JP2016044770A - 自動変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】流体伝動装置と、当該流体伝動装置のケースを介してエンジンに駆動される油圧ポンプとを備えた自動変速機において、その製造コストの上昇を抑制しながら、エンジンの駆動損失の増大と油圧ポンプの吐出圧における油圧振動とを抑制する。
【解決手段】流体伝動装置のケース20は、エンジンのクランク軸10の端部に設けられた芯出し孔11に嵌入されるボス23と、先端部が油圧ポンプのインナロータ33に嵌合されるスリーブ24とを有する。スリーブ24の先端部の外周面には、インナロータ33の内周面に設けられたロータ側係合部33aに係合するスリーブ側係合部24aと、インナロータ33の内周面におけるロータ側係合部33aを除いたロータ側非係合部に対向するスリーブ側非係合部24bとが設けられる。スリーブ側非係合部24bとロータ側非係合部との間のクリアランスは、スリーブ24の先端に向かって大きくなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、流体伝動装置と、当該流体伝動装置のケースを介してエンジンに駆動される油圧ポンプとを備えた自動変速機に関する。
一般的に、エンジンを駆動源とする自動車に搭載される自動変速機は、エンジン出力を変速する変速機構、この変速機構にエンジン出力を伝達する流体伝動装置、変速機構と流体伝動装置との間に配置され、これらに作動油を供給するための油圧ポンプを備える。変速機構から出力された駆動力は差動装置に伝達され、これにより、駆動輪に連結された車軸が駆動される。
さらに、例えば特許文献1に開示されているように、一般的な自動変速機は以下のように構成されている。すなわち、自動変速機に備えられる流体伝動装置のケースは、そのエンジン側の面をなすフロントカバーと、反エンジン側の面をなすポンプシェルとを有する。フロントカバーの中心部には、エンジンの出力軸であるクランク軸に対して流体伝動装置をセンタリングするためのボスが設けられている。このボスは、自動変速機をエンジンに組み付ける時に、クランク軸の端部に設けられた芯出し孔へ嵌入される。また、フロントカバーの外周部には複数のボルトが設けられ、このボルトにより、クランク軸の端部に取り付けられたドライブプレートの外周部にフロントカバーが取り付けられる。これにより、トルクコンバータ全体がクランク軸に連結されて、エンジンにより駆動されることになる。一方、ポンプシェルの中心部には、油圧ポンプを駆動するスリーブが設けられている。
上記油圧ポンプは、互いに偏心して配置されたインナロータとアウタロータを組み合わせてなる内歯噛み合い式のギヤポンプである。このインナロータの内周面と、上記スリーブの先端部の外周面とには、互いに係合するようにそれぞれ平行二面が設けられている。自動変速機を組み立てる時には、スリーブの先端部がインナロータに嵌合され、これらの平行二面が係合する。
そして、エンジンの出力は、クランク軸を介して流体伝動装置のケースに入力され、これにより、上記の通り係合したインナロータとスリーブとが一体となって回転する。この回転に伴って、インナロータとアウタロータとの間の隙間に形成される各空間の容積が周期的に増加・減少する。当該容積が増加するときに吸入口から作動油が吸入され、当該容積が減少するときに吐出口から作動油が吐出される。
特開平8−226519号公報
ところで、上記特許文献1の自動変速機に備えられた流体伝動装置のケースでは、フロントカバーとポンプシェルとの間、ポンプシェルとスリーブとの間などに複数の溶接部が存在する。上記溶接部における芯出し誤差、更にはフロントカバーとポンプシェルの寸法公差などに起因して、ボスとスリーブとの同軸度を高くすることは困難である。
しかし、ボスとスリーブとの同軸度が低い状態では、エンジンを駆動した時にスリーブが振れ回り、これにより、当該スリーブが嵌合される油圧ポンプのインナロータは、その回転中心が移動しつつ回転することになる。その結果、当該インナロータがスリーブから径方向に力を受け、インナロータと噛み合うアウタロータが油圧ポンプのハウジングに部分的に強く押し付けられる。これにより、以下のような問題が想定される。第1に、上記ハウジングに押し付けられるアウタロータが抵抗となり、エンジンの駆動損失の増大、すなわち燃費の低下が生じる。更には、油圧ポンプのギヤやスリーブに生じる摩耗が激しくなることも考えられる。第2に、油圧ポンプの回転が不安定となり、変速装置や流体伝動装置に供給される作動油の吐出圧に油圧振動が生じてしまう。
これらの問題を解決するためには、トルクコンバータの製造過程において、ケースのエンジン側の面に設けられるボスと反エンジン側の面に設けられるスリーブとの同軸度を高めればよいが、そのためには、各部材の製造時や溶接時の寸法精度を高めることが必要となり、生産性が低下して製造コスト上昇の要因となってしまう。
そこで、本発明は、流体伝動装置と、当該流体伝動装置のケースを介してエンジンに駆動される油圧ポンプとを備えた自動変速機において、その製造コストの上昇を抑制しながら、エンジンの駆動損失の増大と油圧ポンプの吐出圧における油圧振動とを抑制することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
請求項1に記載の発明は、
流体伝動装置と、該流体伝動装置の反エンジン側に設けられ、前記流体伝動装置のケースを介してエンジンに駆動される油圧ポンプとを備えた自動変速機であって、
前記流体伝動装置のケースは、前記エンジンのクランク軸の端部に設けられた芯出し孔に嵌入されるボスと、先端部が前記油圧ポンプのインナロータに嵌合されるスリーブとを有し、
前記スリーブの先端部の外周面には、前記インナロータの内周面に設けられたロータ側係合部に係合するスリーブ側係合部と、前記インナロータの内周面におけるロータ側係合部を除いたロータ側非係合部に対向するスリーブ側非係合部とが設けられ、
前記スリーブ側非係合部と前記ロータ側非係合部との間のクリアランスは、前記スリーブの先端に向かって大きくなることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動変速機において、
前記スリーブ側非係合部において前記スリーブの外径が該スリーブの先端に向かって小さくなることにより、前記クリアランスが前記スリーブの先端に向かって大きくなることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の自動変速機において、
前記ロータ側非係合部において前記インナロータの内径が前記スリーブの先端に向かって大きくなることにより、前記クリアランスが前記スリーブの先端に向かって大きくなることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、ロータ側非係合部とスリーブ側非係合部との間のクリアランスがスリーブの先端に向かって大きくなることにより、油圧ポンプのインナロータがスリーブから受ける径方向の力が軽減する。これにより、ボスとスリーブとの同軸度を向上させることによる製造コストの上昇を抑制しながら、エンジンの駆動損失の増大と油圧ポンプの吐出圧における油圧振動とを抑制できる。
請求項2に記載の発明によれば、スリーブを加工するだけで、請求項1の効果が具体的に達成されることになる。
請求項3に記載の発明によれば、インナロータを加工するだけで、請求項1の効果が具体的に達成されることになる。また、請求項3に記載の発明を請求項2に記載の自動変速機に適用することにより、請求項1の効果をより確実に得ることができる。
本発明の実施の形態に係る自動変速機の構造の一部を示す断面図である。 トルクコンバータケースのスリーブと油圧ポンプのインナロータとの嵌合状態を示す断面図である。 トルクコンバータケースのスリーブと油圧ポンプのインナロータとの嵌合状態を示す分解斜視図である。 本発明の第1の変形例に係る自動変速機の構造の一部を示す断面図である。 本発明の第2の変形例に係る自動変速機の構造の一部を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動変速機1の構造の一部を示す断面図である。
自動変速機1は、エンジンを駆動源とする自動車に搭載される流体伝動装置の一例であり、エンジン側から、トルクコンバータ2、油圧ポンプ3、図示しない変速機構を備えている。また、自動変速機1は、トルクコンバータ2の出力軸、変速機構の入力軸として機能するタービンシャフト4を備えている。
トルクコンバータ2は、トルクコンバータケース20の内部に、ポンプ、タービン、ステータ、ワンウェイクラッチ、ロックアップクラッチ、ロックアップダンパなどを主な構成要素として備えているが、図1ではその一部または全部を省略して図示しており、その説明についても省略する。
トルクコンバータケース20は、そのエンジン側の面をなすフロントカバー21と、反エンジン側の面をなすと共に上記ポンプの外殻をなすポンプシェル22とを有する。図示していないが、フロントカバー21とポンプシェル22とはその外周部にて溶接されている。また、フロントカバー21の外周部には複数のボルトが同心円上に固設されており、このボルトにより、クランク軸10の端部に取り付けられたドライブプレートの外周部にフロントカバー21が取り付けられる。これにより、トルクコンバータ2全体がクランク軸10に連結され、クランク軸10と一体となって回転するようになっている。
フロントカバー21は、その中心部に設けられたボス23を有する。ボス23は、自動変速機1をエンジンに組み付ける時に、クランク軸10の端部に設けられた芯出し孔11へ嵌入される。これにより、トルクコンバータ2がクランク軸10に対してセンタリングされる。なお、図1では、符号Xを付してクランク軸10の軸心を示している。また、ボス23の内側には、タービン軸4の端部が嵌合している。タービン軸4の軸心上には上記変速機構が設けられており、これにより、トルクコンバータ2の出力回転がタービン軸4を介して変速機構に入力されるようになっている。
ポンプシェル22の中心部であって内周端部には、反エンジン側に延びるスリーブ24が溶接されている。スリーブ24の先端部の外周面には、平行な二面部24aが設けられている。また、スリーブ24の先端部の外周面のうち二面部24aが設けられていない部分にはテーパ面部24bが設けられており、このテーパ面部24bにおいて、スリーブ24の外径がその先端(反エンジン側)に向かって小さくなっている。
油圧ポンプ3は、内歯噛み合い式のギヤポンプであり、図示しない変速機ケースに固定されたポンプハウジング31、そのエンジン側に設けられたポンプカバー32、これらの間に形成される隙間に収納された一対のインナロータ33とアウタロータ34を備えている。インナロータ33とアウタロータ34は、互いに偏心して配置されている。インナロータ33には、自動変速機1の組立て時にトルクコンバータケース20のスリーブ24の先端部が挿入されて嵌合される。インナロータ33の外周面には、スリーブ24と同様に平行な二面部33aが設けられている。
図2、図3はそれぞれ、トルクコンバータケース20のスリーブ24と油圧ポンプ3のインナロータ33との嵌合状態を示す断面図、分解斜視図である。
図示しているように、スリーブ24の先端部がインナロータ33に嵌合されると、インナロータ33の二面部33aとスリーブ24の二面部24aとが係合するようになっている。また、インナロータ33の内周面のうち二面部33aが設けられていない部分(内周面部と称す)33bとスリーブ24のテーパ面部24bとが対向するようになっている。この対向する部分では、インナロータ33の内周面部33bとスリーブ24のテーパ面部24bとの間のクリアランスが、スリーブ24の先端に向かって大きくなる。
なお、上記実施形態において、インナロータ33の二面部33a、内周面部33bは、それぞれロータ側係合部、ロータ側非係合部の一例に相当する。また、スリーブ24の二面部24a、テーパ面部24bは、それぞれスリーブ側係合部、スリーブ側非係合部の一例に相当する。
自動変速機1の構成によれば、エンジンが駆動されると、その出力がクランク軸10を介してトルクコンバータケース20のフロントカバー21に入力され、トルクコンバータ2全体が回転する。そして、トルクコンバータケース20のポンプシェル22に接合されたスリーブ24と、スリーブ24の先端部が嵌合された油圧ポンプ3のインナロータ33とが、これらの二面部24a,33aの係合により、一体となって回転する。この回転に伴って、油圧ポンプ3における作動油の吸入・吐出が行われる。また、タービン軸4を介して、トルクコンバータ2の出力回転が変速機構に入力される。
ここで、フロントカバー21のボス23とポンプシェル22に接合されたスリーブ24との同軸度が低い状態では、スリーブ24が振れ回り、油圧ポンプ3のインナロータ33は、その回転中心が移動しつつ回転することになる。このとき、本実施形態のように、インナロータ33の内周面部33bとスリーブ24のテーパ面部24bとの間のクリアランスをスリーブ24の先端に向かって大きくなるようにすることで、インナロータ33がスリーブ24から径方向に受ける力が小さくなり、ひいては、エンジンの駆動損失の増大と油圧ポンプ3の吐出圧における油圧振動とが抑制されることになる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。また、上述の実施形態には種々の変形、改良が加えられてよく、従って本発明には種々の変形例が存在する。
例えば、第1の変形例として図4に示すように、スリーブ124の先端部の外周面のうち二面部124aが設けられていない部分(外周面部と称す)125bにテーパ面を設けず、インナロータ133の内周面のうち二面部が設けられていない部分に逆テーパ面部133b設けてもよい。この構成によれば、インナロータ133の内径がスリーブ124の先端に向かって大きくなり、インナロータ133の逆テーパ面部133bとスリーブ124の外周面部124bとの間のクリアランスが、スリーブ124の先端に向かって大きくなり、これにより上述の実施形態の効果と同様の効果が得られる。
なお、第1の変形例を示す図4と次の第2の変形例を示す図5は図1の一部を示すものであるが、図1で示した構成の多くについては図示を省略している。また、符号Xを付した一点鎖線は、図1と同様にクランク軸10の軸心を示している。
さらに、第2の変形例として図5に示すように、スリーブ224の先端部の外周面のうち二面部224aが設けられていない部分にテーパ面224bが設けられ、さらに、インナロータ233の内周面のうち二面部が設けられていない部分に逆テーパ面部233bが設けられてもよい。すなわち、この第2の変形例は、上述の実施形態と第1の変形例とを組み合わせた構成を有し、この構成により上述の実施形態の効果をより確実に得ることができる。
以上のように、本発明によれば、自動変速機の製造コストの上昇を抑制しながら、エンジンの駆動損失の増大と油圧ポンプの吐出圧における油圧振動とを抑制することが可能となるから、この種の自動変速機の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
1 自動変速機
2 トルクコンバータ(流体伝動装置)
3 油圧ポンプ
10 クランク軸
11 芯出し孔
20 トルクコンバータケース
21 フロントカバー
22 ポンプシェル
23 ボス
24 スリーブ
24a 二面部(スリーブ側係合部)
24b テーパ面部(スリーブ側非係合部)
33 インナロータ
33a 二面部(ロータ側係合部)
33b 内周面部(ロータ側非係合部)
34 アウタロータ

Claims (3)

  1. 流体伝動装置と、該流体伝動装置の反エンジン側に設けられ、前記流体伝動装置のケースを介してエンジンに駆動される油圧ポンプとを備えた自動変速機であって、
    前記流体伝動装置のケースは、前記エンジンのクランク軸の端部に設けられた芯出し孔に嵌入されるボスと、先端部が前記油圧ポンプのインナロータに嵌合されるスリーブとを有し、
    前記スリーブの先端部の外周面には、前記インナロータの内周面に設けられたロータ側係合部に係合するスリーブ側係合部と、前記インナロータの内周面におけるロータ側係合部を除いたロータ側非係合部に対向するスリーブ側非係合部とが設けられ、
    前記スリーブ側非係合部と前記ロータ側非係合部との間のクリアランスは、前記スリーブの先端に向かって大きくなることを特徴とする
    自動変速機。
  2. 前記スリーブ側非係合部において前記スリーブの外径が該スリーブの先端に向かって小さくなることにより、前記クリアランスが前記スリーブの先端に向かって大きくなることを特徴とする、
    請求項1に記載の自動変速機。
  3. 前記ロータ側非係合部において前記インナロータの内径が前記スリーブの先端に向かって大きくなることにより、前記クリアランスが前記スリーブの先端に向かって大きくなることを特徴とする、
    請求項1または2に記載の自動変速機。
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