JP6530659B2 - セラミック複合材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セラミック複合材およびその製造方法に関する。
エンジニアリングセラミックスとして知られているSiCは、耐熱性、耐熱衝撃性、耐摩耗性および耐酸化性に優れることから、半導体製造装置、高温炉のルツボ、治具などの構造材料として高温環境下で使用されている。
しかしながら、特許文献1は、SiCなどの珪素含有セラミックスが高温水蒸気に対する耐食性がなく、セラミックの消耗が激しく寿命が短いことを指摘している。このような課題を解決するために、特許文献1では、窒化珪素、炭化珪素及びサイアロンから選択された少なくとも1種の珪素含有セラミックスからなる基体と、該基体の表面に設けられた表面層とを具備した耐食性セラミックスにおいて、前記表面層が、周期律表第IIIa族元素で安定化された酸化ジルコニウムからなり、且つ該表面層中のAl及びSiの含有量が合計で1質量%以下に抑制されていることを特徴とする耐食性セラミックスが提案されている。
このような耐食性セラミックスによれば、周期律表第IIIa族元素で安定化された酸化ジルコニウム(以下、単に安定化ジルコニアと呼ぶことがある)からなる表面層中には、高温水蒸気との反応によって消耗の激しいAl及びSiの含有量が一定量以下の少量に抑制されており、この結果、かかる表面層は、高温水蒸気腐食に強く、珪素を含むセラミックスの表面を保護することができることが記載されている。
特開2003−201191号公報
特許文献1において、酸化ジルコニウムの安定化のために使用される周期律表第IIIa族元素とは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuなどである。これらの元素は希少金属であるため、これらを用いた耐食性セラミックスは、高価な素材となる。また、これらの希少金属を用いて耐食性セラミックスを大量生産すると、希少金属を大量に消費し資源を枯渇させる原因となるため、希少金属を回収する手段を確立しなければならない。また、Pm(promethium)は、放射性元素であるため、耐食性セラミックスに使用した場合には厳密に管理し、使用後は回収しなければならない。
しかしながら、上記の耐食性セラミックスは耐熱性を有し、化学的に安定であるため、希少金属を容易に回収することができない。
本発明では、前記課題を鑑み、放射性の元素、毒性を有する元素、希少な元素を用いることなく、耐熱性および高温水蒸気に耐食性を有するセラミック複合材およびセラミック複合材の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明のセラミック複合材は、
(A1)SiCからなる基材と、前記基材の表面を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層と、からなる。
本発明のセラミック複合材によれば、SiCからなる基材と、前記基材の表面を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層とからなるので、希少金属、有毒な元素、放射性元素を用いていない。また、珪素のクラーク数は25.8%(2位)であり、炭素は0.08%(14位)である。これは、最もクラーク数の大きな周期律表第IIIa族元素であるCeの0.0045%(28位)よりも大きく、これらは、ともに入手しやすい元素である。このため、回収、分離の必要性も低い。また、SiC、カーボンナノチューブとも耐熱性を有している上に、SiCからなる基材がカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層で覆われているので、SiCからなる基材が高温水蒸気と接することがなく、SiCの消耗を防止することができる。また、カーボンナノチューブは、カーボンの六角網面を丸めた形状であり、分子内に極性を有していない。このため、カーボンナノチューブは撥水性であり、カーボンナノチューブ層への水の浸入を阻止することができ、基材と水の接触を妨げることができる。
カーボンナノチューブとは黒鉛の六角網面が、筒状に丸まったチューブであり、単層のカーボンナノチューブ、複数層のカーボンナノチューブなど様々な形態が存在する。
また、本発明のセラミック複合材は、次の態様であることが好ましい。
(A2)前記カーボンナノチューブは、一端が前記基材に接続されている。
本発明のセラミック複合材において、カーボンナノチューブ層を構成するカーボンナノチューブの一端が基材に接続されていると、カーボンナノチューブを基材に強固に接続することができる。このような構成は、表面分解法など基材から連続的なカーボンナノチューブを形成させる方法によって得ることができる。表面分解法では、SiCを分解しながらカーボンナノチューブを形成していくので、基材の表面にカーボンナノチューブがブラシ状に林立するカーボンナノチューブ層を得ることができる。カーボンナノチューブ層はカーボンナノチューブがブラシ状に林立しているので、基材とカーボンナノチューブとの間で熱膨張係数差があっても、熱応力が発生することがない。このため、はがれにくい被膜を得ることができる。
(A3)前記基材は、SiC繊維の骨材とSiCのマトリックスとからなるSiC/SiC複合材である。
前記基材が、SiC繊維の骨材とSiCのマトリックスとからなるSiC/SiC複合材であると、基材が高強度であるので、耐食性、耐熱性を有し、高強度のセラミック複合材を得ることができる。
(A4)前記マトリックスは、CVD−SiC材である。
CVD−SiC材は、原料ガスが分解しながら沈積する素材であるため、気孔ができにくく、緻密で強固な基材を形成することができる。本発明のセラミック複合材において、CVD−SiC材のマトリックスを有するSiC/SiC複合材を用いると、基材に開気孔がなく、カーボンナノチューブを基材全面にわたって根付かせることができ、はがれにくいカーボンナノチューブ層を形成することができる。また、CVD−SiC材は、SiC繊維の上に形成されるので、多結晶となる。カーボンナノチューブは、Siを除去する前の結晶方位の影響を受けるので、得られるカーボンナノチューブは、方向が揃わず互いに方向が異なるように形成され、一部絡まった部分も形成される。このため、より剥がれにくいカーボンナノチューブ層が形成される。
(A5)前記セラミック複合材は、パイプ形状、平板形状、または棒形状である。
本発明のセラミック複合材がパイプ形状であると、高温水蒸気を流通させる配管パイプとして使用することができる。また、平板形状、棒形状であると、高温水蒸気を流通させる熱交換器、蒸気タービン設備、沸騰水型原子炉、加圧水型原子炉、超臨界水反応設備、亜臨界水反応設備などの構造部材として使用することができる。
(A6)前記セラミック複合材は、さらに前記カーボンナノチューブ層を覆う炭素層を有する。
本発明のセラミック複合材が炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固な耐食性被膜を得ることができる。さらに、炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブが炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブと炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。
(A7)前記セラミック複合材は、さらに前記カーボンナノチューブ層を覆うガラス状炭素層を有する。
本発明のセラミック複合材がガラス状炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固な耐食性被膜を得ることができる。さらに、ガラス状炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブがガラス状炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブとガラス状炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。
(A8)前記セラミック複合材は、さらに前記カーボンナノチューブ層を覆う熱分解炭素層を有する。
本発明のセラミック複合材が熱分解炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固な耐食性被膜を得ることができる。さらに、熱分解炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブが熱分解炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブと熱分解炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。
前記課題を解決するため、本発明のセラミック複合材の製造方法は、
(B1)SiCからなる基材を、真空中またはCO雰囲気中で加熱することにより、前記基材を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層を形成する表面分解工程からなる。
本発明のセラミック複合材の製造方法によれば、真空中またはCO雰囲気中で加熱することにより、前記基材を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層を形成するので、希少金属、有毒な元素、放射性元素を用いていない。また、珪素のクラーク数は25.8%(2位)であり、炭素は0.08%(14位)である。これは、最もクラーク数の大きな周期律表第IIIa族元素であるCeの0.0045%(28位)よりも大きく、これらは、ともに入手しやすい元素である。このため、回収、分離の必要性も低い。また、SiC、カーボンナノチューブとも耐熱性を有している上に、SiCからなる基材がカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層で覆われているので、SiCからなる基材が高温水蒸気と接することがなく、SiCの消耗を防止することができる。また、カーボンナノチューブは、カーボンの六角網面を丸めた形状であり、分子内に極性を有していない。このため、カーボンナノチューブは撥水性であり、カーボンナノチューブ層への水の浸入を阻止することができ、基材と水の接触を妨げることができる。
また、本発明のセラミック複合材の製造方法は、次の態様であることが好ましい。
(B2)前記基材は、SiC繊維の骨材とSiCのマトリックスとからなるSiC/SiC複合材である。
前記基材が、SiC繊維の骨材とSiCのマトリックスとからなるSiC/SiC複合材であると、基材が高強度であるので、耐食性、耐熱性を有し、高強度のセラミック複合材を得ることができる。
(B3)前記マトリックスは、CVD−SiC材である。
CVD−SiC材は、原料ガスが分解しながら沈積する素材であるため、気孔ができにくく、緻密で強固な基材を形成することができる。本発明のセラミック複合材の製造方法において、CVD−SiC材のマトリックスを有するSiC/SiC複合材を用いると、基材に開気孔がなく、カーボンナノチューブを基材全面にわたって根付かせることができ、はがれにくいカーボンナノチューブ層を形成することができる。
(B4)前記セラミック複合材は、パイプ形状、平板形状、または棒形状である。
セラミック複合材がパイプ形状であると、高温水蒸気を流通させる配管パイプとして使用することができる。また、平板形状、棒形状であると、高温水蒸気を流通させる熱交換器、蒸気タービン設備、沸騰水型原子炉、加圧水型原子炉、超臨界水反応設備、亜臨界水反応設備などの構造部材として使用することができる。
(B5)前記セラミック複合材の製造方法は、さらに、前記カーボンナノチューブ層上に炭素層を形成する工程を有する。
セラミック複合材が炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固な耐食性被膜を得ることができる。さらに、炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブが炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブと炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。このため、炭素層を形成する工程を有していると、強固な被膜を得ることができる。
(B6)前記セラミック複合材の製造方法は、さらに、前記カーボンナノチューブ層で覆われた前記基材に炭素前駆体を塗布した後、炭化焼成することにより、前記カーボンナノチューブ層上にガラス状炭素層を形成するガラス状炭素形成工程を有する。
セラミック複合材がガラス状炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固で不浸透性の高い耐食性被膜を得ることができる。さらに、ガラス状炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブがガラス状炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブとガラス状炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。このため、ガラス状炭素形成工程を有していると、強固な被膜を得ることができる。
(B7)前記セラミック複合材の製造方法は、さらに、CVD炉に前記カーボンナノチューブ層で覆われた前記基材を入れ、原料ガスを導入し、原料ガスを熱分解させることにより、前記カーボンナノチューブ層上に熱分解炭素を沈積させる熱分解炭素形成工程を有する。
セラミック複合材が熱分解炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固で不浸透性の高い耐食性被膜を得ることができる。さらに、熱分解炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブが熱分解炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブと熱分解炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。このため、熱分解炭素形成工程を有していると、強固な被膜を得ることができる。
本発明のセラミック複合材によれば、SiCからなる基材と、前記基材の表面を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層とからなるので、希少金属、有毒な元素、放射性元素を用いていない。また、珪素のクラーク数は25.8%(2位)であり、炭素は0.08%(14位)である。これは、最もクラーク数の大きな周期律表第IIIa族元素であるCeの0.0045%(28位)よりも大きく、これらは、ともに入手しやすい元素である。このため、回収、分離の必要性も低い。また、SiC、カーボンナノチューブとも耐熱性を有している上に、SiCからなる基材がカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層で覆われているので、SiCからなる基材が高温水蒸気と接することがなく、SiCの消耗を防止することができる。また、カーボンナノチューブは、カーボンの六角網面を丸めた形状であり、分子内に極性を有していない。このため、カーボンナノチューブは撥水性であり、カーボンナノチューブ層への水の浸入を阻止することができ、基材と水の接触を妨げることができる。
本発明のセラミック複合材の製造方法によれば、真空中またはCO雰囲気中で加熱することにより、前記基材を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層を形成するので、希少金属、有毒な元素、放射性元素を用いていない。また、珪素のクラーク数は25.8%(2位)であり、炭素は0.08%(14位)である。これは、最もクラーク数の大きな周期律表第IIIa族元素であるCeの0.0045%(28位)よりも大きく、これらは、ともに入手しやすい元素である。このため、回収、分離の必要性も低い。また、SiC、カーボンナノチューブとも耐熱性を有している上に、SiCからなる基材がカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層で覆われているので、SiCからなる基材が高温水蒸気と接することがなく、SiCの消耗を防止することができる。また、カーボンナノチューブは、カーボンの六角網面を丸めた形状であり、分子内に極性を有していない。このため、カーボンナノチューブは撥水性であり、カーボンナノチューブ層への水の浸入を阻止することができ、基材と水の接触を妨げることができる。
以上のように、本発明のセラミック複合材及びその製造方法によれば、放射性の元素、毒性を有する元素、希少な元素を用いることなく、耐熱性および高温水蒸気に耐食性を有するセラミック複合材およびセラミック複合材の製造方法を提供することができる。
本発明のセラミック複合材の模式図である。 本発明の実施例1〜3のセラミック複合材に用いた基材の表面のラマン分光法によって得られたラマンスペクトルである。 本発明の実施例1のセラミック複合材の表面のラマン分光法によって得られたラマンスペクトルである。 本発明の実施例2のセラミック複合材の表面のラマン分光法によって得られたラマンスペクトルである。 本発明の実施例3のセラミック複合材の表面のラマン分光法によって得られたラマンスペクトルである。 本発明の実施例3のセラミック複合材のTEMによる断面写真である。 図6の試料をカーボンナノチューブ層部分でさらに拡大したTEMによる断面写真である。 本発明の実施例3のセラミック複合材の表面のTEMによる拡大写真である。 図8の試料をさらに拡大したTEMによる拡大写真である。 本発明のセラミック複合材の実施の形態を示す。(a)は、基材がカーボンナノチューブ層に覆われている実施の形態1、(b)は基材がカーボンナノチューブ層、ガラス状炭素層の順に覆われている実施の形態2、(c)は、基材がカーボンナノチューブ層、熱分解炭素層の順に覆われている実施の形態3を示している。 本発明の実施例6のセラミック複合材の断面のSEM写真である。
(A1)本発明のセラミック複合材は、SiCからなる基材と、前記基材の表面を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層と、からなる。
本発明のセラミック複合材によれば、SiCからなる基材と、前記基材の表面を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層とからなるので、希少金属、有毒な元素、放射性元素を用いていない。また、珪素のクラーク数は25.8%(2位)であり、炭素は0.08%(14位)である。これは、最もクラーク数の大きな周期律表第IIIa族元素であるCeの0.0045%(28位)よりも大きく、これらは、ともに入手しやすい元素である。このため、回収、分離の必要性も低い。また、SiC、カーボンナノチューブとも耐熱性を有している上に、SiCからなる基材がカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層で覆われているので、SiCからなる基材が高温水蒸気と接することがなく、SiCの消耗を防止することができる。また、カーボンナノチューブは、カーボンの六角網面を丸めた形状であり、分子内に極性を有していない。このため、カーボンナノチューブは撥水性であり、カーボンナノチューブ層への水の浸入を阻止することができ、基材と水の接触を妨げることができる。
SiCからなる基材は特に限定されない。例えば、焼結体、CVD−SiC材、SiC/SiC複合材などが利用できる。中でも、CVD−SiC材が好ましい。また、SiC/SiC複合材、焼結体を用いた場合であっても、表面がCVD−SiC材であることが好ましい。CVD−SiC材は、焼結助剤を用いることなく得ることができるので、純度が高く、途中で途切れることなくカーボンナノチューブを得ることができる。
CVD−SiC材は、多結晶であることが好ましい。カーボンナノチューブは、Siを除去する前の結晶方位の影響を受けるので、CVD−SiC材が多結晶であると、得られるカーボンナノチューブは、方向が揃わず互いに方向が異なるように形成され、一部絡まった部分も形成される。このため、より剥がれにくいカーボンナノチューブ層が形成される。
カーボンナノチューブとは黒鉛の六角網面が、筒状に丸まったチューブであり、単層のカーボンナノチューブ、複数層のカーボンナノチューブなど様々な形態が存在する。
(A2)本発明のセラミック複合材の前記カーボンナノチューブは、一端が前記基材に接続されていることが好ましい。
本発明のセラミック複合材において、カーボンナノチューブ層を構成するカーボンナノチューブの一端が基材に接続されていると、カーボンナノチューブを基材に強固に接続することができる。このような構成は、表面分解法など基材から連続的なカーボンナノチューブを形成させる方法によって得ることができる。表面分解法では、SiCを分解しながらカーボンナノチューブを形成していくので、基材の表面にカーボンナノチューブがブラシ状に林立するカーボンナノチューブ層を得ることができる。カーボンナノチューブ層はカーボンナノチューブがブラシ状に林立しているので、基材とカーボンナノチューブとの間で熱膨張係数差があっても、熱応力が発生することがない。このため、はがれにくい被膜を得ることができる。
(A3)本発明のセラミック複合材の前記基材は、SiC繊維の骨材とSiCのマトリックスとからなるSiC/SiC複合材であることが好ましい。
前記基材が、SiC繊維の骨材とSiCのマトリックスとからなるSiC/SiC複合材であると、基材が高強度であるので、耐食性、耐熱性を有し、高強度のセラミック複合材を得ることができる。
(A4)本発明のセラミック複合材の前記マトリックスは、CVD−SiC材であることが好ましい。
CVD−SiC材は、原料ガスが分解しながら沈積する素材であるため、気孔ができにくく、緻密で強固な基材を形成することができる。本発明のセラミック複合材において、CVD−SiC材のマトリックスを有するSiC/SiC複合材を用いると、基材に開気孔がなく、カーボンナノチューブを基材全面にわたって根付かせることができ、はがれにくいカーボンナノチューブ層を形成することができる。また、CVD−SiC材は、SiC繊維の上に形成されるので、多結晶となる。カーボンナノチューブは、Siを除去する前の結晶方位の影響を受けるので、得られるカーボンナノチューブは、方向が揃わず互いに方向が異なるように形成され、一部絡まった部分も形成される。このため、より剥がれにくいカーボンナノチューブ層が形成される。
(A5)本発明のセラミック複合材は、パイプ形状、平板形状、または棒形状であることが好ましい。
本発明のセラミック複合材がパイプ形状であると、高温水蒸気を流通させる配管パイプとして使用することができる。また、平板形状、棒形状であると、高温水蒸気を流通させる熱交換器、蒸気タービン設備、沸騰水型原子炉、加圧水型原子炉、超臨界水反応設備、亜臨界水反応設備などの構造部材として使用することができる。
(A6)本発明のセラミック複合材は、さらに前記カーボンナノチューブ層を覆う炭素層を有することが好ましい。
本発明のセラミック複合材が炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固な耐食性被膜を得ることができる。さらに、炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブが炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブと炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。
(A7)本発明のセラミック複合材は、さらに前記カーボンナノチューブ層を覆うガラス状炭素層を有することが好ましい。
本発明のセラミック複合材がガラス状炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固な耐食性被膜を得ることができる。さらに、ガラス状炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブがガラス状炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブとガラス状炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。
(A8)本発明のセラミック複合材は、さらに前記カーボンナノチューブ層を覆う熱分解炭素層を有することが好ましい。
本発明のセラミック複合材が熱分解炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固な耐食性被膜を得ることができる。さらに、熱分解炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブが熱分解炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブと熱分解炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。
本発明のセラミック複合材のカーボンナノチューブ層の厚さは特に限定されないが、10〜500nmであることが好ましい。10nm以上であれば、熱水あるいは水蒸気の浸入を十分に防止することができる。また、500nm以下であれば、カーボンナノチューブの途中に欠陥箇所が存在しにくく、折れにくくすることができる。さらに望ましいカーボンナノチューブ層の厚さは20〜200nmである。20nm以上であれば、熱水あるいは水蒸気の浸入をさらに防止することができる。また、200nm以下であれば、カーボンナノチューブの途中により欠陥箇所が存在しにくく、折れにくくすることができる。
(B1)本発明のセラミック複合材の製造方法は、SiCからなる基材を、真空中またはCO雰囲気中で加熱することにより、前記基材を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層を形成する表面分解工程からなる。
本発明のセラミック複合材の製造方法によれば、真空中またはCO雰囲気中で加熱することにより、前記基材を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層を形成するので、希少金属、有毒な元素、放射性元素を用いていない。また、珪素のクラーク数は25.8%(2位)であり、炭素は0.08%(14位)である。これは、最もクラーク数の大きな周期律表第IIIa族元素であるCeの0.0045%(28位)よりも大きく、これらは、ともに入手しやすい元素である。このため、回収、分離の必要性も低い。また、SiC、カーボンナノチューブとも耐熱性を有している上に、SiCからなる基材がカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層で覆われているので、SiCからなる基材が高温水蒸気と接することがなく、SiCの消耗を防止することができる。また、カーボンナノチューブは、カーボンの六角網面を丸めた形状であり、分子内に極性を有していない。このため、カーボンナノチューブは撥水性であり、カーボンナノチューブ層への水の浸入を阻止することができ、基材と水の接触を妨げることができる。
SiCからなる基材は特に限定されない。例えば、焼結体、CVD−SiC材、SiC/SiC複合材などが利用できる。中でも、CVD−SiC材が好ましい。また、SiC/SiC複合材、焼結体を用いた場合であっても表面がCVD−SiC材であることが好ましい。CVD−SiC材は、焼結助剤を用いることなく得ることができるので、純度が高く、途中で途切れることなくカーボンナノチューブを得ることができる。
CVD−SiC材は、多結晶であることが好ましい。カーボンナノチューブは、Siを除去する前の結晶方位の影響を受けるので、CVD−SiC材が多結晶であると、得られるカーボンナノチューブは、方向が揃わず互いに方向が異なるように形成され、一部絡まった部分も形成される。このため、より剥がれにくいカーボンナノチューブ層が形成される。
(B2)前記基材は、SiC繊維の骨材とSiCのマトリックスとからなるSiC/SiC複合材であることが好ましい。
前記基材が、SiC繊維の骨材とSiCのマトリックスとからなるSiC/SiC複合材であると、基材が高強度であるので、耐食性、耐熱性を有し、高強度のセラミック複合材を得ることができる。
(B3)前記マトリックスは、CVD−SiC材であることが好ましい。
CVD−SiC材は、原料ガスが分解しながら沈積する素材であるため、気孔ができにくく、緻密で強固な基材を形成することができる。本発明のセラミック複合材の製造方法において、CVD−SiC材のマトリックスを有するSiC/SiC複合材を用いると、基材に開気孔がなく、カーボンナノチューブを基材全面にわたって根付かせることができ、はがれにくいカーボンナノチューブ層を形成することができる。また、CVD−SiC材は、SiC繊維の上に形成されるので、多結晶となる。カーボンナノチューブは、Siを除去する前の結晶方位の影響を受けるので、得られるカーボンナノチューブは、方向が揃わず互いに方向が異なるように形成され、一部絡まった部分も形成される。このため、より剥がれにくいカーボンナノチューブ層が形成される。
(B4)前記セラミック複合材は、パイプ形状、平板形状、または棒形状であることが好ましい。
本発明のセラミック複合材がパイプ形状であると、高温水蒸気を流通させる配管パイプとして使用することができる。また、平板形状、棒形状であると、高温水蒸気を流通させる熱交換器、蒸気タービン設備、沸騰水型原子炉、加圧水型原子炉、超臨界水反応設備、亜臨界水反応設備などの構造部材として使用することができる。
(B5)本発明のセラミック複合材の製造方法は、さらに、前記カーボンナノチューブ層上に炭素層を形成する工程を有することが好ましい。
セラミック複合材が炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固な耐食性被膜を得ることができる。さらに、炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブが炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブと炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。このため、炭素層を形成する工程を有していると、強固な被膜を得ることができる。
(B6)本発明のセラミック複合材の製造方法は、さらに、前記カーボンナノチューブ層で覆われた前記基材に炭素前駆体を塗布した後、炭化焼成することにより、前記カーボンナノチューブ層上にガラス状炭素層を形成するガラス状炭素形成工程を有することが好ましい。
セラミック複合材がガラス状炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固で不浸透性の高い耐食性被膜を得ることができる。さらに、ガラス状炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブがガラス状炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブとガラス状炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。このため、ガラス状炭素形成工程を有していると、強固な被膜を得ることができる。
(B7)本発明のセラミック複合材の製造方法は、さらに、CVD炉に前記カーボンナノチューブ層で覆われた前記基材を入れ、原料ガスを導入し、原料ガスを熱分解させることにより、前記カーボンナノチューブ層上に熱分解炭素を沈積させる熱分解炭素形成工程を有することが好ましい。
セラミック複合材が熱分解炭素層を有していると、基材を覆うカーボンナノチューブ層を保護することができるので強固で不浸透性の高い耐食性被膜を得ることができる。さらに、熱分解炭素層と基材とをカーボンナノチューブが接続する構成になるので、カーボンナノチューブが熱分解炭素とSiCの基材との熱膨張差を緩和する作用を有し、カーボンナノチューブと熱分解炭素層とからなる耐食性被膜をはがれにくくすることができる。このため、熱分解炭素形成工程を有していると、強固な被膜を得ることができる。
<実施の形態>
次に本発明の実施の形態について、図面を用いながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態1のセラミック複合材10の模式図である。
カーボンナノチューブ層2は、カーボンナノチューブ1が多数本集まって形成されている。
カーボンナノチューブ層2は、基材3の上に形成されている。基材3は、SiCからなる。基材3と、カーボンナノチューブ層2とが集まってセラミック複合材10を構成する。図1は、セラミック複合材10の表面の一部領域を示しており、基材3は全面がカーボンナノチューブ層2で覆われていることが好ましい。
図10は、本発明のセラミック複合材の実施の形態を示す。(a)は、基材3がカーボンナノチューブ層2に覆われている実施の形態1のセラミック複合材10、(b)は基材3がカーボンナノチューブ層2、ガラス状炭素層6の順に覆われている実施の形態2のセラミック複合材11、(c)は、基材3がカーボンナノチューブ層2、熱分解炭素層7の順に覆われている実施の形態3のセラミック複合材12を示している。
実施の形態1のセラミック複合材10は、CVD−SiC材からなる基材を真空中で加熱する表面分解工程によって得ることができる。
実施の形態2のセラミック複合材11は、表面にカーボンナノチューブ層2が形成されたセラミック複合材10に炭素前駆体を塗布した後、炭化焼成して得ることができる。
実施の形態3のセラミック複合材12は、表面にカーボンナノチューブ層2が形成されたセラミック複合材10をCVD炉に入れ、例えばメタンなどの原料ガスを導入し熱分解させることにより熱分化炭素を被覆して得ることができる。
<実施例1>
CVD法で得られたCVD−SiC材からなる基材の表面に表面分解法でカーボンナノチューブ層を形成した。処理温度は1350℃、処理時間は6時間、雰囲気は0.01Torrの真空下であった。なお、基材のサイズは3×4×40mmであった。
この表面分解法の処理により、基材の表面に25nmのカーボンナノチューブ層が形成され、表面にカーボンナノチューブ層を有するセラミック複合材が得られた。
<実施例2>
CVD法で得られたCVD−SiC材からなる基材の表面に表面分解法でカーボンナノチューブ層を形成した。処理温度は1500℃、処理時間は6時間、雰囲気は0.01Torrの真空下であった。なお、基材のサイズは3×4×40mmであった。
この表面分解法の処理により、基材の表面に100nmのカーボンナノチューブ層が形成され、表面にカーボンナノチューブ層を有するセラミック複合材が得られた。
<実施例3>
CVD法で得られたCVD−SiC材からなる基材の表面に表面分解法でカーボンナノチューブ層を形成した。処理温度は1650℃、処理時間は6時間、雰囲気は0.01Torrの真空下であった。なお、基材のサイズは3×4×40mmであった。
この表面分解法の処理により、基材の表面に350nmのカーボンナノチューブ層が形成され、表面にカーボンナノチューブ層を有するセラミック複合材が得られた。
<実施例4>
上記実施例1のセラミック複合材をさらにCVD炉に入れ、1400℃で熱分解炭素を被覆させた。熱分解炭素層の厚さは1μmであった。
<実施例5>
上記実施例2のセラミック複合材をさらにCVD炉に入れ、1400℃で熱分解炭素を被覆させた。熱分解炭素層の厚さは1μmであった。
<実施例6>
上記実施例3のセラミック複合材をさらにCVD炉に入れ、1400℃で熱分解炭素を被覆させた。熱分解炭素層の厚さは1μmであった。
なお、実施例1〜6のカーボンナノチューブ層、実施例4〜6の熱分解炭素層の厚さは、走査型電子顕微鏡によって確認した。
<解析>
ラマン分光法で実施例1〜3のセラミック複合材及び基材の表面のラマンスペクトルを得た。
装置 :顕微ラマン測定装置(RENISHAW社製inVia型)
レーザー波長:532nm
レーザー出力:10%
露光時間 :1秒
レンズ倍率 :×100
積算回数 :20
SiCは、様々な結晶形態を有しているが、共通して800cm−1付近、950〜1000cm−1付近にピークを有している。一方、カーボンは、1590cm−1付近にGバンド、1300cm−1付近にDバンドを有している。得られたラマンスペクトルの位置を確認することによって、表面分解法でSiが除去されていることが確認できる。
図2〜5は、基材及びセラミック複合材の表面のラマン分光法によって得られたラマンスペクトルである。図2は本発明の実施例1〜3のセラミック複合材に用いた基材(処理前)、図3は、本発明の実施例1のセラミック複合材(1350℃)、図4は本発明の実施例2のセラミック複合材(1500℃)、図5は本発明の実施例3のセラミック複合材(1650℃)である。
図2の基材のラマンスペクトルは、SiCのピークのみが検出されている。実施例1、実施例2のセラミック複合材では、SiCに加え、カーボンのピークが検出されている。(図3,4)実施例3のセラミック複合材では、カーボンのピークのみが検出されている。(図5)
実施例1、2、3の順に表面分解法の温度が高くなり、得られるカーボンナノチューブ層の厚さが厚くなっている。また、これに追随して、カーボンのピーク強度が強くなっている。カーボンナノチューブ層が厚くなるにつれてラマン分光で用いられるレーザー光がカーボンナノチューブ層を貫通しにくくなったため、下地である基材のピークが検出されにくくなったためであると考えられる。
次に、実施例3のセラミック複合材10の表面及び切断した断面をTEMによって観察した。図6は、本発明の実施例3のセラミック複合材のTEMによる断面写真であり、図7は、図6の試料をカーボンナノチューブ層2の部分でさらに拡大したTEMによる断面写真である。図8は、本発明の実施例3のセラミック複合材10の表面のTEMによる拡大写真であり、図9は、図8の試料をさらに拡大したTEMによる拡大写真である。
断面のTEM写真より確認されるように、基材3側から表層に延びる筋状のものが多数確認される。(図6の「2」の領域)また、表面のTEM写真より確認されるように、まだら状な部分Aと、ひも状部分Bが観察される。(図8、9)しかしながら、表面のTEM写真には、全体として特定方向への配向は見られず、表面観察上方向性はないことが確認される。断面写真では基材3側から表層に延びる筋状の模様が多数確認され、表面では方向性がないこと、表面で検出されるのはカーボンであることから、実施例1〜3において形成されたものはカーボンナノチューブであることがわかる。
以上より、SiCからなる基材3と、基材3の表面を覆うカーボンナノチューブ1からなるカーボンナノチューブ層2と、からなるセラミック複合材10が得られていることが確認された。また、これらのカーボンナノチューブは、基材から延びていることより、一端が基材に接続されていることがわかる。同様に、実施例1、2においてもカーボンが検出されているので、形成されたのはカーボンナノチューブである。
<評価試験>
上記で得られた実施例1〜3のセラミック複合材及び比較例の試料を、圧力8.5MPa、温度300℃の熱水に40時間浸漬し、重量減少を確認した。比較例として、表面分解法を行う前のSiCの基材を用い、本発明のセラミック複合材とSiCの基材との熱水に対する耐食性を比較した。なお、この試験は、加圧下で行われるので、同一温度の大気圧で行われる熱水蒸気よりも過酷な条件となり、大気圧で確認する場合よりもその差が顕著に現れる加速試験となる。
実施例1〜3及び比較例を比較すると、カーボンナノチューブ層のない比較例では54.05ppmの重量減少が見られたが、カーボンナノチューブ層を有する実施例ではそれぞれ重量減少が、実施例1では23.87ppm、実施例2では7.48ppm、実施例3では4.68ppmであり、カーボンナノチューブ層が厚くなるにしたがって熱水酸化による重量減少率が小さくなっていることが確認できた。
以上の結果より、SiCからなる基材と、基材の表面を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層と、からなるセラミック複合材は、熱水に対する腐食性を有するSiCに対して、耐食性を改善する効果があったことが確認された。
次に、実施例6のセラミック複合材12の破断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。図11はそのSEM写真であり、SiCの基材3の上にカーボンナノチューブ層2、さらにその上に熱分解炭素層7が形成されていることが確認できる。なお、スケールは1目盛が0.1μmであり、10目盛全体で1μmを示している。熱分解炭素層は、緻密な炭素の被膜であり、熱分解炭素自体が不浸透性を有しているので、熱水と接触した際、よりSiCの腐食を防止することができると考えられる。
また、実施例4、5でも同様に、SiCの基材の上にカーボンナノチューブ層、さらにその上に熱分解炭素層が形成されていた。
本発明のセラミック複合材は、炭素と、珪素とからなるので、放射性の元素、毒性を有する元素、希少な元素を用いることなく、耐熱性および高温水蒸気に耐食性を有することが確認された。
本発明のセラミック複合材は、高温水蒸気を流通させる配管パイプ、熱交換器、蒸気タービン設備、沸騰水型原子炉、加圧水型原子炉、超臨界水反応設備、亜臨界水反応設備などの構造部材として使用することができる。
1 カーボンナノチューブ
2 カーボンナノチューブ層
3 基材
6 ガラス状炭素層
7 熱分解炭素層
10 11 12 セラミック複合材

Claims (13)

  1. SiCからなる基材と、前記基材の表面を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層と、からなるセラミック複合材であって、
    前記基材は、SiC繊維の骨材とSiCのマトリックスとからなるSiC/SiC複合材であることを特徴とするセラミック複合材。
  2. 前記カーボンナノチューブは、一端が前記基材に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のセラミック複合材。
  3. 前記マトリックスは、CVD−SiC材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミック複合材。
  4. 前記セラミック複合材は、パイプ形状、平板形状、または棒形状であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のセラミック複合材。
  5. 前記セラミック複合材は、さらに前記カーボンナノチューブ層を覆う炭素層を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のセラミック複合材。
  6. 前記セラミック複合材は、さらに前記カーボンナノチューブ層を覆うガラス状炭素層を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のセラミック複合材。
  7. 前記セラミック複合材は、さらに前記カーボンナノチューブ層を覆う熱分解炭素層を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のセラミック複合材。
  8. SiCからなる基材を、真空中またはCO雰囲気中で加熱することにより、前記基材を覆うカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層を形成する表面分解工程からなるセラミック複合材の製造方法であって、
    前記基材は、SiC繊維の骨材とSiCのマトリックスとからなるSiC/SiC複合材であることを特徴とするセラミック複合材の製造方法。
  9. 前記マトリックスは、CVD−SiC材であることを特徴とする請求項に記載のセラミック複合材の製造方法。
  10. 前記セラミック複合材は、パイプ形状、平板形状、または棒形状であることを特徴とする請求項8又は9に記載のセラミック複合材の製造方法。
  11. 前記セラミック複合材の製造方法は、さらに、
    前記カーボンナノチューブ層上に炭素層を形成する工程を有することを特徴とする請求項10のいずれか1項に記載のセラミック複合材の製造方法。
  12. 前記セラミック複合材の製造方法は、さらに、
    前記カーボンナノチューブ層で覆われた前記基材に炭素前駆体を塗布した後、炭化焼成することにより、前記カーボンナノチューブ層上にガラス状炭素層を形成するガラス状炭素形成工程を有する請求項10のいずれか1項に記載のセラミック複合材の製造方法。
  13. 前記セラミック複合材の製造方法は、さらに、
    CVD炉に前記カーボンナノチューブ層で覆われた前記基材を入れ、原料ガスを導入し、原料ガスを熱分解させることにより、前記カーボンナノチューブ層上に熱分解炭素を沈積させる熱分解炭素形成工程を有する請求項10のいずれか1項に記載のセラミック複合材の製造方法。
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