JP2016060801A - ポリマー製造装置及びポリマーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】モノマーを含む原材料を供給する第一の供給部(タンク1,3,5,11)、第一の圧縮性流体を供給する第二の供給部(タンク7)を含む供給部(供給ユニット100a)と、前記モノマーと前記第一の圧縮性流体とを接触させる接触部(接触部9及び接触部13)と、前記第一の圧縮性流体の存在下、前記モノマーを重合反応させる反応部14と、前記モノマーの反応生成物を排出する排出口21と、反応部14と排出口21との間に、前記モノマーの反応生成物の未反応物を除去する精製部15とを有し、精製部15の下方から第二の圧縮性流体を添加することを特徴とするポリマー製造装置。
【選択図】図3A
Description
でき、高収率でポリマーが得られるとされている。
本発明のポリマー製造装置は、モノマーを含む原材料を供給する第一の供給部、第一の圧縮性流体を供給する第二の供給部を含む供給部と、前記モノマーと前記第一の圧縮性流体とを接触させる接触部と、前記第一の圧縮性流体の存在下、前記モノマーを重合反応させる反応部と、前記モノマーの反応生成物を排出する排出口と、前記反応部と前記排出口との間に、前記モノマーの反応生成物の未反応物を除去する精製部とを有している。そして、前記精製部の下方から第二の圧縮性流体を添加することを特徴としている。
なお、詳細は後述するが、前記第一の圧縮性流体と前記第二の圧縮性流体とが同じ場合も本発明に含まれるものである。
前記精製部は円筒状であり、精製部の内径が、前記排出口へとつながる配管の内径より大きいことが好ましい。
本発明のポリマーの製造方法は、モノマーを含む原材料と第一の圧縮性流体とを連続的に接触させ、重合反応をさせる重合工程と、前記重合工程の後、連続的に第二の圧縮性流体を添加しながら、未反応物を除去する精製工程とを有することを特徴とする。
第一の圧縮性流体の存在下で重合させることにより、従来の反応温度よりも低い温度で重合反応を進行させることができるので、熱に起因した反応生成物の着色あるいは変質等が低減される。反応生成物が第一の圧縮性流体によって可塑化されていることで、材料置換が容易になる。また、反応部の下流に精製部を設け、未反応物を溶解できる第二の圧縮性流体を導入することにより、比較的低温で未反応物の除去が可能となり、効率よくかつ熱劣化を抑えた未反応物の除去が可能となる。
これに対し、精製部を設けなかった場合は、化学平衡の観点から数%の未反応物が残留してしまう。また、圧縮性流体を使用しない精製部を設けた場合には、反応生成物の粘度が高いために多くのエネルギーや時間が必要になったり、高温で処理する必要があったりするため熱劣化を引き起こす可能性がある。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
(実施の形態1)
最初に、図3A及び図3Bを用いて、本発明のポリマー製造装置の一態様について説明する。本実施形態のポリマー製造装置100は、モノマーを含む原材料を供給する第一の供給部(タンク1,3,5,11)、第一の圧縮性流体を供給する第二の供給部(タンク7)を含む供給部(供給ユニット100a)と、前記モノマーと前記第一の圧縮性流体とを接触させる接触部(接触部9及び接触部13)と、前記第一の圧縮性流体の存在下、前記モノマーを重合反応させる反応部14と、前記モノマーの反応生成物を排出する排出口21と、反応部14と排出口21との間に、前記モノマーの反応生成物の未反応物を除去する精製部15とを有する。そして、精製部15の下方から第二の圧縮性流体を添加することを特徴とする。
供給ユニット100aには、タンク(1,3,5,7,11)と、計量フィーダー(2,4)と、計量ポンプ(6,8,12)とが設けられている。なお、タンク、計量フィーダー、及び計量ポンプ、それぞれの数や配置は必要に応じて適宜変更することが可能である。
また、タンク3には開始剤及び添加剤のうち固体(粉末又は粒状)のものが貯蔵され、タンク5には開始剤及び添加剤のうち液体のものが貯蔵されるが、タンク3に貯蔵される供給物とタンク5に貯蔵される供給物とは入れ替わってもよい。また、タンク3と5に貯蔵される供給物がいずれも固体であってもよいし、タンク3と5に貯蔵される供給物がいずれも液体であってもよい。
図2は、本実施形態において圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。圧縮性流体の詳細な説明については、後述する。
計量フィーダー4は、タンク3に貯蔵された固体を計量して接触部9に連続的に供給する供給手段の一例である。
計量ポンプ6は、タンク5に貯蔵された液体を計量して接触部9に連続的に供給する供給手段の一例である。
計量ポンプ8は、圧縮性流体を供給する第二の供給部に設けられた供給手段の一例であり、タンク7に貯蔵された第一の圧縮性流体を一定の圧力及び流量で接触部9に連続的に供給する。
なお、本発明において連続的に供給するとは、バッチ毎に供給する方法に対する概念であって、反応系に供給され重合反応しながら配管を流れる流体の流動が停止されることなく、生成されたポリマーが排出口から連続的に得られるように供給されている限り、断続的、あるいは、間欠的に供給されてもよい。
開環重合性モノマーを溶解した場合には流体相、溶融した場合には溶融相が形成されるが、均一に反応を進めるために、溶融相又は流体相のいずれか一相が形成されていることが好ましい。また、圧縮性流体に対して原材料の比率が高い状態で反応を進行させるために、開環重合性モノマーを溶融させることが好ましい。なお、本実施形態では、原材料及び圧縮性流体を連続的に供給することにより、接触部9において、開環重合性モノマー等の原材料と圧縮性流体とを一定の濃度の比率で連続的に接触させることができる。これにより、原材料を効率的に溶融又は溶解させることができる。
場合、接触部9は、耐圧性の配管30の一部によって構成される。なお、接触部9が本実施形態のように配管30によって構成される場合、接触部9内での各材料を確実に混合するため、接触部9に供給される開環重合性モノマーは予め液化されていることが好ましい。
送液ポンプ10は、接触部9で形成された溶融相あるいは流体相などの混合物を下流側に送液する。
なお、接触部13が配管30によって構成される場合、接触部13内での各材料を確実に混合するため、接触部13に供給される開環重合性モノマーは予め液化されていることが好ましい。また、接触部13には、送液された原材料を加熱するためのヒータが設けられていることが好ましい。
反応部14は、循環部14aと、該循環部14aよりも下流側(反応生成物の排出口21側)に設けられた押出部14bと有している。循環部14aには、配管30を通って接触部9及び/又は接触部13側から流れてきた流体が下流方向に流れる配管a(符号31a)が設けられている。また、配管aを流れてきた流体を押出部14bよりも上流側に設けられた戻し口20aから上流側に設けられた導入口20bに戻すための配管b(符号31b)が設けられ、循環部14aは配管aと配管bとから構成される循環手段を有している。
冷却装置としては、例えば、多管式熱交換器、二重管式熱交換器等の冷却装置を単独で用いる他、撹拌装置にこれらの冷却装置を備えた複合型の冷却装置等を用いることができる。攪拌装置と冷却装置とを組み合わせることにより、撹拌による反応の促進と共に反応熱による熱分解の抑制ができる。
複合型の冷却装置としては、例えば、多管式熱交換器の伝熱管内にスタティックミキサーを設置した冷却装置が好ましい。
ここで、図4に配管を配置した循環部の一例を示す。図4では配管a(符号31a)は水平面上に配置され、配管b(符号31b)は水平面の上方に配置されている。例えば、配管a及び/又は配管bにおいて、流体が垂直方向(例えば、図4においてθ=90°の場合)、斜め上方向(例えば、図4において0°<θ<90°の場合)、あるいは斜め下方向(例えば、図4において0°<θ<−90°の場合)に流れるように配置された配管部分が設けられていることが好ましい。なお、図4においてθは、30°≦|θ|≦90°が好ましく、より好ましくは、45°≦|θ|≦90°である。
また、配管の径については、特に限定はなく、管内で単一径としてもよいし、管内で径を変えても構わない。
なお、反応部14における前記撹拌装置と前記冷却装置と前記押出装置との組み合わせについては、本発明の主旨を逸脱しない範囲であれば、表1に示した組み合わせ以外のものも適宜用いることができる。
*表1中、冷却装置とは、二重管式熱交換器である。
*表1中、チューブ型反応装置とは、撹拌機能も押出機能も特に設けられておらず、配管で構成された反応装置のことを指し、例えば、螺旋形状の配管であってもよいし、線状の配管であってもよい。
*表1中、装置Cの循環ありとは、装置Cの部分が配管であり、装置Cの箇所を流体が循環することを指す。
また、冷却装置と撹拌装置とが交互に設けられていてもよい。
また、第二の圧縮性流体は第一の圧縮性流体と異なっていてもいいし、同じであってもいい。
また、第二の圧縮性流体の排出口19(圧縮性流体排出口)は精製部15の上部に設置されていることが好ましい。
また、生成後のポリマーの排出口18は第二の圧縮性流体の導入口と第二の圧縮性流体の排出口の間の精製部15の側面に設けられていることが好ましい。すなわち、精製部15の側面に、ポリマーの排出口18へとつながる配管を有することが好ましい。
第二の圧縮性流体の導入口を上部に設置し、第二の圧縮性流体の排出口19を下部に設けた場合やポリマーの排出口18を下部や上部に設置した場合、ポリマーと圧縮性流体の密度差により安定的に排出できなかったり、未反応物を除去できなかったりする場合がある。
すなわち、本実施形態の精製部15は、モノマーの反応物と第二の圧縮性流体を混合する混合機を有することが好ましい。また、本実施形態において、精製部15を流れる流体を冷却する冷却装置が設けられていることが好ましい。なお、冷却装置としては、特に制限されるものではなく、上述のものを用いることができる。
精製部15の形状としては、特に制限されるものではないが、例えば、円筒状、螺旋状等が挙げられる。
精製部15を2つ以上有する場合、特に制限されるものではないが、精製部15を直列的に接続してもよく、並列的に接続してもよい。また、このとき第二の圧縮性流体を添加する第三の供給部、反応生成物を排出する排出口は一つであってもよいし、複数であってもよい。
以下、本発明のポリマー製造装置を用いたポリマー製造の一態様について説明する。
<原材料>
本実施形態において、原材料とは、ポリマーを製造するもとになる材料であって、ポリマーの構成成分となる材料であるモノマーを少なくとも含み、触媒を含むことが好ましく、更に必要に応じて、開始剤、添加剤等のその他の成分を含んでなる。
前記モノマーとしては、重合性モノマーが好適に用いられる。
本実施形態で用いられる重合性モノマーは、使用する開環重合性モノマーと圧縮性流体との組み合わせにもよるが、開環重合性モノマーが好ましい。これらの中でも、エステル結合などのカルボニル骨格を環内に有するものが好ましい。前記カルボニル骨格は、電気陰性度の高い酸素が炭素とπ結合して成り、π結合電子がひきつけられることにより酸素が負に分極し、炭素が正に分極しているため、反応性が高くなる。また、圧縮性流体が二酸化炭素の場合、カルボニル骨格が二酸化炭素の構造と似ていることから、二酸化炭素と生成したポリマーとの親和性は高くなると推測される。これらの作用により、圧縮性流体による生成したポリマーの可塑化の効果は高くなる。
前記環状エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)で表される化合物のL体及び/又はD体、あるいはDL体を脱水縮合して得られる環状二量体が好適に用いられる。
前記環状カーボネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
本実施形態では、触媒が好適に用いられる。本実施形態で用いられる触媒は、目的に応じて適宜選択することができ、金属原子を含有する金属触媒であっても、金属原子を含有しない有機触媒であってもよい。
前記環状ジアミンとしては、例えば、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネンなどが挙げられる。
前記アミジン骨格を有する環状ジアミン化合物としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ジアザビシクロノネンなどが挙げられる。
前記グアニジン骨格を有する環状トリアミン化合物としては、例えば、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、ジフェニルグアニジン(DPG)などが挙げられる。
前記窒素原子を含有する複素環式芳香族有機化合物としては、例えば、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジン(PPY)、ピロコリン、イミダゾール、ピリミジン、プリンなどが挙げられる。
前記N−ヘテロサイクリックカルベンとしては、例えば、1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾール−2−イリデン(ITBU)などが挙げられる。
これらの中でも、立体障害による影響が少なく求核性が高い、あるいは、減圧除去可能な沸点を有するという理由により、DABCO、DBU、DPG、TBD、DMAP、PPY、ITBUが好ましい。
本実施形態のポリマーの製造方法では、必要に応じて、前記その他の成分として、開始剤、各種添加剤などを用いることができる。
本実施形態では、得られるポリマーの分子量を制御するために、開始剤が好適に用いられる。
前記開始剤としては、特に制限はなく、公知のものが使用でき、アルコール系であれば例えば、脂肪族アルコールのモノ、ジ、又は多価アルコールのいずれでもよく、また飽和、不飽和のいずれであっても構わない。
前記開始剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジアルコール;グリセロール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、エリスリトール、トリエタノールアミン等の多価アルコール;乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。
また、ポリカプロラクトンジオールやポリテトラメチレングリコールのような末端にアルコール残基を有するポリマーを開始剤に使用することもできる。これにより、ジブロック、又はトリブロック共重合体が合成される。
開環重合に際しては、必要に応じて添加剤を添加してもよい。前記添加剤としては、界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、防曇剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、無機粒子、各種フィラー、熱安定剤、難燃剤、結晶核剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑剤、天然物、離型剤、可塑剤、その他類似のものなどが挙げられる。
更に必要に応じて、重合反応後に重合停止剤(例えば、安息香酸、塩酸、燐酸、メタリン酸、酢酸、乳酸等)を用いることもできる。
前記添加剤の添加量は、添加する目的や添加剤の種類によって異なるが、ポリマー生成物100質量部に対して、5質量部以下が好ましい。
前記安定剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、カルボジイミドなどが挙げられる。
前記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、
ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
前記防曇剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノステアリルなどが挙げられる。
前記フィラーとしては、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、内部離型剤、結晶核剤としての効果を持つクレイ、タルク、シリカなどが挙げられる。
前記顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、群青などが挙げられる。
次に、図1及び図2を用いて本実施形態の製造方法で用いられる第一の圧縮性流体について説明する。図1は、温度と圧力に対する物質の状態を示す相図である。図2は、本実施形態において圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。本実施形態における「圧縮性流体」とは、物質が、図1で表される相図の中で、図2に示す(1)、(2)、(3)の何れかの領域に存在するときの流体を意味する。特に好ましくは、(1)の臨界点以上の温度及び圧力における流体である。
次に、ポリマー製造装置100を用いた開環重合性モノマーの重合工程について、図3A及び図3Bを参照して説明する。重合工程では、モノマーを含む原材料と第一の圧縮性流体とを連続的に接触させ、重合反応をさせる。本実施形態では、開環重合性モノマーと圧縮性流体とを連続的に供給し、接触させて、開環重合性モノマーを開環重合させてポリマーを連続的に得る。
各計量フィーダー(2,4)、計量ポンプ6、計量ポンプ8、及び計量ポンプ12を作動させる順序は、特に限定されないが、初期の原材料が第一の圧縮性流体に接触せずに接触部9に送られると、コールドスポットなどで融点以下になった場合に固化する恐れがあるため、先に計量ポンプ8を作動させることが好ましい。
なお、固体(粉末又は粒状)の原材料は、液体の原材料と比較して計量精度が低い場合がある。この場合、固体の原材料を前もって液体の状態にしてタンク5に貯蔵しておき、計量ポンプ6によって接触部9の管内に導入させてもよい。この時、原材料は、液化により送液ポンプ10で送液可能であるため、第一の圧縮性流体は、接触部13の導入口13aから供給してもよいが、導入口9aと導入口13aに分配して連続供給してもよい。
第二の圧縮性流体は、精製工程で未反応物を除去するために用いられる。第二の圧縮性流体として、第一の圧縮性流体と性質が同じものを用いることができる。第二の圧縮性流体は第一の圧縮性流体と異なっていてもいいし、同じであってもいい。
精製工程は、前記重合工程の後、連続的に第二の圧縮性流体を添加しながら、未反応物を除去する工程である。
重合したポリマーから未反応物を除去する際の温度(精製温度)の下限は、特に制限はないが、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。前記精製温度が、40℃未満であると、開環重合性モノマー種によっては、未反応物の圧縮性流体への溶解に長い時間がかかったり、溶融が不十分であったりする。これにより、未反応物の除去ができなかったり、安定的に排出ができなかったりする。精製温度の上限は、特に制限はなく、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。200℃を超えると、開環重合の逆反応である解重合反応も平衡して起こりやすく、未反応物を除去しても開重合による未反応物が生成される可能性がある。なお、重合反応温度は、精製部15に設けられた冷却装置と精製部15の外部からの加熱等により制御される。
本実施形態のポリマー生成物は、上記の製造方法により得られるポリマー生成物であって、残存開環重合性モノマー量が2モル%未満であり、数平均分子量が80,000以上であることが好ましい。
本実施形態のポリマーの製造方法によると、第二の圧縮性流体を用いて精製することで、上述の通り、未反応物を溶解して除去することが可能となるため、従来の溶融重合と比して、大幅にポリマー転化率を向上することができる。これにより、ポリマー転化率を、96モル%以上、好ましくは98モル%以上とすることができる。前記ポリマー転化率が96モル%に満たない場合、ポリマー生成物としての熱特性が不十分になり、別途開環重合性モノマーを除去する操作が必要になる場合がある。別途開環重合性モノマーを除去する操作を行った場合、ポリマーに熱をかけている時間を長くする必要があり、イエローインデックスが高くなったり、熱分解による分子量低下を引き起こす可能性がある。
モノマーのポリマー転化率(モル%)=100−未反応モノマー量(モル%)
ここで、前記ポリマーの分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)により測定することができる。
前記イエローインデックス(YI)値は、例えば、厚み2mmの樹脂ペレットを作製してJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定し求めることができる。
金属触媒由来の金属原子としては、スズ、アルミ、チタン、ジルコニウム、アンチモンなどが挙げられる。
残留有機溶媒の測定方法は、例えば以下のようにして行うことができる。
測定対象となるポリマー生成物1質量部に2−プロパノール2質量部を加え、超音波で30分間分散させた後、冷蔵庫(5℃)にて1日以上保存し、ポリマー生成物中の有機溶媒を抽出する。上澄み液をガスクロマトグラフィ(GC−14A、SHIMADZU社製)で分析し、ポリマー生成物中の有機溶媒及び残留モノマーを定量することにより有機溶媒濃度を測定する。かかる分析時の測定条件は、例えば以下の通りである。
・カラム :CBP20−M 50−0.25
・検出器 :FID
・注入量 :1μL〜5μL
・キャリアガス :He 2.5kg/cm2
・水素流量 :0.6kg/cm2
・空気流量 :0.5kg/cm2
・チャートスピード:5mm/min
・感度 :Range101×Atten20
・カラム温度 :40℃
・Injection Temp :150℃
本実施形態の製造方法により得られたポリマー生成物は、金属触媒及び有機溶剤を使用しない製法で製造され、残存モノマー量も少ないことから、安全性、安定性に優れている。従って、本実施形態の製造方法により得られたポリマー生成物は、電子写真の現像剤、印刷用インク、建築用塗料、化粧品、医療用材料などの各種用途に幅広く適用される。その際、成形性、二次加工性、分解性、引張強度、耐熱性、保存安定性、結晶性、耐候性等を向上させる目的で、各種添加剤を使用してもよい。
第一の実施形態の応用例としての第二の実施形態について説明する。第一の実施形態の製造方法では、未反応物である残存モノマーを除去できる。このことから、第二の実施形態では、第一の実施形態の製造方法で製造されたポリマー生成物を用い、数種類の開環重合性モノマーを加えるタイミングを適宜設定することにより、複合体を合成する。
なお、本実施形態において、複合体とは、モノマーを複数の系列に分けて重合して得られる2種以上のポリマーセグメントを有する共重合体又はモノマーを複数の系列に分けて重合して得られる2種以上のポリマーの混合物を意味する。
まず、図6を用いて説明する。図6は、複合体製造システム200を示す模式図である。ここでは、第一の実施形態の製造方法でそれぞれ製造された複数のポリマー生成物を圧縮性流体の存在下、連続的に混合させることによって、複合体生成物PPを製造する。複数のポリマー生成物は、互いに光学異性体の開環重合性モノマーをそれぞれ重合したものである。複合体製造システム200は、複数のポリマー製造装置100と混合装置31と圧力調整バルブ32とを有する。
攪拌装置としては、一軸のスクリュウ、互いに噛み合う二軸のスクリュウ、互いに噛み合う又は重なり合う多数の攪拌素子をもつ二軸の混合機、互いに噛み合う螺旋形の攪拌素子を有するニーダー、スタティックミキサーなどが好ましく用いられる。
GPC(Gel Permeation Chromatography)により以下の条件で測定した。
・装置:GPC−8020(東ソー社製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー社製)
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0mL/分
例えば、図3A及び図3Bで示したようなポリマー製造装置の連続運転を行った後に精製部を分解しスクリュウ、単管やギヤ部分にゲル化物などが付着しているかどうかを目視評価し、下記基準で評価した。なお、ポリマーの均質性が悪い場合、装置内にゲル状の付着物が発生し、連続運転ができなくなる。
◎:24時間以上連続運転を行ってゲル化物の付着がない
○:12時間以上24時間未満連続運転を行ってゲル化物の付着がない
×:12時間未満の連続運転を行ってゲル化物の付着がある
モノマーのポリマー転化率は、以下の式により求めた。
モノマーのポリマー転化率(モル%)=100−未反応モノマー量(モル%)
ポリカプロラクトンの場合、未反応モノマー量(モル%)は、重クロロホルム中、日本電子社製の核磁気共鳴装置JNM−AL300を使用し、ポリカプロラクトン由来の三重線ピーク面積比(4.04ppm〜4.08ppm)に対するカプロラクトン由来の三重線ピーク面積比(4.22ppm〜4.25ppm)として算出し、これを100倍して求めた。
ポリカーボネートの場合、未反応モノマー量(モル%)は、重クロロホルム中、日本電子社製の核磁気共鳴装置JNM−AL300を使用し、ポリカーボネート由来の四重線ピーク面積比(4.22ppm〜4.25ppm)に対するエチレンカーボネート由来の一重線ピーク面積比(4.54ppm)として算出し、これを100倍して求めた。
得られたポリマー組成物について、厚み2mmの樹脂ペレットを作製してJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定し、YI値を求め、下記基準で評価した。
◎:YI値が2.0以下
○:YI値が2.0より大きく、5.0以下
×:YI値が5.0より大きい
図3A及び図3Bに示すポリマー製造装置100を用いて、L−ラクチドの開環重合を行った。ポリマー製造装置の構成を示す。
・タンク1,計量フィーダー2:日本精密社製 プランジャーポンプNP−S462
タンク1には、開環重合性モノマーとして溶融状態のL−ラクチド(製造会社名:ピューラック社、融点:100℃)を充填した。
・タンク3,計量フィーダー4:日本分光社製 インテリジェントHPLCポンプ(PU−2080)
タンク3には、開始剤としてラウリルアルコールを充填した。
・タンク5,計量ポンプ6:実施例1では使用しなかった。
・タンク7:炭酸ガスボンベ
・タンク11,計量ポンプ12:日本分光社製 インテリジェントHPLCポンプ(PU−2080)
タンク11には、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、製造会社名:東京化成工業社)(有機触媒)を充填した。
・導入部9e:実施例1では使用しなかった。
・反応部14
・・装置A:混合機/タンク撹拌装置(駆動型撹拌装置)
タンク内径:100mm
タンク長さ:200mm
タンク温度:100℃
回転速度:30rpm
・・装置B:冷却装置/二重管式熱交換器
内径:14.3mm
ジャケット部内径:43.0mm
熱交換器長さ:150mm
装置Aと装置Bとは配管(第一の配管31aと第二の配管31b、θ=90°)で循環可能に接続されており、装置Aと装置Bと配管とで循環部14aを形成している(表1の装置C:循環あり)。
・・装置C〜E:実施例1では使用しなかった。
・タンク16:炭酸ガスボンベ
・精製部15
・・混合機/スタティックミキサー(ノリタケカンパニーリミテド社製)
内径:21.2mm
長さ:2000mm
・・精製部15と排出口18とをつなぐ配管
内径:8.5mm
実施例2〜12については、実施例1において、精製部15の未反応物除去条件をそれぞれ表2、表3に記載された条件に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例2〜12のポリマー生成物を得た。
・混合機/無
内径:21.2mm
長さ:2000mm
・混合機/駆動型撹拌
タンク内径:100mm
タンク長さ:200mm
回転速度:30rpm
・混合機/二軸撹拌:互いに噛み合うスクリュウ
シリンダー径:30mm
2軸同方向回転
回転速度:30rpm
装置の構成を下記のように変更(すなわち反応部14の構成を表1のNo.7に変更)し、精製部15の未反応物除去条件をそれぞれ表4に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例13〜15のポリマー生成物を得た。
・反応部14
・・装置A:混合機/スタティックミキサー(ノリタケカンパニーリミテド社製)
内径:21.2mm
長さ:2000mm
・・装置B:冷却装置/二重管式熱交換器
内径:14.3mm
ジャケット部内径:43.0mm
熱交換器長さ:150mm
・・装置C:反応機/広径チューブ型反応装置
内径:80.0mm
長さ:2000mm
・・装置D:送液装置/ギヤポンプ
送液速度:精製部の精製時間が所定値になるように設定
・・装置E:混合機/駆動型撹拌装置
内径:100.0mm
回転速度:30rpm
装置の構成を下記のように変更(すなわち反応部14の構成を表1のNo.10に変更)し、精製部15の未反応物除去条件をそれぞれ表4に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例16〜18のポリマー生成物を得た。
・反応部14
・・装置A:混合機/二軸撹拌機
二軸撹拌:互いに噛み合うスクリュウ
シリンダー径:30mm
2軸同方向回転
回転速度:30rpm
・・装置B:混合機/スタティックミキサー(ノリタケカンパニーリミテド社製)
内径:21.2mm
長さ:2000mm
・・装置C:冷却装置/二重管式熱交換器
内径:14.3mm
ジャケット部内径:43.0mm
熱交換器長さ:150mm
・・装置D:混合機/単軸押出機
回転速度:30rpm
・・装置E:無
装置の構成を下記のように変更し、精製部15の未反応物除去条件をそれぞれ表4に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例19〜21のポリマー生成物を得た。
・反応部14
・・装置A、B、C:無
ただし、A、B、Cは重合が開始したポリマーが循環するように配管を繋いでいる。
・・装置D、E:無
実施例1において、精製部15に第二の圧縮性流体を導入しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1のポリマー生成物を得た。
実施例1において、精製部15と排出口18とをつなぐ配管の内径を32.9mmとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、参考例1のポリマー生成物を得た。
実施例1において、精製部15において、第二の圧縮性流体の導入口を上部に設置し、第二の圧縮性流体の排出口19を下部に設置したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い比較例2のポリマー生成物を得た。
比較例1、比較例2、参考例1で得られたポリマー生成物について、実施例1と同様にして、物性値(Mn、Mw/Mn、ポリマー転化率)を求め、連続生産性及びイエローインデックスを評価した。結果を表5に示す。
図6に示す複合体製造システム200を用いて、複合体を製造した。以下、複合体製造システム200における複数のポリマー製造装置100の一方を系列1のポリマー製造装置100と言い、他方を系列2のポリマー製造装置100と言う。
複合体製造システム200の構成を示す。
・混合装置31:互いに噛み合うスクリュウを取付けた二軸攪拌装置
シリンダー内径:40mm
二軸同方向回転
回転速度:30rpm
得られた複合体生成物について、実施例1と同様にして、物性値(Mn、Mw/Mn、ポリマー転化率)を求め、連続生産性及びイエローインデックスを評価した。結果を表6に示す。
実施例22において、モノマー種及びモノマー流量比を表6に記載された条件に変更した以外は、実施例22と同様の操作を行うことにより、複合体を得た。得られた複合体について、実施例1と同様にして、物性値(Mn、Mw/Mn、ポリマー転化率)を求め、連続生産性及びイエローインデックスを評価した。結果を表6に示す。
2 計量フィーダー(第一の供給部の一例)
4 計量フィーダー
6、12 計量ポンプ
8 計量ポンプ(第二の供給部の一例)
9 接触部(接触容器の一例)
9a 導入口(第一の圧縮性流体の導入口の一例)
9b 導入口(モノマーの導入口の一例)
9c 導入口
9d 導入口
9e 導入口
9f ヒータ
10 送液ポンプ
13 接触部(接触容器の一例)
13a 導入口(圧縮性流体の導入口の一例)
13b 導入口
13c 導入口
14 反応部(反応装置の一例)
14a 循環部(反応装置の一例)
14b 押出部(反応装置の一例)
15 精製部
17 計量ポンプ
18 ポリマーの排出口(圧力調整弁)
19 第二の圧縮性流体の排出口(圧力調整弁)
20 押出口金(排出部の一例)
20a 戻し口
20b 導入口
21 排出口
22 循環ポンプ
31 混合部
31a 配管a
31b 配管b
32 ポリマーの排出口(圧力調整弁)
100 ポリマー製造装置
100a 供給ユニット
100b ポリマー製造装置本
131 配管
131a 継手
131b 排出口
131c 排出口
200 複合体製造システム
P ポリマー生成物(反応生成物)
PP 複合体生成物
A、B、C、D、E 反応部を構成する装置
Claims (9)
- モノマーを含む原材料を供給する第一の供給部、第一の圧縮性流体を供給する第二の供給部を含む供給部と、
前記モノマーと前記第一の圧縮性流体とを接触させる接触部と、
前記第一の圧縮性流体の存在下、前記モノマーを重合反応させる反応部と、
前記モノマーの反応生成物を排出する排出口と、
前記反応部と前記排出口との間に、前記モノマーの反応生成物の未反応物を除去する精製部とを有し、
前記精製部の下方から第二の圧縮性流体を添加することを特徴とするポリマー製造装置。 - 前記精製部の側面に、前記排出口へとつながる配管を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー製造装置。
- 前記精製部の上部に、前記第二の圧縮性流体を排出する圧縮性流体排出口を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー製造装置。
- 前記第二の圧縮性流体を添加する第三の供給部を有し、
前記精製部と前記第三の供給部が配管でつながれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー製造装置。 - 前記精製部は円筒状であり、
前記精製部の内径が、前記排出口へとつながる配管の内径より大きいことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のポリマー製造装置。 - 前記精製部が、前記モノマーの反応物と前記第二の圧縮性流体を混合する混合機を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー製造装置。
- 前記精製部を流れる流体を冷却する冷却装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー製造装置。
- 前記精製部を2つ以上有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリマー製造装置。
- モノマーを含む原材料と第一の圧縮性流体とを連続的に接触させ、重合反応をさせる重合工程と、
前記重合工程の後、連続的に第二の圧縮性流体を添加しながら、未反応物を除去する精製工程とを有することを特徴とするポリマーの製造方法。
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