以下、図面を参照して本発明に係る鍵盤装置に用いるサポートアセンブリについて説明する。但し、本発明のサポートアセンブリは多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
以下の説明において、鍵盤装置の演奏者側を演奏者手前側といい、その逆側を演奏者奥側という。また、上方、下方、側方等の向きを表す用語は、鍵盤装置を演奏者側から見た場合の向きとして定義される。各部品に設けられたスリットとは、当該部品を貫通する貫通孔であってもよく、例えばU字型のように一部が開放された形状であってもよい。
〈第1実施形態〉
[鍵盤装置1の構成]
本発明の第1実施形態における鍵盤装置1は、本発明に係るサポートアセンブリの一例を電子ピアノに適用した例である。この電子ピアノは、鍵の操作時にグランドピアノに近いタッチ感を得るために、グランドピアノが備えているサポートアセンブリに近い構成を備えている。図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る鍵盤装置1の概要を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鍵盤装置の機械構成を示す側面図である。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る鍵盤装置1は、複数の鍵110(この例では88鍵)及び鍵110の各々に対応したアクション機構を備える。アクション機構は、サポートアセンブリ60、ハンマシャンク310、ハンマ320及びハンマストッパ410を備える。なお、図1では、鍵110が白鍵である場合を示しているが、黒鍵であっても同様である。また、以下の説明において、演奏者手前側、演奏者奥側、上方、下方、側方等の向きを表す用語は、鍵盤装置を演奏者側から見た場合の向きとして定義される。例えば、図1の例では、サポートアセンブリ60は、ハンマ320から見て演奏者手前側に配置され、鍵110から見て上方に配置されている。側方は、鍵110が配列される方向に対応する。
鍵110は、バランスレール910によって回動可能に支持されている。鍵110は、図1に示すレスト位置からエンド位置までの範囲で回動する。鍵110は、キャプスタンスクリュー120を備えている。サポートアセンブリ60は、サポートレール960に回動可能に接続され、キャプスタンスクリュー120上に載置されている。サポートレール960はブラケット900に支持されている。サポートアセンブリ60の詳細の構成は後述する。なお、サポートレール960は、サポートアセンブリ60の回動の基準となるフレームの一例である。フレームは、サポートレール960のように一つの部材で形成されていてもよいし、複数の部材で形成されていてもよい。フレームは、サポートレール960のように鍵110の配列方向に長手を有するレール状の部材であってもよいし、鍵110毎に独立した部材であってもよい。
ハンマシャンク310は、シャンクフレンジ390に回動可能に接続されている。ハンマシャンク310は、ハンマローラ315を備えている。ハンマシャンク310は、ハンマローラ315を介して、サポートアセンブリ60上に載置されている。シャンクフレンジ390は、シャンクレール930に固定されている。ハンマ320は、ハンマシャンク310の端部に固定されている。シャンクフレンジ390にはサポートアセンブリ60の上方(ハンマシャンク330側)への回動を規制するレペティションレギュレーティングスクリュー346が設けられている。レギュレーティングボタン360は、シャンクレール930に固定されている。ハンマストッパ410は、ハンマストッパレール940に固定されて、ハンマシャンク310の回動を規制する位置に配置されている。
センサ510は、ハンマシャンク310の位置及び移動速度(特にハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する直前の速度)を測定するためのセンサである。センサ510は、センサレール950に固定されている。この例では、センサ510はフォトインタラプタである。ハンマシャンク310に固定された遮蔽板520がフォトインタラプタの光軸を遮蔽する量に応じて、センサ510からの出力値が変化する。この出力値に基づいて、ハンマシャンク310の位置及び移動速度を測定することができる。なお、センサ510に代えて、またはセンサ510と共に、鍵110の操作状態を測定するためのセンサが設けられてもよい。
上述したサポートレール960、シャンクレール930、ハンマストッパレール940及びセンサレール950は、ブラケット900に支持されている。
[サポートアセンブリ60の構成]
図2は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリの機械構成を示す斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリ及びサポートレールの機械構成を示す側面図である。鍵盤装置1のサポートアセンブリ60は、サポート610、レペティションレバー640、ジャック650、動作規制部660、及びコイルスプリング680を備える。サポートアセンブリ60のうち、コイルスプリング680及び他の部材と衝突する部分に設けられた不緩衝材等(不織布、弾性体等)以外は、射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。
サポート610は、サポートレール960に対して回動可能に支持されている。レペティションレバー640は、サポート610に回動可能に支持されている。ジャック650は、サポート610に回動可能に配置されている。また、ジャック650は、ジャック大6502及びジャック小6504を有しており、ジャック大6502はレペティションレバー640に設けられたスリット642を貫通可能に配置され、ジャック小6504はサポート610から演奏者手前側に延びている。動作規制部660は、サポート610のレペティションレバー640側に配置されている。
また、サポート610は、サポートヒール612、フレーム固定部632、可撓部634(第1可撓部)、及び台座638を有する。フレーム固定部632は、サポート610をサポートレール960に固定する。可撓部634は、各々のサポートアセンブリ60のサポート610とフレーム固定部632との間に設けられ、可撓性(弾性)を有している。また、可撓部634はサポート610及びフレーム固定部632と一体形成されており、サポートアセンブリ60の回動方向または可撓部634の板厚方向において、少なくともサポート610よりも板厚が薄い。なお、図2及び図3では、サポート610、フレーム固定部632、及び可撓部634が一体形成された構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、可撓部634が固定具、接着剤、または溶接等によってサポート610及びフレーム固定部632の両方または一方に固定されていてもよい。ここで、可撓部634はサポートアセンブリ60の回動中心となる。
ここで、可撓部634は第1板厚部6342及び第1板厚部6342よりも板厚が薄い第2板厚部6344を有している(図3参照)。また、第1板厚部6342と第2板厚部6344との段差部、及びフレーム固定部632と第2板厚部6344との段差部が曲面6346を有している。曲面6346は、サポートアセンブリ60の回動によって可撓部634が湾曲したときの応力の集中を緩和する。なお、図3では、可撓部634が板厚の異なる第1板厚部6342及び第2板厚部6344を有する構造を例示したが、この構造に限定されない。サポートアセンブリ60が回動する際に、十分な可撓性を有していれば、可撓部634は一定の板厚で形成されていてもよい。
台座638は、サポート610のレペティションレバー640側に接続され、台座638の上面(レペティションレバー640側)には、台座638及びレペティションレバー640に作用するコイルスプリング682が設けられている。コイルスプリング682は台座638及びレペティションレバー640が互いに離れる方向に台座638及びレペティションレバー640に作用し、レペティションレバー640に回動力を付与する弾性体として機能する圧縮スプリングである。
レペティションレバー640は、可撓部620(第2可撓部)、スリット642、延設部644、及びサポート固定部648を有する。
可撓部620はレペティションレバー640のサポート610側に延びておりサポート固定部648に結合されている。つまり、可撓部620は、レペティションレバー640とサポート固定部648との間に設けられている。可撓部620はサポート固定部648及びレペティションレバー640と一体形成されているが、可撓部620の板厚がレペティションレバー640の板厚よりも薄いため、可撓部620は可撓性(弾性)を有している。したがって、レペティションレバー640は可撓部620を中心として回動する。
スリット642は、レペティションレバー640の回動中心である可撓部620から演奏者手前側の一部において、ジャック大6502が貫通可能な位置に設けられている。延設部644は、レペティションレバー640の回動中心である可撓部620からジャック650側において、レペティションレバー640のサポート610側に結合されている。また、延設部644はスリット6442及び6444を有している(図3参照)。サポート固定部648は固定具674によってサポート610に固定されている。
なお、図2及び図3では、レペティションレバー640、可撓部620、及びサポート固定部648が一体形成された構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、可撓部620が固定具、接着剤、または溶接等によってレペティションレバー640及びサポート固定部648の両方または一方に固定されていてもよい。
ジャック650は、ジャック大6502とジャック小6504との間のジャック支持部6105においてサポート610に対して回動可能に配置されている(図3参照)。ジャック大6502の一部には、ジャック大6502及びサポート610に作用するコイルスプリング684が設けられている。コイルスプリング684はジャック大6502が台座638に近づく方向にジャック大6502及びサポート610に作用し、ジャック650に回動力を付与する弾性体として機能する引張スプリングである。
動作規制部660は、可撓部620を基準に可撓部634とは反対側に設けられている。また、動作規制部660は、延設部662、ストッパ664、及びガイド666を有する。延設部662はサポート610のレペティションレバー640側に配置されている。ストッパ664及びガイド666は延設部662に配置されており、それぞれ延設部662から演奏者手前側に延びている。換言すると、ストッパ664及びガイド666は、延設部662から演奏者手前側に突出する突出部である、ということもできる。ストッパ664は延設部644に設けられたスリット6442を貫通しており、ガイド666は延設部644に設けられたスリット6444を貫通している。なお、スリット6442および6444は、ストッパ664及びガイド666が係止可能な形状であればよく、例えばストッパ664及びガイド666が係止可能な溝が設けられた形状であってもよい。スリット6442および6444を係止部ということもできる。
ここで、図2及び図3では、それぞれ別個の部品として準備されたサポート610及びレペティションレバー640が固定具674によって固定された構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、サポート610及びレペティションレバー640が一体形成されていてもよい。つまり、サポート610、可撓部620、634、及びレペティションレバー640が一体形成されていてもよい。
図4は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリのストッパ及びガイドの構成を示す側面図である。図4に示す側面図は図2及び図3においてD1方向に見た側面図のうち延設部644、ストッパ664、及びガイド666のみを示した図である。また、図4において(a)はレスト位置の、(b)はエンド位置の側面図を示す。ストッパ664はレペティションレバー640及び延設部644の回動方向に交差する方向に長手を有している。また、ガイド666及びスリット6444はレペティションレバー640及び延設部644の回動方向に長手を有している。ガイド666はスリット6444の内壁に対して溝部V6を有しており、ガイド666とスリット6444との摺接する面積を小さくしている。上記の溝部V6にグリスを塗布してもよい。
ここで、図3及び図4に示すレスト位置において、延設部644は、スリット6442において、ストッパ664に対してストッパ664のサポート610側(下方)から接している。換言すると、延設部644は動作規制部660に対して動作規制部660の下方から接している。つまり、ストッパ664または動作規制部660はレペティションレバー640及び延設部644のハンマシャンク310側(上方)への回動を規制する。延設部644とストッパ664との間には、延設部644とストッパ664とが接触することによって発生する雑音を低減するための緩衝材等(不織布、弾性体等)が設けられていてもよい。
また、延設部644は、スリット6444において、ガイド666と側方から接している。ここで、側方とはサポートアセンブリ60が隣接する方向、またはサポートレール960の延長方向である。換言すると、延設部644は動作規制部660と側方から接している。つまり、ガイド666または動作規制部660はレペティションレバー640のヨーイング(横ずれ)及びローリング(捻れ)を抑制する。延設部644とガイド666との間には、延設部644とガイド666とが摺動を円滑にするためにグリスが塗布されていてもよい。
なお、第1実施形態のサポートアセンブリ60では、レペティションレバー640に接続された延設部644にスリットが設けられ、サポート610に接続された延設部662に突出部が設けられた構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、延設部662にスリットが設けられ、延設部644に当該スリットを貫通する突出部が構成であってもよい。
図5は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリの機械構成を示す上面図である。図5に示す上面図は図2及び図3においてD2方向に見た上面図である。フレーム固定部632の幅L1は、サポートレール960が延びる方向(つまり、フレームが延在する方向)において、サポート610の幅L2よりも大きい。具体的には、フレーム固定部632の幅L1はサポート610の幅L2の2倍になるように設計される。好ましくは、幅L1は、L1=2×L2+d(dは隣接するサポート610、610Aの間隔)の式を満たすとよい。なお、フレーム固定部632の幅L1はサポート610の幅L2の整数倍になるように設計されてもよい。好ましくは、幅L1は、L1=n×L2+(n−1)d(nは正の整数)の式を満たすとよい。また、第1実施形態のサポートアセンブリ60では、サポート610の幅とレペティションレバー640の幅とが同一である構成を例示したが、この構成に限定されず、両者が異なる幅を有していてもよい。
フレーム固定部632には、フレーム固定部632をサポートレール960に取り付け可能な固定孔672が設けられている。固定孔672は、サポートレール960の延長方向において、フレーム固定部632の中央に設けられている。ただし、固定孔672が設けられる位置はフレーム固定部632の中央に限定されない。
[サポートアセンブリ60に隣接するサポートアセンブリ60A]
次に、サポートアセンブリ60に隣接して設けられるサポートアセンブリ60Aについて説明する。図6は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリの機械構成を示す斜視図である。図7は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリの機械構成を示す側面図である。図6及び図7に示したサポートアセンブリ60Aは図2及び図3に示したサポートアセンブリ60と類似しているが、サポート610Aに対する可撓部634Aの接続位置と、可撓部634A及びフレーム固定部632Aの形状と、においてサポートアセンブリ60Aはサポートアセンブリ60とは相違する。
サポートレール960の延長方向において、サポートアセンブリ60Aの可撓部634Aがフレーム固定部632Aに接続される位置は、サポートアセンブリ60の可撓部634がフレーム固定部632に接続される位置と異なっている。ここで、サポートレール960の延長方向において、サポートアセンブリ60Aのフレーム固定部632Aの幅L3はサポートアセンブリ60のフレーム固定部632の幅L1と同一であり、サポート610Aの幅の2倍になるように設計される。好ましくは、幅L3は、L3=2×L2+dの式を満たすとよい。なお、サポートアセンブリ60と同様に、フレーム固定部632Aの幅L3はサポート610Aの幅の整数倍になるように設計されてもよい。好ましくは、幅L3は、L3=n×L2+(n−1)dの式を満たすとよい。
また、図7に示すように、サポート610Aの回動方向において、サポートアセンブリ60Aの可撓部634Aがサポート610Aに接続される位置(高さ)は、サポートアセンブリ60の可撓部634がサポート610に接続される位置(高さ)と異なっている。具体的には、サポートアセンブリ60の可撓部634はサポート610のレペティションレバー640側(上方側)の側面に接続されており、サポートアセンブリ60Aの可撓部634Aはサポート610Aの鍵110側(下方側)の側面に接続されている。
サポートアセンブリ60、60Aのサポートレール960への固定は以下のようにして行われる。まず、サポートレール960の凸部9602にサポートアセンブリ60Aの凹部6322Aを嵌合させることで、サポートアセンブリ60Aをサポートレール960に固定する(図7参照)。続いて、サポートアセンブリ60Aの凸部6324Aにサポートアセンブリ60の凹部6322(図3参照)を嵌合させることで、サポートアセンブリ60をサポートアセンブリ60Aに固定する。
上記のようにしてサポートアセンブリ60及びサポートアセンブリ60Aをサポートレール960に固定した状態を図8に示す。フレーム固定部632及び可撓部634とフレーム固定部632A及び可撓部634Aとは、それぞれ上下方向に異なる位置に設けられる。つまり、隣接するサポートアセンブリ60及び60Aは、それぞれ回動中心の高さが異なる。ただし、上記のように可撓部634がサポート610に接続される位置と可撓部634Aがサポート610Aに接続される位置とが異なるため、サポート610及びサポート610Aの鍵110からの高さは同一である。また、サポートアセンブリ60及び60Aは固定孔672及び672Aを介してサポートレール960に固定される。つまり、固定孔672及び672Aの位置は、サポートレール960への固定時に互いに同じ位置になるように設けられる。
ここで、サポートアセンブリとフレーム固定部との幅の関係により、サポートアセンブリ60及び60Aを取り付ける際に、フレーム固定部632及び632Aを揃えてサポートレール960に取り付けることができる。
[サポートアセンブリ60の動作]
続いて、鍵110がレスト位置にある状態(図1)からエンド位置に押下された場合において、サポートアセンブリ60の動きを説明する。
図9は、本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの動きを説明するための側面図である。鍵110がエンド位置まで押下されると、キャプスタンスクリュー120がサポートヒール612を押し上げて、可撓部634の軸を回動中心としてサポート610を回動させる。サポート610が回動して上方に移動すると、ジャック大6502がハンマローラ315を押し上げて、ハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する。なお、一般的なグランドピアノである場合には、この衝突は、ハンマによる打弦に相当する。
ハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する直前に、レギュレーティングボタン360によってジャック小6504の上方への移動が規制されつつ、さらにサポート610(ジャック支持部6105)が上昇する。そのため、ジャック大6502は、ハンマローラ315から外れるように回動する。このとき、レペティションレギュレーティングスクリュー346によって、レペティションレバー640の上方への移動が規制される。これにより、レペティションレバー640は、上方への移動が規制されてサポート610に近づくように回動する。これらの動作によって、ダブルエスケープメント機構が実現される。図9は、この状態を示す図である。なお、鍵110をレスト位置に戻していくと、レペティションレバー640によってハンマローラ315が支えられ、ハンマローラ315の下方にジャック大6502が戻る。
以上のように、本発明の第1実施形態に係るサポートアセンブリ60によると、従来と同等のサポートアセンブリの動作を確保しつつサポートアセンブリを構成する部品数を低減することができる。したがって、一般的なグランドピアノに用いられるサポートアセンブリに比べて容易な構成において、ダブルエスケープメントが実現されるため、タッチ感への影響を抑えつつ製造コストを削減することができる。
また、可撓部634及びサポート610、可撓部620及びレペティションレバー640が一体形成されることで、サポートアセンブリを構成する部品数を低減することができる。さらに、可撓部620、634、サポート610、及びレペティションレバー640が一体形成されることで、サポートアセンブリを構成する部品数をさらに低減することができる。その結果、製造コストを削減することができる。
また、可撓部620を基準に可撓部634とは反対側に、レペティションレバー640の上方への回動を規制する動作規制部660が設けられている。これによって、従来必要であったレペティションレバーの回動を規制するレペティションレバーボタンを設ける必要がなくなり、レペティションレバー640を可撓部620で支持することができる。レペティションレバー640を可撓部620で支持する構造にすることで、従来に比べて部品数を低減することができる。また、延設部644がレペティションレバー640からサポート610側へ延びており、サポート610に接続されたストッパ664と係止することにより省スペースのサポートアセンブリを実現することができる。
また、延設部644がレペティションレバー640からサポート610側へ延びており、サポート610に接続されたガイド666と摺接する。これによって、レペティションレバー640が可撓部620を介してサポート610に接続されていることに起因して、レペティションレバー640のヨーイング及びローリングが生じやすくなっていたとしても、これらの現象の発生を抑制することができる。
[鍵盤装置1の発音機構]
鍵盤装置1は、上述したように電子ピアノへの適用例であって、鍵110の操作をセンサ510によって測定し、測定結果に応じた音を出力する。
図10は、本発明の第1実施形態における鍵盤装置の発音機構の構成を示すブロック図である。鍵盤装置1の発音機構50は、センサ510(88の鍵110に対応したセンサ510−1、510−2、・・・510−88)、信号変換部550、音源部560及び出力部570を備える。信号変換部550は、センサ510から出力された電気信号を取得し、各鍵110における操作状態に応じた操作信号を生成して出力する。この例では、操作信号はMIDI形式の信号である。そのため、押鍵操作によってハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突したタイミングに対応して、信号変換部550はノートオンを出力する。このとき、88個の鍵110のいずれが操作されたかを示すキーナンバ、及び衝突する直前の速度に対応するベロシティについてもノートオンに対応付けて出力される。一方、離鍵操作がされると、グランドピアノであればダンパによって弦の振動が止められるタイミングに対応して、信号変換部550はキーナンバとノートオフとを対応付けて出力する。信号変換部550には、ペダル等の他の操作に応じた信号が入力され、操作信号に反映されてもよい。音源部560は、信号変換部550から出力された操作信号に基づいて、音信号を生成する。出力部570は、音源部560によって生成された音信号を出力するスピーカまたは端子である。
〈第1実施形態の変形例1〉
次に、第1実施形態で説明したサポートアセンブリ60の変形例について説明する。図11は、本発明の一実施形態の変形例に係るサポートアセンブリの構成を示す上面図である。図11に示すサポートアセンブリ60Bは、図5に示すサポートアセンブリ60の上面図と類似しているが、サポートレール960の延長方向において、可撓部634Bの幅L5がサポート610Bの幅L6よりも大きい点においてサポートアセンブリ60とは相違する。ここで、サポートアセンブリ60Bにおいて、幅L5はフレーム固定部632Bの幅L4と同じである。図11では、幅L5が幅L4と同じである構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、幅L5は幅L6よりも大きく、幅L4以下であればよい。
以上のように、本発明の第1実施形態の変形例1に係るサポートアセンブリ60Bによると、サポートレール960の延長方向において、可撓部634Bの幅L5がサポート610Bの幅L6よりも大きいことで、レペティションレバー640Bのヨーイング及びローリングを抑制することができる。
〈第1実施形態の変形例2〉
図12は、本発明の一実施形態の変形例に係るサポートアセンブリの構成を示す上面図である。図12に示すサポートアセンブリ60Cは、図11に示すサポートアセンブリ60Bの上面図と類似しているが、可撓部634Cに貫通孔6348(開口部)が設けられている点においてサポートアセンブリ60Bとは相違する。
図12では、可撓部634Cに貫通孔6348が設けられた構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、サポート610Cから伸延した可撓部634Cが枝分かれし、枝分かれした可撓部634Cが2箇所でフレーム固定部632Cに接続された構造であってもよい。
以上のように、本発明の第1実施形態の変形例2に係るサポートアセンブリ60Cによると、サポートレール960の延長方向において、可撓部634Cがサポート610C又はレペティションレバー640Cの幅よりも広い領域でフレーム固定部632Cに接続されていることで、レペティションレバー640Cのヨーイング及びローリングを抑制することができる。また、可撓部634Cの内部に貫通孔6348が設けられていることで、可撓部634Cの弾性力の大きさを調整することができる。
〈第2実施形態〉
本発明の第2実施形態における鍵盤装置1のサポートアセンブリ20は、第1実施形態の鍵盤装置1と同様に本発明に係るサポートアセンブリの一例を電子ピアノに適用した例に適用することができる。第2実施形態における鍵盤装置はサポートアセンブリ20の構成がサポートアセンブリ60と相違する点以外は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
[サポートアセンブリ20の構成]
図13は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリの構成を示す側面図である。サポートアセンブリ20は、サポート210、レペティションレバー240、ジャック250、ねじりコイルスプリング280を備える。
サポート210は、サポートヒール212、フレーム固定部232、可撓部234、スプリング支持部218、ストッパ216、及びジャック支持部2105を有する。
フレーム固定部232は、サポート210をサポートレール920に固定する。可撓部234は、サポート210とフレーム固定部232との間に設けられ、可撓性を有している。また、可撓部234はサポート210及びフレーム固定部232と一体形成されており、サポートアセンブリ20の回動方向または可撓部234の板厚方向において、少なくともサポート210よりも板厚が薄い。なお、図12では、サポート210、フレーム固定部232、及び可撓部234が一体形成された構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、可撓部234が固定具、接着剤、または溶接等によってサポート210及びフレーム固定部232の両方または一方に固定されていてもよい。ここで、可撓部234はサポートアセンブリ20の回動中心となる。
ジャック支持部2105は、サポート210のフレーム固定部232とは反対側に設けられ、サポート210から上方に突出している。サポートヒール212及びスプリング支持部218はフレーム固定部232とジャック支持部2105との間に設けられ、サポートヒール212はサポート210から下方に突出し、スプリング支持部218はサポート210から上方に突出している。ストッパ216はサポート210のフレーム固定部232とは反対側の端部に設けられ、演奏者手前側に突出している。サポートヒール212は、その下面において、図1に示したキャプスタンスクリュー120と接触する。スプリング支持部218は、ねじりコイルスプリング280を支持する。ジャック支持部2105は、ジャック250を回動可能に支持する。ストッパ216は後に説明するレペティションレバー240に接続された延設部244と接触することで、レペティションレバー240の上方への回動を規制する。
レペティションレバー240には、スプリング接触部242および延設部244が結合されている。スプリング接触部242および延設部244はレペティションレバー240からサポート210側へ延びている。スプリング接触部242は、ねじりコイルスプリング280の第1アーム2802と接触する。レペティションレバー240および延設部244は、ジャック250の両側面の側から挟み込む2枚の板状の部材を含む。この例では、この2枚の板状の部材によって挟まれた空間の少なくとも一部において、延設部244とジャック250とが摺接している。
延設部244は、内側部2441、外側部2442、結合部2443およびストッパ接触部2444を含む。内側部2441は、レペティションレバー240においてジャック大2502よりも演奏者奥側(可撓部220側)に結合されている。内側部2441とレペティションレバー240とが結合されている部分にはリブ246が設けられている。内側部2441は、ジャック大2502を挟み込んで交差し、ジャック大2502よりも演奏者手前側(可撓部220とは反対側)まで延在している。つまり、延設部244はジャック250と交差している、ということもできる。内側部2441およびジャック大2502の一方または両方に、両者の接触面積を小さくする突起部が設けられていてもよい。突起部は点形状であってもよく、線形状であってもよい。
外側部2442は、レペティションレバー240においてジャック250(ジャック大2502)よりも演奏者手前側(可撓部220とは反対側)に結合されている。内側部2441と外側部2442とは、結合部2443において結合されている。結合部2443は、ジャック小2504を両側面から挟み込んでいる。ここで、結合部2443およびジャック小2504の一方または両方に、両者の接触面積を小さくする突起部が設けられていてもよい。突起部は点形状であってもよく、線形状であってもよい。
ストッパ接触部2444は、結合部2443に結合され、ストッパ216に対してストッパ216の下方から接触する。つまり、ストッパ216はレペティションレバー240とサポート210とが拡がる方向(上方)へのレペティションレバー240の回動範囲を規制する。換言すると、延設部244はレペティションレバー240の回動中心からジャック250側においてレペティションレバー240に接続され、ストッパ216に対してストッパ216の下方から接触する。つまり、ストッパ216は、ジャック250の回動中心よりも下方において、サポート210に接続され、動作規制部として機能する。
ジャック250は、ジャック大2502、ジャック小2504および突出部256を備える。ジャック250は、サポート210に対して回動可能に配置されている。ジャック大2502とジャック小2504との間において、ジャック支持部2105に回動可能に支持されるためのサポート接続部2505が形成されている。サポート接続部2505は、ジャック支持部2105の一部を囲む形状であり、ジャック250の回動範囲を規制する。また、サポート接続部2505の形状とその素材の弾性変形により、ジャック250は、ジャック支持部2105の上方から嵌めることができる。突出部256は、ジャック大2502からジャック小2504とは反対側に突出し、ジャック250と共に回動する。突出部256は、その側面にスプリング接触部2562を備える。スプリング接触部2562は、ねじりコイルスプリング280の第2アーム2804と接触する。
ねじりコイルスプリング280は、スプリング支持部218を支点とし、第1アーム2802がスプリング接触部242と接触し、第2アーム2804がスプリング接触部2562と接触する。第1アーム2802は、レペティションレバー240の演奏者側を上方(サポート210から離れる方向)に移動するように、スプリング接触部242を介してレペティションレバー240に回動力を付与する弾性体として機能する。第2アーム2804は、突出部256が下方(サポート210に近づく方向)に移動するように、スプリング接触部2562を介してジャック250に回動力を付与する弾性体として機能する。
サポートアセンブリ20では、鍵110がレスト位置からエンド位置に押下された場合に、結合部2443及びジャック小2504が共にレギュレーティングボタン360に接触し、レペティションレバー240及びジャック250が回動する。この動作によってダブルエスケープメント機構が実現される。
以上のように、本発明の実施形態2に係るサポートアセンブリ20によると、従来と同等のサポートアセンブリの動作を確保しつつサポートアセンブリを構成する部品数を低減することができる。したがって、一般的なグランドピアノに用いられるサポートアセンブリに比べて容易な構成において、ダブルエスケープメントが実現されるため、タッチ感への影響を抑えつつ製造コストを削減することができる。
〈変形例〉
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、ジャック大よりも演奏者の手前側にストッパが設けられた構成について例示したが、ジャック大とレペティションレバーの回動中心となる可撓部との間にストッパが設けられてもよい。
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、サポートとは別にストッパが設けられた構成について例示したが、サポートと別個にストッパが設けられていなくてもよい。レペティションレバーからサポート側に接続された延設部がサポートの下方まで延び、サポートの一部をストッパとして機能させてもよい。
上述した実施形態では、レペティションレバーは、サポートに対して可撓部を介して結合されていた。一方、従来のグランドピアノにおいて用いられるサポートアセンブリのレペティションレバーに対して、延設部を結合させることもできる。そして、サポートまたはジャックに結合した部材(ストッパ)に対して、延設部をストッパの下方から接触させることができる。
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、サポートアセンブリを適用した鍵盤装置の例として電子ピアノを示した。一方、上記実施形態のサポートアセンブリは、グランドピアノ(アコースティックピアノ)に適用することもできる。なお、本発明のサポートアセンブリをアコースティックピアノに適用する場合は、ハンマストッパ及びセンサを省略することができ、これらの代わりに弦やダンパを設ける。
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。