JP2016060801A - ポリマー製造装置及びポリマーの製造方法 - Google Patents

ポリマー製造装置及びポリマーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】安定的にかつ未反応物が少ない高分子化合物を連続生産できるポリマー製造装置を提供する。
【解決手段】モノマーを含む原材料を供給する第一の供給部(タンク1,3,5,11)、第一の圧縮性流体を供給する第二の供給部(タンク7)を含む供給部(供給ユニット100a)と、前記モノマーと前記第一の圧縮性流体とを接触させる接触部(接触部9及び接触部13)と、前記第一の圧縮性流体の存在下、前記モノマーを重合反応させる反応部14と、前記モノマーの反応生成物を排出する排出口21と、反応部14と排出口21との間に、前記モノマーの反応生成物の未反応物を除去する精製部15とを有し、精製部15の下方から第二の圧縮性流体を添加することを特徴とするポリマー製造装置。
【選択図】図3A

Description

本発明は、ポリマー製造装置及びポリマーの製造方法に関する。
従来より、ポリマーは、その用途に応じて様々な種類のものが製造され、産業上用いられている。例えば、生分解性ポリマーは、微生物により水と二酸化炭素へと分解され、自然界の炭素サイクルに組み込まれる材料として知られている。
このため、近年の環境保護への関心の高まりから、ポリ乳酸等の生分解性ポリマーの需要が増加してきている。生分解性ポリマー等のポリマーの重合方法として、溶融状態のモノマーを重合する方法が知られている。しかし、溶融状態のモノマーを重合する場合、熱による影響で、生成物の収率が低下するという問題がある。
この問題を解決する手段の1つとして、例えば、反応槽と、該反応槽にヒドロキシカルボン酸の縮合物溶融物を供給する手段と、該反応槽に重合触媒を供給する手段と、これにより該反応槽内において触媒との接触による解重合により環状二量体に変換し、これを開環重合することによりポリエステルを製造するポリエステル製造装置が提案されている(特許文献1参照)。この提案の製造装置によると、縮合物溶融物の滞留量を測定する機器を設けた薄膜蒸発装置を有し、これにより縮合物溶融物の薄層化、解重合を実施することで、原材料のラクチドモノマーを生成する解重合時に、熱分解の影響を小さくすることが
でき、高収率でポリマーが得られるとされている。
しかしながら、特許文献1に開示された製造装置により数平均分子量が80,000以上である高分子量のポリマーを製造した場合、高分子量化に伴う粘度上昇による装置内圧力上昇を起こし、装置稼動が不安定となるという問題がある。さらに、未反応物は化学平衡からも数%残留することがわかっており、これら未反応物を除去するために多大な設備コスト、ランニングコストがかかるという問題があった。
本発明は、安定的にかつ未反応物が少ない高分子化合物を連続生産できるポリマー製造装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のポリマー製造装置は、モノマーを含む原材料を供給する第一の供給部、第一の圧縮性流体を供給する第二の供給部を含む供給部と、前記モノマーと前記第一の圧縮性流体とを接触させる接触部と、前記第一の圧縮性流体の存在下、前記モノマーを重合反応させる反応部と、前記モノマーの反応生成物を排出する排出口と、前記反応部と前記排出口との間に、前記モノマーの反応生成物の未反応物を除去する精製部とを有し、前記精製部の下方から第二の圧縮性流体を添加することを特徴とする。
本発明によれば、安定的にかつ未反応物が少ない高分子化合物を連続生産できるポリマー製造装置を提供することができる。
温度と圧力に対する物質の状態を示す一般的な相図である。 圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。 本発明のポリマー製造装置の一態様を示す模式図である。 図3Aのポリマー製造装置の反応部について詳細に説明するための模式図である。 配管を配置した循環部の一例を示す概略斜視図である。 配管の一部が、螺旋状である螺旋状の循環部の一例を示す概略斜視図である。 複合体製造システムの一例を示す模式図である。
以下、本発明に係るポリマー製造装置及びポリマーの製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
[ポリマー製造装置]
本発明のポリマー製造装置は、モノマーを含む原材料を供給する第一の供給部、第一の圧縮性流体を供給する第二の供給部を含む供給部と、前記モノマーと前記第一の圧縮性流体とを接触させる接触部と、前記第一の圧縮性流体の存在下、前記モノマーを重合反応させる反応部と、前記モノマーの反応生成物を排出する排出口と、前記反応部と前記排出口との間に、前記モノマーの反応生成物の未反応物を除去する精製部とを有している。そして、前記精製部の下方から第二の圧縮性流体を添加することを特徴としている。
なお、詳細は後述するが、前記第一の圧縮性流体と前記第二の圧縮性流体とが同じ場合も本発明に含まれるものである。
また、前記精製部の側面に、前記排出口へとつながる配管を有することが好ましく、また、前記精製部の上部に、前記第二の圧縮性流体を排出する圧縮性流体排出口を有することが好ましい。また、第二の圧縮性流体を添加する第三の供給部を有し、前記精製部と前記第三の供給部が配管でつながれていることが好ましい。
前記精製部は円筒状であり、精製部の内径が、前記排出口へとつながる配管の内径より大きいことが好ましい。
また、前記精製部が、モノマーの反応物と第二の圧縮性流体を混合する混合機を有していることが好ましく、前記精製部を流れる流体を冷却する冷却装置が設けられていることが好ましい。また、前記精製部を2つ以上有することが好ましい。
[ポリマー製造方法]
本発明のポリマーの製造方法は、モノマーを含む原材料と第一の圧縮性流体とを連続的に接触させ、重合反応をさせる重合工程と、前記重合工程の後、連続的に第二の圧縮性流体を添加しながら、未反応物を除去する精製工程とを有することを特徴とする。
第一の圧縮性流体の存在下で重合させることにより、従来の反応温度よりも低い温度で重合反応を進行させることができるので、熱に起因した反応生成物の着色あるいは変質等が低減される。反応生成物が第一の圧縮性流体によって可塑化されていることで、材料置換が容易になる。また、反応部の下流に精製部を設け、未反応物を溶解できる第二の圧縮性流体を導入することにより、比較的低温で未反応物の除去が可能となり、効率よくかつ熱劣化を抑えた未反応物の除去が可能となる。
これに対し、精製部を設けなかった場合は、化学平衡の観点から数%の未反応物が残留してしまう。また、圧縮性流体を使用しない精製部を設けた場合には、反応生成物の粘度が高いために多くのエネルギーや時間が必要になったり、高温で処理する必要があったりするため熱劣化を引き起こす可能性がある。
[第一の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
(実施の形態1)
最初に、図3A及び図3Bを用いて、本発明のポリマー製造装置の一態様について説明する。本実施形態のポリマー製造装置100は、モノマーを含む原材料を供給する第一の供給部(タンク1,3,5,11)、第一の圧縮性流体を供給する第二の供給部(タンク7)を含む供給部(供給ユニット100a)と、前記モノマーと前記第一の圧縮性流体とを接触させる接触部(接触部9及び接触部13)と、前記第一の圧縮性流体の存在下、前記モノマーを重合反応させる反応部14と、前記モノマーの反応生成物を排出する排出口21と、反応部14と排出口21との間に、前記モノマーの反応生成物の未反応物を除去する精製部15とを有する。そして、精製部15の下方から第二の圧縮性流体を添加することを特徴とする。
ポリマー製造装置100には、モノマーの一例としての開環重合性モノマー等の原材料、及び圧縮性流体を供給する供給ユニット100aと、供給ユニット100aによって供給された開環重合性モノマーを重合させるポリマー製造装置本体100bとを有する。供給ユニット100aから供給された原材料等の供給物は、配管30を流れていく。
供給ユニット100aには、タンク(1,3,5,7,11)と、計量フィーダー(2,4)と、計量ポンプ(6,8,12)とが設けられている。なお、タンク、計量フィーダー、及び計量ポンプ、それぞれの数や配置は必要に応じて適宜変更することが可能である。
ポリマー製造装置本体100bにおいて、供給された原材料と第一の圧縮性流体とが接触する接触部9と、モノマーの反応生成物が排出される排出口21との間には、循環部14aと、この循環部14aよりも下流に設けられた押出部14bとを含む反応部14が設けられている。また、図3Aに示されるように、適宜、送液ポンプ10や、押出口金20等の開閉手段を設けてもよい。
本実施形態では、供給ユニット100aのタンク1には、開環重合性モノマーが貯蔵される。貯蔵される開環重合性モノマーは粉末であっても液体の状態であってもよい。
また、タンク3には開始剤及び添加剤のうち固体(粉末又は粒状)のものが貯蔵され、タンク5には開始剤及び添加剤のうち液体のものが貯蔵されるが、タンク3に貯蔵される供給物とタンク5に貯蔵される供給物とは入れ替わってもよい。また、タンク3と5に貯蔵される供給物がいずれも固体であってもよいし、タンク3と5に貯蔵される供給物がいずれも液体であってもよい。
また、開始剤及び添加剤がいずれも固体の場合には、ポリマー製造装置100は、タンク5及び計量ポンプ6を有していなくてもよい。同様に、開始剤及び添加剤がいずれも液体の場合には、ポリマー製造装置100は、タンク3及び計量フィーダー4を有していなくてもよい。
タンク7は第一の圧縮性流体が貯蔵される。なお、タンク7には、タンク内で圧縮性流体として存在するものの他、接触部9に供給される過程で圧縮性流体となる気体(ガス)、又は、固体、又は接触部9において加熱もしくは加圧されることにより圧縮性流体となる気体(ガス)、又は固体を貯蔵しても構わない。この場合、タンク7に貯蔵される気体又は固体は、加熱又は加圧されることにより、接触部9において図2の相図における(1)、(2)、又は(3)の圧縮性流体の状態となる。
図2は、本実施形態において圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。圧縮性流体の詳細な説明については、後述する。
計量フィーダー2は、モノマー含む原材料を供給する第一の供給部に設けられた供給手段の一例であり、タンク1に貯蔵された開環重合性モノマーを計量して接触部9に連続的に供給する。
計量フィーダー4は、タンク3に貯蔵された固体を計量して接触部9に連続的に供給する供給手段の一例である。
計量ポンプ6は、タンク5に貯蔵された液体を計量して接触部9に連続的に供給する供給手段の一例である。
計量ポンプ8は、圧縮性流体を供給する第二の供給部に設けられた供給手段の一例であり、タンク7に貯蔵された第一の圧縮性流体を一定の圧力及び流量で接触部9に連続的に供給する。
接触部9よりも下流には、第一の圧縮性流体を更に供給するための導入口13aが設けられていてもよい。導入口13aから導入された第一の圧縮性流体と、接触部9から流れてきた流体とが接触する部分を接触部13と呼ぶ。なお、図3Aでは接触部13に導入される第一の圧縮性流体もタンク7から取得しているが、タンク7とは別の供給手段から供給しても構わない。
図3Aに示されるポリマー製造装置100では、タンク7からの第一の圧縮性流体の供給は、接触部9と接触部13とに同時に行ってもよいし、どちらか一方に選択的に供給させることも可能である。図示はしてないが、流量の管理の点から、接触部9と接触部13のそれぞれに流量計と流量の調整ができるバルブがあることが好ましい。
なお、本発明において連続的に供給するとは、バッチ毎に供給する方法に対する概念であって、反応系に供給され重合反応しながら配管を流れる流体の流動が停止されることなく、生成されたポリマーが排出口から連続的に得られるように供給されている限り、断続的、あるいは、間欠的に供給されてもよい。
接触部9は、各タンク(1,3,5,11)から供給された開環重合性モノマー、開始剤、添加物などの原材料と、タンク7から供給された第一の圧縮性流体とを連続的に接触させる耐圧性の装置あるいは管などにより構成される。接触部9では、原材料と第一の圧縮性流体とを接触させることにより、原材料が溶融又は溶解する。
本実施形態において、「溶融」とは、原材料あるいは生成したポリマーが圧縮性流体と接触することで、膨潤しつつ可塑化、液状化した状態を意味する。また、「溶解」とは、原材料が圧縮性流体中に溶けることを意味する。
開環重合性モノマーを溶解した場合には流体相、溶融した場合には溶融相が形成されるが、均一に反応を進めるために、溶融相又は流体相のいずれか一相が形成されていることが好ましい。また、圧縮性流体に対して原材料の比率が高い状態で反応を進行させるために、開環重合性モノマーを溶融させることが好ましい。なお、本実施形態では、原材料及び圧縮性流体を連続的に供給することにより、接触部9において、開環重合性モノマー等の原材料と圧縮性流体とを一定の濃度の比率で連続的に接触させることができる。これにより、原材料を効率的に溶融又は溶解させることができる。
接触部9は、タンク型の装置により構成されていても、筒型の装置により構成されていてもよいが、一端から原材料を供給し、他端から溶融相あるいは流体相などの混合物を取り出す筒型の装置(接触容器)であることが好ましい。更に、接触部9には、原材料、圧縮性流体などを撹拌する撹拌装置が設けられていてもよい。このような装置としては、撹拌翼を設置したタンクや一軸のスクリュウ、互いに噛み合う二軸のスクリュウ、互いに噛み合う又は重なり合う多数の撹拌素子をもつ二軸の混合機、互いに噛み合う螺旋形の撹拌素子を有するニーダー、スタティックミキサーなどが好ましく用いられる。
特に、互いに噛み合う二軸又は多軸撹拌装置は、撹拌装置や容器への反応物の付着が少なく、セルフクリーニング作用があるので好ましい。接触部9が撹拌装置を有していない
場合、接触部9は、耐圧性の配管30の一部によって構成される。なお、接触部9が本実施形態のように配管30によって構成される場合、接触部9内での各材料を確実に混合するため、接触部9に供給される開環重合性モノマーは予め液化されていることが好ましい。
接触部9には、計量ポンプ8によってタンク7から供給された第一の圧縮性流体を導入する圧縮性流体導入口の一例としての導入口9aと、計量フィーダー2によってタンク1から供給された開環重合性モノマーを導入するモノマー導入口の一例としての導入口9bと、計量フィーダー4によってタンク3から供給された粉末を導入する導入口9cと、計量ポンプ6によってタンク5から供給された液体を導入する導入口9dと、計量ポンプ12によってタンク11から供給された液体を導入する導入口9eが設けられている。
本実施形態において各導入口(9a,9b,9c,9d,9e)は、接触部9において原材料などを供給するためのシリンダーあるいは配管30の一部などの管状の部材と、各原材料又は圧縮性流体を輸送する各配管とを接続する継手によって構成される。この継手としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レデューサー、カップリング、Y、T、アウトレットなどが挙げられる。また、接触部9には、供給された各原材料及び圧縮性流体を加熱するためのヒータ9fが設けられている。
送液ポンプ10は、接触部9で形成された溶融相あるいは流体相などの混合物を下流側に送液する。
タンク11には触媒が貯蔵されている。計量ポンプ12等の供給手段によりタンク11に貯蔵された触媒を計量して接触部9及び/又は接触部13に供給する。なお、本実施形態では、図3Aのように導入口9eを介してタンク11から接触部9に触媒が導入、導入口13bを介して接触部13に触媒が導入される系が示されており、接触部9及び/又は接触部13において触媒を供給しているが、接触部9及び/又は接触部13以外の他の箇所で触媒を供給しても構わない。例えば、タンク1内で予めモノマーと触媒とを混合しておいても構わない。
接触部13には、原材料、圧縮性流体などを撹拌する撹拌装置が設けられていてもよい。このような装置としては、撹拌翼を設置したタンクや一軸のスクリュウ、互いに噛み合う二軸のスクリュウ、互いに噛み合う又は重なり合う多数の撹拌素子をもつ二軸の混合機、互いに噛み合う螺旋形の撹拌素子を有するニーダー、スタティックミキサーなどが好ましく用いられる。特に、スタティックミキサーは、構造が単純で可動部が無いため、撹拌装置内への反応物の付着が少ないので好ましい。
接触部13が撹拌装置を有していない場合、接触部13は、耐圧性の配管30の一部によって構成される。
なお、接触部13が配管30によって構成される場合、接触部13内での各材料を確実に混合するため、接触部13に供給される開環重合性モノマーは予め液化されていることが好ましい。また、接触部13には、送液された原材料を加熱するためのヒータが設けられていることが好ましい。
次に、反応部14について図3Bを用いて説明する。図3Bは、図3Aに記載した反応部14の具体的な構成を示したものである。
反応部14は、循環部14aと、該循環部14aよりも下流側(反応生成物の排出口21側)に設けられた押出部14bと有している。循環部14aには、配管30を通って接触部9及び/又は接触部13側から流れてきた流体が下流方向に流れる配管a(符号31a)が設けられている。また、配管aを流れてきた流体を押出部14bよりも上流側に設けられた戻し口20aから上流側に設けられた導入口20bに戻すための配管b(符号31b)が設けられ、循環部14aは配管aと配管bとから構成される循環手段を有している。
循環手段には、適宜、攪拌装置や、流体ポンプ(循環ポンプ)が設けられていることが好ましい。また、循環手段には、更に、配管aを流れる流体を加熱するためのヒータ、配管bを流れる流体の反応熱を下げ、熱分解を防ぐための冷却装置等が設けられていることが好ましい。
冷却装置としては、例えば、多管式熱交換器、二重管式熱交換器等の冷却装置を単独で用いる他、撹拌装置にこれらの冷却装置を備えた複合型の冷却装置等を用いることができる。攪拌装置と冷却装置とを組み合わせることにより、撹拌による反応の促進と共に反応熱による熱分解の抑制ができる。
複合型の冷却装置としては、例えば、多管式熱交換器の伝熱管内にスタティックミキサーを設置した冷却装置が好ましい。
図3Bでは、反応部14内に装置A〜Eが図示されている。図3Bでは、導入口20bは装置Aよりも上流側に設けられているが、装置Aよりも下流側に設けられていても構わない。また、図3Bでは、戻し口20aは装置Bよりも下流に設けられているが、装置Bよりも上流側に設けられていても構わない。ただし、循環ポンプ22は、戻し口20aと導入口20bとの間に設けられていることが好ましく、このような構成とすることによって流体の循環が良好に行われる。
配管30を流れ反応部14に流入してくる流体は、流体に含まれている圧縮性流体成分とその他の成分(モノマーとその反応生成物とを含む成分)とが比重差に起因して上下二相に分離しやすいという問題がある。二相に分離してしまった状態でモノマーの重合反応が進むと反応生成物の高分子量化によって粘度が上昇してしまい、目詰まりが生じる等の不具合が生じる。しかしながら、循環手段を設けることによって流体の二相分離を抑制することができ、その結果、圧縮性流体による可塑化効果が良好に発揮され、流体の粘度上昇を抑制することが可能となる。
なお、循環手段は、流体が垂直方向の方向ベクトル成分を持った流れとなるような系であることが好ましい。
ここで、図4に配管を配置した循環部の一例を示す。図4では配管a(符号31a)は水平面上に配置され、配管b(符号31b)は水平面の上方に配置されている。例えば、配管a及び/又は配管bにおいて、流体が垂直方向(例えば、図4においてθ=90°の場合)、斜め上方向(例えば、図4において0°<θ<90°の場合)、あるいは斜め下方向(例えば、図4において0°<θ<−90°の場合)に流れるように配置された配管部分が設けられていることが好ましい。なお、図4においてθは、30°≦|θ|≦90°が好ましく、より好ましくは、45°≦|θ|≦90°である。
また、例えば、配管a及び/又は配管bにおいて、流体が垂直方向にジグザグしながら流れるジグザグ状の配管部分を設けたり、螺旋状の配管部分が設けられたりしてもよい。ここで、図5に配管の一部が螺旋状である螺旋状の循環部の一例を示す。図5に示されるように配管部分を螺旋状にしてもよい。なお、図4、図5では、流体の流れを模式的に矢印で図示しているが、これに限られるものではない。
また、配管の径については、特に限定はなく、管内で単一径としてもよいし、管内で径を変えても構わない。
押出部14bには、シリンジポンプ、ギヤポンプ等のポンプ式押出機の他、単軸型押出機、多軸型押出機、スクリュー式押出機のような特殊な型押出機等の押出手段が設けられている。これら押出装置の中でも、安定的な吐出が可能でかつ重合反応後のポリマーに対するせん断が少ないことから、ギヤポンプ、単軸型押出機、多軸型押出機が好ましい。また、押出部14bには、押出手段の他、攪拌手段が設けられていてもよい。
循環部14a及び/又は押出部14bに設けられる攪拌手段としては、例えば、互いに噛み合うスクリュウ、2フライト(長円形)、3フライト(三角形様)等の撹拌素子、円板又は多葉形(クローバー形など)の撹拌翼をもつ二軸又は多軸の駆動型撹拌装置が挙げられ、これらの攪拌手段はセルフクリーニングの観点から好ましい。また、案内装置により流れの分割と複合(合流)を多段的に行う静止混合機も攪拌手段として用いることができる。
前記静止型混合機としては、スタティックミキサー、及びそれらに類似する可動部を有さない混合装置が挙げられる。その他、例えば、特公昭47−15526号公報、特公昭47−15527号公報、特公昭47−15528号公報、特公昭47−15533号公報に開示されたもの(多層化混合機)、特開昭47−33166号公報などに開示されたもの(ケニックス型)も静止型混合機として用いることができる。
反応部14において撹拌装置と冷却装置と押出装置とは、それぞれ複数設けられていてもよい。前記撹拌装置と前記冷却装置と前記押出装置の配置について、適用可能な形態No.1〜No.12を表1に示す。なお、表1中、装置A〜装置Eは、循環部14a、押出部14bに記載された図3Bの符号A〜Eに対応する。装置Cを使用していないものは、装置Cの部分が配管となり循環部14aを形成している。
なお、反応部14における前記撹拌装置と前記冷却装置と前記押出装置との組み合わせについては、本発明の主旨を逸脱しない範囲であれば、表1に示した組み合わせ以外のものも適宜用いることができる。
*表1中、駆動型撹拌装置とは、混合機/タンク撹拌装置である。
*表1中、冷却装置とは、二重管式熱交換器である。
*表1中、チューブ型反応装置とは、撹拌機能も押出機能も特に設けられておらず、配管で構成された反応装置のことを指し、例えば、螺旋形状の配管であってもよいし、線状の配管であってもよい。
*表1中、装置Cの循環ありとは、装置Cの部分が配管であり、装置Cの箇所を流体が循環することを指す。
表1から、循環部14aにおいて、撹拌装置と冷却装置とは、冷却装置が撹拌装置よりも前に設けられていてもよいし、撹拌装置が冷却装置よりも前に設けられていてもよい。
また、冷却装置と撹拌装置とが交互に設けられていてもよい。
撹拌装置として静止型混合機を用いる場合、撹拌装置を、循環ポンプ22よりも下流側に配置した方が、静止型混合機の配置に伴う圧力損失が循環ポンプ22により補われるため好ましい。なお、撹拌装置を押出装置よりも上流側に配置することで、局所的な重合反応が進行する前に撹拌されるため、ポリマーの均質性を一層高めることができるという利点がある。
図3Bでは、一つの循環部14aを有する例を示したが、ポリマー製造装置100は、2つ以上の循環部14aを有していてもよい。複数の循環部14aを有する場合、循環部14a毎の反応(重合)条件、即ち、温度、圧縮性流体濃度、触媒濃度、圧力、平均滞留時間、撹拌速度などは、同一でもよいが、重合の進行にあわせて、それぞれ最適の条件を選ぶことが好ましい。なお、反応時間の増加や装置の煩雑化を招くため、あまり多くの循環部14aを多段的に結合することは得策でなく、段数は1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましい。また、循環部14aを多段的に結合する場合、圧縮性流体や触媒は2段目以降に添加することもできる。
一般的には、反応部14を1つだけで重合した場合、得られるポリマーの重合度や残存モノマー量が不安定で変動し易く、工業生産に適しないとされている。これは、溶融粘度数ポイズから数10ポイズ程度の原材料と、溶融粘度数1,000ポイズ程度の重合されたポリマーとが混在するための不安定さに起因するものと思われる。これに対し、本実施形態では、原材料と生成したポリマーとが溶融(液状化)することによって循環部14a、押出部14b内(反応部14、重合系ともいう)の粘度差を小さくすることが可能となるため、従来のポリマー製造装置より段数を減らしても、安定的にポリマーを製造することができる。
精製部15では、モノマーの反応生成物の未反応物が除去される。精製部15は、第二の圧縮性流体を貯蔵するタンク16、第二の圧縮性流体を精製部15に導入するポンプ17、精製後のポリマーを排出口18と第二の圧縮性流体の排出口19を有している。タンク16には、タンク内で圧縮性流体として存在するものの他、精製部15に供給される過程で圧縮性流体となる気体(ガス)、又は、固体、又は精製部15において加熱もしくは加圧されることにより圧縮性流体となる気体(ガス)、又は固体を貯蔵しても構わない。この場合、タンク16に貯蔵される気体又は固体は、加熱又は加圧されることにより、精製部15において図2の相図における(1)、(2)、又は(3)の圧縮性流体の状態となる。図2は、本実施形態において圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。
また、第二の圧縮性流体は第一の圧縮性流体と異なっていてもいいし、同じであってもいい。
本実施形態において、精製部15の下方から第二の圧縮性流体が添加され、第二の圧縮性流体の導入口は精製部15の下部に設置されることが好ましい。このとき、第二の圧縮性流体を添加する第三の供給部と精製部15とが配管でつながれていることが好ましい。
また、第二の圧縮性流体の排出口19(圧縮性流体排出口)は精製部15の上部に設置されていることが好ましい。
また、生成後のポリマーの排出口18は第二の圧縮性流体の導入口と第二の圧縮性流体の排出口の間の精製部15の側面に設けられていることが好ましい。すなわち、精製部15の側面に、ポリマーの排出口18へとつながる配管を有することが好ましい。
第二の圧縮性流体の導入口を上部に設置し、第二の圧縮性流体の排出口19を下部に設けた場合やポリマーの排出口18を下部や上部に設置した場合、ポリマーと圧縮性流体の密度差により安定的に排出できなかったり、未反応物を除去できなかったりする場合がある。
精製部15には、反応生成物、圧縮性流体などを撹拌する撹拌装置が設けられていてもよい。このような装置としては、撹拌翼を設置したタンクや一軸のスクリュウ、互いに噛み合う二軸のスクリュウ、互いに噛み合う又は重なり合う多数の撹拌素子をもつ二軸の混合機、互いに噛み合う螺旋形の撹拌素子を有するニーダー、スタティックミキサーなどが好ましく用いられる。特に、スタティックミキサーは、構造が単純で可動部がないため、撹拌装置内への反応物の付着が少ないので好ましい。
すなわち、本実施形態の精製部15は、モノマーの反応物と第二の圧縮性流体を混合する混合機を有することが好ましい。また、本実施形態において、精製部15を流れる流体を冷却する冷却装置が設けられていることが好ましい。なお、冷却装置としては、特に制限されるものではなく、上述のものを用いることができる。
また、精製部15が円筒状である場合、精製部15の内径は、ポリマーの排出口18へとつながる配管の内径より大きいことが好ましい。精製部15の内径がポリマーの排出口18へとつながる配管の内径より小さいと、第二の圧縮性流体が第二の圧縮性流体の排出口19から安定的に排出されず、ポリマーの排出口18に流れてしまうことで未反応物が除去できない場合がある。
精製部15の形状としては、特に制限されるものではないが、例えば、円筒状、螺旋状等が挙げられる。
上述したように、反応部の下流に精製部を設け、未反応物を溶解できる第二の圧縮性流体を導入することにより、比較的低温で未反応物の除去が可能となり、効率よくかつ熱劣化を抑えた未反応物の除去が可能となる。
図3Aでは、一つの精製部15を有する例を示したが、ポリマー製造装置100は、2つ以上の精製部15を有していてもよい。複数の精製部15を有する場合、精製部15毎の精製条件、すなわち、温度、圧縮性流体濃度、圧力、平均滞留時間、撹拌速度などは、同一でもよいが、精製の進行にあわせて、それぞれ最適の条件を選ぶことが好ましい。なお、精製時間の増加や装置の煩雑化を招くため、あまり多くの精製部15を多段的に結合することは得策でなく、段数は1以上3以下が好ましく、1以上2以下がより好ましい。また、精製部15を多段的に結合する場合、第二の圧縮性流体は2段目以降に添加することもできる。
精製部15を2つ以上有する場合、特に制限されるものではないが、精製部15を直列的に接続してもよく、並列的に接続してもよい。また、このとき第二の圧縮性流体を添加する第三の供給部、反応生成物を排出する排出口は一つであってもよいし、複数であってもよい。
押出口金20は、精製部15で精製して得られたポリマーを排出する排出部の一例である。なお、精製部15の内外の圧力差を利用することにより、ポリマー生成物Pを精製部15内から送り出すこともできる。押出口金20からの送り出し量を調整するために、押出口金20の上流に圧力調整バルブや計量ポンプを用いることもできる。
本実施形態では、計量フィーダー2から、押出口金20(排出部)に至るモノマー又は生成したポリマーの移送経路は、連通していることが好ましい。これにより、連続的に重合反応を進行させることができるので、重合反応の局所的な進行に起因して不均質な生成物が形成されてしまうことを防ぐことができる。
(実施の形態2)
以下、本発明のポリマー製造装置を用いたポリマー製造の一態様について説明する。
<原材料>
本実施形態において、原材料とは、ポリマーを製造するもとになる材料であって、ポリマーの構成成分となる材料であるモノマーを少なくとも含み、触媒を含むことが好ましく、更に必要に応じて、開始剤、添加剤等のその他の成分を含んでなる。
前記モノマーとしては、重合性モノマーが好適に用いられる。
<<重合性モノマー>>
本実施形態で用いられる重合性モノマーは、使用する開環重合性モノマーと圧縮性流体との組み合わせにもよるが、開環重合性モノマーが好ましい。これらの中でも、エステル結合などのカルボニル骨格を環内に有するものが好ましい。前記カルボニル骨格は、電気陰性度の高い酸素が炭素とπ結合して成り、π結合電子がひきつけられることにより酸素が負に分極し、炭素が正に分極しているため、反応性が高くなる。また、圧縮性流体が二酸化炭素の場合、カルボニル骨格が二酸化炭素の構造と似ていることから、二酸化炭素と生成したポリマーとの親和性は高くなると推測される。これらの作用により、圧縮性流体による生成したポリマーの可塑化の効果は高くなる。
前記開環重合性モノマーとしては、例えば、環状エステル、環状カーボネートなどが挙げられる。
前記環状エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)で表される化合物のL体及び/又はD体、あるいはDL体を脱水縮合して得られる環状二量体が好適に用いられる。
R−C*−H(−OH)(−COOH) ・・・一般式(1)
ただし、前記一般式(1)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。また、一般式(1)において、「C*」は、不斉炭素を表す。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、乳酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシブタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシペンタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシヘキサン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシヘプタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシオクタン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシノナン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシデカン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシウンデカン酸の鏡像異性体、2−ヒドロキシドデカン酸の鏡像異性体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性及び入手容易性の点から、乳酸の鏡像異性体が特に好ましい。
前記一般式(1)以外の環状エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−オクタノラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラノラクトン、δ−オクタノラクトン、ε−カプロラクトン、δ−ドデカノラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、グリコリッド、ラクタイド等の脂肪族のラクトンなどが挙げられる。これらの中でも、ε−カプロラクトンが反応性及び入手性の観点から好ましい。
前記環状カーボネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
<<触媒>>
本実施形態では、触媒が好適に用いられる。本実施形態で用いられる触媒は、目的に応じて適宜選択することができ、金属原子を含有する金属触媒であっても、金属原子を含有しない有機触媒であってもよい。
前記金属触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オクチル酸スズ、ジブチル酸スズ、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ等のスズ系化合物;アルミニウムアセチルアセトナート、酢酸アルミニウム等のアルミニウム系化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系化合物;ジルコニウムイソプロオイキシド等のジルコニウム系化合物;三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物などが挙げられる。
本実施形態で用いられる触媒としては、生成物の安全性及び安定性を必要とする用途では、金属原子を含まない有機化合物(有機触媒)が好適に用いられる。本実施形態において、触媒として金属原子を含まない有機触媒を用いた場合、従来の製造方法で金属原子を含まない有機触媒を用いて開環重合性モノマーを開環重合させた場合と比較して、重合反応に要する時間を短くすることができ、ポリマー転化率に優れたポリマーの製造方法を提供することができる点で好ましい。本実施形態において、有機触媒は、開環重合性モノマーの開環重合反応に寄与し、開環重合性モノマーとの活性中間体を形成した後、アルコールとの反応で脱離、再生するものであればよい。
前記有機触媒は、塩基性を有する求核剤として働く化合物が好ましく、塩基性を有する求核性の窒素原子を含有する化合物がより好ましく、塩基性を有する求核性の窒素原子を有する環状化合物が更に好ましい。なお、求核剤とは、求電子剤と反応する化学種である。
上記のような化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、環状モノアミン、環状ジアミン(アミジン骨格を有する環状ジアミン化合物)、グアニジン骨格を有する環状トリアミン化合物、窒素原子を含有する複素環式芳香族有機化合物、N−ヘテロサイクリックカルベンなどが挙げられる。なお、カチオン系の有機触媒は、上記の開環重合反応に用いられるが、ポリマー主鎖から水素を引き抜く(バック−バイティング)ため、分子量分布が広くなり高分子量の生成物を得にくい。
前記環状モノアミンとしては、例えば、キヌクリジンなどが挙げられる。
前記環状ジアミンとしては、例えば、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネンなどが挙げられる。
前記アミジン骨格を有する環状ジアミン化合物としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ジアザビシクロノネンなどが挙げられる。
前記グアニジン骨格を有する環状トリアミン化合物としては、例えば、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、ジフェニルグアニジン(DPG)などが挙げられる。
前記窒素原子を含有する複素環式芳香族有機化合物としては、例えば、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジン(PPY)、ピロコリン、イミダゾール、ピリミジン、プリンなどが挙げられる。
前記N−ヘテロサイクリックカルベンとしては、例えば、1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾール−2−イリデン(ITBU)などが挙げられる。
これらの中でも、立体障害による影響が少なく求核性が高い、あるいは、減圧除去可能な沸点を有するという理由により、DABCO、DBU、DPG、TBD、DMAP、PPY、ITBUが好ましい。
前記有機触媒のうち、例えば、DBUは、室温で液状であって沸点を有する。このような有機触媒を選択した場合、得られたポリマーを減圧処理することで、ポリマー中から有機触媒をほぼ定量的に取り除くことができる。なお、有機溶媒の種類や除去処理の有無は、生成物の使用目的等に応じて決定される。
前記有機触媒の種類及び使用量は、後述の圧縮性流体と開環重合性モノマーの組み合わせによって変わるので一概に特定できないが、開環重合性モノマー100モル%に対して、0.01モル%〜15モル%が好ましく、0.1モル%〜1モル%がより好ましく、0.3モル%〜0.5モル%が更に好ましい。前記使用量が、0.01モル%未満では、重合反応が完了する前に有機触媒が失活して、目標とする分子量のポリマーが得られない場合がある。一方、前記使用量が、15モル%を超えると、重合反応の制御が難しくなる場合がある。
<<その他の成分>>
本実施形態のポリマーの製造方法では、必要に応じて、前記その他の成分として、開始剤、各種添加剤などを用いることができる。
−開始剤−
本実施形態では、得られるポリマーの分子量を制御するために、開始剤が好適に用いられる。
前記開始剤としては、特に制限はなく、公知のものが使用でき、アルコール系であれば例えば、脂肪族アルコールのモノ、ジ、又は多価アルコールのいずれでもよく、また飽和、不飽和のいずれであっても構わない。
前記開始剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジアルコール;グリセロール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、エリスリトール、トリエタノールアミン等の多価アルコール;乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。
また、ポリカプロラクトンジオールやポリテトラメチレングリコールのような末端にアルコール残基を有するポリマーを開始剤に使用することもできる。これにより、ジブロック、又はトリブロック共重合体が合成される。
前記開始剤の使用量は、目標とするポリマーの分子量に応じて適宜調整すればよく、モノマー100モル%に対して、0.03モル%〜5モル%が好ましく、0.03モル%〜0.1モル%がより好ましい。なお、不均一に重合が開始されるのを防ぐために、前記開始剤は、モノマーが触媒に触れる前にあらかじめモノマーとよく混合しておくことが好ましい。
−添加剤−
開環重合に際しては、必要に応じて添加剤を添加してもよい。前記添加剤としては、界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、防曇剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、無機粒子、各種フィラー、熱安定剤、難燃剤、結晶核剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑剤、天然物、離型剤、可塑剤、その他類似のものなどが挙げられる。
更に必要に応じて、重合反応後に重合停止剤(例えば、安息香酸、塩酸、燐酸、メタリン酸、酢酸、乳酸等)を用いることもできる。
前記添加剤の添加量は、添加する目的や添加剤の種類によって異なるが、ポリマー生成物100質量部に対して、5質量部以下が好ましい。
前記界面活性剤としては、圧縮性流体に溶融し、かつ圧縮性流体と開環重合性モノマーの双方に親和性を有するものが好適に用いられる。このような界面活性剤を使用することで、重合反応を均一に進めることができ、分子量分布の狭い生成物が得られるとともに、粒子状のポリマーを得やすくなる等の効果を期待できる。前記界面活性剤を用いる場合、圧縮性流体に加えても、モノマーに加えてもよい。例えば、圧縮性流体として二酸化炭素を用いた場合には、親二酸化炭素基と親モノマー基を分子内に持つ界面活性剤が使用される。このような界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
前記安定剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、カルボジイミドなどが挙げられる。
前記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、
ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
前記防曇剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノステアリルなどが挙げられる。
前記フィラーとしては、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、内部離型剤、結晶核剤としての効果を持つクレイ、タルク、シリカなどが挙げられる。
前記顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、群青などが挙げられる。
<第一の圧縮性流体>
次に、図1及び図2を用いて本実施形態の製造方法で用いられる第一の圧縮性流体について説明する。図1は、温度と圧力に対する物質の状態を示す相図である。図2は、本実施形態において圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。本実施形態における「圧縮性流体」とは、物質が、図1で表される相図の中で、図2に示す(1)、(2)、(3)の何れかの領域に存在するときの流体を意味する。特に好ましくは、(1)の臨界点以上の温度及び圧力における流体である。
このような領域においては、物質はその密度が非常に高い状態となり、常温常圧時とは異なる挙動を示すことが知られている。なお、物質が(1)の領域に存在する場合には超臨界流体となる。超臨界流体とは、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮しない流体のことである。また、物質が(2)の領域に存在する場合には液体となるが、本実施形態においては、常温(25℃)、常圧(1気圧)において気体状態である物質を圧縮して得られた液化ガスを表す。また、物質が(3)の領域に存在する場合には気体状態であるが、本実施形態においては、圧力が臨界圧力(Pc)の1/2(1/2Pc)以上の高圧ガスを表す。
圧縮性流体の状態で用いることができる物質としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化二窒素、窒素、メタン、エタン、プロパン、2,3−ジメチルブタン、エチレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、臨界圧力が約7.4MPa、臨界温度が約31℃であって、容易に超臨界状態を作り出せること、不燃性で取扱いが容易であることなどの点から、二酸化炭素が好ましい。
前記二酸化炭素は、塩基性、求核性を有する物質と反応することから、従来、超臨界二酸化炭素を溶媒とする場合、リビングアニオン重合には適用できないとされていた。しかし、本発明者らは、従来の知見を覆し、超臨界二酸化炭素中でも、塩基性、求核性を有する有機触媒が安定的に開環性モノマーに配位し、これを開環させることで、短時間で定量的に重合反応が進行し、結果的に重合反応がリビング的に進行することを見出した。ここでいうリビング的とは、移動反応や停止反応などの副反応を伴わず、定量的に反応が進行し、得られたポリマーの分子量分布が比較的狭く単分散であることを意味する。
<重合工程>
次に、ポリマー製造装置100を用いた開環重合性モノマーの重合工程について、図3A及び図3Bを参照して説明する。重合工程では、モノマーを含む原材料と第一の圧縮性流体とを連続的に接触させ、重合反応をさせる。本実施形態では、開環重合性モノマーと圧縮性流体とを連続的に供給し、接触させて、開環重合性モノマーを開環重合させてポリマーを連続的に得る。
まず、各計量フィーダー(2,4)、計量ポンプ6、計量ポンプ8、及び計量ポンプ12を作動させ、各タンク(1,3,5,7,11)内の開環重合性モノマー、開始剤、添加剤、第一の圧縮性流体を連続的に供給する。これにより、各導入口(9a,9b,9c,9d,9e)から、接触部9の管内に原材料及び第一の圧縮性流体が連続的に導入される。
各計量フィーダー(2,4)、計量ポンプ6、計量ポンプ8、及び計量ポンプ12を作動させる順序は、特に限定されないが、初期の原材料が第一の圧縮性流体に接触せずに接触部9に送られると、コールドスポットなどで融点以下になった場合に固化する恐れがあるため、先に計量ポンプ8を作動させることが好ましい。
なお、固体(粉末又は粒状)の原材料は、液体の原材料と比較して計量精度が低い場合がある。この場合、固体の原材料を前もって液体の状態にしてタンク5に貯蔵しておき、計量ポンプ6によって接触部9の管内に導入させてもよい。この時、原材料は、液化により送液ポンプ10で送液可能であるため、第一の圧縮性流体は、接触部13の導入口13aから供給してもよいが、導入口9aと導入口13aに分配して連続供給してもよい。
計量フィーダー(2,4)及び計量ポンプ6による各原材料の各供給速度は、開環重合性モノマー、開始剤、及び添加剤の所定の量比に基づいて、一定の比率となるように調整される。計量フィーダー(2,4)及び計量ポンプ6によって単位時間当たりに供給される各原材料の質量の合計(原材料の供給速度(g/min))は、所望のポリマー物性や反応時間等に基づいて調整される。同様に、計量ポンプ8によって単位時間当たりに供給される第一の圧縮性流体の質量(圧縮性流体の供給速度(g/min))は、所望のポリマー物性や反応時間等に基づいて調整される。原材料の供給速度と第一の圧縮性流体の供給速度との比(原材料の供給速度/第一の圧縮性流体の供給速度、フィード比という)は、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、10〜20の間が特に好ましい。また、前記フィード比の上限値については、1,000以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下が特に好ましい。
前記フィード比を1以上とすることにより、各原材料及び第一の圧縮性流体が接触部13に送液されたときに、原材料及び生成したポリマーの濃度(いわゆる固形分濃度)が高い状態で反応が進行する。このときの重合系内の固形分濃度は、従来の製造方法で圧倒的な量の圧縮性流体に対して少量の開環重合性モノマーを溶解させて重合したときの重合系の固形分濃度とは大きく異なる。本実施形態の製造方法は、固形分濃度が高い重合系でも重合反応が効率的かつ安定して進行することに特徴がある。なお、本実施形態において、フィード比を1未満としてもよく、この場合であっても、得られるポリマー生成物の品質に問題はないが、経済的な効率は劣ることになる。また、前記フィード比が1,000を超えると、圧縮性流体が開環重合性モノマーを溶融させる能力が不十分となる恐れがあり、目的とする反応が均一に進まない場合がある。
各原材料及び第一の圧縮性流体は、接触部9の管内に連続的に導入されるので、それぞれが連続的に接触する。これにより、接触部9内で、開環重合性モノマー、開始剤、添加物などの各原材料が溶解又は溶融する。接触部9が撹拌装置を有する場合には、各原材料及び第一の圧縮性流体を撹拌してもよい。導入された第一の圧縮性流体が気体に変わることを避けるため、反応部14の管内の温度及び圧力は、少なくとも前記圧縮性流体の三重点以上の温度及び圧力に制御される。この制御は、接触部9のヒータ9fの出力あるいは第一の圧縮性流体の供給量を調整することにより行われる。
本実施形態において、開環重合性モノマーを溶融させるときの温度は、開環重合性モノマーの常圧での融点以下の温度であってもよい。これは、第一の圧縮性流体の存在下、接触部9内が高圧となり、開環重合性モノマーの融点が常圧での融点よりも低下することによると考えられる。このため、開環重合性モノマーに対する第一の圧縮性流体の量が少ない場合であっても、接触部9内で開環重合性モノマーは溶融する。
各原材料が効率的に溶融するように、接触部9で各原材料及び第一の圧縮性流体に熱や撹拌を加えるタイミングを調整してもよい。この場合、各原材料と第一の圧縮性流体とを接触させた後、熱や撹拌を加えても、各原材料と第地位の圧縮性流体とを接触させながら、熱や撹拌を加えてもよい。また、より確実に溶融させるため、例えば、あらかじめ開環重合性モノマーに融点以上の熱をかけてから、開環重合性モノマーと第一の圧縮性流体とを接触させてもよい。上記の各態様は、例えば、接触部9が二軸の混合装置によって構成される場合には、スクリュウの配列、各導入口(9a,9b,9c,9d,9e)の配置、ヒータ9fの温度を適宜設定することにより実現される。
なお、本実施形態では、開環重合性モノマーとは別に添加物を接触部9に供給しているが、開環重合性モノマーと共に添加物を供給してもよい。また、重合反応後に添加物を供給してもよい。この場合、押出部14bから得られたポリマー生成物を取り出した後に添加物を混錬しながら添加することもできる。
接触部9で溶解又は溶融させた各原材料は送液ポンプ10によって送液され、導入口13bから接触部13に供給される。一方、タンク11内の触媒は、計量ポンプ12によって計量され、導入口13cから接触部13へ所定量供給される。本実施形態の触媒は室温でも作用しうるため、原材料を第一の圧縮性流体に溶融させた後、触媒を添加している。従来、第一の圧縮性流体を用いて開環重合性モノマーを開環重合する方法において、触媒を加えるタイミングについては検討されていなかった。本実施形態では、開環重合に際しては、触媒は、その活性の高さから、第一の圧縮性流体によって開環重合性モノマーや開始剤等の原材料の混合物が十分溶解又は溶融した状態に添加され、接触部9又は接触部13に添加する。添加する箇所は、1箇所に限定するものではなく、接触部9及び接触部13に分配して添加してもよい。
送液ポンプ10によって送液された各原材料及び計量ポンプ12によって供給された触媒は、必要に応じて接触部13の撹拌装置によって充分に撹拌され、あるいは送液される間、ヒータにより所定温度に加熱される。これにより、反応部14内で、触媒の存在下、開環重合性モノマーは開環重合する。
開環重合性モノマーを開環重合させる際の温度(重合反応温度)の下限は、特に制限はなく、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。前記重合反応温度が、40℃未満であると、開環重合性モノマー種によっては、圧縮性流体による溶融に長い時間がかかったり、溶融が不十分であったり、触媒の活性が低くなったりする。これにより、重合時には反応速度が低下しやすくなり、定量的に重合反応を進めることができなくなる場合がある。
重合反応温度の上限は、特に制限はなく、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。200℃を超えると、開環重合の逆反応である解重合反応も平衡して起こりやすく、定量的に重合反応が進みにくくなる。室温で液状である開環重合性モノマーなどの融点が低い開環性モノマーを使用する場合においては、触媒の活性を高めるため、重合反応温度を融点より30℃高い温度としてもよい。この場合でも、重合反応温度を200℃以下とすることが好ましい。
なお、重合反応温度は、反応部14に設けられた冷却装置と反応部14の外部からの加熱等により制御される。反応部14内の循環ポンプ22によって冷却装置及び撹拌装置に反応物が供給され、循環される。この循環の流量により冷却及び撹拌が促進されるため、所定の冷却及び撹拌能力が得られる流量になるように循環ポンプ22の出力を調節する。
本実施形態の重合法によれば、圧縮性流体を用いたポリマーの製造方法においては、従来にない高い濃度で開環重合性モノマーを開環重合させる。この場合、圧縮性流体の存在下、反応部14内が高圧となり、生成したポリマーのガラス転移温度(Tg)が低下する。これにより、生成したポリマーが低粘度化するので、ポリマー生成物の濃度が高くなった状態でも均一に開環重合反応が進行する。
本実施形態において、重合反応時間(反応部14内の平均滞留時間)は、目標とする分子量に応じて設定されるが、1時間以内が好ましく、45分間以内がより好ましく、30分間以内が更に好ましい。本実施形態の製造方法によると、重合反応時間を20分間以内とすることもできる。これは、圧縮性流体中での開環重合性モノマーの重合では前例がない短時間である。
重合時の圧力、すなわち、圧縮性流体の圧力は、タンク7から供給された圧縮性流体が液化ガス(図2の相図の(2))、又は高圧ガス(図2の相図の(3))となる圧力でもよいが、超臨界流体(図2の相図の(1))となる圧力が好ましい。圧縮性流体を超臨界流体の状態とすることで、開環重合性モノマーの溶融が促進され、均一かつ定量的に重合反応を進めることができる。なお、二酸化炭素を圧縮性流体として用いる場合、反応の効率化やポリマー転化率等を考慮すると、その圧力は、3.7MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましく、臨界圧力の7.4PMa以上が更に好ましい。また、二酸化炭素を圧縮性流体として用いる場合、同様の理由により、その温度は25℃以上が好ましい。
反応部14内の水分量は、開環重合性モノマー100モル%に対して、4モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましく、0.5モル%以下が更に好ましい。前記水分量が、4モル%を超えると、水分自体も開始剤として寄与するため、分子量の制御が困難となる場合がある。重合反応系内の水分量を制御するために、必要に応じて、前処理として、開環重合性モノマー、その他原材料に含まれる水分を除去する操作を加えてもよい。
反応部14の循環部14b内で開環重合反応を終えたポリマー生成物Pは、循環ポンプ22により循環部14bの外へ送り出される。ポリマー生成物Pを送り出す速度は、圧縮性流体で満たされた重合系内の圧力を一定にして、運転させ均一な重合品を得るために、一定とすることが好ましい。そのため、循環ポンプ22の吐出圧力が一定となるように、送液ポンプ10の送液量は制御される。同様に、送液ポンプ10の背圧が一定となるように、接触部9内部の送液機構及び計量フィーダー(2,4)、及び計量ポンプ(6,8)の供給速度は制御される。制御方式は、ON−OFF型つまり間欠フィード型でもよいが、ポンプ等の回転速度を徐々に増減する連続又はステップ方式の方がより好ましいことが多い。いずれにせよこのような制御によって、均一なポリマー生成物を安定に得ることができる。
<第二の圧縮性流体>
第二の圧縮性流体は、精製工程で未反応物を除去するために用いられる。第二の圧縮性流体として、第一の圧縮性流体と性質が同じものを用いることができる。第二の圧縮性流体は第一の圧縮性流体と異なっていてもいいし、同じであってもいい。
<精製工程>
精製工程は、前記重合工程の後、連続的に第二の圧縮性流体を添加しながら、未反応物を除去する工程である。
重合したポリマーから未反応物を除去する際の温度(精製温度)の下限は、特に制限はないが、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。前記精製温度が、40℃未満であると、開環重合性モノマー種によっては、未反応物の圧縮性流体への溶解に長い時間がかかったり、溶融が不十分であったりする。これにより、未反応物の除去ができなかったり、安定的に排出ができなかったりする。精製温度の上限は、特に制限はなく、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。200℃を超えると、開環重合の逆反応である解重合反応も平衡して起こりやすく、未反応物を除去しても開重合による未反応物が生成される可能性がある。なお、重合反応温度は、精製部15に設けられた冷却装置と精製部15の外部からの加熱等により制御される。
すなわち、精製温度は特に制限されるものではないが、40℃〜200℃が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜80℃がさらに好ましい。なお、精製温度を下げることで、圧縮性流体に対する未反応物の溶解度を上げることができ、これにより同じ添加量でもより多くの未反応物を抽出することができる。
<ポリマー生成物>
本実施形態のポリマー生成物は、上記の製造方法により得られるポリマー生成物であって、残存開環重合性モノマー量が2モル%未満であり、数平均分子量が80,000以上であることが好ましい。
本実施形態のポリマーの製造方法によると、第二の圧縮性流体を用いて精製することで、上述の通り、未反応物を溶解して除去することが可能となるため、従来の溶融重合と比して、大幅にポリマー転化率を向上することができる。これにより、ポリマー転化率を、96モル%以上、好ましくは98モル%以上とすることができる。前記ポリマー転化率が96モル%に満たない場合、ポリマー生成物としての熱特性が不十分になり、別途開環重合性モノマーを除去する操作が必要になる場合がある。別途開環重合性モノマーを除去する操作を行った場合、ポリマーに熱をかけている時間を長くする必要があり、イエローインデックスが高くなったり、熱分解による分子量低下を引き起こす可能性がある。
前記ポリマー転化率とは、原材料としての開環重合性モノマーに対する、ポリマーの生成に寄与した開環重合性モノマーの割合を意味する。ポリマーの生成に寄与した開環重合性モノマーの量は、生成したポリマーの量から未反応の開環重合性モノマーの量(残存開環重合性モノマー量)を差し引くことにより得られる。式として示すと以下である。
モノマーのポリマー転化率(モル%)=100−未反応モノマー量(モル%)
本実施形態により得られるポリマー生成物の数平均分子量は、開始剤の量によって調整が可能であるが、80,000以上が好ましく、80,000〜250,000がより好ましく、120,000〜250,000が更に好ましい。前記数平均分子量が、250,000を超えると、粘性の上昇に伴う生産性の悪化により経済的ではない場合がある。一方、前記数平均分子量が、80,000未満であると、ポリマーとしての強度が不十分となり好ましくない場合があり、250,000を超えると、ポリマー粘性の上昇に伴う生産性の悪化により経済的ではないことがある。
本実施形態により得られるポリマー生成物の重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除した値(Mw/Mn)は、1.0以上2.5以下が好ましく、1.0以上2.0以下がより好ましい。この値(Mw/Mn)が、2.5を超えると、重合反応が不均一に行われている可能性が高く、ポリマー物性をコントロールすることが困難になることから好ましくない。
ここで、前記ポリマーの分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)により測定することができる。
前記ポリマーの製造方法により得られるポリマーは、イエローインデックス(YI)値が低い。前記ポリマーにおける前記YI値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。前記YI値が、5.0を超えると、外観上の問題となることがある。
前記イエローインデックス(YI)値は、例えば、厚み2mmの樹脂ペレットを作製してJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定し求めることができる。
本実施形態により得られるポリマー生成物は、金属触媒及び有機溶媒を使用しない製法で製造した場合、実質的に金属原子及び有機溶媒が含まれず、残存開環重合性モノマー量は、4モル%未満(ポリマー転化率96モル%以上)が好ましく、2モル%未満(ポリマー転化率98モル%以上)がより好ましく、1,000ppm以下と極めて少ないことから、安全性、安定性に優れている。従って、本実施形態の粒子は、通り日用品、医薬品、化粧品、電子写真用トナー等の用途として幅広く適用される。
なお、本実施形態において、金属触媒とは、開環重合に用いられる触媒であって金属を含むものである。また、実質的に金属原子を含まないとは、金属触媒由来の金属原子を含まないことを意味する。具体的には、ICP発光分析法、原子吸光分析法あるいは比色法などの公知の分析手法で、ポリマー生成物における金属触媒由来の金属原子の検出を試みた場合に、検出限界以下であるときに金属触媒由来の金属原子を含まないと言える。
この金属触媒としては、特に限定されないが、オクチル酸スズ、ジブチル酸スズ、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズなどのスズ系化合物、アルミニウムアセチルアセトナート、酢酸アルミなどのアルミ系化合物、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどのチタン系化合物、ジルコニウムイソプロオイキシドなどのジルコニウム系化合物、三酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物などの公知のものが挙げられる。
金属触媒由来の金属原子としては、スズ、アルミ、チタン、ジルコニウム、アンチモンなどが挙げられる。
また、本実施形態において、有機溶媒とは、開環重合に用いられる有機物の溶媒であり、開環重合反応で得られるポリマーを溶解せしめるものである。開環重合反応で得られるポリマーがポリ乳酸(L体100%)である場合には、有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン溶媒やテトラヒドロフランなどが挙げられる。実質的に有機溶媒を含有しないとは、以下の測定方法により測定されるポリマー生成物中の有機溶媒の含有量が検出限界以下であることを言う。
<残留有機溶媒の測定方法>
残留有機溶媒の測定方法は、例えば以下のようにして行うことができる。
測定対象となるポリマー生成物1質量部に2−プロパノール2質量部を加え、超音波で30分間分散させた後、冷蔵庫(5℃)にて1日以上保存し、ポリマー生成物中の有機溶媒を抽出する。上澄み液をガスクロマトグラフィ(GC−14A、SHIMADZU社製)で分析し、ポリマー生成物中の有機溶媒及び残留モノマーを定量することにより有機溶媒濃度を測定する。かかる分析時の測定条件は、例えば以下の通りである。
・装置 :島津GC−14A
・カラム :CBP20−M 50−0.25
・検出器 :FID
・注入量 :1μL〜5μL
・キャリアガス :He 2.5kg/cm
・水素流量 :0.6kg/cm
・空気流量 :0.5kg/cm
・チャートスピード:5mm/min
・感度 :Range101×Atten20
・カラム温度 :40℃
・Injection Temp :150℃
<<ポリマー生成物の用途>>
本実施形態の製造方法により得られたポリマー生成物は、金属触媒及び有機溶剤を使用しない製法で製造され、残存モノマー量も少ないことから、安全性、安定性に優れている。従って、本実施形態の製造方法により得られたポリマー生成物は、電子写真の現像剤、印刷用インク、建築用塗料、化粧品、医療用材料などの各種用途に幅広く適用される。その際、成形性、二次加工性、分解性、引張強度、耐熱性、保存安定性、結晶性、耐候性等を向上させる目的で、各種添加剤を使用してもよい。
[第二の実施形態](応用例)
第一の実施形態の応用例としての第二の実施形態について説明する。第一の実施形態の製造方法では、未反応物である残存モノマーを除去できる。このことから、第二の実施形態では、第一の実施形態の製造方法で製造されたポリマー生成物を用い、数種類の開環重合性モノマーを加えるタイミングを適宜設定することにより、複合体を合成する。
なお、本実施形態において、複合体とは、モノマーを複数の系列に分けて重合して得られる2種以上のポリマーセグメントを有する共重合体又はモノマーを複数の系列に分けて重合して得られる2種以上のポリマーの混合物を意味する。
以下、複合体の一例として、ステレオコンプレックスの合成方法を示す。
まず、図6を用いて説明する。図6は、複合体製造システム200を示す模式図である。ここでは、第一の実施形態の製造方法でそれぞれ製造された複数のポリマー生成物を圧縮性流体の存在下、連続的に混合させることによって、複合体生成物PPを製造する。複数のポリマー生成物は、互いに光学異性体の開環重合性モノマーをそれぞれ重合したものである。複合体製造システム200は、複数のポリマー製造装置100と混合装置31と圧力調整バルブ32とを有する。
複合体製造システム200において、混合装置31の導入口31aは、耐圧性の配管131を介して各ポリマー製造装置100の排出口131b、131cと接続している。各ポリマー製造装置100で生成されたポリマー生成物Pを常圧に戻すことなく溶融した状態のまま混合装置31に供給することができる。その結果、圧縮流体の存在下、各ポリマー生成物Pが低粘度化するので、混合装置31では、より低温で2種類以上のポリマー生成物Pを混合することが可能となる。
図6では、配管131が一つの継手131aを有することによりポリマー製造装置100を並列に二つ備えた例を示したが、複数の継手を設けることにより、ポリマー製造装置100を並列に三つ以上備えていてもよい。
混合装置31としては、各ポリマー製造装置100から供給された複数のポリマー生成物を混合可能なものであれば、特に限定されないが、攪拌装置を備えたものが挙げられる。
攪拌装置としては、一軸のスクリュウ、互いに噛み合う二軸のスクリュウ、互いに噛み合う又は重なり合う多数の攪拌素子をもつ二軸の混合機、互いに噛み合う螺旋形の攪拌素子を有するニーダー、スタティックミキサーなどが好ましく用いられる。
混合装置31で各ポリマー生成物を混合させる際の温度(混合温度)は、反応部14における重合反応温度と同様に設定することができる。なお、混合装置31は、混合されるポリマー生成物に、別途、圧縮性流体を供給する機構を有していてもよい。圧力調整バルブ32は、混合装置31でポリマー生成物が混合されて得られた複合体生成物PPの流量を調整するための装置である。
ここでは、ポリマー製造装置100であらかじめL体、D体のモノマー(例えば、ラクチド)を圧縮性流体中でそれぞれ重合する。更に、重合させて得られたポリマー生成物を圧縮性流体中でブレンドしてステレオブロック共重合体を得る。通常、ポリ乳酸などのポリマーは、残存モノマーが限りなく少ない場合でも、再度加熱溶解すると、分解してしまうことが多い。本実施形態では、圧縮性流体で溶融させた低粘性のポリ乳酸を、融点以下でブレンドすることにより、第一の実施形態と同様にラセミ化や熱劣化を抑えることができるため有用である。
なお、この方法では、互いに光学異性体の開環重合性モノマーをそれぞれ重合してステレオコンプレックスを製造する場合について説明した。しかしながら、本実施形態で用いられる開環重合性モノマーは互いに光学異性体である必要はない。また、この方法と組み合わせることにより、ステレオコンプレックスを形成するブロック共重合体を混合することも可能である。
本発明のポリマー製造装置によると、モノマーを含む原材料と、第一の圧縮性流体とを接触させた後、反応部によってモノマーを重合反応させ、精製部で第二の圧縮性流体を導入して未反応物を除去したポリマーを得る。これによりモノマーや重合反応によって生成したポリマーや圧縮性流体が混合され未反応物が少ない均質なポリマーが高分子量であっても高収率で得られる。また、本発明によれば、例えば、数平均分子量が80,000を超えるような高分子化合物であっても未反応物が少なく、安定的に連続生産できるポリマー製造装置を得ることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて説明する。なお、本発明はここに例示される実施例に限定されるものではない。また、以下、参考例1は本発明に含まれないものである。
なお、実施例及び比較例で得られたポリマーの分子量、モノマーのポリマー転化率、フィード比、連続生産性、及びイエローインデックス値は次のようにして求めた。
<ポリマーの分子量測定>
GPC(Gel Permeation Chromatography)により以下の条件で測定した。
・装置:GPC−8020(東ソー社製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー社製)
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0mL/分
濃度0.5質量%のポリマーを1mL注入し、上記の条件で測定したポリマーの分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリマーの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwを算出した。分子量分布はMwをMnで除した値である。
<連続生産性>
例えば、図3A及び図3Bで示したようなポリマー製造装置の連続運転を行った後に精製部を分解しスクリュウ、単管やギヤ部分にゲル化物などが付着しているかどうかを目視評価し、下記基準で評価した。なお、ポリマーの均質性が悪い場合、装置内にゲル状の付着物が発生し、連続運転ができなくなる。
[評価基準]
◎:24時間以上連続運転を行ってゲル化物の付着がない
○:12時間以上24時間未満連続運転を行ってゲル化物の付着がない
×:12時間未満の連続運転を行ってゲル化物の付着がある
<モノマーのポリマー転化率>
モノマーのポリマー転化率は、以下の式により求めた。
モノマーのポリマー転化率(モル%)=100−未反応モノマー量(モル%)
ポリ乳酸の場合、未反応モノマー量(モル%)は、重クロロホルム中、日本電子社製の核磁気共鳴装置JNM−AL300を使用し、ポリ乳酸由来の四重線ピーク面積比(5.10ppm〜5.20ppm)に対するラクチド由来の四重線ピーク面積比(4.98ppm〜5.05ppm)として算出し、これを100倍して求めた。
ポリカプロラクトンの場合、未反応モノマー量(モル%)は、重クロロホルム中、日本電子社製の核磁気共鳴装置JNM−AL300を使用し、ポリカプロラクトン由来の三重線ピーク面積比(4.04ppm〜4.08ppm)に対するカプロラクトン由来の三重線ピーク面積比(4.22ppm〜4.25ppm)として算出し、これを100倍して求めた。
ポリカーボネートの場合、未反応モノマー量(モル%)は、重クロロホルム中、日本電子社製の核磁気共鳴装置JNM−AL300を使用し、ポリカーボネート由来の四重線ピーク面積比(4.22ppm〜4.25ppm)に対するエチレンカーボネート由来の一重線ピーク面積比(4.54ppm)として算出し、これを100倍して求めた。
<イエローインデックス(YI)値>
得られたポリマー組成物について、厚み2mmの樹脂ペレットを作製してJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定し、YI値を求め、下記基準で評価した。
[評価基準]
◎:YI値が2.0以下
○:YI値が2.0より大きく、5.0以下
×:YI値が5.0より大きい
(実施例1)
図3A及び図3Bに示すポリマー製造装置100を用いて、L−ラクチドの開環重合を行った。ポリマー製造装置の構成を示す。
・タンク1,計量フィーダー2:日本精密社製 プランジャーポンプNP−S462
タンク1には、開環重合性モノマーとして溶融状態のL−ラクチド(製造会社名:ピューラック社、融点:100℃)を充填した。
・タンク3,計量フィーダー4:日本分光社製 インテリジェントHPLCポンプ(PU−2080)
タンク3には、開始剤としてラウリルアルコールを充填した。
・タンク5,計量ポンプ6:実施例1では使用しなかった。
・タンク7:炭酸ガスボンベ
・タンク11,計量ポンプ12:日本分光社製 インテリジェントHPLCポンプ(PU−2080)
タンク11には、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、製造会社名:東京化成工業社)(有機触媒)を充填した。
・導入部9e:実施例1では使用しなかった。
・反応部14
・・装置A:混合機/タンク撹拌装置(駆動型撹拌装置)
タンク内径:100mm
タンク長さ:200mm
タンク温度:100℃
回転速度:30rpm
・・装置B:冷却装置/二重管式熱交換器
内径:14.3mm
ジャケット部内径:43.0mm
熱交換器長さ:150mm
装置Aと装置Bとは配管(第一の配管31aと第二の配管31b、θ=90°)で循環可能に接続されており、装置Aと装置Bと配管とで循環部14aを形成している(表1の装置C:循環あり)。
・・装置C〜E:実施例1では使用しなかった。
・タンク16:炭酸ガスボンベ
・精製部15
・・混合機/スタティックミキサー(ノリタケカンパニーリミテド社製)
内径:21.2mm
長さ:2000mm
・・精製部15と排出口18とをつなぐ配管
内径:8.5mm
実施例1の反応部14では、駆動型撹拌装置(図3Bの装置A)及び冷却装置(図3Bの装置B)を上記の設定条件で作動させた(表1のNo.1)。作動について以下に説明する。
まず、計量フィーダー2を作動させて、タンク1内の溶融状態のL−ラクチドを接触部9の容器内に定量供給した。計量フィーダー4を作動させて、タンク3内のラウリルアルコールをL−ラクチドの供給量99.85モルに対し0.15モルとなるように接触部9の容器内に定量供給した。計量ポンプ8を作動させて、タンク7より第一の圧縮性流体としての炭酸ガス(二酸化炭素)をフィード比が10になるように供給した。接触部9の容器内の圧力が10MPaとなるように押出口金20のバルブを調整した。次いで。計量ポンプ12を作動させて、タンク11の有機触媒(DBU)をL−ラクチド99.9モルに対して0.1モルとなるように導入口13cから定量供給した。これにより、タンクから供給されたL−ラクチド及びラウリルアルコール等の各原材料と、圧縮性流体と、DBUとを連続的に接触させるとともに、撹拌翼で各原材料を混合し、L−ラクチドの開環重合を開始させた。
次に、導入口13cで重合が開始したポリマー(実施例1ではポリ乳酸)は、送液ポンプ10によって循環部14aに送液される。循環部14aでポリマーは循環されながら重合が進む。反応時の過剰な発熱は冷却装置により冷却される。ポリマーは所定の時間循環させたのち精製部15の下部に送られる。また、計量ポンプ17を作動させて精製部15の下部から第二の圧縮性流体として炭酸ガス(二酸化炭素)をL−ラクチドに対して10wt%供給し、第二の圧縮性流体のみを上部から排出することで未反応物を除去した。その後、精製部15の上部から200mmの位置に設置した精製部15と排出口18をつなぐ配管、排出口18を通り押出口金20の排出口21から排出させた。この場合、反応部14から排出までの材料の平均滞留時間は約0.5時間とした。得られたポリマー生成物について、上記の方法で物性値(Mn、Mw/Mn、ポリマー転化率)を求め、連続生産性及びイエローインデックスを評価した。結果を表2に示す。
(実施例2〜12)
実施例2〜12については、実施例1において、精製部15の未反応物除去条件をそれぞれ表2、表3に記載された条件に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例2〜12のポリマー生成物を得た。
表2、表3において、用いた混合機の条件は以下の通りである。
・混合機/無
内径:21.2mm
長さ:2000mm
・混合機/駆動型撹拌
タンク内径:100mm
タンク長さ:200mm
回転速度:30rpm
・混合機/二軸撹拌:互いに噛み合うスクリュウ
シリンダー径:30mm
2軸同方向回転
回転速度:30rpm
(実施例13〜15)
装置の構成を下記のように変更(すなわち反応部14の構成を表1のNo.7に変更)し、精製部15の未反応物除去条件をそれぞれ表4に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例13〜15のポリマー生成物を得た。
・反応部14
・・装置A:混合機/スタティックミキサー(ノリタケカンパニーリミテド社製)
内径:21.2mm
長さ:2000mm
・・装置B:冷却装置/二重管式熱交換器
内径:14.3mm
ジャケット部内径:43.0mm
熱交換器長さ:150mm
・・装置C:反応機/広径チューブ型反応装置
内径:80.0mm
長さ:2000mm
・・装置D:送液装置/ギヤポンプ
送液速度:精製部の精製時間が所定値になるように設定
・・装置E:混合機/駆動型撹拌装置
内径:100.0mm
回転速度:30rpm
(実施例16〜18)
装置の構成を下記のように変更(すなわち反応部14の構成を表1のNo.10に変更)し、精製部15の未反応物除去条件をそれぞれ表4に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例16〜18のポリマー生成物を得た。
・反応部14
・・装置A:混合機/二軸撹拌機
二軸撹拌:互いに噛み合うスクリュウ
シリンダー径:30mm
2軸同方向回転
回転速度:30rpm
・・装置B:混合機/スタティックミキサー(ノリタケカンパニーリミテド社製)
内径:21.2mm
長さ:2000mm
・・装置C:冷却装置/二重管式熱交換器
内径:14.3mm
ジャケット部内径:43.0mm
熱交換器長さ:150mm
・・装置D:混合機/単軸押出機
回転速度:30rpm
・・装置E:無
(実施例19〜21)
装置の構成を下記のように変更し、精製部15の未反応物除去条件をそれぞれ表4に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例19〜21のポリマー生成物を得た。
・反応部14
・・装置A、B、C:無
ただし、A、B、Cは重合が開始したポリマーが循環するように配管を繋いでいる。
・・装置D、E:無
(比較例1)
実施例1において、精製部15に第二の圧縮性流体を導入しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1のポリマー生成物を得た。
(参考例1)
実施例1において、精製部15と排出口18とをつなぐ配管の内径を32.9mmとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、参考例1のポリマー生成物を得た。
(比較例2)
実施例1において、精製部15において、第二の圧縮性流体の導入口を上部に設置し、第二の圧縮性流体の排出口19を下部に設置したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い比較例2のポリマー生成物を得た。
実施例2〜21で得られたポリマー生成物について、実施例1と同様にして物性値を測定した。結果を表2〜表4に示す。
比較例1、比較例2、参考例1で得られたポリマー生成物について、実施例1と同様にして、物性値(Mn、Mw/Mn、ポリマー転化率)を求め、連続生産性及びイエローインデックスを評価した。結果を表5に示す。
(実施例22)
図6に示す複合体製造システム200を用いて、複合体を製造した。以下、複合体製造システム200における複数のポリマー製造装置100の一方を系列1のポリマー製造装置100と言い、他方を系列2のポリマー製造装置100と言う。
複合体製造システム200の構成を示す。
・ポリマー製造装置100(系列1,2):実施例1で用いたものと同様のポリマー製造装置を用いた。
・混合装置31:互いに噛み合うスクリュウを取付けた二軸攪拌装置
シリンダー内径:40mm
二軸同方向回転
回転速度:30rpm
モノマー種、及びモノマー流量比(系列1と系列2のモノマー流量比)を表6に記載された条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、系列1のポリマー製造装置100でL−ラクチドを重合した。なお、モノマー流量比とは、各系列におけるタンク1から接触部9にモノマーを供給するときの供給流量比である。同時に、モノマー種、及びモノマー流量比を表6に記載された条件に変更した以外は、実施例1と同様に操作して、系列2のポリマー製造装置100でD−ラクチドを重合した。各ポリマー製造装置100で得られた各ポリマー生成物(ポリLラクチド,ポリDラクチド)は、各計量ポンプによって、圧縮性流体の存在下、溶融した状態のまま、直接、混合装置31に連続的に供給される。混合装置31で、表6に記載された条件により各ポリマー生成物を攪拌して連続的に混合し、複合体生成物PP(ステレオコンプレックスを形成したポリ乳酸)を得た。
得られた複合体生成物について、実施例1と同様にして、物性値(Mn、Mw/Mn、ポリマー転化率)を求め、連続生産性及びイエローインデックスを評価した。結果を表6に示す。
(実施例23)
実施例22において、モノマー種及びモノマー流量比を表6に記載された条件に変更した以外は、実施例22と同様の操作を行うことにより、複合体を得た。得られた複合体について、実施例1と同様にして、物性値(Mn、Mw/Mn、ポリマー転化率)を求め、連続生産性及びイエローインデックスを評価した。結果を表6に示す。
1、3、5、7、11、16 タンク
2 計量フィーダー(第一の供給部の一例)
4 計量フィーダー
6、12 計量ポンプ
8 計量ポンプ(第二の供給部の一例)
9 接触部(接触容器の一例)
9a 導入口(第一の圧縮性流体の導入口の一例)
9b 導入口(モノマーの導入口の一例)
9c 導入口
9d 導入口
9e 導入口
9f ヒータ
10 送液ポンプ
13 接触部(接触容器の一例)
13a 導入口(圧縮性流体の導入口の一例)
13b 導入口
13c 導入口
14 反応部(反応装置の一例)
14a 循環部(反応装置の一例)
14b 押出部(反応装置の一例)
15 精製部
17 計量ポンプ
18 ポリマーの排出口(圧力調整弁)
19 第二の圧縮性流体の排出口(圧力調整弁)
20 押出口金(排出部の一例)
20a 戻し口
20b 導入口
21 排出口
22 循環ポンプ
31 混合部
31a 配管a
31b 配管b
32 ポリマーの排出口(圧力調整弁)
100 ポリマー製造装置
100a 供給ユニット
100b ポリマー製造装置本
131 配管
131a 継手
131b 排出口
131c 排出口
200 複合体製造システム
P ポリマー生成物(反応生成物)
PP 複合体生成物
A、B、C、D、E 反応部を構成する装置
特開2007−100011号公報

Claims (9)

  1. モノマーを含む原材料を供給する第一の供給部、第一の圧縮性流体を供給する第二の供給部を含む供給部と、
    前記モノマーと前記第一の圧縮性流体とを接触させる接触部と、
    前記第一の圧縮性流体の存在下、前記モノマーを重合反応させる反応部と、
    前記モノマーの反応生成物を排出する排出口と、
    前記反応部と前記排出口との間に、前記モノマーの反応生成物の未反応物を除去する精製部とを有し、
    前記精製部の下方から第二の圧縮性流体を添加することを特徴とするポリマー製造装置。
  2. 前記精製部の側面に、前記排出口へとつながる配管を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー製造装置。
  3. 前記精製部の上部に、前記第二の圧縮性流体を排出する圧縮性流体排出口を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー製造装置。
  4. 前記第二の圧縮性流体を添加する第三の供給部を有し、
    前記精製部と前記第三の供給部が配管でつながれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー製造装置。
  5. 前記精製部は円筒状であり、
    前記精製部の内径が、前記排出口へとつながる配管の内径より大きいことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のポリマー製造装置。
  6. 前記精製部が、前記モノマーの反応物と前記第二の圧縮性流体を混合する混合機を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー製造装置。
  7. 前記精製部を流れる流体を冷却する冷却装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー製造装置。
  8. 前記精製部を2つ以上有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリマー製造装置。
  9. モノマーを含む原材料と第一の圧縮性流体とを連続的に接触させ、重合反応をさせる重合工程と、
    前記重合工程の後、連続的に第二の圧縮性流体を添加しながら、未反応物を除去する精製工程とを有することを特徴とするポリマーの製造方法。
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