以下、本発明の一実施形態におけるサポートアセンブリを含む鍵盤装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率(各構成間の比率、縦横高さ方向の比率等)は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
〈第1実施形態〉
[鍵盤装置1の構成]
本発明の第1実施形態における鍵盤装置1は、本発明に係るサポートアセンブリの一例を電子ピアノに適用した例である。この電子ピアノは、鍵の操作時にグランドピアノに近いタッチ感を得るために、グランドピアノが備えているサポートアセンブリに近い構成を備えている。図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る鍵盤装置1の概要を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鍵盤装置の機械構成を示す側面図である。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る鍵盤装置1は、複数の鍵110(この例では88鍵)及び鍵110の各々に対応したアクション機構を備える。アクション機構は、サポートアセンブリ20、ハンマシャンク310、ハンマ320及びハンマストッパ410を備える。なお、図1では、鍵110が白鍵である場合を示しているが、黒鍵であっても同様である。また、以下の説明において、演奏者手前側、演奏者奥側、上方、下方、側方等の向きを表す用語は、鍵盤装置を演奏者側から見た場合の向きとして定義される。例えば、図1の例では、サポートアセンブリ20は、ハンマ320から見て演奏者手前側に配置され、鍵110から見て上方に配置されている。側方は、鍵110が配列される方向に対応する。
鍵110は、バランスレール910によって回動可能に支持されている。鍵110は、図1に示すレスト位置からエンド位置までの範囲で回動する。ここで、「レスト位置」とは押下されていない状態の鍵位置であり、「エンド位置」とは鍵を押下しきった状態の鍵位置をいう。鍵110は、キャプスタンスクリュー120を備えている。サポートアセンブリ20は、サポートフレンジ290に回動可能に接続され、キャプスタンスクリュー120上に載置されている。サポートフレンジ290は、サポートレール920に固定されている。サポートアセンブリ20の詳細の構成は後述する。なお、サポートフレンジ290及びサポートレール920は、サポートアセンブリ20の回動の基準となるフレームの一例である。フレームは、サポートフレンジ290及びサポートレール920のように複数の部材で形成されていてもよいし、一つ部材で形成されていてもよい。フレームは、サポートレール920のように鍵110の配列方向に長手を有するレール状の部材であってもよいし、サポートフレンジ290のように鍵110毎に独立した部材であってもよい。
ハンマシャンク310は、シャンクフレンジ390に回動可能に接続されている。ハンマシャンク310は、ハンマローラ315を備えている。ハンマシャンク310は、ハンマローラ315を介して、サポートアセンブリ20上に載置されている。シャンクフレンジ390は、シャンクレール930に固定されている。ハンマ320は、ハンマシャンク310の端部に固定されている。レギュレーティングボタン360は、シャンクレール930に固定されている。ハンマストッパ410は、ハンマストッパレール940に固定されて、ハンマシャンク310の回動を規制する位置に配置されている。
センサ510は、ハンマシャンク310の位置及び移動速度(特にハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する直前の速度)を測定するためのセンサである。センサ510は、センサレール950に固定されている。この例では、センサ510はフォトインタラプタである。ハンマシャンク310に固定された遮蔽板520がフォトインタラプタの光軸を遮蔽する量に応じて、センサ510からの出力値が変化する。この出力値に基づいて、ハンマシャンク310の位置及び移動速度を測定することができる。なお、センサ510に代えて、またはセンサ510と共に、鍵110の操作状態を測定するためのセンサが設けられてもよい。
上述したサポートレール920、シャンクレール930、ハンマストッパレール940及びセンサレール950は、ブラケット900に支持されている。
[サポートアセンブリ20の構成]
図2は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリの構成を示す側面図である。サポートアセンブリ20は、サポート210、レペティションレバー240、ジャック250、ねじりコイルスプリング280を備える。サポート210とレペティションレバー240とは、レペティションレバー240に接続されたサポート接続部248がサポート210に接続されたレペティションレバー支持部214に係止することで取り付けられている。サポート接続部248とレペティションレバー支持部214との係止によって、レペティションレバー240は、サポート210に対して回動可能に支持されている。なお、レペティションレバー支持部214がレペティションレバー240を支持する構成の詳細については後述する。サポートアセンブリ20のうち、ねじりコイルスプリング280及び他の部材と衝突する部分に設けられた緩衝材等(不織布、弾性体等)以外は、射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。
サポート210は、一端側に貫通孔2109が形成され、他端側にサポート210から上方に突出するジャック支持部2105が形成されている。サポート210は、貫通孔2109とジャック支持部2105との間において、下方に突出するサポートヒール212及び上方に突出するスプリング支持部218を備える。貫通孔2109には、サポートフレンジ290に支持される軸が通される。これによって、サポート210は、サポートフレンジ290及びサポートレール920に対して回動可能に配置される。サポートヒール212は、その下面において、上述したキャプスタンスクリュー120と接触する。スプリング支持部218は、ねじりコイルスプリング280を支持する。ジャック支持部2105は、ジャック250を回動可能に支持する。
貫通孔2109とジャック支持部2105との間には、サポートヒール212よりジャック支持部2105側において空間SPが形成される。説明の便宜上、サポート210を、貫通孔2109側から第1本体部2101、屈曲部2102、第2本体部2103の各領域に区分する。この場合、第1本体部2101と第2本体部2103とを結合する屈曲部2102によって、第2本体部2103は第1本体部2101よりも鍵110に近い側(下方)に配置される。ジャック支持部2105が第2本体部2103から上方に突出する。この区分によれば、上記の空間SPは、第2本体部2103の上方において、屈曲部2102とジャック支持部2105と挟まれた領域に対応する。また、サポート210の端部(第2本体部2103側の端部)には、ストッパ216が結合している。
レペティションレバー240には、上記のサポート接続部248、スプリング接触部242、及び延設部244が結合されている。サポート接続部248、スプリング接触部242、及び延設部244はレペティションレバー240からサポート210側へ延びている。サポート接続部248はレペティションレバー240の一端に結合されている。そして、サポート接続部248には、上方に開口端を有する凹部2482が設けられている。この凹部2482の内側に上記のレペティションレバー支持部214が配置されることで、レペティションレバー240はサポート210に対して回動可能に取り付けられている。ここで、凹部2482はレペティションレバー支持部214に対してレペティションレバー支持部214の下方から接してる。
スプリング接触部242は、レペティションレバー240からサポート210側へ突出している。スプリング接触部242を突出部ということもできる。スプリング接触部242は、ねじりコイルスプリング280の第1アーム2802と接触し、第1アーム2802から上方への作用を受ける。換言すると、第1アーム2802はスプリング接触部242に対してスプリング接触部242の下方から接し、レペティションレバー240を上方に押圧する。さらに換言すると、第1アーム2802はスプリング接触部242に対してレペティションレバー240の回転作用を付与する。ここで、スプリング接触部242を作用部ということもできる。また、第1アーム2802又はねじりコイルスプリング280をレペティションレバー押圧部ということもできる。ここで、レペティションレバー押圧部は、ねじりコイルスプリング280に限定されず、圧縮型のコイルスプリング又はゴムなどに代表される弾性部材であってもよい。また、レペティションレバー押圧部は弾性部材に限定されず、レペティションレバー240を上方に押圧するその他の機械構造を用いることができる。例えば、内部にガスが封入されたガスシリンダ(又は、エアシリンダ)を用いることできる。図2では、スプリング接触部242がサポート210側へ突出した形状を有する構造を例示したが、この構造に限定されない。
レペティションレバー240及び延設部244は、ジャック250の両側面の側から挟み込む2枚の板状の部材を含む。この例では、この2枚の板状の部材によって挟まれた空間の少なくとも一部において、延設部244とジャック250とが摺接している。延設部244とジャック250とが摺接する構造について、以下に詳しく説明する。
延設部244は、内側部2441、外側部2442、結合部2443及びストッパ接触部2444を含む。内側部2441は、レペティションレバー240においてジャック大2502よりも演奏者奥側(レペティションレバー支持部214側)に結合されている。内側部2441とレペティションレバー240とが結合されている部分にはリブ246が設けられている。内側部2441は、ジャック大2502を挟み込んで交差し、ジャック大2502よりも演奏者手前側(レペティションレバー支持部214とは反対側)まで延在している。つまり、延設部244はジャック250と交差している、ということもできる。内側部2441には、内側部2441とジャック大2502との接触面積を小さくする線形状の突起部P1が設けられている。突起部P1は点形状であってもよい。
外側部2442は、レペティションレバー240においてジャック250(ジャック大2502)よりも演奏者手前側(レペティションレバー支持部214とは反対側)に結合されている。内側部2441と外側部2442とは、結合部2443において結合されている。結合部2443は、ジャック小2504を両側面から挟み込んでいる。ここで、結合部2443とジャック小2504との間において、結合部2443及びジャック小2504の一方または両方に、上記の突起部P1のような、両者の接触面積を小さくする突起部が設けられていてもよい。突起部は点形状であってもよく、線形状であってもよい。
ストッパ接触部2444は、結合部2443に結合され、ストッパ216に対してストッパ216の下方から接触する。つまり、ストッパ216はレペティションレバー240とサポート210とが拡がる方向(上方)へのレペティションレバー240の回動範囲を規制する規制手段である。換言すると、延設部244はレペティションレバー240の回動中心からジャック250側においてレペティションレバー240に接続され、ストッパ216に対してストッパ216の下方から接触する。ここで、ストッパ216はジャック250の回動中心よりも下方において、サポート210に接続されている。
ジャック250は、ジャック大2502、ジャック小2504及び突出部256を備える。ジャック250は、サポート210に対して回動可能に配置されている。ジャック大2502とジャック小2504との間において、ジャック支持部2105に回動可能に支持されるためのサポート接続部2505が形成されている。サポート接続部2505には、ジャック250の下方(サポート210)側においてジャック支持部2105が内部に配置される凹部2506が設けられている。
上記のように、ジャック250は、凹部2506の内部にジャック支持部2105が配置されることで、ジャック支持部2105を中心として回動する。また、サポート接続部2505の形状により、ジャック250は、ジャック支持部2105の上方から嵌めることができる。突出部256は、ジャック大2502からジャック小2504とは反対側に突出し、ジャック250と共に回動する。突出部256は、その側面にスプリング接触部2562を備え、ジャック小2504とは反対側の端部にジャック回動ストッパ2564を備える。スプリング接触部2562は、ねじりコイルスプリング280の第2アーム2804と接触し、第2アーム2804から下方への作用を受ける。ここで、突出部256の下方への回動を規制する回動規制手段が回動ストッパ2564とは別に設けられている場合は、回動ストッパ2564を設けなくてもよい。
上記の構成を換言すると、第2アーム2804はスプリング接触部2562に対してスプリング接触部2562の上方から接し、突出部256を下方に押圧する。さらに換言すると、第2アーム2804はスプリング接触部2562に対してジャック250の回転作用を付与する。ここで、スプリング接触部2562を作用部ということもできる。また、第2アーム2804又はねじりコイルスプリング280を突出部押圧部又はジャック押圧部ということもできる。ここで、突出部押圧部又はジャック押圧部は、ねじりコイルスプリング280に限定されず、圧縮型のコイルスプリング又はゴムなどに代表される弾性部材であってもよい。
ジャック大2502は、ジャック大2502の両側面から突出し、ジャック大2502と内側部2441との接触面積を小さくする線形状の突起部P2を備える。突起部P2は、上述した内側部2441の突起部P1と摺接する。このように突起部P1及びP2を介してジャック250と延設部244とが摺接することで、接触面積を減らしている。なお、突起部P2が複数設けられることで、複数の突起部P2の間に溝部を形成することにより、グリス溜りを形成してもよい。
ねじりコイルスプリング280は、棒状の第1アーム2802、第2アーム2804、及びコイル2806を有する。コイル2806は、環状形状であり、スプリング支持部218によって支持され、コイル2806内部の支点においてスプリング支持部218に接している。第1アーム2802は、スプリング接触部242に接触して、レペティションレバー240の演奏者側を上方(サポート210から離れる方向)に移動するように、レペティションレバー240に回動力を付与する弾性体として機能する。第2アーム2804は、スプリング接触部2562に接触して、突出部256が下方(サポート210に近づく方向)に移動するように、ジャック250に回動力を付与する弾性体として機能する。以上が、サポートアセンブリ20の構成についての説明である。
[レペティションレバー支持部214及びサポート接続部248の構成]
レペティションレバー支持部214及びサポート接続部248の構成について、図3を用いて詳細に説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリにおけるレペティションレバー支持部及びサポート接続部の拡大側面図(a)及びその分解図(b)である。ここで、図3(a)は、サポート接続部248がレペティションレバー支持部214に係止した状態における側面図である。図3(b)は、サポート接続部248をレペティションレバー支持部214から取り外した状態における側面図である。
図3に示すように、レペティションレバー支持部214はレペティションレバー回転軸2142及び連結部2144を含む。連結部2144はレペティションレバー回転軸2142とサポート210とを連結している。レペティションレバー回転軸2142の下端部は円弧形状を有している。サポート接続部248に設けられた凹部2482は、凹部2482の下面部にレペティションレバー回転軸2142の下端の円弧形状に対応した円弧形状を有する。凹部2482の円弧の曲率半径はレペティションレバー回転軸2142の円弧の曲率半径よりも大きい。ここで、レペティションレバー回転軸2142の下端部及び凹部2482の下面部が円弧形状ではなく、楕円形状又は湾曲形状である場合、レペティションレバー回転軸2142と凹部2482の下面部との接触点における両者の曲率半径が上記の条件を満たすように設計されてもよい。図3(a)に示すように、凹部2482がレペティションレバー回転軸2142に係止することで、レペティションレバー240はレペティションレバー回転軸2142を中心として回動する。
ここで、凹部2482の開口端部付近の幅L1はレペティションレバー回転軸2142の幅L2よりも大きい。つまり、レペティションレバー240をサポート210から取り外す際に、凹部2482がレペティションレバー回転軸2142に引っかからないため、サポート接続部248をレペティションレバー支持部214からスムーズに取り外すことができる。図3では、幅L1が幅L2よりも大きい構成を例示したが、この構成に限定されず、幅L1が幅L2よりも小さくてもよい。つまり、レペティションレバー240をサポート210から取り外す際に、サポート接続部248がレペティションレバー支持部214に引っかかるようにしてもよい。換言すると、レペティションレバー240はスナップフィット方式でサポート210に接続されてもよい。
図3では、凹部2482がレペティションレバー回転軸2142の径の方向(又は鍵110の長手方向)に幅L1の開口端部を有し、レペティションレバー回転軸2142が上記の径方向に幅L2の径を有する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、凹部2482がレペティションレバー回転軸2142の径方向及び軸方向の両方に幅L1の開口端部を有し、レペティションレバー回転軸2142がレペティションレバー回転軸2142の径方向及び軸方向の両方に幅L2の径を有する構成であってもよい。つまり、凹部2482の開口端部が円形状であり、レペティションレバー回転軸2142が球形状であってもよい。このとき、凹部2482の開口端部は楕円形状であってもよく、レペティションレバー回転軸2142が回転楕円体であってもよい。
また、図3では、レペティションレバー回転軸2142の下端部及び凹部2482の下面部の両方が曲面を有する形状を例示したが、この形状に限定されない。例えば、レペティションレバー回転軸2142の下端部が図3と同様に曲面を有し、凹部2482の下面部が断面視において直線部と角部によって構成された形状であってもよい。より具体的な例を挙げると、凹部2482の下面部が断面視においてV字型であってもよい。また、凹部2482の下面部が図3と同様に曲面を有し、レペティションレバー回転軸2142の下端部が断面視において直線部と角部によって構成された形状であってもよい。より具体的な例を挙げると、レペティションレバー回転軸2142の下端部が断面視においてV字型であってもよく、上下方向に延在する直線形状であってもよい。
以上のように、本発明の第1実施形態に係る鍵盤装置1によると、従来と同等のサポートアセンブリの動作を確保しつつサポートアセンブリの組み立てを容易することができる。したがって、一般的なグランドピアノに用いられるサポートアセンブリに比べて容易な構成において、ダブルエスケープメントが実現されるため、タッチ感への影響を抑えつつ製造コストを削減することができる。
また、第1アーム2802がレペティションレバー240を上方に押圧し、レペティションレバー240の回動がストッパ216によって規制されることで、レペティションレバー240がサポート210から抜けることを抑制することができる。また、凹部2482の開口端部の幅L1がレペティションレバー回転軸2142の幅L2よりも大きいことで、レペティションレバー240のサポート210への脱着をさらに容易にすることができる。また、レペティションレバー240から突出したスプリング接触部242と第1アーム2802とが接触することで、両者の接触面積を小さくすることができ、滑らかな動作及び摩擦音の少ない動作を得ることができる。また、スナップフィット方式でレペティションレバー240をサポート210に取り付けることで、サポートアセンブリ20を容易に組み立てることができる。スナップフィット方式を用いた場合でも、第1アーム2802がレペティションレバー240を上方に押圧することで、衝撃等によりレペティションレバー240がサポート210から抜けることを抑制し、レペティションレバー240のがたつきを抑制することができる。
[サポートアセンブリ20の動作]
続いて、鍵110がレスト位置にある状態(図1)からエンド位置に押下された場合において、サポートアセンブリ20の動きを説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリの動きを説明するための側面図である。鍵110がエンド位置まで押下されると、キャプスタンスクリュー120がサポートヒール212を押し上げて、貫通孔2109の軸を回動中心としてサポート210を回動させる。サポート210が回動して上方に移動すると、ジャック大2502がハンマローラ315を押し上げて、ハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する。なお、一般的なグランドピアノである場合には、この衝突は、ハンマによる打弦に相当する。
この衝突の直前に、レギュレーティングボタン360によってジャック小2504の上方への移動が規制されつつ、さらにサポート210が上昇する。そのため、ジャック大2502は、ハンマローラ315から外れるように回動する。このとき、レギュレーティングボタン360によって、延設部244の上方への移動も規制される。この例では、レギュレーティングボタン360は、一般的なグランドピアノのアクション機構におけるレペティションレギュレーティングスクリューの機能も有している。
これにより、レペティションレバー240は、上方への移動が規制されてサポート210に近づくように回動する。これらの動作によって、ダブルエスケープメント機構が実現される。図4は、この状態を示す図である。なお、鍵110をレスト位置に戻していくと、レペティションレバー240によってハンマローラ315が支えられ、ハンマローラ315の下方にジャック大2502が戻る。
[鍵盤装置1の発音機構]
鍵盤装置1は、上述したように電子ピアノへの適用例であって、鍵110の操作をセンサ510によって測定し、測定結果に応じた音を出力する。
図5は、本発明の一実施形態に係る鍵盤装置の発音機構の構成を示すブロック図である。鍵盤装置1の発音機構50は、センサ510(88の鍵110に対応したセンサ510−1、510−2、・・・510−88)、信号変換部550、音源部560及び出力部570を備える。信号変換部550は、センサ510から出力された電気信号を取得し、各鍵110における操作状態に応じた操作信号を生成して出力する。この例では、操作信号はMIDI形式の信号である。そのため、押鍵操作によってハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突したタイミングに対応して、信号変換部550はノートオンを出力する。このとき、88個の鍵110のいずれが操作されたかを示すキーナンバ、及び衝突する直前の速度に対応するベロシティについてもノートオンに対応付けて出力される。一方、離鍵操作がされると、グランドピアノであればダンパによって弦の振動が止められるタイミングに対応して、信号変換部550はキーナンバとノートオフとを対応付けて出力する。信号変換部550には、ペダル等の他の操作に応じた信号が入力され、操作信号に反映されてもよい。音源部560は、信号変換部550から出力された操作信号に基づいて、音信号を生成する。出力部570は、音源部560によって生成された音信号を出力するスピーカまたは端子である。
〈第2実施形態〉
本発明の第2実施形態に係る鍵盤装置1Aにおいて用いられるサポート210Aのレペティションレバー支持部214A及びレペティションレバー240Aのサポート接続部248Aについて、図6を用いて説明する。図6は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリにおけるレペティションレバー支持部及びサポート接続部の拡大側面図(a)及びその分解図(b)である。ここで、図6(a)は、サポート接続部248Aがレペティションレバー支持部214Aに係止した状態における側面図である。図6(b)は、サポート接続部248Aをレペティションレバー支持部214Aから取り外した状態における側面図である。第2実施形態において、レペティションレバー支持部214A及びサポート接続部248A以外の部品に関しては第1実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図6に示すように、レペティションレバー支持部214Aには、下方に開口された凹部2146Aが設けられている。この凹部2146Aの内側にサポート接続部248Aが配置されることで、レペティションレバー240Aはサポート210Aに対して回動可能に取り付けられている。ここで、サポート接続部248Aは凹部2146Aに対して凹部2146Aの下方から接してる。
[レペティションレバー支持部214A及びサポート接続部248Aの構成]
レペティションレバー支持部214A及びサポート接続部248Aの構成について、図6を用いて詳細に説明する。図6に示すように、サポート接続部248Aはレペティションレバー回転軸2486A及び連結部2488Aを含む。連結部2488Aはレペティションレバー回転軸2486Aとレペティションレバー240Aとを連結している。レペティションレバー回転軸2486Aの上端部は円弧形状を有している。レペティションレバー支持部214Aに設けられた凹部2146Aは、凹部2146Aの上面部にレペティションレバー回転軸2486Aの上端部の円弧形状に対応した円弧形状を有する。凹部2146Aの円弧の曲率半径はレペティションレバー回転軸2486Aの円弧の曲率半径よりも大きい。ここで、レペティションレバー回転軸2486Aの上端部及び凹部2146Aの上面部が円弧形状ではなく、楕円形状又は湾曲形状である場合、レペティションレバー回転軸2486Aの上端部と凹部2146Aの上面部との接触点における両者の曲率半径が上記の条件を満たすように設計されてもよい。図6(a)に示すように、凹部2146Aがレペティションレバー回転軸2486Aに係止することで、レペティションレバー240Aはレペティションレバー回転軸2486Aを中心として回動する。
ここで、凹部2146Aの開口端部付近の幅L3はレペティションレバー回転軸2486Aの幅L4よりも大きい。つまり、レペティションレバー240Aをサポート210Aから取り外す際に、凹部2146Aがレペティションレバー回転軸2486Aに引っかからないため、サポート接続部248Aをレペティションレバー支持部214Aからスムーズに取り外すことができる。図6では、幅L3が幅L4よりも大きい構成を例示したが、この構成に限定されず、幅L3が幅L4よりも小さくてもよい。つまり、レペティションレバー240Aをサポート210Aから取り外す際に、サポート接続部248Aがレペティションレバー支持部214Aに引っかかるようにしてもよい。換言すると、レペティションレバー240Aはスナップフィット方式でサポート210Aに接続されてもよい。
図6では、凹部2146Aがレペティションレバー回転軸2486Aの径の方向に幅L3の開口端部を有し、レペティションレバー回転軸2486Aが上記の径方向に幅L4の径を有する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、凹部2146Aがレペティションレバー回転軸2486Aの径方向及び軸方向の両方に幅L3の開口端部を有し、レペティションレバー回転軸2486Aがレペティションレバー回転軸2486Aの径方向及び軸方向の両方に幅L4の径を有する構成であってもよい。つまり、凹部2146Aの開口端部が円形状であり、レペティションレバー回転軸2486Aが球形状であってもよい。このとき、凹部2146Aの開口端部は楕円形状であってもよく、レペティションレバー回転軸2486Aが回転楕円体であってもよい。
以上のように、本発明の第2実施形態に係る鍵盤装置1Aによると、従来と同等のサポートアセンブリの動作を確保しつつサポートアセンブリの組み立てを容易することができる。したがって、一般的なグランドピアノに用いられるサポートアセンブリに比べて容易な構成において、ダブルエスケープメントが実現されるため、タッチ感への影響を抑えつつ製造コストを削減することができる。
また、凹部2146Aのレペティションレバー回転軸2486Aへの係止によってレペティションレバー240Aをサポート210Aに取り付けることで、サポートアセンブリ20Aを容易に組み立てることができる。また、凹部2146Aの開口端部の幅L3がレペティションレバー回転軸2486Aの幅L4よりも大きいことで、レペティションレバー240Aのサポート210Aへの脱着をさらに容易にすることができる。
〈第3実施形態〉
[鍵盤装置1Bの構成]
本発明の第3実施形態における鍵盤装置1Bは、第1実施形態の鍵盤装置1と同様に本発明に係るサポートアセンブリの一例を電子ピアノに適用した例である。鍵盤装置1Bは鍵盤装置1と類似しているが、サポートアセンブリおよびサポートアセンブリの支持構造が相違している。また、鍵盤装置1Bはサポートアセンブリに備えられたレペティションレバーの上方への回動を規制する方法が鍵盤装置1とは相違している。以下の説明において、上記の相違点を中心に説明し、共通する部分については説明を省略する。
図7は、本発明の一実施形態に係る鍵盤装置の構成を示す側面図である。サポートアセンブリ60はサポートレール960に固定されている。サポートレール960はブラケット900に支持されている。第1実施形態におけるサポートアセンブリ20は、サポートフレンジ290に支持される軸が貫通孔2109を貫通することによって、回動可能に支持されていた。一方、サポートアセンブリ60は、サポート610がサポートレール960に回動可能に支持される点についてはサポートアセンブリ20と同様であるが、後述するように、その支持方法が異なっている。レペティションレギュレーティングスクリュー346は、サポートアセンブリ60の上方(ハンマシャンク310側)への回動を規制する。なお、サポートレール960は、サポートアセンブリ60の回動の基準となるフレームの一例である。フレームは、サポートレール960のように一つの部材で形成されていてもよいし、複数の部材で形成されていてもよい。フレームは、サポートレール960のように鍵110の配列方向に長手を有するレール状の部材であってもよいし、鍵110毎に独立した部材であってもよい。
[サポートアセンブリ60の構成]
図8は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリの構成を示す側面図である。また、鍵盤装置1Bのサポートアセンブリ60は、サポート610、レペティションレバー640、ジャック650、動作規制部660、およびコイルスプリング680を備える。サポート610とレペティションレバー640とは、レペティションレバー640に接続されたサポート接続部648がサポート610に接続されたレペティションレバー支持部614に係止することで取り付けられている。サポート接続部648とレペティションレバー支持部614との係止によって、レペティションレバー640は、サポート610に対して回動可能に支持されている。なお、レペティションレバー支持部614がレペティションレバー640を支持する構成の詳細については後述する。サポートアセンブリ60のうち、コイルスプリング680および他の部材と衝突する部分に設けられた緩衝材等(不織布、弾性体等)以外は、射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。
サポート610は、サポートレール960に対して回動可能に支持されている。ジャック650は、サポート610に回動可能に配置されている。また、ジャック650は、ジャック大6502およびジャック小6504を有しており、ジャック大6502はレペティションレバー640に設けられたスリット642を貫通可能に配置され、ジャック小6504はサポート610から演奏者の手前側に延びている。動作規制部660は、サポート610のレペティションレバー640側に配置されている。
また、サポート610は、サポートヒール612、レペティションレバー支持部614、フレーム固定部632、可撓部634、および台座638を有する。レペティションレバー支持部614はサポート610から上方に突出している。なお、レペティションレバー支持部614の形状は図3に示したレペティションレバー支持部214と同様なので、ここでは説明を省略する。フレーム固定部632は、サポート610をサポートレール960に固定する。可撓部634は、各々のサポートアセンブリ60のサポート610とフレーム固定部632との間に設けられ、可撓性(弾性)を有している。また、可撓部634はサポート610およびフレーム固定部632と一体形成されており、サポートアセンブリ60の回動方向または可撓部634の板厚方向において、少なくともサポート610よりも板厚が薄い。なお、図8では、サポート610、フレーム固定部632、および可撓部634が一体形成された構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、可撓部634が固定具、接着剤、または溶接等によってサポート610およびフレーム固定部632の両方または一方に固定されていてもよい。ここで、可撓部634はサポートアセンブリ60の回動中心となる。
台座638は、サポート610のレペティションレバー640側に接続され、台座638の上面(レペティションレバー640側)には、台座638およびレペティションレバー640に作用するコイルスプリング682と、ジャック大6502が台座638に近づく方向へのジャック650の回動を規制するジャック大ストッパ6382と、が設けられている。ここで、ジャック大ストッパ6382と当接するジャック大6502の一部をジャック回動ストッパ6564ということもできる。コイルスプリング682は台座638およびレペティションレバー640が互いに離れる方向に台座638およびレペティションレバー640に作用し、レペティションレバー640に回動力を付与する弾性体として機能する圧縮スプリングである。ジャック大ストッパ6382とジャック大6502との間には、ジャック大ストッパ6382とジャック大6502とが接触することによって発生する雑音を低減するための緩衝材等(不織布、弾性体等)が設けられていてもよい。
レペティションレバー640は、スリット642、延設部644、およびサポート接続部648を有する。サポート接続部648及び延設部644はレペティションレバー640からサポート610側へ延びている。サポート接続部648はレペティションレバー640の一端に結合されている。そして、サポート接続部648には、上方に開口端を有する凹部6482が設けられている。この凹部6482の内側に上記のレペティションレバー支持部614が配置されることで、レペティションレバー640はサポート610に対して回動可能に取り付けられている。ここで、凹部6482はレペティションレバー支持部614に対してレペティションレバー支持部614の下方から接してる。なお、サポート接続部648の形状は図3に示したサポート接続部248と同様なので、ここでは説明を省略する。
スリット642は、レペティションレバー640の回動中心であるレペティションレバー支持部614から演奏者の手前側の一部において、ジャック大6502が貫通可能な位置に設けられている。延設部644は、レペティションレバー640の回動中心であるレペティションレバー支持部614からジャック650側において、レペティションレバー640のサポート610側に結合されている。また、延設部644はスリット6442および6444を有している。
ジャック650は、ジャック大6502とジャック小6504との間のサポート接続部6505がサポート610のジャック支持部6105に接続されることで、サポート610に対して回動可能に配置されている。ジャック大6502の一部には、コイルスプリング684が接続されるスプリング接触部6562が設けられている。コイルスプリング684はジャック大6502が台座638に近づく方向にジャック大6502およびサポート610に作用し、ジャック650に回動力を付与する弾性体として機能する引張スプリングである。
サポート610は、台座638よりも演奏者手前側において、ジャック支持部6105を両側面の側から挟み込む2枚の板状の部材を含む。この2枚の板状の部材間にサポート接続部6505及びコイルスプリング684の一部が設けられている。ジャック650のヨーイング及びローリングを抑制するために、この2枚の板状の部材によって挟まれた空間の少なくとも一部において、ジャック650とサポート610とが摺接していてもよい。
動作規制部660は、レペティションレバー支持部614を基準に可撓部634とは反対側に設けられている。また、動作規制部660は、延設部662、ストッパ664、およびガイド666を有する。延設部662はサポート610のレペティションレバー640側に配置されている。ストッパ664およびガイド666は延設部662に配置されており、それぞれ延設部662から演奏者の手前側に延びている。換言すると、ストッパ664およびガイド666は、延設部662から演奏者の手前側に突出する突出部である、ということもできる。ストッパ664は延設部644に設けられたスリット6442を貫通しており、ガイド666は延設部644に設けられたスリット6444を貫通している。なお、スリット6442および6444は、ストッパ664及びガイド666が係止可能な形状であればよく、例えばストッパ664及びガイド666が係止可能な溝が設けられた形状であってもよい。スリット6442および6444を係止部ということもできる。
図9は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリのストッパおよびガイドの構成を示す側面図である。図9に示す側面図は図8においてD1方向から見た側面図のうち延設部644、ストッパ664、およびガイド666のみを示した図である。また、図9において(a)はレスト位置の、(b)はエンド位置の側面図を示す。ストッパ664はレペティションレバー640および延設部644の回動方向に交差する方向に長手を有している。また、ガイド666およびスリット6444はレペティションレバー640および延設部644の回動方向に長手を有している。ガイド666はスリット6444の内壁に対して溝部V6を有しており、ガイド666とスリット6444との摺接する面積を小さくしている。上記の溝部V6にグリスを塗布してもよい。
ここで、図8および図9に示すレスト位置において、延設部644は、スリット6442において、ストッパ664に対してストッパ664のサポート610側(下方)から接している。換言すると、延設部644は動作規制部660に対して動作規制部660の下方から接している。つまり、ストッパ664または動作規制部660はレペティションレバー640および延設部644のハンマシャンク310側(上方)への回動を規制する規制手段である。本実施形態においては、コイルスプリング682がレペティションレバー640を上方に押圧し、レペティションレバー640の回動がストッパ664によって規制されることで、レペティションレバー640がサポート610から抜けることを抑制することができる。延設部644とストッパ664との間には、延設部644とストッパ664とが接触することによって発生する雑音を低減するための緩衝材等(不織布、弾性体等)が設けられていてもよい。
また、延設部644は、スリット6444において、ガイド666と側方から接している。ここで、側方とはサポートアセンブリ60が隣接する方向、またはサポートレール960の延長方向である。換言すると、延設部644は動作規制部660と側方から接している。つまり、ガイド666または動作規制部660はレペティションレバー640のヨーイング及びローリングを抑制する。延設部644とガイド666との間には、延設部644とガイド666とが摺動を円滑にするためにグリスが塗布されていてもよい。
なお、図8及び図9ではレペティションレバー640に接続された延設部644にスリットが設けられ、サポート610に接続された延設部662に突出部が設けられた構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、延設部662にスリットが設けられ、延設部644に当該スリットを貫通する突出部が構成であってもよい。
以上のように、本発明の第3実施形態に係る鍵盤装置1Bによると、第1実施形態に係る鍵盤装置1と同様の効果を得ることができる。
[サポートアセンブリ60の動作]
続いて、鍵110がレスト位置にある状態(図7)からエンド位置に押下された場合において、サポートアセンブリ60の動きを説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリの動きを説明するための側面図である。鍵110がエンド位置まで押下されると、キャプスタンスクリュー120がサポートヒール612を押し上げて、可撓部634の軸を回動中心としてサポート610を回動させる。サポート610が回動して上方に移動すると、ジャック大6502がハンマローラ315を押し上げて、ハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する。
この衝突の直前に、レギュレーティングボタン360によってジャック小6504の上方への移動が規制されつつ、さらにサポート610が上昇する。そのため、ジャック大6502は、ハンマローラ315から外れるように回動する。このとき、レペティションレギュレーティングスクリュー346によって、レペティションレバー640の上方への移動が規制される。これにより、レペティションレバー640は、上方への移動が規制されてサポート610に近づくように回動する。これらの動作によって、ダブルエスケープメント機構が実現される。図10は、この状態を示す図である。なお、鍵110をレスト位置に戻していくと、レペティションレバー640によってハンマローラ315が支えられ、ハンマローラ315の下方にジャック大6502が戻る。
上述した実施形態では、サポートアセンブリを適用した鍵盤装置の例として電子ピアノを示した。一方、上記実施形態のサポートアセンブリは、グランドピアノ(アコースティックピアノ)に適用することもできる。この場合、発音機構は、ハンマ、弦に対応する。
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。