JP2016033126A - 熱酸発生剤およびエネルギー線酸発生剤 - Google Patents

熱酸発生剤およびエネルギー線酸発生剤 Download PDF

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Abstract

【課題】カチオン重合開始剤として用いる熱酸発生剤又はエネルギー線酸発生剤として有用な新規スルホニウム化合物の提供。【解決手段】一般式(I)で示される熱酸発生剤又はエネルギー線酸発生剤。[R1はC1−4のアルキル基;R2,R2’,R2’’及びR3は各々独立にH又はC1−4のアルキル基;R4はC1−4のアルキル基又は置換/未置換のフェニル基;X−はハメット酸度関数が−12以下の超強酸のアニオン(アニオンがSbF6−、PF6−、BF4−、B(C6F5)4−又はAsF6−)]【選択図】図1

Description

本発明は、熱酸発生剤およびエネルギー線酸発生剤に関する。より具体的には、本発明は、カチオン重合開始剤かつ熱酸発生剤またはエネルギー線酸発生剤として有用なスルホニウム化合物に関する。
カチオン重合性化合物の硬化剤として、様々な化合物が知られている。
たとえば、特開平8−41116号公報(特許文献1)には、樹脂組成物の保存安定性、相溶性、硬化性に優れ、硬化物の臭気が少ない硬化剤として、特定構造のスルホニウム塩およびスルホキソニウム塩が開示されている。
また、特開2007−91702号公報(特許文献2)には、光または熱に対して高活性の重合開始剤として、特定構造のスルホニウム化合物が開示されている。
さらに、特開2012−153642号公報(特許文献3)には、熱硬化組成物の硬化開始剤として有用な特定構造のスルホニウム化合物が開示されている。
特開平8−41116号公報 特開2007−91702号公報 特開2012−153642号公報
本発明の目的は、カチオン重合開始剤として有用な新規熱酸発生剤または新規エネルギー線酸発生剤を提供することにある。
本発明は、以下の発明を含む。
(1)
本発明の熱酸発生剤またはエネルギー線酸発生剤は、下記一般式(I)で示されるスルホニウム化合物である。
上記式中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R,R’,R’’は、互いに同じまたは異なっていてよい、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基または置換されていてよいフェニル基を表し、Xは、ハメット酸度関数が−12以下の超強酸のアニオンを表す。
上記式(I)で表されるスルホニウム化合物は、加熱により熱分解し、超強酸を効率よく発生させることができるため、カチオン重合開始剤として有用な化合物となる。
なお、熱酸発生剤またはエネルギー線酸発生剤とは、熱またはエネルギー線をトリガとして超強酸を発生させる物質であり、酸をトリガとして自己触媒的に分解し、酸濃度を非線形的に増大させる酸増殖剤とは異なる。
(2)
上記式(I)において、アニオンXは、SbF 、PF 、BF 、B(C 、AsF のいずれかであることが好ましい。
この場合、酸発生効率の観点でより好ましく、カチオン重合開始剤としてより有用である。
(3)上記式(I)において、Rは、置換されていてよいフェニル基であってよく、この場合、当該置換されていてよいフェニル基の置換基は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルキル基、水酸基、または炭素数1以上4以下のアルコキシカルボニル基であってよい。
この場合、スルホニル化合物は活性エネルギー線による酸発生剤として特に有用である。
本発明のスルホニウム化合物の熱分解をモニターしたグラフである。
[スルホニウム化合物]
上記式(I)で示される本発明のスルホニウム化合物は、相当する3−ハロゲノプロピオフェノンとチオールとから合成することができるスルフィド化合物に、R−L(Lは、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、またはトシレート、トリフレート、メシチレートなどの脱離基を示す。)を作用させてL−をカウンターアニオンとするスルホニウム塩へ変換した後、ハメット酸度関数が−12以下の超強酸のアルカリ金属塩と陰イオン交換反応を行うことによって合成することができる。
上記式(I)で示されるスルホニウム化合物は、具体的には、下記式で示される化合物が挙げられる。
本発明のスルホニウム化合物は、硫黄原子とカルボニル基との間の炭素数が2であることにより、カルボニル基のα位のプロトンの脱離が促進される。これにより、酸の発生が促進される。つまり、以下に示すメカニズムによる反応が生じやすいと推測される。
このように、効率的な酸の発生を可能とするため、本発明のスルホニウム化合物は、カチオン重合開始剤として有用である。したがって、カチオン重合性化合物の重合または硬化に利用することができる。カチオン重合性化合物としては、酸重合性、または酸硬化性の化合物であればよく、たとえば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、スチレン化合物などが挙げられる。また、これらのカチオン重合性化合物は、モノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれであってもよい。カチオン重合性化合物は、単独または2種以上の組み合わせで用いることができる。
本発明のスルホニウム化合物は、貯蔵安定性に優れ、いわゆる潜在性重合開始剤として機能する。光(特に紫外線)、電磁波(特にX線)および電子線などの活性エネルギー線の作用によって活性化される化合物、つまり活性エネルギー線酸発生剤であってもよいし、熱の作用によって活性化される化合物、つまり熱酸発生剤であってもよい。特に光酸発生剤である場合、置換基Rは、置換されていてよいフェニル基であることが好ましい。
本発明のスルホニウム化合物は、カチオン重合性化合物100重量部に対し、たとえば0.01重量部以上15重量部以下、好ましくは0.01重量部以上10重量部以下、より好ましくは0.5重量部以上5重量部以下の割合で用いることができる。上記下限値以上であることにより、適切な硬化速度を得ることができ、上記上限値以下であることにより、硬化速度の過剰促進による残留応力の発生および過加熱による樹脂劣化を防ぎやすい。
本発明のスルホニウム化合物を熱酸発生剤として利用する場合、他の活性エネルギー線酸発生剤と組み合わせることにより、下記スキームに例示するフロンタル重合系を容易に構築することができる。このため、先に活性エネルギー線によって他の活性エネルギー線酸発生剤から酸が発生し、カチオン重合性化合物が重合し、その反応熱により、熱酸発生剤としての本発明のスルホニウム化合物の分解および酸の発生(上述メカニズムによる)が誘導され、自己促進的に重合反応を伝播させることができる。したがって、酸を発生させるためのエネルギー(つまり活性エネルギー線および熱のいずれも)を外部から与え続けることなく、かつ、熱酸発生剤としての本発明のスルホニウム化合物単体では必要となる熱エネルギーを外部から与えることなく、樹脂組成物を深部に至るまで効率的に硬化させることができる。
他の活性エネルギー線酸発生剤としては特に限定されないが、カチオン重合開始剤として機能するものであれば特に限定されない。貯蔵安定性および速硬化性能の観点からは、上記式(I)で示されるスルホニウム化合物以外のオニウム塩系重合開始剤(以下、他のオニウム系重合開始剤と表記する)であることが好ましい。
他のオニウム塩系重合開始剤としては、たとえば、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨ−ドニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のセレノニウム塩、アルミニウムキレート化合物などのオニウム塩、スルホン酸エステル、鉄−アレーン化合物、シラノール−アルミニウム錯体等の各種化合物が挙げられる。貯蔵安定性と速硬化性能の観点からより好ましいカチオン重合開始剤としては、ルイス酸の芳香族ヨードニウム塩化合物およびルイス酸の芳香族スルホニウム塩化合物が挙げられる。
ルイス酸の芳香族ヨードニウム塩化合物としては、たとえば下記式(II−1)で表される化合物が挙げられる。
上記式(II−1)中、R5、R6は水素原子、アルキル基、アルコキシ基のいずれかを示し、それぞれのR5、R6は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、R7、R8、R9、R10は水素原子、アルキル基のいずれかを示し、R7、R8、R9、R10は互いに同一であっても異なっていてもよい。さらに、XはB(C、SbF、AsF、PF、BF、CFSO、FSO、ClO、FPOのいずれかを示す。
これらのヨードニウム塩としては、たとえば、和光純薬工業社製WPI−113、WPI−116、ローディアジャパン社製PHOTOINITIATOR 2074、チバジャパン社製IRGACURE 250、日本曹達製CI−5102などが挙げられる。
ルイス酸の芳香族スルホニウム塩化合物としては、たとえば、下記式(II−2),(II−3)で表される化合物が挙げられる。
上記式(II−2)中、R11、R12、R13は、炭素数1以上12以下のアルキル基、水酸基、または炭素数1以上4以下のアルキルカルボニロキシ基(炭素数には、カルボニル基の炭素を含まない)を表す。R11、R12、R13は、互いに同一であっても異なっていてもよい。さらに、XはB(C、SbF、AsF、PF、BF、CFSO、FSO、ClO、FPOのいずれかを示す。
これらのスルホニウム塩としては、たとえば、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L(いずれも三新化学工業社製)などが例示される。
上記式(II−3)中、XはB(C、SbF、AsF、PF、BF、CFSO、FSO、ClO、FPO、(CFCFPFのいずれかを示す。
これらのスルホニウム塩としては、サンアプロ株式会社製CPI−101A、CPI−100P、CPI−210S、CPI−200K、みどり化学社製のDTS−102、DTS−103などが挙げられる。
上記のほか、ルイス酸の芳香族スルホニウム塩化合物として、アデカ社製SP−150、SP−170などが挙げられる。
熱酸発生剤としての本発明のスルホニウム化合物が他の活性エネルギー線酸発生剤と併用される場合、他の活性エネルギー線酸発生剤の含有量は特に限定されない。たとえば、熱酸発生剤としての本発明のスルホニウム化合物に対し、モル基準でたとえば0.01倍以上100倍以下、好ましくは0.1倍以上10倍以下である。上記下限値以上であることにより、適切な硬化速度を得ることができ、上記上限値以下であることにより、硬化速度の過剰促進による残留応力の発生および過加熱による樹脂劣化を防ぎやすい。
以下に、本発明を実施例によってさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(PRTAG−PFの合成)
まず、下記スキームに示す反応を行い、中間体を合成した。
4−メトキシベンゼンチオール(化合物a)7.5g(53.6mmol)をテトラヒドロフラン20mLに溶解させ、トリエチルアミン10.8g(107mmol)を加え、氷冷下で24時間攪拌した。ここに3−クロロプロピオフェノン(化合物b)10.2g(53.9mmol)をテトラヒドロフラン20mLに溶解させた溶液を加え、攪拌しながら室温で24時間反応させた。反応液中に白色固体の析出を確認したため、この固体をろ過によって取り除いた。得られたろ液は溶媒を蒸発させ、固体を析出させた。この固体をクロロホルムに溶解させ、5wt%塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、および飽和塩化ナトリウム水溶液の順に分液操作し、硫酸マグネシウムを用いて溶液中の水を除去した。硫酸マグネシウムをろ過し、溶媒を蒸発させた後、ヘキサン洗浄を行って、固体を回収および減圧乾燥させた。これにより、白色固体である中間体化合物を6.8g(収率55%)得た。
中間体化合物をH−NMR測定した。同定データは以下のとおりである。
NMR(δ値)
3.2−3.3ppm(m、4H、−CCH−)
3.80(s、3H、−OCH
6.84(d、2H、Ar−H)
7.4−7.6(m、5H、Ar−H)
7.89(d、2H、Ar−H)
次に、下記スキームに示す反応を行い、PRTAG−Tfを合成した。
中間体化合物の4.0g(14mmol)をジクロロメタン40mLに溶解させ、氷冷下で攪拌した。ここに、トリフルオロメタンスルホン酸メチル2.4g(14mmol)をジクロロメタン10mLに溶解させたものを加え、氷冷下で5時間反応させた。その後、ヘキサン洗浄を行って、固体を回収および減圧乾燥させた。これによって、PRTAG−Tf 4.3g(収率68%)を得た。
PRTAG−TfをH−NMR測定およびESI−MS測定した。同定データは以下のとおりである。
NMR(δ値)
3.41(s、3H、S−CH
3.52(m、2H、S−CH−)
3.84(m、1H、S−CH−)
3.86(s、3H、O−CH
3.99(m、1H、S−CH−)
7.25(d、2H、Ar−H)
7.53(t、2H、Ar−H)
7.67(t、2H、Ar−H)
7.93−8.01(m、4H、Ar−H)
ESI−MS
{C1719}287.1093(理論値287.1100)
{CFSO }148.9526(理論値148.9533)
最後に、下記スキームに示す反応を行い、PRTAG−PFを合成した。
PRTAG−Tf0.57g(1.3mmol)をイオン交換水700mLに溶解させ、室温で10分間攪拌した。ここにヘキサフルオロリン酸ナトリウム0.33g(2.0mmol)をイオン交換水10mLに溶解させたものを加え、室温で30分攪拌したところ、白色固体が析出した。析出した固体をろ過し、ヘキサン洗浄後減圧乾燥させ、目的物PRTAG−PF0.4g(収率70%)を得た。
PRTAG−PFH−NMR測定およびESI−MS測定した。同定データは以下のとおりである。
NMR(δ値)
3.47(s、3H、S−CH
3.52(m、2H、S−CH−)
3.84(m、1H、S−CH−)
3.86(s、3H、O−CH
3.99(m、1H、S−CH−)
7.25(d、2H、Ar−H)
7.53(t、2H、Ar−H)
7.67(t、2H、Ar−H)
7.93−8.01(m、4H、Ar−H)
ESI−MS
{C1719}287.1078(理論値287.1100)
{PF }148.9533(理論値144.9642)
<実施例2>
陰イオン交換反応時、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム0.33g(2.0mmol)の代わりにヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム0.52g(2.0mmol)を用いたことを除いて、実施例1と同様に合成を行った。その結果、下記式に示すPRTAG−SbF0.40g(収率59%)を得た。
PRTAG−SbFH−NMR測定およびESI−MS測定した。同定データは以下のとおりである。
NMR(δ値)
3.35 (s、3H、S−CH
3.53 (m、2H、S−CH−)
3.86 (m、1H、S−CH−)
3.87 (s、3H、O−CH
3.99 (m、1H、S−CH−)
7.26 (d、2H、Ar−H)
7.54 (t、2H、Ar−H)
7.68 (t、2H、Ar−H)
7.94−8.02 (m、4H、Ar−H)
ESI−MS
{C1719} 287.1100(理論値287.1100)
{SbF } 234.8947(理論値234.8948)
<実施例3>
実施例2で得られたPRTAG−SbFが7.6mMの濃度となるようにDMSO−d溶液(内部標準:メシチレン)を調製し、得られた溶液をNMRチューブに入れて封管した。NMRチューブをオーブン中で120℃に加熱し、H−NMRスペクトルの経時変化を追跡した。
追跡の結果を図1に示す。図1においては、横軸に加熱時間(分)を示し、縦軸に、PRTAG−SbFの正規化されたピーク強度および分解物への変換率(%)を示す。図1に示すように、120℃加熱条件下において、PRTAG−SbFが60分以内で速やかに分解する(図中丸ドット参照)と同時に、下記式に示す分解物D1の生成(図中四角ドット参照)および分解物D2の生成(図中三角ドット参照)が確認された。
<実施例4>
単官能脂環式エポキシ化合物(1,2−エポキシシクロヘキサン)および2官能脂環式エポキシ化合物(3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)とを、1:3(重量比)で混合し、得られた混合樹脂に対し、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモナートを2重量%と、実施例2で得られたPRTAG−SbF3重量%とを添加し、硬化性樹脂組成物を得た。
上記で得られた硬化性樹脂組成物をマイクロチューブ(深さ4cm、直径0.5cm)に入れ、チューブ上方からHg−Xeランプ(フィルター無)で所定量の光を照射した。時間経過に伴う重合挙動を目視で観察した。
目視観察の結果、露光直後に露光表面の黄変を確認した。露光開始1分後、黄変領域が顕著に拡大した。露光1分後に露光を止めたが、黄変領域はその後も徐々に下方に広がり、約6分後に、マイクロチューブの最深部まで到達した。
また、目視観察と同時に、黄変領域の最深部の接触式表面温度測定器で計測した結果、最高温度は102℃であった。
露光による樹脂の黄変は、表面部で光により重合が開始され、PRTAG−SbFが分解したためであると考えられる。露光を止めた後も黄変領域の下方への拡大が進行したことから、重合熱による連鎖的な重合が進んだことが示唆される。さらに、重合中に気泡は確認されなかった。これは、モノマーの沸点(130℃)以下の温度で重合が進行したためであると考えられる。
さらに、硬化物を粉砕してトリクロロメタンで溶出し、H−NMRにより構造を調べ、低分子量残存物の有無を確認した。その結果。モノマー由来のピークは確認されなかった。したがって、樹脂が完全に硬化したことが示された。
このように、熱酸発生剤であるPRTAG−SbFが組み込まれたフロンタル重合系を構築し、外部から加熱を行うことなく、深部の樹脂の硬化が確認された。
<実施例5>
3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業株式会社製セロキサイド2021P)1g、1,2−エポキシシクロヘキサン1g、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモナート0.024g、および実施例2で得られたPRTAG−SbF0.040gを均一になるまで攪拌し、硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物を直径5mm、長さ40mmの試験管に入れ、254nmの光を100秒照射した後、照射を停止した。照射停止後も硬化反応は進行し、露光開始からおよそ280秒で試験管内の樹脂の全硬化が完了した。
<実施例6>
ビスフェノールA型エポキシ化合物:4,4’−イソプロピリデンジフェノールと1−クロロ−2,3−エポキシプロパンとの重縮合物(三菱化学株式会社製jER828)70重量部、脂環式エポキシ化合物:3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製セロキサイド2021P)20重量部、ビニルエーテル化合物:ジエチレングリコールジビニルエーテル(日本カーバイド工業株式会社製DEGDVE)10重量部、および実施例2で得られたPRTAG−SbF1重量部をγ−ブチロラクトンに溶解させた溶液を均一になるまで撹拌し、硬化性樹脂組成物を得た。
得られた硬化性樹脂組成物のゲル化時間測定を行った。ゲル化時間測定には安田精機製作所のゲルタイムテスターを用いた。直径12mm、長さ90mmの試験管に2gの硬化性樹脂組成物を加え、160℃に温度設定したゲルタイムテスターにセットし、トルクが3.7g/cmになるまでの時間をゲル化時間として測定した。
なお、本実施例で得られた硬化性樹脂組成物を、23℃で7日間保存したところ、全く変化が見られなかった。したがって、優れた貯蔵安定性が確認された。
<比較例1>
PRTAG−SbF1重量部をγブチロラクトンに溶解させた溶液の代わりに、市販品のスルホニウム化合物:ジメチル−p−アセトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナートの50重量%γ−ブチロラクトン溶液(三新化学工業株式会社製SI−150L)2重量部を用いたことを除いて、実施例6と同様に硬化性樹脂組成物を調製し、ゲル化時間測定を行った。
実施例6と比較例1とについて、硬化性樹脂組成物の組成および測定されたゲル化時間を下記表1に示す。下記表1に示されるように、実施例6と比較例1とは、硬化性樹脂組成物の樹脂組成およびスルホニル化合物の配合割合が同じであり、且つ、スルホニル化合物もアンチモナートである点で同じであるが、実施例6のほうでゲル化時間が短いことが確認された。
<実施例7>
ビスフェノールA型エポキシ化合物:4,4’−イソプロピリデンジフェノールと1−クロロ−2,3−エポキシプロパンとの重縮合物(三菱化学株式会社製jER828)1.6g、および脂環式エポキシ化合物:3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製セロキサイド2021P)0.4gを混合し、さらに、実施例1で得られたPRTAG−PF0.06gをγ―ブチロラクトン0.28gに溶解させたものを加え、硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物を直径12mm、長さ90mmの試験管に入れ、190℃に加熱し実施例6と同様にゲルタイムを測定したところ、ゲルタイムはおよそ255秒であった。
<実施例8>
ビスフェノールA型エポキシ化合物:4,4’−イソプロピリデンジフェノールと1−クロロ−2,3−エポキシプロパンとの重縮合物(三菱化学株式会社製jER828)1.2g、脂環式エポキシ化合物:3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製セロキサイド2021P)0.4g、オキセタン化合物:3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(東亜合成株式会社製OXT−221)0.4gを混合し、さらに、実施例1で得られたPRTAG−PF0.03gをγ―ブチロラクトン0.10gに溶解させたものを加え、硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物を直径12mm、長さ90mmの試験管に入れ、160℃に加熱し実施例6と同様にゲルタイムを測定したところ、ゲルタイムはおよそ110秒であった。
<比較例2>
硬化性樹脂組成物の組成を、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業株式会社製セロキサイド2021P)2g、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモナート0.020g、およびカチオン重合開始剤サンエイドSI−100(三新化学工業)0.020gを含むものとした以外は、実施例5と同様の操作を行った。しかしながら、樹脂の硬化は進行しなかった。
<比較例3>
硬化性樹脂組成物の組成を、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業株式会社製セロキサイド2021P)1g、1,2−エポキシシクロヘキサン1g、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモナート0.020g、およびカチオン重合開始剤サンエイドSI−100(三新化学工業)0.020gを含むものとした以外は、実施例5と同様の操作を行った。しかしながら、樹脂の硬化は進行しなかった。
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれらのみに限定されるものではなく、本発明の趣旨と範囲とから逸脱することのない様々な実施形態が他になされる。さらに、本実施形態において述べられる作用および効果は一例であり、本発明を限定するものではない。

Claims (3)

  1. 下記一般式(I):
    (式中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R,R’,R’’は、互いに同じまたは異なっていてよい、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基または置換されていてよいフェニル基を表し、Xは、ハメット酸度関数が−12以下の超強酸のアニオンを表す。)
    で表される熱酸発生剤またはエネルギー線酸発生剤。
  2. 前記アニオンが、SbF 、PF 、BF 、B(C 、AsF のいずれかである、請求項1に記載の熱酸発生剤またはエネルギー線酸発生剤。
  3. 前記Rが、置換されていてよいフェニル基であり、前記置換されていてよいフェニル基の置換基が、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルキル基、水酸基、または炭素数1以上4以下のアルキルカルボニロキシ基である、請求項1または2に記載の熱酸発生剤またはエネルギー線酸発生剤。
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