JP2016063788A - 油性菓子生地のコンチング方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
油性菓子生地の製造において、従来のコンチング装置の洗浄性の問題を解決し、洗浄性良好で小ロット多品種生産に対応が容易な高シアコンチング方法及びコンチング装置を提供する。
【解決手段】
駆動軸に連絡する直径Dの撹拌翼の3本を撹拌槽(タンク)内で公転、自転の回転方向を逆方向にして遊星運動させ処理材料を撹拌、混練するようにしたプラネタリーミキサーにおいて、該撹拌翼が枠型平板ねじれ翼であるプラネタリーミキサーを用いて油性菓子生地をコンチングする。
【選択図】図1

Description

本発明は、油性菓子生地のコンチング方法及び装置に関する。
チョコレート類、チョコレート様食品、フィリングクリーム、サンドクリームのような連続相が油脂からなる油性菓子生地の製造において、コンチング工程は風味調整及び生地粘性の調整に極めて重要な工程である。
一般的に、油性菓子生地は糖類、ココア固形物、ミルク固形物、色素などの固体物がココアバター、植物性油脂、乳脂肪及び油溶性乳化剤とともに混合されたものであり、油脂の連続相に固体物が分散された状態のものである。このような油性菓子生地の調製方法は、前記固体物と連続相となる油脂の一部が混合され油脂分が20〜30重量%のペースト状生地を調製後、ロールなどのリファイナーで平均粒子径が15〜30μmの滑らかな粒子となるよう微細化処理を行う。その後の工程がコンチング工程であり、40〜95℃に保温しながら撹拌、混合を行う工程であって、その目的は酢酸、揮発性短鎖脂肪酸及び水分の蒸散と加熱調理臭のような新たな香味発現による風味調整と生地粘性の低下である。
前記の生地粘性の低下には、コンチングの中でもドライコンチングと言われるリファイナー後の粉末を撹拌、混合して高粘性の粘土状可塑性生地を得る工程において、生地に撹拌による高シア(圧縮と強いせん断)をかける必要があり、それによって固形物に包含された油脂が放出されて固体物粒子表面を被覆する油脂の絶対量が増加する結果、生地の粘性が低下する。ドライコンチング後は、残りの油脂やレシチンなどの乳化剤を添加混合するウェットコンチング工程を経て、流動状の最終油性菓子生地が得られる。
コンチング工程は前記の通り、油性菓子生地の風味、物性の調整に重要な工程であることから、古くから多くのコンチング装置が提案され、実用化されている。花崗岩製のローラーと容器からなるロングコンチェ、縦型や横型の回転型コンチェがあり、いずれも撹拌子の回転によって容器側壁や容器底部に生地を押し付ける動作を加えるとともに、撹拌子の回転による物理的な圧力によって生地に高シアをかけるものである。さらに、上記に加えて、最近では2軸エクストルーダーのような連続的に高シアをかける連続コンチング装置、例えば特許文献1、が提案されている。
これらのコンチング装置はいずれも油性菓子生地の風味、粘性の調整には全く問題がないものであるが、装置の強度、耐久性の観点からコンチング容器内の撹拌子は固定型になっていることが多く、洗浄性への考慮がなされておらず、小ロット多品種生産のような多様な油性菓子生地の生産には必ずしも使い勝手の良いものではなかった。
特開2005−529620号公報
上記のように、高シアによる風味、粘性の調整が可能で、かつ洗浄性に優れたコンチング装置が求められていた。
本発明の目的は、従来のコンチング装置の洗浄性の問題を解決し、洗浄性良好で小ロット多品種生産に対応が容易な高シアコンチング方法及びコンチング装置を提供することにある。
本発明者らは、前記の従来のコンチング装置の洗浄性の問題を解決し、洗浄性良好で小ロット多品種生産に対応が容易な高シアコンチング装置を鋭意検討した結果、撹拌漕内で撹拌翼を遊星運動させるプラネタリーミキサーにおいて、撹拌翼を特定の枠型平板ねじれ翼とした3本の撹拌翼を設けたプラネタリーミキサーを使用することにより、風味、物性の調整が可能で、かつ洗浄性良好な油性菓子生地のコンチング装置が得られることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は
(1)駆動軸に連絡する直径Dの撹拌翼の3本を撹拌槽(タンク)内で公転、自転の回転方向を逆方向にして遊星運動させ処理材料を撹拌、混練するようにしたプラネタリーミキサーにおいて、該撹拌翼が枠型平板ねじれ翼であるプラネタリーミキサーを用いて油性菓子生地をコンチングする方法。
(2)撹拌翼の厚さ(W)が,撹拌翼直径Dに対して0.2±0.05の厚さである(1)記載のプラネタリーミキサーを用いて油性菓子生地をコンチングする方法。
(3)撹拌翼先端のエッジ辺幅(b)が撹拌翼の厚さ(W)の4〜15%である(1)または(2)記載のプラネタリーミキサーを用いて油性菓子生地をコンチングする方法。
(4)撹拌翼エッジの撹拌槽(タンク)内面に対する前方角度(材料食い込み角度)及び後方角度(負圧角度)は40〜50度であり、エッジ角度(侠角)は80〜100度である(1)〜(3)のいずれか1記載のプラネタリーミキサーを用いて油性菓子生地をコンチングする方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか1記載のプラネタリーミキサーを使用することを特徴とする油性菓子生地のコンチング装置。
に関するものである。
本発明によれば、チョコレート類、チョコレート様食品、フィリングクリーム、サンドクリームのような、生地調製時に撹拌による高シア(圧縮と強いせん断)をかける必要がある油性菓子生地の製造において、効率的に高シアをかけることにより所望の風味、粘性の油性菓子生地を得ることができる。また、本発明のプラネタリーミキサーは撹拌ヘッドを昇降できるとともに、羽根形状が枠型平板ねじれ翼のため、菓子生地をタンクから抜出した後の洗浄作業(ゴムヘラなどでの付着生地のかき落しなど)が極めて容易であり、小ロット多品種生産への対応を可能とする利点もある。
本発明における油性菓子とは、水分含量が5重量%未満であり、油脂を連続相として、カカオマスやココアなどのカカオ固形分、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエーパウダーなどの乳固形分、大豆粉、小麦粉、米粉などの穀粉類、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、小麦蛋白などの植物性蛋白質、ナッツペースト類、澱粉類、砂糖、乳糖、グルコースなどの糖類、各種果汁粉末、香辛料、色素、乳化剤、香料などから選ばれる1種以上が混合されたものである。本発明における油性菓子の例として、チョコレート類、フィリングクリーム類、サンドクリーム類及びセンタークリーム類等が挙げられる。
本発明におけるチョコレート類の例としては、原料としてカカオマス、ココアパウダー、砂糖などの糖類、ココアバターなどの油脂、乳化剤、香料等を使用して作られるダークチョコレート、原料としてカカオマス、ココアパウダー、砂糖などの糖類、ココアバター等の油脂、全脂粉乳等の乳製品類、乳化剤、香料等を使用して作られるミルクチョコレート、砂糖などの糖類、ココアバター等の油脂、全脂粉乳等の乳製品類、乳化剤、香料等を使用して作られるホワイトチョコレート、ホワイトチョコレートを色素で着色、香料で風味付けしたカラーチョコレート等が挙げられる。また、カカオ分の含量により、ココアバターの一部または全部を植物性油脂に置換したチョコレート(カカオ分35%以上)、準チョコレート(カカオ分15%以上)、ミルクチョコレート(カカオ分21%以上)、準ミルクチョコレート(カカオ分7%以上)、チョコレート利用食品であるチョコレートコーチング(カカオ分8%以上)、乳製品を使用したチョコレートコーチング(カカオ分5%以上)の他、カカオ分非含有のホワイトコーチングやカラーコーチングのようにも区別されるが、いずれも本発明におけるチョコレート類に含まれる。また、チョコレート類中の油脂には、油溶性の色素、レシチン、乳化剤、抗酸化剤等を適宜添加することが出来る。
本発明におけるフィリングクリーム類とは、焼き菓子やパンの中に封入された油性クリームであり、サンドクリーム類とは焼き菓子やチョコレートの間に挟まれた形状の油性クリームである。また、センタークリームとはシェルチョコレートの中心部に封入された形態の油性クリームである。かかるクリーム類は、概して上記のチョコレート類と同様の原材料、製法を用いて製造されたものが好適に利用できる。
本発明に用いる油性菓子生地の油脂分は特に限定されないが、概ね20〜80重量%、好ましくは25〜75重量%、より好ましくは30〜70重量%であるのが好ましい。20重量%以下では生地の粘度が高くなりすぎて、乾熱殺菌処理が困難でしかも滑らかな口当たりにならないため、好ましくない。80重量%以上では、油脂分が高すぎるため、油っぽい食感となり風味も弱くなる傾向にあり、やはり好ましくない。
本発明に用いる油性菓子生地の油脂は特に限定されないが、ココアバター、ヤシ油、パーム核油、MCT、パーム油、ひまわり油、菜種油、大豆油、米糠油、コーン油、綿実油、シア脂、サル脂、コクム脂、イリッペ脂などの植物油、豚脂、牛脂、魚油などの動物脂、かかる動植物油脂の水素添加油、分別油、エステル交換油の1種以上を適宜選択して使用することができる。
本発明のプラネタリーミキサーは、撹拌槽内に挿入される3本の撹拌翼を有し、各撹拌翼はモーターや遊星歯車機構等の駆動手段を介して撹拌槽内で公転、自転の方向が逆方向となるよう遊星運動するものであり、株式会社井上製作所製のトリミックス(商品名)が例示できる。本発明の枠型平板ねじれ翼を有するプラネタリーミキサーとは、例えば実用新案平5−9066号公報、特開2010−99553号公報に開示されるプラネタリーミキサーにおいて、撹拌翼を枠型平板ねじれ翼としたものである。特開2010−99553号公報に開示される枠型撹拌翼を用いたプラネタリーミキサーは、食品や各種工業材料の低粘度から高粘度の材料または半固体状までの材料の分散、撹拌、混練等を効率的に行うことができ、タンク内壁面や底面に付着残のない均質な混練ができ、粉や粒体の凝集粒子の解砕も可能であり、しかも混練時間も短縮できるものである。しかしながら、該枠型撹拌翼を用いて、油性菓子生地のドライコンチングを行うと、油性菓子生地へのシアのかかり方が不十分であり、油性菓子生地への適性が不十分であることが判明した。
コンチングの中でもドライコンチングと言われるリファイナー後の粉末を撹拌、混合して高粘性の粘土状可塑性生地を得る工程においては、生地に撹拌による高シア(圧縮と強いせん断)をかける必要があるが、前記枠型撹拌翼では目的の高シアが得られないことから、撹拌翼形状を検討した結果、撹拌翼を枠型平板ねじれ翼とすることにより所望の高シアが得られることを見い出した。
すなわち、本発明の枠型平板ねじれ翼は撹拌翼上辺部と下辺部が周方向にねじれた状態になるように縦面部が円周方向にねじれた形状の枠型平板ねじれ翼である。撹拌翼をねじれ翼とすることにより、軸方向流がとれて、上部及び下部が均一になる。ねじれ角は45〜90度が好ましく、最も好ましくは側面から見て45度相当の90度掻き下げねじれ翼である。それは円周方向対下方への流量が1:1となるため、材料の上昇を抑制できるためである。
本発明の枠型平板ねじれ翼を付設するプラネタリーミキサーは、従来の枠型撹拌翼のみの撹拌が撹拌翼とタンク底部及び側部間隙を油性菓子生地が通過する際のせん断を受ける効果に加えて、平板ねじれ翼により油性菓子生地を押す力と平板ねじれ翼間での油性菓子生地を圧縮する力がさらに加わる結果、枠型撹拌翼よりも高いシア(圧縮と高せん断)が得られるものと考えられる。
本発明の枠型平板ねじれ翼の厚さ(W)は、高粘性材料の撹拌、混練処理時において撹拌翼同士の接触や撹拌翼と撹拌漕の内壁との接触を避けるために、撹拌翼直径(D)に対して0.2±0.05の厚さに形成したものが好ましい。
本発明の撹拌翼先端のエッジ辺幅(b)は、撹拌翼の厚さ(W)の4〜15%であるのが好ましく、さらに好ましくは6〜12%である。エッジ辺幅(b)が4%未満であると、撹拌漕内面にエッジ辺が最接近するとき、線接触に近い状態になり、油性菓子生地の流動方向での圧縮、膨張作用が殆ど見られず、均質の混練に時間を要し、好ましくない。また、15%を超えると、撹拌槽内面との近接面積が大きくなり、せん断力(ズリ)応力も大きくなるが、発熱と負荷動力のエネルギーも大きくなり、混練も好ましくない。
本発明の撹拌翼エッジの撹拌槽(タンク)内面に対する前方角度(材料食い込み角度)及び後方角度(負圧角度)は40〜50度であり、エッジ角度(侠角)は80〜100度であるのが好ましく、エッジ角度をこのような角度に形成することにより、エッジ辺と撹拌槽内面間に処理材料が効率よく揉み込まれ、油性菓子生地の流動方向で圧縮、膨張が効果的に繰り返され、短時間で処理することができる。該エッジ角度が80度未満であると油性菓子生地の移動が主体となり、撹拌槽壁面との間で生じるせん断力(ズリ)作用が少なくなる。逆に、100度を超えると、撹拌槽壁面への油性菓子生地の食い込みが少なくなるので、混練時間が長くなり好ましくない。
本発明の撹拌翼と撹拌槽側壁及び底部との間隙は、適度なせん断効果が得られるように、1〜15mm、好ましくは3〜5mmであるのが望ましい。また、撹拌翼と撹拌翼間の間隙は、翼同士がぶつからないよう15〜40mm、好ましくは20〜30mmであるのが望ましい。
本発明のプラネタリーミキサーを用いた油性菓子生地のコンチング方法は、例えば以下の手順で行うことができる。ココアパウダー、糖類、粉乳などの固形粉末原料に対し、加熱融解したカカオマスや油脂類とレシチン、PGPRなどの乳化剤を添加し、ホバートミキサーなどを用いて混合して、油脂分20〜30重量%のぺースト状の生地を調製する。得られた該生地をロールなどのリファイナーで平均粒子径が15〜30μmの滑らかな粒子になるよう微粒化する。得られた微粒化粉末をプラネタリーミキサー撹拌槽に移し、40〜95℃に保温しながらドライコンチング(撹拌、混合)を行い、滑らかなペースト状の生地を得る。その後、さらに油脂類、乳化剤、香料等を添加、混合して目的とする流動状の油性菓子生地を得ることができる。
本発明の枠型平板ねじれ翼を付設したプラネタリーミキサーは、チョコレート類、チョコレート様食品、フィリングクリーム、サンドクリームのような連続相が油脂からなる油性菓子生地の製造に使用することができ、ドライコンチングと言われるリファイナー後の粉末を撹拌、混合して高粘性の粘土状可塑性生地を得る工程において、生地に撹拌による高シア(圧縮と強いせん断)をかけることができるため、所望の風味と低粘性を有する油性菓子生地を得るためのコンチング装置として、利用することができる。
また、本プラネタリーミキサーは撹拌ヘッドを昇降できる構造になっているため、油性菓子生地抜出し後の洗浄作業が極めて容易である。すなわち、撹拌ヘッドを上昇させて撹拌槽から撹拌翼を抜出しまたは露出させてから、平面ねじれ翼表面をゴムヘラなどでかき落し、必要に応じて布や紙類で拭き取ることにより、容易に撹拌翼を洗浄することができる。同様に撹拌槽内面もかき落としと拭き取りにより簡便に洗浄することができる。このように、本発明のプラネタリーミキサーは洗浄性にも優れるため、多品種小ロットの油性菓子生地製造に幅広く利用することができる。
以下に実施例を記載する。各例中の%及び部は重量基準を意味する。なお、各例における粘度は以下の方法で測定した。
(粘度)
チョコレート類の品温を45℃に調整し、BM型粘度計(東京計器株式会社製)で10,000cP以下の場合は3号ローター、12rpmにて測定し、10,000cPを超える場合は4号ローター、12rpmにて測定した。
(ダマの確認)
コンチング終了後のチョコレート類生地1.5Kgを100メッシュ篩を通過させ、メッシュ上の粒状物の有無を目視で確認する。
図1において、本体(1)に撹拌槽(2)を取出し可能に位置させ、該撹拌槽上に撹拌ヘッド(3)を昇降可能に形成してある。該撹拌ヘッド(3)は、図1においてはガイド棒(4)に案内され油圧シリンダー(5)で昇降する。該撹拌ヘッドに設けた駆動軸(6)は、モーター(7)により駆動スプロケット(8)、従動スプロケット(9)及びチェーン(10)を介して回転される。該駆動軸(6)は撹拌ヘッド(3)に固定した支持筒(11)に挿通しており、該支持筒(11)の上下部分で第2図に示すように軸受(12)、(13)により回転自在に支持されている。該駆動軸(6)の下端には、回転板(14)をキー(15)で固定してあり、該回転板の周縁は筒状に形成されて上方に伸び、その端部に上記支持筒(11)の周囲に回転自在に嵌挿した蓋板(16)がねじ着されている。該回転板(14)には、上記駆動軸(6)を取り囲むように3本の撹拌翼軸(17)、(17)、(17)を軸着してある。該撹拌翼軸は、平面からみて正三角形の各頂点に各軸が一するような関係に配置され(図3)、それぞれ軸受(18)、(19)により回転自在に支持されている。該撹拌翼軸(17)の先端には遊星歯車(20)をキー(21)で固定してあり、該遊星歯車は上記支持筒(11)に支持された太陽歯車(22)に係合している。該太陽歯車は上記遊星歯車を囲むように支持筒(11)に固定しているが、所望により支持筒の先部に上記遊星歯車の中心に位置するよう太陽歯車を設けてもよい。上記各撹拌翼軸(17)の下端には、上記撹拌槽の内壁に近接して運動するように図3に示すように、一側が撹拌槽の内壁に近接し他側がタンクの中心に伸びる径を有する撹拌翼(23)をキー(24)により取り付けてある。該撹拌翼は、平面構造のものを採用することができるが、図1に示すように撹拌翼平面を油性菓子生地を下方に押し付けるように45〜90度にねじった形状であるのが好ましく、最も好ましくは90度ねじった形状である。
上記撹拌槽(2)内にリファイナー後の油性菓子生地を入れ、撹拌ヘッド(3)を降下させると、上記撹拌翼(23)は撹拌槽内で公転、自転をなし、撹拌槽内壁に近接した遊星運動と各撹拌翼間の押しと圧縮により、油性菓子生地には高シア(圧縮とせん断)が与えられる結果、所望のコンチング処理を施した油性菓子生地を得ることができる。
図3は、撹拌翼(23)と撹拌槽の関係を示す説明図である。
図4は、撹拌翼(23)の平面図であり、撹拌翼の厚さ(W)は、撹拌翼直径(D)の0.2±0.05である。
図5は、撹拌翼(23)にエッジ部とタンク内面の関係を示す説明図であり、エッジ部の前方角度(θ1)及び後方角度(θ2)は40〜50度であり、エッジ角度(θ:侠角)は80〜100度である。また、撹拌翼先端のエッジ辺幅(b)は撹拌翼の厚さ(W)の4〜15%である。
図6は枠型平板ねじれ翼(23)の正面図、図7は枠型平板ねじれ翼(23)の背面図、図8は枠型平板ねじれ翼(23)の一部縦断正面図である。
実施例1
砂糖53部に対し、あらかじめ融解したカカオマス(油分55%)46部とココアバター 1部をミキサー(愛工舎株式会社製AM30)を用いて攪拌し、得られたドウ状の生地をロールリファイナー(BUHLER株式会社製「Three−roll mill SDY−300」)により微粉砕し、ロールフレークを得た。プラネタリーミキサー(商品名:トリミックス TX−50、(株)井上製作所製、撹拌槽容量:50リットル)の撹拌槽に、敷油として融解したココアバター1.5部を入れて、ロールフレーク89部を投入した。その後、回転数が公転:21rpm、自転:70rpmの条件で55℃、1Hr、続いて90℃、2hrsの撹拌によるドライコンチングを行った。その後、融解したココアバター9.5部及びレシチン0.5部を添加、混合してチョコレート生地を得た。なお、プラネタリーミキサーの撹拌翼形状は、撹拌翼平面を45度にねじった枠型平板ねじれ翼を用い、撹拌翼の直径(D)は218mm、撹拌翼の厚さ(W)は40mm、エッジ辺幅(b)は4mm、エッジ角度(θ)は90度、エッジの前方角度(θ1)及び後方角度(θ2)はいずれも45度のものを使用した。
比較例1
実施例1の枠型平板翼に代えて、特開2010−99553号公報開示の実施例2の枠型撹拌翼を用いて、実施例1同様にドライコンチングを行い、その後、融解したココアバター9.5部及びレシチン0.5部を添加、混合してチョコレート生地を得た。本例の撹拌翼の直径、厚さ、エッジ辺幅、エッジ角度、エッジ前方角度及び後方角度はいずれも実施例1と同一である。
参考比較例1
実施例1のプラネタリーミキサーを従来型の縦型コンチングミキサー(株式会社品川工業所製)に代えて、実施例同様にドライコンチングを行い、その後、融解したココアバター9.5部及びレシチン0.5部を添加、混合してチョコレート生地を得た。本例の撹拌翼はねじれのない平板型のものであり、撹拌翼本数は2本である。
表1に、実施例1、比較例1、参考比較例1で調製したチョコレート生地の品質評価結果を示す。
表1
Figure 2016063788
本発明の枠型平板ねじれ翼を用いた実施例1は、粘度も参考比較例1に近似した低粘性であり、水分は参考比較例1よりも低レベルでしかも風味も雑味のない良好なものであり、ドライコンチングがよく効いたチョコレート生地であった。一方、枠型撹拌翼を用いた比較例1は、水分は実施例1同様に低レベルで風味も良好であったが、粘度低下がやや不十分であるとともにコンチング中にダマの発生が認められて、満足なチョコレート生地と言えるものではなかった。
本発明の実施例を示すプラネタリーミキサー本体の一部切欠正面図。
駆動軸部分の拡大断面図。
撹拌翼と撹拌槽の関係を示す説明図。
撹拌翼の平面図。
撹拌翼エッジ部と撹拌槽内面の関係を示す説明図。
撹拌翼の正面図。
撹拌翼の背面図。
撹拌翼の一部縦断正面図。
1 本体
2 撹拌槽
3 撹拌ヘッド
6 駆動軸
23 撹拌翼
本発明により、油性菓子生地の製造において、従来のコンチング装置の洗浄性の問題を解決し、洗浄性良好で小ロット多品種生産に対応が容易な高シアコンチング方法及びコンチング装置を提供することができる。

Claims (5)

  1. 駆動軸に連絡する直径Dの撹拌翼の3本を撹拌槽(タンク)内で公転、自転の回転方向を逆方向にして遊星運動させ処理材料を撹拌、混練するようにしたプラネタリーミキサーにおいて、該撹拌翼が枠型平板ねじれ翼であるプラネタリーミキサーを用いて油性菓子生地をコンチングする方法。
  2. 撹拌翼の厚さ(W)が,撹拌翼直径Dに対して0.2±0.05の厚さである請求項1記載のプラネタリーミキサーを用いて油性菓子生地をコンチングする方法。
  3. 撹拌翼先端のエッジ辺幅(b)が撹拌翼の厚さ(W)の4〜15%である請求項1または請求項2記載のプラネタリーミキサーを用いて油性菓子生地をコンチングする方法。
  4. 撹拌翼エッジの撹拌槽(タンク)内面に対する前方角度(材料食い込み角度)及び後方角度(負圧角度)は40〜50度であり、エッジ角度(侠角)は80〜100度である請求項1から請求項3のいずれか1項記載のプラネタリーミキサーを用いて油性菓子生地をコンチングする方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のプラネタリーミキサーを使用することを特徴とする油性菓子生地のコンチング装置。
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