以下、本発明の一実施形態におけるサポートアセンブリを含む鍵盤装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率(各構成間の比率、縦横高さ方向の比率等)は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
<第1実施形態>
[鍵盤装置1の構成]
本発明の第1実施形態における鍵盤装置1は、本発明に係るサポートアセンブリの一例を電子ピアノに適用した例である。この電子ピアノは、鍵の操作時にグランドピアノに近いタッチ感を得るために、グランドピアノが備えているサポートアセンブリに近い構成を備えている。図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る鍵盤装置1の概要を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鍵盤装置の機械構成を示す側面図である。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る鍵盤装置1は、複数の鍵110(この例では88鍵)および鍵110の各々に対応したアクション機構を備える。アクション機構は、サポートアセンブリ20、ハンマシャンク310、ハンマ320およびハンマストッパ410を備える。なお、図1では、鍵110が白鍵である場合を示しているが、黒鍵であっても同様である。また、以下の説明において、演奏者手前側、演奏者奥側、上方、下方、側方等の向きを表す用語は、鍵盤装置を演奏者側から見た場合の向きとして定義される。例えば、図1の例では、サポートアセンブリ20は、ハンマ320から見て演奏者手前側に配置され、鍵110から見て上方に配置されている。側方は、鍵110が配列される方向に対応する。
鍵110は、バランスレール910によって回動可能に支持されている。鍵110は、図1に示すレスト位置からエンド位置までの範囲で回動する。鍵110は、キャプスタンスクリュー120を備えている。サポートアセンブリ20は、サポートフレンジ290に回動可能に接続され、キャプスタンスクリュー120上に載置されている。サポートフレンジ290は、サポートレール920に固定されている。サポートアセンブリ20の詳細の構成は後述する。なお、サポートフレンジ290およびサポートレール920は、サポートアセンブリ20の回動の基準となるフレームの一例である。フレームは、サポートフレンジ290およびサポートレール920のように複数の部材で形成されていてもよいし、一つ部材で形成されていてもよい。フレームは、サポートレール920のように鍵110の配列方向に長手を有するレール状の部材であってもよいし、サポートフレンジ290のように鍵110毎に独立した部材であってもよい。
ハンマシャンク310は、シャンクフレンジ390に回動可能に接続されている。ハンマシャンク310は、ハンマローラ315を備えている。ハンマシャンク310は、ハンマローラ315を介して、サポートアセンブリ20上に載置されている。シャンクフレンジ390は、シャンクレール930に固定されている。ハンマ320は、ハンマシャンク310の端部に固定されている。レギュレーティングボタン360は、シャンクレール930に固定されている。ハンマストッパ410は、ハンマストッパレール940に固定されて、ハンマシャンク310の回動を規制する位置に配置されている。
センサ510は、ハンマシャンク310の位置および移動速度(特にハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する直前の速度)を測定するためのセンサである。センサ510は、センサレール950に固定されている。この例では、センサ510はフォトインタラプタである。ハンマシャンク310に固定された遮蔽板520がフォトインタラプタの光軸を遮蔽する量に応じて、センサ510からの出力値が変化する。この出力値に基づいて、ハンマシャンク310の位置および移動速度を測定することができる。なお、センサ510に代えて、またはセンサ510と共に、鍵110の操作状態を測定するためのセンサが設けられてもよい。
上述したサポートレール920、シャンクレール930、ハンマストッパレール940およびセンサレール950は、ブラケット900に支持されている。
[サポートアセンブリ20の構成]
図2は、本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの構成を示す側面図である。図3は、本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリを分解した一部の構成を示す側面図である。各構成要素の特徴がわかりやすくなるように、図3(a)はサポートアセンブリ20からジャック250およびねじりコイルスプリング280を除外した図であり、図3(b)はジャック250のみを示した図である。
サポートアセンブリ20は、サポート210、レペティションレバー240、ジャック250、ねじりコイルスプリング280を備える。サポート210とレペティションレバー240とは、可撓部220を介して結合している。可撓部220によって、レペティションレバー240は、サポート210に対して回動可能に支持されている。サポートアセンブリ20のうち、ねじりコイルスプリング280および他の部材と衝突する部分に設けられた緩衝材等(不織布、弾性体等)以外は、射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。この例では、サポート210およびレペティションレバー240は一体形成されている。なお、サポート210およびレペティションレバー240を個別の部品として形成し、それらを接着または接合させてもよい。
サポート210は、一端側に貫通孔2109が形成され、他端側にジャック支持部2105が形成されている。サポート210は、貫通孔2109とジャック支持部2105との間において、下方に突出するサポートヒール212および上方に突出するスプリング支持部218を備える。貫通孔2109は、サポートフレンジ290に支持される軸が通される。これによって、サポート210は、サポートフレンジ290およびサポートレール920に対して回動可能に配置される。サポートヒール212は、その下面において、上述したキャプスタンスクリュー120と接触する。スプリング支持部218は、ねじりコイルスプリング280を支持する。ジャック支持部2105は、ジャック250を回動可能に支持する。
貫通孔2109とジャック支持部2105との間には、サポートヒール212よりジャック支持部2105側において空間SPが形成される。説明の便宜上、サポート210を、貫通孔2109側から第1本体部2101、屈曲部2102、第2本体部2103の各領域に区分する。この場合、第1本体部2101と第2本体部2103とを結合する屈曲部2102によって、第2本体部2103は第1本体部2101よりも鍵110に近い側(下方)に配置される。ジャック支持部2105が第2本体部2103から上方に突出する。この区分によれば、上記の空間SPは、第2本体部2103の上方において、屈曲部2102とジャック支持部2105と挟まれた領域に対応する。また、サポート210の端部(第2本体部2103側の端部)には、ストッパ216が結合している。
レペティションレバー240には、スプリング接触部242、および延設部244が結合されている。スプリング接触部242および延設部244はレペティションレバー240からサポート210側へ延びている。スプリング接触部242は、ねじりコイルスプリング280の第1アーム2802と接触する。レペティションレバー240および延設部244は、ジャック250の両側面の側から挟み込む2枚の板状の部材を含む。この例では、この2枚の板状の部材によって挟まれた空間の少なくとも一部において、延設部244とジャック250とが摺接している。
延設部244は、内側部2441、外側部2442、結合部2443およびストッパ接触部2444を含む。内側部2441は、レペティションレバー240においてジャック大2502よりも演奏者奥側(可撓部220側)に結合されている。内側部2441とレペティションレバー240とが結合されている部分にはリブ246が設けられている。内側部2441は、ジャック大2502を挟み込んで交差し、ジャック大2502よりも演奏者手前側(可撓部220とは反対側)まで延在している。つまり、延設部244はジャック250と交差している、ということもできる。内側部2441は、ジャック大2502を挟み込む部分において、ジャック大2502側に突出する線形状の突起部P1を備える(図3(a−1)A−A’端面図参照)。
外側部2442は、レペティションレバー240においてジャック250(ジャック大2502)よりも演奏者手前側(可撓部220とは反対側)に結合されている。内側部2441と外側部2442とは、結合部2443において結合されている。結合部2443は、ジャック小2504を挟み込んでいる。ストッパ接触部2444は、結合部2443に結合し、ストッパ216に対してストッパ216の下方から接触する。これによれば、ストッパ216はレペティションレバー240とサポート210とが拡がる方向(上方)へのレペティションレバー240の回動範囲を規制する。換言すると、延設部244はレペティションレバー240の回動中心からジャック250側においてレペティションレバー240に接続され、ストッパ216に対してストッパ216の下方から接触する。ここで、ストッパ216はジャック250の回動中心よりも下方において、サポート210に接続されている。
ジャック250は、ジャック大2502、ジャック小2504および突出部256を備える。ジャック250は、サポート210に対して回動可能に配置されている。ジャック大2502とジャック小2504との間において、ジャック支持部2105に回動可能に支持されるためのサポート接続部2505が形成されている。サポート接続部2505は、ジャック支持部2105の一部を囲む形状であり、ジャック250の回動範囲を規制する。また、サポート接続部2505の形状とその素材の弾性変形により、ジャック250は、ジャック支持部2105の上方から嵌めることができる。突出部256は、ジャック大2502からジャック小2504とは反対側に突出し、ジャック250と共に回動する。突出部256は、その側面にスプリング接触部2562を備える。スプリング接触部2562は、ねじりコイルスプリング280の第2アーム2804と接触する。
ジャック大2502は、両側面から突出する線形状の突起部P2を備える(図3(b−1)B−B’端面図参照)。突起部P2は、上述した内側部2441の突起部P1と摺接する。ジャック小2504は、両側面から突出する円形状の突起部P3を備える(図3(b−2)C−C’端面図参照)。突起部P3は、上述した結合部2443の内面と摺接する。このように突起部P1、P2、P3を介してジャック250と延設部244とが摺接することで、接触面積を減らしている。なお、図3(c)に示すように、複数の突起部P2によって溝部V2を形成することにより、グリス溜りを形成してもよい。また、図3(d)に示すように、ジャック大2502の側面形状において、突起部P2または溝部V2を有するようにしてもよい。
ねじりコイルスプリング280は、スプリング支持部218を支点とし、第1アーム2802がスプリング接触部242と接触し、第2アーム2804がスプリング接触部2562と接触する。第1アーム2802は、レペティションレバー240の演奏者側を上方(サポート210から離れる方向)に移動するように、スプリング接触部242を介してレペティションレバー240に回動力を付与する弾性体として機能する。第2アーム2804は、突出部256が下方(サポート210に近づく方向)に移動するように、スプリング接触部2562を介してジャック250に回動力を付与する弾性体として機能する。以上が、サポートアセンブリ20の構成についての説明である。
[サポートアセンブリ20の動作]
続いて、鍵110がレスト位置にある状態(図1)からエンド位置に押下された場合において、サポートアセンブリ20の動きを説明する。
図4は、本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの動きを説明するための側面図である。鍵110がエンド位置まで押下されると、キャプスタンスクリュー120がサポートヒール212を押し上げて、貫通孔2109の軸を回動中心としてサポート210を回動させる。サポート210が回動して上方に移動すると、ジャック大2502がハンマローラ315を押し上げて、ハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する。なお、一般的なグランドピアノである場合には、この衝突は、ハンマによる打弦に相当する。
この衝突の直前に、レギュレーティングボタン360によってジャック小2504の上方への移動が規制されつつ、さらにサポート210(ジャック支持部2105)が上昇する。そのため、ジャック大2502は、ハンマローラ315から外れるように回動する。このとき、レギュレーティングボタン360によって、結合部2443の上方への移動も規制される。この例では、レギュレーティングボタン360は、一般的なグランドピアノのアクション機構におけるレペティションレギュレーティングスクリューの機能も有している。
これにより、レペティションレバー240は、上方への移動が規制されてサポート210に近づくように回動する。これらの動作によって、ダブルエスケープメント機構が実現される。図4は、この状態を示す図である。なお、鍵110をレスト位置に戻していくと、レペティションレバー240によってハンマローラ315が支えられ、ハンマローラ315の下方にジャック大2502が戻る。
このように、一般的なグランドピアノに用いられるサポートアセンブリに比べて容易な構成において、ダブルエスケープメントが実現されるため、タッチ感への影響を抑えつつ製造コストを削減することができる。
また、ジャック250と延設部244とが摺接しているため、ジャック250は、延設部244に結合したレペティションレバー240のガイド部としても機能する。そのため、レペティションレバー240が可撓部220に接続されていることに起因して、レペティションレバー240のヨーイング(横ずれ)およびローリング(捻れ)が生じやすくなっていたとしても、これらの現象の発生を抑制することができる。すなわち、ジャック250が回動する面に沿ってレペティションレバー240を回動させることを容易に実現することができる。
ジャック250がサポート210に対して回動するため、間接的に、サポート210が回動する面に沿ってレペティションレバー240を回動させることもできる。このように、ガイド部として機能する部材(この例ではジャック250)は、サポート210が回動する面に沿って移動する部材であればよい。このとき、サポート210が回動する面に沿ってジャック250が回動するように、ジャック250をガイドする構成をサポート210に配置してもよい。このようにすれば、ジャック250を介してサポート210が回動する面に沿ってレペティションレバー240を回動させる精度をより向上させることができる。
[鍵盤装置1の発音機構]
鍵盤装置1は、上述したように電子ピアノへの適用例であって、鍵110の操作をセンサ510によって測定し、測定結果に応じた音を出力する。
図5は、本発明の第1実施形態における鍵盤装置の発音機構の構成を示すブロック図である。鍵盤装置1の発音機構50は、センサ510(88の鍵110に対応したセンサ510−1、510−2、・・・510−88)、信号変換部550、音源部560および出力部570を備える。信号変換部550は、センサ510から出力された電気信号を取得し、各鍵110における操作状態に応じた操作信号を生成して出力する。この例では、操作信号はMIDI形式の信号である。そのため、押鍵操作によってハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突したタイミングに対応して、信号変換部550はノートオンを出力する。このとき、88個の鍵110のいずれが操作されたかを示すキーナンバ、および衝突する直前の速度に対応するベロシティについてもノートオンに対応付けて出力される。一方、離鍵操作がされると、グランドピアノであればダンパによって弦の振動が止められるタイミングに対応して、信号変換部550はキーナンバとノートオフとを対応付けて出力する。信号変換部550には、ペダル等の他の操作に応じた信号が入力され、操作信号に反映されてもよい。音源部560は、信号変換部550から出力された操作信号に基づいて、音信号を生成する。出力部570は、音源部560によって生成された音信号を出力するスピーカまたは端子である。
<第2実施形態>
上述した第1実施形態では、延設部244は、内側部2441および外側部2442を備え、レペティションレバー240と2箇所で結合していた。第2実施形態では、レペティションレバーと延設部とが1箇所で結合している例について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態におけるサポートアセンブリの構成を示す側面図である。サポートアセンブリ20Aは、レペティションレバー240Aと延設部244Aとが1箇所で結合している。この例では、延設部244Aは、内側部2441Aを備え、第1実施形態における外側部2442に相当する構成を備えていない。この例では、レペティションレバー240Aと内側部2441Aとが結合する部分の演奏者手前側(可撓部220とは反対側)にリブ246Aが形成されている。
<第3実施形態>
第3実施形態では、レペティションレバーと延設部とが1箇所で結合しているサポートアセンブリであって、第2実施形態とは異なる位置で結合している例について説明する。
図7は、本発明の第3実施形態におけるサポートアセンブリの構成を示す側面図である。サポートアセンブリ20Bは、レペティションレバー240Bと延設部244Bとが1箇所で結合している。この例では、延設部244Bは、外側部2442Bを備え、第1実施形態における内側部2441に相当する構成を備えていない。この例では、図7に示すように、レペティションレバー240Bと外側部2442Bとが結合する部分にリブ246Bが形成されている。リブ246Bは、ジャック250Bのジャック大2502Bを挟み込むように2枚の板状の部材で形成されている。この例では、ジャック大2502Bには、リブ246Bと摺接する突起部P4が配置されている。突起部P4は、突起部P3と同様な形状である。
<第4実施形態>
第1実施形態では、ジャック250は、延設部244と摺接することによって、レペティションレバー240の回動方向をガイドするガイド部の機能を実現していた。第4実施形態では、サポートに結合している部材がガイド部の機能を実現している例について説明する。
図8は、本発明の第4実施形態におけるサポートアセンブリの構成を示す側面図である。図8(a)に示すように、サポートアセンブリ20Cは、サポート210Cの端部に接続された突出部217を備える。延設部244Cの結合部2443Cは、突出部217を挟むように配置されている。結合部2443Cには、突出部217と摺接する突起部P5が配置されている。なお、図8(b)は、結合部2443Cと突出部217とが摺接している部分を矢印D1の方向に見た場合の図である。
<第5実施形態>
第1実施形態では、ジャック250は、延設部244と摺接することによって、ガイド部の機能を実現していた。第5実施形態では、ジャックに結合している部材がガイド部の機能を実現している例について説明する。
図9は、本発明の第5実施形態におけるサポートアセンブリの構成を示す側面図である。サポートアセンブリ20Dは、ジャック250Dおよび延設部244Dを備える。ジャック250Dは、ジャック大2502Dに接続された突出部257を含む。延設部244Dは、突起部P6を備える外側部2442Dを含む。延設部244Dの外側部2442Dは、突出部257を挟むように配置されている。外側部2442Dには、突出部257と摺接する突起部P6が配置されている。なお、図9(b)は、外側部2442Dと突出部257とが摺接している部分を矢印D2の方向に見た場合の図である。
<第6実施形態>
[鍵盤装置1Eの構成]
本発明の第6実施形態における鍵盤装置1Eは、第1実施形態の鍵盤装置1と同様に、本発明に係るサポートアセンブリの一例を電子ピアノに適用した例である。鍵盤装置1Eは鍵盤装置1と類似しているが、サポートアセンブリおよびサポートアセンブリの支持構造が相違している。また、鍵盤装置1Eはサポートアセンブリに備えられたレペティションレバーの上方への回動を規制する方法が鍵盤装置1とは相違している。以下の説明において、上記の相違点を中心に説明し、共通する部分については説明を省略する。
図10は、本発明の第6実施形態における鍵盤装置の構成を示す側面図である。サポートアセンブリ60はサポートレール960に固定されている。サポートレール960はブラケット900に支持されている。第1実施形態におけるサポートアセンブリ20は、サポートフレンジ290に支持される軸が貫通孔2109を貫通することによって、回動可能に支持されていた。一方、サポートアセンブリ60は、サポート610がサポートレール960に回動可能に支持されることには同様であるが、後述するように、その支持方法が異なっている。レペティションレギュレーティングスクリュー346は、サポートアセンブリ60の上方(ハンマシャンク310側)への回動を規制する。なお、サポートレール960は、サポートアセンブリ60の回動の基準となるフレームの一例である。フレームは、サポートレール960のように一つの部材で形成されていてもよいし、複数の部材で形成されていてもよい。フレームは、サポートレール960のように鍵110の配列方向に長手を有するレール状の部材であってもよいし、鍵110毎に独立した部材であってもよい。
[サポートアセンブリ60の構成]
図11は、本発明の第6実施形態におけるサポートアセンブリの構成を示す側面図である。鍵盤装置1Eのサポートアセンブリ60は、サポート610、レペティションレバー640、ジャック650、動作規制部660、およびコイルスプリング680を備える。サポートアセンブリ60のうち、コイルスプリング680、他の部材と衝突する部分に設けられた緩衝材等(不織布、弾性体等)以外は、射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。
サポート610は、サポートレール960に対して回動可能に支持されている。レペティションレバー640は、サポート610に回動可能に支持されている。ジャック650は、サポート610に回動可能に配置されている。また、ジャック650は、ジャック大6502およびジャック小6504を有しており、ジャック大6502はレペティションレバー640に設けられたスリット642を貫通可能に配置され、ジャック小6504はサポート610から演奏者の手前側に延びている。動作規制部660は、サポート610のレペティションレバー640側に配置されている。
また、サポート610は、サポートヒール612、フレーム固定部632、可撓部634、および台座638を有する。フレーム固定部632は、サポート610をサポートレール960に固定する。可撓部634は、各々のサポートアセンブリ60のサポート610とフレーム固定部632との間に設けられ、可撓性(弾性)を有している。また、可撓部634はサポート610およびフレーム固定部632と一体形成されており、サポートアセンブリ60の回動方向または可撓部634の板厚方向において、少なくともサポート610よりも板厚が薄い。なお、図11では、サポート610、フレーム固定部632、および可撓部634が一体形成された構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、可撓部634が固定具、接着剤、または溶接等によってサポート610およびフレーム固定部632の両方または一方に固定されていてもよい。ここで、可撓部634はサポートアセンブリ60の回動中心となる。
台座638は、サポート610のレペティションレバー640側に接続され、台座638の上面(レペティションレバー640側)には、台座638およびレペティションレバー640に作用するコイルスプリング682が設けられている。コイルスプリング682は台座638とレペティションレバー640とが互いに離れる方向に台座638およびレペティションレバー640に作用し、レペティションレバー640に回動力を付与する弾性体として機能する圧縮スプリングである。
レペティションレバー640は、可撓部620、スリット642、延設部644、およびサポート固定部648を有する。
可撓部620はレペティションレバー640のサポート610側に延びておりサポート固定部648に結合されている。つまり、可撓部620は、レペティションレバー640とサポート固定部648との間に設けられている。可撓部620はサポート固定部648及びレペティションレバー640と一体形成されているが、可撓部620の板厚がレペティションレバー640の板厚よりも薄いため、可撓部620は可撓性(弾性)を有している。したがって、レペティションレバー640は可撓部620を中心として回動する。
スリット642は、レペティションレバー640の回動中心である可撓部620から演奏者の手前側の一部において、ジャック大6502が貫通可能な位置に設けられている。延設部644は、レペティションレバー640の回動中心である可撓部620からジャック650側において、レペティションレバー640のサポート610側に結合されている。また、延設部644はスリット6442および6444を有している。サポート固定部648は固定具674によってサポート610に固定されている。
なお、図11ではレペティションレバー640、可撓部620、およびサポート固定部648が一体形成された構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、可撓部620が固定具、接着剤、または溶接等によってレペティションレバー640およびサポート固定部648の両方または一方に固定されていてもよい。
ジャック650は、ジャック大6502およびジャック小6504を備える。ジャック650は、ジャック支持部6105においてサポート610に対して回動可能に配置されている。ジャック大6502の一部には、ジャック大6502およびサポート610に作用するコイルスプリング684が設けられている。コイルスプリング684はジャック大6502が台座638に近づく方向にジャック大6502およびサポート610に作用し、ジャック650に対して回動力を付与する弾性体として機能する引張スプリングである。
動作規制部660は、可撓部620を基準に可撓部634とは反対側に設けられている。また、動作規制部660は、延設部662(第2延設部)、ストッパ664、およびガイド666を有する。延設部662はサポート610のレペティションレバー640側に配置されている。ストッパ664およびガイド666は延設部662に配置されており、それぞれ延設部662から演奏者の手前側に延びている。換言すると、ストッパ664およびガイド666は、延設部662から演奏者の手前側に突出する突出部である、ということもできる。ストッパ664は延設部644(第1延設部)に設けられたスリット6442を貫通しており、ガイド666は延設部644に設けられたスリット6444を貫通している。なお、スリット6442および6444は、ストッパ664及びガイド666が係止可能な形状であればよく、例えばストッパ664及びガイド666が係止可能な溝が設けられた形状であってもよい。スリット6442および6444を係止部ということもできる。
図12に示す側面図は図11においてD3方向から見た側面図のうち延設部644、ストッパ664、およびガイド666のみを示した図である。また、図12において(a)はレスト位置の、(b)はエンド位置の側面図を示す。ストッパ664はレペティションレバー640および延設部644の回動方向に交差する方向に長手を有している。また、ガイド666およびスリット6444はレペティションレバー640および延設部644の回動方向に長手を有している。ガイド666はスリット6444の内壁に対して溝部V6を有しており、ガイド666とスリット6444との摺接する面積を小さくしている。上記の溝部V6にグリスを塗布してもよい。
ここで、図11および図12に示すレスト位置において、延設部644は、スリット6442において、ストッパ664に対してストッパ664のサポート610側(下方)から接している。換言すると、延設部644は動作規制部660に対して動作規制部660の下方から接している。つまり、ストッパ664または動作規制部660はレペティションレバー640および延設部644のハンマシャンク310側(上方)への回動を規制する。延設部644とストッパ664との間には、延設部644とストッパ664とが接触することによって発生する雑音を低減するための緩衝材等(不織布、弾性体等)が設けられていてもよい。
また、延設部644は、スリット6444において、ガイド666と側方から接している。ここで、側方とはサポートアセンブリ60が隣接する方向、またはサポートレール960の延長方向である。換言すると、延設部644は動作規制部660と側方から接している。つまり、ガイド666または動作規制部660はレペティションレバー640のヨーイングおよびローリングを抑制する。延設部644とガイド666との間には、延設部644とガイド666とが摺動を円滑にするためにグリスが塗布されていてもよい。
なお、図11及び図12ではレペティションレバー640に接続された延設部644にスリットが設けられ、サポート610に接続された延設部662に突出部が設けられた構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、延設部662にスリットが設けられ、延設部644に当該スリットを貫通する突出部が構成であってもよい。
以上のように、本発明の第2実施形態に係る鍵盤装置1Eによると、従来と同等のサポートアセンブリの動作を確保しつつサポートアセンブリを構成する部品数を低減することができる。したがって、鍵の操作時のタッチ感の変化を抑えつつ、サポートアセンブリの製造コストを低減することができる。
また、ガイド666と延設部644とが摺接しているため、ガイド666は、延設部644に結合したレペティションレバー640のガイド部としても機能する。そのため、レペティションレバー640のヨーイングおよびローリングの発生を抑制することができる。
[サポートアセンブリ60の動作]
続いて、鍵110がレスト位置にある状態(図10)からエンド位置に押下された場合において、サポートアセンブリ60の動きを説明する。
図13は、本発明の第6実施形態におけるサポートアセンブリの動きを説明するための側面図である。鍵110がエンド位置まで押下されると、キャプスタンスクリュー120がサポートヒール612を押し上げて、可撓部634の軸を回動中心としてサポート610を回動させる。サポート610が回動して上方に移動すると、ジャック大6502がハンマローラ315を押し上げて、ハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する。
衝突の直前に、レギュレーティングボタン360によってジャック小6504の上方への移動が規制されつつ、さらにサポート610(ジャック支持部6105)が上昇する。そのため、ジャック大6502は、ハンマローラ315から外れるように回動する。このとき、レペティションレギュレーティングスクリュー346によって、レペティションレバー640の上方への移動も規制される。これにより、レペティションレバー640は、上方への移動が規制されてサポート610に近づくように回動する。これらの動作によって、ダブルエスケープメント機構が実現される。図13は、この状態を示す図である。なお、鍵110をレスト位置に戻していくと、レペティションレバー640によってハンマローラ315が支えられ、ハンマローラ315の下方にジャック大6502が戻る。
このようなサポートアセンブリ60であっても、サポートアセンブリ20と同様な効果が得られる。すなわち、一般的なグランドピアノに用いられるサポートアセンブリに比べて容易な構成において、ダブルエスケープメントが実現されるため、タッチ感への影響を抑えつつ製造コストを削減することができる。
また、ガイド666と延設部644とが摺接しているため、ガイド666は、延設部644に結合したレペティションレバー640のガイド部としても機能する。そのため、レペティションレバー640が可撓部620に接続されていることに起因して、レペティションレバー640のヨーイング(横ずれ)およびローリング(捻れ)が生じやすくなっていたとしても、これらの現象の発生を抑制することができる。すなわち、サポート610が回動する面に沿ってレペティションレバー640を回動させることを容易に実現することができる。
<変形例>
上述した実施形態では、ガイド部として機能する部分が2箇所であった。例えば、第1実施形態では、ジャック大2502のうち延設部244と摺接する部分(突起部P2)、およびジャック小2504のうち延設部244とが摺接する部分(突起部P3)の2箇所がガイド部として機能する。この2箇所のガイド部は、レペティションレバー240の回動中心から見て異なる方向に存在している。このように存在することにより、ヨーイングおよびローリングの発生を抑制する効果が向上する。ただし、ガイド部が1箇所であることを妨げるものではない。また、ガイド部は3箇所以上であってもよい。このとき、各ガイド部は、上述のようにレペティションレバー240の回動中心から見て異なる方向に存在していることが望ましい。
上述した実施形態では、延設部がガイド部を挟み込んでいた。例えば、第1実施形態では、延設部244は、ジャック250を挟み込むように、2枚の板状の部材で形成されていた。一方、これとは逆に、延設部244がジャック250に挟み込まれる構成、すなわち、ジャック250の少なくとも一部が、延設部244を挟み込む2枚の板状の部材で形成されていてもよい。
上述した実施形態では、ガイド部の少なくとも1つは、ジャックの回動軸より演奏者手前側(例えば、第1実施形態ではジャック250の回動軸に対して可撓部220とは反対側)に存在していた。一方、ジャック大より演奏者奥側(ジャック250の回動軸に対して可撓部220側)に位置してもよい。例えば、第1実施形態において、サポート210から上方に突出する突出部を設け、レペティションレバー240に結合された延設部がこの突出部に摺接するようにすればよい。
上述した実施形態では、レペティションレバーは、サポートに対して可撓部を介して結合されていた。一方、従来のグランドピアノにおいて用いられるサポートアセンブリのレペティションレバーに対して、延設部を結合させることもできる。そして、サポートに結合した部材またはジャックをガイド部として、延設部に摺接させればよい。
上述した実施形態では、サポートアセンブリを適用した鍵盤装置の例として電子ピアノを示した。一方、上記実施形態のサポートアセンブリは、グランドピアノ(アコースティックピアノ)に適用することもできる。この場合、発音機構は、ハンマ、弦に対応する。