JP2016040562A - 鍵盤楽器 - Google Patents

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Abstract

【課題】鍵盤楽器において、鍵盤蓋をより安全に取り扱うための構造を容易に設けることができるようにする。
【解決手段】筐体11と、筐体に対して揺動自在に設けられた鍵盤蓋13と、鍵盤蓋の側面に対向する筐体の側板部28の内面28aに設けられる第一係止部31と、側板部の内面上に位置するように鍵盤蓋の側面に設けられ、鍵盤蓋が開いた位置OPから閉じた位置CLに移動する際に第一係止部に係止して、鍵盤蓋の閉じた位置への移動を阻止する第二係止部32と、使用者が操作することで、第一係止部を、第二係止部に係止する係止位置B1と、第二係止部に係止しない退避位置との間で移動させる使用者操作部と、を備える鍵盤楽器1を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鍵盤楽器に関する。
一般に、グランドピアノ、アップライトピアノ等のアコースティックピアノや、電子ピアノ等の鍵盤楽器は、鍵盤部を覆う鍵盤蓋を備える。従来、アコースティックピアノ、あるいは、アコースティックピアノと同様の外観意匠を有する電子ピアノでは、鍵盤蓋が木材からなるため、その重量は重い。このため、鍵盤蓋を開閉する際、特に閉じる際には、鍵盤蓋を慎重に取り扱う必要がある。
特許文献1には、ばね力によりロック位置に配され、鍵盤蓋を開いた位置にロックするストッパと、ばね力に抗してストッパをロック位置から移動させることで鍵盤蓋のロックを解除する解除部材と、を備える構成が開示されている。
この構成では、鍵盤楽器を扱う者(例えば演奏者)が解除部材を操作してストッパをロック位置から移動させることで、開いた位置に配された鍵盤蓋を閉じることが可能となる。すなわち、鍵盤楽器を扱う者に、鍵盤蓋を閉じる動作を強く意識させて、鍵盤蓋をより安全に閉じることを可能としている。
特開平7−287577号公報
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、ストッパや解除部材が鍵盤蓋の揺動軸近傍に設けられなければならず、ストッパや解除部材の配置が限定されるため、既存の鍵盤楽器に取りつけることが難しい、という問題がある。例えば、アコースティックピアノや、これと同様の外観意匠を有する電子ピアノでは、鍵盤楽器の筐体をなす前框や鍵盤蓋奥にストッパや解除部材を設けるための開口部を形成した上で、前框や鍵盤蓋奥の内側にストッパや解除部材を設ける必要がある。しかしながら、前框や鍵盤蓋奥の内側にはアクション機構やダンパ機構等の各種構造物が設けられるため、ストッパや解除部材の設置が難しい。
さらに、鍵盤楽器がアコースティックピアノの場合、鍵盤楽器の筐体をなす前框や鍵盤蓋奥に開口部を設けてしまうと、アコースティックピアノの音(アクション機構によって打弦された弦の振動に基づいて発生する音)の特性に影響を与えてしまう虞がある。また、アクション機構等の音(アクション機構の各部材の動きに伴って発生する音)が外部に漏れやすくなる虞もある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、鍵盤蓋をより安全に取り扱うための構造を容易に設けることが可能な鍵盤楽器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の鍵盤楽器は、筐体と、該筐体に対して揺動自在に設けられた鍵盤蓋と、前記鍵盤蓋の側面に対向する前記筐体の側板部の内面に設けられる第一係止部と、前記側板部の内面上に位置するように前記鍵盤蓋の側面に設けられ、前記鍵盤蓋が開いた位置から閉じた位置に移動する際に前記第一係止部に係止して、前記鍵盤蓋の前記閉じた位置への移動を阻止する第二係止部と、使用者が操作することで、前記第一係止部及び前記第二係止部のうち一方の係止部を、他方の係止部に係止する係止位置と、他方の係止部に係止しない退避位置との間で移動させる使用者操作部と、を備えることを特徴とする。
本発明の鍵盤楽器では、鍵盤蓋が開いた位置に配された状態で一方の係止部が係止位置に配されることで、鍵盤蓋を閉じる動作が阻止される。このため、鍵盤蓋を開いた位置から閉じた位置に移動させる場合には、鍵盤楽器を取り扱う使用者が使用者操作部を操作して、一方の係止部を係止位置から退避位置に移動させた上で、鍵盤蓋を閉じる動作を行う必要がある。すなわち、本発明の鍵盤楽器では、鍵盤蓋を閉じる動作を使用者に強く意識させて、鍵盤蓋をより安全に閉じることが可能となる。
また、本発明によれば、第一、第二係止部がそれぞれ側板部の内面、鍵盤蓋の側面に設けられるため、第一、第二係止部の設置箇所は、筐体の内部空間に設けられる構造物の制約を受けない。したがって、第一、第二係止部を容易に鍵盤楽器に取りつけることが可能となる。
さらに、本発明によれば、第一、第二係止部を側板部の内面や鍵盤蓋の側面に設けるため、従来のようにピアノの筐体の内部空間に連通する開口部を形成する必要がなくなる。すなわち、鍵盤楽器がアコースティックピアノである場合、アコースティックピアノの音の特性が影響を受けることを防止できる。さらに、筐体内部に設けられたアクション機構の音が外部に漏れることも抑制でき、アコースティックピアノの音を聞き取りやすくなる、という効果も奏する。
そして、前記鍵盤楽器においては、前記一方の係止部を前記退避位置から前記係止位置に向けて付勢する付勢部を備えてもよい。
この場合には、使用者が使用者操作部を操作して一方の係止部を移動させるなど、一方の係止部に外力が付与されない限り、一方の係止部が付勢部の付勢力によって係止位置に保持されるため、鍵盤蓋が開いた位置に配された状態において、鍵盤蓋を閉じる動作を確実に阻止できる。
また、前記鍵盤楽器において、前記一方の係止部と前記使用者操作部とを連結し、前記使用者操作部の操作を前記一方の係止部の移動に変換するワイヤーを備え、該ワイヤーが、前記筐体及び前記鍵盤蓋の少なくとも一方の内部に配されてもよい。
上記構成によれば、一方の係止部の設置箇所に関わらず、使用者操作部を自由な位置に配置することが可能となる。これにより、使用者操作部を例えば目立たない箇所に配置して、使用者操作部の設置による鍵盤楽器の外観意匠の低下を抑制することができる。
さらに、前記鍵盤楽器においては、前記鍵盤蓋が、前記筐体に対して揺動自在に取り付けられ、前記鍵盤蓋が閉じた位置に配された状態で前記筐体に設けられた鍵盤部の上方側を覆う鍵盤蓋本体と、該鍵盤蓋本体に取り付けられ、前記鍵盤蓋が閉じた位置に配された状態で前記鍵盤部の前端側を覆う鍵盤蓋前付と、を備え、前記鍵盤蓋前付が、前記使用者操作部であり、前記鍵盤蓋が閉じた位置に配された状態で前記鍵盤部の前端側を覆うための第一位置と、前記鍵盤蓋が開いた位置に配された状態で前記鍵盤蓋本体に対して重なるように折り畳まれる第二位置との間で、前記鍵盤蓋本体に対して回動自在とされ、前記鍵盤蓋前付の前記第二位置から前記第一位置への移動に連動して、前記一方の係止部を前記係止位置から前記退避位置に移動させてもよい。
また、前記鍵盤楽器においては、前記使用者操作部が、前記使用者の足によって踏み込まれていない状態で前記一方の係止部を前記係止位置に保持し、前記使用者の足によって踏み込まれることで、前記一方の係止部を前記係止位置から前記退避位置に移動させる係止部操作ペダルであってもよい。
これらの構成によれば、鍵盤楽器の外観意匠を損なうことなく、使用者操作部を設けることが可能となる。
また、これらの構成によれば、使用者は、鍵盤蓋をその両手で支持しながら使用者操作部を操作することが可能となる。したがって、使用者が片手で鍵盤蓋を支える場合と比較して、より安全に鍵盤蓋を閉じることが可能となる。
本発明によれば、鍵盤蓋を閉じる動作を使用者に強く意識させて、鍵盤蓋をより安全に閉じることができるため、鍵盤蓋をより安全に取り扱うことができる。
また、本発明によれば、鍵盤蓋をより安全に取り扱うための構造を容易に鍵盤楽器に取りつけることができる。
さらに、本発明によれば、鍵盤蓋をより安全に取り扱うための構造を設けても、アコースティックピアノの音の特性に影響を与えることを防ぎ、また、アクション機構等の音が外部に漏れることも抑制できる。
本発明の第一実施形態に係るピアノの要部を示す側断面図である。 図1に示すピアノにおいて、鍵盤蓋を開放位置に配した状態における第一係止部と第二係止部との係止状態を腕木の内面側から見た状態を示す要部拡大図である。 図2のIII−III矢視断面図である。 本発明の第二実施形態に係るピアノの要部を示す側断面図である。
[第一実施形態]
以下、図1〜3を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、この実施形態に係るピアノ(鍵盤楽器)1は、アコースティックピアノの一種であるアップライトピアノであり、従前のピアノと同様に構成されている。すなわち、ピアノ1は、筐体11、鍵盤部12、鍵盤蓋13、ハンマ14、弦(打撃対象)15、アクション機構16、ダンパ機構17等を備える。
鍵盤部12は、演奏者の手指によって演奏操作がなされる複数の鍵24を配列したものであり、各鍵24は筐体11の棚板21上に筬29を介して揺動自在に設けられている。また、各鍵24の一端部(前端部)は、筐体11の前面側(図1において右側)において外部に露出している。
鍵盤蓋13は、鍵盤部12のうち筐体11の外部に露出する部分を覆うものであり、鍵盤部12を覆うカバー位置(閉じた位置)CLと、鍵盤部12を外部に露出させる開放位置(開いた位置)OPとの間で、筐体11の鍵盤蓋奥22に対して回転自在に設けられている。
本実施形態の鍵盤蓋13は、鍵盤部12の上方側を覆う鍵盤蓋本体26と、鍵盤部12の前端側(図1において鍵の右端側)を覆う鍵盤蓋前付27と、を備える。
鍵盤蓋本体26は、筐体11に対して回転軸20を中心に揺動自在に取り付けられている。一方、鍵盤蓋前付27は、回転軸20から延びる鍵盤蓋本体26の延在方向先端部に取り付けられている。この鍵盤蓋前付27は、鍵盤蓋13がカバー位置CLに配された状態で鍵盤部12の前端側を覆う第一位置A1と、鍵盤蓋13が開放位置OPに配された状態で鍵盤蓋本体26に対して重なるように折り畳まれる第二位置A2との間で、鍵盤蓋本体26に対して回動自在とされている。
ハンマ14、弦15及びアクション機構16は、いずれも筐体11内部に設けられている。ハンマ14は、弦15を打撃するものである。アクション機構16は、演奏者の手指による鍵24の押鍵力を、ハンマ14が弦15を打撃する打弦力(打撃力)に変換する機構である。
ダンパ機構17は、鍵24の押鍵力や、演奏者の足によるダンパペダル(不図示)の踏込力を、弦15上のダンパ18を弦15から離す離弦力に変換する機構である。
前述した鍵盤蓋13は、開放位置OPに配された状態において、アクション機構16と演奏者の頭部(不図示)との間に位置する。本実施形態のピアノ1では、アクション機構16が、筐体11内部に配された鍵24の後端部の上方において、筐体11の前面側をなす上前板23の内面に対向するように位置する。一方、開放位置OPに配された鍵盤蓋13は、上前板23の外面を覆うように位置する。
さらに、本実施形態のピアノ1は、図1〜3に示すように、鍵盤蓋13を開放位置OPからカバー位置CLへの移動を阻止するための第一係止部31及び第二係止部32と、第一係止部31を操作する使用者操作部33と、を備える。
第一係止部31は、カバー位置CLに配された鍵盤蓋13の側面に対向する筐体11の腕木(側板部)28の内面28aに設けられている。第一係止部31は、腕木28の内面28aから突出して後述する第二係止部32に係止する係止位置B1と、腕木28の内面28aから腕木28の内部に没入して第二係止部32に係止しない退避位置B2との間で、移動可能とされている。
腕木28の内部には、上記した第一係止部31を退避位置B2から係止位置B1に向けて付勢する付勢部34が設けられている。これにより、第一係止部31は、これに外力が加えられない限り、付勢部34の付勢力によって係止位置B1に保持される。図3では、付勢部34がコイルスプリングによって構成されているが、例えばゴム等の他の弾性部材によって構成されてもよい。
また、本実施形態では、第一係止部31が、腕木28の内面28aのうち鍵24よりも上方側の領域に設けられている。
使用者操作部33は、演奏者などピアノ1を取り扱う使用者が操作することで、第一係止部31を係止位置B1と退避位置B2との間で移動させるものである。使用者操作部33は、第一係止部31に一体に固定され、腕木28のうち内面28aと逆側に向く外面から突出している。使用者操作部33のうち腕木28から外部に突出する部分は、使用者が把持する部分となる。図3では、使用者操作部33が単純な棒状に形成されているが、これに限ることはなく、例えば使用者が把持しやすい形状に形成されてもよい。
第二係止部32は、鍵盤蓋13が開放位置OPからカバー位置CLに移動する際に前述した第一係止部31に係止することで、鍵盤蓋13のカバー位置CLへの移動を阻止するものである。
第二係止部32は、腕木28の内面28a上に位置するように鍵盤蓋13の側面に設けられている。本実施形態の第二係止部32は、帯板状に形成され、鍵盤蓋13の回転軸20に対して鍵盤蓋本体26と逆向きに延びるように配されている。これにより、第二係止部32は、鍵盤蓋13の開閉動作に応じて、腕木28の内面28aに沿って移動(回動)する。
そして、第二係止部32は、その延出方向の先端部が、鍵盤蓋13の開閉動作に応じて、腕木28の内面28aのうち第一係止部31を設けた領域を通過するように設けられている。これにより、第一係止部31が係止位置B1に配された状態において、開放位置OPに配された鍵盤蓋13を開放位置OPからカバー位置CLに向けて移動させようとしても、第二係止部32の延出方向の先端部が第一係止部31に係止するため、鍵盤蓋13のカバー位置CLへの移動が阻止される。
また、本実施形態では、上記した第二係止部32が第一係止部31に係止した状態で、鍵盤蓋13の自重による応力が第二係止部32と第一係止部31との係止部分に発生しないように、上記した第一係止部31の設置位置が設定されている。以下、具体的に説明する。
本実施形態の鍵盤蓋13は、その開閉経路の途中に自重による回転トルクの向きが変わる変曲点を有している。この変曲点では、回転軸20を通る鉛直線上に鍵盤蓋13の重心位置が位置するため、鍵盤蓋13に自重による回転トルクが発生しない。一方で、鍵盤蓋13が変曲点よりも手前側(カバー位置CL側)に倒れると、鍵盤蓋13に自重による回転トルクが閉じる方向に発生する。また、鍵盤蓋13が変曲点よりも奥側(開放位置OP側)に倒れると、鍵盤蓋13に自重による回転トルクが開く方向に発生する。
上記のように設けられる鍵盤蓋13に対し、本実施形態の第一係止部31の設置位置は、上記した変曲点から開放位置OPに至る鍵盤蓋13の移動領域に対応する位置に配された第二係止部32に係止するように設定されている。
図1,2において、第一係止部31の設置位置は、鍵盤蓋13が開放位置OPに配された状態で第二係止部32に係止するように設定されているが、これに限ることはない。第一係止部31の設置位置は、例えば鍵盤蓋13が開放位置OPと変曲点との間に配された状態で第二係止部32に係止するように設定されてもよい。
また、本実施形態の第二係止部32は、第一係止部31に係止した状態で第一係止部31と第二係止部32との接触面積が大きくなるように、前記第一係止部31の側部を囲む鉤状に形成されている。
本実施形態では、第一係止部31が腕木28の内面28a側から見た平面視で矩形状に形成されている。これに対し、第二係止部32は、平面視矩形状に形成された第一係止部31のうち、筐体11の前方側(図1,2において右側)に向く第一側面31a、及び、第一側面31aに対して直角に隣り合って筐体11の上方側に向く第二側面31bの両方に接触するように、直角に屈曲する鉤状に形成されている。上記した第一係止部31の第一側面31aは、鍵盤蓋13の開放位置OPからカバー位置CLへの移動に伴って、第二係止部32が移動する方向に対向する面である。
また、本実施形態では、鍵盤蓋13のカバー位置CLから開放位置OPへの移動に伴う第二係止部32の移動方向に対向する第一係止部31の第三側面31cが、第一係止部31の突出方向に向かうにしたがって、鍵盤蓋13のカバー位置CLから開放位置OPへの移動に伴う第二係止部32の移動方向に傾斜する傾斜面となっている。
これにより、鍵盤蓋13をカバー位置CLから開放位置OPに移動させる際に第一係止部31が係止位置B1に配されていても、第二係止部32が傾斜面である第一係止部31の第三側面31cに押し付けられることで、第一係止部31が付勢部34の付勢力に抗って退避位置B2に移動する。すなわち、鍵盤蓋13のカバー位置CLから開放位置OPへの移動が、第一係止部31によって阻害されることを防止できる。なお、第二係止部32が第一係止部31上を通過して第一側面31a側に到達すると、第一係止部31は付勢部34の付勢力によって退避位置B2から係止位置B1に復帰する。
以上のように構成される本実施形態のピアノ1では、鍵盤蓋13をカバー位置CLから開放位置OPまで移動させる際に、第一係止部31が係止位置B1に配されていても、鍵盤蓋13及び第二係止部32の移動が第一係止部31によって妨げられることはない。すなわち、本実施形態のピアノ1では、従来のピアノと同様に、鍵盤蓋13を開放位置OPまで移動させることができる。
一方、鍵盤蓋13が開放位置OPに配された状態では、第一係止部31が係止位置B1に配されることで鍵盤蓋13を閉じる動作が阻止される。このため、鍵盤蓋13を開放位置OPからカバー位置CLまで移動させる際には、使用者が使用者操作部33を操作して、第一係止部31を係止位置B1から退避位置B2に移動させた上で、鍵盤蓋13を閉じる動作を行う必要がある。
以上説明したように、本実施形態のピアノ1によれば、鍵盤蓋13を開放位置OPからカバー位置CLまで移動させる際には、使用者が使用者操作部33を操作して、第一係止部31を係止位置B1から退避位置B2に移動させた上で、鍵盤蓋13を閉じる必要があるため、鍵盤蓋13を閉じる動作を使用者に強く意識させて、鍵盤蓋13をより安全に閉じることが可能となる。すなわち、鍵盤蓋13をより安全に取り扱うことができる。
また、本実施形態のピアノ1によれば、第一係止部31が腕木28の内面28aに設けられ、第二係止部32が鍵盤蓋13の側面に設けられるため、第一、第二係止部31,32の設置箇所が筐体11の内部空間に設けられる構造物(本実施形態では、アクション機構16やダンパ機構17など)の制約を受けない。したがって、第一、第二係止部31,32を容易にピアノ1に取りつけることが可能となる。すなわち、鍵盤蓋13をより安全に取り扱うための構造を容易にピアノ1に取りつけることができる。
さらに、本実施形態のピアノ1によれば、従来のように筐体11の内部空間に連通する開口部を形成することなく、第一、第二係止部31,32を設けることが可能である。したがって、アコースティックピアノとしての音の特性が影響を受けることも防止できる。また、筐体11内部に設けられたアクション機構16やダンパ機構17などの音が外部に漏れることも防止できるため、アコースティックピアノとしての音を聞き取りやすくなる、という効果も奏する。
また、本実施形態のピアノ1によれば、使用者が使用者操作部33を操作して第一係止部31を移動させるなど、第一係止部31に外力が付与されない限り、第一係止部31が付勢部34の付勢力によって係止位置B1に保持されるため、鍵盤蓋13が開放位置OPに配された状態において鍵盤蓋13を閉じる動作を確実に阻止できる。
さらに、本実施形態のピアノ1によれば、鍵盤蓋13がその開閉経路のうち変曲点から開放位置OPに至る鍵盤蓋13の移動領域に配された状態で、第二係止部32が第一係止部31に係止するため、第二係止部32が鍵盤蓋13の自重によって第一係止部31に押し付けられることがない。すなわち、鍵盤蓋13の自重に基づく応力が第一係止部31と第二係止部32との係止部分に発生しないため、第一係止部31及び第二係止部32の保護を図ることができる。また、第一係止部31及び第二係止部32を剛性の低い材料により形成して、低コスト化を図ることも可能となる。
上記第一実施形態において、鍵盤蓋本体26及び鍵盤蓋前付27は、別個に形成されて相互に回動自在に連結されているが、例えば一体に形成されていてもよい。
[第二実施形態]
次に、図4を参照して本発明の第二実施形態について説明する。
この実施形態では、第一実施形態と比較して、第一係止部、第二係止部、使用者操作部の構成のみが異なっており、その他の構成については第一実施形態と同様である。本実施形態では、第一実施形態と同一の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
図4に示すように、この実施形態のピアノ(鍵盤楽器)1Aは、第一実施形態と同様に、鍵盤蓋13を開放位置OPからカバー位置CLへの移動を阻止するための第一係止部51及び第二係止部52と、第一係止部51を操作する使用者操作部53と、を備える。
第一係止部51は、第一実施形態と同様に、鍵盤蓋13の側面に対向する筐体の腕木28の内面28aに設けられる。ただし、本実施形態の第一係止部51は、腕木28の内面28aから突出する突起であり、腕木28に固定されている。
第二係止部52は、第一実施形態と同様に、鍵盤蓋13が開放位置OPからカバー位置CLに移動する際に第一係止部51に係止することで、鍵盤蓋13のカバー位置CLへの移動を阻止するものである。また、第二係止部52は、帯板状に形成され、鍵盤蓋13の回転軸20に対して鍵盤蓋本体26と逆向きに延びるように配される。ただし、本実施形態の第二係止部52は、第一係止部51に係止する係止位置C1と、第一係止部51に係止しない退避位置C2との間で移動可能とされている。
本実施形態の第二係止部52は、第一実施形態の第二係止部32と同様に帯板状に形成された本体部54と、本体部54の延在方向先端に回動自在に設けられる鉤状部55と、を備える。そして、鉤状部55は、本体部54に対して上記した係止位置C1と退避位置C2との間で回動可能とされている。鉤状部55は、概ねC字状に屈曲あるいは湾曲して形成されている。鉤状部55が係止位置C1に配された状態では、鉤状部55の先端部55Aが、本体部54の延在方向先端から同じ方向に延長する鉤状部55の基端部55Bに対し、鍵盤蓋13を開く方向に間隔をあけて対向する。
鍵盤蓋13が開放位置OPに配され、かつ、鉤状部55が係止位置C1に配された状態では、第一係止部51が、鍵盤蓋13を閉じる方向に対応する鉤状部55の先端部55Aの移動方向前側に位置する。これにより、鍵盤蓋13のカバー位置CLへの移動が阻止される。一方、鍵盤蓋13が開放位置OPに配され、かつ、鉤状部55が退避位置C2に配された状態では、第一係止部51が鉤状部55の移動方向前側に位置しないため、鍵盤部のカバー位置CLへの移動は阻止されない。
本実施形態の使用者操作部53は、鍵盤蓋13の鍵盤蓋前付27である。本実施形態では、鍵盤蓋前付27が、その第二位置A2から第一位置A1への移動に連動して、第二係止部52を係止位置C1から退避位置C2に移動させるように、第二係止部52の鉤状部55に連結されている。
本実施形態では、第二係止部52の鉤状部55と鍵盤蓋前付27とがワイヤー56によって連結されている。ワイヤー56は、鍵盤蓋本体26内部に配されている。ワイヤー56の一端は、回転軸20側に位置する鍵盤蓋本体26の基端部から突出し、鉤状部55の基端部55Bに固定されている。また、ワイヤー56の他端は、鍵盤蓋前付27側に位置する鍵盤蓋本体26の先端部から突出し、鍵盤蓋前付27のうち第一位置A1に配された状態で鍵盤蓋本体26の先端部に当接する部分に固定されている。このワイヤー56は、鍵盤蓋前付27の操作を第二係止部52の鉤状部55の移動に変換する役割を果たす。具体的に、ワイヤー56は、鍵盤蓋前付27の第一位置A1から第二位置A2への移動を、第二係止部52の鉤状部55の退避位置C2から係止位置C1への移動に変換する。
以上のように構成される本実施形態のピアノ1Aにおいて、鍵盤蓋13をカバー位置CLから開放位置OPまで移動させる際には、まず、使用者が鍵盤蓋前付27を第一位置A1に保持したままで鍵盤蓋13を開放位置OPまで移動させればよい。この際には、第二係止部52の鉤状部55が退避位置C2に配されるため、鍵盤蓋13の開放位置OPへの移動が第一係止部51によって阻害されることはない。
そして、鍵盤蓋13を開放位置OPに到達させた後には、使用者が鍵盤蓋前付27を第一位置A1から第二位置A2に移動させればよい。これにより、第二係止部52の鉤状部55が退避位置C2から係止位置C1に移動し、第一係止部51に係止される。この状態では、鍵盤蓋13を閉じる動作が阻止される。
このため、鍵盤蓋13を開放位置OPからカバー位置CLまで移動させる際には、使用者が鍵盤蓋前付27を第二位置A2から第一位置A1に移動させることで第二係止部52を係止位置C1から退避位置C2に移動させた上で、鍵盤蓋13を閉じる動作を行う必要がある。
以上説明したように、本実施形態のピアノ1Aによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のピアノ1Aによれば、使用者操作部53が鍵盤蓋前付27であることで、使用者は、鍵盤蓋13をその両手で支持しながら使用者操作部53を操作することが可能となる。
さらに、本実施形態のピアノ1Aによれば、使用者操作部53が鍵盤蓋前付27であるため、また、鍵盤蓋前付27及び第二係止部52がワイヤー56によって連結されると共にワイヤー56が鍵盤蓋13の内部に配されるため、ピアノ1Aの外観意匠を損なうことなく、使用者操作部53を設けることができる。
上記第二実施形態の構成は、第一実施形態のピアノ1にも適用可能である。例えば第二実施形態のワイヤー56は、第一実施形態の第一係止部31と使用者操作部33とを連結してもよい。この場合、ワイヤー56は、筐体11内部に配されるとよい。
この構成では、使用者操作部33を腕木28の外面から突出して設けることに限らず、筐体11の任意の外面から突出させることが可能となる。すなわち、第一係止部31の設置箇所に関わらず使用者操作部33を自由な位置に配置することが可能となる。したがって、使用者操作部33を例えば棚板21の下面等のように目立たない箇所に配置して、使用者操作部33の設置によるピアノ1の外観意匠の低下を抑制することができる。
また、上記第二実施形態の第一係止部51は、例えば第一実施形態の第一係止部31と同様に構成されてもよい。この場合には、鍵盤蓋13をカバー位置CLから開放位置OPに移動させる際に第二係止部52の鉤状部55が係止位置C1に配されていても、鉤状部55が第一係止部51に押し付けられることで、第一係止部51を付勢部34(図3参照)の付勢力に抗って腕木28の内面28aから内部に退避させることができる。すなわち、鍵盤蓋13のカバー位置CLから開放位置OPへの移動が、第一係止部51によって阻害されることを防止できる。
以上、二つの実施形態により本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、使用者操作部33,53は、上記実施形態のように使用者の手によって操作されるものに限らず、使用者の足によって操作されるものであってもよい。使用者操作部33,53は、例えば使用者の足によって踏み込まれる係止部操作ペダルであってもよい。
この場合、係止部操作ペダルは、使用者の足によって踏み込まれていない状態で第一実施形態の第一係止部31あるいは第二実施形態の第二係止部52を係止位置B1,C1に保持し、使用者の足によって踏み込まれることで、第一実施形態の第一係止部31あるいは第二実施形態の第二係止部52を係止位置B1,C1から退避位置B2,C2に移動させるものであるとよい。
上記のように係止部操作ペダルを機能させるためには、係止部操作ペダルと第一実施形態の第一係止部31あるいは第二実施形態の第二係止部52とを、例えば第二実施形態と同様のワイヤー56により連結すればよい。係止部操作ペダルが第一実施形態の第一係止部31に連結される場合、ワイヤー56は筐体11の内部に配されるとよい。また、係止部操作ペダルが第二実施形態の第二係止部52に連結される場合、ワイヤー56は筐体11及び鍵盤蓋13の両方の内部に配されるとよい。
使用者操作部33,53を係止部操作ペダルとする上記構成では、鍵盤蓋13を開放位置OPからカバー位置CLに移動させる際に、使用者がその足で係止部操作ペダルを踏み込むことで、第一実施形態の第一係止部31あるいは第二実施形態の第二係止部52を係止位置C1から退避位置C2に移動させることができるため、使用者は、鍵盤蓋13をその両手で支持しながらより安全に閉じることができる。
また、使用者操作部33,53を係止部操作ペダルとする構成では、係止部操作ペダルを従前のピアノに備わるダンパーペダル、シフトペダル等の他のペダルに隣り合せて目立たないように配置することができ、ピアノの外観意匠の低下を抑制することが可能である。
さらに、上記実施形態では、第一係止部31,51が、腕木28の内面28aのうち鍵24よりも上方側の領域に設けられているが、例えば鍵24よりも下方側の領域(具体的には鍵24と筬29との間の領域)に設けられてもよい。この場合には、第一係止部31,51が演奏者から見えない位置に配されるため、ピアノ1,1Aの良好な外観意匠を保つことができる。
さらに、本発明は、上記実施形態のようなアップライトピアノに適用されることに限らず、例えばグランドピアノに適用することも可能である。この場合、第一係止部31,51は、グランドピアノの筐体を構成する側板(側板部)のうち鍵盤蓋13の側面に対向する内面に設けられればよい。
また、本発明は、アップライトピアノやグランドピアノ等のように弦15をハンマ14により打撃するアコースティックピアノに適用されることに限らず、例えば、アコースティックピアノと同様の外観意匠を有する電子ピアノにも適用することが可能である。なお、本発明は、電子ピアノのうちアコースティックピアノと同様のアクション機構16、ハンマ14、及び、ハンマ14により打撃される打撃対象(例えば発音用のセンサ)を備えるものに適用されることが特に有用である。
1,1A…ピアノ(鍵盤楽器)、11…筐体、12…鍵盤部、13…鍵盤蓋、26…鍵盤蓋本体、27…鍵盤蓋前付、28…腕木(側板部)、28a…内面、31,51…第一係止部、32,52…第二係止部、33,53…使用者操作部、56…ワイヤー、A1…第一位置、A2…第二位置、B1,C1…係止位置、B2,C2…退避位置、CL…カバー位置(閉じた位置)、OP…開放位置(開いた位置)

Claims (5)

  1. 筐体と、
    該筐体に対して揺動自在に設けられた鍵盤蓋と、
    前記鍵盤蓋の側面に対向する前記筐体の側板部の内面に設けられる第一係止部と、
    前記側板部の内面上に位置するように前記鍵盤蓋の側面に設けられ、前記鍵盤蓋が開いた位置から閉じた位置に移動する際に前記第一係止部に係止して、前記鍵盤蓋の前記閉じた位置への移動を阻止する第二係止部と、
    使用者が操作することで、前記第一係止部及び前記第二係止部のうち一方の係止部を、他方の係止部に係止する係止位置と、他方の係止部に係止しない退避位置との間で移動させる使用者操作部と、
    を備えることを特徴とする鍵盤楽器。
  2. 前記一方の係止部を前記退避位置から前記係止位置に向けて付勢する付勢部を備えることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器。
  3. 前記一方の係止部と前記使用者操作部とを連結し、前記使用者操作部の操作を前記一方の係止部の移動に変換するワイヤーを備え、
    該ワイヤーは、前記筐体及び前記鍵盤蓋の少なくとも一方の内部に配されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鍵盤楽器。
  4. 前記鍵盤蓋が、前記筐体に対して揺動自在に取り付けられ、前記鍵盤蓋が閉じた位置に配された状態で前記筐体に設けられた鍵盤部の上方側を覆う鍵盤蓋本体と、該鍵盤蓋本体に取り付けられ、前記鍵盤蓋が閉じた位置に配された状態で前記鍵盤部の前端側を覆う鍵盤蓋前付と、を備え、
    前記鍵盤蓋前付が、前記使用者操作部であり、前記鍵盤蓋が閉じた位置に配された状態で前記鍵盤部の前端側を覆うための第一位置と、前記鍵盤蓋が開いた位置に配された状態で前記鍵盤蓋本体に対して重なるように折り畳まれる第二位置との間で、前記鍵盤蓋本体に対して回動自在とされ、
    前記鍵盤蓋前付の前記第二位置から前記第一位置への移動に連動して、前記一方の係止部を前記係止位置から前記退避位置に移動させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鍵盤楽器。
  5. 前記使用者操作部が、前記使用者の足によって踏み込まれていない状態で前記一方の係止部を前記係止位置に保持し、前記使用者の足によって踏み込まれることで、前記一方の係止部を前記係止位置から前記退避位置に移動させる係止部操作ペダルであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鍵盤楽器。
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