JP2016047848A - がん幹細胞マーカーおよびその使用 - Google Patents

がん幹細胞マーカーおよびその使用 Download PDF

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Abstract

【課題】がん幹細胞マーカーおよびその使用の提供。【解決手段】本発明は特に、がん幹細胞および関係のある疾患の処置のための腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する剤の使用に基づく治療方法に関係する。腫瘍関連炭水化物抗原をがん幹細胞のマーカーとして使用する診断および予後判定の方法も提供される。本発明の第1の態様により、腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞の処置で使用するための上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤が提供される。上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞の処置で使用するためのそれぞれの結合剤を含む、薬学的組成物も提供される。【選択図】なし

Description

本発明は特に、がん幹細胞および関係のある疾患の処置のための腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する剤(agent)の使用に基づく治療方法に関係する。腫瘍関連炭水化物抗原をがん幹細胞のマーカーとして使用する診断および予後判定の方法も提供される。
発明の背景
腫瘍は、蓄積された変異を通じて無限増殖能を獲得した腫瘍原性がん細胞によって開始される、異常臓器と見なすことができる。このように腫瘍を異常臓器と見なすと、正常幹細胞の生物学の原理を適用して腫瘍が発生および播種する方法をより良好に理解することができる。多くの観察が、正常幹細胞と腫瘍原性細胞との間の類似性が適切であることを示唆している。正常幹細胞および腫瘍原性細胞のどちらも、広範な増殖ポテンシャルおよび新しい(正常または異常な)組織を生じさせる能力を有する。腫瘍原性細胞は、正常幹細胞が経験する臓器形成プロセスに類似した、異常なおよび制御が不十分な臓器形成プロセスを経験する、がん幹細胞(CSC)またはがん開始細胞(CIC−用語CSCおよびCICは本明細書で同義語として使用される)と考えることができる。腫瘍および正常組織はどちらも、異なる表現型の特徴および異なる増殖ポテンシャルを持つ細胞の不均質の組合せで構成されている。
がん幹細胞は、腫瘍性クローンを開始および維持する、幹細胞様特性を持つ腫瘍細胞のある部分であると考えられている。これらの細胞は、自己再生する能力を有するが、表現型が多様ながん細胞を生じるが、より低い腫瘍原性ポテンシャルを持つ前駆体も生じさせる。幹細胞様細胞のこの亜集団は、がん幹細胞ではない腫瘍細胞と比較して、腫瘍形成および転移性腫瘍拡散に効果がある細胞である。
がん幹細胞(CSC)は、白血病、神経膠芽腫、髄芽腫、およびほぼすべての種類の上皮腫瘍(癌腫)を含む多種多様のがんで今や同定されている。
がん幹細胞(CSC)が通常、がん個体発生の必要条件であるという理論は、今は広く受け入れられている。がん幹細胞は低い増殖速度、高い自己再生能、活発に増殖する腫瘍細胞に分化する性向を呈し、化学療法または放射線に耐性を示す(たとえばVan der Griendら、2008を参照)。
がん幹細胞は、原発性腫瘍内の別個の表面マーカーパターンの調査に基づいて特徴付けることができる。これまでにますます多く提案されているCSCマーカーのうち、2つ:CD44およびCD133が最も突出して受け入れられていて、また異なる腫瘍タイプのCSCのうちで広く分布している。CD44は、がん幹細胞の頑強なマーカーとして報告された(Chuら、2009;Takaishiら、2009)。結腸直腸腫瘍からの単一のCD44細胞は、インビトロで球を形成することが可能であり、原発性腫瘍の特性に似た異種移植腫瘍を生成することができた(Duら、2008)。CD133もがん幹細胞のマーカーである。CD133は、ヒト造血幹細胞に特異的な表面抗原として、ならびにマウス神経上皮および複数の他の胚上皮のマーカーとして最初に記載された(Singhら、2004)。いくつかの最近の研究において、単独のまたは他のマーカーと組合せたCD133が結腸、肺および肝臓の悪性腫瘍からのがん幹細胞の単離に使用された(Haraguchiら、2008)。CD133腫瘍細胞は、放射線誘起DNA損傷をCD133腫瘍細胞よりも効果的に修復する(Baoら、2006)。
がん幹細胞の存在はがん療法に深い意味を有する。既存の療法が主として腫瘍細胞のバルク集団に対して開発されてきたのは、その療法が腫瘍塊を収縮させるその能力によって同定されるためである。しかしがん幹細胞は化学療法に耐性であることが多く、化学療法の失敗をもたらし得る(Sellら、2008)。がん開始細胞(本明細書ではがん幹細胞とも呼ばれる)を(も)標的とする新規治療剤を設計するためには、好ましくは良性腫瘍および/または正常な非腫瘍細胞に存在しない、ならびに同時にがん幹細胞に対して特異的に向けられたがん幹細胞の分子標的(molecular target)を探求することが所望される。このような剤は、腫瘍の、ならびにとりわけ転移性腫瘍のより永続的な応答および治癒を生じることが予想される。ゆえに、療法を改善するための新規治療標的を提供する新たながん幹細胞マーカーが求められている。公知の幹細胞マーカーの大半はタンパク質である。この多くは、正常幹細胞マーカーであることも見出され、そのため非腫瘍幹細胞で発現される。これによりこれらは治療標的としては好適ではないか、または少なくともあまり好適ではない。現在、正常幹細胞マーカーとがん幹細胞マーカーとの明確な区別はない。
そのためさらなる好適ながん幹細胞マーカーを同定できること、ならびにこれらのマーカーを診断および予後判定の方法に、ならびに/またはがん幹細胞を標的とする療法の開発に使用できることが大いに所望される。
本発明は、腫瘍関連炭水化物抗原が好適ながん幹細胞マーカーであるという発見に基づく。これまで記載されたほとんどすべてのがん幹細胞マーカーがタンパク質であるので、腫瘍関連炭水化物抗原、たとえばCD176、CD174およびCD173などががん幹細胞で発現されることが見出されたのは非常に驚きであった。そのためこれらの腫瘍関連炭水化物抗原は、がん幹細胞に好適なマーカーであり、そのほかにがん幹細胞を攻撃する療法に好適な治療標的を提供する。
本発明の第1の態様により、腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞の処置で使用するための上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤が提供される。上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞の処置で使用するためのそれぞれの結合剤を含む、薬学的組成物も提供される。
第2の態様により、腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤による処置(ここで、上記処置はがん幹細胞に影響を与える)に感受性であるがん幹細胞を含む、がんを同定するための方法であって、上記方法は、患者から取得したがん検体が、結合剤が特異的である上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞を含むかどうかを決定する工程を含み、ここで、がん幹細胞における上記腫瘍関連炭水化物抗原の存在は、上記がんが、上記腫瘍関連炭水化物抗原に特異的に結合する上記結合剤による処置にがんが感受性であることを示し、かつ、ここで、上記処置はがん幹細胞に影響を与える、方法が提供される。
第3の態様により、患者から単離された検体中の細胞における腫瘍関連炭水化物抗原の発現を分析する工程を含む、がんを診断、病期分類および/もしくは予後を判定するならびに/または処置に対する感受性を監視するための方法であって、ここで、上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現する細胞の存在は、上記検体中のがん幹細胞の存在を示す、方法が提供される。
第4の態様により、哺乳動物がん幹細胞の組成物が提供され、ここで、上記組成物中の上記細胞の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%が、腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞である。関係のある態様により、腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞の選択的富化を含む、がん幹細胞を単離するための方法が提供される。
第5の態様により、本発明による方法で使用するための、腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤および説明書を含む、本発明による方法で使用するためのキットが提供される。
第6の態様により、腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞に対する有効性について、候補治療剤、たとえば化学療法剤または別の抗がん薬をスクリーニングするための方法が提供され、上記方法は:
a.上記剤を本発明による細胞組成物と接触させる工程、および
b.上記腫瘍関連炭水化物抗原陽性がん細胞に対する上記剤の有効性を決定する工程、を含む。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞の処置で使用するための、該腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤。
(項目2)
項目1に記載の結合剤であって、ここで、前記腫瘍関連炭水化物抗原がCD176、CD175、CD175s、CD174、CD173、およびCA19−9から成る群より選択される結合剤。
(項目3)
項目1または2に記載の結合剤であって、ここで、前記がん幹細胞が1個以上の以下の特徴:
a)該がん幹細胞が前記腫瘍関連炭水化物抗原を担持する糖タンパク質である、少なくとも1つの幹細胞マーカーを発現すること;
b)該がん幹細胞がCD34、CD44、CD44v6、CD133およびCD164から成る群より選択される1個以上の幹細胞マーカーを発現すること;
c)該腫瘍関連炭水化物抗原が該がん幹細胞によって発現された腫瘍関連糖タンパク質に担持されていること;
d)該腫瘍関連炭水化物抗原が腫瘍特異的であること;および/または
e)該腫瘍関連炭水化物抗原ががん幹細胞で主としてまたは独占的に発現されるが、がん幹細胞ではないがん細胞では発現されないこと;
を有する結合剤。
(項目4)
項目1から3のいずれか一項に記載の結合剤であって、ここで、前記がん幹細胞が1つ以上の以下の特徴:
a)がんが固形腫瘍であること;
b)がんが白血病であること;
c)がんが多発性骨髄腫もしくはリンパ腫であること;
d)がんが上皮起源の腫瘍であること;ならびに/または
e)がんが肺がん、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、消化器がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮頸がんおよび頭頸部がんから成る群より選択される腫瘍であること;
を有する該がんのがん幹細胞である結合剤。
(項目5)
項目1から4のいずれか一項に記載の結合剤であって、ここで、該結合剤が1つ以上の以下の特徴:
a)該結合剤が抗体または抗体の抗原結合フラグメントもしくは誘導体であること;
b)該結合剤がヒト抗体、マウス抗体、ヒト化抗体、もしくはキメラ抗体またはそれぞれの抗原結合フラグメントもしくは誘導体であること;
c)該結合剤が単鎖抗体フラグメント、マルチボディ、Fabフラグメント、および/またはIgG、IgM、IgA、IgE、IgDアイソタイプの免疫グロブリンおよび/もしくはそのサブクラスであること;
d)該結合剤が抗体または抗体の抗原結合フラグメントもしくは誘導体であって、1つ以上の以下の特徴:
i.それががん細胞のADCCおよび/もしくはCDCを媒介すること;
ii.それががん細胞のアポトーシスを誘起および/もしくは促進すること;
iii.それががん細胞の標的細胞の増殖を抑制すること;
iv.それががん細胞の食作用を誘起および/もしくは促進すること;ならびに/または
v.それが細胞傷害剤の放出を誘起および/または促進する;
を有すること;
e)該結合剤が、腫瘍特異的炭水化物抗原である前記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合すること;
f)該結合剤が非がん細胞、非腫瘍細胞、良性がん細胞および/もしくは良性腫瘍細胞で発現される抗原、特に炭水化物抗原を結合しないこと;ならびに/または
g)該結合剤が、がん幹細胞および正常がん細胞で発現される腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合すること;
を有する結合剤。
(項目6)
項目5に記載の結合剤であって、ここで、前記抗体または前記抗体の機能的に活性な前記フラグメントもしくは誘導体が:
a)CD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体であって、好ましくは少なくとも1つの以下の特徴:
i)それが、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2または3のアミノ酸配列を有するCDRH2、および配列番号4または5または6のアミノ酸配列を有するCDRH3から成る群より選択される、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、好ましくは少なくとも2つのCDR、さらに好ましくは3つすべてのCDRを含むこと;
ii)それが、配列番号7または8または9のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号10または11のアミノ酸配列を有するCDRL2、および配列番号12または13のアミノ酸配列を有するCDRL3から成る群より選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、好ましくは少なくとも2つのCDR、さらに好ましくは3つすべてのCDRを含むこと;
iii)それが、配列番号46から79のうちの任意の1つのアミノ酸配列を含有する重鎖可変領域を含むこと;
iv)それが、配列番号80から94のうちの任意の1つのアミノ酸配列を含有する軽鎖可変領域を含むこと;
v)それが、生理学的条件下でGalα1−3GalNAcα、Galα1−3GalNAcβ、GalNAcα、Neu5Acα2−3Galβ1−3GalNAcα、Galβ1−3(Neu5Acα2−6)GalNAcα、GlcNAcβ1−2Galβ1−3GalNAcα、GlcNAcα1−3Galβ1−3GalNAcα、GalNAcα1−3Galβおよび/または3’−O−Su−Galβ1−3GalNAcαと特異的に相互作用しないこと;
を有する、CD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体;
b)(a)で定義された通りの抗体との交差特異性を示す、抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体;
c)CD173特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体;
d)CD174特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体;
e)CD175特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体;
f)CD175s特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体;および/または
g)CA19−9特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体
から成る群より選択される結合剤。
(項目7)
腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞の処置で使用するための、該腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤を含む薬学的組成物であって、ここで、該結合剤、該がん幹細胞および該腫瘍関連炭水化物抗原が項目1から6のいずれか一項で定義された通りの特徴の1つ以上を有する薬学的組成物。
(項目8)
項目1から6のいずれか一項に記載の結合剤または項目7に記載の薬学的組成物であって、腫瘍サイズの低減、悪性細胞の排除、転移の防止、再発の防止、播種性がんの低減または死滅、生存の延長および/または腫瘍それぞれがん進行までの時間の延長のための療法で使用するための、結合剤または薬学的組成物。
(項目9)
がん幹細胞に影響を与える処置であって、腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤による処置、に感受性である該がん幹細胞を含むがんを同定する方法であって、該結合剤が特異的である該腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞を、患者から取得したがん検体が含むかどうかを決定する工程であって、ここで、がん幹細胞での該腫瘍関連炭水化物抗原の存在が、該腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する該結合剤による処置に該がんが感受性であることを示し、該処置が該がん幹細胞に影響を与える工程を含む方法。(項目10)
がんを診断、病期分類および/もしくは予後を判定するならびに/または処置に対する感受性を監視するための方法であって、患者から単離された検体中の細胞での腫瘍関連炭水化物抗原の発現を分析する工程であって、ここで、該腫瘍関連炭水化物抗原を発現する細胞の存在が、該検体中のがん幹細胞の存在を示す工程を含む方法。
(項目11)
項目9または10に記載の方法であって、ここで、前記患者からの前記検体が前記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤によって染色される方法。
(項目12)
項目9から11のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、前記腫瘍関連炭水化物抗原がCD176、CD175、CD175s、CD174、CD173、およびCA19−9から成る群より選択される方法。
(項目13)
項目9から12のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、少なくとも1つの第2のがん幹細胞マーカーを同時発現する細胞の存在が、がん幹細胞の存在を示す方法。
(項目14)
項目9から13のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、CD34、CD44、CD44v6、CD133およびCD164から成る群より選択される、少なくとも1つの追加の糖タンパク質がん幹細胞マーカーの同時発現が試験される方法。
(項目15)
項目9から14のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、染色パターンの分析ががん幹細胞の相対分布を提供し、該分布によりがんの腫瘍原性(tumorgenicity)を予測する、方法。
(項目16)
哺乳動物がん幹細胞の組成物であって、ここで、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%の該組成物中の該細胞が、腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞である組成物。
(項目17)
項目9から15のいずれか一項に記載の方法で使用するためのキットであって、項目9から15の1つ以上に記載の方法で使用するための、腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤および指示を含むキット。
(項目18)
腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞に対する有効性について候補治療剤をスクリーニングする方法であって、該方法は、
a)該剤を項目16に記載の細胞組成物と接触させる工程、および
b)該腫瘍関連炭水化物抗原陽性がん細胞に対する該剤の有効性を決定する工程、
を含む方法。
本発明の他の目的、特徴、利点および態様は、以下の記載および添付の特許請求の範囲から当業者に明らかになる。しかし本出願の好ましい実施形態を示す以下の記載、添付の特許請求の範囲、および特定の実施例は、例証のためのみに与えられていることを理解すべきである。開示した発明の精神および範囲の中での各種の変更および修正は、以下を読めば当業者に容易に明らかになる。
定義
本明細書で使用する場合、以下の表現は概して、これらが使用される文脈が別途示す範囲を除いて、好ましくは以下で述べる意味を有することを意図する。
「結合剤」は、標的物質、例として腫瘍関連炭水化物抗原を結合することが可能な任意の化合物または化合物の複合体であり得る。好ましくは、上記結合剤は上記標的物質を特異的に結合することが可能である。好適な結合剤は、上記標的物質に結合する結合剤を同定/取得するために結合剤ライブラリをスクリーニングすることによって取得され得る。それぞれの結合剤ライブラリの例は、たとえば上記結合剤をディスプレイするファージまたはファージミドライブラリである。たとえば抗体をインビボで取得するための方法は、HudsonおよびSouriauによっても記載されている(Hudson,P.J.and Souriau,C.(2003)“Engineered antibodies”Nat.Med.9,129−134)。
上記結合剤は、これらが標的物質、ここでは腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に認識および結合できる限り、任意の構造を有し得る。結合剤は、抗体、その抗原結合フラグメントもしくは誘導体または結合機能を提供するタンパク質骨格(scaffold)を有する結合剤、たとえばアンチカリンもしくはレクチンなどから成る群より選択され得る。結合剤は、結合機能を提供するペプチドまたは融合タンパク質でもあり得る。抗体と同様の結合機能を有する結合剤の概要は、Heyらにおいて与えられている(Heyら(2005)“Artificial,non−antibody binding proteins for pharmaceutical and industrial application”,Trends in Biotechnology 23(10),514−522)。抗体誘導体は、たとえば改変アミノ酸配列を除いて同じ結合機能を有する、抗体または抗体フラグメントも含む。
「抗体」という用語は詳細には、ジスルフィド結合によって結合した少なくとも2個の重鎖および2個の軽鎖を含むタンパク質を指す。「抗体」という用語は、天然に存在する抗体ならびに抗体のすべての組換え形態、たとえば原核生物中で発現された抗体、非グリコシル化抗体、ヒト化抗体、およびキメラ抗体を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(V)および重鎖定常領域(C)で構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(V)および軽鎖定常領域(C)で構成されている。上記重鎖定常領域は、3個またはIgMもしくはIgE型の抗体の場合には4個の重鎖定常ドメイン(C1、C2、C3およびC4)を含み、ここで、第1の定常ドメインC1は可変領域に隣接して、ヒンジ領域によって第2の定常ドメインC2に結合され得る。上記軽鎖定常領域は、1個の定常ドメインのみより成る。上記可変領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が散在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超変異性の領域にさらに細分することができ、ここで、各可変領域は3個のCDRおよび4個のFRを含む。上記重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の各種の細胞(たとえばエフェクタ細胞)および古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。IgAおよびIgM分子は通常、J鎖と共に存在するが、これに由来する、たとえばJ鎖を持たない分子も明確に含まれる。そのほかに、本発明による「抗体」という用語は、単鎖抗体ならびに重鎖抗体、すなわち1個以上の、特に2個の重鎖のみから構成される抗体、ならびにナノボディ、すなわち単一のモノマー可変ドメインのみから構成される抗体も含む。
抗体の「抗原結合フラグメントまたは誘導体」は特に、抗原を結合することが可能な、たとえば、参照抗体として同じエピトープに結合することが可能な、タンパク質または糖タンパク質である。そのため抗体の抗原結合フラグメントまたは誘導体は本明細書で概して、機能性抗原結合フラグメントを指す。好ましくは、抗原結合フラグメントは、抗体全体から少なくとも20アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも100アミノ酸を含み、好ましくは抗体の結合領域を含む。特に好ましい実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは重鎖可変領域を含む。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントによって実施し得ることが示されてきた。抗体のフラグメントの例は(i)Fabフラグメント、すなわち各重鎖および軽鎖の可変領域および第1の定常ドメインから成る1価フラグメント;(ii)F(ab)フラグメント、すなわちヒンジ領域にてたとえばジスルフィドブリッジによって共に連結された2個のFabフラグメントを含む2価フラグメント;(iii)重鎖の可変領域および第1の定常ドメインC1から成るFdフラグメント;(iv)抗体のシングルアームの重鎖および軽鎖可変領域から成るFvフラグメント;(v)scFvフラグメント、すなわち単一ポリペプチド鎖から成るFvフラグメント;(vi)共有結合的に共に連結された2個のFvフラグメントから成る、(Fv)フラグメント;(vii)重鎖可変ドメイン;ならびに(viii)重鎖および軽鎖可変領域の会合が分子内ではなく分子間のみで生じ得るような様式で共有結合的に連結された重鎖可変領域および軽鎖可変領域から成る、マルチボディを含む。「抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体」という用語は、単一ドメイン抗体も包含する。異なるグリカン側鎖を持つ抗体または抗体フラグメントも、本定義によって理解される。これらの抗体フラグメントまたは誘導体は、当業者に公知の従来の技法を使用して取得することができる。
「特異的結合」は好ましくは、結合剤、例として抗体または抗原結合フラグメントもしくは誘導体が別の標的への結合と比較して特異的である標的、例としてエピトープにより強く結合することを意味する。剤は、第2の標的に対する解離定数(K)より低い解離定数を持つ第1の標的に結合する場合、第2の標的と比較して第1の標的により強く結合する。好ましくは、上記剤が特異的に結合する標的に対する解離定数は、その剤が特異的に結合しない標的に対する解離定数よりも2倍を超えて、好ましくは5倍を超えて、さらに好ましくは10倍を超えて、なおさらに好ましくは20倍、50倍、100倍、200倍、500倍または1000倍を超えて低い。好ましくは、特異的結合は10μM以下の、さらに好ましくは3μM以下の、1μM以下の、700nM以下の、500nM以下の、300nM以下の、200nM以下の、好ましくは100nM以下の、70nM以下の、50nM以下の、30nM以下の、20nM以下の、および最も好ましくは10nM以下の、5nM以下の、2nM以下のまたは1nM以下の解離定数を持つ結合を指す。上記解離定数は、好ましくは標準条件下で、特に生理学的条件下で測定される。標的化合物(例としてCD176)に特異的に結合する結合剤が上記標的化合物に結合するための特定の方法で使用される場合、結合条件は好ましくは、上記結合剤の他の化合物、特に同様の化合物(例として他の炭水化物抗原)への結合が上記方法で検出できないように、または上記標的への結合の検出および/または決定を妨害しないように選ばれる。標的構造、例として本発明による腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤は、上記標的構造が特異的に認識される限り、上記結合剤が上記標的構造以外の他の構造にも結合する実施形態も含む。たとえば「腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤」という用語は、腫瘍関連炭水化物抗原を結合し、そしてまた、上記腫瘍関連炭水化物抗原が付着する他の構造、特にキャリア分子にも結合する結合剤を含む。好ましくは他の構造、特に上記腫瘍関連炭水化物抗原のキャリア分子は、上記腫瘍関連炭水化物抗原の非存在下では上記結合剤によって結合されず、または特異的標的と比較して非特異的な結合に関して上で定義した通りである、はるかに高い解離定数によってのみ結合される。
本明細書で使用する場合、「タンパク質」という用語は、特にアミノ酸の分子鎖または1を超えるアミノ酸鎖の複合体を指す。タンパク質は、天然に存在するアミノ酸ならびに人工アミノ酸のいずれも含むことができ、生物起源または合成起源であることができる。タンパク質は、たとえばグリコシル化、アミド化、カルボキシル化および/またはリン酸化によって、自然に(翻訳後修飾)または合成により改変され得る。タンパク質は少なくとも2個のアミノ酸を含むが、いずれかの特定の長さである必要はない;本用語は、任意のサイズ制限を含まない。本出願において、「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は互換的に使用される。好ましくは、タンパク質は少なくとも10アミノ酸、好ましくは少なくとも50アミノ酸、少なくとも100アミノ酸を含み、最も好ましくは少なくとも100アミノ酸である。
「患者」という用語は特に、本発明により、ヒト、非ヒト霊長類または別の動物、特に哺乳動物、例としてウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはげっ歯動物、例としてマウスもしくはラットを意味する。特に好ましい実施形態において、患者はヒトである。
本発明による「がん」という用語は特に、これに限定されるわけではないが、白血病、精上皮腫、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、副腎がん、甲状腺がん、皮膚がん、脳のがん、子宮頸がん、腸(intestinal)がん、肝臓がん、結腸がん、胃がん、腸(intestine)がん、頭頸部がん、消化管がん、リンパ節がん、食道がん、結腸直腸がん、膵臓がん、耳鼻および咽喉(ENT)がん、乳がん、前立腺がん、子宮のがん、卵巣がんおよび肺がんならびにこれの転移したものを指す。がんは本明細書で使用する場合、過剰増殖状態を指す。上記用語は、悪性ならびに非悪性細胞集団を表すが、好ましくは悪性細胞を指し、それぞれ細胞集団を表すものである。このような障害は、形態学的におよび遺伝子型的に周囲組織と異なるように見えることが多い、1つ以上の細胞のサブセットの過剰な細胞増殖を有する。過剰細胞増殖は、一般集団の参照により、および/または特定の患者の、たとえばこの患者の生涯のより早い時点での参照により決定することができる。過剰増殖細胞障害は、異なる種類の動物およびヒトで発生し得、影響を受けた細胞に応じて異なる身体的徴候を生じる。
「腫瘍」とは特に、誤制御された細胞増殖によって形成される細胞または組織の群を意味する。腫瘍は、正常組織との、構造的構成(organization)および機能調整の部分的または完全な欠如を示し得て、通例、良性または悪性のどちらかであり得る別個の組織塊を形成し得る。特に、腫瘍という用語は悪性腫瘍を指す。1実施形態により、「腫瘍細胞」という用語は、非固形がんの細胞、例として白血病細胞も包含する。別の実施形態により、非固形がんのそれぞれの細胞は、「腫瘍細胞」という用語に包含されない。
「転移」とは特に、がん細胞の、最初の部位から体の別の部分へのがん細胞の拡散を意味する。転移の形成は非常に複雑なプロセスであり、通常、原発性腫瘍からのがん細胞の離脱、体循環への進入、および、体内の他の場所の正常組織内で定着して増殖することを伴う。腫瘍細胞が転移するとき、その新たな腫瘍は2次腫瘍または転移性腫瘍と呼ばれ、この細胞は通常、最初の腫瘍中の細胞と似ている。このことは、たとえば乳がんが肺に転移する場合、その2次腫瘍は異常な肺細胞からではなく、異常な乳房細胞からつくられることを意味する。上記肺の腫瘍は次に、肺がんではなく、転移性乳がんと呼ばれる。
本発明により、がんの「病期分類」は、好ましくはがんの進行および程度の分類を指す。好ましいがん病期分類システムは、悪性腫瘍のTNM分類であり、ここで、Tは上記腫瘍のサイズおよび付近の組織を浸潤したかどうかを記載し、Nは関与している領域リンパ節について記載し、Mは遠隔転移について記載する。これらの各パラメータは患者の状況に応じて特定の値を与えられ、ここで、一般により大きい数はより重篤な状況を示す(T(0−4)、N(0−3)、M(0/1))。加えて、より綿密な分類のために、さらなるパラメータを決定することができ、そして/または接頭辞を使用することができる。そのほかに、上記TNM分類は、段階0から段階IVまでのがんに言及する、UICCによるがん病期分類システムに要約され得る。
本発明により、「検体」は特に、これに限定されるわけではないが、組織検体、体液および/または細胞検体を指し、従来の様式によって、例としてパンチ生検を含む組織生検によって、またはがん細胞を含有するまたは含有することが疑われる血液、気管支吸引物、痰、尿、糞または他の体液もしくは組織切片、スライドなどを採取することによって取得され得る。本発明により、「検体」という用語は、それぞれの検体の部分(fraction)または構成要素も含む。
「細胞増殖」または「増殖すること」という用語は、本明細書で使用する場合、特に細胞分裂による細胞の増幅を指す。
「がん幹細胞」という用語は、特に、これに限定されるわけではないが、インビトロでの好適な条件下で未分化細胞の凝集体、いわゆる腫瘍球を生成することが可能な細胞に関係する。球を形成する細胞は自己再生することが可能である;この細胞が解離して同じ条件下で成長すると、これが再度球を形成する。がん幹細胞はインビボでは、転移および幹細胞マーカー、例としてたとえばCD44の発現を形成するこれらのポテンシャルを特徴とする。これらは薬物耐性も提供し得る。「がん幹細胞」および「がん開始細胞」という用語は、本明細書で同義語として使用される。
「腫瘍関連炭水化物抗原」という用語は、特にがん細胞および/または腫瘍細胞で、特に悪性がん細胞および/または悪性腫瘍細胞で発現される炭水化物抗原を指す。
「腫瘍特異的炭水化物抗原」という用語は、特に、がん細胞および/または腫瘍細胞で主としてまたはなお独占的に発現され、そしてそれゆえ、非がん細胞、非腫瘍細胞では発現されない、またはごく低い程度しか発現されない炭水化物抗原を指す。好ましくは、「腫瘍特異的炭水化物抗原」という用語は、悪性がん細胞および/または悪性腫瘍細胞で主としてまたは好ましくは独占的に発現され、そしてそれゆえ、非がん細胞、非腫瘍細胞、良性がん細胞および/もしくは良性腫瘍細胞ならびに/または同じ患者の健常組織では発現されないまたはごく低い程度しか発現されない炭水化物抗原を指す。優先的に、上記腫瘍特異的炭水化物抗原は大半の正常細胞では発現されず、なおさらに好ましくは(more preferred)数少ない正常細胞または細胞種でのみ発現され、なおさらに好ましくは(more preferred)これらの正常細胞での発現は、たとえば厳密に頂端側のまたは密着結合の間における(e.g. strictly apical or in between the tight junctions)特有の局在を有するので、全身投与およびとりわけ静脈内投与された結合分子は、これらの正常細胞の抗原に到達できないか、またはほとんど到達せず、なおさらに好ましくは(more preferred)、それは正常上皮細胞で発現されず、最も好ましくは(most preferred)、それは正常細胞で発現されない。ある実施形態において、上記腫瘍特異的炭水化物抗原は、発現されたときに、キャリア分子に付着し得る。このようなキャリア分子は、特にタンパク質、ペプチドまたは炭水化物であり得る。
「CD176」は、腫瘍関連トムゼン−フリーデンライヒ抗原(TF)を指す。TFは、タンパク質または糖脂質に結合することができる2つの形、TFαおよびTFβで存在する。Core−1は、特に腫瘍細胞中のヒドロキシアミノ酸であるセリンもしくはトレオニンまたはタンパク質にアルファ−アノマー配置でO−グリコシド結合している2糖のGalβ1−3GalNAcである。Core−1はTFα構造に相当する。この2糖は正常細胞の多くの膜糖タンパク質にて潜在性様式で見出される遍在性コア構造であるが、これの露出およびそれゆえ腫瘍細胞でのこの抗原のデノボ発生は、2、3の特異的キャリアタンパク質に限定されている。CD176は各種のがん細胞、例として乳房癌腫(Imaiら、2001;Goletzら、2003)、結腸直腸癌腫(Caoら、1995)、肝細胞癌腫(Caoら、1999)、複数の白血病(Caoら、2008)および他の種類のがんの表面で発現されることが実証されてきた。がん細胞表面のCD176は、機能性分子実体として、上記細胞の浸潤特性および転移特性に関与する(Caoら、1995)。以下では、CD176という用語は、好ましくは腫瘍特異的Core−1構造Galβ1−3GalNAcα1−O−を指す。
「CD175」は、構造GalNAcα1−O−を持つ腫瘍関連炭水化物抗原であるTn抗原を指す。これは大半の上皮がんで高いパーセンテージの症例において、および複数の白血病で発現される。これは良性腫瘍でもある程度まで発現される。CD175は腫瘍特異的抗原である。
「CD175s」は、構造NeuAcα2−6GalNAcα1−O−を持つ腫瘍関連炭水化物抗原である、s−Tn抗原を指す(シアリル−TnまたはTAG−72とも呼ばれる)。これは大半の上皮がんで高いパーセンテージの症例において、および複数の白血病で発現される。
「CD173」は、構造Fucα1−2Galβ1−4GlcNAcβ1−を持つ腫瘍関連炭水化物抗原である、血液型O抗原を指す(H2型とも呼ばれる)。これは血液型Oの個人の赤血球および内皮で発現される。これはO型以外の血液型を持つ患者におけるがん関連抗原である。
「CD174」は、構造Fucα1−2Galβ1−4[Fucα1−3]GlcNAcβ1−を持つ腫瘍関連炭水化物抗原である、ルイスY抗原を指す(LeYとも呼ばれる)。CD174は、多くの上皮がん、複数の白血病、および造血前駆細胞で腫瘍特異的である。
「CA19−9」は、構造NeuAcα2−3Galβ1−3[Fucα1−4]GlcNAcβ1−3Galβ1−の腫瘍関連炭水化物抗原である、シアリル−Le a抗原を指す。これは消化管癌腫および膵臓癌腫で高度に発現されるが、乳房腫瘍、腎臓腫瘍または前立腺腫瘍では発現されない。
「CD34」、膜糖タンパク質(105〜120kDa)は、造血前駆細胞の周知のマーカーである。これは大半の白血病細胞でも発現される。
「CD44」は、さまざまな分子量の接着分子(H−CAM、Pgp−1)である。これは細胞表面ヒアルロナン受容体であり、マトリクスメタロプロテイナーゼと相互作用して、細胞移動で重要な役割を果たす。CD44は、乳がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、胃がん、および他のがん種でのがん幹細胞マーカーとして記載されている(Liら、2007、およびTakaishiら、2009を参照)。これは正常多能性幹細胞のマーカーでもある。いくつかのがん種では、CD44のスプライシングバリアント、例として結腸直腸がんでのCD44v6が存在する。
「CD133」(プロミニン、120kDa)は、5−膜貫通ドメイン糖タンパク質である。上記遺伝子は865アミノ酸糖タンパク質をコードして、動物界にわたって保存されている。これは多くのがん種(たとえば結腸直腸癌腫、膵臓癌腫、前立腺癌腫、非小細胞肺癌腫、および肝細胞癌腫、ならびに黒色腫および神経膠芽腫)でがん幹細胞マーカーとして記載されてきた。
「CD164」(MGC−24、24kDa)は、造血前駆細胞のマーカー、および胃癌腫のがん幹細胞のマーカーでもある(Masuzawaら、1992を参照)。
互換的に使用される「細胞(cell)」および「細胞(cells)」ならびに「細胞集団」という用語は、特に1個以上の細胞、特に哺乳動物細胞を指す。上記用語は、細胞または細胞集団の子孫を含む。当業者は、「細胞」が単細胞の子孫を含み、上記子孫は天然の、偶発的な、または故意の変異および/または変化により、元の親細胞とは(形態においてまたはDNA相補体全体が)必ずしも完全に同一でない可能性があることを認識する。
「有効量」は特に、有益なまたは所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で与えることができる。活性成分としての有効量の上記結合剤は、特に疾患状態の進行を診断する、軽減する、改善する、安定化する、逆行させる、遅くする(slow)または遅らせるのに十分である量である。活性成分の毒性および治療有効性は、たとえばLD50(集団の50パーセントに致死性である用量)およびED50(集団の50パーセントで治療的に有効な用量)を決定することを含む、たとえば細胞培養物および/または実験動物における標準の薬学的手順に従って決定することができる。毒性作用と治療効果との間の用量比は治療指数であり、これは比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療指数を示す結合剤が好ましい。細胞培養および/または動物研究から取得したデータは、ヒトに対する投薬量の範囲を処方するのに使用することができる。活性成分の投薬量は典型的に、低い毒性のED50を含む循環濃度の範囲内に並ぶ。上記投薬量は、採用された剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変えることができる。
図面は下に記載する実施例によって取得された結果を示す。
a−cは、肺がん細胞系NCIH446を用いて行われた共焦点顕微鏡分析(倍率×400)を示す図である。細胞をCD44(赤色)およびCD176(緑色)に特異的なモノクローナル抗体によって染色した。核はDAPI(青色)によって対比染色した。CD44は大半のNCIH446細胞で強く発現している(a)。CD176発現は、細胞クラスタの膜において認めることができた(b)。混合図(c)は、これらの細胞クラスタにおけるCD44およびCD176の同時局在を実証している(黄色)。
d−iでは、HCC組織におけるCD44およびCD176の、ならびにCD133およびCD176の同時発現が、二重免疫蛍光染色によって示されている(倍率×200)。オーバーレイによるCD176(緑色、d)/CD44(赤色、e)およびCD133(赤色、g)/CD176(緑色、h)の同時発現がそれぞれ見出された(黄色、fおよびi)。
j、kは、免疫組織化学により分析された肺がん組織でのCD176の発現(倍率×200)を示す図である。CD176は細胞表面ならびに肺腺癌細胞(j)および肺扁平上皮がん種細胞(k)の細胞質で見出された。
図1.2Aは、細胞系SPC−A−1、GLC(肺腺癌)およびHepG2(HCC)の細胞におけるCD44およびCD176の同時発現のFACS分析を示す図である。細胞を抗CD44(IgG)および抗CD176(IgM)とともにインキュベートし、続いて抗IgG−Cy3(γ鎖特異的)および抗IgM−FITC(μ鎖特異的)とともにインキュベートした。検体当り最小10,000のイベントが収集された。マーカーのそれぞれの組合せを持つ細胞のパーセンテージがグラフのおのおのの区画(section)に示され、両方のマーカーの染色の強い相関が実証されている。示されたデータは、複数の独立した実験の代表である。 図1.2Bは、MDA−435(乳癌腫)細胞の4−OHT処理前後のCD44およびCD176の同時発現のFACS分析を示す図である。マーカーのそれぞれの組合せを持つ細胞のパーセンテージがグラフのおのおのの区画に示されている。CD44/CD176細胞の数は、4−OHTによる24時間の処理後に増加する。示されたデータは、複数の独立した実験の代表である。 図2.1は、乳がん細胞の二重免疫蛍光染色を示す図である。
a−cは、細胞系MCF−7;d−l:乳がん組織切片である。細胞をモノクローナル抗体G44−26(CD44、IgG2b)またはANC9C5(CD133)によって、およびA70−C/C8(CD174、IgM)またはA46−B/B10(CD173、IgM)によって染色し、続いて抗IgG−Cy3(γ鎖特異的、赤)および抗IgM−FITC(μ鎖特異的、緑色)とともにインキュベートした。
c、f、i、lは合成図である;核はDAPI(青色)によって対比染色した。
CD173(a、d)は多くの場合、CD44(b、e)と同時発現される。CD174(g、j)は、CD44(h)ならびにCD133(k)による同時発現を示す。倍率:200×。
Aは、乳腺癌細胞系MDA−MB−435およびMCF−7におけるCD44/CD173発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。がん細胞を抗CD44(IgG)および抗CD174(IgM)抗体とともにそれぞれインキュベートして、続いて抗IgG−Cy3(γ鎖特異的)および抗IgM−FITC(μ鎖特異的)とともにインキュベートした。値は3回の同様の実験のうちの1回から得る。両方の細胞系の大部分が両方のマーカー(CD44およびH2)に陽性である。
Bは、4−OHT処理前後のMDA−MB−231細胞でのCD44/CD174発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。4−OHT処理は、CD44およびCD174(LeY)の両方を発現する細胞の割合の増加を生じる。値は3回の同様の実験のうちの1回から得る。
Aは、乳腺癌細胞系MDA−MB−435およびMCF−7におけるCD44/CD173発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。がん細胞を抗CD44(IgG)および抗CD174(IgM)抗体とともにそれぞれインキュベートして、続いて抗IgG−Cy3(γ鎖特異的)および抗IgM−FITC(μ鎖特異的)とともにインキュベートした。値は3回の同様の実験のうちの1回から得る。両方の細胞系の大部分が両方のマーカー(CD44およびH2)に陽性である。
Bは、4−OHT処理前後のMDA−MB−231細胞でのCD44/CD174発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。4−OHT処理は、CD44およびCD174(LeY)の両方を発現する細胞の割合の増加を生じる。値は3回の同様の実験のうちの1回から得る。
図2.3は、CD173mAb A46−B/B10によって染色した腺管内癌腫切片の免疫組織化学を示す図である。残存する管壁の基底細胞(幹細胞様細胞)が強く染色されている。 図2.4は、乳腺癌細胞系MDA−MB−231、MDA−MB−435、およびMCFの溶解物の免疫沈降を示す図である。CD44免疫沈降物質をSDS−PAGEによって分けて、mAb CD173を使用する免疫ブロットによって分析した。データは、乳癌腫においてCD44がCD173を担持していることを示す。 図3は、抗CD176抗体のアミノ酸配列を示す図である。 図3は、抗CD176抗体のアミノ酸配列を示す図である。 図3は、抗CD176抗体のアミノ酸配列を示す図である。 図3は、抗CD176抗体のアミノ酸配列を示す図である。 図3は、抗CD176抗体のアミノ酸配列を示す図である。 図3は、抗CD176抗体のアミノ酸配列を示す図である。 図3は、抗CD176抗体のアミノ酸配列を示す図である。 図4は、BrdU細胞増殖ELISAによって測定された腫瘍細胞増殖の抑制を示す図である。CD176陽性NM−D4細胞を抗CD176 IgM抗体(J鎖を含むまたはJ鎖が欠如した)または無関係なアイソタイプ対照(hIgM)とともに培養した。架橋をヤギ抗ヒトIgM Fab抗体(Fc5μ)を用いて行った。無処理対照細胞に対する増殖パーセントが示されている。そのデータは、J鎖を持つまたは持たない2つのIgM型による増殖の濃度依存性抑制を実証している。 図5は、アネキシンV検出によって測定された抗CD176 IgM抗体によるアポトーシス誘起を示す図である。AML細胞系KG−1の2つの亜系統CD176陽性(A)およびCD176陰性(B)を、J鎖を持つまたは持たない抗CD176 IgM抗体とともにインキュベートした。hIgM:無関係なアイソタイプ対照。死んでいる細胞をSytoxグリーン蛍光によって測定した。抗CD176 IgM抗体によるアポトーシスのCD176特異的誘起が実証された。 図6は、ユウロピウム放出アッセイによって測定された、抗CD176 IgM抗体による補体依存性細胞傷害(CDC)の誘起を示す図である。上記AML細胞系KG−1(CD176陽性)を、J鎖を持つ(J+)または持たない(J−)どちらかの抗CD176 IgM抗体の存在下で培養し、ウサギ補体を添加した。無関係なIgMアイソタイプを対照として使用した(hIgM)。実証されるように、濃度依存性CDCは、抗CD176 IgM抗体によって誘起される。 図7は、ユウロピウム放出アッセイによって測定された、抗CD176 IgG1抗体による抗体依存性細胞傷害(ADCC)の誘起を示す図である。癌腫細胞系PANC−1(CD176陽性)を抗CD176 IgG1抗体の存在下で培養し、健常ドナーからのPBMCをE:T比100:1で添加した。hIgG1:無関係なアイソタイプ対照。示されるように、濃度依存性ADCCは抗CD176 IgG1抗体によって誘起される。
発明の詳細な説明
本発明は、腫瘍関連炭水化物抗原ががん幹細胞で発現され、そのためがん幹細胞マーカーとして有用であるという発見に基づく。これまで記載されたがん幹細胞マーカーがほぼすべてタンパク質であるため、本発見は驚くべきである。そのため本発明は、好ましくはCD176、CD175、CD175s、CD174、CD173およびCA19−9から、さらに好ましくは(more preferred)CD176、CD175およびCD175sから選択される腫瘍関連、好ましくは腫瘍特異的炭水化物抗原のがん幹細胞マーカーとしての使用に関係する。
第1の態様により、本発明は、上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞の処置で使用するための腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤を提供する。
本発明者らは、複数の腫瘍関連炭水化物抗原、例としてCD176、CD174およびCD173ががん幹細胞で発現され、そのため新規がん幹細胞マーカーであることを示してきた。腫瘍関連炭水化物抗原のがん幹細胞マーカーとしての同定は、腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する剤のための新規治療適用を提供する。それぞれの腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する剤は今や、上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞をターゲティングするために治療的に使用することができる。このことはがん幹細胞をターゲティングする、および好ましくは死滅させる治療処置の機会を提供する。それぞれの治療剤はたとえば、普通の化学療法に耐性であるがん幹細胞をターゲティングして、そのため破壊するために使用することができる。これにより、本発明によって改善されたがん療法が提供される。
1実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原は、がん幹細胞で主としてまたはなお独占的に発現される。別の実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原は上記がん幹細胞で、ならびにがん幹細胞ではないがん細胞で発現される。上記腫瘍関連炭水化物抗原が両方の細胞集団上で発現される場合、これは上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する上記結合剤による処置が、両方の細胞集団をターゲティングするという利点を有する。これはたとえば、腫瘍成長の間に、がん幹細胞特性を持つ新たな細胞がたとえば上皮間葉移行(EMT)によって発生する、まれではあるが記録された症例において重要である。
1実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する上記結合剤は治療的活性である。それぞれの実施形態の1例は、治療的活性抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体の結合剤としての使用である。治療的活性抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、標的細胞、特に上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現する上記がん幹細胞の溶解を好ましくは生じる、補体依存性細胞傷害(CDC)および/または抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を誘起することが好ましくは可能である。さらなる実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する上記結合剤は、ターゲティング分子として機能して、少なくとも1つの治療剤にカップリングされる。カップリングは、共有結合または非共有結合手段によって達成することができる。上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する上記結合剤がターゲティング分子として機能するときに、上記結合剤自体は治療的活性であることができるか、または治療的活性であり得ない。上記結合剤が治療的活性でない場合、これは実際の治療剤(たとえば放射性医薬品、化学療法剤または毒素)を所望の作用標的側、すなわち上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現する上記がん幹細胞まで運ぶ分子キャリアとして基本的に機能する。上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤にカップリングされた治療剤は、たとえば化学療法剤または他の抗がん薬であることができる。カップリングされた上記治療剤は、好ましくはターゲティングされたがん幹細胞を破壊もしくは死滅させる、またはこれの増殖を抑制する。これはカップリングされた上記治療剤によって直接、またはターゲティングされた上記がん幹細胞および/または処置される被験体の好適な生体メカニズムの誘起によって間接的に、のどちらかで達成することができる。
1実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原はCD176、CD175、CD175s、CD174、CD173およびCA19−9から成る群より選択される。好ましくは、上記腫瘍関連炭水化物抗原はCD176、CD173、CD174およびCD175またはCD175sより選択される。これらの腫瘍関連炭水化物抗原に関する詳細事項は上に記載されている。これらの腫瘍関連炭水化物抗原が新規であり、好適ながん幹細胞マーカーであることは、本発明者によって示された。
好ましくは、上記腫瘍関連炭水化物抗原は腫瘍特異的である。このことは非腫瘍細胞、非がん細胞それぞれが、上記処置により影響を受けるリスクが低下するという利点を有する。好ましい腫瘍特異性に関する詳細事項も上に記載されている;それはそれぞれの開示に言及されている。
1実施形態により、がん幹細胞は、好ましくは糖タンパク質である少なくとも1つの幹細胞マーカーを同時発現する上記結合剤によって処置される。本発明者らは、腫瘍関連炭水化物抗原、例として特にCD176、CD173およびCD174が、がん幹細胞マーカーであることがすでに公知である他の幹細胞マーカー、例としてCD44およびCD133と同時発現されることを見出している。好ましい実施形態により、上記結合剤によって特異的に結合される上記腫瘍関連炭水化物抗原を担持する(糖)タンパク質である、少なくとも1つの幹細胞マーカーを発現するがん幹細胞が処置される。ある実施形態において、上記結合剤は上記腫瘍関連炭水化物抗原を担持する(糖)タンパク質にも結合し得る。しかし特異的結合は、上記腫瘍関連炭水化物抗原が存在する場合にのみ発生する。本発明者らは、がん幹細胞マーカーとして有用な腫瘍関連炭水化物抗原、例としてCD176が正常細胞ならびにがん幹細胞のマーカーとして公知であるタンパク質、例としてCD34、CD44、CD133、CD164にほぼ独占的に担持されることが多いことを、および/または腫瘍関連(糖)タンパク質に担持されることを実証してきた。このことは、がん幹細胞マーカーとして本明細書で同定された上記腫瘍関連炭水化物抗原(複数可)の出現(発現)を生じるがん幹細胞への悪性形質転換のプロセスの間に、正常(糖)タンパク質幹細胞マーカーおよび/または腫瘍関連(糖)タンパク質がそのグリコシル化に特徴的な変化を被ることを示唆する。そのため腫瘍関連炭水化物抗原の新規がん幹細胞マーカーとしての同定は、がん幹細胞の処置にとって貴重な治療標的を提供する。
1実施形態により、上記がん幹細胞はCD34、CD44、CD44v6、CD133およびCD164から成る群より選択される1個以上の幹細胞マーカーを発現する。好ましくは、上記腫瘍関連炭水化物抗原は、CD34、CD44、CD44v6、CD133およびCD164から成る群より選択される糖タンパク質に担持される。たとえばCD176、CD175およびCD175sは、特にCD44およびCD133で発現されることが見出された。
1実施形態により、上記がん幹細胞は、以下の特徴の1つ以上を有するがんのがん幹細胞である:
a)がんが固形腫瘍である;
b)がんが白血病である;
c)がんが多発性骨髄腫もしくはリンパ腫である;
d)がんが上皮起源の腫瘍である;ならびに/または
e)がんが肺がん、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、消化器がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮頸がんおよび頭頸部がんから成る群より選択される腫瘍である。
上記がん幹細胞がCD176、CD175またはCD175sを腫瘍関連炭水化物抗原として発現する実施形態では、上記がん幹細胞は好ましくは、白血病の、または固形腫瘍を形成する、すなわち白血病およびリンパ腫以外のがんであるがんの、がん幹細胞である。好ましくは、上記がんは上皮悪性腫瘍であり、およびさらに好ましくは(more preferred)、肺癌腫、乳癌腫および肝臓癌腫から成る群より選択される。本明細書で提供される実施例で実証されるように、CD176はこれらのがん種のがん幹細胞で発現される。そのほかにCD176は、白血病でたとえばCD34と同時発現されることが見出された。
上記がん幹細胞がCA19−9を腫瘍関連炭水化物抗原として発現する実施形態では、上記がん幹細胞は、1実施形態により、固形腫瘍を形成するがんのがん幹細胞である。好ましくは、上記がんは消化器癌腫である。
1実施形態により、上記結合剤は、腫瘍特異的炭水化物抗原である上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する。好ましくは生理学的状態およびそのため上記結合剤の治療適用の間に発生する状態の下で、上記結合剤は非がん細胞、非腫瘍細胞、良性がん細胞および/または良性腫瘍細胞で発現される抗原、特に炭水化物抗原を結合しない。それぞれ腫瘍特異的結合剤を使用することは複数の利点を有する。療法で使用されるときに、上記結合剤が、標的細胞および例えば上記腫瘍特異的炭水化物抗原を発現する細胞のみを認識して、そのため結合するが、同様の抗原、特に同様の炭水化物抗原を発現するだけの非標的、特に良性または正常細胞を結合しないことが確保される。これが腫瘍特異的療法、がん特異的療法を確保して、これにより望ましくない副作用が低減される。好適な腫瘍特異的結合剤は続いて、特に上記腫瘍特異的炭水化物抗原がCD176またはCD175である実施形態について記載されている。
好ましい実施形態により、腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤は抗体または抗体の抗原結合フラグメントもしくは誘導体である。好適な例は上および実施例に記載されている。
本発明により結合剤として使用される抗体または抗体の抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、好ましくは以下の特徴の1つ以上を有する:
a)それはがん細胞および/もしくは腫瘍細胞、特にがん幹細胞のADCCおよび/またはCDCを媒介する;
b)それはがん細胞および/もしくは腫瘍がん細胞、特にがん幹細胞のアポトーシスを誘起および/または促進する;
c)それは標的のがん細胞および/もしくは腫瘍細胞、特にがん幹細胞の増殖を抑制する;
d)それはがん細胞および/もしくは腫瘍細胞、特にがん幹細胞の食作用を誘起および/もしくは促進する;ならびに/または
e)それは細胞傷害剤の放出を誘起および/または促進する。
1実施形態により、CD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、CD176を発現するがん幹細胞を処置するために使用される。好ましくは、上記CD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2または3のアミノ酸配列を有するCDRH2、および配列番号4または5または6のアミノ酸配列を有するCDRH3から成る群より選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。さらに好ましくは、それは少なくとも2個のCDR、例としてCDRH1およびCDRH2、CDRH1およびCDRH3、またはCDRH2およびCDRH3を含み、おのおの上で定義したようなアミノ酸配列を有する。最も好ましくは、それは3個すべてのCDR、すなわちCDRH1、CDRH2およびCDRH3を含み、おのおの上で定義したようなアミノ酸配列を有する。代わりにCDRH1は、配列番号14から17のうちの任意の1つのアミノ酸配列を有し得、そして/またはCDRH2は配列番号18から27のうちの任意の1つのアミノ酸配列を有し得る。特にこれらのCDRは、上記CD176特異的抗体または機能的に活性なそのフラグメントもしくは誘導体の重鎖可変領域に存在する。上記CD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体の重鎖可変領域は、好ましくは配列番号46から79のうちの任意の1つのアミノ酸配列を含有するまたはこのアミノ酸配列から成る。
そのほかに上記CD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は好ましくは、配列番号7または8または9のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号10または11のアミノ酸配列を有するCDRL2、および配列番号12または13のアミノ酸配列を有するCDRL3から成る群より選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。さらに好ましくは、それは少なくとも2個のCDR、例としてCDRL1およびCDRL2、CDRL1およびCDRL3、またはCDRL2およびCDRL3を含み、おのおの上で定義したようなアミノ酸配列を有する。最も好ましくは、それは3個すべてのCDR、すなわちCDRL1、CDRL2およびCDRL3を含み、おのおの上で定義したようなアミノ酸配列を有する。代わりにCDRL1は、配列番号28から45のうちの任意の1つのアミノ酸配列を有し得る。特にこれらのCDRは、上記CD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体の軽鎖可変領域に存在する。CD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体の軽鎖可変領域は、好ましくは配列番号80から94のうちの任意の1つのアミノ酸配列を含有する、またはこのアミノ酸配列から成る。
好ましい実施形態において、上記CD176特異的抗体は、相補性決定領域(CDR)の以下の1つのセットを含む:
上記配列を図3に示す。それぞれの配列はEP 1 572 747にも開示されているため、上記配列について同じナンバリングを本明細書で使用する。
本発明による上記結合剤である、上記CD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、ヒト抗体、マウス抗体、ヒト化抗体もしくはキメラ抗体または機能的に活性なそのフラグメントもしくは誘導体であり得る。そのほかにそれは単鎖抗体フラグメント(たとえばscFv)、Fvフラグメント、Fabフラグメント、F(ab)フラグメント、マルチボディ(たとえばダイア−、トリア−、またはテトラボディ)、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDアイソタイプの免疫グロブリンもしくはその任意のサブクラス、例としてIgG1、または少なくとも1つの定常ドメインを含む免疫グロブリン由来認識分子、またはJ鎖(全体または一部)を欠いたものであり得る。好ましくは、上記CD176特異的抗体はIgG1抗体またはIgM抗体、特に、好ましくはヘキサマーの形態である、J鎖を含むIgM抗体または上記J鎖を欠いたIgM抗体であり、すなわちそれは2個の重鎖および2個の軽鎖を含む6個の抗体ユニットを含む。
特に好ましい実施形態において、上記CD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、たとえばEP 1 572 747の実施例7に記載されているような生理学的条件下では、Galα1−3GalNAcα、Galα1−3GalNAcβ、GalNAcα、Neu5Acα2−3Galβ1−3GalNAcα、Galβ1−3(Neu5Acα2−6)GalNAcα、GlcNAcβ1−2Galβ1−3GalNAcα、GlcNAcα1−3Galβ1−3GalNAcα、GalNAcα1−3Galβおよび/または3’−O−Su−Galβ1−3GalNAcαと特異的に相互作用しない。
1実施形態により、上記CD176特異的抗体はコア1構造を結合して、GlcNAcβ1−6[Galβ1−3]GalNAcα1−O−である構造core−2との交差反応性を示す。
CD176を結合する好適な抗体の例は、これに限定されるわけではないが、HH8(Clausen Hら、Mol Immunol 25:199−204(1988))、A78−G/A7(Glycotope GmbH、ベルリン、ドイツ)、Nemod−TF1およびNemod−TF2(Glycotope GmbH、ベルリン、ドイツ)ならびにHB−TF1(DakoCytomation、ハンブルク、ドイツ)を含む。
そのほかに本発明による上記結合剤は、上に記載したCD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体との交差反応性を示す抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体を含み得る。特に、本発明による上記結合剤は、上に記載したCD176特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体によって、または、溶液中のCD176構造物、またはキャリア分子(例としてポリアクリルアミドに、もしくはペプチド、タンパク質もしくは脂質)に、当業者が決定できる十分な濃度または量でカップリングさせたCD176構造物によって、結合が効果的に抑制され得る抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体であり得る。
さらなる実施形態により、CD175特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、CD175を発現するがん幹細胞を処置するために使用される。好適な特異的抗体は、従来技術で公知であるおよび/または上に記載した方法によって取得することができる。CD175に対する公知の抗体は、たとえばHB−Tn1(DakoCytomation、ハンブルク、ドイツより入手可能)、TKH6(Kjeldsenら、Cancer Res 48:2214,1988)、および1E3(Thurnherら、Glycobiology 4:429,1994)である。
1実施形態により、CD175s特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、CD175sを発現するがん幹細胞を処置するために使用される。好適な特異的抗体は、従来技術で公知であるおよび/または上に記載した方法によって取得することができる。CD175sに対する公知の抗体は、たとえばHB−STn1(DakoCytomation、ハンブルク、ドイツより入手可能)、TKH2(Kjeldsenら、Cancer Res 48:2214,1988)、B72.3(Zhangら、Cancer Res 55:3364,1995)、およびMLS102(Nakadaら、J Biol Chem 266:12402,1991)である。
1実施形態により、CD174特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、CD174を発現するがん幹細胞を処置するために使用される。好適な特異的抗体は、従来技術で公知であるおよび/または上に記載した方法によって取得することができる。CD174に対する公知の抗体は、たとえばA70−C/C8(Glycotope GmbH、ベルリン、ドイツ)、BR55−2(Blaszczyk−Thurinら、J Biol Chem 262:372,1987)、およびNCC−ST−433(Watanabeら、Gann 76:43,1985)である。CD174に対する公知の治療抗体は、たとえばABL364(Sandoz)およびBR96(Bristol−Myers Squibb)である。
1実施形態により、CD173特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、CD173を発現するがん幹細胞を処置するために使用される。好適な特異的抗体は、従来技術で公知であるおよび/または上に記載した方法によって取得することができる。CD173に対する公知の抗体は、たとえばA46−B/B10(Glycotope GmbH、ベルリン、ドイツ)、BE2(Youngら、J Biol Chem
256:10967,1981)、および92FRA2(Dako Cytomation、ハンブルク、ドイツ)である。
1実施形態により、CA19−9特異的抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、CA19−9を発現するがん幹細胞を処置するために使用される。好適な特異的抗体は、従来技術で公知であるおよび/または上に記載した方法によって取得することができる。CA19−9に対する公知の抗体は、たとえば1116NS−19−9(Magnaniら、Cancer Res 43:5489,1983)、および121SLE(Herrero−Zabaletaら、Bull Cancer 74:387,1987)である。
腫瘍関連炭水化物抗原(複数可)を発現するがん幹細胞の処置で使用するための、上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤を含む薬学的組成物も提供され、ここで、上記結合剤、上記がん幹細胞および上記腫瘍関連炭水化物抗原は、上および特許請求の範囲に記載するような特徴の1つ以上を有する。それはそれぞれの開示に言及されている。
別の実施形態において、被験体におけるがん幹細胞の処置のための方法であって、(a)処置される上記がん幹細胞で発現された腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤および(b)薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物を上記処置に有効な量で上記被験体に投与する工程を含む方法が開示される。上記結合剤、上記腫瘍関連炭水化物抗原ならびに上記がん幹細胞の特徴に関する詳細事項は、目的の結合化合物の請求項(purpose bound compound claim)と併せて上に記載されている。それは上の開示に言及されている。主題の方法は、予防目的および治療目的の両方に有用である。本明細書で使用する場合、「処置すること」または「処置」という用語は、疾患の防止、および先在状態の処置の両方を指すために使用される。患者の臨床症状を安定化または改善する進行中の疾患の処置は、本発明によって提供される詳細に重要な利点である。このような処置は望ましくは、影響を受けた組織における機能喪失の前に行われる;結果的に、本発明によって提供される予防治療の利益も重要である。たとえばがん患者の処置は、腫瘍サイズの低減、悪性細胞の排除、転移の防止、寛解になった患者の再発防止、播種性がん、特に腫瘍細胞または転移がん、特に循環中の細胞または逃避もしくは浸潤中の細胞を含む細胞の低減、部分的または完全な死滅、生存の延長および/または腫瘍進行、がん進行までの時間の延長であり得る。がん幹細胞で発現される腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する本発明による結合剤およびそれを含む薬学的組成物は有用であり、上記目的のために記載されている。
薬学的組成物は、所望の処方物に応じて、動物またはヒトへの投与のための薬学的組成物を処方するために普通に使用されるビヒクルとして定義される、希釈剤の薬学的に許容され得る非毒性キャリアを含むことができる。上記希釈剤は、その組合せの生物活性に影響しないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、緩衝水、生理食塩水、PBS、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液である。その上、薬学的組成物または処方物は、他のキャリア、アジュバント、または非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤、賦形剤などを含むことができる。上記組成物は、生理学的条件に近づけるための追加の物質、例としてpH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤、湿潤剤および洗浄剤も含むことができる。
上記組成物は、任意の多種多様の安定化剤、例として抗酸化剤なども含むことができる。上記薬学的組成物がポリペプチドを含むとき、上記ポリペプチドを、上記ポリペプチドのインビボ安定性を向上させる、またはそうでなければその薬理学的特性を向上させる(たとえば上記ポリペプチドの半減期を増大する、その毒性を低減させる、溶解性または取込みを向上させる)、各種の周知の化合物と複合体化することができる。このような修飾物(modification)または複合化剤(complexing agent)の例は、硫酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩を含む。組成物の上記ポリペプチドは、そのインビボ属性を向上させる分子と複合体化することもできる。このような分子は、例として炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオン(たとえばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、および脂質を含む。
様々な種類の投与に好適である処方物に関するさらなるガイダンスは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.(1985)に見出すことができる。薬物送達にための方法の簡単な総説については、Langer,Science 249:1527−1533(1990)を参照。
本明細書に記載する薬学的組成物は、多種多様の異なるやり方で投与することができる。例は、薬学的に許容され得るキャリアを含有する組成物を経口、鼻内、直腸、局所(topical)、腹腔内、静脈内,筋肉内、皮下(subcutaneous)、皮下(subdermal)、経皮、髄腔内、および頭蓋内方法を経て投与することを含む。
本発明のさらなる態様により、患者から取得したがん検体が、結合剤が特異的である腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞を含むかどうかを決定する工程を含む、上記がん幹細胞に影響を与える処置であって、上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する上記結合剤による処置に感受性である、上記がん幹細胞を含むがんを同定する方法であって、ここで、がん幹細胞での上記腫瘍関連炭水化物抗原の存在が、腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する上記結合剤による処置に上記がんが感受性であることを示し、上記処置はまた上記がん幹細胞に影響を与える方法が提供される。
本発明による本方法は、がんの上記がん幹細胞が腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤による処置に感受性であるであるかどうかを試験することを可能にする。上記方法の結果は、医師に貴重な診断情報を提供する。たとえば上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現しないがん幹細胞を含む場合、上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤による処置は、上記がん幹細胞に影響を与えず、したがって上記がん幹細胞に対して無益であろう。しかし、上記方法により、上記がん幹細胞が、上記結合剤が特異的である、上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現することが示される場合、上記結合剤による処置も上記がん幹細胞をターゲティングして、したがってそのがん幹細胞に影響を与える可能性が高い。そのため本発明による方法は、医師が患者のための最良の療法を選び、がんの上記がん幹細胞に影響するかどうかを推定するための貴重な支援を提供する。
関係のある診断態様により、患者から単離された検体中の細胞での腫瘍関連炭水化物抗原の発現を分析する工程を含む、がんを診断、病期分類および/もしくは予後を判定するためのならびに/または処置に対する感受性を監視するための方法が提供され、ここで、上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現する細胞の存在は、上記検体中のがん幹細胞の存在を示す。
患者検体中のがん幹細胞の存在は、がんの病期を指示することができる。その上、がん幹細胞の検出を使用して、療法に対する応答を監視することおよび予後判定を支援することができる。本発明による方法によって取得される情報は、予後判定および診断に有用であり、それには、上記疾患の加速に対する感受性を分析すること、上記がんが進行しているかどうかおよびたとえば処置を必要とするかどうかが分析される、上記疾患の能動的監視による分析、疾患状態の状態(status)、環境における変化に対する応答、例として時間の経過、選ばれた治療剤、特に上に記載した結合剤による処置、または他の様相が含まれる。上記検体に含有された細胞が腫瘍関連炭水化物抗原を発現するかどうかを、したがって上記検体ががん幹細胞を含むかどうかを分析することによって、上記細胞を治療剤および処置に応答するその能力について分類することもできる。そのほかに、得られた上記情報は、がんの転移挙動を決定および/または予測するのに有用である。がん幹細胞マーカー、特にCD176、CD175およびCD175sとして同定される腫瘍関連炭水化物抗原は、転移で大量に存在することが多い。本明細書で記載したがん幹細胞の腫瘍関連炭水化物抗原の存在および本発明の結合剤によるその結合は、とりわけ上記腫瘍関連炭水化物抗原が腫瘍特異的であり、さらに明確にはそれがCD176であるときに、不良な予後と関連していることが多い。がん幹細胞が上記腫瘍関連炭水化物抗原マーカーの発現によって同定される場合、その患者は転移を発生するリスクが増大している。
がんは、がん幹細胞の存在の分析により、本発明によって病期分類することができ、上記がん幹細胞は、特に上記腫瘍関連炭水化物抗原をマーカー標的として使用することによって同定される。病期分類は、予後判定および処置に有用である。
本発明による診断方法の1態様により、がん幹細胞で発現される腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する、本発明による結合剤は、インビボ診断、特にインビボイメージングに使用される。それぞれの方法は、診断目的にも有用である。たとえばがん幹細胞で発現される上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん細胞を、患者にて同定および/または特定できるかどうかを決定することができる。これが当てはまる場合、がん幹細胞が存在するというリスクがある。上および下に記載するように、第2の幹細胞マーカーが加えて検出されて、上記がん幹細胞の性質が確認および/または決定されることが好ましい。そのほかに、療法に対する応答を、たとえば上記腫瘍サイズが縮小するかどうかを、または転移(metase)が発生するかどうかを決定することができるように、監視することができる。そのほかにそれぞれの方法は、患者への好適な投薬量を同定するために好都合である。1実施形態により、上記結合剤は標識され、たとえば、それは放射性核種を含む放射性医薬品である。しかし上記結合剤は、他の剤/化合物、例としてたとえばインビボイメージングできるようにするPETトレーサにもカップリングされ得る。好適な化合物は、従来技術で公知であり、そのためここではさらなる記載は必要ない。上記結合剤、上記腫瘍関連炭水化物抗原、さらなるがん幹細胞マーカーおよびがん種に関する詳細事項は、上および下に記載され、インビボイメージング実施形態にも適用される。それはそれぞれの開示に言及されている。
そのため腫瘍関連炭水化物抗原、例としてCD176、CD174およびCD173のがん幹細胞マーカーとしての同定ならびにその発見の活用にそれぞれ基づく本発明の記載された方法は、重要かつ好都合な診断および予後判定ツールを提供する。
好ましい実施形態により、本発明による方法は、上記細胞が少なくとも1つの第2のがん幹細胞マーカーを同時発現するかどうかを分析する工程を加えて含む。これにより、がん幹細胞の表現型をさらに確認することができる。分析された上記検体中で上記腫瘍関連炭水化物抗原および少なくとも1つの第2のがん幹細胞マーカーを同時発現する細胞の存在を同定することは、それぞれの細胞ががん幹細胞であることおよびたとえば分析された上記検体ががん幹細胞を含有することまたはがん幹細胞がインビボ診断方法によって検出されたことを示す/確認する。決定することができる好適ながん幹細胞マーカーは、上記腫瘍関連炭水化物抗原のほかに、がん種に依存する。好ましい実施形態により、CD34、CD44、CD44v6、CD133およびCD164から成る群より選択される、少なくとも1つの追加の糖タンパク質がん幹細胞マーカーの同時発現が試験される。
1実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原はCD176、CD175、CD175s、CD174、CD173およびCA19−9から成る群より選択される。上記腫瘍関連炭水化物抗原に関する詳細事項は上で詳細に記載されている。それは上の開示に言及されている。
好ましくは、上記腫瘍関連炭水化物抗原は腫瘍特異的であり、好ましくは悪性細胞のみで発現される。1実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原は、がん幹細胞で主としてまたは独占的に発現される。別の実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原は上記がん幹細胞で発現され、ならびに、それ自体はがん幹細胞ではないが、たとえばこれらの細胞の誘導体であるがん細胞か、またはがん幹細胞ではない、がんそれぞれの腫瘍細胞(cancer respective tumor cells)である、がん細胞で発現される。
1実施形態により、検体中のがん幹細胞の存在は、本明細書に記載するがん幹細胞の表現型を有する細胞を定量することによって決定され、したがって上記腫瘍関連炭水化物抗原および好ましくはさらなるがん幹細胞マーカーを発現する。上記検体中のより多数のがん幹細胞の同定は、より高悪性度のがん表現型を指示する。1実施形態により、上記検体中に存在する細胞は、上記腫瘍関連炭水化物抗原および必要に応じて、少なくとも1つのさらなるがん幹細胞マーカーの発現について定量(定量化/定量的に分析)される。上記腫瘍関連炭水化物抗原に対して陽性である細胞の「幹細胞」特質は、たとえば球を形成する際に、培養中の細胞の自己再生および増殖する能力をたとえば決定することによって実験的にさらに確認され得る。代わりにまたは加えて、上記細胞を動物モデルにおける腫瘍原性(tumorgenicity)について試験することができる。
本発明の1実施形態において、がん患者、たとえば上に記載したようながんに罹患しているまたはがんの疑いがある患者からの検体は、上記腫瘍関連炭水化物抗原に特異的な少なくとも1つの剤によって染色される。少なくとも1つのさらなるがん幹細胞マーカーの同時発現が分析される場合、検体はさらなる上記がん幹細胞マーカーに特異的な少なくとも1つの剤によっても染色されることが好ましい。
染色パターンの分析は、上記検体中に存在するがん幹細胞の量についての情報を提供し得る。そのほかに上記染色パターンは上記がん幹細胞の相対分布についての情報も供給し得て、上記分布は上記がんの腫瘍原性を予測できるようにし得て、上記がんの進行を予知できるようにもし得る。
1実施形態により、がん細胞を含有するまたは含有することが疑われる検体を、上記腫瘍関連、好ましくは腫瘍特異的炭水化物抗原およびそのため炭水化物がん幹細胞マーカーを特異的に結合する少なくとも1つの剤ならびに必要に応じて第2のがん幹細胞マーカー、好ましくはCD44を特異的に結合する少なくとも1つのさらなる剤と接触させる、および好ましくは上記剤によって染色する。これによって上記検体中のがん幹細胞の存在が検出できるようになる。1実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原に対する上記結合剤の結合および好ましくは上記第2のがん幹細胞マーカーに対する上記結合剤の結合は、当分野で公知のおよび本明細書に記載するような適切な検出方法によって検出される。好適な検出方法はたとえばELISA、FACS、蛍光顕微鏡法などである。
本発明の方法によって分析される検体は、多種多様の源から、詳細には生検検体から取得され得る。このような検体の細胞は、遠心分離、水簸(elutriation)、密度勾配分離、アフェレーシス、親和性選択、パニング、FACS、Hypaqueによる遠心分離などにより分析前に分離することができる。いったん検体が取得されると、検体を直接使用するか、凍結するか、または短期間にわたって適切な培養培地中で維持するか、または適した固定溶液で固定されるか、または組織学的(histologigal)もしくは免疫組織学的検査に適した媒体で固定および包埋することができる。各種の媒体を採用して細胞を維持することができる。上記検体は任意の便利な手順、例として生検によって、または外科標本から取得され得る。通例、検体は少なくとも約10細胞、さらに通例少なくとも約10細胞、ならびに好ましくは10、10以上の細胞を含む。典型的に、上記検体はヒト患者からであるが、動物モデル、たとえばウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯動物、たとえばマウス、ラット、ハムスター、霊長類なども用途を見出し得る。
上記検体は凍結され得る、包埋され得る、固定され得る、組織マイクロアレイ中に存在し得るなどである。上記腫瘍関連炭水化物抗原および、必要に応じてさらなるがん幹細胞マーカーを結合、検出、および特に染色するために使用される剤は、たとえば上記がん幹細胞マーカーを特異的に結合する結合剤、たとえば抗体などであることができる。好適な例は上に記載されている。これらの剤は、検出可能に標識され得るか、または染色手順で間接的に標識され得る。1実施形態により、標識を使用して、上記腫瘍関連炭水化物抗原陽性細胞を分離することもできる。好適な標識ならびに染色手順は従来技術で公知であり、したがって一部の実施例が本明細書に記載されているけれども、ここではさらなる記載は必要ない。分析の標準手順は、たとえば実施例に記載されているように、上記検体の組織学的固定(たとえばホルマリンによる)およびその後の染色を含み得る。取得されたデータによって、上記検体中のがん幹細胞の数および分布を決定できるようになる。
上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現する細胞を検出および/または定量化するのに好適な方法は、たとえば免疫学的アッセイ、例としてELISA、RIA、ウェスタンブロットおよび免疫組織化学、フローサイトメトリー、免疫組織化学などを含む。これらの方法により、新規がん幹細胞マーカーおよび、必要に応じて少なくとも1つのさらなるがん幹細胞マーカーとしての、上記腫瘍関連炭水化物抗原、例として特にCD176、CD175、CD175s、CD174およびCD173を発現する細胞の存在および所望ならば量も同定できるようになる。
特に興味深いのは、上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤としての複数の抗体、1個の抗体をそれぞれ使用することである。好都合なことには、これらの抗体は検出のためにおよび/または分離での使用のために標識と結合体化される。標識は、直接分離できるようにする磁性ビーズ、支持体に結合されたアビジンまたはストレプトアビジンによって分離することができるビオチン、特定の細胞種の分離を容易にできるようにするための、蛍光活性化セルソーターなどで使用できる蛍光色素を所望ならば含む。用途がある蛍光色素は、フィコビリタンパク質、たとえばフィコエリトリンおよびアロフィコシアニン、フルオレセイン誘導体、Cy3、Cy5、またはテキサスレッドを含む。さらなるがん幹細胞マーカーが上記腫瘍関連炭水化物抗原のほかに検出される場合、おのおのがん幹細胞マーカーについての独立したソーティングを許容するために、上記さらなるがん幹細胞マーカーを特異的に結合する剤を異なる蛍光色素によって標識することが好ましい。
1実施形態により、上記がん幹細胞マーカー(複数可)を特異的に結合する上記結合剤は、細胞の懸濁物に添加され、利用可能な細胞表面抗原を結合するのに十分な期間にわたってインキュベートされる。分離の効率が上記がん幹細胞マーカーを特異的に結合する剤の欠如によって制限されないように、反応混合物中に十分な濃度の剤を有することが所望される。適切な濃度は滴定によって決定される。上記細胞が分離される媒体は、上記細胞の生存能力を維持する任意の媒体である。標識された細胞は次に好ましくは、先に記載したように、上記細胞表面マーカーの発現について定量される;いくつかのこのような方法も当分野で公知である。
特異前駆体分析(differential progenitor analysis);または患者検体から取得されたがん幹細胞分析、および参照分析の比較は、好適な演繹プロトコル、人工知能(AI)システム、統計的比較などの使用によって達成され得る。正常細胞、同様の罹患組織からの細胞などからの参照の特異前駆体分析による比較は、上記疾患病期分類の指標を提供することができる。参照の特異前駆体分析のデータベースを蓄積することができる。特に興味のある分析は、疾患の加速が早期段階で観察されるように、患者を追跡する。本発明の方法は、臨床症状の発症前に加速の検出を提供し、ゆえに早期の治療的介入、たとえば化学療法の開始、化学療法用量の増加、化学療法薬または他の抗がん薬の選択の変更などができるようになる。
上記選択したマーカーの存在を定量化するために、各種の方法を利用できる。存在する分子の量を測定するために、便利な方法は、蛍光性、発光性、放射性、酵素活性などであり得る検出可能な部分(moiety)を持つ分子を、詳細には高い親和性を持つパラメータへの結合に対して特異的な分子を標識することである。蛍光部分は、ほぼ任意の生体分子、構造または細胞種を標識するために容易に利用でき、免疫蛍光部分は、特異的タンパク質だけでなく、特異的高次構造、切断生成物、またはリン酸化などの部位改変も結合するように向けることができる。個々のペプチドおよびタンパク質は、たとえば細胞内部でそれらを緑色蛍光タンパク質キメラとして発現させることにより、工学技術で作製して自己蛍光性にすることができる(総説は、Jonesら(1999)Trends Biotechnol.17(12):477−81を参照)。そのため抗体は遺伝的に改変されて、その構造の一部として蛍光染料を提供することができる。選ばれた標識に応じて、パラメータは蛍光標識以外を使用して、放射線免疫測定法(RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ホモジニアス酵素免疫測定法、および関係のある非酵素的技法などの免疫測定法技法を使用して測定され得る。
上記腫瘍関連炭水化物抗原および必要に応じて、しかし好ましくは少なくとも1つのさらなるがん幹細胞マーカーを発現する、分析された検体中の細胞の同定は、上記分析された検体中のがん幹細胞の存在を示し、原発性腫瘍における、ならびに転移におけるがん幹細胞ドメインの定義もできるようにし得る。そのほかに、上に記載したように、特異的腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞の同定は、上記がん幹細胞を含む上記がんを処置するための適切な療法を選択できるようにする。
1実施形態により、本発明による方法で使用される結合剤は、腫瘍特異的炭水化物抗原を特異的に結合する。好ましくは、上に記載したならびに請求項9および10に定義した本発明の診断に関係のある方法を行うために使用される条件下で、上記結合剤は非がん細胞、非腫瘍細胞、良性がん細胞および/または良性腫瘍細胞で発現される抗原、特に炭水化物抗原を結合しない。本発明の方法でそれぞれ腫瘍特異的結合剤を使用することは複数の利点を有する。上記結合剤が標的細胞およびそのため上記腫瘍特異的炭水化物抗原を発現する細胞のみを認識して、そのため結合するが、同様の抗原、特に同様の炭水化物抗原を発現するだけの非標的細胞を結合しないことが確保される。このことは本発明による方法における偽陽性のリスクを低減する。好適な腫瘍特異的結合剤は、特に上記腫瘍特異的炭水化物抗原がCD176である実施形態について上に記載されている。
好ましい実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する上記結合剤は抗体または抗体の抗原結合フラグメントもしくは誘導体である。
1実施形態により、検出される上記腫瘍関連炭水化物抗原に特異的な抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体は、上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞を染色するために使用される。CD176、CD175、CD175s、CD174、CD173およびCA19−9を結合する抗体の好適な例は上で詳細に記載されている。それは上の開示に言及されている。
腫瘍関連炭水化物抗原を発現するならびに特にCD176、CD175、CD175s、CD174、CD173および/またはCA19−9を発現するがん種は、上に記載されている。それは上の開示に言及されている。
1実施形態において、上記患者検体は参照または標準試験値と比較される。別の実施形態において、上記患者検体は、前がん検体と、または上記疾患の経過を通じて1つ以上の時点で取得された患者検体(複数可)と比較される。
本発明のいくつかの実施形態において、存在するがん幹細胞によってがんの分類および/または臨床病期分類のための方法が提供され、より多数のがん幹細胞は、より高悪性度のがん表現型を示す。
本発明の別の実施形態において、腫瘍関連炭水化物抗原を発現する単離がん幹細胞の組成物が提供される。そのため、哺乳動物がん幹細胞の組成物も提供され、ここで、上記組成物中の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは(most preferred)少なくとも90%の細胞は、腫瘍関連抗原に、好ましくは腫瘍特異的炭水化物抗原に陽性であるがん幹細胞である。
これらの細胞、組成物はそれぞれ、たとえば、実験的評価のために、ならびに系列および細胞特異的生成物の源として、ならびにそれらに影響することができる因子または剤の発見のための標的として有用である。これらのがん幹細胞、組成物はそれぞれ、上記がん幹細胞に対する効果について剤をスクリーニングする方法で使用され得る。これは候補剤を本発明の細胞集団と組合せること、および次に上記剤から生じる任意の調節効果を決定することを伴う。これは毒性、代謝変化、または細胞機能に対する効果についての上記細胞の検査を含み得る。本明細書に記載するがん幹細胞の表現型は、疾患進行、再発、および薬物耐性の発生を予測する手段を提供する。
そのほかに、腫瘍関連炭水化物抗原を発現する単離されたがん幹細胞または上記腫瘍関連炭水化物抗原を含むその溶解物、フラグメントもしくは画分の上記組成物は、がん幹細胞をターゲティングする免疫療法目的に有用である。たとえばそれらは、自家または同種異系ワクチンとして使用され得る。これらのがん幹細胞組成物は、全体として生または不活性で(好ましくは、上記細胞は分裂できない)、これら単独のまたは他の剤、例としてアジュバントと組合せた溶解物、フラグメント、画分または精製物として、上記がん幹細胞、上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん、上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現する転移および/または上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現する播種性腫瘍細胞に対する免疫応答を達成するために、動物またはヒトのどちらかを免疫するのに使用することができる。好ましくは、それらは上記腫瘍関連炭水化物自体に対する免疫応答を誘起する。好ましくは、腫瘍関連、好ましくは腫瘍特異的炭水化物抗原を発現する上記がん幹細胞に対する少なくとも1つの結合剤は、これにより取得される。好ましくは、上記取得された結合剤は腫瘍特異的であり、そのため上記腫瘍特異的炭水化物抗原のみを認識および結合するが、がん細胞、好ましくはがん幹細胞で発現されない同様の炭水化物構造は認識および結合しない。
1実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原を含む上記がん幹細胞またはそれの溶解物、フラグメントもしくは画分は、抗原提示細胞ベースワクチンを取得するために使用される。好ましくは、抗原提示細胞、例としてたとえば樹状細胞前駆体はエクスビボで刺激されて、成熟し、がん幹細胞で発現される腫瘍関連炭水化物抗原を取り込んで提示する。この目的のために、上記抗原提示細胞は、腫瘍関連炭水化物抗原を発現する本発明による組成物および/またはその溶解物、フラグメントまたは画分と同時インキュベートすることができる。それらはワクチン接種を受ける患者から入手され得るか、またはそれらは同じ種類のがんを持つ他の患者から入手され得る。成熟樹状細胞は次に上記患者に注射されて、上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞に対する免疫応答を引き出すことができる。好適なおよび好ましい腫瘍関連炭水化物抗原は上に記載され、それはそれぞれの開示に言及されている。
がん幹細胞で発現される上記腫瘍関連炭水化物抗原を含む、本発明による組成物またはその溶解物、フラグメントもしくは画分を使用することにより取得される上に記載されたワクチンは、がん、転移または播種性(dissiminating)腫瘍細胞成長を防止、低減または治癒する、好ましくは上記がん幹細胞に対する、好ましくは固形腫瘍の上記がん幹細胞に対する免疫応答を誘起する。
そのほかに、上記腫瘍関連炭水化物抗原を含む本発明による上記組成物またはその溶解物もしくは画分は、上に記載した治療目的に有用な好適な結合剤を同定および/または単離するのに有用である。たとえばそれらは、がん幹細胞を標的とする好適な結合分子を同定するためのスクリーニング標的として使用することができる。好適なスクリーニング方法は、従来技術で公知である。1実施形態により、結合剤を発現および/またはディスプレイする細胞、ファージ、細菌または酵母は、本発明によるこれらの上述の組成物、上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞または上記腫瘍関連炭水化物抗原を含むその溶解物、画分もしくは精製物へのその結合により、当業者に公知のスクリーニング技術によって選択される。そのほかに、上記腫瘍関連炭水化物抗原を含む本発明による上記組成物またはその溶解物もしくは画分は、免疫原として使用されるときに、好適な結合剤を取得するのに有用である。たとえば好適な抗体を取得するためのそれぞれの免疫方法は従来技術で公知であり、上にも記載されている。
上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現する興味のある上記がん幹細胞は、上に記載した特徴を有する細胞について富化する技法により細胞の複合混合物から分離され得る。例は上に記載され、これに限定されるわけではないが、上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤を担持する磁性粒子の使用を伴うFACSソーティング手順または方法を含む。上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する好適な結合剤は、上に記載されている;それはそれぞれの開示に言及されている。
1実施形態により、上記腫瘍関連炭水化物抗原はCD176、CD175、CD175s、CD174、CD173、およびCA19−9から成る群より選択され、好ましくはCD176、CD174およびCD173より選択される。上記腫瘍関連炭水化物抗原に関する詳細事項は上で詳細に記載されている。それは上の開示に言及されている。
好ましくは、上記組成物は少なくとも1つのさらなる幹細胞マーカーに陽性であるがん幹細胞を含む。好ましくは、上記がん幹細胞は、さらに好ましくは(more preferred)CD34、CD44、CD44v6、CD133およびCD164から成る群より選択される糖タンパク質を発現する。
好ましくはCD176、CD175、CD175s、CD174、CD173、およびCA19−9から成る群より選択され、さらに好ましくは(more preferred)CD176、CD174およびCD173より選択される上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞を単離する工程を含む、がん幹細胞の単離のための方法も提供される。上記方法は以下の工程を含む:
a)腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞を含むまたは含むことが疑われる組成物を、腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞を結合するための、上記腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤と接触させる工程;
b)腫瘍関連炭水化物抗原を発現する少なくとも1つのがん幹細胞を残存する組成物から分離する工程。
好適な結合剤、それぞれの腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん種および他の詳細事項は、上および下に記載されている。それは上の開示に言及されている。
組織からのそれぞれの細胞の単離には、適切な溶液が分散または懸濁のために使用され得る。概してこのような溶液は、概して5〜25mMの低濃度の許容され得る緩衝液と併せてウシ胎仔血清または他の天然に存在する因子が都合よく補われた平衡塩類溶液、たとえばノーマルセーライン(normal saline)、PBS、ハンクス平衡塩類溶液などである。便利な緩衝液は、HEPES、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液などを含む。
分離された細胞は、上記細胞の生存能力を維持する、通例、収集チューブ底部に血清のクッションを有する任意の適切な培地に収集され得る。各種の培地が市販され、細胞の性質によって使用され得て、ウシ胎仔血清を補うことが多いdMEM、HBSS、dPBS、RPMI、イスコフ培地などが含まれる。
腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞が高度に富化された組成物が、本様式で達成される。対象集団は、上記細胞組成物の50パーセントもしくは約50パーセント以上、好ましくは細胞組成物の75パーセントもしくは約75パーセント以上、90パーセント以上であり得る。所望の上記細胞は、その表面表現型によって同定される。詳細事項は上に記載され、それはそれぞれの開示に言及されている。好ましくはそのがん幹細胞表現型は、幹細胞の必須の特性であるその自己再生能力によって加えて確認される。上記富化されたがん幹細胞集団はただちに使用され得るか、または液体窒素温度にて凍結され、長期間にわたって貯蔵され得、解凍されて、再使用することが可能である。上記細胞はたとえば、10パーセントのDMSO、50パーセントのFCS、40パーセントのRPMI1640培地で貯蔵され得る。上記腫瘍関連炭水化物抗原および必要に応じてさらなるがん幹細胞マーカーを発現するがん幹細胞が富化された細胞集団は、下記のような多種多様のスクリーニングアッセイおよび培養で使用され得る。
上記富化されたがん幹細胞集団は、各種の培養条件下にてインビトロで成長され得る。培養培地は液体または半固体であり得て、たとえば寒天、メチルセルロースなどを含有する。上記細胞集団は通常、ウシ胎仔血清(約5〜10パーセント)、L−グルタミン、チオール、詳細に2−メルカプトエタノール、および抗生物質、たとえばペニシリンおよびストレプトマイシンを補った適切な栄養培地、例としてイスコフ改変DMEMまたはRPMI−1640に都合よく懸濁され得る。
培養物は、上記細胞が反応性である成長因子を含有し得る。成長因子は本明細書で定義されるように、培養物中または無傷の組織中のどちらかで,膜貫通受容体に対する特異的作用を通じて、細胞の生存、成長およびまたは分化を促進することが可能である分子である。成長因子は、ポリペプチド因子および非ポリペプチド因子を含む。多種多様の成長因子、たとえばLIF、スチール因子(steel factor)(cキットリガンド)、EGF、インスリン、IGF、NGFなどが細胞を培養するのに使用され得る。成長因子のほかにまたは代わりに、対象細胞は、線維芽細胞、間質細胞または他のフィーダー層細胞との同時培養で成長し得る。
腫瘍関連炭水化物抗原を特異的に結合する結合剤および使用のための指示を含む、がんの診断、病期分類および/もしくは予後判定、がんの転移挙動の診断、病期分類および/もしくは予後判定、インビボイメージングならびに/またはがんの治療的処置の有効性の監視のためのキットも提供される。好ましくは、上記結合剤はCD176、CD175、CD175s、CD174、CD173、およびCA19−9から成る群より選択される、さらに好ましくは(more preferred)CD176、CD174およびCD173より選択される、がん幹細胞で発現される腫瘍関連炭水化物抗原を結合する。
好ましくは、上記結合剤は標識されている。好適な結合剤および標識は上に記載され、それはそれぞれの開示に言及されている。キットは、チューブ、バッファーなどおよび使用のための指示も含み得る。
好ましい実施形態により、上記キットはさらなる幹細胞マーカーを特異的に結合する少なくとも1つのさらなる剤を含む。好ましくは、上記幹細胞マーカーは糖タンパク質である。好ましい実施形態により、上記キットはCD34、CD44、CD44v6、CD133およびCD164から成る群より選択される糖タンパク質を特異的に結合する少なくとも1つのさらなる剤を含む。
腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞に対する有効性について候補治療剤をスクリーニングする方法も提供され、上記方法は:
a)上記剤を本発明による細胞組成物と接触させる工程、および
b)上記腫瘍関連炭水化物抗原に対する上記剤の有効性を決定する工程、
を含む。
それぞれのスクリーニング方法は、因子および治療剤、例としてがん幹細胞で活性である化学療法剤、結合剤または他の抗がん薬を検出、同定および/または単離するインビトロアッセイおよびスクリーニング方法にとって特に有用である。特に興味があるのは、ヒト細胞で活性である剤のスクリーニングアッセイである。タンパク質結合、細胞成長、分化および機能活性の決定、因子の産生のための免疫測定法;などを含む、多種多様のアッセイが本目的のために使用され得る。
候補治療剤についてのスクリーニングアッセイでは、通例、興味のある上記腫瘍関連炭水化物抗原を発現するがん幹細胞を含む培養物が、興味のある結合剤と接触され、上記剤の効果は出力パラメータ、例としてマーカーの発現、細胞の生存能力などを監視することによって評価される。上記スクリーニングは、上記候補治療剤の非存在下での上記細胞の成長、増殖、生存能力、および/または分化状況と比較して、上記候補治療剤の存在下で上記細胞の成長、増殖、生存能力、および/または分化の調節を決定することも含み得る。
好ましくは,上記腫瘍関連炭水化物抗原はCD176、CD175、CD175s、CD174、CD173、およびCA19−9から成る群より選択され、さらに好ましくは(more preferred)CD176、CD174およびCD173より選択された。詳細事項は上に記載され、それはそれぞれの開示に言及されている。
上記細胞は、上に記載したように新たに単離、培養、遺伝子的に改変されて、シグナル伝達経路などの活性化のためのマーカーを提供し得る。上記細胞は、たとえば独立した培養物中に分けられて、別個の条件下で、たとえば薬物を用いてまたは用いずに;サイトカインまたはその組合せの存在下または非存在下で成長した、クローン培養物の環境誘起バリアントであり得る。応答のタイミングを含む、細胞が剤、詳細には薬理学的剤に応答する様式は、上記細胞の生理的状態の重要な反映である。
パラメータは、細胞の定量化可能な成分、詳細には望ましくは高スループットシステムで正確に測定することができる成分である。
候補剤は、上記剤を哺乳動物がん幹細胞の少なくとも1つの組成物に添加することによって、生物活性についてスクリーニングされ、ここで、上記組成物中の上記細胞の少なくとも50%は興味のある上記腫瘍関連炭水化物抗原に陽性である。上記組成物のさらなる特徴は上に記載され、本発明者らはそれぞれの開示で言及している。上記剤に応答したパラメータの変化が測定され、その結果は、たとえば上記剤の存在および非存在下で、他の剤などを用いて取得された参照培養物に対する比較によって評価される。
上記剤は、溶解されてまたはただちに可溶性の形態で、培養中の細胞の培地に都合よく添加することができる。上記剤は、フロー・スルー・システムに流れとして間欠的もしくは連続的に添加され得るか、または代わりに、上記化合物のボーラスを単独にまたは増加的に、別の方法で静止している溶液に添加される。フロー・スルー・システムでは、2つの流体が使用され、一方は生理学的に中性の溶液であり、他方は試験化合物が添加された同じ溶液である。その第1の流体は上記細胞を通過して、続いて第2の流体が通過する。単一溶液の方法では、上記試験化合物のボーラスが上記細胞の周りの培地の体積(volume)に添加される。培養培地の成分の全体の濃度は、ボーラスの添加によって、またはフロースルー方法における2つの溶液の間で、有意に変化すべきではない。
本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル、細胞系、動物種または属、および試薬に制限されず、これらは変化し得ることが理解されるはずである。本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、添付の特許請求の範囲によってのみ制限され、本発明の範囲を制限するものではないことも理解されるはずである。
I.肺がん、乳がんおよび肝臓がん幹細胞でのCD176(トムゼン−フリーデンライヒ抗原)の発現
1.材料および方法
抗体
適用された抗体は:CD44 mAb(G44−26,BD Biosciences、フランクリンレイクス、NJ、米国)、CD133 mAb(ANC9C5,Ancell、ベイポート、MN、米国、CD176 mAb(NM−TF2,Glycotope GmbH、ベルリン、ドイツ)、MUC1 mAb(PankoMab,Glycotope GmbH)であった。
細胞系および細胞培養
乳腺癌(MDA231、MDA435、およびMCF−7)、肺がん(SPC−A−1およびGLC−82、肺腺癌;NCIH446、小細胞肺癌腫;801−D、巨細胞肺癌腫)、および肝細胞癌腫(HepG2およびHuH−7)からのがん細胞系を含む、幅広い多様なヒトがん細胞系を本研究で使用した。すべての細胞系を、10%ウシ胎仔血清を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で通常どおりに培養した。
免疫細胞化学
培養した細胞を、10%ウシ胎仔血清を含有するDMEM/F12培地中、ポリリシン(Sigma、セントルイス、MO、米国)コートスライド上に一晩蒔いた。その後、上記培地を慎重に吸引して、上記スライドを空気乾燥させた。包んだスライドを−80℃にて使用するまで貯蔵することができた。免疫蛍光二重染色のために、細胞を冷(−20°)アセトンで15分間固定し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の2%ウシ血清アルブミン(BSA)によって30分間ブロッキングして、CD176に対するmAbと一緒に、CD44またはCD133に対する抗体とともに60分間インキュベートした。続いてスライドをフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合体化抗マウスIgM(μ鎖特異的)(F9259,Sigma)およびCy3結合体化ヤギ抗マウスIgG(γ鎖特異的)(#69732,Jackson Laboratories、ウェストグローブ、PA、米国)の混合物とともにインキュベートした。対比染色を4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールジヒドロクロリド(DAPI)(Beyotime Biotechnology,Jiangsu,中国)を用いて行った。陰性対照は特異的mAbの代わりに培地で行った。上記スライドをグリセロールでマウントし、共焦点顕微鏡法(オリンパス、東京、日本)および蛍光顕微鏡法によって分析した。陽性細胞または二重陽性細胞のパーセンテージをデジタル画像上でカウントした。
フローサイトメトリー分析
細胞系の細胞懸濁物を1×10細胞/100μlにて調製した。細胞を、2%BSAを含有するPBSを用いて2回洗浄し、適切な希釈度の1次抗体によって4℃にて20分間、続いて適切な濃度の抗IgG−Cy3(γ鎖特異的)および抗IgM−FITC(μ鎖特異的)によって4℃にて20分間インキュベートした。フローサイトメトリーをFACScan(BD Biosciences、フランクリンレイクス、NJ、米国)を用いて行った。10,000細胞から収集したデータおよびWinMDIソフトウェアをFCSデータファイルの分析に使用した。
4−ヒドロキシタモキシフェン処置のために、MDA231、MDA435およびMCF−7乳腺癌細胞系を20nMの最終濃度の4−OHT(#H6278,Sigma)に24時間曝露した。次にフローサイトメトリー分析を上に記載したように行った。
組織および免疫組織化学
21症例の肺癌腫(13症例の腺癌および8症例の扁平上皮癌腫)、15症例の乳癌腫、および21症例の肝細胞癌腫(HCC)の被検物を、最初の手術を受けた患者から取得した。上記検体は、患者の機密保護のため完全にコード化され、すべての参加施設の地域研究倫理委員会によって承認された。
新たな組織をプラスチック型内のOCT化合物で−20℃にて(最適切断温度)慎重に包埋して、クリオスタットチャンバ内での平衡化後に4〜8μm切片に切断し、冷(−20°)アセトンによって15分間固定した。免疫蛍光二重染色のために、上記組織切片を適切な希釈度の1次抗体で60分間ブロッキングおよびインキュベートして、続いて抗IgG−Cy3(γ鎖特異的)および抗IgM−FITC(μ鎖特異的)2次抗体とともにインキュベートし、DAPIで対比染色して、顕微鏡分析のためにスライドガラスをグリセロールでマウントした。免疫ペルオキシダーゼ染色のために、上記組織切片を3%Hで30分間処理して、内因性ペルオキシダーゼを遮断し、PBSで3回洗浄して、2%BSAによってブロッキングした。上記組織切片を上記1次抗体とともにインキュベートして、次にペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン抗血清(DAKO、コペンハーゲン、デンマーク)で処理した。陰性対照は上記mAbの代わりにPBS中2%BSAを用いて行った。抗MUC mAb(PankoMab)をすべてのバッチの肺癌腫被検物において陽性対照として使用した。ペルオキシダーゼ基質ジアミノベンジジンによって発色させた。ヘマトキシリンによって対比染色を行った。細胞数を100×倍率にてニコン顕微鏡を用いてカウントした。二重陽性細胞のパーセンテージをデジタル画像上で見積もった。
サンドイッチELISA
100万個の細胞をプロテアーゼインヒビタ(#539134,Calbiochem、ダルムシュタット、ドイツ)の混合物を含有する1mlの1%トリトン−100(100mMリン酸ナトリウム、pH7.5、150mM NaCl中)で処理して、振動によって4℃にて30分間ホモジナイズした。遠心分離機で15,000gにて10分間の遠心分離の後、上清を取った。96ウェルのポリスチレンマイクロプレートを、1μg/mlの作業濃度の、CD44に対する捕捉抗体によって4℃にて14時間コートした。残存するタンパク質結合部位を5%BSAによってブロッキングした後、100μlの抗体上清をウェルに添加して、室温にて2時間インキュベートした。次に上記プレートをCD176mAbとともに、続いてペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgM抗体(μ鎖特異的)(SouthernBiotech、バーミングハム、AL、米国)によってインキュベートした。呈色反応を、o−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(OPD)溶液によって室温にて生じさせた。上記反応を2.5M硫酸によって停止した。陰性対照は上記mAbsの代わりにPBS中2%BSAで行った。各ウェルの光学密度は、マイクロプレートリーダー(Bio−Rad、ハーキュリーズ、CA、米国)を使用して492nmにて30分以内に決定した。
統計解析
データをカイ2乗検定またはフィッシャーの正確確率検定のどちらかによって分析した。計数データのピアソンの相関分析も行った。P<0.05の値は統計的に有意と見なされた。
2.結果
肺がん、乳がん、および肝臓がん細胞系におけるCD44およびCD133の発現
CD44は、大半の上記がん細胞系において、60%を超える細胞で検出された。1つの細胞系HuH−7(HCC)は、低いパーセンテージのCD44陽性細胞を示した。CD133細胞は、801−D(巨細胞肺癌腫)およびHuH−7(HCC)を除く本研究で使用した細胞系(上記細胞の1%未満)にて、ごく小さい亜集団を表した。これらの細胞系は常に、CD133を上記細胞のうちの15%および6%の表面でそれぞれ発現した。
肺がん、乳がん、および肝臓がん細胞系におけるCD176の発現
mAb NM−TF2を用いたフローサイトメトリーおよび免疫細胞化学分析を通じて、本発明者らはCD176が上記細胞の表面および細胞質に局在することを見出した。上記細胞系は、CD176をさまざまな強度で発現した:MDA231、MDA435(乳腺癌)、およびHuH−7(HCC)は5%から30%の陽性細胞を含有した;SPC−A−1(肺腺癌)、801−D(巨細胞肺癌腫)、およびHepG2(HCC)は30%から60%の陽性細胞を明らかにした;GLC−82(肺腺癌)、NCIH446(小細胞肺癌腫)、およびMCF−7(乳腺癌)は、60%超の陽性細胞を有した。
肺がん、乳がん、および肝臓がん細胞系におけるCD176、CD44、CD133の同時発現
CD44およびCD133は、がん開始細胞の認められたマーカーであるため(Chuら、2009;Baoら、2006;Ponnusamy and Batra 2008)、本発明者らは一方または両方がCD176と同時発現されるかどうかを調べた。細胞系における二重免疫蛍光染色実験は、CD44およびCD176が細胞表面に局在して、単一細胞または細胞クラスタの同時発現を呈することを実証した(図1.1、a−i)。フローサイトメトリー実験は、以下の同時発現データを明らかにした。MCF−7(乳腺癌)は約7%のCD44/CD176細胞を含有して、SPC−A−1、801−DおよびHepG2は、30%から60%のCD44/CD176細胞を含有し、GLC−82およびNCIH446は60%を超えるCD44/CD176細胞を有した(表1.1、図1.1、1.2を参照)。
対照的に、大半の細胞系は、ごく少数の、CD133/CD176表現型を持つ細胞(1%未満)を含有していた。例外として、801−DおよびHuH−7は、5%超の、CD133/CD176表現型を持つ細胞を有していた(表1.2)。
CD44およびCD176発現が外因性(exogeneous)処理によって同時に影響されたかどうかを評価するために、エストロゲン受容体リガンドのタモキシフェン(4−OHT)を乳がん細胞に添加した(24時間、20nM)。本発明者らの結果は、フローサイトメトリーによって示されるように、MDA231およびMCF−7ではCD44/CD176同時発現細胞の数の有意な増加がなかったのに対して、MDA435では、CD44/CD176細胞のパーセンテージが処理後に増加したことを示した(図1.2B)。
肺癌腫組織におけるCD176の発現
本研究において、mAb NM−TF2を採用して肺癌腫組織におけるCD176の発現を調査した。21名の患者から調べた組織は、13名の腺癌および8名の扁平上皮細胞癌腫を含んでいた。CD176は細胞表面および細胞質中に分布していた。例を図1.1のjとkに示す。肺癌腫におけるCD176−陽性細胞のパーセンテージを表3に示す。肺癌腫の4症例が50%超の陽性細胞を明らかにした。これらのデータは、同時発現実験の前提である以前の論文(Tomaら、1999)とは対照的に、肺がん組織におけるCD176の発現を確認している。CD176発現は、統計解析を使って臨床病理学的特徴と比較された。>5%の陽性細胞を示す症例は、陽性と定義された。その結果は、CD176の状態(status)と腫瘍悪性度ならびに肺癌腫を持つ患者における転移との間の相関を示す(P<0.05)。しかし、CD176の発現と患者の年齢、性別、または組織学的サブタイプ(腺癌または扁平上皮細胞癌腫)を含む他の臨床病理学的特徴との間に統計的に有意な相関はなかった。
肺癌腫組織、乳癌腫組織、および肝細胞癌腫組織におけるCD176とCD44またはCD133との同時発現
問題の組織におけるCD44、CD133およびCD176発現についての免疫組織化学データを表1.3に示す。上記がん細胞系と同様に、CD44はすべての癌腫において、高い(60%を超える)パーセンテージで強くおよび散在して発現された。CD133細胞は、所与の癌腫組織のうちで細胞の亜集団(全がん細胞の10%未満)のみを除いて、大半の症例で見出された。肺癌腫の2症例、乳癌腫の3症例およびHCCの1症例はCD133を全く発現しなかった。CD133細胞は、散乱パターンまたはクラスタ化された形態で存在した。CD133発現は肺癌腫において、性別、年齢または組織学的サブタイプとのいずれの統計的に有意な相関も示さなかった。
上記新たな臨床検体におけるCD176とCD44またはCD133の同時発現を調べた。上記がん性組織における二重染色結果は、5〜30%のCD44細胞がCD176を同時に発現して(表1.4を参照)、CD133細胞の大半もCD176を発現することを示した。しかし本発明者らは、上記マーカーのうちの1つについて陽性の各細胞において、CD176とCD44またはCD133の同時発現が見られないことにも注目した。いくつかのCD44細胞およびCD133細胞はCD176を発現せず、逆の場合も同様であった。上記HCCは、肺癌腫または乳癌腫のどちらよりも、CD133CD176表現型を持つ細胞を著しく多く有していた。肺癌腫におけるCD176の状態(status)とCD133の状態(status)との間に統計的に有意な相関があった(P<0.05)。臨床病理学的特徴と上記CD44CD176表現型との間の相関は本研究では見られなかった。
CD176を担持するCD44の検出
複数の癌腫細胞系において、CD176の潜在的糖タンパク質キャリア分子をサンドイッチELISAによって分析した。本発明者らは捕捉抗体としてのCD44でコートしたポリスチレンマイクロプレートを使用して、CD44糖タンパク質を細胞全体の溶解物から収集した。上記プレートを次に検出抗体としてのNM−TF2(CD176)とともにインキュベートした。表1.5に示すように、捕捉されたCD44は、すべての(4)肺および(2)肝臓がん細胞系ならびに3つの乳がん細胞系のうちの2つにおいてCD176mAbと反応することが見出され、これらの症例において、CD44が明白にCD176のキャリアであることが示された。
3.考察
多数の刊行物によって、すべてではないにしても大半の腫瘍種の開始、維持、および分散が、がん開始細胞またはがん幹細胞と呼ばれる細胞の小集団に本質的に起因するという見解が一般に受け入れられるようになった(Chuら、2009;Baoら、2006)。
がん幹細胞は、活発に増殖する腫瘍細胞に分化する性向を呈する。それらは腫瘍塊の細胞の大部分とは明確に異なるが、それらはがん療法において(同時)ターゲティングされるべきである。非常に多くの、多かれ少なかれ特異的ながん開始細胞のマーカーが、近年記載されている。これらのマーカーの重要点は、それらが多すぎること、およびそれらが十分に一貫したものでないことである。上記マーカーの中で最も広く受け入れられているのは、CD44である(Ponnusamy and Batra 2008;Shipitsinら、2007)。別の膜糖タンパク質のCD133も、脳、結腸、肺、および他の固形腫瘍におけるがん開始集団を同定可能であることが提案されている(Tirinoら、2008)。CD133は、患者における全体的な低い生存を悪性腫瘍と相関させる独立した予後判定マーカーである(Horstら、2008)。しかし近年の報告は、CD133陰性細胞もNOD/SCIDマウスにおいて長期腫瘍形成が可能であることを示した(Shmelkovら、2008)。
本発明の基礎をなす本研究において、CD44およびCD133の発現が細胞系ならびに肺がん、乳がん、および肝臓がんからの臨床検体において評価された。腫瘍細胞の大多数が、CD44に対して陽性に染色されることが見出された。対照的に、研究したがん細胞系の大半では、低いCD133発現が明らかになった。CD133は肺がん、乳がんおよび肝臓がん組織において、染色後にさまざまな強度にて常に発現された。他の著者らは、CD133が結腸がん(Ricci−Vitianiら、2007)、ならびに非小細胞肺がん(Tirinoら、2009)および脳腫瘍(Singhら、2004)においてそれぞれ、腫瘍細胞の総数の約2.5%および6〜29%で発現されたことを報告している。
次に、がん開始細胞のこれら2つのマーカーであるCD44およびCD133と、CD176との同時発現が分析された。とりわけ肺癌腫細胞系およびHepG−2において、高いパーセンテージの細胞が、ならびに他のすべての調べた細胞系においてかなりの数が、CD176およびCD44を同時発現するとして見出された。調べた肺がん組織、乳がん組織および肝臓がん組織において、CD176およびCD44を同時発現する細胞の数は5〜30%に達した。CD176およびCD133を同時発現する細胞の数は、すべての症例ではるかに少なかったが(CD133発現細胞の総数と同様に)、同時発現細胞は完全に存在しないわけではなかった。
ここに紹介するデータは、CD176が成熟がん細胞だけではなく、固形腫瘍のがん開始細胞でも発現されることを実証する。このことは魅力的な治療標的としてのCD176に追加の重みを添加する。CD176乳がん細胞の数がタモキシフェン(4−OHT)による処理後に向上するかどうかも分析された。タモキシフェンは、G0/G1成長停止を誘起して、乳がん細胞の増殖を抑制することが報告された。近年の研究は、タモキシフェン処置が乳房がん幹細胞様細胞の数を増加したことを示した(Maniら、2008)。本発明者らの研究において、乳がん細胞のタモキシフェン処理は、3つの細胞系のうち1つ(MDA−435)においてCD44/CD176表現型を向上させた。がん幹細胞の理論によると、がんの再発および転移はがん開始細胞に依存する。上記腫瘍塊とは異なる特性を持つこのような細胞の集団の現存は、従来の療法、たとえばタモキシフェンによる処置ががんを抑止するが、がんを完全に根絶できないことが多い理由を説明し得る。反対に、この処置はがん開始細胞の数を向上さえし得る(Maniら、2008)。理論的に、がん開始細胞の排除は、腫瘍の再燃を防止することが可能である。標的がん開始細胞に対する新たな治療手法の開発はゆえに、がん療法に対して深い影響力を有し得る。そのため、固形腫瘍のがん開始細胞でのCD176の同定は、CD176ベース免疫療法の今後の利用にとって重要である。
CD176のデマスキングは、細胞膜に存在するすべての可能性のある候補糖タンパク質のうち少数のみを伴う選択的プロセスであるようである。上皮細胞においてこれまでに同定されたCD176の最も突出したキャリア分子は、たとえば結腸直腸癌腫における多型上皮ムチンMUC−1である(Barrら、1989;Caoら、1997;Baldusら、1998)。ここでCD44が、分析された細胞におけるcore−1のキャリア分子であるかどうかが決定された。この目的のために、本発明者らは特殊なサンドイッチELISAを適用して、それを用いて肺がん、乳がんおよび肝臓がんを調べた。本発明者らのデータは、結腸直腸癌腫以外の腫瘍において、CD176がCD44によって顕著に担持されていたことを示唆している。CD176抗原は、肺患者における予後判定の有用なマーカーであることが見出されたが(Takanami 1996)、この組織におけるそれの発現について矛盾する報告が残っている(Tomaら、1999)。本発明者らの研究において、本発明者らは、十分に特徴付けられていて、免疫組織化学および他の技法に適しているモノクローナル抗体NM−TF2を採用することによって、本課題を再度調べた。高度のCD176発現が大半の肺がん細胞系で観察された。臨床肺がん検体において、本発明者らは、50%を超える症例がカットオフ値(5%陽性細胞)を超えるCD176であることも見出した。
要するに、CD176(トムゼン−フリーデンライヒ抗原、core−1)発現は、ヒト肺癌腫、乳癌腫および肝臓癌腫ならびにこれらの悪性腫瘍に由来する細胞系で見出された。ヒト肺癌腫、乳癌腫および肝臓癌腫におけるCD44およびCD176の、ならびにCD133およびCD176の同時発現は、CD176が成熟がん細胞で発現されるだけでなく、がん開始細胞でも発現されることを実証した。このことにより、正常および良性成人ヒト組織ではほぼ存在しない(Caoら、1996)CD176が、腫瘍療法のためのなおさらに有望な標的となる。
II.乳がん開始細胞でのCD173(H2)およびCD174(ルイスY)とCD44との同時発現
1.材料および方法
細胞系および細胞培養
本研究では、乳腺癌細胞系MDA−MB−231、MDA−MB−435、およびMCF−7を使用した。これらの細胞系を、10%ウシ胎仔血清を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で通常どおりに培養した。上記細胞を37℃にて、5%CO/95%空気の、100%相対湿度に近い雰囲気中で成長させた。
免疫細胞化学
上記細胞を培養培地中のポリリシン(Sigma、セントルイス、MO、米国)コートスライド上に一晩蒔いた。その後、上記培地を慎重に吸引して、上記スライドを空気乾燥させた。包んだスライドを−80℃にて使用するまで貯蔵することができた。免疫細胞化学では、細胞を冷(−20℃)アセトンで15分間固定して、2%ウシ血清アルブミン(BSA)で30分間ブロッキングし、CD44 mAb(G44−26、マウスIgG2b,BD Biosciences、フランクリンレイクス、NJ、米国)とともに、どちらもGlycotope GmbH(ベルリン、ドイツ)からのmAb CD173(A46−B/B10、マウスIgM、Karsten 1988)またはCD174(A70−C/C8、マウスIgM)と一緒に60分間インキュベートした。加えて上記CD133抗体(ANC9C5,Ancell、ベイポート、MN、米国)を使用した。上記スライドを続いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合体化抗マウスIgM(μ鎖特異的)(F9259,Sigma)およびCy3結合体化ヤギ抗マウスIgG(γ鎖特異的)(#69732,Jackson Laboratories、ウェストグローブ、PA、米国)の混合物とともにインキュベートした。対比染色を4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールジヒドロクロリド(DAPI)(Beyotime
Biotechnology,Jiangsu、中国)を用いて行った。陰性対照は、特異的mAbの代わりにマウス血清とともにインキュベートした。上記スライドをグリセロールでマウントし、蛍光顕微鏡法によって分析した。
フローサイトメトリー分析
確立された細胞系からの細胞懸濁物を1×10細胞/100μlの密度で調製した。これらを2%BSAを含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄し、1次抗体とともに4℃にて20分間、続いて適切な濃度の抗IgG−Cy3(γ鎖特異的)および抗IgM−FITC(μ鎖特異的)によって4℃にて20分間インキュベートした。フローサイトメトリーをFACScan(BD Biosciences、フランクリンレイクス、NJ、米国)で行った。10,000細胞から収集したデータおよびWinMDIソフトウェアをFACSデータファイルの分析に使用した。
4−ヒドロキシタモキシフェン処理のために、MDA−MB−231、MDA−MB−435およびMCF−7乳腺癌細胞系を20nMの最終濃度の4−OHT(#H6278,Sigma)に24時間曝露した。次にフローサイトメトリー分析を上に記載したように行った。
免疫沈降
100万個の細胞をプロテアーゼインヒビタ(#539134,Calbiochem、ダルムシュタット、ドイツ)の混合物を含有する、50mM Tris−HCl pH8.0、150mM NaCl中の1%トリトン100 1mlで処理して、振動によって4℃にて30分間ホモジナイズした。15,000gにて10分間の遠心分離の後、上清を取った。プロテインGアガロースビーズ(#P−4691,Sigma)を事前に浄化して非特異的結合物質を除去し、次に振とう機上で抗CD44抗体と共に4℃にて4時間インキュベートした。上記プロテインGアガロースビーズを上清に添加して、転倒型ミキサーで4℃にて一晩インキュベートした。上記ビーズを遠心分離によって収集して、洗浄した。そのペレットをSDS−ポリアクリルアミド(polycacrylamide)ゲル電気泳動(PAGE)検体緩衝液に再懸濁させて、5分間煮沸させた。免疫沈降物を続いてポリアクリルアミドゲル(8%)上で分離して、ウェスタンブロッティングで抗CD173および抗CD174抗体を使用してプローブした。
サンドイッチELISA
96ウェルのポリスチレンマイクロプレートを、PBS中1μg/mlの、CD44に対する捕捉抗体を用いて4℃にて14時間コートした。5%BSAによってブロッキングした後、上に記載したように調製した上清100μlをウェルに添加して、室温にて2時間インキュベートした。次にプレートをCD173またはCD174mAbとともに、続いてペルオキシダーゼ−標識ヤギ抗マウスIgM抗体(μ鎖特異的)(Southern
Biotech、バーミングハム、AL、米国)によってインキュベートした。呈色反応を、o−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(OPD)溶液を用いて室温にて生じさせた。上記反応を2.5M硫酸によって停止した。陰性対照は上記mAbの代わりに2%BSAを用いて行った。各ウェルの光学密度は、マイクロプレートリーダー(Bio−Rad、ハーキュリーズ、CA、米国)を使用して492nmにて30分以内に決定した。組織および免疫組織化学
15症例の乳癌腫被検物を最初の手術を受けた患者から取得した。上記検体は、患者の機密保護のため完全にコード化され、本研究および研究プロトコルはすべての参加施設の地域研究倫理委員会によって承認された。
その新たな組織をプラスチック型内のOCT化合物で−20℃にて(最適切断温度)慎重に包埋して、クリオスタットチャンバ内での平衡後に4〜8μm切片に切断し、冷(−20°)アセトンによって15分間固定した。次に免疫蛍光二重染色を上に記載したように行った。細胞数を100×倍率にてニコン顕微鏡を用いてカウントした。二重陽性細胞のパーセンテージをデジタル画像上で見積もった。
追加の3症例の乳房腺管内癌腫(breast intraductal carcinoma)において、本発明者らは免疫ペルオキシダーゼ染色も行った。組織切片を3%Hによって30分間処理して、内因性ペルオキシダーゼを抑止し、PBSで3回洗浄し、2%BSAによってブロッキングした。その組織切片をCD173抗体でインキュベートして、次にペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン抗血清(DAKO、コペンハーゲン、デンマーク)で処理した。陰性対照は上記CD173抗体の代わりに2%BSAを用いて行った。ジアミノベンジジンによって発色させた。ヘマトキシリンによって対比染色を行った。
統計解析
統計解析は、対応のないt検定、フィッシャーの正確確率検定、またはスペアマン相関検定を使用して行った。データは平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表された。P<0.05は統計的に有意と見なされた。
2.結果
乳がん細胞系でのCD173およびCD174の発現
フローサイトメトリー分析および免疫組織学的染色は、CD173およびCD174が細胞表面に局在することを明らかにした(図2.1a)。上記乳がん細胞系(breast cell line)は、頻繁なCD173およびCD174発現を示した:MDA−MB−231、MDA−MB−435およびMCF−7は、約27%、92%および80%のCD173陽性細胞、ならびに約44%、57%および72%のCD174陽性細胞をそれぞれ含有していた。
乳がん細胞系でのCD44とCD173またはCD174との同時発現
免疫細胞学的染色実験は、乳がん細胞でのCD173またはCD174とCD44との同時発現を調査するために行った。本発明者らは多くの細胞において、CD44染色とCD173およびCD174とのオーバーレイを観察した;例を図1a−cに与える。フローサイトメトリー実験からの半定量的データを図2.2Aに示し、表2.1にまとめる。
CD44、CD173およびCD174発現が外因性(exogeneous)処理後に同時に影響されたかどうかを評価するために、本発明者らは乳がん培養細胞を4−OHTによって処理した。半定量的フローサイトメトリー分析において、4−OHT処理はMDA231におけるCD44CD173およびCD44CD174細胞のパーセンテージを増加させたが(P<0.05)(図2.2B)、MDA−MB−435およびMCF−7細胞では増加させなかった(P>0.05、データは示さず)。
乳癌腫組織におけるCD44またはCD133とCD173またはCD174との同時発現
調べた15の乳癌腫組織のうち、CD44、CD173およびCD174染色も主として細胞膜にて観察された。CD44、CD173およびCD174陽性細胞は、散乱パターンまたはクラスタ化パターンで存在し、そのパターンは個人間で変わった。CD173およびCD174陽性細胞は、大半の症例で見出された。CD173およびCD174陽性細胞の平均パーセンテージは、全がん細胞のそれぞれ51%および52%であった。CD44はすべての症例で、強い免疫反応性を示した(陽性染色癌腫細胞は53%に達した)。興味深いことに、増加したCD173およびCD174発現を持つ症例は、上昇したCD44発現と相関していた(P<0.05)。最も重要なことに、95%を超えるCD173およびCD174陽性細胞はそれぞれCD44抗原を同時発現した(図2.1、d〜i)。
CD133もがん開始細胞のマーカーである。ゆえに本発明者らはCD173またはCD174がこのマーカーと共に乳癌腫組織において同時発現されるかどうかを問うた。本発明者らはCD133が、実際、より低いパーセンテージであるが、CD173およびCD174と同時発現されたことを見出した(図2.1j−l)。加えて、発明者らは、増加したCD173およびCD174発現を持つ症例が、上昇したCD133発現と相関することを見出した(P<0.05)(データを示さず)。
乳房腺管内癌腫(intraductal breast carcinoma)の基底細胞でのCD173の発現
3症例の乳房腺管内癌腫において、CD173mAbは残存する管壁の基底細胞を染色した(図2.3)。同じ切片の移行組織の正常な管において、周囲管(主に基底)細胞層は、CD173に対して時折陽性であるのみであった。これらの細胞におけるCD173の発現は、個人のABH血液型タイプおよび分泌型の状態(status)から独立していた(データを示さず)。
CD173またはCD174を担持するCD44についての証拠
CD173またはCD174を担持する潜在的糖タンパク質は、3つの乳癌腫細胞系において免疫沈降によりおよびサンドイッチELISAで分析された。3つの細胞系の溶解物からのCD44免疫沈降物は、mAb CD173およびCD174を使用する免疫ブロット分析を施された。どちらの抗体もCD44バンドを染色した(図2.4)。
捕捉抗体としての抗CD44を用い、続いてどちらの抗体も調べた3つの細胞系すべてで陽性を記録した、mAb CD173およびCD174によるサンドイッチELISAは、CD173およびCD174エピトープがCD44分子で発現されていることを示した(表2.2)。
3.考察
がん開始細胞の現存は、脳がん、肺がんおよび乳がんにおいて十分に文書記録されている(Tirino,2008)。それらは多系統分化できる、自己再生する、静止したおよび多分化能の細胞として機能的に定義されている。がん幹細胞の理論によると、がんの再発および転移はがん開始細胞に依存する(Gilbert,2009)。がん開始細胞またはがん幹細胞は、上記腫瘍塊の細胞の大部分とは明確に異なるので、がん開始細胞での表面分子の発現および機能を研究することは、腫瘍生物学の重要な側面である。
本研究で本発明者らは、乳癌腫においてCD173および/またはCD174ががん開始細胞マーカーCD44と共に同時発現されるかどうかを調べた。
本研究は、CD44が、CD173またはCD174と共に細胞表面に位置して、培養された乳がん細胞のかなりの部分および乳がんから取った組織被検物において同時発現を呈することを示すものである。タモキシフェンが乳房がん幹細胞の数を増加させることが報告された(Mani,2008)。本研究において、CD44/CD173またはCD44/CD174乳がん細胞の数は、タモキシフェン(4−OHT)処理後に培養された細胞において向上させること可能であった。ゆえに本発明者らは、乳がんにおいてCD44がCD173およびCD174と同時発現されると結論付ける。
興味深い観察は、乳房腺管内癌腫の症例において残存する管壁細胞のCD173に対する強い染色であった。これは、拡張する腫瘍塊の機械的ストレス下での幹細胞様基底細胞の増殖活性を示す。H抗原およびLeY抗原は発生制御抗原であるため、この現象はこれらの細胞の進行中の上皮間葉移行(EMT)も示す場合もある。
2型ベースのABHオリゴ糖は、複数の異なる糖タンパク質および糖脂質に担持されている(Hakomori,1981)。上皮性卵巣がんにおいて、CD174の主なキャリアタンパク質はCA125およびMUC1である(Yin,1996)。CD34造血幹細胞において、CD173およびCD174の主なキャリアは170kDa糖タンパク質である(Cao,2001)。CD44はH抗原のキャリアでもある(Rapoport,1999)。ここで本発明者らはサンドイッチELISAおよび免疫沈降を使用して、CD44が乳がん細胞においてCD173およびCD174の主なキャリアであることを実証している。
癌腫によって発現された糖タンパク質でのCD173およびCD174構造は、接着、細胞凝集、浸潤、および転移に寄与すると考えられる。CD174は、腫瘍関連新脈管形成の間の早期細胞間接触に関与する(Moehler,2008)。組織化学単独では、がん開始細胞でのCD173およびCD174の発現の機能および重要性が何であるかを決めることはできない。しかし、癌腫におけるCD173およびCD174発現の病態生理学的重要性が実証されている。CD173およびCD174は、がん患者における悪性度の明らかなマーカーである(Fujitani,2001;Steplewska−Mazur,2000)。CD173およびCD174のより高い発現は、より良好な予後を持つ患者と比較して、高グレードおよび不良な予後を持つ患者でより多く見出された(Baldus,2006)。リンパ節陰性乳癌腫において、CD174の過剰発現は、低下した患者生存と有意に関連していた(Madjd,2005)。α1−2フコシル化を媒介する、増加した腫瘍原性は、増加したアポトーシスに対する耐性および免疫調節からの回避と関連している(Goupille,2000)。
現在のがん療法の失敗は、潜在的に静止性のがん幹細胞に対する薬物の無効力に帰するとされ得る。処置戦略はゆえに、がん幹細胞の存在を考慮する必要がある。乳癌腫におけるがん幹細胞の表面でのCD173の、およびとりわけCD174の高い発現は、これらの抗原が、抗体が媒介する診断および療法の有望な標的であることを示唆する。より最近の研究は、低用量の抗CD174 mAbの投与が、TNF−α放出の誘起なしでも有効な抗腫瘍応答をもたらし得ることを実証し(Dettke,2000)、およびドキソルビシンと結合体化された抗CD174抗体が現在、上皮腫瘍の療法において評価されている(Tolcher,1999)。
要するに、がん幹細胞でのCD173およびCD174の同定は、特に再発の防止において、標的がん開始細胞をターゲティングする療法における新たな機会をもたらす。

III.抗CD176抗体の治療活性
以下の例は、以下の相補性決定領域のセットを有するIgM型またはIgG1型のモノクローナル抗CD176抗体を使用して行った:
1.細胞増殖の抑制
腫瘍関連炭水化物抗原CD176を発現するがん細胞の細胞増殖を抑制する抗CD176抗体の性能を実証するために、抗CD176 IgM抗体がCD176陽性がん細胞系の増殖細胞に添加された。がん細胞増殖の抑制は、ブロモデオキシウリジン細胞増殖ELISAを使用して測定された。簡潔には、CD176陽性骨髄性白血病細胞系NM−D4の細胞(WO 05/017130に記載)を、5%FCSおよび1%グルタミンを補ったRPMIを含む96ウェルプレートに播種した(2,000細胞/ウェル)。細胞を抗CD176 IgM抗体(J鎖を持つまたは持たない)または無関係なアイソタイプ対照(ChromPure hIgM,Jackson Immuno Research)によって処理した。架橋2次抗体Fab2ヤギ抗ヒトIgM(Fc5μ)(Jackson Immuno Research)を最終濃度10μg/mlまで添加した。無処理対照細胞と比較したパーセント増殖は、培養の5日後にBrdU細胞増殖ELISA(Roche)によって測定した。
結果として、上記アッセイは、抗CD176 IgM抗体によるCD176陽性がん細胞の増殖の濃度依存性抑制を示した(図4)。抗CD176 IgG抗体を使用して同様の結果が取得された。
2.細胞アポトーシスの誘起
アネキシンVアッセイを使用して、CD176を発現するがん細胞においてアポトーシスを誘起する抗CD176抗体の能力を試験した。急性骨髄性白血病細胞系KG−1のCD176陽性およびCD176陰性(対照)亜系統を、1%FCSを補充したRPMIを含む96ウェルプレート(1.5×10細胞/ウェル)に播種した。抗CD176 IgM抗体(J鎖を持つまたは持たない)または無関係なアイソタイプ対照(ChromPure hIgM,Jackson Immuno Research)を最終濃度10μg/mlまで添加した。24時間後、アポトーシスの早期マーカーとしてホスファチジルセリン露出を分析した。細胞をアネキシンV−APC(BD Biosciences)およびSytoxグリーン(標識死細胞)によって15分間染色して、フローサイトメトリーによって分析した。
結果として、上記実験は抗CD176 IgM抗体によるアポトーシスのCD176特異的誘起を実証した(図5)。抗CD176 IgG抗体を使用して同様の結果を取得した。
3.がん細胞に対するCDCの誘起
CD176を発現するがん細胞の溶解を生じる補体依存性細胞傷害(CDC)を誘起する抗CD176抗体の性能を、以下のCDCアッセイによって実証した。急性骨髄性白血病細胞系KG−1(CD176陽性)の細胞に電気穿孔によりユウロピウムを負荷し、その細胞を、異なる濃度の抗CD176 IgM抗体(J鎖を持つまたは持たない)または無関係なアイソタイプ対照(ChromPure hIgM,Jackson Immuno Research)とともに96ウェルプレート中でインキュベートした。幼齢ウサギ補体(Cedarlane)を最終濃度0.8%で添加した。4時間後、25μlの上清を200μlの増強溶液(Delfia)中に移して、蛍光プレートリーダーInfinite F200(Tecan)を使用してユウロピウム放出を定量化した。最大放出(トリトンX−100による標的細胞)、自発放出(標的細胞)および基底放出(標的細胞の上清)は、特異的細胞傷害を計算するための対照として機能した。
結果として、上記CDCアッセイは、濃度依存性CDCが抗CD176 IgM抗体によって誘起されることを実証した(図6)。
4.がん細胞に対するADCCの誘起
CD176を発現するがん細胞の溶解を生じる抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘起する抗CD176抗体の性能を、以下のADCCアッセイによって実証した。膵臓癌腫細胞系PANC−1の細胞に電気穿孔によりユウロピウムを負荷し、その細胞を、異なる濃度の抗CD176 IgG1抗体または無関係なアイソタイプ対照(hIgG1,Sigma Aldrich)とともに96ウェルプレート中でインキュベートした。初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を100:1のエフェクタ対標的細胞比で添加した。6時間後、25μlの上清を200μlの増強溶液(Delfia)中に移して、蛍光プレートリーダーInfinite F200(Tecan)を使用してユウロピウム放出を定量化した。最大放出(トリトンX−100による標的細胞)、自発放出(標的細胞)および基底放出(標的細胞の上清)は、特異的細胞傷害を計算するための対照として機能した。
結果として、ADDCアッセイは、濃度依存性ADCCが抗CD176 IgG1抗体によって誘起されることを実証した(図7)。
5.概要
上の実験は、CD176に対する抗体が上記腫瘍関連炭水化物抗原CD176を発現する細胞において、細胞増殖を抑制すること、アポトーシスを誘起すること、ならびにCDCおよび/またはADCCを誘起することが可能であることを実証した。そのため抗CD176抗体は、CD176を発現するがん幹細胞に対して強力な治療剤であることが示された。

Claims (1)

  1. 明細書に記載された発明。
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