JP2014133919A - 熱分解炭素被覆部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明は、溶融金属を扱う例えば金属鋳造用部材、ガラス成形用部材等に用いられる耐熱性及び耐食性に優れ、かつ長寿命化が可能な熱分解炭素被覆部材を提供することである。
【解決手段】
本発明は、基材の表面に熱分解炭素結晶の(002)面からのX線回折ピークの半価幅が0.6°以上1.1°未満の範囲である熱分解炭素の被覆層が形成されていることを特徴とするものであり、その基材は、耐熱性の窒化ほう素、熱分解窒化ほう素、黒鉛、炭素繊維強化炭素複合体、炭化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、サイアロン、石英、タングステン、モリブデン、タンタルの群から選択されるのが好ましい。
【選択図】図1
本発明は、溶融金属を扱う例えば金属鋳造用部材、ガラス成形用部材等に用いられる耐熱性及び耐食性に優れ、かつ長寿命化が可能な熱分解炭素被覆部材を提供することである。
【解決手段】
本発明は、基材の表面に熱分解炭素結晶の(002)面からのX線回折ピークの半価幅が0.6°以上1.1°未満の範囲である熱分解炭素の被覆層が形成されていることを特徴とするものであり、その基材は、耐熱性の窒化ほう素、熱分解窒化ほう素、黒鉛、炭素繊維強化炭素複合体、炭化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、サイアロン、石英、タングステン、モリブデン、タンタルの群から選択されるのが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、溶融金属を扱う例えば金属鋳造用部材、ガラス成形用部材、半導体製造装置用部材、単結晶製造装置部材、太陽電池製造装置用部材等に用いられる耐熱性及び耐食性に優れ、かつ長寿命化が可能な熱分解炭素被覆部材に関する。
熱分解炭素は、通常、製造温度が400℃から2400℃の熱CVD(化学気相成長法)で製造され、かさ密度は、1.2〜2.25g/cm3である。その用途としては、従来から、黒鉛基材の被覆部材として知られており、特に、高温環境の被覆部材として多岐の分野に亘って使用されている。
例えば、特許文献1乃至3には、従来のルツボ、ボート、鋳型等の黒鉛基材が溶融金属を汚染するとか、黒鉛基材の細孔中に溶融金属が浸入し黒鉛材料が膨張したり割れを生じさせる等の欠点を有するために、熱分解炭素をこの黒鉛基材の表面に被覆部材として使用することが記載されている。また、特許文献4及び5にも、単結晶引上げ装置用の黒鉛ルツボなど高温環境で使用される黒鉛基材の被覆部材として使用することが記載されている。
このように、熱分解炭素は、溶融金属を扱う各種用途の被覆部材として多用されているが、溶融金属が接した部分の熱分解炭素被膜は、比較的早く溶融金属との反応が進行して金属炭化物が生成され、その後の冷却によって金属炭化物と基材との熱膨張率差により熱分解炭素被膜に亀裂や剥離が生じやすいことが知られている。そして、その発生した亀裂や剥離から溶融金属が基材内部にまで浸入してこの溶融金属と基材との反応がさらに進行してしまうと、高温と冷却との繰り返しによって基材との反応進行部と未進行部との熱膨張差が拡大して、基材の亀裂破壊に至るという重大な事態を引き起こすという問題がある。
また、この熱分解炭素は、異方性が大きく、しかも堆積面に対して垂直方向(結晶のc軸方向)は炭素の六員環面同士が弱いファンデルワールス力によって結合されているために、機械的強度が著しく弱いという性質を有することも知られており、したがって、このような熱分解炭素が厚く堆積すると、内部熱応力により層間剥離を生じることになる。しかも、堆積面方向の熱膨張係数が小さいために耐熱性基材との熱膨張差が大きくなり、厚く被覆された熱分解炭素が基材から剥離してしまう事態が生じることから、熱分解炭素を厚く堆積することができず、熱分解炭素被膜の長寿命化が困難であるという問題もある。
そこで、本発明の目的は、上記事情に鑑み、溶融金属を扱う例えば金属鋳造用部材、ガラス成形用部材等に用いられる耐熱性及び耐食性に優れ、かつ長寿命化が可能な熱分解炭素被覆部材を提供することである。
本発明者らは、従来の熱分解炭素が溶融金属に接触する高温環境で使用される際に他元素との反応が進行しやすいために、この熱分解炭素と溶融金属との関係について鋭意調査したところ、熱分解炭素結晶の(002)面からのX線回折ピークの半価幅が0.6°以上1.1°未満の範囲である熱分解炭素が溶融金属と反応しにくく、耐食性に優れていることを見出し、本発明に到ったものである。
すなわち、本発明の被覆部材の特徴は、基材の表面に熱分解炭素結晶の(002)面からのX線回折ピークの半価幅が0.6°以上1.1°未満の範囲である熱分解炭素の被覆層が形成されていることであり、溶融金属を扱う容器に用いるとより効果的である。
また、本発明に用いる基材は、耐熱性を有する窒化ほう素、熱分解窒化ほう素、黒鉛、炭素繊維強化炭素複合体、炭化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、サイアロン、石英、タングステン、モリブデン、タンタルの群から選択されるのが好ましい。
本発明によれば、耐熱性の基材の表面に被覆される熱分解炭素が熱分解炭素結晶の(002)面からのX線回折ピークの半価幅が0.6°以上1.1°未満の範囲であるから、溶融金属に対する耐熱性及び耐食性に優れ、かつ長寿命化が可能な熱分解炭素被覆部材を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明では、耐熱性の基材の表面に被覆される熱分解炭素が熱分解炭素結晶の(002)面からのX線回折ピークの半価幅が0.6°以上1.1°未満の範囲であるから、この被覆部材によって溶融金属に対する耐熱性及び耐食性に優れ、かつ長寿命化を可能とすることができる。
本発明の熱分解炭素は、CVD(Chemical Vapor
Deposition)法によって、炭化水素ガスが高温で熱分解され、気相熱分解炭素が耐熱性の基材の表面上に堆積されたものである。そして、このときに、熱分解炭素結晶の(002)面からのX線回折ピークの半価幅が0.6°以上1.1°未満の範囲の熱分解炭素の被覆層が形成されることになる。
Deposition)法によって、炭化水素ガスが高温で熱分解され、気相熱分解炭素が耐熱性の基材の表面上に堆積されたものである。そして、このときに、熱分解炭素結晶の(002)面からのX線回折ピークの半価幅が0.6°以上1.1°未満の範囲の熱分解炭素の被覆層が形成されることになる。
X線回折ピークの半価幅が0.6°未満であると、黒鉛結晶相の結晶子サイズが大きくなりすぎて溶融金属との反応が起こりやすくなる。これは、黒鉛結晶相の結晶子サイズが大きくなりすぎると、結晶子間の欠陥部に間隙が生じて金属に対する拡散係数が大きくなるためではないかと考えられる。一方、半価幅が1.1°以上であると、やはり溶融金属との反応が起こりやすくなる。これは、未発達の黒鉛結晶相の割合が多くなりすぎて、黒鉛自体の優れた耐食性が反映できなくなるためではないかと考えられる。
このように、被覆される熱分解炭素は、X線回折ピークの半価幅が0.6°以上1.1°未満の範囲のものであると、黒鉛自体の優れた耐食性を反映することができるが、これは、結晶子間の欠陥部の拡散が抑制されるためではないかと考えられる。そして、より好ましくは、X線回折ピークの半価幅が0.7°以上1.0°未満の範囲である。
具体的なX線回折ピークの測定は、リガク製X解回折装置RINT-2500VHFによって行い、ターゲットにはCuを使用し、電圧30kV、30mAの条件で行った。ここで、X線回折ピークの半価幅とは、回折ピーク高さの半分の高さの部分のピークの幅のことである。そして、このピークの幅は、回折条件を与える結晶面間隔に分布がある場合に、又は結晶のサイズが小さい場合にこの幅が広くなる。
本発明では、熱分解炭素が被覆される基材は、耐熱性の窒化ほう素、熱分解窒化ほう素、グラファイト、炭素繊維強化炭素複合体、炭化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、サイアロン、石英、タングステン、モリブデン、タンタルの群から選択されるのが好ましく、被覆時の温度環境に耐える耐熱性を有するものである。
図1は、機械研削加工によって直径100mm×高さ20mmの等方性黒鉛材(熱膨張率:5×10-6/℃)に溶融金属を収容できる凹み部を形成した蒸着用黒鉛ボートを示す。実施例では、この図1に示す蒸着用黒鉛ボートを準備し、これを高温のCVD炉に入れて、真空ポンプにて炉内を排気し、そのまま真空状態で加熱した。目標とする温度に到達した後に反応性ガスとしてのメタンガスを供給して厚さ50μmの熱分解炭素を黒鉛ボートの表面上に堆積させた。
熱分解炭素を黒鉛ボートの表面上に堆積させたときの反応条件としては、反応温度が1400℃〜2000℃、炉内圧力が40Pa〜1000Pa、メタンガス供給量が2.5〜10L/minの範囲内であった。
そして、このような反応条件を種々変えて、X線回折ピークの半価幅の異なる種々の熱分解炭素を被覆した蒸着用黒鉛ボートとX線回折分析用のサンプルピースとを作製した。
実施例では、19通りの反応条件で19種類の半価幅の異なる熱分解炭素を作製し、黒鉛ボートに被覆した。次に、金属シリコンを黒鉛ボートに堆積させる前の状態で、熱分解炭素膜の正確な半価幅を求めるために、基材から部分的に無垢の膜を採取して、X線回折測定を行った。熱分解炭素膜は、X線を透過してしまうので、基材のピークと重ならないように、熱分解炭素の無垢の膜を基材から採取して行った。使用したX線回折装置は、リガク製X解回折装置RINT-2500VHFであり、ターゲットにはCuを使用し、電圧30kV、30mAの条件で、2θは24°から28°の間でX線回折測定を行った。表1には、19通りの反応条件と19種類の熱分解炭素の半価幅の値を示す。
また、図2には、19通りの反応条件のうち、代表的な4つの条件のときに作製された熱分解炭素の(002)面のメインピーク波形を示している。半価幅は、そのピークの半分の高さのピークの幅(2θの幅)であり、半価幅が小さいと結晶性がよく、大きいと結晶性が悪いということを意味している。
次に、熱分解炭素が被覆された蒸着用黒鉛ボートに金属シリコンの塊を入れ、真空中で1500℃まで加熱を行って、この金属シリコンを蒸気として真空中に飛散させて対向する基板に成膜させた。この操作は、金属シリコンがなくなるまで行い、十分に金属シリコンを基板に堆積させた後に室温まで冷却させ、その後に黒鉛ボートを取り出して熱分解炭素被覆の厚さを測定して、単位時間あたりの消耗厚さを算出した。
図3は、表1に示すX線回折ピークの半価幅の異なる19種類の熱分解炭素を被覆した蒸着用黒鉛ボートについて、熱分解炭素の(002)面のX線回折ピークの半価幅と単位時間あたりの消耗厚さとの関係を示すものである。
図3に示すとおり、(002)面のX線回折ピークの半価幅が0.6°以上1.1°未満の範囲である熱分解炭素の被覆層の場合では、その消耗量が少なく良好であることが確認された。一方、0.6°未満の熱分解炭素の被覆層の場合では、図4に示すとおり、熱分解炭素の被覆膜が溶融金属と反応して炭化珪素となってしまい、クラックが発生していた。また、1.1°以上の熱分解炭素の被覆層の場合では、その消耗量が多く、一部の基材部が露出してしまい、溶融金属が基材部の等方性黒鉛材に浸入していた。
1 熱分解炭素被覆ボート
2 基材
3 熱分解炭素被膜
4 溶融金属
2 基材
3 熱分解炭素被膜
4 溶融金属
Claims (3)
- 基材の表面に熱分解炭素結晶の(002)面からのX線回折ピークの半価幅が0.6°以上1.1°未満の範囲である熱分解炭素の被覆層が形成されていることを特徴とする熱分解炭素被覆部材。
- 前記基材が耐熱性の窒化ほう素、熱分解窒化ほう素、黒鉛、炭素繊維強化炭素複合体、炭化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、サイアロン、石英、タングステン、モリブデン、タンタルの群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の熱分解炭素被覆部材。
- 溶融金属を扱う容器に用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱分解炭素被覆部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013002242A JP2014133919A (ja) | 2013-01-10 | 2013-01-10 | 熱分解炭素被覆部材 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013002242A JP2014133919A (ja) | 2013-01-10 | 2013-01-10 | 熱分解炭素被覆部材 |
Publications (1)
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JP2014133919A true JP2014133919A (ja) | 2014-07-24 |
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ID=51412416
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JP2013002242A Pending JP2014133919A (ja) | 2013-01-10 | 2013-01-10 | 熱分解炭素被覆部材 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2014133919A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115896737A (zh) * | 2022-11-17 | 2023-04-04 | 航天特种材料及工艺技术研究所 | 一种耐高温吸波钨/碳芯碳化硅纤维及其制备方法 |
-
2013
- 2013-01-10 JP JP2013002242A patent/JP2014133919A/ja active Pending
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CN115896737A (zh) * | 2022-11-17 | 2023-04-04 | 航天特种材料及工艺技术研究所 | 一种耐高温吸波钨/碳芯碳化硅纤维及其制备方法 |
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