JP2016069230A - 熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法 - Google Patents

熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】黒鉛部材を高温に曝すことなく、クリープ変形を抑制しながら結晶化度の高い熱分解炭素被膜を黒鉛部材上に形成することのできる熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法を提供する。【解決手段】2000℃未満の温度のCVD炉内で、黒鉛部材に、炭化水素ガスを用いて熱分解炭素を被覆する熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法において、前記熱分解炭素の被覆を酸素の存在下で行うことを特徴とする熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法によって上記課題を解決した。【選択図】なし

Description

本発明は、熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法に関する。
黒鉛材料は、耐熱温度が高く、化学的に安定であるため、半導体製造装置、高温炉、金属溶融用ルツボ、治具など様々な産業分野で使用されている。
このような黒鉛材料としては、コークスなどの粉体を原材料としてブロックに成形され焼成および黒鉛化して得られる多孔質の黒鉛材料が広く用いられている。
しかしながら、このような多孔質の黒鉛材料は、酸素、水などと反応しやすいので、加熱中にわずかの酸素、水などと反応して急速に消耗してしまう問題があり、熱分解炭素の被覆を施すことにより表面積を小さくして消耗速度を遅くする技術が知られている。
特許文献1では、さらに消耗速度を遅くするために、黒鉛基材に1600〜2200℃の温度で2.0g/cm以上のかさ密度を有する熱分解炭素を被覆し、次いで該熱分解炭素被覆黒鉛基材を2500℃以上の温度で熱処理することを特徴とする熱分解炭素被覆黒鉛材の製造法が記載されている。
このような製造方法によれば、耐酸化性の優れた熱分解炭素被覆黒鉛材が得られると記載されている。
一方、非特許文献1には、熱分解炭素(PG)は、その結晶のa面(層面)がほぼ基材の沈積面に平行に配向しているが、沈積条件によって性質はかなり大幅に異なり、特に密度は沈積温度1600℃前後で極小となり、2000℃以上あるいは1200℃以下では黒鉛の理論密度に近い値をとるようになることが記載されている。
特開昭63−210088号公報
石川敏功、長沖通著、「新・炭素工業」、株式会社近代編集社発行、昭和55年10月20日、p93
つまり、1600℃を中心として、1200〜2000℃の成膜条件で得られる熱分解炭素被膜は、密度が低く乱れた結晶構造をとり、酸化消耗の速度が速くなる。このため、成膜した後に2500℃以上で熱処理を施すことにより熱分解炭素被膜の密度を高め、結晶化度を高めようとするのがその特許文献1の趣旨であることがわかる。
ここで、黒鉛材料は一般に2000℃以上の温度で顕著なクリープが認められるようになることが知られている(金順一著、「炭素の機械的性質」、炭素、No66、炭素材料学会編、1971年、p99〜106)。このため、一旦精密に加工した黒鉛部材に2000℃以上の熱を加えると、クリープ変形が生じ、寸法精度が低下してしまう。寸法精度が低下すると、治具では位置決め精度が悪くなり、高速回転する黒鉛部材では、芯ぶれによる振動などの原因となる。
このため特許文献1に記載の技術のように、熱分解炭素の消耗速度を遅くするために2000℃以上、さらには2500℃以上で加熱すると、黒鉛部材にクリープ変形が生じ様々な問題が生じるようになる。
本発明は、黒鉛部材を高温に曝すことなく、クリープ変形を抑制しながら結晶化度の高い熱分解炭素被膜を黒鉛部材上に形成することのできる熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法を提供することを目的とする。
また本発明は、黒鉛部材上に結晶化度の高い熱分解炭素被膜を有し、高い寸法精度および耐消耗性を有する熱分解炭素被覆黒鉛部材を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、特定温度範囲の化学気相蒸着(CVD)炉内で、かつ酸素の存在下で黒鉛部材に熱分解炭素を被覆し、熱分解炭素被膜を形成することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は、以下の通りである。
1.黒鉛部材に、炭化水素ガスを用いてCVD法により熱分解炭素を被覆する熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法において、
前記CVD法の前記黒鉛部材の温度は、2000℃未満であって、
前記CVD法は酸素の存在下で行うことを特徴とする熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法。
2.前記CVD法の前記黒鉛部材の温度は、1200℃以上である前項1に記載の熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法。
3.前記酸素の分圧は、炭化水素ガスの分圧に対し1000〜17000ppmである前項1または2に記載の熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法。
4.前記酸素は、前記炭化水素ガスにあらかじめ混合して供給する前項1〜3のいずれか一項に記載の熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法。
5.前記炭化水素ガスは、メタンガスである前項1〜4のいずれか一項に記載の熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法。
6.前項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により製造された熱分解炭素被覆黒鉛部材。
本発明によれば、黒鉛部材を高温に曝すことなく、クリープ変形を抑制しながら結晶化度の高い熱分解炭素被膜を黒鉛部材上に形成することのできる熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法を提供することができる。
本発明によれば、2000℃未満の温度のCVD炉内で、黒鉛部材に、炭化水素ガスを用いて熱分解炭素を被覆し、そのとき、前記熱分解炭素の被覆を酸素の存在下で行うことを特徴としている。この構成によれば、黒鉛部材に熱分解炭素を被覆する温度が2000℃未満の低温であっても、雰囲気中に酸素が存在しているので、熱分解炭素の結晶化度を高くすることができる。その理由は定かではないが、原料ガスが酸素によって直接酸化するのではなく、原料ガスが一旦、熱分解炭素として沈積したのち、酸素によって熱分解炭素の一部が酸化するプロセスがあるためであると考えられる。熱分解炭素は、完全な黒鉛の結晶ではなく、結晶構造が乱れて成長した部分を有している。希薄な酸素を含有していると、乱れて成長した部分が、選択的に酸化され取り除かれるという理由により、急速に熱分解炭素の結晶化度を高めることができるものと推測される。
図1は実施例におけるCVD反応炉内の温度および圧力プロファイルを示す図である。 図2は実施例で測定されたラマンR値の結果を示すグラフである。 図3は実験例1で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の断面の拡大写真である。 図4は実験例1で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の表面の拡大写真である。 図5は実験例2で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の断面の拡大写真である。 図6は実験例2で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の表面の拡大写真である。 図7は実験例3で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の断面の拡大写真である。 図8は実験例3で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の表面の拡大写真である。 図9は実験例4で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の断面の拡大写真である。 図10は実験例4で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の表面の拡大写真である。 図11は実験例5で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の断面の拡大写真である。 図12は実験例5で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の表面の拡大写真である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明に用いられる黒鉛部材は、一般的な人造黒鉛を使用することができ、その具体的なサイズや形状等は用途に応じて種々選択することができ、とくに制限されない。なお、熱分解炭素を被覆する前の黒鉛部材の表面粗さRaは0.1μm〜10μmが好ましく、0.3μm〜3μmがより好ましい。表面粗さRaが0.1μm以上であれば、熱分解炭素被膜の密着性が高まるという効果を奏する。また、表面粗さRaが10μm以下であれば、より精密な形状が得られ、寸法精度を高くすることができる。なお、表面粗さRaはJIS B 0601により測定することができる。
また、黒鉛部材の熱膨張係数は、3.0〜5.0×10−6/℃であることが好ましい。熱膨張係数がこの範囲にあれば、黒鉛部材と熱分解炭素被膜との強い密着力を得ることができ、剥がれにくくすることができる。
さらに、黒鉛部材のかさ密度は、1.6〜1.8g/cmであることが好ましい。かさ密度が1.6g/cm以上にあれば、黒鉛部材の強度上の欠陥となる気孔が少ないので高強度の熱分解炭素被覆黒鉛部材を得ることができる。かさ密度が1.8g/cm以下にあれば、熱分解炭素被膜のアンカーとなる気孔を充分に確保することができるので、熱分解炭素を剥がれにくくすることができる。なお、熱分解炭素被膜のかさ密度は、水中置換法で求めることができる。
黒鉛部材上への熱分解炭素の被覆は、CVD炉内で行われる。CVD炉は公知のように、熱分解炭素の被覆を行う反応室、反応室に連結されるとともに炭化水素ガスや他のパージガスを導入するガス導入管、排気ガスを排出する排気管、黒鉛部材を加熱するための加熱手段、必要に応じて反応室を減圧にするための真空ポンプを備えている。具体的には、反応室に黒鉛部材を入れ、加熱手段によりCVD炉内を2000℃未満の温度に加熱しつつ、ガス導入管から反応室内に炭化水素ガスを供給し、排気管から排気ガスを排出し、必要に応じて真空ポンプで反応室を減圧にしながら酸素存在下で黒鉛部材の表面に熱分解炭素被膜を形成するものである。
前記のように、黒鉛部材上への熱分解炭素の被覆は、2000℃未満の温度のCVD炉内で実施される。該温度が2000℃未満であると、黒鉛部材が、クリープ変形を起こしにくく、一旦精密に加工された黒鉛部材が熱分解炭素を被覆しても高い寸法精度を維持することができる。
さらに、黒鉛部材上への熱分解炭素の被覆は、1200℃以上の温度のCVD炉内で実施されることが好ましい。該温度が1200℃以上であると、炭化水素ガスの熱分解が促進され充分な成膜速度を得ることができる。さらに好ましい温度の範囲は、1300〜1800℃である。該温度が1300℃以上であると、さらに炭化水素ガスの熱分解が促進され、さらに充分な成膜速度を得ることができる。該温度が1800℃以下であると、黒鉛部材が、さらにクリープ変形を起こしにくく、一旦精密に加工された黒鉛部材が熱分解炭素を被覆してもさらに高い寸法精度を維持することができる。
炭化水素ガスはとくに制限されないが、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、エチレンガス、アセチレンガス、これらの混合物等が挙げられる。中でも好ましくは、一分子に含まれる炭素原子が最も少ないという理由からメタンガスを使用するのがよい。一分子に含まれる炭素原子が少ないと、1回の分解反応で付着する炭素原子の数を少なくすることができるので、乱れた構造の熱分解炭素被膜の成長を抑制することができると考えられる。また必要に応じて、炭化水素ガスと共に窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給することもできる。
熱分解時のCVD炉内の圧力は、例えば100〜3000Paであり、200〜1000Paであるのがより好ましい。CVD炉内の圧力が100Paより低いと、熱分解炭素被膜の生成速度が遅くなるうえに酸素の圧力も同時に低下するので、酸素による乱れた結晶構造の修復能力も低下すると考えられる。熱分解時のCVD炉内の圧力が3000Paを超えると、炭化水素ガスの平均自由行程が短くなり、黒鉛部材に炭化水素ガスの分子が衝突する前に熱分解し、煤が発生しやすくなり、乱れた構造の熱分解炭素被膜ができやすくなる。また、熱分解炭素被膜を形成する前に炭化水素ガスとの反応により酸素が消費され、結晶欠陥の除去作用が小さくなると考えられる。
CVD炉内の圧力が200Pa以上であると、熱分解炭素被膜の生成速度を早くできるうえに酸素の圧力も同時に高くなるので、酸素による乱れた結晶構造の修復能力も向上すると考えられる。熱分解時のCVD炉内の圧力が1000Pa以下であると、炭化水素ガスの平均自由行程が長くなるので、黒鉛部材に炭化水素ガスの分子が衝突する前に熱分解しにくく、乱れた構造の熱分解炭素被膜ができにくくできる。また熱分解炭素被膜を形成する前に炭化水素ガスとの反応により酸素が消費され、酸素による結晶欠陥の除去作用を大きくできると考えられる。
本発明では、熱分解炭素の被覆は酸素の存在下で行われる。酸素の分圧は、炭化水素ガスの分圧に対し、1000〜17000ppmであるのが好ましい。炭化水素ガスの分圧に対する酸素の分圧が、17000ppm以下であると、過剰に熱分解炭素被膜を酸化させず、熱分解炭素の結晶欠陥部分のみを選択的に取り除くことができると考えられるので、充分な熱分解炭素被膜の成膜速度を得ることができると考えられる。また、酸素と可燃性ガスである炭化水素ガスとを混合することになるので、この範囲であれば炭化水素ガスの燃焼範囲から遠ざけることができるので、急激な反応を防止することができる。一方、炭化水素ガスの分圧に対する酸素の分圧が、1000ppm以上であると、生成する熱分解炭素の乱れた結晶構造部分を効率良く除去することができると考えられるので、結晶化度の高い熱分解炭素被膜を容易に得ることができると考えられる。また、酸素は、炭化水素ガスにあらかじめ混合してCVD炉内に供給するのが好ましい。この形態によれば、酸素濃度に濃淡が生じにくいので、酸素による乱れた結晶構造部分の除去能力に偏りが生じにくいので、結晶構造の乱れた部分の少ない熱分解炭素被膜を容易に得ることができると考えられる。
熱分解炭素被膜の厚さは、3μm〜200μmが好ましい。熱分解炭素被膜の厚さが、3μm以上であると、厚さの薄い部分ができにくいので、基材である黒鉛部材が露出しにくくすることができる。熱分解炭素被膜の厚さが、200μm以下であると、結晶が層構造をなした熱分解炭素被膜の層間剥離を起きにくくすることができる。さらに、熱分解炭素被膜の厚さは、5μm〜50μmであることがさらに好ましい。熱分解炭素被膜の厚さが、5μm以上であると、さらに厚さの薄い部分ができにくいので、基材である黒鉛部材が露出しにくくすることができる。熱分解炭素被膜の厚さが、50μm以下であると、結晶が層構造をなした熱分解炭素被膜の層間剥離をさらに起きにくくすることができる。熱分解炭素被膜の厚さの測定方法は、熱分解炭素被覆黒鉛部材を破断し、破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって得ることができる。具体的には、長さが既知であるスケールを同一の方法で観察し、スケールの間隔と、熱分解炭素被膜の厚さとを対比することにより求めることができる。
このようにして本発明の熱分解炭素被覆黒鉛部材を製造することができる。該熱分解炭素被覆黒鉛部材は、クリープ変形させることなく黒鉛部材上に結晶化度の高い熱分解炭素被膜を形成することができるので、高い寸法精度および耐消耗性を有する。
以上のように本発明によれば、黒鉛部材を高温に曝すことなく、クリープ変形を抑制しながら結晶化度の高い熱分解炭素被膜を黒鉛部材上に形成することのできる熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法を提供することができる。
また本発明によれば、黒鉛部材上に結晶化度の高い熱分解炭素被膜を有し、高い寸法精度および耐消耗性を有する熱分解炭素被覆黒鉛部材を提供することができる。
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
図1に示す温度および圧力プロファイルに従い、水準を変えて下記の実験を行った。(実験例1〜5)
CVD炉の反応室に、150mm×150mm×5mmの矩形状の等方性黒鉛からなる黒鉛部材(イビデン(株)製ETU−10、表面粗さRa=0.6μm、熱膨張係数4.2×10−6/℃)を入れ(炉詰め)、真空引きを行い、炉内の圧力を100Pa以下とした。続いてCVD炉内を室温から1500℃まで2時間かけて昇温させた。
次に、CVD炉内温度を維持したまま、原料ガスであるメタンガスと、キャリアガスである水素とを導入し、時間、熱分解炭素の被覆工程を行った(成膜)。水素の流量は1.6L/min、メタンガスの流量は5.0L/minであり、導入を開始すると炉圧は500Paに上昇した。なお、メタンガスに対する酸素の濃度は、あらかじめCVDの炉外で混合器で調整し、原料ガスとして用いた。実験例1〜5におけるメタンガスに対する酸素の濃度は、表1に示す。成膜終了後、メタンガスおよび水素の導入を停止した。その後、CVD炉内の圧力を100Pa以下に維持したまま、室温まで4時間かけて冷却を行った。冷却完了後、CVD炉内の復圧を行い、熱分解炭素被覆黒鉛部材をCVD炉内から取り出した(炉出し)。
得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材について、断面および表面をSEMを用いて観察した。
図3は実験例1で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の断面の拡大写真である。図4は実験例1で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の表面の拡大写真である。図5は実験例2で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の断面の拡大写真である。図6は実験例2で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の表面の拡大写真である。図7は実験例3で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の断面の拡大写真である。図8は実験例3で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の表面の拡大写真である。図9は実験例4で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の断面の拡大写真である。図10は実験例4で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の表面の拡大写真である。図9は実験例5で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の断面の拡大写真である。図10は実験例5で得られた熱分解炭素被覆黒鉛部材の表面の拡大写真である。
<結晶化度の評価方法>
製造された各熱分解炭素被覆黒鉛部材について、ラマンR値を測定した。ラマンR値は、結晶のエッジの多さを示す指数であり、指数が小さくなるほど構造的な欠陥が少なく、結晶化度(黒鉛化度)が高いことを意味する。R値は、2つのラマンバンドの強度比(I1360/I1580)である。グラファイト構造に乱れが生じると、1580cm−1のラマンバンドの他に1360cm−1および1620cm−1にラマンバンドが認められるようになり、構造の乱れが大きくなるとともにこれらのバンドの1580cm−1のラマンバンドに対する相対強度が増し、全体にブロードな形状となってゆくことは知られている。1360cm−1および1620cm−1のバンドは構造の乱れ(Disorder)に起因するものとして、グラファイト(Graphite)本来のGバンド(1580cm−1)に対して、Dバンド(1360cm−1)、D’バンド(1620cm−1)と略称されている。このようにグラファイトのラマンスペクトルは、他の化合物には例がないほど構造欠陥に対して著しく敏感であり、炭素材料の評価手法として有用であることが知られている。
図2は実施例で測定されたラマンR値の結果を示すグラフである。
ラマンR値の測定機器および測定条件を以下に示す。
測定機器:HORIBA HR800
測定条件:測定光波長 632.81nm
フィルター 無し
測定範囲 1250〜1750cm−1
測定時間×測定数 5秒×10回
<膜厚の評価方法>
膜厚は、同時にCVD炉に入れた膜厚測定用の試験片(7×7×20mm)を折り、破断面に現れた熱分解炭素被膜の厚さを、SEMを用いて測定した。
<成膜速度>
上記の方法で得られた各水準における膜厚を、成膜に要した時間で割り、1時間当たりの成膜速度を算出した。
<剥離試験>
剥離試験は、熱分解炭素被覆黒鉛部材を350℃に熱した後、25℃の水中に投下して剥離の有無を確認した。
各実験例の各製造条件と、評価結果を表1に示す。
表1及び図2の結果より、ラマンスペクトルのR値は、炭化水素ガスに対する酸素の分圧が0ppmの範囲(実験例1)においては1.78であったのに対し、炭化水素ガスに対する酸素の分圧を増やしていくにつれて、200〜17000ppm(実験例2〜5)ではラマンスペクトルのR値は低下し、結晶構造の乱れが少なくなっていることがわかる。特に、1000〜17000ppm(実験例4、5)ではR値は格段に低下した。また、実験例4、5では、原料ガスに酸素が混入しているにもかかわらず、熱分解炭素被膜の成膜は、速度が遅くなるが、成膜自体は可能であった。また、実験例2〜5は、実験例1と同様に剥離試験において剥離する現象はなく、一定の剥離強度を確保していることが確認された。
以上の結果より、黒鉛部材に、炭化水素ガスを用いてCVD法により熱分解炭素を被覆する熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法において、黒鉛部材の温度が、2000℃未満であっても、酸素の存在下で行うことにより、結晶化度の高い熱分解炭素被覆黒鉛部材が得られる効果があることが確認された。
この効果は、原料ガスが酸素によって直接酸化するのではなく、原料ガスが一旦、熱分解炭素として沈積したのち、酸素によって熱分解炭素の一部が酸化するプロセスがあるためであると考えられる。熱分解炭素は、完全な黒鉛の結晶ではなく、結晶構造が乱れて成長した部分を有している。希薄な酸素を含有していると、乱れて成長した部分が、選択的に酸化され取り除かれるという理由により、急速に熱分解炭素の結晶化度を高めることができるものと推測される。
また、この効果は、上記メカニズムにより得られると考えられるので、炭化水素ガスの種類、炭化水素ガスに対する酸素の分圧、混合の方法、温度などの成膜の条件は本実施例の範囲に限定されず、適用することができる。
以上説明したように、本発明によれば、黒鉛部材を高温に曝すことなく、クリープ変形を抑制しながら結晶化度の高い熱分解炭素被膜を黒鉛部材上に形成可能であり、これにより、高い寸法精度および耐消耗性を有する熱分解炭素被覆黒鉛部材を提供できることが分かった。

Claims (6)

  1. 黒鉛部材に、炭化水素ガスを用いてCVD法により熱分解炭素を被覆する熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法において、
    前記CVD法の前記黒鉛部材の温度は、2000℃未満であって、
    前記CVD法は酸素の存在下で行うことを特徴とする熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法。
  2. 前記CVD法の前記黒鉛部材の温度は、1200℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法。
  3. 前記酸素の分圧は、炭化水素のガス分圧に対し1000〜17000ppmである請求項1または2に記載の熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法。
  4. 前記酸素は、前記炭化水素ガスにあらかじめ混合して供給する請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法。
  5. 前記炭化水素ガスは、メタンガスである請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱分解炭素被覆黒鉛部材の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により製造された熱分解炭素被覆黒鉛部材。
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