JP2006166964A - 電磁誘導加熱式の煮練り攪拌機 - Google Patents

電磁誘導加熱式の煮練り攪拌機 Download PDF

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Abstract

【課題】
特に高品質な美味しいカスタードクリームの製造に有用な電磁誘導加熱式の煮練り攪拌機を提供する。
【解決手段】
据付け機筐(F)に内蔵設置された電磁誘導加熱器(H)により、食材収容用鍋(B)を加熱するように定めると共に、その鍋(B)に向かって垂下するセンター軸(25)を駆動モーター(22)により回転させた時には、これと一体回転する回転ベアリングケース(37)を介して、上記センター軸(25)と平行な偏心軸(40)がその周囲を公転運動し乍ら、そのピニオンギヤ(43)とインターナルギヤ(36)との噛合作用により、上記公転運動との逆方向へ自転運動するが、同じくセンター軸(25)を逆方向へ回転駆動した時には、上記偏心軸(40)がこれと同じ方向へ公転運動しつつも、ワンウェイクラッチ(44)により自転運動を行なえず、停止状態を保つように設定した。
【選択図】 図5

Description

本発明は主にカスタードクリームを初め、ブッセ生地や餡、チョコレート、カレールー、カラメル、チーズ、その他の各種食材を電磁誘導加熱し乍ら混練するための煮練り攪拌機に関する。
本発明者はカスタードクリームの煮炊き攪拌機として、先に特許第2532347号と同第2759092号を提案し、その実施事業化により相当の成果を収めることができた。
特に、前者の特許第2532347号発明では、鍋(12)の内部中心に位置する焦げ付き防止用回転羽根(A)と、その羽根(A)の周囲を公転し乍ら自転するダマ解消用ワイヤービーター(B)との2種が、共通する1個のモーター(25)により駆動されるようになっている点で、本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
特許第2532347号公報 特許第2759092号公報
ところが、上記特許第2532347号発明はガスを加熱源とする煮炊き攪拌機であるため、そのガス供給配管や煙突、換気扇などの付帯設備が必要となるほか、鍋(12)に作用する火力の正確な調整制御や安全性、作業衛生環境などにも問題がある。
又、焦げ付き防止と砂糖の好適な化学変化を得るばかりでなく、作業者の火傷事故を予防するためにも、ガス釜(11)をセラミックファイバーなどの熱しやすく冷めやすい非蓄熱性の断熱材から、内筒(11a)と外筒(11b)との特殊な二重断熱構造に作成しなければならず、大型の業務用煮炊き攪拌機であればともかく、小型のそれとしては吸収し難いコスト高を余儀なくされることになる。
更に、ダマ解消用ワイヤービーター(B)の複数を焦げ付き防止用回転羽根(A)の回転方向(F)と逆な方向(R)へ自転させるようになっているが、その鍋(12)の中心に位置する回転羽根(A)の回転方向(F)は常に一定(正転)として、逆な方向へ回転使用されるように構成されておらず、回転羽根(A)自身の揺動羽根片(63)としても図11のように、その垂直断面の非対称なほぼ直角三角形をなしているに過ぎない。
そのため、切り返し用又は掻き取り用の固定羽根が鍋(12)の内部へ挿入使用されていないこととも相俟って、煮炊き進行に連れて粘結固形化したカスタードクリームが、その鍋(12)の中心に位置する回転羽根(A)に付着・堆積しても、これを振り切り除去することが困難である。
このような回転羽根(A)への付着防止やダマを解消するために、その回転羽根(A)とワイヤービーター(B)を高速に回転させるとすれば、カスタードクリームがワイヤービーター(B)により激しく泡立つ如く攪拌作用されて、その作用中に空気がいたづらに多く混入する結果、カスタードクリームの風味を低下させてしまい、美味しい製品を得ることができなくなる。
この点、後者の特許第2759092号発明ではカスタードクリームの煮炊き終期に、ワイヤービーター(B)の自転速度を回転羽根(A)の回転速度よりも遅く、相対的に変化させることができるようになっているが、その遅く変化させたとしても、未だワイヤービーター(B)が自転することに変りはなく、その相対的な変化度の調整も困難であるため、上記問題を完全に解決することができない。
本発明はこのような諸問題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では据付け機筐のテーブル面に開口する鍋逃し入れ口へ、上方から抜き差し自在に差し込みセットされる食材収容用鍋と、
その鍋の底面にほぼ対応する大きさ・形状として、上記据付け機筐に内蔵設置された電磁誘導加熱器と、
同じく据付け機筐のテーブル面から上記鍋よりも背高く起立された中空支柱と、
その中空支柱の上端部から上記鍋の真上位置まで張り出された水平な支持アームと、
その支持アームの張り出し先端部から上記鍋の中心部に向かって垂下されたセンター軸と、
同じく支持アームにおける張り出し先端部の上面へ据付け固定されたセンター軸回転用の竪型駆動モーターと、
上記センター軸を回転自在に支持すべく、やはり支持アームにおける張り出し先端部の下面へ取り付け一体化された固定ベアリングケース並びにこれよりも径大な固定インターナルギヤと、
その固定ベアリングケースから露出する上記センター軸の下端部付近へ、そのセンター軸と一体回転し得るように嵌合された径大な椀状の回転ベアリングケースと、
その回転ベアリングケースによる回転可能な支持状態のもとで、これから上記鍋の偏心部に向かって垂下された偏心軸と、
その偏心軸の上端部へ上記固定インターナルギヤと噛合回転し得るよに差し込み套嵌された径小なピニオンギヤと、
そのピニオンギヤと上記偏心軸との嵌合面に介挿設置されたシェル型ワンウェイクラッチとを備え、
上記センター軸を回転駆動した時には、これと一体回転する回転ベアリングケースを介して、上記偏心軸がセンター軸の周囲をゆっくり公転運動し乍ら、そのピニオンギヤとインターナルギヤとの噛合作用により、上記公転運動との逆方向へ速く自転運動する一方、
同じくセンター軸を逆方向へ回転駆動した時には、上記偏心軸がこれと同じ方向へ公転運動しつつも、そのワンウェイクラッチにより自転運動を行なえず、停止するように設定したことを特徴とする。
又、請求項2では上記請求項1に従属する構成として、ハンガー軸とその下端部へ揺動自由に枢着された硬質な合成樹脂製の羽根板とから成る全体的な錨型として、しかもその羽根板の垂直断面が二等辺三角形に造形された攪拌羽根の上記ハンガー軸を、
センター軸の下端部に付属する連結スリーブへ、下方から抜き差し自在に且つそのセンター軸と一体回転し得るように差し込み使用して、
上記センター軸が正・逆何れの方向へ回転駆動されるも、上記羽根板の対称な掬い上げ傾斜面により、常時食材を付着・堆積し難く押し進め逃すことができるように設定したことを特徴とする。
請求項3では同じく上記請求項1に従属する構成として、中空支柱の下面を据付け機筐のテーブル面へ、水平な支軸により一定角度の起伏的な回動自在に枢着して、
その起立した使用状態から一定角度だけ上記中空支柱を転倒させることにより、センター軸と偏心軸を鍋から引き上げ退避させた状態のもとで、その鍋をテーブル面の鍋逃し入れ口から抜き出せるように設定したことを特徴とする。
更に、請求項4ではやはり上記請求項1に従属する構成として、センター軸回転用の駆動モーターをDCブラシレスモーターとして、その出力軸とセンター軸とを伝動カップリングにより伝動連結すると共に、上記DCブラシレスモーターのコントローラーを中空支柱に内蔵設置したことを特徴とする。
請求項1の上記構成では、食材収容用鍋に収容した各種食材を電磁誘導加熱器によって加熱するようになっているため、その加熱温度を高周波電源(インバーター)により正確に調整制御することができ、従来のようなガスの供給配管や排気用の煙突、換気扇などの付帯設備が不要となり、希望の場所へ制約なく据え付け使用して、衛生的な環境のもとに煮練り攪拌作業を行なえるのであり、安全性にも優れる。
又、従来技術との比較上、カスタードクリームを煮練り攪拌する場合について言えば、センター軸の下端部へ攪拌羽根を差し込み連結使用する一方、これと異なる攪拌子のワイヤービーター(ホイッパー)を偏心軸の下端部へ差し込み連結使用して、そのセンター軸を駆動モーターによって回転駆動すれば良く、そうすれば両者の公転運動とワイヤービーターの逆方向へ速く回転する自転運動により、カスタードクリームを全体的に効率良く煮練り攪拌作用することができ、その煮練り進行に連れて生成するダマも、上記ワイヤービーターの激しい泡立ち攪拌作用によって確実に解消し得るのである。
そして、上記カスタードクリームが煮詰まり始め、攪拌羽根に付着・堆積したり、鍋に焦げ付いたりしやすく粘結固形化した終期には、上記センター軸回転用駆動モーターの回転方向を逆に切り換えることができる。そうすれば、上記ワイヤービーターが自転運動を行なえず、停止することになるため、カスタードクリームがこれにより激しく泡立つ如く攪拌されて、その使用中に空気の混入するおそれがなく、風味に優れた高品質のカスタードクリームを得られることとなる。
更に、上記駆動モーターの回転方向を逆に切り換えたとしても、そのワイヤービーターと攪拌羽根は公転運動するため、粘結固形化したカスタードクリームが特に攪拌羽根へ付着・堆積したり、鍋に焦げ付いたりするおそれを防止でき、これを容易に振り切り除去し得るのである。
その場合、請求項2の構成を採用するならば、攪拌羽根が鍋の底面に対応する全体的な錨型をなし、しかも特に硬質な合成樹脂から成る羽根板の垂直断面が二等辺三角形として、対称な掬い上げ傾斜面を備えているため、これに対する高粘度な食材の付着・堆積や鍋への焦げ付きを一層確実に防止することができ、その鍋からの掻き取り効果も向上する。
又、請求項3の構成を採用するならば、鍋に向かって垂下するセンター軸と偏心軸とを支持した支持アームの中空支柱が、据付け機筐のテーブル面へ水平な支軸を介して、一定角度だけ起伏的な回動自在に枢着されているため、これを鍋の真上位置から退避する如く転倒させることにより、食材の煮練り攪拌し終えた鍋を上記テーブル面の鍋逃し入れ口から支障なく抜き出すことができ、その鍋の抜き差し作業性に優れる。
請求項4の構成を採用するならば、センター軸回転用駆動モーターがDCブラシレスモーターから成り、その回転速度を制御するコントローラーは中空支柱に内蔵設置されているため、センター軸への伝動系統を軽量に簡素化でき、煮練り攪拌機の小型化に役立つばかりでなく、上記回転速度も正確に調整制御し得る効果がある。
以下、図面に基いて本発明の具体的構成を詳述すると、図1、2はカスタードクリームにふさわしい煮練り攪拌機の概略全体を示しており、その使用状態での全体高さ(Y)が好ましくは約1300mmとして、特に女性作業者の身長よりも背低い小型の卓上式に形作られている。
(F)は作業床への据付け機筐であって、一定な大きさ(好ましくは幅:約450mm×奥行:約600mm×高さ:約800mm)の直方体をなし、その下端角隅部にねじ込まれたアジャスター(1)により、据付け高さを調整できるようになっているが、そのアジャスター(1)に代るブレーキ付きキャスターを軸支しても良い。
このような据付け機筐(F)の上面は作業しやすい高さの水平なテーブル面(卓板)(2)として、ここには円形の鍋逃し入れ口(3)が切り抜き開口されている。(4)はその開口周縁部から一体的に起立する鍋受けフランジ、(5)は同じく鍋逃し入れ口(3)の開口周縁部に裏付け一体化された複数の電磁誘導加熱器用支持座であり、ここへ下方から後述の電磁誘導加熱器(H)が取り付けられることになる。
(B)は上記鍋逃し入れ口(3)へ上方から抜き差し自在に差し込まれ、その鍋受フランジ(4)によって受け止められる食材収容用の銅製鍋であり、左右一対の把手(6)を備えている。しかも、その鍋(B)の底面には磁性体である鉄粉などの発熱被膜(図示省略)が溶着一体化されることにより、導電性が与えられている。
但し、その導電性を有する限りでは、上記鍋(B)を鉄や鉄とステンレスとのクラッド鋼、その他の磁性体である各種金属から、図例のような約335mmの直径と約158mmの深さを備えた容量:約11リットルの円錐型に作成しても勿論良い。
(7)は平面視の正方形又は長方形をなす中空支柱用ベース盤であり、上記鍋(B)の背後に位置する関係として、据付け機筐(F)のテーブル面(2)へ上方から複数のボルト(8)によって固定一体化されている。(9)はそのベース盤(7)の上面に取り付けられた固定軸受ステー、(10)はその固定軸受ステー(9)の背後に位置しつつ、やはりベース盤(7)の上面に取り付け固定された転倒防止用ストッパーであり、中空支柱(11)が後方へ転倒しないように受け止める。
茲に、中空支柱(11)は上記ベース盤(7)の真上位置において、上記鍋(B)よりも背高く起立し、その下面に付属一体化された可動軸受ステー(12)が上記ベース盤(7)の固定軸受ステー(9)へ、左右方向に沿う水平な支軸(13)を介して起伏的な回動自在に枢着されている。
しかも、その中空支柱(11)における下面の前端部からは、上記転倒防止用ストッパー(10)と対峙する関係のネジ脚座(14)が進退自在に垂下されており、その頭部を上記ベース盤(7)の上面へ接地させることによって、中空支柱(11)の起立姿勢と延いては後述のセンター軸が鍋(B)の中心部へ正しく指向するように、その位置決め調整を行なえるようになっている。(15)はその調整状態を固定するロックナット、(θ)は上記支軸(13)を中心とする中空支柱(11)の起伏的な回動角度であって、図例では約55度に設定されており、その中空支柱(11)を図2、3の鎖線で示す如く、後方へ転倒させることによって、上記鍋逃し入れ口(3)から上方へ鍋(B)を抜き出すことができる。
又、(16)は上記ベース盤(7)に対する中空支柱(11)の枢着部分を包囲する保護カバーであって、後向き開放する平面視のコ字型をなし、その左右両側面には下向き開口する差込みスリット(17)の一対づつが切り欠かれている。
そして、その差込みスリット(17)と対応位置するガイドボルト(18)の左右一対づつが、上記ベース盤(7)から横向き水平に張り出されており、これに上記差込みスリット(17)を落し込む如く、上方から保護カバー(16)を工具類の必要なく取り付けることができるようになっている。そのため、その保護カバー(16)を上方へ抜き出すことによって、上記枢着部分を便利良く清掃作業することができる。
尚、上記中空支柱(11)の後方に向かう転倒防止用ストッパー(10)を、ベース盤(7)の上面へ取り付け固定する所謂枕形態(図5参照)に代え、これを図2、3に示唆するような水平の棒形態として、保護カバー(16)の左右両端面へ抜き差し自在に差し込み横架させても良い。
(20)は上記中空支柱(11)の上端部から前向き一体的に張り出された水平な中空の支持アームであり、これが鍋(B)の真上位置まで達する先端部には、カップリングケース(21)が図3、5のような施蓋状態に被着一体化されている。(22)はそのカップリングケース(21)の上面へ竪型に据え付け固定されたセンター軸回転用駆動モーターであって、可逆式のDCブラシレスモーターから成り、その回転速度を制御するコントローラー(制御基板)(23)が、上記中空支柱(11)に内蔵設置されている。(24)はその中空支柱(11)の背面に取り付けられた開閉カバーである。
(25)は上記カップリングケース(21)に内蔵設置された伝動カップリング(26)を介して、駆動モーター(22)の出力軸(27)と伝動連結されることにより、そのカップリングケース(21)から鍋(B)の中心部に向かって垂下するセンター軸、(28)はそのセンター軸(25)のほぼ上半部を抱持する固定ベアリングケースであって、上記カップリングケース(21)の下面へ押圧フランジ(29)と複数のボルト(30)により固定されている。
(31)(32)はその固定ベアリングケース(28)に封入された上下一対のラジアルベアリングであり、上記センター軸(25)を回転自在に支持している。(33)は同じくセンター軸(25)のスラストベアリングを示している。尚、上記伝動カップリング(26)はその詳細を図示省略してあるが、ゴム製のスパイダーとこれを挟む一対の金属製ハブとから成り、駆動モーター(22)の出力軸(27)からセンター軸(25)へ回転動力を伝達するようになっている。
又、(34)は上記カップリングケース(21)と、固定ベアリングケース(28)の押圧フランジ(29)との上下相互間へ、そのボルト(30)を兼用して挟み付け一体化された径大な円形の固定カバーであり、これから連続的に垂下する周縁フランジ(35)の内周面にはインターナルギヤ(36)が刻設されている。
(37)はその固定カバー(34)の周縁フランジ(35)を下方から包囲する径大な椀状の回転ベアリングケースであり、その中心部がキー(38)やスプラインなどを介して、上記センター軸(25)と一体回転し得るように嵌合されている。(39)はその回転ベアリングケース(37)の抜け止め用ロックナットであり、センター軸(25)の下端部付近へ螺合締結されている。
更に、(40)はセンター軸(25)との一定間隔(D)を保つ平行状態として、上記回転ベアリングケース(37)から鍋(B)の偏心部に向かって垂下する互いに同じ一対の偏心軸であり、その何れも回転ベアリングケース(37)に封入された上下一対のラジアルベアリング(41)(42)によって、その回転ベアリングケース(37)へ回転自在に軸受けされている。
しかも、上記固定カバー(34)のインターナルギヤ(36)に内接して、これと噛合回転する径小なピニオンギヤ(43)が、その各偏心軸(40)の上端部に差し込み套嵌されており、上記センター軸(25)がその駆動モーター(22)によって図6の矢印方向(F)へ回転駆動されると、そのセンター軸(25)と一体回転する回転ベアリングケース(37)を介して、一対の偏心軸(40)がセンター軸(25)の周囲を同一方向(F)へゆっくり公転運動すると同時に、そのピニオンギヤ(43)とインターナルギヤ(36)との噛合作用により、上記公転運動との逆方向(R)へ速く自転運動し得るようになっている。
その場合、上記センター軸(25)と一対の偏心軸(40)はその矢印方向(F)との逆な互いに同一方向へ公転運動し得るが、その偏心軸(40)とこれに套嵌されたピニオンギヤ(43)との嵌合面には、各々ワンウェイクラッチ(44)も介挿設置されており、センター軸(25)が上記矢印方向(F)との逆方向(R)へ回転駆動された時に限っては、そのワンウェイクラッチ(44)によってピニオンギヤ(43)への伝動作用が切断され、一対の偏心軸(40)が自転運動を行なえず、停止するようになっている。
上記ワンウェイクラッチ(44)の詳細は図示省略してあるが、これはハウジングとその内周面ヘ締まりばめ固定状態に圧入された咬み込み用コロ(クラツチ部)と、その両サイド部に組み込まれたラジアル荷重負荷用軸受とから成るシェル型をなし、上記コロの各個がバネにより保持されたものである。尚、(45)は上記回転ベアリングケース(37)を下方から施蓋するように、各偏心軸(40)に固定されたエンドキャップ、(46)はオイルシールである。
更に、(47)は上記センター軸(25)の下端部へ差し込まれた上、貫通ピン(48)を介して抜け止めされた細長い段付き円筒状の連結スリーブ、(49)はそのピン受け入れ長孔であって、連結スリーブ(47)の上下方向に沿って開口延在されているため、その連結スリーブ(47)が自由自在に昇降作用し得る。
そして、上記連結スリーブ(47)内の段部より約上半位置には圧縮コイルバネ(50)が封入されており、その連結スリーブ(47)を常時押し下げる方向へ弾圧付勢している。(51)は同じく連結スリーブ(47)の下端部に倒立L字型として切り欠かれたキー溝であり、ここへ下方から食材用攪拌羽根(A)のハンガー軸(52)が、抜き差し自在に差し込み係止されることとなる。
その食材用攪拌羽根(A)は図7、8に抽出して示す如く、上記連結スリーブ(47)へ差し込み可能なハンガー軸(52)と、その下端部へ挟持金具(53)を介して取り付けられた羽根板(54)とから、正面視の全体的な錨型をなしている。
即ち、その攪拌羽根(A)の羽根板(54)はフッソ樹脂(好ましくは商品名:テフロン)やその他の硬質な合成樹脂から、上記鍋(B)の底面に対応する正面視の弓形として、且つ垂直断面の二等辺三角形(図例では正三角形)に一体成形されており、その鍋(B)の開口径とほぼ等しい回転直径を有している。
正・逆何れの方向(F)(R)へ回転使用されても、煮練り終期に粘結固形化するカスタードクリームやその他の食材を、その対称な形状の掬い上げ傾斜面(54a)が掬い上げ作用し、上記材質の表面平滑性とも相俟って、その食材の焦げ付きや羽根板(54)に対する食材の付着・堆積などを予防できるようになっているのである。その場合、食材の粘度が高くなればなる程、鍋(B)の底面に対する掬い上げ傾斜面(54a)の傾斜角度を緩やかに設定することが望ましい。
このような羽根板(54)の中心は挟持金具(53)の下端部へ、固定ボルト(55)によって取り付け一体化されているほか、その挟持金具(53)の上端部と上記ハンガー軸(52)の下端部とが枢支ボルト(56)により、そのハンガー軸(52)に対して羽根板(54)の揺動自由に取り付けられている。
そして、ハンガー軸(51)の上端部に打ち込み固定された水平なキー凸子(57)を、上記連結スリーブ(47)のキー溝(51)へ差し込み係止させることにより、その連結スリーブ(47)を介して上記センター軸(25)へ連結一本化された食材用攪拌羽根(A)は、そのセンター軸(25)との一体に回転作用する。しかも、攪拌羽根(A)には上記圧縮コイルバネ(50)の押し下げ付勢力が働くため、その羽根板(54)のフラットな下面(54b)が上記鍋(B)の底面に弾圧されることとなる。
他方、上記した各偏心軸(40)の下端部は図5のような半割り形態のキー溝(58)として切り欠かれており、ここには水平な抜け止めピン(59)が打ち込み貫通されている。(60)はこのような各偏心軸(40)の下端部へ下方から差し込み套嵌された短かい円筒状の連結スリーブであり、これには下向き開放するピン受け入れ長孔(61)が、上下方向への延在状態として切り欠かれているため、その連結スリーブ(60)を自由に昇降させることができる。
(E)は各偏心軸(40)へ下方から抜き差し自在に差し込み連結されるワイヤービーター(ホイッパー)であって、これは図9に抽出して示す如く、上記偏心軸(40)のキー溝(58)と咬み合うキー溝(62)が切り欠かれたハンガー軸(63)と、取付フランジ(64)へ正面視の全体的な紡錘型に差し込み固定された複数のワイヤー(65)とを備え、その取付フランジ(64)が貫通ピン(66)を介して、上記ハンガー軸(63)の下端部へ組み付け一体化された製品である。
そして、上記連結スリーブ(60)を一旦押し上げ操作し、そのハンガー軸(63)の上端部に対応形成された差込み孔(67)を、上記偏心軸(40)の露呈した抜け止めピン(59)へ差し込むと同時に、そのキー溝(58)(62)同志を咬み合わせた後、上記連結スリーブ(60)の押し上げ操作手を離すことにより、ワイヤービーター(E)を偏心軸(40)へ脱落不能に連結することができ、その連結状態にあるワイヤービーター(E)は上記偏心軸(40)と一体に回転作用する。
尚、図示の実施形態では上記偏心軸(40)とピニオンギヤ(43)並びにワンウェイクラッチ(44)などを一対づつとして並列設置しているが、上記のような運動を行なえる限り、これらの設置個数を1個づつ又は全体的な放射対称分布型に配列される3個づつ以上に増減してもさしつかえない。
次に、図3、4は電磁誘導加熱器(H)の取付状態を示しており、(68)はアルミニウムやステンレス鋼、繊維強化樹脂などの非磁性体から成るフラットな円形のコイル支持ベース、(69)は上記据付け機筐(F)の内部に固定横架された水平な補強桟であり、これから垂立する複数の高さ調整ボルト(70)によって、上記コイル支持ベース(68)の周縁部が下方から支持されている。
そして、電磁誘導加熱コイル(71)は1本の銅線(リッツ線)から渦巻き状態に周回されており、これと上記コイル支持ベース(68)との上下相互間へ介挿された耐熱性のスペーサー(72)により、上記鍋(B)の底面と対応する円弧状に弯曲されている。(73)は電磁誘導加熱コイル(71)の周辺部に臨む円錐型の支持カバーであり、その上縁部が上記据付け機筐(F)のテーブル面(2)に裏付けされている支持座(5)へ、下方から複数のボルト(74)によって取り付け固定されている。(75)はその支持カバー(73)と上記電磁誘導加熱コイル(71)との整合した円錐面へ、上方から固定設置された断熱材であり、これが上記鍋(B)の底面へ臨むことになる。
上記電磁誘導加熱器(H)における電磁誘導加熱コイル(71)の切り離し両端部は、図10の制御回路に示す如く、接続端子を介して励磁用高周波電源(インバーター)(76)の出力端子と接続配線されており、これから高周波電流を受けるようになっている。その高周波電源(76)は上記据付け機筐(F)に内蔵設置されており、図例の場合約2.5〜3.0Kwの出力を有する。
つまり、上記高周波電源(76)から電磁誘導加熱コイル(71)へ高周波電流を供給して、食材収容用鍋(B)と交差する磁束を発生させれば、その鍋(B)の底面に渦電流が流れ、これが通路となる鍋(B)の抵抗によって電力損失を生じ、その発生したジュール熱により鍋(B)の底面が加熱されることとなり、その加熱温度を正確に調整制御することもできる。
尚、(77)は上記センター軸回転用駆動モーター(22)のコントローラー(23)や上記励磁用高周波電源(76)と電気配線された操作パネルであって、据付け機筐(F)の見やすい正面に設置されており、電源スイッチや上記駆動モーター(22)の正・逆回転切換えスイッチ、加熱温度調整ボリュームなどを具備しているが、これらは図示省略してある。
本発明に係る上記電磁誘導加熱式煮練り攪拌機の使用により、例えばカスタードクリームを製造するに当っては、牛乳と砂糖、卵黄、薄力粉、コンスターチ、無塩バターなどの原料を所定の7合比に準備すると共に、その煮練り攪拌機のセンター軸(25)へ攪拌羽根(A)と、一対の偏心軸(40)へワイヤービーター(E)を各々図1〜3や図5のように連結一体化させて、そのセンター軸(25)を駆動モーター(22)により、図6の矢印方向(F)へ回転させる。
そして、上記原料のうち、先ず牛乳の約1/3と砂糖を鍋(B)に収容させ、これを上記攪拌羽根(A)とワイヤービーター(E)との2種により攪拌作用し乍ら、電磁誘導加熱器(H)により加熱して、その沸騰した頃合いに上記牛乳の残量を混入させた上、やはり煮練り攪拌し乍ら約70℃まで昇温させる。
他方、卵黄と薄力粉並びにコンスターチを所定の配合比として、ダマができないように別途混合・裏漉しておき、これを上記約70℃に昇温した牛乳と砂糖の中へ混入させて、その全体を引き続き煮練り攪拌作用する。
そうすれば、煮練り進行に連れて粘結固形化するので、その煮詰まる直前に無塩バターを加え、そのバターが溶解した頃合いに、荒熱を取った後、上記鍋(B)から取り出して冷却する。その際には、上記中空支柱(11)を後方へ転倒させ、その攪拌羽根(A)とワイヤービーター(E)を鍋(B)から引き上げ退避させた状態において、その鍋(B)の把手(6)を作業者が両手に持って上方へ抜き出せば良い。
上記煮練り攪拌作用の当初には、牛乳と砂糖のみであるため、鍋(B)に焦げ付くおそれがなく、その結果電磁誘導加熱器(H)により砂糖を還元糖に化学変化するまで、高温に加熱することができ、美味しいカスタードクリームを得られることになり、又電磁誘導加熱式であるため、据付け機筐(F)やそのテーブル面(2)の周辺部まで加熱されず、作業者が火傷を負う危険性はない。
更に、上記卵黄や薄力粉は牛乳や砂糖と馴染み難く、その独自に固まるダマを生成しやすいが、本発明の煮練り攪拌機では上記センター軸(25)に攪拌羽根(A)のほか、一対の偏心軸(40)にワイヤービーター(E)も各々取り付けられており、そのワイヤービーター(E)が攪拌羽根(A)の周囲を上記矢印方向(F)へ公転運動すると同時に、これとの逆方向(R)へ速く自転運動するようになっているため、そのワイヤービーター(E)の激しく泡立てる如き攪拌作用により、上記ダマも効率良く解消することができる。
但し、カスタードクリームがやがて煮詰まり始めて、上記攪拌羽根(A)に付着・堆積したり、鍋(B)に焦げ付いたりしやすく粘結固形化した終期には、操作パネル(77)における上記センター軸回転用駆動モーター(22)の正・逆回転切換えスイッチにより、そのセンター軸(25)に取り付けられている攪拌羽根(A)を逆方向(R)へ回転させるのである。
そうすれば、上記偏心軸(40)に取り付けられているワイヤービーター(E)も、攪拌羽根(A)と同じ方向(R)へゆっくり公転運動するが、そのワイヤービーター(E)の自転運動は上記ワンウェイクラッチ(44)によって停止されるため、上記激しく泡立てる如き攪拌作用に起因する空気の混入を防止でき、風味に優れた高品質のカスタードクリームを得られることになる。
その場合、上記攪拌羽根(A)は逆方向(R)へ回転駆動されるも、その垂直断面の二等辺三角形をなす羽根板(54)の対称な掬い上げ傾斜面(54a)により、粘結固形化したカスタードクリームを掬い上げる如く押し進め逃すことができ、その羽根板(54)への付着・堆積や鍋(B)への焦げ付きも確実に防止し得るのである。
尚、図示の実施形態では本発明の適用例をカスタードクリームとして、その使用法を説明したが、上記ワイヤービーター(E)は偏心軸(40)に対して抜き差し自在であるため、これを抜き取り、鍋(B)の中心に位置する上記攪拌羽根(A)のみを使用して、餡やジャム、チョコレート、チーズ、カレールー、カラメル、その他の各種粘性食材を煮練り攪拌作用することも可能であり、又食材の如何では上記ワイヤービーター(E)と異なる形質のバタービーターやその他の攪拌子を差し換え使用しても良い。
本発明に係る煮練り攪拌機の正面図である。 図1の側面図である。 電磁誘導加熱器の取付部分を示す拡大側面図である。 図3の底面図である。 図2の部分拡大断面図である。 鍋に対する攪拌羽根とワイヤービーターとの回転方向を示す平面図である。 攪拌羽根を抽出して示す正面図である。 図7の8−8線拡大断面図である。 ワイヤービーターを抽出して示す正面図である。 本発明に係る煮練り攪拌機の制御回路図である。
符号の説明
(2)・テーブル面
(3)・鍋逃し入れ口
(4)・鍋受けフランジ
(5)・支持座
(7)・ベース盤
(9)・固定軸受ステー
(10)・転倒防止用ストッパー
(11)・中空支柱
(12)・可動軸受ステー
(13)・支軸
(14)・ネジ脚座
(15)・ロックナット
(16)・保護カバー
(17)・差込みスリット
(18)・ガイドボルト
(20)・支持アーム
(21)・カップリングケース
(22)・センター軸回転用駆動モーター
(23)・コントローラー
(25)・センター軸
(26)・伝動カップリング
(27)・出力軸
(28)・固定ベアリングケース
(29)・押圧フランジ
(30)・ボルト
(34)・固定カバー
(35)・周縁フランジ
(36)・インターナルギヤ
(37)・回転ベアリングケース
(40)・偏心軸
(43)・ピニオンギヤ
(44)・ワンウェイクラッチ
(47)・連結スリーブ
(48)・貫通ピン
(49)・ピン受け入れ長孔
(50)・圧縮コイルバネ
(51)・キー溝
(52)・ハンガー軸
(53)・挟持金具
(54)・羽根板
(54a)・掬い上げ傾斜面
(54b)・下面
(55)・固定ボルト
(56)・枢支ボルト
(57)・キー凸子
(58)・キー溝
(59)・抜け止めピン
(60)・連結スリーブ
(61)・ピン受け入れ長孔
(62)・キー溝
(63)・ハンガー軸
(64)・取付フランジ
(65)・ワイヤー
(66)・貫通ピン
(68)・コイル支持ベース
(69)・補強桟
(70)・調整ボルト
(71)・電磁誘導加熱コイル
(72)・スペーサー
(73)・支持カバー
(74)・ボルト
(75)・断熱材
(76)・高周波電源(インバーター)
(77)・操作パネル
(A)・攪拌羽根
(B)・食材収容用鍋
(E)・ワイヤービーター
(F)・据付け機筐
(H)・電磁誘導加熱器
(θ)・中空支柱の回動角度
(F)(R)・正・逆回転方向
(D)・一定間隔

Claims (4)

  1. 据付け機筐(F)のテーブル面(2)に開口する鍋逃し入れ口(3)へ、上方から抜き差し自在に差し込みセットされる食材収容用鍋(B)と、
    その鍋(B)の底面にほぼ対応する大きさ・形状として、上記据付け機筐(F)に内蔵設置された電磁誘導加熱器(H)と、
    同じく据付け機筐(F)のテーブル面(2)から上記鍋(B)よりも背高く起立された中空支柱(11)と、
    その中空支柱(11)の上端部から上記鍋(B)の真上位置まで張り出された水平な支持アーム(20)と、
    その支持アーム(20)の張り出し先端部から上記鍋(B)の中心部に向かって垂下されたセンター軸(25)と、
    同じく支持アーム(20)における張り出し先端部の上面へ据え付け固定されたセンター軸回転用の竪型駆動モーター(22)と、
    上記センター軸(25)を回転自在に支持すべく、やはり支持アーム(20)における張り出し先端部の下面へ取り付け一体化された固定ベアリングケース(28)並びにこれよりも径大な固定インターナルギヤ(36)と、
    その固定ベアリングケース(28)から露出する上記センター軸(25)の下端部付近へ、そのセンター軸(25)と一体回転し得るように嵌合された径大な椀状の回転ベアリングケース(37)と、
    その回転ベアリングケース(37)による回転可能な支持状態のもとで、これから上記鍋(B)の偏心部に向かって垂下された偏心軸(40)と、
    その偏心軸(40)の上端部へ上記固定インターナルギヤ(36)と噛合回転し得るよに差し込み套嵌された径小なピニオンギヤ(43)と、
    そのピニオンギヤ(43)と上記偏心軸(40)との嵌合面に介挿設置されたシェル型ワンウェイクラッチ(44)とを備え、
    上記センター軸(25)を回転駆動した時には、これと一体回転する回転ベアリングケース(37)を介して、上記偏心軸(40)がセンター軸(25)の周囲をゆっくり公転運動し乍ら、そのピニオンギヤ(43)とインターナルギヤ(36)との噛合作用により、上記公転運動との逆方向へ速く自転運動する一方、
    同じくセンター軸(25)を逆方向へ回転駆動した時には、上記偏心軸(40)がこれと同じ方向へ公転運動しつつも、そのワンウェイクラッチ(44)により自転運動を行なえず、停止するように設定したことを特徴とする電磁誘導加熱式の煮練り攪拌機。
  2. ハンガー軸(52)と、その下端部へ揺動自由に枢着された硬質な合成樹脂製の羽根板(54)とから成る全体的な錨型として、しかもその羽根板(54)の垂直断面が二等辺三角形に造形された攪拌羽根(A)の上記ハンガー軸(52)を、
    センター軸(25)の下端部に付属する連結スリーブ(47)へ、下方から抜き差し自在に且つそのセンター軸(25)と一体回転し得るように差し込み使用して、
    上記センター軸(25)が正・逆何れの方向へ回転駆動されるも、上記羽根板(54)の対称な掬い上げ傾斜面(54a)により、常時食材を付着・堆積し難く押し進め逃すことができるように設定したことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱式の煮練り攪拌機。
  3. 中空支柱(11)の下面を据付け機筐(F)のテーブル面(2)へ、水平な支軸(13)により一定角度(θ)の起伏的な回動自在に枢着して、
    その起立した使用状態から一定角度(θ)だけ上記中空支柱(11)を転倒させることにより、センター軸(25)と偏心軸(40)を鍋(B)から引き上げ退避させた状態のもとで、その鍋(B)をテーブル面(2)の鍋逃し入れ口(3)から抜き出せるように設定したことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱式の煮練り攪拌機。
  4. センター軸回転用の駆動モーター(22)をDCブラシレスモーターとして、その出力軸(27)とセンター軸(25)とを伝動カップリング(26)により伝動連結すると共に、上記DCブラシレスモーター(22)のコントローラー(23)を中空支柱(11)に内蔵設置したことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱式の煮練り攪拌機。
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