方に延びる上壁部43と、上壁部43の後端から下方に延びる張出し後壁部45と、張出し後壁部45の下端から前方に延びる上側立壁部47と、上側立壁部47の前端から下方に延びる段落ち後壁部49によって構成されている。
上壁部43の車外側の面は後側斜め上方に臨んでおり、張出し後壁部45の車外側の面と段落ち後壁部49の車外側の面は共に後方に臨んでいる。上側立壁部47の車外側の面は、位置決めピン33のある下方に臨む上側立面51を構成している。張出し後壁部45と上側立壁部47とは、後方に向けて張り出したインナ凸コーナー部53を形成している。また、上側立壁部47と段落ち後壁部49とは、前方に向けて凹んだインナ凹コーナー部55を形成している。
他方、下側の屈曲部41Bは、窓パネル7を嵌め込むための段差を形成する部分である。この屈曲部41Bは、上下方向に延びる段落ち後壁部57と、段落ち後壁部57の下端から後方に延びる下側立壁部59と、下側立壁部59の後端から下方に延びる張出し後壁部61とによって構成されている。
段落ち後壁部57の車外側の面と張出し後壁部61の車外側の面は共に後方に臨んでいる。下側立壁部59の車外側の面は、位置決めピン33のある上方に臨む下側立面63を構成している。段落ち後壁部57と下側立壁部59とは、前方に向けて凹んだインナ凹コーナー部65を形成している。また、下側立壁部59と張出し後壁部61とは、後方に向けて張り出したインナ凸コーナー部67を形成している。
アウタパネル5は、上下に2分割されており、上側に位置するアッパアウタパネル69と、下側に位置するロアアウタパネル71とで構成されている。これらアッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71は、それぞれ射出成形などによって成形される樹脂成形品であって、例えば、タルク入りポリプロピレン(PP−T:Polypropylene Talc)やそれにエチレンプロピレンジエンメチレンゴム(EPDM:Ethylene Propylene Diene Monomer)を混合した合成樹脂からなる。
アッパアウタパネル69は、インナパネル3のうち窓用開口9よりも上側の部分に対向し、同部分に対応した形状で左右に延びる横長のパネルであって、中空部を有する側面視で略三角形状に形成されている。このアッパアウタパネル69は、インナパネル3の内側接合片13のうち上辺部と、外側接合片17のうち左右両側の側辺部におけるピラー部19の上端寄りの部分及び上辺部とに後方から接着剤72で接合されている。
アッパアウタパネル69の上側部分は、後方に向かって突出したリヤスポイラ73を構成している。リヤスポイラ73は、アッパアウタパネル69の車幅方向における全体に亘って形成されている。このリヤスポイラ73は、後側に向かって斜め下方に延びるスポイラ上壁部75と、スポイラ上壁部75の後端から下方に延びるスポイラ後壁部77と、スポイラ後壁部77の下端から前方に延びるスポイラ下壁部79とによって構成されている。
スポイラ上壁部75の車外側の面は後側斜め上方に臨んでおり、スポイラ後壁部77の車外側の面は後方に臨んでいる。また、スポイラ下壁部79の車外側の面は、位置決めピン33のある下方に臨んでいる。これらスポイラ後壁部77とスポイラ下壁部79とは、後方に向けて張り出すアウタ凸コーナー部81を形成している。
さらに、スポイラ下壁部79の前端縁には、下方へ延びるアッパ接合片83が車幅方向における全体に亘って設けられている。このアッパ接合片83とスポイラ下壁部79とは、前方に向けて凹んだアウタ凹コーナー部85を形成している。そして、リヤスポイラ73とアッパ接合片83は、上下方向においてクランク状に折れ曲がった屈曲部87を構成している。
アッパアウタパネル69の屈曲部87のうち左右の両端部分は、インナパネル3の上側の屈曲部41Aに対応する形状に形成されている。すなわち、アッパアウタパネル69の屈曲部87のうち左右の両端部分では、アウタ凸コーナー部81が、インナ凸コーナー部53に倣う形状に、アウタ凹コーナー部85がインナ凹コーナー部55に倣う形状にそれぞれ形成されている。そして、アッパアウタパネル69の屈曲部87はインナパネルの上側の屈曲部41Aに接着剤72を介して接合されている。
具体的には、スポイラ上壁部75の車幅方向における両端部分の車内側の面は、インナパネル3の上壁部43の車外側の面と対面し、接着剤72を介して接合されている。スポイラ後壁部77の車幅方向における両端部分の車内側の面は、インナパネル3の張出し後壁部45の車外側の面と対面し、接着剤72を介して接合されている。スポイラ下壁部79の車幅方向における両端部分の車内側の面は、インナパネル3の上側立壁部47の車外側の面と対面し、接着剤72を介して接合されている。アッパ接合片83の車幅方向における両端部分の車内側の面は、インナパネル3の段落ち後壁部49と対面し、接着剤72を介して接合されている。
アッパ接合片83は、インナパネル3の内側接合片13のうち上辺部とも接着剤72で接合されている。このアッパ接合片83の車幅方向における両端部には、ピラー部19に沿って橋絡片27に対応する箇所にまで下方へ延びる延出片89がそれぞれ設けられている。この延出片89は、ピラー部19のうち橋絡片27を含めそれよりも上側の部分の開口を覆っている。延出片89の先端側(つまり下側)には、車内側に向けて凹んだ凹部91が設けられている。
凹部91は、橋絡片27の後面に対応する底面部93を有する。その底面部93には、対応する橋絡片27の位置決めピン33が挿通される位置決め孔95と、ボス部37が挿通される挿通孔97とが左右に並べて形成されている。アッパアウタパネル69は、インナパネル3への貼合せ時に、位置決めピン33が位置決め孔95に挿通されることでインナパネル3に位置決めされ、且つ挿通孔97に挿通させたボス部37にタッピングねじ98を締結することでインナパネル3に固定される。
そして、延出片89のうち少なくとも基端部分は、平板状に形成されており、そこにアッパアウタパネル69を折曲げ可能とするヒンジ部99が設けられている。ヒンジ部99は、車幅方向に延びる断面V字状の溝101が形成された薄肉部分によって構成されていて、延出片89の車幅方向における全体に亘って直線状に形成されている。そのことで、アッパアウタパネル69は、インナパネル3への接合前に、位置決めピン33に位置決めされる延出片89の先端側の部分よりも屈曲部87側、スポイラ下壁部79寄りの位置で当該屈曲部87をインナパネル3の接合後の状態に対してインナパネル3の上側立面51から離間する方向へ相対的に傾斜させた姿勢に折り曲げることが可能となっている。
なお、延出片89のうちヒンジ部99が設けられた基端部分を除いては、バックドア1の外観形状に応じて湾曲していてもよい。本実施形態では、延出片89のうち少なくともヒンジ部99の形成部分(基端部分)が平板状とされているので、延出片89が、ヒンジ部99を基点として比較的曲げやすくなっている。
ロアアウタパネル71は、インナパネル3のうち窓用開口9よりも下側の部分に対向し、同部分に対応した形状とされている。このロアアウタパネル71は、インナパネル3の内側接合片13のうち下辺部と、外側接合片17のうち左右両側の側辺部におけるピラー部19の下端寄りの部分からそれよりも下側にかけての部分及び下辺部とに接着剤72で接合されている。
ロアアウタパネル71の上縁部には、上下方向においてクランク状に折れ曲がった屈曲部103が設けられている。この屈曲部103は、上下方向に延びるロア後壁部105の上端部分と、ロア後壁部105の上端縁から前方に延びる段差壁部107と、段差壁部107の前端から上方に延びるロア接合片109とによって構成されている。
ロア後壁部105の上端部分と段差壁部107とは、後方に向けて張り出したアウタ凸コーナー部111を形成している。また、段差壁部107とロア接合片109とは、車幅方向における全体に亘って設けられており、前方に向けて凹んだアウタ凹コーナー部113を形成している。
ロアアウタパネル71の屈曲部103のうち左右の両端部分は、インナパネル3の下側の屈曲部41Bに対応する形状に形成されている。すなわち、ロアアウタパネル71の屈曲部41Bのうち左右の両端部分では、アウタ凸コーナー部111が、インナ凸コーナー部67に倣う形状に、アウタ凹コーナー部113がインナ凹コーナー部65に倣う形状にそれぞれ形成されている。そして、ロアアウタパネル71の屈曲部103は、インナパネル3の下側の屈曲部41Bに接着剤72を介して接合されている。
具体的には、ロア後壁部105の上端部分のうち車幅方向における両端部分の車内側の面は、インナパネル3の張出し後壁部61の車外側の面と対面し、接着剤72を介して接合されている。段差壁部107のうち車幅方向における両端部分の車内側の面は、インナパネル3の下側立壁部59と対面し、接着剤72を介して接合されている。ロア接合片109のうち車幅方向における両端部分の車内側の面は、インナパネル3の段落ち後壁部57と対面し、接着剤72を介して接合されている。
ロア接合片109は、インナパネル3の内側接合片13のうち下辺部とも接着剤72で接合されている。このロア接合片109の車幅方向における両端部には、ピラー部19に沿って橋絡片27に対応する箇所にまで上方へ延びる延出片115がそれぞれ設けられている。この延出片115は、ピラー部19のうち橋絡片27を含めそれよりも下側の部分の開口を覆っている。延出片115の先端側(つまり上側)には、車内側に向けて凹んだ凹部117が設けられている。
凹部117は、橋絡片27の後面に対応する底面部119を有する。その底面部119には、対応する橋絡片27の位置決めピン33が挿通される位置決め孔121と、ボス部37が挿通される挿通孔123とが左右に並べて形成されている。ロアアウタパネル71は、インナパネル3への貼合せ時に、位置決めピン33が位置決め孔121に挿通されることでインナパネル3に位置決めされ、且つ挿通孔123に挿通させたボス部37に締結されるタッピングねじ98でインナパネル3にアッパアウタパネル69と共締めされる。
そして、延出片115のうち少なくとも基端部分は、平板状に形成されており、そこにロアアウタパネル71を折曲げ可能とするヒンジ部125が設けられている。ヒンジ部125は、車幅方向に延びる断面V字状の溝127が形成された薄肉部分によって構成されていて、延出片115の車幅方向における全体に亘って直線状に形成されている。そのことで、ロアアウタパネル71は、インナパネル3への接合前に、位置決めピン33に位置決めされる延出片115の先端側の部分よりも屈曲部103側、段差壁部107寄りの位置で当該屈曲部103をインナパネル3の接合後の状態に対してインナパネル3の下側立面63から離間する方向へ相対的に傾斜させた姿勢に折り曲げることが可能となっている。
なお、延出片115のうちヒンジ部125が設けられた基端部分を除いては、バックドア1の外観形状に応じて湾曲していてもよい。本実施形態では、延出片115のうち少なくともヒンジ部125の形成部分(基端部分)が平板状とされているので、延出片89が、ヒンジ部125を基点として比較的曲げやすくなっている。
窓パネル7は、バックドア1の左右両端に亘って車幅方向における全体に延びる横長のパネルであって、アッパアウタパネル69とロアアウタパネル71との間に嵌め込まれており、インナパネル3の窓用開口9を閉塞すると共に両ピラー部19の開口を後側で覆っている。この窓パネル7は、インナパネル3の外側接合片17のうち左右両側の側辺部と、アッパアウタパネル69のアッパ接合片83と、ロアアウタパネル71のロア接合片109とに、接着剤129を介して接合されている。
この窓パネル7は、樹脂製又はガラス製の透明な本体パネル131と、この本体パネル131の外周部分の車内側の面に全周に亘って設けられた黒色のセラミックス等からなる隠蔽層133とを備える。
窓パネル7のうち隠蔽層133の内側に位置する領域は、窓用開口9に対応し、本体パネル131の一部からなる採光可能な窓領域135を構成している。窓パネル7のうち隠蔽層133が設けられた領域は、当該領域との重なり部分を隠蔽する隠蔽領域137を構成している。この隠蔽領域137は、両ピラー部19、アッパ接合片83及びロア接合片109に対応する部分を含む。そのことで、インナパネル3、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71と窓パネル7との重なり部分は、車外側から視認されないようになっている。
上記構成のバックドア1を製造する方法について、以下に、図6及び図7を参照しながら説明する。
図6(A)は、ロアアウタパネル71をインナパネル3に位置合わせして一部貼り合わせた状態を示す図5相当箇所の断面図である。図6(B)は、ロアアウタパネル71の屈曲部103を含む下側部分をインナパネル3側へ回転させる様子を示す図5相当箇所の断面図である。図7(A)は、アッパアウタパネル69をインナパネル3に位置合わせして一部貼り合わせた状態を示す図5相当箇所の断面図である。図7(B)は、アッパアウタパネル69の屈曲部87を含む上側部分をインナパネル3側へ回転させる様子を示す図5相当箇所の断面図である。
バックドア1を組み立てるには、まず、予め射出成形によって作製しておいたインナパネル3、アッパアウタパネル69、ロアアウタパネル71を準備する(準備工程)。このとき既に、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71のうち各延出片89,115の基端部分には、その成形時に併せて、薄肉部分からなるヒンジ部99,125が形成されている。
次に、インナパネル3のうちアッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71との接合面に接着剤72を塗布する(接着剤塗布工程)。具体的には、接着剤72は、インナパネル3において、内側接合片13のうち上下両辺部の全長及び左右両側辺部の上下両端部分と、外側接合片17のうち上下両辺部の全長及び左右両側辺部のピラー部19の上下両端部分とそれ以外のピラー部19を除く部分とに塗布される。
続いて、インナパネル3に対し、ロアアウタパネル71及びアッパアウタパネル69をこの順で貼り合わせる(貼合せ工程)。
ロアアウタパネル71をインナパネル3に貼り合わせるには、まず、ロアアウタパネル71を、ヒンジ部125で折り曲げて屈曲部103を含む大半部分を延出片115に対して傾斜させた姿勢とし、その状態を、作業者が手で或いは治具等を用いて保持する。そして、図6(A)に示すように、ロアアウタパネル71を、全体としては、インナパネル3に対して上側部分が相対的に接近し、且つ下側部分が相対的に離間するように傾斜させた姿勢とし、その状態で、ロアアウタパネル71の両延出片115の位置決め孔121に対し対応する橋絡片27の位置決めピン33をそれぞれ挿入することにより、ロアアウタパネル71をインナパネル3に位置決めする。
このとき、ロアアウタパネル71は、位置決め孔121が設けられた部分(延出片115の先端側)を中心に、位置決めピン33を位置決め孔121に挿入していくに従ってインナパネル3に接近するように全体的に回転される。そして、位置決めピン33が位置決め孔121に完全に挿入されると、凹部117の底面部119が橋絡片27の後面に宛がわれた状態となる。この段階では、ロアアウタパネル71のうち延出片115以外の屈曲部103を含む大半の部分がインナパネル3から離間しており、ロアアウタパネル71は位置決めがされているものの、インナパネル3に接着されていない状態にある。
その後に、図6(B)に示すように、ロアアウタパネル71の延出片115以外の屈曲部103を含む大半の部分を、傾斜姿勢に保持していた力を解放することにより、ヒンジ部125の弾性力に任せてヒンジ部125を中心としてインナパネル3に接近する方向へ回転させ、インナパネル3に重ねて貼り合わせる。このとき、ロアアウタパネル71の屈曲部103は、段差壁部107の車内側の面がインナパネル3の下側立面63に略正対する方向から宛がわれる恰好で、インナパネル3の下側の屈曲部41Bに被さって貼り合わせられる。
アッパアウタパネル69をインナパネル3に貼り合わせるには、まず、アッパアウタパネル69を、ヒンジ部99で折り曲げて屈曲部87を含む大半部分を延出片89に対して傾斜させた姿勢とし、その状態を、作業者が手で或いは治具等を用いて保持する。そして、図7(A)に示すように、アッパアウタパネル69を、全体としては、インナパネル3に対して下側部分が相対的に接近し、且つ上側部分が相対的に離間するように傾斜させた姿勢とし、その状態で、アッパアウタパネル69の両延出片89の位置決め孔95に対して対応する橋絡片27の位置決めピン33をそれぞれ挿入することにより、アッパアウタパネル69をインナパネル3に位置決めする。
このとき、アッパアウタパネル69は、位置決め孔95が設けられた部分(延出片89の先端側)を中心に、位置決めピン33を位置決め孔95に挿入していくに従ってインナパネル3に接近するように全体的に回転される。そして、位置決めピン33が位置決め孔95に完全に挿入されると、凹部91の底面部93がロアアウタパネル71の凹部117の底面部119に宛がわれた状態となる。この段階では、アッパアウタパネル69のうち延出片89以外の屈曲部87を含む大半の部分がインナパネル3から離間しており、アッパアウタパネル69は位置決めがされているものの、インナパネル3に接着されていない状態にある。
その後に、図7(B)に示すように、アッパアウタパネル69の延出片89以外の大半の部分を、傾斜姿勢に保持していた力を解放することにより、ヒンジ部99の弾性力に任せてヒンジ部99を中心としてインナパネル3に接近する方向へ回転させ、インナパネル3に重ねて貼り合わせる。このとき、アッパアウタパネル69の屈曲部87は、スポイラ下壁部79の車内側の面がインナパネル3の上側立面51に略正対する方向から宛がわれる恰好で、インナパネル3の上側の屈曲部41Aに被さって貼り合わせられる。
次いで、アッパアウタパネル69の延出片89に設けられた挿通孔97とロアアウタパネル71の延出片115に設けられた挿通孔123とにタッピングねじを挿通し、そのタッピングねじを対応する橋絡片27に設けられたボス部37の締結孔35に締結する。そのことで、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71は、インナパネル3に共締めにより固定される。
続いて、インナパネル3及びアウタパネル5を貼り合わせたパネル貼合体のうち窓パネル7との接合面に接着剤129を塗布する。具体的には、接着剤129は、アッパアウタパネル69のアッパ接合片83と、ロアアウタパネル71のロア接合片109と、インナパネル3の内側接合片13及び外側接合片17のうちアッパ接合片83とロア接合片109との間でピラー部19を構成する部分とに塗布される。そして、窓パネル7を、当該パネル貼合体に対し、アッパアウタパネル69とロアアウタパネル71との間に嵌め込んで、接着剤129を介して重ねて貼り合わせる。
しかる後、インナパネル3、アウタパネル5及び窓パネル7を貼り合わせたパネル貼合体を乾燥炉に搬送し、乾燥炉で接着剤72,129を完全に硬化させることにより、インナパネル3、アウタパネル5及び窓パネル7を互いに接合させる。以上の手順を経て、バックドア1を製造することができる。
この実施形態に係る車両用バックドア1によれば、アッパアウタパネル69に、屈曲部87をインナパネル3から離間する方向へ相対的に傾斜させた姿勢に折曲げ可能とするヒンジ部99を、インナパネル3に位置決めされる部分(延出片89の先端側)よりも屈曲部87の段差近く、スポイラ下壁部79寄りに設けるようにしたから、アッパアウタパネル69をインナパネル3に貼り合わせる作業として、アッパアウタパネル69をヒンジ部99で折り曲げて屈曲部87を傾斜させた姿勢とした状態でインナパネル3に位置決めした後に、アッパアウタパネル69の屈曲部87を、ヒンジ部99を中心として回転させてインナパネル3の屈曲部41Aに被せるといった手順を採用することができる。
そうした貼合せ手順によれば、アッパアウタパネル69の屈曲部87を回転させる際の回転中心が屈曲部87の段差に近づく分、アッパアウタパネル69の屈曲部87の回転軌跡が安定するので、インナパネル3の段差を形成する上側立壁部47に塗布された接着剤72が、アッパアウタパネル69の回転途中で、アッパアウタパネル69のスポイラ下壁部79が前方に構成するアウタ凹コーナー部85に当たって削ぎ落とされるのを回避できる。これにより、バックドア1の上側の屈曲部41Aにおける接着不良を防止することができる。そして、作業者がアッパアウタパネル69をインナパネル3へ貼り合わせる作業を容易に行えるようになるから、バックドア1の生産性を向上させることができる。
また、この実施形態に係る車両用バックドア1によれば、ロアアウタパネル71に、屈曲部103をインナパネル3から離間する方向へ相対的に傾斜させた姿勢に折曲げ可能とするヒンジ部125を、インナパネル3に位置決めされる部分(延出片115の先端側)よりも屈曲部103の段差近く、段差壁部107寄りに設けるようにしたから、ロアアウタパネル71をインナパネル3に貼り合わせる作業として、ロアアウタパネル71をヒンジ部125で折り曲げて屈曲部103を傾斜させた姿勢とした状態でインナパネル3に位置決めした後に、ロアアウタパネル71の屈曲部103を、ヒンジ部125を中心として回転させてインナパネル3の屈曲部41Bに被せるといった手順を採用することができる。
そうした貼合せ手順によれば、ロアアウタパネル71の屈曲部103を回転させる際の回転中心が屈曲部103の段差に近づく分、ロアアウタパネル71の屈曲部103の回転軌跡が安定するので、インナパネル3の段差を形成する下側立壁部59に塗布された接着剤72が、ロアアウタパネル71の回転途中で、段差壁部107が前方に構成するアウタ凹コーナー部113に当たって削ぎ落とされるのを回避できる。これにより、バックドア1の下側の屈曲部41Bにおける接着不良を防止することができる。そして、作業者がロアアウタパネル71をインナパネル3へ貼り合わせる作業を容易に行えるようになるから、バックドア1の生産性を向上させることができる。
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態では、インナパネル3の橋絡片27に位置決め部としての位置決めピン33が設けられ、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71の延出片89,115に位置決めピン33が挿通される位置決め孔95,121が形成されているとしたが、これに限らない。例えば、インナパネル3の橋絡片27に位置決め部としての位置決め孔が形成され、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71の延出部89,115に位置決め孔に挿通される位置決めピンが設けられていても構わない。要は、インナパネル3に位置決め用の構造物や形状からなる位置決め部が形成されており、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71がその位置決め部を用いて位置決めされるようになっていればよい。
また、上記実施形態では、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71のヒンジ部99,125は表面(後面)に溝101,127が形成された薄肉部分からなるとしたが、これに限らない。当該薄肉部分を形成するための溝101,127は、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71の裏面(前面)に形成されていてもよく、それらのパネル69,71の表裏両面に形成されていても構わない。さらに、溝101,127が形成された薄肉部分は、ヒンジ部99,125の一例に過ぎず、アッパアウタパネル69やロアアウタパネル71の可撓性を折曲げ可能な程度にまで高めることが可能な構成あれば、部分的に柔軟な材料で形成したり貫通孔を形成したりする等、アッパアウタパネル69やロアアウタパネル71の可撓性を部分的に高めるための任意の手段を採用することができる。
また、上記実施形態では、延出片89,115のうち少なくともヒンジ部99,125が設けられる基端部分は平板状に形成されているとしたが、これに限らない。延出片89,115は、ヒンジ部99,125で折曲げ可能であれば、その全体がバックドア1の外観形状に応じて車幅方向に湾曲している等、ヒンジ部99,125が設けられる基端部分までも湾曲した構成とされていてもよい。
また、上記実施形態では、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71の位置決めにインナパネル3の各ピラー部19に1つずつ設けられた橋絡片27の位置決めピン33を共用する形態を例示したが、これに限らない。インナパネル3には、アッパアウタパネル69の位置決めに用いられる位置決めピン33を有する橋絡片27と、ロアアウタパネル71の位置決めに用いられる位置決めピン33を有する橋絡片27とが別個に設けられ、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71は、それぞれ対応する橋絡片27の位置決めピン33により位置決めするようになっていてもよい。
また、上記実施形態では、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71の両方のパネルにヒンジ部99,125が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限らない。ヒンジ部は、アッパアウタパネル69のみに設けられていてもよいし、ロアアウタパネル71のみに設けられていてもよい。要は、アッパアウタパネル69及びロアアウタパネル71のうち少なくとも一方のパネルにヒンジ部が設けられており、バックドア1の製造において、当該パネルを、ヒンジ部で折り曲げて、屈曲部87,103がインナパネル3の段差を形成する立面から離間する方向へ傾斜した姿勢とできるようになっていればよい。
また、上記実施形態では、バックドア1の製造方法において、アッパアウタパネル69の屈曲部87をインナパネル3の屈曲部41Aに貼り合わせるのに、アッパアウタパネル69の延出片89以外の大半部分をヒンジ部99の弾性力に任せて回転させるとしたが、これに限らない。アッパアウタパネル69の屈曲部87は、作業者の手動により回転させて、インナパネル3の屈曲部41Aに貼り合わせるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、バックドア1の製造方法において、インナパネル3に対しロアアウタパネル71を貼り合わせてからアッパアウタパネル69を貼り合わせるとし、それによって製造されるバックドア1の構成を説明したが、これに限らない。バックドア1は、インナパネル3に対しアッパアウタパネル69を貼り合わせてからロアアウタパネル71を貼り合わせることにより製造されていてもよい。
また、上記実施形態では、アウタパネル5がアッパアウタパネル69とロアアウタパネル71との2つの分割体で構成されている形態を例示したが、これに限らない。アウタパネル5は、例えば一枚物のパネルで構成されていてもよい。この場合、アウタパネル5は、例えばアッパアウタパネル69とロアアウタパネル71とが延出片89,115同士を接続するように一体的に成形することで作製される。